資料3

高等専門学校教育の充実について

−ものづくり技術力の継承・発展とイノベーションの創出を目指して−

(審議経過報告)

に対する意見募集結果まとめ

  頂いた御意見
【全体に対して】  
  • 全体に「充実」という言葉が多用されすぎており、分かり難くなっている箇所が多い。(高専教員,男性,52歳)
  • 全般に「本科」という言葉が用いられているが、正式に定義された言葉ではないので、「準学士課程」とすべきではないか。また、「充実」という言葉も頻出するが、もう少し具体的な表現でなければ意図するものが伝わらないと思われる。(高専教員,男性,52歳)
1.高等専門学校教育の現状 (1)高等専門学校に関する経緯及び現状
  • 設置された地域により,高専の位置づけが異なり、産学連携の効率や地元就職率にも差がある。(高専教員,男性,42歳)
(2)高等専門学校教育の特徴
  • 高専が優秀な技術者を輩出できたのは、中学校卒業生に受験を意識することなく早期の専門教育を行い、ものづくり教育に最適な環境を提供できたことが大きい。高専は真のものづくり教育を提供できる教育機関に最も近いものと考える。(高専教員,男性,56歳)
  • 高専の本質的な意義は、戦後教育システムにおいてほぼ唯一の公的高等職業教育機関であるという点にあり、それ故に社会や企業のニーズに応じたカリキュラムの開発や教育方法の改善に取り組むことができた。(元高専教員,男性,67歳)
  • 日本の若者のポテンシャルは決して低くないが、従来の、ひたすら学ぶことを重視した教育システムでは生かすことができていない。その点、高専の特質を活かした創造教育は意欲、思考力、発想力を養う上で極めて大きな効果を有している。(高専教員,男性,63歳)
  • 学生への生活指導が業務として存在しているにもかかわらず、報告書内であまり触れられていない。(高専教員,男性,42歳)
(3)高等専門学校に対する評価
  • 外部評価は、高専の充実のため必要であるが、評価に対する改善が人員・予算面での制約のため困難な原状がある。また、評価用の書類作成などは本来業務に加えての仕事となり、教員に多忙と疲労困憊を強いている。(高専教員,男性,48歳)
  • 平成18年度から実施されている「到達度試験」は学習内容を全国一律にするものであり、それぞれの高専の地域に根ざした独自の教育を否定するものになりかねない。高専の質保証はJABEEで十分であり、更なる負担をかけない工夫が必要である。(独立行政法人職員,男性,56歳)
  • 英語能力やコミニュケーション能力の不足が指摘されているが、現在は大きく改善されている。また、大学卒業生と比較すべきは専攻科修了生であり、準学士課程卒業生との2年間の差は大きく、単純には比較できない。現状を調査・分析した上での結論として能力不足を指摘しているのか、疑問である。(高専教員,男性,52歳)
2.高等専門学校を巡る社会経済環境の変化 (2)我が国の技術者養成における高等専門学校の位置付け
  • 高専は当初、中堅技術者養成を目的とした技術者早期教育期間として作られたが、現状では中堅技術者となることに満足せず、専攻科への進学や大学へ編入学する者が6割近くに上っている。こうした環境を利用しつつ改革を行えば、次世代に対応する早期教育機関となりうる。(高専教員,男性,59歳)
(6)行財政改革の進展
  • 高専全体で共通する課題や労働問題には、各高専で個々に対応するよりは、一括して高専機構本部で対応したほうが効率的と思われる。(高専教員,男性,66歳)
  • 独立行政法人化に伴い、現場では業務負担増・サービス低下が起きている。地域連携に対しても全国画一化に繋がりかねない。大学の事務職員との人事交流もメリットはあまりみられない。(高専教員,男性,40歳)
  • 全体予算は毎年1パーセントの削減であるはずだが、高専機構の介在や各校での間接経費の取り分の影響か、末端でははるかに多く減少しており、ここ数年で我々の使える教育・研究経費は半減している。これに伴い、非常勤教員の減少、専門外授業の増大といった影響が現れており、もともと少ない常勤教員と多くの非常勤教員で大学並みの授業をカバーしてきた高専の受ける影響は大きい。(高専教員,男性,49歳)
3.社会経済環境の変化に対応した高等専門学校教育の今後の在り方 (1)基本的考え方
  • 少子化、理科離れなどにより、将来の技術者不足が懸念されているが、高専の合併、予算や教職員定員の削減など、高専の将来はむしろ縮小の方向に見える。高専は内容をさらに充実させ、拡充すべきである。(高専教員,男性,66歳)
  • 高専の特色の一つにきめ細やかな教育がある。高専は高校生の年代の学生を教育しているが、学習指導要領が課されていない、大学受験が不要といった利点があり、こうした点を活かしてものづくりに特化した教育を推進すべき。(高専教員,男性,56歳)
2多様な高等教育機関のうちの一つとして本科・専攻科の位置付けを明確に (b)高等専門学校(本科・専攻科)教育により養成する人材像
  • 学生への生活指導、どのような人間性を持った技術者を育成すべきかという議論が見られない。(高専教員,男性,42歳)
(c)多様な進路の意義
  • 教育機関として,学生のキャリアパスを考えた進路指導のあり方などの視点が抜けている(高専教員,男性,42歳)
  • 大学への編入学を「進路変更」と記述するのは誤解を与える表現である。高専から大学への進学は、技術者としての知識ベースを高め、広げるものではないか。大学への進学により知識を高めた後に現場の実践技術者になる高専卒業生も沢山おり、高専卒業後直ちに研究開発部門に入る者もいる。(高専教員,男性,66歳)
  • 本科卒業生に占める進学希望者は増加しているが、高専という組織の目的は社会で活躍できる技術者の養成であり、大学に編入学するための学校ではない。個人の可能性を積むことは許されないが、高専という組織の目的を変えてはならない。(高専教員,男性,56歳)
3産業界や地域社会との連携を強化し、ものづくり技術力の継承・発展を担いイノベーション創出に貢献する人材の輩出へ
  • 連携強化のためには、コーディネータとして機能する専任教職員などの人員増と、財源が必要である。(高専教員,男性,39歳ほか)
  • 産業界や地域社会と連携するにあたって必要な、学生や特許の取扱いに関する規定や教員の評価基準の整備が不十分である。また、地域への貢献活動はボランティア的に取り扱われることも多く、評価制度の充実や従来の業務との比率の検討を行う必要がある。(高専教員,男性,48歳)
4.高等専門学校教育充実の具体的方策 (1)社会経済環境等の変化に対応した教育研究組織の充実 2学科のあり方の見直し
  • 一部高専等で行われている学科の大括り的再編は、まだ学年進行中でもあり結論を出す段階ではないが、性急な改編により教育現場の混乱を招いているという報告もあり、慎重な検討が必要である。(高専教員,男性,39歳ほか)
  • 学科の見直しについては、学生への影響や教職員の構成なども考慮した慎重な検討が必要である。特に既存の学科が無くす場合、その分野の教育研究の機会が地域から失われることは避けるべきである。15歳人口の減少にも学科減ではなく学生定員減で対応することが望ましい。(高専教員,男性,48歳)
3地域のニーズを踏まえた専攻科の課程の充実
  • 専攻科修了生に対する学位授与に関しては、より具体的に「学位の審査権を高等専門学校に付与し,授与権は学位授与機構に帰属させる」ことを早急に検討する必要があるというような記述とすることが望まれる。(高専教員,男性,52歳)
  • 高専本科の弱点は、知識を活用する能力と語学力・研究力に欠けることであり、専攻科ではその部分を少数精鋭の教育環境で鍛えるべきである。(公務員,男性,61歳)
4学校の再編・整備による新しい機能を備えた高等専門学校の創設
  • 単に近隣の高専を組織上一つに再編しても新たな機能は生まれない。時代と地域の要請に即応した新しい機能は、各高専に予算と人員を与えて、独自に新しい分野に展開させていけば良い。(高専教員,男性,39歳ほか)
5新分野への展開
  • 新分野の展開の必要性が記されているが、平成3年の大学審議会答申により学科の対象分野が撤廃されたにも関わらず改編が進まなかった要因は、1学科40名定員という設置基準にある。この基準では社会的要請の変化に対応できないため、徐々に学科の改編ができるよう、学科定員の柔軟化を含む法的整備の必要性を提言していただきたい。(高専教員,男性,42歳)
  • 現状では各高専が新分野に対応した学科を設置するのは物理的・人的に不可能であり,実現には予算・施設・人事の面で支援が必要である。(高専教員,男性,40歳)
  • 高等職業教育のモデルとしての高専は国公私立に関わらず、また工業のみに留まらず、多様な展開が可能である。現在、中高一貫校など教育システムの多様化が進んでいるが、社会的ニーズに応えるには高大一貫の高等職業教育機関こそが必要であり、財政支援も含む政策的先導が求められていると考える。(元高専教員,男性,67歳)
(2)教育内容・方法等の充実
  • 教育内容・方法等の充実には、大きな柱として「創造性を養うための教育」が必要であろう。(高専教員,男性,52歳)
1地域の産業界等との幅広い連携の促進
  • 企画、計画、管理、運営などを含む実務的なものづくり教育は、社会における実務経験者でないと、適切な教育は行いにくい。この面で企業からの教員採用の推進や退職技術者の活用などは効果があると思われる。(高専教員,男性,66歳)
  • 外部人材の活用による教員等確保については、学位などの問題があるため、特別枠の導入といった対策をとることが望ましい。(高専教員,男性,40歳)
4自学自習による教育効果も考慮した単位計算方法の活用
  • 「単位計算方法の活用」は「学習単位導入による自学自習の強化」とすべきではないか。(高専教員,男性,52歳)
(3)教育基盤の充実
  • 教育の質の向上を図るにはまず、教員の教育力の向上を図る必要があるが、現状では教員は授業以外に様々な業務を抱えており、余裕がない。また、教育力向上の意欲に欠ける教員も少なくない。こうした状況を改善するための方策として、「俸給面での教員のインセンティブ強化」「教職員の再教育強化」「テニュア制度の導入」「教員の増強」などが考えられるほか、再教育を受けても改善しない教職員のチェックシステムや処分、解雇も含む制度の整備が必要と思われる。(高専教員,男性,66歳)
  • 学寮生活は学生が共同生活の厳しさと楽しさを学び、協調性と友情を育む大変良い機会であるが、収容能力が不足し、常に満杯であるので、充実が必要である。(高専教員,男性,66歳)
  • この報告書は総じて、長期インターンシップや国際交流・社会人教育のような、社会情勢の変化に対応した教育体制の見直しを求めているが、まずは、学生への教育と研究に集中できるような教育環境・職場環境を整備し、優秀な教員を確保するということが必要である。(高専教員,男性,32歳)
  • 競争的資金・民間資金の獲得は必要ではあろうが、その活動が高専の教育にどう繋がるのかを考える必要がある。(高専教員,男性,48歳)
(4)社会との関わりの強化
  • 留学生受け入れは、留学生そのものの教育にも増して、日本人学生に与える影響が大きく、積極的に受入れを進めていくべきである。(高専教員,男性,39歳ほか)
  • 高専の社会的認知度の低さは高専設立以来継続して言われてきており、ここで述べられる方策は既に行っているが効果が現れないという現状である。関係者の一層の努力や卒業生との連携程度ではこの問題は克服できないという認識が必要であり、その上で認知度の向上を諦めるか、相当の予算を投入して大々的な広報活動を行うかという思い切った決断が求められる。(高専教員,男性,52歳)
(5)質の高い入学者確保
  • 工業高校から高専4年次への編入学については、ある意味同種の学生が学んでいる機関として、積極的な受入れを図ることも戦略の一つであろう。上手く連携を行い、カリキュラムの整合性を保てば、工業高校と高専でも5年一貫教育を行えるのではないか。(高専教員,男性,56歳)
(6)高等専門学校の新たな展開
  • 公立高専は地方の判断によるものであり、支援は慎重に行うべきである。(高専教員,男性,48歳)
  • 高専拡大の支援方策について言及されているが、公立にとどまらず、私立等においても考慮されるべき。(元高専教員,男性,67歳)
【その他事項】  
  • 高専の事務管理職員は2〜3年で交替するため、学校や学生に対する理解を深める機会が少なく、実情に即した学校運営の方策立案に十分な力を発揮できていない。学校プロパーとしての管理職員の養成や配置も必要と思われる。(高専教員,男性,66歳)
  • 高専制度ができた頃、高校は50人学級であり、高専の40人学級での教育は優位であったが、その後高校も40人学級となり、制度的な優位性は失われている。近年、学生に対する指導は更にきめ細かさを要求されており、その対応のためには30〜35人学級を検討すべきではないか。(独立行政法人職員,男性,56歳)
  • 経費節減や改革の成果を急ぐあまり、短期的に成果を要求しがちであるが、その結果地道な努力や縁の下の力持ちが減少し、組織の和が破壊されかねない。こうした成果主義の行き過ぎを是正する学内行政の監査・評価機関が必要である。(公務員,男性,61歳)
  • (企業・卒業生に対する意識調査結果)の文章中、(大学卒業者より低い)を(高等専門学校卒業者の評価が大学卒業者より低い)として、主語を明確にしてはどうか。また、両技術科学大学と、「両」という言葉が突然出てくるが、きちんと豊橋と長岡という言葉を最初に使って説明すべき。(高専教員,男性)