大学教育部会(第41回) 議事録

1.日時

平成28年1月18日(月曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省13階13F1~3会議室

3.議題

  1. 大学運営の一層の改善・充実のための方策について
  2. 三つのポリシーに基づく大学教育の実現について
  3. 認証評価制度の改善について
  4. その他

4.出席者

委員

(副部会長)黒田壽二副部会長
(委員)羽入佐和子,日比谷潤子の各委員
(臨時委員)安部恵美子,金子元久,川嶋太津夫,小林雅之,篠田道夫,二宮皓,長谷山彰,濱名篤,前田早苗,美馬のゆりの各臨時委員

文部科学省

(事務局)土屋事務次官,常盤高等教育局長,有松生涯学習政策局長,義本高等教育局審議官,松尾高等教育局審議官,森田高等教育企画課長,塩見大学振興課長,伊藤高等教育政策室長,新田主任大学改革官,北岡大学振興課課長補佐,遠藤大学振興課課長補佐,片柳高等教育政策室室長補佐 他

5.議事録

(1)大学運営の一層の改善・充実のための方策について,事務局から資料1-1,資料1-2に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【伊藤高等教育政策室長】    おはようございます。本日は,事務局より資料説明等々始めさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。
  なお,進行は黒田副部会長にお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
  では,事務局より資料の確認をさせていただきたいと思います。お配りしております資料に関しましては,議事次第のとおり,配付資料1-1から資料3-2まで計8点お配りしております。過不足等ございましたら事務局の方にお申し付けいただければと思います。
  では,最初の議題について資料説明に入らせていただきたいと思います。大学運営の一層の改善・充実のための方策についてということで,こちらは昨年の夏ごろまで,大学運営の一層の改善・充実のための方策ということで,大学運営組織,スタッフ・ディベロップメント,専門的職員などについて検討を進めていただいたところでございます。その後,専門的職員の現状も踏まえた上で議論を深めていくべきという御意見も頂戴いたしまして,これまでの間事務局において調査を実施してまいりました。その調査がまとまりましたので,まずは事務局より調査結果を御説明させていただきまして,それを踏まえた今後の議論の方向性について御審議いただきたいと思います。
  では,説明させていただきます。
【遠藤大学振興課課長補佐】    失礼いたします。大学振興課でございます。
  資料1-1に基づきまして,まずは調査の結果の概要について御報告をさせていただければと存じます。
  お手元の資料1-1の1ページ目を御覧ください。
  先ほど御紹介がありましたとおり,文部科学省の方で専門的職員の活用の実態について調査をさせていただいたところでございます。この調査の中で,私どもといたしましては,専門的職員について,調査表に書かれる24の職務,別添を本日資料として付けさせていただいてございますけれども,この別添について,特にその職務に関する個人の高い専門性に着目して配置され,当該職務を主に担当している大学職員の方を対象として調査を行わせていただきました。この結果について御報告申し上げたいと思います。
  1ページ,おめくりください。
  まず1.の専門的職員の現状,特にその配置の状況についてというところでございます。折れ線グラフで書かせていただいているのが全体の平均でございまして,青いバーが国立大学,緑色のバーが公立大学,赤色が私立の大学となってございます。
  この現状を御覧いただきますと,まず,現在の配置状況といたしまして,全体平均50%を超えているのは学生の健康管理,図書,就職・キャリア形成支援のところが,上位の方として配置されているという傾向が見て取れるかと思います。
  続きまして,5ページ目をお開けください。
  今申し上げました配置されている専門的職員の中で,特に重要と考える専門的職員,どういった職務の方々かというところもお伺いしてございます。全体平均においては,現在配置していて,特に重要と考える職務の上位といたしまして,学生の健康管理,就職・キャリア形成支援等の学生支援系のもの,さらに,情報通信・IT関係の職務について挙がってございます。
  ただし,グラフを御覧いただければと思いますけれども,このバーの色によって非常に大きな違いがあるという傾向がございます。例えば,国立大学のところを御覧いただきますと,研究管理でありますとか,国際のところが突出して高くなっているような傾向がございます。これは全体の平均とは異なるようなものとして出てきているという状況がございます。
  更に1ページおめくりいただきまして,6ページ目でございます。
  今後配置したい職務で特に重要と考える専門的職員ということで,これは現在の配置の有無に関わらず非常に重要と考える職務とその専門的職員についてお伺いしたものでございます。全体平均におきましては,今後配置したい職務といたしまして,特に重要と考えるものの上位として,インスティテューショナル・リサーチ,IRですね,さらに,執行部補佐,さらに,地域連携が挙がってございます。この中でも,やはり設置者別に傾向が大きく異なっているところがございまして,特に国立大学についてはインスティテューショナル・リサーチ,さらに,研究管理,国際についてが突出して高いという傾向が出てございます。これらの職務について,大学の運営において非常に重要であるという調査の結果が出てきているという状況でございます。
  さらに,次のページに行きまして,7ページ目でございます。2.の専門的職員の資格・処遇等ということで,専門的職員の方々がどういった学位であるとか,職務経験をお持ちになっているのかというところも調査をさせていただきました。この中で,専門的職員について,まず1点,この2.以降で御留意いただきたいところといたしまして,この結果については,現在配置している専門的職員のうち,大学運営上特に重要であると考える職務を三つから五つ程度御回答いただいたものでございます。非常に短時間でということで,大学側の御負担等も考えさせていただいて,特に重要と考える職務を三つから五つぐらい御回答いただきました。これを集計させていただいておりますので,全ての配置されている専門的職員の資格・処遇等を調査したものではない点については御留意いただきたいと考えてございます。
  スライドの方に戻ります。
  この中で,専門的職員について,その確保状況ということで,大学職員の中から育成したのか,それとも,中途採用で専門性に着目して採用したのかというところを調べたのがこの下の棒グラフでございます。
  全体的に見まして,専門性に着目して中途採用の割合というのが最大の割合を占める職務が高くなってございます。
  二つ目の丸といたしまして,内部職員から育成の割合が高いとしているのは,人事であったり,執行部の補佐,あと,教育課程編成・実施というのが内部からの育成の割合が高い職務でございます。
  一方で,中途採用からの割合が特に高いというふうになってございますのは,知的財産の職務,学生の健康管理の職務,さらに,研究管理の職務というような傾向が出てございます。
  1ページください。
  これ以降,学位ですとか,実務経験等についてお伺いしてございます。今回の調査におきましては,配置している専門的職員について,いずれの職務においても明確に学位等を採用等の場において求めていない,若しくは,規則がないとする割合が最も高いというのが現状でございます。
  これが8ページ目の学位でございまして,更に9ページ目も御覧いただきますと,こちらについても,実務経験についてお伺いしているところですが,このいずれの職務においても実務経験は求めていない,若しくは,その基準がないとする割合が最も高いという状況になってございます。
  更に1ページおめくりいただきまして,特別の給与制度等を設けているかどうかという,処遇に関することでございます。これも職務別にお伺いをしているものでございますけれども,研究管理以外では特別の給与制度を導入していないとする割合が最も高くなっているという状況でございます。
  11ページ目でございます。専門的職員に特化した評価みたいなものを行っているかどうかということもお伺いいたしました。こちらについても,いずれの職務においても,専門的職員に特化した評価,具体の専門性に着目した評価基準を設けているとか,専門的な評価を行うための体制を設けていますかということをお伺いしたんですけれども,こうしたところについては実施せずというところの割合が高くなっているという状況でございます。
  次に,12ページ目のスライドでございます。任期の有無についてというところでございます。これも職務に応じて大きく差が出ているという状況がございまして,任期制を採用する職務の上位といたしまして,研究管理,寄附,知的財産等々について結果が出ているという状況でございます。
  さらに,次の13ページ目のスライドを御覧いただきますと,専門的職員の育成のための取組を行っているかどうかというところでございます。こちらについても職務ごとに多少差がございますが,専門的職員の育成を実施する職務の上位といたしまして,教育課程編成・実施,人事,研究技術等について上位の職務ということで挙げられているという状況でございます。
  更におめくりいただいて,ページの15ページ目を御覧いただいてよろしいでしょうか。15ページ目の方で,専門的職員の採用等の方針や計画の有無についてということで,これもお伺いをしているところでございます。この中で,専門的職員に特化した方針や計画があるということで,50%を超えている職務は研究技術についてのみということになってございます。さらに,専門的職員として特化型の採用等の方針・計画を有する職務の上位といたしましては,研究技術,研究管理等がございまして,そうではなく,大学職員一般と同様の採用等の方針・計画を有する職務といたしましては,人事,財務等々が挙げられているというような状況にございます。
  最後に,16ページ目,御覧いただきたいと思います。
  専門的職員の配置方法を職務別ということで挙げさせていただいてございます。専門的職員として固定的に配置をする,一方で,人事異動のローテーションの中に組み込むというのもございますけれども,固定的に配置するとする割合が最も高い職務が,これは多数を占めているという状況でございます。特に固定的に配置する職務の上位といたしましては,研究技術,知的財産,学生の健康管理等が職務として挙げられているという状況でございます。
  17ページ目以降のスライドにつきましては,これら今までは職務を個別に申し上げてきたところでございますけれども,御議論を頂いている中で,特に大学経営を担うような職務,さらに,教育研究の活動を支援するような職務,さらに,学生支援関係の職務ということで,それぞれ累計のような形でまとめさせていただいたものが17ページ目以降のスライドに記載をさせていただいているというものでございます。
  以上,駆け足になりましたけれども,簡単に専門的職員の活用の実態の調査の概要を御報告させていただきました。こうした概要の結果を踏まえまして,今後の方向性という資料の方に移らせていただきたいと思います。
  資料1-2の方を御覧いただければと思います。
  こちらの,特に1.のところからポイントを申し上げたいと思います。やはり大学を取り巻く非常に大きな変化が進行していく中で,例えば,今後も,この後も議論ございます三つのポリシーに基づく体系的,組織的な大学教育の実現であるとか,学問分野の融合,新領域の開拓といった観点の話,さらに,大学を超えた産業界や地域,さらに,国際的な展開といった,大学を超えた様々な変化に対応していく必要があるということで,やはり教員と事務職員等の大学の職員がしっかりと連携をして,チームとして大学運営に取り組んでいくと,そういう体制を構築していく必要があるということをまず1.のところで述べさせていただいてございます。
  それを受けまして,2.のところ,大学職員の資質・能力の向上についてということで,(1)のところの一つ目のダイヤのところで,特にやはり大学職員が大学運営に必要な能力を身に付け,向上させるために,スタッフ・ディベロップメントをしっかりと推進していく必要があるんだということをこちらの方で記載をさせていただいてございます。
  1ページおめくりいただきまして,こうしたスタッフ・ディベロップメントを進めていくに当たっては,各大学でしっかりと各職員のキャリアパスも見据えながら,計画的,組織的に取り組んでいただくと。実際にSDを行っていただく場合には,外部の団体であるとか,様々な機関とも連携しながら,質の高い研修の機会を確保していくことが重要ではないかということを挙げさせていただいてございます。
  こうした観点を踏まえまして,今後ですけれども,更に効果的なSDを推進するためということで,国において大学職員の資質・能力の向上に関する調査研究の実施など,各大学における効果的なSDを推進するための支援を行うとともに,法令上に大学が大学運営に必要な職員の資質・能力の向上を図るため,当該職員の研修について計画してその機会を確保することについて規定してはどうかということで,案ということでお示しをさせていただいてございます。
  この際に,SDとFDの概念について,しっかりと整理をさせていただいて,両者の関係が明確になるように位置付ける必要があるのではないかというふうに考えてございます。
  済みません,(2)のところに行きます。大学運営の高度化に伴い新たに必要となる専門的な業務を担う体制の整備ということで,特に調査結果がこちらの方に関わってこようかと思いますけれども,先ほど申し上げたとおり,調査の概要の中で,大学の経営であるとか,研究管理であるとか,国際分野,インスティテューショナル・リサーチなどについて,重要だと挙げられていらっしゃるような大学,多くございましたけれども,こうした点について専門性の高い業務を担う体制をどういうふうに構築していくかということが大変重要な課題であろうかなというふうに考えてございます。
  特にその在り方として,これまでの御議論いただいていた中で,教員や事務職員と並ぶ形で専門的職員として置く方がいいのではないかという御指摘や考え方というのもございましたし,一方で,大学職員である教員と事務職員との職務の見直しであるとか,先ほどのSDの充実を図ることによって,大学において専門的な業務が組織的に遂行されるようにしていくべきであるというような考え方もございます。
  例えば,さらに,なお書きでございますけれども,専門的職員については,図書館に置かれる司書のような形で,明確に資格等の保有が前提となっているようなものもあれば,リサーチ・アドミニストレーターのように,通常明確な資格要件の保有は前提となっていないんですけれども,職務上非常に高い専門性が求められるような職務もあるという形で,非常に大学の職務によっても多様な現状があるということがございます。
  こうした中で,三つ目のひし形になりますけれども,やはり大学運営において特に重要と考えるような職務は,一定の傾向は伺えるんですけれども,現状においては各大学の専門的職員の配置は極めてその職務に応じても多様な状況がございます。また,設置者別によっても非常に多様な状況がございます。こうした中で,更に求める資格であったり,処遇についても,これも明確にいまだ確立されたものとはなっていないというような状況が読み取れるかと思います。
  更に1ページおめくりいただきまして,こうした現状を踏まえまして,専門的職員につきましては,現時点において新たな職としてその設置に関する法令上の規定を置くのではなく,まずは現状で各大学における専門的職員の活用状況に関する詳細な分析であるとか,各大学がその実情に応じて必要とする新たな業務の的確な遂行に資するための情報収集,環境整備みたいなものに取り組んでいくことが重要ではないかという形でお示しをさせていただいてございます。
  この中で,「特に,国は」ということで,今後の大学運営について特に必要性が高いと考えられる専門的な業務,これらの遂行について,いろいろな関係団体と連携させていただきながらスキル標準の作成,職務能力の向上のための取組であるとか,SDに関する事例の収集,情報発信等を支援していくことが重要ではないかという形でお示しをさせていただいてございます。この方向性等について,まさに御審議いただきたいと考えているところでございます。
  最後に3.の事務組織についてでございますけれども,この事務組織の在り方につきましても,教職協働体制を構築する上で非常に今重要な役割を担っているということがございます。このため,今申し上げた専門的職員の位置付けの方向性の検討も踏まえながら,今後あるべき姿について更に検討を深めさせていただいて,その結果を法令等に反映させることが適当ではないかということを今検討として考えているところでございます。
  少し長くなってしまいましたが,事務局からの説明は以上でございます。
【黒田副部会長】    それでは,本日は私が進行役を務めさせていただきます。
  今説明のありました内容につきまして,実態調査と,それから,大学運営の一層の改善・充実の方向性を御議論いただくということになっていますので,まず,皆さんから御意見をお伺いしたいと思います。机上の札を立てていただいて,御発言をお願いしたいと思います。
  では,小林委員,どうぞ。
【小林委員】    3ページ目のところの国が積極的な情報発信等を支援していくことが重要だというのはおっしゃるとおりだと思いますが,そのために,2ページ目のところに,外部の団体,機関等とも連携し,質の高い研修の機会を確保することが重要とあります。これもそのとおりだと思いますが,そのために,実際にもう国ができることというのはかなりあると思うんですね。例えば,インスティテューショナル・リサーチでいくと,私が知っているだけでもIR評価コンソーシアムとか,大学IRコンソーシアムとか,幾つか外部団体がもうできています。ただ,そういう情報については全く大学の一般の関係者に知られていないというのが現状じゃないかと思います。私もURAになるとどういう団体があるかとか,どういう研修の機会があるかというのは全く承知しておりませんし,多分そういう段階だと思いますので,積極的にこういった情報,どのような研修の機会があるか,どういう団体があるかということを情報発信していただければと思います。
  以上です。
【黒田副部会長】    ありがとうございました。
  ほか,長谷山委員,どうぞ。
【長谷山委員】    まず,表の方から,表というか,調査の方からなんですが,感想といいますか,例えば,特に重要と考える職務とか,5ページですね,このグラフ,調査結果の方なんですが,一例ですが,国立大学の場合には研究管理ですとか,あるいは,その国際に関する職員の配置が重要と考えていると,私立大学はそうでもないと。ただ,これ私立大学は多分母数が非常に大きいので,総合大学と単科大学とか,機能別でかなり考え方が違うと思うので,例えば,この統計グラフだけを見て,私立大学では余り研究管理や国際化の支援の職員を欲してないという認識のもとに,どのようなサポートをしていこうかというように国が考えるというふうになると,これは少し誤解が生ずるおそれがありますので,やはり少し実際に方向性を定めていくとか,中身を少し精査していくという場合には,もう少しきめの細かい具体的な情報に基づいて議論を進めた方がいいと思います。これが1点です。
  それから,もう一つは,案の方の資料1-2の方ですけれども,先ほど小林委員も御指摘なさいましたが,3ページのところで,黒いひし形の二つ目ですか,国が事例収集,情報発信等支援していくことが重要ではないかと,これはそのとおりだと思うんです。
  ところが,一方で,その2ページ目の方の最初のダイヤのところでは,法令において資質・能力の向上を図るというようなことを規定すると,あるいは,3ページの方の3の事務組織等の見直しについての二つ目のダイヤのところで,結果は法令等に反映させることが適当ではないかとあります。
  そうすると,現実において考えた場合に,例えば,これこれこういう分野の職員はこういうスキルを備えていくべきだというものを定めて,それが満たされているかどうかを評価する。足りなければ,大学が研修の機会,教育の機会等を設けてやらなければならないというふうにその法令で定まったとすると,これは大学にとっては非常に困難な状況が生ずると思います。
  というのは,その専門性の高い職員を更に向上させる,あるいは,評価するということを,極端に言えば,専門性の低い職員がするというのは難しいわけですから,そのための,評価や教育のための組織や人員をまた用意しなければならないということになります。そうなると,やはり法令で定めて,その法令を満たしているかどうか,基準を満たしているかどうかを支援していくという方向をもし考えるのだとすれば,これはやはり,例えば,私立大学で言えば私立大学連盟とか,協会のようなところが,逆にそうした専門家を教育できるようなスキルの高い人材を確保して,教育や評価に向けて自発的に自律的に進めていくというような仕組み,その仕組みをつくるためのまさにその支援を国がしていただけないと,なかなかこれを現実の上でスタッフの向上につなげていくということは難しいのではないか。また,ここでもFDとかと同じで,評価疲れということが起きてしまうのではないかということが,今のところかすかな懸念かもしれませんが,ありますので,やはりほかの問題でも同じですけれども,大学が自律的にその基準を定めて,職員のスキル向上に努力をしていくと。そこで必要となってくることを国が支援していただくというような関係で,この問題も進めていただければと思います。以上です。
【黒田副部会長】    ありがとうございました。
  それでは,篠田委員,どうぞ。
【篠田委員】    私も実態調査の方から少し感想的な発言をしたいと思いますけれども,現在専門職員を配置している状況については,最初の2番目のシートで出されておりますけれども,これを拝見しますと,図書だとか,学生の健康管理だとか,既存の資格をベースにして専門職というようなところが現実的には多いというふうに,情報もそうなんですけれども,読み取れるんですが,非常に関心を持って見ましたのは,シートの6番目の今後配置したい職務で特に重要と考える専門的な職員というところなんですけれども,ここではむしろIRの力ですとか,執行部判断に対する総合的な補佐というような形で,この,何といいますか,特定の分野の専門職というよりは,学長や,私立大学の場合には理事長のリーダーシップを支えて,大学運営全体の実態を分析しながら,政策提言をしてくというような領域のところに,全体の大学としては関心というか,強めていきたいという,このあたりのところが非常に注目する。国立大学で見れば,研究とか国際とかというところが突出をしているわけですけれども,全体的にはそこのところに今後の専門的な職員の力をつけていきたいという傾向が読み取れるというのは非常に重要で,これは学校教育法が改定をされて,学長や理事長のリーダーシップが強化をして,大学改革を推進していかなければいけないというところに,職員の役割や力をどのように高めていくのかという点で言うと,一つの方向が出ている,傾向が出ているのじゃないかなと思います。
  こういうふうに見てみますと,研究や国際やという特定分野の専門職育成をしていくというのと,今まで大学アドミニストレーターと言われているようなゼネラリスト的な要素も持った専門職を養成しているという,二つの側面があるというふうに見ますと,今日の提起にありますような形で,それをどのように専門職として育成をし,養成をしていくのかというのを,今の段階ではっきり方向付けを定義するというのはやはり難しい段階にあるというふうには思います。環境整備ということで取り組んでいかれるというのは適切な方向じゃないかなというふうに思いますけれども,そうであるが故に,きちんと大学の職員の力を,やはり意識的に各大学が努力をして高めていかなければいけないということで,本文の2ページの最初の四角のところで提起をしているように,大学が大学運営に必要な職員の資質・能力の向上を図るために,研修について企画して,その機会を確保するということを明確にやはり方向付けをしていくということが非常に重要で,しかも,私が大学運営に必要な職員の資質・能力というふうに,大学の業務というふうに限定をせずに,大学運営をサポートする職員の力というのに着目をしていただいたというのも非常に大きな意味があると思います。積極的な文言に是非していただいて,各大学がFDと並んで,職員の育成というところに目を向けて,必要な予算や資金が投下できるような努力をするような方向を明示していくということはこれからの大学の改革にとって非常に重要なところじゃないかなというふうに思います。
  それから,三つ目の事務組織の見直しのとこで,こちらも二つ,最後の3ページ目の最後のひし形のところで結論が提起をされておりますけれども,事務組織や事務職員が目標達成に向けてこれまで以上に積極的な役割を担うということで,大学運営の一翼を担う機能というふうに提起をしていただいたというのも,これも非常に大きな方向付けだということで,大学の経営や教学運営に職員が参画をしていくという方向をやはりきちんと位置付けられた。これは一方で職員が力をつけて,もう一方でやはり大学の運営や教学の運営にふさわしい形で参画をしていくというのは非常に重要で,改革の推進にとって大切な意味を持ってくるんじゃないかということで,それを法令に是非反映をさせていただきたいと思います。
  ただ,この理由付けといいますか,根拠のところなんですけれども,前回のといいますか,この問題が出ました7月の中央教育審議会のところでは,その理由についてはっきり提起をされておりまして,あそこでは四つの箱で説明をされていましたけれども,1番目の箱では,現在大学設置基準の第41条で,職員が事務を処理するという規定になっているんだけれども,しかし,二つ目の箱のところで,実際には大学においては様々な政策決定に関与をして,これまで以上に運営への参画が求められる状況なんだけれども,それをデータで示しながら,しかし,三つ目の箱で,学内で十分な活躍の場がなくて,教員を一方的にサポートする役割にとどまっていると。このことが大学設置基準の規定とそごを来していて,職員の期待の役割や役割の重要性にふさわしい規定に改めるべきだというふうな,四つの箱で明確な方向付けといいますか,この職員の事務組織の位置付けの改定の論拠といいますかね,を明示しております。だから,3のところについても,そのあたりの理由,根拠について,今までの議論を踏まえた形での記述を是非お願いをしたいと思います。
  と申しますのは,規定を変えるだけではなくて,このことによって全国の職員のところが事務組織を積極的に位置付けていく契機につながっていくというメッセージをはっきりと私は出すべきだなというふうに思います。
  以上,意見として発言させていただきました。
【黒田副部会長】    ありがとうございました。
  それでは,川嶋委員。
【川嶋委員】    ありがとうございます。手短に3点申し上げます。1点目は,事務職員の方のスキルの高度化,知識の高度化というのは当然人員増強が望めない現在の環境下では生産性を上げるという意味では非常に重要なことと理解しています。その際,教員と事務職員の仕事を再検討する過程の中で,大学の総人件費を教員と事務職員,あるいは,ここにある専門的職員にどのように再配分していくかという,非常に戦略的な思考法がこれから求められると考えております。
  それから,2点目はその事務職員の高度化,あるいは,専門的な職員を配置するということに関しては,今のところそういう方のポストをつくった際に,どういう処遇にするかというところが不明確です。教員は今裁量労働制になっているわけですけれども,大学で専門的な知識や経験を持った人を採用するときには,いわゆる事務職員の方には裁量労働制を適用できないということがありますので,将来的には教員以外の人にも大学で働いている人の裁量労働制が適用できるようなことも是非検討していただきたいと思います。
  3点目は小林委員の御発言に関連して,情報発信とか,研究とか,連携とかといった際に,国は支援するというふうに書いてあるんですけれども,では,どの組織が実際にそういう一種のナショナルセンター的な役割を担うのかという点に関して,この4月1日から大学評価・学位授与機構と国立大学財務経営センターが統合して,大学改革支援・学位授与機構というふうに改組されるわけです。各種大学団体も既に研修を行っていましたけれども,従前は国立大学財務経営支援センターも各種の研修を行っておりました。それから,機構は大学ポートレートセンターとして,大学の情報発信の中心的な役割を担っておりますので,今度新しく発足する大学改革支援・学位授与機構の役割の中に今日提案されているような内容の機能を盛り込んではどうか。今は評価と学位授与の活動で余裕はないのかもしれませんが,機構側からは,更に業務が増えるのかという御不満があるかもしれませんけれども,大学改革支援という名称がついているからには,やはりそういう役割も必要なのではないかなというふうに思いました。以上です。
【黒田副部会長】    では,濱名委員。
【濱名委員】    調査の傾向を見ると,誠に残念ながら,余り重視されていないと思われます。一言で言えば,高度専門性に対するニーズもなければ,育成のイメージも持たれていないというのが多数派の大学の現状だと思います。それでいいということではないのですが,では,何からやればいいのか。小林委員が言われたみたいに,知らないという状態のところ,つまり,今配置していない大学は,その中身であるとか,そういう業務を導入すると大学にどういうメリットがあるかという認識が余りないというところも考えられるので,情報発信は必要だと思います。
  他方,多数派の大学がそういう職員を持っていない段階で,法令に書いたらできるようになるのかというと,そこは非常に大きな問題で,ジョブ・デスクリプションもできていない,どのような内容を身に付けなければできない仕事なのかということが明確でないという状態なわけです。
  ところが,残念ながら,大学職員の育成のための大学院は,私立大学を中心にかなりできましたけれども,かなりうまくいっていない。つまり,修士号等々については,大学側のニーズもないとしたら,どうすればいいのか。やはり育成のことを考えなきゃいけないので,私はその川嶋委員が言われていることをやってもらわなきゃいけないのです。同時に,今配置されていない大学が始めるときに,SDで人を呼んで話をしてもらったらスタートができるのか,あるいは,大学院に行かないとできないのかと,これでは余りにもハードルが高いので,やはり文部科学省が持っている制度で言えば,履修証明プログラムとかの形で,一定の内容を修めることが必要な条件であるということに対して,通知で書くだけではなく,履修証明で120時間以上,初級なり,中級なり,あるいは,もっと長いものをつくられてもいいのですけれども,つくれる大学にそうしたことをやってもらわないといけないのではないでしょうか。東京に1か所だけセンターをつくっても,地方の大学は人を派遣できませんし,単発の研修のSDプログラムに行けばできるようになるかと,そうでもありません。やはり,標準化して,時間をかけて,ある程度の体系化したものに対して履修できるような制度を推奨していくべきであるし,そうすると,逆に言うと,行かせる人間が,大学が指名して行かせるということだけではなくて,その履修証明を持つ者が職員の中から出てくれば,今回のBP(職業実践力育成プログラム)じゃないのですけれども,文部科学省は文部科学省でそれを奨励すると言うのだったら,そういうプログラムを受けようとしている現職職員に対しては受講料をサポートするとか,そういう形で育てていかないと,通知を出すだけで努力しなさいでは不十分だと思いますし,具体的なそのジョブ・デスクリプションに合ったプログラム開発と,それに合わせた形でのショートのサーティフィケート・プログラムを作っていくということが処遇でありますとか,更に高度化を目指していく上で必要条件になっていくんじゃないかと思います。
  やはり専門職を育成していくためには,そのジョブ・デスクリプションと,それをどのように育成していくのかというプログラム化がなければ,それは専門性を高めていくということにはならないし,ある程度の標準化ができなければ,職種として定着することも将来的には難しいのではないか。是非そういうことを考えていただければと思います。
【黒田副部会長】    ありがとうございました。
  それでは,羽入委員。
【羽入委員】    説明があったのかもしれませんが,一つ,この調査に関する質問と,それから,2ページ目の最初の項目についての感想です。
  一つ質問は,この表の中にある研究管理というのが具体的に何なのかということを少し教えていただきたいと思います。研究技術というのは,併せて教えていただければと思いますが,よろしいでしょうか。
【遠藤大学振興課課長補佐】    済みません。お手元に配付させていただいている別添という縦紙の資料を御覧いただけますでしょうか。こちらのそれぞれの職務について細かく申し上げていなかったので,最後の1枚ものの紙でつけさせていただいているものを御覧ください。
  この中で,14と15に当たるものが研究管理と研究技術に関するものでございまして,特に研究管理については,米印の5のところで書かせていただいているとおり,大学の研究活動全体のマネジメントに関する職務を指すということで,具体的な職名として,リサーチ・アドミニストレーター等が想定されると。もちろん大学によっていろいろな職名でやられているところがあろうかと思いますので,こういった形で書かせていただいていますし,研究技術についても,下に書かせていただいているとおり,技術的な業務,大型の機械を動かしたりというようなものもあろうかと思います。知的基盤の整備に関する職務を指すということで,具体的な職名として,サイエンステクニシャン等が想定されるということで,今回の調査にかけさせていただいてございます。
【羽入委員】    ありがとうございます。そのサイエンステクニシャンということだとすると,具体的にテクニシャンをどのように処遇するかということが今多分大きな問題になろうかと思います。2ページの最初の項目についてですが,そのように伺いますと,SDと,それから,FDが重なる部分があると書いてありまして,これ重なる部分というよりも,むしろ新しい職種が必要になってくるのではないかと考えられます。恐らくこれまでの先生方の御発言に重なるのではないかと思いますけれども,研究を管理するということ,それから,技術の高度化を促進すること,これが事務職員としても非常に重要な役割を果たしてくるように思います。
  それで,もう一つ同時に,その技術的なこと,研究的なことと同時に,国際的な事柄についても能力が求められているのが現状ではないかというふうに思います。もしこの事務組織改革に関して,学長のリーダーシップに基づく運営体制の強化というようなことになるとすると,事務職員という名称がよいのかどうかは別として,非常に専門的なスキル,専門というのは狭い意味での専門ということではなくて,研究を共に行う,あるいは,教育を共に行うスタッフとしての職務が非常に重視されてくるべきではないかというふうに思います。
  したがって,これまでのSD,FDという区別を少し超えた視点が重要なのではないかと今考えております。ありがとうございました。
【黒田副部会長】    ありがとうございました。金子委員。
【金子委員】    今までの御意見,そのとおりだと思うんです。ただ,私は基本的にやはり日本の大学事務職員を考えるときに,一番大きな問題は,やはり日本の企業と非常に似ているところがありまして,スペシャリストを最初から入れるというよりは,一般的な採用をしていて,いろいろな現場を経験させることによってだんだんと専門特化していく,あるいは管理職になっていくというキャリアが標準的なんだと思うんですね。私どもは七,八年前に1回大学職員に対する調査をやりました。やはりそういうキャリアになっているので,この調査のように,初めから専門職があるということを想定して,どういう専門職がありますかとか聞くと,やはり答えは,これは非常に意味があるとは思うんですけれども,実は必ずしも実態の全体を表しているわけではないという問題があるんだと思います。
  それから,職員の育成に関しても,様々なところで行われていますが,それについてもまだ実態としてよく分からないところもかなりありまして,知らせるというだけではなく,何が行われているかもう少し調査する必要があります。例えば,大学内での研修も相当やられているんですが,どうも,例えば,効果が薄いというような,余り評価は高くないとか,そのような結果も一応あるのはあるので,これについては更に調査研究を,中央教育審議会でやるのか,あるいは,今度できる大学改革支援機構でやるのか分かりませんが,もう少し進めるべきだと思います。
  国際的に言うと,やはりアメリカは比較的専門職化していて,専門職団体がやはりかなり積極的な訓練もやっていて,独自の成人教育単位みたいなのを,大会,そういうものの集会に参加すると出すとか,そのようなことまでやっているんですが,ヨーロッパの方はどうも余りそこまでそういうことはやっていないらしくて,この間ドイツの人に聞いたら,やはりそれはやっていないというようなことを言っていました。やはり国際的にはまだ完全にこういったことが専門職化するということが進んでいないのではないかなと思います。日本がやらなくていいということではありませんが,そこは少し総合的に調査しながら進むべきではないかと思います。
  ただ少し気になったのは,3ページの,先ほども少し議論になりましたが,星の二つ目ですが,今後のあるべき姿について更に検討を深め,その結果を法令等に反映させることが適当ではないかということです。これは法令等に反映させるといいますと,具体的には裁量労働制,ないし,先ほどもお話ありましたが,大学設置基準における事務局の規定,ないし,それから,あともう一つ,図書館についても専門職の規定が入っているんですが,そのようなところをどういうふうに変えるかという問題ではないかと思うんですが,この文面の読み方ですが,要するに,そういった規定の改定は今はやらないというふうに読んでいいんでしょうか。要するに,今は検討を進める,深めるというところが主であって,それをした後に具体的なその法令等への反映を考えると読んでよろしいんでしょうか。あるいは,並列的に検討を深めて,同時に法令等に反映するということも考える,そのように読むべきなのでしょうか。ここは少し意味が違ってくると思うんですけれども,ここら辺いかがでしょうか。
【遠藤大学振興課課長補佐】    最後の御指摘,特に事務組織の見直しについてということでございますけれども,こちらについては,同時に並行でということではなくて,まずはその事務組織の在り方,あとは,事務職員の在り方,今先生方に御指摘いただいたとおり,非常にまだ多様な現状あろうかと思います。ですので,このような現状を踏まえて,事務組織の在り方,事務職員の在り方をちゃんと検討させていただいた上で,今後必要な法令等に反映させていってはどうかということで御提示をさせていただいているというものでございます。
【金子委員】    分かりました。
【黒田副部会長】    それでは,美馬委員。
【美馬委員】    この専門職員について,ジョブ・デスクリプションが明確でないとか,標準化すべきという御意見あって,私もそのとおりだと思います。その後,この人材の流動化が必要だと思います。学内だけで研修するだけでなく,それがキャリアアップ,スキルアップに常につながっていくということ。その育成以上にそういう人たちが,力を持った人たちがそれぞれ動けるような社会的な環境を整えることによって,更に違う組織を行って,更にその中から外の目,あるいは,今までの組織との違いを見つつ,その中を改革していくということ。公立大学,私立大学でもう固定化されているような,そのようなものを,更にキャリアアップできるような環境,そのためには,ある意味の標準化や,そのサーティフィケートを出していくということは必要だと思います。
  以上です。
【黒田副部会長】    ありがとうございました。
  それでは,安部委員,どうぞ。
【安部委員】    この調査について質問と感想と,少し意見を述べさせていただきます。まず,質問なんですけれども,この調査の回答大学数なんです。これ悉皆(しっかい)でやられてこれだけの回答数ということですよね。
【遠藤大学振興課課長補佐】    この調査は抽出でさせていただいてございます。
【安部委員】    そうですか,分かりました。そのような調査なんですけれども,例えば,6ページの今後配置したい重要と考える専門職員の中で,やはり突出しているのが,インスティテューショナル・リサーチをする職員とか,あるいは,国際とか,それから,入学者の受入れ,教育課程の編成というものに対して重要と考えるというアンケート結果なんですが,こういう結果から考えると,身分は職員であっても,特にインスティテューショナル・リサーチャーになると,研究者としての資質というのは非常に重要であると。例えば,諸外国を見ますと,日本は教員と職員がはっきりと分かれているんですけれども,職員と教員の垣根というものをどういうふうに検討するべきかということは,今後大学の学長のガバナンスを支える職員等々がどういう資質かというときに,どうしても設置基準上にも教員と職員という分断が問題ではないかなという気がしますし,その垣根を取る必要もあるので,特にSDというものの検討という,その内容というのを国としても方針として出していただきたいと,私はそう思います。
  以上,それが意見です。
【黒田副部会長】    最後に,二宮委員,どうぞ。
【二宮委員】    ありがとうございます。1点は,去年の4月から新しい教授会というか,教授会の組織,権限,あるいは,位置付けというものと,大学運営における学長との関係でいろいろ考えてきましたけれども,専門的職員が重要であることは誰も異論はないと思うんですけれども,そういう新しい組織の中にい続けたときに,専門的職員は教授会のメンバーであるのかないのか。職員は教授会のメンバーであるかないかといったら,当然メンバーではないと。ところが,委員会構成は,例えば,教育課程を検討する委員会とか,様々な委員会構成になると,教職協働ということで,職員の人にも対等なメンバーとして入っていただくという形になって,その辺の,入っている職員の人も戸惑っている。伝統的な先生にはなかなか文句は言えないということもあって,しかも,教え子が働いていたらなお一層言えないといったような話もあったりしますが,そういうことで,新しい体制になったときに,ガバナンスとリーダーシップを基に大学改革をしっかりやっていこうと,あるいは,教育に責任を持っていこうというときに,職員は教員とどういう位置関係になるのかということがまずは一つはあった方がいいんじゃないかと思います。先ほどの指摘のとおりだと思います。それを踏まえた上で,専門的職員は先生としては雇用しない。だけれども,では,どこに位置づくのかということを,少し組織の位置付けの中で,職務ということなんでしょうけれども,御議論しておいた上で,各大学で紹介していくとか,そういうことしないといけないんじゃないかなという印象を持ちました。
  2点目は,その専門的職員の調査ですが,これまでの議論を踏まえた調査で,昨年の9月ですから,新しい体制の調査なんですが,待遇というか,身分が有期雇用なのかどうかという実態が全然調べられていません。有期雇用であるかないかということは,普通の大学と職員の人とも全然違いますし,教員でも有期雇用とそうでない人は全然違いますので,その現在の弾力化された雇用形態の中で,そういうものをよく調べた上で組み合わせていかないと,大学はパーマネントに雇わなくてはいけないみたいな,そういう体制が組まれていないと認証評価のときに厳しく指摘されるといったことになってしまいますので,その辺は丁寧に,親切に,考えていただくことも大切かなと思いました。印象です。
【黒田副部会長】    ありがとうございました。予定の時間を過ぎていますので,この辺で一応この議論を終わりにしたいと思いますが,この件につきましては,今いろいろと御意見があったとおり,非常に大学の営業に難しい課題を投げかけていると思うんですね。この実態調査を見ましても,実態調査はあくまでも平均的にやられていますので,私立大学は恐らく規模別でやるとこれ相当大きな開きが出てくると思います。ですから,そういう意味で,もう少し私立大学の方については細かいデータが必要かなという感じを受けています。
  それから,この大学の運営について,事務職か研究職かということが大きな問題になってくるんですが,これは分野によって,その職種によって違うと思うんですが,私のところでやりました,図書館のサブジェクト・ライブラリアン,これはアメリカにあって,研究者をそこで援助しているんですが,これは日本では組織的には置く場所がないんです。教員でもない,事務職員でもないということ,だから,両生動物だと言っているんですけれどもね,一応私のところは教員の中から選んで,任期付でサブジェクト・ライブラリアンをやってもらっているんですけれども,その制度というのをひとつこの図書館業務をやるにしても,日本ではどう考えるかという。先ほど話ありましたように,教員の場合の勤務体制と,事務職員になったときの勤務体制,全く違いますので,これはどこでどう調整するかということ,必要だろうと思っています。
  この件は非常に重要なことでありますし,大学改革の今後の方向性を決める大きな問題でもありますので,今月開催されます大学分科会にもお諮りをして,御意見を聞くということになっております。今日頂きました御意見を大学分科会の方にも反映させていただきながら,より具体的な案を御提示いただくということにしたいと思いますが,この親委員会の大学分科会で具体的にこれまた諮るということでありますので,よろしくお願いしたいと思います。


(2)三つのポリシーに基づく大学教育の実現について,事務局から資料2-1~資料2-4に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【黒田副部会長】    それでは,次の議題に移ります。前から議論になっています三つのポリシーについてのガイドラインのことでありますが,今まで何回かガイドラインの骨子案について御議論いただいてきましたけれども,本日は全体の御意見を踏まえて,ガイドラインの素案を御説明いただいて,取りまとめに向けた更なる意見を頂きたいと思いますので,まず,事務局から説明をお願いいたします。
【北岡大学振興課課長補佐】    大学振興課でございます。
  ただいま黒田副部会長からお話いただきましたように,これまで大学教育部会におきましてこの三つのポリシーの策定及び運用に関するガイドラインについて様々な御意見を賜ってきたところでございます。
  本日は昨年末の本部会におきましてお示しいたしました骨子案に肉付けをした形で素案という形でお示しさせていただいております。前回の骨子案からは,まさにその本部会における御議論,これを踏まえた形で肉付けをさせていただいているところでございます。
  資料につきましては,資料の2-1から2-4ということで,四つの資料ございますが,主に資料の2-1と2-2に基づいて御説明いたします。
  まず,資料の2-1を御覧ください。
  1ページ目,御覧いただきますと,まず「はじめに」というところがございます。こちらで本ガイドラインの位置付けということで御説明をさせていただいております。このガイドラインにつきましては,従前この三つのポリシーの策定の重要性,これは中央教育審議会における累次の答申で指摘されてきたこと,ただ,一方で,大学における取組がなされているものの,三つのポリシーのその内容,これは抽象的な文言にとどまるものや相互の関連性が意識されていないものも多いこと,こういうことの指摘があるということを述べた上で,現状その高等教育学校における教育,それが平成25年度の入学者から現行の学習指導要領が適用されることによりまして,平成28年度,この4月からその現行の学習指導要領を受けた生徒が大学に入学し,学生として教育を受けていくという,このような初等中等教育における状況を御説明しております。
  このような初等中等教育における変化を踏まえた大学教育の改善,これはまさに高大接続改革の議論の観点からも非常に重要な課題であるという問題意識のもとでこのガイドラインの策定の位置付けというものを説明させていただいております。
  この1ページ目真ん中ほどにございます,「本ガイドラインは」というところにございますが,このガイドラインの目的というものは,今後の各大学における三つのポリシーの策定と運用,その指針となるようにしたいということを明示しております。実際のガイドラインにつきましては,個々の建学の精神や強み,あるいは,その特色等を踏まえながら,三つのポリシーが適切に策定されること,それらに沿った充実した大学教育が展開されること,これを期待するものとして書かせていただいております。
  次に,1番でございますが,三つのポリシーの一体的な策定の意義につきましては,前回お示しいたしました骨子案から大きく変更を加えているところはございません。ですので,本日は時間の関係もございますので,説明は省略させていただきます。
  続きまして,3ページの下ほどから三つのポリシーの策定に当たり留意すべき事項ということをお示しいたしております。
  このうち,4ページを御覧ください。
  まず,三つのポリシーの策定単位でございます。こちらにつきましては,この一つ目の丸の2行目にございますように,平成17年の中央教育審議会答申「我が国の高等教育の将来像」におきまして,今後の大学教育については,学位の取得を目指す学生の視点に立って,学位取得のために求められる知識・能力をあらかじめ明示し,学生が当該知識・能力を身につけるための教育課程を体系的に整備すること,この重要性が提言されております。
  これらを踏まえまして,三つのポリシーの策定の単位の基本といたしましては,このガイドラインにおきましては,授与される学位の専攻分野ごとの入学から卒業までの課程を学位プログラムということで言葉の定義をさせていただきまして,その単位ごとに策定されることというものが望ましいという考え方をお示ししております。
  その二つ目のぽつでございますが,「なお」とありますように,必ずしも三つのポリシー全てが同一の単位で策定される必要はないということも明示させていただいております。例えば,入学者が幅広い分野の知見に触れながら,自らの適性や関心等に基づき専攻分野を決めることができるよう,アドミッション・ポリシーにおいて入学者の募集単位を学位プログラムを超えて大くくり化している場合など,こういう場合におきましては,ポリシー間での策定単位というものは異なる。つまりは,ディプロマとカリキュラム・ポリシー,あるいは,それと,アドミッション・ポリシーが必ずしも1対1の対応にはなっていないこともあり得るということを述べさせていただいております。
  続きまして,括弧の三番,三つのポリシーの策定に当たっての個別留意事項でございます。
  まず,ディプロマ・ポリシーにつきましては,この4ページの下のところにございますが,一つ目のぽつで書かせていただいておりますように,各大学の教育に関する内部質保証のためのPDCAサイクルの起点として機能するよう,学生が身に付けるべき資質・能力の目標を明確化するということを書かせていただいております。
  また,「何ができるようになるか」に力点を置き,どのような学修成果を上げれば学位を授与するのかという方針をできる限り具体的に示すこととして,その際,学士課程答申で示されました,「各専攻分野を通じて培う学士力~学士課程共通の学習成果に関する参考指針~」であるとか,あるいは,日本学術会議が定めておられる「大学教育の分野別質保証のための教育課程編成上の参照基準」を参考とすることが考えられるということを明示させていただいております。
  続きまして,3番の三つのポリシーの運用に当たり留意すべき事項でございます。5ページ目の真ん中下ほどにございます。
  まず,この括弧の一番,三つのポリシーに基づく大学教育の充実というところでございまして,この一つ目の丸の2行目を御覧ください。大学教育に関する内部質保証を確立することが必要であるとした上で,その中の「D」に当たる体系的で組織的な教育の実施の過程においては,学生の学修成果に関してディプロマ・ポリシーやカリキュラム・ポリシーを踏まえたもう一つのPDCAサイクルを機能させることが求められることに十分留意する必要があるということでお示ししております。
  こちら,資料の2-2としてお配りしております,「三つのポリシー」に基づく大学教育改革の実現のイメージというものを御覧ください。これは前回の審議におきまして二つのポンチ絵という形でお示しさせていただいたものでございます。今回も1ページ,2ページということで,二つのポンチ絵としてお示ししておるところでございますが,前回の御審議におきましては,これら二つの関係性が少し分かりにくいのではないかという御指摘や,あるいは,このポンチ絵の中でお示ししている色遣いというところの意味合いを少し整理すべきだというふうな御意見がございました。それを踏まえまして,本日この二つのPDCAというもので,関係性というものをより分かりやすくということでお示しさせていただいているものでございます。
  まず,資料2-2の1ページ目を御覧ください。
  これは大学教育に関する内部質保証のPDCAサイクルということで,大学教育における学士課程教育のプログラム,そのPDCAの起点としてこの三つのポリシーというものが機能するというような関係性をお示ししたものでございます。
  このディプロマ・ポリシー,カリキュラム・ポリシー,アドミッション・ポリシー,これらに基づきまして,各大学における大学教育,それを展開されるということになります。特にこのDの部分,「三つのポリシーに基づく入学者選抜や体系的で組織的な教育の実施」につきましては,学生の学修成果に着目した形で,2ページ目にございますPDCAサイクル,これらが内包されるというような関係性をお示ししております。
  2ページ目に関しましては,今申し上げましたように,学生の学修成果の部分に着目した形でのPDCAでございますが,まず,Pの部分で,体系的で組織的な教育の計画ということで,このディプロマ・ポリシーにおきまして学修成果の目標であるとか,あるいは,カリキュラム・ポリシーにおきましてディプロマ・ポリシーを実現するための教育課程の編成実施の方針,こういうものを具体的にお示しするというふうな考え方を示させていただいております。
  また,このディプロマ・ポリシーやカリキュラム・ポリシーを実現するために,それを踏まえた入学者受入れの方針をアドミッション・ポリシーにおいてお示しした上で,それに基づく実際の入学者選抜を行っていただくということ。
  また,チェックの機能といたしましては,このディプロマ・ポリシーの中に学位を授与するための評価,アセスメントとしての基準を盛り込んだり,あるいはカリキュラム・ポリシーの中には,そのディプロマ・ポリシーを実現するための学生の個々の学修成果の評価の方針というものを盛り込んでいただいた上で,具体的な取り組みといたしまして,各授業における評価であるとか,あるいは,そのカリキュラム全体における学修成果の評価を踏まえた学位授与という展開,活動に展開していただくという関係性をお示ししておるところでございます。
  資料2-1にお戻りいただけますでしょうか。6ページを御覧ください。続きになりますが,この三つのポリシーに基づく入学者選抜及び体系的で組織的な教育の実施ということで,三つのポリシーに基づく各大学の教育活動を展開していただくに当たっての留意点ということでお示ししておるところでございます。
  こちら,四角の枠囲みの中は,基本的に前回お示しした骨子案でも記載させていただいた内容でございます。しかし,前回の骨子案では入学者選抜の部分についての記載が少し不十分でございましたので,その部分について,一つ目のぽつ,二つ目のぽつ,この二つのぽつを追加させていただいております。
  また,6ページの下の方におきましては,各大学においてその学生が何を身に付けたかという観点を重視した学修成果の把握・評価,また,どのような評価に基づき大学として学位を授与したかという説明責任を果たすことの重要性について述べているところでございます。
  この記述自体は前回の骨子案でもお示ししておりましたが,この四角の枠囲みの中で,学修成果の具体的な把握・評価の方法といたしまして,ルーブリック,アセスメント・テスト,このような直接的な方法と,学修行動調査のような間接的な方法ということで,直接的な評価の方法,あるいは,間接的な評価の方法というものを分けてお示ししておるところでございます。
  また,二つ目のぽつにあります,個々の学生による学習履歴の記録,振り返り,学修デザインの支援ということで,具体的な事例といたしまして,学修ポートフォリオの活用という言葉を追加させていただいております。
  続きまして,7ページを御覧ください。こちら三つのポリシーに基づく大学の取組の自己点検・評価と改善,また,情報の積極的な発信について述べておるところでございます。こちらの記載につきましても,前回の骨子案から大きく変わるところはございませんが,最後の丸,この「さらに」という段落を御覧ください。この二つ目の文,「各大学においては」というところを新たに追加させていただいております。「各大学においては,様々な手段を活用しながら,自らの教育理念やそれを踏まえた教育活動,教育環境等の実情,あるいは,学生の学修状況等について,より分かりやすく積極的な情報発信に努めることが求められる」ということで,従前本部会におきましても,大学のその教育情報の積極的な発信につきましては,その必要性,重要性というものを御議論いただいていたところでございますので,それを踏まえた形でこちらの記述を追加させていただいております。
  以上,前回の骨子案からの変更点について御説明させていただきました。こちらのガイドラインにつきましては,今年度中の取りまとめを目指して今御審議いただいているところでございますが,本日の御意見も踏まえまして,また次回,本部会におきまして,より具体の案という形でお示し,更に御審議を深めていただきたいと考えているところでございます。
  事務局からの説明は以上でございます。
【黒田副部会長】    ありがとうございました。三つのポリシーについて,より具体的な案が出てきましたけれども,皆さんからこれについて御意見ありましたら御発表をお願いします。
  では,濱名委員,どうぞ。
【濱名委員】    まず,スケジュールのことを少し確認しておきたいのですけれども,大学関係者が一番不安を覚えているのは,このガイドラインをいつ出すのかということと,いつから適用するのかということなのですね。3月までに間に合わせるというスケジュールを我々は聞いているのですが,28年度から適用していくとなると,例えば,順番から言うと,DP,CP,APという順番でというのを書いているわけですけれども,最初に期限が来るのが29年度の大学入学者選抜要綱に基づいて,APの公表が5月,6月出てくるということになるのではないかということが大変プレッシャーになっているのですけれども,そのあたりのスケジュール感について明確にしていただきたいと思います。
  また今日意見いただいて次回,と話がありましたが,いつ通知として出すつもりなのかというところがよく分からないのですね。ですから,それを最初に明確にしていただきたいということで,ほかにもあるのですが,まずそこがスタートラインで,その上で,まとめ方が大分変わってくるかと思うので,そこからお伺いします。
【北岡大学振興課課長補佐】    ただいま濱名委員から御質問いただきましたスケジュールでございますが,こちらは本年度中に関係省令を改正いたしまして,各大学に三つのポリシーの策定及び公表というものを義務付けるということ。それと,併せて今年度中にこのガイドラインを策定するということが現状スケジュールとして考えているところでございます。
  実際の法令の適用につきましては,当然各大学における御準備,あるいは,御議論というものが必要かと考えておりますので,事務局といたしましては,平成29年4月,1年間の施行準備を置いての適用というものを考えているところでございます。
【濱名委員】    ということは,入試について言えば,30年度入試のAPから適用というのが公表として最初に来るデッドラインと考えていいでしょうか。28年度中に施行準備をして,29年4月にDPやCPを出すとすると,29年度のAPというのはもう28年の5月,6月に普通公表することになりますので,30年度のAPからの適用と考えてよろしいのですか。
【北岡大学振興課課長補佐】    アドミッション・ポリシーを踏まえて,各大学において具体的な選抜の方法等をまた明示いただくことになろうかと思います。アドミッション・ポリシーはじめ,三つのポリシーの策定が義務化されるというのが29年4月ということで今御説明申し上げましたので,それを踏まえた選抜の要項の中で,選抜の方法が大きく変わるということであれば,当然現状で言うと2年前ルールが適用されますので,その現状のスケジュールに乗った形での選抜の実施ということになろうかと思っております。
  したがいまして,29年度入学者選抜で新しいアドミッション・ポリシーを踏まえた選抜が全て実現されるかというと,当然それはポリシーを踏まえた入学者選抜のありようの変え方にもよるかと思いますので,それはまた入学者選抜のルールにのっとったスケジュール感というところが適用されると考えております。
【濱名委員】    つまり,2年前ルールで言うと31年になってしまうのでね。だから,検討し始めて,準備期間も含めて,平成30年度入試から適用というと,不可能ではないし,準備を踏まえていうことになると思うのですけれども,そう解釈していいのでしょうか。そこは少し,責任のある回答していただいた方がいいと思うのですけれどもいかがでしょうか。
【北岡大学振興課課長補佐】    まず,アドミッション・ポリシーは入学者選抜の方法等々をここで決めて,それに基づいてやるというよりは,このアドミッション・ポリシーに基づいた入学者選抜の実施の方向性をまずお示しするものだと我々は理解しております。ですので,実際の入学者選抜実施要項は,このポリシーに基づいて策定されるということになるかと思いますので,各大学における入学者選抜実施要項の策定は平成29年4月以降になされるものではないかと考えております。
  その中で,先ほど申し上げました大きな選抜方法の変更等が伴わないものについては,2年前ルールによらず入学者選抜に適用することが可能かと思いますので,早ければ,29年度入試で実施される大学,あるいは,その次の30年度入試で実施される大学があるかと思いますが,入学者選抜方法の変更等が伴う場合は2年前に公表するというルールになっておりますので,その場合については,更に遅い適用になってくるということを考えております。
【濱名委員】    多分北岡課長補佐はその辺の流れを十分御理解になっていないようなのですが,実は今年度の入学者選抜要綱でも,私は橋田大学入試室長を某会議で質問したことがあって,2年前ルールと言いながら,この28年度入学者選抜要綱の中でも,もうこの28年度,5月,6月に公表されるもので,翌年3月のことについて論及するなと,予告であっても論及するべきではないのではないかということを申し上げたことがあるのですね。
  要するに,大学入学者選抜要綱が公表されるのを各大学は確認して準備しているもので,どうしても変えなきゃいけないような見落としがなければ,その準備しているものを6月に公表するのです。ですから,29年度入試の公表なんていうことは今できないのですよ。それを言うと,もう大変だから,3月に省令改正して通知したものを5月に間に合わせるというのは,実質的に大学をいじめているような感覚になるので,それは少し拙速にすぎるだろうと思います。私はそうなるかもしれないということで警告を発していたのですけれども,少しそこら辺については役所の中で整理していただく必要があると思うのですね。
  私は,現実的には,今北岡課長補佐が言われた根本的な方法の見直しができなかったとしても,29年度入試にこの3月に出た省令を適用するのはほぼ不可能じゃないかと思うのです。要するに,そこからDPを検討始めたら,2か月やそこらで拙速にDP,CP,APの見直しなんかできないと思うのです。本学はかなり急いでやっている方で,全国ではそんなに多くの大学はそれに準備できないと思うんです。
  ですから,そこを考えていただいて,スケジュール感については次回までに,2年前予告の問題と,三ポリシーを作るタイムスケジュールが,少し混乱して受け取られている向きがあるので,整理していただきたい,これはお願いしておきたいと思います。
【塩見大学振興課長】    申し訳ありません。少しそのあたり補足して説明させていただきますと,あのように申し上げましたのは,今回は三つのポリシーを一体的に策定するということの義務付けの省令改正を行って,その三つのポリシーが一体的な形で策定されているということについては,29年4月1日には担保されるようにしていただきたいということで,その準備を来年度1年間かけてやっていただきたいということであります。
  そのことと,それに基づいた入試をいつからスタートさせるか,具体的に入試の在り方をどう変えていくかということは,また少し性格が違う問題になってまいりますので,先ほど申し上げました2年前ルールのお話は,入試制度を大きく変える場合には,受験生への配慮から,2年前にそのことは予告するようなタイミングで企画をお願いしますということを申し上げているということでありますので,少し整理して議論いただいた方がよいかなと思っております。いずれにしても,今回お願いしておりますのは,三つのポリシーを29年4月時点では各大学できちんと整備いただいて,スタートしていただきたい,そのための準備期間として1年間,来年度準備いただけたらよいのではないかというふうに考えているということでございます。
【黒田副部会長】    よろしいですか。
【濱名委員】    本題に入ってよろしいでしょうか。質問として。大変御苦労いただいて,前回のものと比べるとかなりよくなったとは思うのですが,少し気になっておりますのは,まず,5ページ目の三つのポリシーのところで,カリキュラム・ポリシーについてという記述のところに,学修成果の評価の在り方等を具体的に示すというのが出てくるのですね。これは,前回ポンチ絵の中で,これを入れていると混乱しますということを御指摘申し上げて,ポンチ絵からは消えているのですけれども,本文の中では残っているのですね。
  それで,学修成果の評価の在り方というのは,実は,評価というのが学位プログラム全体の評価なのか,科目の評価なのか,学生個々の評価なのか。評価の位相の問題と混乱を生じやすいので,こういうところでこのように書いてしまうと,どのレベルの話をしているのか。カリキュラム・ポリシーで学修評価の在り方と書くと,厳格な成績評価,厳しく成績をつけるというようなもの,つまり,個々の学生の評価と結びついて考えられやすいので,この場所でこういうことを記載するのは非常にデリケートなことだと思います。
  他方,その後ろの方のまとめで,私は評価について一貫してずっと申し上げてきたのですけれども,6ページ目のところに,下の方の丸で作っていただいたところは大変いいのですが,この部分は何の評価にかかっているのかというのがやはり明確でありません。つまり,質的転換答申であったアセスメント・ポリシーの問題をどうしても今回も避けて通られるので,どこにかかるのか。つまり,学位プログラム全体の評価にかかるのか,あるいは,個々の授業科目の評価にかかっているのか,学生の評価にかかっているのか,そこらのことをまた読み間違えられると,この評価というのが,本来はPDCAのCとAが欠けているところをどう強化するかというのが質保証の大きな眼目だと思うのですけれども,肝腎要の評価の部分が,何についての記述なのかが不明確な状況です。それで,見出しを見ると,括弧の2で,三つのポリシーに基づく入学者選抜及び体系的で組織的な教育の実施というので,どこにかかっているのかということが非常に分かりにくいので,この点についてはきちんと考えていただきたいと思います。
  更に言えば,7ページ目,括弧の3の丸二つ目のパラグラフのところで,2番目の段落で,「また,全学的な方針や複数の学位プログラムを横断するような取組事項がある場合は,それらの成果の把握や大学レベルでの点検・評価にも取り組むことが求められる」とあります。
  ですから,要するに,学位プログラム単位の評価なのか,そのそれぞれの評価の位相に合った評価というのが,これだけあちらこちらに断片的に書かれていくと,評価についてのガイドラインの考え方が非常に分かりにくい。本来はやはり評価に関する項目を一つ立てて,そこの中で整理をすればもう少し分かりやすいのではないかと思うのですが,いかがでしょうか。
【黒田副部会長】    どうぞ。
【塩見大学振興課長】    その点に関しましては,実は今回資料2-2で2枚のポンチ絵をお示ししたところとも非常に関わりが深い部分でございまして,今濱名委員に御指摘いただきましたこの資料2-1の5ページ目のカリキュラム・ポリシーのところに,学修成果の評価というふうに書きましたのは,まさにここの部分につきましては,濱名委員もおっしゃっている学生の学修成果についてはこのカリキュラム・ポリシーの中でもきちんと意識していくべきではないかということでございます。
  それから,プログラム全体の評価につきましては,むしろこの資料2-2の1ページ目御覧いただきますと,これが学位プログラム全体としてのPDCAでございますけれども,このプログラム全体がきちんと回っているかということの評価という意味での評価と,先ほど申し上げました,この中ではDというところに黄色で囲っておりますけれども,学生に対する体系的で組織的な教育の実施ということが2枚目にあるわけでありまして,このDの中でもその学生への体系的,組織的な教育を実施していくに当たっては,PDCAサイクルがきちんと回る必要があるだろうと。そのときの学生の学修成果の評価というものが,ここで言うところのCのアセスメントの部分に当たるものだということで,委員,以前よりおっしゃっている二つの意味でのアセスメント,評価の考え方があるんだということをより明確にしたいという意図で作っているものであります。ですので,むしろ資料2-2のポンチ絵の1枚目のCPのところにも,学修成果の評価ということは入れた方が,かえってはっきりしたかもしれないなというふうに考えています。
【濱名委員】    なるほど。その辺少し見ていただいた方がいいと思うのは,資料2-1の方の3ページの下の,四角の2の上のところにも,「三つのポリシーの意義が十全に発揮されるよう,各大学においては,以下に示すような事項に留意しながらその効果的な策定・運用に取り組むことが求められる」とありますけれども,これも読みようによってはPDにしか見えないのですよ。だから,むしろこういうところでも,検証,改善とかという言葉を細かく入れていかないといけない。要するに,PDCAというサイクルに対するイメージが大学間で共有されているわけではない。ですから,今の塩見課長の御説明を聞くと分かるのですが,こういう答申であるとか,ポンチ絵というのは,見て,読んで理解できるように,できるだけその行間を埋めていっていただきたい,あるいは,全体の整合性が読んで分かる形にまとめていただきたいと思うのです。だから,私はやはりそのアセスメントについての考え方,あの丸をつけるのであれば,評価に対する基本的な考え方という項を起こして書かれた方が,細かいところが伝わるのではないかと思うのですがいかがでしょうか。
【黒田副部会長】    それはまた検討させてください。
  日比谷委員,どうぞ。
【日比谷委員】    ありがとうございます。4ページ,ポリシーの策定単位のところで,今回新しく入ったところだと思いますが,三つを全て同一の単位で策定する必要はなくて,入れていただいているんですけれども,何か少しかえって分かりにくくなったかなという感じもいたします。と申しますのは,ここ,このアドミッションの例が出ていますよね。大くくりに人を入れて,いろいろな関心に応じて,大学に入ってから専門を選ぶと。そうすると,どの専攻を選んだかによって,ディプロマ・ポリシーに掲げられているものが異なることを想定していると思うのは5ページの一番上で,「各専攻分野を通じて培う学士力」とか,学術会議の「参照基準」とか出ていますから,専攻の分野に作るんだなという感じがする。それのカリキュラム・ポリシーではよろしいんですが,一方,前回議論したことだと思いますが,やはり全学としてのこの大学のディプロマ・ポリシーというのも要るわけですよね。特に今回いろいろ入れていただいてよかったと思いますが,大学ごとの建学の精神であるとか,使命に基づいて,その自律性,独自性を発揮してくださいとも書いてらっしゃるわけですけれども,そうすると,やはり大学全体としてのディプロマ・ポリシーというものはそこを反映するわけで,複数のディプロマ・ポリシーが出るみたいなイメージになるんですが,ここのところの書き方をもう少し工夫していただかないと,幾つつくるのとか,どこでつくるのというような疑問が出ることを少し懸念いたします。
【黒田副部会長】    ありがとうございました。
  この件につきましても,今月開かれます大学分科会で再度意見を聴取するということになっています。大学分科会の方で具体的にまとめていただくということにしたいと思いますが,この点についてはそこで議論をしていただいた後,またこの大学教育部会の方へより具体的な案を出していただくということにしたいと思いますので,よろしくお願いしたいと思います。


(3)認証評価制度の改善について,事務局から資料3-1,資料3-2に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【黒田副部会長】    それでは,次の議題,認証評価制度の改善についてであります。本件につきましても,審議を重ねてきていただいているわけでありますが,骨子案を事務局で準備していただいておりますので,まずその説明をした後に議論をしたいと思います。余り時間がありませんので,端的に説明をお願いしたいと思います。
【伊藤高等教育政策室長】    失礼いたします。資料の3-1に基づきまして,認証評価制度の充実に向けて,骨子案を御説明申し上げたいと思います。こちらにつきましては,前回論点整理ということでお示ししたものに肉付けをして,今回骨子案としてお示しさせていただいているところでございます。
  早速でございますが,1ページ目をお開きください。
  新たに検討の背景・経緯というところを,項目を追加しております。こちらに検討の背景・経緯ということで,上から四つ目の丸までは平成16年度に第三者評価制度である認証評価制度が導入されて,これまでの取り組みについて記載させていただいております。現在2巡目ということで,日本においても評価が根付いて,各大学におきます教育研究活動の改善にこの評価を活用して,一定の成果が上がっているということ。また,認証評価機関におきましては,1巡目の評価活動等を踏まえて,評価項目の見直し,簡素化をこの2巡目において行っているという現状について記載させていただいております。
  そして,課題ということで,五つ目の丸でございますが,従前よりこの部会でも御指摘いただいております点を記載しております。現在認証評価制度に対して,依然として法令適合性等,外形的な評価項目等が多く,必ずしも教育研究活動の質的改善を中心としたものになっていないということ。また,この認証評価以外にも様々な評価・調査業務がございまして,評価疲れの問題,また,制度導入後10年経過ということでもありますが,社会一般におきます認証評価制度の認知度が不十分である,こういった課題も記載させていただいております。
  また,ということで,先ほどの御審議いただきました,大学改革という観点では,この高大接続改革等に始まります大学教育の質的改善の断行,また,この社会の対応にも,大学の機能の発揮ということで,大学のガバナンス改革の進展という観点を踏まえて,認証評価におきましても,大学における,大学による学生の学修成果の評価や,全学的な教学マネジメントの下の内部質保証の確立を重視した評価への転換が求められているということ,平成30年度から始まります3巡目の評価に向けて,この審議会での審議を実施してきたという経緯を記載させていただいております。
  2ページ目の2.以下は,前回同様の項目を引き続き記載させていただいております。まず,基本的な考え方というところで,1番目の丸でございます。大学の質保証に関しては,大学における自主的な,自律的な質保証への取組(内部質保証)が基本であるということで,これを重視した評価制度への転換ということ,また,評価項目,方法につきましても,三つのポリシーに基づく大学教育の質的転換を図るような評価制度への改善を図っていくということ。
  また,このような制度の発展を踏まえまして,内部質保証が有効に機能している大学に対しては評価の一層の効率化を進めるなど,評価の効率化への取組の加速という点。
  また,四つ目の丸にございます,「一方で」と,課題が見られる大学につきましては,評価機関においてのこの大学の取組を促進するようなフォローアップ体制の整備・充実等々記載させていただいております。
  具体的な項目といたしまして,3ページ目以降でございます。1番目の柱でございますけれども,全学的な改革サイクルを確立する評価制度への転換ということで,一つ目の項目に,大学評価基準への項目にかかる改善ということで,丸1にございますとおり,共通して認証評価機関において評価していただく項目の充実ということで,丸二つでございます。
  一つは,内部質保証につきまして,共通的に評価していただくよう,明確に位置付けるということ。二つ目は,三つのポリシーについての一体的策定,また,それに基づく教育研究活動の実施状況,これを評価していただくということ,二つ記載しております。
  また,二つ目の丸2で重点評価項目の設定ということでございますが,内部質保証の取組というのが設置後の質保証の基本ということから,認証評価の制度におきましても,各評価項目同率ではなくて,この項目を重点評価項目と明確に位置付けさせていただくということ,これによりまして,二つ目の丸でございますが,この重点評価項目については特に社会に大学について情報をより分かりやすく示すという観点から,「例えば」ということで,評価結果を段階別に示すなどの取組を推奨していくと。
  このような取組の導入に伴ってということで,三つ目の丸でございますが,特に評価が優れているなど内部質保証が有効に機能していると判断される場合には,次回評価以降の評価内容・方法の弾力化・効率化を推奨していくということを記載させていただいております。
  引き続き4ページ目でございますが,評価方法の改善でございます。
  一番目の丸でございますが,大学や社会に対してのより分かりやすい情報の発信という観点から,客観的なデータや指標の積極活用というのを大学の自己点検の段階からも,そして,認証評価機関におきましても,積極的に取り組んでいくということを記載させていただいております。
  次の2番目の丸では,質的転換の促進ということで,この2番目の丸の下から2行目でございますが,「例えば」の引継ぎのところでございます,大学が学生の学修成果をどのように把握・評価しているかという点についての評価を行うことも推奨していく。
  また,三つ目の丸でございますが,法令等遵守事項に関しましては,当然評価すべき項目でございますけれども,評価方法については簡素化,簡略化,例えば,チェックシートによる確認を行う方法など,方法の簡略化を推奨していくということを記載させていただいております。
  また,評価結果の活用という点でございますが,2番目の丸でございます。当然各大学の自主的・自律的な質保証を促す制度であるというのを基本とした上で,三つ目の丸でございますが,評価機関においては,この取組のフォローアップを行うような体制の整備,充実ということを制度的に位置付けるということ。
  また,四つ目の丸にございますとおり,資源配分の扱うという点に関しましては,優れた取り組みを支援するような補助金におきましては,例えば,認証評価においての不適合判定が出ているような場合については対象としないなどの活用というのが今後検討できるということを記載させていただいております。
  引き続き5ページ目でございます。評価基盤の充実という観点から,一つ目の項目,認証評価機関の評価の質の向上ということで,2番目の丸にございますとおり,評価機関においての自己点検ということを明確に位置付けていくということ。また,三つ目の丸にございますとおり,そのような認証評価機関の取組を外部の機関においても確認していくということで,従前メタ評価機関という話ございましたけれども,こちら部会での御審議も踏まえまして,この中央教育審議会大学分科会の下で認証を受けたということを鑑みますと,同様の場での外部の確認を受けていくということも提案させていただいているところでございます。
  次の項目,社会との関係の強化という部分でございますが,2番目の丸でございます,評価において公表される活動状況,これを積極的に周知していくということとともに,分かりやすい評価結果の発表の仕方ということで,三つ目の丸でございます,評価機関におきましても記載方法の活用ということとともに,四つ目の丸にございますように,評価プロセスにおきまして何らかの形でステークホルダーも取り入れた形の評価活動の実施ということを明確に位置付けていくということを記載させていただいております。
  評価人材の育成に関しましては,従前どおり,2番目の丸にございます,各大学におきます評価人材の学務の軽減措置であるとか,また,人事等への配慮ということの推奨とともに,次の丸におきますように,認証評価機関におきましても,研修の充実という観点から,例えば,テーマ別,また,どう評価者の役割に応じたきめ細かな評価の実施ということを推奨していくということを記載させていただいております。
  評価の効率化という観点につきましては,2番目の丸にございますとおり,先ほど申し上げました内部質保証の機能,高い評価を受けた場合に関しての効率化とともに,他の評価制度,国立大学法人評価制度等におきます評価資料・結果の積極的活用,これもまたその逆もありきということで,こういった取組も推奨していくということ。
  そして,一番下の丸の大学ポートレートでございますけれども,大学ポートレートに関しましては,大学ポートレートの機能の一つに公表データによるその大学の負担軽減と,評価等,また,調査等の負担軽減ということも目的とされていたわけですが,こちら部会におきましても,現時点では評価への活用という点では経年的なデータの蓄積等されていない,不十分ということでもございましたので,7ページにございますとおり,まずはユーザー目線に立った必要な機能の拡充が図れることを要望という記載にさせていただいてございます。
  最後,括弧の3でございますけれども,他の質保証制度との連携ということで,2番目の丸にございますとおり,こちらの部会でも度々御指摘いただいております,設置後の履行状況等調査との関係というところでございます。こちらに関しましては,設置計画履行状況等調査で指摘をされた取組事項についての取組状況というのを認証評価制度におきましても引き続き確認の上で評価していくということを明確に位置付けるということを記載させていただいてございます。
  最後,分野別に関しましては,括弧の4にございますとおり,引き続き各大学における取組,また,認証評価機関における自主的な取組を推奨していくということで,推奨に当たっての観点ということを記載させていただいているところでございます。
  駆け足になりましたけれども,説明は以上でございます。どうぞよろしくお願いします。
【黒田副部会長】    ありがとうございました。
  それでは,ただいまの資料の説明について,御意見をお伺いしたいと思います。それでは,二宮委員,どうぞ。
【二宮委員】    簡単なことなんですが,5ページの評価における社会との関係の強化なんですが,日本の大学教育が日本の国内だけで閉じるわけじゃありませんので,国際的通用性も長い間議論されてきたことですし,人材養成も国際社会,グローバルな社会に開かれた人材をということでやって,先ほどの三つのポリシーの中でも,説明責任としては国内だけじゃなく,国際社会にも分かるようにということが明確に書いてあったかと思います。特にこの認証評価の結果,公表義務はもちろんあるわけですけれども,国際社会に対してきちんと,認証評価機関が自らの責任で要約的に公表していただくかどうかも含めて,翻訳だけでもいいのか分かりませんが,要は,お父さん,お母さんは日本語が分からないということがたくさんありますし,留学生もたくさんいますので,国際社会に,それが日本の大学評価の,ランキングまでは行かないかもしれませんけれども,適正な評価というものを獲得できるんじゃないかということなので,国際社会に対する認証評価の果たすべき役割という観点を追加していただければ有り難いと思います。
【黒田副部会長】    ありがとうございました。
  次,前田委員。
【前田委員】    私の方からは,まず評価結果を活用した改善の促進の4ページのところなんですけれども,四つ丸があるうちの三つ目のフォローアップの件,前にも申し上げましたけれども,これは7年ごとにやるということだけが評価機関に義務付けられている中で,フォローアップというものをどのように位置付けるのか,法令上の問題がやはり難しいなということを思っております。
  あとは,評価機関も幾つかありますけれども,もうやっている評価機関以外にとっては大変な負担にもなってくるということもありますので,その意味でもどのように位置付けるのかなというのが一つ気になっております。
  それから,四つ目の丸なんですけれども,例えば,不適合の判定を受けていないことを事業の申請要件とするなどとあるんですが,これに関しましては,制度上,適,不適をつけるということになっていない制度が不適合を利用するというのは,少し制度の状況からしておかしいのではないかなというふうに気になっております。
  もう一つは,あそこだと不適合になるからこっちに逃げようみたいなことがあってもいけないということもあります。また,これから適合,不適合をつけませんという認証評価機関だって申請してくるかもしれないのに,不適合を条件とするということが制度上できるのかという点が気になっております。
  あともう一つは,5ページの括弧の2の認証評価機関の評価の質の向上のところで,三つ目にメタ評価機関のようなもので,認証評価機関も一定の評価を受けるということなんですが,これは重要なことではあると思うんですね。例えば,昨日少し専門職大学院に認証評価機関を文部科学省のところからクリックしていったら,ホームページがもうない認証評価機関がありました。アドレスを変えたのかと思って,名前で検索をかけても出てこなかったという評価機関がありました。また,評価結果の公表の在り方が非常に分かりにくく,何年に受けたかまで書いていなかったり,評価結果だけを英語でしか掲載していないという評価機関がありました。こういうところは,いわゆる最初の条件をクリアしていないので,認証取消しかもしれないという気がしているぐらいなんですけれども,そういう意味で,やはりチェックは必要だと思うんですね。
  その一方で,例えば,大学に対する拘束を,認証評価機関を利用してやろうというようなチェックが働かないように,メタ評価機関そのものの在り方というのは十分に考えなければいけないと思いました。
  以上でございます。
【黒田副部会長】    ありがとうございました。
  今の件について事務局から何かありますか。
【伊藤高等教育政策室長】    2点御指摘いただきました。フォローアップ体制の義務付けと認証評価機関に対する義務付けということの課題ということと,また,評価結果への活用という点でございます。
  前者に関しましては,現状におきましても専門職大学院の評価等機関におきましては,大学の申出に応じて評価を行うことができるような体制整備の充実に努めることとするというような記載もございます。同様な取組を機関別に,認証評価機関におきましても制度的に位置付けることも可能ではないかというのが一つの御提案でございます。
  また,適合,不適合というところについては,制度上に必ずしも法令等で決められていないではないかというところでございますけれども,一方で,評価機関における評価結果の積極的活用というところに関しましては,これは従前より本部会でも御審議いただいていたところでございまして,また,その各評価機関におきますこの評価結果の観点の共通,評価機関同士の連絡協議会でも,その評価の観点の情報交換ということもされているということも踏まえまして,この評価結果のできるだけの活用ということにつきましては,一つ方策だと考えております。ただ,適合,不適合というのは制度上は位置付けられていないということは御指摘のとおりでございますので,今後整理の仕方は改めて整理した上で,またこの部会において御審議の上まとめていただければと思っておりますので,現時点ではこのような考え方でございます。
  以上です。
【黒田副部会長】    ありがとうございました。
  それでは,篠田委員。
【篠田委員】    1点だけ質問ですけれども,3ページのところの下から二つ目の丸ぽつで,重点評価項目については評価結果を段階別に示すなども有効だということなんですけれども,ここで対象にしている段階別に示すことを推奨されている重点評価項目ということの中身は,質保証とか,大学の質とかということなのかどうかということと,段階的に示すというのは,A,B,C,Dの評価をつけるということなのかどうか。その場合に,判定根拠というか,基準というのをかなり明快に示していかなきゃいけないと思っているんですけれども,その場合のイメージみたいなのがあるのかということと,それから,この件に関しては有効とか,先ほどの御説明では推奨という言葉を使われましたけれども,そのあたりの評価機関に対する意味合いについても少し御説明いただければ有り難いなと思っています。
  以上です。
【黒田副部会長】    事務局,どうぞ。
【伊藤高等教育政策室長】    ありがとうございます。この段階別評価につきましての評価の記載方法,例えば,定性的なのか,先ほど設置的な段階別なのかというような御指摘ございました。これは推奨ということも含めまして,評価機関の判断で御検討いただければと思っているところでございます。
  ただ,現状ということで御説明申し上げますと,評価機関におきましても,各観点別の評価を実施されるのに当たりまして,それぞれ観点を設定して,それぞれ特に優れている,優れているというような設定をされているようなところもございます。また,そのような取組をしっかり判断基準ということで,お持ちしながら実施されているところもございますので,例えば,そういう既存の団体におきましては,それをベースにやっていただくということ,また,これから御検討していただく評価機関におきましては,そういった取組を検討していただくということを併せて推奨していくということで考えているところでございます。
【黒田副部会長】    よろしいですか。
  それじゃあ,安部委員。
【安部委員】    初歩的な質問なんですが,これは体言止めで,「必要」,そして,「期待」,「要望」,「有効」というふうに書いてあるんですけれども,これ区別をきちんとしておられるのでしょうか。少し教えてください。ほかのは体言止めは,あと二つ,前の二つはそういうのなかったので,その辺教えていただければ。
【伊藤高等教育政策室長】    失礼いたします。現時点で骨子という段階だと考えておりますので,まだ十分文章化に至っていない段階で体言止めの記載にさせていただいていることをまず申し上げたいと思います。
  その上で,それぞれの区別という点におきましては,事務局としては,これまでの御審議踏まえて,それぞれ少し区別しているつもりでございまして,「必要」という部分に関しましては,認識の部分と,実際に実施が共通的に行う必要があるという部分と,これは二つ含んでおります。
  また,「有効」という部分に関して,又は,「重要」,「推奨」というような,あと,「期待」ということもございます。これに関しましては,大学の取組,また,評価機関の取組を推進していくという立場で,必ずしも義務付けということを考えた記述ではございません。推奨でございます。
  以上です。
【安部委員】    ありがとうございます。
【黒田副部会長】    それでは,時間が来ていますので,金子委員までとさせていただきます。
【金子委員】    今日の話としては,三つのポリシーの話が出て,三つのポリシーはこれは基本的には大学の内部的な論理的な目標次第に関するステートメントですね。その次は認証評価の話になっているわけですが,一つの方,私三つのポリシーは,今日いろいろと議論ありましたが,余り細かく規定することには大変疑問を持つんですが,いずれにしても,今日のような話でかなり細かく規定することになると,それ自体がいいのか悪いのか,あるいは,矛盾しているのかどうかという判断も実は必要になってくるんだと思うんですね。その場合,法令でもってガイドライン,あるいは,そのガイドラインが出されていますが,それに対する判断は誰がやるのか。文部科学省がやるのか,あるいは,この新しい認証評価制度において,三つのポリシー自体の妥当性ないし矛盾性というのが評価の対象となるのか。それは少し新しい問題として出てくるのではないかと思うんですが,これについてはどう考えたらいいんでしょう。
【伊藤高等教育政策室長】    ありがとうございます。3ページ目のこの大学評価基準の項目に係る改善の二つ目の丸に記載しておりますとおり,従前よりこの部会におきましても,三つのポリシーの一体的策定,そして,それに基づいての教育研究活動の実施というところはしっかり評価活動の共通的な対象としていくべきだと御審議いただいておりました。その観点から記載させていただいております。
  ただ,その際に,御審議の中でございました三つのポリシーの策定という部分については,各大学がそれぞれの建学の精神,ミッションを踏まえて,その三つのポリシーを策定していくという,その立て方につきましては,各大学がその目標設定をしていくということだったと思います,という御議論が中心だったと思います。
  ただ,それに基づいて一体的に策定されているか,また,教育研究活動がその三つのポリシーを踏まえて点検を課すとPDCAサイクルが回っているのかという部分は,大学の内部質保証を後押ししていくという観点から,この認証評価におきましてもしっかり推進していくべきというような御審議もありましたので,そのような観点から記載させていただいております。
【金子委員】    一つだけ,その三つのポリシーですが,今日いろいろと議論ありましたが,実は大意な問題とか,相当様々に細かい問題がありまして,その何らかの形でチェックする機能はどこかで私は必要になってくるのでないかと思うのと同時に,外部評価の際に,これは実現されているかというところをどこまで見るのかということも随分大きな問題ではないかなと思います。一応問題提起だけしておきます。
【黒田副部会長】    これ後ほどの認証評価の在り方で大きな議論が出てくると思うんですけれども,どのような評価の仕方するか,それも別のところでの検討になると思いますけれども,そういうことも踏まえてしたいと思います。
  今日時間が来ていますので,皆さんから具体的な話を余り聞けずに終わっているんですけれども,この件につきましても,大学分科会の方で意見を出していただくということになっています。それを踏まえて,次回またより具体的な案を取りまとめて御審議していただくということになりますので,よろしくお願いしたいと思います。
  本日は長時間にわたり御議論いただきましてありがとうございました。
  これで議事を終了いたします。

――  了  ――

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