大学教育部会(第38回) 議事録

1.日時

平成27年10月16日(金曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.議題

  1. 三つのポリシーに基づく大学教育の実現について(ヒアリング)
  2. 認証評価制度の改善について
  3. その他

4.出席者

委員

(部会長)鈴木典比古部会長
(副部会長)黒田壽二副部会長
(委員)羽入佐和子,坂東眞理子,日比谷潤子の各委員
(臨時委員)安部恵美子,勝悦子,川嶋太津夫,小林雅之,篠田道夫,二宮皓,濱名篤,美馬のゆりの各臨時委員

文部科学省

(事務局)常盤高等教育局長,河村生涯学習政策局長,関政策評価審議官,森田高等教育企画課長,塩見大学振興課長,新田主任大学改革官,伊藤高等教育政策室長,北岡大学振興課課長補佐,片柳高等教育政策室長補佐 他

オブザーバー

(オブザーバー)沖立命館大学教育・学修支援センター長

5.議事録

(1)三つのポリシーに基づく大学教育の実現について,事務局から資料1-1,立命館大学教育・学修支援センターから資料1-2,川嶋委員から資料1-3に基づき説明があり,その後意見交換が行われた。

【鈴木部会長】    所定の時刻になりましたので,第38回の大学教育部会を開催いたします。御多忙の中,御出席いただきまして誠にありがとうございます。
  前回報告を頂きました高大接続システム改革会議の中間まとめを踏まえた当部会で審議すべき事項の中に,三つのポリシーに関する論点が挙げられております。本日は,この三つのポリシーについて2名の先生からヒアリングという形で御意見を伺いまして,それを基に意見交換の時間を取りたいと思います。
  その後は,認証評価制度の見直しの関係で,前回の意見交換や,その後の大学分科会でも御意見を頂いておりますので,それらを踏まえて,更に議論いただきたいと考えております。
  それでは,事務局から本日の配付資料について確認をお願いいたします。
【伊藤高等教育政策室長】    本日の資料は,資料5点,参考資料2点の計7点お配りしております。また,机上の紙ファイルに前回までの資料及びそのほか関係資料を置いております。欠落等ありましたら,事務局にお申し付けください。どうぞよろしくお願いします。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。
  前回の本部会では,文部科学省において検討が進められてきております高大接続改革の実現に向けた具体的な方策について,中間まとめの報告を受けまして,今後審議を進めるべき事項を御説明いたしました。本日は審議を進めるべき事項として挙げられております三つのポリシー関係について,2名の先生から御意見を伺いたいと思います。
  本日お越しいただいておりますのは,立命館大学から教育開発推進機構教育・学修支援センター長の沖先生,そして,本部会の委員でもあります大阪大学の川嶋未来戦略機構教授のお2人です。
  まず,事務局より前回の本部会における三つのポリシーについての御意見を整理していただいた上で,2名の先生から御意見をそれぞれ頂戴いたしまして,その後,質疑応答も含めた意見交換の時間を設けたいと思います。
  それでは,事務局より説明をお願いいたします。
【北岡大学振興課課長補佐】    大学振興課の北岡でございます。
  前回の大学教育部会では,本日の参考資料1としてお配りしております資料をもとに御議論いただきました。高大接続システム改革会議等でも議論いただいております関係で,大学教育改革の中でも三つのポリシーを義務付けるということと,各大学が各ポリシーを策定するに当たってのガイドラインを策定するという2点について御議論いただいているところです。前回の大学教育部会におきましては,資料1-1でお配りしておりますような御意見がございました。
  本日は二名の先生方から本件につきまして御意見を伺うこととしておりますが,それに先立ちまして,前回の御意見,御議論がどのようなものだったかということを簡単に整理させていただきます。
  資料1-1の1ページ目を御覧ください。まず,総論といたしまして,三つのポリシーに関するガイドラインの位置付けや,あるいは性格がどのようなものであるかというところについての御意見でございます。
  まず一つとしては,ガイドラインがないとなかなか学内での策定に難しいところがあるということで,ガイドラインの必要性について御理解いただきたいという御意見がございました。ただ,一方で,三つのポリシーで最低限示されることというのは,専門的な研究者のお話を聞いて議論すべきではないかということであるとか,あるいは三つのポリシーの体系化は非常に重要であるが,各大学の建学の精神や機能の在り方を考えた上で各大学が主体的に考えるべきであるというような御意見もございました。
  また,三つのポリシーに基づく教学のマネジメントの確立ということが高大接続システム改革会議の中間まとめでも示されておりますが,この点がもっと強調されるべきであるということ,あるいは各大学のポリシーをいつの段階までに作ればいいのかということをきちんと示すべきだという御意見がございました。
  この三つのポリシーにつきましては,構成単位をどうするかというところも論点となっております。現状,ポリシーに関しましては,1ページ目の真ん中にありますように,学部内で学位の名称が異なる場合でも一まとまりで作っておられる場合があるということがありますが,果たしてこのポリシーというのはどの程度の単位で作るべきなのかというところ,これも今回一つの論点として挙げさせていただいております。
  また,この三つのポリシーのそれぞれの内容につきましても御意見を頂いているところで,これを1ページの下の方に記載させていただいているところです。アドミッション・ポリシー(以下,「AP」という。)の定義の在り方,これをどのように整理するのかが課題であるということ。まさに現状の入試制度まで織り込んだ細かいものもあれば,学部単位の大ざっぱなものもあるということで,どの程度のことを充実すればいいのかということを,それを今回御議論いただきたいと思っております。
  また,三つのポリシー,特にAPに関しましては,AO,推薦,専門高等学校用等,様々な入試でどのようなレベルまで要求するかということを書くべきであるという御意見がありました。一方,例えば厳格な成績評価ということも今回,高大接続システム改革会議の御議論の中では出ておりますが,これに関しては,我が国の場合,留年,ドロップアウト,転学というようなものに対して非常にネガティブな感情があるということがありますので,それをしっかりと前向きに付き合えるようにしなければならないだろうという御意見,あるいは個別の論点といたしまして,留学生をどのように位置付けるかという論点ということも御提示いただいております。
  2ページ目を御覧ください。前回の御議論では,特に入学者選抜についても御意見いただいております。まず,入学者選抜につきましては,知識・技能や思考力・判断力・表現力,主体的に学ぶ態度というような「学力の3要素」が示されておりますが,それについて,各大学がどのような学生を必要としているかということ,まさにこれがAPに該当するかと考えておりますが,それに基づいた入試の在り方というものをしっかり考えるべきであるという御意見です。
  あるいは入試区分の見直しに伴う新たなルールを考えるという際には,各大学が主体的に考えられるような仕組みにすべきであるということ。あるいは実際,入試というものは,各大学様々な方式で今取り組んでおられますが,それぞれに応じたカリキュラムというものがあり,最終的に学生をどのレベルまで育てていくかということ。それを果たしてポリシーで全て叙述することができるのかという御意見もございます。ですので,これらに関しましては,まさに今回,国の方からお示しすることにしておりますガイドラインにおきまして,どのようなレベルの記述までしていくのかということと,あるいは各大学に対して,どのようなレベルのガイドラインのメーンポリシーの策定というものを求めるのかというところについての御議論と考えております。
  加えまして,2ページ目の真ん中ほど,評価についての御意見もございました。評価については,アセスメント・ポリシー,これは参考資料1でお配りしております前回の資料の中でも2ページ目の頭に書かせていただいております質的転換答申の中で示されましたプログラム共通の考え方や尺度(アセスメント・ポリシー)という,従前から御議論いただいていたところです。これに関して,まだ成熟していない,つまり大学のPDCAにおいてチェックの部分が非常に不十分であるという状況を生んでいるということがありまして,今回の三つのポリシーの議論においては,アセスメント,評価の観点をしっかり考えるべきではないかという御意見を承っております。
  また,大学教育の評価につきましては,卒業段階で間違いなくこのような指標で測れるということは教育の世界では難しいのではないかというような御意見があります。したがいまして,卒業して20年,30年たったときに社会の中でどのようになっているのかという観点から,卒業生の評価,あるいは卒業生による出身大学の評価というものも必要ではないかという御意見がございました。
  最後に,三つのポリシー,これは作っただけでは余り意味がないということですので,それを動かしていくということ,その点について評価するということについても御指摘いただいているところであります。
  本日は,このような前回の大学教育部会での御意見を踏まえまして,各先生方から御意見いただき,また御議論を深めていただければと思っております。
  以上でございます。
【鈴木部会長】    ありがとうございました。
  では,早速ヒアリングに入らせていただきます。沖先生からよろしくお願いいたします。
【沖立命館大学教育・学修支援センター長】    失礼いたします。御紹介にあずかりました立命館大学の沖と申します。本日はこのような席にお招きいただきまして,本当にありがとうございます。ただ,先生方におきましては,この分野の造詣が大変深い方々ばかりですので,本日私がお話をさせていただく内容で目新しいものは特にございません。ただ,私の経験と本校におけるいろんな活動につきまして,若干御説明申し上げたいと思います。
  お手持ちの資料,資料1-2です。大きく三つのポリシー策定の意義に関することと,策定の際の組織・体制に関すること,策定の手順に関すること,それから策定の際の工夫と,最後,今後の課題ということでまとめさせていただいております。
  最初ですが,三つのポリシー作成の意義というところです。少し大上段にかぶりましたが,欧州教育制度のチューニングのことを最初に述べております。これは後にも述べますけれど,この三つのポリシーに関することについて,大きくアナロジーとして捉えられるのではないかというふうに考えております。よく御存じのところばかりですが,欧州教育制度のチューニングにおいては,汎用的技能と専門分野別のコンピテンスになっているんですが,そのコンピテンスと学習成果に基づいて教育プログラムが設計されているということ。コンピテンスとは,知識・技能・態度が有機的に結合したもので,教育プログラムを履修した総合的な成果として学生が獲得するものです。学術性を基盤としながらも雇用可能性,あるいは市民性を保証するというような定義がなされています。
  それから,チューニングにおける学習成果,言葉がかなり曖昧に使われてはいるんですけれども,学生が教育プログラムを通して習得することが期待されている具体的な知識・技能・態度で,大学はそれぞれの志向する学術的・職業的プロフィールに鑑みながら,目指すべきコンピテンスを特定し,その獲得が可能となるように計画的に教育プログラムを設計します。
  単位は所期の学習成果が習得された場合のみ認定されることから,学習成果は測定可能でなければならないということがうたわれているわけです。
  それに対しまして,我が国の三つのポリシーですが,先ほど言いましたようにアナロジーで考えると,コンピテンスというものは各学部・学科のディプロマ・ポリシー(以下,「DP」という。),学習成果は個々の科目の到達目標の達成度に相当するのではないかと考えることができると思います。
  各大学(学部・学科)は,学術性を基盤としながらも雇用可能性や市民性を考慮して自らのDPを特定し,その獲得が可能となるように計画的に教育プログラムを設計します。
  DPは,個々の科目の学習成果(到達目標の達成度)の総合的な成果であり,学習成果の測定を基盤とします。
  計画的な教育プログラムとは,DPと個々の科目の関係性,ここでは具体的には整合性,scopeと呼ばれるもの,それから体系性・系統性,sequenceと呼ばれる部分ですが,これを整理したプログラムのことであり,カリキュラム・ポリシー(以下,「CP」という。)の本質になります。
  カリキュラムの整合性を可視化するツールとして「カリキュラム・マップ」,体系性・系統性を可視化するツールとして「カリキュラム・ツリー」が有効である。履修系統図やナンバリングもこれらを可視化し,学生の学びを促進するツールと言えます。
  個々の科目の学習成果が測定可能であることはもちろん,それらの総合的な成果であるDPも測定可能でなければなりません。これらの測定や検証には,学生調査やパフォーマンス評価などが有効です。
  APについても,入試科目や募集区分に即して,といいますのは,認証評価におきまして,この区分でどうしてこの科目を設定するのかというような適切性・妥当性が問われますので,領域,私が言っている領域というのは,ブルームの言う三つの領域です。知識と技能と態度の部分です。それから観点というのは,先ほどおっしゃいました学力の三要素と考えていただいて結構です。そのようなものに分けて,できるだけ具体的に記述する。もちろん学生を主語とした行為動詞で記述するというようなことが求められます。例えば態度の部分,上位的な領域における入試には,例えば推薦入試,AO入試が入っている。なぜならば,そこでの意欲や関心というものを重視するから面接を行っているんだというような記述が一つは重要になってくるであろうと思います。
  各募集区分の具体的な記述の総合がその大学のAPであり,CPを通してDPに接続されるものである。
  三つのポリシーの策定とは,大学の理念や精神から具体的なDPを通して,計画的なカリキュラムの設計,それから個々の授業の実施と成績評価に至る「学士課程教育の一貫性構築」の営みです。ですから,内部質保証システムの構築とは,その策定作業がPDCAサイクルに基づいて自律的に進む組織であることを意味するというようなことを私は考えております。
  その三つのポリシー策定の際の組織・体制ですが,まず,体制としましては,学長や教学担当副学長,うちの場合は教学部長が中心になっていますが,それを中心とした全学的な策定方針,あるいは支援体制が必要です。
  DP,CPに関しては講演会等による全学的な啓蒙(けいもう)と,学部・学科の執行部に対する具体的な策定のための学習会,研修会が必要です。策定は専門家の指導・支援のもとに取り組むことが望ましい。こういう場面でガイドラインというのがあると非常に役立つと思います。
  それから,組織と対策です。専任も非常勤もいますが,各科目の担当者に対しても,全学的な策定方針やその意義に関する学習会が求められる。特に個々の科目の到達目標の記述(シラバス)に書かれるものですが,これには測定可能で領域や観点別に学習者を主語とした行動目標を書くことが必須の条件となり,学習会やシラバス執筆要領の充実が不可欠である。このシラバス執筆要領というのは,各大学もお持ちだろうと思いますが,かなり簡素に済まされるケースが多いです。具体的な事例,このような書き方が推奨され,このような書き方はいけないというようなものを整備する必要があろうと思います。といいますのは,専任の教員に対する研修はある程度可能なんですが,非常勤の先生方に対する研修がなかなか難しいです。シラバスの執筆要領というものを通して御理解いただくということが不可欠になろうかと思います。
  それから,成績評価とは,到達目標の達成度の測定にほかならない。また,これは一貫性のある教育プログラム(カリキュラム)の土台になることから,シラバスの成績評価方法や基準の明示化が求められるとともに,必要に応じてパフォーマンス評価の導入に関する学習会が開催される必要がある。特に前段の,成績評価とは,到達目標の達成度の測定にほかならないというのは,我が大学でもいろいろと問題があり,今解決する途上にあるのですけれども,到達目標が非常に上手に学生を主語にして書いてあります。三つの領域において書いてあるんですが,現実,試験で何をしているかというと,下記の語群から必要な語を選び,その記号を書きなさいという試験で終わっているというケースが多々見られるわけです。到達目標の達成度がそこで挙証されなければ,その上にある三つのポリシーも砂上の楼閣になりますので,ここはきちんと押さえる必要があると思います。
  次ですが,同一科目には同じ科目概要,到達目標が必須であり,専任教員が代表となる科目担当者会議で議論,決定する。また,この会議はばらつきの多い成績評価方法や基準を統一するためにも有効であるとともに,授業研究会をはじめ,ミクロレベルのファカルティー・ディベロップメント(以下,「FD」という。)の最も効果的な機関になり得る。うちのような大規模校におきましては,特に教養では同じ科目名で10から15ぐらいの科目がございます。そこがみんな勝手に科目概要,到達目標,成績評価基準を決めておりますと,まず,カリキュラム・マップ自体ができませんし,学生によっては,そこに大きな不満が出てきます。その意味で,同一科目には同じ科目概要,それから到達目標というものを定める。それを実施するのは科目担当者会議というものでやっております。これは非常に有効です。
  逆に言いますと,例えば非常勤講師を委嘱する際にも,今まででしたら何々という科目をお願いするねと言うだけで済ませてきたのですが,現在は,この科目はカリキュラム・マップ上こういう位置付けにある。こういう科目概要でこういう到達目標でやっています。それをお願いします。ただし,15回の授業内容については,先生の工夫をよろしくお願いしたい。このような委嘱の仕方に変わっております。
  それから,シラバスの到達目標の記述や成績評価方法の記述に関しては,執行部や科目担当者の代表によるシラバス点検が重要であり,シラバス点検要領を整備することが肝要である。これもうちの中では執行部と科目担当者会議の代表がやっておりますけれど,特に非常勤の先生方に対しては書き直しというようなことまでやっています。点検要領というものも重要になってくるだろうと思います。
  続きまして,三つのポリシーの策定手順ですが,策定方法に関しまして,DPは学部則等に定められる条文とは異なり,学生や受験生に理解されやすいように,また,その達成度の評価がしやすいように常にブラッシュアップすることを恐れてはなりません。ただし,それらを変更する際には,全学的な教学会議等で周知徹底し,履修要綱や入試要項等も併せて改訂することを忘れてはなりません。下は戒めの部分ですが,本学では頻繁にDPの文言の見直しをしております。学生に読んでいただいて,分からなかったら書き直すというようなことまでやっております。
  それから,CPの本質であるカリキュラムの整合性,体系性・系統性については,カリキュラム・マップやカリキュラム・ツリーを整備する。しかし,カリキュラム・マップは整合性を点検するためのツールであり,特に公開は必要としないと私は思っていますが,それに基づいたカリキュラムの改訂が行われる,PDCAが回るようにするための道具であって,継続的な執行部やカリキュラム委員等の意識付けと専門家によるコンサルテーションや学習会が必要です。本学では教学ガイドラインというものを作っておりまして,カリキュラム・マップに基づいてカリキュラム改訂を行いなさいというようなことが明示してあります。といいますのは,今まで感覚でカリキュラム改訂を行うことが非常によくありましたので,このような時代の趨勢(すうせい)であるならば,このような科目が必要だろう。そのような議論も必要ですが,カリキュラム・マップでは何が足りて,何が足りていないかというような議論をエビデンスベースで行うことが必要だということです。
  続いて,CPの具体的な策定手順ですが,カリキュラムの整合性を点検するカリキュラム・マップは,学科単位で,表計算ソフトの表にDPの各項目を第1行に並べ,第1列に教養から専門に至るまでの科目名を,第2列にその到達目標を並べます。必要に応じて科目概要などをその次の例に並べると分かりやすくなる。教授会や非常勤講師の来校の際にその表を回し,自ら担当する科目の到達目標がどのDPに主に対応するかをチェックすることで完成します。1週間もあれば,ただ表を回すだけで出来上がります。先ほどの御意見の中にもありましたけれども,最低の単位は学科であります。学科でやるというのが基本です。大体エクセルの表で3枚から4枚程度で収まります。
  それから,カリキュラム・マップは教養と専門や,コア科目と選択科目等,学科の特性に応じて様々な科目区分に分けて表に配しても構いません。むしろその方が推奨です。ただし,受講生がどのような系列で履修しても,同じ学科であれば同一のDPの達成が可能であることが求められます。ここは非常に重要なところです。
  それから,DPの各項目をルーブリックで表現し,初年次,中間,卒業時などのレベルごとに記述を変え,レベルごとに配置する科目群を選択し,カリキュラム・マップで整合性を確保することで,質保証やアカウンタビリティに対応することも可能です。これは長期的ルーブリックとか,カリキュラム・ルーブリックと呼ばれるものですが,日本では関西国際大学が実際にこれを公開しておられます。もともとはAAC&Uに載っているバリュールーブリックなんかがこの形で作られていますし,有名なのはアルバーノ・カレッジというところがこのような形で進めております。
  ですので,最後のDP,卒業時の求める能力というものだけではなくて,1・2回生ではこれぐらい,2・3回生ではこれ,あるいは卒業時にはこれぐらいというようなルーブリックな形式で表すということも一つの案であろうと思います。
  上記のことを含め,DPの達成を可能にするために必要十分な科目が要卒科目に配されているかを点検することがカリキュラム・マップの目的であり,使い方であります。通常,様々な問題点が発見され,到達目標や科目内容を含めた見直しが多くの科目に求められることになります。この点について次回のカリキュラム改訂に活かすことこそが内部質保証システムの構築された組織になるということになります。
  カリキュラムの体系性や系統性を可視化するカリキュラム・ツリーや履修系統図,ナンバリング等は,むしろ積極的に公開し,学生の利用に供するべきものです。1ページに収める必要は全くございません。学生が4年間,6年間の学習の航路を自覚し,主体的に学んでいくためのツールとして,オリエンテーションなどで冊子に含めて配付したり,十分な説明を行ったりして活用を進める必要があります。本学におきましては,法学部では学びマップとか,産社ハンドブックとか,文学部教学の手引き等,かなりの分厚い冊子を学生に配付し,十分な説明をし,4年間携行をさせています。
  三つのポリシー策定の際の工夫です。まず1番目,意義の確認です。学科,学部のDP,これも認証評価の中で大学構成員に周知されているかというところがあるんですが,教育員も含めて,学生もまずDPを知っていないといけませんので,このようなアンケートは必要になってくるかと思います。学部のDPと各科目のカリキュラム・マップやカリキュラム・ツリー上の位置付けは,学部・学科教員の共有すべき情報である。高等教育といえども教育は組織的な取り組みであり,すべての科目担当者がDPや他の科目の到達目標,位置付けを意識して授業に取り組む必要がある。これにはカリキュラム・マップやカリキュラム・ツリーの策定作業自体が有効であり,また,様々な学習会,到達目標の書き方や,パフォーマンス評価の方法についての学習会やシラバス執筆の際の適切な提示等が有効である。というのは,シラバスを書くときに自分の科目の位置付けが見えるような形で,WEB上で工夫されると非常にいいと思います。こういうようなことも本学ではやっております。当然,非常勤講師の委嘱の際にも使われる必要があります。
  点検と評価ですが,DPと各科目の位置付けは,シラバス点検や科目担当者会議における日常的なFD,シラバス執筆要領などで常に意識付けを図ることが大事である。また,DPの達成のために位置付けられた各科目の概要,到達目標や成績評価基準は,学生に公開された後は特別な事情がない限り変更できないようにする。本学はこれを教授会の審議事項にして,基本的にはしてはいけないことになっています。それから,授業アンケート等でもシラバス遵守度や到達目標の達成度などが受講生から点検される仕組みが望ましい。これも本学ではやっております。こういうことを望ましいと考えています。
  今後の課題です。まず,カリキュラム・マップ作成で判明する問題点ですが,一つ目がDP達成に必要な科目が揃っていないというようなことがよく出てきます。これは過不足をぱっと見れば分かるのですが,特に到達目標DPの文言の整合性がとれていないケースもあります。少しいいかげんな例ですが,例えば教育学において,「幅広い教育学の理論をし」なんて書いてあるんですが,実際やっているのは一つ二つの科目で,キリスト教世界の子供観しかやっていなかったというような事例が結構あります。
  さらに,特定のDPの項目に対応する科目数が決定的に不足している。特に上位的な領域,態度に関する領域の科目というのが極端に減るケースが見受けられます。それから,選択科目によってはDPを満たさないケースというのもよくあります。それから,二つ目ですが,どの科目も全てのDPの項目にチェックが入る。これは恐ろしいのですが,マップが全部丸がついているのですね。これは到達目標の書き方が不適切な場合が半分です。行動目標による標記ができていない場合,御自分で丸をつけなさいと言っても,あれも言った,これも言った,と全部丸がついてしまうんですね。
  それから,もう一つ大きいのは,成績評価に絡む到達目標に厳選されていない。先ほども例を挙げましたけれども,到達目標は立派に書いてあるのだけれど,実は成績評価に絡んでいるのはごく一部だということです。到達目標が全部書いてありますので,全部丸がついてしまうというようなケースがほとんどです。
  三つ目ですが,DPの見直しや到達目標の書き換えに応じてカリキュラム・マップは常に変更・修正されるものである。カリキュラム改訂の際には果敢に根拠資料に用いることが重要である。
  続いて,パフォーマンス評価の有効性ですが,ルーブリックを用いたパフォーマンス評価は,レポートやプレゼンテーション,実技や演習のアウトカム評価として有効であり,学習者の学習の指針づくりや振り返りにも高い効果がある。これも本当に私は実感しております。
  また,客観的かつ公平な評価は,これまで感覚的に捉えがちであった学生の変化(学力や意欲)を的確に把握し,迅速な対応(補習や科目分割,ピア・サポートの活用,カリキュラム改訂)をするための貴重なデータと方法論を提供することになる。一部にある「学生の留年や卒業率の低下をもたらす道具」という懸念は払拭すべきである。くしくも先ほどの御意見にあったようなことなんですが,私がいろいろなところで講演をさせていただくと,必ずこのことを質問されます。むしろ,教育改革並みの貴重なデータと方法論を提供するものだという御説明で,決して留年をさせたり,卒業率を低下させたりする道具ではないという説明をしております。
  各科目の成績評価が到達目標の達成度を客観的かつ公平に測定することができれば,CPを通してDPの達成が担保される。学士課程教育の一貫性構築は,最終的には各科目の成績評価に係ってくると私は感じております。
  最後,高等教育の質保証ですが,個々の科目のパフォーマンス評価の導入やカリキュラム・ルーブリック,あるいは学生調査,標準テストなどの手法を併用して,DPの達成度を検証し,自らの大学の教育の質保証を進めることができる。
  それから,シラバスや学生授業評価,GPAやCAP制など,高等教育に用いられる部品の導入はかなり進んだと言えるが,「内部質保証システムの構築とは」とか,「一貫性のある学士課程教育の構築とは」といった包括的な概念の理解が不十分であるように思われる。道具や手順の説明に留(とど)まらず,これらを分かりやすく解説し,効率的な教育改革が進められるようなガイドラインの策定が求められると思っております。また,これらの方法は,決して評価疲れを招いたり,不毛な努力,場当たり的な対応を求めたりするものではなく,一旦軌道に乗れば,極めて合理的かつ省力的に改革を進める動力になることを強調していただけると有り難いと思います。その意味で一番初め,欧州のチューニングのお話を持ち出した次第です。
  簡単にまとめてしまいましたが,ありがとうございました。
【鈴木部会長】    沖先生,ありがとうございました。
  続きまして,川嶋委員,お願いいたします。
【川嶋委員】    資料の1-3でございます。私の発表は,大規模総合大学における苦労した事例ということでお聞き願います。
  最初に,本日の参考資料2にもありますけれども,毎年文部科学省がやっていますカリキュラム等の改革状況調査からポリシーに関連する調査結果を抜き出したものです。一言でいいますと,次のページも含めて三つのポリシーの作成状況を見ますと,学部段階ではほぼ全ての大学が三つのポリシーを作っているんですけれども,全学レベルで作っている大学の割合は60%ぐらいということで,大学と学部との関係性をどうするかというのが三つのポリシー作成のときに非常に大きな課題になります。その背景には何があるかというのは最後にお話ししたいと思います。
  スライド6を御覧ください。これは平成26年までの教育に関するガバナンスといいますか,マネジメントの体制であります。教育担当理事副学長のブレーン的な組織として,当時は教育担当懇談会,現在は教育室となっておりますけれども,七,八名の当時は理事補佐,現在は副理事及び各教育関連等の施設の長(ちょう)がブレーンとして教育担当理事をサポートしています。この教育担当理事副学長を委員長として,教育に関わる全学委員会としては,教育課程委員会と入試委員会があります。これらの委員会には各学部・研究科から委員が選出されて参画しています。ただ,いずれの委員会も毎月定例ではなくて,シーズナルな開催状況でありまして,今,大学に求められている教育改革のスピードを考えますと,このようなマネジメント体制ではなかなか改革を前に進められないということもあり,次のスライド7にありますように,平成26年6月から新たな体制でスタートしました。実は,前年度の平成25年10月に非公式ですけれども,教育目標等ワーキングという形で,7ページにありますような仕組みで始めたところであります。
  一つのポイントは,教育改革推進会議の構成メンバーが各研究科の教育担当副研究科長としているということであります。上の6ページにありますような委員会方式ですと,各研究科・学部から選出された委員というのは,必ずしもそれぞれの部局で何かしらの権限を持っているわけではありません。しかし,教育担当の副研究科長がメンバーですと,この会議で決まったことは学部・研究科で実施するということになりますので,意思決定のスピードがかなり速まったということであります。この教育改革推進会議で全学的なP,計画を立てて,それに基づいた様々な教育の活動等はDのところですけれども,基本的には教育の一番の責任組織である学位プログラムが実施しています。様々な外部評価等ございますので,それに向けての内部の自己点検・評価の結果に基づいて,それをまたこの教育改革推進会議が集約して,どこに問題があるか等を洗い出した後,必要な改革,アクションをまた各学位プログラムで行っていただくということになります。
  これらについては,改革が必要であれば,教育学習支援センターがシラバスの書き方から授業方法,アクティブ・ラーニングの仕方まで,様々に支援するというようなことになっておりますし,エビデンスベースで議論するためには,教育IRチームというのがございますので,そこが様々なデータ,例えば最近ですと,TOEFLのテストを全学生に受験させるようにしておりますけれども,学部ごとの平均点,あるいは経時的な変化というようなデータをここの推進会議に提出して,今後どうするかというようなことを議論するということになっております。この教育改革推進会議に対して様々な提言をするのは,先ほど言った教育担当懇談会,現在の教育室ということになっています。
  次のスライド8を見ていただきますと,実はこの三つのポリシーを検討するに当たって出発点になったのは,法人化を契機に全学的に制定されました大阪大学の教育目標というものでございまして,中核に基礎学力・専門知識がありまして,それを支えるものとして,教養,デザイン力,国際性というもの,大きく言えば四つの教育目標が平成16年の法人化を契機に制定されたということであります。したがって,三つのポリシーを考えるときはこれが出発点になったということであります。
  先ほど申しましたように,教育担当懇談会というのは教育担当理事のブレーン組織でありまして,平成25年8月7日に開催されたこの懇談会で,今後の大阪大学の教育改善・改革に取り組む際の課題や,あるいは基本的な方向性が整理されておりました。それがこのスライド9から続いてございます。実は,こういう改革のための課題の洗い直しをしたのは,内発的な動機というよりは,お恥ずかしい話なんですけれども,下に書いてありますように,平成26年度から大学ポートレートが公開されるということで,三つのポリシーも含めて様々な教育情報,データを提供しなければいけないということがありました。それから,今年度大学評価・学位授与機構の認証評価を受審しますので,それに向けての様々な課題への対応というようなこともございまして,実は様々な教育上の課題,改革の方向性を定めざるを得なかったという側面もございます。
  最初の課題としては,スライド9にありますように,ポリシーというのが未整備である,不十分であるということであります。実は,学生受入れの方針については,何年か忘れましたけれども,策定して公表することが義務ということになっていましたので,アドミッション・ポリシーについては既に出来上がっていましたけれども,それ以外のDPとCPにつきましてはまだ不十分な形でしたので,全面的に作り直すことにしました。
  それから,どの単位でという,前回の課題でもありましたけれども,当初は学部・学科を単位として考えていたんですが,実際の教育の責任体制ということを考えると,現実に教育プログラムを運営しているという意味で,学位プログラム単位で作るのが適切ではないか。しかし,そのためには学位プログラムをまず同定する必要があるということです。その上で,学位プログラム単位で「入り口」「中身」「出口」の一貫したマネジメント体制を構築していくこととしました。全学のポリシーと学位プログラムのポリシーの調整・整合性という課題がありますが,これについてはまた後でそのためのツールを御紹介します。
  それから,次のスライド10は,それぞれのポリシーとは何なのかということ,あるいは何をそれぞれについて表現するのかということを整理したもので,これは先ほどの沖先生のところと重複しているかもしれません。
  カリキュラム・マップの話も出てきましたけれども,それは先ほど公表する必要もなくて,カリキュラムの整合性を確認するためというお話がございました。本学としては授業科目の棚卸しですね。十分かつ必要な授業科目が現在提供されているかどうかを確認するツールと考えました。むしろ問題は,括弧書きで書いてありますが,本学は,カウントしましたら1万数千科目の授業科目があるということで,これは非常に効率が悪いということで,何とか授業科目数の削減をしたいということを検討しました。そこで授業科目の棚卸しが必要であると。そのためにはカリキュラム・マップが有効ではないかと。現行の授業科目のカリキュラム・マップでそのあたりを確認した後,DP,CP,APの三つのポリシーが確定した後,それに基づいて改めてカリキュラム・マップを策定して,必要かつ十分な授業科目を策定しよう。カリキュラム改革を行うということをこの時点で決めております。29年度から新たなカリキュラムで動くということになっておりますけれども,今のところ少し遅れそうな感じでございます。
  それから,学士課程では共通教育と専門教育の単位数,大綱化以降,教養教育の単位数がかなり減っていて,今後,研究大学においては,むしろ学士課程では教養教育も重要ではないかということで,また学部ごとに共通教育,教養教育の単位数にでこぼこがございますので,例えばアメリカのように,5割まではいかなくても,共通の比率にしてはどうかというようなことも考えております。
  それから,学期制を変更することによって,週複数回開講し,学生も教員も少数科目を特定の学期で集中教授・学習して,教員の特に研究時間を工面しようというようなことも検討しております。
  授業方法については,先ほど言及しましたTLSC,教育学習支援センターで様々なワークショップを行っています。それから,今現在話題になっておりますAPについても,先ほどの沖先生と同じですけれども,必要最低限の能力とか資質というのを改めて検討しようということであります。APに整合的な入学試験の方法を検討する。実は,大阪大学では29年度から「世界適塾入試」と称して,推薦とAOを300名ほど受け入れるということで,現在,書類選考や面接のための評価方法を検討中なんですけれども,APというのが必ずしも明確ではないので,どういう観点で評価したらいいのかというところを非常に苦慮しております。
  それから,受入れ単位の再検討については,例えば北海道大学では大くくり入試を導入したりしておりますけれども,このあたりも,大阪大学の場合はなかなかそういうわけにはいかなくて,学部・学科単位での募集になりそうでございます。
  最後の12ページは質保証ということでございます。これは今年度の会議の課題としてアセスメントプランというのを全学的,それから学位プログラムごとに策定しようというのが課題になっております。
  最初の黒ぽつに書いてありますように,質保証の第1次責任は学位プログラム担当教員組織にあるということを明確にして,学位プログラム単位で三つのポリシーと点検評価・改善ということをやっていく。そのためのプランというのを今年度作ろうと考えております。以下の,成績評価の問題や,シラバスの改善というのは,既に行ったところでございます。
  スライド13のタイムラインについて,最終的に今年の3月にホームページで公表しましたけれども,ほぼ三つのポリシーを改訂するのに1年を要しております。非常に大変な作業で,学位プログラムと本部との間のやりとりが非常にたくさん行われております。
  次の14ページ以降は本学の教育情報の公表のところに全て載っている情報でございますけれども,学位プログラムとは何だということ,前回の議論でも出ておりましたけれども,本学では以下のように定義しております。学生による学修の成果を重視する観点から,学士・修士・博士等の学位を取得するに当たり,学科,専攻といった既存の教育組織を踏まえつつも,当該学位のレベルと学問分野に応じて達成すべき能力を明示し,その能力を学生が修得できるように体系的に設計された教育プログラムのことをいいます。より実質的な意味での特定の学問分野の教育内容やカリキュラム,さらには教育の実施体制等を総称するというようなことを全学にお示しして,各学部・研究科で学位プログラムを同定していただいたところ,15ページにありますように,学士課程では37プログラム,大学院課程では108プログラムの学位プログラムがあるということが判明したということです。
  以降はそれぞれ全学的なもので,これの後に学部・研究科,あるいは学位プログラムごとに三つのポリシー,教育目標等が整理されております。実は印刷にしますと300ページぐらいになりますので,全部PDFでWEBに載せておりますので,興味のある方は御覧ください。
  スライド番号19で,冒頭にお話ししましたように,大学全体のポリシーと学部・研究科,あるいは学位プログラムとの整合性をどういうふうにして担保するかということで,マトリックスをお渡しして,全学の学習目標と各学位プログラムにおける学習目標の関連性を明確にしていただくという作業をしました。先ほど沖先生の話では全部丸がついてくるということ,我々もそれを恐れていたんですけれども,必ずしもそうではなかったので安心しております。
  最後に,課題でございます。スライド20と21でございますけれども,まず,先ほども沖先生の方からあった,三つのポリシーを策定する意義とは何だろうということです。一つは教学マネジメントのインフラストラクチャーであるということ。二つ目は,やはりこれについては先ほど分かりやすくというお話がございましたように,高校生が大学,あるいは学部・学科を選ぶための情報提供です。大学選択のための情報提供の役割をしています。それから,このようなポリシーを制定することによって,いわゆる学位プログラムを担当する教員のリフレクションですね。一体自分たちがやっている教育はどういう目的で,どういう内容でやっているのかというようなことを促進するという意味もあるだろうと。ただ,問題は,学位プログラムとは何かというところが非常に曖昧,混乱が起きているということであります。
  一応大阪大学としては,先ほど御紹介したような定義を学内に示しました。しかし,学位と言ったときには,法律上,学位は学士・修士・博士・専門職学位,あるいは更にその下の分野を付けたのが学位プログラムの学位なのかということになります。学位というのは資格,qualificationであり,qualificationというのは能力証明ですので,証明書としてどういう能力を示しているのかという点で言えば,やはり学習成果というものが出発点になるだろう。どのような能力を卒業時に身につけるか。これが違えば,それに至るカリキュラムも異なってきますので,そこに書いてありますように,学位取得に至る教育課程,プロセスという観点で学位プログラムというのを考えてはどうかということです。
  ただ,実際には学習成果を定義したDPとカリキュラムが必ずしも十分に一致していないという現状がございます。学位プログラムというのは,それを担当している教員組織と対応しているという,それを明確にすることが必要だろう。ただ,この点で非常に困ったことは,特に人文系の分野,例えば文学部ですと,旧来史・哲・文という大きく分けると三つの学問分野があるんですが,実はもっと沢山の専修に分かれているんです。ですから,最終的に身につけさせる学習成果の点で言えば,史学・哲学・文学というのは違った学位プログラムになってしかるべきだと我々は判断したんですけれども,文学部が考えるのは一本,学士(人文学)という形で出てきた。これは人間科学も同様でございまして,教育学とか心理学とか社会学とかあるんですけれども,最終的には学位プログラムとしては一本として出てきたという,このあたりの整理が今後の非常に大きな課題でございます。
  次の課題は,先ほど申しましたように,全学と学位プログラムとの一貫性をどういうふうにして保証していくか。実は,冒頭にお示ししたデータの背景にあるのは,多分,大学設置基準の作り方が,大学ではなくて学部が基本単位になっているということです。例えば教育研究上の目的について,大学設置基準の第2条では,大学は,学部,学科又は課程ごとに,人材の養成に関する目的を定めると書いてあって,大学は大学の,あるいは学部・学科というのが入っていないんですね。ですから,日本の大学に対する認識そのものが明治時代の分科大学,それを集めて単に何々帝国大学としたというようなイメージがいまだに残っているということだろうと思います。ですから,これも以前からの課題ですけれども,このような設計思想を,今後学位プログラムを中心としたものにどう変えていくかということでございます。
  それから,先ほど沖先生からも御紹介があったんですけれども,専門分野でのDP等を考える際に,横並びといいますか,それぞれの分野でどこをどういう能力を身につけさせればいいのかということについての共通の枠組みが欠如しています。学位レベルでも各専門分野のプログラムレベルでもありませんので,各大学がかなり内容や水準について,いい言葉では多様なんですけれども,ばらついたものになってしまうというおそれがあるので,このあたりの整理も今後は必要かなと思います。
  以上,駆け足になりました。
  最後は,各学位プログラムに検討してもらう際のテンプレートを御参考までにお付けしましたので,お時間があるときにご覧ください。
  以上で私の報告は終わりにします。どうもありがとうございました。
【鈴木部会長】    ありがとうございました。
  それでは,御意見,御質問のある方は御発言をお願いいたします。
  羽入委員,お願いします。
【羽入委員】    ありがとうございます。大変参考になる,そして私自身の頭の中が整理できる内容について御発表いただきまして感謝申し上げます。
  沖先生に二つ教えていただきたいんですが,一つは,このポリシーを考えるに当たって,やはりある大きな体系が考えられると思うんですが,同時にまた常に見直しが必要というふうにおっしゃっていらっしゃって,教育は日々動かしながらの改訂をしていかなければいけないとなると,そのときの工夫の仕方というのがあったら教えていただきたいことです。
  それから,もう一つは,教養科目,いわゆる一般に大学生として身につけるものと,同時に専門性が高く求められていると思うんですが,その際に,専門教育と教養教育との違いがこのようなポリシーを策定する際にあるのか。あるとすれば,どのような点が一番問題なのかというようなことを教えていただきたいと思います。
【沖立命館大学教育・学修支援センター長】    ありがとうございます。まず一つ目ですけれど,カリキュラム・マップにしろ,ツリーにしろ,あるいは到達目標にしろ,頻繁に見直しをいたします。ですから,学生の実態によって,あるいは成績評価をつけた後で,どうもおかしいというようなことになって見直しをするわけなんですけれど,本来の意図は,すぐその場で全てに反映するのが望ましいと思います。ただし,二つの意味で難しいところがありまして,一つは,入試広報も含めて,DPならDP,それからマップやツリーとかいったものが載せてあるわけですね。それを全部一斉に変えなきゃいけないということがありますので,少なくとも1年に1回しかできないということがあります。
  もう一つについては,特に大きなカリキュラム改訂をするに当たって,なかなか先生方の抵抗感というのもあるのですね。自分の科目を見直ししろと言われた際に,なかなか抵抗感がありますので,そのあたりを合理的にするためにカリキュラム・マップに基づいて,あるいは様々なデータ到達目標の見直しに基づいて徐々に検討し,次の改訂のタイミングでやろうというような仕組みが本学では機能しているという点がございます。
  それから二つ目ですけれども,教養と専門でポリシーの違いは当然ございます。DP自体は教養と専門全部含めて,学部を卒業するときに最低限身につけている能力という定義をして,それこそ三つの領域においてジェネリクスも含めてやっています。ただ,マッピングをして分かることは,例えば汎用的な能力であっても,専門の科目の中でも涵養(かんよう)されることがありますし,必ずしも教養でないケースもありますので,大きく分けたら,当然専門と教養と違ってきますけれど,ばらつきが出るというのも実態でございます。
【鈴木部会長】    濱名委員,お願いします。
【濱名委員】    大変専門家らしい御説明を承りまして,両先生に感謝申し上げます。その上で両先生にそれぞれお伺いしたいことがございます。まず,沖先生には,2ページ目の,策定の際の組織・体制のところで,「全学的な策定方針」という言葉が書かれているのですが,本日の御説明ではほとんど学部単位のもので,これをどのような形で定めて,何をその要件としてやっておられるのかということが1点です。
  2点目は,4ページ目の三つのポリシーの点検と評価のところで,頭のところからいろいろお書きいただいているのですけれども,何を基準に誰が評価するのか。日々動くという御説明は分かったような,分からないようなところがありまして,これはアメリカあたりのものと比べると,沖先生のような専門家がおられるところはできるかも分かりませんが,これで体制として,システムとして機能するのだろうかということが2点目です。
  3点目は,同じく4ページ目の高等教育の質保証のところで評価手法を列挙されているのですが,私は個々の科目のパフォーマンス評価の導入というのは,これは個別学生のアセスメントの話で,それ以降のものはむしろ本日の中心のプログラム評価に関わるもので,これをあえて「や」と列挙された理由があるのか。私は,この二つをきちっと識別しないで評価,評価とやっていることが,現在の高等教育における評価の混乱の最大の原因ではないかと思うのですが,そのあたりを教えていただきたいということです。
  川嶋委員の御報告は課題のところであらかじめ挙げておられるように,アセスメントプランを現在作成しているというようなことがあるのですけれども,結局,11ページまでのところで,全学DP,CPから,それぞれ学位プログラムのCPという流れは,私も全く同感なんですが,DP,CPどおりに教育が行われているかどうかということは,先ほど御説明になったアセスメントプランをこれからお作りになるということなのか。現状としては,DP,CPが定められたPlan,Doの後のチェックとしてどういう形のものを想定されているのか。やられていることがあれば教えていただきたいですし,なければこの後検討される中で,高等教育研究者としての川嶋委員はどのような形で定めるべきだとお考えなのかを教えていただければと思います。
【鈴木部会長】    沖先生からお願いします。川嶋委員,その後お願いします。
【沖立命館大学教育・学修支援センター長】    最初の全学的な策定方針ですが,基本的には文部科学省中央教育審議会の方向性に沿って,自分のところはどう対応するかというようなことが常任理事会をはじめとして考えられます。その中で,三つのポリシーは私が来た10年ぐらい前にやりましたけれど,これを作っていかなければいけないということで,当時の教学部長を中心にそういう組織が作られて,我々が動員されてホテルに缶詰になって三つのポリシーを作った覚えがあります。そういうトップのやるぞというような方針がまずは大事だろうというふうに思っています。
  それから,二つ目ですが,点検と評価のところにつきましては,これは点検と評価というような言い方をしていますが,これもうちの中の教学部の中で,ガイドラインを含めて,こういうやり方でやっていくよということが全学合意をされています。例えばシラバス点検というのをやることも全学で合意されていて,基本的にやる人は,専門科目については学部の執行部の先生,教養については科目担当者の代表がやっています。それから,教職なら教職の担当者がいますので,そのような者がシラバス点検要領に従って御自分の同じ科目のグループの先生方のシラバスについて全部点検し,その結果を集約すると。基本的に教務課に集約することになっています。毎年何%ぐらいができている,できていないというようなことが明確になっています。例えば,到達目標は99%学生を主語にして行動目標で書かれているというようなところです。全学でそういう方針を決めてやっているということで,誰がというよりも,全学の合意事項としてやっているという感じです。
  それから,最初の質保証のところは,濱名委員のおっしゃるとおりです。ただ,パフォーマンス評価のところで,これは個々の授業の科目の評価に使うものですけれど,個々の科目の評価がそういう形で積み上げていって,公平かつ厳格に,あるいは客観的にしていったら,その1番上にDPがあるという考え方ですので,当然ここの科目の評価,全部がパフォーマンス評価する必要はないんですが,そのようなものもかなり導入していく必要があるだろうと思います。それともう一つは,プログラム評価,あるいはカリキュラム評価に関わる部分,そのようなものと分けて考えるのはおっしゃるとおりで,両輪が必要だろうと思っています。本学においては,パフォーマンス評価,個々の授業のルーブリックを導入するというのはかなり研修会もやって普及し始めましたし,もう一つの後段の部分については,学部によってそれぞれ違いますけれど,基本的には全学で学びの実態調査というIRをやっております。それとプラス学部によっては標準テストの導入を行っております。
【川嶋委員】    既に全学で実施しているものがアセスメントについてはあります。これはIRチームと我々と共同して企画して実施している部分ですけれども,一つは,SERUという研究大学における学生学習行動調査というものがあり,UCバークレーを中心に,今,国際的に大阪大学も含め30数大学が参加しております。大規模なのは学生学習行動調査にはNSSEというものがありますけれども,研究大学における学生の行動学習状況調査のSERUに参加しております。ただ,SERUというのは,NSSEもそうなんですけれども,共通の質問項目ですので,テーラーメードにできない。つまり,大阪大学の学習目標や学習成果をストレートに測定はできないということで,全学的には入学時調査,それから授業アンケート調査,そして4年卒業時,あるいは大学院生の修了時における卒業時・修了時調査,それから卒業生調査,さらには雇用者調査というものを通じて,DPが定めた能力が身についているかどうかということをアンケート調査,主観的なアセスメントですけれども,実施しています。これは経年的に実施しております。まだこの調査を開始したコーホートが卒業するまでには至っておりませんけれども,これを始めております。
  それから,これは全学的に実施しているものですので,学位プログラムごとに学習成果を確認するツールとしてはいろいろあろうと思います。例えば医療系ですと,国家試験の合格率とかございますので,今後の,先ほどのアセスメントプランを検討するというのは,学位プログラムごとにどういうツールを使って学習成果が上がっているかどうかの確認をする。それから何年ごとにするのか,誰が責任を持ってアセスメントするのかといったようなことを検討してもらおうという,そのような意味で御報告申し上げたということです。
【濱名委員】    川嶋委員のは大変よく構想されていることが分かりました。少し確認させていただきたいのですが,沖先生の今の御説明ですと,DPやCPのアセスメントは,例えばシラバスにきちんとした記述がなされているかとか,そのような形のものと,全科目の中での科目のアセスメントが確立すれば,最終的に学位プログラム単位の検証だとおっしゃるわけですか。要するに川嶋委員が言われるようにある程度ピンポイント,つまり,学位プログラムと言っても,共通教養教育の扱いというのは,これは沖先生御自身が大学教育学会のプロジェクトに入っておられてお分かりのとおり,誰も責任を持っていないし,誰も権限を持っていないという,そういうような実態がほとんどの大学で見られるのではないのか。そこまで含めての学位プログラムの検証を,科目のバリエーション,特に貴学の場合は非常にバラエティーに富んだ科目をやられていると思うのですけれども,それが確立できるまで確認できないというふうにも聞こえるのですが,むしろある程度到達目標に対する学位プログラムとしてのDPの検証であるとか,立てられている方策についてやられているかどうかのモニタリングについて補足していただくことがあれは教えてください。
【沖立命館大学教育・学修支援センター長】    今,先生おっしゃったとおり,本学も2段階でやっています。一つは,個々の到達目標の達成度をしっかり測る。これは先ほど言ったパフォーマンス評価をはじめとしてやっています。それと同時に,DPの達成度を測るという取り組みもやっております。それについては,先ほど申し上げました学生調査の一つである,本学では教学IRの学びの実態調査というのをやっているんですが,それによってこれは全学的に実施しております。入った初年次と2回生,3回生時と卒業時と,今は就職の関係のリンクもしていますので,卒業後といった形で,同様に学生が何をどんな力を身につけたかという調査をやっています。これがDPの達成度の一つは証拠になっています。
  もう一つは,先ほど申しました学部によっては,経済とか理工とかは自分のところで作った標準テストというのを使っています。大きくはこの二つでやっております。今現在,学びの立命館モデルというような検討ワーキングを作っているんですが,そこでは成果外も含めた大学の教育目標というものも作っていく必要があるだろうと考えています。そのときにはそれの達成度をどう測るかということと,先ほども出ていましたような,関西国際大学がやっておられるようなカリキュラム・ルーブリックみたいなものも検討していく必要があるだろうというところを今やっている最中です。
【濱名委員】    分かりました。ありがとうございました。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。勝委員,お願いいたします。
【勝委員】    簡単に質問させていただきたいと思いますけれども,我々も大規模総合大学として科目数の削減を学事暦の変更に合わせて今検討しております。先ほど川嶋委員が科目の棚卸しと言われたのですが,その観点から見て,沖先生の取り組み,立命館大学の取り組みは非常に感銘を受けました。かなり細かくカリキュラム・マップ,あるいはルーブリックの利用を通じてプログラム改革をしてきたのだと思います。お伺いしたいのは,ここまでできた背景といいますか,先ほども御指摘がありましたように,三つのポリシーの制定であるとか,シラバスの改訂とか,このような抜本的な改革というものをするに当たっては,いろいろな意味でいろいろな課題があるというのが私立大学にある,と思うのですけど,これを行ったきっかけといいますか,何が原動力となってこのような改革をなされたのかということと,これを行ったことによる教育上の効果がどの程度表れたのか,ということもお聞きしたいと思います。
  それから,川嶋委員には,確認になってしまうのかもしれないのですが,川嶋委員のお考えですと,学位プログラム別にこの三つのポリシーの制定をすべきだとお考えだというふうに理解していいのか。この2点についてお伺いできればと思います。
  以上でございます。
【鈴木部会長】    沖先生,どうぞ。
【沖立命館大学教育・学修支援センター長】    ありがとうございます。できた背景というのは,多分,立命館の文化というところがあります。例えばよくピア・サポートにしろ,教職協働にしろ,どうしてそのようなものができたんだと聞かれるんですが,私が立命館に来る前からそういうものができておりまして,そのような文化が,伝統があったとしか言いようがありません。特に,1980年の後半ぐらいからかなり改革に熱心な大学というところが有名になりまして,様々な改革を先取りして自分のところのものにしていこうという,そのような文化があるとしか言いようがないです。私の貢献した分はほとんどないだろうと思っています。
  それから,効果ですが,改革の究極の効果としては,今現在,学習者中心の大学を目指すということが内外にも明示されています。先生方についても,例えば教授会の中の議論にしても,「何でこんなことをする必要があるんだ。」「学生のためです。」という話をすれば,ほぼ全員がなるほどと言っていただける,そのような雰囲気が醸成されたのが一番の効果だと思います。学生にもそれが伝わっておりますし,我々の大学は我々のコミュニティといった雰囲気ができているというところが感じられます。
【鈴木部会長】    川嶋委員,お願いします。
【川嶋委員】    基本的に私は学位,学位と言っても例えば学士(社会学)でしたら,社会学の授業科目を担当している教員が責任を持ってプログラムを運営すべきである。ただ,日本の課題は文学部の社会学専修というのは教員が数名しかいなくて,本当にこれでプログラムとしての責任体制がとれるのかどうか。そういうこともあって,先ほどお話ししたように,人文系では専門,専修は非常にたくさんあるんですけれども,学位プログラムとしては一本,つまり,学部で責任を持って教育を行いますという形で出てきたということだろうと思います。
【鈴木部会長】    では,日比谷委員,お願いします。
【日比谷委員】    ありがとうございます。沖先生には大変にすばらしいお話を伺うことができまして,ありがとうございます。最後におっしゃいましたように,本日のお話,三つのポリシーの策定,また,そもそもこういう部会があること自体が,一貫性のある学士課程を構築すると,そこに最終目的があると思うんですね。
  本日お話を伺った中で,特にそのために重要不可欠と思いましたのは,日本の大学は非常勤講師の力なくしては回らないという現状がございます。それで非常勤講師の先生方にも,今,御説明くださったような形で科目を依頼し,いろいろなお願いもなさり,また研修もなさるということだったんですが,大体全体の科目の中で,非常勤の先生の御担当が,おおよそ何%ぐらいかということと,それから説明会,学習会をなさるとおっしゃいましたが,時間をそろえるだけでも非常に大変だと思いますので,実際にどのぐらい非常勤の先生方にも浸透しているのかということを教えていただければと思います。
【沖立命館大学教育・学修支援センター長】    ありがとうございます。正確な数字は今覚えていませんが,教養で非常勤講師の担当する科目数は60%ぐらいです。それから,非常勤の先生方に対しての研修は,おっしゃるとおりほとんどできませんが,先ほど申し上げた科目担当者会議の約半数が非常勤になります。その方々については1講分の出勤手当を出しまして,できるだけ集まっていただくようにしております。
  シラバスの書き方であるとか,成績評価のつけ方で一番大きなインパクトを持っているのはシラバス執筆要領になります。それとシラバス点検になりますので,非常勤の先生に,研修はできませんけれど,ほぼこちらの意図どおりに書いていただいていますし,書いていない場合については差戻しになっていますので,そのようなところできちんと統制がとれているのではないかなと思います。
【日比谷委員】    済みません,ちょっと追加で,差戻しをなさると,しっかり直して出してくださるという了解でよろしいですか。
【沖立命館大学教育・学修支援センター長】    はい。基本的には直してくださいます。
【鈴木部会長】    それでは,篠田委員,お願いします。
【篠田委員】    私の方から一つのテーマでお二人の先生にお伺いしたいのですけれども,議論されておりますように,私も同じ考えなんですが,三つのポリシーというのは非常に重要で明確化しなければいけないんですけれども,しかし,これがあればいいわけではなくて,最終目標としては教育の質向上だとか,授業改革が進んで学生の力がつく,成長するというところが最終目標です。資料1-1の4ページの高等教育の質保証というところで提示をしている最後のまとめ,非常に共感するところであります。
  部品の導入は進んだということなんですが,本体がうまく動いているかどうかというところですね。そうすると,本体というのは,2行目に書いてある内部質保証システムが構築されて,それが運用されているということで,その点にちょっと絞ってお伺いしたいと思います。その上のところに,ルーブリックを使ったり,標準テストをしたり,パフォーマンス評価をしたりしながら学生の到達度を評価する。あるいは4ページの4行目あたりのところに授業アンケート,シラバスの遵守度,到達目標の達成度など受講生から点検される仕組みをして問題点を把握するということを通じて,三つのポリシーで示した中身にきちんと動いているかどうかということを点検して問題点を明らかにされる。そのあたりのところが,3ページの上から4番目のチェックの2行目にカリキュラム・マップの目的や使い方ということで論述しているんですけれども,問題点が発見されて到達目標や科目の内容を含めた見直しが多くの科目に求められるということで,それを次回のカリキュラム改訂に生かす,これが内部質保証システムだ。こういうことが本当に動いているかどうかというところが私は一番肝腎なところで,そのためにはいろいろな形で部品を導入して,到達度を可視化するということ,それを通じて問題点や課題を発見して授業改革につなげていく。このところに絞って,立命館での流れとか,組織の在り方とか,責任体制とか,それから先生が所属しているセンターと学部の関係とか,センターと各教員の関係とか,こういうものを動かしていくための流れとか,運営のところに少し絞って現状をお聞かせいただければ大変有り難いと思っております。
  それから,同じテーマで,川嶋委員も,12ページで質保証ということでまとめられていて,これは濱名委員の御質問にも関連すると思うんですが,質保証,モニタリングする仕組みだとか,アセスメントプランだとか,それから口頭では点検評価,改善を行うシステムを動かしていくというようなことが進められているということで,そのような改善の仕組みがどのようになっているのか。
  9ページのところでは,学位プログラムの単位で「入り口」「中身」「出口」の一貫したマネジメントを行うということで,三つのポリシーというと,それぞれポリシーを作って,なかなか連携というのが難しいところなんですけれども,入学をさせて,教育をして,学位を与えて,それが就職とか進学とかというところに,ちゃんと一貫したマネジメントでどのようにつながることが望ましいのか,あるべきなのか。このあたりのところを,少しテーマを絞って御説明いただければ大変有り難いと思っております。よろしくお願いいたします。
【鈴木部会長】    では,沖先生,お願いします。
【沖立命館大学教育・学修支援センター長】    御質問ありがとうございました。これまた答えにくい問題なんですけれど,うちの組織が,まず,教学部という組織は教養を含み,学部・大学院全部をカバーする全学組織なんです。教学委員会というのがそこの意思決定機関で,全学の最高機関になります。あとはもちろん常任理事会,いろんなのがありますが,大きく変わることはないというところですね。その教学委員会の長(ちょう)である教学部長が全てを取り仕切っていますので,不思議な話ですが,ある学部で新しい科目を作る,あるいはカリキュラム改革をする。全部これが教学委員会のマターになっています。少し大きな大学ではこんなことをしているところはないんですが,ある意味学部の壁は厚いんですが,教学に関しては全部全学で合意しなければいけない,そのような組織になっています。
  それともう一つ大きな特徴点は,学生の参画というのは,EUAで言うような学生の自治組織が入るという仕組みをうちの中ではまだ健在です。まだというよりも,ひょっとしたら時代を超えて次の最先端になるかもしれませんが,学生の自治組織が学部の執行部ないし,あるいは4年に1回は全学協議会という形で次期の教学の改革についての意見を言うことができる,そのような仕組みを持っています。彼らの言うことはかなり先進的なことを言ってくれますので,むしろ我々のやろうとしている改革を後押ししてくれるという側面があります。また,本学としては学生の言うことを真摯に聞いていこうというのが全学的に伝統としてございますので,その両輪かなと思っています。私どものセンターは教学部の下で,次こういう方向でやるから手伝えと言われて手伝いに行っているという感じでございます。
【篠田委員】    ありがとうございました。
【鈴木部会長】    川嶋委員,どうぞ。
【川嶋委員】    まだ検討段階ということも含めてお話しするんですけれども,基本的に学位プログラムから教育改革推進会議に宛てて,いわゆる三つのポリシーに基づいて入試,教育の実施,それから卒業時の質保証が行われているということの証明,何をもってそれぞれの学位プログラムはそれを主張できるかということを,毎年とは思いませんけれども,何年かに一度,教育改革推進会議に提出してもらう。そのために先ほどお話しした様々な学生調査の結果でもよろしいですし,学位プログラム独自のエビデンスでもよろしい。そのあたりは学位プログラムで今後検討してもらおうというふうに考えている,というのが篠田委員に対するお答えになろうかと思います。
【篠田委員】    ありがとうございました。
【鈴木部会長】    二宮委員,お願いいたします。
【二宮委員】    沖先生にお伺いします。この10年間の軌跡の中で大変成果が出るといいますか,ここまで議論できるバックグラウンドが出来上がってきたということは敬意を表したいと思っておりますし,これから取り組もう,あるいは歴史の短い取り組み方であれば,ここまで議論は進まなかったんだろうと思います。そのことを前提にして,二つのことを更に質問させていただきたいんですが,もともとDPというのは社会に対する説明責任といいますか,エンプライアビリティを高めようということでもって,ボローニャ・プロセスもそうですが,そういうことであったと思います。
  そのような観点から,しかもコンピテンシーということでございますので,立命館大学におかれましては,学生に発行する成績証明書というものは,この10年間どのような改善を,社会が,あるいは人事課長の方がそれを御覧になるときに,ああなるほどなと,このような側面というのはどうだったのだろうかというのが,これはガイドラインを作るときにはどうしても触れることの一つになるんじゃないかと思いますので,ディプロマ・サプリメントと言ってもなかなか分からないと思いますので。
  もう1点は,アメリカではカリキュラムが余りないと初等中等教育ではよく言っていて,あるようでないんだと。では,何がカリキュラムなのか。日本の学習指導要領に当たるものはなかなか,最近はステートスタンダードがありますけれども,ないのではないかと思います。こういう議論の中で,アメリカでは教科書依存率が非常に高くて,教科書がカリキュラムだと,こういう表現の仕方をするわけですね。そのようなことを鑑みると,日本の大学,教育市場というのは,まさにアメリカのカリキュラムのない,設置基準,設置審査,認可は受けますけれども,カリキュラムがあってないようなところがあるかもしれないという中で,ケミストリーの世界では共通の教科書を作ろうじゃないかというのが日本の先生方の一つの考え方だそうです。立命館大学におかれましては,コア科目とか,いろいろ工夫されていますが,教科書という視点でCPというものの一貫性とか,あるいはコア・カリキュラムが持つ,どの先生が教えられても中身が担保できるといったような,そのような観点からの御議論というのはこれまであったのでしょうか。
【鈴木部会長】    どうぞ。
【沖立命館大学教育・学修支援センター長】    ありがとうございます。最初の御質問ですが,成績証明書を私は見たことがございません。どのようなものを出しているかよく分かりませんが,A,B,CでFまでというところで表記がしてあるものだろうと思います。また,必要に応じて資料を御提供させていただきたいと思います。
  二つ目ですが,今おっしゃったように共通の教科書,本学の場合はパッケージというような言い方をしていますが,かなりあります。特に進展しているのは全学の基礎演習に相当する初年次教育の1年目にやる科目については,学部で到達目標を当然のことながら同じにして,各先生方のやる内容についても教科書レベルで同じものにしていくというようなことが行われていますし,共通のルーブリックを開発しているところもあります。また,私どもの機構が出している科目についてもパッケージを全部作って,どの先生が担当されてもできるようにということをやっております。
【二宮委員】    ありがとうございました。
【鈴木部会長】    坂東委員,お願いします。
【坂東委員】    それでは,手短に沖先生にお伺いしたいと思いますが,先ほど日比谷委員から非常勤講師の方にどのような教育をしていただくかということについての御質問がございました。専任の教員の方たちもなかなか,大学のポリシーに沿った教育をしてくださっているかどうかとチェックするのはとても難しいと思います。学生は評価できるんですが,教員の方を評価するのは非常に難しくて苦労しております。私どもも教員評価はしておりますが,例えばそれは処遇には反映させない,給料には反映させないというようなことで協力いただいているというような状況の中で,専任の教員の方たちが大学のCPに沿った教育をされているかどうかということについて,どのように評価をしていらっしゃるか,誘導していらっしゃるのでしょうか。例えばシラバスをチェックする。非常勤講師の方たちですと,そのようなことに応じてくださらない方に対しては契約を更新しないというようなことはあり得るかもしれませんが,専任の方の場合は,それはまずあり得ません。自分はこれを研究して,この分野の大専門家なんだから,これを是非学生に伝えたい,という方にこうしてくださいというのは,どうされているのか,教えてください。
【鈴木部会長】    沖先生,どうぞ。
【沖立命館大学教育・学修支援センター長】    御質問ありがとうございます。非常勤講師につきましては,先ほど申し上げたとおりですが,専任教員についてもほぼ同様の枠組みでやっています。まず,基本的には全部の学部・研究科でできているというわけではないんですが,三つのポリシー,特にDPについては,教職員がどの程度知っているかというアンケートというものは本学で一部やっております。できるだけ全学部・研究科でやってくれというのを私どもの方から申し上げています。例えば私どもの機構でも,機構のミッションステートメントを教職員が知っているかというのは内部できちんとアンケートをとっています。周知徹底というのはホームページに載せるだけではないと理解しておりますので,やっています。
  それから,学生に向けては,先ほどの学びの実態調査でDPを知っているかということは問うていますし,その達成度についても自己評価をさせています。それから,1番重要なのは,到達目標を書くときに,特にDPとの関係,マッピングでどこに位置付いているか,ツリーとの関係でどのあたりのレベルかというものを確認するのは,これはシラバス執筆要領の中に書いてあります。必ずそこを点検し,その位置付けに応じた到達目標を決めてくださいというようなことをしています。その結果,学生に対して,シラバスに書いてあるとおり,特に到達目標の遵守に関して,到達目標を実現するような授業ができているかどうか,あるいは計画が大幅に変わっていないかというような点検を学生に授業アンケートでしていますし,シラバス点検というのも我々のところで事前にしているのは,そういう意図になります。
【鈴木部会長】    ありがとうございました。
  三つのポリシーにつきまして,本日はお時間を少し超過して皆さんの御意見を頂いておりますけれども,本日の意見交換も踏まえて,引き続き議論をしてまいりたいと思います。三つのポリシーに関しての議事は,本日は以上とさせていただきます。
  本日お越しいただきました立命館大学の沖教育・学修支援センター長,そして,御説明を頂戴いたしました大阪大学の川嶋委員,改めて本日ありがとうございました。


(2)認証評価制度の改善について,事務局から資料2-1及び資料2-2に基づき説明があり,その後意見交換が行われた。

【鈴木部会長】    続きまして,認証評価制度の改善について審議を進めてまいります。本件につきましては,前回の部会の後,大学分科会でも御意見を頂いております。つきましては,前回の当部会での御意見や大学分科会での御意見も踏まえまして資料を準備いただいております。
  事務局から説明をお願いいたします。
【伊藤高等教育政策室長】    資料2-1及び関連資料として資料2-2を御用意しております。
  まず,資料2-1でございますが,「認証評価制度の改善に向けて更に検討すべき事項について」ということで,本日御審議いただきたい論点をまとめている資料でございます。
  まず,1ページに,部会長からも御指摘ございましたとおり,前回の部会後,大学分科会に御報告した際にありました主な御意見について,ここでまとめております。検討課題1の高大接続改革と大学教育の質的転換等を進めるための評価の在り方ということで,主な御意見を簡単に御紹介させていただきますが,1ぽつにございますような,ガバナンス体制の確立等をしっかり整えた上で,内部質保証体制を確立,そしてPDCAを大学自身が回していくことが重要で,そういった実質的な内容まで踏み込んだ評価をしていく仕組みづくりが必要だという御意見や,また,財務力の評価項目というのもしっかり評価すべきではないかということ。また,教学面での大学の教育の質といった評価をしていく際に,何らかのベンチマーチ等が必要なのではないかというような御意見もございました。
  また,2ページ目の検討課題4にございますとおり,社会との関係の強化では,1ぽつにございますように,一般には大学を評価しているという現状は伝わっていない。もっと評価の意義が伝わるような工夫というのが必要ではないか。そのような観点で大学評価基準での規定ぶりであるとか,また,評価結果をまとめる際のアピールのポイントというところについても御意見がございました。
  また,検討課題5の評価人材の育成というところについてもしっかり行っていくことが全体の評価の底上げになるというような形で,もっと積極的に取り組むべきという御意見や,また,その他といたしまして,AC,設置計画履行状況等調査(以下,「AC」という。)との連携というのを非常に重視すべきであるというような御意見もあったところでございます。
  これらの御意見を踏まえまして,前回の部会でもお示ししました資料,改めて構成を申し上げますと,青いところが前期第7期の大学分科会でおまとめいただきました論点・検討課題でございます。そして,赤い点線内が,これまで当部会等を中心に,先ほど御紹介申し上げました前回の大学分科会での御意見というのも入れた形でこれまでの議論をおまとめさせていただいた項目でございます。そして,これらに基づきまして,前回に引き続きでございますが,更に検討すべき事項ということで,本日ここを中心に御審議いただいて,今後の審議取りまとめに向けて御審議を深めていただきたい事項,これを黒線枠で御用意しております。こちらにつきまして,本日御審議を深めていただき,また追加すべき事項について御指摘を頂けたらと思います。
  簡単にそれぞれにつきまして御紹介申し上げます。論点・検討課題丸1というところで,更に検討すべき事項,黒枠のところでございますが,前回のところにも引き続きでございますけれども,各評価機関の大学評価基準について,共通して求めるべき項目の追加ということで,三つのポリシーの一体的策定の有無,また,これらの三つのポリシーに基づく実施状況等,評価項目も加えることなどを挙げております。
  また,評価方法の改善ということで,本日いろいろ三つのポリシーの先の議論でもございましたけれども,どういった形で大学の改革の推進を進めるための評価を効果的にしていくのかということで,例えばPDCAサイクル,内部質保証が適切に実施されているかというのを評価する際に留意すべき視点,また評価方法というのはどのようなものがあるべきかという観点。また,適合等の判断をより厳格にするということで,例えば法令適合性のみならず,教育活動等に重点を置いた総合的な適合,不適合の評価。また,このような総合的な評価に加えて,よりきめ細かなPDCAサイクルを促す方策といたしまして,前回諸外国の事例について発表いただきましたけれども,例えばその中にありましたような評価項目や観点ごとに段階別評価を導入していくというような方策も含めまして,どのような評価方法があるのかということも御審議を更に深めていただければと思います。また,評価において実施すべき事項を新たに設定することや評価方法の簡略化,また,分野別評価の推進等という項目につきましても,更に御審議を深めていただければと思います。
  なお,それぞれの項目について関連する事項といたしまして,資料2-2で御紹介いたしますと,例えば論点1に関しましては,スライド8以降が関連でございます。三つのポリシーの策定状況について,先ほどの議論でも御紹介がありましたけれども,例えば1スライド11の棒グラフでございますが,大学全体で人材養成目的や学位授与方針等とカリキュラムの整合性を考慮して実施されている大学ということで,経年で見ますと改善が進んでいるというところでありますが,まだ3割弱が考慮されていないというような状況であります。また,その下の内部質保証の基盤としての自己点検・評価というところの実施状況でございますが,例えば定期的に周期を設定しているという以外の大学の状況を合計で見ますと,20%程度がそのような回答をされている状況であるとか,また,次の下の資料がございますとおり,自己点検を定期的に実施されているという中でも,例えばどれぐらいのタイムスケジュールかというところで,5年以上ということで回答されているところが2割程度でございます更に,次のページも内部質保証や学修成果についてというところで,評価手法の一つとして考えるところ,例えば学生の学修時間,行動の把握を行っている大学というところを見ますと,こちらも改善が進んでいるものの,実施状況としては4割程度というようなデータもございます。これらも御参考にしていただきながら,御審議を深めていただければと思います。
  次のまた資料2-1に戻っていただきまして,論点・検討課題丸2について御説明申し上げます。評価結果を活用した改善の促進というところでございます。検討課題としましては,これまでも評価結果のフォローアップの仕組みの整備,位置付け等について検討課題になってきたところでございますが,更に検討すべき事項ということで今回黒枠のような内容を御用意しております。
  関連するデータといたしましては,先ほどの資料2のスライド15以降でございます。現状として各機関別の評価機関が行われております評価の結果及びフォローアップの仕組みというところで御用意しているところでございます。例えばスライド15を御紹介申し上げますと,評価結果において適合に至らないもの,例えば期限付適合ということで,また保留という形になったものについて,その後再評価という手続を踏んだり,また,不適合又は基準を満たしていない大学については,追評価を受けるかどうかは大学の任意なのですが,追評価の機会を設けているというところもありますが,注書き3にありますとおり,実績はないというような状況もございます。
  また,下のフォローアップの状況というところでございますけれども,このフォローアップの内容というところ,評価機関ごとに特色ある取組をされていますが,評価の改善報告書の公表というところまでは大方至っていないという状況も中にはございます。
  次のページ以降,その評価結果の指摘と改善状況,また評価の有効性というところに関しましては,スライド18にございますとおり,受け手の大学というところでは質の保証,そして改善というところで肯定的な回答を8割方されていますが,社会からの理解というところに関しては,「そう思わない」「どちらともいえない」という意見がかなり多くなっており,また,社会等の発信というところがここで課題として見えてくるというところもございます。また,これらの資料も御参考にしていただきながら,御審議いただければと思います。
  次に,戻らせていただきまして,資料2-1の6ページ,論点・検討課題丸3になります。認証評価機関の評価の質の向上ということで,検討課題といたしまして,メタ評価,また評価機関の定期的なレビュー等課題になってきたところでございますが,更に検討すべき事項として,今回黒枠のような内容を御用意させていただいております。こちらに関しましても,関連資料ということで,資料2-2のスライド20で現状の評価機関の取組を御用意しております。海外においての先進的な評価手法を調査研究したり,評価対象の大学及び評価委員からのアンケートというのを暦年,また定期的に行っているというような質保証の取組も行われているところでございます。
  資料2-1の7ページ,論点・検討課題丸4,社会との関係につきましても,更に検討すべき事項ということで黒枠のような内容を御用意しております。ステークホルダーを評価へ参画させる仕組み等々というところでございますが,こちらにつきましての関連資料ということで,資料2-2のスライド23以降を御用意しているところでございます。先ほど御紹介いたしました評価の効果・影響というところで,大学の質の保証,改善には肯定的な意見がありながらも,社会からの理解と支持というところに関しましては,「どちらともいえない」という意見が多いというような状況であるとか,スライド25を御覧いただきますと,評価制度に関しての各種団体からの御提言を御紹介しておりますが,例えば経済同友会からの提言というところに関しましては,評価結果は公表されているものの,大学教育の成果を評価する機能が不十分であることもあり,ステークホルダーの多くは認識も参照もされていないという厳しめの御指摘になっております。また,次の丸でございますが,ステークホルダーが,教育の成果により大学を評価する判断材料として,現状の評価というのは十分でないというような御指摘も頂いているところでございます。
  次に,資料2-1の8ページ検討課題丸5では,黒枠のさらに検討すべき事項で,引き続き人材の育成ということが課題となっております。資料2-2のスライド30以降が関連のデータでございます。評価者に関しての現状ということで,例えば評価を行っているものの,学内の経営にあるとか,人事評価への反映というところに関しましては,大学で設けられていない又は実施されているところは少ないという現状でございます。また一方で,評価者の研修というところに関しましては,先ほどの評価機関の各種取組ということで,スライド20のところには各機関で研修を行っている状況も御紹介しているところでございます。このようなものも御参考にいただければと思います。
  次に,戻りまして,資料2-1,評価の効率化,検討課題丸6でございます。こちらにつきましても更に検討すべき事項ということで黒枠のような内容を御用意しているところございます。関連資料は,資料2-2のスライド33以降に御用意しております。こちらに関しましては,各受審大学へのアンケート,評価者へのアンケートというところを記載しているところでございますが,評価者の方の評価対象校に関しましては,評価に費やした作業量ということで,負担の大きさというところではやはり自己評価書の作成であったり,また,評価者の方にも評価の書面調査,自己点検・評価,自己評価書の書面調査というところが評価に費やした作業量として大きいということを御指摘いただいているところでございます。
  また,他の評価との関連,軽減というところで既存の取組でございますが,スライド35,国立大学法人評価におきましては,平成25年にはこの認証評価機関における評価結果等を法人評価における根拠,データ資料として活用可能ということで,関係資料としての活用というところまでは進んでおります。また,大学ポートレート等につきましては,今年3月から本格的に稼働ということで,スライド36に関連資料を御用意しておりますが,下の項目にございますとおり,共通公表項目というところはこのような内容になっておりますが,これまでの当部会での御審議でもこのポートレートの情報の項目充実ということも課題として御指摘いただいているところでございます。
  最後に,資料2-1に戻っていただきまして,論点・検討課題丸7その他ということで,更に検討すべき事項ではACとの関係,また客観的な評価,指標の充実ということで,全国的な学修状況調査の学修時間の把握等,このような比較可能なデータの充実であるとか,また,諸外国の評価制度の現状を踏まえた制度改善というのも前回までに御指摘いただいております。以下,同じような観点で先ほどの資料2-2に関連資料を御用意しているところでございます。
  御審議を深めていただきまして,次回引き続き論点の充実ということでお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。論点も複数ございますので,資料2-2を見ていただきますと,論点丸1から論点丸7までございます。
  まず,論点丸1,2,3の御発言をお願いいたします。
  濱名委員,お願いします。
【濱名委員】    ありがとうございます。1と2にまたがることで,まず1についていうと,三つのポリシーの議論を先にやって,そして質保証の仕組みとしてどういうふうに実現できるのかという議論の順番だろうと思うので,本日三つのポリシーの方に時間をかけたのは妥当だったと思いますし,また,それにある程度見通しが立った段階で質保証の仕組みについての認証評価の話をまとめていくようにお願いしたいというのが1点です。
  もう1点は,認証評価からスタートすると,きちんとした理解ができない。つまり,質保証のシステムの一部ですから,これは鈴木部会長もよく御承知のとおりで,後ろへ出てきますけど,AC以外にも学校法人運営調査もあれば,視学委員制度もあって,全体の質保証の仕組みが,いまどうなっているのかということに対しての全体像の整理,恐らく事務方はしておられると思いますので,その説明を是非きちんとしていただきたい。
  更に言うと,歯がゆく思っておりますことは,スタートラインがそこから始まると,また問題があってしまう。実は設置基準にそもそも問題があるところがあるわけですね。つまり,認証評価もAC等々も全てスタートは設置基準です。設置基準でいうと,例えば看護が今新増設で一番申請が多い。看護の教員組織は設置基準上12人なのですね。ところが,12人では,恐らく現行のコア・カリキュラムとして作っておられるものはやれない仕組みになっています。現実にはできません。だから教員数12人が設置基準で定められているのに,12人で回らないから,教員とは違う形で留意事項等々付けなければいけない。逆に言うと,設置基準が全ての始まりになっているので,大綱化した以降基準等を緩め過ぎている,あるいは不明確になっており,教員数では基準を満たしているのだけれども,実際にはコア・カリキュラムが実施できないから教員を増やせというような部分が現実に出てきているので,システムを検討する場合には,それら現状のところに問題がないのかという検証をしていただく必要があるのではないでしょうか。
  私は大きな方向として,法令的な部分について,法令遵守事項に関する評価簡略化というのが検討課題丸1のところに出てくるのですが,そこをやろうとすると,設置基準と他の質保証システムとの関連性が明確にあった上で,大学人同士が中心となって行える自律的な質保証システムで細やかに見ていかなければいけないところというのをもっと絞れるのではないかという説明を次回是非お願いできればというふうに思います。
【鈴木部会長】    以上の濱名委員から要望が出ております。事務局の方で,この全体をまず見渡せる資料を御用意いただきたいということですので,よろしくお願いいたします。
  小林委員,どうぞ。
【小林委員】    私も全体の進め方なんですけれど,この前からの議論を聞いていまして,かなり細かいところに入り込んでいるという印象を持っています。そもそも何のためにやっているかということが重要だと思うんですね。大学改革については大道具と小道具があると思いますけれど,どうも小道具の方に話が行き過ぎているという気がしてならないんですね。それで,大道具というのは,まさしく質保証をどうするかとか,学位プログラムをどうするかとか,そのような大きな問題で,それに対して必要な小道具を整備していくという話になっていくと思うんですけれど,そこがどうも見えないので,全体の方向性がよく分からなくなっているんじゃないかと思います。
  本日沖先生が言われた最後のことに皆さん共感されたのは,そこのところをはっきり言っていただいたということだろうと思うんですね。その上で,ガイドラインについては,本日は議論しないということなんですけれど,どうもガイドラインというのは大道具でもなくて,小道具でもないんですよ。事務局が前回言われたことで,一般的共通的なものを作ろうとすると,非常に抽象度の高いものを作らざるを得ない。そうかといって,大学の独自性を考えて非常に細かいものを作ると,非常に細かいものができてしまう。どちらも望ましくないと思っております。黒田副部会長が言われたように,共通のフォーマットを取り出すというのが,私はここの仕事だと思っていますので,そういう意味では共通性の方が重要だと思っています。それが第1点です。
  それから,論点の1から3までということだったんですが,これについては,インセンティブとペナルティーということで前回申し上げたのですが,そのことを考えていくことが必要だろうと思っています。具体的にペナルティーといいますと,例えば段階別に評価するとか,それからこれは既にやられていると思いますけれど,保留したり,再提出させるとか,そのようなことが含まれていると思いますし,もっと極端に言えば,短いサイクルで,例えば今の7年じゃなくて,3年ごとに評価するとか,そのようなことのも一つのペナルティーになると思います。それに対して負担軽減というのがインセンティブとしては非常に大きいわけでありまして,これは逆に1サイクルを長くするとか,あるいは決まり切ったことについては一々提出しなくてもいいと,そのようなことを考えるということで大学の負担軽減をするというようなことがインセンティブになるのではないかと思いますので,そこを両方併せて考えていくということが重要であると思っております。
  以上です。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。いずれにしましても大局的な見方に出発点を置いて,そこからどのくらいまで具体的な方向に進められるかという立ち位置を確認しながら議論を進めていくということが非常に重要だと思います。ありがとうございます。そのほかございませんでしょうか。
  それでは,論点の丸4,5,6,7について,論点の丸1,2,3も含んでいただいて結構ですけれども,御意見ございましたら,お願いいたします。
  それでは,黒田副部会長,お願いいたします。
【黒田副部会長】    ありがとうございます。論点の1,2,3はもう済んでいるわけですけれども,濱名委員が言われた全体像をしっかり見極めてから構築するというのは非常に重要だと思うんですね。この中で,特に論点の2で評価結果を資源配分に活用するということが書いてあるんですが,これはまだまだ早いと思うんです。評価結果,この評価の在り方自身がまだ確定されていない中で,資源配分にこれを連動させてしまうというのは非常に難しいことでありますし,また,評価の結果が適合と不適合ということになりますと,その中間段階がないわけですね。ですから,各評価団体は改善事項を付けて1年以内に改善してもらうとか,保留になったところは,その期にきちんと改善されれば適合にするという,そのようなことでやっているわけですが,この在り方をどうするかということなんですね。フォローアップをきちんとやっていくということが重要であると思います。
  もう一つは,設置認可とACと認証評価というつなぎですが,大学ですと4年でACが終わるわけです。ところが,認証評価は7年目ですから3年間のブランクができる。それをどのようにつないでいくかということが問題ですし,また,今の設置認可はとにかく準則主義で,出てくればほとんど全部が通ってしまいます。その代わりにたくさん留意事項が付いてくる。あれだけ留意事項が付いていれば普通は認可しないはずなんですけど,それが認可されてしまうというところに問題があるわけでして,その辺もどのように直していくかということなんですね。
  留意事項一つ一つを全部認証評価のときにフォローアップしろと言われても,なかなかこれは難しいことですし,設置されたときのいろいろな条件が4年間固定されるということなんですね。ところが,今の時代,完成年度まで待っているということはできないから,2年ぐらいで大学改革が行われるわけです。そうすると,認可事項と違うじゃないかということになるのですが,この時代,4年間待ってから改革しなければいけないということではなく,もっと早く改革する,ミッションの変更がもしあるとすれば,それもきちんと認可の更新事項に入れて,それによって先に進めるようなことをしないと時代遅れの大学ばっかりになってしまいます。認可して4年たったらみんな時代遅れということになりますので,その辺のことを考えながら認可をしていかなければならない。それに合わせて今度認証評価をどうするかということになってくると思うんですね。
  この中にいろいろ書いてあるのですけれども,認証評価の問題としては,ステークホルダーを評価委員にということを言っているんですが,一般社会人を評価に加えるということは非常に重要なことなんです。けれども,大学の現場まで行ってもらって見てもらうというときには,その社会人に対する教育を相当厳しくやらないと間に合わないと思うんですね。ですから,各評価機関が持っている全体を評価する評価委員が最終的にあるわけですけれども,そこに入っていただくということなら可能だろうと思います。よく学生もということを言われるんですが,学生は各大学の中での自己評価の中でお使いいただいて評価をすればいいだろうと思うんですね。このような外の機関の中にまで学生を使うと,学生は勉強時間がなくなります。ですから本業をおろそかにしてこのようなところへ使うというのは,私はどうかと思っております。
  それから,論点6のところで大学ポートレートの話が出てくるわけですが,大学ポートレート,どうにか今動き出したところでありますけれども,国公私立大学のトップページを見ますと,違っているんですね。ですから,私立大学の場合は基本情報がトップページに出てこないという,これちょっと残念なんですが,この大学はどれくらいの規模の大学か,どのような学部を持っているのか,教員の数はどのくらいあるのかというのは,やはり最初に国公私共通して出しておく必要があります。その大学の規模をまず知った上で中を見ていくという,そのようなことをやっていったらいいと思います。
  それから,社会に対する整合性の問題です。何でも公表すればいいと言うんですが,公表したときに,社会が求めている公表内容とこちらが出そうとする内容はミスマッチが非常に多い。ですから,社会が求めているものは何かということをもう少ししっかりと認識した上で出したらいいと思います。余りにも細かいデータというものは社会では求めていないんです。基本的には,この大学はどのような人材を養成して,就職先はどのようなところが主にあるんだろうということを見ながらその大学を選んでいるわけですから,公表する場合はそれに合ったような内容にしていったらいいのではないかと私は思っています。以上です。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。坂東委員,お願いいたします。
【坂東委員】    私も濱名委員がおっしゃったとおり,日本の大学の在り方を検討するためのPDCAのうちのPとかCはとても皆さん熱心になさって,特に認証評価というのはCだと思うんですけど,その前にDoをしっかり,本当にしっかりDoをやった上でのチェックであるべきです。チェックを余り精微にし過ぎるというのは,かえって全体のバランスを崩す可能性があるのではないか。そして,特に論点4のところでも,同友会は私もメンバーの一人なんですけれども,厳しい評価がされております。けれども,このようなせっかく多大なエネルギーを費やして行われている認証評価について,学生が大学を選ぶときにも,企業の方たちが大学を評価するときにもほとんど活用されていません。むしろ予備校の偏差値ランキングですとか,週刊誌の就職ランキングですとか,あるいは学生たちの評判とか,そのようなもので皆さん大学を評価していらっしゃるというのは,そのニーズに十分応えていないということの表れなのではないかなと思います。是非,何をステークホルダーは欲しているのか。専門家のための専門家による評価ではなく,一般の方たちが必要とする情報を提供するということを基本に置いていただきたいというのが一つです。その意味でも,先ほど黒田副部会長もおっしゃったんですけれども,そのような一般の方たちに評価委員へ参加していただく,例えば裁判員制度が一般の方たちの視点を持ち込むことによって裁判の在り方が大きく変わったように,大学の在り方も一般の方たちの目を入れることによって随分変わるのではないかなと思います。
  以上です。
【鈴木部会長】    美馬委員,お願いします。
【美馬委員】    評価人材の育成のところの論点5について,先ほど皆さんからいろいろ御指摘ありましたように,人材についても全体像の中ではっきりさせていくべきではないかと思います。認証制度の中,評価制度の中だけではなく。最近,大学の職員としての専門人材の育成とか,専門家ということでいろいろな機能が必要だということが言われています。そのような中で,人材の資源配分として考えれば,職員というところから見て,どのような能力を持った人が必要なのかというのを洗い出して,その中での認証評価制度に関わる人ということになっていくと思います。
  それからもう一つ,そのような人材については流動性ということを考えて,今,特に私立大学だとずっとそこにいらっしゃる方も,きっとほかの大学に行けば,また別の見方で大いに役立っていただけるというふうにも思いますので,人材の流動性を考えたときの職員の資格や認証制度というのも併せて考えていく必要があるかなと思いました。
  以上です。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。時間がちょうど参りまして,皆さんから多様な御意見を頂きました。本日頂いた御意見を踏まえた形で,この認証評価制度に関しましても,今後引き続き御審議いただきたいと思っております。
  それでは本日の議事を終了いたします。
  どうもありがとうございました。


──  了  ──

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