大学教育部会(第32回) 議事録

1.日時

平成26年12月5日(金曜日)17時~19時

2.場所

文部科学省13階13F1~3会議室

3.議題

  1. 子供の発達や学習者の意欲・能力等に応じた柔軟かつ効果的な教育システムの構築について
  2. 今後の大学設置基準の見直しの方向性について
  3. 認証評価制度の見直しについて
  4. その他

4.出席者

委員

(部会長)佐々木雄太部会長
(副部会長)黒田壽二副部会長,谷口功副部会長
(委員) 浦野光人,長尾ひろみの各委員
(臨時委員)金子元久,小畑秀文,濱名篤,吉田文の各臨時委員
(専門委員)安部恵美子, 鈴木典比古,長束倫夫,山田礼子の各専門委員

文部科学省

(事務局)小松初等中等教育局長,吉田高等教育局長,藤原私学部長,德田生涯学習政策局審議官,藤野生涯学習政策局総括官,水田主任視学官,森高等教育企画課長,里見大学振興課長,永山私学行政課長,田中高等教育政策室長,高見教育制度改革室専門官,片柳高等教育政策室室長補佐,白井大学振興課課長補佐 他

オブザーバー

(オブザーバー)篠田道夫(桜美林大学教授),高橋真木子(金沢工業大学教授),西川幸穂(学校法人立命館人事部長)

5.議事録

(1)第5次提言を踏まえた諮問事項関係について,文部科学省から資料1-1,1-2,1-3に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【佐々木部会長】  それでは,所定の時刻になりましたので,第32回大学教育部会を開会いたします。本日も,御多忙の中,御出席いただきありがとうございます。
 本日は,前回に引き続き2つの課題,1つは教育再生実行会議の第五次提言を踏まえた諮問事項に関わる案件,そして2つ目に大学教育の質保証の充実に関わる設置基準の改正,認証評価制度の改革等であります。
 まず,第五次提言を踏まえた諮問事項の関係では,高等学校専攻科からの編入について,前回の御審議でおおよそ部会としての考え方が固まったと考えますので,本日は,この間進めてまいりましたパブリック・コメントの意見内容についても事務局から報告を頂いた上,諮問に対する答申案を要綱のような形で決定をいたしたいと考えております。
 後半は,大学教育の質保証の関連で,設置基準及び認証評価制度の改正について御審議いただきます。設置基準については,いわゆる「高度専門職」などの設置について,どうも実態も大学によって非常に違っていると思いますし,また委員の中でも,その実態について,あるいは,それぞれの「高度専門職」なる者についての認識にも差がございますので,本日は,最先端を行く大学の経験を関係者からヒアリングさせていただくということも含めております。どうか御協力をよろしくお願いいたします。
 それでは,早速ですが,第五次提言を踏まえた諮問事項関連について審議を始めたいと思います。
 まず,この件については,審議と並行してパブリック・コメントを実施しておりましたが,その結果について事務局の御報告を頂きます。その後,前回の議論を踏まえた,いわゆる高等学校専攻科からの編入学関係の資料について,前回の審議を踏まえた修正等の御説明いただくことにいたしております。
【白井大学振興課課長補佐】  それでは,資料1-1と資料1-2に基づきまして,初めに,国際化に対応した大学・大学院入学資格の見直しに向けてという部分について,御説明をさせていただきたいと存じます。
 この部分につきましては,資料1-1の前の方になりますけれども,合計で23件のパブリック・コメントの意見を頂戴しております。その中では,見直し案に賛同する,より柔軟な仕組みを入れていただきたいという御意見。それから,2つ目でございますが,緩和の方向はいいのだけれども,特に配慮をしていただきたい事項として,修業年限要件の緩和,あるいは大学院入学資格の拡大ということについての御指摘もございます。
 この中で,修業年限要件の緩和という論点ございますけれども,日本国内においても,現在,飛び入学の制度というものもございますので,ここについては若干論点が違うのかなという部分もございますので,これについては,今後,私どもの施策において参考とさせていただきたいと考えてございます。
 また,大学院入学資格の拡大の部分でございますけれども,ここについては文部科学省において,今後,答申案の方で御説明いたしますけれども,具体的に評価の基準,例えば認証評価をきちんと受けているとか,3年以上の教育科の課程があるかどうかということについて,きちんと確認をするような制度設計にしていきたいと考えてございます。
 それから,パブリック・コメントの3点目でございますけれども,現在の学校教育法の規定の中で,文部科学大臣の定めるところにより,これと同等以上の学力があると認められた者という規定がございまして,この人については入学資格が認められているということでございますけれども,運用で対応できるのではないかという御指摘もございます。ただ,同等以上の学力があると認められた者ということについて,具体的には学校教育法の施行規則,省令の方で書き下している部分でございまして,ここについては省令の改正が必要になってくるということでございます。基本的には,安易に修了要件を緩和すべきではないのではないかという御意見とも推察されますけれども,12年要件,16年要件自体を緩和するものではなくて,飽くまで例外的な措置として,異なる教育課程を持っている国については,その教育の内容なども確認しながら,例外的に緩和していくという考えを取っているところでございます。
 以上が,これに関するパブリック・コメントの主な内容でございます。
 資料1-2の方にお進みをいただきたいと思いますけれども,結論から申しまして,こちらの方では形式的な部分以外の修正というのは,パブリック・コメントを受けた結果としては特にございません。内容についても,これまでの部会の審議でおおむね御理解,御了解を頂いているものかと思いますけれども,復習までにごく簡単に御説明いたしますと,見直しの必要としては,日本国内では12年若しくは16年の教育課程というものが大学院,あるいは大学に進む上で必要となっているということがございますけれども,諸外国の状況を見ますと,必ずしもこれにそぐわない教育課程をお持ちのところもあります。そのような場合には,直ちに高等学校等を卒業しても,日本の大学,大学院に進むことができないという課題が生じているということがございます。
 それゆえ,2番のところでございますが,大学入学資格については,例えば日本とは異なる11年の教育課程を持っているような国についても,文部科学省において教育課程の相当性,その国における教育課程の相当性であるとか,その国において高等学校等修了後に大学にどれだけ進学しているのかということを確認した上で,対象国を指定することで,例外的にこうした国についても我が国の大学への入学を可能とするようにしていってはどうかという御提言の案でございます。
 3番の大学院入学資格についても同様でございますけれども,必ずしも我が国と同様に16年の教育課程がない,満たないような場合であっても,その国においてきちんと認証評価機関による評価の仕組みがある,あるいは学士を取得する教育課程も例えば2年とか極端に短いということではなく,ある意味,国際的な標準にもなっている3年以上の修了年限を満たしている場合には,こちらも例外的に我が国の大学院への入学資格を認めてはどうかという考え方でございます。
 最後の4番でございますが,アドミッション・ポリシー(入学者受入れの方針),各大学で御用意いただいているわけでございますけれども,飽くまでこの入学資格というのは国が定める最低の基準,最低限の基準でございまして,各大学の御判断において,もしこれでは十分な学力を担保するに足りないということがあれば,各大学でより厳格なポリシーに基づいた入学の判定をしていただくことになろうかと考えてございます。
 この点については以上でございます。
【高見教育制度改革室専門官】  続きまして,私の方から,資料1-1に戻っていただきますが,高等学校専攻科から大学への編入学に関するパブリック・コメントについて御紹介したいと思います。資料1-1の下の方になりますけれども,高等教育機関における編入学の柔軟化についての意見でございます。
 全体では54件ございました。その中で,1つ目の丸にありますように,個人の意思で様々な分野に挑戦できる仕組みの整備の一環として,高等学校専攻科からの編入学の道を開くことは適当であるという御意見がございました。
 その下になりますけれども,専攻科の生徒というのは中学校段階で職業に対する目的意識を持って専門高等学校への進学を行い,また家庭の経済的事情等で進学する者も多く,教育水準も高い水準になるよう努めていることを踏まえて,高等学校専攻科から大学への編入学を認めることが適当であるという御意見を頂きました。
 1枚めくっていただきまして,修業年限,授業時数など新たに設ける基準につきましては,ハードルを過度に設けることにより制度の活用促進に支障が出ることがないようにするべきという御意見がございました。
 その下の丸,基本的には賛成であるけれども,大学へのバイパスとして安易に使われることがないようにすることが必要であり,どのように単位認定するかの判断は大学に委ねられるべきであるという御意見を頂きました。
 3つ目の丸になりますけれども,特別支援学校の専攻科においても大学への編入学を可能とすることが適当という御意見がございました。
 一番下,高等学校専攻科,省庁系大学校等から大学への編入学を認めるためには,専攻科と大学との教育課程の接続等について検討される必要があるという御意見等がございました。
 続いて,お手元の資料1-3を御覧ください。今回,答申案になる「高等教育機関における編入学の柔軟化について」という資料でございます。
 1.は形式的な修正になります。
 「2.高等学校専攻科からの編入学」に関してでございます。1枚めくっていただきまして,2ページ目でございますが,ここの部分は形式的な修正でございます。
 3ページ目,今回の具体的な,これまで御議論いただいた内容になると思いますけれども,まず3つ目の丸のところでございます。ここは文言の整理で,高等教育相当の教育が行われている高等学校専攻科については,質の保証の仕組みを確保した上で単位認定ができる学修の対象とするということ等について触れております。
 その下の4つ目の丸になりますけれども,これが前回御議論いただいたところでございます。詳しい前回の資料は,参考資料3でもお手元に配付しておるところでございます。赤字の部分でございますが,「専攻科について本科と分けて外部評価の実施と結果の公表を義務付けた上で,大学への編入学が認められる水準を有しているかどうかを判断する等の観点から,評価者に相当数の大学関係者や高等教育の評価に携わる者等を入れることとする」と追記してございます。
 丸を1つ飛ばしていただきまして,下から2つ目の丸になりますけれども,これも前回,会議の中で御意見あったところでございますが,「なお,編入学や単位認定は各大学の判断において行われるものであることから,編入年次及び単位認定する学修については,各大学が主体的に個別の判断を行うことが重要である」。
 さらに,一番下の丸になりますけれども,「また,大学への編入学については,今後の高等教育の質の担保・充実を図る観点から検証し,その結果に基づいて評価の在り方について所要の改善を行っていくことが求められる」という形で記載しているところでございます。
 私の方から以上でございます。
【佐々木部会長】  以上二つの文書について,答申案と括弧付で付されておりますが,御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。ただいまの説明に御質問,御意見ございましたら伺います。
【濱名委員】  何点かあるのですが,専門学校の方,資料1-3の2ページについて趣旨の確認がまず1点です。下から2つ目の丸のところで,対象としているのが,既に編入学が認められている専門学校と同等に,組織的・体系的な教育がなされている専攻科に限定してという規定になっています。これを見たときに,次のページの高等学校専攻科については,「例えば」と「また」で看護と農業が出ています。これは,確認をしたいのですけれども,専門高校の教育,大学教育に発展性のある専門教育ということに限定をしていると読んでよろしいのでしょうか。
【高見教育制度改革室専門官】  濱名委員のおっしゃっている趣旨というのは,工業とか商業とか,そういうものを対象にしているのかということでしょうか。
【濱名委員】  あるいは普通科高等学校は対象かということです。これは黒田副部会長が最初の段階で指摘されたことで,組織的・体系的でない教育というのは通常想定できない,いわば補習教育でもない限りにおいては,組織的・体系的な教育でないものの例があるのだったら逆に挙げていただきたいのです。例として挙げられているのは看護と農業なのだけれども,全分野の高等学校の専攻科がこういう対象になるのかどうかということがまず1点目です。
【高見教育制度改革室専門官】  まず,濱名委員の御質問ですけれども,今回対象としようとしているのは,高等学校の専攻科で一定の基準を満たす者ということになります。そのような意味で,分野の限定を掛けることは難しいのではないかと考えております。ただ,一方で,多分,委員が懸念されているのは,現在はございませんけれども,今後,普通科の専攻科が出てきたときということでしょうか。
【濱名委員】  そういうことです。十分にあり得る話だというのは黒田副部会長が指摘されたとおりで,特に都道府県単位で,地方と大都市圏の高等教育進学機会の格差が拡大して,過疎県でいえば,いかに安価にして,地元に子供たちをとどめ置いて高等教育機会を保証するかという発想を考えたときに,普通科教育まで想定された制度というように読み取られる。このままでいくとそう読み取られるのではないか。普通科も含んでいるとお考えなのかということと,もしそのような意図がないのだったら,どのようにしてそれに対する抑制を掛けることができるのかということを教えていただきたい。
【高見教育制度改革室専門官】  普通科の専攻科については,前回も会議の中で議論になったところでございまして,その際,答えさせていただいたこととしては,例えば普通科の専攻課程は学士等の資格が得られるものではないことですとか,各大学の編入学の門戸というのは1年時に入学する者に比べたら相当狭い。そういう意味では,そのような需要が生じにくいことですとか,進学準備のための専攻科を設置する場合には,今度,大学において単位認定されることが考えにくいことですとか,そのようなもろもろのことがあるのではないか。そういう御指摘のような懸念は生じにくいのではないかと考えております。
 そういう中で,今回,専攻科から編入学を認める趣旨というのは,高等教育としての質の担保ができている専攻科からの編入学を認めるということでありますので,例えば高等学校での学修を補い,大学進学の準備学修を目的とするような専攻科,こういう者の編入学を想定しているものではないということは,文部科学省としてもしっかり周知してまいりたいとは思っております。
【濱名委員】  もう1点,よろしいですか。
【佐々木部会長】  はい,どうぞ。
【濱名委員】  それと関係するのですけれども,今の御説明の中で高等教育相当の質という話があったのだけれども,非常に気になるのは,3ページの3つ目の丸の見え消しで,「質保証の仕組みを確保した上で」の前,「高等教育機関に相当する」というのは消去されている。では,何によって今の補佐の説明が生きるのかというと,4つ目の丸のところに大学への編入学が認められる水準を有しているかという水準なのですね。これは一体何を意味するのか。元の見え消しが消されなければ,高等教育機関に相当する質の保証ということが明確なのだけれども,では,高等教育に相当しないで,なおかつ大学への編入学が認められる水準を有しているかどうかというのは何を判断基準にするのだろう。その辺について,ちょっと教えていただきたい。
【高見教育制度改革室専門官】  すみません。先ほど若干説明が足りなかったかもしれませんけれども,ここで「高等教育に相当する」という文言を削っておりますが,一方で,上の行になりますけれども,「このような状況を踏まえ,高等教育相当の教育が行われている高等学校専攻科」と書いておりますので,そういう意味では高等教育相当の内容はしっかり担保しているという趣旨で考えています。ここは,文言の整理として変えたものでございます。
【濱名委員】  なるほど。文言の整理ですね。分かりました。
 私ばかりで申し訳ないのですけれども,一番気になったのは3ページの下のところです。「また,大学への編入学については,今後の高等教育の質の担保・充実を図る観点から検証し」というのは,何を検証するのかというのが1つです。つまり,単純にどのぐらいの数が出たとか,卒業率があって,途中で付けた注文に対してきちんと検証していただいたということなのですけれども,あの状態のままでいうと範囲をどう見るのかということなのですね。高等専門学校は確かに優等生だった,だけど短期大学も専門学校も,あの数字というのは問題があったと思うのです。8割を切って,2割以上が2年間で終えられないという状態ですよね。ここで言うところの編入学についての観点からの検証というのは,大体どういうことを想定しておられるのかというのが1点目です。
 もう一つ分からないのは,「評価の在り方について所要の改善を行っていく」ということは誰に対して言っているのか。例えば,個々の学校の単位認定のような話とも読み得る。他方,先ほど言った,今回,門戸開放は結構なのだけれども,4種類のバイパスが出てきて,その質保証の仕組みが,評価の在り方というのはミクロからマクロまであるわけです。この前の質的転換答申の中で,インスティテューション,学校レベルのものから,学位プログラムのレベルのものから個々の学生に対するレベルまで,実は評価の在り方というのは非常に多義的なのですね。その場合,どこからどこまでのことを想定して評価の在り方について所要の改善を行っていくのか。文脈から見ると,国が行っていくことを求めているようにも見えるのだけれども,意外とあいまいで,各学校が評価の在り方の所要の改善を行っていくことが求められると書いているわけだから,要するに主語と述語の問題もあるので,その辺りについてはもう一度きちんと説明していただきたい。
【田中高等教育政策室長】  失礼します。まず検証については,委員御指摘のとおり,編入学の実態というのはこの会議でも多少データは紹介させていただきましたが,そういう実態だけでなくて,実態を踏まえてどういう課題があるか。それから,効果の面もあると思いますので,いわゆる定性的なデータだけではなくて,そこから伺える効果,あるいは課題というものを捉えていく。効果があれば,それを推進していくことだと思いますし,課題があれば,それを踏まえて必要な見直しをしていく。そういうものが検証の対象として考えられると思います。
 それから,評価のところは国の制度として言っておりますので,基本的には国がどういうことを見直していくかということを想定しております。
【濱名委員】  制度的な見直しまで含めてというように理解していいですか。というのは,前回,私が途中で中座したのもあるのですけれども,要するに政策的なインプリケーションというのは非常に大きくて,一旦,こういう制度的な形のものを決めると,今回,専門学校のものが前例となってこの議論の引き合いに出てきたと同じように,一度決めた制度は簡単には変えられませんというような形になってしまうことはないのかということの確認です。
【田中高等教育政策室長】  どのような制度でも制度改正というのは行われますので,それは検証によって,必要であれば制度は改正するということでございます。それから,後段の設置基準や認証評価につきましても制度改正を御議論いただきますので,成果や課題を検証した上で,必要なものがあれば制度の見直しも含めて検討するということになろうかと思います。ただ,まずは制度を開きますので,開くときに見直しが前提ということはないわけでございますので,まずは制度創設に取り組んで,そこはしっかりとした検証をして,そして課題があれば制度も含めて見直しを図っていくということを,この文書では意図しているということでございます。
【濱名委員】  1点だけ申し上げると,要するに制度に問題がないかというと,個人的には疑問が非常に残っているわけです。つまり,認証評価で裏付けされているルートで編入学してくるものと,やっと評価,点検を学校関係者以外に高等教育関係者を入れて行おうというものを同等に行っていくことについては,私は,制度的にスタートの段階で問題がないというよりは,言葉は悪いのですけれども,これはやはり仮免許に近い状態というか,ある程度その認証結果を見ていかないと,高等教育相当の質的な担保が第三者によって明確に制度化されて行われるものと,学校長が委嘱する範囲の中で運用されるものが並列してスタートすることになるのです。
 そこのところについては,やはりきちんと検証を行っていただくことが明言されないといけないのではないか。そうでないと,認証評価という制度と,学校単位で行われている外部評価というものが同等ということになり,我々が高等教育についてこれまで積み上げてきた質保証の仕組みは何だったのかというような疑問が残ってもいけないと考えています。その辺りについては是非,今,田中室長が言われたように,問題があるとまでは言いませんけれども,問題があるかないかの検証を担保するときには,やはりその段階でもう少しニュートラルにというか,問題あるかもしれないというぐらいの立場ではいけないのかと思うのですが。
【田中高等教育政策室長】  認証評価制度のような第三者評価制度が大学,短期大学,高等専門学校には導入をされていて,専門学校,高等学校には導入されていないという差異はあるわけでございますが,編入学とセットでこのような仕組みが創設されたわけではないわけでございます。要は論点としては,認証評価制度があるかないかということではなくて,編入学を認めるに当たっての質保証の仕組みとして,どこまでが必要かということなのではないかと思っております。そうした際に,専門学校の前例も踏まえれば,認証評価制度までのものでなくても認めることができるのではないか,適当ではないかということがこれまでの議論だと思うわけでございます。それでは今後の取組として,質保証の仕組みから足りないということで,将来的な検討課題ということで委員御指摘のことを,今回,答申案に明記をしたという趣旨でございますので,その点は御理解いただければ有り難いと思っております。
【濱名委員】  要するに,検討課題は残っているという認識でよろしいのですね。先ほどの室長の説明,スタートの段階で制度的に問題があるという形でスタートするのではないという御説明と,今の説明では若干ニュアンスが違ったのですけれども,その辺りについては国としてきちんと検証していくと,そういう含みでよろしいのでしょうね。
【田中高等教育政策室長】  どのような制度でも,スタートのときに完全無欠なものはないと思います。そういう意味では,この点につきましても課題が全くないということでスタートを切るわけではないと思います。そうした際,編入学につきましては,既に制度を開いた部分も含めまして検証が十分でないという御指摘もございましたので,そういうものを答申において明記をさせていただきたいということでございます。
【佐々木部会長】  ほかの委員からは御意見ございませんでしょうか。
【長尾委員】  そのことなのですけれども,言葉の問題だけだと思うのですね。今,濱名委員がおっしゃったのは,結局,今,ここで課題が出ている,いっぱい出てきたのだけれども,それをこの文言にしてしまうことによって,ここのメンバーは分かっているのだけれども,流れてしまうのではないかというところの懸念だろうと思うのですね。私も思いますのは,ここに一言入れることは可能ではないかと思うのは,最後の丸のところの2行目「充実を図る観点から検証し」の「検証」の主語が,これでいくと「編入学については」になってあいまいです。学校を検証するのか,制度を検証するのか,いろいろな考え方があるので,今後,時間が流れるにつれていろいろな可能性になってしまう。だったら,ここのところは,例えば「この編入制度を」ということを入れてしまうことはできないのでしょうか。それから,その後の「その結果に基づいて評価の在り方」は,何の評価というのが引っ掛かるところかと思います。でも,そこまで触らなくても,もし「この編入制度を検証し」と入れることで多少解決できるであればと思うのですが,いかがでしょうか。
【佐々木部会長】  ただ今の点は,もし長尾委員の御提案に御賛成いただければ,具体的な修文については私に一任していただけませんか。
【長尾委員】  はい。
【佐々木部会長】  よろしくお願いいたします。
 ほかに,委員の方々から御意見ございませんか。
【谷口副部会長】  先ほどお話があったように,最後は大学がきちんと判断するということを担保していただいて,いろいろな形で大学に上がってきますが,大学が当然知っている形にしていただかないといけない。いろいろな形で上がってくる,それを知った上で大学がきちんと判断するということであれば,いろいろな場合があってもいいと思います。そこを踏まえて大学が判断しますから。そういうところをきちんと担保していただければいいと思います。
【佐々木部会長】  ほかにいかがですか。
 それでは,ただ今の点は,前回の会議の最後に長尾委員から御意見があって,おおむねそこで合意ができたのではないかと思います。ですから,大きなストリームとして進路変更の柔軟性を図るという趣旨を踏まえて,濱名委員等々,御懸念の点は,例えば最後の3ページの3つ目のパラグラフ,あるいは最後のパラグラフについて,少し文言の記載を修正させていただいて御心配のないようにしたい。しかし,質の保証を担保するのは,最後は個々の大学の主体的な判断であるということを踏まえて,この辺で御賛同いただければ,これを骨子として答申案としたいと思いますが,いかがでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【佐々木部会長】  ありがとうございました。それでは,そのように運ばせていただきます。これは,多少修文をした上で,今後,大学分科会,中央教育審議会総会へと諮ってまいりたいと思いますので,御了解いただきたいと思います。御審議,御協力ありがとうございました。

 

(2)今後の大学設置基準の見直しの方向性について,事務局から資料2-1に基づき説明があり,その後,篠田教授,高橋教授,西川人事部長よりそれぞれ資料2-2,2-3,2-4に基づき説明があり,意見交換が行われた。

【佐々木部会長】 それでは,次の課題に参ります。今後の大学設置基準の改正の方向性について,この間,議論いたしてきましたのは,スタッフ・ディベロップメント(以下,「SD」という。)の実施,あるいは「高度専門職」の設置を設置基準にうたうかどうか,こういうことでありました。先ほども申しましたが,この分野は恐らく大学によって実態がかなり違うと思うのですね。したがって,委員の間でも基本的な,SDとは何か,「高度専門職」とは何かという辺りについて,イメージが必ずしも一つにはなっていない。そこで,本日は,こうした活動を先進的に進めていらっしゃる大学関係者からヒアリングをさせていただきたいと思います。
 本日,お忙しい中おいでいただいた,3人のゲストスピーカーを御紹介いたします。
 まず,お一人目は,桜美林大学の篠田道夫教授です。
 お二人目は,金沢工業大学の高橋真木子教授です。
お三人目は,学校法人立命館の西川幸穂人事部長です。
順次,プレゼンテーションを行っていただきますが,それに先立って事務局から,この件について,これまでの部会での意見を端的に御紹介いただいて,その後,3人の方々からプレゼンテーションいただき,まとめて質疑応答の時間を取りたいと思います。
 では,まず事務局からお願いします。
【白井大学振興課課長補佐】  失礼します。資料2-1に,これまでの主な御意見をまとめたペーパーを用意してございます。また,後ろに,参考資料5,6ということで,前回お出ししました資料をお付けしているところでございます。
 私どもとしては,これまでの議論の中で,職員の資質向上,教員だけではなく全ての教職員を対象とした,より幅の広い資質向上の取組が必要ではないのか。事務組織についても,その目的や名称等を含めた見直しが必要ではないのか。「高度専門職」についても,学長を補佐するような専門的な知見,知識を有する職員の配置に関する各大学の取組を後押しすべきではないかというような観点から御議論いただければと考えてございます。その際,具体的に対象になる法令等につきましては,内容が固まってから検討していくべき部分もあると思ってございます。
 これまでの議論の中では,特に「高度専門職」について,先ほど部会長からもお話がありましたように,その定義等についての御意見がございました。資料2-1でございますけれども,この定義の関係で,例えば専門職大学院制度の関係であるとか,そもそも専門性というのは何に関する専門性なのか,大学に関する専門性ということではないか。また,多様なものについて一律的に規定することはできるのか,という様々な御意見を頂いてございます。また,この制度についてもある程度固めておかないと,大学間での流動性が確保できないのではないかという御意見もございました。
 法令に規定することについてでございますけれども,私どもの方で先に大学設置基準という言葉を出してしまった部分がございますが,最低基準ということになりますと,各大学に義務付けられるのではないかという御懸念もあったのかなと考えてございます。ここについては,具体的な法令改正のイメージが固まった段階で御相談をさせていただきたいと考えてございます。
 その次でございますけれども,アメリカなどでは職能団体が組織されていて,それぞれの中で事務職員の高度化につなげるようなことをされている。我が国でも制度的に位置付けることで,そうした動きの後押しになるのではないか。
 従来,教育職,事務職という枠組みしかない中で新たな業務に対応するためには,こういう制度も有効ではないかという御意見がございます。
 また,「高度専門職」については,そもそも受皿がない中で本当に作って大丈夫なのかという御意見もございました。一方では,受皿が不十分であると言っていたら,いつまでも進まないのではないか,政策的に方向性を示していくことも必要ではないかという御意見も頂いてございます。
 SDの関連では,例えば地域連携の方法論など,SDはどういうことを行うか示していくべきではないかという御意見。
 その他の御意見としましては,アメリカのラーニング・アドバイザーなどの仕組み,認定・認証制度を学協会が設けているということが役立つのではないか。また,人件費の増につながることになると課題もあるのではないか,国としても支援を考えるべきではないかという御意見を頂戴しているところでございます。
 以上,こちらの方で簡単にまとめさせていただきましたけれども,本日は有識者の方からこれを深めるような御意見が頂戴できればと考えております。
【佐々木部会長】  このような議論をいたしておりました。
 引き続き,三人の方にプレゼンテーションをお願いしたいと思いますが,遠くからおいでいただいて,時間が限られて申し訳ないのですが,まず10分ぐらいずつお話いただいて,質疑応答の時間にいたしたいと思いますので,よろしく御協力ください。
 では,篠田先生から。
【篠田桜美林大学教授】  それでは,発表させていただきます。よろしくお願いいたします。
 私はたまたま教育学術新聞に,このテーマというか,近いテーマで書かせていただいて,本日,現物をお届けしています。日本私立大学協会で刷り上がったばかりらしいのですけれども,12月3日付のものです。本日の原稿は,その原稿をベースにした報告になっていますので,原稿の方を御覧いただければ結構かと思います。資料2-2で御説明を申し上げたいと思います。後のお二人の方が,専門職の具体的な在り方について御説明くださるということなので,私は職員をめぐる全体の状況とか,職員の力量向上の必要性について少し御報告を申し上げたいと思います。
 まず,私自身の体験的なというか,体感的なことを最初に書いているのですけれども,実は教育学術新聞で連載を3年半前ぐらいから担当させていただきまして,各大学に調査に伺っております。3年半で,既に80大学ぐらい回らせていただいています。11月19日付の新聞に,最近の鈴鹿医療科学大学の改革が例に載っています。ここは「医療人底力教育」という,学修力育成につながるような共通基礎教育を,結構いろいろな議論を経て学部で確立しました。副学長がリーダーシップを取って改革を進めたわけですが,その下で,ここにはインスティテューショナル・リサーチ(以下,「IR」という。)推進室というものがあって,職員の中堅幹部がいろいろな形で学生の学修状況や,いろいろなデータを分析して支えるような形で活動することによって,改革が実を結んだし,今も推進をしているということです。
 この連載自身は「ミドルのリーダーシップ」というタイトルなのですけれども,そのタイトルのとおり,中堅の職員,中核になる職員が,企画部やIR推進室,学長室など,それぞれの大学によって名称は違うのですけれども,トップリーダーを支えながら改革を推進している。また,リーダーが改革するに当たっては,そういう中核になる職員が実際に大きな役割を果たしているということを,現実に訪問をしてつくづく感じたわけです。
 それ以下,いろいろな大学の事例が,四国大学,東京家政大学,北海道医療大学,福岡工業大学と書いてあります。時間がありませんので,一々は御説明申し上げませんけれども,そういうところがいろいろな組織,主には企画部,企画室というところが多いわけですけれども,後でデータが出てきますけれども,中堅,中核になる職員が,自分の大学のデータの分析はもちろんですけれども,全国データを分析する。今は,ホームページで他大学の自己評価報告書だとか,事業計画や事業報告書など全部見られますので,いろいろな取組をしているということが,その目で見ればきちんと比較,分析ができて,競合大学だとか,あるいはモデルにすべきような,ベンチマークすべきような大学ができますので,そういうところをきちんと分析する。一方で,今の法制度や行政の動向など専門知識を背景にして,その大学に合った進むべき道を見付け出してといいますか,提案をする。それを,ただ提案するだけではなくて,実際に意思決定に持ち込んで実践するということをリーダーと一緒に行っていく。そういう職員が現実に存在するし,そういうことがなければ改革は実際には進んでいかないというのが現実だと思っています。
 2番目のところで,戦略遂行を担う新たな職員の役割などと大きな言い方を書いているのですけれども,やはり厳しい環境はますます深まっておりますので,そういう戦略スタッフといいますか,こういう職員が非常に求められている。それは,国立大学法人が中期目標とか中期計画を立てて行った時代から,私学もそういう形で,あるべき姿や目標,計画をはっきりさせて改革に取り組むというところが非常に増えているわけです。やはり全分野で改革を推し進めて,質向上を行わなければ,大学が本当に評価をされるようなことになっていかないわけですので,そうなると本当に総合作戦といいますか,改革の総合作戦です。これは全分野に及ぶわけで,教員だけでは絶対にできないわけです。そうしますと,職員自身はやはり今までの事務処理型を脱却して,それを支えるような形で,もちろん全員がそういうレベルに一気に行くわけはないものですから,それを担うような中核的な専門家の問題意識だとか,企画提案力ということが非常に重要になってきているのではないかと思います。
 現実に,2枚目のところを見ていただきたいのですけれども,中期計画の原案というのは,我々の調査,これは2006年でちょっと古い調査なのですけれども,中期計画の原案策定部局は,担当の事務部署が40.6%,法人事務局長が最終的に責任を持って原案を,これは原案策定なので,決定はもちろん理事会とか教授会がするわけです。それから,もう一つ,2009年の調査では,原案策定は教員よりも職員が中心だと答えたところが64.9%ということで,やはり事務処理レベルを超えて,大学の未来が掛かっているような政策立案などに職員が,かなり期待もされているし,実際に原案を書く段階では力を発揮しているということだと思います。
 もう一つ,本日,我々の調査の中から,職員調査というものを委員の方に配付させていただいております。詳しくは後で御覧いただければと思いますけれども,必要な部分だけは抜き出しております。これを見ても,政策決定に対する事務局の影響度合いというのは,分野によっては非常に高くなってきているわけです。中長期計画で58%,事業計画の策定などでは67%,教育計画は20%と非常に低いわけですけれども,学生支援や就職支援,学生募集や教育周辺の領域というのは,職員がかなり中心的な意思決定をして,実際に遂行することを担っていますし,それを担う企画調査部局というのも増えてきているわけです。企画部局を設置しているのは52%,教育改革推進部局は34%,マーケティング部局が26.8%,IR部局が16.9%。これも最近の山田委員の調査だともっと増えているということなので,こういう部局が非常に増えている。これは事務処理というよりも,調査分析をして,その中から改革案を提案して,大学を変えていくということをサポートする組織だと思います。
 一方,どういう職員の位置付けになっているかというと,その下にもありますように,職員が教学の運営,提案とか意思決定に参画できていないところがまだ半数ぐらいあるわけです。理由はどういうことかというと,職員の位置付けが低い,教授会の自治意識が強い22.1%,教員が統治している13.9%,職員の能力不足もあるということですので,非常に厳しい状況にある。総じて言えば,やはり事務局職員は大学運営や教学方針に口を出すべき職務ではないという根強い意識が大学の中にあるというところがあるわけです。
 一方,職員の育成システムはどうかというと,このデータの最後の方にいろいろな大学の研修制度が全部付いていますので,御覧いただければいいと思います。もちろん前進しています。非常に高度なレベルで行っているところもありますけれども,外部セミナーや新人研修などは行っているのだけれども,全体の能力を高めるようなところについては年に一度や二度しかできないということです。
 人事考課制度も,以前は大学は全く行っていなかったけれども,今,大手は7割ぐらいのところが何らかの人事評価制度を持っています。これも育成に寄与しているのですけれども,いわゆる査定型と育成型に二極分化しているのですね。育成型で,きちんと評価基準を高く持って行っているところは,こういう企画型の職員の育成にも成功していますので,それ自身も使うことができるわけです。
 育成の一環として大学院進学を推進したり,補助金を出していかせたりしているところはまだ7.4%と非常に少ないということですが,全体としては,職員を育成して力を付けて大学運営の中にきちんと位置付けていくという流れは,今,本当に求められているのではないかと思うわけです。
 そのことは,最近の中央教育審議会答申,これは資料に出ていたとおりなのですけれども,非常に高い位置付けをしていただいて,これが職員の仕事を励ましているといいますか,推進していることで非常に力になっていると思います。直近のガバナンス改革の審議のまとめでは,事務職員が教員と対等の立場で大学運営に参加するとか,かつてない表現で職員の位置付けを言っているわけです。
 一方で,大学設置基準の第41条ではどういう規定になっているかというと,事務を処理ということです。「大学は,その事務を処理するために専任の職員を置く適当な事務組織を設ける」というような規定になっております。これは,もう現実に果たしている役割とも,あるいは中央教育審議会や文部科学省があるべき姿として示している内容と大きくかい離していて,これが先ほど申し上げました教授会自治だとか,教員統治の伝統,そういうところを一掃して前進した大学も非常に多くなっているのですけれども,やはり参画を押しとどめるような形になっていると思います。今回,「高度専門職」,あるいは専門職,大学運営職,名称はいろいろあろうかと思いますけれども,こういう位置付けをするというのは,単に一部の職員の専門性を評価するだけではなくて,やはり事務処理型の業務を脱却して職員の位置付けを高めて,専門家集団を育成するという上で非常に大きな意味があると思います。
 内部から変えるということになると,やはり相当な年月,特に下から,職員側から変えていくというのはなかなか難しいわけですので,こういう形で大学設置の目安になる,大学設置基準というもので示していくことは非常に大きな力になります。これからまた厳しい時代に突入していくと思いますけれども,やはり職員集団を今から育成していくことがどうしても必要ではないかということで,非常に重要な改革ではないかと思っております。先ほどのメモでも人件費の問題がありましたけれども,やはり文部科学省の提案を見ますと,専門職の位置付け方も大学によってかなり多面的に対応できるということなので,別体系を作ることもいいですし,手当でも対応できるということですので,大学自身がきちんと明確に専門職の位置付けをしていけば,十分対応できるのではないかと思っております。
 以上で,私の発表を終わらせていただきます。
【佐々木部会長】  ありがとうございました。
 それでは,引き続き高橋教授からお願いいたします。
【高橋金沢工業大学教授】  ありがとうございます。私の方からは,リサーチ・アドミニストレーター(以下,「URA」という。),今の大きな大学運営の機能の中で,とりわけ学長を補佐する部分ですが,研究の推進支援を担って研究力の向上を担う「高度専門職」の例として,URAの現状と定着に向けた課題として御説明させていただきます。
 と申しますのは,私,この10年ほど,法人化した国立大学の,いわゆる知財本部整備事業で,特任准教授という形で2つの国立大学に勤めておりました。その後の直近の4年間は,独法の中で研究戦略の企画や大型の国プロの支援という形で,研究開発の実務を特任の形でやっておりました。
 その経験値を踏まえますと,個人的には上司や環境に恵まれていたのですけれども, 2004年当時から,学内での自分の立ち位置,当時から第三の職種の必要性は指摘されてはいたものの,まずマイノリティーであることですとか,なかなか学内が変わっていかないということにある種の素朴な疑問を感じております。
 そこら辺も含めて,本日は短い時間ですけれども,コンパクトに御説明したいと思います。いずれにしても研究開発の話ですので,先生方の広い範囲の中では一つですけれども,とりわけ施策が研究開発の部分では,かなり政策ドリブンで,施策の中で研究開発を大学が社会と一緒にやっていくというトレンドがありますので,ある種いい具体例かと存じます。
 2ページ目,下の段になりますけれども,現在,URAというのは,つい先日の文部科学省からの発表によりますと,69の大学で696人がその任務に当たっております。その人たちが,御自分の大学でどのような部分の業務を行っているかということを,モデルでカテゴライズしたものがこの図になります。
 赤字のところを見ていただきますと,69の大学においても,どのような形でURAの業務を行ってもらっているかという業務範囲が結構異なります。最も特徴的なのは,右の上,研究戦略・プレアワードと書いてありますけれども,これはいわゆる大型の競争的資金を企画して,申請書を書いて,獲得するまでの支援に特化したものです。多くの研究大学を目する大学ではこのタイプでのURAの業務は行われていますが,それ以外にも,時系列で申しますと,資金を獲得した後の運営,産学連携,教育との連携,国際連携なども含めて,全ての業務を担うオールラウンド型ですとか,周辺領域だけを担う人,いろいろな大学のバリエーションがございます。先ほどの御議論で,ある程度均質なモデルが必要ではないかというものもありましたが,昨今の大学の個性化の時代に向けてということを考えますと,この程度のバリエーションというのは,個々の大学の既存の組織との整合性や,大学の規模ですとか,どの分野に特化していくかという自分の大学の強みを生かす意味で,この程度のモデル化は適切かと考えております。
 また,職能団体がこのURAに関してはアメリカで50年以上の歴史がございます。その中でも,大学によって,この10年ここを目指していくというような中で,このモデルが,例えばオールラウンド型からプレアワード型に移るなど,アメリカにおいてもこのモデルのシフトが行われており,またバリエーションもあることから,日本もそのような状況になりつつあるというのが現状かと存じます。
 というのが今の概況ですが,私が本日,ここで御説明したいことは,定着と,それに向けた課題として2つほどございます。
 1つ目は,まず制度面のお話です。今,多くのURAが事務職員として遇されているかと存じますが,事務職員の制度的な性質とURAの求められる実態の活動がなかなかかい離しているという点があります。ポイントは,ローテーション人事であることと,固定の勤務時間管理であることです。
 少しだけ御説明いたしますと,まずローテーション人事ですが,当然,専門家ですので,学外の専門家コミュニティーとつながること,そして,そこに長くいることで蓄積される価値というものがあります。ローテーションですと,これがなかなか維持,形成できないというエッセンシャルな問題があります。また,当然ですけれども,長期に属するほど,その価値は上がるわけですが,それが破壊されてしまって分断されるのは,その人個人だけでなく,大学としても問題かと思います。
 もう一つ,勤務時間なのですけれども,委員の方はよく御存じだと思いますが,教員は24時間365日,教育と研究のことを考えているわけですけれども,その人たちもURAにとって重要なステークホルダーです。ですので,当然,機動的であり,柔軟性があって,フットワークがいい。簡単に言うと,学内のワークショップを土日にやるけれども,一緒に勉強に来てくれと信頼のあるURAが言われたときに,いえいえ,それはできないのですと言うのは,なかなかいいチャンスを逃しているというのは実体を伴ったお話だと思います。ということで,裁量労働的な活動は,ある種この業務においてはマストだと思います。
 とはいえ,次のページになりますけれども,下の段になります。今,各大学でそれなりの対応はなされております。例えば,京都大学においては,URA制度が始まる前に,弁護士や弁理士を学内に設置するために既に特定業務専門職員という規定を設けて,学内で遇していらっしゃいます。実際に,そこで勤務に当たっている弁護士資格を持った方とかいらっしゃいます。
 その責任者の方に何度もお話を伺ったところ,課題はあるということなのですけれども,まず,御存じのように士業であれば社会的にも認められているので,学内の給与基準と少し違う体系で遇するのはある種妥当であると納得感が得られやすい。しかし,URAの業務,また新しい業務というのは,なかなかそこに対して説得力を学内で持たせることができなくて,結果として給与が抑えられてしまうという面があります。また,裁量労働制が必要という意味では,デスクに座って,きちんと専門知識を提供する弁護士や弁理士よりも更にURAは求めるわけですが,そこをルールで規定することがなかなか難しいというのはよく聞く話です。
 それ以外にも,下に挙げておりますように,幾つかの大学ではトライアルがなされています。とはいえ,一番下になりますけれども,各大学の共通の課題として,改正労働契約法の観点から安定した長期の雇用が担保できない。また,うまい大学は,トップが理解した上で,実態は裁量労働しているものの,ルールでそれをきちんと定めることができないというのが共通の課題と伺っております。
 今のが制度面のお話です。
 次に,業務の内容についてです。URAが研究力を向上するための推進支援専門職であるがゆえなのですけれども,先ほど御説明したように,現在のURAの職員の人口のうち,最も特化してURAに求められている職というのは大型の研究資金の獲得支援です。我々の言葉で言うと,いわゆる研究戦略支援業務,プレアワード業務になるのですが,御想像のとおり,これは研究の企画を練って,申請書を書くので,学内でもそのことをシェアしていい人が限られる機微の情報になります。また,大学の中にコンペティティブな状況が生まれたりすると,ますますその情報を,誰にきちんと伝えて,誰に言ってはいけないかということをマネジメントする力が問われます。しかし,ここがポイントなのですけれども,不安定な職でありますと,当然,時限雇用になるわけで,自分の次の雇用は大丈夫かという人間としての不安感が生まれます。
 例えば,これはファンディング側の人たちとよく会う人たちから聞く話なのですが,個人のポテンシャルとしては熱心で有能なのだけれども,自分の次の雇用とどうしてもリンクして考えてしまうので,ある種,率直な意見交換ができないというのはとてももったいないことだと,よく聞きます。ここから言えるのは,業務遂行のために力を出してもらうための安定したポジションが必要かと思います。
 次に,これも釈迦(しゃか)に説法ではございますが,大学の特性に応じた研究力強化というのは求められるところなのですけれども,御想像のように,論文というのは研究実績であって過去の話です。今後,ますます今後のポテンシャルを各大学に沿わせて考えるというときに,それが3年や5年でできるのかというと,おのずと限りがあるというのは御想像のとおりかと思います。全員が全員,中長期でということではないかと思いますが,きちんとした人が数人というか,規模によりますけれども,中長期でその大学のことをしっかり把握することがセットされることが必要かと思います。
 このお話を研究者にすると,実は最後の下のぽつですが,それは研究者自身ができるという話もよく聞くところです。ここは,我々URAが,相手によっては言葉遣いをとても繊細に考えて言わなくてはいけないところなのですが,一つの具体的な例として次のデータを御覧ください。
 これは,私が分析したものではなくて,その筋の専門家の方が,実はこのデータを取るのはかなり大変なのだそうですけれども,総務省とヨーロッパとアメリカの各種の研究開発データを基に算出したものです。ポイントだけ申し上げますと,要は大学等の中で研究費の支出源はどういうところが担われているかということで,下の日本語のところだけ,日本の国公立の研究費というのは公的資金が95%以上です。とすると,今,大学に求められている,単なる産学連携だけではなくて,社会との窓口を担うような者を,おのずと研究者は,どこの財源で,そのミッションと定義の下に活動するかを考えれば,別人格での担当者がその情報を読み解いて,きちん編集して,研究力の向上に結び付けていく必要があるのではないかと考えます。
 以上2点をまとめますと,最後になりますけれども,URAを例にしますと,大学で期待される機能を発揮されるために,四つほど基盤整理が必要かと考えます。
 一つ目は,先ほど申し上げた専門性で評価される人事制度,これは当然,給与も含みます。ただ,ここに関しては幸いにも,里美課長も以前,御担当いただきましたが,文部科学省の方で,オールジャパンでURAのスキルをある程度一定化しようという形で,3年がかりで作られたスキル標準が現在あります。そして,その改定も徐々に実務の人たちの声を入れてしております。もちろん,まだあやふやな面もございますが,これが先ほどの大学の類型化を踏まえて,ある程度一定の日本としてのURAのスキルになっていけば,専門性で評価される人事制度というのは下地がそろっているかと思います。
 二つ目と三つ目,裁量労働制と安定・長期の雇用に関しては,本日の議題かと存じます。
 四つ目は,そうはいっても人がいるのかというのは非常に重要な話ですが,これも幸いに,2004年に既に科学技術基本計画において,雇用の名称は様々なのですけれども,少なくとも14職種で,10年の施策によって,1,700人の類似の人たちが生まれています。また,その多くは3年や5年の時限で,企業や知的財産等の知識を持って,大学のためにという形で入っていらっしゃった方たちで,優れた方はそういう制度を乗り継いで,今,URAの仕事をしているという方もいらっしゃいます。
 URAに関しては,ある種,多くの先達(せんだち)がなさった施策と,実務者の意識が高まりつつある状況で,専門職として,システムとして制度とする機は熟したのかと存じます。
 以上で,御説明を終わらせていただきます。
【佐々木部会長】  ありがとうございました。
 では,引き続き西川部長からお願いいたします。
【西川学校法人立命館人事部長】  御紹介いただきました,学校法人立命館で人事部長を拝命しております西川と申します。本日は,よろしくお願いいたします。
 1枚物のレジュメを用意させていただきました。所属しております大学は大規模の私学でございますし,私は職員でございますので,お二人の先生方のお話とは少し違い,現場で人事担当部局の仕事をしている立場からということでございます。したがいまして,データやエビデンス等に基づいてきちんと御説明ができるという部分はやや弱い部分もございますけれども,職員という立場からこの問題をどのように考えているのかということを少しお話しさせていただくということで,御容赦いただきたいと思います。
 なお,ここで申し上げております,私のレジュメで書いております職員というのは,これまでの先生方と同じように事務職員と言われている中身でございまして,教職員のことを職員と呼んでいるのではないということで御了解を頂ければ思います。
 まず,1番のところで,大学をめぐる環境の変化と大学「高度専門職」と書いております。後ほど,「大学『高度専門職』」と書いている意味は申し述べさせていただきたいと思います。
 ここでは,大学の在り方が相当多様に展開している状況は私が申し上げるまでもないことなのですが,私どもの仕事といたしましては,それを支える人的な体制整備をどのようにするのかという観点から考えますと,やはり現状では量的整備と質的整備と両方が求められる現状にあると思っております。しかし,人件費の問題等もありまして,量的整備を大きく増やしていくというだけではなかなかいかない中で,やはり質的な展開をどのようにしていくのかが非常に重要なところに来ているということが第1点でございます。
 それから,これまで教員,職員という,ここでは二分論という言い方をしておりますけれども,よく教職協働という言葉が使われますが,これは教員と職員があるということを前提にした言い方であろうかと思いますけれども,これを超えて,やはり大学に求められていることに対応できるような体制,仕組み作りを考えていかなければならないところに来ているということを実感いたしております。そういう意味では,教員,職員に関係なく,場合によっては,必要な機能をどのように今の構成員で担っていくのかということを考えなければならないと,こういう実感を持っております。
 三つ目は,大学「高度専門職」と大学アドミニストレーターの育成と書いておりますが,実はこの「高度専門職」を育成することを通じて,結果として大学のマネジメントや大学運営,あるいは戦略的なことができる職員育成にもつながっていく。つまり,大学アドミニストレーター育成そのものにも実はなるのではないかと思っております。
 では,ここで言う「高度専門性」なり「高度専門職」とはどういうことなのかということを少し考えなければならないと思いますが,私が申し上げておりますのは,当然でございますが,いわゆる専門職大学院で言っているものと一致するものではございません。そういう意味で,鍵括弧を付けた上で,「大学」を前に付けて表現をいたしております。
 いろいろな本で専門性というものを私なりに学ばせていただいたことによりますと,必ずしも専門性というのは,三つ目のぽつに書いておりますけれども,ステイタス・プロフェッショナルのような,つまり国家資格等を持ったような者だけを専門性と言うわけでは必ずしもないと思っております。
 その点では,本田先生の御指摘のように,必ずしも学問分野である必要はないということもございますし,また,高度な専門性というのは,いわゆる専門性と,それぞれの業界や組織,その大学の固有性や特殊性のようなものと,両方の組合せの中で高度専門性というものは生まれてくるのではないか。つまり,ステイタス的な部分で専門性が高いというだけで「高度専門性」ではなく,やはり大学のこと,あるいは高等教育のこと,もっと言えば学生のことだとか,教育・研究のことについての理解がある人,そういう意味では業界の特殊性のようなものかもしれないと思うのですけれども,こういうものを両方備えた,あるいはそれらが統合的に備わった人材を育てていくということが必要になってきている。これを大学「高度専門性」,あるいは大学「高度専門職」と私は考えています。
 そういう点で,どういうことになるのだろうかと私なりに考えたことを,「したがって」以下で若干書かせていただきました。担当する大学運営,あるいは教育・研究を遂行するために必要な専門性を有する者,あるいは,ここに「高度な」という言葉を入れた方がいいかもしれませんけれども,そういう者がここで言う大学「高度専門職」ではないかと,今,考えております。
 職員は,以前から,スペシャリストかジェネラリストかという議論が長くあったように記憶いたしております。実は,これを統合するといいますか,今日の大学において,そのような状況をそのまま放置するのではなくて,やはりこのような「高度専門職」的な人材を育てることが,スペシャリストかジェネラリストかということをある種統合する,大学「高度専門職」ではないかと私は考えております。
 そういう人物に期待されることを,どういうように考えるのかと考えてみました。当然のことながら,ステイタス的なプロフェッショナルである専門性を一定持たなければならないことは前提でございますが,その上で三つほどの要件として書きました。一つは,マネジメントやガバナンスについての理解があること。これは,大学というものについての理解があることにもなろうかと思います。それから,当該分野において専門性を有しつつも,やはり大学においてそのことが,一定業務経験があるということが必要のように思います。それから,この間,議論がされておりますような学長のリーダーシップの発揮だとか,教育の質向上に寄与することを目的に業務に当たるのだと,この辺りが大事な視点ではないかと考えております。
 ただ,私ども人事の担当部局から見まして,幾らか懸念している点といいますか,留意をしなければならないと率直に感じているところがございます。一つは,各大学によって,先ほどのお話にもありますけれども,必要な分野やレベルなど,条件は違うように思います。したがいまして,各大学の意向がある程度尊重されなければならないだろうと思っております。
 二つ目に,人件費を押し上げるような要素にはならないようにしつつ,そのためには,先ほど言いましたように質的な整備,つまり量的な拡大ではなく,このような形で対応していくことが求められるだろうということでございます。
 三つ目は,大学で組織的に働くということになりますので,組織の目標との関係で仕事ができるということが必要だと思います。この点は,先ほど高橋先生のお話の中でURAのところでお話がございましたけれども,どの方が指揮命令をし,どのようにその方の業務管理といいますか,労働管理するのかということなども,職種によって,分野によって随分違うように思います。この点を一つにまとめるということは,なかなか難しい面があるのではないかと思いつつ,そういう点でこれらを留意点と述べております。
 それから,どのようにしてそういう人物の育成をしていくのかということに関わっては,外部からの登用ということも十分あり得ると思います。高い専門性だとか,一定の高い専門性というのは,なかなか大学内で育成することは難しいという部分もあるかと思います。そういう意味もございますが,プラスアルファになっていきますと,人件費の押し上げ,あるいは大学の特殊性,特性というものを御理解いただけなかったり,あるいは自分の思ったキャリアデザインと実際に来てみたときに違いがあったりするということは,気を付けなければならない点かと思っております。
 それから,大事な点は,職員の立場から申し上げますと,職員のキャリアデザインの一つとして,やはりこういうものになっていきたい,あるいはこういう役割を担っていこうという人材を育てていくことがとても大事ではないかと思っております。この点は,先ほど篠田先生が御説明なされた点とも十分関わる点かと認識をいたしております。
 そういうように考えますと,丸1,丸2,丸3と書いておりますけれども,職員が大学「高度専門職」を担えるように人事制度やSDを整備するということ。それから,現行では担えない部分につきましては外部から採用していく。全体としての配置計画については,各大学の経営判断や政策判断に委ねるということになるのではないかと思っております。
 最後に,5番目でございますけれども,大学設置基準に記述することの意味でございます。これは,私どもの立場として賛成とか,反対とか,そういうことで申し上げるわけではないのですけれども,もしそのように記述することになるのであれば,丸1,丸2,丸3と書いてありますように,やはり職員のキャリア形成の一つの方向として受け止められるように記述していくことが大事であるということで,先ほどのSDの義務化の議論ともセットで考えていかなければならないのではないかと思っております。大学の事情を踏まえた配置ということもそうでございますし,SDで「高度専門職」を養成し,人事制度とセットで各大学が検討できることが大事ではないかと思っております。
 表現等については,今後,御議論がされることと思いますけれども,最後に1点だけ,日本の大学職員の仕事の仕方というのは,濱口圭一郎先生の言葉をかりれば,メンバーシップ型の組織の中で働いているのが現状だと思います。労働法的に言えば,日本型の雇用の中で職員は今まで仕事をしてきているという面が非常に強いわけでございます。今回は,ある種ジョブ型のスタイルのものではないかと思っております。これを根本的に一気に転換することはなかなか難しいと思いますが,全体として,一定こういう専門的な力量を,うまく日本型の雇用形態の中でも取り込んでいくようなことを考えていくということが,私自身,各大学の人事部局を担当しております者の課題でもあると認識しておりますし,さらにこういうことを進められるような後押しをお願いできれば,大変有り難いと考えているところでございます。
 大変雑ぱくな説明でございますけれども,御質問等がございましたら,そこで補わせていただきたいと思います。ありがとうございました。
【佐々木部会長】  お三人の方々,貴重な情報と,そして御提言をどうもありがとうございました。
 それでは,この後30分ほど質疑応答の時間を取りたいと思いますので,どなたからでも結構です。いかがでしょうか。
【谷口副部会長】  少し教えていただきたい。基本的には,皆さんおっしゃったことに共感といいますか,そのとおりということが随分あるのですけれども,例えば篠田先生の御説明の中に,いろいろ調査をしたら中期計画等々の原案は教員よりも職員が中心だというようなお答えがあったと思います。そういう答えが半分あったということですけれども,これはそのまま読めばいいのか。あるいは,議論しているときには教員も入るし,職員も入っていろいろ議論しながら,最後に,とにかく文章にするのは職員の方というようなことは当然あると思うのです。その辺の部分が,実は意見というのは教員からも結構出ていて,職員が将来構想を作ったのではなくて,教員の方もいろいろ言って,最後,文章としてまとめたのが職員だというような場合も入っている可能性は,僕はあると思うのですけれども,その辺についてはどうなのでしょうか。
【篠田桜美林大学教授】  そのとおりです。したがって,全部データを書いてないのですけれども,このほかに企画委員会とか委員会で検討するとか,いろいろなこともありました。やはり委員会で検討するというのは多いです。委員会というのは,当然,職員と教員が入っているのですが,最終的な原案の取りまとめ,だから先生がおっしゃったように,文章に書いて提案をする形にするというのが法人事務局長であったり,担当の事務部署であったりするところも結構多いということを言うためにデータを拾いました。
【谷口副部会長】  その場合,やはり少し趣旨が違って,では文章にしたことでもって将来構想を考えたかというとは違うので,そこのところはやはり区別しておく方が良い。事務の職員の方が将来のことを議論して考えるというのは本学の場合もあります。そういうことと教員や職員が議論して将来構想を創ることを混同して議論してしまうと,おかしい話になってしまうという懸念を僕は持つものですから,そこのところはやはり区別された方が良いかなということがございます。
【篠田桜美林大学教授】  ただ文章を取りまとめただけではなくて,企画部というのはその事前の調査をしたり,ニーズを調査したりします。その中から選択肢を提案したりという専門的な作業があって,そうしないとなかなか,学長がいきなりそういうところまで全部入って,データを見てというわけにいきませんので,そこのところを作り上げる力というのは,もう今は本当に学長を支えるスタッフの力として重要で,それはやはり専門的な力がないと,単に言われたことを処理するレベルの仕事では全然ないのではないか。そういうレベルの仕事が非常に拡大しているということを申し上げています。
【谷口副部会長】  それはおっしゃるとおりだと思います。
 もう一つ,ついでに申し訳ありません。高橋先生は,前は国立大学の准教授として,いろいろと知財等々のところを御担当だったと,先ほどおっしゃいましたね。
【高橋金沢工業大学教授】  はい。
【谷口副部会長】  准教授ですから,当然,そのとき先生は裁量労働制の中にいらっしゃいますね。
【高橋金沢工業大学教授】  はい,そうです。特任准教授という形でおりました。
【谷口副部会長】  そこを確認しておかないと誤解が生じます。こういう仕事に携わる方は裁量労働制がいいという話もあったものですから。本学も,教員という立場で専門的な大学運営に関する仕事をしている方もおられます。今は,職員と教員しかありませんから,教授,准教授とかの称号を付けた方と同じような仕事をしている場合もあるかもしれないけれども,URAの一部の方は教員ということではなくて,どちらかというと事務職員的な方もいらっしゃるので,今,その辺が混ざっている状況かなと思っています。
【高橋金沢工業大学教授】  混ざっております。
【谷口副部会長】  そういう意味では,先生がおっしゃるように教員や職員と区別して,きちんとした職種というものを作ることに私は非常に賛成なのですけれども,先生としては教員として自由にできたはずですよね。
【高橋金沢工業大学教授】  私自身は,とりわけ研究担当理事のスタッフの任になっていましたので,もう完全に裁量労働です。
【谷口副部会長】  ありがとうございました。
【山田委員】  幾つか御質問ありまして,1点目は,多分,篠田先生,西川先生にお伺いすることかなと思います。
 大学に関して,「高度専門職」といいますか,そういう定義がなかなか根付いていないというようなことでございますけれども,例えば外部から登用というときに,よくあることとしては,広報であるとか,あるいは人事という点で,外部企業の方々から登用したりする場合も結構あると聞いております。しかし,形態は違うにせよ,大学の職員の多くは大学を卒業して,その大学に奉職するわけですから,結構その間の中で企業と同じような形で,逆を言えば,企業の方々が広報の専門になる,あるいは人事の専門になるというような形で,キャリアを磨いていくということは普通にできるはずだと思うのです。そういうことが今までなぜ余り焦点になってこなかったのかというところに,恐らく大学独特の育成の仕方というものが企業とは違うのかなと思ったりもいたします。
 また,私のイメージでは,「高度専門職」というときにどうしても浮かび上がってくるのは,国家資格で担保されているということであれば,しっかりと根付くのではないかと思ったりするのですけれども,そういう「高度専門職」というのは,もし大学の中に存在すると,一つの部門だけにずっといるものなのか。例えば,学長室の中で企画を担当する人であれば,そこで専門性を磨いた人がずっといるべきなのかということも少し不思議に思うところではあります。
 つまり,言い換えれば,「高度専門職」の人たちというのはほかの国では,多分,1つの大学の中で存在するものではなくて,水平に,横に異動していく市場があってこそ「高度専門職」が広がるという現状があるかと思うのですね。例えば,一つの部署で同じ仕事をずっと専門職としてしていくことが果たしてよいのかどうか。職員の方々に聞きますと,やはりラインであることが大事であるという考え方がございますから,そういう中で,それをどのように変えていくことが可能なのか,企業との関連からお答えいただきたいのが一つです。
 もう一つは高橋先生になのですけれども,URAは自分の大学でも来ていただいて,本当に重要な役割を担っていただいていると思っております。ただ,先ほどこの中にもありましたように,労働法の関係で,ほとんどの方が任期を終えるとほかに移っていくということがある。ただ,ほかの移っていくということも,ディマンドとサプライの関係がありますから,なかなかスムーズにはいかなくて,やはりこの中の問題点にもありますように,キャリアの行き止まりみたいなところにもなってしまって,幾ら第三者の専門職として育てようと思っても,実際にそういう市場がなかなか広がらない現状がありますので,それをどうするのかということがあります。
 この議論は,以前,企業等でありましたビジネススクールの問題にもよく似ていて,企業でも,それこそ「高度専門職」としてMBAを持った人たちを雇用しなければならなかったと問題があったと思うのですね。企業の場合は,当然,私企業ですから法律でどうこうということにならないので,前々回か何かで他の委員がおっしゃっておりましたけれども,それは需要と供給があってこそあるものだということをおっしゃっていたと思います。そうすると,結局,需要と供給のバランスがうまくいかなくなって,実際,企業等でもMBAの活躍する場所がなかなかないまま終わっているのですけれども,このような形になりはしないかという危惧を,私は専門職を支援する立場でずっときておりますけれども,どうしても思ったりするのですが,その点,いかがでしょうか。
【佐々木部会長】  それでは,どうでしょうか,三名の方に質問がありましたら先にお願いします。
【小畑委員】  単純な質問でございます。高橋先生に対してお聞きしたいのですが,「高度専門職」と言うと,URAが一番考えやすいし,与えられた任務も外から見ていて大変分かりやすい。最近,相当数が増えてきて,ここでの問題点というのは早急に解決する方策を当然検討しなければいけないと,私自身も思っています。先生の御説明の中でローテーション人事とあるのは,単純に有期雇用が多いと考えてよろしいのかどうかということです。
 それから,裁量労働的な活動が求められると。これは,例の研究大学院の大学選定のときに,私,選考委員の一人だったので,内部でもこの件,議論になりました。選考委員会の議論で,どのようにすればという結論的なものはもちろん出なかったのですけれども,裁量的なファクターというのは非常に強く出る,だけど教員とはまた違う,純粋な事務系職員とも違うということで,年俸制という手があるよねという話があったのです。年俸制というのは,幾ら時間を掛けて仕事をしても,年俸という形でその人に対する報酬が一定額で,人事的にも行いやすいのではないかという話があったのですが,現状は年俸制ではなくて,裁量労働でもなくて,例えば土日に出勤というと勤務時間のやりくりが大変で,しかも残業手当の上限があって非常に行いにくいと,そういうことを意味されているのか。その点をお聞きしたいと思います。
【佐々木部会長】  ほかに御質問はありますでしょうか。
【濱名委員】  すみません,篠田先生と西川先生にお尋ねしたいのですけれども,いま一歩よく分からないのは,専門職という言葉の中には管理職トラックではないという意味合いが含まれていると思うのですね。ところが,これまで大学の中でこういう役割を果たしてきた人たちは,うちの事務局長なども典型的にそうですけれども,金沢工業大学の職員を見ていても思うのですけれども,やはり管理職として上がっていっているのですよね。要するに,皆さんが言われている「高度専門職」というのは,管理職になっていこうという志向と,専門職という志向について,どういうような状況なのか調査されたことがあるのでしょうか。お話を伺っていると,どちらかというと,管理職として事務局なり大学の理事になっていくプロセス,能力開発の観点から言うと,お二人のお話は,「高度専門職」ではなくて「大学運営職」という方が近いような気がするのです。
 URAはそれとは違って,職種の特殊性はよく分かるのですけれども,高橋先生が言われていることで言うと,雇用の安定性と処遇の高騰というのは両立しないのではないか。組織内労働を行っているがゆえ,長期安定的な話になって,専門職としての処遇をするようになれば専門職としての,仮にこの後,市場が形成されたとしたら,流動職になりますよね。よりいい条件の方へ移っていくという話で,だから長期安定性と専門職制というのが,日本のほかの専門職を見ても,例えば弁護士であったとしても動いていますよね。その辺りについては,現状,どちらの方がより問題だと考えていらっしゃるのか教えていただきたいと思います。
【佐々木部会長】  では,篠田先生から順番にお答えいただきたいと思います。
【篠田桜美林大学教授】  山田委員,濱名委員から御質問を頂きました。職員のこういう専門職とか専門性ということを考えるときに,やはり教員の場合は教育・研究とかはっきり分野が限定されていますし,その評価というのは,例えば論文とか評価基準というのは明確なのですけれども,事務職の場合には先ほど申し上げましたように非常に多岐にわたる分野を担っているわけです。大学の行政全て,末端に行けば職員がいるということで,その職員の末端というか,分野ごとのところで力のある職員がいるということなので,専門性を位置付けようとすると,確かに位置付けにくいというか,一般論,一言で言い表せといってもなかなか難しいと思います。
 教育改革の支援もありますし,学生支援もありますし,就職率を上げるためのいろいろな企画もありますし,財政の改善もありますし,中期計画や,先ほど言った事業計画もあるし,学部・学科を改組していくためのいろいろな企画立案だとか,学生募集計画だとか,いろいろな分野で,いろいろな能力が求められますので,一つの言葉でというのはなかなか難しいと思います。
 これは,文部科学省が基本的なレベルを決めた上で,大学自身がどういうレベルで専門職を認定していくのかという考え方をはっきり明らかにして,例えば業務の実績ということもありましょうし,先ほど西川さんの話では人事制度の中で一定の評価ということもありましょうし,研修制度でこういうところも行う,あるいは大学院を出るということはもちろん非常に重要な要素だと思いますけれども,大学院でなくてもいろいろな研修機関があるわけですので,そういうところできちんと位置付けをされればと思うのです。
 今,私立大学の職員,事務職員は6万人ぐらいでしょうか。全部が全部,いきなり専門職になるわけではないので,1割としたら6,000人です。こういう人たちを大学院とか,そういうところできちんと育てて,あるいは学内で意図的に育てて専門家に育成していくというのは,受皿の問題が以前の議論で出ていたと思うのですけれども,私は十分可能ではないかと思います。
 それから,山田委員もおっしゃっていただいたように,外部から登用するとか,企業から来るという場合に,これは職員の今までの弱さというか,限界もあろうかと思いますけれども,例えば企業で広報関係を経験した人を雇用するということは,最先端の企業の広報のやり方だとか,人脈だとか持っているところを,大学として使うために入れるということだと思うのです。そういう外からの登用というのは非常に重要だと思うのですけれども,やはり内部からも育成をしていくということがない限り,本当の意味で大学を変えていく力にはなっていかないと思います。それと,一つの分野でそれができるというのは,多分,その分野でずっと固定をしなくても,現状分析をして,データを分析して,そこから問題点を見付け出して改善案を出していく,いろいろな高等教育の知識を背景にして提案できるという力はいろいろな分野でできると思いますので,水平に異動するということも,私は方法によっては十分可能なのではないかと思っております。
 濱名委員がおっしゃるように,管理職とどういう関係にあるのかということですけれども,やはりこれは現行の制度で言えば,処遇を係長にするとか,課長補佐にするということが,職員の位置付けとしてはそういう仕事をした者に対する対応ですので,多分,力を持った職員というのはそういう位置付けがされていると思います。私は,専門職と位置付けたときに,管理職と全く別だというようには考えていなくて,専門的な力を持ちながら,実際に意思決定して,実行して,マネジメントまでするということになると,併せて管理職という肩書を持ってというか,そういう任命をしながら仕事をしていくという部分も当然ある。その辺りは,やはり一番学長を補佐して,大学を改革していくために力になっていく組織運営のやり方でいいのではないかと,私は思っています。要は,事務を処理するというレベルで押しとどめておいては駄目で,専門職という形で積極的に位置付けて,大学に発言権,提言権がある,マネジメントできる役割を与えるというところが,設置基準の改定としては非常に重要なところではないかと思っています。
【西川学校法人立命館人事部長】  私も,御質問いただいた点に関して若干コメントさせていただきます。
 山田委員のおっしゃった点で,これまでもキャリアを磨いていくことはできたはずではないかという御指摘ですけれども,やはりこれまでの職員育成というのは,どちらかというとジェネラリスト志向であったと思います。もちろん,先生方がそれぞれの分野の専門家であるのですけれども,大学全体のジェネラリスト的な志向で行われてきたということが基調にあったと私は思います。あわせて,どちらかというと教員の役職者が大学のマネジメントをしてくることで,先ほどの話にもありましたが,執務の「執る」という字ですけれども,職員は事務を執るというような位置付けに置かれてきた流れが長い中で,なかなかそういう人材が育つ環境になかったと見ていいのではないかと思います。
 一方,水平異動があってこそではないか,一つの部門だけでいけるものなのかという話がございましたけれども,私は,現時点において水平異動が頻繁に行われるような状況には,もちろん分野にもよると思うのですけれども,必ずしもすべてそういうことではないように思っております。ただ,このグローバル化の社会の中で,どんどんと仕事の環境が変化していく中では,その方向はしっかり見据えておく必要はあろうかと思います。私は,よく民間企業でも何とか畑から社長が出たとかいうことがありますように,一定の畑を持ちながら,言葉が適切かどうか分かりませんが,そういうものを職員もしっかり持って,そこで磨いてきたものを,全体の大学アドミニストレーターとして力を発揮していくということは重要ではないかと思っております。
 そういう点では,最後の濱名委員の御質問の中で,私が言っているのは「大学運営職」ではないかという御指摘だと思うのですけれども,先ほど私はステイタス・プロフェッショナルだけではないと申しておりますので,それを濱名委員の言葉で言えば「大学運営職」なのかもしれないと思います。随分カラー,レベルが違うもので,URAなどはかなり専門性が高いと思いますけれども,文部科学省の作られている文章の中にも出てくる,例えばIRを専門にする人,あるいはアドミッション・オフィスでアドミッション・オフィサーの仕事をする人ということも含めて,随分幅があるように思いますので,必ずしも一つではないと思います。そういう点では,私が申し上げているのは,少し幅はありつつも,大学という組織の中で専門的な力を発揮できるような人材ということでの専門職というイメージを持っておりますので,必ずしもステイタス・プロフェッショナル的なことを示唆しているのではないということです。
 あわせて,管理職トラックの問題の御指摘があったのですけれども,私は最近の状況を見ておりますと,大学職員の仕事の広がりの中で,専門職の方になっていきたいという層が結構増えているように思います。ある程度仕事をし始めると,その分野で頑張ってみたい,図書館なら図書館で頑張ってみたいという層は出てきている。したがいまして,かなり幅広い志向があるように思います。その点では,そういうことにも応えるものになればいいのではないか。もっと高度専門性を身に付けて,このように職員として力量を付けて,大学マネジメントに役に立っていく,そういう目標になっていくようなことがあれば,これはこれで意味があることではないかと思っております。
 一方,管理職トラックになっていく人材の育成というのも,これはこれで急務でございます。いろいろな分野の中からそういう人材が育っていくようにするということも大事でございますので,これまでのジェネラリスト型からしか育たないということでは必ずしもないのではないかと私は思っております。
 簡単でございますが,以上でございます。
【佐々木部会長】  それでは,高橋先生お願いします。
【高橋金沢工業大学教授】  御質問,山田委員,小畑委員,濱名委員の方から頂きましたが,一部オーバーラップしていると思いますので,併せてお答えいたします。
私のキャリアから国立大学の発想で物を強く言うところが多いかと思いますので,恐縮ですが,そこは委員の方々の方でバランスを取っていただきたいと願います。
 まず,山田委員,国レベルで需要と供給というお話でしたが,そのとおりで,御指摘はごもっともだと思います。行く行くは,長期的に見たときに,このような専門職が国レベルで流動性があることは,恐らく専門職のコミュニティーの向上に資すると思います。そういう意味ではプラスだと思います。ただ,実は,現実的にはあいにくそのようなポジティブな状況ではないのではないかということを少し悲観的ではありますけれども,御紹介します。
 と申しますは,やはりこの職種は,先ほど私立大学職員6万人と伺いましたが,国公私立,全国類似職を合わせて700人程度という非常に少数,小規模なものです。かつ,それが各大学に分断され,その組織を設置したときの執行部は,それなりの存在感を持ってその組織を見ているとは思うのですが,当然ですけれども,執行部の代替わりをしたときに,次の執行部にとっては,とても小さな規模で行っている組織が学内にもあるねという形で,非常にビジブルではない状況に置かれています。
 そもそもこの仕事自体が自分で論文を生むものではないので,評価指標が非常に,先ほどスキル標準という基盤を作っていただいたとはいえ,成果の評価というものがとても難しくなっています。その辺りの業務の特性に基づく難しさと,時代が移ったことに伴う難しさによって,現在,流動性が高まることがいいかというと,当面このような職種を大学に定着させるに当たっては,まずは,全員が任期制で,次,どうしようというような状況ではなくて,ある種適切なふるいの後に,ポテンシャルがある人を安定したポジションに移すというような位置付けが必要ではないかと思います。
 次に,小畑委員から,有期雇用という意味でローテーションですかとおっしゃったのですが,そうではなくて,多くのURAは,現在,事務職員と同等に処遇されていることを私から見ると,事務職の方はローテーションを踏まえてキャリアアップしていくというのが前提で,この仕事はそれを行うと難しいですという御説明をさせていただきました。そこはよろしいでしょうか。
 それから濱名委員のお話です。私も,実は篠田先生と比較的同じスタンスを取っておりまして,管理職と専門職は二項対立ではないのではないかと考えております。例えば,URAをいろいろな方に説明をするときに,研究者が作家だとするとURAは編集者ではないかと,そのような説明をさせていただきます。また,URAが目指すべきは,主演ではなくて助演女優賞,男優賞ではないか。プロの知識を持って支援することに喜びを持つ,そういう仕事ではないかということをよく業界では話しております。
 そういうことを考えたときに,そういうプロフェッションをまとめ上げるマネジャーというのは,やはりある数が組織として出てくれば必要であって,それをその組織の管理職として置くのは,当然,組織のマネジメントかと思います。ただ,URAの人事制度,15の大学で既にトライアルが3年を経過しておりますけれども,ここは実は大学によって考え方が様々で,そのまま固定職としてURA組織の中で育っていくという図を描いている大学と,一方で,まさに個人の属性によって,URAという入り口から,大学運営という意味で事務職員の転換というパスを描いている大学もあります。そこは,恐らく産学連携や国際連携,いろいろな既存組織との連携で,URA組織をどう設置しているかという,まさに大学の経営戦略に基づく人事政策の中で整理されるべきことかと思います。ゼロイチの話ではないというのがお返事になります。
 以上です。
【小畑委員】  ちょっとよろしいですか。裁量労働的な要素が必要だと,それは年俸制でクリアできない問題なのかどうかというのもお答えいただけますでしょうか。裁量労働制ではないから年俸制にして自由に働いていただくということです。
【西川学校法人立命館人事部長】  多分,労働時間の管理と給与の処遇の問題とはまた別でございますので,年俸制にしても労働時間管理の問題は別の問題として残るのではないかと,私は理解しております。
【浦野委員】  私は質問ではなくて,今の話をずっと聞いていて,感想と思って聞いていただければいいのですけれども,やはり民間企業の立場から今のお話を聞いていて,ある意味,非常に不思議に思うわけです。
 どのような会社でも研究開発があって,生産があって,物流があって,営業マーケティングがあって,管理があって,この五つの機能というのはどこの会社でも,銀行でも商社でもあるのです。そう考えたときに,恐らく今の大学というのは,あるいは今までの大学というのは,研究開発と生産という分野が突出しているのですね。ここは,いわゆる教員と言われる先生方が行っておられて,あえて言えばそれだけで会社が回っていたと,そのような感じがするわけです。今,例えば地域の中でいかに大学が機能していくか,あるいは大学のミッションとは何だろうか,あるいは,今後,大学も少子化の中でどうしていくかということを考えると,まさに物流,学生の入れ替わり,あるいは営業マーケティング,管理ということがとても大事になってきて,それを実際に研究開発や生産を行っていた先生方では背負い切れないところがあると思うのです。
 ここが一番の問題なわけですから,企業の場合でいくと,それはもう単純に,特に「高度専門職」などという名前を付けるのではなくて,普通の総合職が普通にこなしていることなのですよ。特にスペシャリスト,ジェネラリストと言わなくても。ただ,その中で,この五つの機能のうち三つぐらい経験してきた人が非常にそういうことにたけて,経営企画部長として社長の右腕として頑張っていくということはあると思います。ですから,私は,ローテーションという意味が,今,言ったような五つぐらいの機能をそれぞれ専門的に学んでいくということであれば,非常に意義は大きいと思います。
 その上で申し上げるのですけれども,私の解釈が間違っているかもしれませんが,やはり研究開発と生産分野において,それをより効率的に行っていこうと思うときに,補助者がいるということでのURAということは非常によく意味は分かります。一方で,経営企画全体ということになったときには,やはり研究開発,生産を超えたいろいろな知識,ノウハウは要ると思いますので,これこそ事務職員が最後の目指すところとして行うべき仕事であって,濱名委員がおっしゃっていた「大学運営職」そのものだと思うのです。ですから,法的に「高度専門職」とうたわないと駄目だとか,その議論が私にはさっぱり分からなくて,もしあえて行うのだったら,その事務職員の方々を事務,庶務ではなくて,大学運営に参画するとか,そのように入れ替えれば済む話ではないかと思って,「高度専門職」という言い方が私には非常に不思議に思えました。
 以上です。
【佐々木部会長】  まだいろいろ伺いたいこともございますが,予定の時刻ですので,本日のところはこの件についてはここで審議を終了させていただきたいと思います。3人の先生方には,本当にお忙しい中,貴重な情報と御提言をありがとうございました。改めてお礼を申し上げます。


(3)第5次提言を踏まえた諮問事項関係について,再度,佐々木部会長から委員に向けて確認が行われた。

【佐々木部会長】 それでは,議事を少し急がせていただきます。実は,先ほど諮問事項関係のまとめのところで,資料3の編入学の柔軟化について,これはいろいろ熱い議論がありましたもので,そこにとらわれまして,もう1件の国際化に対応した大学・大学院入学資格の見直しについて,取りまとめを失念いたしました。この件については,おおむね部会の中でコンセンサス,合意ができていたと思いますが,資料1-2について,このような形で答申の案としたいということですが,何か委員から御意見ございますか。
(「異議なし」の声あり)
【佐々木部会長】  それでは,国際化に対応した大学・大学院入学資格の見直しについて,これはパブリック・コメントでもおおむね広く御支持いただいているところでありますので,資料1-2のような形で,これを骨子として答申といたしたいと思います。ありがとうございました。
【長尾委員】  すみません,1分だけいいでしょうか。
【佐々木部会長】  はい,どうぞ。
【長尾委員】  決して異議があるわけでなく,賛成というのを前提として,それから私が所属しています大学のグローバル化に関するワーキング・グループの方から提案しているものですので,これに関して全く異議があるわけではないのですけれども,今後のこと,希望なのですけれども,外国の留学生の人たちだけを対象にして特例を作ったのですが,今後,日本において,例えば18歳が17歳とか飛び級の話などもあります,通していっているわけで,今後,日本の学生においてもそういうことが可能かどうかという検討も,発展していけばうれしいなと思いますので,よろしくお願いいたします。
【佐々木部会長】  では,この件は御意見として承っておきたいと思います。
【長尾委員】  はい。


(4)認証評価制度の改善に伴う細目省令等の改正の方向性について,資料3に基づき文部科学省から説明があり,その後,意見交換が行われた。

【佐々木部会長】  それでは,最後になります。認証評価制度の改善について,資料3に基づいて,年度内の省令改正に向けて議論を集約したいと考えております。まず事務局から説明をお願いします。
【田中高等教育政策室長】  失礼いたします。資料3でございます。認証評価制度につきましては,大学教育部会におきましては今年度の前半,特に最初の方で御議論いただきまして,いろいろな御意見も頂きまして,そして,ここ数回におきましては,省令改正事項につきましてはかなりオーソライズされてきたのではないかということで,確認的に御審議いただいたところでございます。それで,前回の御意見を踏まえまして前回資料を修正しているところでございまして,それに基づきまして,これまでも御説明しておりますように年度内の省令改正に向けまして,本日,御同意を頂けるということであれば,12月中旬の大学分科会でも御審議いただきまして,年度内の改正につなげていきたいと考えている次第でございます。
 前回,この資料は説明をしておりますけれども,修正点のみ補足的に説明をさせていただきます。修正いたしましたのは,2の改正の概要の(1)評価における社会との関係の強化のところでございます。
 この部分につきまして,前回,評価において関係者の意見を聞くということについて,評価を行う前に聞くのか,それとも評価の結果を出してから聞くのか,その辺りをしっかりと明記することが必要ではないかという御意見を頂きましたので,前回は,評価を行うに当たって意見を聴取するという記載にしておりましたものを,評価の過程において意見を聞くということで,いわば趣旨を明確にいたしました。それから,前回,意見聴取という言い方をしておりましたが,認証評価団体が行っております実地調査などにおいて行うというような,いわゆるやり方まで縛るような表現にするのは適当ではないのではないかという意見を踏まえまして,意見聴取という個別の手法のような言い方ではなくて,意見を聞くという,手法につきましては認証評価団体に委ねるとして,具体にどういうものを求めるかをより明確にしたということでございます。
 その他,(2)評価結果を改善につなげる仕組み,(3)の学修成果及び内部質保証というものを評価基準に明記すること,(4)評価の質の向上に関する取組を省令にも明記すること,(5)は前回説明させていただきましたとおり,高大接続特別部会の議論を踏まえまして評価基準に入学者選抜を明記すること,そういうところは同様でございます。
 これにつきまして御同意を得られた場合には,次回の大学分科会でも審議をした上で,年度内の省令改正につなげていきたいと考えているところでございます。
 以上でございます。
【佐々木部会長】  この問題は,教育の質の向上,質の保証についての議論の最後に提起した課題でありまして,それぞれの大学が質の保証,質の向上の施策を進めつつ,その成果についてそれぞれの大学が評価するということ。あわせて,認証評価に当たって,認証評価機関がその教育内容,教育の質の向上に関わる評価を適切,適正に行う必要がある。こういうところから認証評価制度の改善という課題が出てきたと,こういう経緯でございました。
 今,説明がありましたように,これはこの春から幾度か議論を重ねておりまして,ほぼ本部会の意見が集約されていると考えておりますが,いかがでしょうか。加えて何か御意見がございましたら伺います。
【濱名委員】  これは,前から申し上げていたことだと思うのですけれども,いつ落ちたのかと思うのですけれども,質的転換答申の中で,内部質保証の話でアセスメント・ポリシー(学生の学修成果の評価について,その目的,達成すべき質的水準及び具体的実施方法などについて定めた学内の方針)が明確に書かれていたものが,どうしてこの段階でどこにも書かれないのか。内部質保証というのは何を指しておられるのか。基本的に,各大学がアセスメント・ポリシーを立てて,それに基づいて行うという話だったのが,どうしてそこの部分はすっぽりと落ちてしまうのでしょうか。
【田中高等教育政策室長】  今のお話は,大学設置基準等にポリシーを明確にするという話だったと思うのですが,それは前回,3つのポリシー,それからアセスメント・ポリシーも含めまして御議論いただきました。ただ,いろいろな御意見を頂きましたので,大学設置基準の改正につきましては引き続き御議論いただく予定でございます。ただ,この認証評価制度につきましては,そういうポリシーと申しますか,内部質保証というものを制度の中に位置付けることによりまして,アセスメント・ポリシーも含めた各大学の取組を評価するという根拠を作っていこうということでございます。
【濱名委員】  ただ,その大学設置基準の話はまだ決めないのだと,要するにアセスメント・ポリシーを入れるかどうかは継続検討中で,認証評価の仕組みの中にもし入っていなかったとしたら,大学設置基準に入らなかったら,内部質保証という抽象的なメカニズム,仕組みのことは聞かれるけれども,何に基づいて各教育機関がアセスメントするのかということは認証評価で問われなくなります。逆に言うと,大学設置基準の中に盛り込まれるのであるならばおっしゃるとおりで,内部質保証の仕組みをそれで確認すればいい。ところが,大学設置基準の改正の中で,アセスメント・ポリシーを入れるかどうか宙に浮いていて,その状態にもかかわらずここで先に決めるというのは順番が違うような気がするのですが。これは,この前も一度申し上げたと思うのですが。
【田中高等教育政策室長】  認証評価団体が評価をするに当たりましては,認証評価団体がそれぞれ基準に基づいて,あるいは法令の規定だけではなくて,様々なものに基づいて評価をするということでございまして,法令におきまして評価の対象と定めているのは教育課程等の抽象的な事項のわけでございます。ですので,内部質保証を定めるということを法令上手当ていたしますと,それに基づいて認証評価団体,あるいは文部科学省といたしましても関係団体と連携しながら,御指摘ございました質的転換答申の指針などを認証評価団体の基準に入れるということもございます。それから,法令の基準がなくても,そういう政策文書などに基づいて評価を行うというのが認証評価の仕組みでございますので,確かに大学設置基準に明記していればマストになるということはあるのかもしれませんが,ただ,それがなければできないということではございません。認証評価につきましては,実際に第2サイクルから内部質保証の評価を認証評価団体が行っているという状況がある中で,そうした取組を推進するために国としても制度として位置付けたいということでございます。それを制度として位置付けた上で,濱名委員から御指摘のあるような内部質保証の認証評価の評価を行うために,それを加速させるために大学設置基準の改正も目標ではないか。それは,引き続き次回以降も議論させていただきたいと思っております。
【佐々木部会長】  私は,先ほど申し上げましたように,それぞれの大学が質保証,質の向上の施策を行って,それをそれぞれが自己評価していく,そのためのツールとかシステムとか,これを整えるということは課題として残っていたと思うのです。それが恐らく濱名委員がおっしゃる,各大学のアセスメント・ポリシーなのだと思います。これと認証評価の要件に,認証評価にアセスメント・ポリシーの存否,あるか,ないかということを含めるということになるかと思います。
【濱名委員】  考え方がどういう形で組み込まれているのかということだったので,今の田中室長のお話で,少なくとも答申を踏まえての質保証の中にはそういうものはそもそも含まれているという趣旨で,なおかつ,この後,設置基準の継続審議の中で扱って,結論を出していくということであれば分かりました。
【佐々木部会長】  ほかに御質問はありますか。
【黒田副部会長】  一つ質問させていただきますけれども,この資料の5番目,大学入学者選抜に関する評価を大学評価基準に定めなければならないということになるわけですけれども,この大学入学者選抜というのは,今,まだ具体化されていないわけです。新しい入試制度が出来上がってくる,それを受けてこれが出来上がってくるということで,今の段階で大学入学者選抜に関する評価をしなさいと言われても,少し無理があるのではないかと思いますので,この項目は新しい制度が出来上がったときに入れたらいいと思うのですが,いかがですか。
【田中高等教育政策室長】  今の実態といたしましては,認証評価団体におきまして,教育課程,あるいは教育・研究活動等の評価を行うに当たりまして,各団体によって異なりますが,入試についても評価を行っているという前提があると思います。そして,当然,制度が変わった後の姿に関する評価は制度が変わらなければできないと思いますが,今でも入試に関しては認証評価団体が評価を行っていて,それを明記することは問題ないと思います。当然,制度が変わる前ですと,現行の制度に基づいて評価を行うということでございます。
 経緯といたしましては,高大接続特別部会の方で新しい入試の在り方を議論し,それはこれからなわけでございますが,新しい入試というものを推進するに当たって,現在でも認証評価団体が入学者選抜の評価をしておりますが,入試に対する評価というものをより適切に行っていただくために,評価項目に明記することが適当ではないかということで明記をしようというものでございます。当然,入学者選抜の取組は,認証評価の評価に位置付けるということだけで進むものではございませんが,当然,高大接続特別部会の答申を踏まえて,国のみならず,各大学が改革の取組を進めることが予想される中で,そうしたものをアシストするためにも,評価項目として位置付けてはどうかということでございます。
 ですので,これを位置付けまして,変わる前でも現行制度の中で評価を行っていただくということでございます。特に新しい入試というものにつきましては,一番言われておりますのは,大学入試センター試験に代わります大学入学希望者学力評価テストでございますが,これは平成32年度からということでございます。ただ,高大接続特別部会の答申で言っております多面的,総合的な評価,つまり各大学の入試,国が作る共通テストではなくて,各大学の入試改革の工夫,改善というものは,今からでも速やかに行っていただきたいものでございますので,そういう意味では,各大学の入学者選抜の取組の評価というものは,平成32年の大学入学希望者学力評価テスト(仮称)の創設を待たずとも推進,さらには評価の充実が求められるものではないかと考えているところでございます。
【黒田副部会長】  今の説明の理論は分かるのですけれども,実際に評価を行うときに,アドミッション・ポリシーをきちんと書きなさいということになっていますので,それに基づいてどういう入試制度がありますかということですね。それで,どういうレベルの人を採っていますかという程度のことなのです。だから,それ以上のことはできていない。もし,それを行ったとしても,それが大学全体のレベルを維持しているかどうかという評価はできないのです。だから,できないことを本当に評価団体に行わせるのか。ただ書いてあればいいというだけならいいのです。特別評価しなくていいわけですから。アドミッション・ポリシーさえしっかりしていればいいということになるわけなので,この辺のことは評価をする側としては非常に難しい。今,こういう時代で,全入時代になってきたときに,これをぎちぎち行っていたら,恐らく定員割れの大学ばかりになってくると思うのです。余りきつく行うと,もう採れないということになります。ですから,その辺りのことをどういうように考えていらっしゃるのか,私はちょっと疑問に思っています。
【田中高等教育政策室長】  入試改革につきましては,アドミッション・ポリシーなどにつきまして,アドミッション・ポリシーの事例集とかガイドラインなどを作っていくというようなことも,別途,高大接続特別部会の答申ではございます。環境整備も含めた取組というのはこれからというところがございます。そういう意味では,認証評価の部分につきまして,いわゆる施行日をどう考えるか。いつから適用するかということはまだ明記していませんので,そこら辺のところにつきましては認証評価団体の実務との関係で,認証評価団体とも相談をさせていただいた上で,いつから適用するのか。そういう部分も含めて,実際に評価を行います認証評価団体の意見も伺った上で検討させていただければ有り難いと思っております。
【佐々木部会長】  これは,年度内の改正を視野に入れつつ,しかしパブリック・コメントも経なくてはいけませんね。それから,大学分科会での議論も残っておりますので,その辺りを経て,もし議論の余地があれば,そこで再度御検討いただくと,こういうことでいかがでしょうか。
【金子委員】  これは,黒田副部会長,御懸念の点もあるかもしれませんけれども,やはり大学評価をする際に,大学の教育の質を上げるということが基本的な目標になるわけで,そのときには入学者をどのように捉えているかということは,やはり入れざるを得ないのではないかと思います。これは,大きくは具体的な表現がどうなるかということによるわけですけれども,私,思うのですけれども,今,志願者が少ない大学でも,あえて選抜する大学も結構多いわけです。そういう大学をやはり評価すべきではないかと思うのです。もう全入と言いますけれども,必ずしもそうではなくて,定員を満たせなくてもある程度選んでいる。そういうところを評価するという意味でも,やはり必要ではないかと思います。
【佐々木部会長】  ありがとうございました。
 ですから,この件は16日の大学分科会に再度提起をいたします。そこでまた御議論いただく機会もあろうか思いますが,よろしいでしょうか。
 それでは,本日の審議はこれまでとさせていただきます。本日はありがとうございました。これで閉会といたします。

 

―― 了 ――

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