大学教育部会(第31回) 議事録

1.日時

平成26年11月14日(金曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省3階3F1特別会議室

3.議題

  1. 今後の大学設置基準改正の方向性について
  2. 認証評価制度の見直しについて
  3. 高等教育機関における編入学の柔軟化について
  4. その他

4.出席者

委員

(部会長)佐々木雄太部会長
(副部会長)黒田壽二副部会長
(委員)高橋香代,長尾ひろみの各委員
(臨時委員)金子元久,川嶋太津夫,佐藤弘毅,島田尚信,濱名篤,吉田文の各臨時委員
(専門委員)安部恵美子,鈴木典比古,長束倫夫,山田礼子の各専門委員

文部科学省

(事務局)河村生涯学習政策局長,小松初等中等教育局長,中岡初等中等教育局審議官,水田主任視学官,森高等教育企画課長,里見大学振興課長,田中高等教育政策室長,高見教育制度改革室専門官,片柳高等教育政策室室長補佐,白井大学振興課課長補佐 他

5.議事録

(1)今後の大学設置基準改正の方向性について,文部科学省から資料1-1,1-2に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【佐々木部会長】  それでは,所定の時刻になりましたので,第31回の大学教育部会を開催いたします。本日も,御多忙の中,御出席いただき,ありがとうございます。
 本日は,主として前回の審議の積み残し部分,大きな区分けでいいますと大学教育の質保証の充実に関わる問題,もう一つは教育再生実行会議の第5次提言を踏まえた諮問事項について御審議いただきたいと考えております。
 まず1つは,本来なら前回の議論を踏まえて高等学校専攻科からの編入学について前半に議論をと思ったのですが,初等中等教育局の御都合もありまして,これは後半に回さざるを得ません。したがって,前半1時間は大学設置基準の改正,あるいは認証評価制度の改正に関わる事項について御審議いただいて,後半1時間を高等学校専攻科からの大学への編入について,主として質保証の仕組みをどうするかということが最後に残されておりましたので,その仕組みの問題に焦点を当てて御審議いただきたいと思います。
 それでは,早速審議に入りたいと思います。最初に,大学設置基準の改正等に関わってくる問題の1つとして,前回も少しふれましたスタッフ・ディベロップメント(以下,「SD」という。),あるいは高度専門職の配置の関係,それから,3つのポリシーに加えてアドミッション・ポリシーを加えたらいいのではないかという御意見がございまして,この2つの問題,SD,高度専門職の問題,それからもう一つはアドミッション・ポリシー(入学受入れの方針)等,そしてアセスメント・ポリシー(学生の学修成果の評価について,その目的,達成すべき質的水準及び具体的実施方法などについて定めた学内の方針)を4つ目に加えるべきだという御意見がありましたので,これについて御審議いただきたいと思います。
 まず,この2つの案件の説明を事務局からお願いします。
【白井大学振興課課長補佐】  失礼いたします。それでは,先に資料1-1と参考資料2をお配りしておりますので,こちらの論点について御説明させていただきたいと存じます。
 職員の資質向上等に関する論点という表題が付いてございますけれども,現在,御案内のとおり大学の教育研究には様々な側面がございまして,教員をはじめとしまして事務職員,技術職員,様々な方がいろいろな形で関与されています。特に大きく分けますと,本丸である授業や研究の部分に加えまして,教学支援,学生支援,それから大学全体の管理運営というような形で,様々な方がそれぞれの立場からの業務に取り組まれているという状況かと思います。
 こういう中で,今,大学に求められておりますのは,先般,学校教育法の改正もございましたけれども,学長を中心にして,例えば全学的な方針の企画立案であるとか,全学的な教育研究状況の把握,支援,学内資源の配分,多様な学生に対する総合的な支援というようなことも求められているという状況でございます。
 こうした中で,この大学の運営を支えていくためには,それぞれの分野における専門的な知見を有する職員という方を適切に配置,育成していくことが必要になってくるだろうということでございます。また,その際には,この職員というときには事務職員だけではなくて,例えば副学長とか教授職の方が管理運営のポストに入るとか,それぞれ適材適所の人事を行っていくということも必要になってこようかと思います。
 そのため,前回も検討が必要な論点としまして,下の方にございますけれども,例えば職員の資質向上,特に教員だけではなく全ての教職員を対象とした,より幅の広い資質向上の取組。それから,事務組織についても,従来なら事務組織ということから,目的や名称を含めた見直しというものを考えてはどうなのか。また,その構成員としても,必ずしも事務職員だけでなくて教員も含めたような体制とすることも考えてはどうかということ。それから,3つ目としまして,仮称でございますけれども高度専門職,学長を補佐して大学運営に取り組むような専門的知見を有する職員の配置に関する大学の取組を後押ししていってはどうかという3つについて論点として提示をさせていただいたところでございます。
 この論点の中でも,特に前回,高度専門職というところについての御議論がありましたので,本日はこの点を中心に御審議いただければと思っております。
 1ページの下の方ですが,関係する中央教育審議会答申としまして,例えば学士課程教育答申におきましては,例えば今,教員数が減る中で,個々の大学職員の質を高めることが必要である。また,ここでも新たな職種としまして,例えばインストラクショナル・デザイナーであるとか,研究コーディネーター,あるいはIRerのような方が指摘されているところでございます。
 2ページにお進みいただきますと,大学のガバナンス改革の推進についてという今年の2月に取りまとめられました審議まとめがございます。こちらの中でも,例えばリサーチ・アドミニストレーター(以下,「URA」という。)であるとかIRer,そういう方々について高度専門職として位置付けていってはどうか。また,大学は組織的な研修研究,いわゆるSDを実施していくことが必要ではないか,これを義務化していくことが必要ではないかというような御提言を頂いているところでございます。
 2ページの下の方にお進みいただきたいと存じます。高度専門職,そもそもこれは何のために導入するのかということでございますけれども,学長が適切なリーダーシップを発揮できるような大学運営体制の構築,学長を補佐して全学的な判断ができるような体制に持っていくということもあると思います。また,教員であるとか事務職員であるとかを必ずしも問わずに,それぞれ適材適所の人事ができるようにする,また,いわゆる教職協働の実現ということもあろうと思います。
 また,現実に教員と事務職員,あるいは技術職員の間に大きな段差というものがある大学もあろうと思いますけれども,特にこの事務職員であるとか技術職員の方がスキル向上のための1つのモチベーションになるということもあろうかと思っております。
 前回,御意見にもございましたけれども,この高度専門職については,必ずしも全学に必置をするということは今のところ考えてございません。飽くまで各大学において置くことができるという職種にしてはどうかという御提案でございます。
 それから,この定義や名称でございますけれども,1つの定義の案としましては,大学が行う業務,特に管理運営,教学支援,それから学生支援というような3つの分野に関する業務について,大学運営上の専門的な知見を有する方として,国が定める一定の基準を満たす者であって,かつ大学が認めるような者という形ではどうかという,これも1つの御提案でございます。
 また,高度専門職という名称でございますが,これはガバナンスの審議まとめでは御提言を頂いておりますけれども,必ずしもこれにこだわるものではございません。高度専門職といいますと,弁護士とか,そういうような方を想定,いわゆる士業をイメージしがちな部分もございますので,例えば専門職であるとか専門的職員,あるいは大学運営専門職というような名称にするということも考えられるのではないかと存じます。また,現行の大学設置基準でも,図書館の司書さんにつきましては専門的職員という規定もございます。
 次のページにお進みいただきたいと存じます。この高度専門職の設置に関する論点として,処遇に関する部分でございます。現在の問題意識としましては,教員,事務職員,技術職員というような職種の分類がございますので,どうしても業務内容であるとか処遇等が大学によっては硬直的に運用されているなど,必ずしも適材適所の人材活用が行われていない場合もあるのではないかということでございます。
 この資料,人型を表してございますけれども,例えば教員の中にも大学に関する専門的知見を持って大学運営に携わられているような方もいらっしゃると思いますし,あるいは事務職員の中にもそういう方もいらっしゃると思います。もちろん技術職員にもそういう方も想定され得るところでございます。ただ,現在の多くの大学においては,教員は教職について,事務職員は事務の仕事についてと,また俸給,給与などでもそれぞれの俸給表に基づくような評価というようなことが一般的かと思います。
 そこで,これについて新しい高度専門職のような形を位置付けるとどうなるかということでございますけれども,例えば現在の職種を前提とした上で高度専門職手当というような形で特別に処遇を行っていくということがこの1のケースです。赤いお皿のようなものは手当をイメージしていただければと思うのですけれども,現在,身分は教員,あるいは事務職員であっても,特に専門性のある方には一定の処遇をするために特別の手当を出すというような処遇というのも考えられようかと思います。
 あるいは,新たな職種として,従来の教員,事務職員,技術職員に加えまして,新しい高度専門職というようなカテゴリーを作って,その方に異なる俸給表を設けて処遇をするというようなことも考えられようかと思います。
 3ページ,下の方は,もう少し具体的なイメージでございます。ここでは2つのパターンを用意してございます。パターン1が大卒者を一般事務職員として採用するケースの一例でございます。普通の事務職員と採用されて,事務職員として普通に仕事をしている場合には,例えば教務課に行ったり,入試課に行ったり,将来的には課長補佐,また管理職として昇任していくということになろうと思いますけれども,その方はいろいろなところで業務をされており、仮に専門分野に関するような学位を取得して高度専門職と認められた場合には,例えば専門職の道に進む場合には高度専門職としてアドミッション・オフィサーになったり,更に管理職としてのシニア・アドミッション・オフィサーという形に進んだり,というようなこともキャリアパスとしては考えられてこようかと思います。もちろん将来的には更に上級のポスト,部長,副学長,事務局長というようなポストに進むということも開かれてこようと思います。
 パターン2でございますけれども,もしこういう高度専門職というものが根付いてくれば,経験者を途中採用して,より有用的な人事ということも行いやすくなってこようかと思います。例えばURAや教員等としてほかの大学で勤務していたような方,そういう方の任期が終わったときに高度専門職として,URAとして雇用するというようなこともあろうかと思います。この方は,またURAの中でもその道を極めてシニアURAのようなポストに昇任するということもあると思いますし,あるいは,いわゆる事務系の研究支援課長,研究支援部長のようなポストに異動するということ,もしくは,教職としての准教授,教授になるというようなことも様々な流用的なパターンが想定されてこようかと考えております。
 4ページにお進みいただきたいと存じます。この高度専門職について,もう少しどんな職種があるのか,また,どんな要件が必要になってくるかということでございますけれども,先ほど申し上げましたように,大きく分けて管理運営系,それから教学支援系,学生支援系というような分類ができるのではないかと思っています。管理運営系としましては,大学全体の経営企画・大学運営に関するようなことから法務,財務,広報,インスティテューショナル・リサーチ(以下,「IR」という。)と様々な分野があろうかと思います。教学支援については図書館,現在でも規定されております図書館の司書,それからIR,アドミッション・オフィサー,ファカルティ・ディベロッパー,様々な方が想定されるところでございます。学生支援系についても同じでございます。
 それぞれの要件でございますけれども,様々なものが考えられると思いますが,大きく分けて3つぐらいが想定されようかと思います。1つ目には,関連する分野に関しての学位,あるいは学位によっては実務経験というものを設けるということがあろうかと思います。例えば大学の経営企画部門であればMBA(Master of Business Administration(経営学修士))の学士学位を持っているとか,あるいはIRであれば統計学に関する学位を持っているとか,そういうことが想定されようかと思います。
 それから2つ目は,国家資格等に関するものでございます。これも例えば法務であれば弁護士というようなものが典型的でございますけれども,ほかにも例えばキャリアコンサルタントといった方で国家資格として認められているものもあるようでございます。
 また,3つ目でございますけれども,その他,例えば公益法人や職能団体,例えばIRとか,そういうIRerというような方々が作っている団体における技能認定,URAなんかでもスキル標準というものができているようでございますけれども,そういうものを活用して評価をしていくということ,あるいは,職能団体等が定める一定のプログラムの修了,特に大学の履修証明プログラムなどを活用しまして,一定のプログラムを終えているといったことを,国において一定の枠組みを設定して,それをまた各団体の方でお使いいただくというような認定の仕組みというのも今後発展が見込まれるのかなと考えてございます。
 4ページの最後でございます。これは飽くまで御参考でございますけれども,労働基準法の中で高度専門職に近いような専門的知識を持っている方の定義というものがございます。これは労働契約法の特例に関するところでございますけれども,例えば博士の学位を持っているとか,あるいはここに掲げられております公認会計士や弁護士の資格を持っているとか,さらに,もう少し様々なものとしましては,一定のデザインであるとか情報処理システムなどの仕事をしていて,一定の年収を得ていて,かつ一定の学校教育を終えているであるとか,あるいは,国や地方公共団体,民法法人によって認定されている者とか,こういう様々な方について,これはそれぞれの労働基準法の世界でございますので,同一にする必要は全くございませんけれども,こういうような様々な指定の仕組みがあるということも御参考に紹介させていただきます。
【佐々木部会長】  ここで一度議論しましょう。それでは,これは直ちに本日の部会で結論を得たいということではございませんので,ただいまの御報告について,御質問,御意見を出していただいて,次回へつないでいきたいと考えております。
【島田委員】  意見というより,まず質問なのです。私,素人なので,教育関係者ではないので分からないのですけれども,まず,前回も言ったのですが大学設置基準の関係があって,この高度専門職がなぜ大学設置基準に入らなければいけないかがよく分からないのが1つです。大学設置基準というのは,大学設置のための最低基準と僕は聞いているのです。だから,それ以下はないというときに,もともと高度専門職を置くことができる,置かなくてもいいということからいくと,何でそこに入れなければならないのかというのが分からないのです。
 そして,それは別にして,こういう方々がいるというのは分かるのですけれども,それは別の法律でこうなれば,僕も文部科学省の法律関係は分からないので運営規則なり何かだったらまだいいのですけれども,処遇も含めていろいろ言っていますよね。これを,ここで決められるのですか。私立大学はこのようなものは関係ありません,給料はみんな違いますよというときに,このようなものを決められても困るというのがあって,何でここまで処遇を出してくるのだというのがあります。高度専門職といったら,必要であれば大学が雇い,その人を育てる。給料も,それだけ専門職を付けたのだから水準を上げてあげましょうと普通しますよね。それをしなければ居付かず,どこかの民間に逃げていきますから。
 そのような意味でいうときに,これは,申し訳ないけど文部科学省の天下り先を見付けるような感覚しか僕は見付けられないのです。文部科学省から出てきた人が,高度専門職という世界に入ってきて行うみたいな感覚しかないので,まず法律と聞いたとき,何で大学設置基準にこれを入れなければいけないのか,最低基準と呼ばれる部分に置く必要がないという,絶対置かなければいけないというものがないものを何でそこに書かなければいけないのかと思いましたし,そこの処遇を含めていろいろなことを何で議論しないといけないのか,そこが少し分かりませんので,教えてください。
【白井大学振興課課長補佐】  確かに大学設置基準は,最低基準と位置付けられてございますけれども,同時に,この大学設置基準には大学によってどういう組織運営とか教育活動があるべきなのかということについても書いてございます。実際,全てにおいて絶対にこれをやらなくてはいけないということが書いてあるわけではございません。例えばオプショナルに大学の判断によってはこういうこともできるというようなことも多々書いてあるところでございます。
 例えば共同教育課程とか,そういうことも,別にこれは全部の大学がやらなくてはいけないというものではございませんけれども,こういうことも大学のやり方としてやることができるというものでございますので,全ていわゆる最低基準として絶対にやらなくてはいけないものではないという考え方でございます。
 それから,処遇の話がございましたけれども,これも基本的に各大学の御判断でございます。もちろん今,委員がおっしゃいましたように,各大学の方で専門的な職員をそれぞれ雇用されて,それを安定的に育成されて,配置されているという状況があればもちろんそれに越したことはないわけでございますけれども,現実としては今は教員と事務職員,技術職員というそれぞれのカテゴリーがあって,業務の内容とか人材の配置などもかなり限られている部分もあるということでございます。ですので,これは飽くまで大学の主体性を前提として,国の方でそういうことができるんだということを明らかにすることによって,大学におけるより柔軟な人材配置,処遇を後押ししていってはどうかという考え方で御提案させていただいているものでございます。
【佐々木部会長】  教員,それから事務職員,助手,あるいは教員の中に教授,准教授,助教を置くということについては学校教育法ですよね。大学の職種を決めているのは学校教育法なのですか,それとも大学設置基準なのですか。
【白井大学振興課課長補佐】  お手元に大学設置審査要覧というものをお配りしていると思いますので,そちらを見ていただきたいと存じます。学校教育法では,学長,教授等を置かなければならないと書いてございます。また,それぞれの職務について書いてございます。お手元の大学設置審査要覧の77ページに教員組織という項目があろうかと思います。そちらの教員組織というところで具体的に教授であれば博士の学位は原則であるといった資格について定めているという状況でございます。また,事務職員の関係でございますけれども,こちらについては第9章第41条から事務組織というものがございまして,大学には事務を処理するために専任の職員を置く事務組織を設けるというようなことが規定されているということでございます。
 ほかにも,例えば,第38条では図書館には図書館に必要な専門的な職員を置くものとするというそれぞれ個別の規定なども設けられておりまして,要は大学設置基準の方では大学全体の組織についてどのような在り方が必要なのかというようなことについて定めているという状況でございます。
【佐々木部会長】  ですから,大学設置基準上こういう職種を設けるということを定めるのは,余り違和感はないわけですね。
 ただいまの御意見についてどうですか。
【濱名委員】  私も何となく違和感がありまして,答申で既にそういう職員が必要であるということは書いてありまして,その次に行うべきことは何かというと,大学設置基準ではなくて学校教育法92条に書いている,大学にはどういう職員を置かなければならないかということで,ここを改正しないとその他の職員のままですから,大学設置基準を改正しても親法に規定のないその他職員のままであるとするならば,ほとんど位置付けが上がったということにはならないのではないかと考えます。
 更に言うと,僕はミスリードする可能性もあると思うのです。現状からすると,そういう職階がないと各大学はどういう工夫をしているかというと,教員ポストでアドミニストレーターの役割の仕事をやらせてみたり,あるいは,教授の名称を付けてやらせたり,各大学が独自で作っているポストはすごいですよ。特別待遇教授とか,特別招聘(しょうへい)教授とか,専任もどきのものもあれば,嘱託もあれば,非常勤のものも全部含めて,高度専門職というのでそういう人たちを処遇しなさいといけなくなりかねない。つまり,教員ではなくて,そうしなさいというメッセージを送ってしまう可能性もあると思うのです。そういう点からいうと,大学設置基準というのは先ほど御意見があったように,最終的に職員の位置付けが明確になった次の段階で,大学を作る上でこういう職員を必要に応じて置きなさいというものであればいいのですが,「置くことができる」のであれば,やはり学校教育法が先なのではないかと思います。
 今回これで大学設置基準に書いてある財政的措置が補完されるとはならないと思うので,むしろ財政的なインセンティブなりプッシュ方法を考えることが先であって,大学設置基準に先に書いてしまっても,それは大学設置基準の性格付けが変わってしまうのではないかという危惧と,先ほど言ったミスリードしてしまうのではないかという心配があるんですけれども,その辺についてはいかがですか。
【白井大学振興課課長補佐】  法律に定めるのか,大学設置基準に定めるのかということについて,これは法制度的に検討も必要かと思いますけれども,例えば図書館についても専門的職員を置くということが大学設置基準の中でも規定されているところでございまして,基本的にこの大学設置基準の中に書くことについては,特に問題はないのではないかと考えてございます。
 財政措置の関係ですけれども,お手元にお配りしました参考資料2を御覧ください。そちらの頭に研修の話が入っておりまして,5ページから,ここでは私学助成を中心に資料を組んでいるんですけれども,私立大学等改革総合支援事業というものがございます。こちらの中でいろいろなタイプの私学を支援していくということでございますけれども,例えばタイプ1,教育の質的転換というところでは全学的教学マネジメントの構築というようなことが書かれています。具体的には,次の6ページ,7ページを御覧いただきたいのですけれども,例えばいろいろな評価の項目がございまして,全学的な教学マネジメント体制が構築されているかとか,あるいはIRの専門部署を配置して,そこに職員を配置しているのかとか,SDを実施しているかというようなことについて,今,加点の要素として加わっているということがございます。
 あるいは,次の8ページでございますけれども,これも私学助成の特別補助としまして,未来経営戦略推進経費というものがございます。こちらについても,教学改革推進のためのシステム構築・職員育成に係る取組として,具体的に例えばIRシステムの構築であるとか,URA,IRerというような方の育成についての支援というような仕組みも設けているところでございます。
 その後,いわゆるURAについても,それぞれ個別の整備の仕組みというものがあって,各大学においてはかなりこれが根付いてきているというところが言えようかと思います。
 また,この資料の最後,19ページですが,特に世界水準の研究大学群の増強ということで,研究大学強化促進事業というものがございますけれども,こちらの方でも各大学におけるURAを含む人材の育成確保についての助成というものも行ってございまして,私学を中心の御説明になりましたけれども,このような様々なメニューを持って,こういう方の育成については予算的にも支援をさせていただいているところではございます。
【山田委員】  私も質問というかお聞きしたい点がございますが,法律のことは別といたしまして,何となく高度専門職というとそういうキャリアパスがあって,そういう高度専門職用の市場が存在していてこそ発展するようなイメージがございます。やはり私もIRerなどを育成しようとしているときに,IRerというような特別な専門的な職種というのは1つの大学の中でずっと固定化していくようなものではないのではないかという感じがしています。それは,高度専門職としてIRerとかアドミッション・オフィサーが機能しているアメリカなどを見ていましても,横での移動があってこそ高度専門職が位置付いて,そして発展していくのではないかなと思っているのです。
 例えば財政措置をしていたとして,それが本当に高度専門職としてのIRer市場であるとか,アドミッション・オフィサーの市場を開拓していくことにつながっていくのかということが少し見えてこないので,例えばURAは既に5年ぐらいになるのでしょうか。5年で,多分私どもの大学でもURAの方は何人かおられますけれども,ほとんどが任期制で,他の大学か何かから移ってこられた方々だったように記憶しております。例えば,URAが取り入れられてからこの間にどのぐらいのURAの人たちが次の職場へと異動することができたか,あるいはそういうURAの市場がしっかりと出来上がっているのかというような調査がもしあれば教えていただきたいです。
【里見大学振興課長】  先ほどの同じ参考資料2ですが,今URAという方がどんな現状にあるかということで,12ページから資料が出ておりますが,URAとして配置する者がいると回答しているところは68機関ということですので,増えているというのは現状でございます。横移動ということですが,任期付きということがありますので,予算事業の中で支援されている間は基本的にはこの場所にいることができるということだと思いますので,この期間が終わったときに恐らくいろいろなことが起き得るのではないかということではございます。
 ほとんどの場合が任期付きになっているというのが13ページにデータとして出ておりますし,次の14ページを見ていただきますと,どんな仕事をしているのかということが出ておりますので,こういうものを見ていただきますと,ある程度このような方々が何千人というような規模で入りつつあるということは御覧いただけると思いますけれども,今後,横移動していくためには,この方々が大学の中で必要性がきちんと認知されて,それなりの処遇が受けられるような制度的な担保がない限りは,市場そのものがなかなか定着しないだろうという問題意識を持っております。このレポートの中でも,最後のところになりますけれども,今後の方向性という,18ページのところにございますが,教員・職員のみならず,いわゆる中間職と言われておりますけれども,第三の職種にということでキャリアパスの構築を目指すというのがこの事業自体の目的になっているところもございますので,このようなモデル事業の中からこういう職種がしっかりと根付いているということを政策としても志向してきているということがございます。
【川嶋委員】  多分,先ほど島田委員の方から私立大学ではというお話があったのですが,国立大学では,法人化以降こういう職種に対する位置付けが必要だということをずっと言われ続けてきたにもかかわらず,いわゆる処遇について,俸給表は結局公務員時代のままを引きずっています。また,教育職か行政職しかないという状況の中で,大学運営の複雑化で様々な機能を担う職員が必要になってきています。ではどうしているかというと,先ほど濱名委員からありましたけれども,結局,大学として持っているポストは教員か事務職員しかないので,新しい仕事が出てきた場合,どちらかで処遇するということで,対外的には教員の職能意義ということで,例えば大学設置基準第11条,授業を担当しない教員を置くことはできるということを基に教授,准教授職を充てるということをしてきたのです。
 そういう意味で,それが法律上どういうふうに位置付けられるかは別にして,国がこういうこともできますよという方向を示していただければ,国立大学としては次の段階へ行けるかと思うのです。しかし,先ほど労働市場の話も出ましたけれども,教育職と行政職で,その間の職を仮に括弧付きで高度専門職となっているのですが,この名称をきちんとしていただかないと,各大学でいろいろな位置付けがなされて,それこそ異動のときに非常に困るということがあるのではないかと思います。
 それからもう一つ,先ほど山田委員の方から図らずもIRerという言葉が出て,本日の資料にもIRerとかFDerと書いてありますが,これは国際的標準の名称なのでしょうか。本人たちはそう呼んでいるみたいですけれども,海外へ行ったら何のことだということだと思いますので,きちんとした名称を書いていただきたいということと,先ほど里見課長からURAの御紹介がありましたけれども,スーパーグローバル大学創生支援の中で,UEA,University Educational Administrator,これは今回ここで全然どこにも出てこない呼称であるのですけれども,聞くところによると,ある大学はこういう名称で職員を雇ったということを聞いております。では,海外でどうかというと,URAは確かに海外,アメリカなどでもそういう職種があるみたいなのですけれども,UEAで検索をかけたらUAEの間違いではないですかと出てきました。ですから,こういう名称については,やはり国の資料なり文書であるからには,国際的通用性のあるような使い方をしていただきたいというのが私の意見で,UEAというのはどうなったのかというのを今お聞きしたいと思います。
 以上です。
【吉田委員】  簡単にお伺いしたいのですが,現在の教員と職員のみで構成されている大学のシステムの中に,新たにこうした高度専門職が入ってくるということが,ある意味,この資料の,先ほどの調査を拝見すると,基本的にはポスドク対策だというのはよく分かるのですけれども,こういう高度専門職と言われる人たちのファイナルゴールをどの辺に置いていらっしゃるのか,ということがいま一つよく見えないのです。教員の場合には大体教員で終わるのですけれども,そのファイナルゴールについては,学長というポストがあります。職員の場合であれば,理事になる可能性もあるでしょうし,あるいは事務局長のようなポジションもあると思うのです。それと対応するような形で,職員でもない,教員でもない,でも専門性を重視する職業というのは,大学の中で一番偉くなったらどこへ行くのかというゴールが見えるのかどうなのかということが非常に大きな問題です。これは単なる俸給表の問題だけではなくて,やはり組織の中での人材という問題をどう位置付けるかという話になってきまして,下手したら行き止まりのポジションということになりかねないと思うのです。そのあたりについて,どのような見通しをお持ちなのか教えてください。
【佐々木部会長】  もう一つ御意見を伺ってからにしましょう。
【濱名委員】  先ほど川嶋委員から名称の問題が出たのですけれども,抜けているものもあるのですね。例えばテスト開発とかというのは,日本が著しく遅れている分野があるのです。IRerと書いてしまうとイメージが先行してしまうのですけれども,実際にまだ評価人材なのですね。経営施策の戦略分析ができるとか,IRerという言葉にしてしまうとそれが希薄化してしまうというところもあるので,そうした内容を精査してもらわなければいけないというのが1点です。
 2点目は,先ほどキャリアパスのイメージ,育成のイメージがあったのですが,高度専門職を育成するのだったら,育成の筋道や養成機関というものが明確でなければ,定着している専門職はないと思うのです。ポスドクを持ってきて専門職に当てはめるという形であるならば,キャリアパスとして育成パスがはっきりしないというのは,今,吉田委員が言われたものと同じことになりかねないので,私は方向性としては分かるのですけれども,余り拙速にやるべきではないのではないか,つまり,挙げられている各高度専門職は同レベルなのですかということもあるのです。幾つかの難易度の階層が違うものを1つの名称とか1つの職種だと言うのはやはりリスクがあるので,方向はよく分かるのですけれども,そのあたりについてはもう少し検討された方がいいのではないでしょうか。
【金子委員】  前回申し上げたことですけれども,最初になぜ学校教育法改正ではなくて大学設置基準改正かという点ですが,本来,私はやはり大学設置基準に書き込むより,あるいは学校教育法改正というよりは,自然にそういう事態が起こってくることが本来は望ましいのだと思うのです。アメリカなどは,かなり専門化した職員が出て,その人たちが専門職団体を作って,そこでいろいろな仕事をある程度標準化していくことによって大学内での地位を作っていくというような動きができていて,それは結果として大学の事務職員の議論の高度化をある程度進めていくという形になっているわけです。けれども,日本ではまだそういう動きが遅いということで,そのためには大学の中である程度起こっていることについて一種のモデルみたいなものを先導する役割を政策で持たざるを得ないというところが現実的にあるのだと思います。
 そのときに,学校教育法自体を使うべきかといえば,それは法律の問題ではすべきではない。大学設置基準というのは,一種の大学というものがどのように動くのかということについて一定の枠組みを示すというものですから,その中にある程度はそういう規定を入れることは間違いではないのではないかと思います。現実的にはそれが一番可能性のあることだと思います。
 先ほど,これはファカルティー・ディベロップメント(以下,「FD」という。)対策というような話がありましたが,これは私はそのように思っては絶対いけない,間違いだと思います。もしそうであれば,すべきではない。最大の問題は,今までの大学というのは,個々の教員に全部教育の機能を任せていて,要するに一種のフランチャイズ機関であって,アドミニストレーター,大学全体の機構というのは基本的にはそれを適当に調節する機構という形のものだったと思いますが,今の大学はそれ以外に様々なものができていて,大学全体がシステムとして教育研究をしなければいけないという存在になっています。そのためには教員と大学全体のガバナンス以外に,やはり様々な専門的な機能が必要になってきていて,それをうまく大学という組織の中に位置付けることが必要になっていて,大学全体のシステムとして教育したり研究したりという側面も非常に強くなっています。それを位置付けることは非常に必要になっていると思います。
 これまでの大学設置基準,学校教育法も一部そういうことが書いてありますけれども,付随的に事務部門を置くということしか書いていないので,全然積極的に位置付けていないのですが,私はそれを積極的に位置付けるということは非常に重要だと思います。ただ,実際,今まで部分的にそういうことが行われて,例えば図書館と図書館における専門職員,それから厚生補導に関して,学生の厚生補導担当の職員を置くというようなことは,任意度に応じて置かれています。それは大学設置基準に既に入っているわけで,そういう意味では大学設置基準が変則的な形になっているわけです。やはり大学の中での教員以外の,いわばある程度間接的に教育研究を支える人たちについて一定の位置付けをすることは必要ですし,その組織を位置付けることも非常に必要だろうと思います。
 それから,もう一つ非常に重要なのは,そういう職種に入ってきている人たちについて一定のキャリアの見通しを与えるということはかなり必要だし,一定のキャリアと同時に専門職としての認識といいますか,ただ単に誰でもできることではない,それなりの知識,技能も必要なのだという認識を与えるということ,そういう意味でのリスペクトを与えることは非常に必要だと思います。
 ただ,問題は,そういうことが必要なのは分かっているのですが,自然にそういう職種ができているわけではない。だから,外との交流もできていないし,中でのキャリアもはっきりしていないという状況の中でこれを作れるかという話ですから,私はそれを言っていたらいつまでも作れないと思います。やはり一定の方向性を示すことは重要ですが,ただ,大学設置基準の中に,ここに書いてあるような具体的な職種を全部書き込むということは,そういうつもりでは多分ないと思うのですけれども,あり得ないと思うのです。だから今はある意味では過渡的な段階でそういう記述をどういうふうにしていくか。ただ,その方向は明らかにするということは必要なのではないかと思います。
 以上です。
【佐々木部会長】  いろいろ貴重な御意見を頂きまして,私も一言ぐらいは言いたいところがたくさんあるのですが,時間配分の関係上,本日この件の意見交換はこのぐらいにさせていただきたいと思います。事務局でこれを取りまとめて,次の回の議論につないでいただくようにお願いいたします。
 もう一つ,事務局の方から大学設置基準の改正に関わる案件として示されているのは3つのポリシーの問題でして,先般,3つのポリシーに更にアセスメント・ポリシーを加えるべきであるという濱名委員の御意見がありました。これを含めて事務局から資料の説明をお願いいたします。
【白井大学振興課課長補佐】  それでは,資料1-2でございます。アドミッション・ポリシー等に関する論点という資料を御覧いただきたいと存じます。前回も御提案させていただきましたいわゆる3つのポリシー,アドミッション・ポリシー,カリキュラム・ポリシー,ディプロマ・ポリシーについて,大学設置基準上に法令上の義務規定として設けてはどうかということについて御審議いただければと思っております。
 特に論点としまして,この3つのポリシーについてはこれまでの学士課程答申や教育の質的転換答申等でも繰り返し示されてきたところでもございまして,大学における定着度も非常に高くなっているかと思います。これに関連しまして,現行の関連するような規定もございます。大学設置基準第2条の2,入学者の選抜は,公正かつ妥当な方法により,適正な体制を整えて行うものとするという規定,それから,第19条ですが,大学は,体系的に教育課程を編成するものとするという規定,また,学位規則になりますけれども,大学は,学位に関する事項を処理するため,論文審査の方法,試験及び学力の確認の方法と学位に関し必要な事項を定めて文部科学大臣に報告するものとする,という関連するような規定もございます。この関連するような規定について,一体どこが足りなくて,どういう見直しを加えていくのかというような観点も御議論いただければと思っております。
 また,今回の高大接続特別部会の方での御審議いただいている事項でございますけれども,この中では,国が各大学におけるアドミッション・ポリシーの策定について法令上位置付けるよう検討することというのとともに,教育を実施するに当たってどのような学生を受け入れるのかという一貫した観点から,アドミッション・ポリシーと合わせて,学位授与の方針,教育課程編成・実施の方針を策定することが必要であることから,これらの一体的な策定を法令上位置付けるよう検討することということで,この3つのポリシー相互の関連性,一体的な策定ということに関する御提言も頂いているところでございます。このような観点も含めて,この3つのポリシーをどう扱っていくのかということが1つの大きな論点でございます。
 それから,2ページ目の方にお進みいただきたいと思いますけれども,先般,濱名委員からも御指摘を頂きましたアセスメント・ポリシーについてでございます。このアセスメント・ポリシーについて,具体的な規定の内容をどうしていくのかということ,また,大学におけるアセスメント・ポリシーについての普及,定着,理解の状況というようなことも考慮に入れていただく必要があろうかと思います。また,この3つのポリシーとアセスメント・ポリシーの関係性についてもそれぞれどのような関係にあるのか。大学によってはカリキュラムについてのアセスメントのポリシーを作っているとか,あるいはアドミッションについてのアセスメントを作っているとか,そのようなやり方をしている大学も現にあるようでございまして,この3つのポリシーとアセスメントのポリシーをどのように関係付けて整理するのかというようなことも御議論の観点としていただきたいと思っております。
 なお,質的転換答申の中では,特にプログラムの共通の考え方や尺度,いわゆるアセスメント・ポリシーにのっとった成果の評価が重要であるということを御指摘いただいているとともに,高大接続特別部会はまだ案の状態でございますけれども,大学全体としての共通評価の方針の下で,学生の学修成果を把握・評価し,これに基づく厳格な成績評価や卒業認定を行ってはどうかというような御提言の案も頂いているというところでございます。
 こちらからの説明は以上でございます。
【佐々木部会長】  ありがとうございました。
 では,この件について御意見をお願いします。
【濱名委員】  資料を出していただいてありがとうございます。参考資料3もありますので,現在の認証評価の基準の中に評価基準なるものが掲げられてはいるのだけれども,現実にそれが機能しているかどうかということと,今後,我々がどのようにして質保証をしていくかというときに,評価の考え方とか尺度であるとか手段をそれぞれの大学,これは評価の位相については質的転換答申の中で別表を付けてもらいました。大学のもの,プログラムベースのもの,個々の学生を対象にするもの。それが,残念ながら中央教育審議会でこんなことを言うと非常に不適切かもしれませんけれども,本当に大学関係者は答申を読んでないのです。私はいろいろなところでFDや講演を行って,答申を読んだという人が1割を超えたところは一度もないです。ほとんど概略しか見たことがないという程度です。さっき白井補佐の説明の中であったのですけれども,現在の認証評価基準にありながら機能していないとするならば,定着してもらおうとすれば,そのことに対してどういうふうにしていかければいけないのかを考えていかなければいけない。
 今回の高大接続については,既に前の質的転換答申でアセスメント・ポリシーが作られることを想定して,それを受けて個々の学生の評価のレベルに行くときに,個々の教員任せでいいのでしょうか。個々の教員が成績を厳格に厳しく評価すればいいのかというと,それだけでは社会から信頼されないから,組織として学修成果を上げられるような評価に変えていこうというメッセージを出しているわけです。そのことをやはり基準の中に取り込まなければ,本気で行ってもらえないというのは,現状がそれを示しているわけです。2つ目の答申の中に出てくるのに,それにも前の答申のことがカバーされないで,逆にそれを前提にだけ書いていくと砂上の楼閣になってしまうので,やはりこれは重要なポイントとして書く必要があるのではないかと考えます。
【川嶋委員】  2点あるのですが,1つはここにアドミッション・ポリシー,カリキュラム・ポリシー(教育の実施に関する基本的な方針),ディプロマ・ポリシー(卒業認定・学位授与に関する基本的な方針),アセスメント,と片仮名書きであるのですけれども,もし大学設置基準に書き込むとしたら,このように片仮名書きで入れるのか。今はそれぞれに学位授与の方針とか,教育課程編成実施の方針とか,学生受入れの方針とか,日本語の表記もあるのですけれども,どうするのか教えてください。
 それから,2点目の質問は, 1ページ目にそれぞれ関連する基準があるのですけれども,例えばカリキュラム・ポリシーでしたら第19条にあるのですが,これを更に修文するということなのでしょうか。それから,濱名委員が強調されるアセスメント・ポリシーについては第25条の2,成績評価基準等の明示等で,大学は,学修の成果に係る評価及び卒業の認定に当たっては,客観性及び厳格性を確保するため,学生に対してその基準をあらかじめ明示するとともに,当該基準に従って適切に行うものとあって,既に大学設置基準にはそれぞれのポリシーに該当するような条項があるのですけれども,1つ目のコメントと関係するのですが,更にこれを何らかの形で文章表現を変えるということなのか,具体的にその3つの関連も含めて書くということをおっしゃっているのですけれども,実際に大学設置基準に位置付けるというイメージが湧かないのですけれども,いかがでしょう。
【白井大学振興課課長補佐】  まだ大きな方針が決まっていない状態ですので,いろいろな選択肢はあり得ると思うのですけれども,表現についても片仮名書きが別に排除されるわけではないのです。今のところ,個人的な感触としてはやはり日本語で書く方が良いかと思っていますけれども,そこはまた今後の御議論や他の法制上の先例等の確認を踏まえた上で検討してまいりたいと思います。
 それから,御指摘いただきました大学設置基準25の2の成績評価基準の明示も含めまして,今は関係するような規定が大学設置基準のあちこちに分散をして入っているような状況かと思います。そういうものについてどこまで整理をしていくのか。例えば入学者選抜に関する規定でございますが,適切な体制を整えて行うものとするという規定はございますけれども,こういうものだけで足りるのか,あるいは,大学としての方針の策定みたいなところまで踏み込んで書いていくのか。さらに,最近の議論の中では多元的な評価というようなことも言われている中で,そういうことまで入学者選抜の中に求めていくのかというようなことも含めて,まさにここで御審議いただきたいと思ってございます。
【川嶋委員】  少しだけ関連してよろしいですか。大学設置基準,入学者受入れ,アドミッション・ポリシーについては,大学設置基準ではないですけれども,文部科学省の大学入学者選抜実施要項には明確にきちんと求める学力まで書きなさいということがあって,聞くところでは幾つか大学入学者選抜実施要項に違反している大学もあると聞くのですが,法律上は拘束力はないという位置付けなのでしょうか。
【白井大学振興課課長補佐】  法律上の拘束力はございません。
【田中高等教育政策室長】  入学者の受入方針について補足させていただきますと,法令用語上,大学入学者選抜実施要項という高等教育局長通知以外に入学者受入方針というのを使っている例があります。それは学校教育法施行規則でして,情報公開を規定した,9項目の規定の中にあります。ですので,今の法制度上は大学が入学者受入方針を作ったら公開しなければいけないという規定はあるのですが,大学が入学者受入方針を作らなければいけないという規定がないという状況になっているということでございます。
【鈴木委員】  濱名委員からアセスメント・ポリシーを文書化して方針を記述するということについてお話があったということですが,私もこの3つのポリシーでいわゆる質の保証ができるのかどうかということになってくると,もう一つアセスメントというものがどうしても必要かとは思います。そこで議論をするにはまだ時期が早いのかもしれませんが,これをこの3つのポリシーと同じ取扱いで方針のみを文書化するということなのか,あるいは本当に実際にアセスメント・ポリシーを実施していくというときに,これは個々の大学自体が行っていくのか,大学を外部の組織が何かそういうアセスメントを行うような仕組みを作るのか,どちらなのだろうと,そんな思いがするのです。
 といいますのは,私の大学が去年からアメリカのCollegiate Learning Assessment(以下,「CLA」という。)というところに加盟いたしまして,これはアメリカの学生の1年生から4年生までの学修のプロセスを調べるという組織なのですが,それに入って,本学の学生と向こうの学生がどんな感じで成長の軌跡をたどっているのかを調べようということで始めたのですが,これには非常に多くの大学,あるいは学生が参加しているということで,我々も実験的な意味もあるのですが,しかし,これはやはりやっていこうという形で,同じ学生が1年時と4年時にこの調査を受けて,一人一人の成長のプロセス,成長率がすぐに一人一人に公表されると。それから,大学全体としても公表される,あるいは,大学間の比較も可能になるということがあって,そういうことが前例としてあるものですから,今ここでアセスメント・ポリシーということをお話しになるときに,どの辺までそれを考えているのかということに少し関心があります。
 それから,金子委員のIDでしたか,この間お書きになった中にも,それについての言及が多少ありましたよね。だから,金子委員のお考えもお聞きできればとも思うのですけれども。
【金子委員】  学修の成果の評価は必要だというのはみんなある程度合意しているんだと思うのですが,具体的な方法について必ずしも今は一般的な合意がある状態ではないと思います。鈴木委員がおっしゃったCLAも,自分たちでは唯一の方法だと言っていたのですが,どうもこの頃は批判もかなり強くなっていまして,もう一つ強くなっているのは,むしろ先生の方がもう少し客観的に学生を評価するような方法を開発した方がいいのではないかというような考え方もあります。
 一番典型的なのは,OECDのAHELO(Assessment of Higher Education Learning Outcomes(高等教育における学修成果の評価))というのでジェネリックスキルをはかるというのを国際的に実施しようとしたのですが,私はその専門家委員会に入っていたのですが,はっきり言ってこれは無理だなと感じています。というのは,やはり個々の専門のフィールドであればまだアグリーメントができるのですが,特に一般的な大学教育の成果ということになりますと,やはり考え方が非常に多くあり得て,しかも今度は心理学者がそういうのを発展,そういうテストを開発させようとすると,今度は自分たちの技術でそれを作ろうとしますから,ここに一種の版権,財産権が生じて人に見せないというような状況がまた起こってくるという非常に複雑な錯綜した問題ができていて,今の段階でアセスメントを何らかのもので,少なくとも例えば二,三種だけでも特定するということ自体が相当難しい段階であると私は感じています。
【山田委員】  私も金子委員と同じような意見,感覚ではないのですね,自分の大学で13学部がございまして,今年ずっと,ナンバリングを来年度4月からするために全部整理してまいりました。そこでアセスメントとも関連してくるのですけれども,非常に分野によってアセスメントのはっきりできるところとできないところというのがあるのではないかというのを感じます。例えば,世界基準からいったとしても,やはり工学系であるとか医療系など,どの国に行ってもほとんど卒業時,工学系などでも,医療系などは大学院,プロフェッショナルスクールということになるのかもしれませんけれども,ある程度決まっているところですと非常にアセスメントというのはスムーズに行きます。一方で,そうでない分野では,例えばアメリカなんかでもいつも出てくるアセスメントですぐれた大学というのがほとんど限られてきているのです。
 そうすると,今回もアセスメントの結果として職業につなげている,10年たってどれぐらいの給与をもらっているかというのを調べるというようなことがオバマ政権で決まったみたいですけれども,そうしたときに,いわゆるリベラル・アーツ・カレッジなどでは大学成果のアセスメントというものを職業として見るときに難しくて,それが大学院に行く学生が非常に多いから,一体どこで評価するのかという議論が続いているようなところもあったりして,かなり分野間のばらつきのようなものも出てくるから,統一をしてというときにどうするのかというイメージが湧きにくいところがございます。
【佐々木部会長】  この問題について,本日はこれまでにさせていただきますが,従来のいわゆる3つのポリシーの必要性について,これは皆さん異論のないところだと思います。ですから,問題はこれを大学設置基準の中にどう書き込むべきなのかということです。既に定められているじゃないかという御意見もあり得るわけで,その点について少し詰めた議論をしていただきたいと思います。
 アセスメント・ポリシーについては,実際,それぞれの大学のアセスメント・ポリシーというのは例えばどういうことなのかということを含めて,少し皆さんのイメージにばらつきがあるのではないかと思います。ですから,そこら辺も含めてアセスメント・ポリシーとはどういうことか,加えて,それが大学設置基準に盛り込む必要性があるかという点でまた御検討いただいた上,再度,問題提起をしていただきたいと思います。

 

(2)認証評価制度の見直しについて,文部科学省から資料2に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【佐々木部会長】  認証評価制度改善のための細目省令の改正(案)というのが出ております。資料2です。これは,前回,時間がなくて審議未了になったものですので,本日はこれについておさらいをして,内容は既に何度もここの部会で御意見いただいていることですので,恐らく合意ができるのではないかと思っております。まず事務局からの説明をお願いします。
【田中高等教育政策室長】  それでは,失礼いたします。資料2を御覧ください。この後,他の案件もございますので,これまでの経緯等の詳細な説明は省かせていただきますが,大学の質保証の議論の中で認証評価制度につきましてはこれまで何度か御議論いただいたところでございます。その上で,これまでの議論を踏まえまして,省令の改正というものを先ほどの大学設置基準等の改正などとも合わせまして,年内に行いたいと思っているところでございます。
 そして,この資料2につきましては,これまでの議論を踏まえて省令の改正として考えられる事項を,いわゆる要項のようなイメージで整理をしたものでございます。改正の趣旨にございますように,24年8月の質的転換答申の中で,先ほどの大学設置基準の中でも議論が出ましたが,学修成果の重視ということが言われているわけでございます。その中でアセスメントの在り方をどうするかというのはございますが,各大学のアセスメントに対する評価を,より学修成果を重視していくことが必要だということについてはこれまでも合意が出てきていることではないかと思っているところでございます。
 そのような中で,特にこれまで認証評価制度につきましては外形的な基準に基づく教育研究環境を中心としたインプットを中心とした評価の中でどうアウトカム的な評価を取り入れていくかということが求められているところでございまして,そうした取組は既に第二サイクルに入っている中で,各認証評価団体におきましても一定の取組をしているところでございます。そうした取組を加速するためにも,細目省令を改正いたしまして,学修成果というものを評価の対象として明確に位置付けることを中心といたしまして,その他,第二サイクルにおける認証評価団体の取組なども踏まえまして必要な改正を行いたいというのが趣旨でございます。
 2で改正の概要がございますが,まず柱といたしましては,(3)の学修成果及び内部質保証に関する評価というものを評価の基準として明確に位置付けるというのが柱でございます。これは24年8月の質的転換答申,さらには,最近でも今議論中でございます,参考1で付けおります高大接続特別部会の答申案の中でも盛り込まれているものでございます。
 そして,順番が前後いたしますが,評価における社会との関係を強化する,あるいは高大連携というものも今議論されておりますので,そうした観点から高等学校,あるいは自治体,産業界等の関係者からの意見聴取を認証評価に当たって行うということを位置付けるのが(1)でございます。
 また,評価を評価で終わらせないと,実際に大学教育の改善等につなげていく,そのための仕組みといたしまして,再評価でございますとか追評価などの取組が今,認証評価団体でも行われておりますので,そういうものを制度としてしっかりと位置付けるというのが(2)でございます。
 そして,1つ飛ばしまして(4)でございますが,こちらはこれまでの議論の中でも認証評価機関に対する評価,いわゆるメタ評価の重要性ということも御指摘を頂いたところでございます。そうしたことも踏まえまして,評価の質の向上に向けた取組を継続的に実施するということを認証評価機関に求めるような規定というものを入れていってはどうかというのが(4)でございます。
 そして,(5)でございますが,こちらは参考1で高大接続特別部会の答申案も添付しておりますが,現在,高大接続特別部会の中で入学者選抜の改善を行っていく上で認証評価などにおいて評価の充実を図っていくということが言われている,議論されているところでございます。現在,入学者選抜ということにつきましては,認証評価団体におきまして一定の取組が行われておりますが,国の制度上,入学者選抜に対する評価を行うことが制度上担保されていないということがございます。このため,認証評価における評価の対象として入学者選抜を明記するというのが(5)でございます。当然,制度上,入学者選抜を位置付けただけでは各大学の改善が行われるものではありませんので,それは別途,高大接続特別部会で議論されておりますアドミッション・ポリシーに関する事例集でございますとかガイドラインの作成,あるいは大学入学者選抜実施要項全体の改善というものも行っていく予定でございますが,そうした取組を加速するためにも入学者選抜に関する評価というものを制度上位置付けたいということでございます。
 説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
【佐々木部会長】  それでは,以上の件について御意見を伺います。
 これまで,この部会での議論では,残された案件としてそれぞれの大学が教育の質保証,質の改善のための取組を行った,その結果について各大学が評価をするスキーム,あるいはツールをきちんと明確にすべきであると,こういう議論がありました。同時に,認証評価の重要な項目として,大学における教育の質保証改善の取組について,これを是非評価項目としてきちんと入れるべしという御議論がずっとなされてきまして,それを含めて今回,細目省令の改正の案という形で事務局から本日提示されたわけですが,いかがでしょうか。
【高橋委員】  質問ですが,改正の概要の評価における社会との関係の強化のところで,「認証評価機関が評価を行うに当たっては,高等学校云々(うんぬん)の関係者から意見聴取を行うこととする」ということは,認証評価機関が大学の評価を行った評価結果をステークホルダーに聞くということなのでしょうか。もちろん大学は評価を受ける前にステークホルダーから聴取していますよね。聞いていない大学も中にはあるかもしれませんけれども。それは聞いているとして,この部分の表現は,その評価機関が評価を行った評価結果が本当に合っていますかということをステークホルダーの方々に聞くということなのでしょうか。
【田中高等教育政策室長】  既に評価結果などにつきましては,法制度上,公表等をすることになっておりますので,これは評価結果について意見を聞くというよりも,評価をする前に関連する,例えば教育課程ですとか,高等学校の関係者に関係あるものであれば教育課程とか入試ですとか,あるいは高大連携,そういうものについて評価を行うに当たって,評価の前に意見を聞いて,大学とだけのやり取りだけではなくて,ステークホルダーの意見なども認証評価団体の最終的な評価のときに反映させる。それに縛られるという意味ではないですが,評価の前の考慮の中に大学とのやり取りだけではなくて,高等学校をはじめとしたステークホルダーとのやり取りもしてほしいという意味でございます。
【高橋委員】  分かりました。そうすると,先ほどのアセスメント・ポリシーではないのですけれども,評価した後にその評価機関の評価が役に立ったかどうかということにつなげてサイクルを回していかないと改善にならないのかなと思いましたので,お聞きしました。
【島田委員】  もう一つ質問ですけれども,(4)のところの説明の中にも言われたのですが,評価機関が,まともと言ったら怒られますけれども,まともな評価をしたかどうかがあるわけですから,いずれは何年かに一度は検査しなければいけないという感覚でさっき説明されたと思うのですけれども,この文書ですと,評価の質の向上に向けて評価機関が何か取組を継続的に実施するとしか書いていないので,実際上は何かそういう機関なり文部科学省が査察に入るというような,毎回点検するようなことを考えられているのか,その辺の少し具体的なことを教えていただきたいと思います。
【田中高等教育政策室長】  言葉足らずな面があったかもしれません。先ほど議論の中で,いわゆるメタ評価,認証機関に対する評価の充実ということも議論があったと申し上げましたのは,議論の中では,例えば今,文部科学大臣が認証した場合にはそれを再度チェックするような仕組みがない。さらに,アメリカなどにおきましては認証評価団体を更に評価するような団体もございまして,そういうことも検討してはどうかというような御意見はございました。
 ただ,これは省令改正等で対応できる事項ではございませんので,これは引き続き第8期も含めまして認証評価制度全体の中でそうした新しい仕組みについては御議論いただきたいと思いますが,そうした認証評価団体に対する評価というような御意見がございましたので,省令の中で対応できるものとして,現に認証評価団体などにおきましては調査研究でございますとか,あるいは研修,これは個別の団体だけではなくて認証評価団体の連絡協議会のようなものを設けまして,各団体で資源を共有しながら研修等をしております。そうしたものに対する根拠規定という意味も含めまして,認証評価団体が自ら質の向上をしていく取組,そういうものを省令上も位置付けたいということです。
 この部会の議論といたしましては,まさに認証評価団体に対する評価の仕組みのようなものも検討すべきではないかという御意見を頂いたのですが,それも踏まえつつ,省令改正でできるものとしてはこういうものが考えられるのではないかということで先ほど説明させていただいた次第でございます。
 以上でございます。
【川嶋委員】  方向性としてはよろしいかと思うのですが,実際,具体的に評価の在り方を考えていくと,例えば先ほど御質問のあった(1)の社会との関係の強化で,評価の際に大学のステークホルダーから意見を聴取するというときに,方法にもよるのでしょうけれども,もし今行っている訪問調査でしようと思うと,非常にスケジュールが厳しくなります。今でも訪問調査,ある機関は朝8時半から夜8時まで1日目は行っているのです。その中に3つのグループからの意見を大学構成員から直接聞いております。それに加えて,もし訪問調査で直接こういうステークホルダーからの意見を聴取しろということになると,今のスケジュールではなかなかこなせなくて,日程を増やすなりしないといけません。逆に,今度,受審大学数の数が処理できないとか,いろいろ具体的な話になってしまうんですけれども,そういう問題もあるので,聴取については例えばステークホルダー自体も非常に定義しにくいですよね。全国から学生も来ていますし,だから,もし規定を作られるのでしたら,その辺は少し柔軟な形にしていただければと,実際に評価に関わっている者としては思います。
 以上です。
【佐々木部会長】  ありがとうございました。
 それでは,この案件についてはいろいろ御意見,本日頂いた御意見も含めて再度,事務局の方で取りまとめを行っていただくということでよろしいですか。次回には,改善のための要項レベルの形で御提案を頂くと伺っておりますが,そういう方向で進めさせていただきます。

 

(3)高等教育機関における編入学の柔軟化について,文部科学省から資料3に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【佐々木部会長】  それでは,残りの時間で前回御議論いただいた高等学校の専攻科からの大学への編入学について,改めて御議論いただきたいと思います。この専攻科からの編入学については,キャリアの流動性とか多様性,あるいは継続性を担保するために前向きに検討すべきであると,こういうことでおおむねの御意見を頂きました。ただ,それを認めるに当たって,高等学校専攻科の教育の質の担保の仕組みについて議論が残されておりました。この部分を残してパブリックコメントに,既に,今,実施しているところであります。この間,委員にもいろいろ途中で御意見を伺って御苦労をお掛けしましたこと,御礼申し上げたいと思います。
 そこで,本日は,編入学を認める方向で,しかし,その際,質の担保の仕組みが必要である,この具体的な仕組みについては次回議論いたしましょうということで前回議論を閉じておりますので,この部分について改めて事務局から提案を示していただき,意見交換をしたいと思います。よろしくお願いします。
【高見教育制度改革室専門官】  それでは,お手元の資料3を御覧ください。前回の審議におきまして,高等学校専攻科から大学への編入学を認める際には,専攻科での教育が高等教育相当であることを担保する方策が必要であると御意見を頂いたことを踏まえまして,事務局にて改めて作成した仕組みの案となっております。
 1ページ目,2ページ目でございますが,今回,大学に編入学できることとする高等学校専攻科につきましては,この表にお示ししましたとおり,修業年限,授業時数,授業時間の単位換算,教員資格,教員数,施設等において専修学校専門課程を参考とした基準を設けることとしたいと考えております。
 続きまして,3ページ目を御覧ください。評価についてでございます。前回お示しした案では,外部評価の1類型である学校関係者評価につきまして,各専攻科が自律的に評価を行うこととしておりました。しかしながら,前回の御審議におきまして,編入学の道を開く方向性については一定の了承は頂いたものの,質の担保を図るための仕組みが必要である等の意見を頂いたことを踏まえまして,現在,努力義務とされております学校関係者評価につきまして,その実施と結果の公表について義務付けることとしてはどうかと考えております。
 また,その上でということになりますけれども,本科と専攻科をまとめた形で評価を行うのではなく,本科と専攻科を分けて評価を行うことで,今回,大学への編入学を認める専攻科の実態をきちんと捉えたものとしてはどうかと考えております。
 さらに,評価につきましては,編入学が認められる水準かどうかを判断する観点から,相当数の大学関係者や高等教育の評価に携わる者を入れることとしてはどうかと考えております。
 今回,大学への編入学を認めることとする高等学校専攻科に関しましては,これまでの本部会の意見も踏まえながら,評価につきましてこれら3つの事項を新たに求めることとしたいと考えております。
 更に前回の御審議も踏まえまして,今後の高等教育の質の担保・充実を図る観点から検証を行い,また,その結果に基づいて評価の在り方についても所要の改善を行っていくこととしてはどうかということも考えております。
 なお,4ページ目以降に専修学校設置基準や学校評価に関する規定を参考として添付しておりますので,後ほど御覧いただければと存じます。
 私の方からは,以上です。
【白井大学振興課課長補佐】  続きまして,同じ資料でございますけれども,前回の濱名委員,あるいは美馬委員から専門学校の編入学について認めたときの経緯,あるいは現在の専門学校から大学への編入学は適切なものなのかどうか調べる必要があるのではないかという御指摘を頂きました。
 同じ資料の後ろ,9ページを御覧いただきたいと存じます。現行の編入学制度についてまとめた資料でございますけれども,既に御案内のとおりでございますけれども,現在,大学への編入学が認められているのは短期大学,それから高等専門学校,そして一定の要件を満たす専門学校という3つのカテゴリーでございます。その中で,この専門学校につきましては,特に学校に関する要件としまして修業年限2年以上,また,課程の修了に必要な総授業時間数が1,700時間以上という要件が定められているところでございます。
 この背景になった議論でございますけれども,10ページを御覧いただきたいと存じますが,平成9年の大学審議会答申というものをお付けしてございます。この中では,学生の流動性を高める工夫,高めていくためにということでございますけれども,大学側としても様々な学生を受け入れることが学習ニーズの多様化に応えることになる,また,学生の流動性を高める観点からも有意義であるという御指摘,また,学校教育制度において,いわゆる袋小路をできるだけ解消することが望ましいというような問題意識がここで提示されてございます。
 具体的な要件の部分でございますけれども,下のアンダーラインの部分ですが,大学入学資格を付与している専修学校高等課程の認定の際の考え方,大学への編入学が認められている短期大学,高専の修業年限,総授業時間数などを考えて総合的に判断すると,この修業年限2年以上,総授業時間数1,700時間以上のものが妥当ではないかという御結論を頂いているところでございます。
 次の11ページは,専門学校から大学への編入学は今どうなっているのかということをまとめた資料でございます。この専門学校から大学への編入学につきましては,制度的には可能になってございますけれども,必ずしも全てに門戸を開かなければいけないという義務が掛かっているものではございません。そこで,全国学校法人立専門学校協会が実施した調査結果によりますと,こちらの法人の団体の方で調査された結果,558大学のうち専門学校修了者について大学への編入学を認めている大学の割合としては,全体の440大学,78.9%であったということでございます。逆に言いますと,2割ぐらいの大学は必ずしもこれを認めていないという判断をされているということでございます。
 この中から,私どもの方で現に編入学の選考を実施している大学20大学について,少し期間が限られていたものですので,サンプル調査を行わせていただきました。特に3年次編入者について見ますと,同じ大学について短期大学からの編入,また,高専からの編入,専門学校からの編入について比較しますと,単位認定については若干高専が上回っているところはございますけれども,単位認定,それから,入った方の追跡調査,卒業率に関しましても短期大学からの編入者と専門学校からの編入者について大きな違いというのはなかった,単位認定については,専門学校の方がより多くの単位認定を受けているというような状況でもございました。
 また,自由記述として,編入学に当たってどのような課題があるのかということをお伺いしました。その中では,必ずしも十分なフォローアップの支援ができていないんじゃないかとか,あるいは,編入学者ですのでなかなか人間関係などで溶け込みにくい部分があるんじゃないかというような御指摘がございましたけれども,特に専門学校からの編入学について問題になっているというような回答は一切見られなかったというところでございます。
 説明は以上でございます。
【佐々木部会長】  それでは,以上の御説明に基づいて議論をいたしたいと思います。いかがでしょうか。
【川嶋委員】  今,最後の白井補佐からの御説明で少し疑問に思った点をまずお聞きしたいのですが,この20大学のアンケートによると,単位認定の平均が61.8とか75.6,61.9とあるのですが,設置基準では60単位までしか単位に認められていないのではないのですか。
【白井大学振興課課長補佐】  編入学者につきましては60単位を超えて認定することは認められているところでございます。問題はございません。
【川嶋委員】  そうなのですか。分かりました。それと,ここには出てこないのですけれども,例えば専門学校もそうですが,普通,単位認定するときはシラバスを出させたり授業内容を学生から直接聞いたりして,本当に大学の授業内容に相当するものを既に学んできているかということを確認しているのですが,そのあたりは何か情報はあるのでしょうか。
【白井大学振興課課長補佐】  今回,専門学校からの編入学が適切に行われているかという観点からの限られた調査でございましたので,一般的な課題としてそういうものが編入学等においてあることは承知しておりますけれども,そこについて今回絞った調査は行ってございません。
【川嶋委員】  あと,最後に1つだけ。前のパブコメのときにも意見は付けたのですが,最近「学修」という,例えば1ページ目,授業時間の単位への換算で,45時間の学修を1単位としてと,「学ぶ,修める」が頻繁に文部科学省の文章で見られるのですが,しかし,机上にあります質的転換答申の2ページ目の脚注に,大学設置基準上,大学での学びは「学修」としている。これは,大学での学びの本質は,講義,演習,実験,実技等の授業時間とともに,授業のための事前の準備,事後の展開など主体的な学びに要する時間を内在した単位制によって形成されているものであるからという注記があるのですけれども,小中高とか専修学校では授業外時間ではなくて授業時間で単位を定めて付与しているわけですよね。ですから,先ほどのことと関連するのですが,言葉を少し明確というか,一貫性を持った形で使っていただきたい。あるいは,もう履修主義はやめて習得主義に全て小学校から変えたという文部科学省の意思の表れが全て教育段階で「学ぶ,修める」という言葉を使っているのでしょうか。
【高見教育制度改革室専門官】  ここの資料3の1ページ目で学修,修めるという字を使っているのは,専修学校の専門課程の規定が,お手元の資料4ページ目に専修学校設置基準というのを置いておりますが,そこの一番下の行にございますが,ここの学修という言葉を引用して使っております。ただ,川嶋委員の御指摘を踏まえて,もう一度言葉については精査したいと思います。
【佐々木部会長】  パブコメでは御指摘を頂いて,「学ぶ,修める」に修正をいたしました。
 ほかに御意見いかがですか。
【佐藤委員】  ありがとうございます。1つ簡単な質問をさせていただき,その後で御意見を申し上げたいと思います。
 質問というのは,先ほどから専修学校専門科というようなことが比較対象として出ているわけですけれども,後の方の資料にありますように,現在,大学に編入学できるのは短期大学もあり,高等専門学校もあり,そして専修学校と,数ある編入学可能な学校種の中で,なぜこの専修学校の基準によりどころを求めるのか,その根本的なところがよく分からないのでお答えいただければと思います。
【水田主任視学官】  これは前回も少し御説明申し上げましたけれども,現在の制度の中で,確かに大学,短期大学,高専,専修学校,専門課程というのが認められている中で,そういう一定の基準以上を満たすグループがあった中に,今までそこに満たしていないのではないかと思われていた1つの組織が参入,基準を満たしていると,この基準を満たせば同じ仲間に入れるのではないかという議論をしているときに,どうしてもそれは,そこを満たすかどうかという場合には一番上ではなくて,ぎりぎりのラインの部分をクリアしていれば今のグループに入れても同等ではないかという判断になるというのが,論理的には説になるかと思っております。もちろん希望として大学レベル,大学と同じだとか短期大学と同じだということはあるのかもしれませんけれども,同じことをしているんだから編入学を認めてほしいという御意見があったときに,そのどこと比べるか,あるいはどこの基準をクリアすればいいかという判断に当たっては,現在の中で最後に認められたところではございますけれども,専門学校の規定というのを参考にしたいということでございます。
【小松初等中等教育局長】  少しよろしいですか。補足でございます。今,検討の順序として少しお答えいたしましたが,制度面といいますか法令面で申しますと,先ほど挙げていただいた高等専門学校,あるいは短期大学というのは学校系列で申しますと一条校になります。高等学校は一条校でございますけれども,専攻科はその正規課程とは別のものとして,しかし,その学校が実施する,責任下で実施するという独自の体系でございます。したがいまして,一条校とは別の体系でそこの法律に根拠のある学校制度,教育施設として責任を持って行うものとして一番定着している指標が専門学校ということで,一条校と切り分けているというのは制度的にはそのようなことがございます。
【佐藤委員】  小松初等中等教育局長ほどの方と議論を闘う気はさらさらありませんけれども,確かに高等学校は一条校で,本科は一条校そのものです,一条校たる高等学校が行う教育業務の中核ですね。でも,やはり専攻科というのを学校教育法の中では高等学校の章に書かれている。そのような意味では,一条校たる高等学校が実施する本科を終えた生徒への精深な程度に云々(うんぬん)という,やはり高等学校が実施するものだと思いますので,直ちに中学校とは違うと言い切っていいのかどうか,少しそれは私はよく分からないです。
【小松初等中等教育局長】  失礼いたしました。正規の教育課程というのは,例えば高等学校の教育課程を修了しているかどうかとか,そのような一条校の正規の,ここでいうと本科という考え方でございますけれども,それに当たるかどうかということで御説明をいたしました。高等専門学校と短期大学における基準というのは,今回の説明でいえば本科に当たるところでございますので,それとは違うものという意味で御説明を申し上げたところです。
【佐藤委員】  ありがとうございます。元に戻りまして,専修学校専門課程の基準を一番のよりどころにするというところがやはり理解し切れないところでございます。場外でお伺いしたことなのですけれども,今,水田主任視学官がお話しなさったように,既存の基準の中で一番低いというか,緩やかなところに合わせるのが行政の常道であるというような意味のことを私はお聞きしたことがあるのです。幸いにして,私は行政官ではないし行政学の学者でもないので,その観念に捕らわれずに自由な立場で少し意見を申させていただきたいと思います。
 言うまでもなく,高等学校専攻科における授業があり,教育が高等教育相当であるかどうか,その質を担保するにはどうしたらいいかという議論の中で,やはり同じ一条校である短期大学における基準であるとか,高等専門学校における基準というものを大いによりどころにすべきではなかろうかというのが私の申し上げたいことの核心でございます。
 先ほど御説明ありましたように,専修学校専門課程の修了者に大学編入学の資格を与えるという経緯について簡単に御説明がございました。いわゆる学生,学校制度の袋小路を打破しなくちゃいけないと。それから,真摯に学修する人たちに対して回り道をさせてはならないと,こういう大義名分の下にこの道が開かれたというふうに承知しております。あわせて,大きな声では申せませんけれども,少なからず政治的力学も働いたというふうに,当時の状況を知る大学員としては理解しているところでございます。
 そういう流れの中で専修学校専門課程の編入学が認められたわけですけれども,今回,具体的にこういうふうにそれと比較しながら,全く同じ文言を並べて,これでもって高等学校専攻科の教育の質が高等教育に相当すると見なされる基準にするということについて,少し拭い難い違和感を覚えるわけであります。特に今回の案の中で,教員資格,今更申し上げるまでもなく教育の質を担保する上で非常に重要な要素は教員の資質,能力,そして見識であるはずでございます。この教員資格の中に,2番目のポツは,要するに大卒2年以上関連業務に就いていればいいよという話だし,3番目のポツは高等学校の教諭を2年経験していればそれでいいよというふうに読み取れるわけでございます。
 私は長く私立の中学校,高等学校,短期大学,大学を設置する私学の教育研究,そして管理運営について,経営について携わった者でございますけれども,その経験から言って,卒業後,高等学校教諭になってようやく2年たった人たちの到達している資質とか能力,あるいは教育に対する見識,こういうものに対するものがいかほどのものか承知しているつもりでございます。成熟度というように言ってもいいかもしれません。こういう段階にある人たちについて,高等教育相当の教育を行えると認定することについては非常に心もとないし,もっとはっきり申せば,信じられないという思いでございます。
 もちろん短期大学にも,そして大学にも高等学校教諭出身者が少なからずおられます。一生懸命活躍しておられます。ただ,こういう人たちは,2年とか3年とかいう経験ではなく,長年にわたる高等学校での教育歴,しかも単に年数を重ねたというだけではなくて,高等学校教諭の中でも一際目立った実践研究に努力を重ねているというような方々であって,そういう業績や実績を大学や短期大学が高く評価して高等教育の専任教員として登用しているわけです。そういうふうな慎重な審査をしながら,その大学,短期大学でこの高等学校教諭を対応しているのです。繰り返しますけれども,この基準によりますと2年,これはいささか納得し難いような話でなかろうかと思います。
 結論として,資料3にあります基準のうち,特に教員資格については是非高等教育にふさわしい教員資格をもう少し深く検討していただき,大いにその際,短期大学の教員基準,あるいは高等専門学校の教員基準を参考にしていただきたいと強くお願いしたいところでございます。
【水田主任視学官】  先ほど申し上げたとおりでございます。現実として,現在の法的な状況といたしまして認められている1つの基準がございますので,新たなものについて審査する際には,その基準というものを十分参考にしながら検討していただければと考えております。もちろん,これだけで十分だということではなくて,当然,各機関,質の向上には努めていくということでございますけれども,あくまでもこういう必要な要件というのは最低の基準ということになっているのは御承知のとおりでございます。
 以上です。
【佐々木部会長】  今回の3ページに,4つ目の要件というか丸が加えられていますね。高等教育段階の編入学について,高等教育の質を担保・充実を図る観点から検証し,その結果に基づいて評価の在り方について所要の改善を行っていく。これは,高等学校専攻科についてのみ言っているわけではないですね。ですから,ここは,高等教育段階の編入学全体について,いずれといいますか,質の担保・充実の観点から検証しましょうと,こういうことと理解していいでしょうね。
【高見教育制度改革室専門官】  まさにそのとおりでございます。
【島田委員】  すみません,僕もこれ,少し分からないのは,本課程は基本的にこの学校において終えているわけですよね。教員資格は僕も分からないので何とも言いませんけれども,全体としたときに,本課程を終えているということは,大学を受けられる資格は持っているわけですよね。これはどちらにしても,最低基準かどうかを別にしても,受けられる状況はこれでいいですよと。あとは,大学が入試と同じで編入学試験を行うことによって判断しますよというのがもともとの基本ですよね。また,単位認定の中身も,認定の量,この研究は,あなたは大学の研究と認められないから単位として認めませんよ,だから40しか認めませんよと。あとまた卒業まで頑張りなさいという世界なのだと僕は理解しています。そうすると,結局,高等学校にそこまで求めるのではなくて,やはり大学が質保証を自分で担保しながら採らざるを得ないというのが基本かなと思っています。そうすると,これは,少し教員資格まで僕もよく分からないけれども,認めざるを得ないのかなと,最低でという感覚になっています。そういう思いです。
【長尾委員】  さっきの佐藤委員の教員資格に関しては初めての議論じゃないかなと。以前出てこなかった議論で,ほかのことはかなり議論したのですけれども,私の質問は,教員資格というのは現行の高等学校専攻科で現行の規定に,教員資格になっているものですかというのが質問です。
【高見教育制度改革室専門官】  現行の規定には,こういう規定はございません。今回,大学に編入できる高等学校専攻科については,こういう教員の資格の要件を設けてはどうかと考えているものでございます。
【長尾委員】  ごめんなさい,もう一つ質問です。であれば,専修学校の専門課程においてはこの規定が既にある,これに同じものを置こうということでこれになったわけですね。
【高見教育制度改革室専門官】  はい,そのとおりでございます。
【金子委員】  先ほどこの比較の対象というお話があったのですが,私は,これはやはり専門学校と比較するのは適当ではないかと思います。第一,これは量からいって専門学校は毎年23万人ぐらい入っているわけです。専攻科というのは全部で8,000人,毎年4,000人ぐらいで規模が全然違うと。40分の1ぐらいですか。これ,逆であれば明らかに独自に新しく考え直すのは非常に必要でしょうけれども,非常に例外的になっているところについて新たに厳しい条件を課すというのは基本的にかなり難しいのではないかなと思います。
 それから,教員資格の点ですけれども,専門学校の教員の基準が配られているのを見てみますと,最後に,いろいろと列挙した後,その他,これに準ずる者というのが入っていまして,実は実質的には専門学校の教員に関する規定は物すごく緩いわけです。ところが,高等学校の専攻科は少なくとも高等学校の教員ではあるわけで,例外も確かに何かあるのかもしれませんけれども,一般的な規定としてどちらが厳しいかといえば,やはり高等学校の専攻科の方が厳しいというふうに一般的に言えると思うのです。
 佐藤委員がおっしゃるように,非常にこういうことを続けていくと大学教育の質が尻抜けになるのではないかという御懸念は,十分分かるところでありますが,これもさっき佐々木部会長がおっしゃっていたように,制度的には少なくとも道は開けておいて,大学の判断に一応はできることにしておいて,さらに,その編入できる学校の課程についての質保証についてはこれからもう少しきちんと考えていこうというのが前回からのお話ではないかと思います。もう一方で,職業教育を専門とする,特に行う高等教育機関というものも考えられているようでありますけれども,そういうものを考える際に,でも,どうしてもそれに関連して専門学校の質評価というものは今までほとんど行われていないわけです。何らかの形での質保証ということはせざるを得なくなってくると思いますし,私はそういう意味では中等教育から高等教育にかけての接続に関連して,質保証というのはもう少し体系的にやらざるを得ないと思います。
 ですから,ここで御懸念は非常に分かりますけれども,今の段階でとにかく絞って,一定の質ができていないと駄目というふうに議論するよりは,やはりここは比較的,数の上では少なくともそんなに大きいところではないわけで,一応制度としてはそろえておいて,後でもう少し体系的に質的な保証を考えるという方向に行くのが順序としてはよろしいのではないかと思います。
 以上です。
【長束委員】  今回専攻科から大学に編入するということで,視点としては,1つは大学の質保証の問題,もう一つ高等学校専攻科の生徒のキャリアアップ,可能性が広がるという面の2点あると思います。高等学校の教員の立場からすれば,前々回申し上げさせていただいたように,可能性を広げていくということを是非お願いしたいです。もちろん大学の質保証ということを考えた上で,様々な条件が付いてくるというのは必要なことと思います。今回,いろいろな形で学校関係者評価というのを義務付ける,また,専攻科と本科を分けて評価するということで,高等学校側も今後,編入する生徒を送っていく段階で,きちんとしていかなければいけないという1つの覚悟につながっていくのではないかと思います。このように高等学校側もこれから努力をしていくというようなことで是非認めていただければと思います。そのような視点が今回のこの評価の基準には入っていると思いますので,是非お願いします。
【安部委員】  看護師等の一定の専門職を養成する専攻科においては,専修学校の専門課程とほとんど変わりのないような教育を行っているということで,先ほど金子委員がおっしゃいましたけれども,本当に少ない8,000人の専攻科の卒業生のキャリアの袋小路を作ってはいけないということは,もう当たり前のことだと思います。一方,編入学の条件として,確かに専門学校は編入学ができますが,実態を見てみますと,平成26年度におきましては短期大学から4,773人,高専から2,592人,そして専門学校からわずか1,556人しか編入をしていません。専門学校の教育が大学に編入することが可能な教育課程なのかということの論議はやはり必要になってくるし,専攻科の8,000人という小さな窓口なのですけれども,高等教育のグランドデザインの中で,日本の短期高等教育の質についてもう少し論議をしなければいけないのではないかという問題提起になるのではないかという感想を持っております。
 以上です。
【黒田副部会長】  確認を2点しておきたいと思うのですが,袋小路になっている専攻科に風穴を開けるということは私はいいことだと思うのです。しかしながら,ここで書かれている評価についての努力義務を義務化する,これは是非していただきたいと思います。
 それから,高等教育段階の編入に関する専攻科の質保証,これもしっかりと行っていただかなければいけないことだと思います。
 それから,もう1点確認をしたいのは,専攻科の,今ここに書かれている文章は全て職業高等学校に対することしか書かれていない。それを対象にして文章が書かれているのですが,現実,普通科にも専攻科があるのですね。もう,今はなくなったという話もあるのですけれども,公表ではまだ5つあるわけです。普通科の専攻科と職業高等学校の専攻科とでは行っている内容が全く違うと思うのです。それを同等に扱っていくのでしょうか。普通科の専攻科は認めない方針でいくのだという話をちらっと聞いたんですけれども,そういうことが可能なのかどうかです。これを許してしまいますと,今,地方の高等学校では大学受験のために浪人をさせる代わりに高等学校へ集めて再教育を行っているわけです。それが専攻科として認められるということになると,2年課程での専攻科,高等学校の安い授業料で,地元で生活をして,2年だけ大学へ編入するというシステムが必ず生まれてくると思うのです。だから,それをどういうふうに対処するのでしょうか。それは認めないよとはっきり言えるのかどうか,その辺のことだけ少し確認をしておきたいと思うのですが。
【高見教育制度改革室専門官】  失礼します。普通科の専攻科,特に黒田委員がおっしゃるのは進学のための課程というイメージだと思います。普通科だけを専攻科編入学を認めないという仕組みにするというのは非常に難しい面はあると思います。ただ,一方で,では普通科の専攻科,進学課程のものが仮に作られた場合に,修了しても例えば学士等の資格が得られるものではありませんし,また,各大学の編入学の門戸というのもそもそも全く広いものではございませんから,そういう需要がそもそも出てくるのかどうかという話。また,そういう進学準備のための専攻科というのが仮に作られて,そこの生徒が大学に編入学するとなったときに,大学において単位認定というのが個々に見たときにできるのかという課題もまた出てくると思います。
 そういう意味では,非常に可能性というのは低いと思っておりますけれども,ただ,資料3の3枚目に書きましたとおり,今後,具体的に検証も行っていくことにしておりますので,そういう検証の中でまた今回の,本来の趣旨にずれるようなものがあった場合には,その辺の見直しというのは図っていく必要があると思っております。
【長尾委員】  今回,この議論というか題目については本当にいろいろな議論をした結果が本日だと思いますし,3ページにあるように,私たちが今まで述べた意見に関してはこの評価についてというところの項目で丸が4つ,特に上の3つを考慮してくださっていると思います。そして,4つ目のさらにということで,今後の議論についても展開,これで終わるのではなく評価の在り方,これは高等学校の専攻科だけではなく全部の編入に対する,今後編入していく高専も専門学校も短期大学も含めての評価についての議論が今後続くことと思います。
 とにかく,島田委員が先ほどおっしゃったように,いろいろな思いがある。私も大学関係者でしたので,大学からどうしてもここは見ておりますけれども,質の保証というもの,大学に上がってくる人がどういう資質を持っているのかということが気になることは気になるのですけれども,先ほど高等学校の方からおっしゃったように,やはり高等学校の可能性というのは対等に置いておいてあげなければいけない。これはもうみんなここで分かっていることだと思うのです。それで,懸念の中で,今,普通科の話も出ましたけれども,いずれにしても,大学が主体的に編入を採る側(がわ)の入試,あるいは選考をきちんと自信を持って主体的にすればいいことであって,例えば私の前任校でありましたところも編入制度がありましたけれども,審査にかかったときにはこの学校では,短期大学はここまで行っていない。例えば建築課程でしたけれども,1年生には1年間しか行っていないと見なすと。単位も与えられないから,3年編入ではなく2年編入で5年かけてください,これでいいですかというふうな個別の条件を付けて選考しております。ですから,質の保証というのは,これだけ議論した後は大学の自主性,主体性にかかってくるというので,ある程度の結論をもう今付けたらいかがかと思います。
【佐々木部会長】  大変私も同感で,これで何とか意見がまとめられないかと思います。飽くまで質保証する主体は大学なのだということですね。いろいろ条件を付けることはできますけれども,受け入れた後,受け入れる課程,そして受け入れた後の教育の方がよほど大事なことなのではないかなとも思いますので,今のようなお考えで大体合意いただけますか。この先は,そうしますとこれは答申の方向で議論をまとめていただくと,こういうことになりますね。
 それでは,この件の審議はこれで閉じさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
 本日の御審議,ありがとうございました。これで閉会いたします。

 

―― 了 ――

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