大学教育部会(第30回) 議事録

1.日時

平成26年10月31日(金曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省15階15F特別会議室

3.議題

  1. 大学の質保証の充実等について
  2. その他

4.出席者

委員

(部会長) 佐々木雄太部会長
(副部会長)黒田壽二副部会長,谷口功副部会長
(委員)長尾ひろみ委員
(臨時委員)奥野武俊,金子元久,川嶋太津男,佐藤弘毅,島田尚信,濱名篤,美馬のゆりの各臨時委員
(専門委員)安部恵美子,長谷山彰,山田礼子の各専門委員

文部科学省

(事務局)吉田高等教育局長,藤原私学部長,中岡初等中等教育局審議官,水田主任視学官,森高等教育企画課長,里見大学振興課長,田中高等教育政策室長,高見教育制度改革室専門官,片柳高等教育政策室室長補佐,白井大学振興課課長補佐 他

5.議事録

(1)大学への編入学等の在り方について,文部科学省から資料1-1,資料1-2,資料1-3に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【佐々木部会長】  それでは,所定の時刻になりましたので,第30回の大学教育部会を開催いたします。本日は,お忙しい中,御出席いただき,ありがとうございます。
 議題には,大学の質保証の充実等について,本日も非常に多数の案件が用意されております。審議に御協力いただきたいと思います。
 まず,本日は,教育再生実行会議の第五次提言で出てまいりました問題を踏まえて,本部会としての一定の考え方をまとめたい。これが,資料1-1,1-2,1-3,資料2のアジェンダであります。
 次いで,大学の質保証の充実という観点から,設置基準の改正,あるいは認証評価制度の改正ということが懸案になっておりましたので,本日,御審議いただくことといたしております。
 それでは,審議に入りたいと思います。最初は,教育再生実行会議の第五次提言及び文部科学大臣からの諮問事項であります,高等教育機関における編入学の柔軟化について,二つの件を議論したいと思います。
 まず,前回,高等学校専攻科から大学への編入学を議題にしまして,高等学校の専攻科からヒアリングを行いましたので,まだ御記憶も新しいことと思います。この専攻科からの編入学を認める要件として,本部会では,専攻科での教育が,高等教育相当であることを担保する方策が必要だという御意見を頂きまして,これを基にして,事務局で案を取りまとめましたので,それを基に議論を進めたいと思います。
 もう一件,職業能力開発施設からの大学への編入学につきましても,単位認定の対象とする告示改正等について,既に事務局から説明を受けてきたところですが,この点についても,本日,部会として一定の方向性を示すことを求められておりますので,御審議いただきたいと思います。
 それでは,この2点の議論を行いますが,最初にこの2点をまとめて事務局から御説明いただいて,審議は個別に進めさせていただこうと思います。
 それでは,事務局から説明をお願いします。
【高見教育制度改革室専門官】  それでは,お手元の資料1-1を御覧ください。これまでの審議におきまして,高等学校専攻科からの編入学を認める際には,専攻科での教育が高等教育相当であることを担保する方策が必要であるという御意見を頂いたところでございますが,そういうことを踏まえまして,事務局にて作成した仕組みの案でございます。
 箱書きの中にありますように,教育内容等が高等教育相当と認められる高等学校専攻科の修了者に限りまして,大学への編入学を可能とするために,既に編入学を認められている専修学校の専門課程,いわゆる専門学校の規定等も参考にしながら,質を担保する仕組みを構築したいと考えております。
 具体的には,修了者が大学に編入学できる専攻科の基準といたしまして,まず,修業年限につきましては,通常の専攻科は1年以上とされているところですが,これを2年以上としたいと考えております。
 また,授業時間数につきましては,年間授業時数を800時間以上,総授業時数を全課程で1,700時間以上とするとともに,単位の換算ルールとしては,大学と同じ45時間の学習を1単位として設定したいと考えております。
 また,教員の資格につきましては,専門学校と同様,丸3に列記している者を想定しております。なお,高等学校,専攻科修了者に関する部分につきましては,専門学校の教員資格が,専門学校修了者で6年以上の実務経験を経た者が入っていることも踏まえまして,高等学校専攻科修了者で,6年以上の実務経験を経た者も加えることを想定しております。
 丸4の施設につきましては,教室や教員室,事務室等の設置を求める予定でございますが,高等学校本科と共用であっても,専攻科の教育活動を行う上で支障がない,例えば保健室等の施設につきましては,専用のものの設置を求めないこと等を考えております。
 続きまして,2ページ目を御覧ください。
 評価につきましては,現状では学校教育法に基づきまして,自己評価について義務付けが行われているとともに,外部評価である学校関係者評価について,努力義務とされているところでございます。
 これまでの御審議におきまして,評価の重要性について,御意見を頂いてきたところでございますが,その実効性を高めるために,新たに自己評価におきまして,専攻科と本科を分けて行うとともに,学校関係者評価においては,高等教育相当であるか否かを判断するものとして,例えば,大学関係者等を自律的に入れることを求めてはどうかと考えております。
 なお,3ページ目以降に,専修学校設置基準等を参考として添付しておりますので,後ほど御覧いただければと存じます。
 私からは,以上でございます。
【白井大学振興課課長補佐】  それでは,続いて資料1-2の「職業能力開発施設から大学への編入学について(案)」というものでございます。
 先に2ページ目に参考資料をお付けしてございますので,そちらを御覧いただきたいと思いますが,教育再生実行会議からは,先ほど御説明のございました高等学校専攻科修了者の大学への編入学に向けてということと併せまして,職業能力開発大学校,職業能力開発短期大学校という職業能力開発施設から大学の編入学についても道を開くよう検討するという課題を御提言いただいているところでございます。
 これを踏まえたものが資料1ページ目の考え方でございます。
 前回,御報告いたしましたように,平成26年9月に文部科学省の告示が改正されまして,この職業能力開発施設,あるいはその他,防衛大学校等についても同様でございますけれども,そこにおける学習について,大学における単位認定とすることが可能とされたところでございます。これによって,例えば職業能力開発大学校を終えた方が,新たに大学に入学するという場合には,そこで従前の学習の内容について,大学の単位として振り替えることが制度的には可能になってくるということがございます。
 また,4年制大学の学生にとりましても,あるいは短期大学生にとりましても,これらの大学校に仮に行って,そこで授業を受けた場合には,大学の授業として持ち帰るようなことも可能になってくる。より多様な選択肢が開かれたところでございます。
 ただ,一方で,職業能力開発施設から大学への編入学,大学に接続するということにつきましては,当然,学習の相当部分が大学における学修に相当するものとして,既修得単位としての振替が前提ということになってきます。
 この告示改正が,平成26年9月に行われたところでございまして,まだ通常,アカデミックタームも終わっていないようなところでございます。今後については,単位認定の状況を踏まえた上で,必要に応じて,もし,なかなか単位認定を認められないという状況があるのであれば,職業能力開発施設においても,教育課程の内容が本当に大学相当のようなものになるのかどうかということについても,併せてお考えを頂くことが必要になるかと思います。
 そのため,今後,単位認定の状況を踏まえた上で,必要に応じて,職業能力開発施設における教育内容の見直しを行っていくことが必要であるという文言にさせていただいているところでございます。
 なお,下に参考として,職業能力開発施設は,三つのタイプがございます。職業能力開発総合大学校,職業能力開発大学校,また職業能力開発短期大学校がございます。
 職業能力開発総合大学校と職業能力開発大学校につきましては,4年制の課程ということで,通常,大学への編入学という形では,なかなか想定されにくい部分でございます。このうち,職業能力開発総合大学校につきましては,独立行政法人大学評価・学位授与機構による課程認定を受けておりまして,ここで学習を終えた方については,大学評価・学位授与機構から学士の学位が授与されるということになってございます。
 また,職業能力開発大学校については,大学評価・学位授与機構による課程認定を受けるとなりますと,大学相当の学習内容が必要になってきます。特に教養教育等の充実が必要になってくるということでございますけれども,こちらの大学校については,職業訓練に特化したようなカリキュラムを維持したいということで,大学評価・学位授与機構の課程認定を受けることについては,今のところ,お考えはないということでございます。
 最後の職業能力開発短期大学校,こちらは2年制の課程でございまして,まさに大学への接続ということが課題になってくるところでございますけれども,こちらの大学への編入学については,単位認定の状況を踏まえて,そのカリキュラムの内容についても御検討いただきたいと考えてございます。
 以上でございます。
【佐々木部会長】  ありがとうございました。
 それでは,まず,高等学校専攻科の問題について審議をいたしたいと思います。
 御意見,御質問がある方はどうぞ。
【佐藤委員】  賛否の意見を言う前に,一つ純粋に御質問申し上げたいと思います。資料1-1です。事務局の案で,丸4の施設ですが,この文面でつまびらかでないことがあります。前回申し上げましたけれども,たしか,大学,短期大学における専攻科については,施設・設備,それから教員,共に専用の者を求めていないと理解しております。ゆとりがある場合には,専攻科を設置できるとしております。高等学校の専攻科がどうなのか,私は存じ上げないわけですけれども,要するに,ここに書いてある文言からすると,編入学できる専攻科に関しては,保健室などを除いて,専用を必要とするという趣旨で,これが書かれているのでしょうか。それとも,何か違いがあるのでしょうか。
【高見教育制度改革室専門官】  資料が分かりにくかったかもしれませんけれども,これを参考にしているのは,専修学校,専門学校の規定になっております。専門学校の規定に関しましても,面積基準ですとか,施設の要件は定められているところでございまして,今回,それと同等のものを設定しようと考えております。その中で,高等学校の専攻科に関して,専用部分というところも対象として考えていきたいと思っているところでございます。
【佐藤委員】  高等学校における専攻科の専用施設という意味合いでお尋ねしているのです。大学や短期大学では,専攻科について,専用施設を求められていないですよね。
 高等学校について,このように書いてあると,保健室など本科と共用であっても支障のない施設については,専用は求めないということですので,それ以外の専攻科の教育活動に関するものについては,専用を求めるという趣旨ですか。
【高見教育制度改革室専門官】  はい。そういう趣旨でございます。今回,編入学を認める高等学校の専攻科につきましては,専用のものを求めるという趣旨でございます。
【濱名委員】  幾つかお伺いしたいと思っているのですけれども,まず,基本的なところです。前回の御説明の中でも,専修学校からの編入学を論拠として説明をされてきたと思うのですが,専修学校から大学への編入学というものの実態に対して,どのように捉えておられるのでしょうか。
 前回も,専修学科で認めているのだからいいではないかという御説明に終始していたのですけれども,全体の質保証ができていないから,専修学校の中に別トラックを作って,それに対する国庫助成等でスクリーニングを始めているわけですね。
 ところが,既にある仕組みとしての専修学校からの編入学を論拠にされるということは,問題がない,あるいはうまくいっているという評価に基づいているのでしょうか。大学の設置認可で質保証している時代はそれでよかったわけですけれども,その後で認証評価を義務づけるようになってきたわけですから,飽くまで過去の制度を一旦認めたからというだけで,この質保証に対する厳しい社会的な目がある状態の中で認めていく場合には,少なくともそうした論拠に関する検証が行われていると考えてよろしいのでしょうか。その内容について,教えていただきたいと思います。
【高見教育制度改革室専門官】  お手元の参考資料1を御覧いただければと思います。これは,以前お配りした資料ですが,その2枚目の裏側,下に小さな4ページと書いてある部分がございますが,ここに専門学校から4年制大学への編入学者数というのが示してございます。
 数の変動というのはございますけれども,毎年一定程度の人数があると,我々としては捉えております。また,こういう専門学校を修了した者を対象とした受け入れる大学というのも,実際にはございますので,一定の人数はあると認識しております。
【濱名委員】  私が伺っているのは,ニーズではないのです。ニーズがあるから認めるという論拠で,教育の質保証はできないと思うのです。
 これを見ていると,受け入れる校数も受け入れる率も落ちているのです。これは,それぞれ専修学校からの受入れに対する定量的な調査は,私も学長として受けた記憶はあるのですけれども,その内容がうまくいっているのか,これで入った人たちが,本当に2年で卒業していけているのかという実態を確認しないで,編入学の数が一定数いる,率がある。それも,ここしばらくは下降線をたどっていて,18歳人口は減少して,各大学は,むしろ定員充足に躍起になるかもしれないのに,これが減っているとしたら,専修学校の卒業からの希望者が減っているからこうなっているのか,あるいは大学が受入れをしなくなっているからなのか,その辺りの実態が,この議論の背景として必要な情報であろうかと思いますが,その辺はお持ちではないのでしょうか。
【高見教育制度改革室専門官】  ニーズという言葉に語弊があったかもしれません。
 濱名委員がおっしゃるような部分は,非常に重要なことだと思います。今,数字については,手元に持ち合わせておりませんので,そのようなデータがあるかどうかというのは当たってみたいと思います。
【濱名委員】  そのことがなくて判断するのは,私は大変難しいと思います。多様化と質保証というのは,我々が議論していく大きな二つのテーマで,それを,どう両立させるか。多様化欲求というのが常にあるわけで,多様化に対してどのように対応していくかを考えていくべきだと思います。
 ところが,中央教育審議会の議論の流れで言うと,多様化を進め過ぎたために,高大接続もそうですけれども,質保証の仕組みを再構築しなければいけないという議論を行っている中でこの議論をするわけですから,それなりの根拠がなければいけないのではないかと思うのです。
 例えば,前回の議論で言うと,看護系の専門学科がほとんどだということであったと思います。前回,私が御質問したのは,看護系でいえば,ほとんど看護大学の3年生は実習に出ていて,4年生は国家試験対策をする。カリキュラムというのは体系性があり,カリキュラムマップを我々は奨励しているわけですから,3年で編入学した人たちがどうするのですかという質問をさせていただいたと思うのです。
 看護系の大学と情報交換をして,それが受入れ可能である。あるいは,受入れに賛成する受皿があるのかということについては,時間もあったので,確認をしていただけていれば,本日,議論がしやすいのですが,その辺りについては,情報をお持ちでしょうか。
【高見教育制度改革室専門官】  前回の会議の中でも,3年次に編入学した場合に,何を学ぶのかという御意見があったと思います。専門科目につきましては,編入学をする際に,受入先の大学で同等の教育水準であると認められましたら,当該大学の単位とみなすことができる範囲で,単位認定されるということになると思います。
 現在,専門学校から編入学を受け入れている学校の履修を見ますと,1年次から入学した学生というのが,実習等を行っている間に教養的な科目を履修したり,研究の基礎となる学習をしたりしているというところでございます。
 また,保健士養成課程を置く大学であれば,保健士養成の課程を履修しているというところでございます。
【濱名委員】  それは,事実として,そういうことを確認されたのでしょうか。私どもの大学でも看護があって,看護界の大物の副学長,学部長がおられますけれども,彼らの説明によると,全くそういうことは考えられないということでした。
 既に,看護教育自体のトラックが複線化していて,混乱状態に近い。専門学校があり,あるいは3年制の短期大学があり,4年制がありという状態で,看護系の大学は,3年制の短期高等教育機関,専門学校も含めたものから,それが発展する形で看護系が増えている状態で,国家試験の準備教育と実習というのが両立しづらい状況であるので,4年制で行う方向へ改組していくのが今のマジョリティーだということから,高等学校の専攻科から入ってくるなど考えられないという話があったと思うのです。
 それで,文部科学省内で関連部局とどういう調整をされているのでしょうか。
 何よりも,先ほどの御説明の中で,高等教育相当と認められればということだったのですが,私は評価についての話を拝聴していると,誰が質保証するのか,全く分からないのです。これは,大学で言うと,もう10年ぐらい前のスキームですよね。外部評価者,専門家をその学校が招いて評価をするという仕組みで,その専門家は,学校運営の専門家です。前回行ったのは,高等学校教育の専門家なのですね。我々は設置基準を満たした上に,認証評価を受け,あるいは学部増・学科増を行うときには教員審査から始まって,様々な形で質保証についてのメカニズムを求めているのに,どうしてこれが認められるのかが,ほとんど理解できない。
 更に言えば,この後の二つ目の議題として考えると,職業能力開発大学校の方は,単位認定から始めるのに,我々は議論を重ねてきたわけです。それで,今回,この後,議論するのですけれども,どうして今まで単位認定の議論も行っていなかった高等学校の専攻科が,単位認定と編入学を同時に認めなければいけない特別な理由があるのか。職業能力開発大学校は,こういう質保証の議論は全くないのか。また,大学を出て2年の実務経験があれば,その人が教えたものを単位認定するものを,高等教育相当として認める。その論拠が専門学校ということなので,専修学校の質保証の議論が十分検証されているのですかということをお尋ねしているのです。
 前回も,専修学校の前例があるからということでしたが,その前例がうまくいっているという検証がなされていない議論の上に,更に我々が現在,ほかの制度で求めている質保証と比べると,明らかに劣っていて,受入れる態勢も確認していないとするならば,ニーズがあるかないかというのも,拙速な議論と聞こえてしまうのです。補足していただく情報があれば,教えていただきたいと思います。
【高見教育制度改革室専門官】  すみません。多分,3点ほどあったと思います。
 まず,1点目の,先ほどの大学の部分をきちんと確認したのかということですが,網羅的に確認しているわけではございませんが,幾つかの大学に確認したところ,そういう状況にあると把握しているところでございます。
 また2点目で,評価の話がございました。先日も,濱名委員から評価の部分についてはしっかりと,という御意見を頂いたところでございます。特に高等学校関係者だけの評価というのはよくないということもあった中で,今回,資料1-1の2枚目にお配りしていますように,大学関係者の評価が技術的にできると,案としてお示しさせていただいているところでございます。
【濱名委員】  前回よりは,多少前に進んでいると思うのですけれども,今,高等教育の質保証の相場と比べると,資料1-1の2ページ目の評価の部分の,「例えば大学関係者等を自律的に入れることを求めてはどうか」というのは10年前の話です。大学が受け入れるのに,国が推進するという制度になってしまいますから,これで大学関係者が質保証を信頼できるのかということについては,疑問を持たざるを得ないのです。
 さらに,例えば,看護学科の専攻科というのは,設置する段階で,大学であれば,医学教育課が厚生労働省と連携しながら,質的な保証の水準について審査をするわけです。専修学校は,厚生労働省が直接審査をすると思うのですけれども,高等学校の看護の専攻科というのは,そのような高等学校以外の目できちんと教育の質保証や,認証等々の手続が組み込まれているのかどうか,教えていただけますか。
【高見教育制度改革室専門官】  今の段階の状況で申し上げれば,そういう仕組みはないと思いますが,一方で,学校関係者評価というのは,多くの高等学校で既になされているものでして,こういうスキームを活用しながら,濱名委員がおっしゃった趣旨,それはしっかりと水準を担保するということだと思っております。そこをいかに実効性ある取組にできるかということについては,引き続き検討してまいりたいと思っております。
【佐藤委員】  2点,お伺いいたしたいと思います。
 まず1点目が,先ほど,濱名委員から,大学のベテランの看護教育の先生のお話が御紹介されましたけれども,会員数数十万人を有する,医療の世界では,日本医師会に次ぐ日本看護協会という強大な職能団体があります。ついでですけれども,日本看護連盟という,政治レベルの強大な組織もあります。
 その組織が,このところずっと言い続けているのは,看護教育の4年制化ということであります。この4年制化というのは,必ずしも学士課程に限るという言い方はしていなかったのですけれども,2年前辺りから,大学でということを最大の目標に掲げて,今はキャンペーンを張ったりしているところです。この4年制というのは,通常の高等学校が終わってから4年間をということを想定して看護協会はずっと主張してきていることです。
 今般,高等学校の専攻科からということになりますと,高等学校も含めて5年ということでしょうか。
 そういうことで,より質の高い高度な能力を有する看護職者を輩出したいという,非常に高い意欲に燃えている職能団体との間で,本当に意見の調整がかなう話なのかどうか,少し気になるところであります。
 質問は,職能団体の意見などを聴取しておりますかというのが一つでございます。
 二つ目ですけれども,もしも資料1-1にあるようなことを進めるとしたら,前提として,教員資格について,教育内容等が高等教育相当であると認められる場合のお話だと思いますが,最初のぽつは事柄として,2,3,4番目のぽつについて,本当にこういうことを文部科学省が考えておられるのかと,いささかびっくりしているところでございます。
 二つ目のぽつは,学位プラス2年以上,最低2年の業務経験者,三つ目のぽつは高等学校の教員を2年以上務めれば,四つ目のぽつは,短期大学卒の場合は4年以上務めればということであります。このことは,大学や短期大学の設置に関して,設置認可を行う教員審査において,大学や短期大学の専任教員と認められる最低限度の資格として,この程度のものでいいのだと文部科学省はお考えなのでしょうか。
 多分,今までの設置の流れとしては,単に年数だけでは最終判断できないにしても,ここに書かれているようなことは,年数だけのことを言っているように思えますので,そういうことでよろしいのかというのが,大変気になるところでございます。
【水田主任視学官】  失礼します。まず,職能団体のところにつきましては,次の議題とも関係してきますけれども,今後もいろいろと情報交換しながら,お話しさせていただきたいと思っております。
 それから,教員の資格についてでございますけれども,これは,先ほどの御説明の中でもございますように,現在,実質的に編入学が認められています専門学校の規定と同じものを五つ目までは写しているものでございます。したがいまして,おっしゃるように,大学,短期大学という設置認可の際には違った基準でございますけれども,一方で,専門学校につきましては,その基準の下で行っているものについて,大学への編入学が認められているということも踏まえまして,その辺りのバランスも考えた上で,こういう提案をさせていただいているところでございます。
【長尾委員】  今,話が二つになっていると思うのですね。先ほど「多様性」と言われたけれども,これを実際に,前向きに,制度的に,ある程度日本の大学を含めた高等教育と初等中等の接続のところで,柔軟性を持たすことに向かっていくのか。いや,これはそうではない,これはできないというのか。私は先に決めないといけないと思うのです。
 地方は子供たちがどんどん都会に出ていく。そういう中で,地方創生という観点からも,この制度は必要だと思います。必要であるという前提で,では,条件をどのようにしていくのか,質保証をどうするのか。
 例えば,教員資格で,今,佐藤委員が「専修学校に準ずる」とおっしゃったけれども,高等専門学校に準じたら,全然違う条件になってくるということで,ここを見直ししていくのか,そこのところが,全部マイナスの御意見ばかりなので,私は,これに柔軟性を持たせて,可能性を持たす。大学が全員取らなくてはいけないという話ではない,大学が主体的に入試なりを課して,そこから選んで出てくる優秀な生徒,あるいは大学と高等学校が連携しながらシステムを作って,将来そういう生徒を受け入れることが可能なのかどうか,可能な方向に向けるのかというところで,私は方法論を先に論じてしまっているのではないかなと思います。
 濱名委員は「違う」とおっしゃるかもしれないけれども,どちらかというと,地方の高等学校から,次の専攻があって,やっとそこから大学に編入できるようなシステムを作っていってほしいと思っています。
【金子委員】  私も長尾委員と同じような趣旨ですけれども,お話を聞いていますと,やはり原則はどこにあるかというのは,基本的な問題だと思います。
 先ほど,濱名委員がおっしゃったように,多様化が進み過ぎて,質が問題になっている時代です。ただ,質は問題なのですが,多様化自体を止めるという話はないと,私は思います。非常に大きな問題であり重要なのは,特に職業教育系と大学系の二つの系統をどのように統合していくかということで,その中で,ある程度,多様化も図っていくということ。それから,高等学校と大学等の接続も非常に形式的な入学試験だけではなくて,もっと内容的な接続を考えていくということが問題になっているわけです。
 その中では,むしろ,私は多様化をするべきだと思います。問題は接続のところをきちんとしていく。そして,大学高等教育体系として,全体として整合性があり,また,質の高いものを作っていくという問題だと思うのです。
 そのときに,特に重要なのは,なるべく行き止まりの学歴を作らない方がいい。そこに常に学生がいて,勉強をある程度しているけれども,同等の学校の学生と比べて,明らかに不利益が生じているという状況があるのは,やはり望ましくないのではないか。
 そういう意味で,私は,学歴上の行き止まりを作らない,そして,接続関係をきちんと定義する。これは,何でもいいということはないですけれども,接続関係を定義するという方向で,教育システムをもう一回作り直していくということが基本的な方向ではないかと思います。
 それから,もう一点ですけれども,先ほど,濱名委員がおっしゃったように,いろいろな接続候補があったときに,接続がオープンにされたけれども,余り使われていないなど,結果は必ずしもよろしくない場合もあるのではないかというお話です。先ほどの事務局が用意した資料を見ていましても,専門学校から4年制大学への編入学者数というのは減っている。最近,1年くらい減っているわけです。これは,いろいろな理由があるのだろうと思いますけれども,必ずしも,この制度が十分に使われているわけではないということだと思います。
 ただ,私は,制度は制度だと思うのですね。この機会自体が与えられるのかどうかということを制度は決めているわけでありますから,実際に進学者がするかどうかは大学の判断すべきところでありまして,その実績が余りよくないというのであれば,大学はそういう学生を取らなければいいわけですし,むしろ大学の側(がわ)がきちんと評価していくということが望まれるのではないかと思います。
 私は,これは原則の問題で,やはり専門学校専修課程と,職業高等学校の専攻科に制度的に差が生じるというのは,どうも納得できないのです。それを保証する制度が必要だということは,まさにおっしゃるとおりで,それは,ただ専攻科だけに言うべきことではなくて,専門学校に対しても同じことが言われるべきで,そういう動きがあるという,先ほど御紹介がありましたけれども,それは専攻についても同様のことが必要になるのではないかと思います。
 それから,高大接続の議論の関係から言えば,利用者資格についても,例えば,高等学校専攻科に入るような人たちに対しては,高等学校の基礎レベルのテストを一応するということを考えるとか,学びの質保証をするということも,将来は考えるということも必要になってくるのではないか。
 これは,同じことが専門学校についても言えると思いますが,4割の大学は,もうそういうことを行っていないわけですけれども,基礎レベルくらいのものは,入学時に要求しておいて,それが編入のときにも条件になるという形を作っていくという形でも,接続のきちんとした整合性を作るということは必要ですし,今後,考えていくべきではないかと思います。
 以上です。
【川嶋委員】  金子委員と似ているかもしれません。少し濱名委員の観点とは別の観点から意見を述べたいと思います。
 ただ,最初に,濱名委員が最後に教育課程のことを御指摘されましたが,これは参考資料の後ろから2枚目のところに指定規則における教育内容という資料があって,これは,私は詳しくないのですけれども,厚生労働省が,大学4年制だろうと,3年制の専門学校だろうと,こういう授業科目と内容でやりなさいということを指定していて,それに基づいて高等学校の専攻科でも行っているのだろうと私は推測します。
 それは置いておいて,先ほどから編入の話が出ていて,看護の専攻科から,看護学部,看護大学へという話があるのですが,制度として編入学を考えれば,必ずしも看護専攻科を出て,看護学部なり看護学科へ行くのではなくて,文学部なり,別の専攻でもいいはずなのですね。ですから,制度として,そういう専攻科から大学4年制への編入を認めるか,認めないかということであって,看護を学んで,更に看護で何を学ぶのだと考えてしまうと,少し今の議論から筋が外れると思います。
 ただ,その場合でも,では,教養教育はどうするのかという問題も出てくるので,実際にはなかなか難しくて,各大学が,もし編入を認めた場合は,教養教育の一部を3年なりで受講させるとか,金子委員がおっしゃったように,あくまでも制度の話として,特定の分野での話ではなくて,制度全体として検討していく必要があるだろうと思います。
 それで,何度も高等教育相当の質という話とか,あるいは白井補佐から大学教育相当という話が出てきます。我々は大学分科会の大学教育部会で,お役所的には高等教育局の所掌で,その中に大学教育部会と,短期大学ワーキングとあります。
 一方で,何度も出てくる専修学校というのは,生涯学習政策局所掌で,いろいろ議論を聞いていて感じたことは,結局,高等学校,つまり6・3・3,12年を終えた後の教育段階を,日本全体としてどう整理していくかというのがこれから重要で,高等教育なのか,いわゆるコストセカンダリーなのか,第3段階の教育なのかという整理をきちんとしていかないと,今一番問題になっているのは,多分6・3・3の後をどう多様化し,システム間の流動性を高めていくかという話なので,この辺を改めて定義していかないと,今後,ますますこういうアーティグレーションなり,接続なり,編入学の話が出てくると,いろいろな立場から,いろいろなことをおっしゃるので,なかなか着地点が見えないのではないかなと,今の議論を聞いていて思いました。
 以上です。
【谷口副部会長】  質の話と,門戸を閉じるか,開けるかの話を分けないと駄目だと思いますね。やはり,門戸は当然開けるべきで,いろいろな人が,いろいろなルートで,それぞれの勉強をされるということはあると思うので,それは決して閉じない。ある人が,たまたまあるルートに進んだけれども,別の道に行きたいということもあるでしょう。1回選んだら永遠に変えられませんというのはおかしいので,そこのところはきちんと門戸を開けておくことが必要です。
 ただし,質の保証はきちんとしないといけないということは当然あると思います。そこで,大学が入れるか,入れないか,大学の判断で決定する。大学がいいかげんなことを行えばいいかげんな人が入ってくるかもしれないので,そこは,評価をきちんとやるというのが,大学の責任になります。入れた以上は,きちんと育てるという責任が生じますから,入り口で大学が判断するということは当然あるわけです。資格というのかどうか分かりませんが,資格がある,アプライできますよ,手を挙げられますよという話と,入れるかどうかとは別なのですから,そこのところを考えて,門戸はきちんと開くべきだろうと思います。
【濱名委員】  誤解のないように申し上げますけれども,私は制度的に認めるべきではないと言っているのではなくて,出された案が,このような案で質保証というのは片腹痛いと申し上げているのです。
 そもそもの話で言うと,先ほど,川嶋委員が言われたところと非常に近いところなのですけれども,要するにK-12(幼稚園(KindergartenのK)から義務教育及び義務教育後中等教育期間)や,K-16(K-12に大学教育段階までを含めたもの)という全体の学校教育の制度の基本設計がお留守になっている状態で,学制についての議論も,また並行して進んでいます。にもかかわらず,その接続の仕組みを誰が担保するのかというときに,高等教育は,高等教育機関の責任において行うことになってはいるが,現実には成り立っていないわけですね。
 認証評価であるとか,許認可であるとか,社会に対して最終的な責任を担保するような仕組みを盛り込みながら行っている。その中で,各大学の責任において行っているということですので,今,谷口委員が言われたのは,少し違和感があるのです。各大学が入試で責任を取るというのではないのです。基本的には,これは,ほとんど看護の話だと思います。
 ヒアリングで来られた学校も考えているのは,編入学して研究のやり方を学ぶとか,実際に看護教育の内容を分かっておられて,そのようなことは言われないだろうと思います。現実には,国家試験対策と実習を行っているところに対して,ないものを期待されているのです。
 それは,そのようなことが可能なのですかということですから,実際に看護以外のところに入れるとするならば,少なくとも教員の資格でありますとか,認証評価,第三者評価で,少し従来よりは踏み込んでということなのですけれども,前回伺ったことの中で答えを頂いていないのは,これは高等教育なのか,それとも中等教育なのかということに対するお答えは,ないままなのですね。
 恐らく,お答えがないということは,これは初等中等教育局が,今後も見ていく。自分のところのテリトリーとして見ていて,それが制度的に非常にファジーな状態で高等教育の単位に自動的になる。厚生労働省で見ている職業訓練大学校の方は,単位制も我々がかなり議論する。
 それは,やはり各個別大学で制度的にチェックできることとできないことがあるので,それは国が仕組みを作っていくときには,十分な認証評価が第三者の機関等々で質保証される仕組みと組み合わせなければ,この高等学校の専攻科だけ特別に扱うというのは,私は違うと思います。
 そういう点から言えば,仕組みをきちんと作り上げていく。専攻科からの編入というものについて,高等学校の教育課程なり,教員についての仕組みを作っていきませんと,きちんと筋目を付けないといけないと思うのです。この説明の中で一番顕著に現れたのは,専門学校で行っています,ということです。一旦始めたものに対する検証を全く行っていない状態の中で,次のものを過去に前例があったから類するものですというので拡大していくのでは,質保証の仕組みは出来上がらないと思います。
 そういう点で,この際,きちんと整理をしておく必要があるし,検証なり条件を考えて,制度化しておく必要があると申し上げているのです。
【谷口副部会長】  そのこと自身は良いと思います。だけれども,単位を認めるのは,自動的になど認めませんから,そこのところは違います。制度があったら,単位を全部認めるかというと,そのようなことは絶対ありませんから,きちんとした仕組みを作られて,何を持って質保証というのか,そこに関しては,きちんとしておかないといけないと思います。自動的に単位が認められるようなことはありません。
【中岡初等中等教育局審議官】  いろいろと質の観点から御意見を頂戴いたしまして,我々としては,戒めと受け止めております。
 御案内のとおり,今の教育再生実行会議自体は,極めて多様性という観点で議論がございまして,恐らく,これは産業社会が地域社会に入っていく中で,様々な議論があって,昨日もフリースクールの議論を始めていたのですけれども,元々就学義務自体も,明治の歴史以降,その時々の時代によって,どんどん変遷しました。そういう中で見直そうという議論もしています。
 今の学校教育制度の建て付け自体は,入学資格の部分では,ある意味,非常に柔軟ですけれども,編入学の部分については極めてリジッドに建て付けられていて,その部分については,学長の話もございましたけれども,最終的には大学入学試験,いわゆる大学の方で受入れを判断するというところが担保される中で,入学資格は相当柔軟化されたということでございます。
 今回,編入学ということでございますけれども,私どもとしては,先ほどの多様性という観点から,こういうものは是非ともお願い申し上げたいということで,御説明を申し上げたわけでございます。
 一方で,濱名委員は,大学が近年で言えば,1991年,平成3年の基準の大綱化と同時に,認証評価の前段階で,自己点検評価という言葉で,恐らく,そのときも大学の先生方は,自己評価というのはそのようなものではなくて,点検だろうと。本来,大学は自主的なものであるということで議論がされて,その中でどんどんと事態は進んで,それを努力義務にする,それを法的な義務にするというように変遷してきた。
 その中で評価自体は,どんどんと大学で,きちんとされてくるようになってきたんだと思います。そういう意味においては,高等学校の部分については,ある意味,時代の変遷の中から見れば,遅れているなということは,正におっしゃるとおりでございますけれども,私どもとしては,正に高等学校の専攻科というのは,今まで大学に接点がなかったのでございます。そういう意味においては,そういうことを機会に,きちんと外部からも大学の関係者にもいろいろ御意見を頂戴して,そういうものを入れながら,きちんと質の保証に取り組んでいきたいと思っております。
 私からの意見でございます。
【佐々木部会長】  私は,この議題は,多様化を進めるという前提で,質の担保の仕組みをどうするかというのが本部会に投げられた課題であると考えていたのですね。
 しかし,今,そもそも前提のところで,専修学校専門課程を参考にするとして,そこの検証ができていないのではないかという御意見もありました。
 ですから,恐らく,質担保の仕組みについて,どう考えるかということを審議するに際しても,現に専修学校専門課程を参考にするというときに,その検証ができているかどうかという検証も必要になっているのだと思うのですね。そこらを含めて,少し事務局の方で整理をすることが可能ですか。本来は,質担保の仕組み,基準,保証について,評価基準という観点で,これが適切であるかどうかというのが,本日の事務局提案だったと思うのです。
 ただ,その検討に当たって,専修学校の実態について検証ができているかどうか,あるいは,現に専攻科を持っている高等学校の教育課程についても,それが4大に接続可能なコンテンツを持っているかどうか。前回,ここでプレゼンを頂いた高等学校の専攻科が,一つの典型だとして,この間の説明で,それが十分なのかどうかということを含めて,検証した上で,基準,あるいは質保証の仕組みという問題が,改めて示される必要があるように,本日の議論から思われるのですが,いかがですか。
【金子委員】  私,今の佐々木部会長の御発言と,少し意見が違うのですが,私はこの委員会に付託されているのは,制度としての編入を認めるか否かということであって,そのときに検証が十分でなければ認められないかどうかということは,私は,必ずしもそのままじかにはつながらないと思います。
 確かに検証が必要な条件であることは必要だと思いますが,この検証をどの程度行うかということは,かなり大きな幅があって考えられるべきところであって,私は今の求められている,この案件の大きさと言えば,そこまで大きな応募者がいっぱいいるところではない。
 しかも,既に何回も,それはおかしいという議論も出ていますが,専門学校については,制度的にオープンになっているものです。それを専攻科について拡大するかどうかという議論をしているときに,私は必ずしも全て評価が完璧でなければ認められないかどうかという問題ではないように思います。
 何回も申し上げていますが,全体的な方向としては,高等教育制度の種類が多様化したときに,その間の接続を,一応制度的には認める。その上で接続の質とか,それぞれの教育課程の質というものが保証される仕組みを作るということは必要なわけです。
 しかし,考えてみれば,大学入試の接続も,今は非常に質については問題があって,今まですったもんだ行ってきて,ある程度の議論のところが具体的になってきつつあるわけですが,それも具体的には,かなり不明なところもあるわけです。私は,整合的に制度を作る傍らで,質保証の作業を進めていくという問題であると思います。もちろん,質保証が重要なことは認めますけれども,それがなければ,この案件を認めないかといえば,私はそういう問題ではないのかなと思います。
 以上です。
【濱名委員】  私は,金子委員が言われたのに,すごく違和感がありまして,例えば,資料1-2で,教育再生実行会議から出てきている提言自体にも,裏の参考のところに出てきますけれども,「国は,高等学校修了者について,高等教育としての質保証の仕組みを確保した上で大学への編入学の途(みち)を開く」という提言をされているのであって,我々が質保証の仕組みを確保したということを審議する資格というか,責任があるのだろうと思うのですね。大きな方向性がそうだからといって,質保証の仕組みの確保ができているかどうかということに対して,棚上げをして議論するとはなっていない。
 ですから,そういう点では,私はむしろ,佐々木部会長の御発言の方に近い捉え方をしております。
【佐々木部会長】  いや,私は逆なのです。本部会が編入をそもそも認めるかどうかという判断を求められていないのではないですかと言いたかったのです。既に教育再生実行会議から提言があって,それを前提にして進める上で,いかに質保証の仕組みを設けるかという,そこがこの部会のアジェンダではなかったのかということを,さっき申し上げたかったのです。
【金子委員】  もし部会長がそういうおつもりであれば,私は全然反対ではありません。
【佐々木部会長】  そうですか。ここは事務局の御判断も頂きたいのですが。
【田中高等教育政策室長】  まず,前提といたしまして,資料1-1にございます質保証の仕組みは,本日の会議で結論を出すという趣旨ではございません。これは,今後,御議論いただいてということが大前提でございます。
 したがいまして,前の会議でもお話ししましたように,7月の諮問につきましては,初等中等教育分科会で議論している小中一貫教育学校を含めまして,法律改正に絡むものもございますので,12月までには中央教育審議会全体として答申をまとめたいというのがございます。
 この専攻科の質保証の仕組みにつきましては,12月に向けて,次回会議以降も検討させていただきますので,本日の意見を踏まえて,どのような資料を出せるかというのはございますが,更に御議論いただければと思います。
 ただ,説明が前後いたしますが,一方で12月までに総会として全体を取りまとめるというスケジュールがございますので,並行してパブリック・コメントで,方向性については,小中一貫教育学校を含めまして,国民の意見を伺おうという方向がございます。そのために,11月の中旬に総会を予定しておりまして,その中で具体的な枠組みまでではございませんが,全体的な方向性,小中一貫教育学校のみならず,編入学,さらには,この後の国際化を踏まえた大学・大学院入学資格の見直しの方向性については,総会でも,一度御議論いただきます。
 さらに,並行して,パブリック・コメントという形で,国民からも意見を伺うということがございます。
 ただ,パブリック・コメント,あるいは総会への報告につきましては,資料1-1にあるような具体的な枠組みまでは予定をしておりませんで,前後して恐縮でございますが,資料1-3にあるような,いわゆる方向性というものをまとめたペーパーでの総会での御議論,あるいはパブリック・コメントを予定しております。
 1-3は,後ほど詳しく説明させていただきますので,詳細は省略させていただきますが,要は1-3のくくりといたしましては,これまでの検討の経緯と,当然,本日の会議の意見も踏まえまして,これまでどういう意見を頂いたかという肉付けをいたします。
 その上で,3ページ以降でございますが,編入学の質保証の仕組みの具体的な仕組みまでは言及せずに,先ほど,御示唆がありました編入学の門戸を開く方向で検討する。ただ,その際に質保証の仕組みを設けるということだけを方向性として総会で議論し,パブリック・コメントを掛けていく。それと並行して,本部会では,ただいま御議論をスタートさせていただきました,質保証の具体的な仕組みにつきまして,次回以降も含めて,12月に向けて御議論いただければ有り難いと考えております。
 以上でございます。
【佐々木部会長】  以上のような説明がありましたが,それでよろしいですか。
【谷口副部会長】  当然,質保証はあるわけです。だけど,門戸を開くというか,きちんと高校と大学をつなぎますという方向でということですね。その方向で,そういう意味でしょう。
【田中高等教育政策室長】  はい。
【谷口副部会長】  そういうことですから,具体的にここをチェックしないといけないというところは,別途きちんとチェックしましょうということで,まとめれば良いということだと思います。
【佐々木部会長】  部会の方向性が,本日の議論では一つになっていないと思うのですよ。そもそも多様化を進めていくのかどうか判断をすべきだというのが含まれているわけです。その前提に,専修学校に関する検証が必要だというのが濱名委員の御意見ですから,なかなか一本にはならないのです。
 ただ,文部科学省としては,これを進めるという前提で質保証の仕組みをどうするかを,この部会に諮りたいということであれば,次回,そこにフォーカスして議論を先に進めることは可能だと思います。
【田中高等教育政策室長】  はい。御指摘のとおりでございます。ですので,質保証の仕組みについては,次回以降も,総会に向けてパブリック・コメントと並行して,本部会で議論いたしますので,また御議論いただければと思います。
 特に,資料1-3は,今後パブリック・コメント,あるいは総会で,中間報告のような形で出るものでございます。先ほどの谷口委員の言葉にもございました,門戸は開けるけれども,質は保証していくということを書いているものでございます。
 そういう観点からこれを見ていただきまして,本日のところは,1-3について,もしパブリック・コメントや,総会での報告用として正すべき表現等があれば,そういうところに,この後,集中して御議論いただければ有り難いと考えております。よろしくお願いいたします。
【美馬委員】  そうすると,確認なのですけれども,今後,質保証の仕組みについて議論するというときは,本日の高等学校専攻科からの編入だけに関わらない,ほかのものも見るということとして考えていいのですか。
 つまり,前回も御説明いただいたときに,高等学校の専攻科だけが編入のところから漏れてしまっているので,そこを全部横並びで,きちんと入れるように,経路の多様性の問題から認めましょうということなのです。今まで認めてきた高等専門学校からの編入,あるいは短期大学からの編入,あるいは専修学校からの編入については,質担保の仕組みというのは,今まで議論されて認められてきたのか。あるいはそこで認めてきたことが,十分であったかどうかというのを参考にしないと,今回の高等学校専攻科からの編入に関しての質担保だけを議論しても,それこそ全体の質保証にはつながらないと思うのですが,その辺はどうなのでしょうか。
 この後,この次のときに議論していくというときに,これまで認めて,もう既に編入はオーケーとなっている,それぞれの学校からの担保の仕組みというのは見直さなくてよいということなのでしょうか。
【濱名委員】  気になるのは,1-3の3ページ目の下から二つ目と三つ目の丸なのです。これは,これから議論をする,つまり,今までパブリック・コメントというのは,大体審議の方向性が定まってから,参考に伺っていたはずなのに,まだ方向性が絞れていない段階でパブリック・コメントを行うとするならば,やはり基本的な方向性に限定すべきだと思うのですけれども,下から三つ目の丸も,下から二つ目の丸も,本日の原案に基づく非常に具体的な仕組みが書き込まれているのですね。僕は,これは書き過ぎだと思います。
 むしろ,具体的には編入学を認める専攻科について,就業年限で新たな基準を設けることとするということと,大学関係者などを入れて,従来の学校評価の仕組みの延長線上で対応しますということを書いていて,こういうことを前提にパブリック・コメントを行ってしまったら,これはたたき台として,原案として決まってしまうのではないですか。
 ですから,私は本日出された案で,質保証の仕組みとして十分だとは到底思えないので,これをたたき台として,具体的な仕組みを書かれて,それでパブリック・コメントが終わったという話になると,リスクを感じますし,これまでのパブリック・コメントと,中央教育審議会が取ってきた方向性とも違うので,そういう方法が妥当なのかということについては,少し疑問を持ちます。
【佐々木部会長】  本日は,質保証の仕組みとして,資料1-1で示されている基準なり,評価なりというのが妥当かどうかという議論を,本来したかったわけです。そこの議論へ行く前のところで少し意見が分かれて,方向性をめぐって,一つにならない問題なわけですから,例えば11月に,もう一回,本日の提案について審議をするということは,時間的に可能ですか。
【田中高等教育政策室長】  はい。先ほど申し上げましたように,資料1-1の質保証の枠組みについては,11月の方も日程調整をしておりますので,次回以降,議論することは可能でございます。
 先ほど申し上げましたように,本日は,そのことを前提として,特に11月に予定しております総会,あるいはパブリック・コメントを踏まえまして,パブリック・コメント,あるいは総会に出す資料として,1-3が適当かどうかということに絞って議論いただければと思います。濱名委員から,今,この部分は削除すべきではないかという意見を頂ければ,それをどういう形に修正するか。そういう議論になろうかと思います。
【佐々木部会長】  では,そのように先へ進めますか。
【田中高等教育政策室長】  はい。それで,先ほど,美馬委員から御指摘いただいた事項につきまして,まず,短期大学,高等専門学校につきましては,そもそも制度創設時から高等教育機関でございましたので,高等教育機関同士は編入学ができるということで,短期大学や高等専門学校が制度化されたときから,認められていたということになっております。そこについては,道を開くという議論はなかったというのがあります。議論があるのは,最初から編入学が認められていないところ
でして,専修学校や省庁系大学校というものが前例になります。
 そこについては,前例がありますので,それも踏まえてどうするかという議論をお願いしたいと思います。もし,前例も踏まえた措置について十分でないという意見があれば,それも意見として頂いて,どう検討するかということになろうかと思います。
【美馬委員】  それでは,お願いなのですが,次回,資料1-1について検討する際には,専修学校や省庁系の仕組みについて,質担保というのが議論されたかというペーパーがあれば,それも一緒に出してください。
【黒田副部会長】  私は全然違う観点から話したいと思うのですが,高等学校の専攻科が,卒業したら行き詰まりで,どこにも行けないというのは直すべきだと思うのですね。だから,どこでも入れるようにすべきだと思うのですが,専攻科を高等教育機関の一機関とするということになりますと,4年制大学は2年でいいことになってしまう。ほとんどの普通科の高等学校が専攻科を持つことになります。その方が,親にとってはいいのですね。授業料も安いし,近くで学べる。ですから,2年間を高等学校の専攻科で済ませて,大学の3年へ編入するということになってくるのではないかと,私は思うのですね。
 だから,そういうことも頭に入れておく必要はあるのではないでしょうか。これは,社会情勢からして,そういう可能性があるのですね。今,職業教育の高等学校についての話が中心ですけれども,そうではない,普通科にも専攻科があるわけです。普通科の専攻科は駄目というわけにいきませんから,専攻科は全て同等に編入を認めますということになってきますと,高等学校は専攻科の枠をどんどん増やすということになります。そういう可能性があるということだけは頭に入れて,こういう議論をしておく必要があります。大学が3年,4年の2年間で済んでしまうとなると,日本の高等教育というのは,それだけの質が保証されるのか,それが大問題になってくると思うのですね。
【谷口副部会長】  だから,すいすい入れたら駄目なのですよ。すいすい入って,今のようなことが起こったら,高等教育でも何でもない話になってしまいますよね。だから,そうはならないようにしないといけないので,門戸は開けますけれども,入れますよという意味ではなく,きちんと中身は吟味しますということです。教育課程や学修してきたことは,きちんと吟味しますよということを,質保証の観点から,きちんと議論をしないといけませんね。
【黒田副部会長】  だから,今,議題になっている質保証が重要になってくるのです。
【谷口副部会長】  そう。それが大事だということです。
【黒田副部会長】  高等学校における,専攻科の質保証というのをどうするかということ。高等教育にふさわしい質保証が行えるかどうかということです。受入れ側も,それをきちんと検証するシステムを作るということですね。
【谷口副部会長】  そうですね。
【黒田副部会長】  今,ほとんどの大学の編入というのが,余り吟味せずに入れていますね。私立大学の場合はほとんどそうですね。
【谷口副部会長】  そうですか。本学はかなり厳しく落としますよ。だから,編入については分野によっては定員を満たしていませんよ。
【黒田副部会長】  余り吟味せずということが起きないようにしないと駄目なのですね。だから,私のところも,高等専門学校から相当編入を受け入れているのですけれども,高等専門学校からの編入生に対しては,特別プログラムを作らなければならないのです。1年から来ている学生と同じように,3年編入だから単位を取らせるわけにいかないのです。それは,行っているレベルが違うのと,行ってきている範囲が違いますから,それに合ったようなプログラムを作って編入生を受け入れないと,実際には成り立たないのですね。だから,そういうところまできちんと手立てを大学側がして,編入を受け入れるかということになると思うのですね。
【佐々木部会長】  それでは,時間の関係もありますから,職業能力開発施設からの編入学については,これも過去1度,ここで御議論いただいたことでもあり,先ほど,白井補佐から説明を受けましたので,資料1-3についての説明を,もう一度受けた後,資料1-3がパブリック・コメントの提案として妥当かどうかというところに議論を移したいと思います。では,よろしくお願いします。
【白井大学振興課課長補佐】  それでは,資料1-3でございます。先ほど,資料の性質については田中室長から御説明がございましたけれども,とりあえず,この原案としてお示ししておりますので,これに基づいて御説明させていただきます。
 初めに,検討の経緯についてでございます。これまでの議論の中では,現在,短期大学,高等専門学校,一定の専門学校に限定されている大学への接続について,もう少し広げていくべきではないかという御提言が,教育再生実行会議からも,また第6期の中央教育審議会大学教育部会においても,多様な学習機会を確保するということから,流動性の高い接続の仕組みを構築していくことが必要であるという御議論が行われてきたところでございます。
 ただ,現在の仕組みでは,高等学校専攻科であるとか,あるいは職業能力開発施設については,直接には大学への接続が認められていないという状況でございます。
 高等学校専攻科については,現在,単位認定についても,また編入学をすることについても認められていないところでございます。しかしながら,前回のヒアリングでもございましたけれども,看護などの分野では,看護系大学へ進学したいというニーズも現にあるということでございまして,その対応を求められているというところでございます。
 高等学校専攻科に関しましては,平成23年に中央教育審議会のキャリア答申が出ておりますけれども,その中でも高等学校専攻科の修了者について,大学への編入学について検討を進めるということを御提言いただいているところでございます。
 2ページでございますけれども,高等学校専攻科から大学への編入学につきましては,いろいろな御意見が出てきたと思っております。大学が一律に編入学を認めないという扱いにすることはないのではないかという御意見。仮に高等学校専攻科から,更に大学に行くとなると,全体で9年掛かってしまい,経済的にも非常に厳しくなってしまう。諦めてしまう生徒もいるのではないか。さらに,高等学校専攻科と専門学校を比べた場合には,必ずしも高等学校専攻科の方が,場合によっては,より手厚い体制を敷いている場合もあるという御意見もございました。
 その一方で,専門学校と同程度に,少なくとも組織的・体系的な教育がなされている専攻科に限定して認めるとしても,限定して編入学を認めるべきではないかという御意見や,高等教育相当というからには,きちんと教育と研究ができるような教員がそろっている必要があるのではないかという御意見,また,質保証のためには,高等教育としての質の評価ということができる仕組みが必要なのではないかという,様々な御意見が寄せられてきたところでございます。
 資料の3ページでございますけれども,基本的な方向性としましては,学生が様々なニーズを持っている中で,進路変更について,より柔軟化して,また,高等教育機関における学生の流動性を高めていくことが必要なのではないかと,ここでは書いてございます。
 また,三つ目の丸でございますけれども,こういうことを踏まえまして,これは教育再生実行会議でも言われているところでございますけれども,特に一定の教育水準を満たす高等学校専攻科の修了生については,高等教育機関に相当する質保証の仕組みを確保した上で,大学への編入学を可能とすることによって,進路変更の柔軟化に対応することができるようにする。まさに制度的な袋小路を作らないことが重要ではないかという記述を書いてございます。
 その後,具体的なところでございますけれども,先ほど,御議論もございましたが,具体的には既に認められております専門学校の課程も参考にしながら,修了年限,授業時間数,教員資格等ということについて新たな基準を設けてはどうかという点。
 また,評価の仕組みとしては,事後評価,あるいは学校関係者評価ということについて,本科と分けて専攻科としての評価をすることであるとか,その他,評価には大学関係者を加えるなど,客観的な評価による質保証を図ってはどうかということを記述しているところでございます。
 こういう制度整備を行った上で,大学における単位認定の対象とするとともに,高等学校専攻科から大学への編入学についても道を開くなど,所要の措置を講じてはどうかという内容になってございます。
 4ページには,最後,職業能力開発施設についてでございますけれども,こちらについては,内容的には先ほど御説明した資料1-2と同じところでございまして,現在,職業能力開発施設,特に大学への接続が想定されます2年制の職業能力開発短期大学校につきましては,先般9月に単位認定の告示が改正されたところでございまして,まずは,この単位認定の状況をきちんと見ていくということが必要かと存じます。
 以上でございます。
【佐々木部会長】  ありがとうございました。
 それで,聞きたいのは,パブリック・コメントは,いつ行わなければいけないのですか。
 つまり,先ほど御意見があったように,3ページの具体的な三つを含めて,パブリック・コメントの提案とする場合には,実は,本日,まだこの議論を行っていないのですよね。
 だから,もう一度,資料1-1の議論をした上でパブリック・コメントに持っていくのか,そうでなければ,3ページの真ん中,「このような状況を踏まえ」,ここまでは方向としては合意できる部分だろうと思うのです。それから,職業能力開発施設についての部分と,そこはいかがですか。
【田中高等教育政策室長】  パブリック・コメントの予定といたしましては,先ほど,小中一貫教育の関係などから,今のところ,11月7日に行われます初等中等教育分科会の後に行われる予定でございます。
 ですので,資料1にございます質保証の仕組みにつきましては,その後にも大学教育部会を開催いたしまして,更に詰めるということは可能でございます。
 今,予定しております,11月7日めどのパブリック・コメントを前提とした場合には,資料1-3について,本日の部会としてどこまでの記述ができるか,そういうことを整理する必要があるということでございます。
 そうした際に,最初のところにつきましては,先ほども説明させていただきましたとおり,制度の概要,経緯,それから,どのような意見があったかは,きょうの意見も含めて肉付けいたしますので,特に3ページのこの箇所において,どこまで書くことができるかということで,御議論いただければと思います。そうした観点から,先ほど,佐々木部会長からの御指摘のようなことはあり得ると思います。
【佐々木部会長】  私は,本部会の議論を踏まえたときには,3ページの真ん中の丸,「このような状況を踏まえ,高等教育機関に相当する質保証の仕組みを確保した上で,高等学校専攻科修了後の進路変更の柔軟化に対応できるようにする必要がある」,ここまでは合意できるのです。だから,そういう内容であれば,本日の審議を踏まえてパブリック・コメントに進めるということは可能だと思うのですけれども,以下,具体的な三つの提案については,本日議論が行われていませんので,もしここを含めてということであれば,もう一回,部会で議論した上で,このペーパーをパブリック・コメントに付すということになると思うのですが,いかがですか。委員の御意見を伺います。
【長尾委員】  今,三つ目までは了解ですねという確認をされたのですけれども,その次の3ページの四つ目に関しても,授業数,教員資格,編入を認める専門学校の課程も参考にしながら新たな基準を設けることとするというので,それは基準を設けようとしているのだから,いいのではないですか。
 下から二つ目と一番下は,少し具体的に入り過ぎているかなと思います。でないと,ここで何の項目を議論して,この先,何をするのかというところが,ただ認めただけでは物足りないと思います。
【田中高等教育政策室長】  先ほど,御議論いただきました,門戸は開ける方向で,更にその観点から,質の保証の仕組みは検討するということまでは書いてはいかがかなということだと思います。そういう意味で,先ほど御指摘がありました,新たな基準を設けるというところについては,質の保証の仕組みを設けるということでございますので,そういう趣旨で,今回,合意ができていないところは,専門学校を参考にするという方向性を縛るところは削除させていただくということでいかがと思います。そういうものは,今回の御意見を踏まえて修正させていただいた上で,パブリック・コメント等に書かせていただければどうかと思っております。
 3ページの内容を具体論に埋め込むのではなくて,今回,方向性として御議論いただきました,編入学という門戸は開ける。ただ,質の際に,質保証の仕組みは検討する。その質保証の仕組みというものをパブリック・コメント,あるいは中央教育審議会の総会での御議論いただきながら,並行して,次回以降,大学教育部会で更に詰めていくという線にしてはいかがかと思いますが,いかがでしょうか。
【高見教育制度改革室専門官】  補足的なのですけれども,一つの素案,先ほど,田中高等教育政策室長が申し上げた案もあると思いますが,もう一つは,本日,いろいろ御議論いただき,長尾委員の御意見もありますので,そういう意見の過程といいますか,そういう議論があったということについて付記するというのも,一つの案かと思われます。
【長尾委員】  やはり,私は,次の4のところで,今,田中高等教育政策室長がおっしゃったのは,上の3までは入れましょうということだけれども,4の3行目,「専門学校の課程も参考にしながら」というのを消していただいて,「編入学を認めるための新たな基準を設ける」というのは入れていただいた方がいいと思うのです。
【谷口副部会長】  今のところに教育内容とか何かを書くことはできないのですか。修業年限とか,授業時間とか,そういう枠だけれども,もし書き加えるのなら,教育の中身,そして教員の資格という内容ということに踏み込むということをも判断をしながら,新しい基準を作りますとすればいいのではないでしょうか。専門学校を参考にしながら書くからややこしい話なので,新しい基準を作りますとすればいいと思います。
 それから,「単位認定の対象」というと,何となく単位認定を認めるようになるので,どう書けばいいのか,表現はよく分かりませんけれども,例えば,「単位認定審議の対象」とかの表現の方が良い。私としては,そういう感じの認識なのです。実際は,そうではないのですけれども,何となく認定の対象というと,何か認定しないといけないように思ってしまうのかなと思いましたので。
【濱名委員】  少しニュートラルにシフトすると,上から二つ目の丸も,かなり肯定的に書き過ぎているという気はするのですね。「多くの学校において,高度かつ体系的な教育がなされている」と,ここまで言えるのですかと感じます。前回,典型的なモデル校の全体の実態の御説明を聞いただけで,本当に我々がここまで書くだけのものはあるのだろうか。そういうすぐれた学校もあるというのはいいのですけれども,多くを占めているなどということを書くと,基本的には制度的な検証が終わっているかのような書き方になると思います。新しい質保証の基準を作っていくのに,これは書き過ぎだと思いますので,その辺をもっとニュートラルなトーンにしていただきたいなと思います。
【佐々木部会長】  その点はいいですね。
  それでは,今頂いた御意見を踏まえて,これをまとめていただきます。11月7日,親会議を通してパブリック・コメントに進むということでいいですね。具体的な質保証の仕組みについては,次回,本部会でもう一度議論ができるように,事務局で整理していただきます。
【田中高等教育政策室長】  それでは,本日の意見を踏まえまして,事務局で整理することが必要でございますので,事務局で修正案を作成の上,11月7日,パブリック・コメントの開始までに,恐らく短期間の確認になるかもしれませんが,頂いた意見も踏まえて,委員全員の皆様に案をお示しの上,パブリック・コメントを諮らせていただきたいと思います。
 今の日程上,パブリック・コメント前までに会議を開くことは難しいため,申し訳ございませんが,パブリック・コメントの対応については,そのようにさせていただければと思います。
 その上で,資料1-1にございますような,パブリック・コメントと並行して具体の質保証の枠組みについて検討する場は,更に設けさせていただきたいと思っております。それは,今,11月の日程について調整中でございますので,また11月に会議を開催させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【川嶋委員】  文章で気になりまして,今の上から三つ目の「このような状況を」というところの「一定の教育水準を満たす高等学校専攻科の修了生については,高等教育機関に相当する質保証の仕組みを確保した上で」と。修了生について質保証の仕組みを確保という意味にも取れかねないので,「一定の教育水準を満たす高等学校専攻科については,高等教育機関に相当する質保証の仕組みを確保した上で,その修了生については大学への編入を可能とする」という方が誤解のない表現だと思いますので,その点もお願いします。
【佐々木部会長】  それでは,文章上の表現の精査も含めて,事務局に預けたいと思います。
 それでは,残り二つの案件について,本日,本部会の方向性を求められておりますので,先へ進ませていただきます。

 

(2)国際化に対応した大学・大学院入学資格の見直しについて,文部科学省から資料2に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【佐々木部会長】  次は,これも既に議論をしてきたところですが,国際化に対応した大学・大学院の入学資格の見直しについて審議をお願いしたいと思います。
 まず,資料の説明をお願いします。
【白井大学振興課課長補佐】  それでは,資料の2番でございます。「国際化に対応した大学・大学院入学資格の見直しに向けて(方向性)」という資料をお開きいただきたいと存じます。
 この件,いわゆる12年教育課程の見直しでございますけれども,この件については,既に教育部会でも何度か御議論いただきまして,おおむね御理解いただいているものかと存じます。
 この資料2につきましては,先ほどの資料1-3と同じような性質でございまして,これからパブリック・コメントでありますとか,また親会の審議に向けて準備していきたいというものでございます。
 資料の内容でございますけれども,現行制度では,基本的に留学生が我が国の大学に入学するためには,学部の場合には12年の教育課程,また大学院の場合には16年の教育課程ということが求められてございます。この外形的基準を設けているのは,各国の教育制度が非常に様々であって,各国の制度の在り方を尊重して,その内容に立ち入らないという前提に立っているという考え方でございます。
 ただ,これを杓子(しゃくし)定規に適応してしまいますと,高等学校卒業までが11年の国もございますので,そういう国の高等学校を出た方については,直ちに我が国の大学に入ることができないという結果につながるということになります。そのため,現在では,準備教育課程を修了していただいたり,あるいはその国の大学に進学していただいたりということがございますけれども,いずれにしても1年以上の準備期間,待ちの期間が生じてしまうということがございますので,直ちに我が国の大学に入学できないということになります。
 そこで,現行の12年・16年の教育課程の修了要件については国際的にも,基本的に修了年限で判断するというのが一つの考え方としてあるかと思いますので,この考え方を維持しながらも,より柔軟な仕組みを検討していくということが必要ではないかということでございます。
 1ページの一番下,大学入学資格の拡大という部分でございます。現在,初等中等教育については,多くの国が我が国と同様に12年の教育課程を持っているかと思います。一方で,今後,我が国が,特に留学生を期待しておりますようなロシア等の旧CIS諸国,あるいは東南アジアのマレーシアなどの国におきましては,初等中等教育は11年という場合もございます。このため,このような国の留学生については,現在,そのままには日本の大学に入れないということがございます。
 今後,留学生の受入れを推進して,大学の国際化を進めていくという観点から,この点につきまして,文部科学省におきまして,我が国の教育課程での相当性でありますとか,あるいは当該教育課程が修了した後に,例えば,マレーシアで11年の課程を修了した後に,アメリカとかほかの国の大学にどれぐらい進んでいるのかという様々な進学状況等を個別に確認した上で,対象国を指定するということで,例外的に12年に満たない教育課程の国からの留学生についても,我が国の大学に直接入ることができるようにしてはどうかということでございます。
 2ページ中段からは,大学院入学資格についてでございます。こちらにつきましては,先般,大学院部会の方で御議論いただきまして,御了承いただいているところでございます。基本的な考え方は同じでございまして,原則16年の教育課程の修了要件が求められているところでございます。一定の質保証がなされている学士の学位を持っている方については,柔軟に16年教育課程に満たない場合,例えば,フランスのように,初等・中等教育12年プラス大学学部が3年という場合であっても,全体で15年でございますけれども,そういう方も入れていっていいのではないかという方向性が示されているところでございます。
 2ページの一番下に,アドミッション・ポリシー(入学者受入れの方針)を踏まえた入学資格要件の設定と書いてございます。この入学資格の要件につきましては,飽くまで国が定める最低限の基準ということでございます。
 したがいまして,各大学の判断において,これを上回る基準,例えば,この国については,我が大学としては12年の教育課程を求めたいという御判断も,当然あり得べしかと存じます。以前の議論の中でも,トロント大学がロシア等と,その他の国について差別的な取扱いをされているという事例についても,御紹介をさせていただいたところでございまして,各大学がそれぞれのアドミッション・ポリシーに基づいて,どういう入学資格要件が必要なのか,それについて,主体的に御判断していただければと考えているところでございます。
 説明は以上でございます。
【佐々木部会長】  この案件については,一度,御議論いただいて,おおむね御同意いただけるのではないかと考えております。大学院の入学資格については,話がありましたように,大学院部会の方で,こういう方向で承認したということです。
 大体方向は,前回の審議で整っていたと思います。御質問,御意見もないようでございますので,これは御承認を頂いたということにしまして,これについてもパブリック・コメントに進めてまいります。これはいつ頃,どういう手順ですか。
【田中高等教育政策室長】  7月の諮問の関係につきましては,小中一貫教育学校の関係以外では,編入学の関係と,国際化に対応した大学・大学院の入学資格の見直しが7月諮問に入っておりますので,それが全部セットになりまして,総会で一度議論するのと,同時並行的にパブリック・コメントで国民の皆様からの意見を聞くというプロセスを踏むということでございます。
【佐々木部会長】  はい。ということですので,御了承いただきたいと思います。

 

(3)今後の大学設置基準改正の方向性について,文部科学省から資料2に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【佐々木部会長】  それでは,本日,これが最後の議題になると思いますが,ある意味では,本部会の固有の課題です。大学教育の質保証に関わって,いろいろ課題が残っておりました。
 それについて,差し当たりスタッフ・ディベロップメント(以下,「SD」という。),あるいは高度専門職等に関する大学設置基準の改正で,前回,説明があったと思いますが,その方向性について,本日,御議論いただいて,これでよしということであれば,具体案につなげていただくことにいたしたいと思います。
 では,資料3の説明をお願いいたします。
【白井大学振興課課長補佐】  失礼いたします。それでは,資料3,「今後の大学設置基準改正の方向性について」という資料でございます。
 本日は,幾つかの論点がございますけれども,大きく分けて1番が今回のガバナンス改革に関する審議まとめを踏まえました設置基準の改正。それから,4ページ以降,2番として,その他の検討課題と出させていただいております。
 初めに1番でございますけれども,先般の中央教育審議会大学分科会の審議まとめ,「大学のガバナンス改革の推進について」の中では,特に高度専門職の設置,それから,恒常的な大学事務職員のスキル向上のためのSDの義務化等,今後,必要な制度の整備について,法令改正を含めて検討すべきであるという御提言を頂戴しているところでございます。
 また,SDに関するような事務職員の職能開発につきましては,平成20年の「学士課程教育の構築に向けて(答申)」におきましても,同様の提言を頂いているところでございます。それを踏まえまして,具体的に大学設置基準の中で,どのような規定の手当てをしていくのかということでございます。
 最初に,論点の1番目でございますが,SDの義務化という点についてです。現在,大学設置基準の第25条の3というところに,いわゆるファカルティ・ディベロップメント(以下,「FD」という。)に関する規定として御理解を頂いているものとして,大学の授業の内容及び方法の改善を図るための組織的な研修及び研究を実施するものとするという規定がございます。
 この規定は大変活用されて,FDについても,かなり広く普及しているところとは存じます。ただ,この条文だけを見ますと,この条文が授業の内容及び方法の改善というところに限られておりまして,例えば,三つのポリシーの確立であるとか,大学のガバナンスの在り方であるとか,研究不正,ハラスメントの防止という,様々な大学運営上,大変重要なことについても,法令上は必ずしもFDの対象になっていないということがございます。
 また,もう1点,この規定の対象が授業を念頭に置いておりますので,その対象になるのが,どうしても教員中心になってしまいまして,その他の職員,例えば,学長等の執行部の方や,事務職員,技術職員という方がなかなか想定され難(にく)いということもございます。
 ただ,一方では,我が国ではFDは教員,SDは事務職員という二分法的な考え方が普及しておりますけれども,舘昭先生の御指摘では,アメリカなどでは,必ずしもSDという場合には,教員と事務職員と区別したものではなくて,教職員全体を対象にしたものであるという御指摘もございます。
 また,この大学ガバナンスの審議まとめにおきましても,学長,執行部等も不断の研さんをすることが求められるという記述もあるところでございまして,より対象を広くするということが考えられるかと思います。
 そこで,具体的な内容につきましては,各大学の主体的な判断を尊重しながらも,対象や内容について,より広範なものを対象としたような資質向上に関する包括的な義務規定にすることが考えられるのではないかということでございます。基本的に,現在の第25条3を削るというものではなくて,これを更に広げた形の包括的な規定を作っていってはどうかということが,論点の一つ目でございます。
 それから,論点の二つ目でございます。大学設置基準第41条にございます,事務組織の見直しという点でございます。現在,この第41条では,「大学は,その事務を処理するため,専任の職員を置く適当な事務組織を設けるものとする」という規定が設けられてございます。現在,この規定を見ますと,事務組織の目的というのが,事務を処理するためという規定でございまして,また適当な事務組織を設けるというのも,必ずしも分かりにくいということもございます。明確な定義や目的が記述されていないということがございます。
 そこで,この事務組織の目的や役割,あるいは構成員がどういう方なのかということにつきましては,今般の学校教育法の改正の趣旨・目的等も踏まえまして,この事務組織というのが学長や学部長等を補佐して,大学の管理運営であるとか,あるいは教育研究の支援業務を行う組織であることを明記することが,一つ考えられるのではないかということが論点の二つ目でございます。
 なお,別途,第42条に,厚生補導の組織に関する規定もございまして,検討に当たっては,そちらとの調整,整理も必要になるかと存じます。
 次が3番目の論点でございます。高度専門職の設置という論点でございます。
 この高度専門職につきましては,大学ガバナンス改革の審議まとめの中では,リサーチ・アドミニストレーターや,インスティトゥーショナル・リサーチャー,産学連携コーディネーター,アドミッション・オフィサーやカリキュラム・コーディネーター,弁護士・弁理士等の資格保有者,広報人材,翻訳者等,様々な方が想定されると書かれてございます。
 一方で,こういうアメリカ型の高度専門職につきましては,特にアメリカでは高い流動性が前提とされている専門職ということもございまして,流動性が低い我が国の雇用の実態も踏まえながら,どういう形の制度にしていくのかということについては,検討の必要があるかと考えられます。
 そこで,具体的に高度専門職を検討するに当たりまして,まず論点としまして,そもそも何のためにこれを導入するのかという導入目的,それから,定義として,どういうことに関する高度な専門性なのか。また,仮に法令等で示すに当たって,どこまで国で定義を示すべきなのか。最後に,大学に判断の余地といいますか,裁量を委ねるべきなのかどうかという点もございます。
 また,三つ目としまして,高度専門職の身分・処遇に関する部分でございますけれども,異なる俸給表,教育職でもない,事務職でもない,異なる俸給表を適用するようなイメージにするのか。それとも,教員や事務職員の方も就けるような職種として,高度専門性が必要な業務に就いている間,例えば,高度専門職特別手当のような形で,手当等で処遇するイメージを持つのかということもあろうかと思います。
 また,4点目でございますけれども,雇用形態・キャリアパスについてですが,正規職員を想定して,仮に高度専門性を持つ,インスティトューショナル・リサーチャー等で活躍された方が,将来的にどういう役割,例えば,管理職とか役員等になっていくイメージなのか。それとも,基本的には任期付きの職員で,外からお招きをするようなイメージを持つのかということもございます。
 こういうことについて,高度専門職のイメージも,恐らく皆様方によっても違う部分があると思いますので,そういうイメージも調整しながら,各大学において実際に活用できるような制度として仕上げていきたいと考えているところでございます。
 続きまして,4ページからは,第2点のその他の検討課題という論点でございます。こちらについては,本日は見出しということで,また今後,本格的な議論をお願いできればと思っております。
 論点の一つ目が,障害を有する学生に対する合理的な配慮に関する規定が考えられるのではないかという点でございます。
 近年,各大学では様々な障害を有する学生が増えているというデータもございます。特に,その中で入試であるとか,就学,あるいは学生生活等において,一定の配慮を有することもあるかと思います。
 大学設置基準においては,既に障害者総合支援法や障害者差別解消法という関係の規定はあるところでございますけれども,この大学設置基準において,特に凶悪事件に関するところでの規定を設けて,この点についての意識改革,また大学における配慮というものをお願いしていくことが,一つ考えられるのではないかということがございます。
 それから,論点の二つ目でございますが,いわゆる三つのポリシーについての規定を設けるべきではないかという点でございます。
 これについては,学士課程答申,それから,一昨年の質的転換答申の中でも書かれているところでございます。これについて,大学設置基準の中で明確な規定を設けるべきではないかということが,最後の論点でございます。
 こちらからの説明は以上でございます。
【佐々木部会長】  ありがとうございました。
 SDの必要性や,事務組織の見直し,あるいは高度専門職の設置等自体については,御賛同いただけると思うのですね。本日の御提案の趣旨は,設置基準の改正にどのようにうたい込むかということですので,そうした観点から御意見を頂ければと思います。
【山田委員】  高度専門職の設置というところなのですが,少し分からないところがございます。議論を振り返ってみますと,かつて専門職大学院というのが作られてきたと思います。この専門職大学院の中では,高度専門職を育成するという形で,プロフェッショナルスクールとしての大学院を設置してきて,そこには,例えば,ここにありますような弁護士とか,ロースクール,会計士,ビジネススクールなど,専門職かどうか,少し分かりませんけれども,かなりしっかりとした定義がされてきたものだと思うのですね。
 それが,一般的には学位とか,プロフェッショナル・ディグリーと結び付いてきているのが高度専門職ということなのですけれども,ここに挙げられているものは,必ずしもそういうものとは結び付いておりません。
 例えば,リサーチ・アドミニストレーター(以下,「URA」という。)とか,インスティトゥーショナル・リサーチャーについては,私も育ててきておりますので,非常にいろいろな問題点があると思います。学位を博士まで持っていたり,広報人材などは持たずに現場で専門的な能力を携えてきていたり,混在していると思うのですね。
 その辺りの整理というのは,現時点でプロフェッショナルスクールが存在していますので,それとの関係性も含めて議論していかなければいけないと思います。また、それがここに入っていないように思うのです。目的などでありますけれども,現在ある高度専門職を育成する大学院レベルの機関との関係性です。
【島田委員】  私は,高度専門職の設置というところがよく分からない。これは,大学設置基準の改正の中身ですよね。ということは,これを認めれば,大学設置を行うときに,高度専門職という,何か分からないですけれども,置き方は別にしても,置かなければいけないという改正になるわけですよね。
 だから,民間だったら,終身雇用かどうかは別にして,高度専門職の必要があって,その人を雇ってくるわけですよね。それを育てるとか,事務職の人を育てるというときに,高度専門職の設置というのは,本当に要るのか。
 要するに,大学において,こういうところは高度専門家に任せた方がいいよという書き方はあるかもしれないけれども,設置基準という意味で本当に要るのかというのは,僕は少し分からないです。
 だから,そういう意味で,部会長が言われたように,ここまでは認めていますよという意味では,僕は分かっていないという部分なのです。
 以上です。
【濱名委員】  私も設置基準の中にというのは違和感があって,名称もなのですけれども,山田委員,島田委員が言われたのはごもっともだと思います。この前,AIR(Association of Institutional Research(アメリカインスティトューショナル・リサーチ学会))のランディ・スウィングというエグゼクティブ・ディレクターを呼んで,義本審議官のところへ御挨拶に伺ったときに話をしていたのですが,アメリカではこういうのはアカデミック・ファカルティと区別して,サービス・ファカルティと呼び,処遇も若干違うとのことでした。
 ただ,実はこの後の三つのポリシーが,設置基準に明確に書かれていないのです。答申にも,二つ前の答申に書かれていることが書かれていないのに,こういう熟していないものを設置基準に持ってくるというのは,少し違和感があります。むしろ,答申の中にこういうことが議論された上で書かれて,その後,制度が追い付いていくという方が自然だと思いますし,議論としては,後回しにした方がいいのではないでしょうか。
 それに比べると,過去2回の学士課程答申以降のところを見ると,ここに書かれているように,ディプロマ・ポリシー(卒業認定・学位授与に関する基本的な方針)もどきのものとか,カリキュラム・ポリシー(教育の実施に関する基本的な方針)もどきのものはあるのだけれども,言葉が訂正されていないということです。
 もう一つ,非常に気になっているのは,これは前回も申し上げたのですけれども,アセスメントのことは,アセスメント・ポリシー(学生の学修成果の評価について,その目的,達成すべき質的水準及び具体的実施方法などについて定めた学内の方針)として,前の答申でも,複数箇所出てくるにも関わらず,今回の対象にも含まれていないのは,まことに残念至極な話です。
 そうかと思うと,認証評価の制度の中には,内部質保証とか,学習成果とかが出てくるのですから,少なくともアセスメント・ポリシーについては,基本的に設置基準の審議の中に入れていかないといけないと思います。どういうことかというと,過去にも答申の中で結論を出しているものについて,きちんと設置基準に書き込んでいくことが必要です。
 現在審議して,これから答申に出そうかというものは入っているのだけれども,過去2回の答申の中で,制度的に取り組むべきものは落とさないようにした方がいいのではないかと思います。
【山田委員】  高度専門職というのは,日本的な意味で,ここで定義されるのかもしれないのですけれども,実は,しっかりとした定義があると思うのです。
 私も自分で書いたことがございますけれども,フレックスな専門職,プロフェッショナルな研究家がきっちり書いていて,高度専門職には6点の条件があります。多分,世界的に高度専門職というときには,それが定義として取られていると思います。その中の一つの要件として,高度な,あるいは科学的な学問上の訓練を受けてきたことというのが,高度専門職の定義として認知されているのですね。
 だから,それと同様に,これを日本的な定義でカバーして,広げていっているのかという辺りもしっかりしておかないと,プロフェッショナルスクールとしての専門職大学院が存在しているとすれば,そことの整合性は整備するべきではないかと思います。
【白井大学振興課課長補佐】  初めに,島田委員からの御指摘で,高度専門職は置かなければならないものなのかという点についてでございますけれども,もちろん,これは制度設計をどのようにするかということに関わるところではございます。今,事務方としては,置かなければいけないということではなくて,各大学の裁量において,置くことができるという形での検討が望ましいかと考えているところでございます。
 それから,山田委員からお尋ねいただきました,プロフェッショナルスクール,専門職大学院との関係についてでございますけれども,まさに高度専門職をどのように定義するのかという部分と関係するのかと思います。例えば,高度専門職に近い概念として,労働基準法や,外国人の出入国管理に関するような法律の中で,高度専門職に関する定義が置かれている場合がございます。
 そういうことを見ますと,大体,博士の学位を有している,あるいは修士の場合には,修士プラス一定の実務経験が必要など,そういう学位に関連するような資格というのが設けられているなど,学位,あるいは弁護士資格,公認会計士資格,医師という職業系の資格ということを設けているケースが多いということがございます。
 ただ,実際にそういうことをするのが,直ちに大学における高度専門職となじむのかどうかということがございますし,資格,あるいは学位を有しないけれども,広報人材のように非常に優秀な方もいらっしゃると思いますので,そういう方をどのように捉えていくのかということについて御審議,御議論を是非お願いできればと思っております。
 それから,濱名委員から御指摘いただきました三つのポリシー,またアセスメント・ポリシーについてでございます。伝統的に,私どもとしては,中央教育審議会の中で示された考え方については,大学でそしゃくする時間も必要であろうということでございまして,必ずしも直ちに法令化してこなかった部分がございます。ただ,三つのポリシーについては,その時期がある程度,熟してきているのではないかということで,今回,具体的な法改正としての御提案で,御議論いただきたいということになってございます。
 アセスメント・ポリシーについても,もちろん排除することではございませんので,大学において,設置基準における各大学の義務として熟したものになっているのかどうかということについては,まさに,この部会で御議論いただいて,熟しているという御判断であれば,それを設置基準の中に入れ込んでいくということも,当然,案としては考えられるのではないかと存じます。
【美馬委員】  ここの高度専門職という中で,今後,すごく重要になってくると思われるものがあるので,是非検討の中に入れていただきたいと思うのです。それは,アメリカでは1990年以降,大学の進学率が60%を超えた辺りから出てきたものなのですけれども,ラーニングセンターという,授業外の課外の学習支援を行う組織が,いろいろな大学で設置されています。
 例えば,名前としてはラーニングセンターとか,アカデミック・サポートセンターとか,そういうところに専門職のスタッフがいるのですね。ラーニング・アドバイザーとか,ラーニング・スペシャリストといって,彼らは教育とか心理学の修士号以上,あるいはドクターを持っている人たちがいます。
 さらには,そういう人材育成についても,認定制度,認証制度を幾つもの協会が行っておりますので,今後,すごく日本の中でも重要なものになってくると思いますので,これを設置基準にするかどうかは別にしても,少し調査していただいて,中に盛り込んでいただければと思います。
 以上です。
【川嶋委員】  一つは,言葉の使い方です。高度専門職の設置と,ここに挙げられているのは,国立大学を法人化するときに,国立大学には教育職と行政職しか職種がなくて,今後は国際化とか,評価対応という第三の人材,職種が必要になってくるというところで,日本では議論が始まったと思います。
 そのときには,別に高度専門職云々(うんぬん)ではなくて,教員でもなく,行政職でもない職種という,イギリスなどでもサードスペースと呼ばれていて,そういう仕事は大学がグローバル化したり,あるいはマーケットの中に置かれるようになると,どうしても教員でも行政職でも対応できないということで,その必要性は強くうたわれているわけです。
 それで,言葉の高度専門職という言葉は,学士課程答申では使われていなくて,ガバナンス改革の審議まとめの中で使われたということです。後ろに付いている7ページの「大学のガバナンス改革の推進について」のまとめの中に(1)の「学長補佐体制の強化(高度専門職の安定的な採用・育成)」と書いてあって,ずっといろいろな職種が書いてあります。
 次のページに行って,「その他にも,弁護士・弁理士等の資格保有者,広報人材,翻訳者等,高度な専門性を有する人材(高度専門職)」と書いてあって,ここを見る限り,「その他」以降の弁護士・弁理士等,先ほど,山田委員がおっしゃった長期の訓練,高度の訓練,あるいは倫理性に基づいた,いわゆるプロフェショナルのことのみを言っているのかなと思うと,一番下のところに,「全部を包括して高度専門職の設置」と書いてあるので,少し整理していただきたいと思います。
 それともう一点は,いわゆるプロフェショナル,行政職でもなく,ファカルティにもなるという人たちを,先ほどのお話は必ずしも必置ではないというお話でしたけれども,アメリカでは,先ほど,美馬委員からお話がありました。いろいろなプロフェッショナルが教員でもなくて,事務職員でもない方がどんどん増えていて,結果として,こういう人たちは,言ってみれば高度という意味なので,どうしても一般の行政職員よりは,給与・処遇は高くなるのですね。そうすると,アメリカで授業料の上昇が起こっています。
 こういう専門家を雇うことによって,人件費が高まって,結局,それがどこに転嫁されるかというと,学生,つまりは授業料に展開されるということもあるので,本当に俸給表にするのか,手当にするのかと書いてありますけれども,大学から見ると,俸給表にしろ,手当で遇するにしろ,やはり大学のコストが上がるということも考慮して,国として,その分をきちんとカバーしていただけるのかどうかということをきちんと考慮していただいて,こういう提案はしていただきたいと思っております。
【金子委員】  大学のガバナンス改革の推進についてと書いてあるのを,少し具体化しなければいけないというコンテクストから出てきている話だと思います。一般には,私は大学事務組織と言われているものを,もう少し業務を高度化し,あるいは整備するということが必要になっていると思います。
 一つは,大学は経営能力を強化しなければいけないという要請は,かなりガバナンス改革から出ているわけです。
 それから,2番目は,大学の教育というのは,教師の授業だけではなくて,様々な大学全体のシステムとして教育をするという側面が,非常に重要になってきています。いわば間接的な教育というのか,先生が一種の大学教員のフランチャイズのようにして,それぞれ授業を行って成り立つという時代ではなくなっている。それも非常に重要な点だと思っています。
 それから,3番目は,それぞれについて,かなり高度の専門的な知識が必要になっているということはあると思うので,むしろガバナンス改革の推進についてだけではなくて,高等教育全体の課題として,こういうことが問題になっていると思います。
 ただ,そのときに,差し当たり問題なのは,論点2にありますけれども,事務組織と書いているものが,今まで大学には事務組織を置くというだけだったものを,もう少し具体的に何か定義するということになると,今までそういう議論が行えていないので,もう少しプロセスが必要になるわけで,それをどの程度具体的に今の段階で定義するかというのは問題だと思います。
 それから,高度専門職も,先ほど,お話にあったように,一般的に,一定の学歴資格を持つとか,一定の知識を持っているとか,あるいは職務がある程度,独立性を持っているとか,そういうものが高度専門職と言われていたわけです。
 先ほど申し上げた,大学の経営ということに関して高度な能力を持っている人は,別にそういう意味での学歴資格が,必ずしも必須であるわけではない。むしろ,大学そのものについて,経営する高い能力を持っているという意味での高度専門職なわけです。そういう意味で,古典的な意味での高度専門職と,大学独自の高度専門職というのを考える議論が必要だろうと思います。
 それと,もう一つは,大学設置基準に書き込むということですが,大学に対してこういうことが望ましいということをある程度強力に示すために大学設置基準に書き込んだ方がいいということは,それなりに理解できます。
 ただ,現行の大学設置基準に,今申し上げたことを全部きちんと表現しようと思うと,かなりの大規模な書き直しが必要になってくるように思うので,そういうことまで,文部科学省に覚悟があるのかどうか,非常に問題があるわけです。
 この辺も,行政的判断でしょうけれども,どの程度の手直しでいいのか,それとも,かなり抜本的に行えるのかというところも判断になると思います。
 以上です。
【濱名委員】  さっきの話で,定着したものは設置基準に入れる,アセスメントについては,定着していないから入れないということに,非常に違和感があって,そもそも今の課題を考えたときに,高度専門職の話は,今の状態で,ほとんど共通理解がないと感じています。イメージがこれだけばらついているものを,設置基準に入れるというのは,違和感があります。設置基準は,大学の行動を規定する上での制約なのですよね。
 それをこのような形で行う前に,先ほどの川嶋委員の話ではないのですけれども,きちんとインセンティブで,今の私学助成なり,運営費交付金の中でどう反映するということを行って,それが定着していく。
 なおかつ,育成の大学院もないのですよね。それを専門職と言い始めて,先に設置基準を決めるというのは,先ほどの白井大学振興課課長補佐の説明と違うわけですよ。全然定着していないものを,それも財政的な裏付けがないものを先に持ってきて,各大学が本質的なところで方針を決めなければいけないものは後回しにするというのは,順番がおかしいと思います。
 やはり,こういう形で行っていこうとすると,設置基準に書くのであれば,「高度専門職」を,どこでどう育成していくのか。高大接続答申では,そういう評価人材が必要だという話を書いているのだけれども,その受皿を,さあ,これから作ろうかというときに,先に設置基準という話はないのではないか。
 むしろ,全体の制度の中では,育成していくための方法論をきちんと作っていく,あるいは,それを促進するためのインセンティブがあって,それがある程度進んだ段階で設置基準に落とし込むなら分かります。そのことがなにがしかの必要条件として書かれるものが,僕は設置基準だと思うので,それが必要条件でない,各大学の判断に委ねるというのであるならば,それこそ時期尚早であって,ほかに入れるべきポリシー関係のものを,まずきちんとすることが必要です。アセスメント・ポリシーが明確になっていないのに,高度専門職,インスティトューショナル・リサーチャーが先に来るのはおかしいですよ。
 こういう活動を大学としての責任で行ってもらわなければいけないから,その次の段階で人材について新しい職種を位置付けていく,あるいは,その前に奨励策であるとか,育成策が示されて,最後に皆できるようにしなさいとするのが,行政の手順ではないかと思います。
【里見大学振興課長】  その部分だけで言いますと,実はインセンティブは,既にかなり置いておりまして,歴史的には,もう既に五,六年は行っているような状況になっていると思います。
 ただ,URAで研究の面から付いているということが実態としてありますので,そこが一つ,高度専門職というURAの定義というのは,実は予算上の定義としてはありますので,これも少しお示ししながら,中身がどういう形で,現状,浸透しつつあるのかというのは,お示しできるようにしたいと思います。
 それから,もう一つは,今考え方として,この職種を入れる,義務化することに意味があるとは余り考えておりません。今まで事務と教職という二分化されたイメージで捉えられていた大学の運営組織を,全体の管理運営組織であり,その中には教員も職員も,あるいは高度専門職も入るという運営組織を大学は持たなければいけないという,イメージを転換しようと考えております。
 そうしますと,金子委員がおっしゃったように,相当大規模な改正が必要になる可能性も秘めておりますので,どのような形でそれを技術的にこなせるかも,少し考えさせていただきながら,その辺の議論は深めていただきたいと考えているところでございます。
【金子委員】  余り熟していないというお話ですが,私がもう一つ感じますのは,大学の職員の方と結構接することが多いと,大学職員の方は,今非常に自分の地位の曖昧さみたいなものを相当感じておられるところがあって,自分たちは何を目標にしていっていいのかという,大学の位置が何であるのかということについて,迷いを感じておられます。そういうことにある程度の方向性を示すということは,私は意味があるのかなと思います。
【佐々木部会長】  はい。本件は,本日が初めてですので,またもろもろの御意見を整理していただいて,議論を重ねていきたいと思います。
 【安部委員】  SDに関しては,是非義務化ということで進めていただきたいと思います。ここの論点1の授業の内容及び教育の方法に限られているということですが,高度専門職を論議する前に,SDでどういうことを行えばいいかという項目を出していただきたいです。
 実は,短期大学のワーキングの審議のまとめの中に,短期大学の運営に関して,経営面,教学面での専門的知見を有し,地域の行政機関,関連団体との調整力を備えた職員を養成する必要があるという文言を書き込ませていただいているのです。教員は比較的,特に短期大学は流動性がありますので,職員の場合は定着しています。短期大学にとって地域連携は必要不可欠であり,そのことに関しての方法論,内容等をSDの義務化の中に,是非入れていただきたいなと思います。
 以上です。
【佐々木部会長】  ありがとうございました。それでは,本日の部会の審議は,これで終了させていただきたいと思います。


―― 了 ――

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