大学教育部会(第25回) 議事録

1.日時

平成25年9月20日(金曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省3階3F1特別会議室

3.議題

  1. 大学の質保証の充実について
  2. 短期大学の機能の充実について
  3. その他

4.出席者

委員

(部会長)佐々木雄太部会長
(副部会長)黒田壽二副部会長,谷口功副部会長
(委員)浦野光人,高橋香代の各委員
(臨時委員)奥野武俊,金子元久,川嶋太津夫,佐藤弘毅,島田尚信,濱名篤,美馬のゆりの各臨時委員
(専門委員)安部恵美子,長束倫夫,長谷山彰の各専門委員

文部科学省

板東文部科学審議官,大槻総括審議官,小松私学部長,中岡高等教育局審議官,浅田高等教育企画課長,里見大学振興課長,森私学行政課長,今泉大学設置室長,田中高等教育政策室長,白井大学振興課課長補佐,田頭大学振興課課長補佐,秋山高等教育政策室室長補佐 他

5.議事録

(1)文部科学省から,大学教育の質保証に関する認証評価制度の在り方について,資料2に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【佐々木部会長】  前回8月2日の大学教育部会に提出されました「大学教育部会の検討課題」が参考資料1としてお手元に配付されていると思います。また,資料1として,前回の大学教育部会における主な御意見を列挙したペーパーが配付されています。併せて,当日の会議での御意見に加えて,文書でお寄せいただいたその後の御意見,とりわけ鈴木委員と川嶋委員からは,大変長文の御意見を頂いておりますので,これも併せて収録されておりますので,この後の御議論の参考にしていただきたいと思います。
 前回御議論いただきましたように,本部会の課題は「大学の教育の質の改善,あるいは質の保証」ということを中心にして,さらには「大学自体の質保証」に守備範囲を広げていこうということになっております。
 本日は,大学の質保証の充実に関して,一つには認証評価制度における教育の質の向上に関わる評価の問題,さらには大学設置基準の改善について御議論を頂きたいと考えております。併せて,昨年8月の中央教育審議会答申の中で,短期大学の機能の充実について引き続き検討することを課題としておりますので,ここに着手していくための手続を御検討,御審議いただきたいと考えております。
 では,まず大学教育の質保証に関する認証評価制度の改善について,御議論を頂きます。

【田中高等教育政策室長】  資料2-1及び2-2に基づきまして,認証評価制度見直しの検討の方向性の案について御説明をさせていただきます。
 資料2-1は,参考資料1の前回会議での検討課題ペーパーの認証評価制度の部分の検討課題の項目ごとに現状と検討の方向性を整理したものでございます。そして資料2-2は,その項目ごとに現状の取組や制度などの参考資料をまとめたものでございます。この資料2-1を中心に,資料2-2も適宜御参照いただきながら御説明をさせていただきたいと思います。
 それでは資料2-1を御覧ください。この資料2-1にございます見直しの検討の方向性といたしましては,認証評価機関の取組などを基に,認証評価機関の認証基準,いわゆる細目省令などの制度の見直しとして考えられる事項を中心に整理をしております。ただ,評価の改善,充実のためには,制度以外の取組でございますとか,評価の実態・効果,あるいは評価を受ける大学などのニーズも踏まえつつ検討を行うことが必要と思いますので,そのような観点からも御議論いただければ有り難いと考えております。
 それでは,資料2-1の項目ごとに説明をさせていただきます。
 まず(1)学修成果や内部質保証を重視した評価の在り方でございますが,認証評価は大学設置基準などに基づきます外形的な教育研究環境の評価を中心に制度化されておりまして,(1)の下の現状の二つ目にございますように,認証評価機関の認証基準を定めた省令,いわゆる細目省令におきましては,認証評価における評価項目といたしまして,教員組織や教育課程,施設,設備などの教育研究環境を中心に定められているところでございます。
 このような評価項目に基づきまして,各認証評価機関において評価が行われてきたところでございますが,近年,大学教育の質的転換や,そのための各大学における教学マネジメントの改善が求められる中で,各認証評価機関は学修成果や内部質保証を重視した評価に取り組もうとしております。
 具体的には,資料2-2のスライドの右下にページを付しておりますが,資料2-2の2ページや3ページにございますように,認証評価機関におきましては,そこにございますような基準を設定の上,新たな評価に取り組んでいるところでございます。
 そして,このような取組を促進するための環境整備などが求められると考えられるところでございますが,資料2-2の7ページにございますように,文部科学省におきましては今年度,学修成果を重視した評価のための客観的な評価指標や具体的な評価方法の開発のための委託研究を行う予定でございます。さらに学修成果などの評価は,現在は各認証評価機関の独自の取組として行われているところでございますが,大学教育の質的転換やアウトカム重視の流れの中で,学修成果や内部質保証を認証評価制度における共通の評価項目に位置付けて促進することなどが検討課題として考えられるところでございます。
 次に資料2-1の(2)機能別分化の進展に対応した評価の在り方についてでございます。この機能別分化の進展に対応した評価ということにつきましては,第2サイクルにおけます認証評価機関の独自の取組といたしまして,法令に基づく共通の評価に加えまして,各大学が特に重視する教育研究活動を適切に評価するための取組が行われているところでございます。
 具体的な取組といたしましては,資料2-2の9ページに各認証評価団体の取組をまとめているところでございます。例えば大学評価・学位授与機構や短期大学基準協会におきましては,共通の評価とは別に,希望する大学を対象に研究活動,地域貢献活動,教育の国際化,教養教育,職業教育といった項目について評価を行う取組が行われております。
 一方,真ん中の例2というところでございますが,日本高等教育評価機構におきましては,共通の評価のフレームの中で評価機関が評価項目をあらかじめ決めるのではなく,各大学が自らの使命に基づく基準を設定して,それに基づく自己評価を認証評価機関が評価する取組が行われているところでございます。
 特色ある大学作りや機能別分化が求められる中で,このような特定の教育研究活動に重点を置いた評価を,法令における認証評価の実施方法又は特例として位置付けることなどが検討課題として考えられます。
 その際,大学評価・学位授与機構が実施しております評価は,共通の評価に加えまして,評価手数料も別途必要な形で,いわば評価の労力も手数料負担も加重される形で行われておりますので,特定の教育研究活動の評価を行う場合には,共通の評価部分を簡素化するなどの特例的な扱いも検討課題として考えられるところでございます。
 次に,資料2-1の2ページの(3)評価結果を改善につなげる仕組みでございます。認証評価機関では,評価において改善すべき点といたしまして,指摘した事項につきまして,その進捗状況を確認する取組を実施しております。
 具体の取組につきましては,資料2-2の11ページに取りまとめております。改善すべき点として指摘した事項に対する取組,いわゆるフォローアップの仕組みをまとめております。このフォローアップの仕組みにつきましては,それぞれの機関によって具体の取組は異なりますが,大まかに申し上げますと,全体として基準を満たしている適合等の評価の場合にも,個別の事項について改善を指摘した上で,当該事項に関して改善の状況の報告を求める取組や,期限付適合や保留などの評価の場合に,全体的に再度評価を行う再評価,不適合の評価の場合の追評価といった取組が行われているところでございます。
 資料2-1に戻っていただきまして,このような状況,取組を踏まえまして,認証評価の結果のフォローアップや評価結果を踏まえた情報提供を認証評価機関の共通の取組として位置付けることなどが検討課題として考えられるところでございます。
 次に,(4)評価の効率化についてでございます。評価の負担の重さや重複等の指摘もある中で,方向性のところでございますが,評価の提出資料の負担軽減として,国立大学法人評価における認証評価の提出資料などの活用,認証評価や国立大学法人評価における大学ポートレートのデータの活用などが検討課題として考えられるところでございます。
 次に,3ページの(5)評価における社会との関係の強化でございます。これについては,まず資料2-2の22ページを御覧いただけますでしょうか。
 資料2-2の22ページに,大学評価・学位授与機構の評価を受けた大学のアンケート結果の一部を付けてございますが,認証評価の効果といたしまして,質の保証や改善の促進について肯定的な回答は約8割と高い一方,社会からの理解と支持についての肯定的な回答の割合は約50%にとどまるなど,社会との関係の強化が課題となっております。
 また23ページにございますように,各認証評価機関においては,評価の充実などのために調査研究を独自に行っているところでございますが,このような取組を促進することも,評価の充実という観点からは必要と考えられます。
 このようなことを踏まえまして,資料2-1の方向性のところでございますが,例えば評価に当たって高等学校や自治体,産業界など幅広い関係者の意見を聞くこと,評価機関の活動状況の社会への公表,質保証に関する調査研究を認証評価機関の共通の取組として位置付けることなどが検討課題として考えられるところでございます。
 なお,最後の(6)その他の検討課題といたしましては,資料1で整理しております前回会議,あるいは会議後の委員の意見のうち認証評価に係るもので,1から5以外の事項を記載しております。
 具体的には,大学設置基準への適合性などの最低基準を満たすかという評価を超えて,各大学が自ら掲げる目的・水準などの到達度評価の重視など,各大学の改革を支援するための評価の在り方,あるいは不適格判定を受けた場合の措置などの評価結果の活用の在り方,3点目といたしまして,メタ評価や一定の時期ごとの各認証評価機関の再審査などの評価機関の定期的なレビューなど,認証評価機関の質を確保するための評価の在り方などについても意見を頂いているところでございます。
 以上,前回会議の論点ペーパーに基づきまして,全体的に制度面を中心でございますが現状と課題,それから前回会議,あるいはその後の委員の意見を整理したペーパーを説明させていただきました。
 これをキックオフといたしまして,認証評価制度全体の在り方につきまして,冒頭申し上げましたように,制度のみならず実態等も含めまして,全体的に今後審議をしていただければ有り難いと考えているところでございます。

【佐々木部会長】  説明がありましたように,大学教育の質的な転換を各大学に促すに当たって,その質的転換への努力,その効果について評価を行う制度的な面に検討を加えようということです。差し当たり,質的転換を促すべく認証評価制度を改善することができないかという問題提起であります。
 鈴木委員から,この点についてかなり詳細に,具体的な御提案を含むペーパーが出されております。機会があれば口頭で御説明を頂こうと思っておりますが,差し当たりペーパーを御参考にしていただければと思います。
 それでは,しばらくの時間,以上の説明を踏まえて,大学教育の質的転換と,それに関する認証評価制度の在り方の問題について御意見を頂きます。いかがでしょうか。

【浦野委員】  失礼します。ただいま御説明いただいたことは,全体的に非常にいい方向だと思います。今まで,やはり問題にされてきたのは,認証評価が非常に外形的なものにとどまるということと,それから大学全体といいますか,一つの機関として見てしまってやっているという中で,外から見ると非常に分かりづらいものになったと思います。それが,こういう学修成果とか,あるいは機能別分化の進展に対応したとか,あるいは社会からの評価とか,そういったところに目を向けて,なおかつ,この学修成果とかというところになってきますと,大学機関一本という評価には多分ならなくて,その中に,また分割した形での評価になってくることも期待されますので,非常にいい方向だと思います。
 その上で,二つほどお願いしたいことがあります。
 まず機能別分化の進展に対応したというところですけれども,正直申し上げて,機能別分化が進展しているとは見られません。やはり,ここのところがもぞもぞとしていて,あまりうまくいっていないと思っています。
 やはり,各大学が機能別分化を進展するような,大学が自らのミッション,ビジョンといいますか,本学ではここに一番重点を置いているというところをはっきり打ち出していただくことが,この(2)のことを進めていく上でも,ものすごく大事だと思います。
 その上での提案ですけれども,現状では,やはり,この認証評価全体は7年に1回という法律的な枠組みの中で実施されていると思いますけれども,こういう個別の事項について言えば,各大学が本当にここをやりたいと思っているところについては毎年やってみるということが私,非常に大事だと思うのです。民間企業の場合ですと,もちろん全体的な監査というのはありますが,重点的項目については非常に簡易に,その重点についてやっていきますので。その評価は毎年というか,もちろん企業の場合は全てを毎年やるわけですけれども,重点的にそこをやっていけるということはありますので,是非この大学の評価においても,重点を置いたところについては,7年に1回ではなくて毎年やるぐらいの方法を考えられてはいかがかなと思います。
 それから,評価における社会との関係の強化ということで,先ほどのアンケート調査も含めて見ますと,大学からの理解がまだ得られていないところがございますので,やはり,ここのところは,一気呵成(かせい)にいくのは難しいかもしれませんが,もう少し社会からの評価ということについて,学外のステークホルダーとのミーティングや話合いの機会をきちんと設けていったらどうかと思います。
 昨年度,新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて,各大学であれだけのフォーラムを各地でやってきました。学外の方を含めた,地域の産業や高校側などの方々を含めた地域のミーティングを是非今後やっていっていただければと思います。

【川嶋委員】  資料1の一番最後のページの別紙2ですけれども,質保証ということで意見を述べています。日本の公的な質保証システムは設置基準,設置審査,そして認証評価という三つが機能的にきちんと,それぞれの役割を分担して,全体として質保証をしていこうという仕組みになっていることを前提として,それぞれ設置基準における現状の問題点と改善の方向性,それから設置審査の現状の問題点と改善の方向性,最後に認証評価に関わるものがあります。今回は認証評価のことでしたので,7ページの一番下に書かせていただきました。
 今後,学部改組等はあるかもしれませんけれども,新たに大学を設置するということは,18歳人口の減少等を勘案すれば,これまでよりは少なくなることになりますので,いわゆる事後評価としての認証評価が,質保証に果たす役割は非常に重要になると思われます。
 それで,先ほどのまとめのところにも,最後のその他のところで紹介されましたけど,そういう意味では認証評価機関そのものが非常に重要な役割を担ってくるということで,認証評価機関の質保証も今後重要になってくるのではないかということです。
 それから,認証評価機関を受ける期間は7年以内ということです。受審することは義務化されていますが,不適格,不適合等を受けた場合,直接にはペナルティーにはならなくて,その結果を受けて文部科学省が何らかの行政処分をすることになっています。
 アメリカではアクレディテーションが認められなかった場合は,直ちに所属学生が連邦奨学金を受ける資格を失うというペナルティーがあります。直接アクレディテーションとそういうペナルティーは関係しているわけです。
 そういう意味で,何も性悪説に立つわけではないのですけれども,認証評価の役割を高めるためには,言い換えれば,認証評価が極めて重要な活動であることを認識してもらうためには,何らかのペナルティーと認証評価を結び付けるべきではないかということです。
 3番目は,先ほども御紹介ありましたけれど,認証評価のフォローアップは,各大学の改善につなげるということでは非常に重要なわけですけれども,日本の場合は,基本的には大学が,短大まで含めれば四つの機関別認証評価機関を自由に選べます。つまり,最初はある機関で認証評価を受け,次のサイクルでは別の機関ということもあり得るわけです。しかし,そうすると,なかなかフォローアップといいますか,改善に結び付かないこともあるので,メンバーシップ制にしてはどうかという御提案であります。
 それから,先ほども学修成果の評価について委託事業等をするというお話がございましたけれども,学修成果の測定方法の開発とか,それから評価の在り方そのものの研究開発など,更なる研究開発が必要になってくるので,どこかにナショナルセンターとして評価を重点的に研究開発する機関が必要なのではないかということで,例えば現在の大学評価・学位授与機構を,そういう評価,アセスメントに関するナショナルセンターにしてはどうかという御提案をさせていただきました。
 これに付け加えて二,三お話しさせていただきますと,一つは機能別分化ということと関連するのかもしれませんけれども,今,一律に7年以内に全ての高等教育機関は認証評価を受審しなければいけないことになっているわけですが,例えば,ある時点での認証評価の結果が良好な大学,短大等については,次の認証評価を受ける期間をもう少し延ばしてもいいのではないか。逆に,改善の余地ありとか,問題点を指摘された高等教育機関については,むしろ,先ほど浦野委員から毎年というお話もございましたけれども,より重点的にフォローアップをしたり,次の認証評価を受審するまでの期間を短縮したりするなどの柔軟性を持たせてもいいのではないかというのが1点です。
 それから,もう1点は,今後,18歳人口の減少に伴って,幾つかの大学が統合したり,最悪の場合には閉鎖したりということもありますので,リスク管理という点から,認証評価を受けるときに,将来何かのリスクが起きたときにどういう対応を大学として考えているかもきちんと確認することは必要になってくるのではないかということであります。
 最後に,機能別分化や,あるいは,今回まとめのペーパーには出てこなかったのですが,これまでの認証評価の議論の中で,専門分野別評価をどうするかというのは,ずっと課題になっておりました。今のところは,専門職大学院以外は分野別には,認証評価は行われていないわけです。それに代わって,今後は内部質保証システムを重視するということで検討と改革が進んでいます。そこで,あるいは教育プログラムごとの質保証については,各大学が内部質保証システムをきちんと機能させることによって,大学が責任を持って分野ごとの質の保証をしていくということになるわけです。そして,認証評価については,内部質保証システムが十全に機能しているかどうかを確認する方向に変わっていくのだろうと思います。
 ただ,認証評価のときに,では,その内部質保証システムが十全に機能しているか。そこだけを一種のメタ評価的に確認するのではなくて,例えば一つ,二つぐらいの専門分野についても認証評価で少し詳しく見てみるというような方向性も必要なのではないかと思いました。
 以上です。

【谷口副部会長】  今,評価の話がいろいろと出ていますけれども,毎年実施するのはいいのですが,大学の努力の評価は毎年でもできると思います。ですがその努力の成果,それが本当に機能したかどうかという評価については,少しレンジを長くして,学生さんが育っていく過程を見なければできないと思います。
 ですから,何でも一律に何年でやるということではなくて,内容に応じて評価の方法などを変えていくといった柔軟性を持つことが,うまくこの評価が機能して,教育の質が変わっていくことにつながるのではないかと思います。そういう観点を少し考えていただくといいかと思います。

【長谷山委員】  私も評価,あるいは基準の多様性,それから柔軟性ということに賛成です。もともと,これから学生に主体的に学ばせるとか,自主的,能動的な学習と言っているわけですから,ともに学習していく大学の側の主体性,自主性,能動性というものも当然求められてくるでしょう。
 そうしますと,評価に当たっても,そうした制度の外からの評価も,より高めていかなければいけませんけれども,むしろ大学の自己点検評価という部分,ここをどう強化していくのか,それが非常に必要だと思います。
 今,認証評価についても複数の機関がとてもよくやってくださっていますけれども,非常に乱暴に見れば,やはり最終部分の外形をどう見るかというところで頑張ってくださっている。ところが,今後こうした主体的な自己評価が進んでいくと大学の負担は非常に増えますので,そうした評価のプロセスについても人的,資金的な面で支援していただけるような中間的な組織や,あるいは大学も含めた関係機関が集まるコンソーシアムのようなものを作って,7年に一度に大学をぽんと見て評価するのではなくて,毎年毎年の評価に至るプロセスをともに支援してくれるような組織が必要ではないかという気がします。
 それから,やはりきめ細かい評価とか,分野別に基準もどんどん変わってくると思いますので,多様な基準は是非作っていかなければいけない。したがって,一律,客観的な基準で評価すべき部分と,主に自己点検,評価を中心に多様な基準で,大学が自らの使命に合わせて自己点検,評価を絶えずしていく。この2本をうまく整合的に実施することが,今後の認証評価制度をさらに向上させるポイントになるのではないかという気がします。
 もう一つは,社会の多様な評価を受けることですが,私は,これも賛成です。ただ,一番必要な視点は,大学の自己点検評価ということと関連しますけれども,学んでいる学生や,その大学の卒業生が自分の大学をどう見ているのかということです。長い目で大学を評価していくというのであれば当然,当事者の大学生,あるいは卒業生が長期的に自分の出た大学をどう評価しているかと,これを計れるような測定の方法,あるいは評価を取り入れるべきではないかと思います。当事者評価という観点の発展です。
 それをしていくのはなかなか大変で,今,教育産業あるいは個々の大学が学生生活実態調査といった調査をやっていますけれども,卒業生に対して,単なるイメージや印象ではなくて,事細かな項目ごとに尋ねていくような調査というのは,あまりなされていないと思います。そういう測定の方法も必要だと思います。
 あるいは,その学生調査を個々の組織,分野がやるのではなくて,やはり大学や関係の機関が基準で各大学の学生,卒業生調査をするという測定方法も必要ではないかと,このような感想を持っています。

【濱名委員】  幾つか気になるところがあります。各大学のFD等に呼ばれて,実は大変不安に感じるのは,大学の教員自身が,自らの成績評価に対して強い自信を持っていない。つまり,アセスメントに対して大学教員が自信を持っていないということが顕著であるということです。
 他方,産業界が大学の成績を採用試験のときにどの程度使っているかというと,5番目ぐらいに使っていて,4割以上の事業所が使ってはいるけど,信頼性でいうと0.6%という状況です。つまり,ほとんど大学の成績はリスペクトされていないということが,非常に大きな課題だろうと思います。
 質保証をやっていくときには,外形的な調査をいろいろやってもしようがないわけで,個々の大学の教員の評価能力が高まっていくことと,そのプログラムであるとかインスティテューショナルなレベルでの評価というものを,どう構造的につくりあげていくかです。昨年8月の答申のときに評価の位相(いそう)を整理したと思うのですけど,それを進めていくしかないのではないかと思います。
 その中で,一つは,アメリカの大学を最近見ていると,アセスメントプランというものが明確につくられているのです。アセスメントプランというのは,達成目標を,どういう尺度で,どういうデータを集めて,どのぐらいのサイクルで見るのか。4年間のサイクルの中で,このデータは2年に一度集めるとか,そういったことですが,何によって,自ら掲げた目標を証明しようとするのかということをあらかじめ明らかにすることです。それには常に定量的なデータだけではなく,ルーブリックを使って卒業研究の内容を評価していくというものもあれば,定量的な評価だけを使っている場合もあって,どのようなストラテジーでやるかは各大学にゆだねられていいと思います。
 今の状態でいうと,設置基準であろうが,認証評価の基準であろうが,自己点検評価体制はとっていますけれども,アセスメントプランが問われていないというところは不十分で,そこを突っ込まない限りにおいて,サイクルの問題だけではないと思います。やはり評価の尺度を,自らどう作るのかが重要です。
 鈴木委員の御意見の中でシラバスとルーブリック評価の話が出てきていますけれども,そうした方法論を各大学がきちんと設定することを求めていくのは,必要になってくるのではないかというのが一つです。
 もう一つは,設置基準も,これも認証評価も同じなのですけど,大学院のところに手を着けないと大学教育は良くならないだろうと思います。例えば,私どもの大学でも新しい教員の採用を公募するときには,選考の中で,この科目についてシラバスを書いてくれ,模擬授業をやってくれと言うのですけれども,大学院がそういう指導をしているのかどうかですが,ほとんどの大学の大学院ではしていないです。たまたま,そういう仕組みが整った大学で学んでいれば,見よう見まねでやるかも分からないのですけれども。それは大学院の認証評価という中で,研究能力は見ているかも分かりませんが,そういう教育の仕組みを見る仕組みが組み込まれていないというところに問題があります。
 ですから,学士課程教育の改善をやろうとしても,新しい教員たちに対する質保証のためのトレーニングがなされていなければ,仕組みで規制するということだけでは,やはり改善には,なかなかほど遠いのではないでしょうか。
 その点からいうと,認証評価と設置基準と併せてと,長谷山委員がおっしゃったのですけど,私は大学間連携の促進というのが一つ重要なファクターだと思います。志のある大学が,地域に限ったことではなくて,地域を超えてアセスメントについて協力していく。例えば美馬委員のところでいえばポートフォリオとか,各大学がやっているものが,ノウハウ結集していくような仕組みを促進していくことは,次のステップに対して必要なことではないかと思います。
 ですから,認証評価と設置基準の話は,ある種,連動しています。どこでどうバトンタッチをするかの問題だと思うのですけれども,やはり基本的なフレームワークとして,アセスメントプランの問題を,どういう形で改善をしていくか。認証評価の仕組みを考えていく,設置基準の問題だけでなく,その評価の仕組みを考えていくときに,大学院の教員養成の部分とリンクしていかないと,やはり抜本的な改善というのは,なかなかできないと思います。

【奥野委員】  前回出席ができなかったものですから,視点が違っていたら済みません。
 今議論しているのは,大学の質保証という視点で,この認証評価をどう考えるか,工夫できないかと,こういう視点だと私は思うのですけれども,その視点でいうと,鈴木先生がまとめてくださっているような認証評価の項目だけではなくて,在り方についてということです。ただ,今,濱名委員がおっしゃったように,ルーブリックであったり,カリキュラムのポリシーであったり,そういうことまで踏み込まないといけない。つまり,認証評価というこの外形的なものだけでは多分,難しいということです。
 ただ,認証評価が我々にとって非常にエフェクティブだったのは,それまでの評価が何となくだったのに対し,組織として評価することになったことです。そういう意味では,どこの大学も,我々の大学もそうですけど,ある緊張感の中で,認証評価のああいう流れというのは,それなりに効果はあったと思うのです。
 でも,学修成果の何とかというのは,実は我々,正直言って踏み込んでおりませんでしたし,そこが一つの今日の視点だと理解しています。実は,少し視点が変わって,私は公立大学ですが,公立大学は,実は,この認証評価の受け方というのが,国立大学と私立大学とすごく違います。これを実は,文部科学省の資料とかいろいろ見ても,ほとんど出てこないので,少しだけ申し上げたい。
 公立大学というのは,法人化されていても,されなくても,自治体の評価を毎年受けるのです。それでいながら,この認証評価は地方独立行政法人法で,教育の部分は国の公営機関に準ずるとだけ書かれていて,法人評価するときには微妙です。されているような,されていないような,そういう国立大学とはすごく違う立ち位置にあります。公立大学というのは大きいところから小さいところから,単科大学が多いのですけれども,そういういろいろなことがあって,公立大学協会長をやっていましたが,構成員の意見がなかなかまとまらず,認証評価のことばかり1年間議論してきました。公立大学協会の中で,こういうことをもう少し議論して検討しようというセンターを作りました。認証評価とかそういうことを自分たちのピアレビューでどこまでできるかということです。
 先ほどどなたかから,フォローアップがなかなかできていないと御発言がありましたが,私もできていないと思います。とても,この三つ,四つの国が認めた評価機関で,そのようなことまではできないということです。そうすると,大学側でそういうことができないかと思います。
 やはり認証評価の一番の目的は,自分の大学をどう改革していくのか,あるいは教育システムをどうしていくのかです。それがアドバイスとして受けられることが,やはり当然です。ヨーロッパでは,そういうことが大変進んでいます。でも,正直,我々1年間議論してきた中では,やはり,そこができていない。では,公立大学協会で,そういうことをやろうということになりました。
 私が実は会長をやっていますので,新しい認証評価機関を作ると宣言したのですけど,それはおろして,センターというのを作りました。今,少しずつ活動を始めています。もし機会ができたら佐々木部会長にヒアリングしていただけないかと思います。最後はお願いで申し訳ないのですけど,今,私の課題認識です。

【佐々木部会長】  私も,実は奥野委員から公立大学協会のお話が聞けないかと思っていました。次回にでも,その御経験をプレゼンしていただけませんか。奥野委員でなくても,お話のセンターで実際に議論をなさっている方からでもよろしいのですが。

【奥野委員】  もし機会を頂けるのであれば,我々が1年少し検討してきたことを紹介できたら有り難いと思います。お願いします。

【佐々木部会長】  私が漏れ聞いている限りでは,本日提示された幾つかの論点に関係してくると思いますので,事務局と相談をして実現していただくようにお願いいたします。

【島田委員】  評価制度をどうしていくかについて,まず,これが初期の段階なのか,これを永遠に続けるかというのが多分あると思います。最初作ったときにも我々が大学分科会の中で議論したのは,まず基準が,評価組織が何個かあったときに,同じ基準ですかと,それは違いますという話があって,本当にそれでいいのかと思いました。評価組織自体の評価も必要になります。この評価制度が本当にずっと機能するためにどうするかがあるわけです。先ほど言われたように,これは,基本的には,民間でいったらSRに近い話です。SRは基本的に民間が自主的に全てを公表しながらやっていって,やらないところもあるのですけど,ある意味でいえば,最後は国民の目に見えるようにしてしまって,そこで評価を受けているわけです。
 だから,大学も,ある意味でいったら,そっち方向に,いずれは進まなければいけない。情報公開のところと一緒ですけど,いかに自分たちがこれをやりたくて,こうやって成果がこうなのだということを,自らが評価して出していく。それを今は国民が見られないから評価基準の機関が見て,その評価の大学の仕方はおかしい云々(うんぬん)だったら,まだ分かる。そのように順番に,そろそろ第2段階に変えていかなければならない。
 先ほど私が言ったのと違いますが,同じ基準にすること自身もおかしいのかもしれない。だから,評価基準なり機関を第2段階に進めるにあたり,まだ初期だというのであれば固めていかなければいけないし,もうそろそろ第2段階でいきましょうということであれば,しっかりやらないといけない。でも,50年続ける話ではなくて,もう大学自治の中でそれぞれの大学がやる。それを受験生なり国民が評価する世界に持っていかなければいけないので,そっちへ移すためにどうするという議論も,いずれは必要になるのではないかと思っています。
 以上です。

【美馬委員】  2点あります。まず1点目は,今回,評価の効率化です。私は,受ける側でしかあったことがないので,評価の効率化が進むことは,とてもうれしいことです。ただ,それが,この本日出てきたデータを見ると,社会からの理解と支持が得られていないということがあったので。
 そうすると,一つは,この評価をした結果を社会に対してアピールするのは大学の責任だけかということです。つまり,評価機関が,これは,自分たちがこれだけの労力を掛けて評価したのであれば,ここはいい大学であるということがはっきりと分かるような,そういう社会に対してのアピールは評価機関の方にも必要ではないかということです。そういうことが出てくれば,また受ける側にとっても,やる気が出てくるということもあります。それから評価は,単に評価の目的です。合否を出すだけではなくて,評価というのは,ある意味のフィードバックであるので,そのフォローアップの機能をもう少し高めていただければと思います。どちらかというと,いい悪いだけではなくて,外部のコンサルティングのような仕組みです。大学自らそこを改革しなさいといっても,なかなか状況は,分かりませんので,ペナルティーを与えるだけではなくて,いい方向にもつなげていくというのが1点目です。
 それと関係して,2点目ですが,大学の特色,一律の項目ではなくと島田委員もおっしゃっていましたが,項目だけではなく,その大学の特色が出るようなというところでは,一つはステークホルダーとしての入り口のところです。高校生や,その保護者や,進路指導の教員に,その評価結果が分かるような形で示す。また,短大も含めて,いろいろな大学の多様性というのを国としては保証していく必要があるので,例えば学生の伸び率,高校修了時にどれぐらいのレベルの学生が入ってきて,その後短大なり,ある大学に通ったら,どれくらい伸びて社会に出ていくのかというような,出口の方で分かるように。先ほど卒業生の話もありました。そういうところも含めて,一律の項目ではなくて,伸び率が分かるような,そして,それが社会に対してアピールできるようなことを,大学だけではなくて,その評価機関にも是非とも考えていただきたいということです。
 以上です。

【佐々木部会長】  この問題の審議は,本日はここまでにいたしたいと思います。この後,事務局と相談して論点整理をした上で,再度,御議論を頂く機会を設けたいと考えます。

(2)文部科学省から,大学の質保証の充実(大学設置基準等の論点)について,資料3に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【佐々木部会長】  ここまでの議論と関わる部分が多いのですが,大学設置基準等について,大学の質保証,大学教育の質保証という観点からどんな点が問題になるのか,なぜ検討を要するかという点について,御議論を頂きたいと思います。

【白井大学振興課課長補佐】  資料3大学設置基準等に関する論点という資料を御覧いただきたいと存じます。
 大学設置基準に関しまして,これまでもいろいろなところで御議論を頂いてきたところでございますけれども,当面検討が必要な論点と,それから中長期的に考えていく事項ということに分けて,ここでは提示をさせていただいております。本日は議論の論点の頭出しをさせていただくとともに,今,中央教育審議会においても,いろいろな部会で設置基準に関する御議論が行われておりますので,全体像を委員に把握していただければと思っております。
 初めに1番の当面検討が必要な論点でございますけれども,この2月に取りまとめられました大学設置認可の在り方の見直しに関する検討会の報告でも大学設置基準の明確化であるとか一覧性の向上が必要であるという御指摘を頂いております。
 具体的には,例えばサテライト・キャンパス,別地キャンパス,教員の専任性に関する要件のところ,あるいは大学院大学の校地校舎に関する基準が現在ないといったような問題が指摘されてございます。
 本日この部会では,まず初めにサテライト・キャンパス,別地キャンパスの問題につきまして,また次の資料で御説明をさせていただきたいと存じます。大学の問題については,大学院部会での御審議をお願いしたいと思っております。
 2点目でございますけれども,学修の実質化,単位の実質化に関する問題としまして,そもそも単位の在り方,また学修時間との関係をどのようにとらえるのかということがございます。
 例えば今,単位の考え方としましては,講義であるとか,演習であるとか,あるいは実験,実習,実技,卒業論文といったように様々なメルクマールがあって,それぞれに学修時間や単位に必要な学修時間の考え方が示されております。
 ただ,例えば卒業論文などで非常にワークロードが重い場合にも,例えば4単位とか,8単位とか,必ずしも多くない単位が与えられているといったような状況もございまして,それが,例えば4単位であるとか2単位の講義科目と比べて適正なのかどうかといったところについても,少し御議論を頂きたいと思っております。
 あるいは,授業以外の学修の単位認定でございますけれども,資格試験に関するような,例えば英検であるとかTOEICとか,そういったことについても現在,単位の認定が可能になってございます。ただ,例えば英検1級で8単位とか,そういった単位を付与している大学も実際にあるわけでございますけれども,そういったようなやり方が,単位の付与の考えからして,本当に望ましいのかどうか。
 あるいは,他の大学等の単位の認定をする場合,単位互換とする場合に,単位互換協定,事前に結んである場合であればともかく,そうでないような場合に,例えばシラバスであるとか,カリキュラムの確認等を本来であれば適正にするべきでございますけれども,そういったことが十分にされているのかといった課題もあると思っております。
 それから,3点目の論点ですが,グローバル化の推進ということで,こちらは中央教育審議会大学分科会の下に大学のグローバル化に関するワーキング・グループを新たに設置いたしまして,現在御審議を頂いております。この中で設置基準に関する分野といたしましては,外国大学とのジョイント・ディグリーについてです。現在,国内の大学間における共同の学位については,設置基準を改正いたしまして,既に正式に開かれておりますけれども,外国大学とのジョイント・ディグリーをどう認めていくのかといった問題がございます。ここは,外国大学を我が国の学位授与権の中にどのように位置付けるのかという非常に根源的な問題が絡んでいる分野でございます。
 それから,海外のサテライト・キャンパスということもございます。こちら,我が国の大学が海外に展開をしていって,そして,例えば海外,現地の学生を集めたり,あるいは逆に日本の学生を海外の拠点的なところで外国人の学生と一緒に教育を受けさせるとか,様々な使い方ができると存じます。現在,大学設置基準の50条で,外国におけるキャンパスという規定は既に設けられておりますが,これが,また後ほど述べますけれども,収容定員をそこに設定をして,収容定員に応じた校地校舎基準であるとか,専任教員の配置ということを求めておりますので,なかなか大学にとって,非常にハードルとして高いものになってございまして,現在,活用事例としてゼロ件ということになってございます。
 せっかく作った制度でございますけれども,使われていないという状況がございますので,何とか使えるような制度を新しく作っていきたいと考えてございます。
 それから4点目,ガバナンス体制の強化という点でございます。こちらは同じく大学分科会の組織運営部会という部会を作りまして,大学ガバナンス全体を今議論してございます。特に設置基準との関係で考えられるところとしましては,専門的なスタッフを育成しまして,例えばアメリカなどではアドミッション・オフィサーでありますとか,職員であっても非常に高い専門性を持っているスタッフが学長の脇を固めているという状況もございます。こういったことを少し設置基準の中でも考えていけないかということを議論していきたいと思っております。
 次に2番の中長期的な検討課題でございます。川嶋委員や鈴木委員の御提言の中にも一部関連する部分があるかと思いますけれども,現在,大学設置基準については,基本的には組織ごとに収容定員を設定して,それに見合った専任教員数,あるいは校地校舎等のハード面の整備が求められております。ただ,例えば,特に外国大学とのジョイント・ディグリーでありますとか,海外におけるサテライト・キャンパスといったことを考えた場合に,なかなか,この考えだけを適用していくのでは,うまくいかないような部分も出てきております。そういった場合に,学位プログラム,プログラムごとの認可をしていくような新しい基準が作れないのかなといったところがございます。
 ただ,実際に,このプログラムを誰が,どのように,どういった基準で評価していくのかというところについては,さらに難しいハードルが待ち受けていると考えております。
 それから,最後の論点でございますけれども,設置基準の役割の見直しという論点でございます。現在,この大学設置基準については最低基準という位置付けになってございます。最低基準でございますので,当然,各大学は,それよりも上の基準を目指していただきたいと思っておりますけれども,ただ,現実的には,この最低基準にあるはずの設置基準が,一部の大学にとっては最高の基準になっているのではないかというような御指摘もございます。もし必要があれば,例えば目指すべき基準というものを設置基準,最低基準とは別に作るようなこともあり得るのかなと思っています。
 また,それにも関連しますけれども,先ほどの認証評価における基準。認証評価の中でも,法令適合性というものが判断されているわけでございますけれども,この同じ基準で設置認可と認証評価を行うということがどうなのか。これらを本来,別のものとして分けるべきではないかといったようなことが論点としてあろうかと存じます。
 以上が今後,この部会で引き続き御議論いただきたい論点の全体像でございます。
 次のページからスライド資料を入れてございまして,先ほどの論点の最初のところにございましたサテライト・キャンパス,別地キャンパスの件について,まず本日,少し御議論を頂ければと思っています。
 2枚目の1ページでございますけれども,各種キャンパス等の大学設置基準上の要件ということを,まず1ページ目にまとめております。
 現在,いわゆるキャンパスとして,ここでは二つキャンパスがある例を想定しておりますけれども,複数のキャンパスがあれば,現在,それぞれの収容定員に応じた教員組織,また施設,設備を整備することが求められておりますけれども,現行の運用では,それらを全て組織ごと,若しくは大学全体として合算をした運用ということが行われております。
 また,この,いわゆる別地キャンパスというものがございます。キャンパスがあった場合に,そのほかに別にキャンパスを設ける場合です。例えば,ここでキャンパスAを本キャンパスとしますと,別にキャンパスBを設けた場合,これは別地と見ることができるわけでございますけれども,この別地キャンパスの要件としては,専任教員を1人以上配置することが要件として設けられており,それ以上の詳細の要件は必ずしも設けられていないということになってございます。
 このキャンパスAとキャンパスB,それぞれ全体を,この教員数についても,校地校舎基準についても合算をするということができておりますので,結果的に,例えば郊外,あるいは地方に広大なキャンパスを持っていれば,都心部については狭い校地でも大丈夫だという状況が生じているということでございます。そのために,一部の大学においては,郊外に大きな土地を確保して,都心部ではビルのようなキャンパスになっているということも現状,生じているかと思います。
 また,一番右側にありますのがサテライトでの授業,いわゆるサテライト・キャンパスと呼ばれているものでございます。これは,本来は校舎及び附属施設以外の場所での授業,大学のキャンパス以外の場所での授業を可能にしているということでございまして,その場所を通称サテライト・キャンパスと呼んでいるものでございます。
 こちらのサテライト・キャンパスについては,教員組織に関する規定もございませんし,また施設及び設備に関しても非常に緩やかな基準。学生自習室その他の施設,図書等の施設の適切な整備といった程度の基準が設けられているということでございます。
 現在,一つ大きな問題になりますのは,この別地キャンパスとサテライト・キャンパス,これらが外形的に区別するような手段はないというようなことでございます。ある大学は都心部のビルの中にキャンパスを設けていても,それが別地なのか,それともサテライトなのかといったことが,判定する手段がないという状況でございます。
 次の2ページにお進みいただきたいと存じます。この別地キャンパス,サテライト・キャンパスの現状を簡単にまとめたものでございます。大きく分けて,現在二つのタイプがあるかと思っています。
 一つは,本キャンパスと一体的に運用が行われているようなものでございます。本キャンパスがあった上で,例えば,特に社会人,非常に忙しい社会人などを対象にして,駅前などの利便性の高いところで簡易な施設を設けるようなタイプでございます。これらは,例えば社会人学生が,必要な場合には本キャンパスに行って,そこでの図書館を利用したり,あるいは研究室の実験施設を利用したりといったようなことが可能になるわけでございまして,一体的に運用されていると見ることができると思います。
 一体的に運用されておりますので,この別地,若しくはサテライトの施設の方は比較的簡易な場合が多いようでございます。ただ,学位の取得については,必ずしも本キャンパスに行かなくても,ふだんの学修で学位が取得可能になっているということは多いようでございます。
 一方,右側の場合でございますけれども,本キャンパスからかなり距離があるような場合,独立的に運用されているような別地・サテライトといったものもございます。こういった場合に,学生は必ずしも本キャンパスに行く機会は非常に少ない,若しくはないというような状況でございまして,例えば図書館等も,必ずしも別地・サテライトの方にない場合もございますので,郵送で本キャンパスから取り寄せるといったことが行われている場合もあるようでございます。また教員も,そこに専属の教員がかなり手厚く配置されている場合もあれば,かなり遠距離にある本キャンパスから教員が出向いて,一時的に来ているということもあるようでございます。
 別地・サテライトにおける施設というのは,これは本キャンパスから独立しておりますので,比較的充実しているケースが多いようでございますが,一方では,やはり簡易なものもあるという状況でございます。また,この場合でも,別地・サテライトにおける学修のみで学位取得が可能であるというケースもあるようでございます。
 また,この別地・サテライト,非常に多様でございまして,一番下の注意書きにございますけれども,例えば大学コンソーシアム京都というものがございます。大学コンソーシアム京都,京都府内にある大学が何十大学も連合して加盟してございますけれども,こちらが京都駅前にサテライト・キャンパスを持っておりまして,そこでいろいろな大学の授業を,いろいろな大学の学生がとることができるというような事例もございます。
 次の3ページにお進みいただきたいと思います。このキャンパスについて指摘されている論点という資料でございます。
 サテライト・キャンパスでございますけれども,サテライト・キャンパスについては,先ほど最初の資料で見ていただきましたけれども,法令上,必ずしも詳細な規定が設けられてございません。それは良い面と悪い面,両方ございます。必ずしも細かく書いていないがために,利便性の高い場所で社会人の学び直しの機会,社会人にとっての学修機会を作ることができるという一方で,施設が狭かったり,必ずしも十分な施設,設備がないままに教育研究活動が行われているような場合も出ているという状況でございます。
 また,現状ではサテライト・キャンパスにおける学修のみで,本キャンパスの方に行かなくても学位を取得する,要は教育課程全てを終えることはできるようになっているわけでして,そもそもキャンパスの意味合いはどうなのかということも論点となろうと思います。
 それから,先ほど見ていただきました類型の二つ目でございますけれども,本キャンパスからかなり実質的に距離があり,キャンパスにそもそも行って履修をすること,あるいはキャンパスの施設,図書館等を使うことが想定できないような,極めて独立的に運営されているサテライトというものもございます。
 それから,サテライト・キャンパス,これは別地キャンパスの区別もございませんので,それらが学則等で書かれていない場合には,そもそも,その大学がどういったところで教育研究活動を展開しているのか,どういったところにキャンパスを持っているのかといったことが,学生であるとか,あるいは関係者にとって分かりにくいということがございます。
 また,大学も非常に公共性の高い施設でございます。例えば風営法などでは,学校教育法の一条校の近くには,そういった風俗施設等を造ってはいけないということもございまして,警察等の関係者からも,大学の場所をしっかり把握したいというニーズも聞いておるところでございます。
 また,別地キャンパスの関係でございますけれども,先ほど最初の資料で申し上げましたように,現在,収容定員に見合った教員組織,施設,設備といったものが合算の運用が行われるために,地方や郊外に広いキャンパスがあれば,都心の方はビルのようなものでも,非常に狭いものでも教育研究活動を展開することが可能になっているという状況がございます。
 また制度上,別地キャンパスとサテライト・キャンパスを現在,区別することはできないといったところが,こちらの課題として主に指摘されているような論点でございます。
 また,本日の御議論を踏まえまして,今後どういった方向性にするのかについては,また,こちらの部会に御審議をお願いしたいと思っております。
 最後の4ページが,現在のサテライト・キャンパス,また別地キャンパスに関する関係規定を載せてございますので,御参考に御覧いただければと存じます。
 説明は以上でございます。

【佐々木部会長】  大学設置基準等について,サテライト・キャンパスをめぐる問題を中心にして問題点の指摘を頂きましたが,教育の質保証あるいは大学の質保証という観点から,ほかにもいろいろ検討すべき問題はあると思います。本日は,大学の質保証という観点から大学設置基準について検討すべき論点の提示という観点で御発言を頂きたいと思います。

【美馬委員】  サテライト・キャンパス,別地キャンパスについては,設置基準の論点から課題があるということで,当面検討が必要ということでした。中期的なではなくて,当面のというところで課題が提示されたわけですけれども,今回,私が所属しております学術情報委員会で,本日お配りいただいている黄色い冊子の,学修環境充実のための学術情報基盤の整備というところで考えれば,この問題は,実は10年後,20年後,大学がどういう学術情報基盤の下に成り立っているかということで,今ここで提示された大学設置基準何条に合わないからだめだというのではなくて,基準の方が変わっていくべきではないかと思います。
 つまり,MOOCsといった大規模なオンライン化された授業を受けるとか,その中でもネット上で指導を受けられるようになるとか,そもそも学術情報のライブラリーの教材も電子化されて,自宅で見られるようになるとかということが,10年後,20年後,そのような方向に進んでいくのであれば,もう少し中期的なところで考えるのはいかがなものでしょうかという意見でした。

【谷口副部会長】  放送大学は,どのように取り扱っているのですか。今お話があったように,これからインターネットとか,e-ラーニングとか,そういうものがどんどん増えていったときのことと関連して,放送大学は,こういう設置基準に合っている形になっているのですか。

【白井大学振興課課長補佐】  放送大学のような通信制の大学の場合には,また通信制大学の設置基準がございますので,ある意味,オンラインに大変対応したような形になっています。

【濱名委員】  設置審の委員として,いろいろな大学の現地調査に行きましたので,実感としてものすごく問題が大きくなっているということです。設置認可で学科の改組をやるというときにはキャッチができますけれども,別地キャンパスとかサテライト・キャンパスの設置というのは別に許認可事項ではないので,地方のある県にあるはずの大学が,学生数でいうと東京のキャンパスにいる方が多いなどのことがあり得るのです。基本的には,設置認可業務ではないので,設置計画履行状況等調査の対象にならないというようなことを考えていったときに,こういう別地とサテライトの問題点をきちんと整理をしていこうということです。
 ただ他方で,こういった規制をどんどん強化していくと,今度はグローバル化対応で海外に行くときには,既に現在の設置基準の運用では,日本の大学は,一大学も海外で学生を集めて教育ができていないという制約になっているわけです。そこらについては,やはり少し考え方を変えていかなければいけないと思います。
 そういう点では,現在整理していただいている論点でいいと思うのですけれども,そういう現状を,この大学教育部会でもきちんとシェアしていただいて議論した方がいいのではないか。現実とのレリバンスのない状態での議論は,やはり避けた方がいいということです。うまくいっている場合と,うまくいっていない場合についての実例を出していただいた上で考える,議論する方がいいのではないかと思います。その上で決めていただくように,お願いできればと思います。

【金子委員】  やはり,この設置基準の問題は当面,かなり矛盾が起こっているところをどのように直すのかという問題と,長期的にどちらの方向に持っていくのかという問題とあって,長期的に見れば,今の形の外形基準のみの設置基準はかなり問題があることは事実であって,基本的には私は,やはり入りたい学生は非常に多くて,割り当てている時代に,定員という形で学生数を決めて,それに伴う設備を決めるという発想でやってきたと思うのですが,もう,そういう発想がかなり難しくなっている。
 先ほどの前半の議論にありましたように,やはり大学評価の実質化をやるという中で,今まで設置基準が外形的な基準を決めてきたことの機能を代替していくことは,長期的には非常に重要だろうと思います。
 それから,もう一つは,大学通信教育設置基準も,実は,よく見ていますと非常に問題があるところがあって,スクーリングもインターネットでカバーできるようになっていて,全く授業でやっていない大学も,あることはあるのですね。そういった現実に矛盾が生じている部分をどのように考えるかという問題と,やはり長期的には,もう少し大学教科に重点を置くようなシステムにしていくのと,その二つのバランスをとりながら議論していくしかないのではないかと思います。
 当面は,やはり,ここにありますように,幾つか現行基準で矛盾が生じているところは一定,何らかの手当はしなければいけないところはしていくということは事実だろうと思いますけれども,そのときに,あまり精緻(せいち)化の方にばかり行き過ぎるのは大きな問題になるだろうと思います。
 以上です。

【濱名委員】  一つ申し上げ忘れたのですけれども,別地キャンパスの問題というのは,東京への学生の一極集中という問題も同時に進行しているということだと思います。通常,新設の設置認可は,設置の必要性とか,学生確保の見通しなどを確認するのですけれども,別地キャンパスが集中しているのは大都市圏,それも東京が圧倒的だと思うのですけど,その実態は,やはり,きちんと見た方がいい。つまり,申請もしていない状態で別地キャンパスを作ることによって,これはオリンピックで,地方都市はますます戦々恐々ですが,東京にまた一層学生が一極集中するのではないかということです。高等教育の収容力でいうと,コントロールできていない状態の中で東京に学生が集中して,地方でさらに大学の存続が難しくなっていくような状態が生じます。これについても,併せて見ておく必要があるのではないかと思います。

【長谷山委員】  何が問題になっているかというところで少し確認をさせていただきます。
 主に別地キャンパスというよりもサテライト・キャンパスが問題になっているのだろうと思うのですが,要は,誰を対象にして何を教えているかということが検討の基準だと思います。
 最低限のことで言えば,今の基準の真ん中の欄を見ても,実務の経験を有する者を対象としたものであるとか,一部だけ行うとか,十分な施設,それから教員の配置とか記されていて,これでも十分対応できるように見えると思います。問題は,教育が多様化してきて,またグローバル化で教える場所が大学キャンパスに限られていない。そういう方向と,これまでの設置基準をどのように整合させるかということだと思いますので,やはり必要なのは,そのそれぞれの大学が機能分化し,あるいは特色を出していくときに,その理念を示す。その教育理念との整合性の下にサテライト・キャンパスも設置されなければならない。
 それと大学の理念を具体的に示すものは何かというと,やはり学則です。今,そのサテライト・キャンパスその他について学則に載っていないということが,この資料でも指摘されていて,やはり,そこが問題なので,きちんと,どういう理念,どういう内容で,どういう教育をそこで展開しているかを学則に盛り込むという方向の検討も必要であって,必ずしも,設置基準の方を,いろいろと改正する必要はないのではないかと思います。その辺りが整理されないと,角を矯めて牛を殺すようなことになっても困りますので,そういう方向の検討をお願いできればと思っています。
 それからもう一つ,これは感想ですけれども,確かにMOOCs等,今は大規模に発展していますけれども,あれは基本的には単位の取得や,学位とはリンクしていないので,eラーニングとは全く質的に違うものです。eラーニングは,基本的に在籍する学生に対して単位を与えていく中での方法論の問題ですから。
 もう一つは,キャンパスは今後ますます整備されて,主体的な学びの場にふさわしいものになっていく。これは恐らくラーニングコモンズ等の発想がそうだと思いますけれども,遠隔の授業が増えれば増えるほど,学生はふだんキャンパスに来なくなりますが,だからこそ,たまにやってくるキャンパスというのは,相当充実して学生にとって魅力がないと,その機能を果たさなくなると私は思っています。
 施設が美しいとか充実しているとか,もちろんそれもあるのですけれども,教員とのフェース・トゥー・フェースの接触が非常に重要で,そういった少人数で教員と学生がともに学び合う,教え合うような形の学習が,キャンパスに行けば十分にできることが必要です。ですから,eラーニングが普及しても,最後はキャンパスに行きたいというような,そうしたモチベーションを学生が持ち得るようなキャンパスにしていかなければならない。
 そういう意味でも,学則にきちんと理念が示されたサテライト・キャンパスでなければ,これは認め難い。箱物にただ詰め込んで教育を行うという,サテライト・キャンパスはあってはならないと私は思います。
 ただ,専門職教育のようなものや実務者,社会人の経験は,やはり交通至便なサテライト・キャンパスが必要ですから,ここでも評価基準というか,認定基準の多様性というきめ細かさが必要だと思います。
 それをやるには,やはり濱名委員がおっしゃったように,もう少し実態がどうなっているかということを,是非,事務局の方でもお調べいただいて,お示しいただかないと,なかなか多様な議論ができないのではないかというので,これはお願いも兼ねてでございます。

【金子委員】  重ねて,すいません。今のお話にもつながるのですが,先ほど中長期的な問題と短期的に対応しなければいけない問題も区別するということでしたが,もう一つ,実は多分,一番根幹にあるのは,今,制度としては全体的に認証評価に重点を移そうという時期にあるわけですが,認証評価の際の判断の基準というのが,実は今,設置基準そのままになっているわけです。
 設置基準を議論しているときに,認証評価の基準を議論しているのか,それとも設置基準そのものを議論していて,それが,その設置後も遵守されているのかどうかという形で議論するのか,あるいは認証評価の基準自体に,外形基準だけのみに頼らない,もう少し機能的な基準のようなものを,なるべく共通に分かりやすい形で組み込むことができるのかという,私は二つ選択があるのではないかと思います。
 やはり,長期的には認証評価基準自体に,例えばサテライト・キャンパスの質的な管理をするときに,それはどういう意図で,どういう目的を果たすために設置されていなければいけないという観点を組み合わせられていなければいけないと思います。あるいはインターネットを使う場合には,どういう点に着目するとかですね。必ずしも外形基準で表せない内容のものの視点として,認証評価の根拠の中に組み込むということが多分,原始的には当面必要になってくるのではないかと思います。
 以上です。

【川嶋委員】  設置基準については資料1にメモを書かせていただきましたけれども,それに加えて,今の議論を聞いていて,結局,現状の設置基準に対して様々な問題点が生じているということで,当面対応するものと中長期的に対応する課題という形で整理していただいているのですが,別の言い方をすると,これまでも,新しい課題が生じるたびに設置基準を変えてきたために,設置基準そのものの体系がものすごく複雑で,矛盾も来すような状況になってきているのだろうと思います。
 ですから,確かに当面の問題と中長期的な問題,分けて整理する方が議論はやりやすいのかもしれませんけれども,いわばモグラたたき的に対応を考えていくと,さらにまた設置基準そのものが矛盾をきたしたり,非常に複雑になったりするおそれがあるのではないかと懸念しています。
 ですから,やはり大学や,あるいは日本の高等教育が,今後,30年,50年後どうなるかという長期ビジョン,構想力をきちんと持った上で,それを前提として設置基準の在り方,認証評価の在り方も考えていかないと,結局また10年後,20年後に,新しい大学の形が出てきたときに,同じような対応をせざるを得ないのではないかと思います。
 ですから,やはり前期の大学分科会でも,大学が非常に多様化しているので,大学とは何かを改めて検討する必要があるということまでは議論になったのですが,では,大学は今後どうなるのかという大学像は残念ながら必ずしも明確に議論してこなかったのです。
 ですから,そういう意味で,やはり,もう少し中長期的に大学や高等教育観が今後どう変わっていくのかということをきちんと議論した上で,当面の課題に対しても将来矛盾を来さないような形で,先ほどグローバル化ということもございましたから,オンライン,あるいはインターネットを使った教育が,もっと普及していく。そういうことも念頭に入れた上で,当面の課題にどう対応していくかということを,分けるのではなくて,一体的に,相互に関連させながら議論していく必要があると思います。

(3)文部科学省から,大学設置・学校法人審議会の審議事項について,資料4及び5に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【佐々木部会長】  次に,この設置基準に関わって,大学設置・学校法人審査会大学設置分科会での議論を紹介して,今後の検討の素材に加えたいと思います。いわゆる届出制度の課題と見直しについて,分科会で御検討いただいている内容を御説明いただきます。

【今泉大学設置室長】  失礼いたします。それでは,資料4と資料5をまとめて御説明申し上げます。
 資料4の位置付けでございます。これは大学の質保証システムをトータルで考えるべきでございますが,現在その中で,これまでの議論で認証評価と設置基準について御議論いただいたところでございます。このトータルで考えた場合,もちろん設置基準,認証評価だけではなくて,設置認可審査と認可後のアフターケアなども含まれてまいります。議論の役割分担としては,設置基準や認証評価については本部会において御議論いただいております。設置認可審査及び認可後のアフターケア等については,大学設置・学校法人審議会で議論しております。その観点から,トータルで御検討いただくために,御参考までに,現在,大学設置・学校法人分科会でどういう議論がされているのかの紹介をさせていただきたいと思います。
 資料4についてですが,これまで設置認可審査及び認可後のアフターケア等につきましては,本年2月に出されました大学設置認可の在り方の見直しに関する検討会において幾つか,その提言が出されております。
 まず一つ目の早期に実施が期待されている事項については,既に本年度から対処済みで実施されております。具体的には,例えば学生確保の審査基準の明確化及びその審査体制の充実,また全体構想審査の実施,リスクシナリオの確認,そういうことをしております。
 現在,大学設置分科会において議論しておりますのは,2.,3.でございます。
 まず2.でございますが,五つございます。一つが設置基準の明確化。ただ,これについては大学設置分科会ではなくて,今この場で行われました,この大学教育部会において御議論いただいているところでございます。
 学校法人のガバナンス確保については,学校法人分科会において既に御議論いただいているところでございます。
 審査スケジュールの見直しについては,大学設置分科会において既に議論しておりまして,今のところの方向性といたしましては,大学新設案件について,例えば現在行われているのが,前年の3月末申請,10月末認可というものでございます。つまり,7か月間の審査期間,これを見直しいたします方向としては10か月間に,3か月間の延長をいたしまして,なおかつ新設校の学生募集の観点を考えまして,2か月間,認可時期を前倒しする。具体的には,その申請時期が開設年度の前々年の10月末申請,認可が前年の8月末認可,この方向で検討を進めているところでございます。
 続きまして,申請書類の作成方法の明確化及び財産確保の徹底。この2点につきましては,学校法人分科会において検討を進めているところでございます。
 そしてさらに,報告書の中にはございませんでしたが,併せて検討しているのが,この届出制度の見直しについてでございます。これについては,資料5について後ほど詳しく説明させていただきます。
 さらにおめくりいただきまして,3.でございますが,この検討に併せまして,さらに行っているものがございます。大きく3点ございます。
 一つ目は,この認可後の事後チェック機能の強化を含む,質保証のトータルシステムの確立についてでございます。これについては,先ほど御議論いただきました認証評価及び大学情報の公開等も含めての話になりますが,大学設置分科会においてはアフターケアの在り方についての見直しを行っております。
 具体的には,アフターケアは基本的に設置認可したものについて完成年度までが,その対象期間ではございますが,そうすると,認証評価を受けるまでの期間と空白期間が生じてしまいます。この空白期間の見直しについてです。あと,そのアフターケアについて留意事項が付せられた場合に,どのように認証評価機関にそれを接続していくのか。これについて現在検討を進めているところでございます。
 またアフターケアの委員会については,これまで役割・権限等が明確ではなかった部分がございます。それを明確化すること。さらには,学校教育法15条に勧告,変更命令,閉鎖命令等の文部科学大臣の権限はございますが,それを実行する際には大学設置・学校法人審議会に諮問することになっておりますが,ここの取扱いが明確ではないので,そこの明確化,これを行っていきたいと考えておりまして,そういう御議論を頂いているところでございます。
 さらに,先ほど御議論の中にもありましたけれども,認証評価において不適切な事例が生じた場合,例えばこれが私学の法人経営の場合においては,学校法人運営調査委員というものがございまして,それが機能しております。ただ,教学面については,実は,そういう私学の学校法人運営調査委員のような委員会で,現在,機能しているものがございませんので,例えば制度上,既にございますが,視学委員の制度というものがございます。これは文部科学省設置法施行規則の中に書かれているものでございますが,この視学委員の制度を活用することでいかがかということを現在検討しているところでございます。
 さらに,(2)でございますが,例えば,この大学の閉鎖等の場合の学生保護の仕組みなどの退出の制度設計については,学校法人分科会において既に御議論され,さらに先日,大学分科会においても御議論いただいたものでございます。
 最後に,情報公開の一層の促進として大学ポートレートの検討があり,これも大学ポートレート準備委員会において検討中。これが質保証システムのトータルシステムとして考えているものでございます。
 さらにローマ数字の3.でございますが,これは本年度行いました設置認可審査の過程を通じて出た諸課題についてでございます。
 特にこのうち(2)については,この大学教育部会とも関連するので,紹介させていただきたいと思います。
 ただ,先ほど長谷山委員からありました現状の設置基準の問題点として,実態を示すことと関わりあるところでございますので,今日は,ざっと項目だけ紹介させていただきたいと思います。
 例えばキャップ制に係る問題,ナンバリングに係る問題,学位名称の通用性に係る問題,シラバスに関する問題,ここら辺のことが,設置認可審査の過程で幾つか課題が見つかっております。これは先ほど御指摘いただいたとおり,次回に向けて,その困った実態というものを改めて御紹介させていただきたいと思います。
 続いて,資料5の届出設置制度の見直しについてでございます。この関係については既に大学設置分科会におきまして8月15日,9月11日に議論いたしまして,大体,大学設置分科会としてはこの方向でいかがかということを決定しておりまして,それを今回,この案件については決して大学設置分科会だけで決められることではなくて,この大学教育部会におきましても御検討いただく必要がありますので,御紹介させていただきます。
 現在どういうことが実態として行われているかと申しますと,この届出制度を通じて,例えば学際領域については,既設組織の教員の半数以上,そういうふうに既設の教育リソースが半数以上残っている場合には,既存の組織では授与していなかった学位を含む学部が設置できる形になっています。
 具体的には,例えば法学部がございます。それを改組して,例えば政治経済学部というものを作る。それは,そのためには法学部の先生が,そのまま半数以上残っている。そうすると,法学の学位と経済学の学位が出せるようになる。それが例えば,さらにもう一つ届出を経ると,経済学部ができてしまう。つまり,この法学部と経済学部が一旦できた上で,さらに経済学部のリソースを半数以上残せば,経済学部というものができてしまう。本来であれば,法学部から経済学部に移るのであれば認可の審査が必要になりますが,実は届出を複数回経ると,認可を経ずとも組織改編が可能になってしまうということです。そういう,いわゆる抜け道的なことができる仕組みになっております。
 そういう実態がございますので,そういうものの改善としては二つ方策があるのですが,一つが,この1ページ目の学際分野の取扱いについてでございます。ただいま申したような形の課題がありますので,現在考えておりますのは三つ,この学際分野の取扱いでございます。
 一つは,学際分野についても,構成分野が複数にまたがっていても,主たる分野が存在する,明確である部分がございます。そういう場合には,ほかの分野の要素があったとしても,複合分野として取り扱うのではなくて,主たる分野の学位を授与するものとして取り扱うことにしてはどうかということが検討されているところでございます。
 二つ目の方法としては,学際分野であって,構成分野が複数にまたがっていて,それぞれの分野が特定できる。ただ,○1とは違って,主たる分野がどちらかということは言うことができない。そういう場合には複合分野として取り扱うけれども,ただ,大学全体としての学位分野が増える場合には,届出ではなくて認可審査を経ることとします。こういうことを考えております。
 さらに,今申した○1,○2のケースとは異なって,学際分野であって構成分野が特定できないような場合,こういう場合には基本的に認可審査を経ることとする取扱いにしたいと考えております。
 そして,そういうような場合であったとしても,例えば,ある学科から学部への改組とか,又は教員組織の実質的な変更を伴わない組織改編,こういうものがあった場合には,既存組織を廃止する計画であるとか,又は,専任教員の2分の1以上がもともとの組織から移行する計画である,こういう場合には,構成分野が特定できないような学際分野であったとしても,その届出を認めるということです。こういう三つの方策を,この学際分野の取扱いについては考えているところでございます。
 1枚おめくりいただきまして,もう一つの方法はどういうのかと申しますと,もう一つの課題として,例えば保健衛生学という学位の分野がございます。この保健衛生学の学位の分野の中には,例えば看護関係とか,リハビリテーション関係とか,柔道整復とか,鍼灸とか,あと歯科医療関係,こういうものが全て,この保健衛生学関係というものの中に含まれております。ただ,先生方御存じのとおりでございまして,看護学とリハビリテーションが同じ学位の分野に含まれているので,例えば看護学部を持っているものがリハビリテーション学部に替わったとした場合,その基本的にカリキュラムの中身も,またそれを担当する教員もがらっと変わるにも関わらず,これも届出で,学位の分野が変わらないということで届出設置が可能になっております。
 今申したとおり,カリキュラムも,教員に求められる専門性も相当程度明確であって,互換性があまり高くないものについて,果たしてこういうことをしていいのかどうかということは,やはり,ございます。それは,本来この設置認可審査で行うことの趣旨を逸脱している部分があるのではないか。このような大くくりになっている学位の種類についてはもう少し,特に明確にしていいのではないか。特に目的養成分野ですが,どういう人材を育成するのか明確であって,そこにおけるカリキュラム,教員の専門性が明確になる部分については,もう少し区分けを細分化してはどうかというのが,この見直し案でございます。
 以上でございます。それが具体的に見直しの対象となる関係法令については,平成15年の文部科学省告示,「学位の種類及び分野の変更等に関する基準」でございます。そこの見直しについては,この中央教育審議会の審議事項でございますので,皆様に御議論いただければと思います。
 以上でございます。

【谷口副部会長】  これは,スピード感としてはどれぐらいでしょうか。資料5を見ますと,緊急というか,かなり急ぐということも含まれています。いろいろな課題をおっしゃっていただきましたけど,これらは来年に間に合わせるようにということなのか,もう少し余裕があるのか,その辺のタイムスケジュールを教えていただくと有り難いです。

【今泉大学設置室長】  本年2月に出されました設置認可審査の在り方検討会において工程表が作られまして,決してそれに縛られる必要は毛頭ないものではございますが,ただ目標としては,本年中に,この検討を行って,来年度から実施ということで考えるものでございます。

【谷口副部会長】  今年度中でしょうか。

【今泉大学設置室長】  一応,その中では,本年中に検討を進めるとしております。いろいろな準備もありますし,大学等への周知も必要となってまいりますので,そのようになっています。
 ただ一つ,審査スケジュールに関してでございますが,これについては大学設置分科会で議論していたところについては,平成28年度案件から実施ができないかということで御議論いただいているところでございます。

【濱名委員】  状況は,本当に急がなければならないと思うので,急いで議論した方がいいと思います。一つ,先ほどの資料4の3ページの一番下のところに,今後の設置分科会と大学教育部会において検討の中にちらっと出てくるのですけど,根本的には,目的養成分野もさることながら,学位の括弧書きの多様性の話は,大学教育部会でこれまでも取り上げてきた話だと思いますので,そこを触らないと,次から次に意味の通りにくい学位に付記する名称が,今でも増え続けているわけです。
 目的養成の分野をコントロールして,もう少し整理するというのは結構ですけれども,そこまで視野に入れて議論しないと,結局は,学生募集が厳しくなってくると,新しい世界中に一つしかない学位の名称がどんどん増えていくということになりかねません。やはり,この届出制度の問題が大きな元凶になっていると思いますので,そこも視野に入れて検討するべきではないかと思います。

【金子委員】  これは長期的な問題に入るのかもしれませんけど,収容定員というのは何なのでしょうか。設置基準で定員を設定することに意味があるのでしょうか。
 収容定員を英語で何と言うのかと聞かれると非常に困るのですけど,スタンダードな学生数なのか,あるいはキャパシティーなのか。キャパシティーだと,それ以上入れることはあり得ないわけですけれども,日本の私立大学は,かなりの大学が2割程度までは超過して入れているわけで,それに関しては私学経常費補助金でもってある程度コントロールはしているわけですけれども,法令上でほとんど,それを監視するということはやっていないわけです。
 設置基準の後の遵守の監視体制についても,もしそういう制度を作るとすれば,定員の遵守をどう捉えるのかということは,やはり大きな問題になってこざるを得ないだろうと思います。
 認証評価の場合には,外形的な基準による必要は必ずしもないので,これぐらいが標準だと設定して判断することはあり得ると思いますが,設置基準が,もし設置後も遵守されなければいけないものだと考えて,それを守る体制を作るのであれば,定員をどのように考えるかということは,やはり,これは放っておかないといいますか,制度的にも,整合性からいっても,少しまずいのではないかと思うのですが,これをどの程度,どのようなところで議論するのかというのは問題だと思います。
 私は全然,どうしたらいいかについてはすぐには分からないのですけど,一応,問題としては,視野に入れておかなければいけなくなってきているのではないかと思います。

【今泉大学設置室長】  資料3の2.の一つ目の○と重なる話で,まさに今後,本大学教育部会において御議論いただく話かと思っております。

【佐々木部会長】  それでは,今後,事務局と協議して論点を整理しながら順序よく議論を重ねたいと思います。

(4)文部科学省から,短期大学の機能の充実について,資料6に基づき説明があった。

【田頭大学振興課課長補佐】  資料6に沿って御説明させていただきたいと思います。大学教育部会短期大学ワーキング・グループの設置についての御審議を頂きたいと思います。
 昨年の8月28日,中央教育審議会の答申におきまして,短期大学士課程についての機能をどのように再構築するべきかにつきましては速やかに審議を開始するということで,この第7期の中央教育審議会大学教育部会において審議をするところとなっております。
 短期大学の現状,それから短期大学教育の強み,あるいは弱みと言われるような部分,社会からの期待など,4年制大学のそれとは違いもございます短期大学の機能の在り方ですとか教育の在り方につきましては,実情のきめ細かい吟味が必要であると思われます。
 審議に当たりましては,直ちに大学教育部会の場で審議を頂くという前に,まずは短期大学の現状に特に詳しい有識者,短期大学の役割となっております職業教育,地域振興,あるいは地域人材育成等の専門家の方々から多角的な意見を有効に頂き,それをまた引用いたしまして,大学教育部会での審議の充実を図れるように,当部会の下に有識者によるワーキング・グループを設置し,短期大学教育の機能の再構築に係る議論の一定の方向性をまとめようとするものでございます。
 ワーキング・グループの審議事項といたしましては,1番に示しておりますように,短期大学の機能の在り方について,それから短期大学の教育の在り方についてで,もう一つ,その他短期大学について審議すべき事項についてということで御審議いただきたいと思います。
 ワーキング・グループの委員につきましては部会の下に設置いたしますが,短期大学教育に御精通の学識経験者,人材養成に関しての産業界,地域社会人材,入学情報,就職情報等について現場に近く論じられる有識者の方々,それから短期大学関係者にもお集まりいただきまして,10名程度で構成をいたしたいと考えております。
 ワーキング・グループの設置期間につきましては,こちらに26年3月末までといたしておりますけれども,平成25年度中に4回程度審議を頂きまして,25年度中に一定の方向性をまとめる。大学教育部会におかれましては,このまとめを受けて,平成26年度に審議を実施していただくというような流れで検討しているところでございます。
 また,大学教育部会への報告につきましては,これを審議状況を適宜,大学教育部会へ報告するというような運びを検討しております。
 説明は以上でございます。

【佐々木部会長】  この短期大学の機能強化について,まずワーキング・グループを設置するという提案ですが,これについて御意見あるいは御質問等ございましたら伺います。いかがでしょうか。
 では,この部会の下にワーキング・グループを設置して,そこで,まず検討を重ねていただく。逐次その検討の結果は部会に御報告を頂いた上,部会として最終的な審議を行う。こういうことで進めさせていただいてよろしいでしょうか。

(「はい」の声あり)

【佐々木部会長】  では,そのように進めさせていただきます。
 委員の人選についてでありますが,この設置についての案の中には,座長及び委員は大学教育部会長が指名することになっておりますが,本日は差し当たり,本部会の委員の中から佐藤委員と安部委員に,このワーキング・グループに加わっていただくということを提案させていただきたいと思います。その他の委員につきましては,形の上では私に一任していただいて,事務局及び佐藤委員,安部委員と御相談の上,10名程度の構成を考えたいと思いますが,この点,いかがでしょうか。御承認いただけますか。

(「異議なし」の声あり)

【佐々木部会長】  では,佐藤委員,安部委員,よろしくお願いいたします。
 それでは,本日,用意した案件は以上でございます。
 では,今後の開催日程等について,事務局から御説明願います。

【田中高等教育政策室長】  次回の日程につきましては,認証評価の審議の際に奥野委員からも御提案のございました,公立大学協会の取組の御紹介の場を含めまして調整いたしまして,追って連絡をさせていただきますので,よろしくお願いいたします。

【佐々木部会長】  それでは,本日の部会をこれで終了いたします。どうもありがとうございました。

── 了 ──

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