大学教育部会(第23回) 議事録

1.日時

平成24年12月27日(木曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省東館3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 教育機関相互における単位認定・編入学について
  2. 柔軟なアカデミック・カレンダーの設定について
  3. その他

4.出席者

委員

(部会長)佐々木雄太部会長
(副部会長)黒田壽二副部会長
(委員)金子元久,長尾ひろみ,宮崎緑の各委員
(臨時委員)川嶋太津夫,林勇二郎,吉田文の各臨時委員
(専門委員)荻上紘一,高祖敏明,篠田道夫,鈴木典比古,田中愛治,長束倫夫,納谷廣美,濱名篤,山田礼子の各専門委員

文部科学省

板東高等教育局長,常盤高等教育局審議官,山野高等教育局審議官,浅田高等教育企画課長,池田大学振興課長,田中高等教育政策室長,白井大学振興課課長補佐 他

オブザーバー

井上英明(厚生労働省厚生労働省職業能力開発局能力開発課課長補佐)
角修二(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構公共職業訓練部大学校課調査役)
宇佐美明伸(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構公共職業訓練部大学校課課長補佐)

5.議事録

(1)教育機関相互における単位認定・編入学について,文部科学省及び厚生労働省から資料1-1,1-2及び1-3に基づいて説明があり,その後,意見交換が行われた。

【佐々木部会長】  本日は,前回御議論いただきました,教育機関相互における単位認定及び編入学,そしてもう一つは柔軟なアカデミック・カレンダーの設定について,改めて大学分科会での審議を踏まえて御審議をいただくという予定で用意をしております。
 まず初めに,教育機関相互における単位認定及び編入学について御審議をいただくことにいたします。この件については御記憶が新しいことと思いますが,前回の本部会で職業能力開発大学校及び短期大学校について御提案がありました。この問題は,そもそも大学における教育水準をどのように考えるかという問題に関わり,また,単位認定は編入学に密接に関係してくるということから,一度,大学分科会で基本的な考え方を整理すべきであろう,その上で,本部会として具体的な事案ごとに審議を行うのが適当であろうということとして,大学分科会に審議をお願いしました。
 11月27日に開催された大学分科会で,大筋,単位認定については拡大していくという方向性が了解されたと思います。ただ,これを編入学に結びつけることについては,大学分科会としても引き続き審議していくということになりました。したがって本日は,職業能力開発大学校及び短期大学校における学修の単位認定に限って,御審議をいただきます。

【池田大学振興課長】  これまでの経緯については先ほど部会長から御説明のありましたとおりですが,前回の大学教育部会では,限られた時間の中で,各省の所管の大学校などについて,必ずしも十分整理した資料を出せませんでしたので,本日改めて全体を整理してまいりましたので,よろしくお願いいたします。
 この事柄,後ほど具体的に御説明いたしますが,単位認定ということと編入学と,更に大学評価・学位授与機構による課程認定がありまして,それぞれ目的が,多様な学修機会の提供であるとか,教育機関相互の接続,それから学修成果の社会的評価とありますので,ここは必ずしもきちんと整理して御説明できませんでしたので,今日はこのあたりをきちんと整理して御説明させていただきたいと思います。

【白井大学振興課課長補佐】  それでは詳細につきまして,資料に基づきまして説明させていただきたいと思います。初めに今回の資料ですが,資料の2ページをお開きいただければと思いますが,審議のポイントやこれまでの議論についてもう一回整理をさせていただきまして,特に,これまで御議論をいただいた中で出されました論点について,個別に御説明をさせていただきたいと思います。その上で,特区において要望が出ている職業能力開発大学校や,あるいはその他の省庁系大学校の単位認定の扱いについて,御審議をいただければと思っております。
 それでは資料の3ページ,審議のポイントの整理ですが,具体的に4ページにお進みいただきたいと思います。今回の検討事項の背景ですが,社会経済構造が多様化する中で,より多様な学びの場であるとか,あるいは様々な教育機関における多様な履修機会を確保するために,流動性の高い接続の仕組みを構築していくことが必要であると考えているところです。そのためには,いろいろな教育機関における教育機会が確保されるとともに,そのことが評価される仕組み,あるいは接続の円滑化をするために,単位認定であるとか編入学について考えていくことが求められているところです。
 現在,単位認定・編入学については,省庁系大学校であるとか,あるいは高校の専攻科といったことについては,制度の枠の外に出ているという状況です。また,大学から短期大学,専門学校等に転学するようなケースとか,これまでなかなか想定されていなかったような制度についても,教育機関全体を見渡しながら,より流動性の高い接続の仕組みを考えていくことが求められているのではないかということが問題意識です。
 今回ですが,現在特区要望が出されております,職業能力開発大学校・短期大学校をはじめとした省庁系大学校における単位認定・編入学の取扱い,特に単位認定について御審議をいただければと思っております。
 5ページにお進みください。これまでの御議論の中で,単位認定,編入学,あるいは大学評価・学位授与機構における課程認定という,様々な言葉が出ておりまして,若干議論が整理し切れていない部分がありました。
 単位認定についてですが,これは二つの側面があります。4年制大学の学生が異なる教育施設等に行って,そこで学修したことについて,大学の単位として認められる場合が一つのパターン。それと,もう一方では,他の教育施設に在学している学生が大学に再度入学するような場合に,そこでの学修について既修得単位として認定されるという二つのパターンがあります。
 前者の場合については,大学生がより多様な学修機会を確保することができるという面,後者の場合には教育機関相互の接続という面があります。例えば省庁系大学校の学生が大学に再度入学されるような場合に,現状であればそこでの学修については一切単位として評価されないものが,何がしかの単位であれ認定されるようになるということです。そういう意味では,接続を増すような仕組みになっていくということがあります。この既修得単位の認定を更に推し進めまして,大学の途中年次に修業年限をスキップして入るような制度というのが編入学という制度になるわけです。
 これらと全く別のものとしまして,大学評価・学位授与機構における課程認定という仕組みがあります。これは現在,省庁系大学校,防衛大学校や気象大学校等を対象にしまして,一定の大学設置基準等に適合していると大学評価・学位授与機構が判断した教育施設の課程を終えた場合には,学位を授与するという仕組みでして,もともとの目的としましては,せっかく防衛大学校を卒業したのに学位をもらえないというような状況を解消して,きちんと学修成果を社会的に評価していこうということが制度創設の目的です。
 6ページにお進みいただければと存じます。その上で,今回の検討課題の位置付けです。マトリックスとしてお示しさせていただいておりますが,赤線の部分,特に省庁系大学校において,現在認められていない単位認定・編入学のうち,単位認定について今回御審議をいただければと思っております。それ以外にも,例えば今後の検討課題として,省庁系大学校からの編入学であるとか,あるいは高等学校専攻科と大学との接続の問題とかありますが,今回は,赤線の部分について御審議をいただければと思っております。
 そして,少し先の資料になりますが,一旦23ページの資料を,お手数ですがお開きいただければと存じます。省庁系大学校と申しましても多様なものがありまして,初めに少し全体像を御紹介できればと思っております。
 23ページの資料ですが,ここに挙げておりますものが,大学校と申しましても実は,大学のように名称の専用制限というのもありませんので,例えば各種学校であるとか株式会社等でも「大学校」という名称を使っているケースが多数あります。ここで整理しておりますのは,法律に基づいて国又は独立行政法人等によって設置されている教育施設というもののうち,大学校という位置付けを持っているものということで整理しております。
 主に今,三つのグループに分けることができますが,丸1のグループが,主に高校を卒業者程度を対象にしているものということです。丸2が短期大学卒業程度のもの。そして丸3のグループは,警察大学校等書いておりますが,主に職員・公務員等の研修施設ということでして,特に若干性質の異なるようなものが入っているところです。このうち,赤線で囲んでいる単位認定の部分について,本日は御審議をいただきたいという趣旨です。
 資料の7ページ,8ページにお戻りいただきたいと存じます。これまでの議論の経緯です。これまで,様々な,前回の本部会あるいは大学分科会におきましていろいろな御議論をいただきました。こういった省庁系大学校についての単位認定・編入学を議論するに当たって,主に五つの論点に整理できるかと思っております。1点目が,単位認定を認める意義についてです。一体どのような意義があるのか。単位認定を認めることによって編入学につながるのではないかというような御懸念もいただきました。また,一方では多様な学修を認めるべきだという観点の御意見もいただきました。
 それから2点目ですが,単位認定・編入学の関連です。特に編入学については慎重な御意見をいただいておりまして,編入学を視野に入れるのであれば,設置基準等の適合性であるとか質保証についてもしっかりと考えておくべきでないかといった御意見が多くありました。
 それから3点目ですが,こういった省庁系大学校の中には,職業能力開発大学校のように,単位制ではなくて,専門学校と同じように授業時間制を採用しているケースもあります。そういった場合にはどのように単位認定を行っていくのかとか,あるいはそこでの学修については,大学と同じような主体的学びという部分は必ずしも入っていないのではないかというような御懸念がありました。
 それから4点目ですが,省庁系大学校と大学との接続全体についてですが,省庁系大学校の全体像がなかなかはっきりしないのではないか。仮に職業能力開発大学校について単位認定を認める場合には,ほかへの波及といいますか,影響はどうなるのかといったような御質問もいただいております。
 それから5点目ですが,先ほども御説明いたしました,大学評価・学位授与機構における課程認定の仕組みを,まず単位認定・編入学を考える前に使ってはどうかというような御意見もいただいておりました。
 これ以後の資料について,それぞれの論点について御説明をさせていただければと思っておりますが,9ページの方で,前回の大学分科会における審議の結果をまとめております。先ほど部会長からも御紹介をいただきましたが,大学分科会における議論の結果を簡単にまとめております。単位認定については基本的に拡充していく方向ということで,一応御審議をいただいております。その際には,特に自大学以外の教育施設における学修の場合,例えば省庁系大学校もこれに相当するわけですが,少なくとも高校卒業者あるいは同程度の学力を有した者を対象にしていることが条件ではないか。また,大学であるとか,あるいは既に単位認定が認められているほかの教育施設,具体的には短期大学,高等専門学校,専門学校になりますが,それらと同水準の学修であるということについて,教員組織,教育課程,施設設備等の面から判断していったらどうかという御議論をいただいております。一方で編入学については,学校教育体系全体に関わることから,より慎重な議論を引き続き行っていこうということです。
 今回の大学教育部会では,こういった留意点を踏まえながら,省庁系大学校における単位認定,特に職業能力開発大学校・短期大学校についての単位認定について御審議をいただければと思っております。
 それで,11ページ,12ページが単位認定を認める意義についてです。12ページのところが,先ほどの単位認定の二つの意義のパターンをまとめたものです。意義の1というのが,大学生が他の教育施設に行く場合,意義の2というのが,他の教育施設から大学に再入学する場合の既修得単位の認定ということです。仮に編入学を認められますと,意義の2ダッシュとしておりますが,途中年次に編入することができるようになるということです。
 続いて13ページにお進みいただきたいと思いますが,単位認定の対象として認められている学修について,13ページで整理をしております。現在,主に三つのパターンに分けることができますが,一つのパターンが,自分の大学以外の教育施設における学修ということでして,短期大学,高等専門学校,大学専攻科あるいは専門学校における学修等が対象になっています。それから2番が,大学における法定講習,教員免許の認定講習等のグループです。それから3番が資格試験に関する学修ということで,TOEFLE,TOEICあるいは英検,漢字検定といったものの学修についても,単位認定として広く認められているという状況です。
 なお,これらについては,この中で緑色の網かけをしている部分がありますが,大学が大学教育相当水準と認めたものというのが,これらの緑色の網かけグループの要件としてここには課されております。と申しますのは,これらについては,必ずしも全てが大学教育相当とは限らないということもありますので,各大学において,あくまで大学教育相当水準と認めたものに限って単位認定を開いていくということになります。
 また,当然ですが,各大学では自らの教育課程に照らして,そういった学修について単位認定として自らの単位と振りかえることができるのかといった判断もありますので,これらについては二重の,大学におけるスクリーニングがかかっているということになろうかと思います。
 14ページにお進みください。審議会における関係の答申です。単位認定の関係のものを抜粋したものですが,もともと単位認定の制度につきましては,大学以外の教育施設の単位を認める制度につきましては,平成3年の中教審答申を踏まえて創設された制度です。そのときの考え方としましては,一定水準のものはきちんと告示等で担保しながらも,できる限り広く,大学の主体的な責任においていろいろな学修を評価していこうというのが,基本的な考え方に立っているところです。
 15ページにお進みいただければと思います。単位認定と編入学の関係性,要件についてです。16ページは先ほどの資料の再掲ですので飛ばさせていただきまして,17ページを御覧いただければと思います。単位認定と編入学について比較表にしております。それぞれの目的ですが,単位認定については主に多様な学修機会の確保につなげるもの,編入学は他の学校種の途中年次への入学を可能にするという制度です。法令上は大変大きな位置付けの差異がありまして,単位認定については,文部科学大臣の判断で,告示で決めることができるという一方で,編入学については,学校教育法で決められております修業年限を短縮するということですので,特に法律で定める事項という扱いになっております。
 下のところの図を御覧いただければと思いますが,単位認定については基本的には,個別の授業科目のパーツ,パーツの判断ということでして,パーツについて大学が認められるものがあれば,それを単位として取り込んでいくというような考え方に立つものです。一方で編入学については,大学の例えば3年次にぽこんと入ってくるわけですので,一定の組織的・体系的な学修をきちんと終えているということが大前提になっているということです。それゆえこれらの学修については,まず組織的・体系的な学修であって,かつそれが大学教育相当のものであるということが前提になるということです。
 18ページにお進みいただければと思います。単位認定・編入学についての検討のアプローチです。これまでの御議論の中で,編入学について,今回の特区の要望においても編入学を求める要望になっておりまして,編入学を最初から議論してはどうかというような御意見も承っております。これについては二つの方向性がありまして,一つは短期大学・高等専門学校のように,当初から制度設計としまして,大学相当教育を行う機関として位置付けられているものがあります。これらについては,編入学が認められている以上,単位認定については当然の前提ということで認められているというところです。一方で,専門学校のように,先に単位認定の制度が開かれて,それから一定の条件を満たしたものについて編入学が認められてくるというようなパターンのものもあります。今回御議論いただく省庁系大学校であるとか,あるいは今後御議論いただく高校専攻科については,二つ目のパターン,どちらかといいますと,実態に照らして大学相当の教育が行われていると認められた場合には道を開いていくというアプローチにしていくと考えております。
 19ページにお進みいただければと思います。ただいま御説明したことのデータとしての資料ですが,短期大学・高等専門学校については当初から編入学が認められていた一方で,専門学校については制度自体は昭和50年につくられましたが,編入学が開かれたのは平成10年ということになっております。その際にも,専門学校全体からの編入学ということではなくて,一定の要件を満たす専門学校からの編入学ということになっております。
 また,専門学校について平成3年に単位認定の制度が開かれまして,それから大学審議会において足がけ6年にわたっての議論が行われた上で,平成10年に学校教育法が改正されまして,初めて編入学が制度的に認められたというような経緯をたどっておるところです。
 続いて20ページ,21ページが,単位制でない学修の単位認定についてという論点です。これについても,これまでの議論の中で,授業時間制をとっている場合にはどのように単位として評価をしていくのかということについて御質問をいただいておりました。当然ですが,大学以外の教育施設における学修を単位として認める場合には,適切な単位換算を行うことが大前提となろうと思います。そこで,四角に書いておりますこと,これは委員が御案内のとおりの当たり前のことですが,きちんと,講義であれば1単位当たり15時間の授業が行われていて,かつ,それにプラス30時間の自学自習の部分があるような内容であることを前提に1単位を認めるというやり方について,各単位認定を認める告示,もし今日御承認いただければ告示を改正することになりますが,それを通知する際に各大学には徹底してまいりたいと考えております。また,認証評価機関にも,そういった考えの改正であるということについて伝達をしていきたいと思っております。
 22ページが省庁系大学校と大学の関係についてです。23ページが先ほど御覧いただきました資料ですが,この23ページの資料の上の方の緑の網かけの部分が,現在,防衛大学校から7校ありますが,こちらが大学評価・学位授与機構における課程認定を受けている大学校ということになります。それから,その下の黄色の部分が二つありますが,職業能力開発大学校と,同短期大学校についてが,今回,単位認定について御検討をいただきたい部分です。
 この一覧表を見ていただきますと,おそらく委員の中でも当然御疑問に思われると思いますが,一つが,職業能力開発大学校というのが上の欄の下の方にありますが,課程認定の欄について上からずっと見ていきますと,ずっと丸になっているのがここだけバツになっています。制度的にはここを丸にしていくのが制度的な整合性がとれているのはないかというような御意見があろうかと思います。これについて,後ほど御説明させていただく事情により,現状ではなかなか厳しいという状況があります。
 それからもう一つ今回御議論いただきたいと思っておりますのが,職業能力開発大学校・短期大学校のバツの部分を丸にするということです。単位認定についてのバツの部分を丸にするということです。仮にここだけ丸にした場合,この上の部分,防衛大学校等,課程認定を受けている大学校について,単位認定がバツなのはおかしいのではないかというような御懸念も当然出てこようと思います。この点については私どもとしましては,既に大学評価・学位授与機構においてしっかりと学校教育法や大学設置基準に照らして適合しているという判断を受けている大学校ですので,基本的には丸にする方向で関係省庁と調整を行っていければと考えているところですが,また御意見を賜れればと考えております。
 24ページが,先ほど申し上げました大学評価・学位授与機構における課程認定についてです。
 25ページが単位認定と課程認定を対照表のようにまとめたものです。先ほど申し上げましたが,基本的には,大学以外の教育施設における履修成果を社会的に評価していこうという観点に立つ制度が課程認定ということでして,それ自体が直ちに接続につながるという制度ではありません。
 26ページが,大学評価・学位授与機構における課程認定の仕組みです。大学評価・学位授与機構に置かれた学位審査会において,これは各省庁大学校からの申請ベースということになりますが,申請があった場合には,各教育課程,修了要件,教員組織,施設設備等について大学設置基準等の適合性を審査いただいているところです。具体的な書類を見ていただければイメージがつかめるかと思いますが,設置認可に似たような,詳細についての審査ということになっております。また,原則として5年ごとにレビューを行っているという状況です。この課程認定を受けた課程を修了した方については,大学評価・学位授与機構で審査を行いますが,基本的には学位が授与されるということになります。
 27ページにお進みいただきたいと思います。27ページの上の欄は,先ほど23ページの一覧表の一部を切り出したものです。お気づきの方もいらっしゃったかもしれませんが,厚生労働省所管の大学校の中に三つ,似たような名前の大学校があります。今回特に御議論いただきたいと思っているのが職業能力開発大学校と短期大学校です。いずれもものづくりの技術者の養成を目的とした大学校ですが,それとは別に,非常に似た名前ですが,職業能力開発総合大学校という大学校があります。こちらは,指導員,職業能力開発大学校や短期大学校における教官を養成するための訓練施設ということですが,こちらについては課程認定を受けられています。要は学位が出る機関であるということです。この職業能力開発大学校について,同じように課程認定を受けて,この右の欄を丸にしたらいいのではないかというような御意見もあろうと思いますが,一つに課程認定の目的というのが,基本的には履修成果の評価というところにありますので,それ自体が,先ほどから申し上げているような学修成果の多様化とか,あるいは教育機関間のモビリティーを高めるということに必ずしもそれだけではつながり切れないというのが1点あります。
 それともう一つなのですが,課程認定の要件としまして,大変厳しく大学評価・学位授与機構の方でもいろいろな御指導をされているということです。特に,職業能力開発総合大学校が課程認定を受ける際にも,実技中心の科目体系であったのを,基礎理論みたいな科目も増やしなさいというような指導があったと承っております。そのために,例えば数学であるとか物理学であるとか,工学系の基礎科目となるような部分について教科を充実するとともに,実技の科目を減らして基礎理論の科目に当てているというようなことも聞き及んでいます。
 現在,厚生労働省から承っているところでは,職業能力開発大学校・短期大学校については,あくまで実践的な技術者養成の場として残していきたいということでして,基礎理論よりもむしろ実習中心の教育課程を維持したいというような御意見でして,もしそういった要望があるのだとすると,この課程認定の対象になっていくのはなかなか難しいのではないかというところが実態です。
 続いて28ページからが,今回,特区要望ということで出されておりますものです。29ページがこれまでの経緯です。これも既にお示ししている資料と同じものですが,特区要望ということで,各県,平成15年に熊本・長野県から,平成21年に山形県から,職業能力開発短期大学校から大学への編入学ということへの御要望をいただいております。ただ,先ほど専門学校の経緯でも申し上げましたように,いきなり一足飛びに編入学ということではなくて,まずそこでの学修が本当に大学教育相当なのかどうかということを確認することが必要になりますので,まず単位認定ということで検討して,その上で大学分科会において,編入学については必要とあらば検討していきたいと考えております。
 30ページについては特区要望の詳細でありますとか,これまでの政府の決定の内容を書いたものです。
 31ページが今回,厚生労働省,こちらの大学校を所管されているお立場からの御意見ということですが,厚生労働省としては,大学生と職業能力開発大学校・短期大学校の生徒がお互いに,それぞれに学修の機会を付与することで,双方向で実践的な技術・技能を習得できるように,単位認定ということで御検討いただきたいというような御要望をいただいているところです。
 32ページが,職業能力開発大学校・短期大学校の概要です。また詳細については後ほど厚生労働省から御説明いただくことになっておりますので,ここでは省略させていただきたいと思います。
 33ページですが,大学設置基準等に照らした形での職業能力開発大学校・短期大学校の制度の概要をまとめたものです。基本的には,目的としては労働者が段階的かつ体系的に,職業に必要な技能及び知識を習得する場であるということです。訓練期間としては,普通の大学や短期大学と少し制度が違っておりまして,専門課程2年,応用課程2年というものがありまして,専門課程2年のみをやっているものが短期大学校,両方やっている4年制のものが大学校というようなすみ分けになっているということです。
 授業時間については,専門課程2,800時間,応用課程2,800時間ですが,御参考までに,これを単純に45で割ると,62ぐらいの数値が出てくるということです。指導員の資格についてはここに列挙しておりますが,おおむね,大学や短期大学等と比べてもそれほど遜色はないというところです。校舎等については,基本的に独立行政法人立ということもありまして,大変充実したものをお持ちですが,現実として率直に申し上げれば,自己評価や外部評価というようなことは,必ずしも十分にはされていないというのが現状です。
 34ページからが,今後の対応ということでまとめさせていただいております。今回,特区要望ということもあり,やや視点が職業能力開発大学校・短期大学校に偏ってしまった部分がありますが,これらの単位認定とあわせまして,現在,既に大学評価・学位授与機構において設置基準等の適合性が判断されているような省庁系大学校についても,基本的には認める方向で,できれば我々としては関係省庁とも調整を行っていきたいと考えております。
 また一方で,委員から非常にいろいろな御懸念もお示しいただきました編入学については,特にここに書いているような論点について十分にこれから検討していき,場合によっては各省ともお話をしていく必要があると思っています。特に,教育の目的・内容が,大学に相当する内容があるのかどうかということであるとか,教育課程が先ほど申しましたが実技に偏っていたりしないのか,組織的・体系的にきちんと行われているのかどうか,あるいは自己点検・評価,外部評価など,現在大学等では当然に行われているような評価が行われているのか,教育の質を保証するための仕組みがきちんとあるのかといったことについて,編入学を検討していくのであればきちんと検討していく必要があると考えているところです。当省からの説明が長くなりましたが以上です。

【井上厚生労働省課長補佐】  続きまして厚生労働省から,職業能力開発大学校及び短期大学校の概略につきまして,お手元の資料の1-2,厚生労働省のクレジットがついている資料に沿いまして御説明させていただきたいと思います。
 まず資料の2ページを御覧いただきたいと思います。こちらにつきましては,職業能力開発促進法に基づき設置しております公共職業能力開発施設の一覧となっております。このうち,黄色い枠で囲んでおります職業能力開発大学校及び短期大学校について御説明したいと思います。
 これらの大学校・短期大学校につきましては,丸1のところに書いておりますが,高度な知識・技能を兼ね備えた実践技術者,また生産技術・管理部門といったところでのリーダーとなるような人材を育成するために,主に高校卒業生を対象に,実習・演習といった実技に重点を置いた職業訓練を実施する施設として運営しているところです。こちらの大学校・短期大学校につきましては,独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が設置する大学校が全国に10校,それの附属短期大学校が12校,短期大学校が1校あります。そのほかに,都道府県が設置する短期大学校が13校設置されている状況です。
 訓練課程といたしましては,主に新規高卒者を対象にした2年間の専門課程と言われるもの,そして専門課程を修了した方を対象とした2年課程の応用課程というものを設けております。23年度入学された方につきましては,そちらの資料に書いてあるような数になっております。
 こういった職業能力開発大学校・短期大学校以外に,丸2,丸3,丸4というところで公共職業能力開発施設を記載しておりますが,丸2のところにつきましては,職業能力開発総合大学校,先ほどの説明の中でも話に出てきている学校ですが,こちらは訓練指導員を養成するための大学校という位置付けになっております。丸3のところの職業能力開発促進センターという部分につきましては,失業者・在職者に対して職業訓練を実施する施設となっております。そのほか,障害者の方々に対する特別な訓練を実施する,丸4のところの障害者職業能力開発校といったものも設けられております。
 3ページを御覧いただきたいと思います。こちらは,先ほど申し上げた,高齢・障害・求職者雇用支援機構が設置・運営する大学校・短期大学校の所在地の一覧となっております。3ページに書いてありますのは機構のみということで,都道府県立の短期大学校はリストから外れておりますが,高齢・障害・求職者雇用支援機構の設置する大学校・短期大学校につきましては,ブロック単位で地理的状況を勘案しながら学校を設置しているところです。
 続いて1ページおめくりいただいて,4ページを御覧いただきたいと思います。先ほど申し上げた専門課程・応用課程の,それぞれの仕上がり像,特色をまとめた資料になります。左側の専門課程につきましては,新規高卒者を対象に,実学融合の考え方のもと,実機を使用した実験・実習,演習といったものを多く取り入れまして,ものづくりに必要な技術・技能を習得し,生産現場に必要な実践力もあわせて習得できるような訓練コースとして設置しているところです。主な訓練科は,少し見にくくて恐縮ですが,生産技術科,電子情報技術科,住居環境科,建築科,電気エネルギー制御科といった,ものづくりの関係の訓練科を設置しているところです。
 右側の方が応用課程になります。応用課程につきましては,主に先ほどの2年の専門課程を修了した方を対象に実施している訓練課程でありまして,こちらは,企画から製品の製作まで,ものづくりの一連の過程を学んで,複合的なものづくりの技術を習得できるような訓練コースとして設定しております。そのため,特色に書かせていただいておりますが,課題実習,ワーキンググループの学習といったものを取り入れております。こちらの訓練科につきましては,専門課程から接続するという考え方に基づきまして,生産機械システム技術科,生産電子システム技術科,生産情報システム技術科,建築施工システム技術科といったものを設置しております。
 5ページをあわせて御覧いただきたいと思います。こちらの学校の具体的なカリキュラムの時間を表記させていただいております。専門課程と応用課程で少し差はありますが,いずれも実技時間というものにつきましては平均で5割を超えるような状況となっております。さらに,具体的なカリキュラム例というのを,6ページ,7ページにつけさせていただいております。
 まず,6ページでありますが,こちらは短期大学校,大学校の専門課程という最初の2年の課程のカリキュラムになります。専門課程につきましては,黄色く塗っている部分と青く塗っている部分がありますが,まず黄色く塗っている部分として,英語・数学といった一般教育科目といったものと,工業力学といったような基礎科目といったものを1年次を中心に学びまして,年次が上がって2年生になりますと,実験・実習を中心とした実技を習得するような流れとなっております。赤字の部分については,実技を伴う訓練科目であり,生産技術科につきましては,時間で換算しますと54%が実技というような状況になっております。
 7ページを御覧いただきたいと思います。7ページは応用課程のカリキュラムとなっております。こちらにつきましては専門課程よりも実技の時間が多くなっておりまして,実技に占める割合が77%というような状況になっております。なお,専門課程・応用課程ともに卒業に必要な訓練時間は,資料にも書かせていただいておりますが,2,808時間というのを設定しているところです。
 8ページ,9ページに,平成23年1月に中央教育審議会の報告書でお取りまとめをいただいた際に,工業系の大学・専門学校のカリキュラムといったものも資料としてついておりましたので,改めて今回,そちらの資料もつけさせていただいております。こちらの学校よりも,時間換算という話になりますが,職業能力開発大学校・短期大学校という部分につきましては,実技の時間が多くなっているというような状況にあります。
 そして最後のページになります。10ページを御覧いただきたいと思います。卒業生の進路,直近の3年間のデータを添付させていただいております。専門課程を御覧いただきたいと思いますが,専門課程を修了した方の多くは就職しており,進学という選択肢を選ばれている方についても,多くは職業能力開発大学校の応用課程に進学しているという状況です。その一方で,進学者の内訳のところを御覧いただきますと,専門課程を修了した後に,大学,短期大学,専門・各種学校というところに改めて進まれているというような方も少なからず存在しているところです。
 以上,雑ぱくではありますが,職業能力開発大学校・短期大学校の概要の説明とさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【佐々木部会長】  前回は限られた時間に多様な説明事項が盛り込まれて,非常にわかりにくい面もあったと思います。今回は事務局にお願いして,とにかく丁寧に説明をしていただくというので少し時間をとりましたが,この後,御意見をいただきたいと思います。御質問も含めながら,主として職業能力開発大学校及び短期大学校の単位認定についてどう考えるかという点についての御意見を承りたいと思います。

【濱名委員】  まず確認をさせていただきたいのですが,今回,特区の話が出てきているということについてお話をいろいろ承っていたのですが,今日の御説明を聞いて,ほかの省庁所管学校と並べていると,職業能力開発大学が一つの学校,例えば気象大学校と同じような単独の学校のようなイメージを持ちがちなのですが,実は職業能力開発大学校・短期大学校というのは一つの制度で複数の学校です。だから,これまでの省庁所管学校の話とは異質なもので,影響が36校に及ぶということが一つです。
 それともう一つは,特区で求められた特定の,36校のうちの3県3校の話です。特区として,編入学の問題として特区申請が出てきたのは3県の話で,この制度全体の話になっているということ,そして,特区で求められたのは編入学問題であり,そのうちの3校の話が,制度全体に対する話になっているというのでは,大変話が大きくなっているということが考えられるのですが,そのあたりはどうなっているのかということです。
 それと,先ほどの厚生労働省の方が説明された,かつての中教審の資料で,授業時間の話を専門学校と大学を比較してやってらっしゃるのですが,非常にわかりにくかったのは,授業時間だけ見ていて,大学は1単位45時間で,どこまで実施できているかどうかについては不徹底かもしれないが,教室外学修時間を想定しています。この資料を見ていると大学が一番学修していないような印象を与えるのですが,例えば専修学校とか職業能力開発大学校については,教室外学修というものについてどのように制度化されているのか。
 それと,厚生労働省は,これだけの学校種を自己点検・評価のない仕組みで制度運用されているのですが,設置時の質が維持・向上しているのをどのような形で確認されているのかということを教えていただきたい。

【白井大学振興課課長補佐】  最初の特区提案の部分についてお答えさせていただきます。今回,確かに特区提案としては,山形県から出てきておりますが,もともとは特区は1地域での例外的な制度ということでしたが,今,私どもが考えておりますのは,これを一つの地域ということではなくて国全体の制度としても開いていこうということで考えております。その趣旨としましては,特区提案ということではありますが,基本的には単位認定を開いていくということが,先ほど申し上げましたように学修機会の多様化であるとか,あるいは接続の観点からも有意であるということが考え方です。

【井上厚生労働省課長補佐】  御質問の2点目の関係ですが,時間数のところにつきまして少し説明が足りなくて恐縮ですが,ちょうど資料に参考としてつけおりますとおり,必ずしも同じに評価ができるものではないというのは当然認識はしておりまして,単に時間で見た場合ということで,参考としてつけさせていただいております。御案内のとおり,職業能力開発大学校・短期大学校につきましては,時間という形で全体の管理を行っておりまして,当然,訓練時間で学ぶ講義・実習に自学自習という部分はあるところはあるのですが,大学のように,15時間の授業,30時間の自学自習という形で1単位とみなすというような取り決めは今のところはなくて,そこはおっしゃるように単純に比較はできないものと考えております。
 あと2点目の,評価という部分ですが,確かに今,自己点検というところはないのですが,大学校や短期大学校を国で設置する際には,その基準というのは職業能力開発促進法施行規則で定めておりますので,その定めているものに合致しているかどうかという確認をさせていただいております。これは都道府県立も同じように確認をさせていただいております。そして,事後の評価という部分につきましては,都道府県立のところにつきましては,ばらばらになってしまうのですが,機構立のところにつきましては,独立行政法人の一環として評価委員会で,評価をいただいているところです。

【山田委員】  詳しい説明をありがとうございました。2点簡単な質問なのですが,まず単位認定をするということで,確かに私ども大学でも,他の教育機関などで単位を修得してきたものの単位を認定するということを日々行っております。その際に,前提となるときに,そういう教育機関への入学,いわゆる選抜があるということを前提として見てきているわけです。それで,現在でもやはりいろいろな入学者選抜の問題があるということで,例えばAO入試がどうかとかいうことも問題になっているところです。
 今日の御説明では,職業能力開発短期大学校に入学する時点での,高校から大学校へ入る時点での選抜についてはあまりわからなかったものですから,それはどのようにして見てらっしゃるのかという点をお尋ねしたい。もう一つは6ページの資料を見ますと,例えば単位認定をしていくという上で,1年前期,1年後期,2年前期,2年後期の例えば一般教育科目及び基礎科目というのを見ますと,正にずっと本部会の中でも話題になってきたナンバリングになっている部分もあるのです。非常に体系立てて,1年前期,1年後期と上がっているように見えるわけです。数学1とか英語1という科目名で見ますとです。ただ,この内容が例えばどういう内容で大学の一般教育科目に相当するようなものになっているのかという御説明がなかったものですから,そのあたりも教えていただければと思います。

【井上厚生労働省課長補佐】  まず,最初に御質問がありました選抜という点ですが,こちらにつきましては,機構立と都道府県立でやや取扱いが異なっている点はありますが,基本的には学校推薦のような形の入試という部分と,あとは通常の学科試験を課した上での入試といった二つのやり方で学生の募集を行っているところです。2点目の部分につきましては担当から御説明をさせていただきたいと思います。

【宇佐美大学校課課長補佐】  2点目の御質問ですが,数学,英語,どういった内容かということにつきまして,数学につきましては,実践,技術者として必要な数学といったところで基礎的なところでして,数1以上で三角関数とか微分積分といったところで,実際に機械の分野を勉強するに必要なところに特化させていただいております。英語につきましても,ビジネス英語といいますか,少し企業,現場で読み書きができる,英語マニュアルが読めるといったところを中心でカリキュラムは構成させていただいております。

【濱名委員】  先ほど御説明いただいた資料1-1の14ページのところで,平成3年の大学審議会答申を引用されて御説明いただいたときに,専門学校等での履修のことで,学生の申請だけではだめだとおっしゃいました。これは単位として認定する趣旨ではないということです。つまり中身を見て各大学が判断しろということなのですが,職業能力開発大学校及び短期大学校の場合は,例えばシラバス等々で内容確認ができるのでしょうか。つまり自己点検もなければ,そのレベルをどのように認定するのかということを考えたときに,今の御説明を聞いていると,数1レベルのものを大学の単位と認定するということになるのです。それでどのようにして各大学は判断できる材料があるのかと思うのです。認証評価という制度もなければ自己評価という制度もなくて,認可時の質保証という形だけであれば,文部科学省は既に高等教育に対して,認可時の質保証だけではなくて,あとのアフターケアを認証評価等々の仕組みでやっているわけですが,その仕組みがなくて,科目名だけ見るだけではわからないが,内容を聞くと数1だと言われると,現在の質保証の大きなフレームワークから外れるのではないか。つまりリメディアル教育について,中教審なり文部科学省は大学としての単位認定はするなというスタンスでやってきたわけですが,それとの整合性を持たなくなるのではないかということと,おそらく編入学と切り離しての議論ではあるのですが,入学すると60単位まで認定という話になると,実際的には編入学に近い影響を持ちかねないところがありますので,その内容確認と質保証する仕組みがあると文部科学省は考えていらっしゃるのか,あるいは厚生労働省は考えていらっしゃるのか,補足していただければと思います。

【宇佐美大学校課課長補佐】  シラバス,授業科目の内容を確認できるかという御質問につきましては,各職業能力開発大学校,全ての授業科目でシラバスを作成しておりまして,各週どういったことをやるのかといったところの目標から,その週ごとの作業内容を含めたものを準備しておりますので,そちらを御確認いただくということは可能かと思います。

【白井大学振興課課長補佐】  今,具体的に数1という話が出てしまいましたが,必ずしも全ての科目が大学教育相当かどうかということはまた別としまして,特に実習でありますとか,職業能力開発大学校が得意な部分もありますので,そういった部分について各大学において,先ほど申し上げましたが,仮にこれを単位認定を認める場合には,職業能力開発大学校・短期大学校における学修のうち,大学が大学教育相当水準と認めたものということになりますので,その上で大学において判断をいただくということになろうと思います。この告示では,一定の水準を引いていくということがこの告示の目的です。

【濱名委員】  ですから先ほど来の話で言うと,どう各大学が確認できるのかということです。これまでのもの,他の省庁所管大学校は,大学評価・学位授与機構が課程認定という形で内容を担保してくれるというようなものがあるのでいいのですが,先ほど申し上げたように最大60単位まで各大学では卒業要件単位として認められ得るということです。おまけに学費的には私立大学に行くのと比べると安くて済む。実はアメリカではコミュニティ・カレッジを経由して,ステート・フラッグ・ユニバーシティーにトランスファーするとトータルの学費が安くて済むというような話があります。そのとおりですが,実際にはこの編入学では4年でなかなか卒業できないという話が,まことしやかに議論されているようなところもあります。そういうことを考えていったときに,各大学がやればいいと言うのですが,仕組みとして,例えばシラバスを取り寄せて各大学が全部確認をするということをイメージして,質保証ができると考えていらっしゃるのでしょうか。これは文部科学省にお聞きしたい。

【白井大学振興課課長補佐】  正に授業時間制というのは,仕組みが違う場合には,どこまでをきちんと確認できるかというのは重要なところだと思います。今回お示しした資料の中でも,21ページのところで書かせていただいておりますが,講義であれば1単位15時間プラス30時間に相当するような学修がきちんとあるということが大前提の上で,各大学においては,大学以外の教育施設における教育課程や,これは当たり前のことですがシラバス等を参照した上で,こういった点が確認できた場合に単位認定をしてもいいですという形の通知をしっかりと出させていただきたいと思います。逆に,これがなければ安直な単位認定はできないという形にしていきたいと思っております。

【鈴木委員】  一番最初,資料の1-1の4ページのところで,検討の事項とその趣旨とありまして,検討の趣旨,それから主な検討事項,そして一番下に当面の検討事項ということで,御説明の中でも長期的といいましょうか,あるいはもっと大きな,教育の制度そのものの変更ということも含めた検討の趣旨ということで上の二つが挙がっていて,当面ということで職業能力開発大学校あるいは短期大学校のことが出てきたわけですが,先ほど濱名委員も,どうもこの二つが混在しているようだとおっしゃっていましたが,私もそういう印象を受けております。当面の検討事項のところに関しましても,今,シラバスの公開とか精査とか,あるいは1単位当たりの時間数をどうするのかということやら,あるいはGPAの問題やら,あるいはナンバリング的な考え方もどうするのかということがあると思いますが,それらはおそらく実施するということになった場合に,いろいろな具体的な手当て,手だてはしていかないといけないと思います。
 もう一つ,当面の検討事項に限っても,これを受け入れる大学というのは国公私あるわけで,各大学がそれぞれ,大学評価・学位授与機構を通じてということかもしれませんが,勝手にこれらの大学からの受け入れというものの基準をつくり,そして受け入れるということを,実際やっていくのか。あるいは法律的な対応も必要だということですが,この場合に,国公私で何か共通の受け入れの体制というものを考えるべきなのか。その場合に,特に私立大学の場合にはいろいろな理念・目的等々もあるわけで,そのあたりのところの特徴をどのように担保しながらこれに対応していくのかということまでを考えなければいけないのではないかと思うのですが,文部科学省ではそのあたりについてどこまでお考えあるいは議論なさっているのか。あるいは厚生労働省ともお話をなさっているのでしょうか。

【佐々木部会長】  確認しますが,鈴木委員がおっしゃっている「受け入れ」というのは,編入学のことですか。

【鈴木委員】  そうです。

【佐々木部会長】  本日は編入学問題はペンディングとし,差し当たって,職業能力開発大学校・短期大学校の単位認定について御審議いただくことにしております。省庁系大学校の単位認定というのがここに出ていますが,これは,職業能力開発大学校の単位認定との関連で検討されなくてはいけないのではないかという趣旨で示されているわけです。

【鈴木委員】  わかりました。

【吉田委員】  少し聞き漏らしたかもしれないのですが,再度お伺いしたいことがありますが,単位認定をしていく場合に,単位認定の主体はあくまでも個別の大学にあると考えてよろしいわけでしょうか。そうしますと,ある科目を履修した生徒が,ある大学,A大学に対してはその単位は単位認定されて認められても,B大学の場合には認められないということも出てくると考えていいということでしょうか。
 それで,判断主体が大学にあるということは,それはそれで一つの見地だと思うのですが,具体的に何単位ぐらいを単位認定してもらいたいと厚生労働省はお考えなのでしょうか。実技が多いということですが,そうした実技に相当する科目が,大学における教育のどういう部分に相当すると現段階でお考えなのか,そのあたりについて少しお聞かせ願えませんでしょうか。

【佐々木部会長】  現在提案されている単位認定は,大学の側の学生が大学校へ行った場合に,そこでの学修を大学が認定するかどうかという話でして,おそらく厚生労働省の側から何単位まで云々という御提案があるわけではないと思うのです。

【吉田委員】  そうですが,あらかじめそういうことが厚生労働省の側から出てきているので,そのあたりの見込みのようなことがあるのかどうかということについてお伺いしたいのです。

【井上厚生労働省課長補佐】  何単位というのは正直お答えしにくいところではありますが,先ほど当方から説明させていただいたカリキュラムの中でも,一般教育,また基礎の学科の部分で共通し得る部分があります。共通し得るかどうか,先ほど各大学の判断という形でお話がありましたが,最終的には各大学の判断になるとは思っておりますが,60単位の中で,仮に大学校・短期大学校を卒業した生徒が再び大学の方に学び直しという形で入り直されたときに,共通するものがあれば少しでも認めていただければという考え方に基づいて,今回の特区提案については,厚生労働省も同じような考え方という形で,文部科学省に回答申し上げているところです。繰り返しになりますが,15単位,20単位というものの前提があるものではございません。

【吉田委員】  そもそもの話が単位認定の話として出てきたわけではなくて,編入学として出てきているので,その背後を考えれば,かなりの部分が大学相当の教育だとお考えなのかなと思って今のところをお聞きした次第です。

【金子委員】  今回は問題が限定されて提案されていますので,やはり限定された範囲内で一応判断するというのが基本的には筋ではないかと思います。背景を考えれば,既に専門学校の単位を大幅に認定していますので,これとの比較から,特に職業能力開発大学校が更に厳しくしなければいけないという,はっきり言って理由はあまりないと思います。専門学校の単位の認定についてはいろいろと議論があるかもしれませんが,もう既にこれは行っていることでありまして,一貫性という観点から,やはりここに特段に厳しい要求をするというのは,成り立たないというか望ましくないのではないかと思います。
 授業時間についても,私がちらっと計算しましたら,大体1年10か月40週で1日7時間ぐらい必要で,相当な時間数が要求されているということでもありますし,この内容は大学と必ずしも一致しないわけですが,しかし逆に,こういった非常に実技的な科目を,例えば大学にいる人がもっと実技的な科目をやってみたいというときに,職業訓練大学校で授業を受けて単位とするということができれば,これはプラスの面もあるわけで,基本的にはこの範囲では私は,質の担保についていろいろな疑念があったということは厚生労働省でも記憶いただいて,この限りでは,いいのではないかと思います。
 ただ長期的に,先ほど鈴木委員もお話しになっていましたが,単位の認定とかあるいは編入学について,法律で認める部分が今日お話にありましたが,あとは各大学の教授会が判断するというところに行ってしまっているのですが,どうもその中間みたいなものは必要ではないかなという感じは確かにします。単位認定とか編入の際のガイドラインみたいなものをつくって,それは設置基準までするのか,あるいはもう少し柔軟な形のものにするのか。例えば大学評価・学位授与機構の学位授与においてそういったガイドラインのようなものをつくって,実際に大学が判断する際にどのようなことを見るべきなのかというようなことを書いたものをつくるとかいったことは,将来的にはやはり考えるべきではないかと思います。ただ,いずれにせよ長期的には,やはり高等教育段階の学校の間の流動性を高めるというのは,悪いことではないと思うので,いろいろな問題をきちんと担保しながらも,柔軟にできるような仕組みをつくっていくことは,これからの検討課題だろうと思います。

【林委員】  金子委員と大体同じ考え方で発言しようと思います。設置時から職業能開発大学校がどう進化してきたかという点ですが,これは大学の単位との互換を考えるうえで,教育の内容や質はどうなのかという議論だと思います。一般科目や基礎科目については大きく変わらないが,専門科目においては大学の工学部がかつて持っていた基本の科目を残している。具体に言えばそれはものづくりに関わる科目です。どう進化したかというよりも,職業教育という原点をきちんと維持し存在理由が高い。ものづくりの拠点は東南アジアの方にどんどん移行していると言われるが,大学の工学教育についても同じことが言える。わが国の大学からものづくりの科目が消え,代わって韓国の大学等が中心に,日本企業の要請を受けながらものづくりの教育の基本を担っている。それは溶接であり鋳造であり,パワーエレクトロニクスであり,大変大きい部分なのです。そのあたりのところを職業能力開発大学校はきちんと担保している。
 このことは,わが国の工学教育が企業の必要としている人材を育成していないということではありません。電気系で言えば,デジタルやIT等のディシプリン教育は高度化し先端的な科学技術を支えているが,いわゆる強電やアナログ関係が消えてしまっているということです。鋳造にしてもそうだし溶接にしてもそうですので,韓国等で養成した技術者を日本企業が受入れているという感じです。
 以上のような現状を見れば,大学の工学部と職業能力開発大学校との単位互換があり得るし,そうでなくても,いわゆる省庁系大学校は存在理由をきちんと担保して,実践的あるいは現場中心の教育を維持し,ミッション,役割を果たす必要がある。様々な学校種で学んでいる学生たちが次のステップに向けた学びを考える場合に,やはり単位としてどう大学で認めていくかという議論をしないと発展しないと思います。つけ加えておきます。

【川嶋委員】  二つの観点があります。一つは非常に制度的な話なのですが,日本は教育基本法とか学校教育法を見ても,高等教育とは何ぞやという定義が全然明確にされていないのです。あるのは,義務教育であるとか社会教育であるとか大学であるとかということです。ですから,やはり制度上,横とか縦にはしごをかけるということであれば,高等教育,その中には大学は当然含まれるわけですが,何をもって高等教育とするのかということをきちんと制度上整備していくことが今後必要だろうと思います。
 それから二つ目はもう少し具体的に,先ほどの金子委員のお話にも関連しますが,先ほどの御提案のように,私もやはり,単位認定に当たって各大学が留意すべき事項のガイドラインをどこかでつくるということは必要だと思います。ところで,今回,大学側からこの大学校についていろいろ御質問をしたり注文をつけているわけですが,翻って,今の日本の大学がそれぞれの大学生に対してあるいはそれぞれの授業科目で何を教えているのか,何を育成しようとしているのかをきちんと明確にしているかというと,必ずしもそうではないわけです。単位認定をするときはそれぞれの大学の責任ですが,そのときに自大学における学修目標とか到達目標をきちんとシラバス等に明示しておけば,それと,単位認定を求めている大学・学校等からのシラバスや成績証明書を突き合わせて,単位の同等性がようやく客観的な判断ができるわけです。そういうことを考えると,むしろ今,私たちの大学が本当に,大学相当の教育をしているかということをきちんと社会に対して公表しているかということも,やはり自省的に問わなければいけないのだろうと思います。ですから,今回の議論が,大学自体の質向上,社会に対する説明責任や透明性をより一層充実させる契機になればいいのではないかと思います。

【長尾委員】  全体の議論のプロセスを私なりに整理させていただいて,もし間違っていたら修正してください。これは,まず最初は特区の申請,要望があって,資料1-1の29ページの括弧2の二つ目の丸で,職業能力開発短期大学校における学修を高等教育相当レベルのものとして単位認定できることが前提で,特区の要望の編入学ができるということでよいでしょうか。これが前提であって,単位認定をここで認めるという議論に入っているわけです。ですから,単位認定を先に議論しないと,要望があった特区が認められないということで,そして今日の議論では,特区要望は編入学の要望であるが,まだそこまではいかないので,今日の議論で単位認定の議論をした上で,また時を改めて編入学の議論をしていって初めて特区要望を議論する,あるいは認めるというプロセス。この3段階と考えてよろしいわけですか。

【田中委員】  単純な質問なのですが,長尾委員のお話,私もそう思っていたのですが,整理が大分できました。ですから,23ページの表が非常にわかりやすいと理解しているのですが,非常に単純な基礎的な質問をさせていただきたいのですが,課程認定をされている,例えば防衛大学校等のような場合には,学士課程修了と同等である,それから短期大学修了と同等であると認められる場合には,編入が認められることになると思うのですが,そう考えてよろしいですか。
 それから,単位認定だけで課程認定がないという場合には,大学に入る前の段階で,60単位までは他機関で学んだことが認められるということを考えるので,それは編入にはつながらないと考えてよろしいのでしょうか。

【白井大学振興課課長補佐】  23ページの表を前提でお話しさせていただきますと,実は省庁系大学校と大学の間では,基本的にこれまでほとんど接続という考え方がありませんでした。相互の単位認定・編入学はなく,要はばらばらと防衛大学校等について課程の認定だけを受けているということです。もちろん,そこで学士等が認められれば大学院に進学するということも理論的には可能なのですが,ただ実態としてはほとんど,数としては少ないケースだと思います。
 そこで,そこの間の単位認定・編入学の関係をつくっていこうということが今回の問題でして,最初に,平成15年というかなり前の段階に,特区要望という形で職業能力開発大学校・短期大学校について話が出てきてしまったこともありまして,若干話が混乱している部分はあるのですが,特区要望の有無にかかわらず,省庁系大学校と大学との間での単位認定・編入学についての接続を考えていこうというのが今の私どもの考え方ですので,今回,特に課程認定を受けていないということで,若干,いろいろ質保証の面での御懸念とかもいただいたところですが,もし今日御了解がいただければ,課程認定を受けている大学校や職業能力開発大学校・短期大学校についても単位認定を認めていければと考えております。

【田中委員】  したがいまして,本来,課程認定を受けているのであれば,単位認定を受けることができてしかるべきであるというのは,まず考え方だと思うのです。それで,ただ今回の御提案の職業能力開発大学校や短期大学校におかれては,まず単位認定が先に議論されるべきであるということで,課程認定なり編入学というのは,次のステップとしてもう一つ先の話であると理解してよろしいでしょうか。大学分科会で御議論されるということですから。
 私も金子委員の御指摘のとおりだと思うのですが,単位認定というのは大学の責任で行うことになりますから,教育,例えば海外の大学でありますとか,海外の英語専門学校などで学んできたものの単位認定をする場合もあるわけですので,大学が責任を持って,当該の大学の教育課程に認められるであろうという勉強が進んでいると考えられた場合には単位認定ということになるということだと思うのですが,御提案の箇所をそのように考えられるかというところに絞って,今御提案されているのだろうと理解しておりますが,それでよろしいのでしょうか。

【佐々木部会長】  本日の提案はそういうことです。

【濱名委員】  やはり違和感がぬぐえないのはありまして,一つは最大の問題として,本来の特区申請の趣旨から言うと,やはり編入学の話だったはずなのです。編入学の話であったとすると,何かいつの間にか大学生が職業訓練大学校へ受講しに行く話になっているのですが,課程認定をおやりになれば,大学側の手間も疑念も全部晴れる。なぜ厚生労働省は,編入学について今回先送りなのに,単位認定でよしとされるのか。
 私ならば,課程認定をすれば水準として全て問題が一挙に解決します。我々としてはおそらく専門学校についてものすごく大きな問題を抱えていると思うのです。これは実態も多分調べてらっしゃると思うので,どの程度の大学が受け入れているのかとか,課題はないのかということを検証しませんと問題だとは思うのですが,今回の問題では,何となく,単位認定と編入学は違うのだと言われますが,編入学でも,単位認定でも,60単位までは卒業要件単位として認めるという上限では同じ制度なので,本当に分けられるのかということは文部科学省に伺いたいのです。私は,そういう点では今回は,どうしてもと言われるなら試行という形であると思いますが,やはり大きな枠組みをつくる際には,これは既成事実でもう既に認めているからという議論が,蒸し返しのような形で出てこないでしょうかということを文部科学省にもお尋ねしておきたいと思います。

【井上厚生労働省課長補佐】  課程認定を求めるか求めないかという部分につきましては,文部科学省の資料で御説明をさせていただいておりますとおり,基本的に職業能力開発大学校・短期大学校につきましては,実技・実習というものを主体としてものづくり分野の人材を育成していくというようなことで,厚生労働省で職業能力開発促進法に基づいて設立している大学ですので,その本質的な趣旨,カリキュラムを変更した上で課程認定というような考え方を現時点で持っているものではありません。その点はお答えさせていただきたいと思っております。
 その上で,編入学という話になれば,それぞれ過去の経緯もありますし,学校の特色もありますので,そこの部分は十分な期間をもって慎重に議論していくべきだろうと考えておりますが,単位認定という部分については少し切り離して議論をいただきたいということで,文部科学省にお話をさせていただいているところです。

【佐々木部会長】  これは,前回のこの部会でも出ましたし,大学分科会でも議論したところです。ですから今日提案された単位認定の限りでは,メリットは大学の側にしかない,流動化といっても,双方向にはならないわけです。

【池田大学振興課長】  資料1-1の17ページを御覧いただきたいと思います。先ほど御説明いたしましたとおり,編入学,この右側ですが,今回,とりあえずここは議論の対象ではありませんが,編入学の場合は大学校なりの教育課程が体系的に大学と同等かどうかというのをきちんと見せていただいて,これをセットで認めるということになります。したがって,このブルーの部分の大学の修業年限が短縮されるということになるわけですが,今回議論いただいているのは左側の部分でして,それぞれの単位,個々の科目が大学の科目と同等かどうか。それで,同等であれば大学の単位として認め得るということですが,現状では細い赤い矢印が全て認められないように,そもそも単位認定をする対象として職業能力開発大学校等は認められておりませんので,まずこの俎上(そじょう)にのせ得るようにするということです。そして,先ほどから御説明しておりますように,それを踏まえて各大学がシラバス等できちんと見た上で,自分の大学の科目と同等であるかどうか。認めたものについてはこれを単位認定するというような仕組みです。その際,これはこの件に限らず,一般的に大学の単位認定というのは最大で60単位という制限がありますので,仮に職業能力開発大学校の単位として同質性が高い場合であれば60単位までは認め得るわけですが,実際に何単位までというのは,それぞれの事情に応じて判断をしていただくということになろうかと思います。
 それから,単位認定のメリットですが,冒頭,御説明いたしましたように,資料の一番前の5ページを御覧いただきたいと思いますが,これは双方にとってメリットがあると考えております。一つは,大学生が大学校等の施設で学修をした場合,これは大学の学修の単位として認められるわけですが,厚生労働省から御説明がありましたように,職業能力開発大学校を卒業なりして,一部の学生は進路変更等により,それから大学に入学する方も一部いらっしゃいますので,こういった方々は職業能力開発大学校で学んだ学修の一定部分を大学入学後に大学の単位として認められるということになりますので,メリットとしては大学にとっても職業能力開発大学校にとっても双方あると考えております。

【宮崎委員】  話が特区から始まっておりますので,それを一律全体の制度改革に普遍化しようとするところに少し無理があるような気がします。特区の特区たるゆえんですから,例えば特区の中で,まずは行って,シミュレーションをして,ある程度いったところで検証をした上で,メリット,デメリット,きちんと具体的に出てくると思いますので,それを全体に広げていくというような手順を踏むことはできないのでしょうか。まずは特区の中でやっていくということはいかがでしょうか。

【林委員】  接続の話は今日しないことになっているのですが,編入学ということになってくると,単位の認定だけではなくカリキュラムや学修の体系性についての議論が必要になってくる。これが接続のための同質性でしょうが,同質性をあまりきつく求めると,本来の学校種が持っている特質が消えてしまい何にもならない。接続を求める理由は,最初の出発点がそうですが,多様な人材が必要だということです。大学の工学部で欠けている部分を職業能力開発大学校は持っているし,互いに補完し合う全体でもって国の高等教育の基盤を維持している。
 接続の議論になってくると,そのあたりのところが大変重要になってくると思いますし時間もかかるかもしれません。まず単位の認定という点ではそんなに大きな問題はありませんし,これを突破口としなければ何事も前に進まないと考えます。

【納谷委員】  前回御指摘は,資料1-1の8ページの丸5に残しておいてくださったから結構です。先ほど濱名委員も少しお話ししたし,田中委員からもお話がありましたが,もう一度確認です。
 6ページを見ていただきますと,これは,井上補佐が先ほど言ったことと関係するので確認したいのですが,課程認定を受けたくないというのは,これは大学の方に希望がないのですか。それとも厚生労働省の方では,先ほども言ったような設置目的から認めたくないという考えでこういう結果になっているのですか。そこだけ明確にしておいていただきたいと思います。厚生労働省の方のお考えなのか,それとも大学の方が申請したくないという希望なのか。そこの政策判断はどちらがして申請していないのか。
 私は以前から言っているように,また田中委員も言っているように,23ページにあるような課程認定にしておけば,金子委員もおっしゃられていたとおり,大学も単位認定しやすくなるので,そういうことが望ましいと思います。あとは宮崎委員が言ったように,特区でやっているのなら,そこでやることはやって,実際見てから我々は応じていくという方法もあるとは思います。23ページにあるように,職業能力開発総合大学校の方はもうやっているわけです。指導者を養成するのと,それと違う。趣旨はよくわかります。ただ,同じようにやってきているところで,なぜこういうことが,大学から申請する気持ちがないということなのか。それとも制度的にあまり望ましくないから抑えていったほうがいいという判断があってのことかと思っていたものですから。そこのところだけはっきりしておいていただきたい。
 当面しばらく見ていきたいということならば,結論的には単位の認定ということは非常に問題があるとは思う。できれば課程認定をやって,そしてほかの大学へ。これは将来の問題だとおっしゃられていますが,防衛大学校等も単位認定はやっていくという方向へ話を進めていって,横並びが出てくれば,ある程度,23ページにある表から見るとバランスがとれてくる話になってきます。その方向へ進むということは,説明は聞きましたが,そういう方向に行くのであれば,やはり全体として整合性のとれた表になるように手続を進めるように,まず努力していただいたほうがいいのではないかとの意見を,私は持っています。それが非常に難しいのでとりあえず単位認定ということで,ということは私はあまり好きではない。この際,大学の教育の質が落ちているとこれほど言われている時代に,どこかでやったからということの例に変に使われてしまうと困ります。ただ,いろいろな意味で流動性を持たせるということは必要だということは,一般論は私,非常によくわかります。しかし,安易に単位認定を認める方向に,結論的に動くならば,そこのところは政策的に大きな問題だと思ったものですから,少しお話しさせていただきました。

【佐々木部会長】  課程認定に関する厚生労働省あるいは職業能力開発大学校の考え方について,御説明いただけますか。

【井上厚生労働省課長補佐】  先ほどの御質問に回答させていただいている中身と同じになってしまうと思うのですが,なぜ厚生労働省で職業能力開発促進法に基づいて大学校・短期大学校を運営しているのかといえば,それはやはり,産業ニーズに応じたものづくりの現場の高度な人材育成をしていくということに基づいて設立されている学校の類型になりますので,そういった本質は,やはり実技・実習というのに力点を置いた上で運営していくということになりますので,それが前提になった場合には,今の課程認定というような仕組みに乗ると本質自体が変わってしまう可能性があるのではないかと私どもは考えておりまして,そういった意味で,厚生労働省といたしましては,課程認定を現時点でするというような考え方は持っていないところです。

【納谷委員】  もしそういうことであれば,23ページの下の方の警察大学校とか,そういう大学校がありますが,それと同じように何も触れないでいく方法だってあるわけです。ある種の中間のところに入ってしまっているから,今のような議論が起きてしまうのだと思います。厚生労働省の御発言の趣旨をそのまま遵守するならば,警察大学校のような形に純化したほうがよろしいのではないか。
 それからもう一つはっきり言えば,防衛大学校だって,やはり実務に相当特化してわざわざつくった学校であるにもかかわらず,なぜ課程認定を求めていったのかということは,やはりそれはそれなりの理由があったことをきちんと説明しなければいけないことだと思う。それは厚生労働省で説明することではないでしょうが,防衛大学校にしろ,気象大学校にしろ,いろいろあるのですが,そういうところでは,特にその実務・技術を勉強するために学校をつくった。そこのところはわかるのですが,国全体としてこういう大学校について,どういう具合にハンドリングしていくか。このことを考えたときに,どこかで整合性をとれるように将来性を持っていかないと少し問題ではないかということを,私は心配していて,ずっと,前回から質問してきたわけです。そういう点に問題があることを自覚しながら,今回はこれでいくということで,いくかいかないかは,あとは部会長の御判断とか,大学分科会にお任せします。とりあえず今回,これはこれでという話もないわけではないとは思いますが,心配は心配だということだけはつけ加えておきたいと思います。

【田中委員】  話の中に出てきた経緯が,特区で課程認定の編入でしたから,話がこんがらがっていると思いますが,とにかく今日ここで御議論いただくのは,単位認定ができるかどうかということでよろしいと思うのです。
 それからもう一つ,これは私見ですが,特区というものを教育に持ち込むのは,私は非常に危険だと思っています。前に設置との関係で,株式会社的なもので,教室がないとかラウンジがないところで特区を認めるかということもありました。ですから熊本県,長野県,山形県から出てきた特区の申請というのは,やはり本来,筋がおかしいと思っているのです。というのは,特区だからいいといっても,それはあり得ないと思いますのは,では山形県の場合には,山形大学とか山形県内の大学だけとの認定なのかというと,そうではなくて,特区で認められれば,課程認定されれば,全国,世界中のどこの大学にも,短期大学なら短期大学修了となるわけでしょうから,特区というものの概念が教育に本当に適用し得るかどうかという問題があると思います。経済特区とは意味が違うのだろうと思っています。
 ですからここでは,特区とか課程認定とか編入のことはペンディングとしていただきまして,そのことは別に考えていただくことにした方がよろしいと思います。それはまた大きな議論になると思いますが,私見を申し上げれば,教育に特区というものはそぐわないだろうと考えております。それで,それは別としまして,本日は単位認定だけを御議論いただいて,もう結論を出していただいたほうがよろしいのではないかと思っております。

【佐々木部会長】  もう一件,議題が残っていますので,そろそろ取りまとめをしたいのですが,いろいろ伺った御意見を踏まえて,文部科学省でもう一度すっきりと提案していただけますか。

【田中高等教育政策室長】  今,特区ということについてお話がありましたが,正に田中委員から御指摘がありましたように,問題の経緯といたしましては特区ということがあったわけです。また,先ほど地域限定の取組が適当かどうかという御指摘がありました。そうした中で,この資料でいきますと4ページ,あるいは今回お配りさせていただいております資料3の参考という資料があります。これは前回,あるいは前回の大学教育部会でも御説明させていただいたものです。そして学校教育制度全体を見た場合に,様々な省庁系大学校を含めまして,様々な教育の機会がある中で,学校種間の接続という観点から,教育機関全体を見渡して検討することが必要ではないかというのが,今回の資料の4ページあるいは参考資料3の1ページの趣旨です。
 ただ,教育機関全体を見渡して検討したときに,例えば編入学ということになりますと,先ほど来,説明させていただいておりますように,個別のパーツではなくて全体的な教育課程の体系性というものが大学相当と認められなければいけないということです。そういう場合には,非常にハードルの高い検討が必要であるという問題があります。そうした中で,長期的な検討課題としては,様々な教育機関相互の接続というものを円滑に図っていくことが必要で,例えば現在,大学から短期大学・高等専門学校への編入学というものは認められていないというような,いろいろな接続の袋小路の部分を含めて検討していきたいというのが検討の大きな趣旨です。ただ,いろいろな検討事項がある中で,今回特に職業能力開発大学校・短期大学校の編入学については様々なハードルがありますので,単位認定ということについてまず御審議をいただきたいというのが,今日,検討をお願いしている趣旨です。

【濱名委員】  厚生労働省に確認だけさせていただきたいのですが,先ほどの話で言うと,大学生も受け入れるという部会長の御解釈があったのですが,職業能力開発大学校なり短期大学校は,これから大学生を科目等履修生等で受け入れていただくというおつもりがあっての御提案なのか。あるいは,その場合,費用等々についてはどういうストラテジーを持って御提案になっていらっしゃるのか。そちらについて聞かせておいていただきたい。

【井上厚生労働省課長補佐】  当然,どういう仕組みでやっていくのかについて,議論がまとまった後に,形を整理していくということになっておりますし,大学校・短期大学校も,立地している場所が必ずしも,大学があるところと少し離れた地区に多く立地されているところもありますので,どういう形でやっていくのかという部分につきましては,今回まとまった後に,どういう形で進めていくのかは,地域の大学校,関係者ともよく相談しながら進めていきたいと考えておりまして,今の段階で,具体的な経費といったものを含めてどうするのかというところまで御回答することはできない状況です。

【濱名委員】  受け入れの方向で,そのことは当然前提に置いて提案されていると考えていていいでしょうか。

【井上厚生労働省課長補佐】  もし地域の大学から御要望があれば,対応はさせていただく準備はあります。

【佐々木部会長】  それでは,御説明にありましたように,確かにこの問題は特区要望という形で出てきて,編入学等につながっていくわけです。そういうことを承知した上で,本日は,職業能力開発大学校及び短期大学校における学修を大学の単位として認定し得るというところでまとめたいと思うのですが,いかがですか。御意見が更にありますか。先ほど御意見としていただきましたように,ガイドラインであるとか,あるいは編入学への条件であるとか,ひいては高等教育概念の再整理とか,文部科学省で更に御検討いただくことも含めて,差し当たり本日の部会では,16ページにまとめてある大学教育部会で検討すべき事項のうち,職業能力開発大学校・短期大学校における学修の単位認定を認めてよいかという提案については,これを了とするという結論でよろしいでしょうか。

【荻上委員】  そのように切り離すことが可能なのでしょうか。どうも,そこがよくわからないのです。やはり,編入学云々という,そこにつながっていかないと,多分,実質的にあまり意味がないことになるのではないのでしょうか。意味があろうがなかろうが,ここだけまず切り離して決めるということは可能だとは思います。

【金子委員】  議論の流れとしては編入学につながってくるかもしれませんが,ただ,ここで切り離して考えて,両方とも一応メリットがあるという説明があって,それを私は否定できないと思います。これ以上,どうも怪しいのではないかという議論を何回繰り返しても,全く同じです。こういった議論の蒸し返しを何回もやるというのは,審議会としては非常に効率的ではないと思いますので,一応切り離して,この段階で議論するというのであれば,もう結論を出すべきだと思います。

【佐々木部会長】  私も同じような疑義はずっと持っているのですが,議論の進め方としては文部科学省から提案がありましたようにさせていただいて,その上で編入学等々については大学分科会でもう少し先に議論を詰めていくことが必要だろうと思っています。いかがでしょうか。そんなところで取りまとめをさせていただきたいと思います。

【金子委員】  余計なことを申し上げますが,これは基本的に,アカデミックな流れと職業訓練の流れをどう統合するかというのは,国際的にも非常に大きな問題でありまして,私も一発で解決するというのは絶対ないと思います。非常に部分的に調整していくしかない。ヨーロッパは今,そういう問題でいろいろなことをやっているのですが,なかなかそんなに一つの制度でうまくいくということにはなっていないと私は思います。ですからこのことについても,すっきりとどこかで枠が決まらなければだめというような議論の仕方をしているとほとんど前に進めません。これは,確かにおっしゃるように,特区として地域でだけつながるとか,変と言えば変なのですが,考えてみれば,単位制でもって一応試行してみて,もう少しそれがどういう意味があるのかということを見るという考え方もできないことはないと私は思います。賛成の方向に回り過ぎているかもしれませんが,一応そういう点では切り離して考えてみるというのは意義があると思います。

【佐々木部会長】  では本件については,先ほどのとおり結論をまとめさせていただきたいと思います。 

(2)柔軟なアカデミック・カレンダーの設定について,文部科学省から資料2について説明があり,その後,意見交換が行われた。

【白井大学振興課課長補佐】  それでは資料2ですが,柔軟なアカデミック・カレンダーの設定について御説明させていただきたいと思います。これは,前回も資料を御用意させていただきましたが,時間が足りずに,御議論いただく時間がありませんでした。今回は,前回の資料から更に詳細なものに変えまして,もう一度改めて御説明させていただければと思っております。
 資料の2ページですが,授業期間に関する大学設置基準の関係の規定の改正の経緯です。昭和31年に,最初に大学設置基準ができたときですが,このときは「単位の計算方法」という項目の中で,毎週1時間15週の講義をもって1単位とするということで,毎週必ず1時間15週という,大変厳格な規定でした。その後,昭和48年に「授業期間」という項目に別途新しい規定ができまして,単位については,「15時間の講義をもって1単位」という現在の考え方,そして授業期間として「10週又は15週にわたる期間を単位として行う」という期間の考え方が,ここで別途置かれることになりました。平成3年にはただし書きが改正されまして,従前は外国語の演習,体育実技等の授業についてという例示があったものが,「ただし,教育上特別な必要があると認められる場合」には10週,15週でなくてもいいという規定に変わってきた経緯です。
 3ページにお進みいただきたいと思います。授業期間に関する最近の議論の状況ですが,大学設置基準では,皆様御案内のとおり,講義であれば15時間の講義が必要となっているということですが,この15時間の中に,定期試験の時間を含めていいのかどうかということについては,必ずしも明確でないところがありました。この点,平成20年の,いわゆる学士課程答申の中では,講義であれば1単位当たり最低でも15時間の確保が必要とされる。これには定期試験の期間を含めてはならないというような記述がなされたところです。この記述もある意味,当然といえば当然の記述ですが,この答申を踏まえまして,特に認証評価機関では,定期試験を10週,15週の期間に含めているような場合には改善するように,各大学に対して指摘をするような事例が見られるようになったというところです。
 現在,多くの大学では,講義15週の後に別途定期試験期間を設けるというようなやり方をされていらっしゃいますが,例えばここに,ある大学の例を載せておりますとおり,春学期を非常に早い段階,4月の第1週から開始して15週をとって,更に定期試験期間も1週間にしても8月まで食い込んでしまうというのが,多かれ少なかれ多くの大学の実情ではないかと存じます。このために各大学では,例えばハッピーマンデー対策として土日等に振りかえの授業を行うとか,いろいろな御苦労をされているところかと存じます。
 4ページですが,これまで,特に平成23年の10月から12月にかけまして,本部会でもいろいろ御議論をいただいてきました。その中で出された御意見としましては,15週プラス定期期間試験が確保されているかという認証評価機関における評価が,若干形式面の評価を重視するものというふうに大学で受けとめられてしまっているのではないかとか,あるいは8月までとにかく日程を確保するように頑張っているが,本当にそれが学修の実質化につながっているのかというような御疑問。あるいは,もしその15週プラス定期試験期間を無理に確保しようとすると,例えば定期試験を行わないで,レポート重視の授業に移行してしまうのではないか。そうしたレポートの授業が増えていけば増えていくほど,一つ一つのレポートの内容というのも薄いものになってしまうのではないかという,ある種のモラルハザード的なことが起こるかもしれないのではないかというような御懸念。さらに,週1コマを15週やるという,設置基準が当初想定していた授業形態だけでなくて,アメリカで行われているような,週複数回授業を行って,ある程度短い期間で完結するというような,現在の若干硬直的に見られるような仕組みを弾力化して,多様な授業の在り方を認めていくべきではないかというような御意見をいただいていたところです。
 こういった御意見を踏まえまして,5ページのところですが,10週又は15週という,2学期制,3学期制に相当する学期の原則は維持しながらも,従来主流であった週1コマ,15週,講義授業という授業の在り方については,より多様化を推進するために,弾力的な授業期間の設定を可能にしていきたいと思っております。特に平成24年8月に答申がありましたが,講義が悪いというわけではないのですが,一方向の知識伝達型の授業から,教員と学生が双方向に意思疎通が行えるような主体的な学び重視の授業に転換していただきたいということをその際に考えたいと思っております。
 なお,誤解があってはいけないと思いますが,今回の改正については授業期間を弾力化するものでありまして,例えば講義1単位13時間でもいいとかいった基本的な部分を変えるものではなくて,あくまで平成20年の学士課程答申の考え方については,これを踏襲していきたいと考えております。
 具体的な改正の方向性ですが,従前の規定では,教育上特別な必要があると認められる場合には,10週,15週より短い期間で授業を行うことができるとされておりましたが,この要件を例えば教育上必要かつ適当と認められる場合には弾力的な運用にするとか,あるいは10週,15週より短い期間だけでなく長い期間,例えば医学部などで行われているような20週とか23週とかを単位とした授業もあるかと思いますので,そういった期間についても明示的に認めていってはどうかということです。
 6ページのところですが,設置基準によって,では具体的に何が変わるのかというところについて御説明をさせていただきたいと思います。実はこの規定に関しては,現在でも教育上特別な必要があると認められるときには,10週,15週でなくてもいいというような規定は置かれております。ただ,以前の設置基準では語学であるとか体育実技といったことがこの例外の典型例とされていたこともありまして,多くの大学では,教育上特別な必要がある場合ということで,限定的な解釈といいますか,運用がなされてきたと理解しております。教育上特別な必要があるという要件を緩和しますことで,例えばここに,想定される具体的な事例と書いておりますが,週複数回授業。例えば今,早稲田大学などでもいわゆるクオーター制というものが御検討されていると思いますが,8週を全ての授業科目の原則とするような形の,いわゆるクオーター制の実施も明示的に可能になるかと思いますし,また例えば1コマ当たりの授業時間を若干長くすることで,これまで15週で行っていた講義授業を13週にまとめるとか,あるいは様々な授業形態の組合わせ,これも従前から可能ではありましたが,授業期間を弾力化することによって,例えば13週で,講義については週1回1コマ終わらせて,例えば特定のお休みの日にゼミなどフィールドワークに行ったりというような形もあるでしょうし,あるいは答申でも重視されているサービス・ラーニングですが,例えば6週間1時間の講義を毎週行った上で,1か月間,地域での社会奉仕活動をする。そして,その上で最後に振り返り学修をして,トータルでは11週間で授業を完結するといった多様な授業の在り方が可能になってくるのではないかと考えております。もちろん長い期間についても,例えば医学部等だけでなくじっくりと理解を深める。特に自学自習の部分を重視して,宿題など,自分の主体的な学びの部分を重視して取り組むような授業については,あえて20週とか長い時間をかけるということも可能にしたいと思っております。
 最後,7ページですが,弾力化に伴う質保証ということで,これまで認証評価機関で,きちんとアカデミック・カレンダーについて確認をしていたと存じますが,もしこういった弾力化がなされることになりますと,必ずしもそれが外形的に確認できず,質保証の面での御懸念も生じようかと思っております。この点につきましては,引き続き授業期間の原則10週又は15週であって,弾力化があくまで例外であることについては変わらないということは基本的な考え方です。また,講義当たり,講義であれば1単位当たり15時間ということも変わらない原則でして,仮にこれを弾力化した場合においても,単位の修得に必要な授業時間数,例えばサービス・ラーニングでありますとか,先ほどのフィールドワークといった場合においても,トータルできちんと必要な単位時間が確保されているということは,きちんと各大学で御説明をいただく必要があるということは前提です。
 また,どういった場合に授業時間の弾力化が認められるのかということですが,これも当然何でもありということではありませんでして,教育上合理的な必要性があって,かつそのことによって,週1コマ15週というような原則どおりの授業を行う場合と同等以上の,きちんと教育効果があるということについて,やはり大学側できちんと御説明をいただけるということが前提になろうかと思っております。こういった前提のもとに,各大学や認証評価機関にもこの改正の内容についてお伝えをしていきたいと思っております。

【田中委員】  御提案には大賛成ですので,是非お進めいただきたいのですが,そこについて早稲田大学でも同じ考え方で臨んできておりますので,その背景について少し御説明申し上げたいと思います。今の中では非常に重要なポイントだと思いますのは,資料2の4ページ目の丸の4番目のところですが,単に週1コマ15週の授業だけでなく,例えば週複数回授業を行って3か月程度で完結する授業などということが可能になるということなのです。このことは,私が早稲田大学の中でクオーター制を提案したときの背景にもありますし,セメスター制を全学部で徹底した背景にもあります。
 というのは,私自身の経験ですと,アメリカに留学したときに非常に新鮮に思いましたのは,ワンセメスターで1科目が終了する。私は当時1975年,昭和50年卒業でしたので,当時の日本の大学の経験では,1週間に1回の授業で通年の授業をする。35回もしくは30回の授業をするということでしたので,常に,1週間に持って歩く教科書は多くて14種類,少なくても10種類です。3年生ぐらいでも10種類です。ですから,十三,四種類の科目をいつも抱えていて考えていくということです。週に1遍それを学ぶということですから,内容を忘れてしまい,効率が悪い。アメリカの場合のセメスター制ですと6科目から多くて7科目ぐらい,少なければ5科目ぐらいです。5-7科目ぐらいの教科書のセットを持って勉強している。そのかわり週2回,3単位科目であれば週3回の授業をやっていましたし,5単位科目であれば週5回の授業をやって,50分授業を5回やっておりました。そのように集中的に教育を受けるということを学んでいました。それで,クオーター制の大学では10週でしたので,一遍にとる科目が3科目ぐらいに減るわけです。そして,3科目で,5単位だったら週5回,3単位だったら週3回の授業をやるというような,相当きっちりと授業回数と単位数を合わせて教育をしているということを経験しました。
 そこで,私どもが今考えておりますのは,例えば8週で終わるということはどういうことかというのは,早稲田大学では平成21年に,セメスターで15回の授業を徹底し,16週目に期末試験にするということを徹底して各学部にお願いをしてまいりました。私が教務部長のときにそれを進めたのです。その考え方というのは,要するに授業回数を重要視しておりまして,週数ではないと考えています。ですから,15週であるかどうかよりは,15回の授業をすることが重要なのであるということです。ですから,ワンセメスターで4単位提供する場合には,例えば月,木と,90分授業を2回やるということになります。90分授業2回で4単位,ワンセメスターでやるならば,8週間で中間試験のところを半分で切れば,8週間で15回の授業ができるわけです。15週あれば30回授業をやるわけです。8週間で15回の授業をやって1回の期末試験ができるということなので,8週であったとしても15回の授業というものが確保できる。そこで2単位提供ができると考えるわけです。なので,単位と授業回数が重要なのであって,週数が10と15というのは,特別な場合のような,夏期集中講座とかいうものだけに限られるのではないと考えておりまして,ここは弾力化いただきたい。ただ,その背景にありますのは,いかに教育の質を上げるか。学生が14科目とか10科目に分散している科目の集中を,セメスターであるならば5とか6とかに,クオーターであるならば3とか4とかに集中して学ぶということになるのだろうと思っております。ですから決して甘くするとかサボるということではなくて,いかに効果的な教育をするかということで,こういう御提案をいただいているのは大変ありがたいと思っております。

【長尾委員】  資料3の,先ほど示されました表のページに,柔軟なアカデミック・カレンダーの設定の議論は第6期で,平成24年11月12日と書いてありますが,私の記憶では,これは平成22年,本当に6期が始まったときからずっと議論をさせていただいていて,そして,とてもいい方向に向かい,明文化されたと大変うれしく思っております。今,田中委員がおっしゃったように,教育の質からアカデミック・アワーに,カレンダーの方向に向いていく。その,間の議論の中には,実質的な学修時間という言葉をあえて入れました。おっしゃったように,短くしていくのではなくて,本来あるべき姿に戻そうという議論がなされていった。そして,この結論が出たということは大変うれしいことだと思っているのですが,私の大学の場合には,例えば管理栄養士を出す管理栄養学科とか,幼児教育心理学科,つまり保育園の先生の資格を出すとか,つまり厚生労働省絡みのところがありまして,そして今,厚生労働省の方が帰られたのがいかにも残念なのですが,文部科学省はこれだけの柔軟性を持って対応していこうとしている中で,厚生労働省はやはり15回のプラス1ということをずっと言って,出席簿も全て提出が求められるわけです。そうなると,大学の中で二つの,文部科学省と厚生労働省の管轄を抱えている大学は,アカデミック・カレンダーがダブルスタンスになっていくということなので,是非,以前もこの話はあったと思いますが,文部科学省と厚生労働省の連携をこの先持っていただけたら大変うれしいと思います。

【川嶋委員】  私も弾力化には全面的に賛成で,先ほど田中委員からもお話があったように,集中して学ぶという仕組みを各大学で工夫していただければいいと思うのですが,それを前提にして今回の資料で3点だけコメントさせていただきます。一つは,先ほどいみじくも田中委員から出ました,6ページに書いてある,8週を原則とする場合,いわゆるクオーター制の実施と書いてあるのですが,これはいわゆるクオーター制ではないのです。アメリカでは12か月を4で割ってクオーターとなるわけですから,1学期は3か月で10週から12週になります。実際に大学は1年,12か月のうち9か月稼働していますから,クオーター制というのは原則として三つの学期から成るということです。多分,早稲田大学がこうお呼びになっているのは,1年授業期間の35週を4で割ると8週になるのですが,それをクオーター制とお呼びになっているのだと推察します。そこで,私の一種の苦言は,こういう審議会の資料に,これだけ国際的通用性の重要性が繰り返し強調されているにもかかわらず,特殊な例をこういう形でいわゆるクオーター制と言ってしまうと,やはり国際的な誤解を招くということがあるのではないかと危惧します。
 2点目は,同じく6ページの,その次の1コマ当たりの授業時間の見直しの箇所で,13週間で1.2時間という例があるのですが,原理原則は1単位45時間で,例えば授業時間はそのうち15時間となります。ただ,実際の授業時間は,例えば2単位ですと,本来120分,授業時間を設定しなければいけないのが,実際には多くの大学が90分で,ディスカウントしています。もちろん,授業の集中力の問題もあり,本当に今の学生が120分授業を耐えられるかという問題もあるのですが,現実にはやはり制度と大きな乖離がある。これをどう考えるかという問題が二つ目です。
 それから3点目は,先ほど3ページの下の方の囲みの中で学事日程例が出ていましたが,非常に窮屈な日程になっています。これはやはり日本の大学は,1月,2月,3月を入学試験のために割いてしまっているので,実際の授業に使えないというところもあると思います。ですから,35週のうち,1月以降,12か月分の二,三箇月を入学試験のために授業に使えない状況です。ですから,余裕を持って集中的に学ぶということを今後考えるのであれば,入学試験の在り方も変えていく必要があるのではないかと思います。

【鈴木委員】  簡単に申し上げますが,私がおりましたICUも,3学期制というものを五,六十年やっているところで,そういう意味では身についてしまっているのですが,全体として私は,やはりこういう方向に行かざるを得ないと思っておりまして,遅きに失したという感じがあるのですが,この方向で行くというのは歓迎いたします。
 非常にテクニカルで,これが可能になった後にいろいろ問題が出てくるだろうというのは,一つには,やはりクオーターあるいはセメスターあるいはトライメスターでもそうなのですが,先生方のティーチングロードが非常に厳しいものですから,今はサバティカル制度というのは形骸化している面もありますが,やはりサバティカル制度というのを各大学は考えないとまずいのではないかと思います。そうしますと,何年に1度サバティカルを与えるということになりますと,例えばICUでは7年に1度与えていましたが,先生の数が7分の1,常時いない,足りないということになりますので,そのあたりのところをどうするかということです。
 それから,とにかくクオーター制とかトライメスター制というのは非常に先生の負担がかかってきますので,TAを育てるという意味からも,使うということが非常に重要だと思います。
 それから単位制,1学期に取れる最大限の単位ですが,今のような非常に曖昧な状況ではなかなか,3学期制,4学期制にしたときに,やはり教育の質の実質化,向上というのは図れないだろうと思います。ですから,例えばICUの場合には,標準が1学期13単位ですので,大体1学年で取れるのが35単位から40単位ということになっているのですが,そのあたりのところも議論をする必要があるだろうと思います。それから,川嶋委員がおっしゃった,日本的な試験やら何やらというのがありますので,そのあたりのスケジュールの込み合っているところを,どうこれと整合していくのか。これもテクニカルな面ではありますが,非常に重要なことだと思います。

【荻上委員】  随分時間をかけて議論をした結果,様々な誤解などがあったこの問題に関して非常に明快に整理をしていただけたと思います。その上で1点確認をしたいのですが,設置基準の27条に,試験の上で単位を与えると,試験の必要性が書かれていますが,これをどう解釈するのかということです。それからその関連で,定期試験期間というものを設けなければいけないのかどうか。今回,整理していただいた,最後のまとめられているところでは定期試験のことは明確に触れていないので,明確に触れていないということは,定期試験期間というものを置く,置かないは大学の判断でいいだろうと私は解釈しますが,そういうことでよろしいのでしょうか。

【白井大学振興課課長補佐】  まず設置基準27条の方ですが,単位の授与については御指摘のとおり,学修の成果を評価の上で単位を与えるということです。条文上は,試験の上,単位を与えると書いておりますが,当然レポートであるとか授業への参加であるとか,いろいろな形の評価も含めた上での単位の授与ということですので,ここにおいて,必ずしも全てに,当然ですが,試験をしなければいけないということではないと考えております。
 それから定期試験の期間ですが,これについて平成20年の学士課程答申で,授業の時間とは別に定期試験の期間を設けると書かれておりますので,基本的にはその考えに準拠すると思っております。通常であれば,当然定期試験という期間というのは,あくまで原則は10週又は15週というのが基本形であると考えておりますので,その場合には,通常であれば定期試験期間というのは15週の外に当然設けられるものであると考えておりますが,ただ,非常に極端な場合,全ての授業科目においてレポートを評価するとかいった場合において,定期試験期間が絶対になくてはいけないかと言われますと,そこについては,絶対に置かなければいけないとは言えない部分はありますが,それは非常に極端な例でして,通常であればここは当然,定期試験期間というのがあってしかるべきだと考えます。

【荻上委員】  私は,3ページの真ん中の四角の囲み,つまり学士課程答申の中で,定期試験の期間を含めてはならないと書いてあるのは,定期試験期間というものを設定するのであれば別にしなければいけないというように私は読みたいのですが,定期試験の期間を設定しなければならないと読むべきでしょうか。そこは随分違うと思います。そこを明確にしておかないと,今まで長年あった誤解が更にこの先続くことになると思いますので,定期試験の期間を設けなければならないのであれば,改正される設置基準の中にそういう記述をしていただきたいと思います。

【佐々木部会長】  先ほどの27条の試験を少し柔軟に解釈する,すなわち成績評価の方法・材料は多様でいいということであれば,定期試験期間を設けなければならないというと,これは矛盾を来します。27条を緩やかに解釈するのであれば,定期試験期間を設けなければならないという規定は出てこないと思います。いかがですか。

【濱名委員】  1年前に議論したときに,私はこの件では言ったのですが,要するに定期試験のときだけで評価をするような時代ではなくなっているから,総括的評価の必要性はあるものの,定期試験という形態以外もあり得るということです。今,部会長がおっしゃったような解釈で,そのときの議論は成り立っていると思うので,そのように確認していただければいいのではないかと思います。そうでないと,「ねばならない」のだったら,設置基準に関して,そこは変わらないのです。また15週プラス1週なり,何日間か定期試験期間を置かなければいけないので,趣旨の中にある,8月に入ってやっていることが,学修効果の点で疑義があるという問題が解消しなくなりますので,そこはきちんと確認していただきたいと思うのです。
 それともう一つ,総論的にはもう大変結構で,私ども申し上げてきたことが形になってうれしいのですが,他省庁のことが問題になっているのですが,省内にも同じような問題を抱えている部局があるので,これは省内でまず徹底していただきたい。例えば教職員養成分野です。1単位で8週とかで8週間で1単位出せますということを,行政指導の中でそういう助言を受けたことが私はありますので,いわば1単位,要するに8週で講義科目が成り立たせられるというようなことが省内で今後起こらないような形で調整をしていただくようにお願いしておきたいと思います。

【長尾委員】  今,濱名委員がおっしゃった議論は,私も大変興味があるものです。一緒に頭の中に入れながらだったのですが,榎本室長がいらしたときに,私も濱名委員も質問した,試験の期間のことに関してですが,これは大学の裁量であり,中に入れることも大学で決めたらいいということでした。そのときには,試験というものをどう考えるかは大学で考えたらいいというお答えをいただいていたと思うので,この議論をまた覆したくないのです。

【荻上委員】  先ほど説明されたように言われると,やはり定期試験期間を設けるのが原則だということになりますので,これはあくまでも,文章に書かれているとおり,何も触れていないのだから,それは各大学の判断でいいということを,是非,この場でというか,どこかで明確にしていただきたいと思います。

【佐々木部会長】  いかがですか。表現の仕方はもう少し検討した上で御提案をいただくとして,そういう御意見であるということはきちんと踏まえていただきたいと思います。

【納谷委員】  部会長がおっしゃられたように表現の問題ですから,御検討いただきたいと思います。期間と書くから何となくひっかかってしまうのです。別に,定期試験なり,試験を行うと書けばいいわけです。ここにある,決められた中身のほかに,試験は別にやってくださいと書けばいいわけです。そうすれば,皆さんが言った試験のやり方等は,今弾力的にやっているとおりにやればいいわけです。ですから,表現を少し考えていただければよろしいかと私も思います。

【荻上委員】  試験は別にやってくださいと書かれるのは,やはり具合が悪いのではないでしょうか。評価の仕方はいろいろあると思いますので,きちんと評価をした上で単位を授与せよということが大事であって,試験というか,いわゆる時間をとって別に試験をするというようなことを決めるべきではないと思いますが。

【池田大学振興課長】  これまでの議論も踏まえて適切な表現を工夫したいと思います。

【田中委員】  4学期制について少し申し上げておきたいことがあります。今,濱名委員が御指摘になっていた,8週間で1単位ということがあり得ないという御指摘なのですが,私はあり得ると思っております。すなわち,セメスターの科目で2単位の科目というのは週に1回の授業です。90分授業ですから2時間分ですが,2時間分,90分授業が,セメスターですと15回ある。これで2単位であります。私どもが考えている4学期制というのは,川嶋委員がおっしゃるとおりで,いわゆるクオーター制ではありません。いわゆるクオーター制とアメリカで言っているのは12か月を4で割っているので。3か月で1クオーターになります。
 そういうことを申し上げているのではなくて,私どもが考えているのは,春学期を前半と後半に分ける。秋学期を前半と後半に分けるということです。なぜそれが必要かというのは,国際化のために必要なのです。というのは,欧米の大学や,9月に入学が始まる,北京なんかもそうですが,そういう欧米の大学ではサマースクールが始まるのは6月ですので,7月の末まで授業をセメスターでやっていると,学生はサマースクールに出られない。せいぜい行けるのは英語学校の集中講義だけです。普通の大学の授業を受けたければ,どうしても6月の頭,7日ぐらいには出してあげなければならないのです。それから,オーストラリアとニュージーランドのオセアニアは,2月に学年度が始まりまして,11月20日ぐらいで学年度が終わります。ですから,11月23日ぐらいからサマースクールが始まるはずです。これも,秋の学期が9月終わりぐらいから始まって11月22日ぐらいで終わりますと,23日からは秋の後期に入ることができるのです。そうすると例えば,現在ですとオーストラリアで授業を1年間留学して帰ってきた学生が,11月20日ぐらいに帰ってまいりますと,4月までぶらぶらしているしかないのです。これが,秋の後期で科目登録ができて授業に出られれば,11月23日から1月末まで,もしくは2月の頭まで授業に出て,そこの間,勉強することができるのです。送り出し後の受け入れに関しても非常にスムーズになります。それから,海外の学生が日本の大学でサマースクールを受けたいときに,今ですと8月に受けるしかないのですが,欧米では6月から7月にサマースクールを受けるのが常識ですので,春の前半と後半を区切る必要があるのです。そのためには,2単位科目のセメスター科目を8週間で1単位提供してあげる必要があると思っています。その柔軟性も必要だと思う。もちろん4単位の科目を,年間を4分の1にして,セメスターを半分にして,4単位で8週間で2単位ということもあり得ますが,2単位科目であるならば,8週間で1単位ということも必要だと思っています。そうしなければ,おそらく国際化はできない。
 それからもう一点申し上げると,東京大学がおっしゃっている,ギャップタームが必要であるという秋入学の考え方も,クオーター制であるならば,ギャップタームというのは学生が主体的に選ぶことができるのです。ですから,震災があったところにボランティアで,この学期は休んで復興のボランティアに行くということも自由に決められますし,どの時期に自分はどこでインターンをやるかというところも,秋の前半だとか秋の後半であるとか春の前半とか春の後半とか,夏休みと合わせてやるとか合わせないとか,いろいろなことが考えられます。そういうことも全て学生が主体的に可能になりまして,ギャップタームの使い方も学生が主体的に設計できますし,国際的にもどこの国に出るか,オセアニアに出るか欧米に出るかも自分で主体的に決められます。教員も,夏と秋の前半を組み合わせて研究に没頭するのか,どこでどのように組むかということによって,大変柔軟に研究期間も設けることができるということで,やはり研究と教育の国際化と柔軟化,またギャップタームの積極的な活用に関しても,こういうことをお認めいただけると,非常に柔軟になると考えております。

【濱名委員】  誤解があるので1分だけ。早稲田大学のお考えはそれで結構かと思います。私は,望ましいかどうかというと,複数,週複数回等々のことと矛盾するような形は望ましいことではないと思うのですが,他省庁や教員養成で出てくるのは,15週の学期制を半分に分けて単位を出すというような形になるのです。つまり,全体の制度と違う形での8週の授業がまかり通っていて,それが専門職養成とリンクされているとするならば,これは高等教育の仕組みとしては整合的でないということで,徹底していただきたいということです。

【佐々木部会長】  資料2の5ページに,設置基準改正の方向性として具体的な方向を丸二つで示してあります。本日は,この点を御承認いただいたということにさせていただきます。成績の評価の問題,試験期間の問題等々については,本日の御意見を反映される形で基準等々の整備を行っていただくということです。具体的な修正の提案は分科会へ提案することになります。これについては私に御一任いただいて,事務局と詰めた上で先へ進めさせていただきたいと思います。大学分科会でもう一度議論する機会がありますので,そのときにまた御意見を補足していただけたらと思います。議題2についてよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり) 

(3)第7期に引き継ぐ事項等について,文部科学省から資料3に基づいて説明があった。

【田中高等教育政策室長】  資料3を御覧ください。これは,今期,第6期の大学教育部会の審議状況を整理したものです。第6期におきましては,特に大学教育の質的転換ということにつきまして集中的に御審議をいただきまして,8月に答申をまとめていただいたところです。そして答申以後につきましては,資料3の表に整理しておりますような事項について審議をしていただいたところです。
 まず資料3の参考でつけておりますように,答申以降,審議事項といたしまして主に3点整理させていただきました。いわゆる学生のモビリティーあるいは接続の円滑化という観点からの進路機会・学修機会の充実,そして教学の質保証の充実,グローバル化の推進という3点について,今後の審議事項として整理させていただいたところです。その中で,特に進路選択・学修機会の充実につきましては,本日御審議いただきました職業能力開発大学校等の単位認定のほか,第7期におきましては,省庁系大学校の編入学あるいは高校専攻科の単位認定・編入学等々についても御審議をいただきたいと考えているところです。
 先ほども説明させていただきましたとおり,全体の方向性といたしましては,学生のモビリティーあるいは接続の円滑化を,教育機関全体を見渡して改善を図っていきたいというのが審議の依頼の趣旨です。ただ,そうした中で,質の保証という観点などからいろいろな条件がありますので,条件が整ったものについて適宜御審議をいただきたいと考えているところです。
 また,その下にあります,柔軟なアカデミック・カレンダーの設定につきましては,本日御了解いただきました,授業期間に関する規定の弾力化につきまして,更に1月の大学分科会で審議をいただきまして,それで成案を得た場合には,大学設置基準の改正をしていきたいと考えているところです。
 また,教学の質保証,グローバル化につきましては,質的転換の議論の中で何点か検討をいただいたところはありますが,そういった御意見,御検討も踏まえまして,7期から本格的に審議を行いたいと考えているところです。
 また8月の答申で指摘されております審議事項,3点ありますが,まず高校教育と大学教育との接続の改善につきましては,現在,高大接続特別部会で審議を行っているところです。その他の2点,学位プログラムを構築するための大学のガバナンスの在り方につきましては,今期の大学教育部会におきましても,ヒアリングを含めまして教学マネジメントの取組について審議をいただいたところでして,6期での審議を踏まえまして,引き続き審議を行いたいと考えております。また,短期大学士課程の在り方につきましても,7期において審議を行いたいと考えているところです。

【佐々木部会長】  では,黒田副部会長から一言御発言いただきます。

【黒田副部会長】  今日で第6期が終わりだということでありますので,皆さん,本当にお世話になってありがとうございます。第6期では大変重要な課題の答申をさせていただいております。特に学修時間の確保ということで,教育の質保証の問題を取り上げてやりました。今回はまた特に,高等教育の全体の在り方,他省庁の持っている大学校と高等教育,大学との関係をどう構築するのかという重要な課題の一つに,今日はそのほんの一つだけに単位認定と言うことで穴をあけたという感じであります。これは双方向になって初めて成り立つものだと思いますし,これを広く広げていくと,日本の大学というものが,本当に職業訓練と大学の在り方,このあたりをしっかりとわきまえていかないと,全部が全部,学校教育法に基づく学校の枠組みの中に入れたら,日本の国は成り立たないと思うのです。ですから,そういう特別なものを包含しながら高等教育というものをどう構築していくかという,これが非常に重要なことになると思いますので。これは第7期に議論が移ると思いますが,今後,日本の高等教育が日本の国を支える,日本の国を維持するための素地であるということを十分お考えいただいて,今後の議論を進めていただきたいと思っています。本当に皆さん,ありがとうございました。

【佐々木部会長】  積み残された課題も大変多くありますが,本当に積極的に御審議をいただいて,御協力に心から感謝申し上げます。

【板東高等教育局長】  今までお話がありますように,重要なテーマにつきまして,骨太の答申を出していただき,また,今日も含めまして,幾つかの非常に累積してきている制度的課題について御審議いただきまして,本当にありがとうございます。そのほか,大学改革実行プランの話とか,いろいろ進行しております大学改革について突っ込んだ御議論をいただきましたことを本当に感謝申し上げたいと思います。それから,何よりも感謝申し上げたいと思いますのは,質的転換に関しまして大学改革地域フォーラムを,委員自らイニシアチブをとって開催していただきました。おかげで,それぞれのフォーラムが大変盛況のうちに,そして非常に中身があるものとして開催できましたことを本当に感謝申し上げます。いろいろな意味で,この大学教育部会が大学分科会の中心になって取り組んでいただきましたことを感謝申し上げますとともに,引き続き御指導よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

【佐々木部会長】  それでは本日の部会,これで終了いたします。ありがとうございました。

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