大学教育部会(第14回) 議事録

1.日時

平成24年5月10日(木曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省東館3階3F1特別会議室

3.議題

  1. 大学教育の質の保証・向上について
  2. その他

4.出席者

委員

(部会長)佐々木雄太部会長
(副部会長)黒田壽二副部会長
(委員)金子元久,長尾ひろみ,宮崎緑の各委員
(臨時委員)佐藤弘毅,林勇二郎,吉田文の臨時委員
(専門委員)荻上紘一,高祖敏明,篠田道夫,鈴木典比古,田中愛治,長束倫夫,納谷廣美,濱名篤の各専門委員          

文部科学省

板東高等教育局長,田中総括審議官,清木文教施設企画部長,小松私学部長,常盤高等教育局審議官,奈良高等教育局審議官,合田高等教育政策室長,樋口大学改革推進室長,白井大学振興課課長補佐,齋藤高等教育局視学官,松坂私学経営支援企画室長,森友教育改革推進室長,坂下国際企画室長,杉江高等教育政策室室長補佐,小山田高等教育政策室専門官 他

オブザーバー

北原和夫(東京理科大学大学院科学教育研究科教授),広田照幸(日本大学文理学部教授),奥林康司(大阪国際大学ビジネス学部教授)

5.議事録

(1)日本学術会議の分野別の教育課程編成上の参照基準について,北原和夫東京理科大学大学院科学教育研究科教授,広田照幸日本大学文理学部教授及び奥林康司大阪国際大学ビジネス学部教授から,資料1に基づいて説明があり,その後,意見交換が行われた。

【佐々木部会長】  それでは,日本学術会議における分野別教育課程編成上の参照基準について,その策定状況,検討状況についてお話を伺いたいと思います。
 先生方には言わずもがなかもしれませんが,経過を申し上げますと,いわゆる「学士課程答申」において,「学士力」について「学士課程共通の学修成果の参考指針」が示されました。その際に,分野別の質保証の基準についても検討課題であるとされておりましたが,この中教審の審議を踏まえて,文部科学省からの要請を受けて,日本学術会議においてこの参照基準の検討が進められているところであります。そこでは,4年間のカリキュラムでどのような能力を育むかという観点を中心にして,各大学が教育課程の編成をする際の参照基準を策定する目的で議論がなされているところであります。
 昨年8月にも本部会で審議の経過の御報告をいただきましたが,本日は,おそらく一番難しい,懸案であろうとされておりました社会科学分野における参照基準にも議論が及んで,まとまりかけていると伺っておりますので,その御報告をいただくことにいたします。
 本部会で提案している質を伴った学修時間の実質的な増加・確保のもとで,何を教え,どのような能力を育成するかということを,各大学が組織的に検討する,組織的な教育を行っていく上で大いに役に立つ,意義のある御提案がいただけるのではないかと思っております。

【北原教授】  日本学術会議の大学教育の分野別質保証推進委員会が検討を進めてまいりました教育課程編成上の参照基準について,説明したいと思います。このほど少しずつ,一つまとまりつつありますので,それを御紹介したいと思っております。
 大学分科会で3月26日に出されました「審議のまとめ」を読ませていただきまして,そのところで,「予測困難な時代において将来学び続け,主体的に考える力を育成する大学へ」という題の「審議まとめ」ですが,その教育課程の充実のところで,今後の社会を見据えつつ,研究後継者養成よりも,大多数を占めるそれ以外の学生にとって意味のあるものとなるようにということで,この参照基準への期待が述べられております。それを受ける形で今日お話ししたいと思っております。
 まさにそのようなものを現在作成中でありまして,本日は参照基準というのは具体的にどのようなものであるかということを説明したいと思います。
 資料1の最初の2ページですがこれは今までの審議の経緯ですが,現在,言語・文学,法学,経営学が先行しておりまして,理工農全体の答申を確定してから生物学,機械工学,数理科学,それから家政学の検討が今進んでいるところであります。
 3ページ目に参照基準の本質的な考え方があります。朱書きのところですが,「画一的・外形的な基準ではなく」,学びの本質的内容を言語化しようとする試みであります。つまり,何々学を学ぶ,ある学問を学ぶことの意味は何かということを,21世紀という時代を見据えて我々は提案したい,こう思っているわけであります。
 4ページにまいりまして,参照基準の主要な構成要素ということですが,ここに書いてあるとおり,まず第1に,「当該学問分野の定義と固有の特性」ということを議論しておりまして,当該学問の特性は何かということを表現しようとするものです。重要なことは,そこでこの学問を通して世界をどう認識するのか,あるいは世界とどう向き合うのかということを大きなテーマにして,この特性ということを書くことにしております。それに基づいて身につけるべき基本的素養を提示する,こういうものであります。
 それから5ページ,これは基本的な留意事項でして,それから6ページには,理工農系の分野につきましては大変共通点があることに触れています。特に境界を超えて学問が流動している状況でありますので,それを踏まえて,理工農系で何か共通の基盤をつくっておくことが必要であろうということで,昨年6月に理工農系分野の共通点をまとめました。これを基にして現在進行しているところであります。
 7ページ目にまいりまして,今どんな状況かということを書いております。先ほど申し上げましたように,分科会を設置して審議を進めているところが経営学,言語・文学,法学であります。近く,歴史,地球・惑星,土木工学,建築,物理,こちらについても,これから手がけようということになっております。
 最後に,では参照基準はどういう使い方があるのかということでありますが,これは基本的には,8ページに日本学術会議として各分野の学士課程教育のあるべき姿を言語化しようということであります。それから,誰でも利用できる公共財としての提供。これは,各大学がプログラムをつくるときに活用するだけでなく,さらに国や認証機関,大学団体,関連学会,さらには企業,初等中等教育など社会の各方面の人たちがこれを公共財として使う。それはどういうことかといいますと,大学教育の本質は何かということを社会全体として共有できるものにしたいというように考えております。
 それから,FDのことも少し述べておりますが,こういう各分野の学びの本質を提案することによって,FDにおきましても大学教育全体の中でそれぞれの科目がどのように位置づけられるのかということを,教員の間でも自覚的に共有することが大事であろうということであります。
 最後に,これから広田教授が経営学の参照基準について説明いたしますが,これはほぼ最終版に近いところなのですが,6月16日に予定されております公開シンポジウムでさらにいろいろな意見をいただきまして,本日いただいた意見も含め,最終的にそれらを踏まえて6月下旬あるいは7月に委員会の案をまとめ,それをさらに学術会議全体で査読をしていただいて,成案となって世の中に出ていくという形でありますので,大枠はこれで行きますが,まだこの資料は多少いろいろな文言等が変わる可能性はあるということをお含みおきいただければと思います。

【広田教授】  机上資料の「経営学分野の参照基準(4月15日付案)」と,それから今の北原教授の資料の4ページとを見ていただきながら,お話を聞いていただければと思います。私のほうでは,これまで日本学術会議でつくっております参照基準というものがどういうものかというイメージを持ってもらうために,経営学の分野で作成途上のものを事例にして,大体こういうものであるということを御説明したいと思います。
 参照基準は幾つかの節で構成されることになります。経営学の分野についての机上資料では6節になっていますが,5節までは大体どの分野も共通の枠組みでつくることになります。
 第1節では,まず経営学を簡単に定義して,その後,経営学の性格,経営学を構成する諸領域といったものを説明しています。これは分野がどういうものかということです。1ページから2ページ,3ページのあたりまでが定義に関わる部分になります。
 3ページ,第2節は経営学固有の特性について論じることになります。経営学教育の持つ特質とは,もちろんどの分野もそうですが,その学問に固有の特性を踏まえて同定される必要があります。教育の中身は学問の中身と関わっているということです。そこで,まず経営学に固有な視点がどういうものかということが論じられています。
 ここでは,下線を引いたように,三つの固有な視点が立てられています。他の社会科学とは異なる固有の視点として,一つは組織全体を俯瞰的に見る視点です。それから二つ目が,組織を構成する各職能が直面する諸課題を分析する視点です。それから4ページへ移りまして,継続的事業体の活動を社会全体の発展から制御し,秩序づける視点という,経営学が持つ固有の視点というものをこういう形で三つ書き上げて,これがその後の教育のあり方の議論とつながっていくことになります。
 それで終わるわけではなくて,4ページの(2)では,多様なアプローチが経営学の中にはあるということです。その多様なアプローチが4ページから5ページにかけて整理されています。これも各分野によって違います。
 5ページで,今度は経営学の固有の特性として,社会的役割が整理されています。大きく三つの社会的役割を果たすことができるということで,先ほどの固有の特性と関連させて,トップマネジメントをつくり出すとか,組織内部の人間をつくり出すとか,組織を制御する視点を持つ市民をつくり出すとか,そういうことが書かれています。
 それから6ページでは,他の諸科学との協働の話が固有の特性の一環として書かれています。他の分野と経営学とはどういう形で現実の課題に関わってくるのかということが論じられていて,ほかの学問との関係を明確にすることで,逆に経営学の固有性と他分野との協働の必要性とを論じるという,どの分野もほかの分野との違いは何なのかといったことを議論すれば,固有の特性はわかるということが述べられています。
 ここまでは学問論です。経営学とはどういう学問かという話です。この次からが参照基準のいわば一番重要な部分になるわけですが,7ページの第3節のところです。「経営学を学ぶすべての学生が身につけるべきことを目指すべき基本的な素養」ということで,北原教授の資料の4ページを見ていただくと,すぐにわかりますが,学生にどういうものが身につくのかということを論じてあります。そこでは大きく二つ,細かく分けると三つが論じられることになります。
 一つ目は基本的な知識と理解,二つ目は基本的能力,分野に固有の能力です。それから三つ目としてジェネリックスキルです。机上資料の第3節ではその三つが順番に論じられることになります。
 まず,「経営学の学びを通じて獲得すべき基本的な知識と理解」というところです。少し補足しますと,前の固有の特性,分野に固有の特性を踏まえながらここでは議論が展開されていて,参照基準の中心で分量も一番多いところです。先ほど北原教授から説明があったように,参照する各大学が選択的に利用して,特色のあるカリキュラムの目標を設定していくということが期待されているために,何が身につくのかについてここでは多面的に書かれております。
 そこで,まず基本的な知識と理解でどういうものが身につくのかということで,3の(1)の1)で,まず本質的な意義から論じてありますが,そこは現時点での案を読み上げますが,「経営学を学ぶことで,まず継続的事業体という複雑なシステムがどのような論理で,どのように意思決定を行い,どのように行動しているか,そしてどのような結果になったかを理解し,説明することが可能となる。そこでは,短絡的な説明でなく,その継続的事業体が直面している諸問題の構造を分析し,その諸問題に対してどのような行動をとることが最適であるかを定量的・定性的に明らかにし,またその最適な行動から企業が離れることがあるとすれば,それは組織内の他の多様な条件故に生じるということを説明できるようになる」とあります。
 ここでは,経営学を学ぶことの本質的な意義というものを明確にしています。学修の深い,浅いといったことは別にして,共通に身につくものとしてこれが掲げられているということです。これを展開,発展させる形で以下の議論が構成されています。
 本質的な意義の次は,8ページに移りまして,ではどういう知識や理解,具体的なものなのかというのが2)のところになりますが,「経営学を学ぶ学生が学びながら獲得すべき基本的な知識と理解は,大まかに分けて四つの階層(レベル)に分かれている」として,ここでは,経営学の教育を通して学ばれるものを内容面で論じています。経営学の場合は四つのレベルに区分して論じています。
 1番目に,知識としての経営学の基本的知識と理解。それから2番目にスキルとしての経営学の基本的な知識と理解。9ページへ移りまして,3番目に教養としての経営学の基本的知識と理解。4番目に専門としての経営学の基本的な知識と理解。それぞれについて具体的にはどういうことかということが書かれています。
 これが身につくものの一つ目で,知識と理解の話ですが,身につくものの二つ目で基本的能力,特に固有の能力の話が9ページの一番下から始まります。
 10ページの1行目を見ていただくと,ここで書き込むものは何かということが各項で書かれていますが,専門的な知識や理解を活用して,何かを行うことができる能力,経営学を学ぶことで何ができるようになるのかといったことを言語化していくという部分になります。
 ここでは,マル1から始まっていますが,一つ目は職業上の意義としてどういうものがあるかという,仕事の中で何ができるようになるのかということがまず論じられています。下線部分だけ読みますが,「特に企業等の継続的事業体へ就職したり,自ら起業したりする学生にとっては,経営学の現実的課題への対処と職業上の意義はほぼ同様のものを意味している」ということで,経営学の場合はこのようにわりあいわかりやすく言えるのかもしれませんが,そのことをいろいろな形で議論しております。
 11ページの2行目には二つ目の視点が出てきます。職業上の意義でどういう能力が身につくのかとは別に,市民生活上の意義がマル2として出てきます。「企業社会に参加していく際に有用な経営学の知識は,企業社会以外でも有用性を発揮できる」ということです。いろいろな市民生活の多様な場面に経営学の知識が活用していろいろなことができるということが書かれております。
 それからマル3で,三つ目の視点ですが,経営学を学んでおくことが社会の変化の中で新たに登場する経営上の問題に取り組むための学習に有用だという,学問・社会の変化と経営学の学習の関わりで有用性が論じられているということです。
 12ページの3行目を読みますと,「経営学を学んだ学生は,社会における実践を通じて自らの知識を血肉化し,進化させていくと共に,最新の経営学の知見を常に摂取して学習を積み重ねていく必要がある。この点で学問としての経営学を学んでおくことは非常に重要である」とあります。要するに,社会に出た後のさらなる学びにとって,大学での経営学の学習が重要だということです。
 こうした議論を踏まえた上で,マル4です。獲得されるであろう具体的能力というのは何かということが整理されております。ここでは,獲得される具体的能力を一般的能力と専門的能力に分けて論じられております。これは分野によって随分違う整理の仕方があると思いますが,経営学はこういう形で,下線のところを読みますが,「経営学の学習を通じて獲得される具体的能力は基本的に共通である。経営学の学習を通じての一般的な能力と専門的な能力は以下のように言える」ということで,一般的能力として七つ,専門的能力として八つが同定されているということです。
 身につくものの3番目として,13ページの2)のジェネリックスキルがもう一つ大きな議論の主題になっております。分野に固有の知的訓練を通じて獲得することが可能な汎用的に活用可能な能力のことで,どのようなものかということですが,分野によって身につくスキルには違うものがあると思いますので,それぞれの学問の学習で一般的にどういうジェネリックスキルが身につくような学習がなされているのかといったことを整理していただいております。
 下線部を読みますと,「経営学固有の知的訓練を通じて,次のような汎用的に活用可能な能力を身につけることができる」ということで,情報処理能力とか,記載されているような能力が同定されています。
 この第3節が一番中心で,多面的な形で経営学の教育学習を通して何が学生に身につくのかということが整理されております。
 第4節へ行きますが,ここまでの議論を踏まえた上で,経営学教育で通常用いられている学習方法が整理されています。4の(1)が学習方法です。14ページに,「経営学は,理論科学であると共に実践科学であることから,経営学の教育方法も理論的教育,実践的教育など多様であり,経営学を学ぶ学生の学習方法も多様である」ということで,そこに五つの教育方法とそれの具体的な位置づけが整理されております。
 15ページの(2)が評価方法です。経営学教育においてどういう点に着眼しながら評価がなされているのかということを明確にしております。「経営学教育における評価は,教育目的により評価方法も異なる。また,経営学教育の期待度によっても異なる」とあり,知識が身についているかどうかといった評価の仕方から,卒論や面接のような,もう少し違った形の評価の仕方も書かれております。
 第4節が方法と評価の話ですが,最後に第5節として,市民性の涵養をめぐる専門教育と教養教育の関わりについて論じています。いわば専門分野の学びと教養教育との関係を整理しており,専門だけやっていればいいわけではなくて,教養教育が必要だとすると,その二つは経営学を学ぶ学生にとってどういう関係にあるのかといったことを整理していただいています。
 ここでは,現代的な課題を踏まえながら,二つのことが書かれています。一つは,専門として学ぶ経営学がそれ自体で教養的知性を構成するということ。もう一つは,幅広い教養教育を受けるということが経営学を学ぶ学生にとって必要であり,重要であるということが書かれています。
 16ページの下線部分だけ読みますと,「経営学という専門科目を学ぶことが,教養の知性を身につける上でも重要な役割を果たすものである」ということが(1)のほうで書かれています。
 それから(2)のほうでは,グローバルにいろいろな課題が生まれている中で,経営学を学ぶ学生は教養がきちんと身についていかないといけないといったことが書かれています。
 参照基準の共通の枠組みは第5節までです。ただし,今日の資料では第6節がありまして,経営学と経営者の養成というものがあります。参照基準の作成に当たっては,それぞれの分野の教育に固有の特記すべき事項があれば,第6節として書いていただくということになっています。経営学の場合は経営者の養成との関連を特記する予定です。この部分の内容はこれから書き込まれていく予定です。
 このように,参照基準がどういう構成でどういうものになるかということを,経営学の分野の事例で説明させていただきました。

【鈴木委員】  お伺いして,かなりバランスのとれた内容になっているという印象を受けました。
 それで,一番最初の1ページの下線の第1行のところも,継続的事業体の目標達成のために云々という,知識の体系であるということですので,前提として継続的な事業体に対する体系だということがあって,私はこれは非常に正統派の考え方だと思って,よろしいと思うのですが,一つ,継続的な事業体になる前の,業を興すといいますか,起業です,その段階というのが幾つか,例えば今,広田教授がおっしゃった一番最後の16ページの第6節のところで経営学と経営者の養成というところ,まだ分量は未定ですが,これをお書きになる予定だということをおっしゃっていますが,経営者,あるいは創業者の養成といいますか,その辺のところでアントレプレナー論というような議論,場所はここではなくてもよろしいのですが,それが必要なのではないかという印象を持ちました。
 ですから,継続的事業体の始め,これが今中心にあるわけで,それをもう一段行くと,この参照基準全体の前提といいますか,仮定はいわば国内の企業を前提としているわけですが,その企業あるいは継続的事業体が国内の営業だけにとどまらずに海外にまで展開していくという,それが今主流になっているわけですので,そのための記述といいますか,それが必要なのではないでしょうか。
 そのためにはやはり比較経営学です。日本の経営,アメリカの経営,ヨーロッパの経営,アジアの経営,大変違う面があるわけですので,その辺のところをどう記述する必要があるのか。
 そして,それをもう一段上がった,グローバル経営という,グローバルという言葉は後ろのほうの13ページあたりで2,3点散見されますので,これは意識なさっているというのはよくわかるのですが,これを一つにまとめてお考えになる必要があるのではないか等々,印象だけなのですが,この内容自体は非常に正統派で,かっちりと固まっているとお見受けいたしました。

【奥林教授】  いわゆる経営学というものが従来,起業のための学問,あるいは極端に表現しますと,いわゆる金もうけのための学問ではないかと,これは学問論としては従来方法論争でずっとあったのですが,それだけではない側面が実はあるし,21世紀になればなお一層それが重要になってくるのです。
 例えばボランティア活動であり,あるいは地域興しのような活動も実は経営学,地域経営学という分野もできています。ですから,もう少し広い視野から経営学というものをとらえ直そうというのが今回の基本的なスタンスでした。
 そうしますと,起業ということを考えたときも,ボランティア活動を何か発案して,組織し,そしてそれを継続的事業体に発展させていく,これも実は経営学の一つの重要な課題なのです。アントレプレナーシップというのはただ単に,いわゆる私企業だけではなくて,そういうところも含めたアントレプレナーシップというものを考えてみましょうということです。それが継続的事業体という言葉とか,あるいはグローバル社会の中でという表現の中に入ってきております。
 そのときに一体どういう事業を展開するのか,同時にその事業が一体社会の発展にとってどういう意義があるのか,こういうことを考えること自体も実は経営学の課題なのですということを,それをいわゆる社会からの統制という言葉で表現しています。つまり,持続的に発展する社会の中で,その社会の構成員の一部として存続していくためにはどういう考え方のもとに事業を展開していかないといけないか,そういうところまでも経営学の守備範囲に含めましょうというのが今回の提案の主旨です。
 ですから,グローバル経営も,それから比較経営も全部含めた一つの経営ということを考えていきましょうということです。

【濱名委員】  さすが日本学術会議がおやりになるだけのことはあって,非常にバランスのとれた,特に身につけさせるべき能力を,ジェネリックなものまで含めて,うまく接合していただいているという印象を受けました。本当に大変だっただろうと思います。
 他方,少し気になりますのは,後半になると急に,力があまり入っていないのではないかという点です。学習方法と学習成果の評価のところになると,少しボリューム感といい,具体的な記述も前半の格調の高さと比べると,何か漠としているという感じがしました。学習方法は既存の今ある方法をサマライズされているのですが,例えばケーススタディ型の要素とか,ビジネススクールとか大学院の中で用いられているような要素について特段注意を払われているという感じがしません。つまり学士課程教育の中で,これらの方法が有効なのかどうなのかというような見定めが,あまりされていないというのが一つです。
 最後の評価方法は,申しわけないのですが,これだけかというのが正直なところで,前段のジェネリックなものまで含めて,これだけの能力を身につけていく評価方法が2分の1ページではあまりにも少ないのではないかと思います。やはり前段にこれだけ,ジェネリックな能力まで含めて身につけさせるのだと提言した場合に,では,総合的な評価をどうするのかということが課題です。
 例えば最後の15ページの評価方法の下から4行目に,これは知識としての教養としてのものがあって,最後に(「さらに」で改行もなく書かれてあるのですが,)専門としての経営学の評価のところで,総合化するときに,学術論文型のものでいくのか,ビジネスプランを作成させていくような形の成果を期待されるのか,どういうことです。どのような形で学ばれたものを総合化して,評価に取り組むのかという,その辺への答えが並列的であるにせよ提起されていることを期待したのですが,「少人数のゼミナールによる長期の相互作用による質的評価が最適である」という記述だと,前段の身につけるべき目標の評価モデルとして現段階で満足をされているのだろうかと思います。もう少し書き加えられる御予定もあるのか,その辺のところをお尋ねします。

【奥林教授】  御指摘はごもっともだと思います。後半部分につきましては,これからさらにみんなで議論を深めていこうということになっています。ですから,近年非常に注目されていますPBL型の事業,そういうものも当然経営学の中に入ってきますし,それからいわゆるインターンシップなども経営学では非常に重要になってまいります。
 さらに,能力評価の中では,例えば経営学検定という,これは公的検定ではありませんが検定もありますし,それから国家資格としては公認会計士,あるいはさらに簿記会計の試験がありますので,そういうものを評価の中でどう取り入れていくかということはこれから検討していく予定にしております。

【広田教授】  学修方法とか評価にはいろいろな分野で共通なことが多くあり,分野に固有のものがどれだけあるのかということを考えると,なかなか苦労するところなのです。それで,むしろ前段の分野に固有の特性とか分野に固有に身につくものを踏まえながら,各大学でやはりこれからきちんと方法の改善を工夫したり,評価の仕方を考えたりというのが,重要だと思うのです。
 あまりここの段階で体系的な仕組みなどを日本学術会議がひねり出して,これに準拠しておけば大丈夫だという話になると,本末転倒の現象が起きてしまうのではないかと思いますので,おっしゃられるとおり,きちんと書き込んで改善するということは重要だと思いますが,基本は各大学にいかに改善を工夫してもらうかということを考えながらつくっていきたいと思っています。

【濱名委員】  おっしゃることはよくわかります。ただ,やはり各大学が工夫する,あるいは各大学の工夫においてどう総合的な評価をやっていくのかということについては,やはり明確に書いていただかないといけないのではないでしょうか。今の状態だと四つの観点について並列して書いてあるだけで,その後に,今,広田教授が言われた部分が出てこなければ,テストに依存したり,資格検定をやみくもに追いかけて,資格の合格率イコール経営の評価だと思っている大学もありますので,そういう大学がそれでいいのか。それも含めてありなのか,あるいは複数の評価の方法を多元的に組み合わせるようなことを求められるのか,やはり総合的な評価を経営学の分野ではどのように考えられるのかと伺いたいです。
 つまり,ジェネリックな能力の重要性を指摘しておられたものについて,評価のモデルを示すなどしていただきたい。そういう点では,まとめとしてどうとらえるのが各大学の責任なのかというところについてはリードしていただく必要があるのではないかと思います。

【北原教授】  伺ってもっともだと思うところがあります。ただ我々としては,あまり並列的な評価項目のような形にしてしまうと,それが一人歩きするのは困るかなと思います。
 前段で大変高い理想を掲げていますので,それがどう実現,それをどう評価するかということの一つの例なり,例示なり,その評価の目指す,評価はそれを一体何を評価しているのかということを例示的に,あるいはもっと概念的に何かきちんと書くことは必要かなと思います。

【金子委員】  参照基準のプロジェクトが始まったときに,本当にできるのかと,正直に言うと,大変不安に思っていたのですが,資料を見させていただくと大変立派なものができ上がって,大変御苦労があったのではないかと思います。ただ,基本的に参照基準自体の性格にかかわるのだと思うのですが,教える内容を整理するというのが基本だと思うのですが,もう一つの機能としては,何がミニマムリクワイアメントで,何がコアであるかということをやはり定義するということは大変重要で,それがないと,特に参照基準については専門分野別にやっていますから,どんどん対象が細かくなってしまう可能性があるのです。
 これを拝見させていただいてもかなり,あれも必要,これも必要というか,いろいろな知識の分野が必要だということが書いてあるのですが,それらを共通してこの分野が基本的にここのところは重要であるということがあまり見えなくて,それがジェネリックスキルとの関連が弱いというように見えてしまうところではないかと思うのです。
 特に,北原教授の発表,資料を見させていただいても,理系ではそういう問題意識はあって,分野での共通の最低これだけの知識,能力がないといけないということは明確に定義しようというのは,理系ではそういう意識が大変強くなってきているように思うのですが,ここではそれがあまり私は見ることができなくて,それをやらないと,参照基準って,せっかく努力していただいても,一つの危険は,これもある,これもあるというか,非常にいろいろな雑多な知識が必要というリストになってしまって,それだと今までの日本の大学教育,特に学士課程教育がどうも細かいものを並べすぎているという欠点があるということが指摘されたのに対して,十分な問題提起をできないということになってしまうのではないかと思うのですが,その辺りはいかがでしょうか。

【広田教授】  ミニマムリクワイアメントやコアについては,日本学術会議で枠組みを議論したときの非常に重要なところなのですが,今,金子委員が言われたものとはむしろ逆のものを目指しているのです。
 つまり,ミニマムリクワイアメントを設定するとか,コアを設定するという形である種の一律のものを示すのではなくて,その分野が持っている多様性をできるだけ確保して,例えば,理論を研究志向の大学だとある形で使える。実践志向のプログラムをつくりたい大学はそういう形でつくれるという,むしろ多様な形でそれぞれの分野の教育を展開できるようなものをつくろうというのです。その上でそこの共通の核になる哲学や理念は何なのかといったことから書き起こそうというのがこの枠組みなのです。

【金子委員】  そういう姿勢は確かに書かれていて,それは個別の大学がその中で一定のストラテジーをつくる,それに対してそれを実現するストラテジーについても個別の大学が構成するのが基本ではないかというお話だと思うのですが,ただやはり,先ほど申し上げた点は非常に気になるところでありまして,例えば経営学のカリキュラムを見ていますと,こういった内容が非常に羅列的に並んでいる印象を私はどうしても受けてしまうのです。
 むしろそれが統合されていないというか,それらを基礎とするような,もう少しコアのところで整理し直すことが,学士課程再編,学士課程改革にとって非常に重要な道筋ではないかと思うのですが,先ほどのお話だと,いろいろな多様性を示したのであとは大学の責任,ということになってしまいますと,やはりそのままで放っておくと,羅列的な内容をもうちょっと明確にしてしまうということになりかねないのではないかと思うのです。

【広田教授】  そこもむしろ逆で,個々の大学の教育を羅列的なものにしないためには,あるカリキュラムをきちんとした目標とか理念に沿って体系化する必要がある。今まではそこの部分の手がかりになるものが何もなかったわけです。何をスタートにして経営学教育を考えればいいのかとか,そういう哲学や理念を持って目標を明確化することによって,カリキュラムのそれぞれが単なる並列ではなくて目的的な形で組み立てられる。各大学にぜひそれをやってほしいということで広がりのある参照基準をつくっているつもりです。

【金子委員】  もう一つだけ。そういうお考えであれば,それはそれなりのお考えだと思います。ただ,例えばイギリスなどの参照基準は,こちらをつくるときに一つのかなり重要な参考になったと思うのですが,もう少しコアみたいなものを明確にしようという方向が明確にあって,今のお考えのように,特に日本学術会議などでやる場合にはやはり専門家の集まりということなので,今おっしゃった方向に行くというのはわかるのですが,もしそうであるとすれば,やはり相当な位置づけが必要だという感じがします。

【北原教授】  後で奥林教授に補足してもらいたいと思うのですが,この経営学の議論をするときに,経営学の関連学会が30ぐらい,一緒になって議論したわけです。経営学の中に会計学とか商学,鈴木委員がおっしゃった比較経営学とか,いろいろなすごい分野があるのですが,それを横串する概念は一体何であるかというところから議論していきますと,冒頭にありますように,継続的事業体として社会にどう貢献していくか,これが経営学の一番本質のところだろうということです。まさにこれがオーソドックスなところだと思うのです。まさにそこに返れという意味でこの参照基準をつくっていると考えていただければいいと思います。
 それをベースにして,一番コアな概念を基礎にしていろいろなスキルの話を,学力の議論をしているわけですので,ミニマムというよりは,むしろ何と言いますか,最も大きなグランドデザインとでもいいますか,そういうものだと考えていただければいいと思います。

【奥林教授】  まさに御指摘のとおりでして,今,経営関連学会協議会というのができていますが,つまり日本学術会議の中に研連(研究連絡委員会)がなくなってしまいましたので,その研連にかわるものとして発足させたのが協議会です。そこに登録している学会が59あります。さらにまだ教育経営学会とか,あるいはスポーツ経営学会とか,加入していない組織もありますので,関連を全部含めるとおそらく七,八十出てくる。そこで横串にできるコンセプトとすれば何か。そして,それがいわゆる継続的事業体という一つの組織だと。その組織を動かすというのが経営学の最も基本的な能力になってくる。
 だから,それがまさに経営学としてのミニマムリクワイアメント,そしてその体系の中でそれぞれの科目の位置づけを明確にしてもらうと,経営学の学士の能力,基準というものが明確になるのではないかというのが我々の考え方でした。

【宮崎委員】  大変格調高い資料を拝見していて感じたことなのですが,今の御議論ともかかわると思うのですが,特にジェネリックスキルというのは,ですからジェネリックなのですが,例えば経営学という単語を政治学とか社会学とかに置きかえても全部通用します。だから,学士力とは何ぞやということに,この部分がまさに答えている部分だと私は思いますので,ですから,これは社会科学全般とか人文科学全般とかに通用する土台の部分で,その上に,では経営学とかいろいろ出てくるというイメージかと思うのです。
 そうすると,今,大きな課題になっている,まさに学位はどの程度のものを目指すかとか,学士力は何かというときに,専門性をどこまで学部の段階で考えていくか。これは全体の特に後半の文言を,経営学をほかの学問にかえても通じるような部分というのが,これがまさにベースだと私は思うのです。専門というところをどこまで学部に期待するかという部分については,この参照基準でどのように答えていらっしゃるのかというのがもう一つ伺いたいと思ったのですが,いかがでしょうか。

【広田教授】  大学院教育とのつながりの関係で,学部教育はどこまで専門的であるべきかという議論も一つありますし,それから多様な大学がある中で,教養を重視する大学もありますから,専門性をどこまで考えるかといういろいろな議論はしてきているのですが,最初のジェネリックスキルに関して言うと,書けばたくさん書けると思うのです。
 経営学の教育もいろいろなやり方がありますから,そこで身につくジェネリックスキルは本当に多面的なものだと思います。ですが,固有のものを,特に伸びるものを書きましょうという,そういうことで進めていますので,あまりリストが長すぎたら何も意味も持たなくなるので,そうすると,各分野でそれぞれのジェネリックスキルを伸ばす部分というものが書かれることになると思います。一方で,大学教育はジェネリックスキルを育てるために編成したら,ゆがんでしまうのではないかと思うのです。
 つまり,専門教育を通してジェネリックなものも伸びるが,専門教育がなくなったら,ではジェネリックなスキルだけを伸ばす教育でいいのかという話をすると,多分それではだめです。ですから,専門性を持った教育を通してジェネリックなスキルが伸びるという,そういう枠組みの中でここで分野にこういうものを書いていくという,そういう枠組みになっています。
 どこまでというのは結構難しい問題です。深いか,浅いかということを考えると簡単ではありません。

【佐々木部会長】  今の点,バランスの問題は,非常に難しいところだと思います。私もじつは,学士課程答申が出た直後には,参照基準を日本学術会議等で分野別に検討するということについては後ろ向きに考えていました。そこでコアとかミニマムリクワイアメントということを明示することは,ある意味で大学教育を義務教育化してしまう,大学の多様性を損なうのではないかという意見をある雑誌に書いたことがあるのですが,今日,このお話を伺って,目からうろこが落ちるような思いはしました。
 ただ,逆に,金子委員の御意見を聞いて,これで果たして大学が具体化できるのだろうか,大学が具体的な教育課程の改革にこれをつなげていけるのだろうかというところに少し不安が生じました。そこのバランスは非常に難しくて,御苦労なさっていると思いますが,ぜひ今日の幾つかの御意見なども参照しながら継続検討を願えれば幸いです。

【高祖委員】  大事なことを御指摘いただいたと思うのですが,今回つくっている参照基準案も,ちょうど今,文部科学省の本部会が,後ほど議題になりますように,いろいろなところで説明会とフォーラムを開いて,意見の交流を行っているのと同じように,この後,シンポジウムという形で各分野について説明と意見交換の場を設けていく予定です。
 そうやって,各分野の分科会が作成した参照基準がそのまま出ていくというよりも,いろいろな方面の方から御意見をいただきながら,また広く社会に知っていただくというプロセスも踏む予定ですので,またそういうときに御意見をいただいて,よりいいものを練り上げるよう努めたいと思いますので,よろしくお願いしたいと思います。

【長束委員】  理解が不十分なところもあるかもしれませんが,参照基準というのは,各大学がその基準をもとに大学の教育内容を考えていくということだと思いました。
 これを読ませていただいて,経営学というものがどういうもので,実際にどういう力をつけるということが非常にわかりやすくて,これは実際に経営学を学ぶ大学生が読むものとして考えていらっしゃるのかどうかというところと,さらに行くと,私は高校現場ということで,高校生が大学のどの学部を選んでいくかというときに,これをもとに各大学が実践型のカリキュラムであるとか,起業型を中心にする,さらにはスタッフを養成するような,いろいろな形でつくっていかれるというようにお考えになっていると思うのですが,高校生が大学を選ぶ場合にはおそらく経営学を学びたいのか,経済学を学びたいのか,そこら辺のところは非常に曖昧で,どこの大学をどう選んだらいいのかというのは,経営学部もあれば,実は商学部もあり,商学部の中に経営学科があったり,逆の場合もありということで,どこの大学で経営学を学ぶのかわからないところもあると思います。
 そういう面では,こういったものが各分野ごとにでき上がっていくと,ちょっと趣旨とは違うかもしれないのですが,大学の何を勉強したいのかというものの一つの基準にはなってくるのかなとは思いました。
 どこまでお考えなのでしょうか。そうなるともう少し,こちらを見やすいようにというか,わかりやすく簡易版のようなものをつくられる予定があるかどうかもお聞きしたいと思います。

【広田教授】  この参照基準は,一番は各大学がカリキュラムの編成に使っていただくということですが,大学生にとって持つ意味というのは,自分が受けている教育が何を目指しているのかという,各大学でこれを使って言語化していくという話になると,自分が受けている教育の意義が自分で説明できるようになるわけです。そこはあると思います。今までのように124単位を取って卒業ではなくて,私はこういうことを目指す教育を受けてきて,これが身につきましたということが言える。これは大事なことで,これを使って副次的に生まれることだと思います。
 ただし,高校生にこれをダイレクトに読ませるのは難しいと思います。これを読める人はもうジェネリックスキルがある状態です。あまり高校生に読んでもらうためにとやると,むしろ参照基準が持つ膨らみとか奥行きみたいなものがなくなるので,もしもそれが求められるならば,それは別のバージョンをつくって考えるという話になるかと思います。

【奥林教授】  先ほどの質問は,高校生つまり受験生が学部を選ぶときに一つの基準にもなり得るのかということだと思いますが,我々経営学部の教員がよく質問されるのは,経済学部と経営学部というのは一体どこがどう違うのかという質問で,今でも頻繁に聞かれるわけです。経営学が成立して100年以上たっても,なおかつそう質問されますので,そういう現実をやはりきちんと認識した上で,経営学というのはこういう学問ですということを明確にしていくべきと思います。
 そして,その上で今進んでいますのは,高大連携の中で高校生と経営学が一体どのように勉強の中で連携していくかということですので,その指針にも十分になり得ると考えています。

【北原教授】  まさに最後に8ページに述べましたように,これはやはり公共財であってほしいと思っております。ですから,これは大学の業界の中だけで閉じる話ではなくて,あえてこのように言語化したのは,専門用語をできるだけ使わないようにと思って書きました。それは,大学の外の人にも見てもらって,大学は一体何をやっている,何を目指しているのかという,ですから,逆に言うと,この参照基準をもとにして大学の業界の中で,学術界の中でもっと議論して,これでいいのかも含めまして,共通理解をつくっていく作業をしなくてはいけないと思っています。
 かつ,こういうことでこれが社会に出ていくことによって,そしてこれがある程度大学という中で共有されていきますと,例えば学生が就職するときに,経営学をやった学生は少なくとも継続的事業体という言葉をきちんと理解しているということで,就職活動にもつながっていくだろうと思います。人材を外に出すためにもいいのではないかということも考えて,要するに社会全体として大学の学びを共有したい,こういう考え方です。

【林委員】  お聞きしますと,これから分野別質保証の作業を他の分野にも拡大していくということですが,少し気になるのは,広田教授がおっしゃった,いわゆる質保証のあり方は,大学が研究志向なのか,職業人養成なのか,あるいは教養人養成なのかによって違うということです。このような考え方をずっと引きずっていくのか。そうだとすれば何も出てこないかもしれない。
 分野別のカリキュラム構成の検討は,例えば,専門と教養,理論と実践,あるいは科目間などの関係やあり方についてなされるべきで,大学が志向する機能等に対しては,ウエートのかけ方や視点の置き方として,それぞれに委ねるのがよいのではと思います。そうすれば,今おっしゃったように,コア的な考え方があり,場合によってはプラットフォームがある。すなわち,分野別の質保証においては,ある程度の共通的な議論の場がいるし,枠組みが要るのではないかということです。これからの作業においては,今の機能別分化についての解釈も含め,ぜひこのことを議論していただきたいと思います。

【広田教授】  専門,教養とか実践,理論とか,二者択一ではなくて,全部を含み込んだところのさらに俯瞰するものを日本学術会議でつくって,各大学がどのエッセンスを引っ張りだしてくるか,それは各大学に任せるという,それだけの高みのところのものをつくろうという,そういう枠組みです。

【林委員】  それでいいと思います。

【長尾委員】  教育の質,専門分野の質の保証ということで,今,全体的な経済学の概論の整理をなさったと私は解釈したのですが,教育の方向の概論の後,質を保証するための科目のナンバリングということにはつながってはいかないのでしょうか。ここにつながるのかと思っていたのですが,逆に広くなってしまったので,そこのところを疑問に思ったのです。

【佐々木部会長】  要するに,これを何らかのカリキュラムの体系あるいはナンバリングなどにつなげていくというところまで御議論を進められるのかどうかということです。

【北原教授】  そこは各大学が持っているいろいろなリソースも含めて,それから学生の状況も含めて考えていただければと思うのです。というのは,経営学という学びが目指す方向を我々はここで言語化し,提示しましたので,それを目指して,どういう具体的な科目を並べていくか,どういう順序に並べていくべきかということは,やはりこれは大学でやるべきことではないかと私は思います。そこで持っているいろいろな先生のこととかです。もちろん経営学の学会の中で,業界の中で考えていただければと思います。

【長尾委員】  各大学に任せられると,共通の質保証ナンバリングというのはなくなってくると思います。

【北原教授】  ナンバリングというのは授業のナンバリングということですか。

【長尾委員】  科目のナンバリングです。

【北原教授】  科目のナンバリングですよね。

【長尾委員】  それは各大学だけではなくて,日本全体の大学の共通性を持たなければナンバリングではありません。そこのところはどうお考えですか。

【広田教授】  それは多分,この参照基準を使った教育の体系化の話とは別の文脈だと思います。これはそれぞれの個別分野の教育についてどうコンセプトを明確にするかという,それぞれの分野の教育をしっかりしようという枠組みですので,今,長尾委員がおっしゃられたナンバリングして教育カリキュラム全体の層をどう体系化させるかということは,こちらのみなさまがたのほうで考えていただければよろしいのではないでしょうか。

【長尾委員】  そうでしょうか。

【佐々木部会長】  最初からそこのところは一番難しい問題なのです。参照基準として何を示すべきか。すなわち,ミニマムリクワイアメント,あるいはコア科目,あるいはカリキュラムの体系というようなものを示すのが適切であるか,それとも,今日お話しになったように,それぞれの専門領域のコンセプトをきちんと打ち出すことが体系化につながる,体系化は各大学でやるべきだと考えるか,など,当初から難しい問題が予想されていたと思うのですが,本部会としては,各大学が教育課程を改革していく際の一つの指針となるような「参照基準」を示していただきたいと期待しております。また,本日示された意見につきましてもお持ち帰りいただいて,引き続き御検討の際に生かしていただけたら幸いに思います。
 また,シンポジウム等々,広く意見を聴取することを御計画なさっているようですから,そこで教育現場の意見を吸収されることが非常に有意義なのではないかと思います。

(2)大学教育改革地域フォーラムの結果及びパブリックコメントによる意見について,文部科学省から資料2,3の説明があり,その後,意見交換が行われた。

【佐々木部会長】  4月28日に関西国際大学で第1回目の「大学教育改革地域フォーラム」が開催されました。その状況をまず映像で御覧いただいて,さらにパブリックコメントで寄せられた御意見等を事務局から紹介して,その上で意見交換をしたいと思います。

【合田高等教育政策室長】  第1回目の大学教育改革地域フォーラムについて御報告をさせていただきたいと思います。まず,濱名委員,大変な御尽力を賜りましてありがとうございました。資料2,資料3を簡単に御説明させていただきたいと思っております。
 資料2にありますように,360名の学生さんを含めた多くの方々にお集まりいただきました。資料2の4ページ目を御覧いただければと思います。濱名委員,浅野教授,それから小嶋会長のパネリストによるお話や,3人の学生さんの発言の後,大変積極的かつ精力的なディスカッションが行われました。
 ページで申しますと,3ページは,その日の状況のわかる写真をまとめたものを載せさせていただいております。
 それから,戻っていただいて恐縮ですが,資料2の2ページ目の下のアンケートにありますように,満足度が74%,参考となるコメントがあったという方が85%ということで,大変熱心な御議論をいただいたところです。
 大学教育部会ではこのフォーラムの導入となる映像を放映いたしておりませんので,それを御覧いただきまくとともに,当日の学生さんの御議論を中心に映像をまとめておりますので,御覧いただければと思っております。
 なお,資料3,パブリックコメントによる意見ですが,これは時間の関係で御紹介は省かせていただきたいと思っておりますが,既に16件御意見をいただいております。大変本部会の御議論をよくお読みいただいて,熱心な御意見を幾つかお寄せいただいておりますので,あわせて御覧いただければと思っております。
 それでは,二つの映像を続けて御覧いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

(映像上映)

【佐々木部会長】  こんなに学生がたくさん集まって積極的に発言しているというのは,いささか驚きでもありました。

【濱名委員】  私も開催前には少し心配はしておりました。とにかく主催が決まらず募集を2週間でやっていますので,モデレーターは言い始めたからという理由で,川嶋委員に無条件で頼んだわけですが,外部の小嶋会長などには,いろいろと御協力いただき,御無理もしていただきました。我々は忘れていたのですが,当日はゴールデンウイークの初日だったのです。
 そのこともあって少し心配したのですが,合田室長には申し上げましたが,学生たちも最初は「審議まとめ」が難しすぎて,関連の新聞記事は読んでいるが,「審議まとめ」は読んでいない状態だったのです。各学科から推薦なり,手を挙げてもらった学生を集めて,一度打ち合わせを行い,川嶋委員と一体どの点にどう感じたのかということを聞いて,その中から3人ぐらい登壇者を決めたので,あまり発言内容に手を加えていないのですが,その上で本番までに読んできたら,それなりのことは言いましたし,それ以上にフロアから,うちの学生が一番多いのですが,画面に出ていたのは大阪大学とか神戸学院大学とか関西学院大学とか,いろいろな大学の学生が集まると大変な熱気が出てきました。稚拙なことというか,ボキャブラリーには個人差もあるのですが,きちんと発言していましたし,谷口委員が当日来られていたのですが,敵情視察とおっしゃいながら「大変よかった」とおっしゃっていました。
 終わった後,我々登壇者,文部科学省と学生で,シュークリームとお菓子で立食の懇談をやったのですが,谷口委員は「ぜひ熊本に来てほしい。君たちが来たいということであれば招待します」と言われたので,本学の学生もやはり何人か手を挙げていましたので,第2回目の熊本大学でのフォーラムに学生を2人送り出すことにしました。実際には金子委員の調査結果よりは,学生は捨てたものではないと思います。少なくともこういうところに出てくる学生はそうです。本学でもわりと先端的なことをやっている学科の学生の発言が光っていたということはあるのですが,学生たちはそんなに大学教育に失望しているわけではない。ただ,学修時間は金子委員のデータと今回の母集団も一緒でした。
 会場真ん中の前方の席を全部学生席にして,そのうえでクリッカーを持たせたのです。100人ぐらい集めました。そうすると,学生がど真ん中に座るので,自分たちが主役だという気になりやすいセッティングだったので,話しやすかったのかなという気がします。発言は全く途切れることなく,終了時間までずっと続いていたという状況です。

【佐々木部会長】  資料2の2ページに書かれてありますとおり,この後,5月16日は熊本大学,28日に早稲田大学,そして6月16日に筑波大学と,ここまでの日程が決まっているようです。委員の先生方がそれぞれ御準備をいただいていると思いますので,今後も御尽力よろしくお願いします。

【田中委員】  質問としては,どうすればあんなにうまくいくのですかということです。多分学生さんを前方に座らせたのはよかったと思います。我々も世の中にはオープンにするつもりで,どなたにでも来ていただこうと思っています。
 それから,できれば産業界の方に来ていただきたいと思っています。大学の教育は役に立たないと考えていらっしゃるような方たちに聞いていただきたいという気もしますし,意見も言っていただいて,我々が緊張感を持っているということもお見せすると同時に,我々も緊張感を高める必要があると思っておりますが,そのあたりを,学生を主体にすることも大事だと思いますし,それから外の目に対して我々教員も学生も触れることが必要かなとは思っているのですが,何かそこでアドバイスがいただけたらありがたいと思います。

【佐々木部会長】  こうしたフォーラムとあわせて,日本経済新聞や読売新聞に「大学の再生」をテーマにした連載も出ていますし,一つ社会的な話題,社会的な潮流ができつつあるのかなと期待しております。今後も各委員の皆さんには所属大学でのフォーラムの開催,あるいはフォーラムへの出席,モデレーターを担っていただく等々,よろしく御協力をお願いいたしたいと思います。

(3)大学ポートレートの検討状況について,文部科学省から資料4の説明があり,その後,意見交換が行われた。

【佐々木部会長】  「大学ポートレート」等の検討状況について鈴木委員から御報告をいただきたいと思います。「ポートレート」の意義については今さらここで繰り返す必要がないと思います。2月に鈴木委員を座長として「大学ポートレート準備委員会」が発足して,検討を進めていただいておりますので,その概要をこの場で御紹介いただきたいと思います。

【鈴木委員】  それでは,現在整備が進められております大学ポートレートの検討状況につきまして,簡単に御報告いたします。
 昨年の8月に文部科学省に「大学における教育情報の活用支援と公表の促進に関する協力者会議」という会議を置きまして,「中間まとめ」がまとめられまして,大学コミュニティが主体的・自主的・自律的に運営する情報発信基盤として,これはまだ仮称ですが,「大学ポートレート」の整備が提言されました。
 この提言に基づきまして,本年2月17日に「大学ポートレート(仮称)準備委員会」が発足いたしました。私は,ここにおられます金子委員をはじめとする有識者からなる準備委員会の委員長を任されております。この委員会はこれまで2回開催いたしまして,大学ポートレート(仮称)構築に向けた検討課題などについて議論してまいりました。
 具体的には,大学の作業負担を軽減するという観点から,学校基本調査等の統計調査などの際に,各大学で作成される基礎的な情報等の活用の考え方など,収集する情報や,その収集方法について議論する。それから画一的なランキングとは異なる各大学の特色や強みを具体的に表現する表示方法など,情報の共有あるいは公表の仕組みについて議論する。それから,大学コミュニティによる自主的・自律的な運営体制などについて議論するということで議論を進めているところであります。
 また,この委員会のもとにワーキンググループを設置いたしまして,そこでは大学ポートレートの構築に必要となる収集する情報の項目あるいは表示の方法等について,考えられる具体的な方策について検討して,この委員会に報告してもらうということにしております。
 なお,さらに具体的な内容あるいは今後のスケジュール等につきましては,文部科学省から説明をしていただきたいと思います。

【合田高等教育政策室長】  資料4を御覧いただければと存じます。簡単に御紹介をさせていただきたいと思っております。
 今,鈴木委員からもお話がございましたように,昨年の8月に文部科学省の中に設置されました協力者会議,これは鈴木委員,金子委員に加わっていただいたわけですが,それが大学における教育情報の活用,公表に関する「中間まとめ」というものをまとめ,既に本部会にも御報告をいただいているところです。
 資料4ですが,1ページから8ページまでは,この中間まとめの御紹介ですので,御説明は省かせていただきまして,10ページ目を御覧いただければと存じます。
 現在,鈴木委員を座長に大学ポートレート(仮称)準備委員会で御議論いただいております方向ですが,10ページ目にありますように,大学ポートレートの運営体制といたしまして,「大学ポートレートの運営方針は,設置形態ごとの大学団体,評価団体,日本私立学校振興・共済事業団等関係する事業を行う団体,有識者からなる「運営委員会」が決定をする。大学コミュニティによる自律的な運営という観点から,そういう運営委員会が決定をする。」という方向で御議論いただいております。
 運営委員会が決定した方針に基づく執行業務というのは,これは閣議決定におきまして平成26年4月を目指して設立を予定しております大学教育の質保証のための新法人に附置をいたします大学ポートレートセンターが担うことを前提に,このような体制で大学ポートレートを担おうという御議論をいただいております。
 次の11ページ,具体的な今後のスケジュールですが,大きく二つ分かれております。一つは,先ほど鈴木委員からもお話がありましたように,学校基本調査を中心といたしました統計調査で作成する基礎的なデータ,これにつきましては今年の夏以降,順次公表していく。
 特に,12ページにありますように,学校基本調査における大学の基本的な状況,大学組織,それから学科別の状況,学校施設,それから国公立の大学に関する学校経費といったものについて,学校基本調査で各大学から御提出をいただいているものについては,あわせてこの大学ポートレートの上で,それぞれの大学団体等の協力を受けて公表をしていく,それぞれの大学について学校基本調査の個票を公表していくということで現在検討が進められております。
 また,グローバル30などを担う大学においては国際的な情報発信を先行的に行おうという動きもありますので,これらを先行的な取り組みとしてデータの公表を進めていくということ。
 それから,大学ポートレート自体のシステム開発につきましては,政府調達等の手続を経て,平成26年度から本格稼働ということを前提に御議論いただいております。
 この大学ポートレートのシステム開発において,どのような情報をどのような形で,かつどのようなユーザーを想定して作成していくのかということについては,準備委員会の下のワーキンググループで御議論いただくということになっております。研究者それから大学関係者といった関係者だけではなくて,先ほど映像にも出ておりましたNEWVERYの山本理事長ですとか,あるいは大学の情報発信にお詳しいジャーナリストの方々などにも加わっていただきまして,ユーザー目線と申しますか,活用者の側の視点にも立って,いかなるデータを公表していくかといったことについてさらに議論を進めていくということになっております。

【佐々木部会長】  この「大学ポートレート」の議論が出てきた経緯には,「大学の質保証」とかかわって,質保証の基準を800の大学に一律に設定することができないので,それぞれの大学が機能別分化を踏まえて,養成すべき人材像や教育課程などを積極的に発信していく,それが「質保証」の基準になるという議論があったと思うのですが,「大学基本情報」に関する限り,そういう要素はあまり出てきません。そういう大学の個性を積極的に発信するという部分はこのポートレートに含まれていくのでしょうか。

【鈴木委員】  これもまた議論しなくてはいけない面もありますが,私はそう思います。学校基本調査等というのは非常に基本的なデータでありまして,やはり各大学がいわゆる社会のステークホルダーズに向かって積極的にどういうことをやっているのかということを発信していくということが重要なことですから,その限りでは,あるいはその観点からしますと,やはり各大学が積極的にこれを利用して発信していくというのが基本的な精神だと思っております。

【佐々木部会長】  それでこそ,いわゆる偏差値ランキングとは違った,それぞれの大学の個性とか実態を発信できるのだと思うのです。あまり形式的な数値だけだと,これはかえって偏差値ランキングにつながっていくのではないかという懸念があります。

【金子委員】  それはそうだと思うのですが,ただ,今まで考えてみますと,こういった基礎的な情報,基本的な情報について,個別大学について一切公的なデータがなかったといいますか,見られなかったわけです。
 例えば,新聞社がやっていますランキングというような本,実際あれはいろいろなデータを集めてのランキングでは必ずしもないわけですが,ただ,それを見るとある程度書いてありますが,しかし,公的な情報で必ずしもなくて,個別大学が実際何人学生がいて,先生が何人いて,常勤の方は何人いるか,そういう非常に基礎的なことが公開されたドメインには入っていなかったわけで,使い方はいろいろとこれから考えていくと思いますし,これは第一歩だと思いますが,そういう情報が公開されるという場が設定されていること自体,私はいろいろな意味で非常に大きな意味を持つのではないかと思います。

【佐々木部会長】  この点については引き続き御検討をいただき,また御報告をいただくとして,次回以降は,大学間連携によるFD・SD,あるいは教員評価の実施と活用,教学IRなど,教学マネジメントにかかわる問題の審議を続けてまいりたいと思います。

【合田高等教育政策室長】  今日は机上資料の黄色いファイルの中に,学長,学部長へのアンケートをとじ込ませていただいております。これにつきましては,特に金子委員,濱名委員,吉田委員,川嶋委員をはじめ多くの委員の先生方に大変御尽力をいただきまして,このような形で本日から調査を開始させていただいております。
 これは6月の上旬,6月4日に締め切らせていただいて,6月19日,あるいは7月3日の大学分科会との合同会議などでその状況を御報告申し上げ,審議の重要な材料にしていただければと思っておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。

【佐々木部会長】  今の話は,このファイルごと資料として提供しようということでしょうか。

【合田高等教育政策室長】  参考資料でございましたので,今後ファイルにとじ込ませていただくことを想定して机上資料の中に入れさせていただいておりますが,お送りしているのはアンケートのみです。

【長尾委員】  先ほどのビデオが大変気になったのですが,意見を一つだけ言わせていただきたいと思います。ビデオの中で学修時間のことが出ていました。そして,ナレーターが「最低15時間が必要です」と言っています。この議論はずっと1年間やってきて,そうではないということが結論として出ています。15時間ということは15コマ授業するということではなくていいと,45時間保証することだということが本部会で確認されたと思っていました。しかし,このビデオだと,最低15時間が授業で,その残りが学修という形になったので,少し私はがっかりしてしまいました。

【荻上委員】  いや,それはそれでいいのです。15回ではなく,15時間です。

【佐々木部会長】  15時間であって,15回とは言っていないです。

【合田高等教育政策室長】  こちらは,大学設置基準の1単位45時間と,その中で講義や演習については15時間から30時間までの範囲で大学が定める時間の授業をもって1単位とするということですので,あくまでも「自然時間」で申し上げたところです。

【長尾委員】  コマではないということですね。了解しました。

(4)今後の日程について,事務局から資料5の説明があった。

―― 了 ――

 

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