大学教育部会(第13回) 議事録

1.日時

平成24年4月16日(月曜日)17時~19時

2.場所

文部科学省東館3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 大学教育の質の保証・向上について
  2. その他

4.出席者

委員

(部会長)佐々木雄太部会長
(副部会長)谷口功副部会長
(委員)浦野光人,長尾ひろみの各委員
(臨時委員)川嶋太津夫,吉田文の各臨時委員
(専門委員)荻上紘一,高祖敏明,篠田道夫,長束倫夫,納谷廣美,濱名篤の各専門委員

文部科学省

藤木文部科学審議官,板東高等教育局長,合田生涯学習政策局長,田中総括審議官,小松私学部長,奈良高等教育局審議官,藤野野生涯学習政策局政策課長,義本高等教育企画課長,勝野私学行政課長,袖山高校教育改革PTリーダー,池田大学振興課長,合田高等教育政策室長,森友教育改革推進室長,樋口大学改革推進室長,松坂私学経営支援企画室長,齋藤高等教育局視学官,白井大学振興課課長補佐,杉江高等教育政策室室長補佐,小山田高等教育政策室専門官 他

5.議事録

(1)大学改革を巡る最近の動向について,文部科学省から資料1の説明があり,その後,意見交換が行われた。

【佐々木部会長】  審議に先立って事務局から,大学改革をめぐるこの間の動向について報告をお願いします。一つは国家戦略会議における議論,いまひとつは,本省内の大学改革タスクフォースでの検討状況です。

【義本高等教育企画課長】  お手元の資料1,大学改革タスクフォースでのこれまでの検討状況と,それから机上に配付させていただいています2種類の資料を中心にしまして,本部会の議論とも関連いたします大学改革全体の動きについての話を簡単にさせていただきたいと存じます。
 まず,大学改革タスクフォースですが,資料1にありますように,昨年の政策提言型仕分けをきっかけとしまして,大学改革のあり方につきましてスピード感を持って検討するということで,省内に,当時の森副大臣をトップとしますタスクフォースを,2の検討体制に書いているようなメンバーで議論をしております。これまで7回を開催しているところでございます。
 1枚おめくりいただきまして,そこではこの1から3にあるようなテーマで議論をこれまでしてきたところです。1番目は,本部会の審議まとめとも関連いたします,いわゆる学習密度を高め,成果を重視していくようなシステムづくりとか,それと関連する高校教育改革,高校教育と大学教育の接続の問題。
 それから,3番目として,この1番,2番目のテーマに関連するような大学のシステムの問題。評価を含めた世界標準の質保証の仕組み,あるいは機能分化とガバナンスの問題,それからいわゆる知の持続的創出と書いておりますが,研究力の強化の話。あるいは地域と大学の関係の問題等々について,これまで7回審議を重ねてきたところです。
 その結果を踏まえまして,できるかぎり早いうちに,今後の大学改革の方向性とおおむねどういうふうなスケジュールで全体を描きながら進めていくのかにつきまして,いわゆる改革のプランというものをまとめ,世に出していこうということを今考えているところです。
 それにつきましては,特に今後の話としては,これまでの議論を踏まえて,4点程度の軸で整理したいと思っております。
 1点目は,本部会にも関連する,学生がしっかり主体的に学ぶ,考える力をつけていくという問題。大学教育の質の転換,あるいは高大接続のあり方,そこによる学力保証の問題。
 2点目は,先ほどの話にもあるような大学の機能強化。それから機能分化の促進による大学づくりの話。評価の問題もありますし,また,この資料1にもありますように,国立大学の改革について,改革推進費,事業というものを活用しながら先導的な改革をどう進めていくのか。あるいはグローバル人材,研究力というようなシステム改革をめぐる問題です。
 3点目は,地域と社会とのかかわりに関連しますが,地域再生の核としての大学づくり,今後少子高齢化を迎え,18歳人口が減る中において,地域の課題あるいは生涯学習機能をどう高めていくかということについて,これまであまり大学政策においては十分焦点が当たっておりませんでしたが,そこを取り上げることはできないかという問題。
 4点目としては,それを支える意味での改革推進のためのガバナンスの問題,あるいは財政基盤というような点についてまとめ,今整理しております。
この資料1の4.にありますように,国家戦略会議においても大学教育を中心としました教育改革の議論を進めているところです。これについては机上配付の資料2と資料1をご覧ください。
 国家戦略会議においては,日本再生戦略を取りまとめようということで,各分野でのヒアリングを重ねながら議論をこれまで重ねてきたところです。特にその中においても,人材育成の問題を一つ中心の重要テーマとして位置づけて,それを取り上げようということで,7月9日に平野文部科学大臣も加わり議論したところです。
 文部科学省からは,机上配付の資料2で説明いたしました。詳しい内容についてポイントだけ紹介いたしますと,1ページ,2ページがこれまでの社会のありようの変化,あるいは日本の目指すべき姿ということを前提にしながら,3ページにあるような五つの柱でプレゼンテーションしております。
 1番目として,初中教育にかかわる問題ですが,世界トップレベルの学力の実現。あるいは2番目にあるようなグローバル人材の育成の話。3番目が,先ほどのタスクフォースの議論ともかかわりますが社会を変革するエンジンとして大学の役割,大学改革の問題。4番目が学びのセーフティーネットということで,学びの機会均等の問題等々を扱っております。5番目が,教育から職への接続ということで,キャリア教育,職業教育の充実というようなテーマを挙げているところです。
 大学改革については,机上資料7ページに概略を説明しておりますが,改革の方向性として,社会を変革するエンジンとしての大学の役割の発揮ということで,ここにあるような4点をテーマにして整理し,今後の方向性あるいはおおむねのスケジュール等について全体像として示すべく準備をしているところです。
 あわせて,机上資料に民間議員から資料1として提出されました「次世代の育成と活躍できる社会の形成に向けて」というペーパーも4月9日において議論のたたき台になっております。
 一部新聞でも報道されておりますが,1ページの下から世界で活躍する人材の問題,それから2ページから経済を支える人材の育成の仕組みの転換,3ページから,新聞でも出ておりましたが次世代を見据えた教育システムの抜本改革ということで,633制の学生のあり方も含めた体系の見直しの問題。
 それから新聞でも報道されておりましたが,大学の統廃合等の促進を含む高等教育の抜本改革ということで,国立大学あるいは私学について基盤経費のメリハリある配分を実現すべきではないかとか,あるいはグローバルリーダーを育成するための授業料減免等の重点強化,それから運営費あるいは私学助成を含めまして,統廃合促進を含めて大学改革を促進するとともに,いわゆる高専創設等々についての提言がなされております。
 これを含めまして,平野大臣からこのプレゼンとあわせて統廃合の問題,あるいはメリハリある財政の配分についてもコメントしておりますが,新聞でも報道されておりますように,統廃合を自己目的としてやるのではなく,統廃合によって地域から大学をなくすという発想ではなくて,大学の連携強化を図りながら教育研究力を高めて,人材の質を高める方策あるいは努力というのが大切であって,その結果として,取り組みが不十分な大学が淘汰されることはあったとしても,統廃合自体を目的として政策を推進するということについては,日本の教育水準を高めることにはつながらないということを明確に話をしております。
 時間も限られておりましたので,総じて財政的な観点からの部分が中心でして,人材育成の機能強化等の議論については残念ながら十分に触れることができませんでした。
 この会合は今後も続きまして,5月の国家戦略会議で大臣から改めて,大学の問題も含めて教育改革の方針を整理して報告する予定になっております。先ほども申しました大学改革の全体像を示すプランにつきましても,そのような取り組みを踏まえながら整理し,まとめていくということになっております。
 当然,中教審の議論とも期を一にしながら取り組みを進めていくべく,準備していきたいと思っておりますし,また,まとまった段階においては本部会あるいは分科会においても報告させていただきたいと思っております。

【谷口副部会長】  一つ教えてください。机上配付資料に,国家戦略会議や民間議員の資料等々ございますが,この会議はどれくらいの頻度というか,どういう形で会議を開催されて,どういう形でまとまっていくのか,その辺のスケジュールはどのような感じでしょうか。

【義本高等教育企画課長】  これは人材育成だけではなくて,先ほど申しましたように,ほかの例えば社会保障の問題ですとか,あるいは全体を含めた形で取りまとめをしようということですので,これは旧自民党時代においてもいわゆる経済財政諮問会議というのがありまして,そこでも民間議員という方々から提言されて,それを踏まえて議論を深めて,全体としてはまとめていくというプロセスがありましたが,おそらくおおむねそういうことと類似の対応になっていくのではないかと思っております。
 ですから,この民間議員のペーパーはいわゆる問題提起でございまして,それを踏まえて,文部科学省も含めて議論した上で政府として全体の姿をまとめていこうということです。文部科学省としては,大臣からもご指示いただいておりますが,人材育成,質の向上ですとか教育研究力を上げるためには,やはり大学間の連携をしっかりやっていくということが大事だというお話をいただいていますので,それを踏まえながら今後整理をして,提示していきたいと思っているところでございます。

【長尾委員】  先ほどご説明くださいました大学の統廃合等というところですが,机上資料の3ページには「86の国立大学法人について」とあり,統廃合は,この1項目だけが該当するのではありません。これは当然私学も含めての考えで,私学の統廃合というのはどういう思いで語っていらっしゃるのかをお聞きしたいのですが。国立はわかるのです。国公立の統廃合は。

【義本高等教育企画課長】  その辺がはっきり申し上げて明確ではございません。どういう目的で統廃合するのか,あるいはそれによってどういうことを考えていくのか。ここでは統廃合という言葉自身がこの表題のインデックスと,統廃合を含めた大学改革という形で,4ポツのところに書いておりますが,理念とか,あるいはそれによってどういう効果を目指していくのかということ自身が,必ずしも明らかになっておりません。
 議論としましては,財政的な問題も議論がありますが,教育的な観点から立ってどうなのかについての議論がなかなか含まれなかったという点があります。

【長尾委員】  補足ですが,この言葉がこのまま動いていくのでしょうか。

【義本高等教育企画課長】  はい。これは民間議員の方の問題提起ということで,そこでは議論の一つの材料にはなりましたが,これが一つの方針として決められていくということではありません。先ほど申し上げたように,政府の中において関係する文部科学省も入り議論した上で,適切な結論を出していくべく考えるという,そういう流れになると思います。

【高祖委員】  平野大臣が使われたこの机上配付資料の5番目に,教育から職業への円滑な接続のためのキャリア教育,職業教育の充実という点があります。キャリア教育ということですから,学校教育の中の話が中心になると思うのですが,現代のこの教育と職業との円滑な接続ということを考えると,大学だけでは片づかない問題があるわけで,産業界あるいは職業との連携というか,そこについても何か働きかけが要るんじゃないかと思うのですが,この辺について何か議論はありましたでしょうか。

【義本高等教育企画課長】  残念ながら,キャリア教育についての議論は4月9日の場では深められなかったということです。

【高祖委員】  これからそういうことについて議論していただけるんでしょうか。

【義本高等教育企画課長】  ただ,問題意識としては,この資料にも表しており,高祖先生からもお話があったように,これは学校教育体系とも問題が絡んでいますので,大学教育に限らず,初等中等教育も含めて全体の体系の位置づけと,あるいは接続の問題をしっかり考えていくという問題意識がございますが,その点はぶれはございません。

【佐々木部会長】  今後もこうした動き,あるいはタスクフォースでの検討の状況について,本部会にご紹介をいただきながら,本部会の議論も重ねてまいりたいと思います。

(2)「審議まとめ」に関連して検討すべき課題及び大学教育改革フォーラムの開催について,文部科学省から資料2~資料6の説明があり,その後,意見交換が行われた。

【佐々木部会長】  それでは,「審議のまとめ」に関連してご意見を賜りたいと思います。前回3月26日の本部会では,皆様から非常に具体的かつ貴重なご意見をたくさんいただきました上,最終的な文言の修正等は私に一任をいただいておりました。それを踏まえて事務局と協議をしながら,最終的な文案を作成いたしました。ここで主な修正点,あるいは今後検討すべき課題,あるいは今後の審議の進め方等について,事務局から「まとめ」に沿って説明をいただきたいと思います。
 また,「まとめ」にも書き込みましたように,今後,全国各地で学生あるいは保護者等を巻き込んだ議論を重ねていくことも重要であろうということを,前回この場でも述べたところですので,その具体化等についても事務局から説明をいただきたいと思います。

【合田高等教育政策室長】  第1に,先日26日の本部会で取りまとめをいただきました審議まとめの主な修正点について,第2に,今後の検討課題と審議の進め方について,第3に,本審議まとめについて本部会でのご審議と同時並行で行います全国各地の大学の学生を巻き込んだ学びに関する議論,熟議につきまして資料2から6に基づき説明を申し上げます。
 まず,資料2の審議まとめ「予測困難な時代において生涯学び続け,主体的に考える力を育成する大学へ」の冊子をご覧ください。本審議まとめの決定に当たりましては委員各位に格別なご高配を賜りましたこと,私ども事務局といたしましても心からお礼を申し上げます。特に佐々木部会長におかれましては,最後までお取りまとめにご尽力くださいましたことを重ねて感謝を申し上げます。
 資料2の審議のまとめについて,審議まとめ(案)からの修正点について報告を申し上げます。
 修正に当たりましては,前回部会長からもお話があったとおり,修正をしてはどうかというご意見と,他方で審議まとめ(案)を前提として取りまとめるべきとのご意見もございましたことを踏まえ,おおむね委員の先生方の合意を得られましたものについて修正を行うという観点で見直しをし,佐々木部会長において決定,確定をいただきました。
 具体的には,まず表題は「考える力を育む大学へ」となっておりましたが,「考える力を育成する大学へ」と修正いたしまして,本文でも原則としては「育成」という言葉を使っております。
 また,本文の3ページ目,下から2番目の○,それから一番下の○でございますが,「成長社会」という言葉を使っておりました。これにつきましては浦野先生からご指摘をいただきましたように,「高度成長期の社会」ですとか「高度成長社会」という言葉に修正をしております。
 それから,6ページ目の四角囲み等ですが,「質の伴った学修時間の増加・確保」という表現を,「質の伴った学修時間の実質的な増加・確保」ということにし,特に主体的な学びの確立ということを前提にした学修時間の実質的な増加・確保という本部会でのご議論の趣旨の明確化を図ったところでございます。
 それから,9ページ目ですが,「質を伴った学修時間の実質的な増加・確保を始点とした好循環」というところです。ここは前回さまざまなご議論があったところですが,前回の佐々木部会長の取りまとめを踏まえ,「学士課程教育の質的転換への好循環のためには,質を伴った学修時間の実質的な増加・確保が以下の諸方策と連なってなされることが必要である」ということで,教育課程の体系化,「大学,学部,学科の教育課程が全体としてどのような能力を育成し,どのような知識,技術,技能を修得させようとしているのか,そのために個々の授業科目がどのように連携し関連しあうかが,あらかじめ明示されること」。それから組織的な教育の実施,「体系的な教育課程に基づいて,教員間の連携と協力による組織的教育が行われること。往々にして大学の授業(授業科目)は個々の教員の責任に委ねられ,教員の専門性にひきつけた授業科目の設定が行われてきたが,学士課程教育の質的転換のためには,教員全体の主体的な参画による教育課程の体系化と並んで授業内容やその実施に関わる教員の組織的な取組が必要」。授業計画(シラバス)の充実,「学生に事前に提示する授業計画(シラバス)は,単なる講義概要(コースカタログ)にとどまることなく,授業のための事前の準備や事後の展開などの指針,他の授業科目との関連性等の記述を含み,授業の工程表として機能するように作成されること」。「教員の教育力の向上を含む諸課題を進めるための全学的な教学マネジメントの改善」。「このような諸方策について,各大学における工夫を期待するものであるが,本部会も検討を継続することとしている」ということで,ご議論がありましたが,こういった形で学修時間に着目した上で好循環を回していくということが全体としてどういう意味があるのかということを明確に記述をしました。
 10ページ目の上から三つ目の○ですが,これは川嶋先生のご指摘を踏まえまして,その文章の中見出しを「実態把握」や「支援諸施策の検討」と,国等による支援について言及していることを小見出しの上でも確認し,強調しております。
 また11ページ,「学位プログラムで育成する能力の明確化」ですが,上から二つ目の○に,鈴木先生と濱名先生のご指摘を踏まえまして,「学位授与の方針があることにより,それに基づく組織的な教育への参画,貢献を評価することもできる」との記述を追加いたしました。9ページの先ほど読み上げました記述と相まって,鈴木先生のおっしゃる授業マネジメントに関する記述ということになるかと存じます。
 また,同じパラグラフで「優れた教育を行った教員の全国レベルの顕彰」という文言については,本部会のご議論を踏まえて削除いたしました。
 12ページですが,二つ目の○の最後,就職活動の早期化・長期化の是正につきましては,浦野先生のご指摘を踏まえまして,「企業には大学における学修を尊重した上で」という文言を挿入しました。
 おおむね修正は以上でございます。全体の構造や趣旨等につきましては,前回の本部会のご議論を踏まえまして,変更はございません。なお,この審議まとめにつきましては,既に6月末を一応の締め切りといたしまして,広く国民の皆様方から意見をホームページ上等で募らせていただいているところです。
 次に,資料3につきましては,これを前提にパンフレットを私ども事務的に用意させていただいたものでございます。先生方にご覧いただき,ご指摘等ございましたら事務局までお寄せいただければと存じます。
 次に,資料4をご覧ください。資料4ですが,先ほど佐々木部会長からもお話がございましたように,審議まとめを踏まえまして,夏をめどにと安西分科会長からもおっしゃっていただいております答申に当たり,さらに本部会で検討すべき事項です。審議まとめで言及があるものをそれぞれ個別に整理をしておりますので,簡単にご説明,ご報告をさせていただきたいと存じます。
 一つ目は,審議まとめの10ページ目にもありますように,大学生の学修に関するさらなる実態や課題の把握であります。これについては具体的に後ほど後半でまた詳しくご説明させていただきたいと思いますので,詳しい説明は省かせていただきますが,できましたら,4月中にアンケートを発出し,6月上旬の本部会でその結果を暫定値ででもご報告をさせていただければと思っております。
 また,審議まとめの10ページから15ページに,質を伴った学修時間を実質的に増加・確保させるために必要な方法や施策の基本的な方向性,教員の教育力の向上のための具体的な方法や施策の基本的な方向性,全学的な教学マネジメントのあり方といったことが今後の検討課題として指摘されております。
 三つ並んでおりますが,学士課程教育の質的な転換のための改革サイクルが回り,全学の方針を共有した各教員による組織的な教育が行われるという観点からは,例えば,効果的なファカルティ・ディベロプメントの実施,教育に関する教員評価の実施と活用,教学IR,教学担当スタッフ等のあり方などについて,国内外における具体的な取組事例。さらには中教審の教育振興基本計画部会でも意見発表していただきました,学生の視点から大学生の中退予防に取り組んでおられて,教学IRやFDなどの戦略的な活用について指摘をなさっているNPO法人NEWVERYの山本理事長などにもお話をいただきながら,ご審議をいただくとしてはどうかということで調整をさせていただいております。5月をめどにご審議をいただきたいと思っております。
 また2番目でございますが,同様の観点から,例えば教育課程の見直し・修正期という,そういう時期における全学的な教学マネジメントと,それから各学部等の教学マネジメントの役割分担と連携ということにつきましても,国内外の具体的な取組事例,あるいはアメリカの研究大学の分析を通じまして,大学のマネジメントやイノベーションの重要性を指摘されておられる上智大学の上山先生などのお話も聞きながら議論いただくことで考えてはどうかということで調整をさせていただいております。5月をめどにご審議をいただければと思っております。
 また,質を伴った学修時間の実質的な増加・確保のために必要な学修支援環境の整備など,さまざまな課題に関する効果的な支援諸施策につきまして,これは先ほどのアンケート調査,それからこれからご説明申し上げます各地での学生を巻き込んだフォーラムなどで寄せられた意見,あるいは各大学への対応状況等を踏まえて,5月から6月をめどにご審議をいただければと思っております。
 なお,これに関連しまして,審議まとめの12ページにもありますとおり,高祖先生を中心に日本学術会議で大変ご苦労,ご尽力をいただいて,教育課程の参照基準が経営学などで徐々に形になっているところです。各大学,例えば社会科学分野などでも教育課程を学内で考える上で大変重要な参考となるこの参照基準につきましても,日本学術会議の検討状況というものを5月上旬にご報告をいただく方向で現在,調整をさせていただいております。
 次のページですが,(3)として学修成果の達成度の把握やこれを重視した認証評価のあり方ということが,審議まとめの14ページから15ページにかけて指摘されております。具体的にはアセスメントテストの研究開発,大学ポートレートの早期整備,各大学の特徴がより明確に把握できる客観的な指標の開発,認証評価等の大学評価の見直し,これらにつきましては文部科学省内において専門的な検討を加えまして,随時分科会,本部会に報告をし,ご議論を賜ればと思っております。
 最後ですが,高校教育と高等教育の円滑な接続について,審議まとめの13ページに指摘をされております。これにつきましても後ほど改めてご説明をさせていただきますが,初中分科会の高等学校教育部会において高校での学びの質の転換に向けた高校教育改革について,更に議論が進んでいるところです。今後,初等中等教育分科会と大学分科会とが合同でその接続の円滑化について議論を行い,その状況を随時分科会,部会にも報告するという形で議論を深めていただければと思っております。
 先ほど申し上げた意見募集ですとか,これからご説明申し上げます各地での学生を巻き込んだフォーラムでお寄せいただいたご意見につきましては,部会,分科会の毎回冒頭にご報告を申し上げて,ご議論の参考にしていただきたいと思っております。
 次に,資料5です。先ほど佐々木部会長からもお話をいたただきましたように,本部会でのご議論と並行して,各大学においてフォーラムなどの形で学生も含めまして,大学での学びについて議論していただくということで現在検討を進めており,その報告でございます。
 まず資料5ですが,各地でそのような議論を行うに当たり,今回お取りまとめいただきました審議まとめの趣旨を,学生へのインタビューなどを交えて取りまとめた10分から15分程度の動画にしてはどうかという意見が省内の若手から出てまいりまして,現在作成作業中です。それが資料5でして,真ん中あたり,(2)の用途にもありますように,大学教育改革地域フォーラムや熟議における導入として活用するとともに,文部科学省の動画チャンネルに掲載をするということで現在作業を進めておりまして,一番下にありますように,現在の作業状況を踏まえ,今週金曜日4月20日に予定をしております大学分科会において,試写と申しますか,上映をさせていただきたいと思っております。
 その内容ですが,2ページ目以降にありますように,審議まとめのご議論を踏まえて,大学教育に対する国民,経済界あるいは大学生自身の厳しい声ということを前提にしながら,中教審の三村会長,あるいは本日ご出席いただいておりますニチレイの浦野会長などのインタビューで,企業が求めている学士課程教育への期待,それから金子先生にユニバーサル段階への高等教育の質についてお話をいただいた上で,3ページ目にありますように,現在さまざまなところで大学で取材をさせていただいておりますが,学生自身へのインタビューにより様々なタイプの学生の声を入れた上で,最後に安西分科会長から中教審のご議論をご紹介いただくという形で,最終的には3ページ目の一番下にありますように,大学生の学びが大学教育改革の中で大きな課題になっています,これからの大学の学びについてあなたはどう考えますかということで,これを導入に各地でのフォーラムを行っていただくのはどうかということで現在,作業を進めているところです。
 その大学教育改革地域フォーラムですが,続けて資料6をご覧いただければと存じます。このフォーラムにつきましては,本日も出席しております私学経営支援企画室長の松坂と,それから視学官の齋藤という者が現在担当しておりまして,全国各地でこのような形でフォーラムを行うことについて準備を進めさせていただいております。
 資料6の2の全体スケジュールにもございますように,4月から7月末の答申までのおおむね3か月の間で10回程度開催することを目標に,中教審の先生方などにも大変なご尽力をいただいて,スケジュールを今調整させていただいているところです。
 その下の当面の日程の目安というところにありますように,4月28日の土曜日に第1回を関西国際大学で行っていただくという方向で今具体的な取り進めを行っております。また本日,谷口学長にもお運びをいただいておりますが,時々刻々と決まっておりますので,ここには書き切れなくて恐縮でございましたが,5月16日に熊本大学で,国立大学として初になるかと思いますけれども,このフォーラムを開催していただくということで現在確定しております。順次,先生方にご尽力,ご指導を賜りながら日程調整をさせていただければと思っております。
 その下の3,地域フォーラムのテーマ,実施方法の考え方というところにありますように,(2)のテーマの例として,学修時間の確保の問題,あるいはそのことが実際に社会で役立つ学びにつながるのか,あるいは学修の内容と時間というものをいろんなアクターはどう考えているのか,それから高校までの学習や入試との関係といったことについて学生も交えて議論を,その下の実施方法にありますように,パネルディスカッション,熟議あるいはセミナー・講演会という形式で,むしろお受けいただきます大学の創意工夫を前提としながら議論を起こしていってはどうかと考えております。
 (4)の一番下にありますように,地域フォーラムで出された意見の要約,結論をまとめたペーパーというものは大学教育部会にご報告を申し上げるとともに,文部科学省のホームページに掲載をし,まさにこの本部会初のこういう各大学に対する学びに関する情報発信というものがどう受けとめられ,どういう議論になってきたのかということを順次,この場にフォードバックして,またさらに議論を深めていただくという循環でご議論を賜ればというふうに思っております。本件につきましては今後とも委員各位に格別のご高配を賜りたく存じますので,何とぞよろしくお願いを申し上げます。 

【佐々木部会長】  それでは,まず,「審議のまとめ」案の修正等についていかがでしょうか。ご意見がございましたら伺いたいと思います。
 今後,「答申」に向けて議論をさらに重ねてまいりますので,その間に文言や表現の仕方等々の修正も可能だと思いますので,差し当たり,これまでの「審議のまとめ」はこういう形でご承認をいただけますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【佐々木部会長】  それでは,今後の検討課題及び審議の進め方について説明をいただきましたが,この問題について少しご意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。特に資料4を中心にしてご意見を賜ればと思います。

【吉田委員】  今後,学修の実態について調査をされるということですが,具体的に学生の学修時間の把握というのをどのようにされていくおつもりなのか,そのあたりをお聞かせ願えませんでしょうか。

【佐々木部会長】  その調査の問題は,この次に少し説明をいただいた上でご審議願いたいと思っております。
 まず,フォーラムの実施というところまでについてご意見をいただきたいのですが,いかがでしょう。
 一つ,私からですが,先ほど説明がありましたまとめの9ページに,学修時間の実質的な増加と確保がカリキュラムの体系化や教育の組織化というところにつながらなくてはいけないということを書き込んだのですが,審議の過程では,まだそこまで具体性を伴わないで踏み込むのはいかがかという金子先生のご意見もありました。今後の審議の中で,学修時間の増加・確保と,カリキュラムの体系化あるいは組織的な教育との関連,あるいはカリキュラムの体系化の具体的な手法,あるいは組織的な教育を進める上でのマネジメントとの関連など,この辺りについて具体的な検討が要ると思っておりますが,いかがでしょうか。

【合田高等教育政策室長】  部会長からおっしゃっていただいておりますとおり,そういう観点から,資料4の(2)にございますように,FD,教員評価,IRなどについて少し具体的に議論をいただければと思っておりますが,これ以外にもこういう観点で具体的に議論すべきという点があれば,ご指摘をいただければと思っております。

【佐々木部会長】  例えば,ナンバリングについては鈴木先生からご紹介がありましたが,もう少し踏み込んだ具体的な議論,各大学でどう取り組み得るのか,それが大学間で連携する際に持っている効用など,もう少しご紹介いただくべきことがあったのかという印象は持っております。

【長尾委員】  フォーラムを各地で行うというのは,次のステップでいいのですが,フォーラムの趣旨が,「大学教育の質的転換を図るために必要な課題や具体的な取り組みについて,様々な立場から広く議論する」というのは,とても抽象的になってしまっているように感じます。例えば,それはどういうような方法で取り組んでいくのか,今おっしゃっていただいたようなそれぞれの地域の大学のFDのグッドプラクティスの発表をするなど,議論の仕方というのはそれぞれどこが主体で決めていくことができるのかというのが一つの質問です。

【佐々木部会長】  谷口先生,どんなふうにイメージしていらっしゃいますか。

【谷口副部会長】  基本的には大学でやらせていただく。各大学やり方はそれぞれの立場でおそらく違うと思います。私立は私立の,あるいは大きい大学は大きい大学として,私どもは私どもの,ある種固有のやり方だけれども,一般性を持つような形でやらせてもらおうと思っています。
 特に本学の場合には学生を主役にしたいというか,学生にいろんなことをどんどん言ってもらうような雰囲気で,学生と一緒にやっていくという,そういう立場を取って進めたい。いくらこちらが一方的に頑張ってやったとしても学生自身が取り組まなかったら人は育ちませんから,私どもはそういう形,立場でやりたいです。
 一応議論するテーマがここに例示としてありますが,すべてこれらは絡みますから,一緒に繋がるような話になるかと思っております。

【長尾委員】  主催校の主導で実施するということですね。

【合田高等教育政策室長】  おっしゃるとおりでして,私どもこういう形で少しイメージを示させていただいておりますが,ぜひ各主催校においてそれぞれの実態に応じた多様なフォーラムを開催していただければ,私どもぜひいろいろご支援をさせていただければと思っております。

【佐々木部会長】  私はかねてから,中教審で行っている議論がどこまで大学関係者,大学人に共有されているのだろうかという問題意識を持ち続けてきました。ですから,私なりに事あるごとに教授会とか教育研究審議会等々で話はしてきましたが,学生も含めて,中教審の大学教育部会ではこういうことを話しているということを伝達して,意見を聴取するというのは大事なことではないかと思います。
 ですから,学生中心というのも一つの方法ですし,学生に行く前に大学の教員がこういう教育改革について思いを共有してくれないことには,どうにも進みませんので,教員の意識改革を進める方策の一端として,こういうフォーラムをそれぞれ大学,あるいは地域で,考えてはどうかと思いますが,いかがでしょうか。

【荻上委員】  今,部会長が言われたことは非常に重要で,まさにそのとおりだと思います。ここにもFD云々のことが書かれていますが,FDというと,ともすると何か教育技術のような非常に小さい話に受けとられる向きが多い,あるいは多かったかと思いますが,多くの大学でこういうことをテーマにしてFDをやっていただくということが必要ではないでしょうか。
 それもできれば,こういうことについてきちんと説明ができるような方をお招きして,本当はそれは学長ができれば一番いいのでしょうが,そういうことをぜひ多くの大学でやっていただくことが出発点になるのではないかと思います。

【佐々木部会長】  私が今考えていることの一つは,私この4月に新しい大学に籍を移しましたが,ここで5月にPTA総会や教育懇談会があるのですが,その場でこの議論をわかりやすく紹介したいと思っております。
 ただ,谷口先生もおっしゃったように,大学によって,設置形態によって,あるいは地域性によっていろいろ課題というのは違っていると思いますので,それぞれ多様なグルーピングでこのフォーラムを実施できれば結構ではないかと思います。

【谷口副部会長】  私ども1回やったら,はい終わりとは思っていません。もう既に入学式の日には保護者の方が800人~900人ぐらい来られたので,せっかくいらっしゃっているからといってみんな集まっていただいて,もう既に類似の会をやっています。そういうことができる大学はどんどんやっていけばよいと思います。たまたまこの日(5月16日)はウイークデーですので,なかなか人を集めるというのは大変ということもあって,学生のためにということで設定させていただいています。
 場合によったら,市民の皆さんも含めてやる機会も別途作るかもしれません。もちろん先生方には今まで基本的にはFDという形でやっておりますが,学ぶ主体は学生なので,学生にまず理解をしてもらうことが大事と考えています。というか,学生のほうが先生方よりもよほど早く理解をしていくと思います。それで実効を上げていきながら進めることができればと思っております。

【川嶋委員】  これに先立ってもう少し詳細な資料を送っていただいてはいるのですが,例えば今日の資料6ですと,主催大学と,それからこの大学教育部会ないしは大学分科会と文部科学省の関係が非常に見えづらい。一体どういう経緯でこれが出てきてというのが,今日の資料6では,それこそ社会から見た場合,非常にわかりにくい。
 本当にボトムアップで,熊本大学と関西国際大学が手を挙げてやろうということなのか。しかし実際はそうではなくて,大学教育部会から発案し,それを文部科学省が調整しているということであって,そのあたりの三者の関係はやはりきちんと説明しないと,これの意義がうまく理解されないのではないかと思います。

【合田高等教育政策室長】  ボトムアップという話がありましたけれども,熊本大学にはまさに,中からそういうご検討,ご議論を賜りましたことを本当に心から感謝したいというふうに思っております。
 位置づけといたしましては,中教審の大学分科会大学教育部会で今回の審議をまとめる一つのきっかけとして,ぜひ学生を巻き込んでこういう議論をしてはどうかというご提言をいただきましたので,私ども文部科学省として各大学にお声をかけさせていただいているところです。
 その過程の中で,主催の趣旨というものを,例えばだれが主催するのかという形で明確にすべきということであれば,共催にさせていただくとか,あるいは我が大学はぜひ自分のところでやるんだというところであれば,私どもご支援をさせていただくなど,そこは個別に丁寧にご相談をさせていただきながら,最もよい形で開催していただくように,私どもも意を尽くしてまいりたいと思っております。

【佐々木部会長】  例えば私の前任校愛知県立大学に,学生のFD研究会というのがあるのですが,教員や学生,卒業生までヒアリングをして,授業改革の提言を出してきたのです。名古屋大学,愛知教育大学にも学生のそういう委員会があるということを聞きました。その三つの学生のFD研究会の主催でやってもらって,そこに文科省なり私どもなりが説明に行くという形でもいいのではないかと思っております。
 ですから,事務局から説明があったように,開催の形態はいろいろ考えられます。ただ,基本的に本部会が呼びかけて文部科学省がアレンジをするという筋でいいのではないでしょうか。

【合田高等教育政策室長】  学生FD委員会というのがあること自体,すばらしいことだと思いますが,学生主体の取り組みにつきましても,ぜひ私のほうからご連絡をとらせていただいて,いい形で協力できればというふうに思っております。

【佐々木部会長】  今後の審議の進め方等については,資料4をベースにして各回の審議スケジュールを立ててまいりたいと思いますので,先生方からも事務局のほうへぜひご意見を寄せていただきたいと思います。
 それでは,資料7以降,初等中等教育分科会高等学校教育部会の審議状況をご紹介いただきながら,今後の議論の連携,すり合わせ等についてご審議いただきたいと思います。

(3)学士課程教育に関する緊急調査及び高等学校教育部会の審議状況について,文部科学省から資料7,資料8の説明があり,その後,意見交換が行われた。

【合田高等教育政策室長】  資料7ですが,これは審議まとめの10ページにもありますように,学士課程教育の現状と課題ということについて,文部科学省としてしっかり把握するようにというご指摘を本部会からもいただいているところです。
 本部会での審議に資することができるように,資料7にありますように,現在アンケート調査の実施を検討しているところですので,お目通しの上,ご議論,ご指摘をいただければと思います。
 趣旨といたしましては,学生の学修時間の実態把握という,各大学においてどのような学修時間の実態把握を行っているかという状況を把握するとともに,学生の学修時間を増加・確保していくために各大学で行っている取り組みの現状,課題を調査するということでございます。
 現在のところ,すべての4年制大学の学長先生,及び学部ごとにかなり状況が異なると存じますので,各部長の先生方すべてにアンケートを送らせていただいて,ファクスないしはウエブでお答えをいただくということです。
 本部会の先生方,及びそれ以外の専門家の先生方にもご助言をいただきながら,できるだけ正確かつ簡潔な,かつスピーディに集約できるようなアンケートにさせていただきたいと思っております。
 調査事項ですが,学生の学修時間をそれぞれの大学でどう把握をしているのか,その把握の方法や学修時間の実態。それから質を伴った学修時間の実質的な増加・確保のために導入している教育制度・教育システムや,教育方法・実践の具体例。毎年行っておりました大学における教育内容等の改革状況調査との重複を避けながら,今回の審議まとめに沿った有益な情報が得られるように,調査項目を整理させていただきたいと思っております。
 例えばシラバス,それからナンバリングといったようなものがそれぞれの趣旨に沿った形で行われているのかどうか。あるいは,クリッカー技術等の活用による学生応答・理解度把握システム,体験・実践活動等についてお伺いをするということで現在検討しております。
 また,学生の学修時間の確保が進んでいない要因,それから,これは本部会でもご議論ありましたように,学生の学修時間の増加・確保をしていくために国や大学支援法人にどのような期待をするのか。学修時間の確保に向けて大学全体で取り組んでいく際の教学運営上のガバナンスの課題,組織運営面,あるいは人事管理面での課題といったものについてもお伺いをしたいと思っております。
 現在のところ,4月下旬に調査表を発出いたしまして,5月上旬に締め切りをし,6月の上旬に本部会にその結果をご報告するということでスケジュールを考えております。ご指摘,ご指導いただければと思っております。

【吉田委員】  一番ここで知りたいのは,学生の学修時間の把握状況というのが一番上に出ていますが,具体的にどのような方法を使われるのかと思いましたので,お伺いする次第です。

【合田高等教育政策室長】  私どもが把握するというよりも,各大学でどのような把握をしておられるのか,その具体的な方法も含めてまずお伺いしたいと思っております。

【吉田委員】  そういう項目を学長や学部長に聞いていて,組織的にそういった学生の学修時間を把握しているということはまずないと思うのですが,これを聞いたら,そんなことは何もしていないという回答になる可能性が非常に高いと思いますが,それを把握することが目的なんでしょうか。

【合田高等教育政策室長】  私ども全体を把握しているわけではございませんが,少なくとも,少なくない数の国立大学が学生生活実態調査ですとか学生状況実態調査ですとか,そういう名前で学生の生活時間,学修時間を把握しているという状況もありますので,そういった全体像をぜひ今回把握させていただきたいと思っております。

【谷口副部会長】  アンケートの原案のようなものはもうでき上がっているのですか。4月の末に送るということですが。

【合田高等教育政策室長】  この原案につきましては今整理をさせていただいております。今日のご議論も踏まえて,さらに整理をさせていただいた上で,部会の先生方にはお目通しをいただいて,さらにコメントをいただいて,各大学に調査として発出したいと考えております。よろしくご指導ください。

【長尾委員】  吉田先生と同じようなことになると思うのですが,「学修時間がどれぐらいか」という漠然とした調査だと,学修時間というのは新たな定義というものがあります。だから,例えば「本を読んだ,それは3時間と見なしていい」とか,「ボランティア,あるいはインターンシップに行ったのは学修時間の中に組み込んで計算していい」とか,1コマで授業がこれだけあったという学修時間数や,我々がずっと言い続けてきている宿題をやったとか,復習のレポートをした以外にも自主的な主体的な学修をどのように数えていくのか,どういったコンセプトなのかを明らかにしていただきたいと思います。だから,1単位につき45時間という学修という意味合いを理解した上でアンケートをとらないと,みんな違うコンセプトで学修時間を言ってくるのではないかと思うのです。

【合田高等教育政策室長】  今回の調査の趣旨は,これから学修時間の実態を一定の学修時間に関する定義についてのコンセンサスに基づいて調査をするというよりも,既にそれぞれの大学で学生生活実態調査などの形で学修時間を把握しているという実態がございますので,それをまず把握した上で,それはどういう把握の仕方をしているのかということ自体を集めさせていただき,この本部会の議論の参考に供させていただきたいと思っております。

【佐々木部会長】  金子先生の研究グループがそもそも4.6時間と出してきたのは,何かに基づいているわけでしょう。ですから,過去の調査の手法などを学びながら,準備を進めていただいたらいかがでしょうか。

【川嶋委員】  調査対象は,学長及び学部長で,先ほど分野ごとに違うので学部長にも聞くということですが,こうやって学長と学部長に聞くということ自体が,学部あって大学なしというか,今議論している全学的な教学マネジメントがないということを前提にして調査しているような印象を受けかねないと懸念します。学長と学部長の認識なり,ご意見が食い違えば,それはそれで一つの知見かと思うのですが,調査票を設計されるときは,学長に聞く質問と学部長に質問する内容というのは区別して行うということでよろしいのでしょうか。

【合田高等教育政策室長】  私ども本日こうやってご提起をさせていただいているのは,一つには,やはり各学部によって状況はかなり異なっておりまして,その状態をできるだけ実態に即して把握するに当たっては,学部長にお伺いするというのも一つのやり方ではないかと思っている次第でございます。
 その意味では,学長にお伺いする問い,それから学部長にお伺いする問い,これは現在整理をしておりますが,全学的にどういう学修時間増加のための取り組みをしているのかということは学長にお伺いしておりますが,そういった方針を学部の中でどのように各教員に,あるいは各教室に伝える努力をなさっているのかというのは学部長に聞くなど,その内容については共通するものと異なるものと観点を違えて整理をさせていただき,お伺いをさせていただければと思っております。
 そこから学長と学部長の意識の差というのも見えてくるかもしれませんが,もしそういう状況がありましたら,それはそれでまたぜひ議論の素材として整理をさせていただき,ご審議を賜ればと思っております。

【吉田委員】  この調査で明らかにしたいことは,学長や学部長の認識の度合いを知ればいいという,そういうことなのでしょうか。

【合田高等教育政策室長】  学長,学部長の認識の度合いというよりも,むしろ審議まとめの10ページでお話をいただいておりますように,10ページの三つ目の○にありますように,学修支援環境の整備などさまざまな課題があると。文部科学省等「関係機関において,学修の実態をさらに深く把握するとともに,これらの課題や各大学の対応などについての調査が必要である」というご指摘を踏まえて,整理をさせていただいたものでございます。
 したがいまして,ご認識というよりも,資料7にございますように,その実態とともに,学修時間の確保が進んでいない要因,それから国や大学支援法人に期待すること,ガバナンス面での課題といったものについて,認識というよりは,それぞれの学長あるいは学部長が把握している事実と申しますか,状況というものをできるだけ学部ごとのきめ細かい情報をとらせていただいて,本部会の審議に資することができないかと考えている次第でございます。

【佐々木部会長】  手法についてはいろいろ検討すべき余地はあると思いますが,これは吉田先生,金子先生をはじめ,その道の専門家のご意見をいただきながら整理して,先へ進めたらと思いますが,よろしいですか。

【篠田委員】  アンケート調査の3の調査事項の一番最後のところ,丸ポチの五つ目です。学修時間の確保に向けて大学全体で取り組んでいく際の教学運営上のガバナンス面での課題という設定になっているのですが,学修時間の確保ということに今回の答申の審議のまとめは焦点を絞っていますので,こういう言い方でもいいのかもしれませんが,マネジメントというか,ガバナンスを語る場合にはもう少し広く,例えば学士課程教育の質的転換に向けて全学でどうやって取り組んでいるかというようにしていただいたほうが,なかなか学修時間で方針を持っているというところはまだまだ少ないと思いますので,適切かと思います。それから,組織運営面,人事管理面ということで括弧で書いてありますので,これで分かると思いますし,先ほど資料4に書かれている教学マネジメント,ガバナンスについて,例として全学的な教学マネジメント,学長,教学担当副学長の責任と権限,それから各学部の教学マネジメント,学部長の責任と権限,この役割分担と連携について今後の審議をしていくということになっています。多分,このための基礎調査という形になるので,これでも良いかと思うのですが,こういう大きな学士課程教育の実質化というか,質的な転換をするということになりますと,PDCA全体について見て行った方が良いと思います。例えば,そういう方針は一体どこが決めているのか,決められていないのか,あるいはDのところでいえば,それを執行していくところでどこに困難があったり,どこで詰まっているか,なかなか浸透していかないのかというようなこと,それから最終的にCで学修成果を評価したり,Aで改革の推進のサイクルがうまく回っているかどうかということ,この全体をチェックしたりして改善していくというPDCAサイクルについて,どのような状況に今あって,どこに課題があるのかという現状がある程度PDCA全体にわたって見えるような設問をぜひご検討いただければ大変ありがたいと思っております。

【合田高等教育政策室長】  篠田委員が私学の経営分析でおやりになった調査なども参考にさせていただきながら,ご指摘を踏まえてまた考えさせていただきたいと思います。 資料8をご覧いただければと存じます。資料8は,本日の初中分科会の高等学校教育部会で配付された資料です。審議まとめの13ページに今回,学士課程教育の質的転換に当たっては,高等学校教育との円滑な接続が欠かせないというご指摘をいただいているところですが,本日も安西先生あるいは川嶋先生がご参加なさっておられます高等学校教育部会におきまして,高校教育の質的な転換ということについて更に審議が深められておりますので,その状況をご報告させていただきたいと思っております。
 資料8ですが,高等学校教育の現状ということで,(1)は高等学校教育の目的・目標ですが,真ん中あたり,(2)といたしまして,高等学校の現状というところがございます。
 その二つ目の○ですが,今日の高等学校は,それぞれの学校ごとに入学者選抜が実施されているものの,全体としては中学校卒業後の生徒の約98%が進学,その結果,生徒の興味・関心,能力・適性,進路等は極めて多様。学力面についても,極めて高い能力を有している者がいる反面,小学校及び中学校での学習内容を十分に習得していない生徒も少なからず見られる状態という現状を分析しております。
 2ページ目ですが,二つ目の○にありますように,さまざまな多様化のための制度的な改革を進めてきたことを前提に,しかしながら,このように学生の学びについて選択の機会を広げてきたにもかかわらず,さまざまな課題が存在している。
 例えば,高等学校教育全体を通じて,将来の進路等との関連を意識して学びに取り組む態度や社会の一員として求められる意識,態度等,また特に学習時間の減少に指摘される学びの意欲の減退が課題。
 その次ですが,加えて,高等学校として一括りに現状を分析したり課題をとらえたりすることが困難になっている。例えば,生徒の7割を占める普通科についても,それぞれ課題は異なっているということで,その下に●が三つございますが,選抜性の高い大学へ進学する生徒。これについては学習内容の受験対策への偏り,優れた才能を伸ばす教育を受ける機会の不足,グローバル化に対応した人材育成の観点の不足等。
 それから二つ目に,選抜性の強くない大学へ進学したり,専門学校へ進学したりする生徒。大学入試の選抜機能が低下したこと等に伴う学習時間の不足,将来の職業生活等を念頭に置いた教育を受ける機会の不足等。
 就職する生徒。社会や産業構造の変化に対応した教育を受ける機会の不足,職業に関する技術・技能と教化・科目の関連性があいまいという分析を初中分科会でされておられまして,これは基本的には大学分科会でこれまでご議論いただいてきた方向と同じ問題意識をお持ちになっておられるものと存じます。
 4ページです。2.で今後の施策の方向性というところがあります。一つ目の○ですが,すべての意志ある生徒が,その能力・適性,進路等に応じた教育を安心して受けられる学びを通じて,その能力・可能性を伸長させることができるよう,高等学校教育を含む後期中等教育段階の学びの機会を与えられるようにすることが必要ではないか。
 その下の○ですが,高等学校の現状を踏まえると,在籍する生徒の能力・適性,進路等により,各学校の役割・機能が大きく異なっている現状を踏まえて,それぞれの学校ごとに生徒が習得すべき内容を明らかにし,その内容を確実に習得させることを通じて,個々人の次なるステップに向けてその能力を高めていくことができるようにしていくことを基本とすべきではないか。
 そのことを前提にしつつ,各学校における学習内容の習得状況を明らかにするさまざまな仕組みを構築し,高等学校教育の質の保証につなげていくことが必要ではないか。
 その際,高等学校においてすべての生徒に共通して最低限習得させるべきもの,コアについてどのように考えるのかといったことを,その下にありますように,現在の学習指導要領における必履修教科・科目との関係等も踏まえつつ,検討していくことが必要ということが論点として挙げられます。
 その下の○ですが,高等学校教育の振興のための施策の検討に当たっては,高等学校という一律の括りで考えるのではなく,例えば,以下のように各学校の育成すべき人材像に応じて類型を念頭に置いた施策を講じることが効果的ではないかということで,4ページ目の一番下に,主として,社会経済活動の基盤を担う人材に必要な資質・能力の育成を目指す学校など,幾つかの類型が例として示されております。
 また,5ページ目ですが,三つ目の○にありますように,少子化という観点で,特に少子化による学校規模の縮小に対応して,すべての教育活動を同一学校内で実施するという従来の学校のあり方にとらわれず,情報通信技術を活用して学校間連携をより一層推進する等の新しい教育のあり方について検討することが必要ではないかというようなことが論点として提示されております。
 これを前提にしながら,6ページ以降では,高等学校教育の質の保証について言及しております。6ページですが,上から五つ目の○でございます。「しかしながら」という文章がありますが,学習指導要領,多様化する教科書,学習評価,あるいは学校評価といった,こういった取り組みというのが必ずしも十分ではなく,本来求められている高等学校の質の保証に関する機能を十分に果たしていないため,結果として生徒が高等学校の学習において何をどの程度習得したかが見えにくくなっており,中には,高等学校の学習成果として期待される資質や能力,態度を身につけていないまま卒業しているケースも見られるのではないかということを前提に,6ページ目の一番下の○から,今後の質保証の考え方ということで,7ページ目に高等学校においてどのような能力を身につけさせるのか。
 アにありますように,高等学校の多様な実態を踏まえると,すべての生徒に一律の到達目標を設定することは非現実的であり,実態に合わせた多様な到達目標を設定することが基本ではないか。
 1その到達目標をだれがどのように設定するのか。その際に国の役割をどう考えるのか。
 それから2到達目標に対する達成度をどのように把握するのか。達成度をはかる仕組みや指標のあり方をどう考えるのか。その際の国の役割をどう考えるのか。二つ目のポツですが,達成度をはかる仕組みや指標としてどのようなものが考えられるのかということの例として,各種検定試験の活用。共通テストの実施・活用。指標の組み合わせによる実施モデルの検討等ということが示されております。
 4として,質の保証ということで,学校評価の取り組みの充実ということが論点として議論がなされております。
 8ページ目ですが,各種の振興方策ということで,検討事項例ということで示されております。(1)として,1すべての生徒に共通に最低限習得させる内容,コアに関する指導の充実。
 2質保証に関する取り組み。3教育方法の改善・充実。この三つがすべての高等学校に共通する内容として示された上で,さらに8ページ目の真ん中から下ほどですが,(2)として,(1)のほか,各学校の育成すべき人材像に応じた類型を念頭に置いた振興方策として,例えば以下について検討してはどうかということで,先ほどお目通しをいただいたような幾つかの高等学校の類型と申しますか,人材像に応じた類型例に基づいて,それぞれ振興方策の例が書かれているところです。
 例えば,9ページ目の上から二つ目の●ですが,主として,社会におけるリーダーやグローバル社会において国際的に活躍できる人材に必要な資質・能力の育成を目指す学校というところについては,意欲と能力のある生徒に対して,大学等の協力により高度な内容の授業を受ける機会を提供するとともに,そこでの学習の成果を適切に評価するなど,高大連携を推進する必要があるといったようなことが例として挙げられているところです。
 このような課題の整理と検討の視点というものに基づきまして,本日高等学校教育部会で行われました議論は,これは正確には議事録が出ますが,いわば速報的にごく簡単に高等学校教育部会,大学分科会との関係でご紹介させていただきますと,全国高等学校長協会の関係の先生からは,接続テストという議論をするのであれば,知識だけではなく,広い知的能力や資質を把握できるテストというものをPISAを参考に考えるべきではないかというようなこと。
 それから,教育課程の研究者の方からは,後期中等教育という視点が大事である。高校について一律の議論は難しいものの,子供の側から見て,その発達について共通性があるのも事実である。その共通性とは何かということを考えたときに,入口ではなく出口で質の保証を図るという観点,特に習得主義に立った議論というものが必要ではないか。高校修了というレベルと大学に進みたい生徒のレベルというものについては分けて考えてしかるべきではないかというご指摘。
 あるいは,専門高校の校長をなさった委員からは,特に普通科で社会に出る,就職をする心構えといったものが育まれていない。
 それから,教育委員会の関係者からは,特に都立高校で教科ごとに卒業に必要な力をスタンダードとして定めていくということを検討している。その際,教科ごとに,教科を超えた力,社会的自立ですとかコミュニケーション能力といったようなものが日本の高校生は幼いと言われている中で,こういったのをどういうふうに位置づけていくかというのが重要であるという観点。
 それから,私立学校の関係の先生からは,学習の習得度というものをはからないと学習時間は増加しない。習得度テストを高校の卒業とは別に考えるべきではないか。センター試験はもう少し目標準拠的なものに変えていく必要があるのではないか。大学の主体的な学びにつながる高校教育に変えていく必要があるというご指摘。
 それから,本分科会の委員でもいらっしゃる北城先生からは,入試の点数で能力をはかって,上のほうからとるという方式は既に成熟社会においてはやめるべきではないかというご指摘。
 それから,有識者の委員の先生方からは,社会的な自立の基礎を形成するのが高校教育だという全体の議論には合意し,高校生の実態に応じたきめの細かい議論は必要であると思うが,学校自体を類型化するのには違和感があるというようなご指摘など多くの議論がありました。
 ただ,高校生の現状を踏まえたきめの細かい議論が必要であるという点,それから二つ目には,高等学校教育における習得について何らかの仕掛けを考えて,高校と大学の円滑な接続に生かす必要があるという点については,おおむね先生方共通したご議論だったというふうに思っております。この点はまさに大学分科会の議論とつながるところですので,今後,初中分科会の高等学校教育部会の議論と本部会との議論というものをうまく重ね合わせながら,高校と大学の教育課程ですとか能力の伸長という観点での接続という議論を具体化していただければ大変ありがたいと思っております。

【川嶋委員】  事務局から手際よくご紹介していただいたとおりだと思います。全体の雰囲気として,出口での質保証ということについて高校関係者の方からもかなり合意が形成されつつあるのではないかというような印象を受けました。
 ただ,そこで問題になるのは,高校教育の質保証と大学との関係を,両者当然関連しているのですが,大学と高校の接続だけを変えれば,例えば入試制度だけを変えれば高校教育の質保証ができるかというと,そういう問題ではないだろうと思います。やはり高校教育の質保証は大学入試とは独立した形できちんと設計していただく必要がある。今のところそれぞれの委員の方がそれぞれのご意見を報告されている段階ですが,今後は,高校教育の質保証の仕組みを整えた上で,高校と大学の接続をどう考えていくかと議論を分けて考えることが必要だと思います。
 高校教育の質保証といったときに,ここにも出てきます共通性のところ,コアというものをどういうふうに考えていくのかということが非常に今後大きな議論の中心になるだろうと思います。大学でも学士力というものを共通性として数年前から提起して,各大学で取り組んでいるところですが,そういうものに相当するものが今度高校教育の関係者の中ででき上がってくるのかどうか。もちろん学習指導要領の中に必履修科目という形で既に存在はしているわけですが,それをもっと明示的にするかどうかが議論になると思います。
 最後に,高校教育も大学教育と同じような課題を抱えている。つまり,多様化の中で機能別分化していくと同時に,共通的なものをどう考えていくかとか,質保証とか,高校教育と大学教育,まさに両者は互いを映し出す合わせ鏡であり,両者とも共通する課題を抱えているなという印象を持って,今日は参加していました。

【浦野委員】  今のご報告を聞いていても,キャリア部会での蒸し返しがあるような気がしました。改めて学校教育法第51条を見たときに,全くこのことが実現できていないわけですよね。要するに世界の趨勢で見たときに,18歳というのは責任を持った大人というのが国際的な位置づけだと思うのですが,日本では実体が全くそこに行っていなくて,特に私が重視したいのは,この中で1ページの51条の中です。社会において果たさなければならない使命の自覚に基づいて,就職したり,大学に入学したりするはずなのです。そのことが全然抜きになっていて,高等教育の質の保証が学力だけに行っているというのは全く方向が違うと思うのです。
 社会において果たさなければならない使命の自覚がないまま,ユニバーサル化した大学に入っていったら,これはほとんど意味がないわけです。そういう意味で私はやはり,難しい言葉では言いませんが,高校での目標というのは大人になって出てくることでしょう。その大人という意味は,すべてのことについて自分で責任がとれるということです。ほかに責任を転嫁したりしない,自分で責任をとれるという,私はその一言だと思うのですが,そのことができていないまま,大学との接続とか何とかって学力面だけで言われても,私はものすごく違和感を感じるのです。
 そのことが,一言で言ってしまえば,エートスということになるのでしょうけれども,要するに高校時代までに,自分はどういった基礎の考え方を持って社会の中に出ていくんだということをやはり養成するような教育を義務教育プラス高校でぜひやっていただけるようにお願いしたいと思うのです。
 そういう意味で,長束先生などは現場におられて,ここで51条で書かれているようなことと実態にもし乖離が大きくあるのであれば,教えていただきたいと思うのです。

【長束委員】  非常に難しいご質問というか,問いかけなのですが,中学もそうでしょうし,高校も,先ほどあったように社会において果たさなければいけない使命を自覚させるということは十分考えて,各教員または各学校ごとに指導はしていると思います。
 しかしながら,現実にそれが中学と義務教育を経て,その後,高等学校へ行った上で培われているかという問いかけをいただくと,なかなか自信を持って「できてます」というふうに言い切れない現状ももちろんあると思います。ただ,目標と教育内容が現実に離れてしまっているのかというのではなくて,こちらとしては一生懸命培うように指導はしています。
 つまり,必ずしも教育内容が別の方向に向いてしまっているなんていうことではなく,目標の達成に至らないところがあるということです。学校の類型はいくつかありますが,例えば進学を目指している学校であろうと,この類型が幾つかありますが,そうではなくて就職をするような生徒を育てるような学校であっても,生徒一人一人が自立して生活できるように,人間として成長するような教育を考えて行っています。
 そこのところはご理解いただいた上で,どのような教育内容が必要なのかというのを考えて,大学教育部会から提案をしていただければと思うのですが,こちらは高校教育の場を考えるのは高等学校教育部会だと思うのですが,大学教育部会として考えるとすると,大学としてどういう学生を育て上げるのかというもとから高校の教育部会のほうに,こういう部分を育ててほしい,先ほどその中で多分,浦野委員はまた職業界から大学に向けてご意見をいつもされていると思うのですが,その延長線上にまた高校へというように言っていただけるといいと思います。
 おそらく,大学と高校が連携という先ほど話が,必ずしも大学入学と一致しない,もちろんですが,大学に入学する生徒もいるわけです。大学に入学して,その後,社会に出る学生もたくさんいるわけですから,そういう学生からすれば,大学が求める人材,大学が育てる人材というのが高校が求める培う力につながってくると思いますので,そういうような形で提案というか,高校のほうにいろいろとお話をしていただければとは思います。
 なかなかうまくまとまらず申し訳ないのですが,お問いかけに対する答えとさせていただきます。

【濱名委員】  今日直前に若年雇用戦略の会議に出ていて,高等学校のお話とかいろいろ聞いてきたものですから非常につながったのですが,これはおそらく高校と大学,それと大学と就職先の間,両方とも非常に接続がまずいというのは共通しているのだということがよくわかりました。その会議では中退率についての公表を求めるのなら,3年未満離職率も公表すべきだということを発言してきたのですが,高校と大学の間も,こういうことを高等学校教育部会が言われるのであればでは,接続の仕組みもやはりあわせて考えなくてはいけない。
 大きな問題は,中退率を文部科学省もきちんとつまびらかにしていないところで,大妻女子大の酒井先生の研究では,おそらく普通科でも5%程度の生徒の減少率があるというのです。おそらく中退するかあるいは定時制への転学とかであろうと思われますが,定時制からさらに通信制に転学すると,通信制には中退率のデータがないというような話です。どういう仕組みで,学修内容が身につかなかったらどうするのかという仕組みの議論を高等学校教育部会でやっていただかないと,結局は今と同じになる。目標は掲げたけれども,身についていない。大学はまだ留年をさせたりするという仕組みがあるのですが,高校のように進学率が高くなりすぎると,そういう仕組みが何となくものすごくマイノリティに感じられ,留年すると社会的挫折だというような観念が高等学校の関係の皆さんの中にもあるように思うのです。浦野委員がおっしゃったように,私ももっとジェネリックな能力を伸ばしてもらいたいと思いますし,態度特性などもきちんと高校で身につけてきてもらわなくてはいけないと思います。
 あるいは,だめならば時間をかけて育てるのだというような,社会全体がそういう認識にならないといけないのではないか。一つつまずくと全部がだめだと見なされる社会であるというような観念が問題です。留年した高校生を大学が入試で拒否するか,多分しないと思うので,そういう仕組みをつくっていくことが非常に大事なのではないかと思います。
 そういう点では高等学校教育部会で,目標を掲げるのもいいのですが,修得することを担保する仕組みも一緒にぜひ議論していただくようにお願いしていただければと思います。

【荻上委員】  濱名委員に先に言われてしまったのですが,先ほど習得主義という言葉が出てきました。私は断然習得主義をとるべきだという主張の持ち主ですが,我が国は年齢主義を専らとっています。年齢主義というものは,これは絶対に神聖にして侵すべからざるものなのかどうか,その議論をどこかでやるべきではないでしょうか。
 昔はそんなことはなかったと思います。いつごろからか,絶対にここはさわってはいけないということになっているようですが,私はそこを議論しない限り,目標を定めても,年齢が来たら次へ行かなくてはいけないということになれば,目標の達成はおぼつかないのではないかというふうに思いますが,文部科学省としては,そこはやはり触れてはいけない点なのでしょうか。

【合田高等教育政策室長】  触れてはいけない点ということではなくて,今日の高等学校教育部会でもまさに今,荻上先生からご指摘あった点がご議論ありました。先生方ご案内のとおり,高等学校は基本的には単位制高校を除きますと学年制と単位制の併用ですので,単位制という観点に着目すれば,単位の運用を厳格化すれば,学習内容をしっかりと習得してから卒業することになります。その場合に学年を超えるということも大いにあり得るべし,それは大いに結構ではないかというふうにおっしゃる高等学校教育部会の先生もいらっしゃいました。
 他方で,なかなか高校現場の観点からいけばそうはいかないというご議論もありまして,ここは高等学校教育部会でもさらに議論が深まるところだと存じますけれども,先ほどの浦野先生のご指摘を踏まえて申しますと,私の説明がちょっと十分でなくて誠に申しわけなかったのですが,高等学校教育部会ではまさにその点,つまり,あらゆる学習も教科も学習活動も最終的には社会的自立ということにどう結びつけていくか,そのことと,それぞれの学習の成果というものをどう把握して見ていくのかが,大変大きな課題であるともに,その点について高等学校教育部会の先生方も基本的な認識は共通していらしたのかと存じます。先ほど長束先生からもお話があったとおりです。
 教科でそういう自立を育てる,それを横軸でどう通していくかというのが,高校の先生方も含めて,そういうご議論をいただいていたということをご報告をさせていただきます。

【高祖委員】  今出されている意見と少し流れが違う意見なのですが,今回の資料8のテーマが「課題の整理と検討の視点」ということですので,高等学校の現状にどういう課題があるかを指摘していくという大きな枠組みはわかるのですが,先ほど長束委員がおっしゃったように,日本の高校の教育がすべてだめだというわけではないと思います。そこできちんと勉強した人が大学に入ってきて,きちんと育っていく人も少なくないわけで,海外の大学に出て行く人もいるわけです。
 そうしますと,先ほどの資料7のアンケートもそうなんですけど,問題点をどんどん探していくのは,そういう使命があるからそれはいいのですが,同時に,うまくいっているものはどこがうまくいっているのか,何がうまく回転しているのかということも同時に見ていくような視点を取り込む方が適切ではないでしょうか。そうしないと,こういう話ばかりですと本当に何か気持ちも暗くなってしまうし,日本の高校教育は全てだめだという論調になってしまい,ますます日本の士気が上がらないことになりかねません。もちろん問題があることは事実なのですが,こういううまくいっているケースがあることも同時に掘り出していくような仕掛けを入れておかないと,何かバランスを欠いている議論になってしまうような気がします。
 先ほどの問題に戻って申しわけありませんが,学習の実態の問題についても,大学の中で結構うまくいっているケースもあると思います。どういうところがうまく行っているのかということも同時に聞くような仕掛けを中にぜひ入れていただきたい。そういうバランスのとれた議論をやっていったほうが元気が出るものですから,ぜひその点のご配慮をお願いしたいと思います。

【合田高等教育政策室長】  ありがとうございます。なお,先ほどのアンケート調査に関しましては,今ご到着の先生もいらっしゃることでございますので,もしよろしければ,その点も含めてご指摘を賜れば大変ありがたく思います。

【濱名委員】  以前,川嶋委員や吉田委員にも協力していただき,日本高等教育学会と一緒に関西国際大学が委託事業として学部長,学長調査をやったのですが,そのときの経験で言いますと,まず,個別の大学が特定できないと,後の分析とか,今まさに高祖委員が言われたようなことを探そうとするとできないのです。
 それと,以前にも申し上げたことがあるのですが,できることなら文部科学省が,パネル調査ではないのですが,継続的に大学の変化を追っていこうというときに,単純集計とクロス集計では説得力が弱いので,パネル分析をやっていっていただきたいのです。それと,実は学部長調査をやった結論は,専門分野による違いが非常に大きいので,その辺りについては学科長レベルの調査もあわせてやっていかなくてはいけない。
 この段階で調査する場合には,具体的に各大学に趣旨をきちんとご説明いただいて,属性とか,この後の今後の分析につながるような属性も項目に加える形でやっていだたく。そうすると,今,高祖委員が言われたようなことも可能になる。我々も,そういう形ならさらにお話を聞きに行ったりすると,いい事例が紹介できるようにもなる。アンケートには答えたけど,実際に行ってみると,そんなことはなかったとか,そういう例ももちろん出てきますので,そういう実地調査が必要になってきています。多様化の状況を考えれば,単科大学ではガバナンス問題は小さいかもしれないが,大手では深刻だとかいう総論的な話だけではなくて,おそらく大手の中でもうまくいっている大学もあれば,単科大学だけどうまくいっていない例もあるわけで,やはりその辺について具体的に要因を洗わないと難しくなってきていると思います。場合によりましては拝見して,失敗の経験もございますので,ぜひ参画させていただければと思います。

【川嶋委員】  高祖委員からのご指摘なのですが,実はこれまでの高等学校教育部会でも様々な優れた取り組みについてご報告いただいております。ただ,大学と同じですけれども,問題は,優れた大学はそれをきちんとさらに押し進めていただければよろしいのですが,全体のレベルアップといいますか,底抜けをいかに防ぐかというところが日本の教育全体の課題だと思います。今回大学教育部会ですと,学修時間を確保することによって教育の中身を充実させていこうということになったわけですが,高等学校教育部会においても,どこが改善の肝なのか,高校教育をさらに充実したものにしていくためにはどこを変えていくと改革のてこになるのかということで,今こういう論点の整理といいますか,課題の抽出をして,今後,その中で優先順位をつけて,高等学校教育の改革に資するような議論をしていきたいというのが,高等学校教育部会の今の審議の状況だろうと,これはあくまで私の個人的な理解ですけれども,そのように思います。
 そこで,大学,高校,初等中等教育も含めた教育制度全体について,日本以外の国というのはかなり積極的に改革に取り組んでいるわけです。一人一人の成功だけではなくて,国全体の成功はやはり教育にかかっているというのがどの国でも共通の認識だと思いますので,そういう点では,大学教育部会も高等学校教育部会も今後非常に大きな役割を果たしていくのだろうと思います。
 ただ,高等学校教育というのは,教育委員会との関係とか,さまざまな制約の中でどうやって自立的に教育改革を進めていくのかというところが大学と違うところで,大学から見ると何となくもどかしいという点があるのも事実だろうとは思います。

【納谷委員】  今の高等学校教育部会の話ですが,要するに初等教育があって,中等教育があって,高等教育です。その中等教育の後半の部分が高等学校教育になっていて,そこの役割をもう少し明確にするということに意味があるわけで,浦野委員が言ったようなところをもう少ししっかりと,それができているか,できていないかという検証をしていったほうがいいのではないかと私は思っております。
 それで,今までの義務教育として,小学校で初等教育をやって,中学校で中等教育の前半を行っています。中等教育の後半が高等学校教育で,この二つが中等教育の中でどういうぐあいに仕分けし合って教育に展開するのかということの明確な意識を持たないと,この議論はいつまでたっても同じようなところを回っていくのではないか。
 もっと根本的に言うと,高等学校教育がそもそもどの方向性をもって進むべきかということをはっきり出して,その上で大学教育と高等学校教育との結びつきをはっきりさせる時期に来たと私は思っております。もっといえば,中等教育を二つに割るということ自体が非常に難しいことを呼んでしまって,後半はどちらかというと大学へ入るための授業になっているのではないか。
 長束委員の言っていることは,相当一生懸命やっていることはわかっておりますが,結果的には生徒たちはそういう具合になりますし,親もそうなってくると,大学に来たときの学生の意識はどうもそのような感じで受けとめざるを得ないというのが大方の人たちの受けとめ方だと思います。やはりそこに独自性を持たせるものが何かということをこの際はっきりさせておくことが,高等教育との連携がはっきりしてくるのではないかと思います。

【長束委員】  今のご指摘いただいた点ですけれども,確かに現実に大学のほうに入学するために,特に私の学校も進学校ですので,3年生になると非常にそういう強い意識を持って,受験勉強に特化していくような生徒もいます。ただ,そうではない生徒もいます。
 もし大学側として,ただ単に受験勉強をするような生徒が欲しいわけではないということであれば,それをメッセージとして,こういう力が大学では欲しい,こういう力を持った生徒が欲しいというのを高等学校教育部会に出していただくというのが一番大事なことではないかと思います。
 また,その中には,大学に入試やカリキュラムなどで,こういう力がないと大学では単位が修得できない,卒業することは難しい,または入学することができないというようなメッセージを出していただくということが,大学教育部会でやっていただくと非常にありがたいと思います。
 また,さらに大学のほうがいろいろと進んでいる分野もあると思います。授業について,中学も高校も小学校もさまざまな形で授業の研究をしています。中学,高校,それぞれ進んでいる部分もありますし,足りない部分もある。明らかに大学のほうが進んでいる分野が,教育手法にしても,そのほかの分野でもあると思います。さまざまなそういう部分をどんどん高校の側にも流していただいたりしながら,連携していければいいと思います。
 例えばシラバスの話などは,明らかに大学のほうが進んでいると思います。授業の中で1時間1時間をどう予習したりするようにシラバスを使うんだという部分は,高校でもそういう視点はあるのでしょうが,大学ほどは進んでいないと思います。そういった部分も含めて提言というのですか,高校側にしていただければと思います。
 まとめると,繰り返しになりますが,大学としてこういう生徒を育てたい,そういう視点から高校にご指摘いただけるとありがたいと思います。

【吉田委員】  いろいろ意見が出ているのですが,要は進学率が拡大した,それが少子化の中で進学率が拡大しているという状況の中で,従来は非常に1点のセレクションで問題が解決していたという部分があると思うのですが,今やそうはならなくなった。いわゆる大学への選抜という問題が,従来のような学力選抜がもう効かない状況になっている。効いているところはありますけれども,それは非常に数少ない状況になっている。その下のほうがどうなるのかというのが大学から見た問題だと思うのです。
 これは大学の経営上の問題がありまして,そうセレクションを厳しくすることができない現状というのもありますし,学生確保という側面でいえば,推薦とかAOとか,そういった方式で入学させざるを得ないという状況もあるわけです。
 それが今,大学に何をもたらしているかというと,いわゆるリメディアル等で補習をしないと従来の大学教育が始まらないという状況になっている。そうすると,高校へのメッセージというお話も出ましたが,大学側としてセレクションの問題をどうしていくのかということを考えなくては,いくらこういう人材が欲しいとか,これだけの能力を養成してくれと言ったとしても,なかなかそれが通用しない高校生というのが出てきてしまうと思うのです。
 それは高校に任せて,高校の学習指導要領をきちんと習得してくれば,それでよしという形にするのか,それ以上に大学から高校に対してセレクションの問題も含めてメッセージを出すのか。だからいわゆる入学選抜だけでできない状況があるときに,それを入学選抜を厳しくするような方向に持っていくのか。多分それはかなり大学にとっては首を絞めるような事態ですから,できないと思うのですが,であれば一体,面でどうやってつないでいくか,内容面でどうつないでいくかというところに対して,高校側が決めた学習内容を習得させてくれれば,それでいいとするのか,大学側からもう少しその辺に対して働きかけをするのか,その辺のところは大学教育部会としてはやはり考えるべき問題だろうと思うのですが,いかがなものでしょうか。

【濱名委員】  吉田委員が心配することで,この場では私どもの大学は一番首が絞まるタイプの大学だと思いますが,おっしゃるように,アドミッション・ポリシーでここまでのレベルというのをなかなか言えない。だけど,そういうメッセージを出していかなくてはいけないという状況であるのは,吉田委員がおっしゃるとおりなのです。ですから,高校を出る段階での最低限の質保証というのをしていかないと難しい。
 私は1年生に自校教育を今年担当したのですが,その際に1年生に聞くと,数学が入試にないということもあるのですが,大学に入って数学で困るだろうと思っている新入生が7割以上いるのです。なぜ数学嫌いになったのかというと,わからなくなった,式が覚えられなくなったとか,あるいはなぜやらなければいけないのかわからなくなったということが圧倒的に多いのです。
 そういう点からいうと,学ぶことと現実生活のレリバンスをどう感じさせていくかということが重要です。それと,国研とか大学入試センターの会議で国研や入試センターが開発しているテストの話を聞くと,彼らが嫌がるタイプの数学の問題ではないのです。論理的な思考,つまり式を使わないで数学的な論理的思考ということをはかろうというテストをすでに開発し始めているわけで,やはりそのようなテストを活用することを具体的に考える。
 つまり,数学者になるわけではないのだが,こういうことが必要なのだという内容を示していくことが一つと,もう一つは,これまでの高大接続のプログラムでいうと,地元の名門大学に高大接続で高校へ教えに来てくれとか,そういうタイプの1点買いのような形での高大連携をやっていたのですが,それではやはりだめなのだろうと思います。地元エリア全体の中で,どういう大学でどういう学びができるのかという機会情報と,その大学での学びに自分がついていけるのかを考えさせる連携プログラムが必要です。そういう話を教育委員会に持っていってもなかなか乗ってもらえない。お金がありませんとか,時間の関係でそういうことはできませんというようなお話になりがちなのですが,吉田委員がおっしゃるように,高校教育に対しても大学教育部会からそういう接続を具体的な地域単位でもう少し考えていくとか,そういう仕組みをつくっていくことが大事なのではないかというふうに思います。
 例えば土曜日を使って,予備校などではすでにやっていますけど,そこへ行けば色々な分野の授業が受けられるという機会を,地域でのリソース紹介として並べれば,ある程度のことができます。そうした機会に,入試科目ではなくて,こういうことを学んでおかないと大学に行ってから困るのだということが,授業を教える担当者からそういうメッセージが発されるようなことをしていくのと,やはり仕組みとして留年することも取り入れる。浪人することには大学は不問なわけですから,留年してでも一定の修得主義に転換していくということがどうしても必要になる。
 その修得主義になっても,1年目,私どものような大学は困るという危惧はあるのですが,中長期的には個別大学が何がしかのことをするよりは,大学として束になって,あるいは仕組みとしてつくり上げないと,吉田委員が提起されているような問題に対して道はなかなかない,その辺を大変危惧しております。

【佐々木部会長】  今後,高等学校教育部会と大学分科会大学教育部会との意見交換の機会がもう少しあったほうがいいのではないかと思います。

【合田高等教育政策室長】  先ほど吉田委員から大変本質的なご指摘をいただきました。そういう議論は大学教育部会でもご議論を深めていただきたいと思っておりますが,今,事務的に,高等学校教育部会には本部会から,川嶋先生をはじめ複数の先生がおいでいただいておりますけれども,逆はないものですから,初中分科会の分科会長とも一度本部会あるいは大学分科会にお運びをいただいて,こういう議論を深めていくという場を設けていただけないかというお話はさせていただいておりまして,現在調整中です。
 また,こういうご議論とそれから高等学校教育部会のご議論を見据えながら,資料4の今後の検討にも書かせていただいたように,いずれ両分科会でジョイントしてそういう議論の場を設けるということも,先の中教審の総会で三村会長からぜひにというご指摘もございましたので,それをまた先生方にご相談をさせていただきながら,議論を深めていただければと思っている次第です。

【長尾委員】  先ほどセンター試験のことを言及されましたが,今,大学入試で「センター利用入試」というのをよく使っています。大学としては本当に基礎学力がある子が欲しいのです。そこのところを押さえておいていただきたいと思います。1点2点差の試験をやるというのは合否判定するほうもつらい入試が今実際行われています。センター利用だったら,自分が本当に得意なものを自動的に選択することができるという方法ですよね。であれば,今,「センター入試をどういうふうに」とおっしゃった。例えば理想かどうかわかりませんが,統一試験としてセンター利用,今,公立高校はほとんどセンター利用まで引っ張っていく方法で指導していて,途中で脱落させないようにという方向を示しています。であれば,そのセンター試験でしっかりと基礎学力を測定するような制度ができないのかと思うのです。

【合田高等教育政策室長】  ご紹介申し上げましたのは,高等学校教育部会において私立学校の関係者から,今まさに先生がおっしゃったように,現在のセンター試験というのは得点を競うような形になっているけれども,もう少し目標準拠的な,つまり基礎学力が一定ついたということを確認できるような形にしてはどうかというご提起があったというご紹介をさせていただいた次第です。

【佐々木部会長】  部会間の意見交換が必要だというのは,例えば出口について,同様の問題を抱えていても,問題が生じてきているプロセスはおそらく大学と高校とでは違っているのだろうと思うのです。ですから,その違いを見極めながら,しかし共通する部分があるのか,ないのか,その辺りも含めて,意見の交流があってもいいのではないかと今さらながら思います。今後ぜひその点を図っていただきたいと思います。

(4)大学教育部会の次回以降の日程について,事務局から資料9の説明があった。

―― 了 ――

 

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