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帰国した留学生の情報把握は難しい問題である。これは各大学で行うべきなのか,あるいは国が行うべきなのか。時と場合にもよるが,各大学が行うとしても,国がフォローアップを行わなければ,その効果が上がらないのではないか。国費留学生の支援もさることながら,帰国後の支援をどうするのかについて考えなければ,たとえ来日しても留学生が定着しないのではないか。現在の帰国後のフォローアップの実態についてはどうか。
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フォローアップの実態は各国とも明確にはなっていない。今後留学生を獲得するため,企業が海外展開するためにも,留学生についての情報収集は大きなメリットがある。国が行うか大学が行うかは議論があるが,いずれにせよ情報収集は行うべきである。
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イギリスについては,British Councilが奨学金を支給している者については情報を持っているが,それ以外の者の情報はあまり把握していない。日本の場合,情報収集については各大学が行った方が良いのではないか。
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国費留学生については我々も同じ問題意識を持っている。国費留学生の帰国後のネットワークづくりについて,帰国の際に帰国後の連絡先等の提供に協力してもらい,それを在外公館に提供することでフォローアップや同窓会づくりに役立てることを模索している。国費留学生については,今後フォローアップを細かく行う方向であり,現在その方法を検討している段階である。
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ネットワークの形成については,国ではなく大学が行うべきではないか。日本の大学は自国の卒業生の情報もあまり把握できておらず,同時に外国人に対するフォローアップが少ないという問題がある。その意味では,留学生だけの問題ではないのではないか。一方,アメリカでは綿密にフォローアップを行っているという印象を持つ。
留学生の数について,OECDやUNESCOの統計を用いているが,例えば,これらの数字は通関統計による数値と異なっている。これは恐らく留学生の定義が統計によって異なっているためだと考えられるが,それぞれの統計の定義付けはどのようになっているのか。
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正確な定義付けについては承知していない。しかし,公表されている数字はこれ以外にはない。一般的に国費留学生に関するデータが乏しく,日本大使館から各国大使館に依頼して調査したこともある。
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データについては,留学の形態によって把握されているものもあればそうでないものもある。日本からの留学生の数が増えているが,実態として増加しているのか,それともこれまで統計上計測していなかったデータを計測するようになったためなのか,原因を分析してみる必要がある。
かつて,オックスフォード大学の留学生数を調査したことがあるが,同様に実際の調査と統計上の数字と異なっていた。留学生の定義の仕方によって数字にばらつきが出ることに注意しなければならないだろう。
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日本の場合,大学院生に占める留学生の割合が約25パーセントということだが,受入れに関して,どのレベルの留学生に重点を置くのかは,国によって考え方が異なるのではないか。将来的には,世界全体で留学生数が700万人になるとの試算があるとのことだが,日本は学部レベルと大学院レベルのどちらに重点を置くべきだと考えているのか。
また,授業料の問題も非常に重要である。フランスやドイツが原則無償である一方,イギリスは,留学生の授業料が自国学生の授業料よりも高いため,各大学が留学生定員を増やす方向にある。アメリカや日本は私立の割合が高く,ヨーロッパとは状況が異なるが,授業料について何か政策はあるのか。
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学部と大学院のどちらに重点を置くかについては,全体を通じて送り出す側のニーズを踏まえている状況であり,現在は必ずしも戦略的な方策があるわけではない。例えば,国費留学生については,諸外国の国策の見直しと関連して,大学院レベルに重点を置いている。その一方,私費留学生については,一般的な教養や学問を身につける意味合いもあり,学部レベルに重点を置いている状況である。具体的に学部レベルと大学院レベルをどのような割合に配分するかについては,今後検討しなければならない。
授業料の問題については,日本はイギリスとは異なり,自国学生も留学生も同じ授業料である。その中で,国費留学生制度や授業料免除制度等により,留学生の経済的負担を軽減するような政策をとっている。
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留学生の労働市場の開放を課題として挙げているが,外国人留学生の進路状況を見ると,日本国内で就職した者の割合が全体の22.9パーセントとなっている。一方,出身国(地域)で就職した者の割合が全体の12.6パーセントとなっている。留学先にそのまま残って就職する割合について,日本は他国と比べて高いのか。
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正確なデータは持ち合わせていないが,日本,イギリス,フランス,ドイツについては就職に関して制限があるため同じような割合である。一方,アメリカでは約70パーセントの学生がそのまま就職をする。
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オーストラリアの留学生受入れ数が大幅に伸びている理由について伺いたい。
また,イギリスにおける戦略的な留学生の確保についての説明の中で,日本学生支援機構がアジア4カ国に職員73名を配置しているとの説明があったが,これは何の数か。
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オーストラリアの留学生受入れ数が大幅に伸びているのは,イギリスの留学生政策に類似した政策をとっているからではないか。これについては後ほど詳しく説明する予定である。
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国が学生に多額の奨学金を支給する一方,大学が高額な授業料をとるということか。
日本学生支援機構の海外事務所については,現在充実を図っているところであり,さらに充実させていきたい。
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日本学生支援機構の職員数73名については,海外事務所の職員数ではなく,機構で留学生事業に携わっている者の数である。
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ヨーロッパ諸国はオーストラリアの大学院教育を高く評価している。また,オーストラリアはノルウェーからの留学生を大量に受け入れている。教育の質もさることながら,研究の質も高いことが要因ではないか。
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アメリカに留学した者がそのままアメリカで就職する割合が高いのは,ワーキングビザの問題が関係しているのではないか。アメリカはワーキングビザの取得が困難である。特に,人文・社会系はその傾向が顕著であり,それが留学生の残留につながっているのではないか。
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イギリスもワーキングビザの取得は困難である。日本の場合,約23パーセントの留学生が日本に残って就職をしているが,なかなか長続きしない。調査時期によっては,この数値も大きく違ってくるのではないか。
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