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16.大学における学生生活の充実方策について(報告)要旨
−学生の立場に立った大学づくりを目指して−

平成12年6月14日 大学における学生生活の充実に関する調査研究会
(文部省高等教育局長の私的懇談会)

1  大学を巡る状況及び今後の方向について
1  大学を巡る状況
大学進学率が50パーセントに迫る中で,多様な学生が大学へ入学
18歳人口の減少により,現在の学生数の規模の維持が困難
情報化の進展に伴い,外国の大学も含め,学外の学習の機会が増加

2  現代の学生の実態
目的意識を持たず「自分さがし」をするために入学する学生の増加
人との関わりや実体験の機会の乏しさ,親への依存の高まり
心の問題を抱えている学生の増加
不登校や不本意な休・退学の増加

3  今後の大学のあり方−視点の転換
(1) 「教員中心の大学」から「学生中心の大学」への視点の転換
教員の研究に重点を置く「教員中心の大学」から,多様な学生への教育・指導に重点を置く「学生中心の大学」への転換
学習する側である学生の立場に立った改革の必要性

(2) 正課外教育の積極的な捉え直し
忍耐力,意思伝達力,折衝力,決断力など価値観の多様化する社会の中で生き抜くための基本的な能力の涵養
正課外教育を,正課教育の補完としてではなくそれ自体の意義を捉え直し

2  各大学における改善方策−学生に対する指導体制の充実を目指して
1  人的資源の活用
(1) 教職員の意識改革と活用
教員の意識改革
正課教育及び正課外教育の中で学生の人間的な成長を図り,自立を促すための指導は教員の基本的責任
教育能力や教育実績の教員評価への取り入れ
教員に対する研修の実施
学生の教育・指導の充実のための教員研修の実施
教育・指導を専門的に担当する教員の配置の検討
事務職員の専門性の強化
学生に対して助言したり,教員に対して提言や発言ができる事務職員の専門的能力の涵養
教員と事務職員の連携強化
教員と事務職員の対等な協議の場の設置

(2) 学生の活用
授業の補助のみならず,学生生活全般における指導・相談,学内における業務への学生の積極的な活用
学生に対する研修やガイダンスの実施

2  学生に対する指導体制の充実
(1) 学生相談
1 現状
相談件数は年々増加する傾向
学生相談機関の66.4パーセントにカウンセラーが置かれているが,常勤カウンセラーは21.3パーセント
修学相談から心の悩みの相談まで幅広い相談に一つの相談機関が応じており,人手不足

2 今後の改善方策
学生相談の捉え直し
学生相談を,学生の人間形成を促すものとして大学教育の一環に位置づけ
カウンセラー等の充実
心理を扱うカウンセラーや修学・進路相談に応じるアドバイザーの積極的配置と,可能な限り常勤(専任)カウンセラー等の配置
全教職員が学生の相談に応じることが基本的責務であることを認識
学生相談機関と学内外の諸機関との連携強化
学生相談担当者の意見が大学教職員に伝わり,大学運営に反映されるシステムの整備
地域や医療機関等との柔軟かつ迅速な連携体制
「何でも相談窓口」の設置
あらゆる相談に応じる全学的な「何でも相談窓口」の設置
相談内容に応じて適切な学内外の相談機関や教職員を紹介
「何でも相談窓口」への経験豊かな教職員の配置
不登校への対応
対人関係失調,強迫的性格,青年期の長期化などの原因による不登校学生の存在
不登校を「自分をつくりかえる時間」として捉え直す視点
単位取得状況等のチェックによる不登校学生の把握及び相談・援助
不登校学生のための柔軟な単位認定の仕組みの導入や休学制度の弾力化の検討

(2) 就職指導
1 学生の状況
卒業後の進路の多様化の中で,約7割の学生が企業等への就職を希望
就職活動の早期化による大学の授業の形骸化
インターネットによる就職活動の浸透及びこれに伴う情報格差
就職後3年以内の離職率が3割を超える状況及び職業観の未確立との指摘

2 大学の取組
厳しい採用状況の中で,大学の就職に対する姿勢の変化
キャリアガイダンスや各種講座・企業セミナーの開催
正課教育における学生の職業意識の涵養

3 今後の改善方策
早期化に対する認識
企業が早期に学生を採用することは,大学教育が企業から十分な信頼を得ていないということの認識を持つことの必要性
キャリア教育の充実
望ましい職業観を持ち,自己の個性を理解した上で主体的に進路選択できる能力・態度を育てるキャリア教育の確立
論理性やものの見方,コミュニケーション能力,情報処理能力などを重視した教育の充実
各大学がそれぞれの状況に応じて,学生が身に付けるべき能力像を描き,その達成目標へ向かうことの重要性
就職指導部門の体制強化
就職指導部門において,学生の職業意識を高め,キャリア開発を支援する機能を充実
大学の教育課程や教育目標を十分理解した専門的能力を有するスタッフの養成
企業での就労体験を持つキャリアアドバイザーの配置
インターンシップの活性化
インターンシップの実施大学は年々増加しているが,実際に経験する学生は少数
受け入れ企業に対するインセンティブを高めていく工夫
学生に責任感や意欲を持たせるなどの目的から,大学と企業との協議により,学生の労働に対し実費などの支給の検討
インターンシップが結果的に採用につながることの許容
大学在学中に一定期間,社会での奉仕活動やボランティア活動などの体験学習を行うことの検討

(3) 修学指導
入学時のオリエンテーションにおける履修指導の改善
履修すべき授業科目のモデルの提示や,専門的なアドバイザーによる学生の履修メニューの作成の援助
教員や学生同士の出会いの場としての合宿の実施や,様々な学部・学科の教員や学生とのふれあいの場の提供
進路選択の幅の拡大
転学や転学部・学科が認められやすい柔軟なシステムの検討
学生の募集単位を大括りにし,学生の進路が明確になった段階で専門分野へ進むような取組
旅行・ボランティア活動,長期のインターンシップなどを可能とする休学制度の弾力的運用
少人数教育の充実
学生自らが課題を設定し,調査・分析を行い,対話し,プレゼンテーションを行う場としての少人数教育の充実
幅広い教養を養うため,専門分野に限らない少人数ゼミを入学時から実施
チュートリアル・システムの導入
入学時から卒業まで教員と学生が人格的にふれあい,学生をきめ細かく指導するチュートリアル・システムの積極的な導入
学習環境の整備
少人数教育のための教室,図書館,コンピュータなど,学習環境の整備

(4) 学生の自主的活動及び学生関係施設
学生の自主的活動に対する支援
学生の自主的な活動を人間的成長を促すための活動として支援
学生の自主的な活動を適切に評価し,優秀者に対する表彰制度や報奨制度を設けるなど学生に対するインセンティブの付与
学生関係施設の整備
課外活動施設や学寮など学生関係施設の整備
学生が日常的に集まり,人間関係を緊密にする「たまり場」的な場所の整備

3  学生の希望・意見の反映
(1) 希望・意見の反映方法
大学で教育を受ける学生の希望や意見を適切に大学運営に反映させることが重要
学生が大学運営に関わることを通じて,社会的成長を促すことを期待
反映方法としては,1学生のアンケート調査・実態調査,2学生代表と大学運営責任者の懇談会等の実施,3学生代表の大学諸機関への参加など

(2) 今後の改善方策
分野の拡大
希望・意見の反映の分野を正課外教育,福利厚生のみならず,正課教育の内容のあり方や授業方法,教育条件の改善などへ拡大
学生による授業評価
学生による授業評価は年々増加し,平成10年には約55パーセントの大学で実施
授業評価の実施方法を工夫・改善し,結果を公表することによる適切な実施
学生代表との意見交換の場の活用
欧米諸国のような大学の管理運営組織への学生代表の参加は,我が国のこれまでの経緯や現状に鑑み,慎重な検討が必要
大学の責任者が定期的に学生と意見交換の場を設け,その結果を大学運営に反映


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