資料1 前回までの大学教育部会における主な意見

1.大学教育の質的転換・質保証

各教員の,授業における質の保証について具体的に考えることが必要。授業の質保証のためには,例えば,シラバスとルーブリックをセットとしたクラス運営や,教員の準備段階としてのTAの位置付けを明確にした上での活用の促進が必要。
○質保証で一番重要なのは,個々の授業でそれぞれの学修教育目標が実現されているかしっかり評価が行われることであり,そのための厳格な成績評価やGPAの導入が実効化されることが必要。
○国際化を進めるためには,英語で授業をすることが必要であり,英語の授業を教育の現場でどう取り扱うのか考えていかなければいけない。
○単位認定を厳格に行うには,成績評価を厳しくするだけでなく,セーフティネットや再履修の機会など,多様な仕組みが求められる
学校外の様々な活動を積極的に取り入れて,グローバル化に対応した多様な授業形態を考えていくことが必要。
○入学してからの学修にモチベーションが沸くような大学入学者選抜の仕組みにすることが必要。
GP制度のように,頑張っていろいろな取組をしているところをきちんと見出して評価をするような仕組みを設けてはどうか
○短期大学では多様な学生を受け入れている中,コンソーシアムを形成しながら教学IRシステムを構築して改善に取り組んでおり,このような取組も踏まえた多様な評価制度を促進することが必要
○設置認可から認証評価制度までに至る一連のシームレスな質保証のトータルシステム作りが緊急な課題。
○設置基準を精緻化するより,むしろ,各大学が柔軟に様々なイノベーションを行えるようにした上で,それを適切に評価できる認証評価にすることが大きな方向であるべき

2.認証評価制度の改善・充実

(総論)

○認証評価に関する制度改正に当たっては,個々の大学の教育目標がきちんと実現できているかを確認することが最重要課題。
○一律的・客観的な基準で評価すべき部分と各大学の使命を踏まえた自己点検評価を中心に多様な基準で評価すべき部分の両方を整合的に評価制度に組み込んでいくことが必要

(学修成果や内部質保証を重視した評価の在り方)

○明確な人材像を設定し,個性的な教育を行うそれぞれの大学の教育努力を的確に評価するためには,外形的,画一的な評価ではなく,それぞれの大学の個性に応じた教育の成果を的確に評価することが必要
○大学の努力の評価は毎年できるが,大学の努力した成果の評価は,相当の期間をかけて,学生が育っていく過程を見なければいけないため,内容に応じた評価の方法を変えていくという柔軟性が必要
○学修成果の評価が機能するためには,学内におけるアセスメントプランを定めて,使用するデータやルーブリックを定めておくといったことを大学に求めていく必要がある。
○多様な評価項目によって,入学の時点から卒業までの間に大学教育を通じてどのくらい伸びたのかという伸び率を評価すべき
学修成果を測る際,入学時の学力と卒業時の学力の伸び幅を測ると,大学によって学力の伸びやすさが異なることに留意が必要。例えば,一大学が非常に成果を挙げたといっても,学力のあまり高くない学生が入学している大学の場合は,成果を挙げるのは簡単だが,一定の学力層の学生が入学している大学だと,学修成果というのは測りにくい部分もあるため,その調整をどのように図るか考える必要がある。
○専門教育では教科科目の目的,内容,水準などについて数値化・明確化し,その学習達成度を客観的な試験などによって測ることができるが,教養教育の場合,学ぶべき内容は考え方や物の見方等,質的な側面が多いため,ルーブリックによる学修到達度の評価が有効
○学生や卒業生が自らの大学をどのように評価しているのかという当事者評価の観点を取り入れることが求められる。その際,学生調査を個々の分野や組織ではなく大学全体として実施していくことが必要。

(機能別分化の進展に対応した評価の在り方)

○今後は,各大学が設定した目的・水準を評価する「達成度評価」を重視し,その促進を通じて各大学が機能別に分化し,多様化していくことを支援することが必要
○機能別分化の進展に対応した評価を進めていく上で,各大学が自らのミッション,ビジョンをはっきり打ち出すことが大事。 

(評価結果を改善につなげる仕組み)

○評価機関は,単に評価結果を出すだけではなく,大学の改革を支援するための外部のコンサルティングのような役割を果たせるよう,評価のフォローアップの機能を高めるべき。
○認証評価で不適合の判定を受けた場合,直接のペナルティがないことが課題。各種補助金の打ち切りや申請資格剥奪などのペナルティと認証評価を連動させるべき
○「期限付適合」の評価を受けた後,「再評価」においても改善が十分ではなく,再度「不適合」の結果となる大学もある。このような場合に,認証評価機関が大学に対して何らかのアクションを起こす手続き的・制度的な手立てがないことが問題。認証評価の結果深刻な問題が判明した大学について,文部科学省による指導・勧告・警告・閉鎖などの措置を執る必要がある。また,評価では適合だったがその後深刻な問題が判明した大学についても同様の対応を考慮することが必要。

(評価における社会との関係の強化)

○評価における社会との関係の強化がおざなりにならないように,ステークホルダーに対してどういう意見を求め,評価を実施するかまで踏み込んで,認証評価を考える必要がある
○評価結果や改善の取組を社会に発信するのは大学だけの責任ではない。評価機関側にも評価結果等を社会に対してアピールすることが求められる。 
○認証評価を通じて社会から大学に対する理解と支持を得ることができていないとするアンケート調査の結果もあることを踏まえ,大学と学外のステークホルダーとのミーティングなどの機会を設けるべき。 
○高等学校,大学を選ぶ側からの視点で考えると,大学選択等における評価の活用を考えることも必要大学の質保証をはかるための認証評価が,ある程度,大学を選択する際の評価にもつながるとよいのではないか。

(評価のサイクル)

○認証評価全体は7年に1回だが,各大学が重点的に行いたいと考える部分については毎年評価するということも必要
○認証評価の結果が良好な大学等については,次の認証評価を受ける期間を延ばしたり,逆に,問題点のある大学等については,より重点的にフォローアップをしたりするなどの柔軟性を持たせることも考えられる。
○専門分野別・教育プログラムごとの質保証については,各大学の内部質保証システムが十全に機能しているかどうかを確認する方向にすべき。加えて,1,2の専門分野について認証評価で少し詳しく見てみるということも必要なのではないか。

(その他評価の質の向上のための方策)

○外部からの評価の質も高めていかなければならないが,大学における自己点検評価をどう強化していくかが非常に重要。
○主体的な自己評価を進めると大学の負担が増えるため,7年に1度の評価だけでなく,それに至るまでのプロセスである毎年の大学の自己点検評価や改善の取組について,人的・資金的な支援等を行う大学コンソーシアムのような組織が必要
○認証評価機関の質を保証するため,例えば,認証評価機関の定期的なレビューが必要
○評価の在り方そのものや,学修成果の測定方法の開発など,評価について重点的に研究開発する機関が必要
大学評価・学位授与機構について,評価の実施機関よりは,評価のメタ機関や評価やアセスメントの研究開発に関する国の中核的機関へと位置付けを変えてはどうか
○大学における継続的な改善の促進のために同一の認証評価機関と恒常的な関係を確保する観点から,また,認証評価機関の財政的基盤の確立の観点から,会員制の導入を検討してはどうか
○18歳人口の減少に伴う経営上の問題が発生する中で,認証評価の際にも,大学のリスク管理や対応策を確認する必要があるのではないか
認証評価で大学院の教育力を評価する仕組みの充実が必要

3.情報公表の在り方

○大学に対する評価は,現在の認証評価の仕組みから,最終的には大学が国民へ情報公表を積極的に行い,国民からの評価を受けるという形に移行しないといけない
前向きの競争を作り出すための基盤として,情報公表の充実が必要
○情報公開は,データについての基準や定義を定め,他のデータと比較できるようにすることが大事
○情報公開が教育の質の転換(変化)を支える重要な手段。その際,数字等の公表に当たり,大学によって,解釈(定義)が異なるようでは,公表した数値の意味がないので,公表する数字等については定義を明確にして,大学間で解釈が異なることのないようにする必要がある。情報公開を実りあるものにするために,比較可能なしっかりした情報を提供することで,広く社会からの評価や批判を受けることを可能にし,大学改革を真に進めていく原動力にしたい。

4.設置基準等の改善

(基準の明確化や一覧性の向上)

○現在の設置基準は,教育組織と教員組織が一致していることを前提に定められているが,基準の整合性を整理する必要がある。
○現行基準で矛盾が生じている部分については,手当てをする必要があるものの,精緻(せいち)化にばかり行き過ぎると問題
○設置基準の一覧性を高め,自由に解釈を運用できる表現を改め,解釈に振れが出ないような精緻(せいち)な設置基準にし,認可審査のルールを改めていく必要がある。
○現行の設置基準は機関としての大学の設置基準なのか,教育課程としての大学(学士課程)の基準なのか,極めて分かりにくく,「学位授与機関」としての大学としての要件を定めた新「大学設置基準」と,学位課程ごとの基準(「学士課程基準」「修士課程基準」等)を別に設定するなど,設置基準の全面改訂が課題
中長期的な大学の在り方や長期ビジョンを議論した上で,将来矛盾を来さないような形で中長期的な課題と当面の課題を相互に関連させながら議論していく必要がある。

(届出制度の在り方)

○学位の分野の名称が700以上あるということについては,質保証の観点から整理が必要
○学位に付記する名称が増え続けていくことは届出制度の問題の大きな元凶になっていると考えられるため,学位の多様性について議論する必要がある
○新設大学が増えてこない状況の中では,届出設置の在り方や,学位の種類や名称が非常に多様化している状況への対応が,質保証のためには重要

(サテライト・キャンパス,別地キャンパスに関する基準の在り方)

○サテライト・キャンパスの検討にあたっては,誰を対象に何を教えるかということが重要であり,グローバル化や教育の多様化の中,教える場所が大学キャンパス以外にも必要となる中で,大学設置基準との整合をどう図るかということだと思う。
サテライト・キャンパスや別地キャンパスに関しては,地方の大学のはずが学生数は東京のキャンパスの方が多い状態が生じていることなどが問題となる一方で,規制を強化すると,大学がグローバル化のために海外に進出することを制約する可能性があるなど,問題点を整理する必要がある
○大学の理念を示すものが学則であり,サテライト・キャンパスについても,その場所で,どのような理念に基づきどのような教育を行っているかということを学則で明確にしていくことが必要
○遠隔授業が増加すれば,学生はキャンパスに頻繁に来なくなることから,相当充実し,魅力あるものにしていかないと,キャンパスとしての機能を果たさない
○大学通信設置基準についても,スクリーニングにおいて授業を全く行っていない大学もあるなどの問題がある。
○10年後,20年後,大学がどのような学術情報基盤の下に成り立っているかを考えた上で,中長期的に,社会情勢に対応できるための大学設置基準自体の見直しを考えるべき
○設置基準は,オンライン教育をはじめ,今後の様々な教育におけるイノベーションを勘案し,充実した教育が行われているということを重視する方向の改正を考えるべきではないか。

(その他の検討課題)

○長期的な問題としては,設置基準で定員を設定することの意味を考えることも必要。
○設置基準の検討にあたっては,大学院の部分にも手をつけないと,大学教育全体の改善につながらない。

5.設置審査の在り方

○現在の設置認可は実績がないところで学位授与権を個別学位ごとに審査しているが,今後は実績も考慮した審査,認可にすべき
○現在の設置認可制度や基準は,性善説が前提。確信犯的に悪用しているケースは,行政指導や公表だけでは問題があり,新たな制度補強が必要
○既存の大学の教育の質が変わってくれば新設するところもそれに従うはずなので,既存の大学の教育の質をどうするかということが重要

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