資料5 届出設置制度の課題と見直しの検討について

課題1.学際分野の取扱い

(1)現状

 現在、学際分野として取り扱われているケースの多くが、複数の学位の分野にまたがり、かつその構成分野がほぼ特定できるものとなっている。また、これらのケースでは、同一学科内に分野に応じたコースを設けるなどによって、事実上「学際」的な教育を行っていないものもみられる。一方、「学位の種類及び分野の変更等に関する基準」(平成15年文部科学省第39号)においては、学際領域等の学位の分野の区分の判定が難しい学位の分野の判定に当たっては、新学部等の教員数(略)の半数以上が既設の学部等に所属していた教員で占められている場合に限り、「学位の分野の変更を伴わないこと」と同様に取り扱い、届出設置の対象となっている。
 このため、このような仕組みを利用して、既設組織の教員の半数以上を移行することによって、既存組織では授与していなかった学位の分野を含む学部等を、認可を経ることなく届出のみで設置することが可能となっており、届出制度を複数回用いれば、本来、認可審査を受けるべき事案であるにもかかわらず、認可審査を経ずに認可審査と同じ組織改編を行うことが可能となっている。このため、このような届出制度における学際分野の取扱いについては、その構成分野の捉え方に関する見直しが必要。

(2)見直しの観点として考えられる例

○1 学際分野について、構成分野が複数にまたがるが、主となる分野が存在する場合は、他の分野の要素があっても「複合」分野として取り扱うのではなく、主となる分野の学位を授与するものとして取り扱うこととし、その場合において、組織改編等に際し、当該「主たる学位の分野」を変更する場合には、届出設置ではなく、認可審査を経ることとすること。

○2 学際分野について、構成分野が複数にまたがり、それぞれの学位の分野が特定でき、それぞれの分野の学位を授与するものとして適当と認められる場合は、「複合」分野として取り扱うが、その際、大学全体として授与する学位の分野が増える場合には、届出設置ではなく、認可審査を経ることとすること。

○3 上記○1又は○2とは異なり、構成分野が特定できないような「学際」分野については、基本的には、組織改編を行って学際分野に係る学位の種類が変更になる場合には、認可審査を経ることとすること。但し、構成分野が特定できないような学際分野であったとしても、例えば学科から学部への改組転換など、教員組織等に実質的な変更を伴わない組織再編の場合において、以下に掲げる条件のもとであって、既存組織のノウハウが活用できることが担保される場合には、届出設置ができることとすること。
 ア:存組織を基に新設組織を設置する計画であり、既存組織を廃止する計画であること。
 イ:新設組織の必要専任教員数の2分の1以上が既存組織に所属していた教員から移行するものであること。

課題2.目的養成分野の取扱い

(1)現状

 現在、学位の分野に関しては、「学位の種類及び分野の変更等に関する基準」(平成15年文部科学省告示第39号)に定められているが、その学位の種類の設定が大くくりに定められているものが存在している(例えば、看護師や理学療法士等のいわゆる目的養成分野については、それぞれカリキュラムや教員の専門性が異なるにもかかわらず、「保健衛生学関係」として一くくりの分野として扱われているため、認可審査を経ずに、届出制度を通じて組織改編が可能となっている)。
 他方、目的養成分野においては、カリキュラムや教員に求められる専門性が相当程度明確であり、かつ分野間での互換性があまり高くないことから、届出設置に際してほとんど新規採用教員のみで教員組織を構成するケースも少なくなく、本来、認可審査の対象とすべきものであるにもかかわらず、届出によって設置が可能であるため、場合によっては、教育研究の質の担保に大きな懸念が生じる場合があり得る。このため、このような届出設置における目的養成分野の取扱いについては、学位の種類の在り方の見直しが必要。

(2)見直しの観点として考えられる例

○1 大くくりになっている学位の種類に関し、同学位の種類の中で、カリキュラムや教員の専門性が異なる目的養成分野については、それぞれ独立した分野として取り扱うこととし、その場合の異なる目的養成分野間における組織改編等の場合は、学位授与の趣旨に立ち返って、届出設置ではなく、認可審査を経るようにすること。
○2 上記○1の場合における学位の種類の設定に際して、目的養成分野のくくりをどのように設定することが適当かについては、引き続き精査が必要。

見直しの対象となる関係法令

・「学位の種類及び分野の変更等に関する基準(平成15年文部科学省告示)」

【参考】
「学位の種類及び分野の変更等に関する基準」(抜粋)
第1条 大学の学部若しくは学部の学科、大学の大学院の研究科若しくは研究科の専攻若しくは短期大学の学科の設置又は当該専攻に係る課程の変更(以下この項において「設置等」という。)であって、学校教育法(以下「法」という。)第4条第2項第1号又は学校教育法施行令(以下「令」という。)第23条の2第1項第1号に該当するものは、次の各号に掲げる要件のいずれにも該当する設置等とする。
  一 設置等の前後において、当該大学が授与する別表第一の上欄に掲げる学位の種類の変更を伴わないこと
  二 設置等の前後において、別表第1の上欄に掲げる学位の種類に応じ同表の下欄に掲げる学位の分野の変更を伴わないこと
2 (略)
第2条 (略)
別表第1(備考)学際領域等右記の区分により難い学位の分野の判定に当たっては、設置等又は開設に係る学部等の教員数(大学設置基準(昭和31年文部省令第28号)その他の法令の規定に基づき必要とされる教員数をいう。以下同じ。)の半数以上が既設の学部等に所属していた教員で占められる場合に限り、第1条第1項第2号又は第2項第2号の規定に該当するものとして取り扱う。

 

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