5.これまでの主な意見

1.「学士課程答申」以後の各大学の取組を踏まえた論点整理

【中心テーマ(イメージ)】
(1) 「学士力」→ 各大学の重点を置く機能や使命に照らしながら,修得すべき知識・能力を明確化すること,また,その取組状況の把握と,その充実。
(2) 教育内容・方法→ 学生の学習量と,その密度。
(3) 学内の実施体制→ 学長によるリーダーシップによる運営と,FD・SDを通じた教職員の職能開発と認識の共有を通じた運営。

【なお,検討に当たっての留意事項】
1. 初中教育との情報共有の必要性,また,産業界を含む社会との関わり。
2. 機能別分化の進展への対応(各大学で重点を置く機能や分野等は多様)
3. 各大学の取組とともに,大学団体などによる取組の重視

 これらに関し,更に審議を進める

 2.「学士課程答申」以後のグローバル化への急速な進展を踏まえた論点整理

  •  「学士課程答申」も,大学制度の国際的な共通性を前提としていたが,大学分科会では,この答申後,大学教育のグローバル化を意識した提言を一層重視。
    1.質保証の枠組み
    (例:国内の質保証システムの議論に加え,アジアにおける連携の枠組み)
    2. 情報発信
    (例:すべての大学を対象とする情報公表に加え,グローバルな情報発信)
    3.教育連携
    (例:国内の大学連携に加え,ダブル・ディグリー等の海外との連携ガイドライン)
  •  こうした蓄積に基づく論点整理をさらに進めつつ,グローバル化の進展や,震災後の我が国の人材育成の在り方を踏まえた審議が必要。

 3.これまでの検討課題として挙げられた意見例

 検討の方法

  • 実質化ができている大学の取組を手がかりとし,形式的になっている部分を見直すこと。
  • ポイントを精査し,各大学がどのように取り組めばよいか分かるよう具体的な提案を速やかに進めること。
    • 各大学が,機能別分化の進展の中で,社会の要請に応える人材養成のために,学生受入れ/教育のプロセス/学位授与,の3つの方針を設定し,その結果として,人材養成が本来の目標にのっとって行われたか評価し,教育改善にフィードバックする仕組みを整えることが課題となっている。そうした観点から,各大学で,3つの方針の設定とその運用が適切になされているか確認しながら,質保証の検討を進めるべきであること。
    • 大学改革に関する今日的な問題意識として,
      • グローバル化の中で高度な教育研究の必要性,
      • 大学の輩出する人材の産業界とのミスマッチとの指摘,
      • 少子化による経営困難な大学における対応,

     の3つの課題が挙げられ,これらを踏まえた検討が求められている。

 その他,改革ツールの導入に関して

    • カリキュラム編成上のツールは,具体的な目的・目標と繋がっている必要がある。
    • 米国では,学習者と教員がポートフォリオとルーブリックによって,各科目の達成目標の到達度を確認する取組がされている。
    • 日本で学習ポートフォリオがうまくいかないのは,学生をモチベートする方法が確立されていない,フィードバックの仕方が確立されていない,ポートフォリオに表されたものの評価方法論がないことが原因。それを補完するのはルーブリック。ルーブリックにより,評価の観点を明確にできる。
    • 日本の大学は縦の構造が非常に強い。学部・学科・学科の下の単位ですべて決まっていく。様々な改革ツールの導入は,実際には学科の下の単位で行われており,非常に狭い範囲で科目が組み立てられ,教員の負荷を大きくし,非常勤講師を雇って科目を多くし,また共通科目も行われないという構造を生み出している。
    • シラバス,ナンバリング,GPA,CAP制などが全体でひとつのパッケージ。どれかが欠けてもうまく機能しない。
    • GPA,シラバスは国際的な通用性をもたせるために重要。
    • ルーブリックは,評価者ごとのズレの発生の抑制や,被評価者への答案やレポートのフィードバックを促進する上で有効。ただし,評価の積み重ねや教員間の連携が必要。
    • 改革の道具を統合的にとらえていくことを提起すべき。
    • 学生の動機付けとインセンティブを組み込むことが重要。教員の視点からツールを活用するだけでは足りない。
    • GPAやナンバリングが,高校から大学・大学院・企業につながることの重要性。

(1) 学位授与の方針

 例:・人材養成目的の作成と公表
      ・修了時に修得することを想定する知識・能力

    • 本年4月の省令改正により,「修得すべき知識・能力に関する情報」を各大学で公表に努めることとされており,それを受けた各大学の取組事例は多様であるが現時点では,総じて,抽象的な記述にとどまっていないか。
    • 「学士力」に関連して,各大学で,学士課程を通じた学習成果を具体的に示す試みがどのようになされているか(それぞれの教育理念,学生の実態,分野の特性等を踏まえた検討の状況)。
    • 諸外国で,学修成果への関心が高まっている中で,我が国における推進方策について。その際,学修成果の設定と,その実現のための具体的な取組の課題について(分野横断的な学士力と,学部・学科ごとに修得すべき知識・能力の明確化の関係)。

・学習成果について

    • 学習成果を求める議論が先行するのには懸念がある。学習成果の測定(AHELOなどの卒業テスト,ルーブリック)により,学生の学習が実質化するというのは幻想。テスト導入は,テストに向けた教育課程編成につながる。
    • その考え方には同意するものの,大学の学科長へのアンケートでは,学力の底支えを求める観点から,汎用的能力の客観テストに関心があること。
    • ルーブリックの活用について。
    • 4年間よりも長い期間をかけて発現することを目指す教育をどのように考えるか。
    • 認証評価と関連付けや専門分野別の認証評価など,まずピアで取組を評価する状態をつくることが必要。
    • AHELOへの参画については,学習成果の測定そのものよりも,各国の教育の違いを発見し,改善につなげていくプロセスに意義がある。

 (2) 教育課程の内容・方法の方針

 1.教育課程の体系化・単位制度の実質化
 例:・順次性のある体系的な教育課程の編成

    • 日本の大学では,教授の問題として,様々な改革の小道具が導入されたものの,カリキュラムが体系的に構築されていない。
    • 学習の問題として,学生が学習せず,単位制の理念が生きていない。そのための制度的・予算的対応を含めた検討が必要。
    • 一般的に,我が国では,履修科目数が多いと指摘されており,これらを分野別に細かく見る必要があること。
    • 医歯薬系は科目が細分化されているが,質保証が取り組まれており,分野によって違いがあること。
    • 非常に細かい範囲で科目を設定し,科目数が増え,教員の負荷が増え,手厚い教育ができない構造的な悪循環。
    • 教員相互のコミュニケーションがなければ,効率的・体系的な科目配置にならず,教育の中身も薄くなる。
    • 本来,学位プログラム,カリキュラム,授業科目が決まるべきだが,教員が先にあって,授業科目が決まっている
    • 法科大学院では,教員間でカリキュラム・教材・テスト内容が調整されている。従来の学部も難しいが改めるべき課題。
    • キャップ制の重要性。
    • 認証評価において教育課程の体系化を検証すること。

   ・ 幅広い学修の機会を提供するための意図的・組織的な取組

    • 実質的な教育・学習の構造化が進んでおらず,大学の規模・分野の差も大きい。
    • 改革は教員任せでは進まず,ガバナンス改革を教育方法の改善支援とともに進めることが必要。

   ・大学間や地域の諸団体との連携強化による教育内容の豊富化
   ・学生の学修時間の実態を把握し,教育方法の点検・見直し

    • 我が国では,卒業研究やゼミが重視されてきたことと,学習時間の関係(それらを含めても学習時間は少ないのが実態)。
    • 日本の学生は勉強しないのではなく,大学がやらせていないこと。教員の意識改革と,勉強時間の確保は,大学のレベルにかかわりなくやれることであること。
    • 海外の大学を選択する高校生が出ており,そうした生徒の意識からは,学習時間が教育プログラムの魅力と関係すること。
    • 改革を学内から動かすための単位制度と財政との関連付け。
    • 15回の授業+1週の試験よりも,1単位45時間の学習確保が重要。
    • 語学のような科目では,大学共通なルーブリックを整備できるのではないか。
    • 新規のショートステイ事業では,滞在が最大90日なので,15週に満たず,恒常的な仕組みとして単位を出すのが難しい。
    • キャップ制が形骸化している一方で,15週+1週(試験)が厳しく取り扱われているが,むしろどのような活動を行うか明確化すべき。
    • ルーブリックやカリキュラムマップをウェブに掲載することが目的として受け止められがち。
    • 我が国の大学教員は,少人数教育を重視しているが,研究室・ゼミでの指導を含めても,学生の学習時間の確保に限界。大学全体で学士課程教育を設計することが必要であり,ガバナンスの問題と切り離せない。
    • 1単位45時間という設置基準の規定をどのように考えるか。もともと設置基準整備前の日米の実態を踏まえて整備された考え方。欧州でも同様であり,国際的なスタンダードと言える。
    • 米国では,学生の学習時間のデータは公表され,アクレディテーション団体もそれを要求している。欧州も単位互換の際,正味で同じ学修時間を要求している。
    • 時間と学習量を結びつけること,何を身につけたかという成果の測定の2つは国際的に課題。
    • 医療系分野における学習の取扱いが,ここで議論している単位制度と乖離が大きい。

  ・単位制度の実質化

    • 「15回授業+試験」の取扱いよりも,実質化の議論を優先すべき。キャップ制や科目数の削減,評価の観点や課題に必要な学習時間が明記された詳細なシラバスの作成などから議論することが必要。
    • 学年歴に15週の授業枠があり,それと別に,最後の週に定期試験を設ける大学は多く存在する現状に基づいて,設置基準が規定され,認証評価も行われていること。
    • 1つの科目につき,週一回の授業という共通理解の考え方
    • 1単位当たり,45時間の「学修を必要とする内容をもって構成すること」とされており,「必要とする内容」が大切ではないか。
    • 設置基準は,授業時間として15時間確保せよといっているのであって,試験を試験週間以外にやってはいけないということはない。
    • 米国では,普通の授業と違う時間に試験を設定することが多い。日本では,法学部などでは,授業と試験は別という考え方もある。授業に登録している学生が全員来ると教室に入らないため,試験機関が必要というところも現実にはある。
    • 課題を出しても学生がついてくるのが難しい現実において,大学は授業時間を増やし,学生をキャンパスにつなぎとめて学習させることも重要。
    • 基本的に,授業設定は,各大学の判断で可能である
      (例:集中講義を行った場合の単位認定のタイミング,サマーセッションの導入,授業科目の半分だけ履修して,海外に留学する場合に,半分の単位だけを与えること(あらかじめ授業をそのように設計していれば可能だが,単位を授与するだけの内容が伴っていないといけない)。
    • しかし,なんでも可能とすれば,時間割が編成できなくなり,学生にも不便。「10週又は15週を標準とする」として,「集中講義なども可能とする」という構えにすべきではないか。
    • 「15回授業+試験」の考え方は,中間的な試験はどう考えるのか。これらは設置基準上の解釈として導かれるのか。
    • 認証評価では,「授業15回」について厳格に対応した面があるが,それは教員の授業回数の増加に働いた。
    • 休講の場合に,eラーニングで対応する場合の取扱いについて(メディア授業として位置づけるのか)。これは設置基準23条但し書きの取扱いとは別の問題。

   ・シラバスの整備,授業時数の確保

    • 学生の学習プロセスに関する実態の把握(例:各授業科目における授業時数の確保の取組方策を含む)と,その分析を通じた改善について。
    • シラバスが,学生の履修に役立つものとして整備されることが求められることについて。
    • シラバスは,本来,授業のガイドラインとなるものだが,1科目1ページ程度がほとんどで,米国と大きく異なる。
    • 質保証のために,シラバスのモデルを示すこともあるのではないか。
    • 教員間でシラバスの調整・連携が必要。書式を詳しくするだけではシステムは機能しない。
    • シラバスを学生との「契約」と捉える場合の考え方。
    • この数年間で,各大学がフォーマットを定め,空欄がほぼなくなった。認証評価の2期目では「コースカタログでは不十分」という評価を想定。
    • 国際基督教大学の例(シラバス,ナンバリング,GPA,CAP制などが全体でひとつのパッケージ。どれかが欠けてもうまく機能しない。GPA,シラバスは国際的な通用性をもたせるために重要。授業の積み残しの防止と,オフィスアワーのひとつの形態としてコメントシートを活用。)
    • 金沢工業大学の例(シラバスは,学生が勉強する手順を判断できるよう「学習支援計画書」として整備。総合的なポートフォリオの一環として実施。GPAではなく,QPA(Quality Point Average)と呼び,テストの成績だけでなく,普段の学習も含めた指標を用いている。グループ学習や,アクティブラーニングの重視。)
    • 各大学の実質的な努力を把握する仕組み。欧米では,様々なセンターやコンソーシアムによる取組。
    • あわせて,ナンバリングの整備が課題であることについて(ナンバリングの検討を通じて,学位課程の共通性の形成と,各大学の個性・特色のあり方が示される)
    • 単位制度が実質化し,履修を通じて何を修得するのかを確認することについて。また,学生の学習時間を増やすような工夫について。
    • あわせて,就職活動の早期化の現状に関する認識について。

   ・ナンバリングの確立
   (ア) 個別大学の中でのナンバリングの確立について

    •  各大学において124単位の構造的な設計ができていない。ナンバリングの議論に入る前に,各大学でそうしたものが確立されるべき。次のステップとして,単位互換などで水準を共有しようとする大学との連携も出てくる。
    • 教育課程全体としての到達点に達するために,個々の授業が配置されるという思想が十分に取り入れられていない。
    • 授業は教員のものという思想が強く,共通的な標準化が拒否されがち。学習する側から見た学びのシステムの構造化をし,教員にも科目の前後関係を意識してもらうことが必要。
    • 化学の例にあるような基礎的な科目は,本来,どの教員が教えても可能であるものとして設計されるべきもの。標準化されることで,TAの活用も進む。
    • ナンバリングという呼び方に抵抗があるのではないか。表現上の工夫も必要。

   (イ)大学間での共通のナンバリングの確立について

    • 各大学において124単位の構造的な設計ができていない。各大学でそうしたものが確立されるべき。次のステップとして,単位互換などで水準を共有しようとする大学との連携も出てくる。
    • 米国のカリフォルニア州の例(UC・州立大学・コミュニティカレッジのそれぞれでナンバリングが管理され,学生の移動が可能になっている。そうした取組を可能にするために大学団体の役割が重要)
    • カナダのブリティッシュコロンビア州の例(州立大学とカレッジの議論で,科目の互換性を定めている。学生の大学間移動を支えつつ,教育の水準を保証)
    • 海外から交換留学に来た学生が,日本で履修した単位は,シラバスを詳細に点検され,所属大学の単位として認められるか判断されている。
    • 米国では大学間で学生が移動することが前提になっており,そのためにナンバリングが広まっている側面がある。

 2.教育方法の改善
 例:・能動的な学習手法やボランティアをはじめとする多様な教育方法の導入

    • 震災後の人材育成の在り方として,ボランティアをはじめとする活動の充実
    • そうした活動が,教育課程の編成に当たって,どのように位置づけられ,それについて,学内の共通理解が得られているかどうか。

   ・教育研究上の目的に応じた情報通信技術の活用

   ・ツールとしての基盤教育(英語,日本語,数学的な思考)の体系的な実施

   ・入学した学生の意欲を持たせて成長させるための方策。

    • 初年次教育やアクティブラーニングなどの新たな教育内容・方法による効果は,次第に学生も実感。
    • 授業類型として,
      統制型(出席確認や中間テストの実施),
      誘導型(わかりやすい授業や,なぜ重要かをわからせる授業),
      参加型(学生に発言させる,グループワークさせる,レポートへのコメント),
      に分けると「参加型」が,学生が自ら学習する時間が増加し最も効果的。
    • 大学入学自体が目的化しており,手段であることの理解。

 3. 成績評価
 例:・GPA等の客観的な基準の認識の共有と厳格な適用

    • GPAが各教科の成績の加重平均の実施にとどまらず,教育の質を高めるための活用が求められることについて。
    • GPAの導入・実施に当たり,国際的に通用する仕組みとしての観点(評価の設定を標準的な在り方に揃える,不可となった科目も平均点に算入する,留年や退学の勧告等の基準とするなど)。また,GPAでの成績評価の設定に関する諸外国との比較について。
    • アメリカの大学(UC)では,日本の学生の交流に関連して,ナンバリングや体系的なシラバス整備の重要性が指摘されている。その中では,GPAの運用として,履修放棄した科目も成績に算定される。
    • アドバイザー制を導入するなど,きめ細かな履修指導や学習支援の実施。

  ・国際化を特色とする大学における外国語コミュニケーション能力の厳格な評価
 

  ・TA・SAの活用について

    • TAは,大規模な研究型大学であれば確保しやすいが,そうでない大学について。
    • TAについては,量的確保の課題もあるが,それ以前に,財政的な問題や,教員側の意識とTAの活動の中身など質的充実を検討すべき。
    • TAはカリキュラムや授業が標準化されて,初めて有効になる。日本では,標準化が進まないこともあって,教員・学生ともにTAに対する評価が低く,有効に活用されていない。
    • 大学によっては,SAも授業の内容に関する補助を行うなど有効。SAになった学生も成長する。大学3・4年生が,1・2年生を学習支援するなどの工夫。

  ・学生の視点からの議論

    • 個人主義の強い米国でも,グループワークや双方向型授業を重視している。High Impact Practiceと呼ばれる集団学習・体験をフィードバックさせる学習方法を導入していく必要がある。学生の立場に立った議論が必要。学習は,正課外の生活や社会に広がっている。単位制やキャップ制も学生にとって何のためかということを明確にすべき。
    • 米国では,一人ひとりの違いを生かし,授業の中で取り込み,それぞれの良さを伸ばしていく印象。方法論が何を目指しているかが大切。
    • 一部の大学では,学生憲章として,学生が何をすべきかを定めている。

(3) 入学者受入れの方針

例:・学位課程のあり方に照らした入学者受入方針の明確化
 

(4) 就業力の向上をはじめとする大学教育の課題について

  •  大学教育を通じて,専門的知識を培うとともに,知的・道徳的・応用的能力の育成の観点から,幅広く社会の形成と発展を担う人材育成の充実について,例えば,
    ・教育課程の内容・方法,
    ・学習成果の評価,
    ・実施のための学内のガバナンス
    などの観点から,どう考えるか。
    (震災後の我が国を担う観点からの人材育成の在り方を含む)
    • 各大学の目標の実現に向けて,経営計画と教学改革を結合した統合的な取組が必要。
    • 学長から個々の教職員に至るまでの相互関係の再構築,効果的な運営システムの整備が課題。
    • 自己改善に当たり,認証評価結果をさらに活用すべき。

 例えば,
1.自然や社会の事象等に関し,正しい知識・理解を備え,発信できる知的人材,

    • 震災後の我が国の大学教育への問題意識をもとに,アメリカの動向を参考にしつつ,問題解決型教育プログラムに取り組んでいる事例について。

2.幅広い教養,高い公共性・倫理性を持ち,社会の安定・発展・創造に貢献する意欲・能力を持つ人材,
3.経済・社会のグローバル化が急速に進展する中で,グローバルな社会で活躍できるコミュニケーション能力や調整能力の高い人材。

    • グローバル化は,一部の企業と大学にとっての課題ではなく,基本的に,すべての大学にとっての課題であること(例えば,世界の動向への理解と,想定外のことがあっても自ら判断して,リーダーシップをとれる人材の養成)。
    • グローバルに活躍できる人材の育成が国内外の大学で行われており,また,産業界を含む社会の様々なセクターが,そうした人材を求めている中で,我が国の大学が,大学外の幅広い社会の多様な声を聞きながら,改革を進める必要がある。
    • 大学教育において,学問を通じて「問題設定-仮説設定-仮説検証-結果報告」を修得し,自ら考えることができる人材を育成することは,この大きな変化の時代に欠かせない。
    • 日本の大学で育った学生が国際社会でリーダーシップを発揮できるような教育を受けていないならば,我が国の発展に大きな影響を与えることとなる。
    • グローバル化した企業では,人材獲得は国際的な観点で行われており,そうした企業内の職員選考では,日本の大学の卒業者が,海外大学の出身者に勝てない事例がある。
    • 日本の大学が,ほかの国の大学に比べて劣っているということはないのではないか。理科系の者を多く採用する企業においては,専門分野の専門知識を修得していることを求めていることもあり,大学にそれほど問題点が多いということはない。企業は,採用後に,厳しいグローバル教育を実地で行っており,大学では,そうしたことに対応できるような,基礎的な知識・技能や,自らの専門分野を修得するような教育が求められる。
    • 大学教育を通じた共通基盤の確立という観点から,大学教育部会では,学士課程教育の課題について検討を開始している。そこでは,重要な課題は,学生にどう勉強させるかであって,その方策として,カリキュラムの体系性を整備すること,そして,教員の教育に向かう姿勢を個人的なものから組織的なものに変えていかなければならない。
      学士課程の施策を検証する際には,分野によって状況が違う原因も議論すべき。
  •  関連して,日本人・外国人学生を問わず,卒業後に国内外の多様な場で活躍できるような教育・学生支援の充実をどう図るか(国内外での雇用を念頭に置いた就職支援の推進を含む)。
  •  これらに関し,大学関係者と産業界等社会との対話の促進について。
    • 平成22年には,学生の社会的・職業的自立に関する指導等の実施の明確化のため,大学設置基準を改正(平成23年4月に施行)。
    • 文部科学省では,こうした設置基準改正を含む「就業力育成5カ年プラン」を公表。

 (5) 各大学の取組を把握・評価する仕組みについて

 例:・認証評価を通じた,各大学の活動状況に関する把握

    • 第5期の大学分科会の議論を踏まえて,認証評価機関(機関別評価と専門職学位課程評価とも)により,認証評価機関連絡協議会が発足しており,今後そうしたところでの議論の進展を期待。

  ・教育情報の公表の促進(本年4月に施行)

    • 省令改正を契機として,多くの大学が,ウェブサイトに「教育情報の公表」といったコーナーを開設し,情報を公表している。そうした各大学の取組状況の把握と,更なる検討(本年6月から,文科省の協力者会議で検討開始)。
    • 情報発信は各大学による取組が基本。加えて,大学団体の協力により,大学コミュニティによるオープンな検討を通じて,大学の取組を分析・発信するデータベースを整備することが課題。

  ・大学ポートレートの整備について

    • 「大学ポートレート」の整備に当たり,その予算・運営体制・スケジュールなど早急に具体化すべきである。
      グローバル化した企業では,人材獲得が国際的に行われており,国内の内輪での議論では切迫感がなく,「大学ポートレート」の整備は,スピード感をもって取り組むとともに,整備に当たって,海外の大学や企業の視点を取り入れることが重要である。
    • 大学教育に関する社会への発信に当たっては,どのくらい社会に寄与したか明らかにすべきである。大学教育における利益率(rate of return)の計測に関し,学生個人に着目した分析は蓄積されているが,大学教育の公共財として分析は難しい。大学の機能別分化の進展の中で,例えば,国際性・地域貢献などの観点から,公共財としての成果指標を編み出すことが重要である。
    • 企業は恒常的に社会の評価を受けている。大学も,教育の質の計測や評価などの検討を加速し,そうした状況を社会に公表していくことで,自然淘汰が進むような環境とすることが求められる。
    • 高校生などの大学への進路選択を検討している者には,大学評価の報告書を読んでいるものもおり,各種の報告書の公表と活用をさらに進めることも重要である。
    • 「大学ポートレート」を通じた情報公表は,大学の質の保証を伴ったものとしなければならない。例えば,「画一的なランキングを助長しない」ということは重要であるが,一方で,国際的な各種の評価や,社会からの評価などの客観的なデータの活用を工夫することが考えられる。

(6) そのほかの課題

例:・グローバル化への対応に関する制度的対応について

    • 大学の国際化に当たり,学位課程(プログラム)の確立(ダブル・ディグリーやジョイント・ディグリーへの対応を含む)。

  ・FD・SDの推進

    • 個々の教職員の努力とともに,教職員の組織的な活動を通じて,質保証・向上を果たす観点からどのように機能しているか。
    • FD・SDが形式化していないか(日常的な教育活動の中で,教員間の相談を通じて,体系的な学位課程を構築していくことが求められること)。
    • FDが講演会や研修会にとどまり,科目間の打ち合わせのような本来のFDが行われていない。
    • 学士課程の「三つの方針」の要素は互いに関連しており,FDを通じてそれらを結びつけて具体的な改革につなげていくこと。
    • FDを通じて,専門分野における教員間の意思疎通を図りながら,体系的なカリキュラムを構築すること。その場合の学内・学部内のガバナンスのあり方。

  ・初中教育との情報の共有の必要性。また,産業界を含む社会との関わり。
  ・教学に関するガバナンスの確立

    • 全学的に教学改善に取り組む観点から,特に同じ分野の教員がチームとして何を教えるか共通認識を持つこと。
    • 800の大学のすべてで同じガバナンスは難しく、学長リーダーシップだけで大学がよくなるわけではないこと。
    • 平成7年の大学審議会「大学運営の円滑化」答申を今日的状況から捉え直すこと。
    • 「学生受入れ→教育課程→学位授与」を一貫して捉え,教学経営におけるPDCAを明確化すること。
    • IRの体制や,職員の位置づけについて。
    • 大学のガバナンスについて,さらに議論する必要がある。ガバナンスのスタイルは各大学で多様であってよいが,ある程度の共通の改善点もあるのではないか。
      例えば,アメリカでは,学士課程教育は,部局単位ではなく,大学全体として管理運営されている。また,カリキュラムが構造化されることで,「この授業では何を教えなければならないか」が自ずと決まり,授業時間や,学生の個別指導に充てる時間量もある程度決まってくる。アメリカの大学教育は,時代に応じて変化しており,その際には,個別の大学の学長によるイニシアティブがきっかけとなって,様々な大学に広がった事例もある。
      一方,我が国の大学の各種制度は,時代とともに変化して現在に至っているものであり,大学の自治を前提としつつ,諸外国と比較しながら,より合理的な観点から検討を要する。そういった観点から,より具体的に議論すべきである。
    • 教育の質の向上や機能別分化に関連して,ガバナンスのあり方を検討することは重要な要素である。ガバナンスのスタイルには,一つの望ましい基準があるのではなく,各大学の目指す目的や多様な教育・研究のあり方に合った形で行われるものである。
    • 様々な大学改革のテーマがあるが,そうした改革が実行される仕組みがなければ実現しない。改革の方法は,大学によって多様であるべきだが,学内だけで議論するのに加え,地域や社会の期待に応えているかという視点から運営を改善する仕組みを整える必要がある。
    • 大学職員における直接部門(教育や研究支援)に従事している者の人数と状況の実態把握が必要である。
    • 日本はこの10年ほどで非常勤講師が非常に増えている(フルタイムの1/3として計算すると,教員一人当たりの学生数は米国との差は少ない)。
    • 米国の高度な専門職員・スタッフは,学内の横断的な市場が存在して成り立っている。これは,日本型のライン完結の組織とは異なる。
    • 大学職員を養成する大学院の学生数が拡張基調にない。専門性ある職員が本当に必要ならば,資格制度と関連させないと日本では評価されない。
    • 学部ごとでなく,学長や理事長によるリーダーシップによる組織的活動の重要性。
    • 分野別のディプロマポリシーの策定と,大学全体としての人材育成方針の関係。全学としての組織目標の設定が課題。
    • 学内の資源配分を学部より下のレベルで考えるのは必ずしも最適配分にならない。教学改革と経営改善が結びつくことが必要。

  ・IRの活用

    • IRの体制や,職員の位置づけについて。
    • 個別の改革努力はあるが,組織的なガバナンスに結びついていない。IRの活用によって,ベンチマークを参照しつつ,各大学の個別性と特色性を充実させることが必要。
    • 定量的なものと定性的なものの両面からベンチマークの考え方を導入すべき。
    • 大学間連携によるIR活用の拡大。設置者別団体や認証評価機関などの役割。
    • IRを担う人材養成(学内を熟知する職員が分析手法を身につけること)。
    • 認証評価での活用。

  ・支援方策

    • 1週間に複数回開講する授業を行う場合の現行の設置基準との関係。また、TAによるセッションを開催するとして、その補助をすることなど。
    • 大学の機能別分化を進め,そのガバナンス強化を通じて,各大学が,個性・特色を生かして教育を行うことで,多様な人材を育成していくことが不可欠となっている。そうした質の高い教育に対し,財政的に支援するとともに,その状況を社会に対して公表する仕組みを整備することは喫緊の課題である。
    • 大学予算全体や各大学の経営資源が限られている中で,優先度を定めて支援することが必要である。
    • 地方の大学は,大学としての使命を定めて,幅広い職業分野で活躍する人材を養成するなど地域に貢献する多様な取り組みが見られる。従来のGP事業やCOE事業に変わり,機能別分化の進展に対応した取組への支援が必要である。
    • 従来のGP事業は,個々の教員の発想に基づくボトムアップ型であり,また,その成果の学内全体や他大学への波及について課題が残った。
      それに対し,大学としての全学的なイニシアティブに基づいて教育目標を設定し,それを中心にカリキュラムを体系化し,組織的に取り組むものを支援すべきではないか。
    • その際,学部や学科ごとではなく,学長のリーダーシップに基づいて行われる大学全体としての活動が支援されるべきである。
    • 学内外の厳格な評価や検証に当たっては,大学関係者だけでなく,幅広く社会の意見を求めることとしなければならない。また,評価に際し,各大学が目指している機能が実現できたか,また,他大学へのインパクトはどうかといった観点が必要である。

  ・大学団体の活動の充実

    • 今回の3つの課題(大学教育の共通基盤の確立,機能別分化の進展への対応,そのための学内ガバナンスの強化)に向けて,様々な大学の成功事例や困難な課題などについて,大学間で交換すべき情報がまだあるのではないか。
      例えば,過去のGP事業がもとになって,カリキュラム改革に発展したり,何らかの形で学部・学科の再編等につながったりしている事例も少なくないと思われる。こういう事例の情報を交換していくことで,改革を進める余地があるのではないか。こうしたことは,従前より課題とされてきたが,さらに検討を深める余地があるのではないか。
    • 各大学が,それぞれの目的やその達成方法,あるいは地域・分野などの多様性の中で,それぞれが掲げる多様な機能がどのように実現されているかが評価の対象とされるべきである。
      そうした取組を進めるためにも,大学により構成される包括団体や,そのほかの中間団体の役割が重要である。

 

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-- 登録:平成24年02月 --