【中心テーマ(イメージ)】
(1) 「学士力」 → 各大学の重点を置く機能や使命に照らしながら,修得すべき知識・能力を明確化すること,また,その取組状況の把握と,その充実。
(2) 教育内容・方法 → 学生の学習量と,その密度。
(3) 学内の実施体制 → 学長によるリーダーシップによる運営と,FD・SDを通じた教職員の職能開発と認識の共有を通じた運営。
【なお,検討に当たっての留意事項】
これらに関し,前回の議論を踏まえて,更に審議を進める
○「学士課程答申」も,大学制度の国際的な共通性を前提としていたが,大学分科会では,この答申後,大学教育のグローバル化を意識した提言を一層重視。
(例:国内の質保証システムの議論に加え,アジアにおける連携の枠組み)
(例:すべての大学を対象とする情報公表に加え,グローバルな情報発信)
(例:国内の大学連携に加え,ダブル・ディグリー等の海外との連携ガイドライン)
○ こうした蓄積に基づく論点整理をさらに進めつつ,グローバル化の進展や,震災後の我が国の人材育成の在り方を踏まえた審議が必要。
【検討課題】
○学習時間の確保
○教育課程の体系化
○学習成果について
○教学に関するガバナンスの確立
【検討の方法】
審議における問題意識は以下のとおり,学士課程教育の構築が,我が国の将来にとって喫緊の課題であるという認識に立っている。
第一に,グローバルな知識基盤社会,学習社会において,我が国の学士課程教育は,未来の社会を支え,より良いものとする「21世紀型市民」を幅広く育成するという公共的な使命を果たし,社会からの信頼に応えていく必要がある。
参考:平成17年「我が国の高等教育の将来像(答申)」 |
第二に,高等教育のグローバル化が進む中,学習成果を重視する国際的な流れを踏まえつつ,我が国の学士の水準の維持・向上のため,教育の中身の充実を図っていく必要がある。
第三に,少子化,人口減少の趨勢の中,学士課程の入口では,いわゆる大学全入時代を迎え,教育の質を保証するシステムの再構築が迫られる一方,出口では,経済社会から,職業人としての基礎能力の育成,さらには創造的な人材の育成が強く要請されている。
第四に,教育の質の維持・向上を図る観点から,大学間の協同が必要となっている。
(1) これまで,国においては,様々な規制を緩和し,大学間の競争的な環境づくりを進め,各大学の個性化・特色化を促す方針を取ってきた。
具体的には,大学運営システムの改革(国立大学の法人化,公立大学法人制度の導入,学校法人制度の改善等),大学の質保証のための制度改革(設置認可の弾力化と第三者評価制度の導入等),国公私立大学を通じた優れた教育研究活動(GP:
Good Practice)への重点的支援(以下,「GP事業」という。)等の取組を推進してきた。本審議会も,将来像答申において,大学の個性・特色の一層の明確化を求めるとともに,7つの機能類型を例示し,各大学が自らの選択により緩やかに機能別に分化していくことが望ましいと述べた。
近年の文部科学省の調査によれば,各大学において教育内容・方法,成績評価,入試など各般にわたる改革の取組が見られたことから,大学の個性化・特色化が着実に進んできたと言えよう。
(2) 他方,大学とは何かという問題意識が希薄化し,ともすれば目先の学生確保の必要性が優先される傾向がある中,我が国の大学,学位が保証する能力の水準が曖昧になることや,学位そのものが国際的な通用性を失うことへの懸念も強まってきている。
例えば,学部・学科等の組織名称や,学士に付記する専攻分野の名称の多様化が進んでいるのは,そうした懸念を強める一因である。また,改革を通じて,学生の学習活動や学習成果の面で顕著な成果を上げてきたかという観点では,いまだ改革が実質化していない面も少なくないと考えられる。
(1) 以上の通り,国際的な動向と我が国固有の事情を背景に,学生の学習成果の達成に向けた教育内容・方法の格段の充実,高等学校との接続のシステムの見直しなどに向けて,真剣に取り組むことが急務である。このことは,我が国の学士の国際的通用性を確保するためにも不可欠である。
(2) 特に,ユニバーサル段階,少子化等の環境変化の中,我が国の学士課程教育は,量の拡大を積極的に受け止めつつ,質の維持・向上を図るという,重大な課題に直面している。
我が国の大学の大きな問題の一つは,教育内容・方法,学修の評価を通じた質の管理が緩いということである。そうした弊を放置すれば,我が国の学士課程教育の質は,大きく低下し,国内外からの信用を失う危機に晒されよう。質の維持・向上に向けた努力を怠り,社会からの負託に応えられない大学があるならば,今後,その淘汰を避けることはできない。
(3) 現実の大学を見れば,多様な学生を迎え入れながら,個性化・特色化の徹底に向けた改革に汗を流す機関が多数ある。一方,学生や社会のニーズを十分に顧みない旧態依然とした機関も存する。
しかし,後者に目を奪われ,大学教育の持つ社会的な意義や効用,その可能性を過度に低く評価し,将来的な大学教育の規模等の在り方を論ずるとすれば,失当である。未曾有の人口減少社会,少子高齢化社会という我が国の特質を踏まえるならば,大学教育をめぐって,量か,質かという二者択一を安易に行えば,人材育成等に関する国家戦略を誤ることともなりかねない。
(4) こうした危機感を各界で共有し,中長期的な視野に立って論議を深め,改革の基本方向に関する社会的な合意形成を図り,実効ある改革につなげていくことが必要である。
その際,国においては,必要な改革を果断に進めながら,新しい教育基本法の謳うとおり,大学の自主性・自律性を十分に尊重する姿勢を堅持していく必要がある。多様な大学の存在こそが,大学という社会制度がその機能を最大限発揮し,社会の発展へ寄与していく基礎的な条件であることを,改めて強調しておきたい。
(1) 改革の実行に当たり,もっとも重要なのは,各大学が,教学経営において,「学位授与の方針」,「教育課程編成・実施の方針」,そして「入学者受入れの方針」の三つの方針を明確にして示すことである。
これらは,将来像答申で言及した「ディプロマ・ポリシー」,「カリキュラム・ポリシー」,「アドミッション・ポリシー」にそれぞれ対応する。大学の個性・特色とは,そうした方針において具体的に反映されるのである。
(2) あわせて,各大学において,学士課程教育が組織的・総合的に運用されるには,学内の全教職員が共通理解を持って具体的な教育実践に取り組む必要があり,そのための教職員の職能開発が必要となる。
また,設置認可・届出制度や第三者評価制度,自己点検・評価,情報公開等の各大学の自主的な質保証の取組,さらに大学間の連携や大学団体等による取組の充実を通じて,学士課程教育の質を保証する仕組みを強化することが必要である。
(3) 国においては,このような各大学の取組に対して適切に支援していくことが必要である。あわせて,国際的な大学改革の潮流や社会の要請等を踏まえ,大学や大学関係者の主体性を尊重しつつ,学士の水準に関する枠組みづくりが進むよう,必要な役割を果たしていくことが望ましい。
こうした枠組みは,分野横断的な水準の確保につながり,各大学における学位授与の方針の策定・見直しの指針となることが期待される。また,分野別の学位水準の確保に向けた取組の基盤になるものとしても重要である。
高等教育局高等教育企画課高等教育政策室