(参考)中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会座長談話

平成24年9月20日
中央教育審議会大学分科会
法科大学院特別委員会
座長  田中 成明

1.本年9月11日に発表された平成24年司法試験の結果によれば、合格者数は2,102人であった。司法制度改革推進計画(平成14年3月閣議決定)に掲げられた司法試験合格者数を年間3,000人程度とする旨の目標がいまだ実現されないことは遺憾であるが、合格者数がわずかながら増え、法科大学院修了者の合格率が前年に比べて上昇に転じたことは、各法科大学院における入学定員の見直しをはじめ一連の教育改善の取組の成果があらわれ始めたという観点からだけでなく、法曹志望者の増加につなげる観点からも、一定の意味を持つものと考える。
 しかしながら、合格率が全国平均の半分に満たない法科大学院が31校に上り、合格者がごく少数にとどまる法科大学院も一部にみられるなど、厳しい状況が続いている。各法科大学院には、この事実を重く受け止め、引き続き、教育の改善に向けた取組を積極的に推進することを強く求めるものである。

2.さらに、今回の司法試験から司法試験予備試験の合格者が受験し、法科大学院修了者の平均合格率を大幅に上回る高い合格率をあげているが、各法科大学院においては、この事実も重く受け止め、修了認定の厳正化などの法科大学院教育の充実になお一層真剣に取り組んでいただきたい。しかし同時に、予備試験が経済的事情等により法科大学院を経由しない者のための適切な途を確保すべく設けられた趣旨を踏まえたものとなっているかなど、その結果を詳細に分析・検討する必要があると考えている。

3.法科大学院教育を司法試験の結果のみで評価することは必ずしも適切ではないが、法科大学院が法曹養成の中核的な機関であることからすれば、質の高い修了者を送り出すという責務を果たすことはきわめて重要であり、あらゆる改善策を講じて教育の質の向上に取り組む必要がある。

4.本委員会では、本年7月、法科大学院教育の更なる改善方策について提言したところであるが、各法科大学院をはじめとした関係者においては、今回の司法試験の結果をも踏まえ、課題を抱える法科大学院を中心とした入学定員の適正化や教育体制の見直し等の取組の加速、法学未修者教育の充実、法科大学院教育の質の改善等の促進などの法科大学院教育の質の向上のための改善方策に取り組んでいただきたい。

5.さらに、先月閣議決定に基づき設置された法曹養成制度関係閣僚会議及び法曹養成制度検討会議において、法科大学院も含めた法曹養成制度全体に関する審議が集中的に行われることになっているが、今後の審議においては、上述の指摘事項の検討とともに、本年7月の本委員会の提言でも要望したように、司法制度改革の理念を踏まえ、多様な人材の確保に向けて、法科大学院を中核的な機関とするプロセスとしての法曹養成制度の早期安定化のための継続的・総合的な検討を強く要望したい。

お問合せ先

高等教育局専門教育課専門職大学院室法科大学院係

(高等教育局専門教育課専門職大学院室)