(参考)中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会座長談話

平成23年9月14日
中央教育審議会大学分科会
法科大学院特別委員会
座長 田中 成明

  1. 本年9月8日に発表された平成23年新司法試験の結果によれば、合格者数は2,063人であった。司法制度改革推進計画(平成14年3月閣議決定)に掲げられた「平成22(2010)年ころには新司法試験の合格者数を年間3,000人程度とすること」との目標にも関わらず、いまだ実現に至っておらず、さらに合格者数が昨年よりも減少していることは誠に遺憾である。
  2. また、合格率が全体で23.5%と前年にも増して低い水準となり、とりわけ未修者の合格率が16.2%となったこと、修了後5年間で3回の受験資格を喪失した者も多数いることも、事実として重く受け止めなければならない。
  3. 各法科大学院について見ると、合格率が全国平均の半分に満たない法科大学院が32校に上り、合格者がごく少数にとどまる法科大学院も一部に見られるなど、一層厳しい状況となっている。
  4. 各法科大学院においては、本委員会が21年4月に示した提言を踏まえ、入学定員の削減などを含む、教育の質の向上のための改善方策に取り組んでいただいているところであり、本委員会としても、第3ワーキング・グループ、改善状況調査ワーキング・グループによる教育の改善状況に関する調査などを通じて、それぞれの状況を踏まえた改善を促してきた。
  5. その結果、入学者選抜における競争倍率が2倍未満となる法科大学院が、平成22年度選抜では40校にも上っていたが、平成23年度選抜においては、19校となるなど、多くの法科大学院においては、入学者の質の確保とともに、教育の質の改善にも真摯に取り組み、充実した教育を行う体制の整備が図られてきているところである。
  6. しかし、本年1月に第3ワーキング・グループから報告された調査結果によると、深刻な課題を抱えているにもかかわらず、抜本的な見直しが進んでいるとは言い難い法科大学院も一部に存在している。
  7. 本特別委員会の提言を踏まえ、昨年、文部科学省より発表された公的支援の見直しは、深刻な課題を抱える法科大学院の自主的・自律的な組織見直しを促進するために行われるものであり、特に、見直しの対象校となった法科大学院は、自らの課題をしっかり認識し、課題解消のため早急に改善に取り組む必要がある。
  8. 法科大学院教育と新司法試験の連携の在り方については本年5月に設けられた「法曹の養成に関するフォーラム」などでも今後立ち入った検討がなされるものと予想されるし、法科大学院教育を新司法試験の結果のみで評価することは必ずしも適切ではないが、法科大学院が法曹養成のための高度専門教育機関であることからすれば、質の高い修了者を出していくという責務を果たすことは重要であり、あらゆる改善策を講じて教育の質の向上に取り組む必要がある。
  9. 法科大学院を巡る状況は年々厳しさを増していっている。各法科大学院は、現状を認識し、強い危機意識を持って、入学定員の削減や組織の見直しをはじめとした教育の改善に引き続き取り組んでいただきたい。

お問合せ先

高等教育局専門教育課専門職大学院室法科大学院係

(高等教育局専門教育課専門職大学院室)