(参考)中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会座長談話

平成22年9月16日
中央教育審議会大学分科会
法科大学院特別委員会
座長  田中 成明

  1. 本年9月9日に発表された平成22年新司法試験の結果によれば,合格者数は2,074人であった。司法制度改革審議会意見書で提言され,閣議決定にも掲げられた「平成22(2010)年ころには新司法試験の合格者数の年間3,000人達成を目指す」との目標が本年までに実現に至らなかったことは誠に遺憾である。加えて,新司法試験の合格率が全体で25.4%と前年にも増して低い水準となったことも,事実として重く受けとめなければならない。
     
  2. このような状況の背景には様々な要因があると考えられるが,法科大学院においては,教育の充実に取り組み,優れた法曹として社会に貢献すべき質の高い修了者を社会に輩出していくことが求められている。
     
  3. 本委員会は,昨年4月に法科大学院教育の質の改善方策を提示したが,その後も,本年1月に第3ワーキング・グループによる教育の改善状況に関する調査結果を公表し,3月には組織見直しの促進方策についての意見を整理するなど,各法科大学院に対し,それぞれの状況を踏まえた抜本的な改善を促してきた。
     
  4. その結果,各法科大学院が入学定員の見直し等に真摯に取り組み,教育の改善が一定程度進んでいるが,一部の法科大学院において,以下のような状況が見られることも事実である。

    (1)平成22年度の入学者選抜における競争倍率が2倍にも達しなかった法科大学院が40校に上るなど,質の高い入学者を確保する意識が不十分ないし薄弱な法科大学院がある。

    (2)授業内容,教育体制等に深刻な課題を抱えているにもかかわらず,組織の在り方の抜本的な見直しについて検討にすら着手されていないなど,現状認識が極めて甘い法科大学院が一部にある。
     
  5. 法科大学院教育を新司法試験の結果のみで評価することは必ずしも適切ではないが,法科大学院ごとの合格率に相当の差があることや,3回受験の結果,新司法試験の受験資格を喪失した者をはじめとして,多数の修了者が法曹資格を取得できていない状況を踏まえれば,合格率が低迷している法科大学院は,法曹養成機関としての責任を自覚し,速やかに,あらゆる改善策を講じて教育の質の向上に取り組む必要がある。
     
  6. 法科大学院を巡る状況は一層厳しさを増している。各法科大学院は,現状を真摯に受け止め,強い危機意識を持って,入学定員の削減や組織の見直しをはじめとした教育の改善に引き続き取り組んでいただきたい。

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