平成28年5月11日(水曜日) 17時00分~19時00分
文部科学省東館3階 3F2特別会議室
(臨時委員)有信陸弘,井上正仁の各委員 (専門委員)磯村保,上田信太郎,大貫裕之,笠井治,樫見由美子,鎌田薫,木村光江,杉山忠昭,染谷武宣,土屋美明,西山卓爾,長谷部由起子,日吉由美子,松下淳一,山本和彦,山本弘の各委員
常盤高等教育局長,義本大臣官房審議官(高等教育局担当),北山専門教育課長,塩田専門職大学院室長,川﨑専門職大学院室室長補佐,真保専門教育課専門官
【井上座長】
それでは第74回中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会を開催させていただきます。
本日は,平成28年度の入学者選抜の実施状況等について報告をしていただくとともに,法科大学院全国統一適性試験の在り方に関する検討ワーキング・グループからの報告などについて,御議論いただくことを予定しております。法科大学院制度がより一層社会的な,社会の皆さんから信頼を得ることができるように,充実した議論を行っていただきたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。
それでは,まず,委員に交代がございましたので,事務局より御紹介をお願いいたしたいと思います。
【塩田専門職大学院室長】
このたび,吉崎委員に代わりまして,染谷武宣司法研修所事務局長に御就任いただいておりますので,御紹介します。どうぞよろしくお願いします。
【染谷委員】
染谷でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【井上座長】
よろしくお願いいたします。
続いて事務局から,配付資料について確認をしていただきたいと思います。
【塩田専門職大学院室長】
配付資料でございます。ちょっと大部にわたりますので,逐一御確認させていただきませんが,机上にはしっかりと確認して配付してございますので,万一漏れ等ございましたら,事務局までお知らせいただきますようお願いします。
以上でございます。
【井上座長】
不足等がございましたら,適宜お申出ください。
それでは,議事に入りたいと思います。最初に,平成28年度の入学者選抜実施状況及び平成27年度の修了認定状況につきまして,調査結果がまとまったということですので,事務局から説明をお願いしたいと思います。
【塩田専門職大学院室長】
それでは,資料2-1を御覧ください。まず,志願者数でございますけれども,平成28年度につきましては8,274人ということになっておりまして,これは前年度から言うと約8割で,2,096人の減ということになってございます。志願倍率,これは入学定員分の志願者数ということでございますけれども,志願倍率は3.0ということで,微減しているということでございます。
ページめくっていただきまして,入学者数でございます。平成28年度は1,857名ということで,前年度から言うと344人の減と,大体84%になっているということでございます。
国公私立別に見ると,国立に比べまして,私立の入学者数の減少幅が大きいというようになってございます。既修,未修の別で見ますと,昨年とほぼ同じ割合ということになってございます。
続きまして,社会人の入学状況でございますけれども,前年度から42名減りまして,363名ということになってございます。
続きまして,学部系統別の入学状況ということで,次のページに合計が書いてございます。法学部卒の割合が85.6%ということで,微増している状況でございます。
続きまして,資料2-2を御覧ください。これは大学ごとに書いてございますが,2枚目にそれを合計したものがございます。2枚目の最後の行でございますが,今年度の入学定員につきましては,2,724名ということで,前年から比べまして445名減っている。これは,今年度から募集停止となりました9校の定員が160名あったわけですけれども,この160名を含めて445名減っているということでございます。
競争倍率につきましては,昨年とほぼ同じの1.86,入学定員充足率につきましても,これもほぼ同じの0.68ということになってございます。
続きまして,資料2-3でございます。修了認定状況ということで,標準修業年限の修了率は昨年と同程度ということでございまして,その数自体は,最後のところに27年度の状況を書いてございますが,昨年とほぼ同じような数字であったということでございます。
ポイントのところで書いてございますが,御参考までに,開設当初の平成18年度と比較いたしますと,全体での標準修業年限修了率は8割ぐらいから7割に現在のところは下がっていると,既修の場合は9割から8割,未修の場合は,7割5分ぐらいあったのが5割程度になっている状況が見て取れるということでございます。
26年の10月に,本委員会の提言で志願者確保の必要性ということが指摘されてございました。その際に指摘されておりましたことは,飛び入学制度等を活用した時間的負担の軽減,法曹養成に特化した経済的支援,ICTを活用した教育,広報活動の展開,こういった必要性が提言で言及されていたところでございます。
これに関連いたしまして,資料を御紹介したいと思います。まず,参考資料1を御覧いただければと思います。これは法科大学院修了生の活動状況に関する実態調査を法科大学院修了生や修了生を雇用している法律事務所,企業等にアンケート調査等を行いまして,その結果の概要をまとめたものでございます。まず,ページをめくっていただきまして,多様化する法務博士のキャリアということで,まず,一番下の段に流れ図が描いておりまして,先ほどちょっと冒頭で申し上げました早期卒業・飛び入学を活用した場合の最短5年ということにも言及してございます。これにつきましては,ちょっとここには数字を書いてないのですけれども,早期卒業・飛び入学制度を活用した既修コースへの入学者数は,26年度は15人だったところ,27年度は24人に,28年度は42人と,15人,24人,42人とだんだん増加してきているという状況がございます。今年度の加算プログラムにおきましても,早期卒業・飛び入学,学部との連携というような形で取り組まれている10校の法科大学院に加算対象とさせていただいておりますので,こういった数字は,今後も増加していくのではないかというふうに考えられます。
また,司法試験の合格率についても,参考までにここに書いてございまして,既修コースの場合は1年目が約50%,3年やると約70%といったような直近の修了生のデータを記載しておりますとともに,国家公務員総合職の採用者のうち約10%が法科大学院修了生であるといったような事実を参考までに書いております。
更にアンケート調査で分かったことといいますのは,例えば3ページの円グラフですけれども,修了生の法科大学院教育に対する満足度というのは,6割ぐらいの方が積極的に評価していただいているということでございます。
ページをめくっていただきまして,雇用側の満足度でございますが,まず,法律事務所につきましては,大体6割近い法律事務所の方が積極的な評価をされているということでございます。公的機関になりますと,かなり満足度が高くて,8割ぐらいの方が満足という形で回答していただいているということでございます。
ページをめくっていただきまして,企業につきましても,7割近くが積極的に評価をしているということで,また,企業が修了生を採用したい理由ということで書いてあります2番目にありますように,経営判断への助言ということで,法務部門の強化のみならず,経営判断への関与も期待されているといったような実態があるということでございます。
右の薄水色のところは,残念ながら,法曹資格を有するに至らなかった修了生の就職先といったデータを書いておりまして,必ずしも資格を持っていなくても,修了生の能力を生かせる場所は多いということをお示ししているものでございます。文科省といたしましては,このリーフレットを法学部生など幅広く配布いたしまして,積極的な情報提供を行っていきたいというふうに考えてございます。
続きまして,参考資料2を御覧いただければと思います。これはICTを活用した教育ということで,中央大学に調査研究を実施していただいた結果の概要をまとめたものでございます。地理的,時間的制約がある地方在住者や社会人に法科大学院で学ぶ機会を確保するために,平成30年度を目途に,ICTを活用した教育の本格的な普及を促進するということを考えてございます。
今後の課題ということで書いてございますように,教育効果の観点から設置基準上の要請を満たすためには,どんな要件が必要なのかといったことを今後,有識者の御意見を伺いながら検討を進めていきたいというふうに考えてございます。
続きまして,参考資料3を御覧ください。法科大学院生における奨学金等の活用状況と書いた横の資料でございます。左側の円グラフに書いてございますように,全法科大学院生のうち,経済的支援を受けている方は約6割でございまして,そのうち4割の方が給付型の支援を受けているというデータになりました。経済的支援の内訳でございますけれども,右側ですが,学生支援機構の奨学金が4割ぐらいで,その他は,法科大学院独自又は大学独自の経済的支援制度を活用されているという状況でございます。
ページをめくっていただきまして,各大学における経済的支援の状況でございますが,枠囲いの中にありますように,大半,85%の法科大学院が独自の給付型の支援制度を設けていまして,大学全体としての制度を含めると,全法科大学院において給付型の支援が設けられている。その内実ですけれども,下の1のところでございますが,法科大学院独自の給付型奨学金というのは48校あるわけですが,21校が年間授業料相当額の100万円を給付するような制度となっていると,また,右側ですけれども,18校が授業料全額を減免する制度を設けているといったような状況がございました。
ちなみに,参考資料3のもう一つのA3の大きな資料は,大学ごとの独自の経済的支援制度の概要を簡単にまとめたものでございます。こういったような情報につきましても,しっかりと情報提供を図っていきたいというふうに考えてございます。
御説明,以上でございます。
【井上座長】
ありがとうございました。ただいまの御説明につきまして,何か御意見,御質問等があれば,どなたからでも御発言をお願いいたします。どうぞ有信委員。
【有信委員】
志願者数が具体的には減ってきていて,それに対して支援制度はかなり充実はしているという全体の内容だったと思うのですけども,大学院でも全体的に志願者数が減っている。特にドクターコースの進学希望者が減っているというのが全体としてかなり問題になっていて,この原因としては,就職に対する利益というのですか,アドバンテージが余りないというのが原因だと言われています。法科大学院に関しても,やっぱりその辺の分析は何かされているのですか。
【塩田専門職大学院室長】
実態調査はまだしっかりとできていない状況ではありますけれども,いろいろとおもだった大学の研究科長等々にお伺いしたところ,おっしゃっていたのは,例えば就職状況が好転しているので,そちらに流れるのではないかというようなことですとか,弁護士の就職なんていうことがよく言われておりまして,学生が将来的な展望を持ちづらくなっているんじゃないかとか,というようなことです。
あと,一方で,若干予備試験が原因じゃないかというふうな声もございました。
【有信委員】
気になったのは,この現象が法科大学院固有の理由で減少しているのか,それとも今の学生気質全体の影響によるものなのかというところ。多分,両方あると思うのですけど,そこの部分を少し明確にしておいた方がいいような気がしたものですから,質問をしました。
【井上座長】
両方複合しているのかもしれませんね。理系も含めて一般的に大学院に行く人が減っていることは確かですので,その減り方と法科大学院の志願者の減り方を比べてみると何か分かるかもしれませんが。
私が周囲で学部の学生と接している先生などに若干聞いたところでは,情報が必ずしも周知徹底されていないところがある。例えば,法科大学院協会や弁護士会が連携して全国的なキャラバンをやってくださっているのですが,1年に何回か興行を打つというだけですので,その効果は限られています。今の学生は,むしろネットなどの正確でない情報に動かされるところが多いようですから,もう少し平生から学部の学生さん達に正確な情報が確実に伝わるような体制作りも必要じゃないかと思いますね。
どうぞ日吉委員。
【日吉委員】
ちょっと今のお話との関係で,この参考資料1のパンフレットなのですけれども,質問です。大変立派なものできて,いろいろな情報が盛りだくさん入っているものではありますが,これは今後どういうふうな使われ方,あるいは利用の仕方というのを計画されているのでしょうか。
【塩田専門職大学院室長】
当面,法学部をお持ちの大学に御送付させていただきまして,リクエストがあれば,それ以上の冊子をお送りして御活用いただくということを考えておりますし,また,かなりの部数刷っておりますので,御要望があれば幾らでもお出しできる状況になってございますので,しっかりと広報していきたいというふうに考えてございます。
以上です。
【日吉委員】
例えば法科大学院ができれば来てほしい人材にリーチするという観点から行くと,もちろん一番早くて効果が高いのは,既成の大学の法学部の学生さんに配るだとかいうことかもしれないのですけれども,例えば思い付きで大変恐縮なのですけど,どこが母体になってするかも分かりませんけれども,例えばネットでポータルみたいなものを作って,そういう情報をネット上で誰もが取りに来ることができるだとか,何を言いたいかというと,今,情報がなかなか伝わりにくいという話が出ましたけど,私もそれを強く感じておりますので,せっかくこれだけのいろいろアンケートを採って情報を集約されて,視覚的にも大変立派なものを作られておりますので,それをできるだけ簡単に,法学教育の情報になかなか届きにくく,どうやって情報を取ったらいいのかよく分からないような,ふだん別の世界で生きているような社会人だとかにも何とかしてこういう情報をお届けするというような工夫も,更にこれをベースにして,したらいいのかなというふうに,今ちょっとこれを拝見して思ったのでお聞きしました。
【井上座長】
審議官,どうぞ。
【義本大臣官房審議官】
日吉先生おっしゃるとおりでございまして,単に資料をまくだけではなく,学部生とか,場合によっては,高校時点から法学部進学も含めてやるということを考えましたら,高校の進路指導,あるいはそこに影響があるような教育情報の産業の方々と提携したような形で情報提供するということもありましょうし,また御提言いただきましたように,プラットホームを作って,そこに行けば紙媒体の情報,あるいは各大学でも,動画を使うとかいう形でやっておられるケースがありますので,いろいろな形で今後,日弁連,あるいはロースクールの協会等々関係の方々と連携しながら,そういう情報をやっぱりワンストップで見られるような仕組みということについて,今日,御意見いただきましたので,少し考えさせていただきたいと存じます。
【井上座長】
恐らくリンクを張って,どこからでも入れるという形が,今はもう当たり前になっていると思いますね。樫見委員,どうぞ。
【樫見委員】
一言だけなのですが,法学部だけではなくて,やはり法学部出身者だけではなくて,他学部生ということなので,学部ではなくて,大学の例えば就職支援室にも配布をしていただいた方がいいかと思います。
【井上座長】
では,大貫委員。
【大貫委員】
先ほど来から志願者減にどう対応するかという問題が出ています。文科省が作られたこのパンフレットは,非常にスタイリッシュで,センスがいいなと思います。ですけど,今,日吉委員からも出ましたように,ネットのポータルということもあるのですが,協会でキャラバンという法科大学院志願者増のための説明会を全国的に展開しておりますけれども,そこで感じることは,高校から手を打たなきゃいけないだろうということなのですね。大学の在学生に手を打つのは当然のことながら,高校からやっていかないと,これから長期的に見たときになかなか厳しい状況になります。そういう視点で見ていくと,パンフレットもちょっと工夫する必要性があるのではないか。これはなかなか知的なパンフレットですが,高校生が見たときにどうかという気がちょっとしないわけでもありません。ポータルを作るときも,高校生が見ても興味を持つようなものにしていただければなというのが第1点です。
それから,志願者減の理由として,調査,アンケートをするということは大変いいと思うのですが,時間が余り掛かるとどんどん,どんどん遅れていきますので,例えばもう少しピンポイントで,特定の大学の学生さんに来てもらってヒアリングをして,動向を聞くというやり方もあるのではないかと思います。両方やっていいのではないかというふうな気がしています。幅広くアンケートをやるとなかなか,分析が結構難しくなったりすることもありますから,ピンポイントで法曹志望を考えている学生さんに何人か来ていただいて,どうなのと聞いた方がいいのかもしれないという感想を持っております。
以上です。
【井上座長】
パンフレットやネットといったことは,本来,法科大学院協会の方が前面に出て行う必要のあることかもしれませんので,是非協力して,いろいろ知恵を出してやっていただければと思います。ほかの方,いかがでしょうか。どうぞ。
【上田委員】
確認といいますか,質問なのですが,参考資料2にありましたICTの活用に関する調査研究のA4判の資料がありますが,分析結果を見ますと,配信先である地方の法科大学院の評価は極めて良好である。しかし,配信元の学生は,遠隔授業を高く評価する者が少ないという結果になっているのですが,この理由というか,ちょっと教えていただければと思います。
【真保専門教育課専門官】
まず前提として申し上げたいのは,この調査につきましては,飽くまで15回のうち3回というような,回数を絞りまして簡易な形で行ったものだということでございます。その上でお聞きいただきたいのは,大規模の大学から地方の大学に配信をするということのみがほとんどの調査でありましたので,大規模校の学生にとっては,自分たちが地方の大学から配信をされることがないということもあって,通常の授業にプラスをして他大学の学生も含めて授業をするというような形であったので,高く評価する者が少ないというものが出たように思っております。
例えば地方の大学の特色ある授業を併せて大規模の大学にも配信をするとか,いわゆる双務的な形で勉強することで,こうした評価は変えていくことができるのではなかろうかということが併せて調査報告書には記載をされていたという状況でございます。
【上田委員】
分かりました。
【井上座長】
ほかの方,よろしいですか。
志願者の減少につきましては,民間企業への就職状況が好転してきていることや,学生が法科大学院修了後の進路が不透明だと捉えていること等々,いろいろな要因が複合的に影響しており,そういう状況が継続していると考えられるわけですけれども,私どもとしては,法科大学院の質を一層向上させて,優秀な修了生を世の中に送り出していくということによって,社会的信頼を獲得するよう,努力を積み重ねていくということが最も重要なことだろうと思います。
それを促すため,本委員会においても,これまでも,公的支援の見直しや認証評価の厳格化など,様々な取組みを行ってきたところですけれども,今後も引き続き改革のための議論を積極的に行っていきたいと考えております。
他方で,パンフレットにも示されているように,公的機関や企業など,修了生の活躍の場は確実に広がっています。しかも,修了生を採用して下さった雇用者側の評価も非常に高いということや,法学既修者の場合が特にそうですけれども,1年目の司法試験合格率が約50%で,累積合格率では70%にのぼるといったことなどが,学生,特に学部の学生の皆さんなどに正確に伝わっていないように思われます。ですから,法曹養成に関わる者が一層連携を強化して,正確な情報が確実に伝わるようにしていくということが必要だろうと考えられます。
次の議題に移り,教育状況調査ワーキング・グループの設置について,お諮りしたいと思います。前回の本委員会の審議で,客観的指標に照らして課題があると認められる法科大学院に対する教育状況等の調査については,本委員会の協力の下に文部科学省が主体となって行うということとなりました。そのため,本特別委員会としましても,法科大学院教育状況調査ワーキング・グループというものを設置して,文部科学省の方に協力をしていきたいと考えますが,この点について,事務局から,資料の説明をお願いしたいと思います。
【塩田専門職大学院室長】
資料3でございます。ワーキング・グループの設置をお諮りする案となってございます。ただいま座長の方より御説明ございましたように,前回の委員会におきまして,文科省が実施する教育実施状況調査,これは書面調査,ヒアリング調査,実地調査と3段階に分かれて行うことを予定してございますけれども,この調査に本委員会から御協力いただいているということでございますので,ワーキング・グループの設置をお諮りするものでございます。所掌事務としては,そういった趣旨でございます。
2ぽつでございますけれども,1,2にありますように,委員や主査につきましては,座長が指名ということになってございます。3の設置期間につきましては,この委員会の今期の任期と合わせた日付にしてございます。
4ぽつで,本委員会に適時に報告するということが書かれてございます。
説明は以上でございます。
【井上座長】
ただいま説明していただいたとおりで,かつて改善状況調査のワーキング,いわゆる第三ワーキング・グループというのが設けられていましたが,それと似たような性格のものです。ただ,前はワーキング・グループの方が主体だったのですけれども,今回は,文科省の方が主体となって調査を行う。しかし,内容的に,やはり我々の方も御協力した方が有効な調査ができるだろうということで,このワーキング・グループを設けることにしたいという趣旨でございます。
ただいまの御説明につきまして,御意見等があれば御発言をお願いしたいと思います。よろしいでしょうか。
それでは,ワーキング・グループの設置をお認めいただけますでしょうか。
ありがとうございます。ワーキング・グループを設置するということにさせていただきます。
このワーキング・グループの主査につきましては,大変心苦しいのですが,余人をもって代え難いものですから,磯村委員にお願いしたいと考えております。よろしくお願いいたします。他の委員等につきましては,私の方で,速やかに調整させていただきたいと思います。
次の議題ですけれども,適性試験の在り方に関する検討ワーキング・グループの報告書が取りまとまったということでございますので,主査である松下委員より御説明をお願いいたします。
【松下委員】
それでは,御報告申し上げます。資料4が報告書でございます。このたびワーキングとしての報告書がまとまりましたので,主査を務めた松下から報告をさせていただきます。
ワーキングのメンバーですが,報告書の後ろから3ページ目,46ページに掲載してございます。48ページにありますとおり,適性試験管理委員会からの2回のヒアリングを含め,精力的に議論を行ってまいりました。
報告書の1ページ,まず統一適性試験の趣旨の確認ですけれども,1ページの最初の丸にありますとおり,公平性,開放性,多様性という法科大学院の基本理念に基づき,全ての出願者について,法科大学院における学修の前提として必要とされる資質を判定する,これが趣旨でございます。
現状と課題ですけれども,2ページの(2)を御覧ください。最初の丸にありますとおり,統一適性試験は年2回,5月,6月に実施されており,脚注1にありますとおり,受験料は今年度から2万1,600円に見直されております。
2つ目の丸にありますとおり,統一適性試験の実受験者数は,平成23年と比較して半分程度に減少しており,3つ目,4つ目の丸のとおり,法科大学院全体の志願者もこの10年間で約4分の1にまで減少して,特に社会人や未修者の入学者は2割程度まで減少しています。
3ページの最初の丸にあるとおり,既修者と未修者の割合が逆転して,既修者が多数となっております。一方,2つ目の丸にありますとおり,予備試験の受験者数,特に学部在学中の受験者は一貫して増加しており,出願時に学部生であった者の合格者に占める割合は4割程度となっております。
ちょっと飛びまして,一番下の丸ですが,各法科大学院へのアンケート調査によりますと,有用性については,未修者選抜については,肯定,否定がほぼ同数であるのに対して,既修者に対しては,否定的回答が大半でありました。
各法科大学院における入学者選抜における考慮割合は,未修者では半数以上の法科大学院で3割未満,既修者では大半の法科大学院で3割未満となっております。更に大半の法科大学院は,統一適性試験が志願者確保の障害になっている面があるという旨の回答をしています。
4ページの一番上の丸ですが,適性試験管理委員会からのヒアリングでは,統一適性試験のスコアと法科大学院の成績や司法試験の合否に一定の相関関係がある旨の御報告を頂いております。
次に,見直しの基本的な考え方です。最初の丸にあるとおり,公平性,開放性,多様性という基本理念は維持すべきですが,次の丸のとおり,入学者選抜を取り巻く状況は大きく変化しているため,入学者の多様性の確保という観点からも見直しが必要となってきます。ほとんどの法科大学院は未修者と既修者について別枠で選抜を実施していることや,法科大学院に入学者選抜に関する一定のノウハウが蓄積されていると考えられる点も考慮すべき要素です。また,結果としてですが,志願者増にもつながることが望ましいと考えられます。
3の改善方策です。最初の丸にありますとおり,統一適性試験は,これまで一定の役割を果たしてきたと考えられますけれども,次のページへ参りまして,5ページの最初の丸のとおり,改善方策が必要であるとあります。
(1)既修者選抜についてですが,大半の法科大学院で有用性について否定的な見解が示され,大半の法科大学院で入学者選抜における考慮割合が3割未満であることや,その次の丸にあるとおり,志願者減により各法科大学院で丁寧な入試が可能となっていることに加えて,一定のノウハウは蓄積されていることなどに鑑み,必ずしも統一適性試験を利用しなくても,法律試験科目に加え,学部成績とそこに記載されている多様な観点による入学者選抜を実施することにより,資質を適確に判断することは可能と考えられます。
ただし,一番下の丸にありますとおり,受験者の適性を適確かつ客観的に判定することが必要であり,法律科目試験に論述問題を含めることや,学部成績,学業以外の活動実績など,様々な方法による入学者選抜をすることが必要です。また,これを認証評価で確認していただくことも必要です。
なお,6ページの最初の丸にありますとおり,入学者の質の確保のために,2倍の競争倍率を維持することが必要です。
次に,未修者選抜,(2)ですが,二つ目の丸のとおり,半数近くの法科大学院が統一適性試験の有用性に肯定的であったため,引き続き未修者選抜についてのみ統一適性試験を課すことも一案としては考えられますが,収支の問題を考えますと,それは現実的な選択肢とは考えられません。統一適性試験については,実施時期,回数等が十分ではない,あるいは受験料が高額である,あるいは社会人経験者にとって得点しにくいといった理由から,志願者確保の障害となっているとの意見が大半の法科大学院から示されています。
既修者と同じですが,志願者数の減少により丁寧な入学者選抜が可能となっていることや,成果が上がっている法科大学院を中心に,一定のノウハウが蓄積されていると考えられることなどから,未修者選抜についても統一適性試験の利用を各法科大学院の任意とすべきというのがワーキングの考え方です。
7ページに参りまして,その際,ただ任意化するだけではなくて,受験者の適性を適確,かつ客観的に判定することを担保するために,文部科学省において未修者の入学者選抜についてのガイドラインを策定するとともに,認証評価において当該ガイドラインを踏まえた各法科大学院の取組を確認していただくことが必要であるとあります。
8ページに参りまして,実施スケジュールです。改善方策の実施は可能な限り早期であることが望ましいと考えられますが,他方で,受験生への周知期間などを考慮すると,再来年,つまり平成30年の夏頃から行われる平成31年度入学者選抜から実施することが考えられます。本委員会においても,この点は是非御議論を頂ければと思います。いずれにせよ,各法科大学院で共通のものとして設定されることが必要で,特定の法科大学院だけ先行するということのないようにすることが必要だと思います。
最後に,5で,おわりにですが,最初の丸のとおり,今後も法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成制度を発展させていくことが必要であり,状況変化に対応した改革を早急に実施していくことが求められています。
次の丸にあるとおり,設置基準20条の入学者の適性を適確かつ客観的に評価するという規定は,統一適性試験以外の方法も許容されるものと解釈されることもあり,ワーキング・グループとしては,法科大学院が直面している諸課題に対応していくために,早急な抜本的な見直しが必要であるという認識に至ったものであります。
駆け足ですが,以上でございます。
【井上座長】
ありがとうございました。ワーキング・グループでは,限られた期間内に集中的・精力的に検討を行い,このように取りまとめて下さり,深く感謝申し上げます。
なお,この件につきましては,適性試験管理委員会の方から意見書を頂いておりますので,これについて事務局の方から御紹介をお願いします。
【塩田専門職大学院室長】
参考資料4でございます。適性試験管理委員会より適性試験に関する報告についての意見書というものを頂いておりますので,御紹介いたします。
2段目にございますとおり,各法科大学院に対するアンケート調査結果に主として依拠して任意化を決定することは,大きな問題があるという御指摘でございます。これは,つまり過半数の法科大学院が適性試験の成績と入学後の成績との相関関係を調査していないために,そういった調査をしていないような法科大学院は,適切な判断をしているとは思えないというようなことを記載いただいてございます。
そのため,3段目の最後の方にございますように,これまでの経緯や結果を踏まえて議論を重ね,慎重に結論を出すべき問題であると思料するというような御指摘を頂いてございます。
説明は以上でございます。
【井上座長】
それでは,以上の御説明を踏まえまして,御意見,御質問等がありましたら,お願いいたしたいと思います。どうぞ,鎌田委員。
【鎌田委員】
ただ今,御紹介いただきましたように,適性試験管理委員会委員長として,私の名前でこの意見書を出しておりますので,若干補足させていただきます。適性試験に有用性がないというふうなことが判断の前提になっているとするならば,これまで適性試験を運用してきた団体としては,さようでございますかとは到底言えないということが意見書の大前提です。もう少しエビデンスのしっかりした論拠に基づいて適性試験制度に対する批判をしていただかないと,これまでの適性試験を管理委員会が維持してきましたし,各法科大学院もそれをいわば義務的に受験生に課してきたことの重さに比して,やや乱暴な総括の仕方になっているのではないかということでございます。
と同時に,これも以前申し上げたことですし,その点について,この報告書も一定の配慮をしていただいているとは思うのですけれども,適性試験というのは,ある意味で司法制度改革審議会意見書に基づいて新しい法科大学院制度を作ったときの象徴的な制度の一つであったわけで,こういった試験は,いかに有効に選抜するかだけではなくて,受験生に対してどういう能力を期待しているかというメッセージ性も持っているわけで,その部分がこの適性試験は余り役に立たないのだというようなことで捨てられていくと,結局は,いわゆる司法試験科目についての勉強さえ一生懸命やればいいんだというふうな間違った受け止められ方につながらないかということを懸念するところですので,その辺については十分な配慮をしていただきたいと思っています。
それと同時に,適性試験があるから受験者が増えないかのような言い回しもありますけれども,多分適性試験をなくしたからといって,受験者はそんなに増えないだろうと思います。適性試験がどういう点で受験者増の障害になっているかを考えれば,下位15%の人を入れられないから,入れられるようにしろというのは,これは余り考慮の対象にする必要がない項目だろうと思いますし,時期については,これもいろいろとあって,例えば予備試験に不合格になってから受験できるようにしろというのも,どこまで考慮しなきゃいけないかという疑問がありますけれども,いろいろな対応の仕方が,それはそれとしてあり得るということはかねてから申し上げているところであります。
ただ,財政的な負担,受験生の経済的負担が大きいということは否定すべくもないことであって,これを何とかしないといけない。適性試験管理委員会は適性試験のみで独立採算でやれという御下命を受けているわけでありますから,ほかのところでの収益で何とか赤字を埋め合わせるということができないので,既に累積赤字がある中で,今後,任意化等を控えてもっと赤字になることが見込まれるのに,そのまま続けていけ,その責任を適性試験管理委員会で取れと言われても,これはにわかには引き受けることのできない相談だということだけは申し上げておきたいと思います。
【井上座長】
ありがとうございました。ほかの方,いかがでしょうか。
言うまでもないことですが,非常に重要な問題ですので,是非積極的に御意見を出していただければと思います。松下委員,何か付け加えることはございますか。
【松下委員】
ワーキングに携わった者としては,この報告書の7ページ,先ほどは余り,時間の関係で詳しくお話ししなかったのですけれども,その報告書は単に適性試験を任意化すると言っているわけではなくて,それに代わる入試というのが必要だということを言っているわけで,そこは是非きちんと見ていただきたいと思います。
7ページの1つ目,2つ目の丸にありますとおり,ガイドラインを作って,現在の統一適性試験を経なくても,そこで測られてきた資質を適切に各法科 大学院で考慮できるようなものが必要だというメッセージは是非受け止めていただきたいと思う次第です。
以上です。
【井上座長】
そうですね。どういうものが打ち出せるか。鎌田委員が最後に言われたメッセージの問題ですね。理念として目指しているところは変わっていないけれども,それを実施する方法として,違うやり方もあり得るという,そういう意味での改変だと思いますが,その場合に,他の方法であっても,こういうことは確保されなければならないといったところが明確にされるなら,メッセージ性は強く出ることになると思います。
ほかの方,いかがでしょうか。どうぞ樫見委員。
【樫見委員】
ワーキングに入っておりました者として一言。意見書の方を拝見いたしますと,アンケートの調査結果に主として依拠してということで結論が出たというふうな内容が前面に立っておりますけれども,この点につきましては既に,ページで言いますと2ページから,統一適性試験をはじめとした法科大学院の入学者選抜をめぐる現状と課題のところで,アンケート結果というのは数ある問題点の中の一つの要素であるということと,それから,当初,適性試験を導入した当時の受験生の割合であるとか,それから,当時はやはり社会人の方,それから他学部出身の方にどんどん法科大学院に入っていただいて学んでいただき,将来の日本の法曹となっていただきたいという崇高な理念があったわけでありますけれども,現在は,当時の状況からすれば,未修者の方と既修者の比率というのが先ほど資料でも御紹介されましたように完全に逆転をしております。全体の人数というのも非常に低下しております。それがひとえに適性試験によるということは,我々ワーキングの方では全くそのようなことは考えてはいなかったということです。
やはり10年における法科大学院の問題点,現状の中で,これからどう法科大学院教育を維持して,より良いものを作っていくのかというところで,入学者選抜のところの見直しの一つの方策として出てきたわけです。10年間の適性試験の委員会,その他におきまして非常に御努力されて,かなりの完成版に近付いてきたという御努力については,我々ワーキングは非常に高く評価はしているところではありますけれども,諸般の事情でこのような結果というか,このような報告書になった。その意味で,意見書における,そのような一面的な理由だけで今回の結論になったわけではなくて,全員,どちらかといいますと苦渋の決断であったというふうに御理解を頂きたいと思っております。
【井上座長】
ほかの方,いかがでしょうか。ワーキング・グループの取りまとめの詳しい内容は,みなさん今日初めて完成版をごらんになったと思いますので,じっくり読んだうえ,更にお考えいただいて,次回以降にまた御意見をうかがえればと思います。
本日の議論を事務局の方で整理をしていただいて,それを踏まえて,次回以降に,更に突っ込んだ議論を行うということにさせていただきます。
それでは,次の議題に移りたいと思います。中央教育審議会大学分科会大学院部会の下に有信委員を主査とする専門職大学院ワーキング・グループが設置されておりますけれども,その専門職大学院ワーキング・グループにおきましては,専門職大学院制度全体の見直しについて検討を行っておられます。本日は,ワーキング・グループの論点整理案について,法科大学院の立場から御議論いただければと思います。
それでは,まず有信委員の方から御説明をお願いしたいと思います。
【有信委員】
昨年でしたか,大学院部会で審議まとめを出させていただいた中に,専門職大学院の在り方について,1年以内に議論をして方向性を明確にするという文言が入っています。それに応えるために,ワーキング・グループを設置して議論を現在,進めているところです。法科大学院の立場からは,片山委員にメンバーに加わっていただいて議論していますが,専門職大学院の専門性,専門職特有の問題と,それから,専門職大学院共通の問題と,これはなかなかまだ明確にきちんと分離ができ切れて議論がされている段階とは言えないと思いますが,現在,議論の最中ですので,法科大学院の立場からいろいろ御意見を頂ければと思って,今回,報告をさせていただきます。
具体的な内容については,事務局から説明をお願いできればと思います。よろしくお願いします。
【塩田専門職大学院室長】
資料5でございます。専門職大学院制度の見直しについての論点整理で,御存じのように,通常の研究科ですと研究者養成というミッションもあるわけですけれども,専門職大学院制度につきましては,職業人養成に特化しているというものでございまして,このために社会(「出口」)とのより密接な関係が求められるであろうといったような問題意識でございまして,社会との関係性と社会との連携を制度に組み込めないかといったような問題意識を主に据えまして議論を進めているものでございます。
点々で囲んでいる枠囲いが具体的な対応案でございまして,その中で特に法科大学院に関係するところを御説明させていただきたいと思います。まず,1ページ目のところでございますが,案ということで,ステークホルダーからなるアドバイザリー・ボードを設置して,重要事項について意見を伺うことを義務付けるといったような議論がされておりまして,これについては,専門職大学院ワーキング・グループの方では,いいんじゃないかというような議論がされているところでございます。
ページをめくっていただきまして,各論で教育課程のところで,3ページでございます。3ページの一番上の枠囲いでございますが,教育課程を編成する際に,先ほどございましたように,ステークホルダーから意見聴取することを義務付けるというようなことが議論されております。また,次の下の部分でございますけれども,インターンシップ等実習,事例研究等々の実践的な授業につきまして,一定時間・割合以上の実施を義務付けることについて議論してございます。これは何かといいますと,現在,学部レベルの新たな高等教育機関についての審議が別途行われてございますけれども,そちらの方では,米印の方に書いてございますように,一定時間以上・割合の履修を義務付けるというような議論がされておりまして,こういったこととの比較の上で,どうするかということを議論していただいております。これにつきましては,制度的に位置付けることはしないものの,その重要性に鑑みまして,コアカリキュラムというのを策定する際に一定の目安を示すと,こんなような議論がされてございます。
そのコアカリキュラムでございますけれども,(2)のところの枠囲いでございますが,コアカリキュラムをステークホルダーの参画を得た上で策定して,必要に応じて更新することを促すと。法科大学院につきましては,既にコアカリキュラムございますが,必要に応じて更新するということでございます。その際に望ましい必要単位数や実践的な授業の扱いについての一定の目安を示すというようなこと,又は国際的な動向,学生の職業経験差を踏まえると,こんなことが言われてございます。また,策定したコアカリキュラムにつきましては,認証評価において確認するというような議論がされてございます。
ページをめくっていただきまして,4ページの教員組織の問題でございます。具体的には,5ページのところからでございますが,教員組織につきまして,まず実務家教員と研究者教員のバランスということが一つ,議論になってございまして,バランスの取れた教員組織とすることが必要でないかということで,バランスの取れた教員組織になるように,実務家教員の割合に上限を設ける,又は,上限は設けないが,バランスの取れた教員組織であることを認証評価で確認するということで,ワーキングの方では今回,御議論いただいたときには,上限を設けるよりは認証評価で確認するべきじゃないかというような議論をされてございます。
また,次に,研究能力を併せ有する実務家教員の配置を義務付けてはどうかということが言われておりまして,これは新たな高等教育機関に係る審議経過報告におきまして,そういった議論がされていることを踏まえたものでございます。これにつきまして,専門職ワーキングの方では義務付けることまではなかなか難しいのではないかということで,義務付けはしないが,実務家教員の適正性を認証評価で確認するようなことではどうかといった議論がされてございます。
ちょっと二つぐらい飛びまして,みなし専任教員のところでございますけれども,みなし専任教員の要件緩和ということで,現行6単位を求めていますが,4単位に緩和したらどうかというような議論がされてございます。
ページをめくっていただきまして,6ページでございます。ファカルティ・ディベロップメントということで,FDの実施に当たりましては,研究者教員と実務家教員の連携によって,理論と実務の架橋を図るために,教育力の向上を促すための取組が必要と,こういったことをしっかりと設置基準に位置付けてはどうかというような議論がされてございます。
また,専任教員数につきましては,この案で書いてございますように,同一研究科内に新たな専攻を設ける場合は教員基準数を一定程度緩和してはどうかと。例えば法科大学院の場合は,法科大学院に加えまして法科大学院とは異なる法律関係の専門職大学院を設けるといったような場合は,教員数を掛ける2というのを求めるのではなくて,一定程度緩和したらどうかということ。また,専門職大学院を新設する場合は,時限付きで必置教員について学部等とのダブルカウントを認めてはどうかと,このような議論がされてございます。
3ぽつの認証評価でございます。認証評価を行う際には,四角囲いでございますけれども,ステークホルダーからしっかり意見を聞いて,認証評価に反映させることが必要であるということ。特に修了生が各専門職大学院の人材養成上の目的に沿った活動を行っているかを確認することが必要ではないかという議論でございます。
次に,7ページでございます。(3)の機関別評価と分野別評価の効率化ということで,機関別評価に当たりましては,分野別評価の結果の活用により効率的に評価することを検討すると,こんな議論がされているところでございます。
次に,4ぽつの情報公開の促進ということで,ページをめくっていただきまして,8ページでございます。規定上,就職等の状況は公開することが求められているのでございますけれども,それに加えまして,修了生の活躍状況についてもっと情報公開を促進したらどうかということ。また,その下でございますが,社会との連携についてのポリシーの策定・公表を行ってはどうかと。カリキュラムポリシー等々の話は既にございますけれども,社会との連携に関するポリシーを策定したらどうかと。具体的には,枠囲いにございますけれども,出口との関係において,具体的にどのような人材の養成を目指しているのか,また,当該専門職大学院の学修はそのプロセスにおいてどの部分に該当するのか。そのためにステークホルダーとどのような連携を図って教育を充実させていくのか。こういったようなポリシーを策定して,公表することを義務付けてはどうかというような議論がされてございます。
続きまして,6ぽつの教員養成,後継者養成ということも議論に上がってございます。ただ,9ページの枠囲いにありますように,博士課程への進学希望者が論文指導を受けることができるように取組を促すという議論がされているという状況でございます。
以上でございます。
【井上座長】
ありがとうございました。ただいまの御説明につきまして,御質問,あるいは御意見等がございましたら,どなたでも御発言をお願いいたしたいと思います。内容的に見ますと,かなり多くの点につき,法科大学院では既に先行して実施されているところでして,例えばアドバイザリー・ボードなどは,多分ほとんどの法科大学院で,そのようなものが木蹴られているように思いますけれども。
【杉山委員】
質問というか,確認なのですけど,1ページ目の1,(1)の上から3番目の丸,「我が国のホワイトカラーの労働生産性が上がらないのは,企業が知識に対して価値を置かず,処遇しないからではないか。社会(「出口」)に処遇の改善を働きかけるべき。」という,この文章の意図というか,どういう議論から出てきたのか,少し説明を伺いたいのですが。というのは,多分これ,企業ということで,企業において採用というのはある程度の卒業の学位であるとか,資格であるとか,短い期間で採用のその人を品定めしなきゃいけないので,非常に重要なことだと思うのですけれども,処遇という面に関しては,実際に入っていただいて,そういう知識を用いていかに実務に適用してアウトプットを出していただくかというところじゃないと,なかなか企業には受け入れられにくい文章だなという気がするので,どういう議論があったのか,もし御説明いただけたらと思います。
【有信委員】
私は元々企業人なのですけど,今の企業の労働慣行からすると,明らかに理解しにくいと思いますけれども,元々専門職大学院を作った目的は,高度の専門的職業人を養成するというのが目的で,このときに思い描いていたのは,例えばアメリカのプロフェッショナルスクールのような形で,法科大学院もそうですけれども,プロセスとして専門家をきちんと養成して,その養成された専門家が社会に出て専門性を生かして実際に仕事をする。現実に今の状況を見ていても,企業の中では具体的に,例えば私が所属していた企業でもそうですけれども,採用のときに例えば事務系,技術系ぐらいの感覚で採用して,事務系の中でどういう専門性を持っているかということはほとんど斟酌(しんしゃく)せずに,それぞれ配属を決めるという中で,具体的に企業の中の実務を通してそれぞれの専門性を養成するというやり方が多分メーンだったような気がするんですね。ただ,最近の状況で,グローバル化が進んでいったときに,やっぱりそういう形だけでは対応し切れない部分があって,例えば会計基準が具体的に変わっていく,こういうことに対して専門的な知識を持ってなくて,ただ単に実務的な会計的な知識を持っただけで,変わってきた会計基準に対応しながら,物事を進めていくとかいうようなところが多分だんだんと厳しくなってきて,つまり労働生産性が上がらないのは,戦後の労働慣行の中で極めて日本的な形で,いわゆるジェネラリストという格好で,様々なことに対応できる人たちが重用されてきたという経緯もあって,それがだんだんと厳しくなってきている。特にホワイトカラーの生産性が上がらない理由は,やはり専門性の問題だというふうな指摘もかなりされてきています。そういうことを背景に,この辺のところをもう少し企業サイドで自覚をしてもらう必要があると思う。こういうようなバックグラウンドだと思います。
【杉山委員】
御説明,ありがとうございます。そのとおりだと思います。間違いなく高度な専門知識を持った方の方がきちんとしたアウトプットを出してくださる確率はかなり高いというところは理解しました。それが処遇というと,やっぱりアウトプットが出た後じゃないとなかなか受け入れにくいものがあるのかなという感じはまだ拭い切れていません。
【有信委員】
それはそのとおりだと思います。
【杉山委員】
そんなような今の御説明から印象を受けました。
【有信委員】
現実には,例えばアメリカのようなところの場合には,それぞれの専門性に応じて給与を決めるというような形で物事が決まっていく。そこに対して,日本の場合は労働組合の問題もありますけれども,同一職種同一賃金というような形での規制があって,なかなかそういう形が取り切れていないという部分もあると思っています。
【井上座長】
ほかにいかがでしょうか。
【鎌田委員】
先ほど座長がおっしゃったように,ここで想定されているような内容は,ロースクールが先行的に実現して,もう10年の経験を持っているわけですけれども,他方で,その法科大学院が一番苦しい状況に置かれているということをどう総括するかというのが,日本でプロフェッショナルスクールが本当に定着するのかどうかの決め手になると思います。その中で,私が前から気にしているのは,そもそもロースクールスタート時点から,出口に関する社会的コンセンサスがなくて,一方は旧来型の法曹を養成する機関という位置付けであり,他方はもっと幅広く,従来の法曹の枠を越えた幅広の優れた法律実務家を養成するのだと位置づけている。ここが定まらないまま出発して,今日でもまだ社会的なコンセンサスが形成されていないから,受入れ側の社会も,どうそれを受け入れていけばいいかというようなことが定まってこない。その辺のところをしっかりさせないといけない。いろいろな専門職大学院を出たけれども,結局,採用・報酬・出世などで,学部を出た人と大して違う扱いを受けないというようなことであれば,インセンティブが沸いてこないということにもなるので,是非その出口の明確なイメージとそれに対する社会の受入れ体制とを併せて作っていくような形でプロフェッショナルスクールを育てていっていただければと思います。
【井上座長】
どうぞ大貫委員。
【大貫委員】
お話を伺っていて,座長もおっしゃったし,鎌田委員もおっしゃったんですけど,専門職大学院制度の見直しについての論点整理にかかれていることは,大体ロースクールで現実にあるいは法令上実現していることがほとんど含まれているように思うんですが,この整理は今初めて拝見したので,どの点がロースクールでこれまで実現してきたことにプラスしてやらなきゃいけないことになるのかという点を端的に御説明いただきたいというのが1点です。
それと,これは個別的な質問ですけど,さっと見て,5ページ目のところで,4から5に掛けて教員組織のところが結構違っているのかなという気もしないわけでもなくて,研究能力を併せ有する実務家教員の配置の問題に言及されているんですが,研究能力をどう判定するのかは物すごく大変で,認証評価でこれがいつも問題になります。実務家の方が例えば法律基本科目を担当するときに,研究能力があるのかをどう判断するんだと非常に問題になりますけれど,ここはどんなような見通しで書かれているのかというのを,ちょっと個別的な質問ですけど,させていただきたいと思います。
以上です。
【井上座長】
お答えいただく前に,全体の見取図をお話ししますと,専門職大学院制度の中に,更に法科大学院という特殊なものがあり,いろいろな面で特例的な扱いをされています。ですから,今回の変更が果たして,そしてどれだけ,法科大学院制度に影響を及ぼすものなのか。特例とされているところを特例でなくするのなら,影響はある程度あると思うのですけれど,外大学院については本則がどう変わろうとこれまでの特例のままにするということであれば,それほど影響がないのではないかと,そんな感じがしていますけれども。事務局の方で何か。
【塩田専門職大学院室長】
新たにやらなければならないことという意味では,例えば教育課程の話で言うと,コアカリキュラムも必要に応じて更新していただきたいというのが1点,これはこういう資質がないということであれば余りあれかもしれません。
【大貫委員】
更新します。
【塩田専門職大学院室長】
それと,その際に,ちょっとこれもロースクールに必ずしも必要かどうか分かりませんが,望ましい必要単位数を提示するとか,実践的な授業の扱いについて一定の目安を示すと,こういったことをコアカリキュラムの中に入れ込んでほしいということが書かれてございます。また,コアカリキュラム導入状況を認証評価において確認してはどうかというような御提案も出ております。
教員組織につきましては5ページで,先ほど御指摘ございましたように,研究能力を併せ有する実務家教員の適正性というのは,専門職ワーキングでもちょっと問題になっておりまして,確かにおっしゃるとおり,なかなか教員の適正性を認証評価で確認するのは難しいんじゃないかというような御指摘も頂いておるところでございます。なので,例えば実務家教員の適正性だけであれば,ビジネススクールの先生なんかからは,ずっと長い間,実務から離れていると最新の知識を持てなくなるので,実務家教員としては適切じゃなくなるであろうということで,どれだけ実務から離れているかみたいなのを見るのも一つじゃないかという御指摘は頂いておるんですけれども,先生おっしゃったように,研究能力についてどう見るのかというのは,まだそこまで詰めた議論ができていない状況でございます。
【有信委員】
ちょっと2点補足します。
【井上座長】
どうぞ。
【有信委員】
一つは,法科大学院に関しては,片山委員に出ていただいているので,法科大学院で進められていること等については,それぞれコメントを頂きながらやっています。先ほど申し上げましたように,専門職大学院課程は様々なケースがあって,このばらつきがすごくて,これの中で共通な課題をどう絞り込んでいくか,それから,法科大学院の中でやられた施策の中で,うまくいくものもあり,いかないものもある。これをどういう形で共通化していくかという議論を今後とも進めていきたいと思っています。
それから,いわゆる研究能力を持つというところの判断ですが,認証評価の基本は,自己点検評価です。したがって,研究能力を持つ教員かどうかということの基本的な判断は,大学が行う。認証評価で行うべきことは,大学が行っている評価が適正であるかどうか,正当であるかどうか,これを認証評価で行うというのが本来の筋です。
したがって,質的な部分をどう評価しているかというのを認証評価で見るのであって,認証評価団体がこの教員は研究能力があるかどうかを見るわけではない。ここのところは多分,認証評価団体も時々誤解をすることがあるので注意すべきだと思いますけれども,これが認証評価の基本だと思っています。
【井上座長】
ただ,若干心配するのは,そのときに,「エビデンスを出せ」というような形になると,趣旨とは違った好ましくない影響が出てくるおそれがあることです。今でも実務家教員を法科大学院にお迎えするときに,優れた実務家であればあるほど書いたものが余りない。実務の現場で忙しく,良い仕事をたくさんしていると,論文を書くような時間などないというところがあって,人事をする際に大変悩ましいのです。ですから,その辺も,実情に照らして御議論いただく必要があるように思います。理系と文系とでは,事情がちょっと違うのかもしれませんが。
【義本大臣官房審議官】
このところについては,先ほど塩田室長が御説明しましたように,新しい高等機関の議論をしている中において出てきたところでございまして,その際の研究能力については,学位で表象されているということで,学位をどれだけ持っているということをベースに新しい機関では御議論をしているところでございます。ですから,そういうことも少し参考にさせていただきながら,有信委員,座長の下でまた議論を進めさせていただきたいと思います。
【井上座長】
ほかに特に御発言がなければ,この件はこのぐらいにさせていただきたいと思います。本日の御議論の模様をあちらのワーキング・グループにもお伝えし,議論の参考にしていただければと思います。
次に,共通到達度確認試験システムの構築に関するワーキング・グループの設置について,お諮りしたいと思います。共通到達度確認試験につきましては,御承知のように,これまで文科省の方で有識者会議を設けまして,試験の結果分析などを行い,その結果を本特別委員会にも報告していただいておりましたが,今後は,この共通到達度確認試験の本格実施に向けまして,本特別委員会で審議を行う必要がありますので,改めて本特別委員会の下に置かれるワーキング・グループとして設置したいということでございます。
まず,事務局の方から資料の説明をお願いいたします。
【塩田専門職大学院室長】
資料6-1からでございます。資料6-1がワーキング・グループの設置に関する資料となってございまして,所掌事務といたしましては,共通確認試験の本格実施に向けて必要となる専門的な調査・分析・検討を行うということで,2ぽつの委員につきましては,座長が指名するということ,3ぽつの設置期間につきましては,本委員会の設置の任期と合わせているということ,4ぽつで,本委員会に報告を求めているということでございます。
続きまして,資料6-2でございます。共通到達度確認試験のこれまでの実施経緯と今後の見込みということでございますが,皆さん御存じのように,1回目は1年生を対象に憲・民・刑でやったと。この春に2回目がありまして,1年生,2年生を対象に憲・民・刑の同一の問題を使用して行いましたとなってございます。来年の第3回の手法につきましては,1年,2年を対象にしますが,今回は,2年生につきましては7科目を対象で行うということが方針として決まってございます。その際,検討事項といたしましては,1年と2年,憲・民・刑につきましては同一の問題でいいのかどうかというようなことですとか,実施を例えば1日でやるということであると,なかなか時間の配分が難しいので,複数科目を一括して試験をやるかと,このような議論がされてございます。
第4回が,これは最後の試行試験ということになりまして,検討事項と書いてございますけれども,実施科目を7科目やるのか,また,もう少し絞るのか,また,出題範囲というのをどのように設定するのかというような議論でございますとか,本格実施の際には各大学で,これは進級判定に御活用いただくということでやっているものでございますので,どのようにそれを活用していただくのかといったような議論が必要になってくるということでございます。
また,ここには書いてございませんけれども,短答式免除ということが関係閣僚会議決定でも言及されてございますので,短答式免除との関係を今後どういうふうに考えていくのかといったことも議論が必要になってまいります。
続きまして,資料6-3でございます。これは第2回,今年の春に行いました第2回の結果の概要といいますか,速報でございます。2ぽつの実施結果のところでございますが,参加校は60大学ということで,不参加校が11校あるわけですが,この枠の最後の米印に書いてございますが,これは全て募集停止を表明済みの大学ということでございまして,多くの大学が参加をしたということでございます。受験者数は1,153名ということで,4割の学生が受験したということになります。
右の四角の中に点数が書いてございます。3科目の合計の平均ということで,未修1年生は153点で,未修2年が165点,既修2年が176点と,こういったような結果であったということでございます。改めて詳しいレポートがまた提出される予定でございますので,それはまた別の機会にというふうに考えてございます。
説明は以上でございます。
【井上座長】
どうもありがとうございました。このワーキング・グループを設置することをお認めいただけますでしょうか。
ありがとうございます。それでは,ワーキング・グループを設置させていただきます。主査は,申し訳ないのですが,これもまた余人をもって代え難いものですから,山本和彦委員にお願いしたいと思います。他の委員等につきましては,私の方で,速やかに調整させていただきます。
共通到達度確認試験に関する先ほどの事務局からの説明につきまして,内容的に何か御意見がありましたら,お願いしたいと思います。あるいは御注意でも結構です。どうぞ大貫委員。
【大貫委員】
内容的な質問という限定だったので,内容にわたるのかどうか少し疑問なのですけれども,私も共通到達度試験のワーキング・グループに入っていたはずなのですが,今回できるワーキング・グループとの関係がどうなるのか御説明いただけないかというのが質問です。というのは,資料6-2を見ると,到達試験に関しては二重構造になっていて,さらに,検討チームの下に実際の作問グループが付くのでしょうが,そういう理解でよろしいのかということです。
【井上座長】
全体の組織がどうなるかということですか。
【大貫委員】
ええ。今の私の記憶では,何かもう一つ,顧問会議のような会議がもう一つあったような気がするのですが,何か幾つも会議があって,そこら辺の関係が少し分からなくなったということです。
【井上座長】
これまでは文科省の高等教育局長の諮問機関という位置付けだったと思いますが,全体の組織がどうなるかについて説明していただけますか。
【塩田専門職大学院室長】
従来,この委員会の下にではなくて,局長の下に調査検討会議というのがあって,その調査検討会議の下に更にワーキング・グループというのがあり,さらにその下に作問チームというのがあったということでございます。このたびは,調査検討会議と言っていたものが本委員会の下に,ワーキング・グループという名前を変えてぶら下がると。これは特別委員会の下に設ける場合は通常,みんなワーキング・グループと言っていますので,ほかのものと合わせるためにワーキング・グループという名前にしていると。
従来,共通到達度の中でワーキング・グループと言っていたものにつきましては,資料6の方に書いてございますように,検討チームと名前を変えて,検討チームにつきましては,従来どおり実務的な検討でございますので,局長の下に置くということで整理してございます。
【井上座長】
この件はよろしいでしょうか。
それでは,本日の議論を踏まえまして,ワーキング・グループにおいて検討を進めていただき,適時に本委員会にもその検討状況を報告していただくことにしたいと思います。
もう一つ,昨年,発覚しました司法試験出題内容の漏えい問題につきまして,司法試験委員会の下に原因究明・再発防止検討のワーキングチームが設置され,調査や検討を進めてこられたところですが,そのワーキングチームが3月末の段階での報告をまとめられたということですので,これにつき,西山委員にその概要の説明をお願いしたいと思います。
【西山委員】
それでは,御説明申し上げます。今年の3月29日に,今,座長から御紹介ありましたワーキングチームにおいて,これまでの調査及び検討の状況についての報告がなされております。資料7-1として,これまでの調査及び検討の状況についてという報告書がございますので,適宜御参照いただければと存じます。
まず,報告書の第2項にございますワーキングチームによる調査によって確認された事実関係について,御説明いたします。初めに,青柳前委員の考査委員としての経歴ですが,青柳前委員は平成14年から考査委員を務めておられまして,平成18年には主査に選任され,以降,平成27年まで継続して主査を務められております。
次に,青柳前委員が平成27年司法試験の出題内容を漏えいした事案について,御説明をいたします。報告書では2ページの2項の部分に当たります。
なお,漏えいを受けた受験者のことはAと言って御説明をいたします。青柳前委員は,平成25年夏頃,明治大学法科大学院の教え子であったAと交際を開始し,平成26年3月に,Aが法科大学院を修了した後も交際を継続しておりました。Aは,平成26年司法試験を受験したものの不合格となりました。青柳前委員は,平成27年司法試験に向け,確実にAを合格させたいと考え,平成27年2月上旬から5月上旬までの間,数回にわたり平成27年司法試験の憲法の短答式,論文式試験の内容を教示し,更に短答式試験の解答や,論文式試験において論述すべき内容についても詳細に指導をいたしました。
なお,ワーキングチームでは,ほかの受験者に対する漏えいや過去の試験における漏えいについても調査をいたしましたが,本件漏えい事案と同種の漏えいをうかがわせる事実は認められませんでした。
次に,青柳前委員による明治大学法科大学院における授業中の発言について,御説明をいたします。報告書では4ページの3項の部分に当たります。青柳前委員は,平成27年司法試験短答式試験,これは5月17日に実施されておりますが,その前々日である5月15日,法科大学院未修1年目の授業中に,同短答式試験の憲法科目の出題論点に言及をいたしました。ワーキングチームの調査では,受講者の司法試験又は予備試験受験の便宜を図る目的で行われた発言であるとまでは認めることは難しいが,試験実施時期に留意することなく,出題論点に言及するなどということは考査委員として許されない行為であるとされております。
また,青柳前委員はそのほかにも,同日の授業の中で複数回,司法試験に関する発言を行っているが,自らの指導を受けていると将来,司法試験に有利になると強調する意図があったと受け止められても仕方がない発言であって,考査委員としての自覚に欠けるという指摘がなされております。ワーキングチームは,青柳前委員の発言が平成27年司法試験・予備試験の結果に直接影響を与えた状況は見受けられないとしつつも,青柳前委員の行為について,司法試験の公正性・公平性に大きな疑念を生じさせるものであり,試験の結果に影響がなかったからといって,厳しく非難されるべきものであることには何ら変わりはないとしております。
そのほか,報告書の6ページ,4項のところになりますが,明治大学法科大学院修了生等に対するアンケートを踏まえますと,青柳前委員について,考査委員としての資質に関わる指摘が相当数なされ,また,少なくとも本件漏えい事案発覚よりも前から,青柳前委員の不適切行為に関する風評が学生の間で流布していたことも否定し難く,これらの事実は無視し得ないとの指摘もなされております。
次に,報告書8ページの第3項,現段階において特に指摘すべき問題点のところでございますが,ワーキングチームでは,本件漏えい事案の原因究明に際し,単に青柳前委員一人の責に帰するのではなく,その背景にある問題点について十分検討を加える必要があるという考え方を前提として,次のような点を特に指摘すべき事項として挙げております。
まず,漏えい事案の直接的な原因及びこれに関連する事項について,漏えいの直接的原因は,受験者と考査委員の交際という極めて不適切な関係であるが,交際関係が青柳前委員の講座をAが受講したことを契機としていることなどにも見られるとおり,考査委員が教え子である司法試験の受験予定者を指導し,日常的に近い立場で接することに漏えい等の危険性が内在することは否定し難いとされております。
次に,青柳前委員の授業における発言は,自らの指導内容が司法試験の合格に有利と誇示する姿勢を常態的に有していたことを示すものと受け止められても仕方のないもので,受験者間の不公平感に直結する不適切なものであるが,このような問題も,考査委員である法科大学院教員とその授業を受ける学生という関係があったことに伴って生じたものと指摘することができるとされております。更に,平成19年に考査委員による不適切指導事案が生じ,一定の対策が講じられたにも関わらず,本件漏えい事案が発生したことなどに照らし,考査委員の自覚,自律に委ねることのみでは,同種事案再発の懸念を払拭することは困難と考えるとも指摘されております。
そのほか,考査委員の遵守事項に関する事項について,これまでの遵守事項の運用に関しては実効性に欠けるところがあったものと言わざるを得ないとの指摘,長期の考査委員就任により当初の緊張感が薄れ,油断や慢心が生じることはあり得ることであり,本件についても長期就任の影響は否定し難く,より早期に青柳前委員の交替を検討すべきであったとの指摘,青柳前委員については,Aとの交際に加え,考査委員としての自覚を欠く発言や,指導者としての根本的資質を疑わせる風評があったものの,司法試験委員会においてはこれらを把握しておらず,考査委員の適性に関する情報の把握の在り方には問題があったとの指摘もされております。
最後に,報告書では,第4項,おわりにとしまして,ワーキングチームにおいては,今後更に検討を進め,平成29年以降の司法試験における具体的な再発防止策について提言を行う所存であるとしております。
私からの説明は以上です。
【井上座長】
ありがとうございました。ただいまの御説明につきまして,御意見,御質問等がございましたら,どなたからでも御発言をお願いいたしたいと思います。では,大貫委員。
【大貫委員】
この問題について,私,法科大学院協会で専務理事をしておりまして,その立場から,法科大学院協会の取組について多少お話ししたいと思います。
まず,冒頭に申し上げたいことは,この問題は言うまでもなく,司法試験の公正性・公平性を著しく毀損したということは間違いないことでございます。やはりこのような行為は,真面目に授業をしている,真面目に学んでいる学生を,全ての法科大学院関係者をまさに愚弄するものだと私は思っております。
決して青柳前委員が特殊であるということで済むというふうに申し上げるつもりはないのですが,考査委員のほとんどは,極めて真摯に真面目にやっているということは是非御理解いただきたいと思います。ルーズなことが一般にまかり通っているということでは全くないというふうに私は思っております。
まず,こう冒頭に申し上げまして,法科大学院協会としましても昨年の総会で,この問題は非常に深刻であるという認識に立ち,協会としてオープンな意見交換の場を設けるということが決議されまして,本年4月23日に全ての会員校に開かれたオープンな意見交換会を開催しております。その意見交換会を承けまして,まさに今週の14日に,協会の総会,理事会がございます。その折に,法科大学院協会,法科大学院,それから,考査委員たる教員の側で再発防止に向けて何ができるのかということを議論する予定でございます。現在,そのような状況にあるということを御報告申し上げます。
【井上座長】
ありがとうございました。ほかの方,いかがでしょうか。
座長として若干発言させていただきますと,本件は,それ自体としては,司法試験考査委員を務めていた一教員のおよそあってはならない言語道断の非違行為により引き起こされたものではありますけれども,先ほどからのお話にもありますように,司法試験の公平性・公正性を疑わしくさせるばかりか,法科大学院教育と司法試験との連携や,法科大学院自体の信頼性をも大きく損なわせるものであったということは,否定し難いところです。
その意味から,法科大学院の側でも,これを真摯に,かつ深刻な問題として受け止め,自らの力の及ぶ限りにおいて有効な再発防止策を考え,実施していくということが必要であり,そうすることにより,損なわれた社会や国民の皆様からの信頼の回復を図っていくことが急務だと考えます。
これにつきましては,今,大貫委員からお話がありましたように,すべての法科大学院の集まりである法科大学院協会の方でも議論がなされたということでございますが,その協会において,今後,再発防止策について何らかの方向性が示され,それに応じて,各法科大学院が自らの責任で具体的な再発防止策を講じていくというのが本来の筋だと思いますので,本委員会としては,協会におけるそのような検討状況と各法科大学院での対応を注視するとともに,必要に応じて,またここでも議論をさせていただこうと思います。
本日予定しました議事は以上でございます。
次回の日程につきましては,これは改めて事務局の方で調整をして,その上で連絡をして,各委員に御連絡を差し上げたいと思います。本日はどうもありがとうございました。
高等教育局専門教育課専門職大学院室法科大学院係