法科大学院特別委員会(第69回) 議事録

1.日時

平成27年6月8日(月曜日) 13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省東館3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. 政府における法曹養成制度に関する検討状況について
  2. 法科大学院教育の改善・充実について
  3. その他

4.出席者

委員

(臨時委員)有信睦弘,井上正仁,土井真一の各委員
(専門委員)磯村保,上田信太郎,大貫裕之,笠井治,片山直也,鎌田薫、木村光江,土屋美明,西山卓爾,日吉由美子,松下淳一,山本和彦,山本弘,吉崎佳弥の各委員

文部科学省

吉田高等教育局長,徳久大臣官房総括審議官,義本大臣官房審議官(高等教育局担当),藤原高等教育局私学部長,北山専門教育課長,塩田専門職大学院室長,川﨑専門職大学院室室長補佐,真保専門教育課専門官

5.議事録

【山本(和)座長代理】 
 それでは,所定の時間になりましたので,第69回中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会を開催したいと思います。
 本日は,井上先生が電車の遅れで少し遅刻されるというお話を伺っておりますので,便宜上,私の方で司会をさせていただきます。
 それでは,まず,事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

【塩田専門職大学院室長】 
 配付資料でございますけれども,お手元の議事次第のとおり,資料1から資料5-2まで御用意してございます。事務局で確認して配付してございますけれども,万一不備等がございましたらお知らせください。よろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【山本(和)座長代理】 
 資料は大丈夫でしょうか。もし不足等あれば,事務局にお申し出ください。
 それでは,早速,議事に入らせていただきます。まず,顧問会議における検討状況の報告ということで,5月21日及び28日に政府の法曹養成制度改革顧問会議が開催されたということでございますので,最近の検討状況について,事務局の方から御説明をお願いいたします。

【塩田専門職大学院室長】 
 それでは,資料2を御覧ください。顧問会議に諮られました資料でございますけれども,A3のものはいつも付いている資料でございますので割愛させていただきまして,次のページでございます。平成27年司法試験の受験予定者でございまして,8,957人ということで,次のページに実際の受験者数が載ってございます。8,016人。速報値でございますけれども,昨年が8,015人でございましたので,1人減というような状況でございます。
 次のページをめくっていただきまして,予備試験でございまして,予備試験の出願者数が12,543人ということで,更に次のページをめくっていただきますと,速報値ということでございますけれども,受験者数は10,334人。これは平成26年に比べますと13人の減という形になっているところでございます。飽くまでも暫定値ということでございます。13ページに先ほど申し上げました経年変化が載ってございます。
 次に15ページを御覧いただければと思います。今度は適性試験でございます。1.にございますように,志願者数ということで,第1回,第2回ともに約12%,13%の減というような状況になっているというものでございます。
 続きまして,17ページでございます。法曹有資格者の活動領域の拡大に関する有識者懇談会取りまとめというのが出ております。前回,概要は説明させていただきましたけれども,法科大学院が出てくるところだけ簡単に説明いたしますと,右端のページの25ページのところでございます。海外展開の分野ということで,1の(4)のところで一部の法科大学院等においては,学生のみならず弁護士をも対象とした,カリキュラム等々が進められているというような御紹介がありまして,さらに,26ページのところで,下から二つ目の丸のところにおきまして,法科大学院においては,法律英語に関するうんぬんということが期待されるというような報告書になってございます。
 次に,31ページを御覧ください。法曹人口の在り方について(検討結果取りまとめ案)というものが載ってございます。まず冒頭で法的需要の状況等々に照らすと,法曹人口は,全体として今後も増加させていくことが相当ということが述べられてございます。それと,2行ぐらい飛ばしまして,おおむね毎年1,800人ないし2,100人程度の規模の数を輩出しているところ等々という点で,これが一定の相当性を認めることができると下の2行目に書いてございます。
 ただ,「その上で」というのが3段落にございますけれども,その段落の最後のところですが,このまま何らの措置も講じなければ,司法試験合格者数が1,500人程度の規模を下回ることになりかねないというような問題意識が書かれてございます。
 それから,2行ぐらい飛ばしまして,そのことからすれば,新たに養成し,輩出される法曹の規模は,司法試験合格者数でいえば,質・量ともに豊かな法曹を養成するために導入されたうんぬんと,直近でも1,800人程度の有為な人材が輩出されてきた現状を踏まえまして,当面,これより規模が縮小するとしても,1,500人程度は輩出されるよう,必要な取組を進め,更にはこれにとどまることなく,関係者各々が最善を尽くし,法的需要に応えるために,今後もより多くの質の高い法曹が輩出され,活躍する状況になることを目指すべきであるというようなことが書かれてございます。
 続きまして,33ページでございますけれども,これが今後の顧問会議の検討予定でございます。6月11日の顧問会議におきまして,推進会議に向けた報告の案文が出されるというふうにお伺いしております。6月30日にほぼ議論が終わるというふうにお伺いしてございます。
 資料2,以上でございます。

【井上座長】 
 どうも失礼しました。 それでは,ここから進行役を務めさせていただきたいと思います。
 続きまして,5月28日の顧問会議では,内閣官房法曹養成制度改革推進室より,「法曹養成制度改革推進会議決定に向けた結論の取りまとめ骨子(案)」というものが提示されたと聞いております。この資料は非公開のため,本日,皆様のお手元には配られておりませんけれども,その概要や当日の議論について,西山委員から御説明をお願いできればと思います。よろしくお願いします。

【西山委員】 
 それでは,概要を御説明申し上げます。御承知のとおり,法曹養成制度全体の検討体制であります法曹養成制度改革推進会議が設置されておりまして,この設置期限が本年の7月15日というふうになっております。それまでに推進会議としての方針を決定することが必要となってまいります。この決定の取りまとめ文書については,現在,関係省庁の間で調整中でございまして,法曹養成制度改革顧問会議においても,5月28日の会議で御意見を頂いたところでございます。会議当日は推進室として取り急ぎ作成した骨子をお示しいたしましたが,現在,政府部内でも調整中でありまして,今後大幅に変わることもあり得ることなどから,この骨子は顧問会議としては非公開の資料の扱いとさせていただくことになりました。このため,当審議会においても配付を差し控えさせていただき,口頭にての御報告になりますので,その点は御了承いただきたいと存じます。
 現在,検討中の取りまとめ文書の骨子,大枠としましては,法曹有資格者の活動領域の在り方,今後の法曹人口の在り方,法科大学院,司法試験,司法修習,今後の検討の六つの項目となっております。このうち,今後の法曹人口につきましては,先ほど事務局からも御説明いただきましたとおり,5月21日の顧問会議で御了解を頂いた検討結果取りまとめの記載の内容を御参照いただければと存じます。
 また,法科大学院につきましては,先般,文部科学省から示されました法科大学院の強化と法曹養成の安定化に向けた抜本的改革の推進の工程表,あるいはこれまでの中教審や顧問会議での御議論を踏まえまして,法科大学院の組織見直し,教育の質の向上,経済的・時間的負担の軽減に関する各方策を整理し,これらを平成30年度までに集中的に進めるということを想定しております。
 さらに,司法試験のうち,例えば予備試験につきましては,法科大学院改革の進捗状況に合わせて,必要な制度的措置を検討すること,司法試験の選択科目廃止については,引き続き廃止の是非を検討することなどを骨子では整理したところでございます。いずれにしましても,本文全体を更に検討中でございまして,これに応じて,ただいま説明した骨子の内容も変わる可能性がございますが,6月11日の顧問会議にはその具体案をお示しし,その後の7月15日の設置期限までに推進会議において決定することを目指しているところでございます。
 簡単ですが,以上でございます。

【井上座長】 
 ありがとうございました。それでは,ただいまの二つの御説明につき,何か御質問等がございましたら御発言をお願いします。
 どうぞ,片山委員。

【片山委員】 
 先ほど法曹有資格者の活動領域の拡大に関する有識者懇談会取りまとめに関する御紹介を頂きまして,特に法科大学院関係に関しては,海外展開の部分の8ページの下から二つ目の丸で,法科大学院においては,法律英語に関する講座や,国際的なビジネス法務に関する講座等,国際的な能力を涵養(かんよう)するためのプログラムの提供に取り組むことが期待されるというところを御紹介いただいたわけですが,残り二つの部会に関しましても提言がございまして,例えば国・自治体・福祉等の分野に関しましては,4ページの下から二つ目のところに,自治体法務に関するプログラムの設置,自治体におけるエクスターンシップ,修了生の就職に関する自治体との連携などに取り組むことが期待されるというのもございますし,企業の分野に関しましては,6ページのところに,企業法務に関する科目の設置,企業におけるエクスターンシップ,法曹有資格者の就職に関する企業との連携などに取り組むことが期待されるということが挙がっておりますので,併せて指摘させていただきました。

【井上座長】 
 ありがとうございました。ほかに御質問等ございますか。特にございませんでしょうか。
 今,御報告がありましたように,法曹養成制度改革顧問会議において,更に議論が行われ,最終的には推進会議の方で何らかの決定が恐らくなされるであろうということですので,本委員会としても,更にその推移を注視していきたいと思います。
 次に,前回の会議で今期における審議の基本的な方向性について御議論いただいたところですけれども,本日は,それをも踏まえまして,法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成制度の安定化に向けた論点について,御審議いただければと思います。
 論点のたたき台として,前回,皆様から頂いた御意見等を踏まえて事務局で資料を準備していただいておりますので,事務局から御説明をお願いしたいと思います。

【塩田専門職大学院室長】 
 はい。御説明いたします。資料3-1と3-2の参考資料も併せて御覧いただきたいと思います。まず,資料3-1でございます。ここに書いてございますように,平成26年までの合格状況によれば,累積合格率は5割弱であるということと,入学定員と実入学者数の乖離(かいり)も十分には解消されていない。制度の安定化に向けて,法科大学院の規模の適正化や教育水準の引上げは喫緊の課題ということでございますけれども,一応データといたしましては,参考資料の5ページを御覧いただければと思います。参考資料の5ページの赤枠で囲ってございますように,入学定員につきましては3,169人,実際の入学者は2,201人ということで,定員充足率は0.69というような状況でございます。
 また,同じ資料の9ページを御覧いただければと思いますけれども,9ページに累積合格率,左の枠の一番下のところです,49.2%とございます。累積合格率につきましては,このような数字があります。
 資料3-1に戻りまして,こういった状況を踏まえまして,組織見直しの促進や,教育の質の向上に関する取組を更に加速させるため,以下のような論点について検討してはということでございます。
 まず,以下のような論点につきましては,法科大学院修了者の司法試験合格率や,適正な入学定員の規模ということで書いてございます。最初のぽつでは,学生にとって将来のキャリア形成の見通しが立ちやすい状態を実現するといったことが重要ではないかと考えておりまして,志願者の減少と入学定員・実入学者の減少が繰り返される現状を早急に改善していきたい。
 これまで修了者の相当程度,例えば7~8割が司法試験に合格できるようにということで教育の改善・充実に関する取組を進めてきたところでございますけれども,こういった状況を踏まえまして,適正な入学定員の規模を検討するに当たっての司法試験合格率の水準をどのように考えるべきかということをまず項目として挙げてございます。
 次は補足でございますけれども,その際ということで,ロースクールで学んだ方,例えば司法試験に合格しない場合におきましても,高い法的素養を備えた人材ということが輩出されますので,こういった方も多様な活躍の可能性があるということにも留意してはどうかということでございます。
 次のぽつでございます。法曹人口の在り方を踏まえて,今後の入学定員の規模をどのように考えていくべきかと。法曹人口につきましては,先ほど御説明させていただきましたけれども,それを踏まえまして,今後,入学定員の規模をどう考えていくかということでございます。
 それで,参考資料の12ページを御覧いただければと思います。下の方の枠でございます。平成26年10月9日におまとめいただきました提言,ここには何が書いてあるかというと,13ページの上から2行目でございますが,プロセスとしての法曹養成制度の安定化を図るためには,将来的に見込まれる法曹需要を基にして,あるべき定員規模について検討し,これを明示する必要があると。具体的には,今後の法曹人口に関する調査の結果を踏まえまして,可及的速やかに提示することを目指すべき。この定員規模については,全体として,例えば合格率7~8割を目指すことが可能となるような規模とすることが望ましいという提言をまとめていただいているところでございますけれども,こういったことを踏まえまして,入学定員の規模をどのように考えていくべきかというものでございます。
 資料3-1に戻っていただきまして,次のぽつでございますが,公的支援の見直しの今後の在り方をどのように考えていくべきかということでございます。これにつきましては,後ほど議題上は説明させていただく資料でございますけれども,資料4の15ページを御覧いただければと思います。公的支援の見直しということで,今,ここにありますような指標でまず点数分けをさせていただいてございます。司法試験の合格率につきましては,累積合格率が全国平均以上ということであれば12点。合格率が全国平均の半分未満が3年連続した場合は0点と。こういったような合格率の指標。さらには,丸2にございますように,法学未修者の合格率の指標。丸3が定員充足率。丸4が法学系以外の方の数や割合,社会人の割合というような指標で点数分けをいたしまして,次の16ページでございますけれども,この点数を足し上げまして,第1類型から第3類型まで分けると。
 それがどうなるかといいますと,次の17ページでございますけれども,第1類型の場合は基礎額の90%,第2類型の場合はA,B,Cと分けまして,80%,70%,60%,第3類型の場合は50%。来年度予算からは,この50%はなくて0%になりますが,こういった分け方を現状ではしてございます。
 御存じのように,更には加算条件といたしまして,17ページに書いてございますような優れた取組をしている大学,提案がございましたら,それに加算していくと。こういったような形で公的支援のめり張り付けと,また優れた施策の促進をしているところでございます。例えば,1点,御検討いただく必要があるかと思いますのは,資料4の14ページの二つ目の丸でございますけれども,真ん中以降でございます。なおその際,競争倍率が2倍未満の場合は加算率を減ずるということで,競争倍率につきましては,直接の指標ではなくて,加算をする際の率を減ずるという形で活用されているところでございます。こういったことも含めまして,公的支援の見直しの今後の在り方をどのように考えていくべきかということを御検討いただく必要があるかというふうに考えてございます。
 また,その前提といたしまして,法学未修者が大幅に減少しているという現状が別途ございます。資料3-2の参考資料の7ページを御覧いただければと思いますけれども,法学既修と未修に分けたデータがございますが,法学未修者の数,割合がどんどん減っておりまして,現在770名という現状もございますので,法学未修者の在り方ということを今後検討していくことも必要かと,前回の委員会でも御指摘があったかと思います。こういったことで今後の公的支援の見直しの在り方をどのように考えていくかというのが一つ課題かなと考えてございます。
 また,資料3-1に戻っていただきまして,資料3-1の1ページの最後のぽつでございます。書いてございますように,平成27年度におきましては,競争倍率が1.87倍ということで2倍を切ってしまったということでございます。これにつきましては,文部科学省におきましては,今後,入学者選抜に関する最近の状況につきまして,各法科大学院から状況をお伺いさせていただこうかと考えているところでございますけれども,そういったことで課題を整理していく予定でございますけれども,入学者の質の保証の在り方をどのように考えていくべきかということが検討事項かと考えてございます。前回の委員会でも御指摘ございましたように,入学定員の充足率を高めるために,かなり合格者を多く出しているようなロースクールも見受けられるという御指摘がございまして,そういったことも踏まえまして,入学者の質の保証をどういうふうに考えていくべきかということも課題かと思っております。
 次のページの2でございます。法科大学院志願者の回復に向けた学修環境の整備ということで,入学者数は過去最低の2,201人,適性試験も10%以上の減ということでございますので,法科大学院志願者の回復は喫緊の課題であろうということでございます。特に,前回の委員会では,適性試験につきましては,2回実施のところが1回に減らされている地域もあるので,そこは問題ではないかというような御指摘も頂いたところでございます。
 次の丸でございますけれども,1.87倍という競争倍率につきましては,認証評価の厳格化ということで,文科省といたしましては,認証評価機関に対して2倍というような目安を示しているところでございます。そういった観点から,そもそも入学志願者が増えないとなかなかそれは難しいであろうということで,志願者の回復が重要であろうということでございます。志願者の減少に歯止めを掛けまして,増加を実現するためにはどのような方策があるかということで,まず,私どもではとりあえず法曹養成期間の短縮ということで書かせていただいてございます。学部3年+法科大学院既修2年コースの確立・充実ということで,当面10校程度で100名程度を目指すというようなことを言ってございますけれども,その後,当該措置の普及・定着をどのように図っていくべきかということでございます。
 ただし,これにつきましては,前回の委員会におきましても,短縮ありきではなくて,どういう場合にどういう状況の下でやるのが適当かということをよく考えなくてはいけない,また,学生の負担軽減という観点からはいいのではないかということがある一方,やはり深い学識とか,卓越した能力を養うというようなミッションからすると,簡単に縮めるべきものではないのではないかというような御指摘も頂いているところでございます。
 ちなみに,参考資料の17ページを御覧いただきたいと思います。参考資料の17ページで現在の飛び入学・早期卒業による入学者数でございますけれども,赤枠で囲んでございます既修者につきましては,平成27年度は24名ということで,右枠ですが,12校がやっているというような状況でございます。18ページをめくっていただければと思います。ここに数の推移でございますが,平成27年度は24名ですが,昨年度は15名,平成25年度が7名だったということで,徐々に人数としては増えていっているような状況でございます。
 21ページの飛び入学・早期卒業で入学した方の累積合格率についてでございますけれども,上の方の丸でございますが,飛び入学については64.7%,早期卒業につきましては61.4%といったような累積合格率がございます。このようなことを踏まえまして,3+2のコースというのはどのように考えていくべきかということでございます。
 さらに,ここには資料としては書き足してございませんけれども,前回の委員会におきまして,法学未修者が大幅に減っておりますので,法学未修者に対してどのような手当てができるのかということでございますとか,また,法曹リカレントとしての機能というのが求められているのではないかという御指摘も頂いたところでございます。
 続きまして,資料3-1に戻っていただきまして, 3.その他でございます。上記のほかの検討事項といたしまして,法科大学院の魅力の発信というようなことを書かせていただいてございます。法科大学院の志願者の増加に向けまして,優れた先導的な取組を高校生・大学生や法曹関係者など社会に周知し,どのような取組を検討していくべきかというようなことでございます。
 参考資料の23ページと25ページでございます。見ていただければと思いますけれども,23ページにおきましては,法科大学院協会でしていただいておりますような説明会のビラを付けてございます。また,25ページにつきましては,日弁連さんでされている法科大学院出身弁護士のインタビュー動画につきましてのチラシを付けさせていただいてございます。こういったような取組を含めまして,どのような取組を今後検討していくべきかということでございます。
 また,最後のぽつでございますけれども,法科大学院出身者が社会においてどのような評価を受けているのか、これを定量的・客観的にどういうふうに把握していくべきかというようなことを書いてございます。
 本日,御欠席の委員に何か事前にコメントがあればということでお伺いし,樫見委員から1点頂いてございます。今の説明と関連しますけれども,読み上げさせていただきます。法曹,並びに法律学に関して高度な専門知識を有する人材の養成と,そうした人材が日本全国に適正に配置されていることは,国土の管理・保全・交通・防災・情報セキュリティー等と同様に社会基盤の重要な一つの要素であると考える。法曹への志願者が年々減少していることは憂慮すべき事態であると。志願者の減少は多くの優れた人材の育成という目的に警鐘を鳴らすものであり,法による支配を支える現在の社会構造の維持に困難をもたらすものであろうと考える。こうした点につきまして,未来を担う高校生や大学生にもっと理解を促したいところだということが1点。
 もう1点が,法曹養成期間の短縮につきましては,慎重な検討が必要であると考える。法学関係の学部から既修2年コースの確立というのは,学生の経済的負担の軽減,優秀な人材の養成確保には資すると思う。しかしながら,多様なバックグラウンドを持った人材が法曹となることで多様な価値観を持った人材が確保され,法による適切な解決や法の運用等が満たされることを願っていた法科大学院による人材養成の理念と抵触することはないのだろうかと危惧を覚えるというような御指摘がありましたので,紹介させていただきます。
 以上でございます。

【井上座長】 
 ありがとうございました。今の御説明の途中で言及がありましたキャラバン企画ですけれども,これについて,松下委員の方から補足的な御説明をお願いします。

【松下委員】 
 ありがとうございます。今,資料3-1の2ページの下から2つ目の黒丸で,志願者増に向けて,いろいろな周知が必要であるという御指摘がありましたが,それに関連した企画について御紹介させていただきます。
 参考資料,資料3-2の後ろから2枚目というんでしょうか,ページ数でいいますと23ページ,24ページ,先ほど言及があったものですけれども,これを御覧ください。法科大学院協会とは全国の法科大学院を会員とする組織ですけれども,法科大学院の入学志願者が減っているという原因の一つは,法曹の仕事の魅力や法科大学院の教育内容についての広報の不足という側面もあるのではないかという認識に基づいて,このチラシにありますような説明会を全国で行っているところです。昨年は13会場で行い,今年度も,裏を見ていただくと分かりますが,10会場で行う予定です。主催は法科大学院協会,共催が日本弁護士連合会,そして後援が最高裁判所,法務省,文部科学省,適性試験管理委員会です。
 チラシの裏には6月から10月にかけての既に日時,場所決定済みのものについて,日時,場所,会場等が書いてございますし,それから,他会場についても決まり次第,協会のホームページ等で広報することになっております。
 23ページ,表の方を見ていただきますと,各地での企画の内容が出ていまして,各会場で若干バリエーションがあるんですけれども,おおむね2部構成,第1部と第2部の二つの部で構成しています。第1部は,壇上から来場者へ語りかける企画でして,例えば法曹三者,裁判官,検察官,弁護士がそれぞれの仕事と,それから法科大学院で勉強したことがどう今の仕事に役立っているかという御紹介を頂く。あるいは現役の教員と学生が授業の様子を紹介する。あるいは大学関係者が奨学金の説明をするなど,壇上からの語りかけというのをするのが第1部です。
 第2部は,会場の近くの法科大学院や,あるいは第1部の登壇者がブースを設けて,来場者がそのブースの間を自由に回ることができるようにします。どこそこ法科大学院の説明を聞きたいとか,あるいは裁判官の人と話をしてみたいというようなことを,来場者がぐるぐる回っていろいろな方から話を伺うという企画です。協会のホームページで逐次,日時,場所等は広報しておりますが,法科大学院協会としても,志願者増を目指して,このような努力をしているという御紹介をさせていただきました。ありがとうございました。

【井上座長】 
 どうもありがとうございました。それでは,以上の説明を踏まえまして,御意見,御質問等をお伺いしたいと思います。
 本日,論点が非常に多岐にわたりますので,一応項目ごとに区切って議論をさせていただければと思います。
 まず,「1.法科大学院の組織見直しの促進及び教育の質の向上」という点について,どなたからでも御質問,あるいは御意見等ございましたら御発言ください。
 どうぞ,土井委員。

【土井委員】 
 第1の法科大学院の適正規模と司法試験合格率の問題でございますが,これは適正規模,合格率だけの問題ではなくて,次の法曹,法科大学院志願者の回復を図る上でも重要な点だと思っています。今後の法科大学院制度の方向性を明確に示した上で,現在の状況,あるいは今後生じる事態を適切に位置付けていくことが大事です。そうしませんと,様々な事実,数値が断片化されて世の中で理解されて,かえって混乱を招くおそれがあると思っております。
 例えば2.のところに書かれていますように,今年度の法科大学院入学者は2,201人という数値でございます。これを過去最低の数値と言えば,そのとおりでございますが,この入学者2,201人に対して,修了率を大体85%と想定しますと,修了者数は約1,850人から1,870人ぐらいの数字が出てきます。この修了者の司法試験累積合格率を例えば80%と想定しますと,合格者数は約1,500人という数字が出てまいります。予備試験ルートの受験者もおられますので,単純には言えませんけれども,法科大学院教育の充実が確実に図られれば,司法試験の累積合格率70%から80%の実現というのは,既に非現実的ではない状況になっております。ただ,これは今年度の入学者の問題ですので,この入学者が司法試験を受験するのは2~3年後の話になります。その意味で,この5月に行われた司法試験の結果に直接影響するわけではありません。しかも,司法試験の受験機会は5年,5回ございますので,そういうことを考えますと,司法試験の合格率が直ちに改善するわけではありません。しかし,こういう状況に既になっているということは明確に示していく必要があります。
 そうでありませんと,学生や社会人の皆さんが個々の数字を断片的に見てしまいますと,入学者数が減っているじゃないか,合格率が改善されていないじゃないかという話になって,結局,法曹養成制度の改善が図られていないかのように思われてしまう。そうしますと,法曹を志願する人たちのマインドを更に冷やしてしまうという悪循環になってしまいます。これでは関係者がどれほど尽力しても,なかなか事態の改善にはなりませんので,それを避けるためには,できるだけ明確に方向性を打ち出して,各種の数字をそこに位置付けて説明し,適切な状況認識を皆さん方に持っていただく必要があると思います。
 法科大学院教育,司法試験の合格のみを目指すものではない。合格後に法律家として活躍できる能力を十分に身に付けてもらうためのものだというのは,そのとおりでございます。しかしながら,制度設計に際して司法試験の合格を念頭に置かないというのは,やはり法曹養成のための教育機関としてはおかしな話だろうと思います。したがって,当初の目標に立ち返って,修了者の約7割から8割が司法試験に合格できる教育機関になるように,入学定員等の組織・制度の面からも,また実質的な教育内容,方法等の面からも,明確な方向をいち早く打ち出して,早急に実現する姿勢を示す必要があり,この点についてはできる限り早く方向を打ち出すのが適切ではないかと思います。
 以上です。

【井上座長】 
 ありがとうございました。総括的な御発言を最初に頂いたので,断片的な発言がしにくくなたかもしれませんが,御自由に御議論いただければと思いますので,では,磯村委員。

【磯村委員】 
 資料3-1の1ページ目のところの法曹人口の在り方を踏まえ,今後,入学定員の規模をどのように考えていくべきかという点ですけれども,従来,参考資料でも言われていたように,法曹人口としてどの程度の数を想定するかというときに,需要の方から考えるというアプローチ面と,現在どれぐらい法曹を志願している人がいるから,これぐらいの数字を考えるという、異なるアプローチの仕方があるかと思います。現在のように,定員はこれだけだけれども,実入学者はこれだけしかいない。そうすると,実入学者に合わせて定員を更に減らそうという方向にベクトルが働くとすると,これが更に,法曹人口としてこれだけの人数しか養成できないことになり、それがまた実入学者の減少を招くという方向に作用する危険性があるのではないかと思います。入学定員の在り方を考えるというときに,やはり出発点に戻って,現在の日本の社会において,どれだけの法曹を必要としているか、その需要に応じて,それだけの法曹を法科大学院において養成する必要があるかという発想を維持しないと,志願者も養成される法曹の数もどんどん後退していくことになるのではないかという懸念があります。

【井上座長】 
 ありがとうございました。どうぞ,大貫委員。

【大貫委員】 
 最初,土井委員から総括的な意見があったので,なかなか言いにくくなったんですけれども,座長が順次やっていくとおっしゃったので,上の方から申し上げます。

【井上座長】 
 1のところです。

【大貫委員】 
 1のところでまず申し上げますと,1.の最初の白丸のところにある表現はいかがかと思います。磯村委員と恐らく同じ問題意識かと思います。法科大学院の入学定員と実入学者数の乖離(かいり)も十分には解消されていない、この乖離(かいり)の解消,こういう言い方をしますと,実入学者数の方に合わせるというようなメッセージを出してしまうんじゃないかと思います。先ほど磯村委員がおっしゃったように,法曹需要がどの程度あるのかという,あるべきところから出発しないと,ずるずると後退してしまうのではないかと思っています。
 それと,1.の真ん中あたりから始まるところの三つ目のぽつですが,これは恐らくこの委員会でも相当議論されたと思うんですけれども,司法試験を受験しない,あるいは司法試験に合格しない場合においても,法科大学院修了生は高い法的素養を備えた人材として活躍の可能性があることにも留意が必要だとあります。これは扱い方によって非常に難しいのではないかと思います。今回の法曹養成制度改革は,法曹資格を持った者を社会の隅々まで行き渡らせることを目指していたのではなかったのかと私は思っています。これは,前回,初回の委員会で申し上げましたように,法曹像の転換というものが背景にあって,恐らくなし遂げられるものだと思うんですけれども,このような言い方,受験しない,合格しない者であっても活躍の場があるんだという表現は,余り正面には出していただきたくないなという気はしております。
 以上です。

【井上座長】 
 ちょっとコメントさせていただきますと,1番目のところは,どんどん減らしていけばいいということではなく,それによってまた志願者が減り,実入学者が減るという負のスパイラルに陥る危険があるということも,前からみなさん十分意識している。ただ,定員と実入学者の乖離(かいり)が余りにも大きい状態が続くと,そもそもその定員設定が適正なものなのかが問われざるを得ないのです。また,競争倍率がどんどん下がってしまうと,本当にそれでいいのかも問題となるわけです。乖離(かいり)を埋めるのに両様あり,定員を削減するのと,志願者を増やし実入学者を増やしていくという,その両方があるわけですが,その間をなるべく合理的な範囲に縮めていくというのが,ここの趣旨だと思うのです。
 2番目の点も,おっしゃるとおりなのですけれども,ただ,新しい制度の出発点においては,法曹資格を持った人がというふうには必ずしも限定していなかった。むしろ,法曹資格を有するのは当然で,ただ,それを有しなくても有資格者に匹敵するような力のある人を含めて,社会のいろいろな方面に送り出していくといったふうに,膨らみのある理解であったはずなのです。無論,飽くまで法曹養成の場ですから,おっしゃるように中心は法曹有資格者の養成にあることは間違いなく,そういう有資格者が,狭い意味の法曹界のみではなく,それ以外の幅広い分野にも進出していくということであったと思います。御注意点を踏まえて,更に誤解のないような文章にしていきたいと思います。
 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【有信委員】 
 ちょっと一般的な言い方をしますけども,今の議論が,どうしても現状をベースに議論をしているので,やらない理由は山ほどあるわけですね。だから後ろ向きに結果的になってしまう。現状をベースで判断すると,あれも要らない,これも要らない,ぎりぎり詰めれば,これだけで済むと。こういう議論に,ちょっと抽象的な言い方をして申し訳ありませんけれども,そういう形になってしまう。
 ところが,一方で,将来を考えると,現在ある職業がいつまで続くかという議論で,現在小学生の人たちが今ある職業に就く確率というのは極めて少なくなる。6割以上が今ない職業に就くと言われているわけです。いわば未来を見ていろいろな議論をやるべきところが,現実に足をすくわれているようなところがあって,もともと法科大学院を作る最初のところに,法制審議会でしたか,出されたときには将来を見て様々な計画が出されてきて,それが現実に次々と打ち砕かれてきた。当初は法科大学院に入る学生たちは物すごく多かったわけですね。非常に将来に対して夢を持って入ってきて,それでその人たちがなかなか夢を果たせなかったという状況になってしまっているというのは,一つは大学側がやはり反省をしなきゃいけないところがあると思うんです。
 特に平成28年度から,国立大学に関して言うと,様々な新しい施策が取り入れられて,大学の機能分化ということを推し進めるということが言われています。その中で,将来を見ながら,法科大学院のきちんとした設計をして,本当に法曹を育てる仕組みをビルドインしていかないと,従来の大学のスキームの中,あるいはその延長上で考えるというやり方で本当にいいのかということを少し反省して,より議論を詰めていく必要があるというふうに思っています。

【井上座長】 
 そうですね。私も当初から関わっている者ですけど,当初は,むしろ,法科大学院というのは大学制度として新しいモデルを提示するものでもあったと思うのです。大学や学部はいろいろなところを出る,あるいは様々な社会経験を積んだ人も法科大学院に入ってきて,それらの様々なバックグランドを持った人を融合して新しい教育をしていくということと,もう一つはプロフェッショナル教育というのがまだ根付いていない我が国で,そのような方向へのはしりであったと思います。その意味で,日本の学校ないし高等教育に大きな新しい刺激を与えるものであったと思うのですけれども,それが苦境に陥って,その理想を追うのが難しくなっている。それはおっしゃるとおりですので,大学制度自体が大きく動こうとしている中で,もう一度位置付けを確認するなり,新たな位置付けをするということは必要であることは確かだと思います。
 どうぞ,山本弘委員。

【山本(弘)委員】 
 先ほど来,法科大学院の入学定員と実入学者数との乖離(かいり)という言葉を使うかどうかということが議論されているんですが,個人的な,あるいは個別的な大学の教員としての経験から申し上げるのは適切ではないのかもしれませんが,幸いにも私が奉職している大学のロースクールは入学定員を確保しております。しかしながら,この2~3年ぐらい,特に既修の入学者を見ておりますと,法科大学院が発足した当初に比べると,学力が落ちているということは実感しておりまして,数値的にも,昨年度ですけれども,2年次から3年次への進級にGPAを掛けてかなり厳しくチェックするようになったんですが,かなりの原級留置者を出しました。原級留置2回続きますと補講ということになりますが,もちろん原級留置をすることによって,かえって学力が伸びて司法試験の合格がむしろ良くなるということがあるかもしれません。ですから,今のところまだ分からない状況なんですが,しかし,評価を良くするために多少無理して人を採って実定員を確保しているわけですが,内実は変わってしまっているということは認識しておかなければいけないのではないかと思っています。
 私の個人的な感覚で言うと,入学定員を減らした方がいいのかなという気もしていますが,そうすると,本来だったら能力と意欲を持っている人たちがますます法科大学院に嫌気が差してしまうという方向へのシグナルを出すことにもなりかねない部分もある。そういう意味では非常に悩ましいことではあるとは思うんですが,しかし,実際に授業を担当していて思うのは,この2~3年思うのはそういうところです。

【井上座長】 
 どうぞ,片山委員。

【片山委員】 
 入学定員の問題ですが,法曹人口の在り方についての今回の顧問会議の取りまとめも,基本的には1,500人という数字は出ていましたけれども,全体としまして,今後も法曹は増加させていくべきであるという提言がなされているということであります。どれぐらいのスパンで今回入学定員の規模を考えるかという問題もあるのかもしれませんけれども,短期的に見ると,確かに今,これだけ志願者が減っている状況で入学定員の幅を大きくとって,多くの学生を確保するということになりますと,当然に質が低下しますので,そういう意味で入学定員を減少するということはやむを得ないのでしょうが,他方,もう少し中長期的に見ますと,一定数の法曹人口はやはり確保していく必要があるということでしょうから,直ちに定員を今減らすという方向ばかりを考えるべきではないというふうには思っております。
 定員の充足率ですけれども,常に100%を目指さなきゃいけないということではなく,中長期的に見て100%が望ましいけれども,その過程で70%でも80%でもそれは許されるというように理解していただいて,かつ,優秀な学生をきちんと確保しなければいけないですので,最低限,一定の競争倍率は確保するということを考えるべきだと思います。2倍を切るというのは当然でしょうが,場合によっては3倍とか,そのくらいの数字を考えてもいいのかもしれません。いずれにせよ,定員だけではなくして,より厳格に競争倍率を維持するという方向で質を確保するという方向の議論も併せて行っていただければと思っています。

【井上座長】 
 どうぞ,上田委員。

【上田委員】 
 今の御意見,ほとんど賛成なんですけれども,加算取組を前回やりまして,また今回も実施する方向ということですので,今後も募集停止をしていくロースクールも増えていくだろうと思います。ここで慌てて定員を減らすというような方針をとる必要はなく,自然に任せておけばいいのではないかというふうに思います。
 他方で,大規模校の入学定員が余りにも多過ぎて,その定員を埋め合わせるのに,例えば入試の合格者を入学定員の2倍,3倍も出すというような実態もございますので,その辺はもう少し是正をしていくようなことを考えてもいいのではないかなというふうに考えております。

【井上座長】 
 どうぞ。

【山本(和)座長代理】 
 よろしいですか。先ほどの片山委員の発言で,この法曹人口の調査,資料2の31ページに出ている取りまとめで,私自身も若干前提となる調査に関与したので,かなり詳細ないろいろな調査をやって,しかし,もちろん特定の数字を日本で将来何人,人口が必要だというようなことを出すというのはそもそも無理だったと思うんですけれども,ただ,いろいろな読み方があるのかもしれませんが,全体の論調としては,これまでの1,800人から2,100人程度というのは,社会において一定の相当性を認めることができるという評価がされておりますし,外在的な要素に基づいて1,500人程度にまで縮小する事態も想定せざるを得ないというふうに言っていますけれども,それが望ましいという,これが適当だというふうに評価しているわけではないような書きぶりになっています。
 ですから,私も片山委員と同じように,恐らくこの短期的な問題と中長期的な問題というのは切り離して考えていく必要があるんだろうと思うんですが,ただ,短期的にはここに書かれてあるように,規模が縮小するとしても,1,500人程度は配置されるようにやっていかなければいけないというのが書かれていることで,それは法科大学院の教育機関としての責任で,確実に1,500人なら1,500人という数字は,法科大学院でそれだけの能力を持った人材を養成していくようにできるような前提条件を整えていかなければならないだろうというふうに思っているところで,それを踏まえて定員というのは考える必要があるということで,将来的には恐らく別の話があって,それを期待したいというふうには思っているんですけれども。

【井上座長】 
 定員と競争倍率と充足率というのは相互に密接に連関しており,そのどれかのみをいじればよいという話ではないように思うのですね。先ほどの山本弘委員のお話と同様の話は,他の大学院の関係者からも聞くところであり,無理をして充足率を上げると,結局,数年後には自分の首を絞める結果になる。ですから,そこのところは厳しくやっていく必要があり,成績評価などもそうですけども。あの法科大学院は成績評価が非常に厳しいという話が流れると,入学志願者がよそに流れるらしくて,前線にいる教員の中にはそれを非常に気にしている人もいるようなのですが,しかし,厳格な成績評価や修了認定というところを崩したら,結局、かえってマイナスの結果につながるわけですので,その辺も緊張感を持って,三つの数字のバランスをとっていかないといけないのだろうと思います。
 各校によってかなり事情が違うので,乖離(かいり)の問題にしても,一律に何かを決めて,押し付けていくというようなことはもちろん適切ではないですし,うまくいかないでしょうが,それぞれにまかせきりというのでは済まなくなっていることも確かです。現に,そのようなことは本委員会や認証評価などで,ずっと言われてきたことですけれども,なお問題を抱えているところも少なからずあるというのが現実だと思うのです。

【大貫委員】 
 すみません,二度目の発言で。ほとんど先生方の議論に異論はないんですけれども,上田委員の御発言にちょっと申し上げたいところがありまして,定員削減,自然に任せておけばいいと述べられました。恐らく黙っていても減っていくと思うんですね。ただ,それは土井委員が冒頭におっしゃったように,制度の全体の絵を,これからどうなるんだということを見せていないと,法科大学院がとにかく後退していくという印象しか与えないので,私も自然に減っていくんだろうと思っていますけれども,自然というのは,法科大学院が努力した結果であって,そうして身を削ってある方向にちゃんと行って,そしてある時期から,累積合格率,あるいは単年度合格率が7割,8割ということが実現できるという構図を見せないといけないというふうに思っています。
 今後,制度がどう行くかということを見せていくというのは大事なことで,それとの関わりで言うと,大規模校の擁護をするわけではないんですが,大規模校の定員削減をしていくことでのメッセージ効果というのを私は考えた方がいいと思うんですね。それなりの多様性のあるメニューを提供している大規模校もやはり減らすということがどういうメッセージ効果があるのか。あるいはそこで学びたいと思っている人にとってどういうメッセージ効果があるのかというのは考える必要性はあるんじゃないかと思います。大規模校も一律に減らせというような議論というのはなかなか難しいのかなという気はしています。ただ,大規模校も一生懸命物は考えているとは思います。
 それと,ちょっと長くなりましたけど,さっき片山委員がおっしゃった中長期的な視点なんですが,1,500人という数字が出たんですが,これは一体いつまでの話なんだという議論があると思います。このままですと,1,500人でずっと行くのかというようなメッセージを与えないかと。ある段階からはまた上がっていくのだということなのか,そうでないのかというところもきちっと示さないと,1,500人という数字だけでは,学生にとっては非常にマイナスのメッセージを与えるという気はしております。
 以上です。

【井上座長】 
 ほかの方いかがでしょうか。どうぞ。

【磯村委員】 
 2点について,ちょっと意見を申し上げたいと思います。1点目は,この特別委員会のタスクとの関係で恐らく意図的に避けられている論点なんですけれども,いかに法科大学院の入学志願者を増やすかというのは,予備試験制度と無関係には考えられないので,ここで決められる問題ではないとしても,それと非常に密接に関連しているという問題点を指摘しておくことが重要ではないかと思います。
 もう一つは,先ほどの山本弘委員と井上座長の御発言に関連するんですけれども,公的支援の見直しの今後の在り方をどう考えていくかというときに,やはり最も重要なのは,入学者の質の保証の在り方ではないかと思います。そうであるとすると,現在の定員充足率と競争倍率というのはある種の緊張関係にあって,できるだけ定員を充足させようとすると、競争倍率が低くなるということになりかねない。したがって,定員充足率を余り重視すると,入学者の質の確保という点ではかえって良くないという面があるということを意識した制度設計が必要ではないかというように考えているところです。

【井上座長】 
 どうぞ。

【土井委員】 
 今の入学者の質の確保の件ですけれど,先ほど室長からの御説明もありましたし,また,私も現場の感覚としましても,法科大学院制度が,非常に厳しい環境に置かれているという影響もあって,非法学部出身者,社会人の志願者の確保が難しい状況になってきております。首都圏は比較的大企業が都心部に集中していますので,違った状況にあるかもしれませんが,それ以外で社会人の志願者を確保するのは非常に厳しい状態になってきております。もちろん,法科大学院の理念からして,引き続き非法学部出身者,社会人の志願者の回復のために努力を続ける必要があると思いますが,現状において,入学者の質の確保と入学者における非法学部出身者,社会人比率の確保の要請が緊張関係に立つ場合には,制度に対する信頼を確保するために,当面の間は入学者の質の確保を優先するということを認めていく必要があるんじゃないかと思っております。この点,後ほど議題になるでしょう法曹養成期間短縮コースを制度の中でどう位置付けるかといったような問題とも関わってきますし,加算プログラムの指標の問題とも関わりますので,今後検討していく必要があるんじゃないかと思います。
 以上です。

【井上座長】 
 どうぞ。そろそろ次にも移りたいと思いますので,申し訳ないですけど,簡潔にお願いします。

【笠井委員】 
 短くやります。これまでの御発言と重なる部分もありますが,先ほど磯村委員から定員充足率と入学志願者倍率の関係について,極めて重要な御指摘があったように思うんですね。私,いわゆる第3ワーキングということで全国のロースクールをめぐっていろいろ調査といいましょうか,をしてきたわけですけれども,その中で最も強調していた点というのは,入学志願者の質の確保という観点から競争倍率は是非2倍以上を守りなさいということを言ってきたわけです。ところが,だんだんと全体的な状況から志願者全体が減少してきた,シュリンクしてきたという,その結果として,その点が現状においては指標としてそれほど厳しくない指標にされてしまっているのではないかという危惧を持っておりまして,先ほど井上座長がおっしゃったように,関係というのは非常に難しい問題があるとは思うんですけれども,入学志願者倍率の2倍という問題について,是非忘れることなく,この委員会で議論していっていただきたいと思っています。
 以上です。

【井上座長】 
 そろそろ2の「法科大学院志願者の回復に向けた学修環境の整備」に移らせていただき,引き続き御意見を賜れればと思います。
 どうぞ,日吉委員。

【日吉委員】 
 この第2の論点に関して,本たたき台は安定化に向けたための論点ということでございますので,単に対症療法的なものではなく,やや中長期的にここで御議論いただきたいことを二つ御提案いたします。
 一つは,先ほどから出ていましたように,本来,法科大学院というのは原則的なコースとしては,未修者コースで3年,その代わり入って,誤解を恐れずに言えば,ゼロの状態から司法試験レベルに合格するまでを育てようと。出発点はそうだったのではないかと思います。ただし,一定の法的素養をもう既に持っている人間については,試験に合格した人間は1年短縮していいよと,そういう制度設計だったのではないかというふうに理解しております。
 今,現状が全く逆の状態で,既修者がいなければ成り立たないし,既修者がほとんどと。未修者クラスも実際既修者であるという状況であり,だからこそ,こちらのたたき台には法曹養成期間の短縮というようなことが前面からうたわれる状況になっているんだというふうに理解しますけれども,やはり中長期的には,先ほどから出ているように,いろいろな経験を積んできた人たちを呼び込んで,そして,法律の勉強の環境を提供するということからして,最初にもくろんだいわゆる未修原則3年,既修短縮版が2年というような制度設計をこのまま維持していくのがいいのか。あるいはそれで相当なのか。内容としても,論点1の教育の質の向上とも密接に関連しますけれども,今,多くの法科大学院で行われているようなカリキュラムの設定,学修の進捗状況,そういうふうな形というのがこれで十分なのかというようなことも是非ここで検討していっていただきたいなというふうに思っております。
 それから,もう一つは,志願者数の回復に向けたことということに関連してですが,特に学生さんではなくて,仕事を持って何か別の世界で生きている人間がこの世界に飛び込むということを考えますと,入学試験を,できるだけ入り口を,門戸を広げて受けやすいような状況設定をしてあげるというようなことも必要かというふうに思います。先ほどの入学者数の確保とも密接に関連いたしますけれども,適性試験の在り方,例えばいつ,どこで受けられるような状況にしておくのか。それは本来の各大学で行われる入学試験と乖離(かいり)した時期でいいのか。極端にいうと,ほぼ同時のような形で課すことだって可能性としてはあるのではないかとか,できるだけ思い立った別の世界の人がチャレンジしやすいような,そういう制度も含め,検討していっていただきたいし,適性試験というものの中身についても,先ほど来から出ているように,今後いろいろな業種が生まれて,そこから優秀な人材を呼び込むということからしても,一体どういう内容の試験が適正なのかというようなこともやや考えていかなければいけないのではないかと思っております。
 以上です。

【井上座長】 
 どうぞ,上田委員。

【上田委員】 
 ありがとうございます。今の意見に関連してなんですけれども,ここでの論点というのは,やはり法科大学院志願者の減少に歯止めを掛けて,志願者の増加を実現するということですので,そうであるとするならば,やはり法科大学院に入るときのバーを下げる必要があると考えます。バーを下げるというのは,レベルを下げるというのではなくて,できるだけ多くの人に受けてもらうというための施策をとるべきだろうというふうに思います。
 その意味では,先ほど出ておりましたやはり適性試験というものの在り方というのを根本的に考える必要がもう来ているのではないかと思います。実施の正当性とか合理性とかを改めて検討し直すべきなのではないかというふうに考えております。
 以上です。

【井上座長】 
 適性試験については,実施する側は非常に御労されていて,回数が減ったというのも,減らしたくて減らしたわけではなく,財政的に運営していくのにぎりぎりのところにきている。今でも大赤だと思うのですけれども,そういう事情もあって,回数を9減らさざるを得なかったということだと理解しております。ですから,そういった現実も踏まえながら,在り方を見直していく必要があるのだろうと思います。
 もう一つ,日吉委員のおっしゃった,法曹養成期間の短縮という点ですけれども,すごく象徴的に見えるところがあるのですけれども,よく読んで見ると,当面10校で100名程度ということであり,法科大学院生の全てがこういう形になるというふうに受け取るのは過大視しすぎだと思います。ごく一部でも,短い期間でも十分専門的能力を身につけることができる人,学力がつくような人がいるならば,そういう人に限って,ということだと思うのですね。他方で,法科大学院に対して実務法曹の方などからかねて投げかけられてきた批判として,法科大学院修了生には十分な法的知識や能力がついていない人が少なくないということが言われてきたわけですが,そういう批判がもし当たっているとするなら,期間を短くするのではなく,むしろ教育の中身をより充実させ,あるいは必要に応じて期間も長くするということも考えないといけないはずなのです。この両面をまとめますと,個々の学生の必要に応じて柔軟化を図っていくというのが,取るべき方面なのんだろうと思うのです。もちろん,制度あるいは一つの学校として統一性がなくてはいけませんので,完全な意味での個別処遇というわけにはいかないと思うのですけれど,メニューを多様化するということなのかなという感じがしています。どうぞ。

【笠井委員】 
 ちなみに,今の点ですけれども,先ほど事務局の方から飛び入学・早期卒業による入学者と,それから標準修了年限の達成率,それから司法試験の合格率等についての御紹介がありました。これを見ると,とりわけ未修者とされているグループの成績がいいように思うんですが,この制度の狙いとするところとの関係での効果というのはかなりあるのかなという気もする一方で,昨年10月の中教審の報告書でも一言言及していますが,5年一貫教育という文言を採用したことがあります。事務局として現在把握しておられる,例えば資料3-2の17ページ,あるいはそのほかのページも含めて,自大学の早期卒業者,あるいは飛び入学者がどのくらいの割合を占めているのか。その辺の事実関係について御教示いただけると有り難いと思っています。提示されているこのデータのうち,飛び入学・早期卒業の人数等がそれぞれあるわけですけれども,これは自大学の学生なのかどうなのかということです。どのくらいの割合を占めているのかということです。

【井上座長】 
 それは,お分かりでしょうか。そこまで細かなデータではないように思うのですが。

【笠井委員】 
 分かればということで。

【井上座長】 
 私の前任校での経験からすると,自大学出身の人はいなかった。私の前任校では,飛び入学とか早期卒業というのは,一般的な制度としては可能かもしれませんけど,実際には認めてきていませんので,飛び入学はなく,早期卒業で入ってきたのは,都内の大規模大学の幾つかからだけだったと思います。

【鎌田委員】 
 飛び入学・早期卒業に関して言えば,早期卒業を認めるかどうかというのは,それぞれの大学の学部が決めることですから,これを認めていない大学では実現できないし,逆に,飛び入学というのは,大学院側で認めるかどうかということで決まってきますので,学部と大学院がそれぞれどういうポリシーでやっているかによって組み合わせは多様になると思います。
 早期卒業・飛び入学の法科大学院生の司法試験合格率は割といい,しかも未修の人がいいというのは,当初は飛び入学・早期卒業の人を既修に入れてはいけないという指導がずっと強くなされていましたから,学部の中でトップの人は既修に行けなくて,それほどでない人が早期卒業できないで普通に卒業すると既修者に入れるという,非常に不思議な構造だったのが,徐々に緩んできたことによって既修の飛び入学・早期卒業の合格者数が増えてきたんだと思います。しかしいずれにしろ,全部合わせてもそんなに合格者は多くない。100人を早期卒業させるというのは,今これだけ志願者が減った中では驚異的な数字だというふうに思いますし,旧試験で現役合格者が何人いたかということを考えると,そんなことを今の学生の実力からいって本気で考えられるか疑問です。と同時に,法科大学院の理念は,いろいろな語り方があると思うんですけれども,プロセスとしての教育をしっかり受けることに一番意味があるんだと言っていたところに,しかも学部ではできるだけ多様な学修をした上で法科大学院にと言ってきたことを考えると,根本理念に反する部分が出てくるのではないでしょうか。
 ただ,そういう中でも本当にできる人はほんの数年でどんどんできていくんだから,これはほんの少数の例外的なルートを認めてもいいかなというふうには思います。ただし,法科大学院の本当の狙いは,今となってはちょっと古くさい話かもしれないんですけど,旧司法試験では通れそうもなかった人を立派な法曹に育てるというところが法科大学院の一番中心的な役割で,すばらしい人がいるというのは,多分,法科大学院が果たした役割より本人の資質の方が大きいんだと思うので,その中間的な人たちにどれだけしっかりとした法的な考え方を身に付けさせるかというのが法科大学院教育の中核部分なんだということを考えれば,こういう例外を仮に認めるとしても,今の規模で言えば100人というのはちょっと多過ぎるとに思います。
 同時に,全体としての法科大学院志願者の回復というところで一言だけ申し上げれば,法科大学院志願者がなぜ減ってきたかというものの一番大きな原因は,司法試験に合格させてくれないからだと思います。司法試験の合格者数を増やす,合格率を上げるという先ほどの議論との関係では,そもそも法科大学院制度を通じて養成しようとしていた法曹といいますか,法曹有資格者といいますか,そういうもののイメージの転換がなされなくて,今でも古典的な法曹が何人必要かで司法試験の合格者数を決めている部分がある。これもやむを得ない部分はありますけれども,少なくともここから発信するときには,無駄に終わるかもしれないけれども,やっぱり法曹像をもっと拡張することが本来必要で,そのためには古典的法曹三者からあふれるだけの合格者がいなければ実現できないわけですから,そういう部分についてはメッセージを発し続けていただきたいと思います。
 と同時に,もう一つ,法科大学院に来るとお金がかかって時間がかかるだけじゃなくて,質の向上の関係で,有力な大学はみんな厳格な進級判定,厳格な卒業判定をやりますので非常に苦労が多いし,試験に役に立たない部分の教育の強化ということがどんどん言われている。その一方で,予備試験でそれらをすり抜けられるルートを作っておいて,そういった負担が大きくてリスクの大きい方向へ来る人が増えていくことは,やっぱり難しい側面があるので,これも非常に難しい要素がありますけれども,予備試験ルートとの関連性は語らざるを得ないのではないかと思っています。それをどう語ればいいかは非常に難しいところでありますけど。

【井上座長】 
 どうぞ,片山委員。

【片山委員】 
 法科大学院の最初の理念は,確かに未修を中心として,多様なバックグラウンドを持った方々に多く入っていただいて,多様な法曹を育成するということであったことは確かですが,他方で,学部を基本的に残しているということが大前提であり,しかもその状況が10年間続いてきたわけですから,学部と一体化したというのは語弊があるのかもしれませんが,やはり学部と法科大学院との連続性のある教育をきちんと考えていく必要があると思います。今,法曹の志願者が減っているということが法学部の人気の低下ということにもつながっているいうこともありますので,こういう形で短縮化ということを議論していただくのは,私は方向性としては間違っていないと思っております。人数もこれは慎重に検討すべきことだとは思いますが,決して多いとの印象は持っておりません。
 他方,先ほど座長からも御発言がありましたとおり,柔軟化を考える時期に来ているというのは,全くそのとおりだと思います。どの世界にも優秀な人はいるわけですから,そういう人たちにはどんどん期間を短縮してということは当然考えるべきではないでしょうか。それはほんの一握りの人たちかもしれないですが,例えば法科大学院を,これを言うと皆さんに怒られますけれども,1年でいいということがあってもいいのではないでしょうか。そういう方向での柔軟化も必要だと思います。
 他方,既修,未修の概念の見直しも必要で,私の10年の経験からしますと,準既修のような概念があってもいいように思っております。今ですと6科目ないし7科目の全部の科目をきちんとしっかりやった人が既修として入るということですが,学部での教育の現状に鑑みると,6ないし7科目全部についてきちんと教えるというのはなかなか難しいところもありますし,また,法学部以外でも憲民刑の3科目をしっかり教えている学部もありますので,例えば憲民刑をしっかりやっている学生は準既修としてロースクールに迎え入れて,その後に,下の3法をしっかり教えていくというような発想もあってもいいと思っています。このように,様々な面から多様化を考えて,法科大学院の今後の在り方を検討していくことが重要ではないかと思っております。

【井上座長】 
 以前,非法学部出身の未修者の教育の在り方について,ちょっと出たアイデアとしては,せっかく異なったバックグラウンドを持って入ってくる,殊に社会でいろいろな職に就いていた人が入ってくるのであるから,そのバックグラウンドと選択科目,先端科目等の関係を整理して,一定のバックグランドを持つ人には選択科目の履修を免除し,それに替えて,むしろ法律基本科目の方に集中してもらうというようなカリキュラムの組み方があってもいい。そういったアイデアが出たことがありましたけれども,そういうことなども含めて検討していくことが必要ではないかと思います。
 どうぞ,山本弘委員。

【山本(弘)委員】 
 先ほど鎌田委員,それから少し前に磯村委員がおっしゃったことと関連するんですが,学部3年+法科大学院既修2年コースという法曹養成期間の短縮というのは,これは予備試験問題と切り離せないと思うんですね。要するに偏差値の高い法学部の優秀な学生がプロセスとしての法曹養成という理念を忘れて,とにかく予備試験に流れている。それを何とか本道に引き戻したい。そのためには,彼らの言い分として,やはり金が掛かり過ぎるということがあるので,学部3年で法科大学院既修コースに行けますよというルートを作ったらどうかという話なので,本道はやはり一部の有名法学部生が予備試験に殺到しているという現状を変えれば,この問題はほとんど雲散霧消するんだと思うんですね。だから管轄が違うからその議論はできないということは分からなくもないんですけど,これは多少本末を転倒している行き方になりかねないということは認識を共有しておく必要があるんじゃないかと思います。

【井上座長】 
 どうぞ。

【鎌田委員】 
 一言だけ補足で。短縮コースの100人というのは多過ぎるというふうに申し上げたのは,実際にそれだけの能力を備えた人がいるかということ以上に,予備試験のまさに弊害の一つで,試験に通るための勉強さえやれば,それが優秀な法曹になる道だという,こういう考え方が蔓延(まんえん)することは困るのです。ただ,本当にできる人というのは何でも器用にこなすんですけれども,そういう本当にできる人にとっても試験に通ることが全てであるかのような意識を植え付ける。そういう意識を持った優秀な人材をどんどん増やしていくということが全体に及ぼす悪影響というものを考えると,これは短縮でも,ともかく司法試験に通れるんだからいいんじゃないかという発想ですので,そうではないんだという,歯止めになるような考え方との調整ということを抜きにして考えてはいけないんじゃないかなという趣旨で先ほどそのように申し上げました。

【井上座長】 
 どうぞ,山本委員。

【山本(弘)委員】 
 これも補足ですが,やはりこういうことを制度的に導入するのであれば,やはり法学部3年間で基本法律科目についてきちっと体系的な知識が備わっているというカリキュラムが出来上がっていること。更にはその前提として,1年次ぐらいの段階から少人数で例えば社会科学の論文の読み方とか,社会科学の文章の書き方とか,そういったものをたたき込むというような教育をちゃんとやっている学校であれば,それは認めてもいいんだろうと思うんですけれども,まさに対症療法的に法科大学院の入学者を増やすためにこういうことをするというのは少し安直で,もしやるとすれば,学部のカリキュラムがどうなっているかというようなことの実態調査をきちっとやった上で議論すべきことではないかというふうに思っております。

【井上座長】 
 さっき鎌田委員がおっしゃったように,既に制度としてはあるわけで,学部の早期卒業については法学部を持っている大学自身が,早期卒業を認めてよいような体制になっているかどうかを自ら判断して決めていただくほかないのに対して,飛び入学の方は,それぞれの法科大学院の方針で決められるわけですので,そこについて一定の共通の理解のようなものを形成するという方向での議論は可能だろうと思います。これまでの実情としては,山本弘委員がおっしゃったとおりで,そうだからこそ,どこの大学とも今までそんなに出してこなかった。ごくごく例外で,本当に優秀な人だけを早期卒業させたり,大学院の方で飛び入学として採ってきたわけですが,我々としてもそこのところは内容に踏み込んで議論をする必要があると思います。どうぞ。

【土井委員】 
 今の養成期間の短縮の話ですけれども,一般論としては,優秀な学生の修業期間を短縮することは時間的・経済的負担の軽減を図ることになりますので,それがおかしいことはなく,そういう道を開くということは,それでよろしいんじゃないかと私も思います。ただ,その前提は,通算5年の学修で,やはり司法試験に合格して法曹として活躍するための能力をきちんと修得してもらうということが前提になるわけです。期間短縮した結果,能力を十分に修得できないままに修了して,何年も司法試験浪人をするようでは,これは本末転倒だと思います。
 したがって,最初の立ち上げの段階での規模感について,何か目安を示すのであれば,10校程度で100名程度という話だと思いますが,それは一つの考え方かもしれません。ただその後は,実証的な能力評価に基づいて拡大していくようにしませんと,無理に目標を設定して,その実現を急ぐと,結局,教育課程に対する不信を招いて,何やっているんだということになります。これでは,逆に制度の定着にマイナスの効果をもたらすことになりますので,いつまでにどの程度の規模を目標とすべきかという問題設定になっていますけれども,ここのところは慎重に検討すべきだろうと思います。
 それから,先ほど笠井委員から質問という形で出ましたが,ここのところ,やり方によっては自大学法学部との関係がかなり問題になってきます。自学部との5年一貫コースというのをもし設けるとなれば,それは学生にとっては早い段階から法科大学院へ進学を想定して集中した学修ができるという,メリットがないわけではないのですが,しかし法科大学院の入学者選抜制度において,逆に閉鎖性を招くという問題もありますので,ここのところもやはり慎重に検討をしていただいた方がいいんじゃないかと思います。
 以上です。

【井上座長】 
 どうぞ。

【磯村委員】 
 短く幾つか申し上げたいと思いますが,今の2ページのところの2.の三つ目の白丸のところですけれども,法曹志願者の減少に歯止めをかけ,というのと,法科大学院志願者数の増加を実現するというのは同じ問題ではないということを強く意識する必要があって,全体の法曹志願者が社会の中でどれぐらい減っているかという問題と,法科大学院志願者の減少の問題はかなり性質の異なる問題であると思います。
 それから,二つ目の法曹養成期間の短縮について,今問題となっている数値目標はどうかということ以前の問題として,学部3年終了後に法科大学院に進学させるというときに,その能力の判定をどの時点で行うかという問題があります。例えば法科大学院の入学試験を1月頃に実施するとしても,その時点で評価できる学部成績というのは,学部における3年終了時ではなくて,3年の前期までの成績ということで,その時点で本当に能力の判定を的確に行えるのかという問題があるように思います。
 それから,同じ数値目標で100名が適切かどうかということは,それぞれ認識が違うかもしれませんが,10校というのは,ごく限られた法科大学院についてのみこの制度を認めていいというようなメッセージとして受けとめられることになりかねないので,それは少し違うのではないかというように思いました。
 最後に,先ほど上田委員がおっしゃった問題に戻ってくるのですけれども,適性試験の在り方等を考えるときに,適性試験が必要であるという前提で議論すること自体を見直してはどうかというのが上田委員の御発言の趣旨であったのではないかと思います。現在,地方で受けられる方は,会場がどんどん減っているので,例えば適性試験を受けるためにも高額の費用を負担する必要がある。それに対して,現在の適性試験が法科大学院の入学試験において優秀な人材を選抜するための資料としてどこまで役立っているかというと,極めて例外的に成績が悪い者を落とすということ以上の機能を持っていないのではないか。そうすると,現在の制度設計の在り方そのものを見直すということが御提案の趣旨であったと思いますし,私はその御提案に賛成したいと考えています。

【井上座長】 
 分かりました。それでは,木村委員。

【木村委員】 
 今の磯村先生のにちょっと関係するんですけれども,法曹志願者の減少の問題とロースクールの問題は分けて考える必要があるというのは,そのとおりだと思いまして,その点に関連して,一つ目の丸の3行目の「制度の安定化に向けて」という言葉があるんですけれども,ここだけ読んでしまうと,何かロースクールの制度の安定化に向けてみたいに読めてしまうんですけれども,実際には,その他のところに書いてあります制度全体の整合性にも留意してとありますように,法曹養成制度を維持するという,全体としての制度を維持するということに向けられているのではないかというふうに思います。一つ目の丸を単独で読んでしまうと,ロースクールの生き残りのためにみたいに読めてしまうのはちょっとまずいのではないか。むしろ本質的な問題は,法曹志願者全体が激減しているという,いわゆる旧司法試験時代から比べても,500人合格の時代から比べても物すごく減ってしまっているというのは,法曹界全体にとって非常にマイナスだというふうに,それをもうちょっとメッセージとして強く出すべきじゃないかというふうに思います。

【井上座長】 
 旧司法試験のころと比べるのはなかなか難しいところがあり,あのころは長年にわたり未合格の受験者が累積しており,その人たちを含めた数が志願者数でしたから。
 もう一つ,それじゃ大貫委員。

【大貫委員】 
 短く。先ほど法曹養成期間の短縮の問題で,山本委員,あるいは鎌田委員がおっしゃったように,これは例外的な,端的にいうと予備試験との見合いでの議論なのか。それとももう少し拡大していく話で,法科大学院制度の根幹に関わるような検討をしなきゃならないのかということをもう少しはっきりさせた方がいいのではないかと思います。私は,これは例外的な措置であって,この恩恵を被る人は,鎌田委員は100名でも多いとおっしゃったんですけど,確かにこの程度だと思います。ということは,要するにほとんどの法科大学院生は恩恵を被らないわけですね。法曹養成期間の短縮ということが法科大学院志願者の拡大にはつながらないということだろうと思います。
 そうしますと,別の法科大学院志願者の拡大のための方策を考える必要があるのかもしれません。例えば,ここで議論しないのかもしれませんけど,ギャップタームの問題とか,そういうものの方が,法科大学院生にとっては期間の短縮という意味では大いに意味があるのではないかと思っています。その検討はしないということなのでしょうか。これは質問です。

【井上座長】 
 しないということではありません。しろという御提案があり他の皆さんも同じ意見であるならば,どこかに盛り込むことも考えられますが。

【大貫委員】 
 是非,検討していただければと思います。

【井上座長】 
 ただ,ギャップタームの問題は法科大学院制度だけの問題ではなく,むしろ司法試験との関係が大きいものですから,どこまで踏み込めるかですね。議論していけないということではないでしょうから,盛り込むかどうか考えるということにしたいと思います。
 3のその他を含めて御意見を頂ければと思いますが,自分から言い出すのは気が引けるのですけれども,前からテーマには挙がっていたのですけれども,法科大学院の教員の養成・確保の問題です。少し先のことを考えると,有効な方策を採らなければ本当に深刻な状況になるのは必至ですので,「その」のところで正面から議論をし,何らかの制度的あるいは措置的な対応をすべきではないかと思います。
 例えば,カリキュラムの問題として,法科大学院に在籍しながら研究論文を書ける。それを何か選択科目などの単位と置き換えることを可能にするとか,あるいは,研究者養成の大学院とのダブル在籍を認めるとか,いろいろなことが考えられると思うのですけれども,そこも検討課題にしていただければなというふうに思います。
 どうぞ。

【有信委員】 
 今の話とも少し関連するんですけれども,現在,大学院部会の方でかなり深刻に議論しているのが,いわゆるドクターコースに行く学生が漸減してきているという問題です。これは先ほども議論に出ましたけれども,大学院重点化で大学院の定員を大幅に増やしたために,特に博士課程の定員を充足するために優秀な学生が確保できていないと,こういう不満が教員側からあるわけです。
 全体的に見ると,博士課程を修了した人のいわば将来に対するメリットがよく見えない。これは法曹で法曹資格を取ったからといって将来がよく見えないということともダブってくるわけですけれども,実際に本当にそうなのかというのはよく冷静に考えてみる必要があると思います。
 現実に毎年60万人が大学に入っています。そのうち約7万人が修士課程に進んで,博士課程に進んでいるのが一万五,六千人です,毎年。一方で,いわゆる旧七帝大と言われる旧帝国大学の合格者は毎年18,000人ぐらいいます。それ以外にもいわゆるトップ校と言われる人たちの大学の合格者数を加えると,はるかに2万人は超えてしまうでしょう。ということは,いわゆる学力試験的にいい成績をとるという観点だけで見れば,それだけ優秀な学生数はいるわけですね。先ほども出ましたけれども,試験でいい成績をとる人たちが必ずしも優秀かどうかというのは,別途議論する必要があると思いますけれども,ある意味で60万人の中にそれなりのポテンシャルを持った人たちがいるので,この人たちをうまくそれぞれの専門性に向けてガイドすれば,今のような問題はかなり減る。
 一方で,社会人は極めて少ないわけです,今の日本の大学,大学院においては。社会人も早々に学位を取らずに社会に出て活躍しながら,やはり学位がないために様々な不利を被っている人たちもいる。こういうことを考えると,決してポテンシャル的に人材がいないわけではない。だからこの人たちをどういうふうに適正にうまく導いていくかということが重要で,ここに書いてある法曹の魅力をきちんと発信していくというのも,そういうことになると思います。
 例えば,すみません,ちょっと長くなってしまいましたけれども,手先が不器用でも数学ができるからといって医者になるというのは,これ,本当に日本にとっては不幸なことなんですね。ましてや外科医なんかになってしまわれると,日本人にとってはとても大変なことになってしまう。ところが,現在の風潮はそういう風潮になってしまっているという部分があるわけです。ですから,これは大学人というか,大学としても適正に学生をうまく指導,誘導する必要がありますし,やはり将来に向けてのロールモデルをきちんと作って発信していく。それから,法曹に関しても,将来的にはもっともっと活躍する場はあるんですよね。現在,法曹でない,素人がやっているために,日本の企業にせよ,様々なところが不利を被っている例というのは山のようにあるわけですから,是非そこの点は重点的に議論していただければと思います。

【井上座長】 
 先ほど1点言い忘れましたけれども,後継者養成にとってはキャリアパスがはっきりしているということが非常に大事で,今,法科大学院の教員に採用されるためには,原則として5年の教育歴が必要とされているのですけれども,これは若い人が就職するのに大きな障害になっていまして,大学院で博士号を取ったばかりの人は採用してもらえないので,学部で採ってもらって,それで育ったと思ったら引き抜いてこなければならない。学部とロースクール両方持っていて,その両者の間で人事がうまく連携したり回っている大学はいいかもしれないんですけれども,法科大学院に独立性を強く持たせているところもあって,そういうふうには人事が動かないことが多い。そうすると,せっかく優秀な若い人がいても,就職先がなかなか見つからない。そういうことが分かるものですから,大学院などにも志望者がなかなか集まりにくくなっている。そのような実情にあり,先行きが非常に懸念されますので,例えば,法科大学院の教員資格についても一層の柔軟化を図るなどしていかなければならない。もちろん,安易にしてしまうと,教育力の乏しい人を教員に採用してしまうおそれがあるので,当初から非常に厳しく考えられてきた。その点注意が必要ですけれども,そろそろその辺も実態を踏まえて変えていった方がよいのではないかなというふうに思っています。
 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【片山委員】 
 2ページの一番下の魅力の発信のところで,基本的には,優れた先導的な取組というのは,各法科大学院に全て委ねますということですが,果たしてそれでいいかどうか若干の疑問を感じています。要するに各法科大学院で幾ら一生懸命取り組んでも,なかなかうまく芽が出ないといいますか,要するに新しく求められている法曹像というのはどういうもので,そのためにどういう教育をロースクールの中でやっていくべきかということを,再度きちんと議論をし直して,各ロースクール任せということではなくして,中教審のような場である程度議論していくということが必要ではないかと考えております。例えば,グローバルな法曹の養成はこれからも必要であるし,そこではむしろ人手が足りないということを多くの関係者の方がおっしゃっておられます。そのための教育をロースクールの枠組みでやるためにはどうすればいいかということも,ロースクール任せではなくして,議論ができればと思っております。

【井上座長】 
 どうぞ。

【鎌田委員】 
 今の点とも関連するんですけれども,資料4で配られた「公的支援見直し加算プログラム」で,教育の内容について早稲田大学は大変おほめを頂いたんですけれども,少なくともこれが今年度の入学試験合格者が入学をする率を向上させたかというと,全く作用していない。つまり,受験生はどれだけいい教育をしてもらえるかを期待しているよりも,司法試験に通れる可能性がどこが高いかということが全ての行動の基礎になっているというところに法科大学院が今抱えている問題が象徴的に表れていると思います。こういうことを時間を掛けて発信していけば,法科大学院制度というのは本来何を求めているのかということが徐々に浸透していくのかなという期待もありますけれども,それと予備試験組の合格者増とどっちが先なのかという大変シビアな競争をやっているんだろうと思います。
 ついでに,本当はこんなところで言うべき課題ではないんですけれども,公的支援の見直し等も含めて,法科大学院生の経済的負担の軽減につながっていくことではあるんですけれども,公私間格差をもうちょっと何とかしてもらえないか。厳密には分からないですけど,学生1人当たりの支援で言えば,私立大学が150%に増額した額よりも,国立大学で50%減額された方が多いのではないかと思います。私学と国立ではお金の出所が違うから,相互に影響はしないということかもしれないんですけれども,プロフェッショナル・スクールに対する国の関与の在り方ってどうあるべきなのかという観点から是非工夫をお願いしたい。授業料減免についても予算規模に大きな差があるわけで,この点も御検討をお願いしたい。

【井上座長】 
 お立場はよく分かります。

【鎌田委員】 
 よろしくお願いいたします。

【上田委員】 
 1つだけ,先ほど座長がおっしゃった教員の問題なんですが,特に地方の国立大学のロースクールなんかでは,法科大学院を担当できる教員を採用するのに本当に苦労しています。他方で優秀な若手の教員というのはおります。そうした者が積極的にロースクール教育に携わっていけるような方策というのは是非考えていただきたいと思っています。よろしくお願いいたします。

【井上座長】 
 土屋委員,お願いします。

【土屋委員】 
 1つだけ簡単に。法科大学院でよく分からない部分というのは,卒業生の進路なんですよね。実際,ここの法科大学院に行ってどういう分野に就職し,どういう分野で活躍しているかというのが見えてないので,これから法科大学院に進もうと思う人にとってはイメージが描けない。制度が発足してかなり時間がたってきたところなので,修了生の進路を本格的に調べてみることをやってみたらどうでしょうかね。こういう方面に進んでいる人たちがこれだけいるんだというようなことが見えれば,法科大学院で自分がキャリアを得ることができるということにもつながっていくでしょうし,何かそのようなことをする時期が来ているのではないかなと思います。ここでは魅力の発信ということになっているけれども,魅力だけじゃなくて,実績も発信するということが必要ではないか。これは加算プログラムの審査をしていて感じたことなのですが,掌握できていない法科大学院はかなり多い。そこのところを改めていただけたら,また違うところが見えてくるかなという気がします。
 以上です。

【井上座長】 
 法曹になった修了生については,どこの法科大学院も把握していると思いますが,それ以外の職に就いた人となると,大学によってばらばらだと思います。多くの法科大学院が広報活動としてはかなり努力して発信するようにしてきており,冒頭に御説明のあった法科大学院協会等によるキャンペーンなどもその延長線にあるわけですけど,おっしゃった面をより組織的に調査をし,まとめて発信すべきだという御意見だと承りました。
 はい,どうぞ。

【磯村委員】 
 認証評価に関わる問題で,先ほど専任教員の問題が出てきましたので,ちょっと議事録に残しておく必要があると考えて発言をしたいと思います。専任教員については,確かに一定の教育経験が必要であるというのは原則なんですけれども,現在の認証評価のルールでは,専任教員のうちの2割については研究業績等から教育能力があるとされ、授業を担当するにふさわしい科目適合性が認められれば,2年の教育経験は必要ではないというルールになっています。その認識が十分でないとすると申し上げておく必要があると感じました。

【井上座長】 
 そこが十分周知されておらず,実際にはなかなか柔軟な対応となっていないのが実情だと思いますし,2割でいいのかどうかということも検討の余地があるかもしれません。いずれにしろ,そこのところをより柔軟化しないと動いていかないんじゃないかなというふうに思います。
 ほかにいかがでしょうか。そろそろ時間が来ましたので,本日はこのぐらいでよろしいでしょうか。
 委員の皆様から頂きました御意見等も踏まえまして,事務局において,更にこのペーパーを整備することをお願いしたいと思います。
 本日予定した議事は以上ですけれども,なお1点,共通到達度確認試験について御報告があるということです。

【真保専門職大学院室専門官】 
 失礼いたします。共通到達度確認試験につきましては,前回の本特別委員会におきまして,第1回の試行試験の結果について御報告をさせていただいたところでございます。その後,先月の15日に,ここにおられます山本和彦先生を主査といたしまして,文部科学省に設置されております調査検討会議において,今年度の試行試験の在り方などについて御議論いただいたところでございます。資料5-1,5-2を用意させていただいてございますので,御覧いただければと思います。
 5月の会議で議論いただいたポイントといたしましては,1点は,当面の実施体制をどうしていくかということでございます。第1回の試行試験では体制が不十分であったのではないかというところで課題として出てきておりまして,共通到達度確認試験は他学部などで行われている教養試験を参考に,どのように発展させていくかというところがそもそもの出発点でありましたが,当面の間については文部科学省も体制の構築に関してしっかりと関与していくということで,5-1にございます,四つのフェーズがございますが,二つ目にあります試行試験の実施方針の策定というところ,ここについて文部科学省で運営する会議体を組織いたしまして,実施方針や問題作成者の推薦,こうしたものを実施要綱にまとめて,大学の方に通知をしていくということで考えられないかというようなことで御議論いただきました。その点についてが1点でございます。
 もう1点については,資料5-2にございます平成27年度の試行試験の在り方をどのようにしていくかという基本的な方向性(たたき台)を事務局から提示し,御議論いただいたところでございます。先月については,主に各論について,1から4まで並べて御議論いただいたというところでございます。特に,2にありますように,試験の難易度,出願範囲といったところで,1年生と2年生の問題を変えていくのか,同一の問題でやるのかといった点を含め,そもそも4回トライアルを予定している中の2回目として,どの程度までの試行を実施し,どういう課題をあぶり出していくべきかという根源論から御議論いただくと。そういったものを平成27年度の基本的な方向性としてまとめていく必要性があるのではないかというようなことでの御議論いただいたものというふうに認識しております。
 こうした部分がございますので,事務局の方で当面の実施体制として会議体の案をまとめるとともに,平成27年度試行試験の方向性をもう少しブラッシュアップして,次回7月に予定されております調査検討会議の方にもう一度お出しをして御議論いただく予定でございます。試行試験は年度末に予定をするところでございますが,作問などになるべく早く入れるように実施体制や試行試験の在り方,実施方針について,今月,来月をめどに集中的に議論いたしまして,方針を決めていきたいというふうに考えているところでございます。
 以上でございます。

【井上座長】 
 どうもありがとうございました。また今後も経過について逐次報告していただければと思います。
 それでは,今後の日程等について,事務局の方から御説明をお願いします。

【塩田専門職大学院室長】 
 次回の日程につきましては,恐縮ですけれども,また改めて御案内させていただきたいと思いますので,どうぞよろしくお願いします。

【井上座長】 
 本日の会議はこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。

 

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(高等教育局専門教育課専門職大学院室)