法科大学院特別委員会(第59回) 議事録

1.日時

平成26年2月4日(水曜日) 10時30分~12時

2.場所

文部科学省中央合同庁舎7号館東館3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. 法科大学院教育の改善・充実について
  2. その他

4.出席者

委員

(臨時委員)有信睦弘、井上正仁、土井真一の各委員
(専門委員)磯村保、笠井治、樫見由美子、片山直也、鎌田薫、木村光江、椎橋隆幸、土屋美明、田中成明、日吉由美子、松下淳一、松本裕の各委員

文部科学省

吉田高等教育局長、常盤私学部長、中岡高等教育局審議官、牛尾専門教育課長、今井専門職大学院室長、佐藤専門教育課課長補佐

5.議事録

【井上座長】
 それでは、所定の時刻ですので、第59回中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会を開催させていただきます。
 まず、事務局の方で異動があったということですので、御紹介をお願いします。

【今井専門職大学院室長】
 それでは、失礼いたします。事務局の異動がございましたので、その御報告をさせていただきます。
 平成26年1月17日付けでございますが、布村前高等教育局長が御退任をし、その後任として吉田局長が就任をしておるところでございます。
 なお、本日は所用のため遅れて参加予定となっているところでございます。
 また、同日付けの異動によりまして、小松前私学部長が研究振興局長に就任し、その後任といたしまして、常盤私学部長が就任をしておるところでございます。

【常盤私学部長】
 1月17日付けで私学部長に異動いたしました。
 法科大学院の関係で、非常に厳しい環境の中で、我々、行政側としても苦労してきているわけですけれども、先生方にいろいろ御指導いただいて、ありがとうございました。今後はまた私立大学の担当になりますので、引き続き御指導よろしくお願いいたします。

【今井専門職大学院室長】
 それでは、続きまして、同日付けの異動によりまして、常盤前大臣官房審議官の後任といたしまして、中岡大臣官房審議官(高等局担当)が就任をしておるところでございます。

【中岡高等教育局審議官】
 中岡でございます。
 昨年の7月から高等局担当審議官として別の課の担当でございましたけれども、このたび法科大学院の担当となりました。よろしく御指導賜りたいと思います。お願いいたします。

【井上座長】
 ありがとうございました。よろしくお願いします。
 それでは、議事の方に移りたいと思います。
 まず、事務局の方から配付資料の確認をしてください。

【今井専門職大学院室長】
 失礼いたします。
 それでは、議事次第を御覧いただけたらと存じます。資料1といたしまして、前回第58回の議事録の案を御用意させていただいております。内容を御確認の上、お気付きの点がございましたら、事務局までお申し出いただけたらと存じます。資料2といたしまして、第57回、58回法科大学院特別委員会における主な委員の意見(まとめ)として資料を整理させていただいております。資料3といたしまして、今後検討すべき法科大学院教育の改善・充実に向けた論点整理(案)として資料を用意させていただいているところでございます。そのほか、参考資料といたしまして、組織見直し促進に関する検討ワーキング・グループ、また、共通到達度確認試験等に関する検討ワーキング・グループの検討経過報告書、公的支援の見直しの更なる強化策についての公表資料、さらには、前回配付させていただきました様々なデータ、追加データに関する資料を、改めて配付させていただいているところでございます。
 御確認の上、もし不足等ございましたら、お申し出いただけたらと思います。
 以上でございます。

【井上座長】
 では、議事に入りたいと思います。
 昨年11月と12月に開催されました本特別委員会におきまして、今後の法科大学院教育の改善・充実の検討に向けて、二つのワーキング・グループの検討経過報告を頂いた上、事務局が行った調査結果報告も踏まえて、皆様の間で様々な角度から御議論いただいたところであります。
 本日の会議では、この2回の自由討議で皆様からお示しいただいた御意見を改めて整理させていただくとともに、今後、本委員会として検討すべき改善・充実方策に関する基本的な方向性を議論するために、事務局の方で論点整理のたたき台を用意してもらっています。
 そこで、まず事務局の方より、その中身について説明していただき、その後、それも踏まえて意見交換をさせていただければと考えます。
 それでは、お願いします。

【今井専門職大学院室長】
 失礼いたします。それでは、事務局から資料の説明をさせていただきたいと存じます。
 まず資料2でございます。資料2につきましては、前々回、前回の法科大学院特別委員会におきまして、先生方から頂きました主な意見をまとめさせていただいたところでございます。資料は全部で4ページにわたっておりますが、それぞれ課題ごとに整理させていただきまして、大きく四つの課題に整理させていただいております。一つ目は、組織見直しの促進方策についての御指摘、二つ目は、共通到達度確認試験等を含めて、教育の質の向上に対して頂いた御指摘を整理しております。三つ目といたしましては、その他総合的な改善方策として頂いている御指摘、最後に、その他の事項として頂いた指摘を整理させていただいておるところでございます。一応この大きな四つの論点に整理させていただいた上で、それぞれについて整理した御意見の分布の御説明をさせていただけたらと存じます。
 まず1ページ目を御覧いただけたらと思います。1ページ目でございますが、大きな柱の一つとして、組織見直しの促進方策について、御指摘を頂いたところでございます。
 内容的には、(1)にございますように、まずは組織見直しの目標の扱いについてどう考えていくかというところの御指摘でございまして、例えば、ここにございますように、司法試験の合格率、また、入学定員といった目標の数値についての扱いは、これまでの経緯で目標が達成できず失望感が生まれるなどの状況もあったということで、数値目標の扱いについては、注意が必要なのではないかという御指摘があったところでございます。
 また、二つ目のポイントといたしましては、公的支援の見直しの更なる強化につきまして、御指摘を幾つかいただいております。
 一つ目の御指摘といたしましては、私立大学の状況などを踏まえますと、公的支援の加算の上限というものについては引き上げていかないと大変厳しい状況があるので、これから理想的な教育をしていくところについては、より励みになるような形でそれを運用していくべきではないかという御指摘を頂いたところでございます。
 また、二つ目でございますが、その加算の取扱いにつきましては、これから各大学からの提案の中では、教育プログラム作成、カリキュラム変更といった、外に見えやすい形での取組が提示されるであろうと思われるが、大事なのは中身の教育をどう良くしていくのかというところであって、そのチェック体制、審査の工夫というものをしっかり考えていくべきではないかという御指摘を頂いたところでございます。
 そして、三つ目でございますが、認証評価の見直しについて、幾つか御指摘を頂いております。
 一つ目の黒ぽつにございますように、認証評価につきましては、この制度を入れていく際には、相当に様々な議論があった。設置認可や受験資格と結び付けることを今の仕組みの制度設計当時に考えていったが、いろいろ難しく、今のような形になっているということで、今回、様々改善策を考えていく際にも、よく検討していかないといけないだろうといった御趣旨の御意見を頂いたところでございます。
 また、認証評価の見直しの二つ目、三つ目は、教員の資格等についてでございますが、例えば、二つ目の黒ぽつにございますように、教員の資格について、認証評価の中で問うていくときには、やはり三つ認証評価機関があることを前提に、その間での運用についてどう扱っていくべきなのか、調整が必要だろうという御指摘を頂いたところでございます。
 また、三つ目の黒ぽつにございますように、これは個別具体の話になってまいりますが、例えば、教員の資格等の扱いの中で、法学未修者の学修サポートのために、若手の法曹、弁護士などを教員として迎え入れたものの、認証評価ではそこについて不適格という指摘を受けているような状況もあるということで、各大学でいろいろと創意工夫をしているものについて、認証評価機関がその足を引っ張らないような形を考えていくべきではないかといった御指摘を頂いたところでもございます。
 その同趣旨といたしまして、2ページ目でございますが、その教員の資格に関わらず、国際プログラム展開、夜間開講・地域配置など、積極的に改善をしていこうとしている法科大学院に冷や水を浴びせないようなことを考えていくべきではないかといった御指摘も頂いたところでございます。
 また、最後の黒ぽつにございますように、認証評価の結果と、例えば、今文部科学省でも進めている公的支援の見直しの結果は、それぞれ判断基準が異なるとしても、そこの間での判断が似たような形になることが望ましいのではないかといった御指摘も頂いているところでございます。
 以上が、組織見直しの方策についての、先生方から頂いた意見の整理をさせていただいたものでございます。
 続きまして、二つ目の大きな柱といたしまして、2ページ目の真ん中からでございます。共通到達度確認試験(仮称)の基本設計など教育の質の向上方策についての御意見を整理させていただいております。
 大きくは、まず一つ目でございますが、(1)共通到達度確認試験(仮称)の基本設計の在り方についてでございます。
 まず一つ目の黒ぽつにございますように、この確認試験を導入するに当たっては、具体的に何が教えられているかということだけでなくて、それが学生に身に付いているように教えられているのかといった、もう少し深い面でも確認ができるように考えていくべきではないかという御指摘を頂いております。
 また、二つ目の黒ぽつにございますように、確認試験については、短答式的な勉強よりも、本来、法科大学院で身に付ける法的思考力、そういったものが身に付けられる方が重要であり、そういったものが確認できるような試験を考えていくべきではないかという御指摘を頂いているところでございます。
 また、三つ目、四つ目の黒ぽつでは、現在政府の方で検討が今後進められていくことになります司法試験の短答式試験とこの確認試験との関係につきまして、短答式試験の免除という議論が進んでいけば、それは非常に望ましいことになっていくのではないかという御指摘も頂いておりますが、また、四つ目の黒ぽつにございますように、例えば、法学既修者に対して、どのタイミングで確認試験を受けさせていくのかについては、慎重に検討していく必要もあろうかということで御指摘を頂いており、この短答式免除との関係についても、しっかりと検討していくべきではないかという御意見があったところでございます。
 また、(2)といたしまして、法学未修者が基本的な法律科目を重点的に学ぶことができる仕組みについての御指摘といたしましては、一つ目の黒ぽつにございますように、先ほども少しございましたが、その法学未修者教育の充実を行うためには、認証評価機関での、例えば評価の基準の置き方とか評価の考え方、その連動をしっかり考えていく必要があるのではないかという御指摘を頂いたところでございます。
 また、二つ目の黒ぽつにございますように、現在、共通到達度確認試験等に関する検討ワーキング・グループからの検討経過報告では、法律基本科目の授業時間数を増やすということの方向性での改善をすべきではないかという報告はありますが、それは学生の予習・復習が増えることになる点についても配慮が必要ではないかという指摘を頂いているところでございます。
 また、三つ目でございますが、学生の適性に応じ法曹以外への進路を目指す者に対しての取組の充実という観点で、現在、法学未修者の多くが法学部出身者になりつつあるような中で、3ページ目の上の方でございますが、やはり本来目指していた社会人や、また、他学部出身者に対して、安心して法科大学院に入ってこられるよう、特化した教育システムというものについても考えていく必要があるのではないかといった御指摘を頂いているところでございます。
 ここまでが二つ目の教育の質の向上方策について、これまで頂いた意見の整理としてさせていただいたところでございます。
 そして、3ページ目の上でございますが、これらの二つ以外にも、その他改善方策について御指摘を頂いているところでございます。
 まず(1)でございますが、時間的コストの短縮ということでございます。現在、飛び入学や早期卒業という制度を使うことができるわけでございますが、例えば、それを推進していく際に、例えば学部でどのような単位を取ったかということについて、要件として考えていく必要があるのではないかということでございます。御懸念としては、例えば、教養科目だけ必要な単位をそろえて、あとは法律の勉強ばかりしていくということは、そもそもは避けていくべき状況だという認識もあったということもありますので、そのあたりにも配慮していく必要があるのではないかという御指摘もありますが、一方で、養成期間が短ければ駄目だ良くないということはないであろうと。現在の学部での学びなどもしっかりやっているということであれば、例えば語学を含めて、学生は今かなり幅広い教養を身に付けているというふうにも思われるので、こういったことも含めて、時間的コストの短縮を考えていくべきではないかという御指摘を頂いたところでございます。
 また、三つ目の黒ぽつにございますように、仮に飛び入学で入学した方が法科大学院を中退すると、学士号が授与できないといったこともあるので、そういったことも含めて、どういう仕組みがあり得るのか検討していく必要があるのではないかという御指摘も頂いたところでございます。
 また、(2)でございますが、法律実務基礎教育の充実の観点で、いろいろと御指摘を頂いているところでございます。
 一つ目、二つ目の黒ぽつは、現在、政府全体での検討の中では、司法研修所における実務基礎の充実を図るということで、導入型集合修習の議論がされているということでございますが、こういったことについて、法科大学院との役割分担をしっかりと考えていかないと、法科大学院教育に与える影響もありますので、しっかりと考えていくべきではないかという御指摘を頂いたところでございます。
 また、三つ目の黒ぽつにございますように、そういったことを含めて、法科大学院で行う実務基礎教育の充実と実務修習との関係、連続性について配慮し、実務側と対応しながら考えていくべきではないかといった御指摘を頂いているところでもございます。
 また、四つ目の黒ぽつにございますように、実際に職業として大学教員が例示として挙がっておりますけれども、就職した後いろいろな問題を起こすこともあるということで、現在、限られた部分での評価だけで採用されている側面もあるので、それを翻って法曹に結び付けていくときには、例えば、法的な専門知識に加えて、法曹として備えておくべき教養をしっかり育てて、採用の在り方を変えていく、もしくは、そこにつなげていく。、そういったことを考えていくべきではないかといった御指摘を頂いたところでございます。
 そして、4ページ目でございますが、(3)といたしまして、修了生の活動領域の拡大について、幾つか御指摘を頂いているところでございます。
 まず一つ目の黒ぽつには、法曹資格は持っていないが法科大学院の修了生として卒業していく者についての位置付けを定義し直す、そういったものをしっかり捉え直して、積極的な評価ができるような枠組みを議論していく必要があるのではないかといった御指摘を頂いております。
 また、二つ目、三つ目の黒ぽつでは、実際に行く先としての企業での捉え方の御議論でございますが、例えば、企業においては、法科大学院生の採用はかなり合理的に行われているという側面もございますので、例えば法科大学院生の今のスケジュール感で申しますと、卒業時期でございますとか、司法試験、合格発表の時期を考えていくと、今行われている企業での採用活動と合わない部分があるということをどう考えるのかというのがあるのではないかという指摘を頂いております。
 また、企業側からしてみると、内定を出しても司法試験に合格したら辞退していく、あるいは、逆を申し上げると、司法試験に受からなかった学生を採用するということも難しいのではないかというような御指摘もあったところでございます。ただ、一方、学生の立場からいくと、今度は、やはり司法試験を目指している学生でございますので、大学として組織的な就職支援というものをしても、なかなか参加が得られないという実態もあることを踏まえて考えていくべきではないか、そういった指摘を頂いているところでございます。
 そして最後、(4)でございますが、継続教育の充実の観点でございますが、御指摘といたしましては、そういったことに法科大学院が積極的に取り組むことは賛成であると。その例示といたしまして、例えば、展開・先端科目をもっと充実していくというところの中で、例えば、法科大学院だけで扱うということではなくて、必要な一部分はしっかり法科大学院で扱うが、司法試験後に法曹リカレントとして残りの部分を扱うといった役割分担ということも考えられるのではないかといった御指摘を頂いたところでございます。
 以上が法科大学院の教育の改善・充実について、頂きました御指摘を整理させていただいたところでございます。
 なお、その他として、司法試験、特に予備試験について幾つか御意見がありましたので、その点についても一応整理させていただいております。
 ここにございますように、予備試験について、現在法科大学院の在学者がかなり多く受験しているという事態を重く受けとめていく必要があるのではないかという御指摘がございました。
 また、先ほど申し上げました時間的コストの短縮、実務基礎教育の充実、活動領域の拡大というのは、予備試験の在り方と密接に関連しているのではないかという御指摘がございました。
 また、今の予備試験の受験者が若年層に偏っている。それは大学学部在学生、もしくは法科大学院在学生の受験者が増えている、そして合格者も増えているという中で、法科大学院側で受ける影響として、予備試験前に法科大学院生の授業欠席が多くなるといった、教育に与える影響というのもあるのではないかということで、その在り方についてよく考えていただく必要があるのではないかといった御指摘があったということでございます。
 ここまでが、前回、前々回の法科大学院特別委員会において頂いた御意見を整理させていただいたものでございます。
 続きまして、資料3を御覧いただけたらと存じます。資料3でございますが、今後検討すべき法科大学院教育の改善・充実に向けた論点整理(案)として資料を整理させていただいております。先ほど資料2で御説明させていただきましたように、先生方から頂きました意見を踏まえまして、今後この法科大学院特別委員会で、どういった方向性で法科大学院教育の改善・充実の議論をしていくべきなのか、その御議論を頂くために、事務局からたたき台を整理させていただいた次第でございます。その資料の内容について御説明させていただきたいと存じます。
 まず1ページ目の上段でございますが、まず方向性について整理させていただいたところでございます。本特別委員会として、昨年7月の政府の法曹養成制度関係閣僚会議決定を踏まえ、今後の法科大学院教育の改善・充実に向けた検討を実施するに当たり、以下に掲げるような基本的な方向性を前提に、検討すべき事項を整理し、議論していくことが必要ではないかと考えられるところでございます。
 そのポイントは、小さな黒ぽつ二つに整理させていただきましたが、一つは、法曹有資格者の活動領域の拡大、また、今後の法曹人口の在り方とともに、法曹養成制度の在り方として、経済的支援の在り方、法科大学院、司法試験、司法修習についての政府全体の議論を前提に考えていくことが必要だろうということ。
 また、二つ目のポイントとしては、その中でも、法科大学院につきましては、まずは今後目指すべき法科大学院の姿を念頭に置きながら、入学定員・実入学者数の動向、司法試験の合格状況などの現状分析を行った上で、規模の適正化、教育の質の向上、さらには、優れた先導的な取組を行う法科大学院の支援、こういった議論に加えまして、先ほどの意見にも整理させていただきましたように、養成に係る時間的コストの軽減、実務基礎教育の充実、継続教育の充実、職域拡大への関与など、総合的な検討を行っていく必要があるのではないかということで整理させていただいております。
 そういった基本的な方向性を前提といたしまして、さらに大きく検討事項を二つに分けさせていただいているところでございます。
 まず一つ目の検討事項1は、資料の真ん中からでございますが、今後目指すべき法科大学院の姿についてとして、三つの観点で整理させていただいております。
 まず一つ目は、これはある意味総論的なことでございますが、(1)でございます。現行制度を基本とした法科大学院を中核的機関とする安定的な法曹養成制度の確立を目指すということでございます。
 そのためには、一つ目の黒ぽつにございますように、その改革の基本的な方針としては、当面、公的支援の見直しの強化策などをはじめとした「運用上の取組の徹底」を通じて、法科大学院の組織見直しに向けて自主的・自律的な経営判断を促すとともに、教育の質の向上に取り組むことを基本とすべきではないかと考えられるということで整理をさせていただいたところでございます。
 そして、二つの観点から、(2)、(3)でございますが、さらに、今後目指すべき在り方について、「規模」の観点と「教育方法・内容」の観点で整理をさせていただいております。
 まず(2)今後目指すべき「規模」の在り方の提示のところでございますが、大きくは二つ、法科大学院の全体的な規模感の議論と、もう一つは、個々の法科大学院の規模感の議論に整理をさせていただいております。
 まず一つ目の黒ぽつでございますが、現在の司法試験が適正な運用で行われている上で、法科大学院全体でこれまで司法試験合格者数を相当数輩出してきた事実を踏まえ、組織見直し検討ワーキング・グループより経過報告していただきましたとおり、法科大学院全体の入学定員について当面3,000人程度を目途に見直しを促進していくべきではないかということでございます。ただ、現在、政府全体で議論されている法曹人口の在り方の検討結果については、それが出た段階でまた見直していくことは当然あるということで整理ができるのではないかと考えているところでございます。
 また、二つ目の黒ぽつにございますように、今度は個々の法科大学院の規模の在り方といたしまして、改善状況調査ワーキング・グループでもこれまでるる御指摘いただいておりますが、入学者数が著しく少ない法科大学院の授業や学修環境に対しては、例えば、切磋琢磨(せっさたくま)する環境について本当に大丈夫かどうかといった御懸念も示されてきたところでございまして、このように著しく学生が少ない中で教育が行われている状況の改善が必要ではないかという観点で、その規模の在り方を考えていくべきではないかということで整理をさせていただいたところでございます。
 続きまして、(3)でございますが、今度は、今後目指すべき「教育方法・内容」の在り方についてでございます。ここもかなり理念的なことではございますが、プロセス養成の中核的な教育機関である法科大学院の教育の質保証を行う観点から、これまで以上に充実した教育を行って、司法試験の合格状況の改善はもとより、修了生が社会の様々な分野で活躍できるよう、学生が安心して法科大学院で学修に取り組める、そういった環境作りに向けた教育の充実方策を検討していく必要があるのではないかということで、その考え方を整理していければと考えております。
 以上が検討事項1に関する御説明でございました。
 続きまして、そういった今後の姿を想定しながら、検討事項2でございます。資料2ページ目の上段からでございますが、今後検討すべき改善・充実方策について、四つの観点で事務局として案を整理させていただいたところでございます。
 まず(1)につきましては、まず法科大学院がそもそも目指していた優れた取組を進めるために、先導的な取組を推進している法科大学院について、その教育の充実方策を提示していくべきではないかということで整理をさせていただいております。
 黒ぽつにございますように、法学未修者教育の充実、国際化対応、職域拡大を含めて、改めて推進すべき優れた先導的な取組を支援していく、そういったことを考えていくべきではないかというふうに整理させていただいております。
 また、二つ目として、(2)にございますように、法科大学院の規模の適正化に関する改善方策の提示が必要ではないかと考えております。
 この点につきましては、組織見直し検討ワーキング・グループからの経過報告における御指摘も踏まえて、さらにこの特別委員会で御議論いただけたらと考えておりますが、一つ目の黒ぽつには、公的支援の見直しの強化策などの活用を通じた、課題が深刻な法科大学院に対しての連携・連合、改組転換の促進を図るともとに、「適格認定の厳格化」などの認証評価の結果に応じて組織見直しの促進が図られる、そういった取組について考えていくべきではないかと整理させていただいておるところでございます。
 また、二つ目の黒ぽつには、今後提示される予定の法曹人口の在り方なども踏まえて、今後の法科大学院の総定員の在り方や法的措置を含めた組織見直しの更なる促進方策の在り方を整理、検討していく必要があるのではないかと考えて、整理させていただいております。
 そして、三つ目として、(3)にございますように、法科大学院教育の質の向上に関する改善方策の提示でございます。
 一つ目、二つ目の黒ぽつにございますように、こちらも共通到達度確認試験等ワーキング・グループからの報告書をベースに整理させていただいておりますが、共通到達度確認試験(仮称)の基本設計・試行、また、未修者教育の充実に向けた仕組みの具体化とともに、例えば、共通到達目標モデルを活用した教育課程編成の徹底、あるいは、実務家教員のFD活動などを通じた法律実務基礎教育の充実。さらには、研究者、実務家教員の割合などを含めた法科大学院における教員の体制の充実といったことが必要ではないかというふうに整理させていただいております。
 また、二つ目の黒ぽつにございますように、法科大学院の適格認定をはじめとする認証評価がしっかりと効率的、効果的に機能するよう、認証評価の期間、基準、方法の見直しを進めていくべきではないかということでございます。具体的なものはワーキング・グループの報告書にもございますが、更にそれをブラッシュアップしていくようなことで考えていくべきではないかと考えておるところであります。
 また、三つ目の黒ぽつには、先ほども出てまいりましたように、教育上の効果の観点から、各法科大学院の適正な規模の在り方について検討する必要があるのではないかというところ。
 また、四つ目の黒ぽつにございますように、学生の希望や適性を踏まえて、法曹以外の法律関係専門職、また企業法務、公務部門など進路変更への適切な対応とともに、時間的コストの軽減も視野に入れた法学部との連携を入れた教育の検討も考えていくべきではないかということで整理させていただいたところでございます。
 そして、最後に4点目でございますが、(4)にございますように、そういった法科大学院の教育力を活用した法曹養成への支援についても取り組んでいく必要があるのではないかということで整理させていただいております。
 ここにございますように、エクスターンシップの積極的な展開、そういったものも含めるとともに、例えば、展開・先端科目群の弁護士の先生方への積極的な提供、また、その研修機能の充実といった法曹有資格者に対しての継続教育の提供機能の充実を検討していくべきではないかということで整理をさせていただいたところでございます。
 大変長い説明となってしまいまして恐縮ではございますが、これまで頂いた御意見を踏まえて整理し、また、今後検討すべき論点を事務局として整理させていただいた次第でございます。ここに書いてあることだけでなく、更にブラッシュアップすべき点、追加すべき点、そういったことも含めて、是非幅広に御意見、御指導いただけたらと考えておりますので、御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。

【井上座長】
 ありがとうございました。
 ただいま説明していただきました二つの資料、特に資料3のたたき台を踏まえて御議論いただければと思いますが、本日の議事の進め方としましては、大体二つに分け、まず資料3の1ページ目に示されている基本的方向性と検討事項1の「今後目指すべき法科大学院の姿について」を御議論いただき、次に、2ページ目の、検討事項2として挙げられております「今後検討すべき改善・充実方策について」を御議論いただくという順序で進めさせていただきたいと思っております。
 まず最初の点、今後目指すべき法科大学院の姿でありますけれども、この点につきましては、御承知のように、現在、政府の法曹養成制度改革顧問会議において議論が行われているところでありますが、本特別委員会としましても、今後の議論の前提となる目指すべき姿を意識する必要がありますので、この点をまず確認し、さらには、内容的に深める議論をしていただきたいということでございます。
 ただ、資料3の上段に記載されている二つの項目と、検討事項1の(1)の内容につきましては、これまでの皆様の議論の中でほぼ共通認識が出来上がっているのではないかと受けとめているところでありますので、更にこれらの点について特に付け加える御意見等がなければ、これらの点は、皆様共通認識として確認していただいたものとして先に進めたいと思いますけれども、いかがでございましょうか。
 それでは、これらの点は、ほぼ共通認識になっているとして、次に進み、(2)と(3)の「規模」の在り方及び「教育方法・内容」ですが、この点について御議論いただければと思います。田中委員、どうぞ。

【田中座長代理】
 現状認識の問題ですけれども、(2)の最初の「司法試験の適正な運用の下」という表現は、司法試験のレベルとか、やり方とか、司法試験と法科大学院の教育・内容との連携の在り方については、現在の運用状況にもいろんな問題があるという前提で議論しているように思われるので、このあたりどうでしょうかね。適正な運用という表現は、ちょっと誤解を招くのではないかという気がします。

【井上座長】
 私なりに解釈をしますと、その点についてはいろいろ批判や異論もあるところですけれども、少なくともそれが適正に運営されているという前提に立ったとしてもこのような実績がある、という趣旨ではないかと思います。逆に、適正に運用されていない、というふうに書くわけにもいきませんので、そういうことではないかと思うのですが。

【今井専門職大学院室長】
 失礼いたします。こちらの書き方を整理させていただいた、その前提となる議論についてご紹介させていただきたいと存じます。
 参考資料1でございますが、組織見直し促進に関する検討ワーキング・グループの報告書の2ページ目を御覧いただけたらと存じます。
 今日整理させていただいた資料3のそもそもの原案となるところの考え方は、この2ページ目の真ん中から始まります2ぽつ、組織見直しを促進するための具体的方策の(1)方向性というところから、ある意味かなり捨象して取り入れたということでございますが、ここの考え方につきましては、まず一つ目の白丸で、関係閣僚会議の決定を踏まえて、入学定員の適正化を目指していく必要があるということを前提に、二つ目の白丸のところでございますが、その際、この関係閣僚会議の決定の前提となる法曹養成制度検討会議の下で議論がなされていく中で、ここにございますように、実はその検討会議での御指摘の中で、今後の法科大学院の統廃合や定員の在り方については、まずは、法科大学院が全体としてこれまで司法試験合格者を相当数輩出してきた事実を踏まえて検討すべきであるとされていることを前提に、三つ目の白丸でございますが、現在の司法試験は、当然、制度的に司法試験委員会においてきちんと判定されているということを前提に、丸1番から丸4番にございますように、これまでの現状とか状況などを分析していって、それらを総合的に勘案した結果、最後の下段の方になってまいりますが、平成25年4月1日現在4,261人の入学定員について、一つの目標として、3,000人程度を当面目指していくべきではないか、それが合理性があると考えられるということがワーキングの中でも御議論があったものを、こちらの方にも引き込んできているというのが結果としてございましたので、御議論の際にも、それを前提に御理解をいただけたらと思っているところでございます。

【井上座長】
 「適正」だと肯定的に書いてある点が引っかかるということだろうと思いますが。

【田中座長代理】
 要するに、現行の司法試験制度の下で、いろいろ問題はあるにもかかわらず成果を上げてきているというのが実情だと思います。この表現はやっぱり誤解を招くのではないか、ということだけです。趣旨は大体そういうことだと思っていますので、表現の仕方だけの問題です。

【井上座長】
 それでは、表現の仕方を変えて、事実としてこうだという書き方に改める方向で工夫をしてみましょう。
今の点でも結構ですし、ほかの点でも結構ですが。ほかの方はいかがですか。

【片山委員】
 この検討事項1で取り上げるべきなのか、あるいは、その前段のところなのか、あるいは、最後に別に項目を設けるのかという問題はあるのかもしれませんが、予備試験の問題に関しまして、予備試験の合格者の数が増えたことが、今、法科大学院の授業への影響が懸念されています。やはりその問題について何らかのコメントをすべきではないかなとは思っております。例えば、(3)の今後目指すべき「教育方法・内容」の在り方の提示のところでは、学生が安心して法科大学院で学修に取り組めるような環境作りということが上がっていますが、一部の法科大学院では、予備試験を学生の半数以上が受けているという状況では、とても安心して学修に取り組めない、授業にも多大な影響を与えているいるという意味では、ここにも関係するかと思います。いずれにせよいずれかの箇所で、中教審としても、予備試験に対する何らかの意見を盛り込むような形で、論点整理していただければありがたいと思っている次第でございます。

【井上座長】
 中教審の所掌との関係で、どこまでできるかは分りませんけれども、少なくとも今片山委員おっしゃったように、法科大学院の教育に非常に大きな影響を与えつつあるのは間違いありませんので、そういう観点から議論をしていくことは考え得ると思いますから、そういうふうに整理することを検討させていただきたいと思います。
 遅れての御到着がありましたので、御紹介をお願いします。

【今井専門職大学院室長】
 失礼いたします。
 先ほど御説明はしておりましたが、本年の1月17日付けで布村前高等教育局長が退任いたしまして、その後任として就任いたしました吉田局長でございます。

【吉田高等教育局長】
 遅れて参りまして申し訳ございません。1月17日付けで高等教育局長を拝命いたしました吉田でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【井上座長】
 よろしくお願いします。
 それでは、議論を続けたいと思います。ほかの点でも結構ですし、今の点でも結構ですが、どなたからでも御意見をいただければと思いますが。

【鎌田委員】
 書き方はどうなるのか難しいと思うんですけど、私も予備試験との関係は意識せざるを得ないと思っています。
 そのときに、これは言うはやすく行うは難しなのかもしれないんですが、全体としてのトーンが、法科大学院、いろんなところで責められて、弱点があることに対して、どう防衛していくかというふうなニュアンスが読み取れるような印象を受けています。例えば、予備試験との関係で、やはり予備試験ルートで行くよりも法科大学院の方がこれだけメリットがあるんだという、法科大学院の利点といいますか、本来目指してきたところをもっと積極的に提示していくようなトーンで全体がまとめられるといいなという印象を持ちました。

【井上座長】
 ありがとうございます。ほかの方、いかがでしょうか。

【有信委員】
 具体的に今の予備試験がどうかということについて言うと、例えば、国際的な観点での同等性としてということを考えると、日本に今技術士というエンジニアの制度があって、技術士も国家資格として認められていますが、国際的に言うと、技術士の受験資格に学歴要件がないということが外国から相当問題視されているんですね。つまり、諸外国では、技術士を受験するためにはアクレディットされた教育プログラムを修了していなければいけない。こういう規定が一般的でありまして、もともと国家が認めた職業資格を相互に承認し合うという枠組みが今進んでいますが、その中でまず問題視されてきているということと、基本的には国際的な共通資格の前提となるAPECにおけるエンジニア資格の中でも、第一要件として、アクレディットされた教育プログラムを修了していることというのが、いわゆるAPECエンジニアの要件になっています。
 そういう意味で、法律に関して、これが国際的な同等性をどこで折り合いをつけなければいけなくなるかという問題はありますけれども、やはりそういう視点から見ても、今の予備試験の在り方に対して、法科大学院の制度設計という観点を踏まえて、何らかのことは言えるのではないかという気はします。

【井上座長】
 ありがとうございました。ほかの方、いかがでしょうか。

【磯村委員】
 先ほど片山委員から出た御意見とも関連する問題かと思いますが、例えば、検討事項1の(2)のところで、全体の定員の規模を議論するときに、どういう学生がそもそも法科大学院に来ようとしているかという、その入り口のところの枠を広げないと、ここの議論もなかなかうまく決まらないのではないかと思います。この二つの中に入れるというのは難しいのかもしれませんが、法科大学院教育の改善・充実の前提として、どうやって入学希望者を増やすかという前提の議論をどこかで取り入れる必要があるのではないかとは感じているところです。

【井上座長】
 ありがとうございました。どうぞ、土屋委員。

【土屋委員】
 私も今の点を強く感じているのです。現在の法科大学院にとって、ちょっと問題が多いかなと思うのは、例えば、男女の学生の比率ですよね。男子学生が圧倒的に多くて、女子学生が少ないという現状がどうも見られていて、これからの日本社会を考えていく上で、女子学生の目から見て魅力的に映る法科大学院というのはやっぱり考えなければいけないのではないかという気がちょっとしております。特に外国の法科大学院の事情というのは、私はよく知らない部分がありますけれども、漏れ伺う限りでは、日本よりもっと女子学生の比率が高い。そういう法科大学院というのは、やっぱり考えなければいけないかなと思いますので、その点は一つ入れていただきたいということですね。
 それから、もう一つは、この論点整理案自体が、法科大学院側から見た在るべき姿というか、問題点というか、そういうものの整理の仕方になっているんですが、もうちょっと入学する学生の立場から見て、どういうところに焦点を当てた法科大学院であってほしいかということを、この委員会として十分意識して議論するんだという覚悟みたいなものをどこかに書いていただきたい。つまり、受験者数が減っているということが大きな問題だと思うんですね。法科大学院の入学定員を絞るというのは、法科大学院の側から見た適正な教育環境を提供するという意味で、私は妥当な方向性だとは思いますけれども、じゃあ、これから法曹になろうという人たちが、そういうところを目指して来れるかどうかということになると、キャリアの問題だとか、学位の問題だとか、いろんなところが絡んできますから、そういう人たちの目に理想的なものとして映るような法科大学院を考えていくという方向でここで議論しているんだというのをどこかに入れてほしいと思います。その二つです。

【井上座長】
 前者の問題も後者の問題も、いずれも最終的には行き先のプロフェッションの問題ですね。男女の問題も、例えばアメリカのロースクールでは多分学生の半分ぐらいは女性だと思いますし、ヨーロッパの場合には更に、裁判官も弁護士さんも過半数がいるかもしれません。法廷に行くと、ひな壇の上も両サイドも全部女性というのも珍しくありませんので。ですから、行き先のプロフェッションの方でどれだけ進んでいるのかにより、魅力ある職場ということになり、それを目指して法科大学院に入ってくる人も増えていく。そういう構造になると思うのですね。
 もちろん、法科大学院自体の問題としても、おっしゃったような視点で議論しないといけないと思いますし、特に後者については、土屋委員のような立場の方が、私など法科大学院の中にいる人間には気付かない点をどんどん御指摘いただければと思います。
 ほかの方は、いかがでしょうか。どうぞ、樫見委員。

【樫見委員】
 先ほど法科大学院の入り口、間口を広げる工夫というお話があったのですが、2ページのところで、(3)の一番下のぽつのところで、「学生の希望や適性を踏まえ、法曹以外の法律関係専門職云々」というふうに書いてありまして、これは入った学生については、成績、いろんな学生の適性を考えると、ちょっと法科大学院は無理じゃないか、場合によっては、留年などしている学生に、ほかの方向へ行きなさいと、肩たたきというか、そういうことは現実にやってきたわけです。これは、入り口の段階、つまり、募集なり説明会の段階では、最初から、「あなた方、適性がなかったら、ほかをあっせんするから」などということは、法曹養成という看板を掲げて法科大学院を作った関係では、今までやはり口にしたくても現実にはできなかったことですね。
 そういたしますと、今の現状を踏まえると、実は入り口の間口を広げるようなPRをするということは、法曹養成という目的を掲げてきた法科大学院のそもそもの看板を降ろすのか、あるいは、この看板に加えて、君たちの能力を生かすのであるから、法曹養成のほかに、こういうふうな法曹以外の法律関係の専門職やそういうこともできるから、もっともっと入ってくれというふうに言ってしまうのか。そうしたことからすると、最初の司法制度改革のときの理念とは、これは背理にはならないのか。
 もともと法曹養成の専門職大学院として通常の法学部と組織を分離するなり、法律専門の大学院と分離した形で独立の組織を法科大学院として設置したわけです。今の段階では、根本的なところへまではなかなか手を伸ばさずに、手前のところでいじっているような、非常にもどかしさがあります。現状では、学生には法科大学院としては恥じ入ることなくというか、ほかの能力をもっと伸ばせる道があるんだというふうに看板に掲げることがややためらいを覚えるのでその点の検討はやはり必要ではないかなと思っております。

【井上座長】
 今の点は司法制度改革の理念とは背理していないと思います。問題は、法曹ということのイメージであり、ここで使われているのは、非常に狭い意味の法曹ですが、司法制度改革における理念としては、狭い意味の実務法曹に限らず、それと同等の能力あるいは資格を持った人がいろいろな分野に進出していく、それを育てるということでしたので、それとは齟齬(そご)はしていないと思うのですね。そうですよね。

【田中座長代理】
 ちょっとそこは難しい微妙な問題ですね。

【井上座長】
 私なりには、そのように整理していたのですけれど。
 難しいのは、おっしゃるような制度の根本のところを大きく変えるということができるのか、あるいは適切なのかということで、司法試験の受験資格が原則として法科大学院修了者にほぼ排他的に与えられているということと結び付いているわけですから、その看板を外してしまうとその点も揺らいでくるおそれもある。もちろん、現実を踏まえてどうにかしていく必要もあって、その兼ね合いなので、微妙な問題ですけれども。おっしゃったような視点も入れて議論ができればと思います。
 ほかの方、いかがでしょう。どうぞ、土井委員。

【土井委員】
 2点ほど申し上げます。
 1点目は、規模の在り方の提示の部分ですが、先ほど来出ている、法科大学院志望者、あるいは法曹志望者の数が減少してきているのではないかという懸念にも関わります。結局、学生が、社会人も含めてですけれど、法科大学院、あるいは法曹を志望することが少なくなってきているとすると、一つは、やはりコストとリスクの問題を彼らがどう判断しているかということになろうかと思います。法曹の道に進んでいくコストや、リスクをどういうところで判断しているのか、正確なところは分りませんが、恐らく、法曹に対する需給バランスの問題と、それから、司法試験への合格率の問題が非常に重要な要素になっているだろうと考えられます。そこに予備試験が絡んでくるので、非常に複雑な状況を生んでいるのではないかと思います。
 そこを改善していくとなると、やはり需給バランスの問題、あるいは合格率の問題をどうするのかを考えていかないといけないのですけれど、例えば、来年度入学の学生について、一定程度手を打つとしても、彼らが修了するのに2年、3年かかるわけです。最初に司法試験を受けるのが3年目、4年目。今度5年5回の受験を認めることになりますので、その学年の累積合格率、あるいは就職状況が完全に分かるには、7年、8年かかるわけです。つまり、来年度すぐ手を打っても、最終的な成果がはっきり出るのは7年後、8年後ということになる。
 従来から、中教審でも、あるいは法科大学院も、いろんな努力をしてきているわけですけれども、その効果が出るのに時間がかかることから、そのタイムラグの中で、うまく回らないという懸念もあるところです。政府の方で法曹人口の在り方等々を検討されるということなのですが、これは要望の部分もありますけれども、やはり迅速に、できるだけ将来こうするんだというビジョンを見せないと、なかなか志願者の回復は難しいのではないかと思いますので、ここのところは迅速に、しかも、ある意味で明確な形で出していく必要があるのではないかと思います。
 それから、もう一つは、ここでは法科大学院の話をしていますので、当然法科大学院の話が中心になるんですけれど、これもまた予備試験絡みでもあるんですが、中核的な法曹養成制度を大学院課程に置くという決定の意味について、もう一度考えるべきだと思うんです。大学院に置いたということは、その前の段階で何をさせるかをはっきりさせなければならないのですが、そこが必ずしも明確になってこなかった。これは法学部の在り方の問題を含めて、明確になってこなかったわけです。その結果として、法科大学院に入る前の段階で予備試験を受ける法学部生たちが出てくるんだけれども、それがなぜ望ましくないのかが必ずしも明確にならない。法科大学院課程で学ぶ内容が重要だということだとしても、本来それをどの段階で学ばせるかは、いろんな案があるわけです。それを大学院に置いたということは、前の4年間で学部あるいは社会人として何かを学び身につけることを期待しているはずで、そこのところを含めて、もう少し明確にしていかないと、期間を短縮していく議論などを出していった場合でも、どの程度短縮させるのか、その条件として、一体どういうことをその前段階で身に付けていれば短縮を認めるのかという話にならないと思うので、もう少し法科大学院の前の段階の話も議論してみてもいいのではないかと思います。
 以上です。

【井上座長】
 ありがとうございました。椎橋委員、どうぞ。

【椎橋委員】
 先ほどの樫見委員の御発言と関連するのですけれども、ロースクールを出た学生の職業選択の範囲が広くなるというのは、私もいいことだと思っておりまして、最近、私の経験の中でも、ロースクールを出て司法試験に受かって、そして地方公務員になるというような学生が少しずつ増えてきておりまして、それも、ほかに就職ができないから、任官できないから、大きな法律事務所に行けないからということではなくて、最初から、自分の郷里だということがありますけれども、県庁に入って、その県の自治の仕事を担う役割というものをしっかりやりたいというような理想を持って入っていくというような学生も、まだ数は少ないと思うんですけれども、少しずつ増えてきている。企業に行く学生についても、自分にとって勤務条件がいいということがあって、そういう理由もありますけれども、企業法務の世界にも入っていく。仕方なくではなくて、積極的に行くという者が少しずつ増えているというのも事実でありますので、そういったことはやはり大事にしなければいけないのではないかと思います。
 そして、法曹資格を取って、そういった狭義の法曹でないところに行くというのは、法科大学院を創設したもともとの狙いの一つだと思うんですけれども、他方で、そうでなくて、司法試験には受からなかったけれども、狭義の法曹以外の道に行くという、そういった学生にとっても、やっぱり法科大学院で3年間勉強して、法律家のあるべき姿を学んで、ある意味では法律家としてのエートスをある程度は共有しているという、そういう人たちが狭義の法曹以外のところに行くというのも、これまたやはり法化社会というものを広く作っていくという意味では大事なことだと思いますので、そういう意味では、最初から狭義の法曹以外の分野にも行けますよということを言うのは、座長もおっしゃいましたけれども、必ずしも法科大学院の在り方とそごをするものではないだろうと思います。
 それから、もう一つ、予備試験についてですけれども、これは、そもそも最初できた理由が、法曹になりたい者について主として経済的理由で法曹への道を閉ざしてはいけないということであったはずですので、しかも、現実的にも、先ほどから御意見が出ておりますように、法科大学院の一貫した教育について、必ずしもいい影響を与えていない、それから、法科大学院を目指す学生についても、勉強の仕方が批判されてきた旧試験の受験勉強体制になっているのではないかというところがありますので、やはりそこのところはかなり真剣に考え直すべきではないか。経済的に恵まれない者については、ほかにいろいろ奨学金とかそういったものを各法科大学院も用意しておりますし、余りにも最初の狙いと違う現実になっているということは、ここに書いてある司法試験の適正な運用の下ということを考えた場合には、予備試験のことを考えると、どうもやっぱり違和感を覚えるというところがありますので、私は予備試験については相当考え直していただくということが必要だと考えています。以上でございます。

【松本委員】
 よろしいでしょうか。

【井上座長】
 どうぞ。

【松本委員】
 ありがとうございます。遅れて来て申し訳ありません。
 予備試験についての御指摘がございました。これまで予備試験合格者と司法試験合格者、願書の時点での属性に基づきまして御説明申し上げておりましたが、完全なひも付きではございませんが、どういう形で予備試験合格者が司法試験を受けているんだろうというところを、今分析をしております。次回のこの場で、可能であれば若干お時間を頂きまして、予備試験受験者数の動向や合格者の動向について御説明させていただければと思っております。
 また、この関係では、予備試験合格者の弁護士事務所の採用状況、あるいは、予備試験を経て本試験に合格したことによるロースクールの中退の状況なども、別途文科省と日弁連の協力を得て調査をしているところでございますので、御報告できればと思っております。
 さらに、法曹人口の関係でもお話がございましたが、内閣官房の方では、法曹人口調査というのを予定しております。ただ、この制度設計に本年度いっぱいかかりまして、来年度一年この調査にかかるという状況でございまして、内閣官房の推進室としての結論が出るのはちょっと先になるという状況でございます。ただ、そういう状況の中で、与党筋から、それでは遅すぎるというような御指摘も頂いておりまして、場合によっては、特に司法試験の合格者数について提言をするというような動きも出てきております。そういう状況と並行しまして、予備試験、さらには、司法試験の合格者数という点につきましても、法曹養成制度改革顧問会議でも一つのテーマとして議論される予定となっておりますので、御報告いたします。
 以上でございます。

【井上座長】
 ありがとうございました。どうぞ、日吉委員。

【日吉委員】
 これまでの議論を拝聴していて、また、私の頭の中で考えていることも併せて、つくづく思うんですけれども、今後目指すべき法科大学院の姿と、この10年たって、もう一回改めてビジョンから打ち出そうと再度するときに、やはり法科大学院を中核的機関として、養成しようとしている法曹というもののイメージというのは、人によって随分違うように今は思います。狭い意味での法曹だとか、広い意味での法曹とか、それぞれ形容詞を付けなければはっきりとイメージが伝わらないようなところもございますし、それも社会の要請に応じて今後もどんどん変わっていく。日本社会自体が変わっていく。それから、入ってくる学生の持っているイメージも一人一人違うというのが現状ではないかと思います。
 ですから、これをまとめるときに、やはり一度、法科大学院が中核的機関として、何を教育しようとして、どういう法曹を育てようとしているのかというところは、難しいとは思いますけれども、一度それをきちんと文章の形でというか、誰もが読んで分かる形で提示する必要があるのではないかなと思っております。それが一つ目です。
 それから、二つ目は、今までの3,000人という規模の数字に関してなんですが、今までの流れにさおを差すようで大変申し訳ないんですけれども、これはあくまでも、今までしばらく2,000人という合格者数が出ていたという前提で、しかも、7割から8割が合格するんだという制度設計というのを前提として、当面それを算数で計算すれば、3,000人程度ということなのではないかと私は受けとめております。ただ、今の御意見にもございましたように、合格者数については、いろいろな方面から発言がありますし、これもまた世の中の要請に応じて、ひょっとすると左右して変わっていくことでもあります。そういう中で、今ここで率先して3,000人程度という数字を打ち出すということが好ましいことなのかなというのが、ちょっと私としては分からない。出した方がいいのかどうかというのは、もう一度考える必要があるのではないかなと思います。

【井上座長】
 ありがとうございました。
 最後の点は、確かにちょっと微妙な問題ですけれども、現実に今、入学者が少なくなっており、定員とのかい離が非常に大きいものですから、政府の会議の方でも一つのテーマになると思いますし、それに先駆けた検討会議でも、そこのところを埋めていくようにというような意見が多数を占めたということもあり、一つの数値目標のようなものを出さざるを得ないというところがあるように思います。
 ただ、その検討会議でも指摘がありましたけれども、それでは、定員をどんどん切り刻んでどこまでも減らしていって良いのかというと、そうではない。そのようなことをするなら、それは失速状態を追認し、あるいは加速することになるわけで、それによってますます志願者が減っていくということは明らかです。ですから、数字の出し方は非常に難しいところがあると思います。
 このたたき台でも、政府の会議の推移によっては、またその点も見直すという点は一応保留しているところですけれども。
 先に進んでよろしいですか。検討事項2の方に移らせていただきます。これについては、どこからでも結構です。事務局案は四つのポイントで整理されていますけれども、そういう四つのポイントでいいのかという柱立て等も含めて、御議論ください。
 その際に、参考資料で配付されています組織見直し促進に関するワーキング・グループ及び共通到達度確認試験に関するワーキング・グループの検討経過報告の内容も含めまして、御議論いただければと思います。
 それでは、どなたからでも結構ですので。
どうぞ、片山委員。

【片山委員】
 まず、どの部分に関連するのかという点は必ずしも定かではありませんが、(1)のところで、未修者教育の充実、国際化対応、職域拡大などに触れられておりますけれども、やはりその出発点として、未修者コース、既修者コースという既存の枠組み自体をもう一度きちんと考え直すべきではないかと思っております。確かに多様な法曹の養成が必要だということで、ロースクールのカリキュラムも非常に充実しておりますし、今後は、法曹リカレントも検討課題とはなっております。ただ、多様な法曹の確保のためには、法科大学院の入り口部分、すなわちアドミッションにおいて社会人、それから、他学部・他研究科卒の人たちに大勢入ってきていただくことが重要だと思います。10年前の構想はまさしくそうでしたが、その部分がこの10年間にかなりおろそかになっていると思います。未修者コースは、本来その受け皿であったはずですが、現実には、法学部出身の未修者がほとんどであるというこの現状は大いに問題であると思います。積極的に未修者コースに、あるいは、既修者コースにでもいいんですけれども、法科大学院に、他研究科・他学部出身の方、あるいは社会人に入ってきていただきたいという、そういうメッセージをきちんと発していく必要があるのではないかと思っております。
 未修者コースであろうが、既修者コースであろうが、とにかく社会人、他学部・他研究科出身の人の割合をおおよそ3割にするというのが当初の目標ということになりますので、何らかの形でその枠を設けるような、そういう方向での改革が必要ではないかなと考えます。
 その点とも関連するのが、学部教育との関係で、この点は、再度見直していく必要があるのかと思っております。今、学部での教育が十分でない人たちが、未修に来ているという状況がありますが、これは本来、学部できちんと教育するということで対応していただくべきだと思います。ロースクールの開設以来10年が経過しましたが、その間の経験からしますと、、やはり既修の2年間の専門教育、修習と一体化したプロセスでの専門教育の質と、全く法学を勉強していない法学未修者に対する基礎的な教育との質がかなり違うもので、教育メソッドも異なっているということはかなり明らかになっております。基礎教育の方は、これは何も法科大学院の未修の1年目だけでやるわけでなくして、学部でやってもいいですし、あるいは、企業の法務部でのOJTでやってもいいということでしょうから、そこはもう少し多様化を持たせて考えていいと思いますが、それを前提としても、学部においては、やはりそこの部分の教育をきちんとやって、ロースクールに送り出すという形で、学部と法科大学院との一体的な枠組みを考えるべきだと思います。その過程で、あるいは、期間の短縮化といった議論も可能になるかと思います。そういう意味で、未修、既修の枠をもう一度きちんと考え直して、積極的に社会人とか他学部・他研究科出身の学生を受け入れる方向を明確にしつつ、かつ、法学部の学生さんに対しては、法学部できちんとした基礎教育をできるような、そういう方向での提案ができればいいのではないかと思っている次第です。

【井上座長】
 ありがとうございました。ほかの方、どうぞ、松下委員。

【松下委員】
 検討事項2の(3)の一つ目の黒ぽつの記述について、この記載の意味を事務局に確認させていただきたいんですけれども。
 検討事項2の(3)の一つ目の黒ぽつの最後に、研究者教員と実務家教員の割合の在り方など法科大学院における教員体制の充実が必要であるという記載がございますが、現状ですと、専任教員の2割以上が実務家教員でなければならないというルールがあると認識していますけれども、ここの記載の趣旨、どういうことを念頭に置かれているのか、ちょっと教えていただけますでしょうか。

【井上座長】
 どうぞ。

【今井専門職大学院室長】
 失礼いたします。
 ただいまの御指摘の点でございますが、今まさに先生から御指摘ありましたように、現在、専門職大学院全体では、実務家教員と研究者教員の割合について、制度全体としては3割と。ただ、法科大学院については2割ということで置かれているということでございます。
 ここについては、様々なところからも、その割合が今のまま維持していても、いいのかということを御指摘いただくようなこともありますので、教員の体制の在り方の中で、このあたりについても検討していってはどうかという趣旨で書いてはおりますが、どれぐらいの数値にしていくのかどうかという議論については、まだ明確なものがあるわけではございません。趣旨としては、その割合のあたりについてをどう考えていくべきなのかという提案ということでございます。

【松下委員】
 実務家教員の割合をもう少し増やせという方向の話と理解してよろしいですか。

【今井専門職大学院室長】

 今ありますのは、法科大学院の方が割合が少ないということについて、それを増やしたらどうかという御意見もあったりいたしますので、方向としては、そうするのかしないのか、そのあたりの議論になるのではないかと考えているところでございます。

【松下委員】
 議論の方向として、そういう議論があり得るのは理解できるんですけれども、ただ、法科大学院の場合、後に修習が1年控えているということを十分に配慮する必要があり、やや最初から色を塗るような言い方になりますが、先走った実務教育ばかりやるのは、法科大学院の在り方として適切なのかどうかということは、かなり慎重に考えた方がいいのではないかと思っております。
 以上です。

【井上座長】
 割合を増やすべきではないかという御意見も、特に外部からはあるところですけれども、それに対しては、松下委員がおっしゃったような視点の意見もありますので、そういうふうにすると決めてかかるというという趣旨ではなく、その点についても検討するということだと思います。
 両面あり、法科大学院あるいは個々の授業によっては実務的な視点が余りにも入らなさすぎているという問題点を抱えているかもしれませんし、逆に、基本科目の教育も、ともすれば実務はこうであるという教え方だけにとどまっていて、理論教育としてそれで良いのかという危惧を感じるところも現にある。ですから、そこのところを、突っ込んで議論してみようということだと思うのですね。

【笠井委員】
 今回の改善・充実に向けた論点整理案ですけれども、これは認証評価のやり方、及びその機関の在り方等についての改善等についての言及というものはないように思います。2ページを拝見すると、(2)の認証評価について、「適格認定の厳格化」などという記載があり、また、(3)の2番目の黒ぽつでは、認証評価がより効果的に機能するようという記述があります。これは、認証評価の在り方について一定の評価をしていることが前提で、これに基づいた改善、組織見直しを図るという構造になっているかと思うんですね。
 実際に私どもは認証評価をやり、認証評価を受けるという過程を通じて、現行の認証評価自体に様々な問題があることを実感しており、組織見直しの促進WGの調査検討経過報告、参考資料1にも、認証評価の問題についての一種の改善提案が含まれています。これを今回の論点整理に入れなくていいのか。むしろそこをきちんと記述するべきではないかと。我々の所掌事務からして、それが含まれるのか含まれないのか分かりませんけれども、いかがかなと思っている次第です。

【今井専門職大学院室長】
 失礼いたします。
 ただいま御指摘いただいた点でございますが、基本的には、昨年の11月末に、この特別委員会において、二つのワーキングから検討経過報告についての御報告がございまして、御議論いただいたということになっております。一応その御議論をした上で、まだこの特別委員会として、これをベースに、どういう議論に展開していこうかというところが今議論いただいているということだと思っております。
 この検討経過報告の中には、直ちに取り組んでやっていくべき点も盛り込まれておりますし、場合によっては、この特別委員会でさらに取り上げていただいて、ブラッシュアップしていただくべき点もあろうかと思っております。その交通整理については、また改めていろいろ御相談申し上げたいと思いますが、例えば、今笠井委員より御指摘いただきました点につきましては、今度は参考資料1の4ページ目を御覧いただけたらと存じますが、認証評価の見直しについて、ワーキング・グループにおいて到達した一定の検討結果として、ここはかなり具体的に書いて御報告いただいているところでございまして、4ページ目の上、2ぽつ、具体的な改善方策等というところで、それぞれ丸1番から丸4番まで改善の方向性を頂いております。この方向性が、この特別委員会としても、これもともかくやるべきだということであれば、ある意味、こちらの論点整理の中により深く書けるわけでございますし、こういったことはやりながら、さらにブラッシュアップをもっと検討できないかということで、検討を続けていただくということも十分あり得るかと思います。
 この中には、基準の書き方、それから、不適格の判定について、ばらつきが出ないような工夫、さらには、認証評価機関について、課題があるところには、できるだけ頻度を高めていく措置、そういったかなり具体的なものも盛り込まれておりますので、その扱いをやるべきこととして整理をしていただいて、さらに実行に移すものと、ここをベースにして掘り下げるのか、もしくは新たに追加するのか、そういった御議論は十分あろうかと思っておりまして、そういうふうに整理して議論いただければありがたいかなと思っているところでございます。

【井上座長】
 所掌事務ではあるのです。これまでも何度も議論してきましたし、提言もしています。ですから、この特別委員会の中で、今後重点的に議論する項目として立てるかどうかという問題だと思います。
 御指摘もありましたし、その項目立ての在り方については検討させていただけますか。

【笠井委員】
 私は取り上げていただきたいと思っております。それは、法科大学院の教育内容に関連して、多数の法曹を法科大学院制度発足後に輩出している中で、法科大学院教育を受けた修了生が、さらに今度は自分たちの後輩の教育に携わっていくという点で、様々なメリットがあるわけですね。この点について、これまでの認証評価では、これは実務家教員について特に言えることですけれども、経験年数等の不足から教員不適格というような判定をするというようなケースもありまして、これは法科大学院教育をより一層充実させていく観点から見ると、非常に問題がある。その意味で、速やかに取り組むべき、認証評価についての考え方の整理があると考えているところです。

【井上座長】
 どうぞ、椎橋委員。

【椎橋委員】
 私も、認証評価について、認証評価機関というのは、今までも、今も非常に重要な役割を果たしていると評価しております。特に課題が深刻な法科大学院をどうするか、今後整理統合というような動きの加速の中で、認証評価機関が果たす役割というのはますます高まるのではないかと思っております。
 ただ、その認証評価の仕方というのが、受ける立場になってみると実感するんですけれども、評価する側にいたときは、こういうやり方でやるんですよということがあったものですから、それに従ってやって、そのときの反省も若干あるのですけれども、やや形式的になっているのではないかという気がしております。
 認証評価機関と法科大学院とは、ともに努力をして、そして、今後の法学教育をさらに充実していくということを一緒になってやっていくという関係にあると思います。そして、よりよい法曹を作っていくという共通の目標があるわけですけれども、法科大学院が理論と実務の架橋の役割を果たす、それから、司法修習へのつなぎの役割も果たすということになると、現在司法修習が1年では短いということが言われておりますけれども、そういうことを考えると、法科大学院の3年生に対してもっといろいろなことを教育したいなということを考えているわけです。
 そのときに、何と言っても法科大学院で学ばせることの中で、判例というのは大事な教材だと思うのですけれども、それも法律基本科目と応用科目とを比べると、同じ判例でもその先の実務につなげるというためには、教え方も違ってくるわけですけれども、同じ判例がたまたま対象になっているいうことになると、認証評価上問題になる可能性があります。また、授業の名称の付け方も関わりがあるのですけれども、判例の学び方とか、そういうような名称を使うと、これは隠れ基本科目ではないかというような批判を頂くおそれがあります。中身としては、私はまさに理論と実務の架橋というのをやりたいなということで、この先生はこの授業を設けているのではないかと思って、中身もまさに理論と実務を架橋するにふさわしい内容だと思うんですけれども、とてもその授業の中身は司法試験に出るような問題ではない、出ても択一で1題ぐらいしか出ないだろうというような、そういう内容についても、やはり判例研究というテーマであるがゆえに法律基本科目との関係で問題があるというようなことが例えばあったりすると少し行き過ぎではないかと思わざるを得ません。そういうようなことについては、言ってみれば、もっと真剣に評価機関と法科大学院とが議論して、本当にこれは隠れ基本科目なのかどうかというようなことを徹底して議論して、それで、要するに、実質的に議論して判定をしていただくということが必要なのではないかということを感じておりますので、そういうようなことについても、これからの議論の中で反映していただければ、取り上げていただければというように希望したいと思います。

【井上座長】
 ありがとうございました。ほかの方、どうぞ、磯村委員。

【磯村委員】
 2点についてですが、一つは、先ほど松下委員から御指摘のあった(3)の最初の黒ぽつは、恐らく異なる問題を一つにまとめているために趣旨が分かりにくくなっているのではないかと思いますので、共通到達度確認試験の問題と、教員に対しての問題は、分けて問題点を整理していただく方がいいかと思います。
 それから、今も問題とされた認証評価との関係ですが、認証評価に関わっていると、一番大きな問題の一つが、法律基本科目の履修を全体の教育カリキュラムの中でどう位置付けるかという点です。非常に多く見られるのは、例えば、展開・先端科目という科目区分に当たる授業科目名で、実質的にはほとんど法律基本科目としか言えないような科目内容の授業が実施されているというケースです。そうすると、更にさかのぼって考えると、どこまで法律基本科目の比重を高める必要があるのか、法科大学院における多様な学修の中で、どれぐらい法律基本科目を重点的に学ばせる必要があるのかという問題は、これまで未修者だけの問題として取り上げられ過ぎている傾向があって、既修者についてもどういうカリキュラムの設計をするかを考える必要がありそうです。現在、認証評価機関では、修了要件単位の3分の2を超えるような法律基本科目単位数を必修要件にしてはいけないという基準を前提にしていますが、それ自体の見直しがどうかということも含めて、議論する必要がある状況なのかもしれません。

【井上座長】
 ほかの方、いかがでしょう。
 短い時間ですけれども、中身の濃い御議論を頂きました。本日頂いた御意見によって、論点がかなり整理されてきたように思われます。このたたき台自体がこれまでの御議論を踏まえたものですけれども、それをさらに補完、充実させるような議論を頂いたと思っております。
 そこで、次回の会議では、本日の議論をも踏まえまして、今後の法科大学院教育の改善・充実に向けた基本的な方向性について審議を頂きたいと思っております。そのために、事務局で審議に必要な資料の準備をお願いしたいと思います。
 本日の予定された議事は以上でございます。特に何か御発言がなければ、これで終了させていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 では、今後の日程について、事務局の方から御説明をお願いします。

【今井専門職大学院室長】
 失礼いたします。
 次回の法科大学院特別委員会の日程につきましては、事務局より改めて御連絡させていただきたいと存じます。

【井上座長】
 それでは、どうもありがとうございました。

お問合せ先

高等教育局専門教育課専門職大学院室法科大学院係

(高等教育局専門教育課専門職大学院室)