法科大学院特別委員会(第41回) 議事録

1.日時

平成22年7月27日(火曜日) 14時~16時

2.場所

文部科学省東館16階 16F特別会議室

3.議題

  1. 認証評価の見直しについて
  2. その他

4.出席者

委員

(臨時委員)有信睦弘、田中成明の各臨時委員
(専門委員)磯村保、井上正仁、小山太士、笠井治、笠井之彦、木村光江、椎橋隆幸、土屋美明、永田眞三郎、松村和德の各専門委員

文部科学省

小松高等教育局審議官、澤川専門教育課長、中野専門職大学院室長、小代専門教育課課長補佐

オブザーバー

(ヒアリング協力者)
【日弁連法務研究財団】評価委員会副委員長 浅古弘、評価委員会副委員長 飯田隆、評価委員会副委員長 京藤哲久
【大学評価・学位授与機構】法科大学院認証評価検討ワーキンググループ主査 三井誠、法科大学院評価課長 望月毅
【大学基準協会】法科大学院基準委員会委員長 加藤雅信、大学評価・研究部審査・評価系主幹 橋本孝志

5.議事録

【田中座長】
 それでは所定の時刻になりましたので、第41回中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会を開催したいと思います。どうも今日はお暑いところ、よろしくお願い致します。ではまず、委員の異動があったという事でございますので、事務局よりご紹介をお願いいたします。

【中野専門職大学院室長】
 お手元に7月1日現在の委員名簿を配らせていただいておりますが、専門委員でございました稲田仁士委員より辞職願が提出されておりまして、6月30日付けで辞任される事になりましたのでお知らせ致します。お仕事の都合という事でございます。

【田中座長】
 それでは今日の配布資料について確認をお願い致します。

【中野専門職大学院室長】
 お手元の議事次第に配布資料の一覧がございます。配布資料といたしまして、資料1が前回第40回の本特別委員会の議事録案でございます。お目通しいただきまして、修正等ございましたら、事務局にご連絡いただきますようお願い致します。それから資料2ですけれども、本日のヒアリングの関係でございまして、法科大学院に係る認証評価の見直しに関する留意事項という資料でございます。これは3月12日に本特別委員会でおまとめをいただいたものでございます。それから資料3ですけれども、資料3-1から資料3-3で、法曹養成制度に関する検討ワーキングチームにおける検討結果取りまとめというもの、これは法務省、文部科学省の両副大臣が主宰し、法曹三者等に入っていたただいた会議の検討結果として7月6日に出たものでございますが、資料3-1が概要、資料3-2が取りまとめ本体、資料3-3が資料でございます。
 それから参考資料といたしまして、参考資料1として法科大学院関係基礎資料をお手元にお配りしております。この資料は事務局の方で各法科大学院の調査を致しているもので、1枚目に入学者選抜の実施状況、2枚目に修了認定の状況という事で、前年と比較したものを掲載しております。簡単に申し上げますと、各法科大学院の入学者選抜実施状況につきましては参考資料2でございますが、全体と致しまして、志願者数が平成22年度の入学者選抜で24,014人という事で、前年度から比較してかなりの人数が減っている、約20%の減となっております。志願倍率が4.9倍でございます。それから、(2)の入学者数と致しまして、法学既修・未修の別、それから社会人の入学状況、それから学部系統別の入学状況という事で整理を致しております。未修・既修ですけれども、右の方に合計がございまして、前年度と比べると既修者の割合が増えていると。社会人につきましては合計欄を見ていただきますと、未修・既修共に、取り分け既修につきまして社会人の割合が減っているという事でございます。それから学部系統別ですけれども、1番下が合計、国・公・私の合計ですけれども、法学出身の割合が全体として増えているという事でございます。2枚目の修了認定状況でございますが、平成21年度の修了者数ですけれども、標準修了年限の修了者の割合、国公立を合計致しまして、75.9%のうち、未修者コースは67.1%、既修者コースが91.2%という事で、いずれも平成20年度と比べまして数字的には少ない割合になっていると。数字だけでは分かりませんけれども、厳格な修了認定がよりなされているのではないかと推測されます。それから、(2)として平成21年度に標準修業年限になる方で修了しなかった方の事由別の一覧でございまして、退学が40.3%、その他は原級留置ですとか休学等ですけれども、こちらが59.7%となっています。本日の審議で使用する資料ではございませんが、法科大学院の状況という事で資料を紹介させていただきました。それから参考資料2は、前回委員会で暫定として机上にお配りしていたものの確定したものでございます。入学者選抜状況について、個々の法科大学院ごとの状況等について整理したものを配布させていただいております。また、机上資料といたしまして本日の認証評価に関するヒアリングの関係資料を配布しておりますので、ご確認頂きたいと思います。
 資料について欠落等ございましたら、事務局までお願い致します。

【田中座長】
 ありがとうございました。それではまず、認証評価の見直しについて審議したいと思います。本日は認証評価機関からのヒアリングを予定しております。各認証評価機関におかれましては、昨年4月のこの特別委員会の報告及び、今年3月の細目省令の改正を踏まえて、評価基準の見直しをしていただいているところですが、その進捗状況については、3月のこの特別委員会でご説明をいただいたところです。本日は度々恐縮でございますけれども、その後の見直し内容についても、ご説明いただきたいという事です。各評価機関の評価基準につきましては、机上資料の認証評価機関における評価基準案の比較表にまとめていただいております。この資料を基に3月のヒアリング時点での案から変更された点を中心にご説明いただいて、それについては後程意見交換をさせていただきたいと考えております。それではいつもと同じ順序で、日弁連法務研究財団からお願いします。

【日弁連法務研究財団 浅古氏】
 日弁連法務研究財団の浅古でございます。当財団評価委員会の柏木委員長が本日所用で出席できませんので、副委員長の私からご説明をさせていただきます。前回の中教審のヒアリング以降の変更点でございますけれども、お手元のその評価基準案の比較表の3ページをご覧いただきたいと思います。日弁連法務研究財団のものが1番右側の覧という事でございます。パブリックコメントを求める前に前回中教審のヒアリング後に変更した点がここにございまして、2-1の入学者選抜の解説の部分の(3)のところでございますが、適性試験の最低合格水準に関する基準を削除いたしました。但し単に削除するだけではなくて、その解説の直前の(2)のところに、朱で示されておりますが、「ただし、適性試験は選抜において」の後に、「適切に」という文言を補うという形の変更を行っております。今後適性試験実施機関の対応等が決定した時点で、当財団といたしましては、検討の上、適性試験の取り扱いについて解説部分に追記をする、そういう予定でございます。それからもう1点は、パブリックコメント実施後の変更点でございますが、寄せられた意見を基に検討の結果、共通的到達目標に関する記述を削除いたしました。これはお手元の資料で申し上げますと、8ページの5-2科目構成(2)<科目の体系性・適切性>、それから10ページ6-1授業、それから12ページの8-1成績評価<厳格な成績評価の実施>、及び13ページの8-2修了認定<修了認定の適切な実施>、ここの部分について変更を加えております。今後、第2ワーキング・グループで検討中のコア・カリキュラムが、公表された時点で、その内容等を踏まえて、更に検討の上、解説部分に追記をする、こういう予定でございます。変更点につきましては以上でございます。 

【田中座長】
 どうもありがとうございました。それでは続きまして、大学評価・学位授与機構にお願いいたします。

【大学評価・学位授与機構 三井氏】
 大学評価・学位授与機構の評価基準等の改定にかかる現在の状況をご説明いたします。当機構では、評価基準等の見直しにあたって、法科大学院認証評価検討ワーキンググループを立ち上げました。そのワーキンググループにおいて、適格認定のあり方、基準及び解釈指針の改定等の検討を行ってまいりました。前回のヒアリングの後、3月18日開催の法科大学院認証評価委員会において了承されました法科大学院評価基準要綱案につきまして、3月29日から4月27日の約1か月間に渡って、基準要綱案を、74の法科大学院を置く大学、及び14の関係機関に送付するとともに機構のウェブサイトに掲載し、広く意見照会を行いました。そこで寄せられました意見を踏まえて、5月末の検討ワーキンググループにおいて最終的に検討・修正しました法科大学院評価基準要綱が6月10日開催の法科大学院認証評価委員会において決定されました。現在、文部科学大臣への届出の準備をしているところでございます。
 前回のヒアリング時からの変更箇所ですが、まず、パブリックコメントで寄せられたものを含め、事務的に表現の平仄を合わせたり、より文意が通るように文言の修正を行ったものについては、説明を省略させていただきます。大きな変更となると、次の3点でございます。第1については、資料の18ページ、ルをご覧ください。基準4-2-1(1)ウ、ただし書きですが。基準4―2―1(1)ウは、法学既修者につきまして、入学前に大学院で修得した単位、及び入学後に他の大学院で修得した単位とを併せて、当該法科大学院が修得したものとみなす単位数について定めていますが、前回のヒアリング時におきましては、今後専門職大学院設置基準の改正に合わせて修正するとしておりました。3月10日に専門職大学院設置基準が一部改正されましたので、この改正に合わせるため、ただし書きを追加しました。この文言は専門職大学院設置基準第25条第1項ただし書きの文言の引用となっております。また、19ページに解釈指針4-2-1-1を設けておりますが、これは専門職大学院設置基準の改正に伴う施行通知、及び中教審の特別委員会報告における留意事項に対応して、新たにその趣旨を示したものであります。第2点目は、資料の5ページ、ハの基準8-2-2です。これは法科大学院の専任教員の配置についての規定ですが、実質的にはやや明確さを欠く面がありましたので、それを整備したものです。特段に実質的な内容にまで及んでいないかと思いますので、詳細についての説明は省略いたします。第3点目は、21ページ、解釈指針11-1-1-1です。この解釈指針では、各法科大学院が実施します自己点検評価の必須項目を挙げておりますが、前回のヒアリング後に2点、(1)教育課程の編成、及び(2)成績評価の状況の項目を追加しまして、併せて項目の列挙の順序を整理いたしました。こちらの項目の追加につきましては、教育機関が行う自己点検評価の項目として、不可欠ではないかと考えたからでございます。変更点は以上3点であります。

【田中座長】
 どうもありがとうございました。それでは続きまして、大学基準協会にお願いいたします。

【大学基準協会 加藤氏】
 では、ご報告させていただきます。大学基準協会では、まだ内部での最終的な承認を経ていませんので、今後のスケジュールからお話させていただきます。まず現段階では、第2回目のパブリックコメントを行っておりまして、そのパブリックコメントを反映して、この基準を改正の直接の担当会議体である法科大学院基準委員会が、8月6日に同委員会レベルでの最終案を固める予定でございます。その後、その上部の会議体であり、大学基準協会の全ての基準を審議する、基準委員会での決定が8月25日に行われます。そして、それを受けまして、9月3日に理事会で最終決定を行う予定です。他機関に比べ若干遅れている状況でございます。
 具体的に改定内容に入らせていただきます。3月のヒアリングの段階では、固まっていなかったものも多いものですから、本日は、資料にある大学基準協会の法科大学院基準を使って、もう少し具体的に内容を説明させていただきたいと思います。
 まず、改正の具体的な方向でございますけれど、2点ございます。1つは本協会独自の改定というべきものでして、過去3年の経験、あるいはパブリックコメントの結果を踏まえて、我々自身が改正を考えている内容でございます。第2点は、昨年4月の中教審のご報告、あるいは専門職大学院設置基準の改定、あるいは学校教育法第110条2項の規定についての、細目省令の改正、そういうものに伴って改正したものでございます。
 最初にこの本協会独自の改定をお話したいと思います。今お話しました資料の2ページをご覧いただきたいのですが、この2ページ四角で囲んだ下のところに書いてありますけれど、我々の基準は、今までは「本文」と「評価の視点」という2段階構造になっておりました。ただそれでは分かり難い点もあるということで、「留意事項」というものをつけさせていただいております。この「留意事項」は、基準の2ページに書いておりますように、各法科大学院が大学基準協会の認証評価を申請するに当たって、点検・評価する際に留意していただきたい事項であると同時に大学基準協会が認証評価を行う際に留意する、そういう意味で今までにはなかった、解説的な内容を含んでおります。
 それから基準の5ページを見ていただきたいのですが、この表のところで、我々はレベル1◎、レベル1○、レベル2○、こういう3段階になっております。レベル1◎は、法令遵守事項に関することでして、これについて問題がありますと、原則としては「勧告」を付します。それに対しまして、レベル1○は、この法科大学院に求める基本的事項でして、これに反する場合には「問題点」を付すということが原則にございます。ただレベル1◎の場合であっても、状況によっては「問題点」を付すこともございますし、このレベル1○についても、問題が非常に重要な問題である場合には、「勧告」を付すこともございます。原則例外はこれでひっくり返っております。レベル2○は、問題点、長所ということになります。
 そして、後にもお話致しますが、その下の※に書いてありますように、この勧告の状況を総合的に判断して、教育の質に重大な欠陥が認められた場合は、認定を否とし、そうでない場合には、認定をする、そういう基本構造になっております。
 ほかにもいくつか技術的な点、あるいは言葉を明確にする点、あるいは従来あった注を外す等々の改正点もございますが、それは省略させていただきます。
 ただ今、申しましたレベル1◎につきましては、法例遵守事項でございますので、基本的に根拠法令を明確化して、示すことに致しました。例外的にこの法科大学院の設置の際に、非常に問題があった点で、必ずしも法令が明示できないものについては、例外的に明示しない、そのようになっております。
 それから次は、関連法令の改正に対する対応でございます。まず13ページをご覧いただきたいのですが、この1番下のところに丸括弧で、単位の上限を書いてございます。これは専門職大学設置基準第25条第1項の改正に対応した改正でございます。それから次に細目省令絡みでございますが、20ページをご覧いただけますでしょうか。20ページで細目省令の第4条第1項、第1号関係で、教育活動等の状況にかかる情報の提供に関することは、評価の視点2-47で「修了生の進路の状況及び社会における活動の状況等を、社会に対して公表しているか」という点に反映しておりますし、それから40ページをご覧いただきたいのですが、ホームページや大学案内等により、情報公開を要求しております。それから次に入学者の選抜に係わる多様性の確保、適性の確保、かつ客観的な評価についてでございますけれど、26ページ、1番上の評価の視点4―1でございますけれど、ここに入学者の適性を確保するために、適性を的確かつ客観的に評価するためのものを念頭においた表現をしております。そして評価の視点4-8、27ページでございますが、評価の視点4-8のところでより明確にこの適性試験のことについての言及をしております。それから、更にまたページが逆になって申し訳ないですが、評価の視点4-4のところもこの適性試験のことを念頭においた規定でございます。それから、次にこの共通的到達目標を踏まえた、教育課程編成との関連でございますけれど、法科大学院基準の8ページの評価の視点2-1のところで、法曹として備えるべき基本的素養の水準に沿ったものになっているか、ということがこの問題を念頭においた表現でございます。更に20ページを見ていただきたいのですが、20ページの評価の視点2-44、1番上でございますけれど、そこにも同じ文言を使ってこの旨を示しております。それから司法試験対策に対しての評価でございますけれど、9ページをご覧いただけますでしょうか。9ページの評価の視点2-5で、この授業科目の内容が過度に司法試験受験対策に対して偏していないかと、それから14ページ評価の視点2-25でございますけれど、この正課外での司法試験対策について問題がないか、それから次の15ページの評価の視点2-29で、授業の方法等々が過度に司法試験受験対策になっていないか、そういったいくつかの方面から、この原理をチェックするようになっております。
 それから次に1年間の単位数の上限でございますけれど、法学未修者の1年間の単位数増の問題がございますけれど、12ページを見ていただけますでしょうか。12ページの評価の視点2-17のところで、適切に単位設定がなされているか、ということともに「留意事項」で1年次、2年次、3年次に分けまして、かなり具体的な指示をしております。それから、専門職大学院設置基準第25条第1項に指定する、法学既修者の認定に関することでございますけれど、法科大学院基準の27ページをご覧いただけますでしょうか。評価の視点4-9で、適性に行われているかということを、抽象的に方針を示すと共に、「留意事項」と致しましてかなり具体的にどのような形での認定をしなければならないか、ということを記してございます。
 それから、次に法科大学院を修了した者の進路、司法試験の合格状況を含むに関してでございますけれど、これはまず8ページをご覧いただけますでしょうか。8ページの本文の最後のところで、この事を抽象的な形で示していると共に、具体的には20ページで評価の視点2-45、2-46、2-47で示してございます。特に評価の視点2-45で具体的に示しているところです。その評価の視点2-45では、基本的に各法科大学院に司法試験受験者数及び合格者数、並びに標準修業年限修了者数、修了率に関する情報をまず適切に把握、分析しているか。そして第2に法科大学院の向上的な改善を図るために活用しているか。第3にそれを理念、目的及び教育目標の達成に結び付けているか、という3つのポイントで評価することを想定しております。この評価の視点はレベル1事項でございますので、先程最初にお話しましたように、重大な問題があれば勧告を付し、その他の勧告を付した事項と併せて総合的に判断して、教育の質に重大な問題があれば認定しない、ということになります。
 それから、最後に4条第1項第2号関係、総合評価の問題でございますけれど、最初に申し上げましたように、これは総合評価ということを最小限にうたっております。ちょっと長くなりましたが、以上でございます。

【田中座長】
 どうもありがとうございました。それではただいまの各認証評価機関のご説明につきまして、ご質問等がございましたらお願いいたします。

【小山委員】
 この表でいうと20ページですかね、「法科大学院の課程を修了した者の進路に関する」の冒頭。前回来ていただいた時も、私若干コメントさせていただいているのですが、大学基準協会とか、大学評価・学位授与機構の方では若干の該当事項の修正はあるというようなことで、特に大学基準協会がその後改めていただいているのですが、1番気になるのは、日弁連法務研究財団は、端的にいいますと、司法試験の合格状況について、正面から評価をするような体制にはなっていないのではないか、と思えるのが気になるところです。これは今日の資料にもありますけれども、当委員会の「認証評価の見直しに関する留意事項」で、前回ご指摘させていただきましたけれども、(10)ですかね、「法科大学院の課程を修了した者の進路に関すること」というのは、この「進路について評価する事が求められる。」という風に、正面から書いてあるところでございます。それがですね、日弁連法務研究財団さんのこの書きぶりだと、寧ろ慎重に、司法試験の合格率というものを避けて通っているような感じがして、これでこの改正後の認証評価項目を満たしているのかな、と正直言って疑問でございます。実際は具体的に言いますと、今回問題になっております司法試験の合格率が極めて低い、それが何年も継続している法科大学院というのはやはりかなりの数があって、それは社会的な問題にもなっているのですが、このような基準が適用されますと、結局はそういう法科大学院も問題がないという事になって、逆に認証評価機関が、そういう法科大学院の延命に手を貸すような事になりかねないんじゃないかと、そういうちょっと危惧を感じる内容なんですが、その点はいかがでしょうか?

【日弁連法務研究財団 浅古氏】
 私どもは、司法試験の合格状況につきましては、1-3自己改革、お手元の資料の17ページと、19ページの第9分野法曹に必要なマインド・スキルの養成(法曹養成教育)、それから1ページのところでございますが1-5情報公開、そこで修了者の進路について評価をするという事を考えております。1-3の自己改革のところに、修了者の進路についての評価を持ってきた理由でございますが、17ページの注②をご覧いただければと思います。ここの評価基準におきまして、司法試験の合格状況も含めた修了者の進路を適切に把握した上で、その自己改革がきちんと機能しているかどうかを評価する、こういう事を考えております。この点につきましては、次の18ページの解説の(4)のところで、「修了者の進路」とは、法曹三者(裁判官、検察官、弁護士)、企業、官公庁等の多様な職域への進路をいい、司法試験の合格状況も含まれる、こういう様にしております。また(5)のところで、「修了者の進路を適切に把握し」とは、法科大学院を修了した者の進路を、可能な限り把握する事をいう、とありまして、このようなことを前提にしまして、自己改革が適切に機能していることを評価するといたしております。何をもって評価するのか、機能していると評価するのか、あるいは機能していないと評価するのか、という事につきましては、事案ごとの判断になりますが、例えば入学試験の倍率が極めて低く、定員割れが数年にわたって継続している。司法試験の合格状況も芳しくない、それにもかかわらず入学希望者を増やすための工作だとか、授業内容、教育方法、教育体制の改善等、教育体制を向上させるための工作等を講じないまま、漫然と過ごしてきた。こういう場合には、当然その自己改革が機能していない、こういう評価になろうと思われます。他方、司法試験の合格率が数年にわたって一環して芳しくない状態であったとしても、自己改革を真摯に行っていて、在学生の成績も向上を始めている、勿論その前提と致しましては、厳格な成績評価がなされているという事が必要でございますが、いずれその学生が修了する頃になれば、その改革の成果が合格率につながってくるであろうと、こういうように見込まれるというような場合には自己改革が機能していると評価する事になろうかと、このように考えております。逆に、司法試験の合格率が数年にわたって、一環して上昇傾向にある、しかしながら実際にその法科大学院の教育の実態を見た時に、例えば在学中に法科大学院と関係ない予備校での受験勉強によって合格した者が増加しているとか、あるいは、3年次に1単位だけ残して、故意に留年をし、1年間法科大学院で法科大学院と関係のない司法試験の受験勉強だけをしている、こういう事によって修了した年に合格している例が多く見られるとか。あるいは、そもそも法科大学院において、単なる受験技術に特化した教育がなされてしまっている、こういうような場合には、やはり合格率が上昇しているからといって、本来のあるべき法科大学院教育がなされている、という事にはならないのではないかと考えます。つまり、合格状況それだけで、プラス評価とかマイナス評価をするという事は出来ないのではないか、と私共は考えている訳であります。そういったような合格状況になっている原因だとか、背景事情如何によってプラスにもあるいはマイナスにも評価されるのではなかろうか、こういう事でございます。また、当財団の認証評価では、第9分野というところで、法曹に必要なマインドとスキルの養成という評価基準を立てております。これはお手元の評価基準・規定をご覧いただければと思いますが、113ページ以下にその法曹に必要なマインドとスキルの養成という事を掲げております。このマインドとスキル、これは当然社会から期待される法曹となるために備えておくべきマインドとスキルを備えた者が、修了するようになっているかどうか、これを評価しようという事でございます。入学者選抜から修了認定までの全教育課程を通じての法科大学院の目的、及び使命の達成状況、成果も問われている。こういう事で、この第9分野で総合評価という事で修了者の進路というものも評価の中に含まれてくるという事だろうというように考えているところでございます。例えば、5年間合格者が0だったという極端な例で、そういう場合はどうなるのかという事でございますけれども、勿論その法科大学院は法曹養成機関として機能しているという事はいえない訳でありますから、当然不適合という評価がひとつの基準となって、そこから一体どれだけの改革をしているか、適合と判定するような改革が行われているのかどうか、そういう評価になるのではないかと、こういうように考えている次第でございます。

【小山委員】
 お気持ちは分かるのですけれども、この認証評価という制度もですね、毎年相手を評価する制度ではないという、5年に1ぺんという極めて長期間にわたるスパンの制度だという事をですね、もうちょっと考えていただいた方がいいのではないかなと思うのです。 というのは、大学基準協会とかですね、大学評価・学位授与機構の方はやっぱり教育目標の達成に結びついているかとか、達成されているという事が評価基準になっているのですが、日弁連法務研究財団さんのように、「組織体制が整備され機能している」ということだと、ちょっと上向きになっているというと、5年間の猶予期間が働いているという事になるわけです。これはですね、本当に現に学生さんがいてですね、それは自己責任なのかもしれませんけれども、極めて不良なロースクールの学生さんから見てですね、それが本当に認証評価として適切なのかについて、私は個人的には非常に大きな疑問を持っております。それから、大学評価・学位授与機構の方では、更にこういう基準のような、更にこの下の考え方のようなものを作られるという話もちょっと噂で聞いた事があるのですが、そういうような事は考えられているのでしょうか? 

【大学評価・学位授与機構 三井氏】
 修了した者の進路に関してどういう風に考えているかという概要について説明した上で今の点を説明しましょうか、それとも今の点だけ説明しましょうか。

【小山委員】
 では、是非考え方についてもご説明いただければと思います。

【大学評価・学位授与機構 三井氏】
 今話題になっております点については、20ページ、21ページが大学評価・学位授与機構において関連する規定であります。修了者の進路及び活動状況の扱いについて概括説明しますと、大学評価・学位授与機構では、修了者の進路及び活動状況については、3つの基準において検討しているところです。まず、20ページにありますように、基準1-1-2、これは法科大学院の教育を通じて、教育の理念及び目標が達成されていることという内容ですが、その達成されている状況というのは、解釈指針1-1-2-1にありますように、修了者の進路及び活動状況として司法試験の合格状況などを含めて総合勘案して判断するという構造になっております。また基準6-2-3では在籍者数、入学者選抜における競争倍率、専任教員数、修了者の進路及び活動状況を総合的に考慮して、入学定員の見直しを含む入学者選抜の改善への取組が適宜行われているかを確認することとしており、ここでいう修了者の進路や活動状況とは、先程解釈指針1-1-2-1で説明しましたように、司法試験の合格状況などを考慮すると定めているところです。特に具体的な面では、この基準11-1-1、次の21ページの上ですが、各法科大学院に司法試験の合格状況等を踏まえた、自己点検及び評価の実施を求めるとともに、その結果を法科大学院の教育活動等の改善に活用していることを評価の対象とすることとしております。基準11-1-1で、自己点検及び評価については適切な評価項目の設定に基づいて実施されることとしておりますが、解釈指針11-1-1-1で、適切な評価項目として次の括弧に掲げる内容を含めた評価項目が設定されており、修了者の進路及び活動状況については、先ほど申し上げました合格者の状況を定めております。これは中央教育審議会報告や細目省令の改正における留意事項、さらには法科大学院における認証評価の見直しに関する留意事項等を踏まえて、定めたものであります。
 それでは、実際にどのように評価すること事になるか。各法科大学院において、過去の一定の年数、基本的には認証評価のサイクルに関しまして、5年程度が目安になるかと思いますが、その範囲における司法試験の合格状況を含めた、修了者の進路及び活動状況についてどのように各法科大学院が捉えているか、そして改善が必要と判断するのであれば、どのように改善を行っているのか、またその改善の方策は、実効性のあるものであるか、このような事項について、見ていくこと事になるかと思います。その中で、修了者の進路及び活動状況に関する分析が不十分である場合や実効性があると考えられる改善方策がとられておらず、実際に改善の兆しが見られないという場合には当該基準において改善すべきとの指摘をなされることが生じてくるでしょうし、さらには、その程度が甚だしい場合には、基準に達していないという対応を余儀なくされることも考えられます。なお、これらの基準は、重点基準としておりますので、その基準を満たさない場合には、他の基準の判断結果と総合的に考慮して、不適格となる可能性も十分ありえます。ただし、修了者の進路及び活動状況の自己点検及び評価と改善への活用というものは、当該基準の評価における要素のひとつであり、また、入学者選抜とか、教育水準の確保・向上、並びに厳格な成績評価、及び修了認定の徹底等について、有効な方策が講じられていたとしても、それらが数値として現れるまでには多少のタイムラグがあることも否定できません。そこで当該法科大学院において、十分な自己分析の下に、有効な改善策が講じられており、改善の兆しが芽生え、あるいは期待されると判断されるということ事であれば、評価実施年度でも合格率等の数値が低いことを理由に、直ちに当該基準を満たさないものとはしないといった、数値において杓子定規的に評定するようなことにならないよう、十分に配慮した運営も考えられるところです。そうはいいましても、実際に各種の改善の方策を講じて、努力をしていながらも、一定期間を経ても改善に結びついていない、つまり有効に機能していないと判断する場合には当該基準を満たさないこととなるかと考えています。具体的には、前回の評価では、改善方策が講じられ、改善されるとして、基準を満たすものと判断をしたものの、次の評価の時点において、修了者の進路及び活動状況に実際に改善が見られない場合には、一般には自己点検評価が機能していないとみて、当該基準は満たさないと判断することになるかと思われます。その上で、先程の修了者の進路及び活動状況に関する合格者の状況等についてですが、これはその後、Q&Aでもう少し、細かにこの合格者の状況というのが、どういう内容のものであるかを記載すること事になるものと考えております。以上です。

【小山委員】
 どうもありがとうこざいました。

【日弁連法務研究財団 京藤氏】
 当財団の浅古副委員長の説明に少し補足させていただきます。この比較表の日弁連法務研究財団の20ページでございますが、合格者の状況について、どこでチェックするかですが、自己改革の基準をご覧いただきますと、「組織・体制が適切に整備され、機能していること」となっておりまして、整備されているだけでは駄目で、機能していることも必要となっており、合格状況が不十分であった場合に自己改革に結びついているかどうかということで、一応チェックをするという形になっているということは、ご理解いただきたいと思います。それから第2点でございますが、これは今日配付されております、資料2でございますが、法科大学院にかかる認証評価の見直しに関する留意事項という資料の3ページの(10)が、先程浅古副委員長から説明があった司法試験の合格状況を含む問題についての指摘事項と思いますけれども、まずここには進路について評価することが求められる、と書いてありまして、私共はこの基準を評価基準に落とし込む作業を厳格に行うことを追求しております。進路については法曹三者への進路のみではなく、それ以外の多様な職域への進路を含むものとして一応この点を書き込んだ上で判断をする。そのうえで、その特にというところで、数値的指標のみで判断するのではなくて、教育内容・体制の見直しが適切に実施されているか等、取組について総合的に評価されるとしています。この枠組みの中で各状況について判断しながら、厳格に行うことを考えております。決して司法試験の合格者の状況といったものがですね、法科大学院のパフォーマンスとの関係について出来るだけ切り離そうと考えられている訳ではございませんので、この点は評価項目の仕組みを是非読み込んでいただければと思います。それから過去にも、これはこの新しい基準ではございませんが、私共が評価をした法科大学院のひとつが撤退を表明しましたけれど、その時にも色々な状況を精査して判断をして、存続に手を貸すという言葉はあまり適切ではありませんけれども、法科大学院側としてどういう風に判断するかという点で、当財団の評価がそれなりの影響があったのかと思います。その点はご理解願えればと思いまして、ちょっとコメントさせていただきました。

【小山委員】
 実際の評価としては、今ある大学について、きちんと日弁連法務研究財団として評価されていると思うのですが、ただやっぱりこの評価項目というのは、非常にメッセージ性が高いし、社会に対する影響も大きいものではないかと思うんですよね。ですから、個々に見ていけば、ちゃんと出来るようにするんだという事をここで今言われているんだろうと思うのですけれども、ちょっと正直いいまして残念な感じがするんです。認証評価にちょっとこれからは期待したいと思っていたものですから、そのメッセージ性という事ですね。

【田中座長】
 特にこういう問題があるという事ではないのですね。他にご意見はありますか。
 度々恐縮でございます。では、各認証評価機関におかれましては、ただいまの意見交換を踏まえて、この留意事項とか細目省令の改正内容が十分活かされますように評価基準の改定に御尽力をいただきたいと思います。暑い中ご足労いただきありがとうございました。
 では、次にその他の事項でございますが、文部科学、法務両大臣が主宰しました法曹養成検討に関する検討ワーキングチームの検討結果についてご報告いただきます。このワーキングチームにおきまして、法曹養成制度の問題点等について検討されてきた事は既にご承知の通りでございますが、7月6日に検討結果がとりまとめられて公表されています。それに関しては、このワーキングチームの委員としてご苦労いただきました井上委員から、検討結果についてご説明いただきたいと思います。井上委員と鎌田委員が加わっていらしたわけですが、鎌田委員はお休みでございます。よろしくお願いいたします。

【井上座長代理】
 お手元に資料3-1から3-3までまいっているかと思いますが、その内3-1、3-2を適宜ご参照いただきながらお聞きください。このワーキングチームは、新たな法曹制度について各方面で様々な問題点の指摘や懸念、あるいは批判が示されてきたことをも踏まえ、制度全体が悪循環に陥っているところがあるので、早急に問題点の検証を行い、法曹養成制度を全体として改善を図ることが必要であると法務大臣及び文部科学大臣が判断されまして、その第1歩として、法科大学院の司法試験及び、司法書士を連携させた新たな法曹養成制度の問題点ないし論点を検証し、これに対する改善方策の選択肢を整理するという目的で法務、文科両省共同で設けられたものであります。具体的には法務、文部科学の両副大臣の主宰の下に、資料3-2の別紙1 に添付されている名簿のように、両省及び法曹三者と、法科大学院関係者として特別委員会の委員でもある鎌田教授と私が参加し、併せて10名で構成され、また両省の大臣政務官も出席されて、本年3月1日の初会合以来、法科大学院修了者や実務教育経験者を初めとする関係者のヒアリングを含め、6月25日まで、11回の会合を重ねました。また司法研修所や、2つの法科大学院の視察をも行うなどしまして、問題点ないし論点を抽出、整理するといったことや、それらを解決するための改善方策の選択肢としてどういうことが考えられるのかを整理する。そして、その改善方策を更に具体化し、決定していくためのフォーラムといったもののあり方について検討するということを行ってきました。その結果としてまとめられ、7月6日に公表されたのが、お手元の資料3-2であり、資料3-1はその概要を記したものであります。委員のみなさま方には予め配布され、お目通しのことと思われますので、簡単に概要だけご紹介いたします。資料3-2の5ページを開けていただきますと、基本的な視点と全体の構成についての解説が書かれておりますが、まず基本的に、新たな法曹養成制度は司法制度審議会が提言した理念及び制度設計に基づいて形作られたものであることから、このワーキングチームにおいても、それを踏まえて、現状がこの審議会意見の提言等に沿うものとなっているかどうかという観点から問題点ないし論理点を検討したということであります。そして、検討のしかたとしては、これらを総合的に色々な面から検討した訳ですけれども、取りまとめにおきましては、それぞれの論点、すなわち法科大学院教育、新司法試験、新司法修習という事項ごとに、問題点ないし論点、及び改善方策の選択肢の整理を行っている。これが、中核部分です。それに続けて、その他全般に係る事項として、法曹養成制度の全体の見直しとか、それに係わる条件のような点について、第6から第8までで問題点等を指摘、整理しております。そして、最後に、今後の改善方策の更なる検討と、それをどういう風にして決めていくのか、その場としてのフォーラムというものの在り方ということが、第9で示されています。
 最初に申し上げたように、このワーキングチームは、改善方策を決定するという場ではなく、色々指摘されている問題点あるいは論点を分析・整理する、そして、それに対して考えられる改善方策の選択肢を整理するというのが目的でしたので、如何なる改善方策を選択すべきか、というところまで絞り込んで書かれてはおりません。
 また、意見が分かれたところについては、その分かれたとおり、複数の意見を列挙する、という形になっていあます。そして読んでいただくとわかると思うのですが、「意見」と書かれているところと「指摘」と書かれているところがあると思うのですが、「意見」というのは、このワーキングチームにおける委員の議論あるいはヒアリングの中で出されたものを指すのに対して、「指摘」というのは、その他のいろいろな方面で示されてきたようなものを拾い上げたものでありまして、そういう使い分けがなされています。
 中身についてごく簡単に見ていきますと、第3が法科大学院についての部分ですが、本特別委員会の委員の方々がご覧になれば、なんだ今まで自分達が議論をし、既に去年の4月に改善方策を提言している、それとそれ程違わないのではないかという印象を持たれたと思いますけれども、このワーキングチームでも、基本的に本特別委員会の検討の結果及び提言を踏まえて検討し、取りまとめを行ったものであります。そういう意味では、新味はないように受取られるかもしれませんが、注目していただきたいのは、資料3-2の11ページの法科大学院の入学試験に関するところでありまして、これは概要の方にはより簡潔にまとめられておりますので、それによりますと、法科大学院の入学定員の更なる見直しが必要であるとの意見が大勢を占めたとされておりまして、これは文字通り大勢を占めたというっことであります。その点をどういう形で見直しを進めていってもらう必要があるのかについては、それに引き続く部分で、いくつかの指摘が書かれておりますが、最後のところで、改善が進んでいない法科大学院に対して統廃合を含む組織見直しを促す必要があることについては異論がなく、これを実効的に促進するため、財政的支援の見直しや人員的支援の見直しといった処置を検討するべきであるとの意見があった。そういうまとめになっております。これは、既に本委員会でも、改善あるいは統廃合を含む組織見直しをさらに促すために、より実効的な措置をとるべきだという意見を取りまとめたことは記憶に新しいところだと思いますが、今回のワーキングチームにおいても、それをより強力に推進することを考えるべきだという意見があったということであります。
 その次の新司法試験については、17ページ以下にいろいろ書かれておりますが、概要の方を見ていただきますと、(1)が司法試験の方式及び内容ということで、そこに書かれてあるような両様の意見がありました。(2)が受験回数制限に関してであり、(3)が合格基準及び合格者決定の在り方ということで、これについては、合格基準の適正さ等について疑問があるという意見、合否判定の在り方をより合理的なものにすることを求める意見がある一方で、何が適正な合格水準かについて様々な意見があり、合否判定の在り方などにつちえの工夫もどの見解に立つかによって異なり得る等々の意見があったということです。この点はちょっと付言しますと、新司法試験については、これまでの本委員会でも断片的には話題に上った事はありますけれど、本委員会の所掌の範囲を超えるところもあり、踏み込んで議論してはきませんでした。また司法試験を所掌する司法試験委員会等の方でも、批判的な視点をも入れた検討というものは必ずしも行ってきていなかったという風に思われますので、ワーキングチームでは多様な意見があった訳ですが、この様な論点が整理され、提示されたということは、今後、新たな法曹養成制度を全体として捉え、司法試験のあり方を含めた改善策の検討を進めていく上でひとつの有用な手がかりとなるのではないか、と考えております。
 第5の司法修習に関する部分では、資料3-2の23ページ以下に、法科大学院教育との連携についての記述がありますが、ここに特にご留意いただきたいと思います。第6から第8では、制度全体ないしはそれを取り巻く環境についての問題点や意見が示されていまして、本委員会での今後の審議の上でも参考にしていく必要があると思われます。最後に第9で、このワーキングチームによる問題点ないし論点の整理と改善策の選択肢の整理を踏まえて、更に具体的に検討をしていくための開かれた議論の場、フォーラムというものを設けることが必要であると指摘されております。ただ、その具体的なあり方やどこにいつ頃設けるのかといった点につきましては、いくつかの意見があり、政治的な判断を含め様々な考慮が必要となるということから、今後の検討に残されました。
 この様に今回のワーキングチームの検討とその取りまとめは、問題点、論点とそれに対する改善策の選択肢を整理したというのに留まる訳でありますが、制度を構築する際には、、法科大学院での教育と司法試験、司法修習を連携させた一体としての制度を総合的に捉えて、議論をしたのでありますけれども、一旦出来上がってしまいますと、その後は、それぞれ個別に別々の場で問題状況を点検したり議論し、は改善策を立てるということで。別々の場で別々にやってきている。しかし、やはり全体として総合的に検討していく必要があったわけで、それが欠けていたのを、今回の法務省と文部科学省の両省の垣根を超え、また関係者も同じ席について、問題認識をすり合わせ、論点整理が出来たということは、大きな意味があったのではないかと思っております。以上です。

【田中座長】
 どうもありがとうございました。ではただ今のご説明につきまして、ご質問、ご意見、とくにこういった検討結果を踏まえてこの委員会でどういう事を審議するべきかとか、あるいは設置が提言されているフォーラムについてこういうものがいいのじゃないか、というようなご意見がございましたら、よろしくお願いします。

【磯村委員】
 状況のご質問なんですけれども、先程その、ある問題については意見が大勢を占めたというご指摘があり、しかしその他は両論併記であるというご説明だったと思うのですが、問題点によってまとめ方の難しさにもよるんだろうと思いますが、例えば多くはこういう意見だけれども、そういう中にそれに賛成しない意見もあったというようなニュアンスを含んでいるのか、ちょっとその世論併記なニュアンスが色々あったのがどうかという事をもし、お聞かせいただけるとありがたいなという風に思いました。

【井上座長代理】
 そこは、このまとめを作るときにも神経を使ったところで、「○○の意見があったが、○○の意見もあった」という風に書くと、後ろの方が優勢であったかのような印象を与えるのではないかということで、書き方にもかなり配慮がなされているのですが、それらのところは、特にどちらかに傾いたということを意味するものではありません。明らかに委員がほぼ一致して、こういうことが必要だとか、こうすべきだという意見であったところについては、さきほど触れたような、圧倒的多数がそのような意見であったというふうに、はっきりとした書き方がされております。

【有信委員】
 今回の資料をざっと見させていただいて、全体の関連がかなりつかめたと思うんですけれど、その中でちょっと気になったのは、最初の法曹審議会の話があってそれを受けて、その閣議決定がやられてましたよね。その閣議決定のところで1番最初に国際化の話が出ていて、それを踏まえてその最初の制度改革委員会もおそらくそれを視野に入れていたと思うんですけれども、今回のワーキングチームの議論の中では、そのバックグラウンドとしての国際化の話が、あまり見えて来なかったというのと、現状の例えば弁護士の就職難だとか、途中途中で出て来ている様々な問題の方がクローズアップされていて、その背景の部分についての議論は、どうだったのでしょうか?

【井上座長代理】
 法曹の進路について司法制度改革審議会というか、司法制度改革が本来目指していたのは、狭い意味での法曹の分野に限るのではなく、社会や国際的な場など色々な面で専門的な法律知識・素養を活かしながら貢献できる人材を作るというのが目標であった。その一つの重要な部分を占めていたのは、おっしゃる通り、国際的な舞台での活動なので、そういう人を育成するよう教育をしなければならないというのも当然ですし、また司法試験の問題についても、そういう視点からすれば、狭すぎたというような意見も十分あり得ると思います。ただ、いま問題となっているのは、そういう夢のあるというか、大きな目標というものに行くずっと前の問題として、制度の現実が切羽詰った、かなり危機的な状況で、しかもマイナスのスパイラルに陥っているところを、いかにしてプラスの循環に持っていくべきかというっことでした、そのために出来るだけ早急に何をすべきかということなのですね。ワーキングチームにおいては、そういった問題が議論の中心を占めたものですから、おっしゃったような印象を持たれるのは、やむを得ないとことがあります。

【小松高等教育局審議官】
 議論の焦点はまったく井上先生のおっしゃる通りのまとめだったので、経緯というか閣議決定に沿って必要な事は参照できるようにしようという事で、法務省の方でも色々工夫され、我々も相談しましたが、今の国際化のところなんかはあまり書いておらず、「はじめに」のところで書いておりまして、全部盛りこめられるこの「資料」というものが発表されて、ここでの司法制度改革審議会意見書や閣議決定など、まさに国際化の部分とかを含めたものを付属して、全体としてはそういうものがわかるようにはしてあります。

【有信委員】
 だから最初の部分の意気込みがそうなっているのに、今回のワーキングチームの検討結果のところでそれが書かれていないということはどういう事なのでしょうか。

【小松高等教育局審議官】
 そういう意味では、文面上はそういう事でいこうとはなったんですけれど、まとめのエッセンスの部分には、そこまで議論がいかなかったという事です。

【笠井(治)委員】
 先程井上委員のお話ですと、フォーラムのあり方、それから発足時期で何処にそれを作るのかという事を含めて、政策的な決定の問題もあるのでまだわからないという風なご説明だったと思うんですね。一方で、これだけ負のスパイラルに入っているというこの問題についてですね、せっかく両省相寄って、こういうワーキングチームで論点整理といいましょうか、選択肢の整理をしたという事がある状況の中でですね、この機会を活かさない理由はないだろうと思ってはいるんですけれど。勿論政権の問題はあるという事は当然なんですけれども。
 そこで伺いたい事は、要するにフォーラムの発足時期、その他もう少し具体的なものを全く白紙の状態なのか、どういう状況を見込んでいるのかという風な事がもし分かれば教えていただきたいという事が1つ、それからより具体的になってしまって申し訳ないんですけれども、先程井上委員のご説明によりますと、司法試験のあり方についてですね、透明性行使基準の客観性、合理性等について、一方でこの中教審の特別委員会では、所掌事項ではないという事からそれに基本的には触れるという事ではなくて、断片的な議論に踏みとどまったと。他方である意味でその検証的な、批判的な観点から、司法試験委員会において、その新司法試験の問題をもう一歩批判的な面を持ちつつ検討するという意味での取り上げ方がなかったところに、このようなワーキングチームが出来て、様々な意見が寄せられたというか、議論されたと。選択肢が実施されたという事があった点に特別な意味があるという風におっしゃったと思うのですが、それを含めましてですね、今後かなりその新司法試験の問題というのは、重要な問題だと思いますので、その点は速やかに取り上げる等のために、一体今後の時間設定なり、その場所の設定なりがですね、どの様に進むのかもし情報があれば、この場で語る事が適切かどうかわかりませんが、教えていただきたいなという風に思っております。

【井上座長代理】
 私としては、全くわかりません。これから両副大臣において、そのように処置されるのかでしょうね。ただ会議の最後のところで、加藤副大臣も鈴木副大臣も、今回の問題は非常に重要な事柄であり、ここまで整理をした以上は、出来るだけ速やかにそういう次のステップを取ることを考えたいとおっしゃっていました。
 2つ目の点で、新司法試験のところは、特別な意味があるとまで言ったつもりはないのですが、初めてその問題も取り上げられて議論の場にのったという事はやはり意味があると思っています。ただ、非常に難しいのはですね、現行法では、司法試験の合否は考査委員会議の合議を経て司法試験委員会が決めるということになっており、守秘義務がかかった場で、外からは分からない形で決められるので、正確なところが必ずしもつかめませんので、どこの場でどういう形で議論していったらよいのかということです。今回のワーキングチームにおいては、私などは、そこをかなり踏み込んで、思い切ったことを言ったのですが、そういった突っ込んだ議論ができる場としてフォーラムというものが設けられ、そこでの議論を受けて、司法試験委員会なり考査委員会議でお考えになるという形になるのかどうかですね。ともかく、新司法試験の問題をも含めて、全体を連携させて考えていかなければいけないことは間違いありません。これまでは、法科大学院の教育が悪いんだ、いや新司法試験の方が悪いんだと、それぞれ別々に言いっぱなしだったのが、ひとつの場で両方付き合わせて、連動する形で議論をするきっかけになるならばいいなと願っています。

【笠井(治)委員】
 お答えいただく方を間違えたようです。すみませんでした。

【小松高等教育局審議官】
 これから具体的にどうするか、先程ちょっとおっしゃいましたが、政権全体の動きも含めて検討しながら日程とかも考えていくという事で、それをすぐ決めないとこれを出せないという格好でやっているとなかなか出来ないので、とりあえず1回ここで中間まとめのようにして、その状況なり重複するのを見ながら考えたという風に受け止めて、私共事務方としては対応しております。

【永田委員】
 入学定員の見直しのところですけれども、特別委員会のところでも統廃合を含む組織見直しということが言われておりますが、これは統合するほとんどの区分が国立だったのかもしれませんが、廃止を含む統廃合とは、統合して一方が廃止されるという吸収合併だったり、あるいは対応が遅れる形の統合という事を考えているのではなくて、統合もあり、廃止もあるという事の意味でしょうか。 

【井上座長代理】
 私の受け止め方としては、廃止ということも当然含まれていると思っています。

【永田委員】
 でそういう事で、この組織見直しを促す事は必要であるというのは異論がないのですが、その次に措置としては財政的支援と説明出来ると思うのですけれども、この最終的に今おっしゃった廃止も含む、そういう動きにどういうものを持っていくのかという事が非常に重要だと思うんですね。第3ワーキング・グループでここの関連については、毒どころか皿まで食おうとしているわけですけれども、やはりそこは先程おっしゃったように大事なところで、それぞれがどういう役割でどういう方向にこれを持っていくかという事が極めて大事だと思うのです。と申しますのは、法科大学院というのは唯一のその新司法試験受験資格を与える機関であって、それが十分な競争性を持っていない、そして出口も重要な成果を上げていない。こういう状況の中で、これは放置出来ない状態である事は確かで、それをどういう風に持続させていくか、廃止も含む、それはそれぞれの機関が考えなければならない事ですが、先程の前の議題で認証評価機関にある程度それを見直しをと、いうところがあるのかもしれませんが、しかし認証評価機関も法令違反について正面から不適格校を出すという事はできるのですが、必ずしもこれは法令違反に持っていけるかどうかと、そもそも法の基本といいますか、制度の基本かもしれないので、それに該当するかもしれませんが、そこでこの仕組みを使いますと、結局文部科学省は認証評価機関から報告を受けると、文部科学省はこれに対して法令違反があれば勧告を出すと。そうするともう1回これは法令違反なのかと、自分の成果をあげていないのはというような問題にぶち当たる訳ですね。そのあたりはきちっと理論的な整理をしておかなければならないと同時に、それぞれがそういうところまでいかなくても、どういう形で最後きっちりと再編成していくかという事をそれぞれの役割がこの委員会を含めまして、文部科学省ではその事に関して考えなければならないと僕は思いました。認証評価機関にある程度期待しても、最後はやはりその統廃合に関わる判断というものは文部科学省がするとすれば、勧告・廃止という事しかない訳ですから、そこでまた同じ問題が見つかるという事です。そういう事にするという事なのか、あるいはもう少し色々な方策でそこに収束させるということなのかは共通に考えなければならないと思います。ここで出ているのは、人員の派遣をしたりとか財政的な支援の見直し、それを実行しなければならない年もあるかと思います。これは僕の意見です。これからそれぞれお考えいただきたいという風に思います。以上です。

【有信委員】
 この定員の見直しについては大勢の意見が一致しているという結果でしたけれど、ちょっと見当外れになるかもしれませんが、負のスパイラルという話がですね、実は現在中教審の中でも大学院の問題を色々議論していますけれど、至る所である訳です。例えば博士課程への進学者が、本来世界的にみると増えなければいけないはずなのに、減少傾向にある。あるいは、海外に出て行く留学生が本来はこの国際化の中で増えていかないといけないはずなのに、どんどん減っていって増えない。今年はハーバード大学の学部の日本人の入学者はたった1人しかいなかった。といって、ハーバード大学の方でびっくりして連絡してきたという話を聞きましたけれど、こういうその負のスパイラルが至るところに起きていて、その優秀な学生が法曹を目指す人たちが減っているというような状況は、実は色々なところで起きているのですね。これは日本の若い人達のどちらかというと内向き志向だとか、保守化だとかそういう傾向もかなり影響しているんだと思います。これに対して、実はその制度改革によってこういう傾向を何とか打破したいという事で、様々な分野で様々な分野で様々な方策を考えている訳です。だから、是非今後の議論をする時もその辺まで含めて考えていかないと、ただ単にその数が、優秀な学生が少ない、これは定員が多過ぎる、だから定員を減らせば優秀な学生がくる、こういう議論になりがちなんですけれども、博士課程の議論についていうとその方向には今いっていないんですね。だから、入学者の数が減っていったら店員を減らそうとかそういう方向には行ってなくて、寧ろ優秀な学生をいかにしてドクターコースに向けるかという方向で制度改革をやろう、という方向で今いろいろ議論が進んでいますけれども、是非その辺のところの考え方をもう一段広げる必要があるような気がしまして、そうしないと日本そのものがどんどんみんなそのスパイラルに入ってきて、実はその企業にも傾向がある訳でして、これは多分いろいろな意味で、日本が過渡期にある中でやはりきちんとした手を打っていかなければならない、こういう状況にあるんだろうと想像していますけれど、その辺のところまで含めてできるだけ狭い範囲に限定しないで議論を進めていただければいいと思います。感想です。

【井上座長代理】
 今の点は私どもも認識しておりまして、一般的な背景事情としては文系離れということがあるのだと思うのですね。法学部志願者もかなり大幅に減ってきている。ただ、その問題と法科大学院について数が多すぎるという今われわれが議論している問題とはちょっと違うところがありまして、法科大学院の入学定員が多過ぎるのではないかということから、新司法試験の合格率をかなり低く下げる結果を招いており、その結果として、例えば社会人や非法学部出身者の入学志願者が当初に比べて激減している。また、法学部出身者でも、優秀な人達が法科大学院に進学して法曹になろうとするのをためらう傾向が出て来ている。そこを何とか改めていかないと、優秀な人材を受け入れて良質の法曹として育てていくという当初の目的が実現できない。その関連で、入学定員の問題が出てくるという訳です。もちろん、法科大学院が十分な教育をし、司法試験も資格試験としての趣旨どおりに機能して、人為的に設定した合格者数の目標などは軽く上回るだけの人達が合格ラインに達しているというような状況ならば話はまったく異なるのですけれども、現実には、法科大学院の修了者である受験者の質が問題とされる状況にある。私は、質が悪い、あるいは学力が不十分だから合格者数が増えないのだという主張ないし説明については、根拠が十分でないところもあり、全面的にその通りだということはできないと考えていますけれども、問題点の指摘には当たっているところも少なからずあり、それらについては、法科大学院側として改善していくよう努力するべきで、その一環として、入学定員についても適正な規模にするよう、やはりもう1度見直さないといけないのではないか。そういうことなのだろうと思うのです。

【永田委員】
 若干関連するといいますか。今、質の問題で、問題のある法科大学院をどういう風に縮小させていくかが問題なんですが、一方でかなり優れた効果をあげて、その残りの全部とはいいませんが、20数校は相当いい人材を出していると思うんですね。その中で、この負のスパイラルで、この制度の存亡に係わる時に、まずなかなか進まないのかもしれませんが、先程井上委員がおっしゃったように、この上質の法科大学院が多数の上質の学生を出している訳です。これは一体、法曹養成として、その実務と議論との間で今のバランスがいいのかとか、その研修の制度というものをどういう風に考えたらいいのかという、少しそちらの前向きな事もですね、同時に考えて変更していかないと、これ閉塞して停滞したままですから、恐らく磯村委員とか工夫されてこのカリキュラムを作られたと思うのですが、この後どうするか、あるいは現在のこの法曹養成制度としてはこれだけいい教育も始まっているし、それにいい学生も来ているというところで、それをどうするかという問題も最後に少しお話になりましたけれど、その辺も並行して考える必要があると思うので、今大変な時にこんな事はと思いますが、そっちも考えておかないと、やはり全体の日本の法曹の質という事に対する我々のメッセージというのは、不足していると思うんです。よろしくお願いします。

【田中座長】
 私は立場上少し発言しにくいのですが、法曹養成制度の問題点について、法科大学院だけを議論するのではなく、司法試験、司法修習等を含めて、いっしょに検討する必要があるというのはそれでいいのですけれども、検討に直接加わっているメンバーをみると、利害関係者だけで議論しているところに問題があると思われます。それからいろいろ問題点を見ると、法曹の活動スタイルとか、法曹資格の問題とか、法科大学院の内的な努力によって改善できる点と、外的な条件・環境をいろいろ変えないと上手くいかないという点が両方あるので、外的な条件・環境の問題から切り離して、法科大学院の教育の質をどうのこうのと言っても結構無理があると思われます。客観的にみて、法科大学院制度によって質のいい法曹がたくさん養成されるようになったという事は間違いがないわけで、従来の法曹養成システムでは、法曹志望者も、こんなシステムでは・・・と敬遠していて、大学卒業者の正規の就職先として法曹は特異な存在だという状況は是正されたと思います。法曹の増員という話は、法科大学院の教育を良くすれば増えるというのではなくして、弁護士会があれこれ消極的なことを言っているけれども、要するに業務スタイルの改善とか、何も努力しないでそれで数が増えたから従来のようにやっていけないというような話をしている限り、法科大学院のサイズをそれに合わせて縮小していこうという問題になってしまうだけです。結構根の深いところがあって、あまり法科大学院だけで問題を抱え込んでなんとかしようとしても無理なところがあり、弁護士の業務スタイルの改善など、外的な条件の改革も併せて考えないと、その検討の仕方自体がまさに負のスパイラルを増幅しているというところもあるという感じがしますね。

【小山委員】
 ちょっとよろしいですか。最近、新聞に出ましたけれど、司法修習生が就職難だというんですね。これは個人的な見解なんですが、ひとつ思うのは、自分は弁護士ではないからかもしれませんが、本当にイソ弁として雇われないと弁護士というのは食えないのかという基本的な疑問が実はあります。、資格なんだから数人集まって共同事務所作ったっていいというのがひとつです。あと、現在は、前の制度のもとから養成されてきた500人の人たちが弁護士事務所を経営しているのですが、もうすぐ経営側に回る人も増えるはずなんです。1000人とか1500人と合格者が増えてきた、そういう年代の人がイソ弁を雇うようになればもう少し状況は明るくなるのかなとちょっと思うこともあります。

【笠井(治)委員】
 今度は私が答えましょうか。まさにおっしゃる通りで、個人的な事を言えばこういう私も当初給与はもらっておりませんでした、初めから。ですから独立して事業を、法律家という仕事に携わるというのは、本来弁護士の職業的なあり方そのものではないかと逆に思っているのですけれども、ただ一方ですね、弁護士としての自覚は勿論の事、それから基本的な能力、技術、スキルを養うのに、やはり先輩から修行を受けた方がいいというのは当然だと思うんですね。法曹倫理の問題もありますし、これに逸脱する弁護士も少なからず、まぁ少ないと思いますけれどいるという中でですね、そういう意味で言えば、環境的には就職という事ではなくて、指導してくれるその先輩がいると、あるいは独断と議論が出来るという環境が望ましいものだと思っています。ですからそういう方向での環境作りというのは絶対に必要であって、必ずしもその就職先が見つかるという事が絶対条件ではないという事です。将来的な事をいえば、今小山委員もおっしゃったようにですね、こうやって合格者が増えてきているわけですから、だんだん先輩となってくる方々も多くなってくる訳ですから、そういう意味で吸収していく事も、全く不可能ではないだろうとなと、全然根拠は無いですけれども思っております。

【田中座長】
 取りまとめの検討の視点についてちょっと気になった事があるのですが、現状のままでは、法曹の質を維持しつつ、その大幅な増員を量るという司法制度改革の理念が実現できないのではないかという懸念から検討を始められているのですが、司法制度改革の理念としては確か法曹の質の維持向上を図りつつ増員するという表現になっていたはずで、たんに法曹の質の維持ではなく、現在の法曹の質にも問題があって、それを向上させることもめざされていたわけです。最近の新しい法曹の質が悪い悪いと言われますけれど、従来の法曹の質がいいとは社会的には決してそう思われていないわけです。新しい法曹の質が従来の法曹に比べてよくないというのはあまり根拠がないのではないかと思います。今小山さんがおっしゃったように、新しい弁護士が集まって自分たちだけでやると、従来の弁護士事務所でやっているよりも悪いサービスしか提供できないとは到底思えません。従来の事務所システムが無いと弁護士が活動できないというのは、弁護士会のギルド的体質以外の何者でもないと思います。要するに弁護士の業務スタイル、活動スタイル、そのものに対する根本的な疑問があるように思われます。
 弁護士の業務スタイルが従来のままでは法曹人口が増えても吸収しきれないということは当初から想定されていたことで、従来の業務スタイルという前提そのものを考え直さないと法曹人口を円滑に増やせないという1番前提のところが忘れられているわけです。法曹人口増員は国際化対応だけではなく、国民が法曹に対して望んでいるサービスに十分応えられていないのではないかという反省から始まっているわけで、従来の法曹養成スタイルもそうですし、今の司法試験のようなレベルの試験をやらないと、本当に国民のニーズにあった法律業務を提供できる法曹の質が確保できないのかどうか、かなり疑わしいと思うのですね。私の個人的な意見かもしれませんが。

【井上座長代理】
 異論はないのですけれども、ただ、現在の社会的状況は非常に厳しいとうことも意識していただかなければといけないと思います。もともと司法制度改革の趣旨だとか意義だとかに賛同していない、それどころか、とんでもないことで元に戻すべきだとすら思っている人は、社会にはなおたくさんいる訳で、そのような環境の中で、この新しい制度をどのようにして根付かせていくのかということだと思うのです。あれれだけ大きな変革であったのですから、当然強い反発や抵抗が予想されるわけで、その意味で想定内といえば想定内の話で、産みの苦しみなんだろうと思うのですけれども、その産みの苦しみは非常に苦しく、下手をすると、新たに生まれたばかりの命は絶たれてしまうおそれもある。ですから、あまり呑気な事ばかり言っているわけにはいきかず、出来るところから、改めていくこともやっていかなければなりません。

【田中座長】
 過渡期なので、制度設計において本来想像していなかったところにもいろいろ問題が出て来ているという事は間違いないと思います。ただ、弁護士の活動領域の拡充や業務スタイルの改革など、本来は並行して進められるべきだと考えられていた改革が順調に進んでいないという事もありますから、どこから手をつけたらいいのかなかなか難しい状況です。

【井上座長代理】
 主に弁護士ですけれど、ビジネススタイルといったものは議論だけしていても多分なかなか変わらないですから、誰かが違ったビジネスモデルで仕事を開拓し、ビジネスを大きくしていく、そういうことが実際に示されれば、それについていく人というのは結構おり、全体的状況も大きく変わっていくだろうとは思うのですが。

【田中座長】
 フォーラムがどういうメンバーで作られるか、文部科学省にもタイミングや人選などについても慎重に対応していただきたいと思います。このワーキングチームのまとめによって、これまで法科大学院だけに集中して検討してきた問題について少し範囲が広がってきて、もう少し広い視野から検討していただけるようになることを期待しますが、それだけまた法科大学院の現状に対しても厳しくみられるようになってくると思いますので、この委員会もそれを踏まえて対応していかなければならないと思います。
 このワーキングチームの検討結果を踏まえながら、この委員会でも法科大学院の教育の改善の在り方の検討を続け、各ワーキンググループの作業も着実に進めていきたいと思います。今後ともよろしくお願い致します。
 では、事務局の方から今後の日程についてご説明等お願いいたします。

【中野専門職大学院室長】
 次回の日程につきましては、調整の上またご連絡させていただきます。

【田中座長】
 それでは本日の議事はこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。

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高等教育局専門教育課専門職大学院室法科大学院係

(高等教育局専門教育課専門職大学院室)