法科大学院特別委員会(第34回) 議事録

1.日時

平成21年9月14日(月曜日) 16時~18時

2.場所

文部科学省東館3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. 平成21年新司法試験の結果について
  2. 認証評価の見直しについて
  3. その他

4.出席者

委員

(臨時委員)有信睦弘 委員
(専門委員)井上正仁、稲田仁士、小山太士、笠井治、鎌田薫、木村光江、土屋美明、椎橋隆幸、永田眞三郎、山本和彦 の各専門委員

文部科学省

小松高等教育局審議官、澤川専門教育課長、浅野専門職大学院室長、小代専門教育課課長補佐

5.議事録

【井上座長代理】
  それでは、開会時刻ですので、第34回中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会を開催させていただきます。本日は、田中座長が所用のため欠席されたので、座長代理の私、井上が進行役を務めさせていただきます。 それでは、まず事務局から配付資料の確認をお願いします。

【浅野専門職大学院室長】
 配付資料の確認をさせていただきます。
 資料1の1といたしまして、法務省提出の「平成21年新司法試験の結果」、それから、資料1の2といたしまして、同じく法務省提出の「平成21年新司法試験法科大学院別合格者数等」、それから、資料1の3といたしまして、同じく法務省提出資料で「平成18・19年新司法試験受験状況比較」、それから、資料1の4といたしまして、同じく法務省提出資料の「新司法試験結果の分析(大学別)」、それから、資料1の5といたしまして、これも同じく法務省提出資料の「各年度修了者の平成21年までの新司法試験合格状況(入学定員規模順)」という資料。それから、資料2の1といたしまして、「法科大学院に係る認証評価の見直しについて」、資料2の2といたしまして、「法科大学院に係る認証評価の見直しに関する留意事項について」、資料3といたしまして、「法学未修者教育1年次における単位数増加と法学既修者認定の関係について」。ほかに、机上の配付資料といたしまして、法科大学院の現況ということで、A3の縦の表を配付させていただいております。必要なデータを更新させていただいた上で、資料として配付させていただいております。
  それから、もう1つ、机上配付資料がございます。黄色いと青の色がついている、日弁連作成の資料の資料でございます。この資料につきましては、おめくりいただきまして、4ページ目でございます。この資料は弁護士会でそれぞれ新60期、新61期で登録した人の数の中で、同一県内のロースクールを修了した者が何パーセントぐらいいるかというようなデータになってございます。これもまたご確認をいただければと思っております。
 そのほか、参考資料といたしまして、「法科大学院の認証評価について」という資料、それから、法科大学院評価基準の資料の束も併せて配付させていただいております。以上でございます。

【井上座長代理】 
  それでは、議事に入らせていただきます。
  先週の10日に、ご承知のように平成21年新司法試験の結果が法務省より公表されました。小山委員より、これについてご説明をいただきたいと思います。

【小山委員】 
  小山でございます。今、井上座長代理からもお話がありましたが、私の職務上関係がありますので、9月10日に発表された平成21年新司法試験の結果についてご説明させていただきます。まず、資料の説明をしたいと思います。
  まず資料1の1でございますが、これは法務省のホームページに掲載されました今回の新司法試験の結果についての資料です。資料1の2は、やはり法務省で作成した資料でございまして、大学院別の合格者数等、今回の新司法試験の結果についての資料です。資料1の3は、これまでの新司法試験の受験状況の比較の基礎的なデータです。資料1の4は、法科大学院別の新司法試験結果でございます。資料1の5は、各年度修了者の新司法試験の合格状況を入学定員規模順に分けたものです。
  まず、資料1の1の1枚目、「平成21年新司法試験の結果」でございます。ご承知とは思いますが、本年の新司法試験の合格者数は、2,043人ということです。昨年は2,065人でしたので、初めて前年を下回る結果になったということです。ちなみに、司法試験委員会が発表しております今年の合格者数の目安となる概数は2,500人から2,900人ということでしたので、この数字も下回ったということです。合格率、受験者数に対する合格者数の割合は27.6%でございまして、これも低下傾向にあります。4回目の試験ですので、既修者、未修者の別、受験回数等、受験者層の違いもあります。ですから、過去の試験結果と単純に比較するのはどうかというところもございますし、結果が出てからあまり日がたっておらず、分析が十分進んではおりませんが、いくつかの点に注目してご紹介します。
  まず、資料1の2の「平成21年新司法試験法科大学院別合格者数等」でございます。幸いなことに、合格者数が0の法科大学院はなかったということです。しかしながら、50人以上の合格者が出ている法科大学院が11校ある一方で、合格者が5人以下の法科大学院が24校あったということです。ちなみに、合格者の多い上位11校で全合格者数の60%に相当する1,221人の合格者がいたということでございます。
  それから、資料1-4の黄色のところが平成21年の法科大学院別の合格率でございまして、一番いいところは62.88%ですが、一番下は1.96%ということであります。全体の合格率は27.6%でしたが、これを超える合格率となっている法科大学院数は17校でして、この17校で全合格者の66%を占めています。次に、修了年度別に見るとどうかということですが、資料1の3の3枚目、「平成21年新司法試験受験状況」を横に見ていきますと、出願者、受験予定者、受験者、短答式試験の合格に必要な成績を得た者、合格者となっております。これを見ていきますと、平成20年度の修了者ですと、既修者が948人、未修者が458人合格したということですから、これを足し合わせて、対受験者の比率で見ると、35%が合格しているということになります。
  同じように、平成19年度修了者の合格者ですが、既修と未修を合わせますと461人になり、対受験者の合格率は21.3%です。それから、平成18年ですと、合格者が168人で、合格率は15.4%ということでございます。全体的にいいますと、修了年度が前の受験者ほど合格率が悪く、現役といいますか、修了してすぐの人たちほど合格率が高いというのが実績値としてわかります。
  修了後1年以上を経過した2年目、3年目の受験者よりも、修了してすぐの人たちほど合格率が高いということは、法科大学院教育の効果を示すデータとして望ましい傾向だろうと思っております。
  ただ、法科大学院別に見ますと、相当なバラツキがあります。資料をちょっと戻っていただきまして、資料1の2に今年の新司法試験受験者数と合格者数というのがありまして、合格者数のところは、17年度、18年度、19年度、20年度の修了者の既修、未修別の合格状況がわかるようになっています。この表を基にして計算しますと、平成20年度修了者の合格率が50%以上という法科大学院は11校ということになっており、合格率が10%未満のところは18校ということになっております。高い合格率のところもある一方で、かなり低いところもあるということがわかります。それから、既修者と未修者の状況ということですが、ちょっと戻っていただきまして、資料1の4を見ていただきますと、一番下のピンク色のところが既修者の合格率、水色のところが未修者の合格率ということで、全体の合格率は下がっていますが、未修者と既修者の合格率の状況には差があるだろうと考えております。
  最後になりますが、累積合格者はどうだろうということで、資料1の5で平成18年度修了者の部分に黄色い色をつけておりますが、これは、19、20、21年の3回、新司法試験の受験が可能だった受験者ということになります。ここをずっと見ていただきますと、18年度修了者に初めて未修者が入ったわけですが、一番下の段、黄色い色をつけているところを見ていただきますと、18年度の全体の修了者は4,415人で、そのうち19年から21年までの合格者数が2,123人ですので、累積の合格率は48.1%、3回の試験で概ね5割が合格しているということになります。

【井上座長代理】 
  どうもありがとうございました。
  いろいろご質問あるいはご意見あろうかと思いますが、次のご報告をいただいた上でまとめてご意見をいただきたいと思います。
  次に、第3ワーキング・グループの主査である永田委員より、現在の第3ワーキング・グループでの審議状況について報告をしていただきたいと思います。

【永田委員】 
  第3ワーキング・グループの主査を務めております永田でございます。
  このワーキング・グループでは、7月までに実施いたしましたヒアリングと先ほどございました「平成21年新司法試験の結果」を踏まえまして、各法科大学院における教育内容等の改善状況の分析や、さらに確認を要する事項の検討などを審議しております。この過程で、今回の新司法試験の結果を踏まえまして、第3ワーキング・グループでは法科大学院の現状や課題についてさまざまな議論がございました。
  例えば、今回の新司法試験の結果において、先ほど合格率が紹介されましたが、成績上位の法科大学院でも50%を超える法科大学院はわずか3校にとどまっている、こういう試験結果になっております。あるいは、法学未修者の合格率が法学既修者の半分になっている。そういうことなどから、新司法試験の内容や水準が現在の法科大学院教育と接続したものになっているのかというような意見がございました。
  その中で、法科大学院の質の確保と向上の問題について、新司法試験の結果だけを取り上げて、それをそのまま結びつけて論ずるべきではないと。そうであるとしても、新司法試験の合格者が著しく少ない状態が継続している法科大学院は早急にその抜本的な見直しを検討する必要があろう。一方では、規模の大きい法科大学院においても、合格者が大量に出ているということを踏まえまして、入学定員の適正化を図る必要がある。そのような観点も含めて教育体制の充実のためにフォローアップを実施することが必要ではないか、そういう意見もございました。
  今後、今回の新司法試験の結果も踏まえまして、必要に応じて調査等を実施し、在学中の学生からヒアリングや実地調査を行うなどいたしまして、さらに、審議、分析を深めていきたいと考えています。

【井上座長代理】 
  どうもありがとうございました。
  それでは、以上2つのご報告を踏まえまして、ご意見あるいはご質問がございましたら、どなたからでもご発言いただきたいと思います。

【有信委員】 
  修了者数のうちの合格者数の割合を出されていますが、これは、修了者がすべて受験したかどうかということは問題にしていないのですか。

【井上座長代理】
  いかがですか。

【小山委員】 
  修了者の数と累計の合格者数ですので、この間に何回受験したというところが入ってないのですけれども、要はある年の修了者のうち、どれだけの人が合格しているかということです。

【有信委員】
  疑問なのは、今年度だと修了者数に比べて受験者数が少ないですよね。したがって、初期の修了者が受験をしてないのではないかということもあって、実際に合格率を議論するときにきちっとこのところが考えられているのかどうか。

【小山委員】        
  資料1の5の表自体には反映されていません。今ご指摘がありましたように、修了者の中に受け控えをしている者がいるということは、いろいろ検討していく中でわかってきていますが、法科大学院の修了者は法曹として養成されるというのが本来のあり方ですので、修了者の中でどれぐらいが新司法試験に合格しているか、それを示す資料となっております。この修了者の中には、いろいろな事情で試験を受けなかったという者もかなり含まれているということです。

【有信委員】
  多分、第3ワーキング・グループの報告の中で、司法試験の合格者数が少ないということと、定員の削減ということを直接結びつけて議論されたような印象を受けたのですけども、司法試験の合格者数が少ないということを、直接的に定員の削減ということに結びつけるのは、もともとの制度設計上からしても、もう一段の議論が必要だと思うのです。やられているのだとは思いますが、もともとの司法試験のあり方そのものが、この名前が「新司法試験」という言い方をされているように、新しい制度設計の中で変わらなければいけない部分について、変わってないということの議論が必要なような気がするのですが。

【永田委員】 
  法科大学院の定員のあり方につきまして、新司法試験の成果と直接結びつけて考えるべきではないけれども、法曹養成のための制度として、そして、それを期待して入学してくるわけですから、著しく低いというようなことはやはりお考えいただくべきことであり、当然、各法科大学院も改善計画にそのことは書いているわけです。それを踏まえ、これらの観点で検討していくと。そういう意味で、きちっとやっておられるところも含めてということを申し上げているわけで、著しく低いという場合にやはり改善をすべきだと。
  それから、もう1つは、ある程度の成果を上げたといたしましても、先ほど申し上げましたように、合格率が50%を超える法科大学院は3校しかないというような実態もあって、規模が大きいと、逆に最終的に修了してもその成果に届かない者をたくさん生み出すということになりますから、そういう観点から適正規模を考えていただく必要がある。こういう観点でワーキング・グループは議論しています。
  これが後者のほうで、前者のほうもやはり少し、私も内容を十分検討しているわけではありませんけれども、どう言いますか、そのような問題を抱えている法科大学院で成果が上がらないというのは何か理由があろうと、改善を要すると思いますけども、上位の3校ですら50%しかとれないという仕組みになっているというのはいかがかと、そういう意見もこの議論の中にあった。今の試験が、上位ですら合格率50%、それも3校しかない、そういう状況で、それでは、今の法科大学院の教育と新司法試験の内容が十分接続しているのかどうかという、双方考えなければいけない、ということを申し上げたのです。

【笠井(治)委員】
  よろしいですか。今のご発言にも若干関係するのですが、法科大学院が発足して、法科大学院における教育の中身というのも、教育する側からするとそれなりにこなれてきたというか、練れてきた側面があるかと思うのですね。そういう意味で、法科大学院教育そのものについて、反省するべき点はあるにしても、いい点も必ずあったに違いないということですが、一方で、今の新司法試験のあり方という観点から、資料1の1の1枚目の裏、手元にデータがないのですが、論文式試験結果で得点がございますが、最高点597.39点、私の記憶によりますと、昨年度の最高点は600点を超えていたのです。平均点も今年よりは高かったと思います。さらに、一昨年を見ても、今年より高かった。そういう意味で、なぜ今年は低いのだという、この点を疑問に思っているところです。これをあえて言うならば、考査委員が厳しく評価をしたということになるのかもしれないわけですけれども、この辺は、今お話いただけるのでしょうか。

【小山委員】 
  点数自体は、各年の試験の難易度にも影響されますが。いずれにしても、最終的に合格者数の決定は司法試験考査委員会議で合議して、司法試験委員会で決定した数字なので、考査委員の採点実感が、最終的に合格者数に反映されているだろうと思います。

【井上座長代理】
  私も、おそらく採点実感を表しているのだろうと思います。それは全般的に強くなかったということを示しているのかもしれないのですが。ただ、合格者最低ラインの決め方についてが、すべてではないと思うのですが、そのところについてもいろいろな意見もあろうかと思います。
  それから、これは結果としてこうなったのでしょうがないのですけれども、新聞等で法務省関係者という名前でコメントが出ていまして、誰が言ったのかということもわかりませんし、本当にそのとおりなのか、どういう文脈で言ったのかもわかりませんけれども、今の法科大学院の実力ではこの程度だと、これが限度だというようなことが書かれているわけですね。
   これは受け取り方によっては、閣議決定して3,000人の合格者を目指しているわけですが、それを放棄したと受け取られかねない。記事の書き方としてはそういうふうなニュアンスで書かれているものもあったと思いますが、これはよもや法務省としてそういうふうに決定したということではないと思いますが、その点だけ確認させてください。

【小山委員】
  今、ご指摘のありましたとおり、閣議決定に関しましては、来年、平成22年ごろに3,000人を目指すという内容です。ただ、かなり容易でない状況だというのは、率直に言えばそうなのだろうと思っております。しかし、法務大臣は、記者会見で、そういう状況にありますけれども、引き続き、この目標に近づくよう、法務省も努力するし、文部科学省を中心に関係機関にもご協力をお願いするということを申しております。

【井上座長代理】
  仮にこういうコメントが本当にされているとすれば、少し不用意だと思います。もしそういうコメントが出されたのであれば、誤解のないような対応をしていただくように、お願いします。

【小山委員】
  持ち帰りまして、伝えます。

【稲田委員】
  今のお話の中で、合格者数はどうしてもその数字で、議論しているという観点があるのかと思うのですけども、私が感じておりますのは、法律家としての実力というのをどういうふうに見るかという物差しはいろいろあるのではないかということです。
  法律の実務と申しましても、法律も十分にやらなくてはいけない、判例も知ってなければできないですし。そういう意味で知識というものは絶対的な要素として必要だと思うのですけども、企業法務などを拝見しますと、一番大事なことは、知らない、わからないことをするときにどうするかと、こういうところの対応が一番大事になります。つまり、我々は世界中で多種多様な業務をやっておりますから、いろんな契約や大事な交渉をするときに、すべての法律なり何なりわかった上で臨めればよいですけれども、わからない、知識がないものでどうやって間違いのないようにするかと。わからないゆえにどうするかと。こういったところがひとつ我々の大事なところだと思うのですね。
 したがって、この司法改革、あるいは、新司法試験制度というもので、法曹の果たす役割というものを、従来の裁判実務中心の範囲で考えるということではなくて、社会のいろいろな場面において基本的な法律を含めて活躍の場を広げて、法律に則ったオペレーションというものを広げていくのだと、こういう点についてもう一回考え直していただく必要があるのではないか。国の要求する3,000人という合格者が達成できないはずがない、できないとなると、これはやっぱりどこかおかしい、質の物差しのり方がどこかおかしいと、こういうふうに思うべきではないかなというふうにも思うところであります。
 その上で考えますのは、18年度修了生の合格率5割前後ということですが、5,000人近い人を法科大学院に受け入れて、2年か3年勉強して、さらに3年経過して、2,000人以上の人が最終的に法曹になれていないという仕組みが国の制度としてどうなのか。法科大学院は法曹を養成するのだから、しかも4年生の大学を卒業して、その上勉強もしてもらって、時間を使ってもらって、お金を使ってもらって、さらに司法試験で合格しなければならないというのが、本当に制度として成り立っているのか。最終的に法曹になれていない2,000人以上の人というのは正直言って就職にも困るでしょうし。そういう現状をして、質の高い人をこれから2,000人以上、非常に就職が難しいという状況に陥れるような制度というのは、本当にこのまま放置していいのかというのは私としては大変疑問に思うところでございます。
 ただ、そういったことを考えまして、2つの面から考えていきたいと思っていまして。質を測る物差しをもう少しいろいろな能力ということで見ていただきたいということが1つ。その上で、合格率の議論をすべきではないかと思います。先ほど、新司法試験の平均点が下がっているという話がありまして、これはどうしてか私にはわかりませんけれど、現状がそうなっているわけですね。本当に優秀な人がこの道を選ぶのかというと、かなり多くの人は選ばない。法曹になってほしいという能力と意欲のあるかなりの学生が、法科大学院に行くことを現状の制度では避けてしまって、受験者は、ペーパーテストに自信があるとか、ひとつやってやろうという意気込みがないと、受けようとしない。普通の人生に対する考え方を持っている人が法科大学院を受けるということにならないだろうなと思います。
  こういった危惧を抱いているということで、合格率というのは上げなければいけないのかなと。それも、私は先ほど言った見方で、もう少し広い目で見れば十分に合格させられる人もいると思います。それに、合格者というのは、必ずしも2,000人規模にそろえる必要はないかなと思っています。その上で、合格者が数人というような学校は法曹養成を担っていると言えないというか、制度として成り立っていないというふうに思うべきで、これはいろいろ事情があるでしょうけど、それを受けて、そこで3年間過ごす学生がいると、その上の結果というものを受け止めて、抜本的に見直すということはどうしても必要かなというふうに思います。
  今回この資料を拝見しまして、私としては、今申し上げたようなことを感じたということでございます。

【有信委員】
  私も今の意見に基本的に賛成ですね。司法試験の合格者が少ないというのは、先ほど第3ワーキング・グループの報告にもありましたけども、2つ問題がある。実は司法試験そのものの問題、もう1つは法科大学院の問題。先ほど第3ワーキング・グループで提示されたように、法科大学院の中には、大学としての努力が十分行われてなくて合格者が出てない。もともと、司法試験に特化した受験指導はしてはいけないという指示が出たように記憶していますけども、それにしても十分なことが行われていない。これについては、今は5年に一度ということになっていますが、認証評価という仕組みの中できちんとそれなりの対応がとれるような形にすべきだろうと思います。
  それからもう1つ、先ほど縷々発言がありましたけど、司法試験側の問題は、もともと3,000人という制度設計があって、その中で新司法試験というのができて、そのバックグラウンドには、多様なバックグラウンドを持った法曹を養成すると、こういう意識があったのですね。したがって、法学部を出た人以外も法科大学院への入学を認めると。この間の結果を見ると、先ほど説明がありましたように、法学部を卒業してない人の合格率は、法学部を卒業した人の合格率に比べて低いという。これは明らかに新司法試験制度が本来の意図を受け継いだ形に変わっていないというふうに見られても仕方がないというふうに思います。
  もともと新司法試験制度は、お互いの国々の適用した制度を双方に認め合うという基本的な展望を基に制度設計がなされているというふうに理解をしていますし、ほかの分野の機関についてもそういう方向で議論されています。そういう観点に立ったときに、先ほど説明がありましたように、古いいわゆる裁判官、検事ベースの法曹の感覚でいろいろなことを議論して判断されるということについては、何らかの形でよく議論をして、もう一度考え直す必要があるのではないかというふうに思います。

【笠井(治)委員】
  ほとんど同じ意見ですけれども、稲田委員と有信委員のおっしゃったことに根本的に賛成です。おっしゃるとおり、既修と未修の合格率の差が年々大きくなっています。このまま同じような試験制度を継続していくならば、さらに優秀ないわゆる法学未修者のこの分野への参入というのは少なくなってくるでしょうし、ますますその意味で合格率が下がることになるのではないかと思います。これはやっぱり根本的な制度設計をもう一度見直す必要があるのではないか。のみならず、尺度について、優秀な方が入ってこられるようにという意味での尺度をもう一度見直すということが適切なのだろうというふうに強く思います。

【井上座長代理】 
  私は別にそういう意見ではないのですけれども、別の見方もあるということだけつけ加えさせていただきます。司法試験で法曹資格を得て、国民のサービスをするためには、それだけのふさわしい能力が必要で、その面からの調整もあるということです。
  他方で、出口のほうで、教育の方から見ると、それに見合うだけの能力が養われているか、その両方がうまく折り合えば非常に理想的ですけれども、必ずしもそこの部分が釣り合っていないのかもしれない。ただ、出口の能力判定、今の新司法試験がそれに適合したものになっているだろうかというところは議論の余地があるのかなと思います。試験委員をされている方もいらっしゃいますが、その辺のところは法務省あるいは司法試験委員会のほうでも、今回の結果を踏まえて、そちらのほうもご検討いただきたいというふうに思います。
  ここは司法試験の中身について議論する場ではありませんので、そういうふうにこちらとその司法試験が連携をより持っていくということで、法曹養成制度の信頼性につながっていけばと思います。             。
  ほかにご意見は、よろしいですか。随分ご意見をいただきました。今回の新司法試験の結果、本年4月にとりまとめました「法科大学院教育の質の向上のための改善方策について」や、その後の委員会での審議を踏まえまして、法科大学院における今後の教育の質の改善についての見解を、きょうは所用で欠席されておられますが、田中座長がとりまとめたものをお預かりしておりますので、ご紹介したいと思います。
  よろしいですか。今、1枚の紙をお配りしましたが、今回の司法試験の結果を踏まえ、また、これまでの審議を踏まえ、田中先生が座長として作成された座長談話を読み上げさせていただきたいと思います。

 本委員会は、平成21年新司法試験の結果を踏まえ、法科大学院における今後の教育の質の改善の促進について審議を行い、これを踏まえ、座長として以下の談話をとりまとめた。

1 今回の結果を見ると、合格者数が減少したことは遺憾である。多くの法科大学院修了者が法曹の道を目指して真摯な努力を傾けていると思われるが、
(1)合格率が50%を超える法科大学院はわずか3校であり、相当数の法科大学院修了者が法曹の道を断念せざるをえない
(2)一部の法科大学院では、合格者がごく少数に留まる、又は修了直後の合格者がいない
といった厳しい状況となっている。

2 既に各法科大学院においては、本委員会の報告を踏まえ、教育課程の改善や入学定員の見直し等の改善に取組んでいるが、厳格な成績評価・修了認定の徹底などを含め、一層努力いただきたい。

3 特に、新司法試験の合否のみで法科大学院教育の成果を測ることはできないが、法曹養成機関としての設置目的や責務を損なうような、司法試験の結果が相当に低い状態が継続している法科大学院は、ただちに大幅な入学定員の見直しを行うとともに、教育課程の共同実施・統合等の組織の在り方の抜本的な見直しの検討に速やかに着手することもあわせて強く求めたい。

4 これ以外の法科大学院についても、多くの不合格者を出している場合は、その数を減じるよう、平成22年度の入学選抜の厳格化とともに、平成23年度の入学定員の見直しを行うことを強く求めたい。

5 文部科学省においては、本委員会で提言した改善方策について各法科大学院に対して改めて周知を図るとともに、特に上記3及び4について、本委員会に設置された第3ワーキング・グループとも連携しながら、各法科大学院に対して強く促していくことを求めたい。

6 なお、国においては、今回の結果等を踏まえ、改善の取組が十分でない法科大学院に対する様々な支援方策の在り方について検討を行うことが望まれる。

7 本委員会としても、法科大学院の学修と司法試験の連携を一層強めるよう、関係者と協力を図っていきたい。

 以上でございます。
この座長談話についてご意見、ご質問がございましたら、いただきたいと思います。

【有信委員】
  この座長談話に全く異論はありませんが、発表されたときに心配なのは、以前もそうでしたけれども、合格者数が少ない、定員が多すぎるので削減しろと、こういう趣旨に短絡的にとられてしまうのですね。新聞も必ずそのほうがわかりやすいので、そういうものになってしまう。かつて文科省が出した大学院の定員削減というのも、定員を削減しろという指示を出したために、ととられてしまいまして。この点についてはぜひ誤解のないような前置きで報告をすべきではないかと思います。

【井上座長代理】 
  今日も記者の方が傍聴されておられるので、大体おわかりだと思うのですけど、いつも事務局のほうからご説明申し上げているのですが、やはり見出しをコンパクトに報道すると、わかりやすいのでそうなってしまうと思うのですが。
  私がこれを拝読した限りでも、定員の問題というのは、適正規模の問題というのが、今回もかなり大きなウエートを占めていますが、もちろんそれだけではなくて、カリキュラムや教員体制、厳格な成績評価・修了認定、入学者選抜についても一体となって質を向上させると。そういうアイデアになっているのですが、やはり適正規模のところも見直しを行っていただきたいというメッセージになっています。
  ここについては、各法科大学院でいろいろな事情があって、認識にかなり差があったり、温度差があるということで、平成22年度の募集人員は、全校で4,914人ということで、かなり減らしているところもあるのですが、まだいろいろな事情からそこのところが遅れている、あるいは、少なくとも平成22年度は削減してないというところもあって、その辺についてはさらに検討が必要だというのがこの趣旨だろうと思います。特に今回は非常に厳しい、去年にも増して厳しい結果になりましたので、本当に真剣に取り組んで、自主的な見直しを行わないといけないということです。

【鎌田委員】
 この座長談話の案について異論はございません。
 机上配付資料で、黄色い網かけの大学が平成22年度に定員を減らさないということで示されているところでございますが、私どもも今週中に来年度入学者の合格発表をするような段階に達しておりますので、来年の定員を上げることはこの段階ではできないということでございます。入学者はじわじわと、定員にかかわらず一定の水準にいかない人は入れないということで、定員割れの状態になっているのでございますが、平成23年からは定員を減らすという方向にしております。
  その際に、私どもの大学では、未修・既修別の合格率で見ていただければ、それぞれが相当水準にいますけれども、圧倒的に未修者が多いということ、未修者の合格率が非常に低いということがありまして、水準の高い合格者の人数が非常に少なくなっているということでございます。これに対する対応として、定員を削減するということが一つでございますけれども、正直申し上げて、未修の方について本当に適性があるかどうかを入学段階で判定する有効な方法がございません。したがって、未修の場合には、進級判定、修了判定を明確にすることで、適性のある人だけを修了させていくということはさらに厳格にやっていきたいというふうに思っております。
  しかし、今後数年の新司法試験の影響を考えると、もともとそういう要因を含んでいたのだと思いますし、稲田委員のご発言も関連しますけれども、こういう状況の中で、法学未修者、あるいは、他学部から新たに参入するという人の数等は減ってきている。そういう中で3割確保というのが本当によいかという点については、かなり難しいだろうと。それから、一定の数を受け入れて、結果的には頑張ってもやはり合格できない人は今後も出るだろうという点を、受験生ご本人もそうですけれども、法科大学院には公費も導入されているところでございますので、よく考える必要があります。そういう学生たちをあまり大勢作り出していくわけにはいかないということで、入学定員を見直すことも必要ですけれども、法科大学院の教育の改善もしていかなければならないというふうに考えているところでございます。

【井上座長代理】 
 どうもありがとうございました。当初の理念もあって、大学によって考え方も違いますけれど、必ず3割を確保するのは難しいのかなと思うのですけれども。

【木村委員】
  私たちの大学も網かけになっているのですが、もちろん全体的な状況は我々もわかっておりまして、法科大学院の内部ではもちろん検討しているのですが、まだ大学全体で了解が得られてない状況なので、公表できないのですが、もちろん検討は進めております。

【永田委員】
  先ほどお話がありましたけれども、法科大学院をしっかり縮小しろということだけに受け取られて、先ほどおっしゃったように司法試験は幅広い質を測っているものか、ここに提示できるように考慮して、あるいは考える必要はないでしょうか。司法試験のほうの改善もしてほしいという意見があるというところが、やはり伝わりにくいように思います。これだけでは厳しい状況にあるぞ、頑張ろうという話になってしまいますので。

【井上座長代理】
  これは田中先生の名前の文書ですので、私は何ともお答えしかねるのですが、私もこの案を拝見したときにそういうことは申し上げたのですが、それは、7の部分に込められているということです。我々が法科大学院の学修と司法試験の一層の連携を強めるとあるのですが、これは司法試験のほうでも連携することをもっと強く意識していただきたいということで、こういうこちらからの要望がそこに込めてあると思います。ただ、そこで司法試験の内容について、どういうふうに踏み込んでやるかということを、それをもしできるとしても、我々としても十分な分析をしないとそこまでは、この段階では言えないのではないかということで、私も最終的にはこの7のところにそういう気持ちが込められているというふうに了解して、この案に賛成したわけです。

【永田委員】
 了解いたしました。

【井上座長代理】 
 小山委員、これでは全然伝わらないでしょうか。

【小山委員】 
 私はこのまとめで十分理解できると思います。

【井上座長代理】 
 よろしいでしょうか。
 それでは、これは座長の責任でとりまとめた談話ということですので、皆様にご紹介して、一応ご了承いただいたということで、これを発表していただきたいと思います。先ほど有信委員からもご指示がありましたが、この前提となっている我々の議論について、文部科学省において十分お考えいただいて、ご説明をいただきたいということをお願いしておきたいと思います。よろしくお願いします。
  次の議題に入りたいと思います。認証評価の見直しについてということですけれども、先ほど事務局から説明がありました資料2の1、資料2の2、資料3について審議を行っていきたいと思います。前回の議論を踏まえて、事務局のほうで資料を修正したということですので、その点についてご説明を伺います。

【浅野専門職大学院室長】
  資料2の1でございます。「法科大学院に係る認証評価の見直しについて」、これの2ページ目の2の法科大学院に係る認証評価項目の見直しについて、この内容について、ハの「専任教員の適正な配置などをはじめとする」という田中座長のご指摘と、前回多くの議論がありましたカのところで、「法曹養成目的の達成状況など法科大学院の課程を修了した者の進路(司法試験の受験・合格状況を含む)」という形で座長からの意見が出てきております。この点が修正点でございます。
  それから、資料2の2でございます。資料2の2におきましては、留意事項ということで、前回、各委員からいただきましたご意見をそれぞれの項目ごとに、今回の特別委員会4月の報告の関連部分と併せて記述させていただいております。具体的には、8ページ目のヌのところで、今回は、履修単位上限の6単位の増加について、最大42単位、法学未修者の1年次について履修できるようにするということと、それから、その次に、6単位ふやすことについていろんなご意見が前回ありましたが、新司法試験の受験対策の実施や過剰な学修範囲の拡大等により法科大学院生の自学自修を妨げる結果とならないよう留意する必要があるといったご意見がございましたので、そういった留意点を書かせていただいております。そのほか、10ページ目のカの修了者の進路の部分につきましては、例えば、特に留意すべき事項の2つ目の○ですが、法科大学院修了者の法曹三者だけの進路だけではなくて、多様な職域への進路も含むことということを書かせていただいております。それから、その次の○ですが、単に合格の状況だけ、数値的な指標の判断だけではなくて、法科大学院の改善に向けた取組が総合的に評価される必要があるというようなご指摘も前回ございました。それから、その次の○ですが、可能な限り進路についての状況を把握することが求められるといったような内容について記述をしてございます。
  それから、最後、12ページ目でございます。重点評価項目設定についても、前回さまざまなご意見がございました。2つ目の○について、例示の項目以外にも、各評価機関の判断で、必要と思われる項目を付加することも可能であるとか、それから、次の○ですが、重点評価項目として設定されてない項目も、総合的な判定の要素として考慮することは可能であるとか、そういった幾つかの議論が前回ございまして、留意点として記述をさせていただいております。 資料3につきましては、前回と修正点はございません。

【井上座長代理】 
  それでは、これらの資料についてご質問あるいはご意見ございましたら、伺いたいと思います。この前の委員会でのご発言はほぼここに反映されていたと思うのですけれども、いかがでしょうか。特にご発言ございませんでしょうか。本日の議論を踏まえて、また事務局のほうで資料の整理をお願いしたいと思います。
  本日用意しました議事は以上ですが、次回の日程について、事務局からお願いします。

【浅野専門職大学院室長】
 次回の委員会の開催については、また日程を調整させていただいた上で、改めて事務局よりご案内させていただきます。

【井上座長代理】 
 本日の議事はこれで終了させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

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