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論文式試験は、論点中心の勉強では対応できない良問である。具体的事実の中から重要な法的事実を抽出する能力が問われており、法科大学院の教育理念に沿う出題である。プレテストは、解答として想定される内容が細かい点にまで及びすぎていたきらいがあり、実力のある学生にとっては書くべきことは多く見つかるが、何をどの程度書けばよいのか迷う出題であったと思われるが、今回の出題は、その点がやや改善されており、書くべき論点は多いが、各論点自体は基本的なものである。ただし、各論点を抽出し、それについて十分に論ずることができる学生はあまり多くないのではないかと思われる。この意味で、難易度はもう少し易しくてよかったのではないかと思われる。
プレテストでは、民法と他の科目との融合性が見られず、民事系としてまとめて出題する必然性があるのか疑問の余地があったが、今回は、サンプル問題と同じ、「民法と民訴の複合問題」であった。この点は、法科大学院の教育に適合的な出題として評価できるが、このような出題にあっては、要件事実の比重が重くなる可能性があるのではないかと思われる。今回は、教科書類にほとんど記述されていない債権の譲渡担保における要件事実が問われており、その場で基本から考える必要があるよい出題であったが、債権の譲渡担保という実体法において必ずしも最重要でない分野からの出題であったために、教科書類にこれに関する要件事実についての記述がなかったという側面もある。今後も要件事実が独立に出題されるとすると、要件事実を覚えようとする風潮が生ずる可能性もある。要件事実についての機械的暗記を促すような出題にならないように要望する。
設問2は、証拠共通の原則について問うもので、基礎的であり、かつ、正確な理解が必要な部分である。特に、設問のなかで に対する部分は、具体的な応用力を試すもので良問である。単に に対する答えを求めるだけで終わると、考える力が試せないし、法科大学院では のようなアプローチにより法理論の理解を深める学修をしているので、このような学修方法が重要であることを示すものとして評価する。
設問4は、反射効理論の理解を問うものであり、法科大学院で時間をかけて取り扱うオーソドックスな問題であって、良問であると考える。あえて意見を述べるとすれば、この設問では、設例の事実関係が詳しく設定されていることが必ずしも生かされているわけではなく、学説、判例の知識の論述に終わりかねない一行問題に近い印象がある。また、反射効理論は民事訴訟法における重要な論点であり、既判力などの基本的概念の理解度を試す良問ではあるが、法科大学院においては、民事訴訟法の学修過程でこのような困難な理論分野があることを前提に、それだけですますのではなく、このような関係に至るおそれのある事案において、現実の訴訟実務がどのように工夫対応しているかも重要な問題として学修している。これらも加味した問題が付加されると、実務と理論の架橋を課題とする法科大学院の学修の成果がさらに一層生かされるのではないかと感じた。 |
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民事系論文式(第2問)については、問題の水準・内容とも基本的な問題に徹しており、適切であると考える。ただ、問題文をよく読み、考えをまとめるには、少し時間が足りないか、問題数がやや多いように思われる。時間配分を気にしながら、十分な思考を求めるのは少し酷なように思われる。 |
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民事系の設問4は、いわゆる反射効という典型的な問題ですが、判例の立場と異なる立場を基礎づけることを求めるもので、判例の暗記だけでは不十分であることを示しているものとして評価できると考えます。 |
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民法・商法・手続法のそれぞれについて小問をほぼ独立に立てるという出題方式は、維持すべきである。無理に融合問題を出そうとすると、出題できる範囲が限定され、それぞれの法分野について本来問うべき基礎的知識および能力を確認できなくなるおそれが高くなるためである。
問題の水準・傾向については、おおむね維持してよいと考えられる。ただし、要件事実ないし主張・立証責任については、論文式のなかで出題することはよいとしても、単に知識を確認するような設問をすることは疑問であり、要件事実ないし主張・立証責任の分配をおこなうための基礎となる考え方を修得しているかどうかを試すような出題形式にすべきであると考えられる。 |
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全体的にプレテストに比べて良くなっていると言って良いと思う。取引法、商法、民事訴訟法の面からみて、決して難解な論点ではなく、基本的な問題・原則について、事案における具体的適用を問うものであるということができる。ただ民法に関して言えばやや実務的な分野からの出題であり、動産・債権譲渡登記という特別法も視野に入る点で、意外性があったように思われる。講義や演習においては基本を重視しながら、民法の各種特別法についても、個々の法条の解釈のみならず各制度の存在理由・社会的背景などにもできるだけ言及するように努めているが、学生の負担にかなり影響するように思われる。 |
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民事系第2問について、問題量が多かったため、じっくりと構想し、それを表現することが難しかったのではないか。 |
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民事法はバランスの取れた出題だったと思います。 |
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論文式問題における要件事実や実務にやや偏した問題に疑問を覚える。他方で、従来の判例・通説さえ理解しておれば解けるという、旧来の予備校教育を支えてきた旧司法試験を超える新しい設問が工夫された点は高く評価できる。 |
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論文式に関しては、会社法に関する限り、最高裁判例と学説とが大きく分かれている箇所が出題されており、その意味では、しっかりとした判例の把握と学説の分類およびその理解を必要とする適切な問題であると思われる。ただ、出題の仕方として、設問1の内容において、設問2の事実を考慮しないで解答することとされているのは、受験生を混乱させる可能性があるため、適切であるとは思われない。 |
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実体法学者から見て、今年度の民事法の論文式出題問題はやや実務的に過ぎ、予備校教育の弊害を打破し、論理的思考能力の向上・育成の目指すというロースクール制度の目的からみると、やや疑問があるように思われます。 |
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採点基準を公表いただかないと、容易かどうか判断できない。 |
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第2問について
実体法理論の理解を試しつつ、要件事実思考も検証しうる出題であり、かつ、解答者に要らぬ迷いを与えぬようリードする形になっている点がよい。
設問の4のように、ある法律上の問題について、異なる立場からの立論を求めるのは今後も続けてほしい。1つの見解(通説・判例か自分のよって立つ見解)でしか問題解決案を示せないのでは、実務家としてつかいものにならないから。 |
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民事系に関して、現行試験に比べてかなりの工夫が認められるが、批判的な創造的思考能力を見るような問題になっているか検討の余地がある。とくに民事系第2問は、要件事実重視に傾きすぎているように思われる。民事系第1問は、よい問題である。
民事系科目第2問の小問のうち、〔設問1〕及び〔設問4〕は、どういう解答を求めているのかが分かりにくい問いであるように思う。焦点を絞った書き方にしてほしい。 |
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問題を解いてみれば、基本書・スタンダードな教科書で取り上げられている論点(それについての正確な理解)だけでほぼ解くことができるが、解答の際には数多くの点に気づかなければならない、かつ、日頃の学習においては新しい立法と判例にも目を配っていなければならないことを要する良問である。
要件事実論の理解を踏まえて解答しなければならない設問1も、要件事実論についての個々の点の記憶よりも理解(司法研修所編『問題研究要件事実−言い分方式による設例15題』法曹会平成15年には、設問1について解説はないが、同書を理解すれば答えられる問題)を試していたので、適切である。
論文式試験問題は良問ではあるが、この水準を満たし、規定時間内に書き上げる院生を育てる教育は、容易ではない。 |
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論文式民事法第1問は、実務的かつ基本的内容の問題であるが、強いて言えば、問題文をもう少し長文にして(情報量を多くして)多様な情報の中から必要情報を抽出させる作業も必要であったように感じる。 |
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民事系論文式の第2問で、動産・債権譲渡特例法に基づく債権譲渡の対抗要件が問題とされているが、民法以外の特別法についてどこまで勉強をしておけばよいかについて、受験生に不安が生ずるおそれがあるので、司法試験委員会として、この点についての適切なメッセージを出した方がよいと思われる。特別法(たとえば借地借家法、製造物責任法、消費者契約法など)の概要の理解を前提とする問題を出題することは差し支えないと考えるが、特別法の規律内容の細部にわたる知識、とくに手続的な部分の知識を問う問題(たとえばプレテスト短答式の供託法についての設問のような問題)は好ましいとは思わない。
民事系論文問題は、傾向がやや理論的すぎると同時にやや実務的過ぎる。このような出題を想定するなら、授業内容に多少の変更を要する。
論文式試験問題[民事系科目第1問]は、ビジネス・プランニング的な要素も取り入れられ、またよく勉強している学生にとっては、難しすぎるということはないであろう。新司法試験の趣旨に適った出題ではないかと思う。 |
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第1問〔会社法〕
事業譲渡について問われている。びっくりする程難しいものではない。問題文も短く、シンプルで、解きやすい問題といえるだろう。考えられることを色々書けばよい。しかも、「会社法上の問題点を指摘しろ」という形の問題を苦手とする学生が多くいる。期末試験等で似たような問題を時々出すが、解けない学生は全く解けない。 |
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第2問〔民法・民事訴訟法〕
プレテストとはかなり異なる。出題者の個性がかなり出た問題だ。これだけの問題を解くには、4時間という試験時間は短すぎる。時間が足りなかったのではないか。 |
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設問1
民法の問題。今回受験した本学卒業生の一人は「債権譲渡担保」を知らなかった可能性がある(債権譲渡特例法についても、試験時に初めて見た可能性あり)。既修コースの学生には、知識が抜け落ちている部分があるかもしれない。百選には取上げられていない最近の判例(平成11年、平成13年あたり)を知っている必要がある。 |
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設問2
民事訴訟法の問題。教科書をしっかり読み込んでいればできる問題である。 |
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設問3
民法・要件事実論の問題。かなりの難問。配点も多いので、この問題が解けたか否かで合否が変わってくるのではないか。
論文式民事系科目第2問は、試験時間内に答案を書ききることがむずかしいのではないでしょうか。特に〔設例3〕は、問題自体もかなり難しく、時間をかなり要すると思われる。しかも、点数配分も多く、受験生は困惑したのではないでしょうか。 |
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設問4
民事訴訟法の問題。やや斜めから尋ねているが、基本的な論点であり、判例をおさえていれば答えられる。ただ、判例を突き崩すような考え方を示す必要があり、答案をまとめるには時間を要するだろう。 |
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商法大問が、やや難しすぎる。債権譲渡特例法関係が、やや実務的すぎる。 |
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出題者を特定できるような出題は好ましくない。 |
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民事法論文式要件事実の出題は,暗記物におちいりがちな要件事実につき論理的な法的思考能力を問う出題であり,高く評価できる。今後もこのような出題が続くことを期待したい。 |