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審議の進め方等
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審議を進めるに当たってのポイント>
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この討議の中で、概ね確認された審議を進めるに当たってのポイントは、以下のとおりである。
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世界における社会・経済・文化のグローバル化、我が国における少子高齢化などが進む中で、大学院は、「深い知的学識を涵養する高度な教育の課程を提供する場」として、その使命を再認識し、より積極的に果たすことが必要である。 |
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このため、大学院における教育研究機能の活性化のため教育の課程の組織的展開の強化(大学院教育の実質化)を図ることが、大学改革の重要課題と位置づけられる。 |
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審議は、この点に集中した議論を行うこととし、我が国の課程制大学院制度の趣旨を踏まえ、それぞれの課程の目的・役割等を基本とし、大学院教育の実質化を図るためには、今後、どのような方策を展開するべきかについて検討する。 |
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大学院教育の実質化を図るための改革の基本的方向
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21世紀社会において、大学院が果たすべき役割・機能】
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我が国の大学院が、これらの複合的な要請を踏まえ、その本来的な役割を十分に発揮していくためには、各大学院の個性や特色の明確化、大学院間の競争や連携等を通じ、大学院教育全体として、特に以下の機能を果たしていくことが新たに求められる。
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高度な人材養成機能の強化
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創造性豊かな優れた研究・開発能力を持つ研究者等 |
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高度な専門的知識・能力を持つ高度専門職業人 |
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確かな教育能力と研究能力を兼ね備えた大学教員 |
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知識基盤社会を多様に支える高度で知的な素養のある人材 |
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教育研究を通じた学術研究の高度化 |
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国際社会などへの貢献 |
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博士課程(一貫制又は区分制)>
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産官学を通じたあらゆる研究・教育機関を担うために、国際的にも高い水準の研究環境の中で、自立して研究活動を行うに足る能力等を修得させ、創造性豊かな優れた研究・開発能力を持つ研究者等/確かな教育能力と研究能力を兼ね備えた大学教員の養成を行う課程として、明確な役割を担うことが求められる。 |
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修士課程>
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研究者等養成の一段階、 高度専門職業人の養成、 知識基盤社会を多様に支える高度で知的な素養のある人材の養成など、社会の多様なニーズに的確に対応することが求められる。これを踏まえ、各大学院においては、それぞれ基本的な方向性・焦点を明らかにし、それに即して、学士課程で培われた教養教育に十分な裏打ちをもつ専門的素養をもとに、その専門性を一層向上させていく課程として、役割を担うことが求められる。 |
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専門職学位課程>
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幅広い分野の学部の卒業者、社会人等を対象として、大学院段階より特定の高度専門職業人の養成に特化して、社会の各分野において国際的に通用する高度で専門的な知識・能力が必要とされる人材の養成を行う課程として、明確な役割を担うことが求められる。 |
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ただし、特定の高度専門職業人の養成に特化した課程であっても、専門基礎と実習・実技との関係等に配慮して、一貫した教育の課程の編成が重要である専攻分野については、学士課程に配慮するなど弾力的に対応することが適当であると考えられる。 |
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(大学院の教育・研究機能の充実/強化)
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今後、求められる人材養成機能と大学院教育】
(創造性豊かな優れた研究・開発能力を持つ研究者等/確かな教育能力と研究能力を兼ね備えた大学教員の養成に必要な教育)
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博士の学位授与へと導くことを目標とする教育を念頭に、産官学を通じたあらゆる研究・教育機関を担う研究者/大学教員等を養成する観点から、体系的な教育課程において、例えば、
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学生に性急に顕著な研究業績を求めるのではなく、国際的にも高い水準の研究活動に豊富に接する中で、自立して研究活動を行うに足る能力を修得させることを目標に、その基礎となる豊かな知的学識を培う教育 |
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海外、企業での研究経験など、多様な研究活動の場を通じて研鑽を積む教育 |
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学生同士が切磋琢磨する環境の中で、自ら研究課題を設定し研究活動を実施させるなどの学生の創造力、自立力などを磨く教育 |
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高度な研究開発プロジェクトの企画・管理等のマネジメントを行える人材を養成するために、学生に一定の責任と権限を与え、プロジェクトのマネジメント能力を高める教育 |
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加えて、大学教員を目指す学生に対しては、学生に対する教育方法のあり方を学ぶ教育 |
などが重要である。 |
(高度な専門的知識・能力を持つ高度専門職業人の養成に必要な教育)
○ |
専門職学位課程や高度専門職業人の養成を主な目標とする修士課程の教育を念頭に、社会の各分野において国際的に通用する高度で専門的な知識・能力が必要とされる人材を養成する観点から、体系的な教育課程において、例えば、
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「理論と実務の架橋」を目指すため、産業・経済社会等の各分野で世界の最前線に立つ実務家教員の積極的登用などにより、国際的に活躍できる水準の高度で実践的、継続的な教育 |
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長期間の単位認定を前提としたインターンシップにより、学問と実践を組合せた教育 |
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特定の職業的専門領域における職業的倫理を涵養する教育 |
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高度な専門職業人として求められる表現能力、交渉能力を磨く教育 |
などが重要である。 |
(知識基盤社会を多様に支える高度で知的な素養のある人材層の確保に必要な教育)
○ |
各大学の理念や特色に基づき、必要な教育内容、水準を確保した上で多彩に展開する修士課程の教育を念頭に、多様に発展する社会の様々な分野で活躍する高度で知的な素養のある人材層を確保する観点から、まず各大学院において教育目標など課程の目的・役割を明確にした上で、体系的な教育課程において、例えば、
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グローバル化や科学技術の進展など社会の激しい変化に対応し得る統合された知の基盤を与える教育を基本とし、課題に対する柔軟な思考能力と深い洞察に基づく主体的な行動力を兼ね備えるための高度な素養を涵養する教育 |
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学生の知的好奇心などに応えた多様かつ豊富な教育プログラムにより幅広い視点を培う教育、又は、 論文作成を基本とした教育のほかに、養成すべき人材を念頭に関連する分野の知識・能力を修得する教育など、学修課題を複数の科目等を通して体系的に履修するコースワークを重視した教育 |
などが重要である。 |
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視点6 大学院教育と学部教育、大学以外の専門教育との関係 |
【 |
大学院教育と学部教育】
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大学院教育は、学士課程の教養教育に十分な裏打ちをもつ専門的素養の上に立ち、専門性の一層の向上を図るための、深い知的学識を涵養する教育を基本として考えていくことが重要である。
このため、大学教育という全体の視点に立って、大学院教育との関係について言えば、学士課程には、自学自習による教養教育を重視した教育や、主専攻分野以外の分野の授業科目を体系的に履修させるメジャーマイナーなどによる幅広い専門的素養のある人材養成のための教育など、高等教育としての確かな基礎的能力や生涯学習の基礎等の涵養を培う教育が期待される。
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また、学生の流動性の促進、或いは学際的な分野の専攻などにおいて学士課程の多様な学修歴をもつ学生等を受入れることを促進する観点から、必要に応じて修士課程の段階において、入学後に補完的な専門教育を行うことも必要である。
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○ |
なお、大学院教育と学部教育の関係については、専攻分野によってもその事情は異なることから、大学院の教育研究機能の活性化の観点から、例えば、学士・修士課程を通じた一貫した教育プログラムの導入の是非なども含め、今後の学問分野別の審議等においても検討を深めることが必要である。 |
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改革支援方策の基本方向等】
(改革支援方策の基本方向)
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国際的に魅力ある大学院教育の展開に向けて、その機能が多様化・分化し発展していくために、目下、最も重要なことは、各大学院(専攻等)が、特に人材養成機能の面で、自ら課程の目的等について焦点を明確にすることである。
これを前提として、それぞれ課程の目的に応じて、教育内容・方法、修了要件などの教育課程や研究指導、及び教員組織の適切な在り方などについて検討を進め、大学院における教育研究機能を活性化するための教育の課程の組織的展開の強化(大学院教育の実質化)に焦点を当てた改革を進めていくことが重要である。
このための必要な制度改正、集中的な計画及び先行的取組の実施などを組み合わせ、改革を総合的に推進していくことが必要である。 |
(課程の目的・役割の明確化に関する制度改正の実施)
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これらを踏まえて、国は、新たに設置する大学院のみならず、既に設置されている大学院を含め、各大学院(専攻等)の課程の目的が明確に示されるよう、大学院設置基準に関係規定を新たに置くことが適当である。
その際、各大学院は、専攻等の分野ごとに職業人等が当面している課題や、専攻等が果たすべき役割などを踏まえ、養成しようとする人材を念頭に出来るだけ具体的に各課程の目的・役割を明確化することが重要である。更に、これをもとに、学生に修得させるべき知識・能力の具体化を図り、これらを組織的に共有していくことが必要である。
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具体的には、各大学院は、例えば、専攻を基本単位として、各課程において養成しようとする人材、或いは修得させようとする知識・技術の体系などを学則又は研究科規程等に規定するなどにより明確化し、これらを分かり易い形で積極的に公表することが必要である。
これらの措置を通じて、各大学院は、社会の要請に的確に対応しているか確認していくよう努めていくことが必要である。 |
(課程の目的・役割の明確化と大学院評価との関係等)
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また、当該措置により、各大学院(専攻等)の課程の目的等を組織的に明らかにしていくことは、大学院評価の基準(ベンチマーク)を明確化する役割を果たすことになると考えられる。
当部会は、当該措置との有機的な連携を図る方向で、今後、実効性ある大学院評価の早期確立に関する検討を行っていくこととする。
その他、当該措置は、例えば、学生の大学院への進学の見極め、修了生のキャリアパスの形成にも資するものと考えられる。 |
(改革支援方策の今後の検討)
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当部会は、今後、これらの措置に関連して、教育内容・方法、修了要件などの教育課程や研究指導の在り方、これらの大学院設置基準上での取扱い、教員組織の在り方、施設・設備の充実などについて検討を進め、大学院における教育の課程の組織的展開の強化(大学院教育の実質化)のための改革支援方策の一層の具体化を図っていくこととする。 |
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今後の学問分野別等の審議で検討すべき事項
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当部会は、今後、本「審議経過の概要」を踏まえ、学問分野別に置かれるWG(ワーキンググループ)において、学問分野別の審議を行い、さらに検討を深化させていくこととするが、WGにおいて審議するべき事項としては、主に以下のものが挙げられる。
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課程制大学院の趣旨に沿った教育課程や研究指導の確立
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教員の教育・研究指導能力の向上のための方策 |
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今後の研究者・技術者等として必要な高度な素養の涵養のあり方 |
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教員・学生の流動性の拡大のための方策 |
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社会のニーズと大学院教育のマッチングのための方策 |
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(2) |
研究者養成機能の充実
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博士課程における体系的な教育課程の確立 |
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大学院の研究機能の強化(施設・設備など) |
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学生に対する経済的支援と大学院修了者のキャリアパスの多様化の促進方策 |
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(3) |
実効性ある大学院評価の確立 |
(4) |
その他学問分野別に審議するべき事項 |
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