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教員の教育・研究指導能力の向上のための方策
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臨床医学系大学院においては、大学院学生が臨床を行うことは当然であるが、大学院生がいなければ病院が成り立っていかないという現状となっている。大学院学生が大学病院での大きな労働力になっていることは問題。 |
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教育・研究指導の在り方については、研究者養成と専門職業人養成とを区分して教育・研究指導を行うことが必要との意見。また、一人の大学院生に対して複数の教員による指導体制を整備すべきという意見があった。 |
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医学系大学院は、研究内容が高度に細分化されており、ときに一部実験の分担または手伝いとして狭い領域のみの教育に終始する傾向がある。また、将来研究者を志向していない者も多く混在していることから、研究者養成と専門医養成とを区分して教育・研究指導を行うことが必要。 |
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学生の持っている研究課題の遂行、教員が行っているテーマに学生が加わって行う研究、どちらもが可能なように、学生に対し保障することが必要。 |
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教員,大学院学生が国際会議などに積極的に参加し,国際交流をはかるとともに,大学院の教育を英語でできる環境にすることも重要。 |
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達成目標にもよるが、ほとんどの場合、大学院修了で到達目標が完成することはなく、継続的な研修が必要である。 |
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教員の教育・研究指導能力のレベルにばらつきがあるので、一人の大学院生に対して複数の教員による指導体制を整備すべき。 |
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教員の教育・研究指導能力の向上方策については、研究者自身が国際競争に常に晒され,評価を受けている自覚を持つことが重要との意見や、教員の人事評価基準に流行や偏重が生じないようにすべきとの意見、次代の指導者を循環的に養成する体制を構築すべきとの意見があった。 |
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大学機関が自己評価と外部評価を受け,研究者自身が国際競争に常に晒され,評価を受けている自覚を持つことが重要。 |
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大学院の目的が多様化する中、一教員が総てを網羅することは不可能であるため、突出した能力を持つ個人を如何にして発見し各構成員を組織的に構造化するかについての、社会システム設計に関する実践的基礎研究が急務。 |
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各現場における人事評価基準に流行や偏重が生じないように、価値の多様性を担保しつつ、突出した人材が育つ芽を摘まないよう配慮する制度の構築が不可欠。 |
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自身が高い研究能力を持つ先端的教員と、優秀な自己啓発能力を持つ学生を有機的に組み合わせて、かつ相互の情報交換を促進する制度を確立した上で、この組織に対して傾斜的・重点的に優遇措置を担保して、次代の指導者を循環的に養成する体制を構築すべき。 |
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教員の教育・研究指導能力の向上方策として、サバティカル制度を導入すべきとの意見があった。 |
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一定基準以上の成果をあげた研究者に対しては、サバティカルやインターンシップによる海外研修の機会を与えることも一策。 |
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研究者の充電期間にあたる,いわゆるサバティカル制度を導入するなど,人的,経済的な支援が必要である。 |
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先端的な教育研究者のさらなる創造性を啓発するとともに、実効性のある国際的流動性を拡大するためには、教員のサバティカル制度を導入することが急務である。 |
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教育・研究指導の適切な評価の在り方については、高い能力を持つ教員を手厚く待遇するためのインセンティブを持つ制度を設計すべき。特に、診療面での能力・実績の評価の在り方について検討する必要がある。また、研究者に対しては、学問領域への貢献度、教育能力についてはコースワークへの貢献度を評価すべきとの意見があった。 |
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教員の教育・研究能力を公正に評価し、高い能力を持つ教員を手厚く待遇するためのインセンティブを持つ制度を設計すべき。評価結果を教員の昇任や再任評価に用いることの法的根拠について議論すべき。 |
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教員の能力評価のうち、特に診療能力・実績の評価が適切に行われていないため、この評価方法の在り方について検討が必要である。 |
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研究者に対しては、その学問領域に貢献する研究をしているかどうかの評価の視点が必要。教育能力に関しては研究指導の成果としての修了生の輩出(学位授与)のみならず、コースワークへの貢献を評価する必要がある。また、学生からの評価も必要である。 |
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任期制や能力制の導入と実施をさらに徹底し、成果に見合った評価が必要であり、研究業績による研究費の傾斜配分制度の導入などを推進すべき。 |
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コースワークの充実について(講義・演習・実験の組み合わせ方、授業の形式など) |
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コースワークの充実については、個別の教育・研究指導と、専攻系共通のコースワークの授業を明確に区分して実施すべきとの意見や、現行の大学院設置基準における修得単位数(30単位)を再考すべきとの意見があった。 |
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狭い研究の手伝いによる名目上の単位習得の現状から、将来の基盤となる実質的な広い学習(複数のコースワーク、多様な研究手技習得も必要)を行う実質的教育への転換を図るべき。 |
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個別の教育・研究指導と、専攻系共通のコースワークの授業を明確に区分して実施すべき。 |
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生命倫理、動物実験倫理、基本的実験技術、統計解析、英文論文作成等の共通コースワーク(一部は選択性)を設定し、組織的指導を行うべき。 |
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充実したコースワークの実現のため、現行の大学院設置基準における修得単位数(30単位)を再考するとともに、 単位互換制度の積極的導入、 学部在学中の研究活動を大学院単位として認定するなどの方策を講ずるべき。 |
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大学教員の採用については、採用に当たっての評価基準を各大学院において明確にすべきとの意見があり、その具体的評価項目も提案された。 |
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優れた教員を育成するためには、競争原理を導入が必要であるが、その前提として、教員の任期制の導入および教育と研究に対する評価基準を各大学院において明確にする必要がある。その基準に基づいて、透明性のある評価を行い、教員としての再任可否を決定する。 |
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医・歯学系では、臨床との乖離がない教員の体制を敷いているが、看護学領域では臨床と教育との分離が大きいことが課題になっている。臨床教授の採用や教員の実践の場の確保への取り組みで、双方が乗り入れる努力をしている。 |
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大学院の教員評価においては、研究業績のみならず指導実績も評価すべきであり、大学院教員の採用に際して、指導実績を高く評価するような任用基準を設定する必要がある。 指導人数、 指導内容、 指導された大学院生の進路、 大学院生の指導教員に対する評価などを評価項目として採用する。これらの評価項目を導入するだけで、教員の意識は大きく変わる。 |
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今後の研究者等として必要な高度な素養の涵養のあり方
各大学院の人材養成目的・機能に即した高度な素養の内容について |
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高度な素養の内容としては、研究者養成面に要求される素養としては、まず世界での通用性があること、専門職業人養成面では、専門知識の修得とともに、人間としての幅広い素養の涵養が重要であるとの意見があった。 |
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研究者養成面に要求される素養としては、語学力を含め、世界で通用することが必須であり、global standardが基本となる。一方、高度専門職業人養成の面では専門知識の修得と共に、豊かな人間性、人間としての幅広い素養の涵養が重要であり、生命倫理学、コミュニケーション学などの教育が求められる。 |
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大学院修了者のキャリアパスが多様化し、国際保健医療の分野や国内の医療政策・医療経済分野において活躍できる人材の養成が必要である。そのための語学力、国際法、医療・保健行政法などの素養を涵養することも必要。 |
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臨床歯学系の大学院においては、研究活動を通じた科学的根拠に基づいた医療(EBM)を実践するための素養を涵養している。 |
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研究者には論理性と表現力は必須である。現在、学部教育の中ではこうした訓練は困難であり、大学院での教育にならざるを得ない。 |
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医療において倫理は非常に大きな比重を占める。研究者は倫理性を常に考えて、研究を遂行するものであり、倫理性の涵養は最も重要な点だと考えている。看護倫理のコースワークをおいている修士課程は多く、また研究倫理審査等の過程を経ることによっても学んでいる。 |
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各大学院の人材養成目的・機能に即した高度な素養を涵養する方法について |
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高度な素養を涵養する方法としては、教育目標を明確化し教育カリキュラムを体系化することがまず必要であるとの意見や、学生の初期の段階から研究を主体的に組織して遂行することが可能なような制度の検討が必要との意見があった。 |
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それぞれの大学院コースの教育目標を明確化し、大学院教育での教育カリキュラムを体系化することが必要。 |
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医療系では学位に関する多様なニーズが存在するので、目的に合わせて多種類の名称の学位・称号を設定して、それぞれにおける単位認定や課程修了要件に多様性を持たせて、様々なレベルの人材を無理なく無駄なく養成するシステムを構築することを検討する。 |
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優秀な学生には初期の段階から研究を主体的に組織して遂行することが可能なような新たな大学院研究助成制度の検討が必要。この制度の中で、多様な人材を組織的に活かす、研究管理者としての能力を養成するメカニズムを構築することも必要。 |
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研究者/大学教員の養成に必要な教育は,どの学問分野にも共通の目標と方略が立てられると思うが、研究と教育のウエートは,所属する大学や職務によって異なってよいと思う。研究者/大学教員の養成には,早くからプロジェクトマネジメント(研究計画立案,実施と評価法,論文作成ならびにプリゼンテーションの仕方,外部資金の導入方法などを含む)の教育も必要。 |
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教員・学生の流動性の拡大のための方策
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教員の流動性を高める方策としては、国際的な大学院連携教育制度への参加による国際的な単位互換・連携教育制度や、海外の大学とのジョイントディグリーの授与の制度化が必要であるとの意見がある一方、領域によっては教員の流動性をむしろ抑えて安定した教育をすることが課題となっていることの紹介があった。 |
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例えばEUのエラスムスプロジェクトなど、欧米の国際的な大学院連携教育制度に参加して、国際的な単位互換・連携教育制度や、海外の大学とのジョイントディグリーの授与を制度化することが急務である。また、アジア地域にあっては、我が国主導の国際的大学院教育ネットワークを構築する必要がある。 |
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学部の講座制組織と大学院の組織を別組織とする。大学院組織においては、講座制を廃止して大領域制の組織に組替えるとともに領域内における人事の流動性を確保するために、教員の総定員数を維持しつつ、職位別定員数を固定しない方式を採用する。領域の膨張・縮小あるいは境界領域の拡大に対応できるように定員を流動的に運用できるような柔構造に組替える必要がある。 |
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「流動化」する事にメリットがあるシステムを構築した研究科などの部局に対して優遇措置を講じることも一策である。同一出身大学の教員枠の設定,教員が1箇所に留まるより,異動する方がメリットがあるシステムとすること,研究者ドラフト制度などを考慮する。 |
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看護学領域に関しては、教員の流動性をむしろ抑えて安定した教育をすることが課題である。 |
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学生の流動性を高める方策としては、多様な分野から入学する学生に配慮した授業科目編成とするなど、必要な教育体制を整備することが重要であるとの意見がある一方、学部からストレート入学であれば、流動性を求めるのは難しく、流動性があることのみをよしとするのは危険な面もあるとの意見があった。 |
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医学系の修士および博士課程において、多様な分野から入学する学生に配慮した授業科目編成とする必要がある。特に非医学系出身者に対して医学系導入科目を設定する必要がある。 |
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大学院を持たない先端的研究機関との、指導委託や連携大学院制度を利用した、学生相互教育メカニズムを拡大促進して、大学院生・ポストドクのレベルでの有機的連携を図る。また、大学院を持つ大学間での単位互換や、大学をまたがる複数指導教官制度などを検討する。 |
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学部からストレート入学であれば、流動性を求めるのは難しい。いったん社会に出た後では流動性を得やすい。流動性があることのみをよしとするのは危険な面もある。 |
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学生の選抜方法の在り方について(「流動性」の観点から) |
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教養学部入学後、ここを修了してから各学部に進学するシステムが、その後に修士課程に進む際の学生のモチベーションを持たせる意味で非常に役立っている。 |
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社会人および留学生に広く門戸を開き、入学者の多様化を促進すべきである。 |
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社会のニーズと大学院教育のマッチングのための方策
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国民や社会から求められているのは、やはり国民が納得する医療を提供することに尽きる。 |
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国民が望んでいる医療と実際の医療政策とは大きな乖離がある。学術研究が何故大事かということ、衰退することの危機感が国民に理解されないといけない。 |
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社会のニーズと大学院教育のマッチングのための方策としては、大学側が、医学・医療に関連する行政・保健医療・医療関連産業の動向を把握する必要があること、そのことを大学院教育カリキュラムの中に積極的に取り上げるべきとの意見があった。 |
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大学側が、医学・医療に関連する行政・保健医療・医療関連産業の動向を把握する必要があり、大学側が積極的に関連分野と継続的意見交換の場をもつことが必要。 |
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国際的な先端的競争力の確保のため、社会的ニーズと乖離・矛盾した立場をとるべき必要がある場合もあるため、施策を検討するに当たり、「戦術」的考察と、「戦略」的考察を明確に区別し意識して方略を策定する必要がある。 |
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大学院教育カリキュラムの中に、生命倫理、社会と医療などの領域について講義科目として積極的に取り上げるべき。 |
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