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「新職」の新設
(「新職」の新設について)
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現行の助手のうち、自ら教育研究を行うことを主たる職務とする者については、その職務に相応する位置付け(職名、職務内容等)の新しい職(「新職」)を、学校教育法上に設けることが適当である。 |
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なお、「新職」の具体的な職名については、諸方面からの意見を伺いつつ検討することとし、今回の「審議経過の中間的な整理」においては、具体的な職名を定めず、その職務内容等についての考え方を整理することとしている。 |
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( という職名とする考え方について)
新しい職の名称については、 大学の教員組織の一員として自ら教育研究を行うことを主たる職務とする若手教員の位置付けに相応していること、 現行の学校教育法上の各職の定着度や知名度、運用の実態等を勘案して社会的及び大学現場における混乱を招かないこと、 国語的・文化的な観点から出来る限り自然な名称であること、 国際的な通用性の観点からみて説明し易いものであることなどを満たすとともに、法制度上の観点からの整理も必要である。また、新しい職の職名については、広く意見を募集し、助教授、準講師など様々な名称が候補として寄せられ審議の参考となったものの、特定の名称への収斂することや、上記のような諸要件の充足には到らなかった。これらの点を総合的に勘案して、「新職」の名称は、・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・との理由から、 とすることが適当と考えられる。 |
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「新職」の職務内容
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若手教員の養成においては、教育面と研究面の両方が重要であり、「新職」の主たる職務として学校教育法上に規定する職務内容としては、教育と研究の両方とすることが必要である。
このため、例えば、授業科目を担当することができるとともに、大学院設置基準上の資格が認められれば大学院学生の研究指導を担当することができる「研究指導教員」となれるなど、自ら教育研究を行うことを主たる職務とすることが適切である。なお、大学設置基準上は、大学に最低限置くことが必要な「専任教員」に含めることできることとすることが適当である。
また、大学教員の職制上、教授は、特定の授業科目の担当や研究指導等を行うだけでなく、教育研究方針の策定、教育課程の編成など、大学、学部等における教学面の運営全体についても第一次的な責務を担っている(最終的な権限と責任は学長にある)の。これに対し、「新職」は、一般に、大学、学部等の教学面の運営全体について、教授と同じ立場で責務を担うものではなく、大学、学部等によって定められた特定の事項(授業科目の担当や研究指導等)に限って責務を担うものとすべきである。
このため、学校教育法に、「新職」の主たる職務を規定するに当たっては、大学、学部等において定められた特定の事項に限って、自ら教育研究を行うことである旨、定めることが適当である。
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注1)「自ら教育研究を行うこと」について
大学、学部等が組織として決定した方針等の下、授業科目の担当や自ら研究目標を定めて研究を行う場合に限らず、研究プロジェクトの中の一部を分担して(教授等の補助(観測、測定)ではなく)自らの判断と責任において研究を行う場合や、授業科目の一部を担当することも含まれる。また、医学等の分野においては、附属病院における診療も教育研究の一環であり、教育研究に含まれる。
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注2)学校教育法上に規定される職務内容について
学校教育法上の職務内容についての規定は、一般的に、「新職」が担うこととなる主たる職務を規定するものである。このため、実際に、各大学において、「新職」が、どの程度、主たる職務である教育研究を行うこととなるか等、その具体的な職務内容は、各大学によって異なることはあり得る。また、「新職」の職務には、教育研究以外の職務も含まれ得る。 |
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「新職」を設けた場合の教員の分担及び連携の組織的な体制の確保
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大学においては、
a) |
大学や分野によって、現在の助手等が大学院学生に対して行っている日常的な指導等が、その育成において重要な役割を有しており、次代を担う若手の大学教員や研究者を育成するという観点からは、この機能、役割を担う者を確保することが必要である。 |
b) |
教学面、特に、教育課程の編成や授業科目の分担等の教育面においては、学生に対する体系的・効果的な教育を提供することが必要である。このためには、大学、学部等が組織として方針等を決定し、その方針等に従って役割の分担及び連携等の下で組織的に行うことが不可欠である。 |
c) |
さらに、入学者選抜に係る職務、附属病院における診療等のように、組織として、役割の分担及び連携の下、さらには必要に応じて指揮・監督の下に組織的に行うことが必要な職務も存在している。 |
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現行制度においては、各大学におけるこれらの必要性が満たされるように、大学の組織的な体制に関しては、法令上の諸規定を踏まえつつ、各大学が、自らの権限と責任において、それぞれの教員が担当する具体的な役割や、教員間の関係などの教員組織の具体的な編制等を定める仕組みとなっている。
このような組織的な体制に関する仕組みは、「新職」についても同様とすることが適当である。 |
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したがって併せて、今回の制度改正により、「新職」について、自ら教育研究を行うことを主たる職務とするとしても、大学、学部等が組織として方針等を定め、その方針等に従って、役割を分担し、連携の下で組織的に行わなければならないこと等職務について支障が生じないように、次のような措置を講じることが必要である。
ア |
.大学設置基準等において、各大学は、教育研究上の目的を達成するため、教育研究の実施に当たり、各教員の役割の分担及び連携の組織的な体制を確保し、かつ、責任の所在が明確になるよう配慮すべき旨の規定を設ける。(後述「 .講座制・学科目制等の教員組織の在り方について」参照)。 |
イ |
.特に、大学院学生への教育については、例えば、日常的な指導等は「新職」が担当するなど、各教員がそれぞれ役割を分担し、連携の下で組織的に行うことが必要である。
このため、ア.の大学設置基準等上の規定に加え、大学院設置基準に、各教員が役割を分担しつつ連携して、組織的に大学院学生の教育を行う体制を確保するよう配慮すべき旨の規定を設ける。 |
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「新職」の処遇等
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「新職」の処遇は、「新職」が行う職務の実態等に即し、各大学の判断により定めることが適当である。
なお、職務の実態が従前と変わらないなど、従来、助手の職務に属する職務を行っていた者が「新職」に就いた場合には、基本的に、処遇は変わらないものと考えられる。 |
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「新職」のキャリアパス等
(「新職」のキャリアパス)
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この「新職」は、制度上、将来、准教授、教授へつながるキャリアパスの一段階に位置付けられるものであり、「新職」に就く者としては、例えば、大学院博士課程修了後、ポスドク(PD)等を経た者などが想定される。このような点や若手の大学教員や研究者の養成の重要性を踏まえ、各大学においては、大学教員や研究者を志す優れた人材にとって、「新職」が自らの資質能力を十分に発揮できる活躍の場や一層の研鑽の場となるよう積極的に活用することが期待される。
これに関連して、各大学や分野によって実態は異なるが、大学の教員に優れた若い人材を確保するためには、若手が就く大学教員のポストを一定数確保することが望まれ、特に、世界的研究・教育拠点の機能に重点を置く大学にあっては、この点に留意することが求められる。 |
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(任期制等の活用)
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米国では、大学院を卒業修了し、研究員等として経験を積んだ後に、助教授(assistant professor)等として任期付の契約で雇用され(一般に2〜3年程度)、この助教授等の期間に実績を積み、准教授(associate professor)への昇進時又は准教授在職期間中に審査を経て、テニュア(終身在職権)の取得が決定されている。
我が国においても、優秀な人材の適切な確保や人材の流動性向上を図るため、各大学において、「新職」に期間を定めた雇用(任期制)や昇進のための審査を定期的に行う再審制など、一定期間ごとに適性や資質能力を審査する制度を導入することや、「新職」からの学内昇格を原則として行わない制度を導入することなどが考えられる。これらの制度を導入するかどうかは、それぞれの実情に応じて、各大学が判断するものであるが、「新職」がキャリアパスの一段階に位置付けられるものであることから、一般に、このような制度が積極的に活用されることが望まれる。また、採用や昇進等に当たっては、責任の所在を明確にしつつ、手続の透明性を確保しつつ、相応しい資質能力を有するか否かについて公正かつ厳格な教員評価を行うことが必要である。 |
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「新職」の資格
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「新職」は自ら教育研究を行うことを主たる職務とし、授業科目を担当することができることから、教授等と同様に大学における教育を担当するに相応しい教育上の能力を有すると認められることが必要である。 |
○ |
また、大学教員のキャリアパスの一段階に位置付けられることから、研究上の能力として、少なくとも基本的に修士又は専門職学位の資格を求めることが適当である。 |
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「新職」は大学に置かなければならないこととするかどうか。
将来、大学教員や研究者になることが期待される者を養成することが大学の重要な責務であることや、大学の教育研究の活力を維持していく上で若手教員が自らの資質能力を十分に発揮することが必要であることに鑑みれば、基本的には、大学には、「新職」を置かなければならないこととすることが適当である。
ただし、今後、各大学が緩やかに機能分化していくものと考えられることや、各分野によって大学教員のキャリアパスの状況は多様であること等を踏まえ、全ての大学や全ての学部に必ず置かなければならないとするのではなく、各大学の方針や各分野における実情等によっては置かないことができることとすべきである。
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各大学や各分野によって、大学教員のキャリアパスの状況は多様であること等を踏まえ、「新職」は、各大学の判断により、置くかどうかを決める制度とすることが適当である。 |
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なお、各大学や分野によって実態は異なるが、大学の教員に優れた若い人材を確保するためには、若手が就く大学教員のポストを一定数確保することが必要である。特に、世界的研究・教育拠点の機能に重点を置く大学にあっては、この点に留意することが求められる。 |
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