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諸外国における大学教員に関する法令上の規定


<フランス>

1.職種及び職務


(1)職種
   大学教員(「教育研究職」)の種類には法令上,教授と助教授がある(教育法典第L.952-1条,1984年6月6日付け政令第84-431号)。
        【1984年6月6日付け政令第84-431号】
   第2条
       正規教育研究職は第59条と第61条に定める措置を除き助教授職団と教授職団に区分される。 
         【訳注】   第59条と第61条は,「講師」「助手」の職団廃止に伴う移行措置を定めている。
   このほか,統計上大学教員に含まれるものに,任期付きの「非常勤教育・研究補佐員」
( ,1988年5月7日付け政令第88-654号),「学生指導員」(monitorat,1989年10月30日付け政令第89-794号)等がある。
   以前は国家公務員の「講師」,「助手」(assistants)等が置かれていたが,現在は廃止されており,現職者がわずかにいるのみ。

(2)教員の職務についての規定
   1 教員全般
 【教育法典第L.952-3条】
第1項
   教育研究職の職務は以下の領域において遂行される。
   一    教育(継続教育を含む),チューター,進路指導,学生相談,試験
  研究
  知識の普及及び経済的・社会的・文化的関係者との連携
  国際協力
  当該機関の管理運営
2 教授
  【教育法典第L.952-3条】
第3項
   教授は,カリキュラム,学生進路指導,教育組織の立案について主たる責任を担う。
3 助教授
   規定はない。


2.資格

(1) 教授(1984年6月6日付け政令第84-431号第42〜44条及び第46条)
   全国大学審議会が審査を経て作成する「教授職有資格者リスト」へ登録された者が,国民教育省令による公募に出願し,各大学が行う選考に合格した場合は,大統領によって任命される。 
   「教授職有資格者リスト」への出願資格(法令の要旨)
1 国家資格である「研究指導資格」又は相当の学位を有する者
2 過去8年間のうち5年間の専門分野における勤務経験を有する者
3 常勤客員教員
4 教授に出向した公務員
5 教授と同等の研究員
   注: 「教授職有資格者リスト」に掲載されていない者でも,1「研究指導資格」又は相当の学位を有し特定の外国の大学に10年以上勤務した助教授,2「研究指導資格」又は相当の学位を有しフランスの大学に10年以上(うち5年を助教授として)勤務した助教授,は採用試験に出願することができるが,この方式で採用されるのは,当該年度に全国で採用される教授の9分の1以下である。

(2) 助教授(1984年6月6日付け政令第84-431号第22条,23条,26条,32条)
   全国大学審議会が審査を経て作成する「助教授職有資格者リスト」へ登録された者が,国民教育省令による公募に出願し,各大学が行う選考に合格した場合は,国民教育大臣によって試補助教授として任命される。1年間の試補期間の後,大学の提案に基づき国民教育大臣が,正式採用,試補延長(1年),試補採用前の職への留置,解雇のいずれかを決定する。 
   「助教授職有資格者リスト」への出願資格(法令の要旨)
1 博士号,「研究指導者資格」又は相当の学位を有する者
2 過去6年間のうち3年間の専門分野における勤務経験を有する者
3 常勤客員教員
4 助教授に出向した公務員
5 研究員

(3) 「非常勤教育・研究補佐員」(1988年5月7日付け政令第88-654号)
   学長が採用する。
   出願資格(法令の要旨)
1 博士号又は「研究指導者資格」の取得課程に在学する,又は,高等教育教員採用試験受験の意思のある上級公務員(カテゴリーA,大卒)
2 高等教育教員採用試験受験の意思のある1年以上の研究奨励金受給者
3 外国大学に職を持つ外国人
4 博士号を有し高等教育教員採用試験受験の意思のある「学生指導員」
5 1年以内に博士号取得見込みの学生
6 博士号又は「研究指導者資格」を有し高等教育教員採用試験受験の意思のある者。

(4) 「学生指導員」(1989年10月30日付け政令第89-794号) 
   学長が採用し,「教育研究職」の指導下で教育活動に従事する。
   出願資格(法令の要旨)
高等教育教員を志望する研究奨励金受給学生。



<ドイツ>

   ドイツ全体に共通する高等教育の枠組(原則)は,連邦法である高等教育大綱法(1975年制定)が定めており,同法に合わせて,各州が州高等教育法等の関係法令において詳細を定めている。
   高等教育大綱法(2002年8月最近時改正)における高等教育機関の教員に関する規定は以下の通りである。
   なお,高等教育大綱法が2002年2月に改正され,従来の助手等の職種は廃止されたが,同法に合わせた各州の関係法令の改正が必要であること,雇用契約期間の残存等により解雇できないこと等の理由から,助手等は実際には存続している。

1.職種及び職務

(1)職種
   高等教育機関の本務の教員(Hochschullehrer)とは,教授(Professor),準教授(Juniorprofessor)である。
 
    第42条   本務の学術職員及び芸術職員
     高等教育機関の本務の学術職員及び芸術職員は,教員(教授,準教授),学術協力者及び芸術協力者並びに特別任務教員とする。男女の同等の権利の確保に当たっては,女性の適性,能力,専門的業績(基本法第33条第2項)を優先的に配慮して支援する。支援の目的は,特に学術領域における女性の割合を高めることにある。  
 このほか,語学等の実技と実践的知識の教育を委託される特別任務教員がいる。
 
    第56条   特別任務教員
     教員の任用条件としては要求されないような,主として実技と実践的知識を教授する必要がある場合には,これを,本務として勤務する特別任務教員に委託することができる。

(2)教員全般の職務
    第43条   教員の職務 
 
(1)    教員は,その勤務関係に係る細目規程に従って,所属する高等教育機関に課された学術及び芸術,研究,教育並びに継続教育に関する任務を,その専攻分野において,独立して遂行する。教員の本務には,学修改革及び学修相談に係る任務,高等教育機関の管理への参加,試験の実施及び第2条第9項の規定に基づく任務も含まれる。主として国からの資金により賄われている芸術助成機関及び学術助成機関における任務の遂行は,当該任務の遂行がその他の任務の遂行と抵触しない場合,州法の定める細目規程に従って,教員の申し出に基づき,職務に属するものとされる。
(2)    教員は,その勤務関係に適用される諸規定の範囲内で,すべての学修課程及び学部において専攻分野に係る授業を行う義務を有する。教員は,その勤務関係に適用される諸規定の範囲内で,授業の実施を保障するために高等教育機関の部局が行う決定を実行しなければならない。
(3)    個々の教員が遂行すべき任務の種類及び範囲は,第1項及び第2項の規定を考慮して,その勤務関係の状況及びその身分について定められる職務規程による。教員の職務の種類及び範囲は,適当な間隔をおいて再検討することを条件として,これを確定しなければならない。州法により,教員が一定期間その専攻分野における研究の任務又は第26条による計画のため他の任務をすべて又は一部免除される旨,定めることができる。
   教授,準教授の個別の職務は定められていない。


2.資格
 教員は公募により,高等教育機関が選考し,各州の所轄庁(教育省)が任命する。

   (1)教授
         第44条   教授の任用条件
          (1) 教授の任用については,一般服務法上の条件の他に,次の各号に掲げる事項を最低条件とする。
1. 高等教育の修了
2. 教育上の適性
3. 通常,学位論文の水準によって証明される学術上の特別な活動能力又は芸術上の活動能力
4. さらに,その職務遂行上の必要に応じて,次に掲げる各業績
a) 付加的な学術業績(第2項)
b) 付加的な芸術業績
c) 5年以上の職業実務を通じて,学術上の知識及び方法の応用又は開発に貢献したことを示す特別な業績で,そのうち最低3年間は高等教育機関外で行われたもの
(2) 第1項第4号a)に規定する付加的な学術上の業績は,原則として準教授としての勤務のほか,高等教育機関若しくは学外研究機関における学術協力者としての勤務又は国内外における産業界若しくはその他の社会領域における勤務においてもたらされたものである。第1段は,初めて教授職に就く場合にのみ適用される。第1項第4号a)における付加的な学術業績は,準教授としての勤務においてもたらされたものでない場合には,審査手続きの対象とはならない。教授職への就職に求められる付加的学術業績の水準は,もっぱら任用手続きにおいて包括的に審査される。
(3) その職務規程において,教員養成における教育学的又は教科教授学的に任務の遂行が定められている職には,3年間の学校実践を証明する者のみが任用される。高等専門学校の教授及びその他の高等教育機関における高等専門学校課程の教授は,第1項第4号c)に規定する任用条件を満たさなければならない。但し,特別な理由のある場合に限り,第1項第4号a)又はb)によって任用条件を満たす者を教授として任用することができる。
(4) 専攻分野の特性及び教授職の必要条件に適合している場合には,第1項第1号から第4号まで,第2項及び第3項の規定にかかわらず,当該専攻分野に関連する実践上の卓越した業績及び教育上の適性が証明される者についても,教授として任用することができる。
(5) 医学,歯学及び獣医学に関わる任務を有する教授は,当該専門分野に対応する継続教育が州法によって定められている場合には,専門医として認可されていることを補足的に証明しなければならない。

   (2)準教授
          第47条   準教授の任用条件
    準教授の任用については,一般服務法上の条件の他に,次の各号に掲げる事項を条件とする。
 
1. 高等教育の修了
2. 教育上の適性
3. 通常,学位論文の水準によって証明される特別な学術上の活動能力
     医学,歯学,獣医学に関わる任務を有する準教授は,当該専門分野に対応する継続教育が州法によって定められている場合には,専門医として認可されていることを補足的に証明しなければならない。第44条第3項第1段はこれについて準用される。博士号取得以前又は以後において,学術協力者又は学術補助員として勤務した場合には,博士号取得期間と勤務期間の合計は6年を超えてはならず,医学の領域においては9年を超えてはならない。第57b条第4項第1号及び第3号から第5号までによる延長は,この場合,考慮されない。第57b条第2項第1段は準用される。



<アメリカ>

   大学教員の職種の定義及び資格に関し,連邦・州の法令上の規定はない(各大学がそれぞれ規定)。



<イギリス>


   大学教員の職種の定義及び資格に関し,国の法令上の規定はない(各大学がそれぞれ規定)。





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