○日本では、大学院における社会人の比率が小さい一方、特に工学系を中心に、企業の中で国際的に活躍しようとすると、学位が必要となる。あるいは、新しい問題の解決にあたり、修士課程を修了した者より博士課程を修了した者の方がパフォーマンスがよいという評価が出てきており、修士課程を修了した者が大学院でもう一度学ぶ必要性を感じるようになってきている。
○グローバルな産業活動の中では、英語(English)、金融リテラシーを含む経済(Economy)、エレクトロニクス(Electronics)の三つのEに対する高度な専門知識が求められており、社会人にとって大学院が、いつでも戻ってこられて高度な専門知識を習得できるような場所であることが重要。
○社会に出て実務を経験してから、もう一度大学院において体系的な講義を聞くと、非常に理解が進むということがあり、社会人が大学院で学び直すことはニーズも意味もある。
○人文・社会学系の大学院に関しては、修了者に対する潜在的な需要はあると思われるものの、修了者と産業界とのマッチングに課題がある。社会人が人文・社会学系の大学院に進んだ場合に、研究者以外にどのような職業に就けるのかが見えにくい。産業界のどのようなところで修士や博士を持った人材が生かされているのか、モデルケースの発信が必要。
○社会人が大学院で学び直すことに対し、またPhDを持つことに対し、社会が適切に評価しないため、社会人にとってインセンティブが働きにくい。社会できちんと評価されるから、社会人が大学院で学び直すという好循環を早急に形成することが重要。一部の企業は、人材育成と人事を一体化して考えており、大学院との連携の中で企業側のニーズを大学院に要求するようになっている。このような連携が進むような措置を講ずるべき。
○実務家の博士を育成するにあたって、あるべき博士像とそのための教育内容の開発、キャリアパスの創出が大きな課題。また、実務家にとっての顧客に当たる存在が大学院の教育におけるパートナーとならないと、実践的な教育は難しい。博士のProfessional Degree を整備すべき。
○仕事を辞めて働く場合、生活費と学費の両方が必要となる。社会に還元するという約束の下での奨学金の拡充が必要。
○教員養成における社会人の学び直しにおいては、実務経験と研究能力を備えた人材が必要。教育学、文学、理学、工学、芸術系の研究科で学んだ人材は就職率も高いため、このような人材に成人教育の能力を身に付けてほしい。
○イノベーションの創出には技術の革新性のみならず他のものとの組み合わせが必要だが、それには学生個人の総合力ではなく、チームプレーをできるような総合力が求められている。そのため産業界から見ると、大学院や大学がそれぞれ目指している目的や特色を明確に打ち出し、それぞれで特色ある人材が輩出できるような教育制度が望ましい。
○世の中の変化の速度が高まっている中で、一つの専門分野にこだわる人材は企業として活用しづらい。分野によっては、専門性の変化に流動的に対応できる人材が必要。
○産業界が必要としているのは、コミュニケーション能力を備えた上で、専門性を有している人材で、どちらか一方では不十分。
○国の成長を牽引するのはベンチャー企業であり、挑戦する意欲のある若者を育てられる大学院教育を目指すとともに、国や社会がリスクを引き受けるような仕組みが必要。
○学士課程、修士課程と博士課程の役割分担を明確にし、教育内容や体制の充実、リソースの適切な配分を考えていくことが必要。教養やコミュニケーション力は学部で育成し、大学院ではそれに基づいて専門性を極めるのがよいのではないか。
○イノベーションを創出し、世の中を変えようとしている企業がどういう人材を欲しているかを知ることが重要。そこでは文理融合型のハイブリッド人材が重要となるが、日本の大学院では理系教育に人文科学を足してハイブリッド人材を育成する機能が弱いため、イノベーション人材が育っていない。
○成熟産業に係る分野では大学における教育研究が縮小傾向にあり、産学の大きなミスマッチとなっている。産業界のニーズを踏まえた教育ができる人材を産業界から送り込むことが重要。
○国内外の若者が大学院の博士課程まで行きたいと思えることが重要。
○産業界だけでなく官も含めて大学院教育に携わるような、「オープン教育システム」制度がいいのではないか。
○大学院の学生が、在学中に関心のある業界へ長期のインターンシップに行き、その後大学院に戻って勉強を続けるような制度があればよい。
○法科大学院を除く法律系の大学院では、学生数が非常に少なくなっており、後継者の養成が危機的な状況にある。博士課程の入学者として想定されるのは法科大学院の修了者であるが、そのような学生は入学前に多額の出費をしており、これら学生に対する経済的支援の抜本的な対策が必要。
○修士課程において、授業や研究にあまり取り組まないうちから、修士課程の修了を見越して就職活動することは非常に問題であり、産業界も含めて就職活動のタイミングを考えるべき。
○日本が他の先進国並みに大学院進学者を増やすにはどうすればよいかの議論が必要であり、大学院修了者が適切に評価されるような社会にしていくことが必要。
○社会が大学院に求めることを大学が理解できていないため、企業が大学院の教員のみならず、アドミニストレーションスタッフとしても参画できるようなシステムを考案することが必要。
○後期博士課程を修了した者の受け皿が少ないため、出口をどのように準備すべきかの議論が必要である。一方で後期博士課程の充足率で大学を評価されてしまうと、充足率を高めるために質の低い学生を増やすことになりかねないので、まずは後期博士課程の充足率で大学を評価することをやめるべき。
○日本の大学院は研究科単位でマネジメントされており、大学院という組織がただの名前だけになってしまっている。各研究科を一括して大学院として管理する仕組みや人を整備することが必要。
○標準修業年限内にきちんと博士号を出せるようなシステムの確立が必要。
○大学院の定員が研究科・専攻ごとに固定化されており、フレキシビリティがない。
○文系の大学院教育を評価する指標が経済学を除き確立されていない。
○国際協力で途上国において制度整備を行うと同時に、制度を運用できる人材の育成を進めないと、事業の成果が出てこない。途上国から留学生を日本に呼び、日本の大学院で教育を受けた後に母国に戻って活躍してもらうという好循環を創ることが重要。
大学院係
電話番号:03-5253-4111(内線3312)
-- 登録:平成25年08月 --