「グローバル化社会の大学院教育」(平成23年1月、中央教育審議会答申。以下「大学院答申」)を踏まえた大学院設置基準等の一部改正の方向性については、以下のとおり。
博士課程は前期及び後期に区分される区分制博士課程と、区分しない一貫制博士課程が存在し、区分する課程においては、その前期課程は修士課程として取り扱われ、修了要件として、修士論文又は特定課題の研究成果の審査と最終試験の合格が課される。
大学院答申は、専門分野の枠を超えた体系的な教育を経て、独創的な研究活動を遂行させ、質の保証された博士号を授与するプログラムとして一貫した博士課程教育の確立を提言している。そのためには、前期の課程を修了するまでに、広範なコースワーク等を通じ、専攻分野や関連分野の専門的知識の基礎が確実に修得され、博士論文研究を主体的に遂行するために必要な能力を養うことが重要であり、このような能力を包括的に審査する仕組みを導入する必要がある。
現在、博士課程の殆どが区分制であり、修士論文又は特定課題の研究成果の審査と最終試験の合格を前期の課程の修了要件に課しているが、前記の博士論文研究に必要な能力の包括的な審査の合格をもって前期の課程を修了し後期の課程に進学できるよう、関係規則を改正する。
第一 大学院設置基準の改正
○博士課程(前期)の修了要件
博士課程(前期)の修了要件については、博士論文研究基礎力審査の合格を、修士論文又は特定課題の研究成果の審査と試験の合格に代えることができることとすること(一方、修士課程の修了要件は現行通りとすること。)。
博士論文研究基礎力審査は、
1.博士論文研究に係る分野及び幅広い関連分野の専門的知識及び能力を評価するための筆記による試験
2.当該研究に係る背景や意義の認識、研究推進能力等を評価するための研究報告・口頭試問
によって、博士論文研究の主体的な遂行に必要な知識と能力を評価するものである。
第二 学位規則の改正
○一貫制博士課程における修士の学位授与の要件
一貫制博士課程における修士号授与については、修士論文又は特定課題の研究成果の審査と試験の合格に代えて博士論文研究基礎力審査の合格により前期の課程の修了要件を満たした者に対して行うことができることとすること。
第三 学校教育法施行規則の改正
○博士課程(後期)の入学資格
博士課程(後期)の入学資格については、博士論文研究基礎力審査に相当するものとして米国などで実施されるQualifying
Examination(Research Proposal &Defense又はSynopsisに相当するもの)に合格した者で、修士の学位を有する者と同等以上と位置付けられる者に後期の課程の入学資格を付与することとすること。
入学者選抜に関しては、平成15年に大学設置基準において「入学者の選抜は、公正かつ妥当な方法により、適当な体制を整えて行うものとする」(第2条の2)の規定が追加された。一方で、大学院設置基準には同様の規定がなく、「大学院入学者選抜実施要項」を通知で示すにとどまっている。
大学院答申は、国内外から優れた学生を獲得するため、各大学院において入学者受入方針を明示するとともに、十分な基礎知識と多様な能力や意欲,将来性を見極める公正な入学者選抜を行う必要がある旨指摘している。
これを踏まえ、大学院についても、大学と同様の入学者選抜規定を整備するため、大学院設置基準を改正する。
大学院及び専門職大学院に係る設置基準の改正
○入学者選抜
大学院における入学者の選抜は、公正かつ妥当な方法により、適当な体制を整えて行うものとすること。
平成24年春(予定)
○大学院設置基準(昭和四十九年文部省令第二十八号)(抄)
(博士課程)
第四条 博士課程は、専攻分野について、研究者として自立して研究活動を行い、又はその他の高度に専門的な業務に従事するに必要な高度の研究能力及びその基礎となる豊かな学識を養うことを目的とする。
2 博士課程の標準修業年限は、五年とする。ただし、教育研究上の必要があると認められる場合には、研究科、専攻又は学生の履修上の区分に応じ、その標準修業年限は、五年を超えるものとすることができる。
3 博士課程は、これを前期二年及び後期三年の課程に区分し、又はこの区分を設けないものとする。ただし、博士課程を前期及び後期の課程に区分する場合において、教育研究上の必要があると認められるときは、研究科、専攻又は学生の履修上の区分に応じ、前期の課程については二年を、後期の課程については三年を超えるものとすることができる。
4 前期二年及び後期三年の課程に区分する博士課程においては、その前期二年の課程は、これを修士課程として取り扱うものとする。前項ただし書の規定により二年を超えるものとした前期の課程についても、同様とする。
5 第二項及び第三項の規定にかかわらず、教育研究上必要がある場合においては、第三項に規定する後期三年の課程のみの博士課程を置くことができる。この場合において、当該課程の標準修業年限は、三年とする。ただし、教育研究上の必要があると認められる場合には、研究科、専攻又は学生の履修上の区分に応じ、その標準修業年限は、三年を超えるものとすることができる。
(修士課程の修了要件)
第十六条 修士課程の修了の要件は、大学院に二年(二年以外の標準修業年限を定める研究科、専攻又は学生の履修上の区分にあつては、当該標準修業年限)以上在学し、三十単位以上を修得し、かつ、必要な研究指導を受けた上、当該修士課程の目的に応じ、当該大学院の行う修士論文又は特定の課題についての研究の成果の審査及び試験に合格することとする。ただし、在学期間に関しては、優れた業績を上げた者については、大学院に一年以上在学すれば足りるものとする。
○学位規則(昭和二十八年文部省令第九号)(抄)
(修士の学位授与の要件)
第三条 法第百四条第一項の規定による修士の学位の授与は、大学院を置く大学が、当該大学院の修士課程を修了した者に対し行うものとする。
2 前項の修士の学位の授与は、大学院設置基準(昭和四十九年文部省令第二十八号)第四条第三項の規定により前期及び後期の課程の区分を設けない博士課程に入学し、大学院設置基準第十六条に規定する修士課程の修了要件を満たした者に対しても行うことができる。
○学校教育法施行規則(昭和二十二年文部省令第十一号)(抄)
第百五十六条 学校教育法第百二条第一項ただし書の規定により、大学院への入学に関し修士の学位又は同法第百四条第一項に規定する文部科学大臣の定める学位を有する者と同等以上の学力があると認められる者は、次の各号のいずれかに該当する者とする。
一 外国において修士の学位又は専門職学位(学校教育法第百四条第一項の規定に基づき学位規則第五条の二に規定する専門職学位をいう。以下この条において同じ。)に相当する学位を授与された者
二 外国の学校が行う通信教育における授業科目を我が国において履修し、修士の学位又は専門職学位に相当する学位を授与された者
三 我が国において、外国の大学院の課程を有するものとして当該外国の学校教育制度において位置付けられた教育施設であつて、文部科学大臣が別に指定するものの当該課程を修了し、修士の学位又は専門職学位に相当する学位を授与された者
四 国際連合大学本部に関する国際連合と日本国との間の協定の実施に伴う特別措置法(昭和五十一年法律第七十二号)第一条第二項に規定する千九百七十二年十二月十一日の国際連合総会決議に基づき設立された国際連合大学(第百六十二条において「国際連合大学」という。)の課程を修了し、修士の学位に相当する学位を授与された者
五 文部科学大臣の指定した者
六 大学院において、個別の入学資格審査により、修士の学位又は専門職学位を有する者と同等以上の学力があると認めた者で、二十四歳に達したもの
○学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)(抄)
第百二条 大学院に入学することのできる者は、第八十三条の大学を卒業した者又は文部科学大臣の定めるところにより、これと同等以上の学力があると認められた者とする。ただし、研究科の教育研究上必要がある場合においては、当該研究科に係る入学資格を、修士の学位若しくは第百四条第一項に規定する文部科学大臣の定める学位を有する者又は文部科学大臣の定めるところにより、これと同等以上の学力があると認められた者とすることができる。
2 (略)
第百四条 大学(第百八条第二項の大学(以下この条において「短期大学」という。)を除く。以下この条において同じ。)は、文部科学大臣の定めるところにより、大学を卒業した者に対し学士の学位を、大学院(専門職大学院を除く。)の課程を修了した者に対し修士又は博士の学位を、専門職大学院の課程を修了した者に対し文部科学大臣の定める学位を授与するものとする。
2~5 (略)
○大学設置基準(昭和三十一年文部省令第二十八号)(抄)
(入学者選抜)
第二条の二 入学者の選抜は、公正かつ妥当な方法により、適切な体制を整えて行うものとする。
大学院係
電話番号:03-5253-4111(内線3312)
-- 登録:平成23年10月 --