令和7年8月18日(月曜日)10時00分~12時00分
WEB会議
(部会長) 和田隆志部会長
(副部会長) 両角亜希子副部会長
(臨時委員) 飯田順子、伊藤毅、小野悠、加藤映子、北弘志、杉村美紀、高橋真紀子、永井由佳里、西村訓弘、平松浩樹、横山広美、吉原拓也の各委員
(事務局)合田高等教育局長、先﨑審議官、石橋大学振興課長他
【和田部会長】 それでは,所定の時刻となりましたので,第119回の大学院部会を開催をしたいと思います。御多用の折,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。
初めに,事務局の異動につきまして,御報告いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【永見大学院振興専門官】 失礼いたします。大学振興課の永見でございます。事務局の異動について御紹介をさせていただきます。
高等教育局長の伊藤に代わりまして,合田哲雄が着任をしてございます。恐縮でございますけれども,本日遅参の予定でございます。
それから,大臣官房審議官,高等教育担当の森友に代わりまして着任をいたしました先崎卓歩でございます。
事務局から以上でございます。
【和田部会長】 ありがとうございます。先ほど申し遅れました,部会長を拝命しております和田でございます。よろしくお願いいたします。
それでは,事務局から会議に当たっての連絡事項をお願いいたします。
【永見大学院振興専門官】 失礼いたします。まず,本日の出欠状況でございます。本日は大薗委員,大竹委員,佐久間委員,塚本委員より,御欠席の御連絡を頂戴してございます。それから,小野委員からは11時頃からの御参加との御連絡を頂戴してございます。
なお,定足数でございます過半数には達していることを御報告いたします。
続きまして,議事に入る前に連絡事項をお伝えをさせていただきます。本日はZoomによりますウェブ会議として開催をいたします。ウェブ会議を円滑に行います観点から,御発言の際には挙手ボタンを押していただきまして,部会長から指名をされましたらば,お名前をおっしゃっていただいた後に御発言をいただきますようお願いをいたします。それから御発言時以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。
資料につきましては,議事次第に記載のとおりでございます。事前にメールにてお送りをしてございます。
事務局からは以上でございます。
【和田部会長】 ありがとうございます。
それでは,議事に入りたいと思います。議題の(1)は,博士の社会の多様な場での活躍や大学院と社会との接続の在り方についてでございます。御存じのとおり,博士人材のキャリアパスや大学院産業界との連携につきましては,ここ数年,いろいろ動きがございます。令和5年度末には文部科学省から博士人材活躍プランが発表されました。また,令和6年度には,文部科学省と経済産業省が共同で博士人材の民間企業における活躍推進に向けた検討会も開催をされております。このように企業や大学が取組を進める大変参考となる情報をまとめたガイドブックやロールモデルの事例集なども公表されております。
こうした動きも踏まえまして,本日は2名の委員の方,まず,平松委員より,富士通株式会社における取組,また,吉原委員より,北海道大学における取組を御紹介をいただきます。博士人材のさらなる活躍,促進,あるいは大学院と社会の一層の連携に向けてどのような課題があり,どのような取組が考えられるのか,皆様とこの時間を通じて議論できればと思っております。
さらに本日は,大学や博士人材と企業を結びつけるサービスを提供していらっしゃいます株式会社ビズリーチより藤田拓秀様にもお越しをいただいております。藤田拓秀様は執行役員であり,新卒事業部事業部長を務めておられます。藤田様からも,大学と企業との間に立っておられる方の視点よりお話をいただければと思っております。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
それでは,まずは最近の動きにつきまして,事務局より御説明いただけますでしょうか。
【石橋大学振興課長】 ありがとうございます。大学振興課長の石橋でございます。今日もどうぞよろしくお願いいたします。
まず,資料の1を御覧いただければと思います。簡単なおさらいになりますけれども,2ページ目を見ていただきますと,部会長から御説明いただきましたように博士人材活躍プラン,それからガイドブック,ロールモデル事例集,ファクトブックというものを作成しておりまして,この中での大目標として,2040年における人口100万人当たりの博士号取得者を世界トップレベルに引き上げ,2020年度比約3倍にするということが掲げられております。非常に高い目標だと思っておりますので,我々もまた大学の先生方と御一緒に進めていく必要があると思っているところでございます。
めくっていただきまして,今,実際のデータはどうなっているのかというのが3ページ目にございまして,社会人以外の入学者数は平成15年度をピークに大幅に減少しているという状況ではございます。ただ一方で,現在のところは1万5,000人を超えるところで,この2年連続では増加したという状況にはございますので,この辺のトレンドをどう考えるのかは我々がもう少し分析しなきゃいけない部分もあるかと思いますけれども,どうやってこの増加トレンドをつくっていくかということが重要かと思っております。特に社会人の方々は,平成15年度の2割から令和6年度には4割に増加しておりますので,ここはひとつ今後開拓していける場なのではないかなと思っているところでございます。
めくっていただきまして,4ページですけれども,なぜ博士課程に進学しないのかというところについて,就職を選んだ理由としては,博士課程に進学すると修了後の就職が心配であるというのが31.1%ございます。もちろん経済的に自立したいとか,社会に出て仕事がしたいというようなデータもあるというところではございます。それから右側を見ていただきますと,企業の方が採用しない理由はマッチングというところかなと思っておりまして,今日の委員,そして藤田様からの御発表の中では,この辺りをどう乗り越えていくべきかというヒントをいただけるのではないかなと思っております。
それから,最後でございますが,社会人博士の推進につきましては,5ページ目にございまして,このような取組はどんどん進んできているというのが一つ,データに表れているかなと思います。右側を見ていただきますと,筑波大学では,早期修了してもらうためにも,事前に丁寧なカウンセリング等をされながら,実際入学してもらうことが進んでいるようでございますし,このような取組はいろいろな大学でも見始められているところかなと思っております。それから,早期修了制度の導入も社会人にとっては重要なところかと思いますけれども,左側のところにグラフがありますとおり,制度自体は約70%の大学が導入しておられますが,実際に修了者が出ていることはその3分の1以下というのが現状でございます。
簡単ではございますが,事務局からの説明でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【和田部会長】 石橋課長,どうもありがとうございました。意見交換の場は別途用意してございます。ただいまの御説明につきましての御意見,あるいは御質問などございましたら,その際にいただければと思います。
それでは,先ほど御紹介ありましたように,藤田様より株式会社ビズリーチにおける取組を御発表いただければと思っております。よろしくお願いいたします。
【藤田様】 改めてよろしくお願いします。こちらから資料を投影して進めさせていただければと思いますか,皆さん御覧いただけていますでしょうか。ありがとうございます。
では,改めまして,今御紹介いただきました株式会社ビズリーチで新卒事業部の事業部長を務めております藤田拓秀と申します。このたびは,このような会にお招きいただきまして,誠にありがとうございます。
我々,ビズリーチは大学様や採用企業の皆様とは少し異なる人材プラットフォーム,間に立っているプラットフォームを運営しているという企業でございます。本日は学生さんと社会をつなぐという,ある種第三者の立場から大学院生の就職活動であったり,特に博士課程の学生さんのキャリア形成における現状と課題につきまして,現場で得た知見等をおまとめしてお持ちしておりますので,皆様の議論の一助となればと思っております。本日の発表では,まず,我々が今,OB,OG訪問のネットワークサービス,ビズリーチ・キャンパスの全体像をお伝えさせていただいた上で,どう博士人材の増加であったり,彼,彼女たちのキャリア形成に寄与していくか,こういったところについて御説明ができればなと思っております。改めてどうぞよろしくお願いいたします。
では,まず,当社,ビズリーチはキャリアインフラになるというビジョンの下,HRに係る事業を展開しております。もしかしたら,皆さんのCM等を御覧になられたことがあられる方もいらっしゃるかもしれませんが,中途採用のビズリーチというサービスと,あとは採用だけではなくて,企業内部の人材を活躍するというHRMOS,そして,本日御説明をするビズリーチがあります。こういったサービスを運営している会社でございます。
まず,ビズリーチ・キャンパス for 博士を御説明する前に,土台となっているビズリーチ・キャンパスについて簡単に御説明ができればなと思っています。このサービスのリース,ビズリーチ・キャンパスのリリース自体は9年前になるんですが,当時,課題認識を持っていたのは,キャリアは自己責任と言われるこの時代において,日本ではなかなか学生さんが社会人やキャリアについて触れる,学ぶ機会が極端に少ないというところでございました。少ないというのは,海外,特に欧米先進諸国になるんですが,採用という文脈で企業様が大学に来るというのは当然一般的ということはあったんですけど,在学生に対する社会人の割合,ここにも大きな差があって,日本だと学部生における社会人経験者割合が2%から3%ぐらいというデータもある一方で,OECD先進国においては20%を超える国も多くあって,いわゆる5人に1人は社会人の経験があるということで,学生さんが学部時代にキャリアに触れる機会が学生生活においても大きくある,この辺り,日本においては差があるというところに問題意識を持っていました。
当時,我々はビズリーチというサービスを当時も運営していたんですけど,会員様にもアンケートを取らせていただいておりまして,即戦力とされるような方々のファーストキャリア選択において最も有益だった情報元,これは何だったかと聞くと,得られた回答でいうと,OB,OG訪問だったり,あとはOBじゃなくても,実際に社会で活躍されている社会人の方々から得られる事情だったという回答を得られました。これ同時に,御自身が後輩のキャリア相談に乗ってもよいかという設問も同時に取らせていただいていたんですけど,当時,90%以上の方々は協力的であるという結果を得られたところから,そういったところから着想を得て生まれたのがビズリーチ・キャンパスというサービスになっています。なので,我々のミッションとしては,社会の力を集約し,期待と覚悟を持ってキャリアを選択し続けられる文化をつくるということをミッションに事業運営をしております。なので,学生さんと企業さんとのマッチングだけではなくて,大学様やOB,OG,社会人の皆さんと一緒になって,学生さんのキャリアを考える機会を提供していくということを目的に事業を運営しているというような事業だと御認識いただければと思います。
もう少し具体的な仕組みを御説明できればと思いますが,このサービス自体がビズリーチ・キャンパス for 博士にも応用されていますので,少し丁寧に御説明ができればと思っております。向かって左側,学生さんです。学生さんはこのサービスを通じて,いわゆる就職活動における就職情報だったりイベントを探すということもできるんですが,特徴的なのはOBを探してメッセージのやり取りをし,実際にOB,OG訪問ができるという点です。向かって右側,企業さんも,いわゆる企業情報だったり,イベント情報等を掲載できるというのもあるんですが,自社の社員様を御登録いただいて,OB,OG訪問だったり社員訪問を管理するという仕組みになっています。
少し重複する部分もあるんですけど,特徴としては,これは全てオンラインで探す,OB,OGを探すというところからメッセージをやり取りして,実際にオンライン上で面談までは完結するという点。2つ目は,学生さんと社会人,OB,OGの方々はこのサービスを通じて初めて出会うというケースも多いものですから,安心安全に御利用いただけるような対策も講じているというところです。3つ目は,こちらは就職活動のタイミングのみならず,キャリアを考えるタイミングで学生さんには使ってほしいという思いを持っておりますので,学年問わず,1年生から御利用いただけるようなサービスになっています。このサービスを使って,ビズリーチ・キャンパス for 博士を開発しているというところが前提となっています。
幾つか,このプレゼンの中でもOB,OGという言葉を使わせていただいているんですけど,改めて定義の補足をさせていただくと,学生さんの所属をしている大学の先輩内定者の方もOB,OGと指すことがありますし,あとは当然ながら卒業生としてのOB,OG,あとは既に企業等で活躍をしていて,学生とは違う大学であるんですけど,社会活躍している後輩,もしくは学生さんに協力的な社会人の方々をOB,OGと呼んでおります。OB,OG訪問等での提供をしていると御理解をいただければと思います。
ここからもう少し詳しく,いわゆるビズリーチ・キャンパス for 博士の仕組みと,そもそもの開発体系,御説明できればと思います。
こちらは,経済産業省様が昨年実施をされていた博士人材の民間企業における活躍促進に向けた検討会という会の第1回の資料から抜粋をさせていただいております,博士人材のキャリアパスの全体像の資料になっています。博士人材不足の課題には様々な要因がありますが,ここにも記載されているとおり,博士課程の進学者がそもそも少ないということ,あとはそこから民間企業へ就職する方々が少ないということが,この中でも指摘をされております。なので,我々も直接的に丸をつけている部分,いわゆる博士課程の学生さんが企業へ就職する際に活用いただくこと,そして修士の学生だったり,学部生の学生さんが博士課程の進学を検討する際に活用いただくというところを想定しながらサービスを検討しております。
もう少し先ほどのポイントに特化して,我々が学生さんであったり,あとは企業さん,大学様のお話を伺う中で見えてきた問題意識,課題感の共有ができればと思います。まず,進学を検討している学生さん,この学生さんにおいては,博士課程進学後のキャリアパスに関する適切な情報が届けられていない,情報不足,これがもう明確にありました。研究をやり続けたいけれども,その先にキャリアがあるのかということが不安がゆえに,もしくは修士のタイミングで就職を検討していますという学生さんに我々も直接何人もお話を伺うことがありました。もちろん大学様や企業様にはヒアリングをさせていただいていますが,大学様としても,アカデミア以外のキャリアを伝えてあげたいという思いはあるんですけど,大学様が得られている情報にも限界があるというところ,そして,企業様としても企業就職を見据えて博士課程に進学する学生さんを増やすという観点においては,博士課程進学後の就職をキャリアを伝える手段がない,もしくは乏しい,こういったところに課題が存在をしているかなと思っています。
次に,実際に博士課程に在籍をしている学生さんについては,こちらも上段と少し近しい部分もありますけど,就職先の情報の少なさ,それから自分の専門性を生かせる仕事の発見だったり,そのすり合わせがかなり難しいというところ,大学様においては,企業で活躍するという選択肢を広げるために就職先の開拓を実施されていかれたというところがありますが,なかなか大学様だけでは限界があるというところ,そして,企業さんにおいても,博士課程の学生さんとそもそも出会うということもそうですし,専門性だったり,いわゆるポストをすり合わせるというところにかなり工数がかかると,こういったところに皆さんが問題意識を持たれているということが見えてきました。
少し長くなりましたが,まとめると,改めて学生さんからすると,博士課程に進学をして,その後のキャリア形成を行っていくということのためには,キャリアに関するリアリティーのある情報が足りな過ぎるというところが見えてきております。そのために,我々としては学生さんが博士人材のロールモデルに常に触れ合える環境を構築していくということ,または博士課程進学に興味がある学生さんに,企業様がその後のキャリアも含めた情報を提供しやすい環境を構築すること,こういったことを通じて,先ほどの課題解決に寄与できるんじゃないかなと考えています。
そこでリリースをしたのは,ビズリーチ・キャンパス for 博士というサービスになっています。もう少し具体的な部分でいくと,このサービスだと,御覧のとおり,博士課程出身のOB,OGのキャリアをこのように可視化をします。どんな研究室でどんな研究をしていたのか,また,その先でどういう仕事をされているのか,どういう企業に入ってどういう仕事をされているのか,こういったことを可視化しにいくということと,さらには,実際にオンラインでキャリア相談をしに行けるということを実現することで,博士人材のキャリア形成に寄与したいと思っています。
リリース自体は今年の5月に実施をしておりまして,対象は御覧のとおりです。先ほどもプレゼンの中でも御説明を差し上げましたが,博士課程在学中の学生さんもそうですし,博士課程で進学を検討している学生さんも当然対象となっています。博士人材は,ビズリーチ・キャンパス for 博士を利用中の企業様に在籍する博士人材社員と提携大学を卒業された博士人材を中心に登録を今,進めている,学生さんがアクセスできる博士人材,そのような形で進めている次第です。学生さんは当然無料で専門サイトから利用ができるとなっております。
改めて,特徴ですが,先ほどもビズリーチ・キャンパスを踏襲している部分があります。時期や学年を問わず,博士人材とのオンラインのOB,OG訪問が可能というところです。2つ目は,企業さんの採用情報であったりだとか,就職のイベントに関する,キャリアに関する情報が集約をされているというところ。そして3つ目,こちらも踏襲をしている部分がありますが,安心安全に利用できる監視体制だったり登録審査を設けているというところが特徴になっています。
改めて特徴の1つ目ですが,博士の学生さん,研究を進めながらある種,民間への就職活動を行うという必要があるので,学会の発表であったり御自身の研究のタイミングであったりというところで,就職活動を行うタイミングがかなり個別に異なるというところで,通年で御利用できるということを目指しています。学生さんからすると,時期や学年を問わず利用できるというところで,オンライン上でOB,OG訪問も行えるので,研究を両立しながら自身のペースでキャリアに関する情報を得たり,就職活動を行っていただけるかなということを考えています。
続いて,情報が集約されていないというところも申し上げましたが,博士及び博士検討中の学生向けのキャリアに関するポータルサイトとしても,このサービスを位置づけております。博士人材の採用を実施している企業さんの一覧であったり,博士人材として活躍する社員さんの掲載ができたり,あと,博士学生向けのイベントなんかも集約して掲載をしております。これまでだと,学生さんからすると各社のページに,採用ホームページ等々に訪問して,その中から,そもそもポジションがあるかどうかを調べながら就職活動をするというような,工数だったりがかかっているところをこのページに集約することで,そういった課題も解決していきたいと考えています。
続いて,もちろん安全面も強化をしていければと思っています。学生さんが安心して利用いただけるように,ビズリーチ・キャンパスでも行っていることではあるんですが,サービス内のメッセージのやり取りを24時間有人で監視をし,リスクのあるやり取りが発覚した際はアラートを上げるというような仕組みを設けております。そして博士に特化したものとしては,OB,OGの登録審査にも学位の確認を設けているという形になっています。
さらに,サービスのその他という部分にはなりますが,これも今年の4月に社員様のプロフィール情報を充足させるという目的で,経歴文書をAIで自動生成できるプロフィールの自動生成機能をリリースしております。この機能は業務内容に係るキーワードをぽちぽち選択をしていただければ,経歴文書がAIによって提案をされて,社会人の皆さんからすると,時間や手間をかけずにプロフィールを充実させることができるという形になっています。博士人材の登録に関しては,この機能を搭載しているという形になっております。
下段,いわゆる博士人材とやり取りをしていただいている学生さんの情報は企業様にも御共有ができるような仕組みになっていますので,企業様も自社の博士社員,OB,OG訪問した学生さんを把握することができますし,必要に応じて,自社に興味のある博士学生に対してイベントなどへの参加誘致であったり,応募を促すメッセージをお送りすることが可能というような仕組みになっています。
現在,このリリースをしてから,本日いらっしゃる富士通様にも御利用いただいていますが,今は日系大手企業様17万ほどが利用中でして,御利用検討中の企業様も複数社いらっしゃるというところです。学生様は,こちらも本日いらっしゃるかと思いますが,北海道大学様と連携をしながら,学生さんや卒業生へのお声かけを行っていっているところでございます。その後も,順次,大学様からお問合せをいただいている部分もありますので,大学さんと連携をしながら,利用の案内を進めていくという形になっています。
少し長くなってきておりますので,あと数ページだけ御説明ができればと思いますが,実際はこのサービスをリリースしてから,6月に博士人材のためのOB,OG訪問会,座談会というものをオンラインで実施をいたしました。コンテンツとしては,企業様に御登壇をいただき,博士課程出身の社員様にも御相談をいただく中で自己紹介をいただいたり,キャリアについてパネルトークをしたり,座談会というようなものを実施しております。学生さんは42名御参加をいただいていまして,博士,修士課程それぞれに,こういった人数の方々に御参加をいただいたという内容になっています。実際に得られた声を抜粋しているんですが,我々としても若干違ったのは,博士人材のキャリアについての情報はかなり限られているというか,なかなか取得することが難しいというように学生さん御自身が感じられているんだなというところでございました。博士の課程の学生さんにおいては,実際にキャリアに関するお話を聞くことでその先のイメージが広がったというような声もありましたし,実際に博士課程を卒業された方々のいわゆる就職活動もそうですし,就職後のキャリアについての情報を直接聞けるということもあったので,博士の方もそうですし,博士課程に進学することを検討している修士の方々からも有益な情報だったというところを得られたのは我々にとっても大変ありがたい機会になったかなと思っています。
このサービス自体はまだ始まったばかりではあるんですけど,今後の展望としては,この仕組みを通じて博士から民間企業へ就職する学生さんの増加と,そもそも博士課程に進学する学生さんの増加を実現していきたいと考えています。向かって左側の1と2に記載をしているように,現在はなかなか見えにくくなっている博士のキャリアパスを可視化し,博士課程に進学する学生を増やすこと,そして,3にあるように,実際に博士課程に進学し,社会で活躍する社会人になった際には,次に御自身の後輩を支援する立場として学生さんのキャリアを支援していくという,こういったサイクルをつくっていきたいなと思っています。このような仕組みで,社会で活躍する様々な博士人材のキャリアに触れる機会を最大化することで,学生さんの博士課程の進学であったり,その後のキャリア形成に大きく寄与していきたいと考えております。
最後に,大学院と社会との接続に向けてというところ,弊社がこれまで取り組んできたことも含めてお話をさせていただければと思いますが,まずは,大学院生の就職活動における変化であったり,採用企業様の変化についても少し御説明ができればと思いますが,委員の皆さんも既に実感されていらっしゃるところかもと存じますが,昨今の変化の激しいビジネス環境に合わせて,企業様の雇用であったり,あと採用体制も変化をしておりまして,それに呼応するように学生さん志向性も大きく変化をしていると感じます。
まず,学生さんの就職活動においては,企業様側での学校推薦枠が減少していると。これに伴って,研究領域にとらわれない需要もかなり増加をしてきております。または,就職活動の早期化が当然しておりまして,特にインターンシップが4分類された2025年度卒のタイミングぐらいから,夏のインターンシップに多くの学生さんが応募することになっております。なので,その結果,学校推薦の選考が始まる時期よりも前に,自由応募による就職活動をする大学院生が増加をしております。また,企業様の採用活動としては,専門人材獲得という必要性から,事業領域だったり特定職種での配属を前提とした採用を行う企業様が増加をしてきているというところになっています。これに伴って,企業様側のリクルーターの採用体制にも変化があるというところです。これまでは,いわゆるリクルーターのチームというのは大学別に助成をされているというところもほとんどの企業様であられました。現在は,この形に加えるような形で,事業領域であったり職種別にリクルーターの体制を併せてつくりながら,学生さんに情報提供しているというところです。これは今までの体制だと学生さんのニーズに応えられなくなった,例えば大学出身者,同じ大学出身者のリクルーターの中に学生が志望している領域だったり,職種を経験している人が少ない場合,適切な情報提供ができなくて,多くの企業様に機会損失が起きているという状況にありました。これに対応するような形で,その学生の求める情報を提供できる社会人とのマッチング,もしくは紹介を行っていくというような体制に今,移行されていっている,もしくは,これを加える形で体制を整えられているという企業様がかなり増えてきたというところになっています。
少し長くなりましたが,最後です。改めてですが,大学,大学院と社会のニーズをすり合わせるという部分で,我々としては,大学院と学部とで,低学年からキャリア支援を行ってきていますし,この取組をどんどん深めていきたいなと思っています。大学院に進学してから,併せて就職活動を行って研究に専念できないということを避けるためにも,低学年からのキャリア支援,大学院と大学と連携して実施をしていけないかということをまず,考えております。
また,下段,学生さんが社会と接点を持ち続けるためにも,企業様で働く博士人材のキャリアをデータベース化し,学生さんが博士課程のキャリアを知ることができる環境をちゃんと構築をしていくと。また,こちらを活用して,実際にキャリア相談ができる,OB,OG訪問ができる環境をつくっていくというところを,まずは我々としては取り組んでいければなと思っています。そのためにも今後,大学の皆様,企業の皆さんと連携をさせていただければと思っておりますので,よろしくお願いします。
すみません,少し長くなってしまいましたが,以上になります。御清聴ありがとうございました。
【和田部会長】 ありがとうございます。藤田様,取組を御紹介いただきまして,本当にありがとうございます。御意見や御質問は後ほど伺いたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
【藤田様】 よろしくお願いします。
【和田部会長】 ありがとうございます。
それでは,続きまして,平松委員より,富士通株式会社における取組を御発表いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【平松委員】 富士通の平松でございます。よろしくお願いします。
富士通では,26年度卒の新人から新卒一括採用を廃止し,一律の初任給も廃止し、内定段階でジョブ型の対象で,どの組織でどのジョブを担当するかということで内定を出して,そのジョブのグレードに合わせた報酬を一人一人に適用するということをやっています。その背景として,まず,ジョブ型の人材マネジメントから御紹介したいと思います。
富士通では2020年の4月にジョブ型人材マネジメントに転換いたしました。日本型の人事の仕組みが問題だから,ジョブ型が流行っているからというよりも,必要に迫られてというところがございます。ビジネスの環境,もしくはテクノロジーの変化というのが非常に激しい,それからグローバルの競争も激化していく中で,日本型の人事の仕組み,勤続年数が長かったり愛社精神が強かったりというのはあるけれども,一方で,それぞれの組織,もしくは会社が人を抱え込む,長い期間働いてもらうのに最適な仕組みを取ってきたというところもあった。その結果,エンゲージメントが低い,もしくは賃金が低い,人材育成投資が少ない,自己啓発意欲が低いというような副作用,さらには,新卒一括採用というやり方をずっとやってきた影響もあって博士人材,もしくは留学生などの就職が難しいということもあったと思います。こういう変化の激しい時代に,それぞれの会社や組織,社員が選び,選ばれる関係性,そして流動性を力にしてビジネスの変化に対応した人や組織をつくっていくということを目指して,ジョブ型の人材マネジメントに向けてフルモデルチェンジをしてきたということであります。
従来の日本型の人事ですと,今いる人ありきで雇用を守りながら,そして毎年,年初に新卒何人,中途採用何人ということを決めて,それをしっかり採りきって人員構成を維持していく。そうすると,今いる人を前提として組織や処遇を考え,人や組織でやれる戦略やビジョンを考える,こういう順番で適材適所の人材マネジメントをやっていました。非常に競争も激しいので,マーケットや競合企業なども見ながらビジネスプランをつくり,それを実現するためにはどういう人や組織が必要かということの要件を具体化して,そこに必要な人を採用したり育成したりするという順番でやっていく。そうすると,今いる人と理想的な人や組織との間にギャップが生まれるので,そこに戦略的に投資をしていく,こういう順番に変えていくというのがジョブ型に移行した大きな目的であります。
これを実現する上では,求められるポジション,ジョブのディスクリプションというのが必要になってくるが,その大元として,富士通でいうとロールプロファイルというのがあり,70種類ぐらいのロールのカテゴリー,そして職責の重さを表すレベルというのが10段階ぐらい,70×10で700ぐらいのプロファイルを用意しています。ここにそれぞれのロールのレベルに合わせた職責,求められるスキルや経験などが記載をされている。これを基に,それぞれのポジション,ジョブに合わせたディスクリプション,ポジションごとの要件を加筆修正してジョブディスクリプションをつくり,それがポジションマネジメントやポスティング,ポストオフ,評価の大元になるというものがあります。
このロールプロファイルは全社員に公開をされていますので,自分がどのロールのどのレベルを目指そうというときに,そこに必要なスキルや経験が何かということが分かり,さらにそのスキルを得るために有益な学習動画コンテンツもひもづけをしています。これまでは自分がより大きな職責,もしくはプロモーションするために何をすればいいか分からない,どうすれば上司は推薦してくれるのだろうと,待ちの姿勢だったが,こういう情報をオープンにし,さらにポスティングを徹底的に拡大しましたので,常に1,000ポジションぐらいのポスティングがありますから,自分がやりたい仕事,魅力的な仕事に手を挙げてチャレンジできる。そのための準備として自ら学んでいく。オンデマンドの学びをUdemyとかLinkedIn Learningを全社員が使えるような形にしている。こういうことをやった結果,富士通国内8万人弱の会社ですが,2020年以降毎年,大体8,000人がポスティングに手を挙げて,3,000人が合格して異動するという社内でも非常に人材の獲得競争,もしくはいわゆる主体的な本人のキャリアの意思による人材の流動化が実現できたということです。
この流れの中で,自らやりたい仕事に手を挙げて,その仕事をつかみ取る,もしくは自分がその仕事をやるならこういう経験やスキルを活かせます,こういう貢献ができますと,コミットメントの下にその仕事に就けるというのは非常にエンゲージメントも高く,その後の成果も目覚ましいものがある。この勢いを新卒にも適用すべきということで,26年卒の新卒から一括採用をやめて,かつ学歴別の一律初任給をやめて,内定段階でどの組織のどのジョブということを約束して,そのジョブのグレードに応じた報酬を適用しますという形にしました。
26年以降の新卒採用における変革について,それを実現するために,有償インターンシップで1か月から6か月,具体的に富士通の中のプロジェクト,組織に入って,チームのメンバーと一緒にある役割を与えられて,仕事をするという経験をしてもらいます。OB,OG訪問で色々な情報も得られますが,具体的な仕事をチームでするとはどういうことか,自分が持っている専門性だけではなく,汎用的なコンピテンシーはこういうふうに活かせると経験する。もしくは短期間のインターンシップのときは優秀なロールモデルになるような社員だけ前面に出すが,1か月から6か月となると,富士通の色々な情報にもアクセスでき,色々な人ともコミュニケーションするから隠せない。リアルな富士通の姿,富士通のビジネスのスタイル,組織やカルチャー,それらを実体験していただく。これが組織にとっても学生にとっても有益であろうということでやっています。
有償インターンシップは,26年卒に向けて夏冬春,合計で420名の予定にしています。これまでも研究所では,こういうスタイルのインターンシップをやっていたが,営業,コーポレート,SEは有償インターンシップをやっていませんでした。なぜかというと,新卒は人事がまとめて採用して配属してくれるからインターシップをするメリットがないということでやってくれませんでした。一括採用廃止をしたので,有償インターンシップをやらないと新人はきませんと言うと,色々なところからやりたい,どうやったらいいインターンシップができるのか教えてくれと,問合せが殺到し,もともとは40件ぐらいだったのが10倍ぐらいに増えたということもあります。
有償インターンシップに参加してもらった方々にアンケートを取っていて,5段階評価で満足度を聞きましたら,5点で「満足」という方が78%,4点の「どちらかといえば満足」が22%で,非常にポジティブな回答と,色々なコメントもいただいています。仕事に対する意識が変化した,自分の学んだ専門知識を業務レベルでどう扱うかを学ぶことができた,社員の方と長期間コミュニケーションを取りながら業務できる経験というのは普段の学生生活で得られない充実したものであると,このようなコメントもいただいております。
採用の募集要項も,ジョブ型の採用なので非常に具体的な職務内容など書いています。中には,経験必須のところに博士号,あるいは論文や国際会議などでの発表経験というような博士をターゲットにしたジョブということが明確に分かるようなものもあります。
様々な産学連携や学生と企業との接点の場ということを増やしていこうと,富士通スモールリサーチラボというのを大学にご協力いただいて展開しています。従来は研究所と個別の特定の研究室との関係性の中で共同研究をやったり人を派遣したりということをやっていたが,特定の研究室ではなくて,大学に間借りをして富士通の研究員が常駐する。そこで様々な分野の方々とコミュニケーションして,一緒にやれることはないか,富士通の取組を知ってほしいという接点を今増やしています。
卓越社会人博士制度では修士課程の学生が博士課程に進むと同時に,富士通の正社員として雇用して,基本給,賞与を富士通基準で支給します。社員と同じ教育環境も提供しますという関係の中で,富士通での業務としての研究,当然関係が深いものであるのが大前提ですが,そのマッチングを修士課程のときにしっかりやります。これで博士課程を取っていただくということで,収入面,経済面の不安というのはなくなるという仕組みです。
それから大学院の方に対して,キャリアに関する学ぶ機会をぜひ一緒につくれないかということで,北海道大学様と色々な議論をさせていただいて,通年の特別演習としてキャリアオーナーシップと自己能力開発という講座を設けました。
それから招聘研究員制度ということで,博士に対してのインターンシップというのはこれまでも継続的に,国内,海外,御覧のようなところとやっていまして,入社実績も御覧の結果であります。
これも研究所のケースですが,修士で入社した研究員を,特に優秀な人を選抜して,社会人として博士号を取るということで,受験料,入学金,授業料等は全額補助をしています。27年間続けていて計189名,年平均7名程度,このプログラムで博士号を取っていただいています。
研究員や,博士が実際に仕事をするときに,このように活躍している,こういう日常を送っているということをより幅広く目にしてもらうような機会をつくろうということで,ユーチューブに動画をアップしております。皆さんももし御興味があればぜひ見ていただきたいと思います。
御説明は以上です。ありがとうございました。
【和田部会長】 ありがとうございます。平松委員,ありがとうございました。
続きまして,吉原委員より北海道大学の取組を御紹介いただければと思います。併せてよろしくお願いいたします。
【吉原委員】 ただいま御紹介いただきました北海道大学の吉原です。
まず、最初のページにつきましては先に御説明がありましたので割愛します。日本の技術力が低下しているとか博士が少ないということです。それから次のページですが,博士に関しては経済的な問題であるとかキャリアの問題がありまして,経済的な問題に関してはここでも議論されてきたと思いますが,学振の特別研究員制度であるとか次世代研究者挑戦的研究プログラム等が走っておりまして,今は1万5,000名以上が年間200万円以上の経済的支援を受けるということで,博士の経済的支援というのは近年非常に充実してきていると思います。
一方,キャリアの問題に関しては,まだまだいろいろなことがあるかとと思っております。まず,博士の一般的なイメージについては,Xにおける博士に関する2024年のデータをネガポジ分析,これ北大でやったのですが,ポストを分析すると,全体としてはニュートラルが多く,その一方で,ネガティブとポジティブを比べると博士に関してはネガティブな情報が多いということがわかりました。特に50件以上のリポストに関して分析すると圧倒的にネガティブが多い。ということで,我々が目にする博士の情報,博士であるとか高校生,大学生が目にする博士の情報は,,ポジティブよりもネガティブなものが多いというのが現状であります。
それでは,実際のところはどうなのかといいますと,今までお二方が御説明してくださったように,キャリア支援やキャリアパスの多様化というのは今物すごい勢いで進んでいて,充実してきていると思っています。ただ,その一方で二極化が進んでいるとも感じています。これらは全てが当てはまるわけではなく,こちらに書いてあるような傾向があるということですけれども,例えば大規模な総合大学に関しては,これらが充実しつつあります。一方,小規模な大学や単科大学はこれからというところが多いかと思っております。また,AIとか半導体,それからバイオ関係の専攻に関しては博士での民間就職が一般的になりつつありますが,文学,史学,哲学,純粋数学等はこれからという印象です。また,日本語が話せる留学生は充実してきていますが,後で説明しますが,日本語が苦手な留学生に関しては難しい状況,それから産業集積地域への就職は好調である一方で,博士採用企業が少ない,産業が集積していない地方への就職は難しいということがあります。それから専門知識がある専任スタッフがいる大学は充実してきていますが,兼任スタッフのみで対応しているところはこれからというような状況であります。このように多種多様に今いろいろ二極化,三極化みたいなものが進んでいますが,その中で北海道大学はどんな感じなのかと言うこと,先ほどビズリーチ様と富士通様からも御説明がありましたけれども,そういうようなコラボレーションをしている北海道大学はどんな感じなのかというのを説明したいと思います。
北大は学部から博士まで継続したキャリア支援というものを今構築しつつあります。ポスターが貼ってありますけれども,昨年度はキャリア支援シンポジウムというもので,これらの課題について話し合いました。また,北大全体で学部から博士までどういうようなキャリア支援をしているかというと,228プログラムが走っておりまして,学士と修士を担当しているキャリアセンターが20%,博士を担当している博士人材育成センターが20%,それ以外の部局等が60%を実施しているという現状です。
先端人材育成センターの活動は,図にありますように,博士に関するキャリアについて基礎知識を学んだ後にそれを実践していくというようなプログラム体系で支援しております。この中で,学生自身が自分は何なのかという自己理解であるとか社会であるとか仕事の理解,そして理解したものを実践の場で試していくと,そういう場を提供しているわけで,これによってアカデミアプラス企業などのキャリアパス多様化を進めているというような活動をしております。
こちらが先端人材育成センターが実施しているプログラムです。主なものをざっと書き出しましたが,このような感じでたくさんやっています。日本語と英語のプログラムがありますが,この中から赤い糸会,個別面談,Career Link Meetup辺りを取り上げて,これから説明したいと思います。
赤い糸会,非常に古風な名前なのですが,どのようなものかといいますと,博士人材と企業が交流して,博士人材は自分が活躍できる場を見つける,企業は自社が必要としている人材がどんなところにいるのかということを見つけていただくということを考えております。そのために人数を絞った密接な異分野交流というものを狙いとしている,年に3回実施している会です。
具体的には,申し込んできた学生は自分の専門のことをよく知らない企業の方々に,どうやって説明したら自分の能力が伝わるのかという事をプレゼン演習で学びます。これは,講師が認めるまで,合格するまで添削を続けます。当日は,企業紹介のプレゼンをしてもらい,博士のポスター発表でディスカッションし,企業ブースで交流をした後に懇親会となります。この中でマッチングした企業様,学生は,例えばその後,企業見学であるとかインターンシップにつながるというようなことが起きています。
次は個別面談についてですが,北大は非常にこれに力を入れておりまして,先ほど少し申し上げました次世代研究者挑戦的研究プログラム,スプリングの新規採択学生全員にキャリア面談を実施しております。2024年度は対象者が364名だったのですが,100%の実施を達成しております。そして、その他の博士も合わせて年間1,009件ほど昨年は個別面談を実施いたしました。実施を担当しているのは,2級キャリアコンサルティング技能士を持っているか,もしくは同等のレベルの相談員です。個別の事情に合わせて1回だけではなくて継続的にキャリア支援をしています。
それから,北大の博士人材育成で欠かせないのが博士人材育成コンソーシアムの活用です。これは北大が代表機関を務めており,13大学が連携して,先ほど説明したような博士人材育成プログラムを共有しています。13大学がどのくらいの規模かといいますと,こちらの図にある13大学が連携しているのですが,日本の博士学生の4分の1をカバーする規模であります。先ほど北大の例をお見せしましたが,各大学が実施している博士人材育成プログラムを共有しておりますから合わせると120プログラム以上になっております。マッチングイベントであるとか,オンラインプログラム等を相互に参加することができますが,学生が参加しきれる量を大きく超えています。つまり,我々はもう量に関しては十分なんじゃないかと思っておりまして,これからは質の向上であるとか,大学が連携することによる効率化というものを目指していくというようなフェーズだと思っております。
今,量に関しては十分だというようなお話をしました。では,課題はないのかというとたくさんあります。ここから幾つかお話ししたいと思います。まず,文系博士のキャリアパスの多様化です。従来,何を言われていたかというと,文系博士を採用する企業はほとんどないと言われていました。しかしながら,先ほどの赤い糸会でいろいろ企業様と文系博士についても相談して御参加いただいた結果,今回9月に実施する会では文系博士も採用するという企業が半分以上になりました。そして、そのことを文系博士に告知したのですが,文系博士の参加は非常に少なかったです。つまり状況が変わったということです。文系博士を採用する企業がないということではなくて,今はあるのだけれども,ほとんどの文系博士はアカデミア志向で企業就職がまだ視野に入っていないという状況だというのが今かと思っております。ただ,そうはいっても企業様もまだ文系博士が欲しいというところは非常に少なくて,文系博士でもいいというところが多いのです。なのですので,このような活動をずっと粘り強く継続して,文系博士が企業就職も選択肢の一つに入れるというような状況であるとか,企業様が「文系博士でも欲しい」ではなくて「文系博士が欲しい」になってくださるようにしたいなと思っております。
日本語が苦手な留学生の日本での就職に関しては、先ほどの赤い糸会の英語版「Career Link Meetup」というものを2019年から実施しており、継続的に採用企業を発掘しております。しかし,あまり増えないというのが現状です。日本語が苦手な留学生に関してよくある誤解として,外資系企業の日本法人であるとか英語を公用語にしている企業さんは採用してくださるのではないかというお話をよく聞きますが,実際にヒアリングしてみると,顧客が日本人なので、英語ができるのはいいのだけれども日本語も必須なんですというところがほとんどだったりします。それから,日本で働きたいのであれば留学生も日本語を学べばいいじゃないかという御意見もよく聞きます。これも学生と話していると,英語での研究活動そのものにも苦労している留学生が多いのです。つまり,日本の留学生は母語が英語の学生が少ないということで,第2外国語で研究しているので,それ自体,結構大変ということです。日本人が海外に行って大変なのと同じという状況であります。それから,先ほどの英語で採用してくださる企業が増えない理由の大きなものとして,研究開発部門は英語でオーケーというところが多いです。一方,人事の手続であるとか緊急時の英語対応などが難しいのでちょっとという企業様が多かったり,それから研究者としては大丈夫なのだけれども,将来の部下育成やマネジメント,他には地元での生活が困難なために離職してしまう人が多かったので,かつて採っていたのだけどやめてしまいましたみたいなところがあります。ですから,英語で博士取得ができるようにしましょうという施策との間にまだギャップがあるなという感じです。
また,博士人材育成人材が不足しているということもあるかと思います。博士人材を育成する人に望まれるスキルとして,ここにたくさん書きだしてみましたが,博士の研究活動を知っているとかアカデミアや研究機関,企業の研究職の知識であるとか,研究だけではなくてコンサル,金融機関,ベンチャー,マスコミのことも知っている。採用活動や採用基準を知っている。全分野の研究内容が把握できるとか社会人博士,留学生に固有なことも分かっている。インターンシップ,トランスファラブルスキル関連の講義,あとは面談スキル等を持っていると,こういうようなことができる人が望ましいと思います。そして,さらに,その中からどのよう人が実際にやってくださるかというと,博士人材育成をしたいという志があったり,現状の博士人材育成人材の待遇等に納得しているという人が担当してくださると思いますが,現状,質の高い博士人材,育成人材が足りないという課題があります。
例えばどういうことかというとトランスファラブルスキルと言われるものが大事と言われていますが,学部から社会人まで求められるような一般的なトランスファラブルスキルを指導できる人は多いのに対して,博士向けのトランスファラブルスキル,つまり高度な専門性を前提にした応用スキル,複雑な概念を構造化して説明できることなど,こういうことを併せて博士が社会で博士として活躍できるためのスキルを指導できる,支援できる人が少ないということが問題かと思っております。
他にも,博士のキャリア開発というのは非常に複雑なことも課題です。先ほどからも話が出ていました。採用時期が早期化していて,そのために長期化していると。さらにいろんなプロセスが走っているのでこれ自体が複雑で,学生が理解するのが非常に難しいのです。インターンシップであったり,企業の業界によって時期が違ったり,先ほど富士通さんから説明がありましたが,通年採用に関しても理解しなければいけないし,さらにはアカデミアはD3から始まるということがあるのです。それから情報が断片化しています。研究室のネットワークで得られる情報というのは非常に深くて詳しいのですが,その一方で領域が狭かったり,それからキャリアセンターの情報であるとか学会で得られる情報,企業様が提供している情報にもナビ型,スカウト型,エージェント型というものがあったり,それから最近増えているのが,業者さんから紹介されるメンターからの情報というのが多かったりします。そういうものが正確性のばらつきというものも生んでいると思います。
例えば実際には学士,修士の情報が多いのですが,それを博士の情報として混同してしまうことが起こっていたり,それから,先ほどのメンターの方については,自分のケースをよかれと思ってだと思うんですけども,博士全体のものとして発信してしまったりしている場合があって,それをそのまま真に受けてしまうということ、自分もそのとおりだと思ってしまうというようなことが起きたりしています。その結果,就職活動の長期化とか研究時間の減少が起こったり,情報過多や情報の偏りによる企業理解の低下が起こったりします。情報が多過ぎると深く理解できなくなってしまうのです。そうすると,不安になって大量に企業さんにエントリーするようになります。それから理解が浅いために、名前を知っている著名企業への集中が起こって,その結果,大量にお祈りされていることが起こります。さらには、博士がたくさんの企業に応募するので、その結果として優秀学生に内定が集中してしまって,大量に内定辞退が起こってしまっている。そういうことによってミスマッチが多く発生していたり,かと言って、それをシステムで改善しようとすると,意外な出会いが減ってしまうと,こういうようなことが起きていると思います。いい仕組みというのはたくさんあるのですが,全ての学生がそれらを把握、理解して自立的にキャリア開発するというのは一部の学生はできるのですけれど,多くの学生にとっては非常に困難なので,サポートが必要だなと思っております。
今までいろなことを説明したので整理すると,博士の就職,キャリア教育支援,キャリアパスの多様化というのは全体的には進展していると思っております。ただ,二極化も進んでいるということです。進んでいるところにはさらなる充実化が必要だと思いますし、これからというところというのは基本的な部分への支援が必要かなと思っております。これらを一律でやってしまうと逆効果も起こると思います。つまり、進んでいるところの足を引っ張ってしまったり、これからというところの負担が増えたりということがあるので,使い分けが必要かなと思っております。あと博士の課題,ここまでも2人の方が説明なさっていましたけども,今,物すごい勢いで変化していると思います。経済支援であるとか少子化の影響,人材難などが影響していると思っております。これらについては,個別対応していかないとなかなか解決できないかなということと,先ほども説明いたしましたけども,効果が出るまで時間がかかる課題もあるので,それはじっくり取りかからなければいけないかなと思っております。あと,対応手段については,仕組みで対応していくというのは大きな活動として必要で,安定的だと思うんですけれども,これは変化に弱く,全体のカバーが困難であると思います。先ほどのように,メリットデメリットが大きく出てしまうことがあるので,本来は人材による柔軟な対応と組み合わせていかなければいけないと思っていますが,現状,そういうことができる人が少ないということが非常に問題かなと思っております。
以上です。
【和田部会長】 吉原委員,ありがとうございました。
これまで,藤田様,平松委員,そして,今の吉原委員からすばらしい取組をそれぞれ御説明をいただきました。ここまでの御発表につきまして,今から質疑応答,それから意見交換の時間を取りたいと思っております。御発言等ございましたら,ぜひZoomの挙手機能でお願いをしたいと思っています。よろしくお願いいたします。
御質問,御意見ございますでしょうか。永井委員,お願いします。
【永井委員】 永井です。お三方のお話を通しで聞くことで,すごく今,博士人材の大学,それから社会との接続というのが進んでいて,構造が変化してきているんだなということ,それに伴う課題というのがとてもよく明確になったと思いました。
それで,それぞれの取組の中で,つながっていくところとして質問したいんですけれども,まず,最初のお話しいただきましたビズリーチ様が,スライドの34ページだったと思うんですが,企業側のリクルーター体制の変化のことをお話しされていたと思うんですが,これが今,途上にあるのか,すごく急速にこうしたものが普及していくのかということの予測と,それに対してビズリーチ様が新たに取り組もうとしていることがあったらお話しいただきたいと思っています。
それから,2点目が富士通様ですけれども,ジョブ型人材マネジメントということで,今まで海外,アメリカの博士学位取得者と日本の学位取得者の就職活動で一番違うとされていたのが企業側のジョブディスクリプションがなかったんじゃないかというところを言われていたと思うんですけれども,ジョブ型人材マネジメントの,こちらも大企業はかなり早期に導入していくような方向にあるのか。それとも,これも先ほどの北海道大学のお話のように二極化していくような状況なのかということを御意見を伺いたいと思います。
私,一番感じたのは大学組織自体にこうした企業組織マネジメントモデルというのを導入していかないと,大学組織内がすごく体制が古いといったら申し訳ないんですけれども,こうしたジョブ型,ジョブディスクリプション型になっていないので,学生は学内にいると,そうした企業体制の変化,急速な変化というのを感じ取るのが難しいんじゃないかと。それがインターンシップとかに行ってこんなに違うんだ,こんなに進んでいるんだと理解してくれるのかなと思ったので,これ一刻も早く大学組織内にこうした思想を導入していかなきゃいけないなと感じたところでした。ここを御意見をいただければ。企業側から見た大学組織のマネジメントに対する疑問とかあれば御指摘いただきたいなと思いました。
最後,お話しいただいたところではすごくこんなにたくさんの取組をされているんだということで勉強になりましたが,特に課題を共有,共感したのが博士人材,博士人材育成人材が足りないというところで,これが最初のお二方の話とも通じるんですが,これほどのスピードで企業や接続の仕組み,支援の仕組みが変わっていく中で,大学の教員の博士人材育成支援をする方や,そうした専門人材の能力を維持しつつ,さらに高度化していくような取組はどうしたらいいのか,例えば今の企業の状況をよく御存じの方が大学のほうで試験人材として活躍されておられても,2年,3年とたつうちにだんだん情報が古くなったり考え方が固定化していく,それを博士人材育成人材そのもののキャリアアップといいますか,スキルアップというものをどのように組織的に進めていけばいいのか,この辺を御教示いただけると大変ありがたく感じます。
以上です。
【和田部会長】 永井委員,ありがとうございます。3名の皆様それぞれに御質問があったかと思います。初めに,藤田様,よろしくお願いいたします。
【藤田様】 御質問いただきまして,ありがとうございます。先ほど恐らくおっしゃっていただいた,ページで言うと33ページですか。御質問いただいていたかと思いますので,もう少しですね。
【永井委員】 34ですね。
【藤田様】 そうですね。ありがとうございます。2つ御質問いただいたかなと思っていまして,まず,企業様の体制についてですが,これまで大学別のみで構成されてたものがジョブ,もしくは領域,専門性によって体制を取っていくということは,かなり急速に今進んでいると我々も認識しています。この理由としては,結論としては,こういう体制を取って,ちゃんと学生さんにリアリティーのある情報を,もっというとその学生さんの専門性をどう生かせるかという情報を提供できないと取れなくなっていくということがかなり大きな要因になるかなと思っています。
学生さんからしても,自分の専門性を生かせるかどうか,逆に言うと,それが生かせるかどうか分からない企業は多分選ばないとなっていくと思います。という観点から,これまでの大学別のリクルーターの体制を維持しつつもそれに加えていく。もしくは,これまでの体制を変化させて,いわゆる右側,事業領域だったり職種別に体制を取っていくというのはかなり急速に進んでいくと捉えています。
【永井委員】 よろしいでしょうか。もう少し突っ込んで伺いたいのは,大学別の取組のほうは,むしろ学部卒業生に対しては維持されていて,修士以上に博士学位を取得している人たちを対象にした人材獲得においては,こちらのリクルーター体制の,後者の事業領域や職種別のほうに力点が置かれていくというような形で,学生から見ると,どの学位を持っているか,どの段階で社会に移行,接続するのかによって,かなり企業側の見方が違ってくるというように理解してもよろしいんでしょうか。
【藤田様】 ありがとうございます。まさに今どちらも混在しているというのが現状になっていまして,ただ,今,永井様のおっしゃったとおり,専門性の高い方々,つまり,修士や博士に進んだ方々には,こういった右側の体制によって情報提供していくということ自体は明らかに進んでいくと御理解いただいて問題ないかなと思います。
【和田部会長】 ありがとうございます。それでは,平松委員,お願いします。
【平松委員】 ジョブ型の人材マネジメントは,いわゆる大企業では,経産省等も日本が変わっていくために有益だという発信もしていますので,かなり早期にジョブ型に移行していくと思います。というのは,ジョブ型でないとなかなか優秀な人を採用できなくなってくるという危機感が既にあって,富士通もジョブ型に移行する前は,外資系企業にどんどん若手を取られていました。日本型の人事の仕組みは年齢別の賃金カーブというのがあるので,そこに影響されて優秀な人を職責の重い仕事に抜てきして高い報酬を払うということがなかなかやりづらかったりする。ところが,外資はもともとジョブ型だったので非常に柔軟なので,成長意欲が高いとか,早く大きい職責を担いたいという今の若い人たちは,優秀な人ほどそういう仕組みに行きたがるので,大企業も人材獲得競争が非常に激しいので,かなり早期にジョブ型に移行していくと思います。
中堅中小企業は,なかなかその仕組みを導入するパワーがないということもあるかもしれませんが,中堅中小企業でも人材の獲得は重要な経営課題としてあるので,少しタイミングは遅れるかもしれませんが,移行していくと思います。
大学組織について,どういう形で運営されているかというのはよく分からないところもあるが,民間で活躍していた方が大学組織に転職してというのはあります。もう一つは,定期的に企業と大学の運営されている方が人材交流をして,ジョブ型をやっている組織のマネジメントはこうなんだ,実際の仕事はこうなんだとお互いに学び合い,それぞれのいい面,悪い面を理解した上で,我々も形を変えていこう,色々な学びを得ていこうということがもっと活発にできてくると,色々な変化が起こりやすくなると思います。
以上です。
【和田部会長】 ありがとうございます。よろしいでしょうか。それでは,吉原委員,お願いします。
【吉原委員】 御質問いただいた件についてですが,まず,従来,大学においては就職に関しても指導教員が面倒を見るということが多かったと思います。しかし,現状,多くの分野で就職やキャリアに関することが複雑になってしまって、それができなくなっているので,我々のような,要は博士人材育成を担当するキャリア関連の人材がそういう支援をするというように変わってきていると思います。そして,その中で,民間から移って来た博士人材育成担当者の情報が古くなってしまったり,支援の質を維持できるのかということなんですが,それに関しては2つあると思っておりまして,一つは民間企業から来たといってすぐに博士人材の支援ができるわけではないということです。というのは,元居た企業,例えば私はもともとIT企業にいたのでIT関連分野については詳しかったのですが,文系の博士の支援であるとか,あと生命系の支援は私にとってはとても難しかったのです。それを数年かけて学び、そのような中でアップデートできるということがあります。
それから,もうひとつは、実は我々のような立場だと企業さんからいろいろ相談を受けるという事情があります。先ほどの早期化に関しても,例えば「我々としては良い人材がなかなか採れないので早期化したいのだが,そうしたときにどういう課題が出てくるか」であるとか,先ほどの「ジョブ型に移行したときに,大学とどういう体制を組めば,うまく学生とのマッチングが取れるのか」というような相談を受けるので,先ほど説明した「充実している群」に入っていれば,企業から移った後のスキルや変化への対応は維持できるんですけども,逆に,例えばそういう相談を受けられないようなところにいると,維持できないということが起こってしまいます。なかなか相談を受けたりすることがない環境にいたとしてもそういう情報が入ってくるような仕組みが今はないので,それをつくっていかなければいけないのかなと思っております。
以上です。
【和田部会長】 ありがとうございます。永井委員,よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは,両角委員,お願いします。
【両角副部会長】 ありがとうございます。両角です。お三方の発表は大変勉強になり興味深く聞いておりました。どの方にというか,多分3人にお聞きすることになるかもしれないのですが,大学院生の博士の方がアカデミア以外のところにキャリアを行こうというときに,いつぐらいに判断されるのかが重要な気がしています。そういう意味でも,いずれの取組もそこがかなり多様でした。例えばビズリーチ様でしたら,いつでもできるようにしていたり,あるいは富士通様のところですと,修士のまま,今度博士に行くときに支援しますよとか,一旦社員になっても博士を取りたかったら支援するとか,あるいはインターンシップという形とか様々なタイミングにあわせて用意されていたり,北海道大学の場合も,これだけ丁寧に個別面談されているというのも,いつの段階で,どのように選んでいくかというところが,いろいろだからこその難しさがあるのかなという気がしました。
今,感じていらっしゃる感覚的なところで構わないのですが,アカデミア以外の民間企業で博士にという場合に,大体どういう段階からが多いのでしょうか。博士に入る時点なのかとか,最近は奨学金も充実していますけれど,博士に入るときに,ある程度の研究の成果がないと奨学金とかも得られなくなっていて,早めにいろいろな判断がどんどん求められるようにはなっていると思います。ただ,他方でアカデミアでやっていけるか,やっていきたいかというのも,ある程度研究してみないと分からないというようなところもあり,いつの段階で,どうそういうキャリアを支援していったらいいんだろうかというところの疑問を感じておりまして,できましたらお三方から御返事いただければと思います。どうぞよろしくお願いします。
【和田部会長】 両角委員,ありがとうございます。これも重要な問題だと思います。それでは,順番にお三方,お願いしたいと思います。初めに,藤田様よろしいでしょうか。
【藤田様】 ありがとうございます。本当に理想という意味においては,当然学部のときから博士課程,その後のキャリアを知っておくということは重要だと思うんですけど,今,我々が学生さんと直接コミュニケーションを取る中だと,あまりそれ自体の力学は働いていないなというのは正直なところです。ただ,一つあるなと思っているのは,修士に進むタイミングでは,その先の就職自体は考えているんです。なので,つまり学部3年生の後半から学部4年生の頃には,どの研究室に行ってどういう研究をするのか自体は考え始めると。そのタイミングで,そのまま修士を経て民間に行くのか,その次の博士というキャリアパスがあるのかというところは,そのタイミングでは少なくとも知っておいていただいた上でキャリアを選択していくという体制,もしくは仕組みを取れないかということは,まさに今考えているところでございます。
当然,就職活動のタイミングでは就職するほうがいいのかなとか,博士に進んだらどうなのかなみたいなことは考えられているかなと思いますが,どちらかというと,そのタイミングはめちゃくちゃ学生がばたばたしちゃうので,もう少し早くから,時間が余裕があるタイミングで正しい情報を届ける,これに注力する必要はあるなとは捉えています。
【和田部会長】 ありがとうございます。平松委員,よろしいでしょうか。
【平松委員】 キャリアについて,色々な選択肢を中期的な視点で考えるというのは,学部に入った頃から常に考え続けていく必要があると思います。ただ,最終的な決断を下す時期というのは,特に博士の学生に関して申しますと,いわゆる一括採用の中には入っていなくて,中途採用と同じような形で採用をしていましたので,時期はもともとフレキシブルであります。富士通が一括採用廃止と言ったのは,博士だけではなくて,修士も学士もです。さらには,以前は卒業した後に直ちに就職しないと何か問題があったのではないかといったようなことも言われましたが,例えば卒業した後に自分がやりたい活動をします,卒業した後にインターンシップに行ってから入りますなど,弊社は採用計画数も定めずに通年で採用するというスタイルをやっているので構いません。博士の方々も全く同じで,1回アカデミアを目指してみたけれども,もしくは一定期間アカデミアの中でやってみたけれども,やはり民間企業で就職したいということであれば,そのタイミングだというように考えています。
【和田部会長】 ありがとうございます。吉原委員よろしいでしょうか。
【吉原委員】 いつがタイミングなのかというのは,バックキャストすることによって「このくらいだよね」ということは分かると思っておりまして,そういうことを考えて,我々としても先ほど説明いたしましたように,学士から博士まで継続的にキャリア支援するという体制をつくっています。しかし,実際のところどうかといいますと,興味を持っていない情報を幾ら提供しても彼らは受け取らないということもありまして,我々としては情報提供しているのですけれども,アンケートを取ると全然聞いていないとか,知らないとか,もっとやって欲しかったというようなことが起こります。ですから、,個別の対応がある程度必要であると思っているのと,あと,それから博士進学に関しては,保護者等にもそういう情報を入れておかなければいけないというのがあると思います。というのは,保護者はスポンサーなので彼らに反対されると進学が難しくなってしまうという問題がありますから,そういうところもきちんと大学として情報は提供していかなければならないいうことがあります。
あと,個別に対しては,一人一人が全然違っていて,情報を与えればいいものではなく,彼らにとってキャリアを考えるときに何が足りないのかというものを気づかなければなりません。それで,我々,個別面談をするときに2級キャリアコンサルタント技能士と同等以上のスキルを持っている人を充てているというのは,そういうことに気がついてアドバイスできるスキルがないと取れない資格であるからです。なので,そういう人が一人一人を見て,彼らにはこういう情報が必要,こういうことを提供すれば,自分で考えることができるようになるというような支援ができると思っています。そういう支援をすることができるように,例えば「自分はアカデミアに向いていない,研究に向いていないということが分かった。でも,今からじゃ先ほどのバックキャストの時期には間に合わない」といったときにも対応できるように,博士人材育成人材がこれから重要かなと思っております。
【両角副部会長】 ありがとうございました。
【和田部会長】 両角先生,よろしいでしょうか。
【両角副部会長】 はい,ありがとうございました。
【和田部会長】 時期と内容はとても大事だと思っています。初等中等教育からの連携ということもここに入ってくるのではないかと個人的にも思っております。ありがとうございます。
それでは,西村委員,お願いします。
【西村委員】 ありがとうございます。お三方のお話を聞いていてとても気になることがあって,博士号を持っているからこの人たちを採るという感じではなくて,博士号,博士課程を出ても企業で潰しが効きますという話に聞こえちゃったんです。私もアメリカで働いていた経験があったときに,博士号を持っていないと就けないポジションというのが明確に企業の中にあって,研究者の中でも基礎研究ではなくて,例えばスタッフサイエンティストという位置づけで,将来的なことをやるとか何するにしても,博士号を持っていないと就けないポジションというのが明確にあるんです。
でも,今お伺いしていると博士の質というか,どういう質の人材を求められていて,そのカテゴリーの人たちがこれから企業,産業界では必要なんだと。どうも聞いていると,使えるように飼いならすような雰囲気の取り方とか,中でのインターンシップのやり方なので,いや,そうではなくて,どういうことを博士人材に期待しているのかということを,先ほどの高いレベルの仕事で即戦力ということを言っていたんですけど,これは博士だから特別にそういうものがあるのか,いや,今までいる社員にすぐなじめるように,そのレベルのことを博士の人でもやってくれればいよというレベルなのか,この辺りが,これをもし続けていると,結局修士課程であった青田買いと同じように,博士の青田買いが始まって,質の低い博士というのがたくさん世の中に出ていくだけになるんじゃないかなと思っていて,私は博士というのは,全ての人材じゃないけど,これは私もあったけども,途中で,1年ぐらいで首になるんです,アメリカだと。本当に使えない博士は,使えなかったら。使える博士はどんどん伸びていく。
なぜかというと,博士に期待していることは誰も生み出さないことを生み出してくれるとか,誰も見えなかったものを見てくれるとか,特別な能力,特別なレベルに達した人だと思うんです。この特別なレベルに達した人たちをどう見抜いて,どう社内で活用していくのかということを,もし可能であれば,企業の皆さん,お二方に聞きたくて,ここの認識がもし,当然大学もそうなんです,だからこそそういう人材をつくるんだということで大学の教育を変えていかなきゃいけない。
だから,お互いになんとなく博士というものを,産業界で働く博士というものの質が,捉え方が私,すごく気になって,このままいくと大量の本当に博士もどきのような人材がたくさん出てきて,社会の産業構造の中に人材が生かし切れないんじゃないのかなという気もしたので,すみません,非常にきつい言い方なのか,変な聞き方なんですけども,御意見いただければと思います。
【和田部会長】 ありがとうございます。これはお二方からお聞きすればよろしいでしょうか。それでは,藤田様,それから平松委員,申し訳ありません。よろしくお願いします。
【藤田様】 御質問いただきまして,ありがとうございます。おっしゃっていただいたとおり,本質的に博士である必要性,これをどこまで求めるかということは,まさにジョブ側が正しく定義をし,求めていかないといけない問題かなと全然捉えています。企業様においても,それを博士号である必要性だったり,高い専門性だけじゃなくて,まさに答えのないものを見つけ出し,イノベーションを起こしていくという方ということになると思うんですけど,こういう人たちを受け入れていくという体制自体をつくるということはまさに御指摘のとおり,今後,企業側においても必要になっていくことかなと思っています。
同時に,博士に進むことによって研究に自分の時間を充てられるということの先にそういった人材が生まれるというように捉えていますので,そこに進んだら必ずなれるわけじゃないけれども,社会としてセーフティーネットは整えられている。つまり,キャリアがあるということです。これ自体を整えることは同時に必要かなと思っていますので,今,進めていることと並行しながら検討すべきことかなと捉えています。少し曖昧な部分もありますが,今,認識はそのようにしています。
【和田部会長】 よろしいでしょうか。それでは,平松委員,お願いします。
【平松委員】 これまでも,いわゆる研究者の領域について言うと,国際的な学会や研究者のコミュニティの中でそれなりの影響力を持って活動していく上で,博士でなければ相手にされない,もしくは,そのレベルではないと議論に参加できない,ついていけないといったようなところはあるので,積極的に博士人材を採用して活躍してもらっていました。ただ,研究者のところに限定されていた。
これからは専門分野以外でも,博士課程を取る中で培われたイノベーションを起こしていく,もしくは,曖昧な情報から色々な仮説を立てて,企画をして周りを巻き込んで実行していくというところに博士の方々の力が活かせるのではないか。これまではそういうところで積極的に採用していなかったので,まだ企業側でも十分に,博士の方がどのぐらいの力量でどういうことができるのかということを実践できていないので,どんどんマッチングをして実績をつくり,例えば経営企画のこういう領域は博士の人でなければ絶対無理というところももっと増やしていく流れにしないといけないと思っています。
【和田部会長】 ありがとうございます。西村委員,よろしいでしょうか。
【西村委員】 ぜひとも博士号を持っていないと就けないポジションというのを産業界の中でつくっていただきたいです。そうなれば,大学としてもそういう人材をつくるということに非常にターゲットを絞って改革もできるので,両者でそういう動きを,ムーブメントをつくっていくといいかなと思ったので,ぜひともよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
【和田部会長】 ありがとうございます。それでは,飯田委員,よろしくお願いします。
【飯田委員】 ありがとうございます。島田製作所の飯田でございます。ありがとうございます。大変勉強させていただきました。
お三方に少しずつ御質問させていただきたいんですけど,まず,ビズリーチの藤田様へ,藤田様のスライドの30ページ,全体の78分の36ページの今後の展望,ビジョンのお示しいただいたサイクル,これ非常にすばらしいと思って伺わせていただきました。実際,御社ではといいますか,このお取組で何年ぐらい,時間軸としてどれぐらいにどういう形で進めていこうとされているのか,もしまた,その途中マイルストーンがあるのであればお伺いできればなと思いました。
あと,2つ目,富士通様,平松委員への御質問なんですけれども,富士通様の非常にすばらしいお取組をお聞かせいただきまして,ジョブ型キャリアとそれからジョブ型の通年採用ということで,本当に今後,日本の産業界が強くなっていくためにはそういうことが必要だなと改めて思うところなんですけれども,ただ,なかなかこれを実際に採用するというのは,先ほど大企業とそれから中小企業という言葉で御説明いただいたんですけれども,弊社でも人事部をはじめ,経営層はそういう話があることは承知しているんですが,なかなか富士通様みたいな形で,そこまで行くというのは難しいんじゃないかと思っておりまして,そのときに,これを実際に進めようとするときに,経営課題としてのトップ主導かなとも思うんですけれども,富士通様のような取組を進めたいと思う会社への,実際に進めるための助言みたいなものがありましたらいただければ非常にありがたいなと思っております。
最後,北大,吉原委員様へなんですけれども,弊社も赤い糸会とか参加させていただいておりまして,いろいろ勉強させていただいているところですけれども,御発表のスライドの78分の70ページ,イベントの写真なんですが,女性の学生の方の姿もあるんですが,やはり男性が多いなという印象の中で,こういうイベントでの参加,全体の学生の方の中で女性の学生の方がどれぐらい参加されているかとか,それからまた,全女子学生,女性の学生の中でこういうところに参加されている女子学生,女性の学生の方の比率みたいなものが分かりましたら教えていただきたく,また,それを積極的に増やそうというような動きもされているのかなと想定いたしますけれども,どのようなお取組をされているか教えていただけるとありがたいなと思いました。
以上でございます。
【和田部会長】 飯田委員,ありがとうございます。それでは,順番に回りたいと思います。藤田様,よろしくお願いします。
【藤田様】 御質問いただきまして,ありがとうございます。サイクルをつくっていくという起点は,学生さんからするとキャリアパスが見えないということ,これが問題になっているかと思っていますので,現時点での数は非公開とさせていただいているんですけど,これから3年をかけて,今,民間に就職される方って,博士課程を経て民間に就職される方は年間大体5,000人から6,000人ぐらいいらっしゃるということなんですけど,そのうちの,そのうちのというのは,キャリアパス,具体的には1,000人から1,500人ぐらい,20%ぐらいに当たるキャリアパスを提示することで,学生さんの情報収集に寄与していきたいなというのが目の前のマイルストーンとなっています。
【和田部会長】 ありがとうございます。よろしいでしょうか。平松委員,お願いします。
【平松委員】 企業からは,うちもジョブ型をやりたいけど経営層がその気になってくれないという御相談をよくお受けしますが,まず,何のためにやるかということが一番大事だと思っています。3年後、5年後のビジネスプラン,事業戦略のビジョンがそれぞれの企業にあると思うが,それを実現している組織,人はどんな姿だろうかというのを解像度高く,まず経営の中で議論していただくと,今の人事の仕組みの延長線上で,それは実現できないということに気づくのが第一歩だと思います。そうすると,人材の流動性を高める,社員が主体的に学んで成長領域に挑戦するなどという仕組みにしないと実現できないし,生き残れないと,それを考えるというのが一つ。それから,富士通も昔,成果主義でやろうとして1回失敗したときに学んだが,それぞれの現場のビジネスの責任者の人たちが,いわゆるやらされ感で,何をやったらいいのか分からないというやり方だと,どんな制度を入れても結局うまくいかずに失敗だとなります。
そのため,ジョブ型に移行するときに,いわゆる人員計画の責任と権限を各事業部の責任者に権限移譲します。だから,そのビジネスを実現するのに最適な人や組織を,キャリア採用でもポスティングでも,その事業の責任者がその裁量を持ってやってください,人事はそれをサポートしますというようにしたことで,責任を持って人材をマネジメントしなければいけないとなってきます。ジョブ型の仕組みで組織やポジションをしっかり設計して,ふさわしい人を複数の中から選ぶ,ミスマッチな人には,これが駄目ということをフィードバックするといったことが出来てきます。この2点かなと思います。
【飯田委員】 非常に参考になりました。ありがとうございます。
【和田部会長】 ありがとうございます。吉原委員,お願いします。
【吉原委員】 赤い糸会等にどのくらい女子学生が出ているかということでしたが,選んだ写真が男性が多いもののために誤解を与えてしまったようですが,実際は博士の比率とあまり変わらなくて,二,三割ぐらい,今チェックしたんですけども,二,三割ぐらいが参加しています。また、女子学生の参加に対して働きかけをしているかということなんですけれども,こういう個別に参加するものに関しては,女性に対して特別な働きかけというのはしていません。男女の区別なく一人一人を見て,必要な学生にこれに出たらどうかというようなアドバイスをすることはあって,そういう提案をするだけです。でも,例えば我々のところで博士のロールモデルを紹介する集中講義をやっていますが,そういうところでは,できるだけちゃんとバランスを考えて女性のロールモデルも示すというように,知識をきちんと提供するというところでは,我々としては設計をして,必ず女性比率が今の現状よりも多いくらいにするというようなことをしています。さらには,例えばお子さんがいる方とか休職をした方とか,先日,貴社の方にも来ていただいたんですけれども,異動でどうだったとか場所が変わったときに女性としてどうなのか,そういうことを伝えることによって,個別ではないんだけど,全体として女性にも参加するというマインドを持ってもらえるような感じで設計しております。
【飯田委員】 ありがとうございます。クリアです。ありがとうございました。
【和田部会長】 ありがとうございます。飯田委員,よろしいでしょうか。
【飯田委員】 ありがとうございます。
【和田部会長】 それでは,杉村委員,お願いします。
【杉村委員】 本日は多方面から大事なテーマについてお話しいただき,勉強になりました。私からは,グローバル関係でお伺いしたく思います。
まず,ビズリーチ様にはビズリーチ・キャンパスというマッチングプラットフォームをつくっていただいており,とても素晴らしいことだと思います。日本では少子高齢化が進み、人材育成が喫緊の課題です。将来的には,今後,留学生も今以上にたくさん大学に入ってくることになると思います。今日のお話を伺っていると,どうしても理系が中心というイメージは強いのですが、例えば将来的に日本企業で専門性を生かして,領域を越えてマッチングを図っていくような,そのようなことも考えておられるのかどうかというのを一つ伺いたいと思いました。
それから,富士通様におかれましても,大学も見習うべき新しい人事制度や流動性を含めた取組を、ジョブ型によって実施していらっしゃるとお伺いし、大変勉強になりました。先ほどもお話にありました流動性についてですが,大学では留学生を受け入れるという場合、当然そこには将来的な人材の育成も関わってきますが,先ほど,実は西村委員がおっしゃったとおり,なぜ博士人材に力点をおくのかといったところがポイントになると思います。
海外から来た留学生のなかには、博士学位を取りに来るという事例があります。彼らが,日本の企業で高度人材として定着して,大学院修了後、ジョブ型雇用の中でやっていくことができる。そうした仕組みを将来に向けて考えておられるかどうか。また、今,博士人材に求められている一つの大きなポイントは,いかに国際的な通用性の中でグローバルなルールづくりに参画できるかどうかという点にあるのではないかと思いますがその点についてはいかがでしょうか。。
これまで日本の企業は、世界のいろんな国際的なルールの中で製品をつくり、企業の発展,あるいは日本の国力の発展にも資するということで活動を展開してきました。しかしながら、今後は国際的なルールづくりや枠組みづくりにどれだけ参画できるかという点が大事で,多分それがグローバルすることの意義のひとつではないだろうかと思います。その意味では、特に博士人材を考えるのであれば,逆に日本がいかに世界の中でリーダーシップを取っていけるかという点についても私は検討すべき点だと考えます。人材の流動性との関係でグローバルな視点からそうした問題をどのように考えていらっしゃるか、ご意見があれば伺いたいと思います。
それから最後に,北海道大学様におかれましては,見習うべき点を多々挙げていただきました。特に私が気になったのは文系と理系の違い、地方の大学との格差や,留学生の処遇,日本語のできない留学生の受け入れといった点です。これは現実として、私たちが,国際化,グローバル化が言われる中で向き合わなくてはいけないことばかりです。また実際に企業に入ったときには、どうしても日本語で対応しなくてはならない場合もあります。今後そうしたことについて、大学として,企業との話合いの場を設けたり,もっとお互いが行ったり来たりできる場づくりが必要なのではないかと思いました。大学から社会に人材を送り出すだけではなくて,企業や政府機関の方が、博士を取って,逆にアカデミアに戻ってこられるといった事例もあるように思ます。こうした例をみますと、大学と企業の橋渡しが、双方向で行われることが大切であると感じました。もしそうした取組があれば,それも教えていただきたいと思いました。
長くなりまして申し訳ございません。それぞれ別の質問になりますが,よろしくお願いいたします。
【和田部会長】 杉村委員,ありがとうございます。今日の議題の中の,ある意味では,一つの大きな柱であるグローバルという点を御質問されたと私も理解をしております。
それでは,順番にお伺いしたいと思います。初めに藤田様,よろしくお願いします。
【藤田様】 御質問いただきまして,ありがとうございます。前提,留学生,日本に留学をしてきている海外の方の日本企業への就職の支援ということ自体は,サービスの中でも行われているんです。これは博士に関わらずという意味なんですけど,その上で,先ほどの御質問の中にもありましたけど,博士である必然,そういうジョブをどうつくっていけるのか,これは企業さんと一緒になって,つくっていく必要があるなと思っています。
その上で,我々は学生さんと企業様,もっというと,ジョブとのマッチングの支援をしていくということと,留学生の方がその機会を得られて,日本企業でうまくマッチングが起これば,我々としてはそれを事例として展開をし,先ほど,また学生さんに還元していくと,こういうルートですよね。これをつくっていくというところに一緒になって寄与できればなと思っています。
【和田部会長】 ありがとうございます。それでは,平松委員よろしいでしょうか。
【平松委員】 富士通がジョブ型に移行した理由の一つでもあるが,もともとはいわゆるコンピューターメーカーとして,ハードをグローバルに売っていたという世界から,よりソフト,サービスの領域でグローバル企業になろうとすると,真のグローバルカンパニーに変わっていかないと,それが実現できない。日本企業が徐々に製造からサービスに移行していく流れと全く同じだと思う。そのときに真のグローバル企業とはどんな姿かというと,例えば,日本が本社であることは変わらないが,金融ビジネスの責任者はアメリカにいて,世界中の国にメンバーがいて,既に富士通の中でも国を越えたメンバーを従えているビジネスの責任者というのは結構いる。そのときにグローバルスタンダードなジョブ型の仕組みでなければ,日本の人だけ日本型のマネジメントで,海外の人は海外型のマネジメントというのは通用しないということもあったので,ジョブ型に移行して,そういうグローバルなチームのマネジメントができるようになってきました。
留学生に関して,例えば留学して,日本の富士通のヘッドクオーターで何年か仕事をする,その後,海外に赴任してビジネスをやります,日本のこともよく分かり,グローバルなビジネスパーソンとしてできますというような人材は,これから非常にニーズが高まってくると思っています。さらには先ほど申し上げたポスティングについて,グローバルポスティングもやっていますので,例えば,駐在員を選ぶときに,これまでは会社側の指名でやっていましたが,駐在のポジションもポスティングをかけて,手を挙げさせて一番いい人を行かせるということをやっています。それが世界中で起こって流動を起こしていく,世界の中では留学生の活躍の場も,人材流動化の中でより増えていくと思います。
【和田部会長】 ありがとうございます。吉原委員,お願いします。
【吉原委員】 先ほどの留学生の話に関して,一つは日本語が苦手な留学生が企業に就職しにくいということについてですが,これは先ほどの別なところでお話もあったようにできる企業はあるんです。実際に採用している企業はあるので,やってやれないことはなくて,できるのです。ただ、そこを一歩踏み出せないというところで,時間がかかるかなとも思います。そこで一歩を踏む出せるように、「こういう事例があってできている企業がありますよ」,「ここがハードルで,ここを乗り越えましたよ」というのを,我々としては発信しています。そういうことをどんどんやっていって,やれないことではないという認識を高めていただくのがいいのかなと思っています。
解決が難しいこととしては,例えば,博士だと研究所に勤めることが多いのですけれども,研究所は都市部以外にに立地していることが多いのです。そうすると地元のコミュニティーの中で孤立してしまうという問題が起こりがちです。こっちのほうがどちらかというと解決が難しくて,これは大学と企業がいくら頑張っても難しくて,民度の問題というか,行政の問題というか,そこは「何とかしていただかないと」と思います。こっちのほうが単に時間だけではできない問題かなと思っております。
あと,もう一つは大学と企業との出入りについてですが,これは理系だと結構あると思います。もう実際に多くの企業の方が大学に入ってきていますし,大学からも,それに比べると人数は少ないのですが出ていっています。優秀層に関してはそういうことが既に起きているので,それを拡大していくためには,時間かけて浸透させるのかなと思います。あとは文系は理系に比べてそういうことがなかなか起こりにくいと思います。特に先ほど挙げた文学,史学,哲学辺りというのは,なかなか企業との出入りは難しいかなと思っております。マインドの問題が,先ほどの文系博士の企業就職についても就職したい学生を増やすのと採用したい企業を増やすことが,鶏と卵の関係で行ったり来たりするのかなと思っているんですけど,今は文系博士のマインドを変えるフェーズだと我々は思っています。先ほどの教員と企業との間にもマインドの問題があり,今は大学でリサーチャーとしてやっていきたいという方が多いんじゃないかなと思います。それを民間でも活躍してみたいというようにマインドを変えていくということが必要なんじゃないかなと思います。
【和田部会長】 ありがとうございます。杉村委員,よろしいでしょうか。
【杉村委員】 ありがとうございました。大変よく分かりました。
【和田部会長】 先ほど西村委員からも重要な御指摘がありましたように,博士号の質の問題,あるいはその保証,あるいはその活躍の場ということともこれは関連があるような御質問ではないかと思っていました。重要な課題だと思います。ありがとうございます。
それでは,伊藤委員お願いします。
【伊藤委員】 プレゼンテーション,ありがとうございました。手短に,大まかに2点御質問があるんですけども,まず,1点目はビズリーチの藤田様なんですけれども,博士の方が社会で活躍していただく上で,大企業様にそういった人材を多数受け入れていただくというのが一つあると思うんですけど,足元でディープテック・スタートアップにもかなり博士の方が新卒で就職されるような流れも出てきていまして,その辺りに関して何か特別なお取組とかをされていらっしゃるようでしたらぜひお聞きしたいのと,あと,そうは言っても,絶対数でいうと,受入先としては大企業様が比率としては大きいので,そこをしっかり重点的に活用すべきだというような御意見なのか,全体感を見て,ディープテック・スタートアップへの流れみたいなところはどれぐらい着目すべきかどうか,その辺りを教えていただけたらと思いました。
2点目が吉原委員への御質問なんですが,先ほど資料のほうで,課題2つ拝見しましたが,博士人材育成を行う人材が不足していると,大学側にこういった人材が少ないということと理解したんですが,これがなかなか増えてこない原因とか理由みたいなところがもしあればお聞かせいただけたらと思いましたのと,あと,博士向けのトランスファラブルスキル,専門性活用型,こちらについて,まだ不足しているということなんですが,大学として,どのフェーズで博士が持つべきトランスファラブルスキル,今,不足していると感じていらっしゃるところを学ぶ機会を提供していくべきなのか,そこについて何か御意見があれば教えていただけたらと思っています。博士の方が研究で忙しい中で,なかなかそこで吸収していく時間もない中で,そこでも何とか捻出してこういったスキルを身につけるべきだというような御意見なのか,その辺りをぜひお聞かせいただけたらと思いました。よろしくお願いいたします。
【和田部会長】 伊藤委員,ありがとうございます。それでは,お二人の方にお聞きすればよろしいでしょうか。初めに,藤田様,よろしくお願いいたします。
【藤田様】 御質問いただきまして,ありがとうございます。直接的にお伝えすると,我々としては,いわゆる日本の大手企業様を中心に支援をしようということを特段考えているというわけではなくて,これまでの経緯があって,割と大手企業さんとお付き合いがあるということに今のサービス自体は依拠しているかと思います。
一方で,まさにおっしゃっていただいたとおり,いわゆる学生だったり博士を卒業したばかりの方々というだけではなくて,ディープテックのスタートアップの皆様は人材調達そのものが大きな課題かなと思っていますので,そういう意味においては,我々,全社を挙げて支援をしたいという思いはあるので,そういう意味で,全然どちらが優先的であるというようには捉えていないです。なので,ちゃんと我々の中でも博士人材の方々の学生さんのプールをちゃんとつくって,それで企業様とのマッチングを行っていくということも当然進めていかなければいけないと思っています。
【和田部会長】 ありがとうございます。それでは,吉原委員,お願いします。
【吉原吉原委員】 御質問いただいた件についてですが,非常に答えにくいところです。しかし,資料に「ここがネックかも」と書いたところが「待遇」になっていますが,ここかなと思っております。というのは,博士人材育成を育成する人材に求められるスキルをいろいろ書きましたが,求められている要求水準が非常に高いのです。でもそれはもう当然で,通常の一般的なトランスファラブルスキルは持っている人でなければ博士人材育成はできないし,先ほど博士は汎用力のほうに偏っているんじゃないかという御意見がありましたけども,専門性を持って社会に出していくということをやろうと思うとハイスペックにならざるを得ないのです。そして、そういう人はいらっしゃるのですが,大学の待遇だと,かなりその方が今いるポジションとのギャップが大きくて,なかなか来ていただけないというのが本当のところであるかと思います。それに対して何らかの解決方法がないのかなと考えているところですので,もし何かありましたら教えていただければというのが,1つ目です。
もう一つが,どのフェーズでというお話がありましたけど,今の話と絡んできます。なぜかというと,博士は忙しいので,そのためのトランスファラブルのセミナーみたいなものを作ったとしても,それらを受ける時間が取れないと思うのです。なので,いろいろな場面で,博士が通常の活動で関わるところにトランスファラブルスキルも身につくようなものを仕込んでいくとか,そういう組合せをつくっていかなければいけないと思っていますし,それをやるためには博士の専門性を理解した上でトランスファラブルスキルを組み合わせることができるような人材が必要だと思っていて,今,我々それに取り組んでいるのですが,もっともっと大規模にやっていかないといけないなというのが課題意識です。
【和田部会長】 伊藤委員,よろしいでしょうか。
【伊藤委員】 ありがとうございました。
【和田部会長】 ありがとうございます。それでは,お待たせしました,小野委員お願いします。
【小野委員】 ありがとうございます。すみません,11時を過ぎて参加したのでお話を伺えていないため,少しずれている点があるかもしれませんが,質問を一つさせていただきたいと思います。
企業など外部環境が変化する中で,大学の教育,特に研究を通じた教育をどのように変えていくかが重要だと考えています。より質の高い教育,そしてより広く社会や世界で活躍できる人材をどのように育成するかが,大学や研究そのものに対する社会の信頼にもつながってくると思います。
その点で,先ほど西村委員から企業側でポジションをつくるというお話もありましたが,例えば別のアプローチとして,企業においては専門性を活用できる業務内容を構築することや,業務遂行に求められる能力をより詳細に定義することが必要だと思います。それだけではなく,大学や研究機関側にも博士号取得者の能力を客観的に示し,それを社会に分かりやすく提示することが重要であり,双方が仕組みを変えていく必要があるのではないかと考えています。
そこで伺いたいのは、そうした動きが既にあるのか,あるいはそのような方向に向けて双方の議論が始まっているのか,そのあたりについてお話をお聞かせいただければと思います。
【和田部会長】 ありがとうございます。これはお三方にお聞きするということでしょうか。
【小野委員】 すみません,答えていただける方にお願いします。
【和田部会長】 分かりました。では,時間もそろそろ迫っていますので,手短にお願いをしたいと思います。それでは,お答え,どうしましょうか。藤田様でよろしいでしょうか。
【藤田様】 ありがとうございます。我々のほうで企業様と今,特に企業様と議論させていただいている中でいうと,どうやってジョブを定義していくのかということは,各社さんがまさに今取り組まれているところ,富士通様のような先進的な企業さんももちろんあるんですけど,まさに今それ自体をやりに行っている企業様は多くあるというように捉えていただければいいかなと思います。
【和田部会長】 ありがとうございます。平松委員はよろしいでしょうか。
【平松委員】 まずは,ジョブディスクリプションを見た方がきちんと理解できるように充実させていくという動きは,ジョブ型を導入する企業でかなり増えてきていると思います。そういうものも見ながら,逆に大学院側では一人一人の博士の人たちが持っている専門性や汎用的な能力というものをより客観的に示す,さらには学生の方が自信を持ってアピールできるようなものをつくっていただけると,うまくはまると思います。それを双方でコミュニケーションをもっと密に取ることによって,どういう形がそれを実現している姿なのかというイメージでやればいいと思います。
【和田部会長】 ありがとうございます。小野委員,よろしいでしょうか。
【小野委員】 ありがとうございました。
【和田部会長】 ありがとうございます。それでは,北委員,よろしくお願いします。これで御質問を最後にしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【北委員】 最後になりました,コニカミノルタの北でございます。
富士通の平松さんにお聞きしたいのですが,私どももジョブ型の採用がいいかどうかとかいろいろ議論する中で,この七,八年,私どもの施策としてやってきた博士採用では,ジョブ型というよりは,むしろ自分の非専門領域のところにもチャレンジしたい人に来てください,という形で採用を進めていたところです。とは言っても,自分の専門領域で勝負したいという博士社員もいるのも事実ですが,自分のところですと,新規事業をつくっていく必要があったりとか,既存事業の中でも新たな一歩を踏み出さなきゃいけないことがあるものですから,ジョブ型ですと1点突破主義みたいな感じになってしまって,むしろ知的好奇心とか考察能力とか,そういったものを期待すると,ジョブ型と逆行するような形になってしまいます。富士通さんの場合,例えばジョブ型で採用した社員さんが,何かの影響があって事業を変えなければならないときに会社を辞めてしまうとか,もちろんいろんなジョブがあるのででしょが,その中から自分の専門性に合致するものだけを選択してしまうというような,そういう弊害はないのでしょうか。
【和田部会長】 ありがとうございます。平松委員,お願いいたします。
【平松委員】 ジョブ型で採用されても,そのジョブだけで定年までずっとというわけではもちろんなく,会社の中の様々なジョブ,もしくは将来生まれるジョブに対して,自分が責任を持ってキャリアをつくっていくという意識を全員に持たせます。その中で自分で学び,もしくは新しい仕事にチャレンジするということをどんどんしないと処遇も仕事の魅力も変わらないという世界感の中では,昔のメンバーシップ型の制度の中で一つの組織に入って抱え込まれているよりは,より幅広く人材の活用ができるようになってきていると思います。
【北委員】 私どもの会社でも情報系の社員は,結構ジョブ型を好むのですが、自然科学系,一般サイエンス系の社員は割といろなことをやりたいという志向が強いように思うのですが,富士通さんもいろんな事業をやられているとは思うのでが,結構のところ情報系に偏ってジョブ型が進行していると,そういう側面はございませんか。
【平松委員】 それはあまりないです。事業のポートフォリオがかなり変わってきているので,今の事業や技術がずっとある保証はないという意識をみんなが持っている。先ほど申し上げた8,000人がポスティングに手を挙げているというのは,どこかに偏っているわけではなく,割と幅広くあり、全体で変わってきています。
【北委員】 分かりました。どうもありがとうございました。
【和田部会長】 ありがとうございます。
それでは,質問はここまでとさせていただきたいと思います。本日は3つのすばらしい取組を御発表いただきました3人の皆様方に感謝申し上げたいと思います。本当にありがとうございます。また,大変多くの御意見が出ました。深堀りができて理解も深まったと思います。また,課題も見えてきたんだろうと逆に思っております。本当にありがとうございます。
本日の議題は以上にさせていただきます。
最後,事務局から御連絡いただければと思います。よろしくお願いします。
【永見大学院振興専門官】 失礼いたします。本日も活発な御議論いただきまして,誠にありがとうございました。
本日の議事の内容を含めまして,何かお気づきの点等ございましたらば,後ほどで結構でございますので,事務局まで御連絡をいただければと思います。
次の開催日程等につきましては現在調整中でございますので,改めて御連絡をさせていただきます。
また,本日の会議の議事録につきましては,事務局にて案を作成をいたしまして,委員の皆様にお諮りをさせていただいた上で,文部科学省のホームページにて公表したいと思ってございます。
以上でございます。
【和田部会長】 ありがとうございます。本当に活発な御議論ありがとうございました。
次回の会議では,分野別の大学院の現状について議論を深めていきたいと思っております。
本日は大変御多用の中,御出席いただきまして誠にありがとうございました。これで会議を終わりたいと思います。ありがとうございます。
── 了 ──
大学院係
電話番号:03-5253-4111(内線3312)