大学院部会(第118回) 議事録

1.日時

令和7年6月17日(火曜日)13時00分~15時00分

2.場所

WEB会議

3.議題

  1. 部会長の選任等について(非公開)
  2. 大学院部会の運営について(非公開)
  3. 第12期までの大学院部会での審議状況等について
  4. 第13期大学院部会の審議の方向性について
  5. その他

4.出席者

委員

(部会長)和田隆志部会長
(副部会長) 両角亜希子副部会長
(臨時委員) 飯田順子、伊藤毅大薗恵美、加藤映子、北弘志、佐久間淳一、杉村美紀、高橋真木子、塚本恵、永井由佳里、西村訓弘、平松浩樹、横山広美、吉原拓也の各委員

文部科学省

(事務局)伊藤高等教育局長、森友審議官、石橋大学振興課長、髙見人材政策推進室長他
 

5.議事録

【永見大学院振興専門官】  アンカーアンカーそれでは,所定の時刻となりましたので,第118回の大学院部会を開催いたします。本日は御多忙の中,御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 本日,第13期の中央教育審議会の大学分科会におきまして,初めての大学院部会となります。大学分科会の構成につきましては,お手元の資料1-1,「第13期大学分科会における部会等の設置について」を御覧いただければと思います。本日,部会長をお選びいただきますまでの間,私,大学振興課の永見が議事を進行させていただきます。よろしくお願いいたします。
 会議冒頭は非公開としてございますけれども,後ほど会議の公開につきましてお決めいただきましたら,議事をYouTube配信にて公開いたします。
 それでは,まず,議事に入ります前に連絡事項を御連絡いたします。本会議は,Zoomによりますウェブ会議として開催いたします。ウェブ会議を円滑に行う観点から,御発言の際は挙手ボタンを押していただきまして,司会から指名されましたら,お名前をおっしゃってから御発言いただきますよう,お願いいたします。また,発言時以外はマイクをミュートにしていただきますよう,お願いいたします。
 本日の会議資料についてでございます。本日の会議資料は,議事次第に記載のとおり資料1-1から資料6-4,それから参考資料といたしまして参考資料1-1から2-2を御用意してございます。事前にメールにてお送りしてございますけれども,不足等ございましたらば,事務局までお知らせいただければと思います。
 それでは,まず,本部会の委員の御紹介をさせていただきます。本部会の委員につきましては,恐縮でございますけれども資料1-2,第13期中央教育審議会大学分科会大学院部会委員名簿を御覧いただければと思います。
 なお本日,大竹委員,小野委員は御欠席でございます。それから,横山委員は途中参加の予定と伺ってございます。
 また,高等教育局の組織変更に伴いまして,大学院部会の事務局担当が高等教育局高等教育企画課高等教育政策室から大学振興課に変更になりましたので,御報告を申し上げます。
 それでは早速,議題の「(1)部会長の選任等について」に入らせていただきます。部会長の選任につきましては,中央教育審議会令第6条第3項に基づきまして,部会に属する委員の互選により選任いただくこととなってございます。
 本部会の部会長につきまして,どなたか御推薦をいただけませんでしょうか。
 佐久間委員,お願いいたします。

【佐久間委員】  名古屋大学の佐久間です。
 大変僭越ではございますが,私からは和田委員を推薦したく存じます。和田委員におかれましては,金沢大学の学長として新たな大学院の設置や博士研究人材支援等,大学院改革にこれまで取り組まれてきたと伺っておりますし,また本部会の12期も委員を務めていらっしゃいましたので,この部会の議論の流れをもう御承知ということで,今後本部会で大学院教育の在り方について議論を行うに当たり,和田委員が部会長に適任かと思います。いかがでしょうか。どうぞよろしくお願いいたします。

【永見大学院振興専門官】  佐久間委員,ありがとうございます。
 ただいま,佐久間委員から和田委員が部会長に適任であるとの御意見をいただきましたけれども,委員の先生方,いかがでございましょうか。
(「異議なし」の声あり)

【永見大学院振興専門官】  ありがとうございます。それでは,和田委員に部会長をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 これからの議事進行につきましては,和田部会長,よろしくお願いいたします。

【和田部会長】  ありがとうございます。金沢大学の和田でございます。皆様の御推挙によりまして,部会長を拝命いたしました。挨拶は改めて後ほどお話しさせていただきたいと思います。
 それでは,私のほうで議事を進行してまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
 初めに,まずは副部会長の選任を行いたいと存じます。副部会長の選任につきましては,部会長が指名することとされております。私としましては,東京大学大学院教育学研究科の教授として大学院教育についても長らく専門として御研究をされ,大学院の重要性についても御知見をお持ちでいらっしゃる両角委員にぜひ副部会長をお願いしたいと存じます。よろしくお願いいたします。よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
 ありがとうございます。両角先生,どうぞよろしくお願いいたします。

【両角副部会長】  よろしくお願いします。

【和田部会長】  ありがとうございます。
 それでは,議事を進めたいと思います。議題の(2)です。初めに,本部会の運営規則について,決定する必要がございます。
 事務局から規則の案について御説明をいただきます。よろしくお願いします。

【永見大学院振興専門官】  失礼いたします。
 お手元の資料2でございます。中央教育審議会大学分科会大学院部会運営規則(案)でございます。こちらにつきましては,中央教育審議会総会の運営規則ですとか会議の公開に関する規則,あるいは大学分科会の運営規則に準じた内容となってございます。
 内容といたしまして,かいつまんで御説明させていただきますと,第3条のところでございます。会議の公開についてということで,会議は原則として公開して行うということ。それから第2項で,公開することにより公平かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがあると認める場合は非公開とするということ。
 それから,次のページでございます。中ほど少し下の第5条,第6条でございます。会議資料については公開するということ。それから,議事録につきましても,会議の終了後作成し,公開するということを定めるものでございます。
 簡単でございますけれども以上でございます。御審議のほど,よろしくお願いいたします。

【和田部会長】  ありがとうございます。
 それでは,大学院部会運営規則につきまして,案のとおり決定してもよろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)

【和田部会長】  ありがとうございます。それでは,御了承いただきました規則の第3条に基づきまして,ただいまから会議を公開したいと思います。
 事務局,お願いいたします。

【永見大学院振興専門官】  それでは,ただいまからYouTubeのチャンネルにてライブ配信を開始させていただきます。

【和田部会長】  始めてよろしいでしょうか。

【永見大学院振興専門官】  お願いいたします。

【和田部会長】  ありがとうございます。
 それでは,第13期の大学院部会を開催いたします。
 開催に際しまして,一言御挨拶を申し上げます。
 私,部会長を拝命いたしました和田でございます。12期より大学院部会ではお世話になっております。2月の「知の総和」答申におきまして,高等教育が目指す姿として「知の総和」の向上が挙げられております。そのための方向性や方策として質の向上,規模の適正化,アクセス確保などが挙がってございます。大学院の入学を考える際には,高大院接続や多様な進学者の受入れ,またそれに伴う入試の在り方,初等中等教育からの接続の在り方も重要だと感じております。大学院の質向上,そしてそのための環境構築,国際性,学士・修士一貫教育制度の在り方など,重要な課題も多くございます。社会での活躍に向けて社会との接続の在り方,こちらも大きな課題だと思います。大学院部会12期の審議内容を踏まえまして,第13期でさらに議論を深めたいと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 また,第13期の初回ということでございます。文部科学省より御挨拶をいただきたいと思います。
 伊藤高等教育局長,お願いいたします。

【伊藤高等教育局長】  文部科学省高等教育局長の伊藤でございます。第13期の大学院部会の開催に当たりまして,文部科学省を代表し,一言御挨拶をさせていただきます。
 皆様におかれましては,第13期大学院部会委員をお引き受けいただき,また,本日は大変御多忙の中,御出席いただきましたことを感謝申し上げます。
 この大学院部会は,大学院の制度と教育研究の在り方について専門的な調査審議を行うことを主な所掌とし,第12期においては,人文科学・社会科学系の大学院の在り方について御議論いただくとともに,本年2月にまとめられました「知の総和」答申に向けた御意見を頂戴したところでございます。
 この「知の総和答申」では,大学院教育の改革について,質の高い大学院教育の推進と,幅広いキャリアパスの開拓促進等が盛り込まれておりますが,特に博士人材の社会の様々な分野での活躍に向けては,令和6年3月に文部科学省において「博士人材活躍プラン」を取りまとめて以降,産業界側でも様々な動きがあり,社会全体として大きな流れが生まれつつあるところでございます。
 また,この大学院部会での御議論を踏まえ,後ほど事業を説明させていただきますが,今年度の新たな事業といたしまして未来を先導する世界トップレベル大学院教育拠点創出事業という事業も開始したところでございます。
 こうしたこれまでの流れも踏まえながら,第13期大学院部会におかれましては,大学院と社会との接続や,社会との接続を見据え,国際性など学生に必要な能力を身につけさせるための大学院組織の基盤強化の在り方等について,皆様方からの御知見を踏まえた活発な御審議に御期待を申し上げる次第でございます。
 簡単でございますが私からの挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいたします。

【和田部会長】  伊藤局長,どうもありがとうございます。よろしくお願いいたします。
 それでは,議題の「(3)第12期までの大学院部会での審議状況等について」に入りたいと思います。
 まずは,事務局から御説明いただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。

【石橋大学振興課長】  ありがとうございます。大学振興課長の石橋でございます。今年度から大学振興課が事務局となりましたので,委員の先生方,どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは,資料3と4と5と続けて御説明させていただきます。
 まず,資料3でございますけれども,第12期の大学院部会における審議実績ということで,今,局長の挨拶でも触れさせていただいいただきましたとおり,まず,(1)のとおり人文科学・社会科学系の大学院の在り方について,令和5年12月におまとめいただきました。
 それから,(2)大学院における学位授与の状況に関する情報公表の促進につきまして、特に標準修業年限以内に修了した者の占める割合をきちんと公表するということが義務づけられたところでございます。
 それから,(3)は大学分科会への意見提出でございまして,これがまさに2月にまとまりました「知の総和」答申について,大学院部会から御意見をいただいたというところでございます。
 資料をめくっていただきまして,まさに「知の総和」答申の関連部分でございますけれども,この後の御審議にも資するよう,四角の中を中心に御説明させていただきたいと思います。
 めくっていただいて3ページ目でございます。具体的な方策でございますが,ここは教育研究の質のさらなる高度化についてでございます。まず,1つ目に,体系的な大学院教育課程の編成の推進のためには,博士課程において,専門的な知識・研究能力のみならず,論理的思考力等の汎用的能力を身につけることの重要性を明確にするため,大学院設置基準の改正も見据えた検討が必要ではないかということです。
 それから,2つ目は,修士・博士課程の5年一貫学位プログラムの構築についてです。
 その最後の3つ目ですけれども,徹底した国際化と産学連携の促進ということで,これに関しましては,後ほど資料4で,予算事業を始めましたので御説明させていただきます。
 それから,次の丸のところですが,学士課程から博士課程までの連続性の向上と流動性の促進ということで,最初のポツはダイバーシティの醸成,内部進学抑制により,さらに大学院の機能強化をしていくということでございます。2つ目が,学士・修士の5年一貫プログラムをどう考えていくかというところでございます。最後が,学生の海外研究活動や留学機会の充実を図るという点でございます。
 次が,イのキャリアパスの多様化についてでございます。4ページ目の博士人材が多様なフィールドで一層活躍するための環境構築については,この後御説明しますガイドブックやロールモデル集が現在整ったところでございます。また,ジョブ型研究インターンシップや,キャリア開発・育成コンテンツの提供等を進める取組を推進すること,スーパーサイエンスハイスクールでの博士人材の積極的採用や博士教諭としての活躍促進,公的機関での活躍,それからポストドクターや若手研究者の処遇向上やキャリアパス支援のため,ポータルサイトによるキャリア支援情報を提供するということについても触れられております。 それから,多様な進学者の受入れ促進につきましては,初等中等教育段階からも重要であるということ,学士課程の学生が大学院や大学院生を知る機会の拡大を図るということ,リカレント・リスキリングのこと,そして,日本学術振興会特別研究員に対する支援の拡充を図るというところでございます。
また,社会人に関しては,1年で修士や博士の学位取得を可能とする制度を積極的に導入を推進することを書かせていただいております。
 また,その下,リカレントの推進のところでございますけれども,教育訓練給付制度や人材開発支援助成金等の支援策の情報発信を図るということが答申の中でも盛り込まれております。
 続きまして,資料4を見ていただきますと,先ほど局長も挨拶で触れました未来を先導する世界トップレベル大学院教育拠点創出事業というものを今年度始めたところでございます。
 具体的には,大学院改革ビジョンという資料の下の赤いところを見ていただければと思います。徹底した国際拠点形成,徹底した産学連携教育,そして組織改革・推進体制等の基盤構築を挙げており,事業実施期間は7年間を想定しております。総合型という研究科等を超えて変革を目指す総合大学における全学的な取組を対象とするものが4か所掛ける3.7億円,それから特色型という一定程度の規模の博士課程を備える大学で強みや特色の伸長を目指す全学的な取組を対象とするものが2か所掛ける1.7億円で御準備をさせていただいているところでございます。
 裏面を見ていただきますと,既に申請していただいておりまして,申請一覧のとおり国・公・私,合わせて28大学に御申請いただいたところでございまして,ただいま審査に入っております。
 続きまして,資料5について,髙見室長から御説明をお願いしたいと思います。
 お願いいたします。

【髙見人材政策推進室長】  ありがとうございます。人材政策推進室の髙見です。私から,資料5につきまして御説明を申し上げます。
 こちらは,先ほどの伊藤局長の御紹介にもございましたが,文部科学省は,博士人材の活躍促進に向けた取組に非常に力を入れてきております。経済産業省と共同いたしまして,令和6年8月に博士人材の民間企業における活躍促進に向けた検討会を立ち上げまして,博士人材の民間企業への就職を進めるための大学による支援や企業が採用のために工夫できる事項につきまして検討を進めてまいりました。
 本年3月には,検討の成果といたしまして,2ポツにございます「博士人材の民間企業における活躍促進に向けたガイドブック」,それから「企業で活躍する博士人材ロールモデル事例集」,そして「博士人材ファクトブック」の3点セットを公表いたしました。
 ガイドブックにおきましては,企業への手引といたしまして,経営方針と人材戦略の連動,博士のインターンシップ,採用活動の在り方,そして入社時の処遇等の環境整備などにつきまして具体的な取組事例を紹介し,幅広い企業における取組を奨励しています。
 大学への手引といたしましては,キャリアセンター等の組織的な支援体制の整備,育成する人材像の明確化,教育課程の編成,そして企業との交流機会・出会いの場の提供などにつきまして,こちらも事例を紹介し,各大学の取組を奨励しているところでございます。
 そして最後に学生へのメッセージということで,修了後の進路はアカデミアに限られない,長期的なキャリア観が重要だということをこのガイドブックの中で伝えています。
 次に,ロールモデル事例集でございますけれども,企業における多様な博士人材の活躍事例を20社,25名分御紹介しています。
 具体的には,4ページよりお名前と企業名,事例を御紹介していますので御覧いただければと思いますが,博士人材の活躍を5分類で示しておりまして,丸1の専門的知見を生かして新規事業開発等を行っている例以外に,丸2の課題発見・解決能力などの汎用的な能力を生かして研究開発以外の業務で活躍されている例ですとか,丸5にございます人社系の博士の活躍例などを整理しているところでございます。博士の企業における活躍の仕方が多様であるということを,特に学生に対して伝えることを目的に作成した資料になります。
 そしてファクトブックでございますけれども,こちらは博士課程学生の就職の一助となるデータを紹介しているものでございまして,博士人材の就職先ですとか配属先,パフォーマンスへの満足度,初任給や企業別採用数といった情報についてまとめております。
 今回取りまとめた3点セットの資料でございますが,博士人材の採用に関心のある企業の皆様,博士学生の就職を支援いただく大学の皆様,博士学生はもちろん,修士や学部の学生,そして高校生にも御覧いただきたいと考えておりますので,広く経済団体を通じた企業への周知,それから大学等への周知を図っているところです。本資料が,博士人材の採用・就職支援に迷いのある企業や大学の参考となり,また将来のキャリアパスに不安を抱く全ての学生の羅針盤になればと思っておりますので,これからも取組をしっかりと進めてまいりたいと考えております。
 御説明は以上です。

【和田部会長】  御説明ありがとうございます。
 意見交換の時間を別途設けております。ただいまの御説明につきまして御意見,御質問等ございましたら,その際にいただければと思っております。
 続きまして,議題の(4)「第13期の大学院部会の審議の方向性について」に入りたいと思います。
 事務局から御説明いただけますでしょうか。

【石橋大学振興課長】  ありがとうございます。
 では,資料6-1から6-4について御説明させていただきます。資料6-1が,この後,委員の先生方から御意見をいただく際に審議事項(案)になります。それから,資料6-2が大学院制度の変遷を明治19年から整理したものでございまして,後でかいつまんで御説明させていただきます。それを社会人,博士,修士,学士に分けたときに,どういう取組をしてきたかを図示したものが資料6-3になっておりまして,資料6-4は,先ほども新しい事業を御説明させていただきましたけれども,これまでの大学院に関する予算事業を整理させていただいたものになります。
 まず,資料6-2から御説明させていただこうと思います。資料6-2が大学院制度の主な歴史的な経緯を整理したものでございます。明治19年の帝国大学令にて大学院の目的が定められ,昭和22年に学校教育法が制定され,ここに大学院の概念が整理されました。その後,昭和49年に大学院設置基準が制定され大学院制度の大きな枠組みが決まってまいりました。
 そこから昭和63年に大学院制度の弾力化ということで,社会人の大学院への受け入れ,等の大幅な制度の柔軟化が図られてきました。
 平成3年には「学位制度の見直し及び大学院の評価について」の答申がございまして,大学院の整備充実,大学院の量的整備が進んできました。
 次のページでございますが,平成11年に学校教育法の一部改正,大学院設置基準の一部改正がございまして,社会人学生の年限が短縮され,専門大学院の制度ができました。
 そこから平成14年には学校教育法の一部改正が行われまして,大学院の目的規定が改正され,この辺りから21世紀COEプログラムなどの大学院プログラムが開始されてきました。
 それから,専門職大学院の設置基準の制定が平成15年に行われまして,平成17年には我が国の高等教育の将来像という大きな答申がまとめられ,大学院についても同じように答申がまとめられております。ここでグローバルCOEプログラムや大学院教育改革支援プログラムなどが始まってまいります。この辺りで大学院教育振興施策要綱というのもできたという流れでございます。
 平成23年に今度は第2次大学院教育振興施策要綱が制定され,博士課程リーディングプログラムが開始されました。また,平成24年には博士論文研究基礎力審査の導入なども行われました
 平成28年には第3次⼤学院教育振興施策要綱が制定され,卓越大学院プログラムが開始されていき,平成30年にグランドデザイン答申が出て,大学院教育に関しても大きな審議まとめが出ました。
 令和に入りましても,学部・研究科等の組織の枠を超えた学位プログラムの制度化,履修証明プログラムへの単位授与,それから「三つの方針」の策定・公表の義務化などが進んでおります。
 令和5年以降は先ほど申し上げました第12期での動きになってきます。
 このような歴史的な状況も踏まえまして,今回どういう御議論をいただくかということが資料6-1になります。大きく4点挙げておりますが,今日は当然これ以外にも委員の先生方から御意見を頂戴いたしまして,さらに論点も足しながら審議を深めていただく,一つの道しるべを作れればと思っております。
 まず,1つ目の丸「社会の多様な場での活躍,社会との接続の在り方」についてでございますが,就職活動の在り方については,特に大学院の場合,学部とは少し違うところがございますので,どういう形が大学院教育の充実のために本当に必要かを御議論いただければありがたいと考えております。
 また,社会人の大学院進学につきましては,入試などもどう考えるかという点も入ってまいります。あと実践的な博士課程教育の実施,修了者の進路の確保,企業と大学の人材流動等につきましては、先ほど髙見室長から御説明させていただきましたガイドブック等も使いながら,さらにどのように進めていくかの議論が深まればありがたいと思っております。
 2つ目が「大学院教育の質向上・評価の在り方」ということでございまして,特に汎用的な能力を身に着けるということを特に博士課程の中でどう考えるかという点が,第12期から引き続き検討を深められればと思っております。
 それから,3つ目が「大学院組織の基盤強化の在り方」ということで,特に国際化というところをどう考えるかについて入れさせていただいております。
 それから,最後が「学士・修士5年一貫教育制度の在り方」ということで,中央教育審議会の中にはもう一つ,質向上・質保証システム部会というところがございまして,ここでも学士・修士5年一貫教育の議論がスタートしております。これは学部側から見ていくというところになるのですが,大学院部会では,ぜひ大学院側から見てどう考えるべきかという御意見を賜れればと思います。これ以外にも,先ほどの答申の中では修士・博士の5年というお話もありますので,併せて議論をいただければとと思っております。
 あと,質向上・質保証システム部会の議論の中では,新しい認証評価の話も出ております。この辺りの研究科の評価をどう考えていくのかに関しましては,2つの部会をブリッジしながら今後,議論を進めていければと考えております。
 簡単でございますが説明は以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【和田部会長】  石橋課長,どうもありがとうございます。審議事項(案)を一つ大きな柱としてお示しいただいております。また,これに至る過程として,資料6-2の大学院制度等の変遷が示されております。これは大変な資料でして,作成に本当に時間がかかったのではないかと思っております。また,資料6-3,資料6-4もぜひ御覧いただいて,議論の参考にしていただければと思います。これも大変よくまとまった資料で,頭の整理,流れがよく分かるのではないかと思います。
 それでは,ただいまの御説明を踏まえまして,先ほどの12期の話題を含めて議論に進みたいと思っております。各委員の皆様から一言ずつ御意見をいただきます。時間の関係で,大変恐れ入りますけども,御発言はお一人3分くらいを目安にお願いできればと思っております。また,本日は会議の第1回目ということもあり,会議の後半で自由討論の時間も設けております。そちらで少しお話を追加されたい方は御発言いただければと思います。よろしくお願いいたします。
 部会長,副部会長は最後に発言するということになっております。
 それでは,こういう場合はどうしても名簿順になってしまい,大変恐縮なんですけども,名簿順でいきたいと思います。
 初めに飯田委員,よろしくお願いいたします。

【飯田委員】  ありがとうございます。島津製作所の飯田と申します。第12期までの議論のまとめと第13期の審議の方向性について,大変分かりやすく御説明いただき,ありがとうございました。
 まず,自己紹介ですけれど,私は,会社では分析計測機器の開発にずっと携わってまいりました。開発に関連しまして,国内外の研究機関との共同研究,共同開発にも多数取り組んでまいりました。
 自分が就職後に学位を取りましたこと,また休職しての米国留学など,その後のキャリアにとても生きた経験の下にREACHプロジェクト,このREACHといいますのは,Recurrent & Re-skillingのRE,through Academia and IndustryのA,CollaborationのC,for Higher EducationのHを取っておりまして,このREACHプロジェクトは産学共創と高度人材育成の取組を,私が特任教授を務めております大阪大学と2021年度にスタートし,現在,ほかの大学への展開にも取り組んでおります。2023年度から科学技術・学術政策審議会の臨時委員として,日本の研究力の向上に企業としてどう貢献できるか取り組ませていただく中で、常に人材が重要なテーマとして出てまいります。自身としましても,博士人材の育成と活躍支援に大きな関心を持っておりまして,このたび大学院部会の臨時委員という機会をいただき,大変ありがたく思っております。微力ですが少しでも貢献できますよう努めたく,何卒よろしくお願いいたします。
 2点,簡単にコメントさせていただければと思います。1点目は国際化に関連してです。日本の研究力向上のためにも,大学・大学院の国際化は極めて重要であると考えております。資料3の3ページ,囲みの内の2点目に「学生の海外研究活動や留学機会の充実を図るとともに,大学院教育研究の国際化や優秀な留学生の受入れを促進する」と書いていただいておりますが,この大学・大学院ごとの国際化の指標として留学生の数でありますとか海外留学者数が頭に浮かびましたが,適切な国際化に関する指標,個別に統計的な情報としてどんなものがあるのか,数や推移などについて,またお示しいただければと思います。
 2点目は,同じく資料3の3ページの一番下にございます「幅広いキャリアパスの開拓の推進」,また第13期審議事項(案)に書いていただいています「社会の多様な場での活躍」にも関連するかと思いますが,理系の博士取得者がアカデミアで研究ではなくてエンジニアリングを選びたい場合に,現在は技術職員というポジションに実質なるということで,処遇面ですとかキャリアパスというのが課題であるということが,研究開発基盤部会という科学技術・学術政策審議会関連の委員会で出ております。アカデミアでエンジニアリングを選択する博士取得者の処遇改善ということに研究環境担当のほうで取り組んでいただいているというように伺っておりますけれども,大学院部会としてもぜひ連携をお願いしたいと希望しております。アカデミアのエンジニアリング選択者が企業と産業界と行き来するということも大いに期待できると思います。また,アカデミアで、研究とエンジニアリングで行き来するような流動性も実現できていくことが望ましいと考えております。この辺りに関しまして,今後部会にてディスカッションさせていただければと思います。
 以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

【和田部会長】  ありがとうございます。重要な2つの点についてのコメントをいただきまして,ありがとうございます。
 それでは,伊藤委員,お願いしたいと思います。

【伊藤委員】  まず,自己紹介を申し上げます。Beyond Next Ventures代表の伊藤と申します。弊社は私が11年前に創業したベンチャーキャピタルでございまして,現在,日本およびインドで投資活動を手がけております。特に日本において,大学の研究室の研究成果を社会実装することを目指す,スタートアップに特化して投資をするベンチャーキャピタルとして活動しております。これまで投資家の方々から約480億円をお預かりしており,投資を行っております。
 このたび,臨時委員にお声がけをいただき、大変光栄に存じます。私は,ベンチャーキャピタルの事業を通じて日本のアカデミアを強化し,成功した事業からの法人税還元や大学へのライセンスフィーとしての収益還元を促進することで、大学・産業界・行政の好循環を構築したいとの思いで日々取り組んでおります。このような思いが弊社を創業した背景にもあったのですが,この10年間を振り返ると,我々だけの活動では改善が難しい現状を痛感し,直接的な支援も必要だと思い,最近では活動の幅を広げております。
 今,日本では博士を目指す若者が,国際的に比較しても残念ながら大変低い水準に留まっており,これは由々しき事態だと思っております。我々の本業である投資活動を考えると数十年先の未来の投資機会が減っていっていくような状況で,非常に強烈な危機感を抱いております。そのような思いもあり昨年,本日の会議でも御説明のあったガイドライン作成の委員会の場にも御招待いただいております。弊社は新卒採用について博士号取得者に特化する取組を進めています。先ほど議題にもあがっておりました研究者としての専門知識だけではなく,いわゆる汎用的なトランスファラブルスキルも有する優秀な博士号取得者の学生を新卒採用でこれまで3名採用しており,さらにもう1名にも内定を出している状況でございます。教育の現場でトランスファラブルスキルを伸ばしていくようなカリキュラムをしっかり実装していただくことで,より民間の企業で活躍する博士が増えるのではないかと考えている次第です。
 私の個人的な意見で恐縮ですが,先ほどの博士を増やす話を考えた際,学生の皆さまからは,博士というのはある種の肩書のようなものであったり,資格みたいなものだと捉ええる傾向があると思うのですが,本質的にはそうじゃないなと私は感じています。海外でビジネスの場にいると,海外の様々な企業の責任者やマネジャー等のリーダー格の方は,皆さんPh.D.ホルダーです。この事実を踏まえると日本がそのような状況にならないと,本当に国際社会との大きなギャップになると感じております。博士を目指すこととは将来の社会のリーダーになっていくことであり,博士を教育するということは日本の将来の幹部,リーダーを育成していくんだと,こういったコンセプトをまず博士という言葉の中にしっかり入れ込んでカリキュラムを作っていくべきではないかと感じております。
 そのトランスファラブルスキルをどう博士課程の段階で身につけさせていくかという点について,大事なのはリーダーシップ,マネジメント,それからコミュニケーションの3点だと考えており,研究以外の場でしっかり教育いただきたいと感じております。これはアカデミアに残っても,研究室を持つとなった瞬間に小さなチームのリーダーを担わないといけない,リーダーシップを発揮しないといけない,それからラボの採用や資金調達などある種のマネジメント力もアカデミアに残ったとしてもする必要があると思います。
また最近はやりのディープテック・スタートアップ企業を例に挙げた場合,起業家になるためには当然この3つの要素が必要です。よってどちらの道に進むにしてもこのようなカリキュラムが当然必要になると推察します。これまではリーダーシップとかマネジメント,コミュニケーションについて,ビジネススクール等,外部で学ぶ印象があると思うのですが,博士は日本を将来背負うリーダーとして育てる必要があると捉え,カリキュラムとして必ず学習する必要があるという形にしていただくとよいのではないかなと考えている次第です。
 最後に,社会との接点持ち方についてです。先ほど弊社の新卒で入社をした博士号取得者たちは,何とか時間を捻出してインターンシップに参加をしていました。本人に弊社の業務はどういうものかを知ってもらう,ないしは,弊社のメンバー達は博士号取得者がトランスファラブルスキルを持って,専門知識だけじゃなくて将来活躍する幹部候補として活躍してくれそうかを双方が見極める場として有効な手段だったと感じています。このような取組が各企業様でより推進いただく環境が望ましいと思っております。このような論点についてぜひディスカッションさせていただけたらと思っています。よろしくお願いいたします。

【和田部会長】  ありがとうございます。ベンチャーキャピタルあるいはキャピタリストの視点からリーダーシップ,あるいはマネジメント,コミュニケーションといった点でお話をいただきました。ありがとうございます。
 それでは,大薗委員,よろしくお願いいたします。

【大薗委員】  ありがとうございます。一橋大学,大薗でございます。
 私も簡単に自己紹介させていただきますと,私が専攻長を務めておりますユニット,国際企業戦略専攻は,一橋大学ビジネススクールの中でも専門職大学院でございます。小さな独立したユニットになっていまして,完全英語で留学生比率が高い非常にインターナショナルな大学院で,MBAは社会人経験者のみ,博士課程,DBAも社会人経験者を受け入れております。そういう意味では博士課程の履修者も非常に多様でして,実務家教員として既に大学で教鞭を執られている方が博士を取られて自らも論文を書ける状態まで持っていく,あるいは企業に戻るんだけれども,自分なりに問題設定して,リサーチして発信していきたいと,そういう考えを持っている多様なメンバーがそこでは学んでいます。そういう意味で今回,13期の課題意識に挙げていただきました国際化であるとか社会人の大学院での学びであるとか,そういったところではある種先鋭化されたというか,そこに特化した一つのプロトタイプみたいなことを我々のところでやっていると捉えていただければと思います。
 我々の兄弟にあたる経営管理研究科経営管理専攻ほうは,日本語で日中やったり,夜間やったりしながら様々な学び方を提供しています。学部から上がってくる修士もありますし,社会人向けのパートタイムの修士あるいは博士もございますので,そちらはそちらで様々なものをマネジメントする,また違う種類のチャレンジに直面していると理解しておりますが,私のほうは比較的単純な世界で,振り切るとこういう難しさがありますという点を今日,皆さんとお話しできればと思います。
 例えば標準修了年限での修了率が公表されるようになりました。しかしながら,社会人がパートタイムで博士課程をやっていますと,3年で終わるのは例外です。なぜ博士課程の標準修了年限が3年かといえば,もう皆さん御承知のように修士課程が博士前期課程であって,博士課程が博士後期課程であると,だから3年なんですが,違う分野で修士を終えられた方々が博士後期課程に入ってきて3年で終わるというのはまずもって無理です。今回データを頂きましたけれども,アメリカでも平均5年を超えている。アメリカの博士というのは学士が終わってすぐ始められるわけです。そういう意味で,どうやってこの標準年限というのをとらまえていくか。公表されるようになることで,そこへの圧力が当然かかってまいります。我々は目指したい教育の到達したい水準を曲げてまで標準年限で学生を修了させたいとは思っていませんので,そこのところの折り合いが大変難しくなってくると思います。
 一方で,学部のほうは学部・修士一貫5年という話が出てきています。,では,この接続はどう考えるのか。そうしますとやはりプログラム単位ではなくて,単位ごとに積み上げていける,違う大学であってもそこで取った単位はトランスファーできる,そういったような柔軟な読替えができるようになっていかないと,不自由なのではないかなというように感じております。
 もう一つの問題意識というのは,英語で全部やってしまうと国際化って一気に進みますし,秋入学にするともっと楽なんですが,一回社会人になった方にGMATなどの標準的なテストをするのは,ビジネススクールによっては避けているところもありまして,それが必ずしも彼らの実力を測るところにならないということで,そこは難しいチャレンジだ思います。
 さらにもう一つ。留学生については学費値上げの上限が撤廃されたわけですけれども,その論拠について,我々現場としては困っています。よりよい教育を提供したければ,やはりコストがかかるんです。留学生は英語対応で追加コストが必要というのが一つの論拠ですが,我々のように完全英語でやっていると日本人にも英語で教えているわけでして,外国人,留学生だけに高い学費を取るのはロジックが合わない。では,税負担しているかどうかで学費を変えるという立場に立てば,国籍関係なく税金を納めた過去があれば免除していいんじゃないかとなります。より充実した教育をするためには学費値上げは前向きに検討したいし,ユニバーサル・エデュケーション・オポチュニティについては奨学金を用意する形で提供したいと思いますけれども,我々にとっては、留学生が多いにも関わらず、留学生のみを対象とした学費値上げをしにくいという点で大きな課題意識を持っているというところでございます。
 すみません,長くなってしまいました。以上にしておきます。ありがとうございます。

【和田部会長】  ありがとうございました。多様性ある専門職大学院のお立場から,御発言をぜひいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。ありがとうございます。
 それでは,加藤委員,よろしくお願いいたします。

【加藤委員】  大阪女学院大学・短期大学学長の加藤です。私の高等教育のバックグラウンドってアメリカなんです。学部それから修士,それから博士の大学院までアメリカで,アメリカの大学院の在り方というか,これはやっぱり学部教育と,それから大学院の教育って同じようなところで考えないと,アメリカの大学はundergraduateと呼ばれていますよね,学部のほうが。だからアメリカ人を見ていると,graduate schoolに行くのが当然のことだというふうにアカデミアにいる人間は考えていると思います。ですから,そういう風土というのはなかなか日本の学部のほうには培われてないのかなというように感じます。ですから,私は中央教育審議会の大学のほうも入っておりますので,そこと大学院部会がうまく連携できるような関係になればいいなというように感じています。
 自分の経験から申し上げると,やっぱり大学院,博士まで行きたいと思わせる学部教育というのが重要なのではないかなと思います。修士に行ったときも博士に行きたいと思わせる修士課程でしたし,そういう教育課程にならないとなかなか先に進まないのではというふうに思いますし,それから,昔は大学院,博士まで行くと大学の先生になるというような状況だったと思うんですけれども,それは大きく社会が変わってきて,いろいろな経済界であるとか産業界で活躍できる人物が誕生しているということ,それをもっと知らしめていくということも大事なんだろうと思います。
 それからもう一つ,もう一つ何を言おうと思っていたんだろう,ちょっと忘れてしまいました,度忘れしました。また後のところで申し上げます。
 ですから,大学の連携というところ,大学学部とそれから大学院の連携をするということが大事なのではというふうに思っています。
 以上です。

【和田部会長】  ありがとうございます。アメリカでのバックグラウンドから,現在日本の学長としての御発言ということも今後あると思いますので,よろしくお願いいたします。ありがとうございます。
 それでは,北委員,お願いします。

【北委員】  コニカミノルタの北でございます。よろしくお願いします。私,今回が初めてです。皆さんの中についていけるかちょっと心配ではありますけれども,私もこれまでやってきた経験がございますので,そういった経験も踏まえ,あと自分の考え方も皆さんとディスカッションさせていただきたいと思っております。
 私は今,技術顧問という割と閑職におりますが,2年前まで技術フェローという,我々の場合,人事は複線化しておるものですから専門職でも役員になるという制度でありまして,それのいわゆる役員職をやっておりました。その役員職の中で自分が一番最初に取り組んだ施策は,コーポレート部門の採用はいっそのこと全部博士にしてみようということで,全部ではなかったですが,かなりの割合で博士の採用を取り入れておりました。
 もう一つは,私どもはメーカーですのでものづくりもDX化しようということで,ケミカル分野ですとマテリアルズ・インフォマティクスとか,製造分野ですとプロセス・インフォマティクスという機械学習を使った合理的なものづくりというものがあるのですが,なかなかまだ日本では浸透していなくて,それのNEDOプロジェクトが2016年から2022年まで,NEDOのプロジェクトとして産総研を舞台にして、プラス企業18社でやっておりました。最後2年,私は企業の18社の取りまとめといいますか,技術組合の理事長もやっていたのですが,やっぱりすごい効果で,大体研究開発期間が20分の1ぐらいになってしまうんですね。
 ということで,それを国プロではやったのですが,自社の中で実際に実施するときに誰がやるんだというときに,知的好奇心が高くて習得力が高いという人たちの、いわゆるその存在確率が博士課程後期の学生さんに高いということに目をつけまして,それで博士にフォーカスして博士DX職という名前で募集をかけて採っておりました。おかげさまでこの7年間で約40名ほど博士の社員が誕生しておりまして,中には多少退職した者もおりますが大半というかほとんど残って,今,会社の新しいやり方は博士の社員たちが中心になってやってくれているという,そういう状態です。
 そんなことも皆様と共有しながら,博士は専門性をそのまま貫くだけではなくて,専門性はもちろん高くありながら,非専門領域も取り込んでいける,いわゆるトランスファラブルスキルは重要だよねということで,昨年ちょっと御縁がありまして,私がお手伝いしている名古屋大学で大学院教育改革フォーラムが開催されたこともあって,そこで企業側としてお話しさせていただいて,いろいろな方から御意見とかを頂戴したという流れでございます。
 ということで,私も社会人になって大分年を取ってから博士を取ったのですが,取った理由は,アメリカの企業,ドイツの企業と一緒にやる分にはマスターでもいいのですが,リーダーシップを発揮しようとすると「Ph.D.を持っていない人から指示メールを受けたことがない」と言われて,まあ,そうかと,博士,Ph.D.を取ることは,海外で活躍する必要十分条件ではないけれども必要条件ではありそうだなと思って,それもありまして取得して,社内でも希望する者には社会人博士を取るようにと勧めているところです。
 第13期の審議事項の中で一番上のところにあった多様な活躍とか社会との接続の在り方とか,あとは3番目にあった国際化の辺りは私も大変興味がありますので,ぜひ皆様とディスカッションさせていただければと思っております。よろしくお願いいたします。

【和田部会長】  ありがとうございます。企業のお立場,特に博士採用を進めてこられたお立場からの御発言でした。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございます。
 それでは,佐久間委員,お願いいたします。

【佐久間委員】  名古屋大学の佐久間でございます。どうぞよろしくお願いいたします。どういうわけか私,この大学院部会の委員を相当長くやっておりまして平成の時代からやっていますので,非常に古株になってしまったんですが,どうぞよろしくお願いいたします。
 さて,この部会でもこれまでいろいろ議論してまいりましたが,特に12期におきましては,先ほど御紹介があったように人社系に関して審議まとめを出していただきましたし,またそれを受けて人社系ネットワーク大学院構築事業というのも動いております。私,今は副総長をしておりますが,もともとは人文系なので,これは前期の大きな成果だと思います。とはいえ,もちろん,まだ課題も少なくありません。
 先ほど資料6-1がありましたけれども,いずれも重要な論点だと思います。ただその中で,私としましては,かねてこの部会でも申し上げてきたことでもあるんですが,4プラス1ないし3プラス2,学部と博士前期課程の接続については,ぜひこの期に議論を深めていただきたいなと思います。理系については,ほぼ大学院に進学するのがもう当たり前という部分がありますが,人社系のほうはなかなか学部から大学院に進学してくれないということがございます。もちろん日本人が足りないところは留学生を受け入れて充足させている部分もあるわけですけど,それは国際化という点ではいいかもしれないんですが,一方で,どうしても現状,特定の国の出身者に偏っているという面もありますし,いずれにしてもやはりもう少し日本人の学生に進学していただかないと,日本の大学院として成り立たないように思います。
 さらに最近は就活,就職活動が早まっていて,文系の学部の学生は,もう3年生で事実上勉強が終わりみたいな感じに見えなくもなく,それもいかがなものかと思いますので,ぜひ,学部と前期課程の接続を改善し,学びたい学生さんは学びが続けられるような環境を整え,進学者を少しでも増やすということで,ぜひそこら辺の議論はお願いしたく存じます。もちろん,既に動いている法科大学院の法曹コースのような場合は資格取得という目的があるので導入しやすかったという面はあり,資格が絡まないといろいろ難しい点がはあるとは思いますが,そこら辺はいろいろ議論いただければと思います。一方,仮にそれがうまくいって今より多くの学生さんが前期課程に進学するようになっても,前期課程で修了して,もうあとは就職ということになると,博士人材を増やすという話はどうなってしまうのか。今度は前期課程と後期課程の間に壁ができても困りますので,そこら辺はまさに人社系のキャリアパスの開拓ということも併せて考える必要があると思います。ですので,今期は,その両輪について議論を深めていただければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【和田部会長】  ありがとうございます。大変長らく委員をお務めの上に,人社系というお立場もあって,御発言をぜひよろしくお願いいたします。ありがとうございます。
 それでは,杉村委員,お願いします。

【杉村委員】  ありがとうございます。上智大学の杉村美紀と申します。今回から初めて参加させていだきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 簡単に自己紹介いたしますと,私自身は比較教育学,国際教育学を専門にしております。特に国際高等教育のことに関心を持って,これまで勉強してまいりました。本日の議論でも話題に出ていますが,国際化ならびにグローバル化について,高等教育の分野は、初等中等教育と異なり各国が戦略として近年大きな展開がみられ。新たな国際連携や国際協働,あるいは国際共修は,新しい可能性を秘めた特徴的な取り組みであると思います。初等中等教育は各国の国民教育政策の根幹を担う部分ですが,一方、高等教育は各国の枠組みを超えて新たな人材育成を担っており、大変興味深い点であると考えております。
 コロナ禍の中で大きく世界の高等教育の地政学的な変化があることも,今回議論する上で大事な論点であると考えます。今日,報道等でも話題になっておりますが,政治や経済の動きが高等教育の在り方自体に大きな影響を与える中で,我が国としての大学院教育,あるいは学部教育を考えることも求められていると思います。
 そのことに関連して,論点を2つ申し上げたいと思います。1点目は国際化に関わる部分であり,日本の大学院教育の質の向上と博士人材の育成という視点です。これにはポスドクの問題も入ってくるかと思いますが,世界中から優秀な人材がどこでどのような活躍をするか,その際に日本の高等教育,大学院が高等教育のネットワークにどのように参画していくかという課題です。そこでは国際通用性とか,あるいは認証評価をどう受けていくかということが重要であり,日本国内の基準だけではなく,国際的な質保証の枠組みとの相互互換性が今後大事になってくると考えます。質保証のためのクオリフィケーションフレームワークというのが、アジア諸国やグローバルサウスの国も含めてつくられていますけれども,そうした点も論点の一つではないかと思います。
 2点目は評価という観点です。今回の13期の論点の一つに評価というのが挙がっており,先ほども事務局からの御説明で質向上・質保証部会との相互乗り入れの論点が示されました。中央教育審議会の部会,あるいは分科会等々で論点の整理が行われることと思いますが,大学院の教育の質向上をどういう評価枠組みで見ていくかといったところも大事な点かと思います。さらに評価に関連して、13期の審議事項の2つ目には論理的思考力などの汎用的な能力形成というのが挙げられています。OECDや世界各国の枠組みではクリティカルシンキングやクリエイティビティなどいろいろなコンピテンシーが議論されていますが,ユネスコや国際大学協会等で議論されている観点も含めながら今後参加させていただければと思っております。
 以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【和田部会長】  ありがとうございます。国際性,特に地政学というところも考えて御発言いただけると大変ありがたく思います。よろしくお願いいたします。

【杉村委員】  よろしくお願いいたします。

【和田部会長】  ありがとうございます。
 それでは,高橋委員,お願いします。

【高橋委員】  ありがとうございます。金沢工業大学の高橋真木子と申します。2期か3期前からこの部会には参加させていただいております。
 まず,自己紹介なんですけれども,大学ではMBAの社会人の学生さんに産学連携や大学の研究力強化と,それを活用する企業とはどうあるべきか,当然その中にスタートアップも入ってまいります。その辺りを授業で持っておりまして,また同時に,それを支える人材としてのURA(University Research Administrator)の国内定着にも貢献しているところです。
 実は私自身も就職した後にドクターを取ったという経歴です。修士まではモレキュラーバイオロジーでいわゆるウェットな自然科学をやったんですが,ドクターは社会工学で人文社会系という意味で,ある種,今までは二重の変わり種かなと自分のことを言っておりましたが,近頃はこのキャリアも悪くなかったかなと思い始めておりまして,社会の風が少しずつ変わってきたのかなという予兆も感じたりしております。
 石橋課長からの今期の論点の御説明,ありがとうございました。いずれも大変重要な,また連関した問題だと思っております。特に私から,興味があるというか重要だと思う個人的なポイントを2つほど申し上げます。
 一つは,ほかのいろいろな委員もトランスファラブルスキルということで指摘なさっていた点なんですが,例えば12期でも話題になりましたけれども,イギリスのVitae等はドーナツの丸のようなものでその人材の知識を表現しています。そしてドーナツを4分割して,博士人材が持つ専門分野の知識領域というのをその4分の1だと。それ以外の4分の3がいわゆるソフトスキル,個人の能力とか管理能力,エンゲージメントのインパクトというような形で図示されています。とても重要だなと思いますのは,ともすると我々,大学人も多くいるので,専門的な知識だけではなく,ほかのソフトスキルも大事だというような文脈での指摘をすると思います。私自身もそうですが,そのVitaeのドーナツの丸が示すところは,4つの能力がイーブンだということなんだと思っています。その4つの能力のうち,専門も持つけれどほかのソフトスキルも持つ人たちが,決して専門能力を持つ人たちより劣っているということではないというところがとても大切な肝だと思っておりまして,社会の認知がそういうふうに進んでいくことになれば,おのずとキャリアパスも広がっていくのではないかというように思っております。これが1点目です。
 2点目も連関するんですけれども,何といっても企業様に「ドクターの学生さんを採ってください,採ってください」と言うだけでは駄目なんだろうというのは,もう所与の前提かと思っております。そうすると,大学院教育を受けた学生の価値が上がっていかなきゃいけないんだ,それを上げるにはということで,私は一つの肝は就職活動の時期だと思っております。既にどなたかが御指摘でしたけれども,マスターに入りたてとか,自然科学の修士学生を念頭に置けば,M1からM2にかけての最も重要な修士研究をする時期にかなりの部分が就職活動に割かれてしまっていて,特に自然科学系だと研究室の中に培われた知識と施設を使って残り時間で修論を仕上げて,それで出ていくというのでは,本当にM2の2年間に学業と研究に従事したのかと言えるのかというのは,正直自分の経験も含めて思っております。そういう意味で,もう少しすると本当に日本の人口も減ってくる中で,いろいろな意味で就職の時期を見直すという意味での国際標準に入っていく,そのタイミングの議論がそろそろ本当に求められているんじゃないかというふうに思っております。皆様の多様な御知見の中で,また自分の考えも深められればと思っております。どうぞよろしくお願いします。

【和田部会長】  ありがとうございます。トランスファラブルスキルとその在り方,あるいは就職に関しても国際標準という言葉も触れていただきました。引き続きよろしくお願いします。ありがとうございます。
 それでは,塚本委員,お願いいたします。

【塚本委員】  よろしくお願いいたします。一般社団法人デジタルソサエティフォーラムの塚本と申します。私も3期程度から入れていただきまして,当時は外資系企業に勤めておりましたが、35年ぐらいの外資系生活を経まして,これからは日本のために違うことをしたいということで,今はNPOと社外取締役,そして,地方の国立大学の非常勤の理事をやらせていただいております。
 三十余り間の社会人生活を経て世の中が分かったような気がしていましたが,やはりいろいろな組織に行ってみるとガバナンスも違えばスピード感も違い日々驚きながら学んでいるところです。皆様の議論から学ばせていただくとともに,何か少しでも貢献できたらと思っております。よろしくお願いいたします。
 2点考えていることがございます。1つは、今後何か実行していくとすると,皆さんがおっしゃったようにどこかと連携するとか,別の省庁と組んでいくとか,実行に向けて少し工夫が必要になってきた時代になってきているというふうに思っております。
 例えば、advanced degreeに対する世間のパーセプションです。御説明いただいたように大学側も,文部科学省側もさまざまなことをやってきて、,さらに産業界も取り組んでいるのですが,まだ世論として「大学院生はすごいね」というふうにはなっていないと思われます。例えば半導体のNVIDIAには3万6,000人の社員がいますが,そのうち51%がadvanced degreeを持っているということを株主向けの年次報告に記載しています。それを書いているということは,企業側も高度な学位を持っている社員がいるということが企業の強みだというふうに思っておられるし,株主もしくは潜在株主の側も,「学位の高い社員が多いので競争力のある会社に違いない」というふうに考える相場観になっているからであろうと想像されます。時間がかかると思いますが、例えば“人的資本の開示の項目”にを,可能であれば学位に関して任意に表示するなどになれば大分世の中の受け止め方が変わるかなと思っています。
 もう一点が,今回の骨太の方針に“広域リージョン連携”という地方公共団体,企業,大学,研究機関など多様な主体が連携しながら地方創生2.0に取組むというコンセプトが記載されています。ここにさらに留学生の視点も入れて,どこの国からどれぐらいの学生を見込んで,どこでどのように暮らして,どこで就職まで視野に入れると,“地方創生2.0=日本のソフトパワー”となるような気がいたします。より人材育成に貢献する大学院とするために、必要に応じて、大学・大学院のみならずさまざまな関連機関等と連携して、具体的なインパクトのあるアクションにつなげていくためには!というようなことを考えながら,少しでも議論に貢献できたらと思っております。よろしくお願い申し上げます。

【和田部会長】  ありがとうございます。advanced degreeの捉え方,捉えられ方,それから地方創生についても御発言いただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは,次に永井委員,お願いいたします。

【永井委員】  北陸先端大の永井でございます。大学院大学に勤めておりますので,こうした国立の大学院大学ができた経緯というのも,先ほどの大学院をめぐる施策の中の一つだと思っているところです。それは産業界が,いわゆる知識基盤社会というものが訪れることに備えて新たな産業強化政策の中で取り組まれた一つの事業だったと思うんですけれども,北陸先端大や奈良先端大というものがつくられてきて,それで分野を変えて将来に向けて伸びていく人材を集中的に育成しようということの試みをずっとやっているわけです。ですので,従来の割と古くからあるディシプリンではなくて,新しい融合的な分野などを切り拓く人材,それが産業力に直結するでしょうというもので,先駆け的な取組であったと思います。現在もそういうことを行っています。
 そこで,入学希望者を見ていますと,分野が文系,理系をまたぐ方であるとか,あるいは海外からの日本に学びたい,日本の大学院で学びたいという方,そして非常に多くの社会人が関心を持ってくださっている,それは,御自身が就職されたときから社会がいろいろ変わってきていて,常に新しい技術であるとか学術を身につけたいという方が,単なるリカレントではなくて,リーダーシップを発揮しようという立場のときに自分の責任を果たすために大学院に再度入学されるという方たちが出ているということですので,私どもはそうした社会人学生たちのニーズというものを非常に敏感に感じ取っている状態です。異分野とのディスカッションをしたいという態度が強くて,アカデミアの世界に入りたいんだというのではなくて,大学という機能を使って一つのエコシステムのような社会像を持っておられる方たちです。ですから,社会の中で産業やアカデミアというのはいろいろなステークホルダーを巻き込みながら今イノベーションを行っていく,その一員となりたいというようなモチベーションがあるんだと思います。
 私自身の専門はかなり分野を変えてきていましても,もともとは芸術系です。クリエイティビティというのが要にあって,御存じのように芸大,美大というのは個人の技で入学していく世界ですから,あくまでも能力は個人のものなんですが,創造性の研究をしていくうちに,社会に求められるクリエイティビティというのは個人ではなくてチームであるとか組織,そしてシステム提案力というような形になってくると。そうすると,また他の国でも報告されていることなんですが,いわゆるギフテッドとかタレンテッドという方たちは,社会に行ってその力を十分に発揮できるわけではないという課題があって,ではどうしたらいいのかというところのいろいろな方策があると。必ずしもタレンテッドやギフテッドが必要なわけではなくて,その方たちが生きようとしている社会や組織の中でベストプラクティスが出せるようなことを想定したシステムづくりを自らマネジメントできる能力が分野を問わず必要なんじゃないかというような議論があり,日本の中ではそうしたデザイン思考であるとかSTEAM教育というものが割と早期から,早期というのは中学,高校ぐらいから導入することがよいのではないかというような形で,今導入されていると思います。
 現在,人材政策課の人材委員会次世代人材育成ワーキングにも参加させていただいており,また、大学院部会は12期の終わりから参加させていただいておりますので,そうした私自身の専門である創造性研究あるいはイノベーション研究というものと大学の経営,あるいは大学院のシステムづくりとの接点のようなところで発言させていただいております。
 今回,資料6-1を見せていただいて,企業とのパートナーシップ,社会との連携というところが要だなと思うんですが,一つ議論に入れたいのは,大学で人を育てる立場にある教員の力量といいますか,教員をどう育てるか,その仕組み,教員自身の学びの仕組みみたいなものも重要じゃないかと思っています。,そうしたことは,一つの組織の中で人が育つというのは難しくて,多様な方たちと交わりながら連携する中で,相互啓発的に伸びていくというのが人間の特徴じゃないかと思っています。そういう意味では,この部会のメンバーにもなっておられます三重大学の西村委員が,今内閣府のSIPの事業でポストコロナの新しい学びという事業により、社会的な視点からの博士人材の育成についてのプログラムの取りくみも行っておられます。私自身はそこで大学院リーグという形で,今,日本の7大学,8大学が参加してくれていますけれども,博士人材にむけた非常に柔軟な連携ので複数の幅広いスキームの中で学生たちが行き来する,あるいは自ら育つ力を身につけるというような取組をやっているところです。
 もう一つ,最後ですけども,私自身,千葉大学と,それからシドニー工科大学で2つ学位を取りました。その違いというのが面白いのでちょっと言わせていただくと,日本の大学では,今,研究の主流は何かというところの議論から始まるんですが,オーストラリアではまだ誰も手をつけてない研究課題というのを見つけるんだと,それを見つけた途端に,次は「それを納税者は納得しますか」というすごい質問が来るという,オーストラリアという国は独特の教育政策をやっていまして,いわゆる国立の大学しかないような状況で,その代わりそこに集中投資して,投資したものは全てオーストラリアという国に税金を払っている人たちが納得しなきゃいけないという非常にリジッドなやり方をしているんですが,それは一つ参考になるかなと思いました。
 以上です。

【和田部会長】  ありがとうございます。特色ある大学院大学のお立場からの御発言ということをぜひお願いしたいと思います。また,最後には教員の学びというところもコメントをいただきました。ありがとうございます。
 それでは,今お名前も挙がりました西村委員,よろしくお願いいたします。

【西村委員】  ありがとうございます。今回から参加いたします三重大学の西村と申します。もういろいろな先生方がお話しされたので,本当に納得しながら聞いていたところです。
 私は少し変わったキャリアを持っていて,ちょっと変わった取組をしているということで少しだけ御紹介させていただいて,私自身なんですけども,実は大学院に行きたくなくて,学部で出ました。それで,ただ学部で出るときに博士を取りたいというすごく矛盾したことを考えて,結果的には企業で研究職をしながら,実践の中で書き上げた論文で7年で博士を取りました。ですから,あまり大学院に進学したのと変わらないぐらいのスパンで博士号を取って,社会での経験も積みながら30歳を迎えるという形です。
 この経験が一つと,その後すぐアメリカに転職してアメリカの企業で働いていたという経験があります。そうすると,日本の大手企業での研究職の形と欧米の研究職の違いというのはすごく明確になっていて,待遇が違うというのは当然なんですけども,求められる力が,もう最初から博士はこの仕事だということで,完璧なリーダーとして何かをつくり上げるということをさせられるということです。この辺の肩書ではない,持っているスキルを評価するということが明確にあるのが海外かなと思っています。その後,日本に戻って外資系企業で働いたり,最終的には私自身がスタートアップをつくって経営もしていました。
 そのキャリアを基に,縁があって三重大学に就職させていただいて,そこで最初は医学系研究科だったんですけども,私自身の経験から,新たな大学院として社会人の方々が私のゼミには結構出ていたので,そういった方々を教育することが,地域社会も大きく変わっている中で地方大学がどう役割をつけられるかというと,地域とともに伸びる大学ということになれば,今で言う地域産業界の方々のリカレント教育というものをしようかなと思って,結果的には社長たち,地域の中堅企業の社長たちが私のゼミとか大学院に入ってきて地域イノベーション学研究科というものをつくり上げて,そこで今20人,30人近くが,取った人が20人ぐらいで,学んでいる人も含めると30人ぐらいが博士号を取ろうということで勉強していただいていると。博士を取ることが重要だというふうに私は実は思っていなくて,その過程の中で,今日も論点の中の2つ目に挙がっている論理的思考力の汎用的な能力をつけるとか,これはまさしく大学院レベルでの議論を通して社長たちが自らやってきたことを一回整理してみる,客観視する,この過程で身につく論理的思考と客観視が相当インパクトが出るということです。明らかにその後の業績が格段に違って伸びていきますということは,裏を取れば,私はリーダーを博士にするというやり方をしたんですけども,そういった能力を持った人たちがリーダーになるということも逆説的にはあるので,フレッシュに上がってくる学生たちに今の教育,専門性をつけることは確かに重要なんですけど,その過程で研究を通して論理的思考をさせるとか,あとはよく言われる総合知ですね,解くためにはいろいろなことを理解しなければいけないというその総合知を身に付けながら俯瞰的に物事を見て解くという力,これを大学院でしっかりと基礎力としてつけることは,その後社会に出てから必ずリーダー的な役割として社会を引っ張っていけるんじゃないかと思います。こういうようなちょっと大きな社会的な実験をしながら,今はそんな考えに到達しています。
 残念ながら三重大学ではフレッシュな学生があまり博士課程に来ないので,その実績はないので申し上げにくいんですけども,ただ地域の中堅企業とか地方の大学のやるべき役割というのは,そういった地方産業は今相当苦しんでいるけども,むちゃくちゃチャンスな,考え方を切り替える、すごくチャンスな時期なので,ここにリカレント教育を通しながら人材をつくっていくというのはとても役に立つかなと思っています。そういった視点で活動しているものになりますので,今回,私はこの部会でどういう立ち位置で話せるか分かりませんけども,自分の経験値から何か発言させていただければと思いますので,よろしくお願いいたします。
 以上になります。

【和田部会長】  ありがとうございます。大学院に行かずに学位を取られたという御経験をお話しいただきました。また俯瞰力という点,私も共感いたします。ありがとうございます。
 それでは,次に平松委員,お願いいたします。

【平松委員】  富士通のCHRO,人事の責任者を担う平松でございます。今回から臨時委員として参加させていただきますので,よろしくお願いします。
 今回のメンバーの中で,いわゆる企業側で,かつ人事の人間というのは私だけですので,なぜお声がけいただいたのかなということを考えたときに,富士通自身がコンピューターやネットワークというプロダクトの開発やものづくりで勝負をしてきた時代から,AIや量子、コンピューティングというテクノロジーをベースにしながらも,社会課題を起点にしてお客様にその価値を提供していくというビジネスモデルに大きく変革していくことをこの5年ぐらい取り組んできました。その中で,従来の日本型の人事の仕組みでは人材ポートフォリオを変えたり,人のマインドや行動を変えたりということが相当難しいと感じ,また,今いる人だけでは実現できないところで外部の人とコラボレーションする,その知見がある人が入ってすぐチームをつくるようなことが難しいということに気づきました。
 そうやって考えていくと,私も三十数年,富士通で人事をやっていく中で,当時は日本企業にはこのやり方がフィットしていると思ってやっていた長期的な雇用や,新卒一括採用,ある程度の年功も考慮した処遇の仕組みというものが,人をある程度固定的に囲い込むことを是とするシステムとしては非常によく機能しているけれども,一方で博士がなかなか入りづらいとか,もっと言うと先進国の中でもエンゲージメントが低い,女性が活躍できない,教育投資が少ない,自己啓発もしない,だけど長く働きたいと,こういうことになってきた。これから本当にテクノロジーの進歩も速い中,このままではいろいろなイノベーションや新しいビジネスモデルをどんどん生み出していかないとなかなか生き残れない。こういう状況になったのは富士通だけではなく,いろいろな企業が恐らく同じ状況になってきていると思います。そのため,企業も人的資本経営やジョブ型の人材マネジメントなど,大分変わってきていますので,まさに博士がもっとたくさん活躍できるような仕組みにしていくというのは企業側の視点から見ても必要性は非常にありますし,タイミングとしてもいよいよそういう機が到来したのではなかろうかというように思います。
 私自身は文系の大学卒ですが,富士通研究所の若手の博士卒の社員といろいろ話をする中で改めて思ったのは,昔は知見が深くて視野が狭い人というような言われ方をされて、企業としては深くて狭い人の中でもコミュニケーション力や協調性がある人が来てくれるといい,という感じだったが,むしろ博士課程を経る中で,まさにゼロから1を生むとか,1と1を足して3にするということをいかにやるかということを本当に深く考えて,いろいろな人を巻き込み,それを実現するための協力も得たり,それをきちんと評価されて,またそれをブラッシュアップしていくというこのプロセスを若い頃に徹底的にやっている。まさにこれからの時代は先行き不透明で,新しい価値を生み出す,もしくは多様なコラボレーションでビジネスを変えていくときに,この汎用的な能力というものをもっと博士の人たちは自信を持っていいと思いますし,企業もその価値を認めるべきだと思います。ただ,この人たちは高度な汎用能力がありますというだけではやっぱりぴんとこない。
 一つは,まさにロールモデル集の中でかなり具体的な例として挙がっていますし,もう一つは適切なタイミングでインターンシップに来ていただいて,それもある程度の期間のインターンシップに来て,実際の研究やビジネスの現場で自分の能力を発揮して,専門性だけではなくて,自分の研究力や仮説検証力や,理論的思考力というのはビジネスの現場でもこんなに活用できるんだ,もしくは,もっとそれを研ぎ澄ましたいみたいな危機感を持つとかそういう経験をして,また博士課程に戻っていろいろ勉強していく,こういううまいサイクルをいかにして増やしていけるのか。このような観点で皆さんとディスカッションしたいですし,富士通はいろいろな先ほどの人事制度の問題意識もありましたので,新卒一括採用の廃止と,学歴別の一律の初任給の廃止ということをやりまして,比較的アメリカなどであるようにインターンシップを何回かやって,そういう中でお互いにマッチングしていく制度になりました。例えば卒業してからインターンシップに来てもらっても全然構いません。リモートもフル活用できますから,地方の方でも最初のときだけはリアルに会って,そこからリモートでやりましょうなど,いろいろフレキシブルにインターンシップをやれるような環境も整えていまして,そういうところもいろいろと解決すべき課題もあろうかと思いますが,これからのための取組としてぜひ皆様とも議論してよいものにしていきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
 
【和田部会長】  ありがとうございます。企業におられるお立場から,汎用能力の重要性ということについてコメントいただきまして,ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
 それでは,横山委員,お願いします。

【横山委員】  少し遅れての参加になりまして,大変失礼しました。東京大学の横山と申します。今期で3期目でしょうか,しばらくの間お世話になっておりまして,このたびもお声がけをいただきまして,ありがとうございます。
 私は理系出身の文系の研究者となります。大学院までは素粒子実験という分野で教育をいただきまして,スーパーカミオカンデという大きな装置を使ったニュートリノ実験のほうでプログラミングをしたり,現場に出たりというような,そういう実験分野で教育をしていただきました。
 もともと社会と科学の関係に非常に関心を持っておりまして,学生時代からいろいろな勉強会には出ていたんですが,博士を取った後にいわゆる文系分野に分野を変えたということで,現在は科学技術社会論という分野で20年ほど研究をしているような状況です。
ちょうど私の世代の辺りから研究に必要なデータ収集がネットの調査会社等々を使いながら世界的にやりやすくなったこともございまして,データを使った科学論の在り方というのが導入された時期に重なったということもありまして,データ重視の人社系の議論というのをやることに注力しております。
 特に気にしているのは2点ございます。一つは,生成AIが出てきた現在,どのような人材育成が必要なのかというのが非常に大きいです。古典的な領域ほど生成AIの力というのはパワーがありますので,我々が実際に入試で生成AIがどれくらい使われているか分からない中で審査するという状況に既に直面しておりまして,生成AI時代に,生成AIではできないオリジナリティのある人材をどのように育成するのか,これは理系,文系に関わらないと思いますが,非常に大きな問題かなと思っております。
 もう一つは、人文社会科学の大学院を目指す日本の学生が非常に少なく、情報収集力も強くない状況が説明会だけでは補えておらず、どのようにしていけばよいか考えていきたいと思っています。そういう観点からお話しできたらと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【和田部会長】  ありがとうございます。生成AI時代,また情報時代の人材育成という点のお話をいただきました。ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
 それでは,吉原委員,お願いいたします。

【吉原委員】  北海道大学の吉原です。私も自己紹介から始めさせていただきます。
 もともとは企業におりまして,半導体関係の基礎研究をやっておりました。その後企画部門に移って,戦略ができる人材を企業内で育てるというようなことをしていたのですが,そのときに思ったのが,柔軟な発想を企業に入ってから身に着けるのは結構な大変だなと,もっと若い時代にやっていればよりよいのではないかいうことだったのですが,縁があって今は北海道大学に来ております。今の仕事は,北大の中で博士を育成することです。
 北大の特徴は,7割が道外出身者ということです。これは,日本の中では多分かなり高い割合だと思うのですが,日々流動性が高いことのメリットと,流動性が高いことによるデメリット,流動性が高い中で学生が学ぶ難しさということにふだんから直面しながら働いております。
 もう一つの仕事は,博士の人材育成というのを一大学でやるのではなく,いろいろな大学が連携したほうがより効果的,効率的にできるのではないかということで,13大学が連携して博士を育てるというような取組,博士人材育成コンソーシアムというところのコーディネーターも務めております。その中で,先ほどの繰り返しになってしまいますが連携によって何ができるのか,要はマスの効果ってどういうところに生かせるのかというようなことを日々試している状況であります。
 今までいろいろな皆さんの提案であるとか,あと頂いた資料等を見ていて思ったことなのですが,書かれている理念であるとか,皆さんがおっしゃることは本当にそうだなと思う反面,ふだん学生とまみれている私の立場から言うと,現実とのギャップが結構大きいなと感じました。
 そして,理念であるとか,こうあるべき姿というものは物すごいスピードで変化しているのですが,現場がなかなか変わらないのはどうしてなんだろうというように考えております。それはもしかすると,KPIの設定がなかなか適切になってないからなのではないかと思っています。
 例えば,先ほども国際化というところで質保証のような話も出ておりましたけれども,大学の中で国際化に関してはで何がKPIかと言われたら,留学生数です。本来は国際化という目的があって,その上で留学生数が結果としてついてくるというようにしなければならないのですけれども,実際には留学生数が伸びないと予算が減ってしまうというようにお金に紐づけられてしまっているので,ついついそっちにみんな目が行ってしまって,もともとやろうとしていたものが消えてしまうということが起きているのが結構問題なのではないかと思っています。また、例えば企業への就職といったときにも,インターンシップの数とか就職率という数字が出てきて,そっちについつい目が行ってしまう。それが達成できないと予算が削られてしまう,活動ができなくなるということで、それもやむなしということになってしまっている。もともと何かをしようとして現場は頑張っているのですが、ついつい、数字に引っ張られてそっちに行ってしまうというところで,KPIの設定みたいなものをうまくやっていかないといけないんじゃないかなと思っているのが一つです。
 もう一つが,博士の育成に関して,現状の社会に合わせて博士をどう育てたら良いかというようになってしまってはないかなというのが気になっていることです。現状の社会は博士が活躍できる社会に一部先進的なところはなっているかと思うのですが,全体としてはなっていないなと思っていて,その社会の中で活躍できるように博士にこう変わってほしいというようになっているような気がしています。そうではなくて,博士であるとか大学院を出た学生が活躍できる,そういう高度な専門職が活躍できる社会ってこうあるべきだというものがあって,そこに向かって社会を変えていくということをやらなければいけないと思っていて,そのためには多分,ここで先ほどから連携みたいなお話も出ておりましたけども,経済産業省であるとか日本経済団体連合会であるとか,そういうところとどういうステップで世の中を変えていくのか,それと同時並行的に博士をどのように育成していって活躍できるようにするのか,それで日本がどう変わっていくのかというのをやっていくのかな,そのように考えることによって今の理念,理想と現実のギャップをスピードアップして縮めていけるのではないかと思いました。その中で,私はふだんから現状や現場を見ておりますので,その辺りのギャップのところをお話しできればと思っております。よろしくお願いいたします。

【和田部会長】  ありがとうございます。KPI,特に手段が目的化にならないようにという御発言だったように感じます。また,あるべき社会からのバックキャストの考え方という点にも触れていただいたと思います。ありがとうございます。
 それでは,お待たせしました,両角副部会長にお聞きしてよろしいでしょうか。

【両角副部会長】  こんにちは。両角と申します。東京大学の教育学研究科で教授をしております。私は,この大学院部会は今回が初めてになります。中央教育審議会の「知の総和」答申の議論などに関わってきました。おそらくその関係で今回入っているのかなというふうに推察しております。
 人口減の社会を迎えていくというわけですが,それにもかかわらず,大学の学部を出たらもう十分という社会の在り方が変わっていかないと,この日本社会,日本に限らずですけれども,どうなっていくんだろうという強い危機感を個人的には持っています。もっと多くの人が博士に行くとか,博士を取った人が活躍できる社会をつくりたいなという思いをもって,この議論に関わりたいと思っています。
 私自身が研究している内容は高等教育の領域で,大学の在り方,大学と社会の関係などについての研究をしております。学生さんも修士,博士がたくさんいるところで教鞭を取っており,社会人の学生さんとか留学生の方が多いようなところです。社会人になってから大学院に来て博士を取っていくという学生さんと接していてすごく思うのは,もちろん彼ら,彼女らにとっても新しい物の見方をしたいとか,何か新たなことを学びたい、研究したいと思って来るわけなのですけれど,そういう問いと一緒に付き合おうとすると,私たちも既存の専門分野とか今までの知識や考え方だけでは解けないような現実の複雑な課題を持っていらっしゃいます。社会人の大学院学生が増えていくということは,社会だけにとってではなくて,アカデミアにとってもすごく刺激的でいいというか,新たな研究課題のようなものを生むよいサイクルだと感じています。
 なぜそんなようなことを言うのかといいますと,大学院の問題で,特に博士で,今,人口減でアカデミックポジションがこれ以上そんなに増えていくということは考えにくいわけで博士を増やそうと言っているので,もちろん企業など社会で活躍するということを想定していると思います。大学院教育はそれだけやっているわけではなくて,高い研究力をより向上したいとか,研究者を育てているという研究者養成と高度な職業人養成を両方やっています。教員によって,私は研究者しか育てませんとか,私は高度職業人しか育てませんなんていうことはあまりなくて,両方を同じ組織の中で同じ人がやっているというようなところも併せて考えていく必要があるように感じています。企業などでなかなか博士が活躍できてないということと同時に日本の研究力自体が停滞しているという,多分その両方の問題を併せて考えていかないと,大学院教育の問題というのは解決しないのではないかなというようなことを考えています。
 ちょうど少し前から大学院教育についての科研費を取って研究していて,いろいろな先生たちにインタビューしたりアンケートを取ったりしているのですけれど,今日もたくさん出ていたトランスファラブルスキルということについては,どの先生も大事だと語っています。研究者を育てている方が多かろうが,ノンアカデミックなキャリアに進む方を多く指導していようが,皆さん,そこは意外に共通しており,そういう能力はどこでも大事なのですが,そういった能力をどう育成していいのかというところがまだ分からないのではないかなという気がしています。
 かつての政策の議論ですと,コースワークとか,体系的教育が重要だという議論が多かったのですけれど,どの研究者に聞いても望ましいあり方としてコースワークはほとんど話題に上らず,また院生と教員対象のアンケートをしましたところ,研究室教育をベースに起きつつ,その中でいろいろなところと連携を強化していくことが重要なのかなと感じております。そうした中でトランスファラブルな能力を本当にどうやって育てるのかといったことも含めて議論できたらなと思っています。
 一つだけ,この間分析していて面白かった結果を紹介させてください。ノンアカデミックのキャリアを目指す方があまり博士課程に進学しない中で,誰が進学するのかを分析をしていたときに,一番影響力が大きかったのは海外経験でした。海外で教育を受けたり海外で働いたことがあるという方は,日本と違って博士号を取ってないと仕事にならないというかパートナーとしてやりづらいようでして,日本社会がさらに国際化を全体的に進めるということと,アカデミア以外の博士のキャリアを進めていくということは結びつけて議論されていませんが、つながっている話なんじゃないかなということをその分析結果を見て思いました。今日皆様のお話を聞いていても同じような印象を感じましたので,この結果を紹介しました。
 私からは以上です。ありがとうございます。

【和田部会長】  両角副部会長,どうもありがとうございます。大変多くの知見をお持ちですので,引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
 私のほうからも,最後にまたお話をしたいと思います。いろいろと御意見をいただきまして,誠にありがとうございます。皆さん,大変多様な御経験を基に高い視座,あるいは広い視野,視点でお話をいただきました。本当にありがとうございます。皆様と共に13期の議論を進めていきたいと思っています。
 私,先ほど自己紹介するのを忘れました。ちょっと自己紹介させていただきたいと思います。私自身は大学分科会のほうでもお世話になっておりまして,副会長をさせていただいております。また,私自身のバックグラウンドは腎臓内科医でございます。大学6年間を出た後,すぐに4年間の博士課程に進んでおります。今まで出た議論の中で,6年生の中で,かつその次の4年間の博士課程というところもこういった議論の中には入ってくるのではないかと思います。
 またその中で,少子化の影響をどうしても考えざるを得ません。非常に進行が早い少子化では,真っ先に影響を受けるのが初等中等教育だろうと思います。ですので,初等中等教育の皆さんの議論との情報交換あるいは連携ということも少し意識していきたいなと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 冒頭お話し申し上げましたように,もう少しお時間がございます。今回は初回ということもあり,自由討論というお時間を持ちたいと思っております。少しお話が足りない方もいらっしゃると思います。たくさんいらっしゃると思いますので,御発言いただく場合は,大変恐縮ですが少し簡潔にお願いできれば大変ありがたいなと思っております。
 もし御発言がおありの方は挙手ボタンでお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。よろしいですか。
 加藤委員,よろしくお願いいたします。

【加藤委員】  先ほど言い忘れた2つ目の件なんですけれども,先ほど申し上げたように私はアメリカの大学で博士まで行っているので,よく工夫されているなと思ったんです。それは何かというと,小学校とか中学とか高校,私は教育学部が出身ですので,小・中・高の先生がマスターを取りに来られるように工夫してある。大学院の授業が4時から7時で開放されているということは,向こうの学校は3時ぐらいに終わりますから,これは小学校,中学校の働き方問題とも関わるかと思うんですけれども,そういう方々が大学院でパートタイムで2年かな,1年で修士を取れるところが多いですので,それをパートタイムでやると学期に2コースぐらい取りに来るのかな,それで2年間かけてパートタイムで修士が取れると,そういうふうな工夫もやっぱり必要なのかなと。だから,私が最初に申し上げたようにundergraduateという概念の下にgraduate schoolに行くということを前提にみんな勉強してきているというところで,大学側の工夫も必要なのかなというふうに思っています。

【和田部会長】  ありがとうございます。働き方改革も少し視野に入れるということだろうと思います。ありがとうございます。
 ほかはいかがでしょうか。
 高橋委員,お願いします。

【高橋委員】  ありがとうございます。委員の方たちのお話を聞いていて思い出した点なんですけれども,KPI等についてです。事務局から御説明の明治に遡る資料を見ても,我々がやってきたことの価値というのはそんなに小さいものではないと思っています。一方で,なぜかゼロからの議論と申しますか,今が全然駄目なゼロ平地で,さて,これから山に登るぞというような議論がとても多い気がしていまして,それは対比で,URAに関係するものですと,欧米では「今は一合目だけど,ここまで来たよ」というような充実感を関係者で共有することの価値をとても強く思っております。人材育成は,ともすると定量的な把握が難しかったり,アウトプットが長期間だったりするという測定には難しい側面もあるかと思うんですが,できれば定量的な指標を共有するというところも少し議論の中に入れられればと思います。
 以上です。

【和田部会長】  ありがとうございます。先生の御専門であるURAの育成の観点からも御発言いただきました。ありがとうございます。
 いかがでしょうか。
 飯田委員,よろしくお願いします。

【飯田委員】  ありがとうございます。先ほど委員の先生からのお話の中で、特に博士号を博士後期の3年で取るのが難しい,実質的には修士を博士前期課程として、博士前期・後期5年で取得する状況下,修士卒の社会人が博士号を取るときは博士後期課程の3年で取るのは難しいというお話がありまして,私もそう思っており、何か良い工夫があればと考えています。今,島津製作所と大阪大学で,島津の社員を大阪大学の博士課程後期に入れて,共同研究に取り組み学位を取るというプロジェクトを進めているのですが,このプロジェクトでは3年間,100%大阪大学に派遣されて取得します。100%派遣であってもなかなか難しく,私どもの場合は協働研究所という研究所を使って,様々なサポートをして何とか3年で取るという形です。この取り組みは、一般的ではないケースと思っていまして,これをどうやって広げていくのか,この辺りがもっとほかで広がるようなディスカッションを今後させていただければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【和田部会長】  ありがとうございます。この大学院の年限というのは非常に重要な点かと思います。ありがとうございます。
 ほかはいかがでしょうか。もう少しお時間があるようです。
 吉原委員,お願いします。

【吉原委員】  博士課程ですと留学生が3分の1程度いると思うのですが,国際化という観点から英語だけで卒業できるコースを充実させようという動きがある一方で,英語だけで修了した後に,日本で働きたいなと思って就職しようとしたときの受入れ先が増えていないという状況ですので,この辺りをどのように設計していくのか,そういうところを考えていかなきゃいけないのかなというふうに思っております。今は方針と現状ががちょっと矛盾しているのではないかと考えております。

【和田部会長】  ありがとうございます。出口の接続ということを考えたときの教育の在り方ですね,重要な点だと思います。ありがとうございます。
 ほかはいかがでしょうか。
 永井委員,お願いします。

【永井委員】  ありがとうございます。研究方法論というのは時代とともにかなり進化している,進化と言えばいいのか,発展というか変化なのか分かりませんが,AIのことはよく触れられるんですけども,データの入手の仕方であるとか,あるいは自分の研究の中間的なものでもオープンにしてしまうような文化の在り方とかがどんどん進んできてしまうので,先ほどちょっと教員のことを申し上げましたが,ある程度年齢のいった教員が自分が経験してきたスピード感や方法論で教育するというのと,今の時代というのとどのくらいうまくマッチしているのかというのは,組織として考えていかなきゃいけないと思います。各組織が連携して新規な方法を生み出すことや、日本にとってこれがいいんですよという仕組みをつくっていくというのも大事かなと思っているところです。そういう新しい研究方法があるから新しい分野や新しい知見が得られるということは大事だなと思っているというところです。
 以上です。

【和田部会長】  ありがとうございます。少し意識の改革というところも必要だということなんだろうと思います。ありがとうございます。
 大薗委員,お願いいたします。

【大薗委員】  ありがとうございます。今,両角副部会長からも,同じ指導者が研究者と高度職業人の両方を育成しているという御指摘がありましたけれども,今後博士課程修了者のキャリアパスがアカデミックだけではなくて多様化していく中で,そこで育成する出口のイメージや育成主体に求められる能力は分かれていくんだろうと思うんです。それを全て同じ修了年限にするというのも無理があるように思いますし,また全て同じ博士という呼ばれ方をするのも,認識が混乱するのではないかという気もします。例えば経営学の分野ですと,修士であればMaster of Science in ManagementとMBAがあり,MSのほうがより学術的で,MBAのほうがプラクティカルだという印象が世の中にあると思います。同様に博士もPh.D.とD.B.A.があります。Industrial Ph.D.とか様々な概念が出てきておりますけれども,早めに整理をしていくことが必要なのかなと思っております。
 以上です。

【和田部会長】  ありがとうございます。これも重要な考え方なんだと思います。ありがとうございます。
 両角副部会長,もしかしたら意見が少し後からあるかもしれません。
 それでは,西村委員,お願いいたします。

【西村委員】  ありがとうございます。一部永井委員もおっしゃっていたんですけども,先ほどの先生の御発言にもあるんですけども,Ph.D.とかそういうカテゴリーじゃなくて,ドクターをもう少し実務家的なドクターとして何か認定していくとなれば,それはかなり必要かなと思っているのと,教える側が本当に追いついているのかという大学院側ですね。大学院の教育システムもそうでしょうし,教員ですね。この一番の上の「社会の多様な場での活躍」というところに企業と大学の人材流動ということが結構書いてあるので,このところに教員レベルでのとか,例えば企業においても結構経営層とか,もしくは中間層でもいいんですけども,そういった人材交流みたいな形,日本の一番駄目なところというか,人材流動がはっきり起こってきて,そこから生まれる新たな多様な考え方って結構重要なので,大学院の教育においても積極的にそういう人材交流をしていくようなことというのはあってもいいのかなという気がしたので,何かそういう議論もできればと思っていいます。実際に私,社長に博士を取っていただいて,その方が昨年から教授になってもらっています。ですから,企業経営者が教授になるということのインパクトというのは,学部生の教育をしていただいているところにも結構効いてくるので,何かそういうことも含めて大学を変えていくということも議論してもいいのかなと思います。
 以上になります。

【和田部会長】  ありがとうございます。博士自体の多様性と,それを育てていく教員自体の学びということなんだろうと思いました。そのときの流動性,特に人材の流動性ということについて御指摘をいただいたと思います。
 ほかはよろしいですか。そろそろお時間が迫ってきております。よろしいですか。
 ありがとうございます。大変多くの貴重な御意見をいただきました。誠にありがとうございます。いただいた御意見につきましては事務局のほうで整理し,今後の議論に資するようにしてまいりたいと思います。引き続きよろしくお願いいたします。
 本日の議論は以上にしたいと思います。
 最後に,事務局から連絡いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

【永見大学院振興専門官】  失礼いたします。本日は活発な御議論,それから御意見を頂戴いたしまして,誠にありがとうございました。本日の議事の内容を含めまして,何かお気づきの点でございますとか,御発言いただけなかった内容等々がございましたらば,後日で結構でございますので,事務局まで御連絡いただけますと幸いでございます。
 次回についてでございますけれども,日程を調整の上,また詳細を追って御連絡させていただければと思います。
 事務局からは以上でございます。

【和田部会長】  ありがとうございます。
 次回の会議では企業あるいは大学における大学院生の出口,就職を含めた出口についての取組,また,次々回の会議では分野別の大学院の現状についてヒアリングを行いたいと現在考えております。
 それでは,これで会議を終了いたします。本日は大変御多用の中,御出席いただきまして誠にありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。ありがとうございます。
 
── 了 ──

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