令和7年2月7日(金曜日)10時00分~12時00分
WEB会議
(部会長) 湊長博部会長
(副部会長) 村田治副部会長
(臨時委員) 加納敏行、川端和重、神成文彦、小西範幸、佐久間淳一、迫田雷蔵、菅裕明、高橋真木子、塚本恵、永井由佳里、濱中淳子、宮浦千里、横山広美、和田隆志の各委員
(事務局)森友審議官、吉田高等教育企画課長、石橋大学教育・入試課長、髙見高等教育企画課高等教育政策室長他
【湊部会長】 皆さん、おはようございます。それでは、所定の時刻になりましたので、第117回の大学院部会を開催いたします。本日は、第12期として最後の大学院部会になりますので、よろしくお願いいたします。
年度末のお忙しいところ御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
本日は、小長谷委員、須賀晃一委員、堀切川委員から欠席の御連絡をいただいておりますけれども、定足数である過半数は満たしておりますので、御報告をさせていただきます。
それでは、事務局から、まず会議に当たっての連絡事項等、御説明をお願いいたします。
【金井大学院振興専門官】 高等教育政策室大学院振興専門官の金井でございます。
会議に先立って、何点か御連絡いたします。ウェブ会議を円滑に行う観点から、御発言の際は挙手ボタンを押していただき、部会長から指名されましたら、お名前をおっしゃってから御発言をお願いいたします。御発言の際は、通常よりも少し声を張っていただければと思います。また、発言時以外はマイクをミュートにしていただくようお願いいたします。資料につきましては、議事次第の記載のとおりでございます。
事務局からは以上でございます。
【湊部会長】 よろしくお願いいたします。
それでは、早速議題に入ります。本日は議事を2つ用意しております。最初の議事は、大学院関係施策の動向についてということで、まずは大学院入学者選抜実施要項の見直し等につきまして、大学教育・入試課の石橋課長から御報告をお願いしたいと思います。
【石橋大学教育・入試課長】 大学教育・入試課の石橋です。どうぞよろしくお願いいたします。資料の1-1を用いて御説明をさせていただきます。
まず、大学院入学者選抜実施要項でございますが、実は平成20年から改定が行われておりませんでした。このたび博士人材活躍プランにおいて、3つの方針を踏まえた選抜の充実に取り組むとされたこと。それから、情報公開に関する制度改正なども行われましたので、これらの内容を反映させる形で見直しを行い、それを令和6年12月20日付で通知をさせていただいております。
主な追記事項のところに10点書かせていただいております。
ここに関しましては、まず1つ目のところで、今申し上げたように、スリーポリシーを定め、そのアドミッション・ポリシーに基づいて公平性・公正性を確保した大学院入学者選抜を実施すること。それから、多様な背景を持った学生の受入れに配慮すること。
3つ目が、入学志願者の様々な面を確認できるように、多面的、総合的に評価・判定する入試方法が望ましいこと。また、入試方法については、各大学院の判断により多様な入学者の選抜を工夫することが望ましいこと。
また、5番目でございますけれども、募集要項にアドミッション・ポリシーを記載し、入学志願者の進路選択に資する情報を適切に公表すること。この辺りは、我々としては、社会人の方々の入学も増えている大学院の昨今の状況を踏まえまして、ストレートで上がってくる学生さんのみならず、社会人の方々にとっても受験を考えやすい情報をしっかりと提供していただきたいと思っております。
また、6番と7番は、障害のある方々への配慮というところでございます。
それから、8番が制度改正いたしました学校法施行規則の改正に基づきまして、試験問題の回答または回答例及び出題の意図を原則として公表するということを書かせていただいております。
また、9番目でございますけれども、合否判定の方法や基準をあらかじめ公表し遵守する、また、合否判定は教授会等の会議体によって行われるということでございます。
それから最後でございますが、希望者の事前相談等は重要でございますけれども、そこでどういうふうなことを行うべきかということは、各大学院においてルールを明確化していただきたいということでございます。
資料1-2が具体的な通知の文書になっております。
御説明は以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【湊部会長】 ありがとうございます。それでは、ただいまの御説明について、委員の先生方から御質問、あるいは御意見がございましたらお伺いいたしますが、いかがでしょうか。
よろしゅうございますか。どれも非常にリーズナブルな改定であると思います。とりわけ2つ目の項目は、昨今の一部の状況を考えると、良いのではないかと思います。それから、5つ目の項目につきましても、特に進路選択やキャリアパスについての情報を公表するということは、今の動きに照らして非常にリーズナブルかと思っておりますが、この点につきましても、よろしいでしょうか。
ありがとうございます。これにつきましては、もう既に通知も行われているところでございますので、各現場で周知いただくのが一番よろしいと思います。
石橋課長、どうもありがとうございました。
【石橋大学教育・入試課長】 ありがとうございました。
【湊部会長】 それでは次に、事務局から3件ほど報告事項がございますので、これは続けてお願いをしたいと思います。髙見室長、よろしくお願いします。
【髙見高等教育政策室長】 高等教育政策室長の髙見です。事務局より3点御報告します。
まずは資料2-1を御覧ください。少子化時代の高等教育の在り方について、一昨年の9月から特別部会で審議が重ねられ、本大学院部会でも大学院教育を中心に御意見をいただいてきたところですが、1月28日に大学分科会におきまして、答申案「我が国の「知の総和」の向上の未来像~高等教育システムの再構築~」として取りまとめられました。2040年には46万人まで大学入学者数が減少することが見込まれる中、知の総和の向上を大目標として、「質」「規模」「アクセス」の観点から、施策の方向性や具体的方策を掲げております。
特に、大学院教育関係につきましては、資料2-2の答申案本体になりますけれども、27ページから32ページまでに記載をしております。この中では、「質の高い大学院教育の推進」として、「体系的な大学院教育課程の編成の推進」、また、「学士課程から博士課程までの連続性の向上と流動性の促進」、そして、「幅広いキャリアパスの開拓の推進」といたしまして、「博士人材が多様なフィールドで一層活躍するための環境構築」、また、「多様な進学者の受入れ促進」、こういったことについて記載をしております。後ほど御確認いただければと存じます。
本答申案につきましては、近日中に中央教育審議会総会において、答申として取りまとめられる予定です。
続きまして、資料3を御覧ください。博士・大学院関係の令和7年度予算案について御説明します。
まず、2ページを御覧ください。「博士人材活躍プラン」に基づく取組の拡充として、プランの柱である、社会における博士人材の多様なキャリアパスの構築、大学院改革と学生等への支援、次世代を担う人材への動機づけに沿って主な取組をまとめています。
3ページを御覧ください。研究開発マネジメント人材に関する体制整備事業についてです。
博士人材の多様なキャリアパスの一つとして考えられるURAをはじめとした研究開発マネジメント人材は、量的な不足やキャリアパス確立の難しさが課題として挙げられているため、その育成・活躍に向けた「研究開発マネジメント人材に関する体制整備事業」を新規事業として立ち上げ、約6億円を計上しております。
具体的には、研究開発マネジメント人材の確保・育成や機関内の人事制度の構築に取り組む意欲のある機関の取組を支援するとともに、当該人材の育成の場として優れた研究開発マネジメント人材の育成制度を持ち、他機関に対してノウハウ展開を行う機関の取組を支援いたします。
続いて4ページを御覧ください。特別研究員制度でございます。
特別研究員制度は、優れた若手研究者に対して自由な発想の下に研究に専念する機会を与え、我が国の学術研究の将来を担う創造性に富んだ研究者の養成・確保を図るための事業です。令和7年度予算案では、博士後期課程学生のキャリアパスの一つとして、博士の学位取得後の研究者を支援するPDを拡充するとともに、博士後期課程学生を支援するDC、出産・育児による研究中断から復帰する研究者を支援するRPDに必要な経費を計上しています。
続いて5ページを御覧ください。SPRINGについてです。
博士課程学生が安心して研究に打ち込める環境の実現のために、昨年度の補正予算や大学ファンドの運用益で博士後期課程学生の処遇向上と研究環境確保(SPRING)の予算を確保しており、引き続き支援を実施してまいります。
続いて、7ページのダイバーシティ研究環境実現イニシアチブを御覧ください。
女性研究者の活躍促進として、ダイバーシティ研究環境実現イニシアチブ事業において、研究と出産・育児等のライフイベント等の両立や、女性研究者の研究力向上を通じたリーダーの育成を一体的に推進するダイバーシティ実現に向けた大学等の取組をさらに実現すべく、新規2件程度に必要な経費を計上しております。
続いて、8ページ目の「未来を先導する世界トップレベル大学院教育拠点創出事業」を御覧ください。
こちらの事業は、質の高い博士人材の増加を図るため、「徹底した国際拠点形成」と「徹底した産学連携教育」を軸に、それらを支える学内組織改革や推進体制等の基盤構築に取り組む大学を支援する新規事業です。博士課程教育の充実や就労者の進路の多様化に向け、学生・教員の海外派遣や外国人教員の積極採用など大学院教育の国際化に必要な経費や、インターンシップをはじめとする産業界との連携による教育の実施に必要な経費として約19億円を計上しております。
続いて、10ページと11ページは、次世代を担う人材の動機づけに関する事業です。
「博士教諭」の戦略的活用や、卓越した才能を持つ児童・生徒の大学等における育成・活動への支援を通じ、博士課程進学へのモチベーションを早期から向上させるため、10ページのスーパーサイエンスハイスクール支援事業や、11ページの次世代科学技術チャレンジプログラムに必要な経費を計上しております。
最後になりますが、12ページを御覧ください。
「リカレント教育エコシステム構築支援事業」につきましては、令和6年度補正予算にて21億円を計上し、本日中に補助金の公募を開始する予定です。支援メニューは2つございまして、1つ目は、産学官金等の連携による地方創生、2つ目は産業成長や構造転換への対応を目標に、それぞれ大学等のリカレント教育に必要な体制構築を支援するものです。補助金は1か所4,000万円の定額補助で、公募の締切りは3月下旬の予定となっております。公募に関しましては、総合教育政策局生涯学習推進課にお尋ねいただければと存じます。
なお、高等教育局の予算案主要事項につきましては、参考資料1を適宜御覧いただければと存じます。
そして最後になりますが、「博士人材の民間企業における活躍促進に向けた検討会」の進捗状況を説明します。資料4-1を御覧ください。
本年8月より博士人材の民間企業における活躍促進に向けて、経済産業省と文部科学省が共同して検討会を開催し、今年度中にガイドブックを取りまとめることとしております。本検討会におきましては、川端先生にも多大なる御尽力をいただいているところでございます。
ガイドブック案の概要を簡単に御紹介します。
まず、「はじめに」といたしまして、博士人材の活躍が期待されている背景や博士人材の強み、博士人材の活躍の場の拡大、大学院教育の変化について解説します。また、「企業の手引き」、「大学への手引き」として、企業や大学が取り組むことが奨励される事項を8項目に分類して解説します。各項目においては、具体的な取組事例も紹介し、これから取組を進める企業や大学が参考にできるよう工夫したいと考えております。
さらに、「学生の皆さんへ」として、博士課程修了後の進路はアカデミアに限られないことや、長期的なキャリア観を持つことが重要であることなどをメッセージとして記載しています。
ガイドブック策定後も引き続き経済産業省と連携し、産業界、大学等の協力も得ながら普及活動を展開していきたいと考えております。
次に、資料4-2を御覧ください。博士課程学生が多様なキャリアパスの存在を知ることができるよう、経済産業省とも連携しながら、「企業で活躍する博士人材ロールモデル事例集(仮)」の作成を進めております。経団連等の経済団体を通じて企業にアンケートを実施し、専門知識を生かして新規事業開発や収益向上をもたらした例、あるいは、課題発見・解決能力などの汎用的能力を生かして研究開発以外の業務で活躍している例など、様々な活躍をしている博士人材のロールモデルを紹介いただき、インタビューを実施しております。3月までに取りまとめ、ガイドブックとともに周知をしていく予定でございます。
なお、詳細な説明はいたしませんが、「大学院における教育改革の実態把握・分析等に関する調査研究」の調査報告書も取りまとめておりますので、参考資料2も適宜御参照いただきますと幸いです。
私からの説明は以上となります。
【湊部会長】 ありがとうございます。ただいま3点ほど御説明いただきました。
委員の先生方から何か御質問、御意見等ございましたらお伺いしますが、いかがでしょうか。
よろしいでしょうか。
令和7年度の博士、大学院関係の文科省予算案につきましては、250億円程度ということで若干増が見込まれています。特に幾つか新規で提示されているものがございます。ひとつは、URA等の研究開発マネジメント人材のための体制整備事業に6億円が計上されております。それから、世界トップレベル大学院教育拠点創出事業、世界トップレベルという表現が良いかどうかは別として、大学院の新しい教育拠点をつくるという事業につきまして、19億円の措置が要求されておりますし、補正予算ではリカレント教育エコシステム構築のための支援事業に21億円がもう既に措置されております。幾つか大学院関係事項について予算措置がなされたということで、文科省のご努力についてはありがたいと思っております。御意見等、特段よろしゅうございますか。
特にないようでございます。文科省には引き続きご支援をお願いしたいと思います。
それでは、議事(1)は以上でございますので、議事(2)に移りたいと思います。
議事(2)は、第12期大学院部会の審議の整理として、2年間の振り返りということでございます。
まずは事務局から説明をよろしくお願いいたします。
【髙見高等教育政策室長】 資料の5を御覧ください。
1ページ目でございますけれども、第12期大学院部会における審議実績をまとめております。
第12期では、まず、第11期から引き続き、人文科学・社会科学系の大学院の在り方について御議論いただきました。大学や産業界の方々へのヒアリング、学部4年次の学生への大学院進学意向調査等を踏まえまして、議論を深めていただき、令和5年12月に「人文科学・社会科学系における大学院教育の振興方策について(審議まとめ)」として取りまとめていただきました。
この審議まとめも踏まえ、大学院教育改革を推進し、社会に開かれた質保証を実現するための情報公表の促進について御議論いただき、令和6年9月に文部科学省において学校教育法施行規則を改正しました。大学院においては、令和7年4月から「研究科、専攻又は学生の履修上の区分ごとの、当該大学院に入学した者のうち標準修業年限以内で修了した者の占める割合その他学位授与の状況に関すること」の公表が義務づけられることとなります。
また、中央教育審議会の諮問を踏まえ、大学院部会においても今後の大学院教育の在り方について御議論いただき、大学分科会に対して「高等教育の在り方に関する大学院部会における主な意見(報告)」を提出いただきました。
続いて、2から3ページ目でございますが、先ほど申し上げましたが、1月28日に大学分科会で示された答申案における大学院関連の記述を抜粋しております。
続いて4ページを御覧ください。第13期に向けた論点ということで掲げております。
第13期におきましては、中教審(中央教育審議会)答申(案)で示された大学院改革の方向性を踏まえ、2040年までの博士人材3倍増を目指し、博士人材が多様なフィールドで活躍できるよう、大学院教育の在り方や具体的方策について御審議いただきたいと考えております。
ここに掲げているような(1)社会の多様な場での活躍、社会との接続の在り方、(2)大学院教育の質向上・評価の在り方、(3)大学院組織の基盤強化の在り方について、それぞれ論点の例を記載しております。
本日はこれらの論点例も参照いただきながら、今後の大学院教育の在り方について多様な御意見をいただきますと幸いです。
私からの説明は以上になります。御審議よろしくお願いします。
【湊部会長】 ありがとうございます。
ただいま御説明いただいたとおりでございまして、この第12期の院部会では、11期からの引き続きの課題ということもありまして、特に人文科学・社会科学系の大学院の在り方ということについて随分議論を深めていただき、答申案を作成させていただきました。
それから、日本の大学における学位授与の状況に関する情報公表の促進についても議論を進め、今般の学校教育法施行規則改正にもつなげていただきました。さらに、今後の大学院教育の在り方全般についても非常に幅広の御議論をいただき、大学分科会に対する意見提出にも御協力を賜ったところであります。
そして、本日がこの第12期大学院部会の最後ということであります。私も2期4年間、部会長を務めさせていただき、大変お世話になりました。
今日はせっかくでございますので、これまでの議論を踏まえて、新たに第13期の大学院部会へ向けて、どのような議論が今後必要であるかといったことも含め、各委員からお考えを伺えればありがたいと思っております。それらを基に、新たに日本の大学院教育をどのようにしていくべきかという議論の土台をつくらせていただきたいと思っております。今日は時間も十分ございます。御出席の皆さんに、私のほうから名簿順に御指名をさせていただきますので、一言ずつお考えをお聞かせくださればありがたいと思っております。よろしくお願いいたします。
それではまず、村田委員からよろしくお願いします。
【村田委員】 第12期、大学院の議論も進み、博士人材の話が進んでいるのは本当によかったなと思っております。ありがとうございました。
私から、13期に向けてということですので、一言だけお願いをさせていただきます。今回、12期の議論で、先ほど御説明がありましたように、博士人材の育成、2040年まで3倍にするという議論になりました。恐らくこれは理系を中心とした博士人材、文系は残念ながら、博士人材で社会との接続というのはあまり考えられないと思うんです。
そういう意味では、まず、博士人材のところというのは、ある意味では理系を中心にと私は理解をしております。恐らくこれは、イノベーションを念頭に置いているんだとは思うんですけれども、そのときに、イノベーションが行われるときに、これも文部科学省のあるレポートなんですけれども、博士人材とイノベーションの関係が相関があるんだというレポートがあったかと思います。もちろんそのとおりなんですが、残念ながら、発明、発見、特許という最もイノベーションの発端となる部分に関しては、博士人材が極めて大きな役割を果たすんですが、それを社会実装していくときには、逆に、この12期でも答申が出ました人文社会科学系の人材の育成というのは不可欠ですので、修士課程の部分、あるいは博士でも文系と理系が分かった人材といった言い方でしょうか、修士理系、博士文系、逆でもいいんですが、そういった人文社会系のところも少し、特に修士の部分が人文社会系は足らなくて、人文社会科学系の人材で、いわゆる研究者養成は生きているんですが、研究者でない、直接社会に出ていく人材を、レベルの高い人文社会系の修士課程の人材を育てる視点というのは、イノベーションを考える上でも非常に大きいと思っておりますので、13期のところではそういう議論ができればとお願いしたいと思います。
以上です。
【湊部会長】 ありがとうございます。
非常に重要な御指摘だと私も思います。ありがとうございます。
それでは次に、加納敏行先生、お願いできますか。
【加納委員】 御指名ありがとうございます。まさに今日、13期に向けた論点ということで例を挙げていただきました。12期におきましては、博士課程修了者、学生のいわゆる社会実装に向けた取組、貢献という視点でいろいろ議論ができたかと思っています。
ただ、いわゆる優秀な人材のキャリアパスというのを考えていくと、当然、社会実装だけではなくて、研究者として世界で戦えるレベルの研究者を育てるということも重要かと思っています。また、この研究者も、当然ながら、ある領域で極めた研究者が、例えば理系で極めた研究者が、ある程度理系での研究を極めた後に文社系の研究領域に入っていくというキャリアパスも存在しています。つまり、キャリアパスというのは、単に社会実装に向けたキャリアパスではなくて、研究者として、理系の研究者であれば理系がずっと続くかというとそうではなくて、理系から文社系、逆に文社系から理系に移る研究者も昨今出てきております。特にヨーロッパでは非常に頻繁に領域の転換、文社から理系、理系から文社というような研究領域の拡張というのが研究者に見られてきています。こういったところにも少し焦点を当てて、いわゆる優秀な人材のキャリアパスを多様なキャリアパスに対してどのような教育制度、どのような育成制度がいいのかといったところをぜひ13期は議論を進めさせていただければと考えております。
以上です。
【湊部会長】 ありがとうございます。これも非常に新しい視点で、ぜひ今後の課題にさせていただきたいと思います。
それでは次に、川端委員、お願いできますか。
【川端委員】 ありがとうございます。少しお話、この期で人文社会系の話にフォーカスが当たったというのは非常に大切なことだと思います。特に、地方の大学にいる人間から言うと、地方の空洞化をどうするんだという意味で、今までドクターが産業イノベーターという考え方だったのが、今、世の中が必要としているのは社会や地域のイノベーター、社会を変える人たち、そういう人たちにシフトしていく必要がある。そこには理系もいるけど当然文系もいるし、垣根を越えた人たち、そういうような博士の育成が必須です。特に今、国際的な観点が非常に危うい状態の中で、地域だとかそういうものはグローバル社会・資本主義の中で一体どう動いていけばいいのかということに関しても、こういう目線の人たちをもっと育成して、自治体も含めていろんなところで活躍する、そんな世界観をもっと進めなければならないという気がしています。
それからもう一点は、そういう中と、今ちょうどドクターの就職の話をしたりするんですけれども、企業のほうでも一括採用というのがだんだん崩れ始めていて、ドクターに関しては通年採用。であればあるほど、一番最初にお話になったように、修業年限の考え方、要するに、文系の話をしたときに一番最初、いや、ドクターに5年も6年もかかるのはという話はあったんですよ。確かにそのとおりだと思うんだけれども、3年半はまずいのかとか、そういう微妙な厳密性が崩れてしまっていて、発信の仕方が、修業年限というキーワードにしてしまうと、それが極端な方向に走ったりする。そこは自由な部分、マスターとは違うドクターの自由性というのがあってよいと思います。その上で通年採用という、ドクターが終わってから就活するというような自由度があったり、途中ちょっと金がないから、しばらく働いてまた戻ってくるとか、いろんなパターンがドクターの課程にはあっていいというのがもっと表に出ればいいかなという気がします。
それから、別な委員会ですけれども、トランスファラブルスキルという単語が独り歩きし過ぎている。まるでこれをやればいいような話であったり、専門と対立用語になっていたりするんですけれども、実は専門を極めればトランスファラブルスキルは伸びていくということの構造がなかなか知られていないし、経団連もそのように思っておられる。けれども、文章にして表現されると、全然別次元でとらえられて、博士教育はここが欠けているから駄目なんだみたいな話になっているところを産学でひざを突き合わせていま一度整理されるといいかなという気がします。
最後ですけれども、これは一番最初にお話しされた中にもあるんですが、受験だとか、ドクター進学だとか大学院進学もそうですけれども、前からよく言われているんですが、いろんな人を大学で入試するとかという話の場合に、ぶっちゃけ、入試が多様化するということがやり過ぎているんです。だから、先生たちは1年中入試をやっているんですよね。追加で足らないからとか何とかで、受験生1人なんだけど教員が5人もいるみたいな入試があったり、いろいろなことが起こっている。そういうものからもいま一度、実効的なことまで考えて、もっとシンプル化できないのか。これは3ポリシーにもつながっていて、多様であればあるほど何をやっているかよく分からないという世界ではなくて、よりシンプルに、大学の教員からしても、そこで疲弊しないようにやれたらなというようなことが話題になればいいなと思いました。
以上です。ありがとうございました。
【湊部会長】 どうもありがとうございます。幾つかの大事な論点をいただきました。特に、社会というのは、必ずしもイコール産業界ということでもないわけです。地域を含めて広い意味での社会だから、これからの人材も社会全体のトランスフォーメーションにどのように関わるかという広い観点が必要になることが、先ほどの委員の方々からの御発言でも酌み取れることではないかという気もしております。ありがとうございます。
それでは次に、神成委員、お願いできますか。
【神成委員】 神成です。12期、文系博士人材育成にフォーカスされて、私は文系の人間ではありませんけれども、いい議論ができて大変よかったと思います。
私はJSTのSPRING事業の委員もやっておりますので、この中教審大学院委員会の議論をベースに大学院改革の方向性というものを、いろんな大学の審査をしながらアドバイスをしたりということも心がけてまいりました。
2点ありまして、1つは、今、川端先生がトランスファラブルスキルの話をなさいましたけれども、残念ながら、この12期でSPRINGのプログラムを介して各大学がどういった大学院改革の試みをしているかということを紹介する場がありませんでした。小さい規模の地方の大学院がすごく一生懸命やっていたり、一方で非常に多くの経済的支援学生数を擁している大きな大学院では、果たして提案された博士課程教育がきちんと機能しているのかというような課題もありますので、そういった実態を、非常に大きな予算を食っているプログラムですので、紹介する機会があったらよかったなと思っております。その中から課題というものも見えてくるのではないかなと思っておりました。
SPRING事業実施の中から一つ私が思いますのは、経済界、産業界に就職する学生と教育する側とのギャップというのは確かにあります。大学から見ますと、大学院の指導教員の方々がどのような価値観・目標を持って人材育成をしているかという点において、どこまで各大学院が掲げる新しい高度博士人材育成の概念が、学内等で伝わっているのかという、教員の教育というものがまだ足りないのではないかなというのが1点であります。
もう一つは、経済界のほうでも、博士を採用するということでジョブ型採用という言葉を出されてくるんですが、中途採用人材獲得と横並びのジョブ型採用という形態だけでは博士課程人材の採用とは決してマッチした内容ではないと思っております。企業の博士課程人材に求める項目に関しては、先ほどアンケートの結果がありましたけれども、研究力という点にすごくパーセントが置かれるわけですが、研究力が必要だというメッセージのみが大学院の教員に伝わると、やっぱり専門性の教育が必要なんじゃないかという短絡的話になってしまうのですが、企業が言っている研究力というのは、どこまで深く考える、持続的に学ぶ力を持っているか、総合力を持っているか、そして社会実装まで導くことのできる俯瞰的な視点を有しているかという能力を含めた意味での研究力ということを言っているはずなので、そことのミスマッチが相変わらずあると思います。企業と大学院教員との対話というか、価値観、人材育成の目標の共有というものを進めていくような継続的な場が必要ではないかなと思っております。
トランスファラブルスキルが独り歩きだという話がありましたけれども、SPRINGに採用された大学では、プロジェクト・ベースド・ラーニングというような形で、社会実装を文系と理系が一緒になってやっていこうというプログラムがたくさん増えてまいりましたので、予算を勝ち取った大学院に関しては少しずつそういう人材育成が進んで、修士から見た学生が憧れを持って、決して研究論文を3つ出せばいいよという話だけではないような高度博士人材育成が進んでいるんだなということが分かってくれば、博士課程に対する価値観・魅力が上がって、経済的なサポートもあるのであれば進学するというシナリオが回るのではないかなと考えております。
以上です。
【湊部会長】 ありがとうございます。学生のこともそうですが、大学院教育に関わる教員の意識性等についても日本特有のトレンドがあるのでしょうけれども、これについてもまた議論が必要なのかなという気もいたしました。ありがとうございます。
それでは、小西委員、お願いできますか。
【小西委員】 小西でございます。私自身が大学、あるいは大学院は社会ニーズに応える必要がある、それが人文社会系では少し足りていないという思いがありましたので、12期の議論を聞いていると、その方向に向かう改善策を出していたということで、すぐにはいかないですが、数年をかけて改善されていくのかなと思っています。どうも御苦労さまでした。
そこで、13期に向けてということなのですが、リカレント教育の一環で専門職大学院が設立されたのではないかと思っています。専門職大学院は文系も理系もあります。そこで、以前もお願いしたことがあるのですが、専門職大学院の博士課程との接続が上手くいっているかどうかという視点で議論を願えないかということです。
私の所属している専門職大学院では、博士課程のある大学院も併存しているので、専門職修士が博士課程と連携しています。会計大学院協会全体を見てみると、必ずしもそうではなくて、修士だけで終わっているというところもあります。例えば、会計の世界でいうと、国際的な機関で会計基準の設定等が行われている現状では、その機関への日本からの派遣が必須になっています。その機関メンバーを見てみると、ほとんどの委員が博士号を取得しています。つまり、国際的な機関で活躍しようと思えば博士号取得が必須になっているということができます。その意味で、専門職のスキルアップが修士ではもう足りなくなっていて、博士までを含めたものを考えていかないといけないというのが私の実感としてあります。
そこで、繰り返しになりますが、専門職においても、13期においては修士と博士の連携について一つ議題に加えていただければというお願いです。
以上です。
【湊部会長】 ありがとうございます。新しい論点を御提示いただきました。ありがとうございます。
それでは、佐久間委員、お願いできますか。
【佐久間委員】 よろしくお願いします。佐久間です。
12期は人社系の審議まとめを出すことができたというのは非常に大きな成果だと思っております。ただし、結局、これも関係者がいかに自分のこととして受け止めてくれたかどうかということが重要なので、そこら辺は今後も注視していかなければなりませんし、また、すぐに改革が実現して、審議まとめに書いてあることが実現するというわけでもないので粘り強い取組が必要だと思います。、今後諸課題に取り組んでいくに当たって、いわゆる出口と入り口に関して留意しなければならないことですが、まず、出口に関して言うと、先ほど川端委員からもありましたが、確かに大学院生に求められる能力として、専門とトランスファラブルスキルは別に対立するものではないわけです。ただ、そこら辺は神成委員からご指摘がありましたけれども、企業側と大学側で認識が異なっている部分も少なからずあるし、また、実際、現状では、それこそ資料5の第13期に向けた論点例にもありますが、修了認定はどうしても専門に寄っている部分があるわけなので、そこら辺はそのままでよいのか、変えていくとすればどう修了認定すべきなのか、論じていく必要があると思います。検討に当たっては企業側との対話も必要でしょうけれども、大学、教職員の意識改革も必要ですし、さらには、修了認定のあり方には学会の意向が反映されている部分もあるので、学会も巻き込んだ取り組みが必要ではないかと考えているところです。
また、入り口のほうに関して言えば、これは3プラス2なり、4プラス1なり、学部と大学院の5年一貫はどんどん進めていくべきだと思うんですけれども、ただ、5年一貫で修業年限が1年短くなったからといって、それで学生さんが簡単に大学院に来てくれるかというと、恐らくそうではないと思います。法科大学院みたいな資格につながるところはちょっと違うと思うんですけど、そうでないところは、就職志向が高い中で簡単に進学してくれるわけではありません。これについては村田委員からそういう御指摘がありましたけれども、大学院に進学することの意味というか、大学院で学ぶことの魅力というか、大学院の魅力を高めてアピールしていかないと、なかなかそう簡単な話ではないと思います。文系に関しては、もちろん学生さんに対する経済的な支援ということも考えないといけないんですけれども、まずは、修士課程で学ぶことにはどういう意義があるのか。人社系大学院の魅力を高めるにはどうしたらよいのか、ということの検討が必要かなと考えています。
最近、学部卒の初任給が大分引き上げられまして、恐らく学生さんにとってはいいことなのかもしれないですけど、大学にとっては、就職したい学生さんの気持ちを大学につなぎとめて大学院に来てもらわないといけないので、そこは一層厳しい状況になっているわけですから、よくよく考えていくべきところかなと思っているところです。どうぞよろしくお願いします。
【湊部会長】 ありがとうございます。
それでは、迫田委員、お願いできますでしょうか。
【迫田委員】 迫田です。まず、12期ですが、人文社会系の話を幅広くできたのは非常によかったなと思いますし、また、情報公表についても、具体化して実施されるに至ったということは大変よかったと思っております。
次の期に向けてですが、今、産業界におりますので、社会との結びつきというところが引き続き気になっております。先ほどから意見も出ていましたように、社会との結びつきは別に産業界だけではなく、特に、公共セクターについては非常に可能性があると思うので、幅広く議論されたらいいかなと思います。
それから、今回の答申の中で、これまでになく大学の統廃合等の話も出ておりましたけれども、この問題は避けて通れないのではないかなと思います。今後どういう大きな絵を描いていくのか、この点を踏まえて対策を考えていかないと、なかなか存立も難しくなるところが数多く出てくると思います。大学自体が地方からなくなってしまう事態になりかねないので、そういう議論をしていく時期なのではないかなと思います。
先ほど佐久間委員からも出ていましたように、民間の初任給が相当上がっていますし、賃上げも今年もおそらく5%を超えてくると思います。文科省に頑張っていただいて、生活費の面では面倒を見ていただいてはいますが、初任給で30万というところが出てきている中で、魅力的な処遇にしていくというのは非常に大事なことだと思います。そうしなければなかなか大学院進学、特に後期までというのは難しくなると思いますので、そういう点も議論できればと思います。
またこういう議題をもっと社会一般に訴えていくにはどうすればいいかなということも、ぜひ検討いただければと思います。これは大学院部会でというよりは文科省のほうになるかと思いますが、問題を自分事として捉えて考えるというふうには至っていないし、果たして答申書の内容がどこまで一般の方々に届くのかという点が非常に気になっております。せっかくいいものをつくっても、それが届かなかったら宝の持ち腐れになるので、しっかり社会に届けるというところについても、ぜひ御検討いただければと思います。
以上です。
【湊部会長】 ありがとうございます。確かに、学位人材と呼ばれる方々が社会の隅々までどれほどの認知度があるのか、どのように受容されているのかということ等が、現実どうなのかということも含めて調査の対象かもしれないという気もいたしました。ありがとうございます。
それでは、菅裕明委員、お願いできますか。
【菅委員】 ありがとうございます。菅です。私からは1点だけに絞ってお話、コメントさせていただきたいと思います。
私はアメリカの大学で教員を7年間務めて、2003年に日本に帰ってきて東大の教員になったわけですが、それ以来ずっと大学院部会に何らかの形で関わっています。大学院のプログラム、COEからスタートしてGCOE、卓越大学院まで、これまでずっと見守ってきました。その間、大学院の改革も随分と進み、よくなってきたと思うわけですが、非常に悪くなっていることが1つあります。
それは、就職活動がどんどん長期化していることです。今や修士の大学院生は修士課程1年生の中頃から就職活動のそわそわ時期が始まり、一部の学生は修士課程1年生の終わりで就職活動を終えることができます。しかし、半数近い学生は、それを超えてまでずっと就職活動をしています。これは東大でも起きておりますし、地域の大学ではもっとシリアスです。地域の大学の先生方と話しますと、非常に困っていると訴えます。博士の大学院生に関しても全く同様で、博士も2年生ぐらいで就職活動し、博士の場合は、先ほどジョブ型の話も出ましたが、一応、その能力を見て判断してくれるということにはなっておりますが、やはり一括採用ですので、同じようなプロセスを通っているのが紛れもない現状です。
この社会的な構造が今、日本のイノベーションとか優れた人材、これは社会科学系も含めてだと思いますけれども、ポテンシャルをもった学生さんというのが、十分な教育を受けることなく就職、すなわち社会に出ていっているのが事実だと思います。日本も、他国がそうであるように、学位を取ってから就職する社会構造に正すべきだと思っています。いくら大学の先生たちが頑張って教育しようと思っても、それを受けてくれるだけの時間と余裕がない大学院生がほとんどである場合、大学院での教育というのは不十分に終わらざるを得ないということです。私としては、文科省に就職は学位を取ってからしてくださいと宣言して頂きたいくらいです。宣言することによって、この歪んだ就職活動の社会構造が変わり、企業も学位を取った学生さんを採用するという、世界水準で普通の国になってほしいというのが私の希望です。
大学院部会ではなかなかそういったことに踏み込んでまで議論できないことが多いわけですけれども、しかし、次の期ではぜひともそこまで踏み込んで議論していかないと、大学が持つ教育に対するミッション、研究に対するミッション、そして、イノベーションに対するミッションを全うすることはできません。結局、大学は、日本のイノベーションや科学技術の発展による日本経済を支えるという貢献ができません。したがって、大学院部会は、経済界との連携も必須であります。大学院部会の委員の中に経済界の人たち、特に現場の人たちのみならず、力を持った経済界の人たちが入り、将来の日本の大学院教育と就職活動の構造変革をどうすべきか、しっかりと議論すべきです。大学にも、その変革に向けた学事歴をどうすべきか議論し、変革に向けた提案を宣言してほしいと思います。「就職活動するのは学位を取ってからしよう」というふうに、日本全国の大学全員が言ってくれれば、それは起きるかもしれない。文科省には、それを啓発し、誘導していただきたいと思いますので、その点も含めて、次の大学院部会では議論していただけたらなと思う次第です。
私からは以上です。
【湊部会長】 ありがとうございます。非常に重要な御指摘をいただきました。仰るとおり、この日本の就職状況、つまり一括採用というやり方は、日本独特ですよね。日本にしかない風土病のようなもので、良くないと分かっているし、ずっと以前からそう言われ続けてきたけれども、何となしにそこは避けてきたわけです。色々な技術的なことを議論してきたと言われれば、確かにそうかもしれないですが、風土病となれば病気ですから、病気というのは根本的に治療しないとしようがない。このことにどのようにアプローチしていくか、おそらくみんな良いとは思っていないので、抜本的に手をつけないと、ずっと風土病を抱えたままやっていくということになりかねない。これは非常に重要な御指摘だと私も思いますし、どこかでこれは本気を出して少なくとも議論の俎上に乗せないといけないのかなという気がいたしました。ありがとうございます。
【菅委員】 ちょっと1点だけ。ごめんなさい。
私の所属している専攻では、実は一歩踏み出すことを決意して、院生に説明をしています。2年生の修士の審査会を1か月前倒しして、修士の2年生の1月、2月、3月を完全に空けるということをしました。そうすることによって、そこで就職してください。強制は学生に対してはできないので、強制にはなっていませんが、1月、2月、3月でやってください。これは1年前にやる1月、2月、3月を2年生の1月、2月、3月でやってくださいというお願いです。これはお願いベースです。
たった一つの大学の一つの専攻がやっているだけで、全く影響力も何もないですが、それがちゃんと機能するということだけを証明するために私の専攻でやっているのですが、実は副作用があります。これを学生に示唆することによって、実は博士の入学試験というのが2年生の夏にあるんですが、そこで先に博士の審査会がある。学生たちには博士の審査会を受けて、それから就職活動しても構わないと。要は、博士の入学が決まった後に就職活動しても全く問題ありませんということを伝えますと、実は博士の進学が増えましたという副作用があります。
これが目的ではありませんでしたが、副作用としては、我々がある意味期待したとおりで、そうやって学生の気分、気持ちが変わっていくんだということは実証できていると思いますので、本当はもっと思い切って皆さんがそういうことをやってくれれば変わっていくんだろうなと思います。それはあくまで我々の第一歩で、これから我々がサジェスチョンしていることをやってくれる学生が増えていけば、これでいいんだというふうに変わるのではないかなと期待している次第です。
以上です。私の専攻のことで申し訳ございません。
【湊部会長】 ありがとうございます。非常に面白い情報をいただきました。今、博士課程進学への影響というのを、副作用と仰いましたけれども、副作用というのは一般に良くない作用を指すことが多いですが、これは良いほうの副作用ということですよね。ありがとうございます。
一方で、我々大学人が、学生と話し合いながら大学側から改革を進めるというやり方もあるという非常にプロミッシングなお話もいただきました。ぜひこれも、次の13期では主要な課題にしていただければ私もありがたいと思っております。どうもありがとうございました。
それでは、時間も限られていますので、次に高橋委員、お願いできますでしょうか。
【高橋委員】 ありがとうございます。くしくも、その話題を申し上げようと思っておりました。私の観点から、少し別の言葉で申し上げます。
13期に向けた論点ということで、大学院教育、その質、評価、基盤強化というタイトルが出ておりました。今後の議論でもう一回そもそも論をやらないと駄目なのではないかというのが申し上げたかったことで、そもそも論というのは、博士号取得者とはどのような能力を持った人物かということです。
この期を通じて大変勉強になりましたし、変わったところもあると思うんですが、実は圧倒的な違和感を毎度感じておりまして、ある種ストレスな審議会でした。というのは、人社系の先生方がおっしゃっている人社の大学院の課程というのと、今、菅先生がおっしゃったような、いわゆる自然科学の、かつアクティブなラボにおける大学院生とその就職先というのがあまりにも違うというところです。
今の日本には当然、今後も共存していいものだと思うんですが、さすがにこの前提の乖離をもって13期の論点3つほど、大学院教育というのを一緒くたに議論できるのかというクエスチョンです。ということで、そもそも論、博士号取得者ということの意義をもう一度、違うものであれば違うものでいいんですけれども、共通の前提と差分に関しては共通の認識を持つべきだというのが最後に申し上げたかったことです。
私、あと2点ほど申し上げたいと思います。この中教審の大学院部会、メモを見ますと、少なくとも10期あたりから関与させていただいておりまして、11期、4年前が始まるときに、意識すべき前提というのを自分のメモで残しておりました。2つありまして、1つは、産学連携という言葉の大変換です。4年前は少なくとも日本の製造業系大企業と専ら自然関係のアカデミアの先生だったと思うんですが、今回の博士の人材活躍プランというようなものに既に書いてあるように、ここを大きくアドバンテージがあって、社会課題の解決であり、市民やNPOとマルチステークホルダーが関与すべきだと。その中での博士号取得者の、トランスファラブルスキルも含めた活躍の場があるべきだという話に変えていったほうがいいねということで、これは雇用に関してかなりのアドバイスがあったんだと思っています。
もう一つは、これからまだ進まなきゃというところで、4年前に関して言うと、ポストコロナの時代があったところだと思います。このときに前提として重要なのは、研究者の養成というのはそもそもが国際的であるべきでしょうというところです。当時話題になったのは、中国からアメリカに留学した中国人というのは、その8割がアメリカで就職すると。だけど、ポストコロナになると、中国に帰って就職する人が7割になってしまったという大きなドラスティックなチェンジです。ということを踏まえると、そもそも博士の養成というのは当たり前の国際頭脳循環の中で考えなくてはいけなくて、EUの域内では、博士号まで1か国で過ごした人はほぼいないよねみたいなところも考えないといけない。この状況に関して、日本はまず、あいにくそうじゃないということと、その議論をする前提の定量的なマクロデータがほぼほぼない。ここが圧倒的にまずいと思っています。
この2点目の話というのは、今後につながる話として、少し芽出しもあるようですが、やはり博士人材のような高度人材に関して、我々が議論すべき定量的なトレンドというのを前提にした議論が今後必要かと思います。
以上です。ありがとうございました。
【湊部会長】 ありがとうございます。ごもっともな御意見だと思います。
それでは、次に塚本委員、お願いできますか。
【塚本委員】 どうもありがとうございます。大変お世話になりまして、いろいろ勉強になりました。
2点お話しさせていただきます。1点目は、数十年前と比べると博士課程の学生たちの社会人になってからの活躍の仕方が大きく変わっていると考えます。非常にコミュニケーションスキルなども上がっていると思います。いろいろと反省ばかりを皆さま、先生や文科省の方もおっしゃいますが、、今までの施策により成果が上がっている面が多々あると思っております。自信を持って大学側も、企業に対して、「会社」員をつくっているのではなくて「社会」人を育成していると具体例を示しながら発言をしていってもいいのではないかと考えます。これからロールモデルなども発表されるとのご説明がありましたが、「採用しないことが企業の損失になる!」くらいの勢いで双方で日本の成長を支える意気込みでいただいてもいいのではないかとポジティブに思っています。
もう一点、来期の論点に入っている社会人大学院生を増やすというところで、最近、取締役会のメンバーのスキルセットを明示して株主総会にかけるようになってきたりなどあり、社会人の中でももっと勉強したいというニーズや思いは広がると思います。そのときに、今いろいろオンライン教育などで、ケンブリッジですとかインシアードですとか世界の有名大学の講座が取れるようになっているため、社会人にとっても選択肢が広がっていると感じております。そのような環境成果も視野に、日本の大学院はどのように社会人学生を魅了して集めていくのか、加えて、世界の社会人をどうやって取り込むかという視点も、加えて御検討いただければと思います。ありがとうございました。
【湊部会長】 ありがとうございます。
それでは、次に永井委員、お願いできますでしょうか。
【永井委員】 永井です。それでは、私は後から参加させていただいていますので、人文社会系のところの一番重要な議論のところにはいなかったんですけれども、この取りまとめのところで感じたことを言わせていただきます。
私が実感しているのは、大学院の改革というのはかなり急速に進んでいて、省庁とかの働きもあると思うんですが、企業、経済界や社会の博士人材に関する関心がすごく高まってきて、何とか相互理解していこうというところは進んだとは感じています。そのとき大企業は自らかなりアクションを起こしてくださっていますが、地域企業には、地域社会とか自治体の応援が今後拍車がかかってくることになるのかなと思っています。人口減少というのはみんなすごく危機感を持っているんですが、じゃあどうするかになったときの具体策の中に、明確な博士人材の役割みたいなものはまだ記載されていない状態ですが、こういうものが明示化されていくようになると大分違ってくるだろうと。
そのときに少し懸念がありまして、また、地域社会が閉じちゃうとよろしくないのではないかと思っていまして、地域社会が博士人材や大学院、あるいは大学の機能を使って、地域間の連携は持てる、あるいは地域と都市との連携が持てるような形になっていくと社会の成長につながっていくのではないか。
プラス、地域こそ国際的な人材を期待するべきだと思っていまして、それは大学院教育の成果につながると思っています。個々の地域が他の地域や都市とつながると同時に、国際的な価値観を発揮できるようになるというのがすごく重要だと思っています。
それで、学位にかかわらず、日本の企業文化で私が気になるのは、高齢化の影響なのか、他国の大学院生に聞くと、修了後企業に就職した後に本当に自分が意思決定というか、あるプロジェクトを任されるまでの期間が数年なんです。日本の場合、10年ぐらいかかるというか、役に立つか立たないかという議論で止まっていて、それは人口構造が、今、新興国などは、企業体そのものの中核となる人材が30代なのに対して、日本の場合もうちょっと、30代後半か40代、そこの世代構造の違いがあるんです。博士学位や修士もそうですけれども、大学院から社会のほうに活躍の場を移した後に5年以内ぐらいで実力発揮というか、かなりポジティブな働きができるようになると、企業文化や社会風土も変わっていくのかなと思っております。そのとき決め手になるのは、同年代の人たちが海外で活躍しているという国際ネットワークではないかなと私のほうでは解釈しているところです。
それから、論点の2番の大学院教育の質の向上に関しては、卓越大学院事業やSPRING等のことで、かなり教育の質が変わってきていると思っています。開かれたものになっているし、多様性も広がっているんですが、さらに授与する側が指導単位制の持ち方等、ジャーナルを重視していたりするところは、善とも悪とも言えませんが、議論の余地がかなり残っていると思っています。各大学がそれぞれ、いろいろな基準をつくっているんですけれども、その基準の根拠となるものがどうも明確ではない。例えば論文、国際ジャーナル3本であるとか1本であるとか、それは関係ないよと言っているところとか、それぞれ決めていることはいいんですけれども、その根底となるところの議論がいま一つ希薄なのではないかと思っています。こうしたことは、これからアップデートする機会が十分あるのではないかなと思っています。
もう一つが、3番目の大学院組織の基盤強化の在り方として、連続、一貫性というのも重要だと思うんですが、私自身はこうした社会の変化が激しいときには、修士、博士というのは必ずしも連続しなくてよいという考えもあるのではないかと思っていまして、要するに、異分野間で切替え可能というふうに考えていってもいいと思っているんです。そのときに、分野を変えたときに、またファンダメンタルからやり直すというのではなくて、むしろ異分野の最先端の議論を通じてファンダメンタルなほうも押さえていくというような、とにかく異分野に触れるときに基礎からやりましょうというスタイルじゃないほうが良いのではないかと思っています。それは学ぶ側の主体性と、例えば指導教員の知識を超えたところに非常に重要な点があるのではないかと思っているところです。
いずれにしても、社会を切り開く人材ということとか、川端委員が述べられておりましたが、その中に日本社会のこれからをつくっていく重要な主役としてのロールがあると思いますので、何でも閉じた考えで論じるのではなくて、どういうふうにつながっていく力があるのかというところに重点を置くべきかなと思っています。
基本には、私は割とヨーロッパ型の考えを持っていまして、ヨーロッパはどの国も自国一国でやっていけるとか、自国だけの産業という意識ではないんです。国際的につながって初めて社会があるというふうに見ていますので、日本もどちらかというと、一国でやっていこうというモデルから、様々なつながりの中で力が発展していくというか、伸びていくような構造、そういう国際社会の中での博士人材というのを想定していったらいいのではないかと思いました。
以上です。
【湊部会長】 ありがとうございます。
それでは、続きまして濱中委員、お願いできますでしょうか。
【濱中委員】 濱中でございます。よろしくお願いいたします。第12期の間、ありがとうございました。
私からは、大きく2点申し上げたいと思っています。いずれも人文社会系の実際の大学院教育に携わっている立場からというような意見になっているかなと思います。
まず1つ目なんですけれども、大学院の問題、社会との関連性という視点は確かに大事で、私も申し上げてきた点でもあるんですけれども、一方で、学部との関連性という文脈で議論することの必要性についてです。これまでも学部との関連性が全く考慮されてこなかったわけではないんですけれども、ただ、これまでの大学院の議論というのは、大学院独自の問題、独自の文脈で議論されることが、どうしても大学院部会という場ですので、当然とは思うんですが、そういったことが多かったように感じております。しかし、当然ながら、大学院教育というのは学部教育の上にあるものでして、学部でどのような教育が行われているのかということについて十分に踏まえる必要があるのではないかなと感じております。
私自身、自分自身の研究プロジェクトとして、これまで学部教育の実態について分析してきたところもあるんですけれども、そういった経験をずっと重ねておりますと見えてくるのは、学部4年間でできることにはかなり限界があるということです。4年間は長いようでとても短くて、学部生の学習の乏しさというのが指摘されて久しいんですけれども、仮に学習に意欲的であったとしても、現状できることは限られているのではないかなと思っています。学部教育にどこまで求めて、そして、なぜ大学院教育なのかというようなことをちょっと考える必要があるのかなと。そのほうが大学院教育の必要性についても訴えることができるのではないかなと思っています。
また、学部と大学院の関連性につきましては、学部生と大学院生の交流の効果という点についても、真剣に考える必要があるのではないかなと考えているところもございます。
いずれにしましても、学部との関連性について、大学院部会という場でそういった制約はあるんですけれども、意識すべきだということが1点目になります。
もう一つなんですけれども、冒頭で大学院入学者選抜実施要項の見直しのことについても触れられていまして、また、川端委員のほうからも入試の話が出ておりましたけれども、端的に申せば、大学院入試の話です。
今の日本の大学院の場合、先ほどもちょっと議論にも出てきたんですけれども、人文社会系に関して、ほかの領域もそうなんだと思うんですけれども、とりわけ人文社会系に関しては機関を超えてといいますか、そして、さらに学部とは異なる専門の大学院に進学するということも多々見受けられます。今も話にちょうど出てきたと思うんですが、また、留学生の場合もそうで、母国で違う専門を学んで、さらに日本で学位を取得するというようなときに、専門がまた異なってくるというようなこともあります。
学生が多様化すること自体はとても望ましいことではあるんですけれども、先ほども基礎をどう考えるのかというようなこと、これを真剣に考える必要があると思うんですが、基礎が十分できていない大学院生が増えますと、必然的に大学院教育の質の問題が生じます。先ほど学部教育のことを4年間は長いようでとても短いと申し上げましたが、修士だとさらに短くて、先ほど菅委員のほうから就活の話も出ましたが、2年間で領域の基礎からやって、基礎からやる必要はないのかもしれないけれども、基礎をやって、場合によっては途中で就活が入ってしまって、あっという間に修士論文のレベルのものまでを書かなければならないというのは、かなりハードルが高いものになります。となると、大事になってきますのは、就活をどうするのかということもすごく大事ですけれども、同時に、大学院入試の観点というのは避けて通ることはできないのではないかなということはちょっと考えておりまして、大学院入試はこれまで十分に議論されなかった観点で、なぜなら、大学院とか研究科の考え方を何より尊重すべきというところもあるんですが、修士、博士の質ということを考えますと、すぐにではなくても、いずれは切り込まざるを得ない観点なのではないかなと思っています。
第1の観点のところで、学部教育にどこまで求めるのかというようなことを申し上げましたが、今申し上げた第2の点に関しましては、修士とか博士にどこまで求めて、そのために入試をどうするのかという問題と言えるようにも思います。
以上2点申し上げました。よろしくお願いいたします。
【湊部会長】 ありがとうございます。これも大事な論点の一つだろうと思います。ありがとうございます。
それでは、宮浦委員からお願いできますか。
【宮浦委員】 宮浦です。ありがとうございます。幾つか話題に上っていたところで、若干重複した視点はあるんですけれども、3点申し上げたいと思います。
1点目は、人社系の大学院の話の議論がかなりあったということは、私自身非常に新鮮で、勉強させていただいたというところなんですけれども、今後、人社系は人社系、理系は理系という構造が我々の頭の中にあって、理系はこうですねという議論をさんざんしてきて、今は人社系の議論をしましょうということで、人社系と理系の専門が混ざるというようなニュアンスというのはないんです。もちろん専門性の高さは重要なんですけれども、人社系と理系の交流というんですか、単なる交流ではなくて、理想的には、第1専門分野が例えば理系、データサイエンスなり機械工学で、第2専門分野は人社系、例えば心理学とか、あるいは経済学とか、そういう第1専門、第2専門を持ったような大学院生を育てるという意識があってもいいのではないかと思います。もちろん学位を取っていかなくてはいけない、原著論文をつくるというその困難さから、どうしても第1専門分野、理系が重視されてしまうとは思うんですけれども、大学院生が自分の時間の80%を理系の第1専門分野のために使ったとしても、残りの20%ぐらいは人社系の第2専門分野のために、自分を磨く時間にするとか、そういうのをある程度ルールとして明確化しないと、例えばSPRINGのトランスファラブルスキルで理系の学生に経済学を勉強しましょうとか、心理学を勉強してみましょうと言っても、それは交流でしかないので、そこの大学院教育をダブルでやらせるというんですか、ちょっと言い方が悪いんですけれども、第1専門、第2専門みたいな形ですね。理系が強いけれども、文系もかなり知っているというような人材が求められるのではないかなと感じています。そういうシステムが現在あんまり、ラボレベルでは、専攻レベルではあるかもしれませんけれども、全国的なシステムとしてないと感じております。
2番目も横断型の交流なんですけれども、留学生、社会人学生、あと、下から上がってきたストレートにSPRINGをやっているような学生が組織的に混ざるという教育をする必要があるかなと。ラボのレベル、専攻のレベルではなくて、もっと大きく組織的、最低限大学レベルで混じることによって、通常の学生が留学生とは結構付き合っていると思うんですけれども、社会人学生ってなかなか忙しくて会う機会も少ないと思うんですが、そういう交流システムがマストになればかなり変わるのではないかなと。それは就職活動にも必ずプラスになると思います。
3番目は、これは議論できるかどうか分からないんですけれども、大学院の博士人材の処遇の問題が気になっています。学部学生の初任給が30万円を超える時代になってきて、博士の学位を取った人材の処遇、待遇、給与は今後どれぐらいになるんだろうか。40万円になってもいいのではないか。もちろん博士の人材は能力によって俸給を出しますよという話はあるわけですけれども、学部学生の三十何万円の初任給って、個々の能力をどれぐらい見て設定していますかという面で見ると、結構一律そうなっているのかなと思いますので、博士だけ能力を見ていい処遇も考えるではなく、ドクターを持っている時点で学部卒の1.5倍とか、それぐらいのベースとして考えていただきたいなというのが、これはなかなか難しいかもしれないんですけれども、そういう議論をしていただくとありがたいかなと思います。
以上です。
【湊部会長】 ありがとうございます。
それでは、続いて横山委員、お願いできますでしょうか。
【横山委員】 12期大変お世話になりました。理系のPh.D.出身で人社系の教員をしている私にとっては、非常に刺激のあるお話をいろいろと勉強させていただきまして、大変学びが多い期だったと思っております。
13期に向けて2つございます。
まず、理系との比較という意味で言いますと、文系教員の現場は非常に予算がないという状況があります。特に一番困るのは、学生を国際会議に出すための予算がすごく限られていて、円安の影響が物すごく大きいことです。研究費は比較的小さいけれども、教育費にかかるお金が物すごく上がっている現場にお金がないということが大きな問題としてあります。
そして、文科省がこの期の議論を経て、5か年の支援を御検討いただけるというのは非常にありがたいです。特にマスターの学生に手当がないのが現状です。なので、ぜひ予算面で御支援いただけるようにと願っております。実はこれは教員も地続きの問題だと思っております。
2点目は、文系教員の全体的な国際化が必要という内容です。一部の教員は、研究における国際競争も含めて活発に研究活動していますが、国際化されたらさらに大きな発展があるにもかかわらず、そうなっていない分野も一定数あります。そうした分野は、教員が受けた教育がそもそも国際化されていなかった、という問題を抱えています。若い世代は国際化の必要性を感じているのに、上の先生たちが英語化は必要ない、いらないと教えている分野があると聞き、まずいと思っています。また、教員が国際的につながらなかったら研究・論文指導が不自由であるという問題にもつながっています。
これはほかの国を見ても、上の世代が英語を話さなくても、下の世代が留学に出ていって、どんどんと共著を増やしているというようなそういう状況もありますので、日本もやろうと思えばできるはずです。若い優秀な学生に、とにかく国際的に潤沢に外に出せるお金があれば、そういう教育のできる教員もたくさん出てくるんだと思います。教員が、科研でどうにか回すのはそれは当然だとしても、国際化できるような予算をぜひつけていただきたい。そういうのが私から文科省へのお願いとなります。
湊部会長が先ほどおっしゃってくださった教員のトレンド、あるいはその意識というのは残念ながら国際的に孤立していると感じます。
予算が要ることと、教員も学生も国際化という点について、ぜひ次期に御議論いただければと思った次第です。よろしくお願いいたします。
【湊部会長】 ありがとうございます。随分深刻だけれども、現実的に大事な話だと思います。文科省におかれても、ぜひ御検討をよろしくお願いします。
それでは、最後に、和田委員からお願いできますでしょうか。
【和田委員】 ありがとうございます。それでは、私のほうからも一言、お礼とともに申し上げたいと思います。
第12期で人文科学、社会科学系の大学院の話ができたことは非常に大きな収穫だったと思います。部会長の湊先生のお取りまとめにまず感謝申し上げたいと思います。また、委員の皆様の議論から私も大変多くを学びました。
私からは、第13期に向けて2つの点をお話したいと思います。大学院の入り口、出口の点、それからカリキュラムの点です。
大学院の入り口、出口を考えますと、議論が出ていますように、幅広い社会との連携を広めるということの重要性は論を俟たないと思います。その中で、大学内部、社会との連携、国際性の意識、この3つの点は重要だと思います。
例えば、大学内部の点です。大学内部の意識醸成、巻込みの一つの身近な例を挙げると、大学職員ではないかなと思います。社会人としての大学職員の大学院進学というところも一つ、視点としてはあると思います。
さらに大学内部だけではなく社会との共有、需要という視点も重要です。先ほど議論が出ましたように、就職時期とも関わると思います。
さらに、国際社会との頭脳循環というのは、今後も議論が深まればいいのではないかと思います。先ほど横山委員からも議論が出たと思います。
2つ目は、カリキュラムです。カリキュラムを考える上で、総合性、あるいは全体の俯瞰的な視点というところもあるのではないかと思います。例えば、一つの社会課題の克服を考えても、人文社会、あるいは科学技術、医療福祉、地域と世界、こういった視点が連携する、あるいは視点を複合的に考えていくということは当然求められてくると思います。その中で研究自体を深掘りすることはもちろん重要です。加えて、様々な視点とか視座、あるいは視野といった総合的な力を醸成するにはどうしたらいいのかということも第13期では議論ができればと思います。
以上でございます。ありがとうございます。
【湊部会長】 どうもありがとうございました。
ほぼ全ての委員から今お話をいただきました。本当に論点がたくさんあって、どれもこれも大事なところであります。
もし、ほかの委員の御意見等々をお聞きになった後で、これはどうしても言っておきたいというようなことがございましたらお受けいたしますが、いかがでしょうか。
よろしゅうございますか。
ありがとうございます。本当に多くの論点を御提示いただきました。
この第11期、12期の間、4年間、私は部会長を務めさせていただきました。当初、どういう議論をしていくかということを色々考えたときに、そもそも日本の大学院というものの成り立ちはどうだったんだろうということに思い当たりました。当然一番大きな出来事は、1990年代に5年から10年をかけて起こった、ほぼ全ての国立大学の一律大学院重点化ということでありました。ちょうどその「重点化」が始まった時期、私は教授に就任したところでして、教授会でそういう議論があったのを今でもよく覚えております。
ただ、そのときは、大学院はどうあるべきかなどという議論はほとんどありませんでした。全学部を大学院へと重点化しますと。これも非常に日本的でしたけれども、学部の上に2階のように大学院をつくるということです。ほとんどの大学がそうだったと思いますが、実態は何も変わりませんから、学部の各研究室を大学院らしい名前の看板にしていただいて、大学院研究室ということにしてくださいという程度であったと私は今でも記憶しております。その後、私も当時の中教審で意見を求められたことがあって、その折に大学院重点化に伴う大学の組織改革について考えをお聞きしたこともありましたが、十分なお返事はいただけなかったということもあったなと今、思い出しております。
それで、第11期の院部会からどういうことを議論するかを改めて考えたときに、大学院かくあるべしというような、非常にオーソドックスな議論の前に、そもそもこういう歴史的な経緯による日本の大学院というものの現状はどうなのか、我々はどれだけ大学院の実情を分かっているのか、さらに言えば、自分の大学ですら、私は医学系でしたけれども、その他の学術領域、例えば、人文系の大学院はどうなっているのだろうということも、ほとんど分かっていないのではないだろうかという懸念もあったわけです。これは、かくあるべしという議論の前に、実情をまず理解して委員間でシェアする必要があるだろうと。そういうことなしで大学院の理想像を議論しても、あまり生産的ではないのではないかと思われたので、まず事情をよく調査しようということになりました。とりわけ多くの委員から人社系の大学院について、状況を掴みづらいという意見もありましたので、現場の学生の意識調査を含めた大規模な調査に着手することになったわけです。
そのときに、同時に自然科学系大学院の調査も並行して実施し、今までのようなごく一部の、数%程度の学生の考えしか反映できないような調査ではなく、力を尽くして大規模調査を開始しました。まずは現状の掘り起こし、何が日本の大学院で起こっているかということを正確に理解することから始めようということで進めました。その結果として、日本の大学院の実情、欧米と比べてどこが同じでどこが違うのかということも含めて、色々な課題が明らかになってきたと思います。
そういう実情をベースに、議論を展開していくというつもりで部会長を務めてまいりましたけれども、色々ひっくり返してある程度課題や問題をあぶり出すところまで何とか辿り着いたのではないかと思っております。
とりわけ、何人かの委員の先生からご意見をいただいたように、かなりファンダメンタルな問題があります。例えばバブル崩壊後の、どちらかといえば日本の産業界が内向的になってきた時期に大学院重点化が進められたこと、それから、先ほど菅委員からもお話がありましたが、一括就職問題という非常に特殊な事情をずっと抱えてきていたということ。それから、学部との関係性が非常に連続的で一体的だったこと。欧米の主要国では、学部(アンダーグラデュエート)と大学院(グラデュエート)は全く違う組織でミッションも全然違いますが、日本の場合は、大学院重点化により、何となしに1階から2階に上がるようなイメージであったこと。こういった様々な問題が出てきました。
これらの大きな課題に対して、具体的に、ファンダメンタルなところからどう対応していくかということが来るべき13期からの課題であろうと思いますので、部会長としては、11期、12期で掘り起こしてきた課題を踏まえながら、どういう改革を進めていくのかというリアルな議論をぜひ進めていただければありがたいと思っております。
いずれにしましても、本日各委員からいただいた論点は非常に重要な点だと思います。文科省事務局でも全て議事録として残していただきますので、これらの要点をまとめた上で、新たに発足する第13期の院部会に確実に受け継ぎ、審議の対象にしていただけるものと思っております。よろしくお願いいたします。
本日の議事は以上となりますが、もし追加的な御発言がなければ、ここで一言、森友審議官から、御挨拶をいただきたいと思います。森友審議官、お願いできますでしょうか。
【森友審議官】 失礼します。審議官の森友と申します。
第12期の中央教育審議会大学分科会大学院部会の最終回に当たりまして、お礼の御挨拶を申し上げます。
冒頭もございましたけれども、第12期は、人文科学・社会科学系における大学院教育改革について重点的に御審議をいただき、「人文科学・社会科学系における大学院教育の振興方策について」の審議まとめを取りまとめいただきました。
また、この審議まとめを踏まえて、大学院における学位授与の状況に関する情報公表の促進についても御議論いただきまして、制度改正にもつなげることができましたこと、心より感謝申し上げます。
さらに、大学分科会、そして高等教育の在り方に関する特別部会における審議と並行して、大学院部会におきましても、今後の大学院教育の在り方について活発に御議論いただいたところでございます。国際的な競争環境が高まっていますし、また、18歳人口が急激に減少する中で、大学院の役割はますます大きいものとなります。知の総和を高めるためにも、知のプロフェッショナルを育成する中心的な存在として役割を果たすことが一層重要となっていると考えております。
本日、多岐にわたる御意見をいただきまして、まだまだたくさんの課題があることを改めて認識をしました。大学院修了者が多様なフィールドで活躍する社会、その実現が極めて重要でありますので、13期におきまして具体的な議論を進めていただけるよう、事務局としても準備をしてまいります。
湊部会長をはじめ委員の皆様の御尽力に改めて感謝を申し上げ、御挨拶とさせていただきます。本当にありがとうございました。
【湊部会長】 ありがとうございました。
今の森友審議官からのお話のとおり、この大学院部会も次期から一層佳境に入るといいますか、大事なリアルな課題について検討いただくことになると思います。かつて大学院というものが日本全体の高等教育システムの中でこれほど注目を浴びたことも多分ないのではないかという気もいたしております。背景には当然、OECD諸国の中で、修士号、博士号取得者を含めて日本の学位人材が人口当たりの数でいえば圧倒的に少ないという実情があります。それから、先ほど多くの委員から御指摘があったように、社会の様々な局面で、学位人材と呼ばれる方々の認知度がまだまだ低いというようなこともあったのだろうと思います。行き過ぎは能力主義(メリトクラシー)になるのでしょうけれども、きちんと学位資格を授与された方々が、社会の、もちろん産業界を含めてになりますけれども、社会の隅々まで広く活躍していくことが必要とされるという社会的な認知がようやく浸透し始め、こういう現況になっているのだと思います。
ぜひ日本の大学院というものがグローバルスタンダードの組織として確立され、その中できちんと教育を受けた人材が十全に社会的な役割を果たし得るという体制を、文科省を中心につくっていただければありがたいと思います。
この4年間、皆さんに本当に御協力をいただいて、拙い部会長でしたけれども、何とか全うすることができました。ありがとうございました。何人かの先生方は次期も引き続き委員をお務めかと思いますが、ぜひ皆さんの御意見を次へ引き継ぐということで、文科省にもお願いをしておきますので、今後ともよろしくお願いいたします。
少し時間が残っていますが、ほかに御意見等なければ、第12期の大学院部会はこれで終了とさせていただきます。皆さん本当にありがとうございました。
―― 了 ――
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