大学院部会(第108回) 議事録

1.日時

令和4年7月21日(木曜日)16時00分~18時00分

2.場所

WEB会議

3.議題

  1. 人文科学・社会科学系の大学院教育に関する方向性 中間とりまとめ について
  2. 人文科学・社会科学系の学部学生における大学院進学の意向調査(案)について
  3. その他

4.出席者

委員

(部会長) 湊長博部会長
(副部会長) 村田治副部会長
(臨時委員) 加納敏行、川端敏行、神成文彦、小長谷有紀、小西範幸、佐久間淳一、迫田雷蔵、須賀晃一、菅裕明、高橋真木子、塚本恵、長谷川眞理子、波多野睦子、濱中淳子、宮浦千里の各委員

 

文部科学省

(事務局)増子高等教育局長、森田大臣官房審議官(高等教育局及び科学技術政策連携担当)、西大学振興課大学改革推進室長他

5.議事録

【湊部会長】それでは,所定の時刻になりました。第108回大学院部会を開催したいと思います。
本日もオンラインでございますけれども,御多忙の中,御出席いただき,誠にありがとうございます。本日は田中委員と堀切川委員は御欠席と伺っております。
それでは,まず事務局から,会議に当たっての連絡事項等をお願いしたいと思います。

【西大学改革推進室長】事務局でございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。ウェブ会議を円滑に行う観点から,御発言の際は挙手のボタンを押していただいて,部会長から御指名がありましたら,お名前をおっしゃってから御発言いただきますようにお願いいたします。また,発言時以外は,マイクをミュートにしていただくようにお願いいたします。
資料については,議事次第に記載のとおり,事前にメールでお送りしてございまして,画面投影はいたしませんので,お手元の資料を御覧くださいますようにお願いいたします。
システムの状況によっては不具合もあるかと存じますけれども,御協力のほど,どうぞよろしくお願いいたします。
以上です。

【湊部会長】それでは,議事に入りたいと思います。
議題の1番目は,「人文科学・社会科学系の大学院教育に関する方向性 中間取りまとめについて」ということでございます。前回までこの大学院部会で随分御議論いただいておりますが,それらの内容を踏まえた上で,事務局で改めて,中間取りまとめの案を作成いたしておりますので,まずは事務局から,そちらの案の御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【西大学改革推進室長】事務局でございます。前回までに,大変いろいろ御指摘をいただきまして,改めて部会長と副部会長にも御相談を申し上げながら,改めて案を作り直してございます。
1枚おめくりいただきまして,そもそも大学院教育の方向性についてということで,少し我々の議論以前の整理でございますけれども,2019年の大学分科会におきまして,「2040年を見据えた大学院教育のあるべき姿」というものをまとめていただいております。その中で,大学院は人文系とか自然科学系とかを問わず,知の生産ですとか価値創造を先導する「知のプロフェッショナル」を育成する役割を担うんだということが,ここで書かれてございます。上から2ポツ目にありますように,大学院の教育研究を通じて,今後の社会を先導できる力,トランスファラブルスキルを身につけて,その能力の上に各セクターを先導できるような高度な専門的な知識を養うことが必要であると位置づけられております。
ここの図で示してありますように,社会が求める力というのは,大学院の研究活動ですとかコースワークとか大学院の教育課程を通じて見につけられるものとほぼオーバーラップするということを前提に,そういった修士課程,博士課程を経た学生が社会に出て,言わば高度人材として,知識基盤社会を様々な場面で牽引するんだということが前提として描かれておりました。
さて,その上で次のページでございますけれども,では,なぜ今,人文科学・社会科学系の高度人材なのかということでございますけれども,社会経済活動は機能的価値から意味的価値を重視する時代へということでございまして,そこにいろいろ図をつけてございますけれども,SDGs各目標の市場規模は70兆円から800兆円と言われておりますし,2020年度ESG投資,環境ですとか社会的責任ですとかガバナンスといったところで評価をされると。そこを加味して投資をするという対象が4,900兆円,世界でどんどん伸びてきているということ。あるいはエシカル消費と言われたりしますけども,倫理的な価値を踏まえた製品であるかどうかといったことは,特に若い世代で高まっているということが言われております。
さらに,こうした中で価値発見とか価値創造的な視座を提供するような人文科学・社会科学分野というものには高い期待を寄せられていると認識をして,その上で,アカデミア,非アカデミアを問わず,産業界をはじめとしたあらゆるセクターにおいて活躍する人文科学・社会科学系の高度人材を育成する必要があるのだと一旦整理をしてございます。
このページの右下にございますように,学部と大学院の専攻の賃金プレミアムの推計というデータがございまして,この中では人文科学・社会科学・自然科学,それぞれの分野ごとに取っておりますけれども,いずれの分野についても賃金プレミアムは学部卒よりも大学院卒のほうが高く出ているということがありまして,人文科学系・社会科学系が果たして世の中の何の役に立つんだという御批判も,御意見もありますけれども,現実に社会に出て活躍されている中では,こういった社会的評価も踏まえて,高い賃金の評価をいただいているということも1つの事実として御提供できるかと思っております。
4ページ目でございますけれども,にもかかわらずと言ったデータでございます。再三申し上げて,御提示していますけども,左上のグラフにありますように,諸外国と比べて修士号や博士号の取得人数は極めて少ないといったことがありますし,大きなギャップは自然科学系よりも,むしろ人文社会科学系のほうに大きいということが言えると思います。右上にあるような企業経営者の最終学歴を見てもさようでございます。左下のグラフにあるように,国内のむしろ学部つきましては,社会科学分野が一番多くの学生を持っておりますけれども,対して修士課程,博士課程に進む学生の割合の少なさというのは,自然科学系の3分の1ということに比べ,社会科学だと28分の1,人文科学だと21分の1といった状況になっており,これは危機的状況にあると言わざるを得ないと思っております。
次の5ページ目でございますけれども,これが全体のサマリーのようなメモですけれども,今ほど申し上げたように,現状は量的規模,大学院の進学修了者が極端に不足しているといった現状がございます。そこに対して,課題の1と2と書いてありますけれども,例えば,社会的評価や認知が不足していると。人文科学・社会科学系の高度人材の能力や活躍が大学と産業界等,あるいは学生自身との間で十分に理解,共有されていないのではないかと。これに対して,解決の方向性としては,社会における高度人材の価値を認知していただくための取組が必要である。あるいは大学院の人材養成目的の明確化が必要であるといったことが言えると思います。その間をつなぐものとして,教育研究プログラムを社会と大学院が一体となってつくるようなもの,参画できるようなものが必要ではないかと考えております。
また,課題の2,大学院そのものの課題として,人材養成モデルが学生の幅広いキャリアパスを支えるものになっていない。あるいは小規模専攻が多く,学生のテーマに合致する研究指導が十分に行われていないといったことも指摘として,データもお示しをしながら議論してきたところでございます。なお,一番下段に書いてございますように,それぞれの課題は相互に密接に関連しておりまして,言わば,鶏と卵という議論になりがちですけれども,全体としての解決を目指すことが重要であると考えます。
次のページ以降は,今ほど申し上げたものを,少しブレークダウンしたようなものでございます。人文科学・社会科学系の大学院と産業界,地域社会等の間に存在する課題として,大学院においては人材養成の目的の明確化を学内外へ提示すること。どのような人材を輩出するか,どのような教育課程であるかといったことを明らかにしていく。また,大学院組織としては,修了者のキャリアパスの追跡を把握したり,それを学内に周知する取組が必要ではないかということです。
右側の産業界,地域社会等におきましても,そちらで求める資質能力に対する具体的な情報提供をしていくと。大学院においても,社会課題への広い関心や心理的要因の分析能力といったものが,実際に大学院が輩出する高度人材が育っているんだということを社会にきちんと理解をしていただく。そういった認知が広まることで,実際に活躍しているようなロールモデルといったものをさらに周知をしていくことで,あるいは,インターンシップの受け入れ,拡大をすることで,社会で活躍する大学院卒の人材が増えていくのではないかと考えます。
その上で,相互理解・協働に向けた教育研究プログラムの推進と体制の構築という赤字で書いてございますけれども,例えば,学生と社会の双方に大学院修了者の価値や社会的通用性の気づきを与える取組,例として挙げておりますが,企業や公的機関等と大学が連携をして,社会課題の解決を目指すといったことを,そのものを教育研究のプログラムとして踏み込んではどうかということが挙げられます。
また,その下,そういったことをやるにも,1つの専攻や研究科には限界がございますので,上記の取組に資するような,学内外や産学官連携等を通じたネットワーク型の教育研究体制を構築していくこと。また,それを踏まえて,まとまりのあるキャリア支援体制の構築といったことが考えられると思います。
次のページ,課題と改革の方向性2ということですけども,これまでの人材養成モデルが幅広いキャリアパスを念頭に置いていないといったことに対して,どう対応していくかということですけれども,左側に書いてありますのが,大学の組織としての取組でございます。学生を広く社会で活躍させる意識を共有して,それを修士課程,博士課程に具体的に反映すること。それを組織としての人材育成や教育方針として徹底していくこと。高度人材輩出に係る社会のニーズや修了者のキャリアパスをしっかり把握していくこと。着実に研究指導状況を可視化し,例えば研究指導計画を確認したり,具体化したりといったこと。また,それがちゃんと進んでいるかといった進捗管理をしたり,それをしっかりやっているかといったことを教員に対して実績評価をしていくといったこと。また,研究科別の標準修業年限について確認をして,これの実績を確認し,公表していくといったことが組織に求められると考えます。
右側,研究室・ゼミに関しましては,学問の研究テーマや教員の研究指導方法の多様性というものは当然確保しつつ,大学院の教育課程を担う指導者であるといった観点から,人材育成に係る意識改革が必要であるといったことが指摘されております。特に博士号の在り方について認識ギャップが大きいといった御指摘は多々いただいておりますけれども,専攻分野について,自立した研究者としての研究活動を行う上で必要な高度の能力を身につけた者,これが「2040年を見据えた大学院教育のあるべき姿」の審議まとめにおいて書かれておりましたけれども,言わば,研究者としての運転免許であると。1人で研究の世界を,公道を1人で走っていけるというような意識づけの共通理解を醸成していくことが必要ではないかと考えております。
また,各課程の学位授与方針に照らして,修了後のキャリアパスの実現や学位取得から逆算をした研究指導計画となるように,標準修業年限内にやり遂げるという規範の確立や定着が必要であると考えます。その上で,その下に書いてございますが,学生の自主的で多様な問いに対応できる研究指導体制の構築といったことを書いてございます。後ほど改めて御紹介いたしますけれども,人文科学・社会科学系は自ら研究テーマを選んで,それぞれがそのことが満足感を高めることや研究能力が身についたという手応えにつながっておりますので,現実にはそこに書いてございますように,小規模専攻が多い中で学生の関心や研究テーマに適合した研究指導を受けることができるような仕組みを構築していくこと,例えば研究室移動の円滑化,専攻の大くくり化,研究指導委託等をもっと進めていくといったことも考えられます。また,物理的な距離を越えたネットワーク型の教育研究体制の構築,これは自然科学系では実験器具や装置が必要であるという制約条件がありますが,人文科学・社会科学系のではそうした制約はございませんので,大学院間の連携や産学官連携を構築していくことによって,教員と学生間のマッチングをしっかり図っていくということや,チーム型の教育研究や相互触発をするといったことの推進が有効ではないかと考えます。
次のページ,課題と改革の方向性2-2ということでございますけれども,議論の中で修士課程と博士課程を分けて議論すべきではないかといった御意見をいただいておりました。左側の図で御説明申し上げますけれども,下から見ていただくと,学士課程,特に左側の人文社会科学系はアカデミア志向が特に強いという話がありましたけれども,今回,民間等就職への関心が高い学生を引きつけるためには,修士課程において社会で活躍することを意識した教育課程ですとか多様な学位授与プログラム,他大学や社会と連携した教育といったことを導入することによって,そこから右に出ていく民間企業や公務部門,高度専門的な職業など,幅広い社会の担い手になるといった人材を輩出していくということが想定をされます。
また,さらに博士課程に進む者に関しては,博士課程として,より大きな社会課題や価値創造を題材としたチーム型の研究プロジェクトに取り組むことによって,実社会に対する研究の意義を発信していくことにつながると思いますし,指導教員と研究テーマのマッチングによって学位取得が円滑化するといったことが考えられます。その上で,大学教員や研究者等になる,それを志望する者については,大学側としても早期に見極めをしたりとか,採用条件をしっかりと明示をするということによって,キャリアの予見性を向上させるといったこと。あるいは研究力だけではなくて,指導力を養成するためのプレFDを実施するといったことも有効ではないかと考えてございます。
次のページ以降は検討の骨子ということでございまして,これまで御議論をしていただいたことですとか,データとして取り上げたものというものをずらっと並べてございます。少し補足的に御説明申し上げますと,14ページ目,3ポツ,学生や教育研究の特徴について(1)というのがございます。人文科学・社会科学系にどういった特徴があるのかということをしっかり踏まえて議論をしないと,この議論が拡散してしまいますので,改めて押さえていきたいと考えて紹介を申し上げますけれども,左上に現状と書いてございますが,大学院進学者の問題意識や取り組みたいテーマが具体的に明確である。大学院進学者は現状,アカデミア志向が比較的強いという中で,特に修士課程における教育課程の満足度が高いということがあり,その理由は自らの関心への適応度や裁量,主体性の高さによるところが大きいと言われております。
他方で,分野が内包する人文科学・社会科学と,言わば社会の全てを取り扱う分野を対象として,個々の学生の研究テーマが深すぎたり,狭すぎたりということも指摘をされたところであります。最後のポツにありますが,教員の専門領域と学生の研究テーマとの相性が,学生からの満足度や研究指導の頻度や質を左右するといった傾向があることが見てとれました。
右側の真ん中にグラフを御用意してございますけれども,人文科学・社会科学系の修士課程の満足度が高い理由についてアンケートを取ったところ,自分の興味関心により適合した研究テーマに取り組めたからですとか,自己の裁量や主体性が求められ,成長につながったからといった回答が非常に高くなっておりまして,言わばチーム研究を前提とする自然科学系にはない特徴があって,それが人文科学・社会科学の良いところではないかといった御意見がございました。
他方で,その下にあるようなデータですけれども,少し2003年のデータなので古いんですけども,大学院生の研究テーマと指導教員の研究との関係について言えば,指導教員を中心とする共同研究の一部であるといったものが文系の場合は6.2%,指導教員が得意とする研究領域の一部が57.3%,指導教員が得意とする研究領域とは異なったテーマについて研究しているという学生が36.4%いるということで,はたから見ると,36.4%は何を習っているんだろうという感じはいたしますけれども,現実問題として,そういう数字が上がっているということです。
続きまして,次のページでございますけれども,学生の1人当たりの研究時間が短いですとか,大学院進学や博士論文の研究テーマの決定時期が遅い,教員による研究指導の頻度が低いといった課題も挙げられてございます。右のページにございますように,博士課程に進学して1年たっても,博士課程の論文テーマについて指導教員と決まっていないといったものが約4割を占めているということが人文科学・社会科学の特徴であるかと思いますし,右側の真ん中,指導教員の研究指導の頻度につきましても,先ほどのデータと同じものですけれども,文系が月に1回,2回程度が37%と一番多いんですけれども,次いで多いのは,年に数回程度しか研究指導を受けていないという割合が25%もいるといったことで,これは課程としては問題があるのではないかと言わざるを得ないと考えております。
幾つか駆け足で過去のデータを御紹介しますけれども,17ページ目を御覧いただきますと,大学教員等へのキャリアパスについてといったところです。右側で,標準修業年限がある程度オーバーするのが人文科学・社会科学系の特徴であって,ある程度仕方ないんじゃないかという話もございましたけれども,例えば人文科学系におきまして,見ていただくと非常勤講師や嘱託講師に占める割合はオーバードクター,標準修業年限が6年以上オーバーしているといったものの割合が非常に高くなってございまして,他方で専任の講師の一番多くの割合を占めているのは3年以上4年未満ということで,標準修業年限,もしくはプラス1年未満といったところが大きな割合を占めているという実態があります。
社会科学系につきましても,専任の講師といったものの占める割合で言いますと,標準就業年限3年以上4年未満といった割合が非常に多くございまして,テキストで書いてございます,真ん中の左にあるように,大学教員等を目指す者にとって,博士後期課程の標準修業年限を大きく超過することは,安定した大学教員のポストを獲得することに必ずしもつながっていないといった課題が指摘をされたところでありました。
18ページ目を御覧いただきますと,民間企業等へのキャリアパスでございます。データだけ少しおさらいとして御紹介申し上げますが,真ん中,文系の大学院修了者の採用実績がない理由の一番多いのが,文系の大学院修了者からの応募がないからということで,最初に問題意識として提起してございますけれども,社会が有用性を認知するということが,極めてここの問題について議論をする上では重要な課題だと思います。また,真ん中の右側を見ていただきますと,民間企業等において大学院で学んだ研究分野の専門的な知識や技能が仕事をする上で役に立ちますかといった問いに対しては,人文科学系の方は,6割が別に専門的な知識は役に立っていませんというような回答しております。社会科学については3割程度といったことである一方で,その右側で,大学院教育で培った能力,例えば論理的思考力や最先端の知へのアクセスするスキルといったことが仕事上,役に立つ,あるいは評価されるということがありますかといった問いに対しては,人文科学・社会科学の割合は,イエスと回答が8割,9割まで来ていますという状況にあります。
19ページ目,御覧いただきますと,大学院の組織的な取組についてということで,これまで大学院部会ですとか文部科学省がいろいろ大学院に対してこういう改革が必要ではないかと提案をしてきましたけれども,残念ながらテキストの一番上に書いていますように,過去の答申等で示されてきた改革の実施状況は全体的に低調であるということが確認をされてしまいました。修了者の進路については,研究科としては,当然無職とかその他とか行方不明といった者を生むなんていうことはそもそも想定してないんですけれども,現実の目標と実績のギャップは非常に大きいと。ましてや修了者のキャリアパスも捕捉できていないといったことが明らかになったところです。博士人材に関する産業界からのニーズを把握している大学ほど,産業化への就職率が高いというデータもございました。
4つ目のポツですけども,学生のキャリアパス開拓や就職支援に向けた取組について,修了者の満足度が低いといったことが言われております。また,研究指導委託の実施割合が低いといったこともございました。この点について,右下のデータを見ていただくと,青色のバーになっているところが,実際に大学でこんなことをやられていましたということで,逆にオレンジの部分がもっとやってほしかったというようなアンケートの項目になってございます。もっとやってほしかったということのトップに来ているのは,一番真ん中にありますが,他の研究機関等との研究交流・共同研究といったものが39.3%ということでトップに来ております。また,企業などとの共同事業研究ですとか,その2つ下にございますけれども,企業などにおいて必要とされる能力や人材ニーズ等の把握,情報提供,大学院修了者の就職率や就職先に関する情報の提供といったことのニーズは極めて高いと言えると思います。
こういったことを踏まえると,またテキストの左上に戻ってしまいますが,下から3つ目のポツですが,学位授与方針や教育課程編成方針に準じた教育研究指導の実施ですとか,進捗管理及びその可視化について,組織としての役割も果たされていないといったことも言えると思います。教育,研究,いずれの観点でも教員の実績評価がされておりませんというデータもございました。特に研究指導の観点からの業績評価ということが求められているのではないかと言えると思います。
20ページ目,指導教員の意識等についてということです。右上のほうに現役の大学院生や修了者のアンケート,数はそんなに多くございませんでしたが,定性的な意見の例としてありますのは,上から2番目のポツ,教員と学生との間で博士号に対する価値観のギャップがあるですとか,2つ下のポツ,上から4番目ですが,研究に対する指導方針が明確に示されていないため,学生が的確な指導を受けることができない。その下,教員に教育者としての行程管理能力がなく,時間リテラシーが低い傾向があるといったこと,また,下から3つ目のポツ,オーバードクターがある意味伝統となってしまっており,教員や学生の双方に切迫感がないと。教員自身が年限を意識せずに学生時代を過ごしてきたということがあります。これらを踏まえると,現状としては,教員による学生の指導状況が不透明であると,指導教員の問題として,学生に円滑に学位を取得させるためのマネジメント能力が不足している。学位就業年限に関する考え方意識に問題があるといったことが言えると思います。
その下に書いてございますが,指導頻度の低さについては,先ほど御紹介したデータのとおりでございます。
最後に,少しだけまた,データだけ御紹介申し上げますけれども,21ページ目,9ポツ,研究科や専攻の規模・構造的課題についてというところですが,テキストの部分,修士課程の入学者充足率は他の分野と比べて人文科学・社会科学系については低くて,6割程度しか埋まっていないという状況。博士課程に関して,特に人文科学・社会科学分野の入学定員充足率は5割を下回っているということになっています。
上から4つ目のポツ,小規模な研究科では,学生の幅広いニーズに教員や研究科として対応し切れないケースがある一方で,研究指導委託の実施率も低いというデータがございました。他方で,ではこれをどうするかと考えたときに,むやみに定員を埋めて,埋めること自体が自己目的化するということは決して解決策としては適当ではなくて,これに対して学生を埋めていくというよりは,チームワーク型,ネットワーク型の研究指導体制を構築していくということが解決策としては考えられるんじゃないかということでございます。
事務局として,長々と御説明申し上げましたが,中間まとめの方向性としては以上でございます。御審議のほど,どうぞよろしくお願いいたします。

【湊部会長】ありがとうございました。それでは,ただいまの説明を踏まえた上で御質問,御意見等をお受けしたいと思います。前回の議論を踏まえ,村田副部会長ともいろいろ御意見を交換させていただいた結果,論点は出尽くしていたと思っていたのですが,もう少し明快に主要な論点と課題が浮かび上がるような形にして,その上で今後の在り方の方向性がなるべく明示的に示されるように配慮した上で,再度まとめ案を提示させていただいた次第です。
それでは,中間取りまとめ案につきまして,委員からの御質問,御意見を承りたいと思います。挙手でお知らせいただきたいと思います。手が挙がった順番にお話しいただきます。まずは迫田委員からお願いいたします。

【迫田委員】ありがとうございました。大変よくまとまっていると思いますし,これまでの議論経過が整理されているなと思いました。特に異論はありませんが,1つだけ教えていただきたいのは中間取りまとめというものの位置づけです。方向感,問題点は明確になったと思うんですけど,次の一歩をどうやっていくかというところが非常に大事だと思います。これは,この後の段階と考えていいんでしょうか。それとも,中間取りまとめの中で,もう少し固めていくものなんでしょうか。この位置づけについてお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

【湊部会長】中間取りまとめ,ということの考え方ですが,事務局から説明いただけますか。

【西大学改革推進室長】失礼いたします。中間取りまとめでございますので,さらに議論を深掘っていくという部分も必要ではございますけれども,他方で方向性が明確なものというのは,もう取り組めるものから取り組んでいくということと思いますので,各大学に対して働きかけをすることもありますし,文部科学省として,今後の政策として反映させていただくと,位置づけとしては審議会から政府に対して,今,行政上,こういう課題があるので,教育行政に対して改善を求めていただくということを提起していただいたという形になりますので,それを踏まえて文部科学省の高等教育局として受け止めさせていただいて政策に反映していくということになりますし,部会としては,引き続き議論を深掘っていくということを考えてございます。以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。ただいまのお話のように,中間取りまとめということでありまして,これで最終版というわけではございませんけれども,大方の論点と方向性が見えてきたという段階です。一応ここでまとまった形にしておいて,こういったものをベースに,場合によっては次年度概算要求等々できるものから,文科省としては施策に反映させていくということもあろうかと思いますが,大学院部会としては,これをベースとして,最終案に持っていきたいと考えています。ただ,一遍に最終案というわけにもいきませんので,基本的にこの方向性と流れでよろしいでしょうか,という確認だと考えておりますが,それでよろしゅうございますでしょうか。

【迫田委員】ありがとうございます。そういうことであれば,分かりました。
ただ,具体策のところに生かすところに,まだ先があるかなという感じもするので,特に,私は産業界との関係のところが非常に気になっているんですけども,そちらはまだアクションアイテムになっていくには少し間があるなと感じましたので,その辺,どんな手を打っていけばいいのかなということを,また深めていけたらいいなと思いました。ありがとうございました。

【湊部会長】ありがとうございます。実は同じような御指摘を,村田副部会長からもいただいておりますし,この方向性でいくとなれば,さらに突っ込んだ,具体的な方策,特に対社会,対企業,対産業界の具体的な方策については,この部会でさらに案を積み上げていくという方向性になるだろうと私も思っております。ありがとうございます。
それでは,佐久間委員,お願いできますか。

【佐久間委員】佐久間です。よろしくお願いします。
1つは感想と,もう一つは意見です。まず,3ページのところに賃金プレミアムの話がありましたが,これ,本当にこのとおりであれば,非常にうれしいところなんですけど,先の御説明にもあったように,人文科学・社会科学系の場合は卒業・修了後行方不明だったりすることがあるので,本当に実態を反映しているのかなという素朴な疑問が少しあります。出典を見ていないで言っているので,単なる感想なんですけれども。

【湊部会長】ありがとうございます。これについては,村田副部会長が詳しい出典等々についても御存知でございます。村田委員,追加説明をお願いできますか。

【村田副部会長】ありがとうございます。この出典に関しましては,これ,安井先生の論文は,人文科学系,社会科学系,自然科学系に分けた形での賃金プレミアムなんですが,これとは別に,大学院全体としての賃金プレミアムは,大体30%から40%ということがございます。私も推計をしたことがありまして,それは,職業別といいましょうか,での賃金プレミアムを計算しましたが,やはり平均では30%ぐらいですので,そこは間違いないかと思います。必ずそれはあると思います。

【湊部会長】ありがとうございます。今御指摘のとおり,特に女性の比率の方が大きくなっているのは,私が伺っている限りでは,これはあくまでも学士(学部卒)に比較してのプレミアムでございますので,学士(学部卒)の女性の賃金価格が低いとすれば,相対的に高くなってしまうということもあるだろうと思います。
それから,これはあくまでも大学院を修了して,企業などへ就職した方々の数字でございますから,そもそもどれぐらいの方がそういう賃金体系に入っているのかという割合の問題は,また少し別になりますね。

【佐久間委員】御説明ありがとうございました。その上で,全く別の意見です。今回の中間取りまとめは当然,実際の改革につなげていかないといけないと思うんですが,取りまとめには課題の1と2が書いてあります。別に,その中身がどうのこうのというわけじゃなくて,中身はこれまで議論してきたことなので特に異論はないんですけど,この改革を進めていくに当たっては,当然,社会,あるいは産業界のほうにも,いろいろお願いしないといけない部分があるわけですが,何といっても,やはり当事者である人文科学・社会科学系の大学,大学院の教員にやる気になっていただかないとしようがないと思うんです。
そうじゃないと,これまでと同じように,いろいろ改革案は出したけれども結局実行してもらえないということになってしまいます。そのときに,まだ最終版じゃないから別にいいと言えばいいのかしれないですが,今の取りまとめ案にあるような順番で,課題丸1,課題丸2という持っていき方をしたときに,少し危惧されるのは,果たして当事者がこちらの意図をきちんと受け止めてくれるかということです。課題丸1のところ,これ,中身はそのとおりだと思うんです。現状では,こういう志向を持った人は少ないかもしれませんけど,それは増やしていかないといけないので,それはやらなきゃいけないことです。ただ,社会科学ではまた少し受け取り方が違うかもしれませんが,人文科学の範囲で言うと,課題丸1で言われていることって結構,以前の総合知の話と少し似ている部分があって,総合知に関しては,言葉は悪いですけど,結局人文科学・社会科学系は刺身のツマかみたいな,そういう議論が当事者の間であったことも確かです。
また,さっき迫田委員からもありましたけど,課題丸1に関しては,現状とは大分ギャップがあるのも事実なので,まず,課題丸1が目に入ったときに,当事者のみなさんから,また総合知のときと同じ話の繰り返しかとか,絵空事に過ぎないとか,そのように受け取られてしまうと結局そこで思考が止まって改革につながらないのではないか。課題丸1の後に課題丸2が出てきて,大学院自体も問題なんだから改革しなさいといっても,題丸1と課題丸2相互に関係していて,一方通行ではないということはちゃんと書いてあるんですけど,どうしても当事者の受け取り方としては,課題丸2にある大学院の改革も課題丸1にあるような目的のためなのか,ということになって,それだったら我々は知りませんみたいなことになってしまうと,結局改革が進まないのではないでしょうか。
そういう意味では,だからといって課題丸1を外せと言っているわけじゃなくて,むしろ,課題丸2のほうで大学院を改革しなきゃいけないと言っているのは,当事者もそう思っている部分があるわけですから,とにかくまずは大学院自体に問題があるんだから改革してくださいと。その中で,アカデミアに進む道もあるでしょうけど,アカデミアに行くんだって現状問題があるわけですから,そこはとにかく改革してくださいと。その上で,アカデミアも大事だけれども,産業界との協働であるとか,産業界に行くようなキャリアパスも見つけてくださいと持って行った方が,つまり課題丸2と課題丸1を,示し方として逆にしたほうが当事者には受入れやすいのではないかと思いました。当事者の受け止め方は私が想像しているだけですから,思い違いかもしれないですけど,そういう感想を持ちましたので,意見として述べさせていただきたいと思います。
取りまとめの細部については,また後で,お知らせさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。

【村田副部会長】湊先生,よろしいでしょうか。

【湊部会長】村田委員,どうぞ。

【村田副部会長】今の佐久間委員について御質問というか御意見について,少し私からお話しさせていただきますと,4ページ,あるいはその前のページにあるように,基本的に日本の人文科学・社会科学系の大学院の学位取得者数が少ない。なぜかというと,特に人文科学系はそうなのかもしれませんが,アカデミアに研究者の養成が中心になってしまっています。今,問題となっているのは,研究者の養成ではなくて,修士を出てちゃんと社会に出られる,そういう人材を育てていくこと,これが一番大きな課題だと認識しています。
そういう意味では,これ,丸1と丸2を逆転するのはあり得ないと思っていまして,むしろ,社会人に,いわゆる企業,産業界,あるいは社会,NPOでもいいんですけど,修士を出て,ちゃんとそこを出ていくような人,アカデミア以外のところにいくパスがあるということの認識を社会が認めていくこと,ここが一番今回の課題だと思っています。そうでないのであれば,これまでと全く同じ話になってしまうわけなんです。むしろ大学院の研究科の教員には,これまでは人文科学・社会科学系は研究者を輩出することしか頭になかった。そうではなくて,大学院を出てちゃんと社会で活躍できる人材をという視点を,意識の変革をしてほしいということ。もう1点重要なのは,なぜこの賃金プレミアムがあるかというと,大学院で学んだ学びの深さと広さ,私は特にそれを俯瞰的な能力と言ったりしますけれども,そういった能力が,実はこれが一番求められている能力です。あるいは,矢野先生なんかの言葉で言うと,学びの習慣仮説と言ってもいいんでしょうか,そこをちゃんと認識しておく必要があるということで,もう根本的に考え方,発想を変えていく必要があると,そのように思っております。少しその辺のことを御理解いただければと思います。

【佐久間委員】すいません。村田委員のおっしゃることは,私もそれはそのとおりだと思います。
ただ,そうであるならば,迫田委員からもありましたように,課題丸1の部分で,もう少し何か,具体的にどうするのかということがなければ,結局,当事者にはスルーされてしまうと思うんです。

【村田副部会長】恐らく,そこはこれから,先ほど西室長からもありましたように,今後,深掘りをどうするかということが課題でやっていくことが必要だと思うんです。
ちょうどそのことは,産業界のほうも,経団連のほうもレポートを昨年まとめまして,大学院でのリカレント,あるいは大学院の出身者を増やすということの認識がようやく出てきているわけですから,そこをこれからどうするかというのは大きな課題になる,より具体的な形にしていく。
中教審の委員会なんかでも,たしか金子元久先生だったと思うんですが,1980年代後半ぐらいからずっとこのマッチングの話はしているんだけど,具体化したためしがない。やはり今回,これを,具体化をどうするかということが一番重要じゃないかと。それが次の中間取りまとめの後の課題になってくると。そういう意味では,佐久間委員のおっしゃるとおりだと思います。

【佐久間委員】私としましても,課題丸1の部分を今後,ちゃんと深掘りしていくということであれば,特に何か全体に異議があるわけではないので,ぜひよろしくお願いしたいと思います。

【湊部会長】ありがとうございます。今のお二人の論点は,同等のところへ収束しそうな気もしております。中間取りまとめの3ページにも書きましたように,企業活動の中でもESG投資が例に挙がっていますけれども,私も最近外資系の投資家たちと話をすると,ESG投資というものはもう単なるポーズなどではなくて,企業活動の中でエッセンシャルな要素になってきていて,そういうことなしでは,これからの企業でもソーシャルセクターでもやっていけないと言われます。だから要請は,やはりあるのだろうと思うんです。
ここでマッチングがうまくいっていない,という意味の中には,一方で,日本の現状から言えば,社会の方から具体的にどういう要請があり,どういうことが必要とされているのかということの合意形成がまだ煮詰まってきていないということがあり,他方で,迫田委員が仰るように,大学でも具体的にどういうところで貢献できるかについてお互いになかなか明確な接点が出てきていないということがあるようです。しかし,ここでの論点としては,やはり人文科学・社会科学的な観点というか,考え方といったものが,様々な企業活動を含む,企業活動だけではないでしょうけれども,様々な社会的な活動で非常に大きな要素を占めざるを得ないようになってきているという機運が出てきているのではないかと私自身は思っております。こういったことも含めて,さらに手が挙がっておりますので,順次お願いしたいと思います。
では,川端委員からお願いできますか。

【川端委員】ありがとうございます。まとめていただいて,今の議論がやはりど真ん中かなという気はします。まとめ方にしても,今まで,要するに理系だって同じ,今までもよくお話ししていますように,理系だってスタートはみんなこういう状態で,産業界では活躍の場がないと言っていたのが,一緒に共同研究やったりいろいろなことをやっているうちに,だんだん企業にも学生にも教員にも狭い専門性のみならず学生が得た知識や経験も活躍につながるという認識が広がっていきました。とはいえ、高く博士を評価する企業もいれば,まだまだ食わず嫌いの企業もいっぱいあって,そういう中で,理系の博士の社会活躍がだんだん展開されているというのが今の状況です。まさに3ページ目が一番大切で,これをどうブレークダウンして,リアルな姿をともかく,学生・教員たちに見せない限り,何も前に進まないというのは,もうまさに今,御議論になったところかと思います。だから,ぜひここの部分,大学,民間一緒になってここをブレークダウンする,そんな取組をやるのがいいかなと,そんな気がしました。
あと何点かありまして,1つは修業年限の話だとか時間の管理が悪い,そうかもしれないんだけど,一方で満足度の高さというところというのは大切にする必要があって,だから自分の自らのテーマというのが決めるに当たって時間がかかっているというところもあるけれど,6年もかかるかと言われると,それはないだろう。でも,じゃあ修業年限というのは,ある程度の幅で理解されるというものも,理系も含めて,それは一緒に考えなきゃならないのかなと思います。
3点目は,現段階で,国立を中心に見ると文系の博士課程は社会人・留学生だらけなはずなんです。データは、どの部分の学生の満足度なのか,日本人の学生は一体どう考えているのか,いや同じなんだという話なのかというところがすごく気になっているというのが3つ目。
最後は,民間だけじゃなくて自治体も含めて,文科省もそうですし,それから大学の職員としての博士の活躍について,大学の職員として博士を受け入れるというのでURAという制度が,ある意味,理系が大半かもしれないけど,その中には文系のドクターも入れて取り組んでいる話があるので,そういうものもロールモデルを探して,自治体だとかいろいろなものにも表現していく例になればという気がしました。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。それでは,手がどんどん挙がっていますので,進みたいと思います。塚本委員,お願いできますか。

【塚本委員】取りまとめいただき,どうもありがとうございました。もう十分話題となっていますが,賃金プレミアムの話は,非常にキャッチーで分かりやすいメッセージなのではないかと思います。学生さんにとっても非常に魅力的でしょうし,また,社会にとっても伝わりやすいと思います。
おおかた企業の求人も,学部と修士に関しては初任給が2万円ぐらい違うなど既にホームページ等にも掲載をしているように思います。他方,あまり博士について初任給や賃金等を掲載・公表をしている会社がない、もしくは限られていると考えます。賃金プレミアムに関しては,修士なのか博士まで入っているのかや,博士まで入れるとしたらどうなるのかなど,修士と博士の違いも可能であれば分けて書いておくともっとよいのではないかと思いました。
以上です。

【湊部会長】村田委員,途中ですが,何か情報がありますか。

【村田副部会長】あります。このデータは独自に作成されたデータですが,一般的には就業構造基本調査のデータが用いられます。これは,2007年にようやく改定になって,やっと大学の学部と大学院が分かれたので,まだ修士と博士は分かれてないんですよね。これも早急に変えていただいて,ちゃんと分析していかないと,アメリカなんかは完全にできているのに日本は遅れているので,これもお願いしたいと思うぐらいです。ありがとうございました。

【湊部会長】ありがとうございます。データがあれば,さらに本当の姿が見えてくるような気がします。ぜひよろしくお願いいたします。
それでは,濱中委員,お願いできますか。

【濱中委員】濱中でございます。よろしくお願いいたします。
先ほどから,課題1の社会的評価や認知の不足に関して,これから詰めていく必要があるという村田先生の御指摘などについては,そのとおりだと思います。前期の部会のときから議論していることでもありますので,ぜひともお願いしたいと思っております。
別途,深めていかなければいけない観点が2点ほどあるのではないかということで手を挙げさせていただきました。
1点目なんですけれども,大学院そのものの課題ということで,今回は学生への調査から浮き彫りになっている点が中心となっていますが,今後は,なぜ教員の側がそういう状況に陥っているのかということに関してという方向に議論を進めていく必要もあるかと思います。指導の頻度が少ないとしても,それは別にさぼろうと思っているからではなく,指導していないわけではなくて,それなりに理由があるということもあり,そういった実情を明らかにする必要があるのではないか。
例えば文系ですけれども,学生が自分から出す問いを大切にするのであれば,どうしても指導と指導の間の時間をある程度取らなければならないものになります。理系のように実験をどんどん進め,その都度その都度,指導するというようなイメージでは全くありません。こうしたことなど,それぞれの必然性,あるいは制約といった事情を明らかにしておくことを課題に挙げておくべきかと思いました。
もう1点については大学院部会とは少し距離のある話かもしれませんが,「ネットワーク」という言葉に引き付けて申し上げますと,学会の動きも含めて考える必要もあるように思いました。例えば私が所属しています日本教育社会学会でも,所属大学を超えた大学院生のネットワークを作ろうという支援ともいえる活動をしています。私の記憶だと,理系の博士人材の就職のことを議論したものに関しては,学会が大事なアクターとして据えられていたような気がしますが,大学院のレベルの課題となると,学会というアクターも外せないのではないか。大学院と企業,パブリックセクターだけではなく,学会というアクターも位置づけながら描いていくと,また違った図柄が描けられるのではないかと思いました。
以上です。よろしくお願いいたします。

【湊部会長】ありがとうございます。確かに御指摘の点は,あまり議論の中に入ってこなかったけれども,学会というのは,大学組織を超えたグループなので,新しい局面のセクターとして大事かもしれないですね。ぜひそれについても検討させていただきたいと思います。ありがとうございます。
それでは,長谷川委員,お願いできますか。

【長谷川委員】ありがとうございます。もういろいろな方が御指摘なさったこと,そのとおりだと思うんですが,結局,こういう状況がどうして生まれるかと,どこかに1つの原因があって結果が出るのではなくて,ゲーム理論的なので,アクターがみんなこのようにやるとそこに落ちちゃうんです。なぜこういう指導体制になっているのかということも,長年の間,そのように個別の研究で研究者を育てて,個別の研究なんだから個人責任でしょうとなり,共同研究もないというような状況だった。そうなると,企業側はそういう人は使えないということになり,ますます距離が開くという,とても悪い均衡点に落ちてしまっているのですね。そこをがらっと変えるには,両方が変わらなければならない。企業でどういう活躍ができるのか,そういう活躍をしたらどれだけ給与が高くなるのかというインセンティブをはっきりさせる必要があるでしょう。
そういう教育目標を持った人が何人か出ていくことでだんだん変わっていくのだと思います。均衡点をぐるっと変えるのは,全員がそのように回さないといけないので,少し時間はかかると思いますが,19ページに出ている院生たちからの要望みたいなので,もっとグループの研究が欲しいとかほかのところを見たいとか,そういうことを言っている学生が多いということは,変わる兆しはあると思いますので,これと企業の要望とマッチさせる,企業だけじゃなくて就職するほうの側のニーズをマッチさせていくと,結構早くがらっと変われるかもしれないと思いました。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。仰るとおりで,こういう議論が契機となって,これは少し大きい声で言い続けなくてはならないかもしれないですね。ありがとうございます。
それでは,須賀晃一先生,お願いできますか。

【須賀委員】須賀です。よろしくお願いします。
先ほど来,出ていました賃金プレミアムは30%ぐらいあるというお話でしたが,先ほどの佐久間委員がおっしゃったことというのは,それは実際に正規で働いている人のみを対象として見ると30%ある。実は,非常に多くの人が博士の後に行方不明になっているといったことの実態まで踏まえ,そこまで含めると賃金プレミアムが実は相当に低くなっているんじゃないか。それが,進学を後押ししない大きな原因になっているんじゃないかという感じがするということも1つです。その辺りからは,前にも申し上げたんですが,もっと需要を増やしていただく方法がなかろうかということになる。大学教員であれば,大学教員で今,どういう部分が削減されつつあるかというと,一般教育や語学の関係といったところで,かなり減ってきている。これは,まさに人文科学・社会科学系が今まで人材を教育していた部分,そこの需要がなくなりつつあるというのが1つだろうと思います。
それ以外の需要を増やしていかなきゃいけないということで,具体的な方策については,今後,議論していくということではありましたけれども,需要に関して,可能な限り書き込んでおいていただけるといいと思っています。それは,1つにはロールモデルがあることによって,そちらの方向が見える。そのロールモデル自体が,実は非常にまれではなくて結構あるんだということが,需要の大きさによって規定されると思いますので,そこは何とかほしいなということです。
それから,場合によっては,例えば公的な機関では,クォータ制を入れて,例えば2割ぐらいは博士人材を採用してくださいねとか,そういったこともあると,これは全然違ってくるかなと思います。先ほど長谷川先生の均衡をずらすために何をするかということが,具体的な政策の中で出てくると思うんですが,私としては需要を増やしていただくというのが1つ大きいかなと思います。特に大学教員の需要を増やしていただきたい。教育の質保証の要請を全部学部にお返しすると,とても今の陣容では手が回せないという話になります。人間が足りないんです。ですから,大学の教員増をぜひ考えていただく。国立の場合も,私立の場合も,補助金の大きさになるのかもしれませんが,その辺りも併せて考えていただければと思っております。
それから,もう1点,これは22ページにあったんですが,文系の博士というのは専門性が高く,汎用性が低い,このように特色づけられておりました。汎用性が低いと思われるのは,社会に出て通用するような能力,あるいはスキルが少ないということになるんだろうと思うんですけれども,それに対して,2ページの絵を見ますと,2ページのほうは非常に重要な絵が書かれていまして,コースワークというのが,社会が求める能力のかなり大きな部分を占めているとなっています。コースワークをいかに充実させていくかということで,社会に出てどのような働きができるかということを示すものになるんだろうと思うわけです。
我々が反省しなければいけないのは,実は研究活動が,ここでいう研究室教育がメインになっていて,コースワークは実は名ばかりで,あまり汎用性のあるものをコースワークとして提供してこなかった。人文科学・社会科学系の場合は,かなりこの傾向があるんじゃないかと思います。ここを広げていく。社会で必要となる能力を組み込むような形で広げる。それは決して専門教育とか,専門の研究において不必要なものではないんです。つまり今の研究を深めていくには今の能力だけで十分かもしれませんが,少し幅を広げて研究を拡大していこうとするときには,必ず基礎に戻ってやり直しをしなきゃいけない。
実はコースワークはその段階で必要です。多くの人文科学・社会科学系の研究者が次の研究に移ったときに大体が成功しないと言われています。それは,コースワークで十分広い基礎知識,あるいは必要となるようなスキルを十分身につけてこなかったということが理由だと思うんです。そうすると,コースワークをいかに充実させていくかという議論の中で,社会に出て必要となる能力,研究者として幅広い研究を行っていくための能力といったものを身につけることなんだという理解で進めていただけると,もう少し方向性がはっきりしてくるのではないかという感じを持っております。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。先ほどから賃金プレミアムのことは何度も出てきましたけれども,これは考え方によっては,人文科学・社会科学系の大学院を修了した方々が,そういう社会的な企業等々のセクターに入る頻度は少ないけれども,うまく入った方々は高く評価されているという見方もできると思うんです。そういう意味では,そういうところがロールモデルのような形で見えてくれば,こういうことなんだということがお互いに,受け入れる側も送り出す側もわかってくれば大いに参考になる。そういう具体例を含めてコンセンサスができてくれば,全体に長谷川委員が仰るように,ムードが前に動くような気がしないでもないですね。ありがとうございます。
それでは,次に小西委員,お願いできますか。

【小西委員】青山学院大学の小西です。どうぞよろしくお願いいたします。
この会でも,ジョブ型雇用が一般的になりつつある現状を報告していただきましたので,グローバルな企業を中心にお聞きすると,本当にそのようになってきているということを最近実感していますので,まさしく大学院教育の重要性がアップしているのではないかと個人的には思っています。
そこでリスキリングやリカレント教育の在り方を,ここで考えていかなければならないと考えています。先ほど,座長のほうからESG投資のお話がありまして,文系大学院の発展にはチャンスのときではないか,まさしくそう私も考えております。ESG情報の開示が,会計情報として義務化されることが,今,国際的に議論されております。欧州においては早ければ来年度から強制開示になりますので,国際的な動向も踏まえて,大学院で教えることは,文系,特に社会科学系にとっては,その範囲が拡大していっているのかと考えます。
課題と改革の方向性は,非常によくまとまっていて,私自身も勉強になりました。その中で,私は2つポイントがあると思っていまして,1つは社会のニーズに合った研究テーマ,そして教育カリキュラムを設定できるかどうかです。これが研究科のサステナビリティを決めると言って過言でないと考えております。その1つの手助けとして,履修証明プログラムの活用等々をしやすくしていただいているのではないかと考えています。
2つ目が,学内あるいは学外の研究科との連携,そして産学官の連携,これはまさしくそのとおりだと思います。これも,ダブルディグリーを設定していただいたり,研究科横断的な学位プログラムということで,これまで文科省のほうからのいろいろ御提案や施策によって,実現可能性が高まっていると思っています。海外のオンライン授業ができるようになっていますので,海外の大学との授業とどう連携していくのか,どう共有化していくのかということを,今,考えているところです。私はそこをよく勉強しているわけじゃありませんが,いろいろ制約条件があるようでして,大学の中で,海外の大学との授業の共有化というところが,なかなかすんなりとは進まないという現状がありますので,この辺のところを考えていきたいと思います。この連携が,特に社会科学系大学院の発展の一助となるのではないかと考えます。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。良い御指摘をいただきました。
それでは,小長谷委員,お願いできますか。

【小長谷委員】ありがとうございます。先ほど長谷川委員がおっしゃいました,均衡をずらすというのは,別の言い方をすると,需要と供給を一緒につくるということでもあると思います。一般的には需要と供給がずれているから整合させるということになりますけれども,どっちもないわけです。企業へという社会的な需要も少ないし,そこへ供給する側も少ないし,だから無いどうしで均衡している状況を変えて需給両方一緒につくるための制度を今から考えていくということになるのだと理解いたしました。
それで,具体的な中間まとめを踏まえて,いろいろな施策がつくられるといいと思うんですけど,そのときに1つだけ危惧することがあります。それは専門性が高いと汎用性が低いと語られるということです。専門性と汎用性が相反するというのはまったくの間違いで,専門性が高いことは汎用性もあるわけです。例えば,私の専門である人類学で言うと,『アンソロ・ビジョン』という本が出ていて,ケンブリッジの文化人類学で遊牧民の研究をした方が,ビジネス界において,ビッグデータで解けない問題を人類学的な調査の手法でずっと解決していく現状が紹介されています。そのように専門による普遍性について,我々は見過ごしてしまっていると思います。人文科学系においては特にコンテンツに依存する側面が大きいので,指導する側も,学ぶ側も,ビジネス界に役立つと思わずに,好きなことのためだけにやっていると思いがちです。実は学んでいるのは少し方向を変えれば,ほかのことも調べられる,まとめられる,そういう論理,視点,データの所在とか,あらゆるスキルがそこにあるので,そういうコンテンツとスキルがちゃんと一緒に学べているということを,教える側も理解すればいいんじゃないかと聞いていて思いました。
コースワークを増やして,本格的な指導を減らしてくださいといったことにならないようにお願いします。

【湊部会長】ありがとうございます。ただいまのお話は,研究者から見ると非常に納得ができて,本当の専門性には全体性が要るんですよね。ありがとうございます。非常に参考になる御意見だったと思います。
それでは,宮浦委員からお願いできますか。

【宮浦委員】ありがとうございます。1点,先ほどから話題になっている賃金プレミアムの推定については,面白いんですけれども,その内実を調査してから,慎重に扱ったほうがいいんじゃないかと個人的には思っています。
例えば,推定ですけれども,自然科学系と比べて,文系の優秀な方が賃金体系,雇用契約,基本的に3年,ないし5年以外に勝負してもらって,駄目だったら辞めるというような,外資に近いというか,3年スパンぐらいの賃金体系契約で非常に年俸制が高く設定されていたりすると,非常にプレミアム感の数字が出てくるんじゃないかと。
それに比べて,自然科学系の大学院を出た方は,こつこつと企業で研究開発しているタイプだと,基本的にあまり上乗せされないとか,しかし,入ったときは一応終身雇用制度に乗っているとか,雇用形態とか職種によって大きく変わってくると思うので,3年で勝負する方のプレミアムと,自然科学系を一緒にされると,恐らくかなり差が出てくるだろうなと,その内実を少し説明がある形で出さないと,人文科学・社会科学系のほうが3割増しで取れるという一般的な話題にすると,少し危険かなというのが,話題性はあるんですけれども,そう思いました。
2点目は,修士の話と博士の話が,話が混ざっていて,時として,博士の方がいかに使えないかと,言い方は悪いんですけれども,という話題になったり,修士だったらどうかという話題になるんですけど,人数のマスから言うと,圧倒的に修士の方のほうが全国的に多いわけですから,7万人と1万数千人ぐらいの違いがあるわけで,最初トライするのであれば,修士の方を産業界で幅広く活躍していただくというほうが,まずは,例えば理系の修士はもう当たり前になっているわけですけれども,まず,そこに着手して,次に,博士かなという印象を思っています。
例えば,同じ企業さんが人文科学・社会科学系の修士と理系の修士がいた場合に,どういう目的で,どちらを取りたいかと思うのかというのに興味があります。部署によっては,人文科学・社会科学系の修士が欲しい,内容によっては理系の修士が欲しい,いろいろパターン化されてくるんじゃないかと思いますので,産業界であれば,まず修士というのが,私のアプローチとしては近いんじゃないかなという気がいたします。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。そうですね,今までのデータを見れば,もう少しそこは深掘りできるのかもしれないと思います。ありがとうございます。
それでは,加納委員からお願いできますか。

【加納委員】加納でございます。よろしくお願いいたします。大変な資料をおまとめいただきまして,ありがとうございます。
5ページの資料です。先ほど課題1,2の順番の話が議論になりましたけれども,よく見ると後ろに丸い矢印がついているのがよく分かりまして,実はこれ,それぞれの課題1,2の,それぞれに挙げられている課題が4つありますけれども,これは全て相互に関連していると見えます。ということは,これ,どれが先にということではなくて,同時に進めて少しずつレベルアップ,スパイラルアップしていくような,そういう取組が今後求められていくのではないかと思いました。それが1点。
2点目は,この取組が人文科学・社会科学系のそれぞれの部局の中に閉じた活動になってしまってはもったいないと思いました。できれば,自然科学系の分野においても,こういった連携をすることによって,これらの取組がさらに加速するのではないか。むしろ最近では,企業側のニーズというのは人文社会・社会科学に閉じた問題意識を持っているわけじゃなくて,自然科学系とも連携をして統合的に解決のできる人材といったものを求めているところもありますので,人文科学・社会科学系に閉じることなく,ぜひ総合大学は特にそうですけれども,自然科学系のメンバーも入れた上でこの取組をしていくということが必要ではないかと思いました。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。これは先ほどの小長谷委員の意見にも通ずるものがあって,この矢印をもっと色濃くしたほうがよかったのかもしれないですね。ありがとうございます。
それでは,次は神成委員ですか,お願いします。

【神成委員】中間取りまとめの案としては,前回よりも頭にすっと入りやすくなってきているのは間違いないので,御努力のほど感謝いたしたいと思います。ただ,まだ入り口のところで,私としては誰が本当に困っているのかという点が強調されていないと思っておりまして,産業界でもないし,学生でもないし,教員でもない,一番困っているのは統計上の博士取得者数が少ないというデータが一番困っているところなのかなというところが,少し弱いと思いますが,現状においては,こういうスタートの仕方しかないのかとも思っております。
それで,中間取りまとめとしてはいいんですけれども,これからアクションプランということを考えますと,やはり卵と鶏の関係であるという点。あるいは,先ほど長谷川委員がおっしゃられましたような均衡点をずらすことによって,違う解に落ち込ませていくというところなんですが,そういうループを考えていくと,私はどうしても1つ,自然科学系と人文科学・社会科学系が違うのは,教員の大学院教育におけるインセンティブ,厳しい言い方をすると教員の評価というところだと思います。自然科学の場合には,学生が多いことによって研究の進め方とか予算規模とか,そういうインセンティブが自然と入ってくるという正のフィードバックがかかるんですけども,人文科学・社会科学系のほうは学生が多いと,もしかしたら先生方の自分の本当の専門性を突き詰める研究時間が減るとかというような負のスパイラルがあり得るんじゃないかと思います。産業界に対して産業界が求める人材を教育して輩出することによって,教員として,何がプラスになるのかというところが自然科学の教員と大きく違うところなのではないでしょうか。そこはインセンティブとか評価という仕組みを入れないと,なかなか均衡点をずらすような仕掛けができないのではないかと思いました。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。そうですね。それでは,高橋委員からお願いできますか。

【高橋委員】ありがとうございます。そうしたら,これまで議論してきたことをより正確に反映するという観点から,コメントをまず2つなんですけれども,1つは村田委員や宮浦委員,神成委員がおっしゃっていた誰が困っているかということと,マスターとドクターを区分して表記しましょうということに関係します。1つは全体的に,マスターが終わった後に,アカデミアだけじゃなくて社会で活躍できるという人たちが必要だよねということを前文的なところで明記したほうがいいんじゃないか。もう一つは,8ページ目なんですけれども,この図だと少し分かりにくくて,この左側の図。22ページ目にも使ってあるようなんですが,学士から最初の上に向かう矢印ですが,アカデミックキャリアと民間キャリア,これが同じ色で,同じ修士のボックスに入ってしまっているところがかなり,この文章全体に表れている混乱を表しているような気がします。可能であれば,ページ8,もう少し区分して話ができると,後ろのほうの問題点が修士なのか,ドクターなのか,全部の問題なのかというところの最初の入り口として重要かと思いました。
2点目のコメントは,5ページ目なんですけれども,御説明の中では鶏か卵かという話が何回も出てきました。現状のところを見ると,先ほど神成委員が御指摘だったことと同じなんですが,誰が困っているのというところで,量的規模が極度に不足していることは困っているのかということで,ここでクエスチョンが湧いてしまうんです。恐らく現状を正確に描写するとすれば,量的規模が不足しているということに加えて,社会ニーズが不足しているのか,可視化が不十分なのか分かりませんが,この2点の鶏と卵を両方で記載しないと,次の課題1,2につながらないというような,これはロジックの話ですけども,気がいたしました。
以上2点がコメントで,最後に確認的な質問なんですけれども,17ページです。結構重要だと思うんですが,キャリアパスのところで,標準修業年限超過時間についてです。これ,その後の議論にも結構重要だと思うんですが,事務局の御説明で確認なんですが,あたかも因果のように,因果関係のように御説明されていたんですけども,これは単なる集計なので相関なのではないかと思うんですけれども,要は2年以内で,もしくは4年以内で終わった人たちがきちんとした職に就いているということをクロス分析しただけなのであれば,本当は,簡単に言うと優秀な方だからこそ時間内で整え,そしていいキャリアパスに進んだ,これは相関だと思います。ここら辺はいかがでしょうか。重要かと思いまして,指摘させていただきます。

【湊部会長】ありがとうございます。西室長,何か情報がありますか。

【西大学改革推進室長】すいません,多分,高橋先生御指摘のとおりなんだと思いますが,優秀だから正規で行ったんだろうとは思うんですけど,この人が優秀で,この人は優秀じゃないというスコアはなかなか取れないので,それを証明するものはないということでございます。

【高橋委員】全く同意です。そうすると,そのこと自体はいいんですけれども,17ページの左側のボックスの書きぶりが若干因果に取れるんです。それはやめたほうがいいと思うのと,その後ろの18ページ目のキャリアパスにも少し関係してくるので,表現ぶりを少し,相関であるということを前提にした書きぶりに整えたほうがいいかと思いました。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。実は,修業年限の件については,そのときの部会でもかなり議論になったと思いますけれども,確かに因果関係があるかどうかというのはよく分からない局面がありまして,早く修了するということと就業の相関は出ているんですけれども,優秀だから早く修了したのか,あるいは遅い,時間が超過しているということは単に個々人の能力を反映したものなのかというのは実は全く分からない。一部では,例えば教育の方針であるとか,メンターの姿勢であるとか,自然科学と少し違って,その辺りのところの標準化が実は必ずしもできていないようで,実態すらつかめていないというのが実情だろうと思うんです。それは逆に言えば,修了年限に至る着地点,課程が修了するところの着地点をどこに求めるかというのが,必ずしも客観的な形で標準化されていないということかもしれない。それは学問の性質なのか,あるいは学問に伴う歴史的なプロセスなのか分かりませんが,そういう確かに非常に複合的な要素の結果としてこうなっているということなんでしょうね。ですから,今,仰った委員のように,何かと因果的に関係するという形での表現は,誤解を招くおそれがあると思います。ありがとうございます。非常に大事な論点だと思いました。
ほぼ皆様方の御意見いただいたところです。私の印象として,おおむねこの方向性として,委員の皆様のお考えに齟齬がない,という気もいたします。ただ,細かい幾つかの点をピンポイントに御指摘をいただきましたので,そういったことをきちんと反映する形で,できれば私のほうで引き取らせていただいて,中間取りまとめとさせていただきたいと思います。
先ほどの質問に戻りますが,中間という意味は,これが全体の現状の解釈と指摘であるので,ではこれに基づいてどういう具体的なアクションが可能かという議論は,まだこの部会でも続いていくという理解をしております。そういう観点から,随分議論もしてきましたので,この形で,あとは私と副部会長のほうに,修正を含めて現行の中間取りまとめについて,一任いただけますでしょうか。まだこれは早い,もう少し練ってくれ,ということであれば,もちろんそのように対応いたしますが,この件につきまして,御意見があれば承りたいと思いますが,いかがでしょうか。よろしゅうございますか。もちろん最終形については,各委員に当然御覧いただくということが前提でございます。よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【湊部会長】私の見る限り,首を縦に振っていらっしゃる委員が多いような気がいたしますので,それでは,今までの議論を踏まえて,中間取りまとめ案をまとめたいと思いますので,こちらで引き取らせていただきます。ありがとうございました。
それでは,時間も少し過ぎておりますので,議題の2に移りたいと思います。議題の2は,「人文科学・社会科学系の学部学生における大学院進学の意向調査(案)」というものでございます。これは,これまでの議論にもありましたように,人文科学・社会科学系の大学院進学率自体が非常に低い状況にあるのは事実でして,それはなぜだろうということを含めて,学部学生を対象とした意識調査を検討しております。このことにつきまして,事務局から少し概要を説明していただければと思いますが,よろしくお願いします。

【西大学改革推進室長】ありがとうございます。今ほど部会長が御紹介いただきましたとおりの趣旨でございまして,データとしては,修士から博士になぜ行かないんだというデータは結構あるんですけれども,学部から修士になぜ行かないんだというデータがございませんで,お示しできるようなものはございませんでした。
実際,進学してもらうためには,どういうところに魅力を感じているのかとか,どういうところにボトルネックを感じているかということは結構重要なファクターだと思っておりますので,学部学生に対して意向の調査をしてはどうかと考えてございます。
資料2に書いてございますが,確認すべき内容というのは,大学院に進学する理由と進学しない理由,または検討もしていないとかいうことについては理由を聞いてみると。どういう条件があれば,大学院進学を検討するか,大学院進学をするか検討してもいいと思っているかということとか,大学院進学によってどういったことが得られると思っているかということをベースとしながら,その回答に当たる要因の分析として属性,特に学部の3回生,4回生(3年生,4年生)を中心に対象として想定をしておりますけれども,具体的にゼミに所属していますかとか卒論を書いていますかと,いわゆる研究活動みたいなものを少し触れているかどうかというのは結構大きな違いがあるのではないかと思っております。進学を希望するに当たって,どういった周辺環境とか人物とかが影響しているのかとか,あとは,奨学金の受給状況とか,国公私の違いがあるかということも分析できるといいかと思っております。
この点について,そのように思うように至ったきっかけがありまして,次のページ以降で御説明申し上げますが,アンケートの最後に,先ほど来,ずっと御議論いただいております賃金プレミアムの話ですけれども,そういったものがもしあるのだとすれば,大学院進学をしようと思いますか,思いませんかということで,そこのアナウンスによる効果があるかどうかというのも,併せて確認をしたいと思っております。
1枚おめくりいただきまして,この調査を検討する上で,少し参考になると思った調査があります。2007年に立命館大学において,人文科学・社会科学系の博士前期課程,いわゆる修士への学内進学者の安定確保と大学院教学の活性化を目的として,学内進学をなぜしないのかということについて分析をした調査がありました。
ざっと紹介申し上げますと,左上の1番,入学前を含めて,1年生,2年生までの25%ぐらいの学生さんは,既にもう大学院進学を人文科学・社会科学系でも考えている人がいるんだということ。右側,大学院進学を志望するに当たっては,特に水色の棒グラフを見ていただきたいんですけども,学区内の大学院に行きたいと思った人と,真ん中が他の大学に進学希望,一番右が就職するかどうか迷っていますという人なんですけど,ゼミ教員が与える影響というのが,右に行くほど下がっているというのが見てとれると思います。
左側の3ポツですけども,大学院進学志望者は教学内容への関心が高いということで,トップ3が並んでいますけども,講義等カリキュラムの内容がトップで,指導教員に魅力を感じているのが2番目で,大学院修了後の進路については3番目だったというのが,今回,この調査の結果でございました。
次のページ,4ポツ,大学院に進学した者が学部在学中に最も一生懸命取り組んだ学習というのは専門科目だったということ。進学した方は学習意欲が高かったと回答する割合が,1年生のときは47%で,4年生になると65%,学年が進むにつれて向上していますということです。5番で書いてありますのが3回生ゼミで積極的な関わりを持っている学生ほど,当該大学の大学院進学の志望が強いということになっています。その下のデータが4年生に対するアンケートですけども,3年生ゼミで活動状況の関連ということで,積極的な調査研究を一生懸命やった学生のほうが大学院,自分の大学院もそうですし,他の大学院に進むといった割合も高いというデータがあります。調査研究内容が面白いと思った学生は,その研究を同じ大学院で進んでやってみようということが,このデータから読み取れるのかと思っております。
次のページ,御覧いただきますと,6ポツ,3年生ゼミに関する学生の不満と多くの大学院進学者を輩出するゼミとの取組は表裏の関係にあると書いてございます。真ん中のあたり,墨付き括弧で学生の不満の声についてということで,ゼミに所属したんだからゼミでしっかり勉強したいんだとか,専門的な学習を深められるようなゼミの運営を図ってほしい。自主的,集団的に学修できるような学生間の交流を図ってほしい。教員との交流の機会を増やして的確な指導をしてほしいという不満の声がゼミに対してあるということに対して,その下,大学院進学者を多数輩出しているゼミはどういう特徴があるんですかというのを見たところ,3回生と4回生のゼミは合同開催にするとか,大学院生の参加を呼びかけるなど,上回生や大学院生との交流を活発していますと。グループワーク形式によるゼミ運営など,自主的な勉強会を頻繁に行わざるを得ない環境をつくっている。自主的なゼミ活動や研究会が頻繁に行われており,回生を問わず参加があるとか,研究構想,中間報告,最終報告の各段階でレポート添削を個別に行うということで,下に矢印を引っ張っていますが,ゼミにおいて本気で勉強や研究する機会が作れれば,積極的にゼミに参加し,結果として高い学力を形成し,大学院進学へ動機づけられる好循環を生み出すことができるというレポートになっております。
最後にですけれども,最後のページ,7ポツ,大学院を知らない学生が相当数いるということです。学部4回生のアンケートで一番多かったのは,大学院で行われている教育や研究の内容がよく分からないというところが80%ぐらいまで来ていると。2番目に,大学院は研究者,教員志望の人が行くところだという認知バイアスがあると。あとは,3番目はポジティブな話ですけども,大学院では高度で専門的な研究を行っており,専門分野での就職に役立つと思っているというのが60%弱。大学院に進学すれば資格や免許取得に役に立つというのが40%。一番下,大学院卒のほうが学部卒より就職に有利だということが20%しかいないと。「強くそう思う」に関しても多分5%強,10%弱ぐらいしかいないという答えが出ていて,こういう認知状況だったら進学しないのが当たり前かと言わざるを得ないと思います。
この論文中で指摘されている課題として3つありまして,各部低回生や進路志望時期である3回生に対しての進路としての大学院進学の訴えが不十分,これは学内の話です。丸2番,大学院進学志望に当たって強い影響を与える相談者への取組が不十分。3番目,学部ゼミや専門科目を通じて本気で勉強や研究する環境を十分つくれていないということを反省として,このレポートは終わっております。この調査は立命館の中のサンプルでございますので,こういったマインドが一般的に言えることなのかどうなのか,学部学生が進学する上で,どういうインセンティブが働いているかということを調べる上で少し参考にさせていただきながら,調査項目をつくっていければと思っております。
委員の先生方におかれましては,こういった観点を聞いてはどうかとか,これが結構事実だと思うとか,学生はこう思っているらしいみたいなことがございますれば,この場で少しサジェスチョンいただいて,実際の調査方法については,事務局にお任せいただきたいんですけれども,少し御示唆をいただけると大変ありがたいと思ってございます。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。こういう調査は,これまでデータがあまりないそうです。これまで我々が自然科学系で検討してきたときには,修士がなぜ博士に行かないのかという議論は随分やったのですが,人文科学・社会科学系では,その前に,まず,学士がなぜ修士あるいはそこから先に行かないのか,というところに非常に大きな壁があって,それは何なのかということについて,少し統計を取るために,学生の意識調査をしたいというのが,事務局側からの提案でございます。まず,このようなことをやることの意義,あるいはもしやるならこういうところへ少し重点を置いてほしいといった御意見がございましたら,ぜひお聞かせいただければ,これから始めるところなので対応させていただきたいと思いますけれども,いかがでしょうか。
村田委員,お願いいたします。

【村田副部会長】ありがとうございます。こういう調査をぜひお願いをしたいと思います。今,部会長からお話がありましたように,理系の大学学部は,国立だったら8割ぐらいが大学院に,私学でも5割から6割は大学院に,当然ある意味,修士を出ないと,自分の専門的な仕事に就けないとなっていますから行くんですが,残念ながら,文系の場合は,そうはなっていない。特に,2007年のときというのは,まさにまだ今日の議論ではなくて,単にアカデミアを目指して大学院に,修士,ドクターに行くかというような観点でしかないんです。そういう意味では,資料2の後ろのほうに,アンケートの最後に賃金プレミアムのデータを紹介しと書いてあるので,まさにこういう観点を入れて,アンケートをお願いできればと思います。15年たっていますので,状況は違っていると思いますから,その点よろしくお願いいたします。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。了解いたしました。それでは,川端委員,お願いでできますか。

【川端委員】ありがとうございます。以前,理系のほうでこういうことをやったことがあったので何点かだけ。
1点目はタイミング,要するに,就活するタイミングでいろいろなものを,学生さんは知識として得たり,得なかったりするので,アンケートのタイミングがずれると,それで意見がどんどん変わっていくという,その1点,それはぜひ気をつけていただければというのと,それから研究に,ゼミという話,先ほど出ましたけども,研究に触れたら確実にその後の大学院ということにかなり強く意識し始めるので,そこがアンケートとして研究に触れた人が,その後どのように感覚を持ったかと,そういうアンケートの作り方というのが面白いかと思います。
それから3つ目は,ごめんなさい,これはさっきから出ているものに,反対するわけじゃないんですけど,ドクターに行った人間でも何でもそうなんですけど,じゃあ賃金で本当に行ったのかという話をすると,大体の人はみんな,いや,研究が面白いから行ったんですというのが大半の最後の落ちなんです。だから,大人はついつい行かない理由を賃金に求めたりするんですけど,行く理由というものを重点的に取っていくというアンケートをぜひつくっていただければと思いました。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。それでは,佐久間委員,お願いします。

【佐久間委員】よろしくお願いします。このアンケートはぜひやっていただきたいと思うんですけど,立命館の調査は2007年ですから,そこからもう15年たっているのでいろいろ状況が変わっていると思います。やはり一番変わっているのは就活が非常に早期化しているということで,昔は3年生に大学院進学へ向けてアプローチすれば何とかなったかもしれないですけど,もう3年生の夏休みぐらいからインターシップが始まっていて,そこで,学生はいろいろな知識を得てしまいます。そうすると,すぐ社会に出ることが素晴らしいことのように感じられて,じゃあもう就職しようかみたいな話になってしまうところがあるのではないかと思います。先ほど川端委員からもありましたが,そこら辺,就活などがどう影響しているのか,調査のタイミングによっても結果が違ってくるのは,確かにそのとおりだと思いますので,そこら辺はなかなか難しいところですけど,そこを少し念頭に置いて,調査いただければと思います。よろしくお願いします。

【湊部会長】ありがとうございます。それでは,濱中委員,お願いします。

【濱中委員】よろしくお願いいたします。立命館の調査にどういう項目が含められているのかわからないので,的外れなことを申し上げるかもしれません。申し上げたいのは,今の人文科学・社会科学系の学生に話を聞くと,取りあえず就職はするけれども,いずれ大学院に戻ってきたいという学生も少なからずいる。したがって,大学院進学の希望に関しても,ストレートに大学院に進学したいのか,いずれ戻ってきたいのかということを分けて聞く必要がある段階になっている気がいたしました。
あと方法に関しては事務局にお任せをということでしたが,2つほど申し上げます。
1つ目は,サンプル数を大きくする必要があることに注意しなければならないということ。そもそも進学率がものすごく低いですから,1,000人に回答してもらっても,大学院進学希望者はごくわずかということになります。そうなると,統計的に耐え得るような分析ができないことになりかねませんので,どのタイプの大学で調査するかにもよりけりですが,要は,分析に耐え得るようなサンプル数が取れるような設計にしておく必要があるというのが,1点目。もう一つは,先ほどから出ている賃金プレミアムの話なんですけれども,これはぜひとも村田先生の御助言をいただきたいところですが,安井先生の論文を確認しますと,リクルートのワーキングパーソン調査のデータを使ったものになっていました。リクルートのワーキングパーソン調査は首都圏の調査なので,都市部に偏った賃金プレミアムのデータになっているということになります。いわば,特殊な結果になっているという側面があるため,ほかの分析結果も併用する,もしくは首都圏の結果だと断り書きを足すなどの対応が必要であるようにも思いました。これに関しては,事務局,湊先生,村田先生の御意見のとおりに,と思っております。よろしくお願いいたします。

【湊部会長】大事な御指摘いただきました。ありがとうございます。それでは,塚本委員,お願いします。

【塚本委員】ありがとうございます。この調査は興味深いのでぜひやっていただければと思います。今回のスコープ外かもしれませんが,リカレントという観点で,例えば経団連の企業側及び経団連企業の中の30代・40代の社員自身などからもアンケートを取ってみると,「リカレントという観点から大学院をどう思うか」が分かり,より意味のあるものになるかもしれないと思いました。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。須賀晃一委員,お願いします。

【須賀委員】修士の学生さん,修士を終えて就職していく学生さんに聞くと,大体就職が悪く,不利になることは分かっていても,4年生までで十分な研究ができなかったので修士に行きましたというような答えをする人がかなりいるんです。ですから,そういった面というのは,どういう形の項目で反映できるか分からないんですが,どのような考え方を持っているのかということがうまく分かるような調査にしてほしいなというのが1つ。
それから,もう一つは,彼らは産業界がどのように評価してくれると思っているかと,そこがうまく聞けるといいのかと思っています。ここは自分がどう思ったかということが基本にあるんですが,産業界が自分たちをどういうふうに評価していて,それがどのように影響するのかで決定をしているということもよく聞く話なので,何かうまくその辺り,引き出せたらいいなと思っております。具体的な項目じゃなくて申し訳ないんですが,そういったことを考えられたらありがたいと思います。

【湊部会長】ありがとうございます。それでは,神成委員,お願いします。

【神成委員】少し難しいアンケートになるかもしれませんが。学部生は4年で卒業するときに,産業界で本当に活躍できる能力との間に自分の現状とはギャップがあるということは自分で分かっているはずなんです。なので,例えば,社会課題解決能力とか,数理的推論,データ解析,異分野連携実績とか,コミュニケーション能力とか,そんな項目を挙げて,必要とされる能力との間に今どのくらいのギャップがあると感じているか,その不足分を埋めるために,今後どういう手段があると考えているのか。企業に入社後のOJTにすごく期待しているのか,リカレント教育を利用して大学での学び直しを将来やろうと思っているのか,あるいは会社に入ってから自分で勉強して埋めようとしているのか。そういう学生の考え方が明らかになると,現状では大学院にはそれらを求めていないんだなという事実の裏返しとして,教育する側が分かるところがあるのではないかと思うので,もしそういうアンケートが取れたらいいなと思いました。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。まだご意見がありますね,波多野委員,お願いします。

【波多野委員】波多野です。ありがとうございます。
もう一度,さっきの議題とも関係するんですけども,これ学生だけじゃなくて,先ほどの量的規模の極度に不足,誰が困っているのかというところをもう一度考え直す点でも,産業界が,パブリックセクターがどう必要としているかというアンケートというのがないと,なかなか訴えられないかなと思っています。自然科学への博士は,いろいろな情報サイト,博士用の就職サイトみたいなのもどんどんできていて,今後,それがどんどん共有化されると思うんです。そこで企業とマッチングがどんどん起こりつつあるかなと,いい方向に向かっていると思っているんですけども,そういうことにもつなげるためにも,もう少し企業へのアンケート,どういう人文科学・社会科学系の人を求めているかという,前回,梶原委員にお話しいただいて相当迫力がありましたので,そこをもう少し定量的なデータが取れればよろしいかと思います。
ジョブ型インターンシップ,本当に危機感を感じています。じゃあ,企業側はどう考えているかというところも含めて,ジョブ型インターンシップが3年生の夏休みに始まり,就職活動と学生は捉えていますので,その辺も含めて,全面的な考え直しが必要かと思っています。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。大体お聞きましたが,非常に重要な御指摘いただいたので,それらをできるだけ反映した形で,質問項目をつくりたいと思っております。
先ほど,古いデータの,確か立命館のデータですか,御指摘がありましたけれども,私も最近,実際学位指導をしている若い教員達に,現在の学生がどう考えているかということを随分聞いたことがあるんですけれども,なかなか難しいのは,今の学生はトレンドとブランドで動くと言うんですね。修士から博士に行かない理由を聞くと,はっきり言えば,博士課程は彼らにとってもうブランドではないんです,という優秀な学生が結構いると。そうなると,では日本の博士課程,大学の博士課程のブランドとは何かということを考えなければいけないのかという気もします。
それから,もう一つ前の段階で,結局今の学生の大半はトレンドで動いているんですと言うんです。そのトレンドは誰がつくるんだろうか,先ほどから就活のタイミングが早まっていること,いろいろな社会状況や企業の姿勢,そういったもので学生の間にトレンドというものができてくるのでしょうが。大半の学生はこのトレンドという大きな波を敏感に感知しながら動いていくということも思いました。
そういう意味では,この問題は実は非常に根深くて,社会の現況,社会が若い学生たちに対してどういう見方をしているか,企業はどういう見方をしているかということを,結局は随分反映していて,学生たちはそういったことで動かされていくという要素も大きいんだろうと思うんです。そう考えると,我々は随分難しい問題を扱っているという気がして仕方がないんですけれど,これは無記名のアンケートですから,できるだけ正直な答えや本音が聞けるような形でのデータが取れれば良いと思います。
先ほど御指摘がありましたように,これは人数が少ないと統計的にあまり意味がないというのもその通りだと思います。ですから,まとまった数の回答を,しかもサンプルにあまり偏在性のないような形で収集しないといけない。文部科学省の,ここの四,五人のスタッフでできるかどうか難しいですが,できる範囲でやれるだけやってみて,ある程度まとまりができた時点でお知らせして,御議論いただきたいと思います。ありがとうございます。
そろそろ良い時間になってきたんですが,最後に,前回に議題となりました,大学院設置基準の改正について報告がございます。今回の大学院設置基準の改正は,もともと先般報告があった学部の設置基準改正に連動する部分をどうするか,という議論をさせていただいたものです。その中で,かなりの部分は学部固有の要素だったわけで,基幹教員の考え方についても,あの時点では大学院では取り入れないということが一応の結論になっております。
時間的なこともあり,直ちに大学院にも基幹教員と同等のものを取り入れるということは難しいので,原案どおり大学院にはすぐには適用しないということで進めるということにさせていただいておりますが,これについては,いろいろ御意見もあると伺っております。とりわけ,コンセプトの面では大事な要素もあるので,基幹教員の部分につきまして,大学院としてどう考えていくかということについては,別途改めて十分に時間を取って議論をさせていただきたいと思います。もし大学院にもこういう基幹教員というような制度が必要であり,かつ有用であるということであれば,その時点で改めて大学院側の基準改正ということもあり得るということで進めさせていただく,という結論にさせていただきますが,それでよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【湊部会長】ありがとうございます。それでは,別途時間を設けてもう少し突っ込んだ議論をした上で,最終的に大学院部会としての方針を決めるということにしたいと思います。
何とか今日は幸いなことに時間どおりに収まりそうなので,最後に,事務局から連絡等がございましたらお願いいたします。

【西大学改革推進室長】本日も活発な御議論をいただきまして,ありがとうございました。本日の議事内容も含めて,また,お気づきの点等ございましたら,事務局まで御連絡ください。
なお,次回の開催につきましては,改めて日程調整等,御連絡を申し上げます。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。
今日も活発な御議論をいただき,ありがとうございました。中間まとめにつきましては,これからもう少し今日の御意見を反映させていただいて,最大限,全体の部会の意向を反映できるような形にしてまとめさせていただきたいと思いますので,よろしくお願いをいたします。
もう少し時間がありますが,今日はこれで終了といたしたいと思います。本日は本当にお忙しい中,ありがとうございました。これで終了いたします。

―― 了 ――

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