大学院部会(第103回) 議事録

1.日時

令和3年11月22日(月曜日)15時00分~17時00分

2.場所

WEB会議

3.議題

  1. 大学院設置基準等の一部改正について
  2. 国際連携教育課程制度(ジョイント・ディグリー)の見直しについて
  3. 人文科学・社会科学系の大学院に関する背景データについて
  4. 大学院におけるリカレント教育の振興について(産業界における人材ニーズの現状)
  5. その他

4.出席者

委員

(部会長) 湊長博部会長
(副部会長) 村田治副部会長
(臨時委員) 加納敏行、川端和重、神成文彦、小長谷有紀、小西範幸、佐久間淳一、迫田雷蔵、須賀晃一、菅裕明、高橋真木子、田中明彦、塚本恵、長谷川眞理子、波多野睦子、濱中淳子、堀切川一男の各委員

 

文部科学省

(事務局)増子高等教育局長、森田大臣官房審議官(高等教育局及び科学技術政策連携担当)、里見大臣官房審議官(高等教育局担当)、新田大学振興課長、西大学振興課大学改革推進室長、岸本高等教育局主任視学官、島津経済産業政策局産業人材課長(経済産業省) 他

5.議事録

【湊部会長】それでは,所定の時刻になりましたので,第103回の大学院部会を開催したいと思います。本日は御多忙の中,委員の皆様,お集まりいただき誠にありがとうございます。
本日は宮浦委員が御欠席ですが,それ以外の委員の先生方は基本的に全てオンラインで御参加をいただいております。
では,まず事務局から,会議に当たりまして事務的連絡等をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【西大学改革推進室長】失礼いたします。会議に当たりまして,何点か御連絡いたします。
会議に当たって,ウェブ会議を円滑に行う観点から,御発言の際は「挙手」ボタンを押していただきまして,部会長から指名されましたら,お名前をおっしゃってから御発言いただきますようにお願いいたします。
御発言の際は,通常よりも少し声を張ってくださいますようにお願いいたします。また,発言時以外はマイクをミュートにしていただくようお願いいたします。
資料につきましては,議事次第に記載のとおり,事前にメールでお送りしております。画面投影はいたしませんので,お手数ですが,お手元の資料を御覧いただきますようにお願い申し上げます。
システムの状況によりましては不都合がある場合もあるかと存じますけれども,御協力のほどどうぞよろしく申し上げます。
事務局から以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。それでは,早速議事に入りたいと思います。
本日,議題の1は,以前から御議論いただいてまいりました,大学院設置基準等の一部改正についてであります。
まずは事務局から御説明をお願いしたいと思います。

【西大学改革推進室長】事務局でございます。大学院設置基準等の一部を改正する省令ということで,中身はちょっと前になるんですけれども,大学院レベルにおきましても,履修証明プログラムに単位を付与することを可能とすべきではないのかということについて御議論いただいたことがございました。それはおおむね了ということで,本部会で決定いただいて,今回事務局のほうで法令改正に必要な手続を行ってまいりましたところ,このたび必要なプロセスが全て終わりましたので,改めまして大学院部会で御了承いただきますれば,今後大学分科会で御了承いただいた末に,省令改正をしたいというようなことでございます。
お手元の資料1-1を御覧ください。省令を改正するに当たっては,広く意見を公募するというパブリックコメントの手続が必要となってございまして,今年の7月下旬から8月の下旬にかけて,1か月間,ホームページ等におきまして周知をしてまいりました。その中で意見を個人の3名の方からいただいております。
概略でございますけれども,一番上の丸,単位授与を認める場合に,第三者の評価や最低の基準や目安が必要ではないかといったこと。同じような話で,3つ目の丸,本来,大学院で授業しなければいけない科目を他の大学院に担わせることで,本来授業すべき大学院の教育研究レベルが低下するのではないか。次の丸の2行目ですけれども,大学院教育や研究の空洞化が進むのではないか。最後の丸ですけれども,教育研究水準の低い大学院が学生を集める手段として用いることで,本来淘汰されるべき大学の存在維持を助長するのではないかといった御意見があったところでございます。
もう一つちょっと切り口が違う御意見としては,2番目の丸でございますけれども,教員免許更新講習の廃止議論を含めて,教員研修の在り方が問われている。その中で大いに賛同するといった中で,他方教職大学院においては必修領域が多い等,カリキュラム上の制約があり,入学前に履修したプログラムに対して,柔軟に単位を授与・認定することの困難さがある。今回の制度改正を実質化するためにも,教職大学院における必修領域の柔軟化等についても併せて検討されることを期待したいという御意見をいただいております。こちらは教員免許制度改革とも連動する話ですので,事務局にて担当室のほうにお伝えさせていただこうと思っております。
改めての御説明となり大変恐縮なんですけれども,資料1-2を御覧ください。一番上は,文字が並んでおるので,1枚おめくりいただきまして,2枚目の図で書いてありますけど,大学院における履修証明プログラムへの単位授与・認定(イメージ)というもので御説明させてください。
まず,A大学院で授業科目がここに2つ並んで,各種講座とか公開講座とかがまとまっているもの,履修証明プログラムと今法令上言っているものは,トータルで60時間以上の学修を求めているというものでございまして,これに対して履修証明書を出すことが,従前できるんですけれども,ここに対して今回新しく単位を付与することができるようにしようという改正でございます。
これは従前学部では認められておったんですけれども,授業科目以外にも公開講座とか各種講座を体系的に学ぶという意味で,そういった外部のものも含めてプログラム化することを認めておったものですから,大学院レベルの単位としてこれが適切かどうかということで,大学院では認めてこなかったという経緯がございます。今回これを認めることにしつつ,そこの何単位相当かというのは,まさにこのA大学院で判断をすることになります。
これをもちまして,個人が履修証明プログラムの単位を持って,例えばB大学院に今度入ったという場合に,B大学院で正規の課程の授業をやるわけですけれども,A大学院の履修証明プログラムで学んだ分の単位を,例えば2単位として認めることを可能とする。例えばA大学院が4単位だというふうに言った場合であっても,B大学院が改めてそれを見たときに,これはうちの大学では2単位相当だよねということであれば,そこはもうB大学院が御判断するという形になります。
あわせて,B大学院で学修している学生さんがC大学院にも通って,B大学院在学中に別の大学の新しい履修証明プログラムで修得した単位についても,これを併せて認めることも可としようと。もちろん認めなければいけないということではありませんので,こちらもあわせてB大学院がどのくらいの単位であるかを改めて見るということで,B大学院のこの学生の場合にとっては,B大学院の学位を取って修了する際に,A大学院の単位とC大学院の単位も合わせて,B大学院で取得したものとみなすことができるというのが,今回の改正の趣旨でございます。
なお,A大学院,C大学院それぞれ最大で15単位分まで持ち込むことを認めようということでございますけれども,合算した場合にあっても,ほかの大学院から引っ張ってこられる単位については最大で20単位までとしたいということが,今回の改正の趣旨でございます。
以上でございます。よろしくお願いいたします。

【湊部会長】ありがとうございました。このような改正案でございます。これにつきましては,この大学院分科会にて諮問・答申を行った上で,文部科学省にて公布に向けて手続を進めていただくということになります。よろしゅうございますでしょうか。
村田先生,どうぞ。

【村田副部会長】これで結構だと思います。全く異存ありません。
1点だけお願いなんですが,しつこくて申し訳ないんですが,この履修証明プログラムを単位認定はいいんですが,履修証明プログラムの今60単位,ここの再検討をぜひお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【湊部会長】ありがとうございます。そもそも履修証明プログラムそのものの単位のことでございます。これにつきましては,また文部科学省でも御検討いただいて,必要であればこちらのほうも議論するということにいたしたいと思います。よろしゅうございますでしょうか。

【西大学改革推進室長】はい。ありがとうございます。

【湊部会長】それでは,次の議題に進みたいと思います。2番目は,国際連携教育課程制度,いわゆるジョイント・ディグリーの見直しについてでございます。文部科学省の高等教育国際戦略プロジェクトチームの岸本リーダーから御説明いただけると思います。よろしくお願いします。

【岸本高等教育局主任視学官】よろしくお願いいたします。それでは,資料2を御覧いただければと思います。
国際連携教育課程制度の見直しについてというものでございますけれども,この制度ですが,平成26年度,7年前に創設されたものでございます。その下のダイヤのところにありますように,我が国の大学と外国大学が連携して教育課程を編成した場合に,両大学が連名で学位記を出すことができるという仕組みでございますけれども,これまでに7年間で国内12大学から26プログラム実施されているという状況でございます。
現行制度の概要といたしましては,まず,我が国の大学に外国の大学と連携して教育課程を編成する学科・専攻を設置する。これは全て設置認可の対象となっております。学位分野に変更がなくても,全て認可申請をしていただくこととなっております。
それから,その次のダイヤのところですけれども,国際連携学科・専攻の収容定員ですが,母体となる学部・研究科の収容定員の内数で,上限2割となっております。その学科・専攻には,収容定員の規模にかかわらず,1名の専任教員が必ず必要となっているほかは,母体となる学部等の専任教員が兼ねることができることとなっておりまして,施設・設備の共用も可能となっております。
それから,卒業には我が国の大学で修得すべき単位,その半分以上,すなわち学部ですと62単位ということになりますけれども,そして外国大学で4分の1以上を修得する必要があることとなっております。
それから,2ページ目なんですけれども,先ほど申し上げました,現在開設されているプログラムの一覧になっております。26プログラムが実施されておりまして,ほとんどが国立大学の大学院のプログラムとなっております。
その次の3ページ目ですけれども,このJDなんですが,開設以来,学生の国際性の育成に寄与するといったことですとか,大学の教育課程の在り方,授業の方法,学内の教育システムの見直しの機会となっていると。また,開設分野の共同研究の拡大ですとか,国際共著論文の増加など,研究面での国際化の進展にも寄与しているということで,高い評価をいただいている一方,しかしながらということで,JD制度創設時において,外国の大学の教育資源を活用して教育課程を編成する初めての試みであったということで,かなり慎重な制度設計となっております。このために設置にかかる負担が非常に大きくて,相手の外国の大学との認識のギャップが大きいといった課題が指摘されているところでございます。
これに関しまして,制度創設から7年間が経過し,実績が蓄積されてきたということも踏まえまして,我が国の大学間で共同教育課程を編成する際と同程度に要件を緩和するために,今回大きく3点の見直しをし,さらなるJDの拡大に向けた柔軟化を進めていきたいと考えております。
その一方で,特に外国の大学の質保証というものが大事になってくると思いますので,それを確認する仕組みを入れることで,JDの質を担保していきたいと考えております。
こういった方向性につきましては,その下,参考のところにありますけれども,教育再生実行会議の第十二次提言などにも示されているところでございます。
次の4ページ目を御覧いただきたいと思います。まず現行のところなんですけれども,JDを開設するための国際連携学科等の設置に当たっては,学位の種類や分野の変更を伴わない場合であっても,全て大学設置・学校法人審議会による設置認可を受ける必要があるとなっております。これは先ほど申し上げたとおり,外国の大学の教育資源の活用を前提として,JDを実施する学科等の教育資源の大幅な変更を伴うものであるということで,制度の運用が安定するまでの間,創設当時は全ての開設に関して設置認可を要するとされたということでございます。
課題のところなんですけれども,我が国の大学等にとって既存の学位の種類や分野の範囲内での教育課程の開設であったとしても,全て設置認可が必要となっておりますので,非常にその負担が大きい。多くの諸外国では,相手方の大学ではプログラム設置自体は認可の対象になっていない場合が多いものですから,日本大学との認識のギャップが大きいということで,これがJD普及の支障となっていると,これまで開設された大学からも御指摘いただいているところでございます。
一番下の矢印のところなんですけれども,他方でということで,外国大学等は我が国の設置認可制度の外にあるということでございますので,今まではすべからく設置認可の対象とすることで教育の質が担保されていた面があることについて,仮に届出で設置ができることになるとすると,質の担保が図られなくなるという懸念もあるところでございます。
次の5ページ目を御覧いただきたいと思います。これに関しましての見直しの方向性ですけれども,これまでの実績や,我が国の大学等の間で共同教育課程を編成する際に求められる要件を踏まえまして,学位の種類や分野の変更を伴わない場合については,届出による設置を可能としてはどうかと考えております。
一方で,質を確保する必要があるということでございますので,JDを実施するための要件として,連携外国大学等について,その教育研究活動等の総合的な状況について,外国の政府もしくは関係機関,またはそれらの者の認証を受けた者による評価を受けていることを求めてはどうかと考えております。
下の図にございますけれども,左側の図のようなパターン,法学と経済学の学位を出しているけれども,今後,情報経済学についての連携課程をつくりたいという場合,これは新しい分野が入っておりますので,これまでと同様,引き続き今後も設置認可申請をしていただくというパターンでございます。
一方,右のパターン1とパターン2のような場合,今まで法学と経済学の学位を出していて,経済学に関する国際連携課程をつくりたいということであれば,これはもう今後は届出による設置が可能になるわけでございます。
それから,次の6ページ目,大きく分けて2点目の見直しについてでございます。収容定員制限の撤廃でございます。現行はどうなっているかと申し上げますと,国際連携学科等の収容定員につきましては,その学科を設ける母体となる学部の収容定員の内数2割が上限となっております。1学部に複数の連携学科を設ける場合には,その連携学科の収容定員の合計が2割以内となることを求めております。
これは制度創設時の既存の類似の取組において,国際的な大学等間連携を目的とした少人数の学生を対象としたプログラムが多かった実態があったということですので,それを踏まえまして,JDは,既存の学部等を母体として,その教育資源を活用する形で,新たな国際連携学科等を設置することといたしまして,母体となる組織における教育研究活動の円滑な実施に支障を生じさせないようにする配慮をしたということでございます。
また,丸2のところですけれども,そもそも既存の学部等を母体として,その一部を活用して国際連携学科等を設置するということは,仮にJDが天災ですとか,騒乱ですとか,そういった何らかの事由で中断,または中止となった場合に,在籍する学生に対して,母体となる学部等において引き続き必要な教育を提供することができるようにするという,この2点の理由からこういった規定になっております。
これに関しまして,課題なんですけれども,外国大学との調整において,より規模の大きいプログラムの実施の場合には,この2割規制が障壁になっているという御意見もございます。特に大学院などについてはもともとの定員が限られているということもございますので,大きいプログラムの実施が困難であるといったことが指摘されていたということでございます。こういった大規模なプログラムが実施できないことが,JDの普及が進まない要因の一つとして指摘されていたということでございます。
他方で,仮に2割規制を撤廃した場合,連携先の外国大学等が何らかの事由で連携を継続できなくなった際の懸念については,引き続き何らか手当てをしていく必要があると考えております。
7ページ目です。見直しの方向性ですけれども,これまでは明らかでなかった大規模プログラムへのニーズが高まっていることを踏まえまして,既存の学部等を母体としてその教育資源を活用するという考えを改めまして,2割という収容定員の制限はもう撤廃することにしてはどうかと考えております。ただし,これによりJDを実施する国際連携学科等には,通常の学科等と同様に教員数や施設整備を求める必要があるのではないかと考えております。
あわせまして,先ほど申し上げた懸念点,JDの実施が困難となった場合なんですけれども,こういった場合を想定して,あらかじめ計画の策定,その他国際連携学科等の学生の学修の継続に必要な措置,例えば他学科・専攻への転籍ですとか,既修得単位の読み替え,または補完的に授業科目を提供することができるようにしておくといったことについて,事前に講じておくことを法令上義務づけてはどうかと考えております。
次に8ページ目,大きく分けて,見直しの3点目でございます。国内他大学等の参加についてでございます。現行の制度なんですけれども,国内の複数の大学が参加してJDを実施するということは認められておりません。国内は1大学のみということになっております。
それから,3つ目の矢印なんですけれども,JDの卒業または修了の要件としまして,国際連携学科を設ける我が国の大学において,JDに係る授業科目の履修により62単位以上を修得することになっております。そして外国の各大学においては,31単位以上を修得しなければならないということになっております。
これに関しましては,課題としまして,我が国の大学等の間の連携が認められていない,かつ,連携可能な外国の大学が事実上2つに限られているということでございます。これに関しましては,諸外国において多くの大学が参画するJDがあり,そういったプログラムへの参加を可能とするような制度改正を望む声がございます。
これに関しましての見直しの方向性なんですけれども,9ページでございます。JDについて国内の複数大学が参加できることとしつつ,参加する大学等で修得する最低単位数につきましては,国内外の大学を問わず,国内の大学の共同教育課程と同程度の学部であれば,各大学31単位以上とすることとしてはどうかと考えております。これによりまして,国内の複数大学が参加可能になるとともに,実質的に連携できる大学の数が増えるということになる。この辺りを期待しております。
下の図でございますけれども,左側が現行の仕組みになっております。国内は1大学,ここで62単位を修得して,海外は2大学ということになっておりますけれども,改正しますと,国内外を問わず2から4の大学で連携が可能となりますので,より多様なプログラムの開設が可能になることを期待しております。
10ページ目以降が関連の参照条文になっておりますので,適宜御覧いただければと思います。
私からは以上でございます。

【湊部会長】ありがとうございました。ただいま,ジョイント・ディグリーの見直しの内容について,主に3つの観点から御説明がございました。それではこれらについて,委員の先生方から御意見等ございましたらお伺いしたいと思います。いかがでしょうか。特に御意見はないでしょうか。
名古屋大学の佐久間委員から手が挙がっております。どうぞ。

【佐久間委員】よろしくお願いします。佐久間です。
ジョイント・ディグリーに関わったこともありますので,ジョイント・ディグリーの規制緩和は,方向性としては大変よろしいのではないかと思っているんですけれども,ちょっとお聞きしたいのは,今御説明いただいた資料も,学部の例で説明していると思うんですが,現実問題として学部でやっているところは非常に少ないわけです。そうすると,これはあくまで学部を例にしているだけで,学部も修士も博士も同じように,とにかくジョイント・ディグリーを進めていくということなのか,あるいはやっぱり今学部が少ない状況で,学部に重点を置いて進めていかれたいと考えていらっしゃるのか,そこら辺,文部科学省のほうで何かお考えがあるようでしたら,ちょっとお聞かせいただければと思いますが,いかがでしょうか。

【岸本高等教育局主任視学官】 ありがとうございます。我々としては特に大学院に重点化して進めていただきたいということではなかったんですけれども,やはりなかなか開設のための協議のハードルが高いということもございまして,十分にそういったことをする準備が学部のほうには整っていなかったのかなと。
また,今回の見直しの中の一つでありますけれども,学士課程におけるより規模の大きいプログラムの実施には,この収容定員の2割という規制が障壁になっているという意見を,具体的に開設されている大学からもいただいていたところでございまして,この定員の上限を撤廃することによって,学部への広がりというのを特に期待できるんじゃないかというふうに考えております。今後は,特に大学院ということではなくて,学部も含めて,こういった国際連携プログラムをどんどん展開していただきたいというふうに考えております。

【佐久間委員】了解しました。

【湊部会長】よろしいですか。ほかに御意見はございますでしょうか。
今回3つの見直しということで,3つ目は,これを国内他大学でもできるようにしようということでありますけれども,その意義等について,国内の大学から具体的にこういう要望がかなり上がっているんでしょうか。

【岸本高等教育局主任視学官】そうですね。実際共同教育課程で複数大学が組んでやっていらっしゃる例も多数出てきておりますので,そういったものと連携といいますか,組み合わせることによって,本当にいろんな形での連携が,国内外問わず展開できるようになるんじゃないかと思っております。

【湊部会長】今のお話ですと,これは数を,連携大学数を増やすことによってさらに展開をはかるという趣旨ですが,国内の大学だけでということはあまり想定されていない。図にはそれが入ってはいますけれども,これはそういう想定もあるんですか。

【岸本高等教育局主任視学官】国内の大学が今まで1大学だったところを,複数,2大学でも組めるようになるということでして,JDでは当然国外の大学と連携していただく必要がございますので。

【湊部会長】そうですね。

【岸本高等教育局主任視学官】はい。

【湊部会長】外国に対して国内をもっと増やすことを可能にしようという話ですね。

【岸本高等教育局主任視学官】はい。そういうことでございます。

【湊部会長】こういう案でございますが,いかがでしょうか。特に追加的な御質問はないようでございます。私どもも幾つかこれをやってきましたけれども,やはり数を増やす,特に外国が幾つか参加したいというケースはありますね。
エラスムス・ムンドゥスなんかは制度的にもそれしか許さないので,本学でもプログラムが走っていますけれども,増やすということについては,私もぜひそうしていただければありがたいと思います。やはり設置審にかけるプロセスが非常に大変だということが,結局一番大きなネックになっている。特に追加的な大学での教育課程の新設がないにもかかわらず,これは自動的に設置審を通すということに随分手間がかかったわけですけれども,私も今回の案については大きな反対はないかと思います。

【神成委員】すみません,神成ですけれども,1つ質問しても。

【湊部会長】神成先生。どうぞ。

【神成委員】単純なことなんですが,この国内で2校で31単位という形になった場合,学生の学籍はどうなるんでしょうか。

【岸本高等教育局主任視学官】学籍は二重学籍といいますか,両方の大学に置いていただくことになりますので,共同でそれぞれの大学が連名で学位を出していただく形になりますので。

【神成委員】そうすると二重学籍になるというのは,何か今までにはない,すごく大きな変革だと思うのですけれども,それで間違いないんでしょうか。今までは,要するに2つの課程を二重学籍で取るということはできないと思っていたのですけれども,この形によって実質的にはそれがブレークされるということなんですか。

【岸本高等教育局主任視学官】今までは国内の大学1大学でしたけれども,国外の大学と二重学籍で単一の学位を出してきておりましたので。

【神成委員】国外はある意味文部科学省が責任を持っているわけではないので,それは可能だったのかなと理解していますが,国内でそれができるとなると,何かとんでもない変革のような気がするんですけれども。
要するに大学は,入試を通って入学して学籍をもらうわけですが,このプログラムに入ると,入学した後にこのプログラムに参加した時点で,ほかの大学の学籍ももらえるということになるんですか。

【岸本高等教育局主任視学官】はい。この連携教育課程に入学された方は,両方に在籍していただいて,両方の名前で学位がひとつ出ると。

【神成委員】そうするとそれは入学のときの入学形態として,それをちゃんとパスしてこないといけないということですか。学部でそんなことはあり得ないと思います。例えば1年生でA大学に入って,3年生,4年生がこのジョイント・ディグリーに加わるとしたときに,3年生からはB大学の学籍も持てるようになるということでしょうか。そうすると卒業時の経歴には,A大学卒業,B大学卒業と,記載できるということですか。

【岸本高等教育局主任視学官】そうですね。はい。

【湊部会長】そうなりますね。村田委員,これに関連して手が挙がっていますか。

【村田副部会長】はい。私も今その質問について。いや,私の理解では,この連携教育課程制度に国内の複数大学が入っていて,例えばA大学,B大学があるとします。で,D大学が海外の大学としたら,この中でA大学とD大学,B大学とD大学というふうにして,国内の大学1つで海外の大学とのジョイントであって,A,B,Dの3つが学位だとなると,国内のダブル学籍はないんだと理解をしていたんですが,今そういう質問があったので,えっと思ってちょっと慌てて質問したんですが,その辺どうなんでしょう。

【岸本高等教育局主任視学官】両方に籍を置いていただいて,どちらがメインは決めていただく必要があるんですけれども,一応どちらにも学籍があるという形になると。

【村田副部会長】ということは,国内の大学に2つの学籍が発生することを認めるわけですね。

【岸本高等教育局主任視学官】共同教育課程もそうなっているので。

【村田副部会長】今まで文部科学省はそれを認めてこなかったと思うんです。物すごく大きな変更だと思うんですが,それはないんだと思って,A大学とF大学,B大学と海外のF大学と,こう私は理解していたものですから,今その質問が出て,私も,えっ,すごいなと思っているんですが,ちょっとその理解でいいかどうかお教えいただければと思います。

【岸本高等教育局主任視学官】共同教育課程においては,現在もダブルで学籍が発生しているということで,これは国内の場合でございます。ですので,今後は国際的に,国内複数,国外でも複数ということになりますと,それらの大学の学籍がそれぞれ発生すると。

【村田副部会長】ということは,もう既に今国内でダブルで学籍があるのは認められているということ,そう理解していいわけですね。

【岸本高等教育局主任視学官】そういうことでございます。

【村田副部会長】分かりました。ありがとうございました。私の理解不足でした。ありがとうございました。

【湊部会長】その辺はどうでしょうか。これは全体で数が3つ,4つまでということになると,外国の大学は1つだけれど国内は3つだということも制度的には可能ということになりますね。その辺のところは文部科学省の見解はいかがですか。これがもっと増えてきたときに,これは規定上全く問題ないということですか,学籍に関して。

【岸本高等教育局主任視学官】両方で連名で学位に出すことになりますので,そのような形になります。

【湊部会長】なるほど。ただいまのポイントはきちんと整理しておいたほうがいいですね。後々いろんな問題が出る懸念もあるような気もしますので。

【神成委員】すみません,神成ですけれども。

【湊部会長】神成さん。どうぞ。

【神成委員】2つの大学に学籍を持てるけれども,今1つの大学の中で,2つの研究科に学籍を持つなんていうことはできないですよね。
例えば,今ジョイントでもない,ダブルディグリーでもない,デュアルディグリーというのが大学の中であるじゃないですか。1つの研究科が終わった後に,あと1年ぐらいでもう一つの研究科の修士課程を取るとかというプログラムです。
つまり3年間で直結してかつ短縮して,2つの修士課程を取るとかということは認められていると思うのですけれども,その場合でも,同時に2つの研究科に学籍を置くことはできないから,1つが修了してからもう一つの研究科に入学して,そして短縮して1年で2つ目の修士を取るという方式でのみ,デュアルディグリーというのが大学の中では認められているわけです。もしそれを2つの研究科に同時に学籍があるようにして,実質3年間で2つの修士課程を修了することが可能ならば,学生も非常に単位を取りやすくなります。しかし文部科学省が,たとえ1つの大学でも2つの研究科に学籍を置くことはできませんよというルールですので,学生は,1つの修士課程を終わって,改めて入試を受けて,2つ目の研究科に入らなくてはいけないわけです。ですが,今,ジョイント・ディグリーを作れば大学を超えて2つの学籍が取れるというくらいのフレキシビリティーが容認されるのであれば,1つの大学・大学院内で,例えば理系と文系の両方に学籍を置いて,ジョイント・ディグリーあるいはデュアルディグリーを取っていくことが可能になるようになってもよさそうな気がするんですが,それはできないのですか。

【西大学改革推進室長】すみません,大学改革推進室長の西でございます。全体いろいろ国内の制度も含めまして,次回改めてちょっと資料を御提示させていただいて,一旦現状について御説明申し上げる時間をいただければと思いますけれども,よろしゅうございますでしょうか。

【神成委員】はい。分かりました。結構でございます。

【西大学改革推進室長】すみません,よろしくお願いいたします。

【湊部会長】今の内容で僕もいいと思います。少し国内の規定も整理した上で,どこかでバッティングが起こるようなことがあればまずいということになりますので,少し文部科学省のほうで現況をよくまとめていただいた上で,これについてはもう一度,今のポイントを整理しておいていただくということでよろしいでしょうか。
ありがとうございます。それではこの議論は引き続き,本部会でも進めさせていただくということにしたいと思います。ありがとうございます。
それでは,3つ目の議題に入りたいと思います。議題の3は,人文科学・社会科学系の大学院に関する背景データについてということでございます。これについても,まず事務局から説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【西大学改革推進室長】失礼いたします。人文科学・社会科学系の在り方につきましては,大きな議題として,今部会で御議論いただくこととなっておりますけれども,議論の方向性が様々ございますので,一旦ファクトというか,そのデータをきちんと集めて,それをまず御紹介申し上げたいという形で進めさせていただきたいと思っております。今回事務局としては,こうすべきだということをお示しするものではありませんが,一応現状かき集められるだけデータを持ってきましたので,それを御紹介させていただければと思います。
1枚目でございます。こちらは,今持っている政府の方針として一番大きなものを御紹介するものでございます。科学技術・イノベーション基本計画,今年の3月26日に閣議決定してございます。この中で,人文・社会科学の知と自然科学の知の融合による人間や社会の総合的理解と課題解決に貢献する「総合知」という言葉が出てきております。総合知に関して,基本的な考え方や戦略的に推進する方策について2021年度内に取りまとめる。あわせて,人文・社会科学や総合知に関連する指標について2022年度までに検討を行い,2023年度以降モニタリングを実施するということが政府の方針として決まってございます。
この取りまとめにつきましては,内閣府に置かれております内閣府総合科学技術・イノベーション会議が中心となってやるということになってございまして,今まさに議論を進めております。表の右のほうにありますけれども,総合知戦略の検討スケジュールということで,7月にキックオフをして,来年の2月3日木曜日(仮)でございますけれども,総合知戦略というものを取りまとめる。ここではもちろん人文・社会科学だけではありませんで,総合知について議論していくということになってございます。
下の丸でございますけれども,上述の総合知に関する方策も踏まえて,下線の部分,大学院教育改革を通じた人文・社会科学系の人材育成の促進策を検討し,2022年度までにその方向性を定めることが方向性としては決定しているということになってございます。
そんな中で,人文・社会科学と大学院の在り方について,今御議論いただこうということでございますけれども,さらに1枚おめくりいただきまして,以降はもうデータでございます。学生数についてでございますが,3ページ目を御覧いただきますと,学科・専攻分野別学生数の比率ということで,令和2年度時点で学士課程の人文科学・社会科学系の学生割合は約46%であるのに対して,修士では約16%,博士では約14%となっている。この棒グラフの上から順に,学士,修士,博士というふうになっております。
4ページ目,学士課程修了者の進学率の推移ということで,これは学士でございます。修士の進学率としては,全体としては横ばいでございます。人文科学・社会科学系の修士進学率は,他の分野と比較すればかなり低いというデータになってございます。
5ページ目,これは修士課程修了者の進学率の推移,今度は修士から博士に行く分でございます。全体として減少傾向にありますが,人文科学系の博士の進学率は他の分野と比較して今度は高くなっている。修士までは行きづらいが,修士から博士には行く割合が多いというようなデータになっております。社会科学系の博士進学率は,工学系に次いで低いということでございます。工学系は修士で就職する人が分母としてとても多いということが,このデータの裏づけになっているかと思います。
6ページ目,修士課程入学者充足率の推移ということで,これは分野別でございます。人文科学系と社会科学系の修士課程の入学者充足率は他の分野と比べて低く,約6割程度の定員の充足状態になっております。
同じデータの博士課程を見てみますと,全体的に低下傾向にございますけれども,平成30年度においては人文科学・社会科学系の入学者定員充足率は5割を下回っているというのが現状でございます。
8ページ目,修士・博士課程入学者の推移ということです。修士・博士課程の入学者数について,人文科学分野及び社会科学分野では,理工系と比べて私立大学が占める割合が多いということでございます。
9ページ目以降が学位取得数ということです。
10ページ目を御覧いただきますと,これは諸外国と比べてみましたということで,人口100万人当たりの学士号取得者の国際比較でございます。学士に関しては,自然科学系が黄色,人文・社会科学系が緑色になってございます。人文・社会科学系における人口当たりの学士号の取得率は,諸外国と比較して大きな差はない。特に英国とか韓国とか米国と比べて,同じぐらいの割合だろうというふうに思っております。
11ページ目に行きますと,今度は修士と博士を並べてございます。人文・社会科学分野における人口当たりの修士・博士号取得者は,諸外国と比較して少ないということです。先ほどの学士と比べても明らかだと思いますけれども,修士・博士,いずれも人文・社会科学系の割合というのが極めて少ない,総体的にはそういうことが言えるだろうというふうに思います。
12ページ目,課程博士でございます。課程博士のうち標準修業年限からの超過年数割合というデータです。人文科学系では,博士課程修了者(課程博士)は約9割,86.4%が標準修業年限を超過している,社会科学分野では,同じく78.1%,約8割が標準修業年限を超過しているということでございまして,やはり自然科学系は,標準修業年限の超過率というのは多くなっているというデータがあります。
次の13ページ目,修士課程でございます。修士課程のほうですけど,この赤字の部分が1年超過をしている方々ということで,修士で留年している部分についても,やはり他の分野と比較して超過率が高いというデータが出てございます。
14ページ目,今度は博士課程卒業者,今度卒業者ですけれども,卒業までに何年かかるかというようなデータでございます。最低修業年数卒業者が,人文科学では22%,社会科学では24%。この棒グラフの上に上がるにつれて年数が増えていきますけれども,グレーが1年超過,緑が2年超過,ピンクが3年超過,青色が4年超過ということで,やはり人文科学系とか社会科学系だと標準修業年限の超過率が約8割ということで,他の分野と比較して超過率が高いというデータでございます。
続きまして,15ページ目,キャリアパスについてデータを見てみました。
16ページを御覧いただきますと,修士課程修了者の就職率の推移ということです。人文科学・社会科学分野の修士課程修了者の就職率は,他の分野に比べて低い傾向が続いています。近年は,全体的にですけれども,穏やかな上昇傾向が見られておりましたが,令和2年度は下落したということです。
17ページ,今度は博士課程修了者の就職率の推移ということでございますけれども,人文科学・社会科学分野の博士課程修了者の就職率は,やはり他の分野と比べて低い傾向が続いていますというデータでございます。人文科学が39.3,社会科学が55.7ということです。
18ページ目を御覧いただきますと,修士課程修了後の就職先,どんなところに就職しているんですかというデータでございますけれども,理工農・保健分野においては,修士課程修了後,技術者等として専門的職業に従事する者の割合が高く,人文系分野においては販売・事務業務に従事する者の割合が高いというデータでございます。
19ページ目,先ほどは修士でございましたが,今度は博士でございます。こちらも同様に近いんですが,理工農・保健分野においては,博士課程修了後,大学教員以外の専門的職業に従事する者の割合が高い。人社系分野においては大学以外も含めて,教員になる割合が非常に高いというデータになっております。教育分野と比べて同じ程度,社会科学とか人文科学が47%,43%といった状況になっているということでございます。
20ページ目を御覧いただきますと,日本の企業における研究者の専門分野というデータでございます。少しグラデーションが大きくて分かりづらい部分もあるんですけれども,一番下,人文・社会科学は1.3%というシェアしかないので,なかなか見づらい部分はあるんですが,この一番下の赤紫みたいなところから,線が出ている先のところに所属していますよというのをデータで示しているものでございます。
人文・社会科学分野を専門とする研究者の所属先は,多い順に輸送用機械器具製造業,情報通信業(うち情報サービス業),業務用機械器具製造業ということになっております。少し分母が少ないので,ちょっとこれが参考になるかどうかというのはありますけれども,そういうデータがございます。
21ページ目を御覧いただきますと,日本の公的機関における専門別研究者ということで,日本の公的機関における人文・社会科学を専門とする研究者の活用は低調であるということで,右側を見ていただくと,赤囲みでございますけれども,全体の占めるシェアとしては3%にすぎないというデータでございます。
22ページ目以降は教員数でございます。
23ページ目,大学本務教員数でございます。本務教員だけで見ております。人文科学と社会科学で見ると,同じぐらいのシェアで,半分に分かれて合わせて全体の25%になっているということでございます。
24ページ目を御覧いただきますと,人文科学・社会科学分野の本務教員は,他の分野と比べて年齢層が高いという傾向がございます。
続きまして,25ページ目,今度は大学の兼務の教員数でございます。人文科学分野の兼務教員は,他の分野と比較して最も多いというデータでございます。本務教員と同様に,人文科学・社会科学分野の兼務教員は私立大学に多く所在していらっしゃるということで,兼務教員を分野別の割合で見ると,人文科学と社会科学を合わせて42%が兼務になっている。兼務教員数が右の棒グラフになってございます。
26ページ目,兼務教員は,本務教員と比べて,分野によらず年齢層が高い傾向にある。特に理学・工学・農学分野では,65歳以上の兼務の先生が多いというふうになっています。
続きまして,27ページが分野別研究者数でございます。大学の研究者数は自然科学系を主軸に増加傾向にあります。人文・社会科学系は私立大学を中心に増加傾向にあったんですけれども,近年で見ると横ばい,あるいは微減の傾向になってございます。
28ページ目,研究本務者,研究を本務としているということの割合ですけれども,国立大学では教員数はほとんど伸びておらず,博士課程在籍者が研究者数を押し上げている。国立大学に比べて,公立大学及び私立大学では教員数が増加しているというデータになってございます。
29ページ目,研究本務者の内訳でございます。研究本務者の教員については私立大学が占める割合が多く,人文・社会科学においてはより顕著です。博士課程在籍者及び医局員・その他研究者については国立大学が占める割合が多いということになっています。
30ページ目,研究本務者の任期の有無でございます。人文・社会科学系の研究本務者は,自然科学系に比べて任期なしの割合が高いというデータが出ております。国立・公立・私立大学間において,任期の有無の割合については大きな差は見られないといったデータでございました。
すみません,本当に概略だけで御説明申し上げましたけれども,以上でございます。

【湊部会長】ありがとうございました。本部会の今年度の課題の1つが,人文科学・社会科学系の大学院制度の在り方というか,今後の方向性について議論をするということでございましたけれども,その議論の前に,そもそもこの人文科学・社会科学系の大学院の学生,あるいは卒業生の実態といいますか,数字的なものがなかなかまとまって目に入ってこないということもありましたので,一度まとめられる限りにおいて,データを集めていただきたいということをお願いしておきました。時間もあまりなかったんですけれども,今日お話しいただいたようなデータを,取りあえずはまとめていただいたということでございます。
これをざっと,後でお時間の許す範囲でもう少しゆっくり御覧いただければとは思いますけれども,確かにいろんな面で,多数を占める自然科学系の大学院の実態,大学院生,あるいは卒業生の実態と,人文科学・社会科学系の間でも,かなり大きな開きがあるということが見て取れると思います。まずはこのデータを御覧になって,委員の先生方から,何らかの御指摘,それは違うとか,あるいはもっとあるとか,少しざっくばらんな議論をいただければと思いますけれども,いかがでしょうか。
まず,迫田先生,手が挙がっていますか。お願いします。

【迫田委員】データありがとうございます。全体的な姿がよく分かったなというふうに思います。非常に貴重なデータだと思います。見えてくるのは,非常に実感値に近いというのが感想でして,私自身もいわゆる人文社会系出身なのですが,やはり大学院へ行くかどうかという選択の頃は,我々頃だと,大学の先生になるという者しかそもそも行かなかったと思います。こういう修業年限もかかるし,その先もほとんどアカデミアしかないと,多くの人がそういう認識を持っていたと思うので,そういう結果になっているんだなと改めて感じた次第です。
ただ,これでいいかというと,やっぱり相当これは課題があるのではないかなというふうに思いました。国際機関や,あとは政府もそうですし,あるいは様々なシンクタンクもございますけれども,そういうところって,諸外国はほぼドクターで固まっているんだと思うんですが,そういうところを相手にする人たちが,やはりドクターでもない,修士でもないという人たちの集団になっているとすると,これは相当問題が多いかなと思いますので,アカデミア以外の道というのもつくらなきゃいけないし,なおかつそういう育成をしていかなきゃいけないんじゃないかなという感じがいたしました。単なる感想です。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。
御意見をいただきましたが,村田委員からも手が挙がっていますか。お願いします。

【村田副部会長】ありがとうございます。非常に詳細なデータありがとうございました。本当にこういうデータがあれば助かりますね。このデータからも分かりますように,人文・社会科学系の大学院の課題というのは,修士の学生が極めて少ない。ドクターまで行きますと,もうこれはアカデミア,研究者になるんですが,逆に理系の場合は,修士は4割,5割行っているんですが,むしろポストドクター,ポスドクの問題で,博士課程の学生が少ない。今回文部科学省さんに調べていただいたこのデータで,課題が浮き彫りになったのかな。
一方で研究者の割合は1.3%という話で,むしろ修士で,人文・社会科学系の学生が修士を出た後いかに実業界に行くかという課題,そこの課題なんだろうなと思うんです。これにつきましては,もう皆さん御存じかと思いますが,今年に,文部科学省,大学,政府,それから経団連で一緒に,産学協議会の報告書が出まして,そこでも大学院中心のリカレントって出ていますので,まさに修士の学生をどう実業界に,特に人文・社会系は大きいと思います。
これも私が調べたわけじゃないんで,どこのデータか名前は忘れましたけれども,日本の場合は,まだ11.5%の割合しか,企業の役員に修士,ドクターの人がいないんです。それに対してアメリカは,97年のデータでも50,60%出ていますから,まさに先ほど迫田先生がおっしゃったような,修士,いかにそこをマッチングしていくかというのが大きな課題で,それが人文・社会系の課題だと思いますので,今年度やっていただいていますように,そこを重点的に議論していければいいんじゃないかなと思います。ありがとうございました。

【湊部会長】ありがとうございます。
では,幾つか手が挙がっております。佐久間先生からまずお願いできますか。

【佐久間委員】佐久間です。資料,ありがとうございました。前回ちょっとお話しさせていただきましたが,そのときに,研究者に関してはなかなか需給のバランスが取れていないということを申し上げたんですけど,この資料の中の本務教員数のデータを見ると,人文・社会系が25%で,理工農を合わせても25%ぐらい。これだけ見ると実際,人社系の教員数は結構多いということになります。
ただ,別の資料で年齢別の分布が出ていましたけど,結構人社系は年齢層が高い。まさに年齢層が高い辺りというのはちょうど私の世代で,その頃は非常に就職がよかったということなんですけど,ただこれが今後はどうなるかというと,大学ってなかなかリストラが難しい組織なので,結局定年のところで切るしかないわけですよね。そうすると,この定年になった人の分がそっくり若い人に回ればそういうことはないんでしょうけど,非常に人社系は人員削減への圧力がありますので,なかなかそうはならない,つまり,教員数が減ることになって,今後はなかなか厳しいだろうということが予想されるわけです。
そうなってくると,ほかの委員の方からもありましたけれども,もちろん研究者も必要なんですが,研究者じゃないキャリアを考えないと,そもそも博士課程へ来てくれないし,非常に大きな課題なんだろうなと思います。ということで,どうぞよろしくお願いします。

【湊部会長】ありがとうございます。
それでは次に,加納委員,お願いできますか。

【加納委員】納です。工学・理学と人文・社会という2つの間での比較になってきてはいるんですけれども,ちょっとこれは定かではないんですが,この研究するもののライフサイクル,その研究に着手してから成果が出るまでの期間というのが,例えば人文科学・社会科学が理工に比べてどうなのかというような分析は必要なのかなと。
一方で昨今,理学・工学,特に工学ですけれども,短期的な研究といったところが,いわゆる産業への貢献という観点で,かなり短期的な成果のほうにシフトしてきているところもあって,一概にこの一律に切った比率だけでは議論できないような気がします。やはり先ほども申し上げましたように,現状のこの研究のライフサイクルといったものがどれぐらいの長さになっているのかも分析の対象にした上で,先ほどの教員の年齢層ですとか,それから博士課程の超過年別割合とか,こういったところを議論していく必要があるかなと思いました。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。
それでは次,波多野委員から御発言お願いできますか。

【波多野委員】波多野でございます。ありがとうございます。大変な貴重なデータで,特に11ページの国際比較は,初めて拝見したデータで衝撃的でした。
それで,1つここで気がついたところは,諸外国に比べて修士はもちろん少ない。これには多分MBAなど,特に米国の場合は加わっていますので多いのでしょう。しかし博士に至ると,諸外国もそれほど多くない。また日本は修士と博士があまり変わらないという御説明でした。これからは企業はESG経営も含めて総合知が重要になってくることを再認識して,産学連携を人文・社会系でも加速する必要があると考えます。そのような仕組みができると,キャリアパスにも,さらに博士人財の増加にもつながるのではないかと思いました。
また,公的機関,パブリックセクターでの修士・博士の活躍の場をつくることが,国際社会の中で重要と考えます。そうしないと,我が国は修士・博士の人文・社会系の方々の研究者以外の活躍が促進されない,世界の中で取り残されると,危惧します。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございました。
それでは次は,田中委員,御発言をお願いできますか。

【田中委員】どうもありがとうございました。大変広範にデータを調べていただいて,ありがたく思います。私も,今,波多野委員がおっしゃったこととちょっと関係するんですけど,この修士課程の卒業生の数が少ないというところは,やはりとりわけアメリカなどと比べると差が出てくるのは,ビジネススクール,ロースクール,それから公共政策,パブリックアドミニストレーションの大学院,こういうものが,日本でそれほど数多く人材を社会に提供していないということがあるんだと思うんです。
これはですからお願いなんですけれども,制度として見ると,日本でも今言ったようなカテゴリーのビジネススクールとか,それから専門職大学院としての公共政策大学院とか,そういうのがあるわけです。これができてもうかなりになるんですけど,どのぐらいのパフォーマンスを示しているかというデータを,少しお調べいただく必要があるんじゃないかなという感じがします。
それになると,つまり今度は出す側の問題と,それから,そういうビジネススクールやパブリックアドミニストレーションやロースクールに対する社会の側の需要がどんなものなのかということになると,これは民間やパブリックセクターの側の御意向を伺わないといけないんだろうなと思います。
それからもう一つ,データの点でいって,この21ページに,日本の公的機関における人文・社会科学を専門とする研究者の活用は低調となっていますが,これは研究者として就職している人のことですよね。ただ諸外国との比較とかそういうことで言うと,研究者として所属しているというよりは,中央官庁であれ地方自治体であれ,今現に勤めていらっしゃるキャリアの人その他の間で,その人文・社会系の修士号とか博士号を持っている人がどのぐらいいるのかということを調べるデータというもの,これもどこかから発掘していただけると大変ありがたいなというふうに思いました。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございました。
それでは次に,川端委員,手が挙がっています。

【川端委員】ありがとうございます。いや,本当に。お願いがあるんですけれども,自然関係系だとかドクターのキャリアパスを考えたときに,卒業生が全体でこれぐらいいて,民間にどれぐらいいて,大学にどれぐらいいてと,フローを考えていく。今ここにある数字をもうちょっと丁寧に時間をかけたら,それが出ると思うんですけれども,人社系で考えたときに,一体そこにどんなふうに人が流れているのか,そういうフローの図にしていただけるとありがたくて。
もう一個は,現状のフローと,それからそこにマーケットとしての。先ほどちょっと言っていただいたような大学の兼務教員数で言えば,兼務教員と,それからいわゆる専任の教員数で言うと,そこには理系よりずっと多いマーケットがあって,そういうもので今ドクターが出ていっている人間がフローとして賄えているのか,それは全然賄えずに,さらなるものを考えないと,今後人社系の定員だとかそういうものを増やしていく。
総合知と先ほど出ましたけれども,今の充足率を本当に100までいろんなプロモーションして上げて,本当にいいのかという話とのつながりを,ぜひちょっとこの辺,縦にしたり横にしたりして,そのフローの絵をぜひ考えていただけるとありがたいと思います。まずはこのデータ,どうもありがとうございました。

【湊部会長】ありがとうございます。
それでは,長谷川委員から御発言をお願いします。

【長谷川委員】総研大の長谷川です。ありがとうございます。こういうデータは本当にすばらしいと思いました。こういうことを基に議論しないといけないですよね。
私も先ほどどなたかおっしゃったように,田中先生か,公共政策とか公的機関とか,それから企業一般でも,そういうところで人文・社会系の博士号・修士号を持っていることが,どういう意味があるかということ自体を,社会一般も,教えている先生方も,そんなにあまり考えてこなくて,非常に専門の研究ということだけに視野があったんではないかと思うんです。
昨今トランスファラブルスキルということがよく言われるようになりましたよね。それは理系でも昨今出てきたという新しいことなんですが,私はどこかの,国大協かな,何かの資料で,文部科学省か何かが出してくださった,トランスファラブルスキルとは何かというのに,マネジメント能力とかコミュニケーション能力とか書いてあったんです。でも私はそれは違うと思うんです。
そんなのは瑣末なことで,そうじゃなくて,1つの課題を深く研究した,考察したことによって,他の課題もどうやってメタにいろんなことを考える能力がついたかという,それこそがトランスファラブルで,その能力を持った人が,公的機関だろうが何だろうがいろんなところに散っていくことが,全体のレベルを上げることなんだと思うんですが,何かどうも人文・社会系の先生方の研究のスタイルというのが物すごく個別であるし,その分野のその課題ということに非常に限定した研究を深く下げるということしか見てこなかったようなところがあるので,社会全体も含めて,そういうトランスファラブルに人文・社会系の卒業生をどうやって活用していくかというふうにシフトするべきだと思います。すみません,それだけです。

【湊部会長】ありがとうございます。
それでは,菅委員から御発言いただけますか。

【菅委員】ありがとうございます。私としてはこういうデータを見て,すばらしいデータなんですけれども,人文科学・社会科学がどういう方向に向かっていくべきなのかというのが見えてくれば一番いいなと思っているんですが,ちょっと私にはよく見えないんです。
例えば14ページの博士課程卒業生というところに限って言いますと,先ほど下のほうにありましたけど,半分近くの人は大学に就職しているということを考えると,22%,20%,14%,16%,27%という,この長い年月の間の人が,どういうディストリビューションでアカデミックに就職できているのかというのを,ちょっと見る必要があるんじゃないかなと思うんです。
というのはそこから見ないと,適切な博士課程に進む大学院生というのも見えてこないような気がするし,どうしたらいいのかなというのが,よく釈然としないという印象を受けています。この辺り,もしデータとしてあるんであれば,次の議論にうまく使えるんじゃないかなと思った次第です。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。
須賀先生,手が挙がっていますか。

【須賀委員】早稲田大学の須賀でございます。

【湊部会長】お願いします。

【須賀委員】データをいろいろ集めていただきましてどうもありがとうございました。私は前回,需要と供給が特に博士課程に関してはアンバランスであるというお話をさせていただきました。とりわけ博士まで行くと,人社系の場合は,基本的に先ほどの数字でもありましたように,就職先の半分近くが大学,要するに基本的には博士は大学の教員になるために行っている。そして,それになれない人たちが,その他大学以外の教員とありますけれども,高校の教員であったり予備校の教員であったりと,それがメインの就職になっている。それでなおかつできない場合に,いろんな就職先を探していく。
運よく,例えば編集者になれるような人が出てきたりとかしますが,そういったことがあるくらいで,博士がそもそも大学教員いう形でしか今のところ供給できていない。それに対して需要が追いついていないということだと思うんですが,その需要を本当に拡大すべきかどうか。というのも,先ほど佐久間先生がおっしゃったように,かなりの年月をかけて出来上がってきていますが,今のシステムで学んで,その後,人社系の教員が辞めたポストに,今の大学院生がスムーズに滑り込んでいければ,そこそこ需給はバランスするのかもしれない。しかし,基本的に多くのポストが兼務とかいう形になっておりますし,空きポストでも実際に多くの博士修了者が非常勤講師として大学で学んだことを使って働いている。
実はそういう方々のための需要があればいいんですが,大学の博士課程で育てる能力ってやっぱり,その道の研究者としてなるためのもの。しかも人社系の場合どちらかというと,特に人文系のほうなんでしょうが,先生の得意な分野で教育を行っていく。そこに本当に必要なものとは関わりなく,その先生から見て必要なものを,あたかも徒弟制度のような形で教えていくという形になっている。
社会科学のほうも,今までもかなりそういう傾向はあったんですが,データサイエンス等が入り込んできて,相当な数量分析なんかをやっていかなきゃいけなくなってくると,かなり下地が共通化されてくる,そういうことがあったんだと思うんです。そういう共通化される部分は,これからの社会でも使えるようなものなのかもしれないので,供給が多少そういうふうに中身を変えてくると,需要もついてくるのかもしれないし,逆にそういう方向で社会を変えていくというふうになると,需要と供給が両方変われるのかもしれないというふうに,現場にいて感じるところです。
だから一番我々にとっては分からなかったことは,博士課程の定員を埋めろという話になったときに,埋めた後にどこに就職先があるんだろうかということで,その点が相当に不安だったわけです。前回申し上げましたが,基本的には多くの非常勤講師をつくってしまって,本当に申し訳ないことをしたという気持ちがあります。自分たちが考えたようなきちんとした教育をすれば社会が受け入れてくれるだろうと思っていましたが,これはどうも違うんだなというのが一つの実感です。
そうすると,今社会で必要とされるようなもので,我々が提供できるものは一体何なのか。先ほど長谷川先生がおっしゃっていたように,考える能力であると。これは相当に的を突いていると思うんですが,その考える能力と社会の問題の間の橋渡しがなかなかできてこなかった。
恐らく今,一つのチャンスが訪れていると思うのですが,データを見て話をしなきゃいけないんだという風潮と同時に,データサイエンスをどの分野でも取り入れていかなきゃいけないというのが,学部だけでなく大学院でも出てきた。それがかなり変わってきているところかなという気持ちがあります。そうすると,修士・博士,どちらの側にも社会で必要なものを入れていくということになるだろうなという気がしております。
以上です。

【湊部会長】高橋委員からお願いできますか。

【高橋委員】高橋です。データをありがとうございました。質問1点とコメント1点申し上げます。
事務局への質問ですが,資料の2ページ目ですか,そもそも論で,総合知,一番大枠の前提の議論のところで,確認的な質問ですが,大学院教育改革を通じた人社系の人材育成を検討だということです。今までの委員の先生方のコメントはいずれもなるほどと思ったんですが,これは修士以上の大学院教育のみで対応できることなのかということについては疑問がありました。なので,我々は大学院部会ですが,全体として大学院に限るものなのかというところは確認させてください。
コメントです。課題は,理工系の大学院との共通項と人社系の特異点の両方が存在すると理解しています。例えばアカデミア以外の多様な活動の場の必要性とか,長谷川先生が御指摘の本質的なトランスファラブルスキルというのは,程度問題はあるにせよこれは理工系にも共通する課題なのではないか。一方で人社系の特異点として,例えば大学院の修士と博士の意味合いです。データとしては,修士には入りにくいけれど,入った人は結構博士に行くんだよという傾向を示していると思いますけれども,その進学率の話ですとか,菅委員が御指摘なさった修業年限の超過率の話なんていうのは,もう少し粒度の高いデータで,人社系の特性を見たほうがいいのではないかと思います。
追加で,今日はデータがなかったのですが,たしか人材委員会のほうでは,大学院の学生の国籍,国際性がどの程度あるのか,逆に言うと,日本人学生があまりにも大学に行かないんじゃないかという議論もあったと思いますが,恐らくこれは人社系のアドバンテージになりうるのではないかとも思ったりします。今後の議論で追加データがあればお示しいただきたいなと思います。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。調べさせていただきたいと思います。
では次,小長谷委員,お願いできますか。

【小長谷委員】ありがとうございます。1つは同じです。学生の中身という点で,留学生とか,あとは女性ですとか,そういう少し中に関しても情報をいただけたらなというふうに思いました。
あともう一つは,27ページですが,こういうグラフは,何か全体に増えているというイメージに見えますけれども,これだけ全体が増えていても,人文・社会系はそんなに増えていないということは,相当な割合としては減っている。つまり大学の経営という点では,人社を切る方向で運営されているということじゃないかと思うので,この図の描き方によって相当伝えられるものは違うんじゃないかと思いました。それはコメントです。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。
次は,濱中委員,よろしいでしょうか。

【濱中委員】濱中でございます。資料ありがとうございました。簡単に申し上げます。
人文・社会系の大学院については,長らく議論されていて,およそ人文・社会系の大学院が社会的にインパクトを持っていないだったりとか,規模が小さい,企業に就職できないといったことが指摘されます。そうすると課題として「もっと教育の意味を企業に知ってもらわなければいけないのではないか」とか,「いやいや,やっぱり教育に課題があって,トランスファラブルスキルを鍛えるべきではないか」とか,「需要と供給を踏まえて検討したほうが良い」とかそういう話が出てきて,これらはいずれも大事な観点だとは思いますが,他方で,人文・社会系の研究者養成機能は大丈夫なのかという問題も忘れてはならないことのように思います
実際に世界の大学ランキング,指標として留意するところはありますが,あそこで示されている結果を見る限り,課題があるという見方もできるように思います。また,もしかしたら,企業や社会にインパクトを与えられないのも,実はトランスファラブルスキルの側面に理由があるのではなく,研究者養成機能が中途半端な状態になっており,インパクトを持てずにいるからではないかという考え方もできるわけです。さらにいえば,トランスファラブルスキルを意識した改革を進めることが,研究者養成機能を弱めることに繋がることもあり得ます。多忙化など,大学教員の環境が20年,30年前と大分変わってきているところもある中で,企業や社会との関係のみならず,研究者養成の問題についてもしっかり意識しておく必要があるのではないかということを申し上げたいと思います。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。
それでは,最後に,神成委員からお願いいたします。

【神成委員】すみません,簡単に一言。こういうデータが出てくると,こういう委員会においては,あっ,文系を何とかしなくちゃいけないという議論になるのは当然なのですが,別の側面から見て,本当に問題意識を持って困っている当事者は誰なのかということを考えたとき,先ほど迫田さんからコメントはありましたが,産業界とか官公庁は,学部卒の人間は能力が低くて,これじゃ困る,マスターぐらい出てきてもらわないと困るという当事者の問題意識が本当にあるのかということが浮き彫りにはなっていないように思います。
今,日本の企業は企業の現場で修羅場体験をさせたり,色々なOJTで鍛えていくわけで,それでもって一人前のビジネスマンになっているのが実態なわけですよね。だけれどもこれからは,例えばビジネススクールを出ていなくちゃいけない,データサイエンスをやっていなくちゃいけない,政策立案のような能力を修士で鍛えてこないと,とてもじゃないともう産業界,官公庁は,ほかの国とやっていけないんだというような問題意識が本当にあるのかどうか。
私はどうもそれが見えないので,誰が本当にこの問題意識を持って文系を何とかしなくちゃいけないということを大声で言っているのかが,私は理系の教員ですが,あまり大学内においても見えていないところが根本的な問題ではないかという気がいたします。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。多くの先生方から幾つも御指摘いただきました。特にこれらのデータで,もう少しどこを突っ込んで内容を明らかにすべきかというポイントもいただきました。
特に学位,博士課程ですが,超過年限が異様に多いとかということと,専門職大学院,いわゆるスキルとしての社会科学・人文科学などとの関係性のなかで,そもそも内部で人社系の学位というのはどういうものであると捉えられてきたのか,あるいは今捉えているのかというところも分かるような形で,少しデータを深掘りしていかないと,なかなか数字だけ見ていても実態に肉薄し切れないなという感じも,何となくしております。
これは,非常に大きな問題だと思いますので,今日は取りあえずのデータを皆様にざっとお示しいたしましたけれども,特に問題のあるデータにつきましては,中身が本当はどうなんだろうということを含めて,もう少し調査をさせていただきたいと思います。委員の先生方も,このデータを見て,ここの本当の意味はどうなんだというような御指摘等ございましたら,ぜひ私どものほうへお知らせいただければ,もう少し深掘りした議論をしたいと思います。最後の御意見にもありましたけれども,この議論がどこへ向かうのか,誰がなぜそれを必要としているのかということも含めて,ちょっと時間をかけて,私どもの部会で,皆さんと共に議論させていただければと思います。
今日は,外部からゲストの方をお願いしてございますので,次へ移らせていただきたいと思っております。
それでは,すぐに議題の4に移りたいと思います。もう一つのこの部会の課題でありますリカレント教育の振興についてということで,本日はその背景的なことにつきまして,経済産業省経済産業政策局から,産業人材課の島津課長にお話をいただく予定になっております。島津さん,それではよろしくお願いできますか。

【島津経済産業省経済産業政策局産業人材課長】今御紹介いただきました経済産業省の島津と申します。どうぞよろしくお願いいたします。本日こういった場で御説明をさせていただけること,大変ありがたく思います。
今御紹介がありましたように,産業界における人材ニーズの現状ということで,これから経済産業省のほうでもそういったニーズを,具体的にこの教育機関であったり労働市場に対して,もっとシグナルとして発してほしいといったようなコミュニケーションを取っていきたいというふうに思っております。本日はそれの前段階となりますけれども,問題意識の部分と,それからどんなふうに進めていく予定であるのか,あとは若干速報値ではありますけれども,企業におけるこのリカレント教育に関する意識をアンケート調査を取ったものがございますので,その辺りをざっくりと御説明をさせていただきたいと思います。
それでは,資料のほうを御覧いただければと思います。この資料は,先週金曜日に弊省で開催されました審議会の資料からの一部抜粋,それを少し加工した形となっております。1ページ目を御覧いただきますと,まず非常に大きなビッグピクチャーの部分からいきますが,日本がだんだんと小さくなっていくという問題提起をしております。日本の生産年齢人口の縮小見通しはいろいろなところで出ておりますけれども,2050年という長期を見通しますと,現在の3分の2程度まで減少すると言われております。
次のページをめくっていただきますと,今度はGDPの規模でございます。これは民間の主体による一つの試算ではありますので,そういった視線で見ていく必要はありますけれども,2050年に日本は第7位の国になるということで,インドネシア,ブラジル,メキシコに抜かれる,それからナイジェリアも非常に大きな国になってくるといったことでございます。
それから,次のページを見ていただきますと,今度は少し技能実習生という切り口で問題提起をさせていただいておりますが,技能実習制度は,現在足元で7割は,大体1人当たりGDPにして3,000から4,000ドルぐらいの国が送り元の国となっております。日本が1人当たりGDPは大体4万ドルですので,そういう目で見ますと,大体10分の1程度のレベルの国から受入れをしているということでありますが,この新興国のインドネシア,ベトナム,フィリピンという辺りの国が,今後1人当たりGDPを向上させると見込まれますので,日本もこの技能実習生を,来てくれる国だというふうにいつまでも思ってはいられないということだと思います。
次のページを見ていただきますと,ここはちょっとまた話題が変わりまして,最近の学生さんのトップ層の就職動向の変化ということを御紹介しております。
これも政府のほうでやった統計というより,民間のものを紹介していますので,そういったところを差し引いて見る必要はありますけれども,東大生・京大生の注目企業ランキングというものが出ていまして,これはトップ層は外資系企業が非常に多く並んでおります。赤で書いたものが外資系企業。それから少し見にくいですが,色を青にしているものがあります。Visionalとかエムスリーですけれども,こういったところは新興企業になっていまして,いわゆる伝統的な日系企業ではないところがかなりランクインしてきているということであります。
それから右側を見ていただきますと,今度は20代前半の転職者数の推移です。2009年から2013年度の平均を1.0といたしますと,2018年度は4倍に増加しているということで,かなり増えてきているということです。
続きまして,次のページを御覧いただけますでしょうか。これは2015年の研究成果の中で述べられましたが,自動化されるリスクが高い職種というものです。いわゆるAIとかロボットが普及していきますと,一部の雇用がこれによって代替されるといった議論でして,ちょっとグラフの中を見ていただきますとオレンジ色で囲ったもの,総合事務員,会計事務従事者,庶務・人事,その他一般事務従事者,この辺りがコンピュータ化の可能確率というのが高くて,雇用規模もそれなりですので,代替されるであろうと。
他方で赤い囲みで,介護職員とか看護師というのがありますけれども,ここはコンピュータ化可能確率が高くありませんので,この辺りは代替されにくいということになります。この結果,日本の労働人口の49%がAIやロボットで代替される可能性が高いという予測も,この当時出まして,割と話題になったということであります。
次のページを御覧いただきますと,今度はデジタル化の変化スピードに関するアンケート調査,これは日本の企業経営者に対して質問をしたものです。世界の経営者にも質問して,それで国際比較にしています。質問は,この棒グラフのタイトルにありますように,自分の会社のデジタル化が進んでおり,変革へのアジリティが高いと答えた経営層の割合ということでありますが,日本は非常に低くて36%になっています。ほかの国は,中国94%から始まって,アジリティが高いと認識しているということですので,ここは企業経営の問題として危機感を持つべきではなかろうかということであります。
次が7ページ目です。もう一つ,脱炭素という大きな潮流がございまして,これもいわゆる雇用という部分では大きな影響が出てくるだろうということで,このグラフを示しています。左側のほうには,石炭,ガス,化石燃料系の雇用が大きく下がっていくということが図示されておりまして,右側のほうは,太陽光・風力をはじめとしまして,いわゆるグリーンエネルギー,クリーンエネルギーと言われているものの雇用が増加するであろうということが示されております。
8ページ目は,今度は人材に関する日本の競争力の低下を書いております。左側,IMDの世界人材力ランキングで,今38位になっています。それから右側,これは人材そのものの能力ではありませんが,日本に国際的な人材を誘致してくることができるランキングということで,OECDが出しているもの。現在日本は25位ということになっております。
それから,9ページ目が人材投資の低迷に関するデータを示しております。左側のグラフを見ていただきますと,これは世界の主要国で,いわゆる人材投資でOJTじゃないものを企業内でやっている,そのGDP比の投資額を見ていますけれども,日本が各国と比較して非常に低い水準であることもお分かりだと思いますし,年々どんどん小さくなっているということであります。
右側を見ていただいて,それじゃ,日本の従業員は自分で勉強しているんだろうかということを聞いたのがこのグラフでありまして,社会学習とか自己啓発をあなたは行っていますかと聞いたアンケートに対して,行っていないと答えた人の割合が,日本はほかの国と比べて突出して高くなっている,こういう状態であります。
それで,10ページ目を御覧いただければと思います。これは弊省で最近やっているアンケート調査でございまして,ちょっとまだ結果はきちっと正式な分析になっておりませんが,速報値を基に,本日間に合わせるように用意をいたしたものです。
企業に,リカレント教育をまず実施していますか,いませんかと聞いたところ,6割がやっていると。逆に言うと4割はやっていないという回答でございました。理由は何でしょうかと,特に実施していない理由を聞いたところ,一番上に来ているのが,必要性は分かっているんだけれども,ほかに優先すべき事項がある。2番目が,学び直しをするかどうかは従業員に任せているからと,こういったようなことでありました。その後は3位,4位とそれぞれいろんな理由が並んでおりますので,御参照いただければと思います。
次のページを見ていただきますと,今度は質問を少し変えまして,リカレント教育の中でも特に大学,それから大学院におけるリカレント教育に対する意識です。
企業にはこういう聞き方をいたしました。大学ないしは大学院に対して,リカレント教育を行っている,ないしは行う予定があるという割合を聞きました。そうしますと,この上のほうの棒グラフになりまして,13.8%の部分がそうなります。少し薄いブルー,36%というのは,実施したことはないけれども関心があるというボリュームになりますので,前向きな回答ということで,この2つをまとめますと大体5割ぐらいは,大学ないしは大学院におけるリカレント教育機会を提供しているか,その予定があるか,あるいは関心がある,こういった状態になっています。
情報収集の方法を尋ねたのがその左下のグラフでございまして,どういうところから大学・大学院におけるリカレント教育の場を情報収集しているかということですが,一番上に来たのが人事や能力開発に関する媒体,2つ目が公式情報です。ウェブサイト,SNSということで,2つが高かったです。その下を見ていただくと,過去に受講したからとか,大学・大学院からの直接アプローチでとか,こういった感じになってきます。
それから,右側が提供を求めるリカレント教育について質問しましたところ,オンラインプログラムの充実というのが一番多かったですけれども,やはり内容に関して言うと,業務に直ちに生かせる実践的なプログラムが欲しい。その次が,時期・曜日・時間帯,社会人に配慮した形でやってほしい,こういったようなことでございました。
以上2ページが速報値ということで,これはちょっとデータがきちんと完全に取れましたら,また改めて何らかの形でまとめたいと思っています。
ちょっと12ページに進んでいただきまして,また話題が変わるんですが,日本人の働いている方の年収を比較したデータというのが民間の主体から出ておりましたので,これも一つの問題提起として載せております。横方向の軸が,だんだんと職場における役割が高くなっていくということにしています。縦軸は年収です。
赤いカーブがタイです。青いカーブが日本になっております。部長クラスになりますと,日本人の年収はタイの方に抜かれるということになっていまして,その差が大体120万円ぐらいというデータが出ております。これは日本の企業の中における年収水準が,平均してしまうとそれほど高くないということを象徴しているとも言えるんですが,それはいわゆる能力,生産性に見合った報酬が得られていないということを示唆しているのみならず,生産性,能力自体もどうなっているのかということは見ていく必要があろうかと思います。
それから13ページ目です。国境を越えたリモート労働ということで,そういった中で,いわゆる外国人を日本の企業の中で活用するという動きが,コロナもあって,リモート労働という形で少し出てきているということを御紹介しております。
左側は,ネット経由で仕事が受発注されている状況というものをグラフにしておりまして,これはオーストラリアの会社のデータですけれども,国際的に見ても,このネット経由で仕事を受発注するというボリュームが非常に増えてきていることが分かると思います。
それから右側の「越境リモート人材サービス」の概要と書いてあるのは,これはとある企業のサービスの概要を御紹介していますけれども,インド,韓国,ベトナムのITエンジニアを日本企業に業務委託で紹介するサービスを始めているということですので,これらの方々はもう日本に来ることなくして,日本企業に職業紹介されているような状態になっているということであります。
14ページ目,これはまたちょっと別の話題になりまして,いわゆる先端的な,あるいは未踏のアイデアを持つような人材を育てるプログラムが必要ではないかということで,弊省でこのような未踏事業というものを2000年からやっておりますということの御紹介です。産業界・学会の第一線で活躍する方をプロジェクトマネジャーに委嘱いたしまして,IPAという独立行政法人の中で,この未踏人材の発掘から育成まで一貫して行う事業を行っております。
これまで大体1,900人超の人材を育成しまして,そのうち300人の方に起業していただいたり,事業化をしていただいたりしているということで,ここにありますように,落合さん,松尾さん,西川さん,平野さん,鈴木さん,登さん,有名な方でこういった方がいらっしゃいますけれども,このプログラムは今現在も実施中となっております。
いろいろなデータないしはトピックを御紹介いたしましたけれども,ちょっと弊省の中で議論をさせていただきたいと思ったのは,この人材に関して産業政策としても,少し長期目線でいろんなテーマを考えていくべきときに来ているのではないかということであります。
次のページは2050年の未来からバックキャストした今後の方向性ということで,非常にいろんなテーマを書いておりまして,ちょっと御紹介させていただきます。特に教育のところは,経済産業省の中でつくっている資料なものですから,やや書き方が大ざっぱであったり,ちょっと一面的になってしまっているかもしれないところは,御容赦をいただければと思います。
産業構造,これは自動車産業,電機産業などの縦の産業構造からサプライチェーンが広がっていく状態というのが,これまでの状態でありました。それから化石燃料の活用が前提となっていたわけですが,これからは人工知能,ロボットで一部の労働者が代替される可能性がかなりあるということと,デジタルが産業構造を縦から横に転換しているということが大きな特徴としてあろうかと思います。それから脱炭素です。これは持続可能性重視の社会構造へと変わっていくということがあろうかと思います。
労働者はどうだろうかということですけれども,これも非常に定性的ですが,これまではややもすると,失敗や不具合がない状態にまでつくり込む姿勢に重きが置かれてきたというのが,特に製造業に代表されるような,ものづくり系の企業の現場の感じであったかと思います。それからあとは,外国人の採用・登用は残念ながら限定的であった。
これからは,2050年を見据えますと,やはりどう見ても知的創造作業に重心は移行いたしますし,その中ではアイデアを生み出す力と実行するスピード,それから失敗したら別の方法を何度でも試す,何通りも試すといったような姿勢が,より重要になってくるのではないか。そういった分野も出てくるだろうということです。当然にして優秀な外国人を適切な報酬で採用しなければならないということで,かなりこの労働者,それからそれを雇う企業側にも変革が求められるというメッセージをここで出しております。
所得・賃金に関して言えば,これもよく言われておりますけれども,やはり日本は生涯賃金の後払い,ないしは勤め上げる社会と言われてきたところがありまして,今徐々に変わってきておりますけれども,スキル・ポジションから逆算して報酬体系を決定するといったような動きが出てきております。
それから働き方に関しては,基本的には長時間労働を抑制しなければいけないということで,この規制はしっかりと守っていかなければならないということですし,同一労働同一賃金によって正規,非正規の社員の差をなくすとか,短時間正社員といった形でもって,時間の制約がある方でも正社員として働ける。こういった働き方改革を実施してきたということでありますけれども,これからは先ほど出てきたようなデータも見ますと,労働時間にかかわらず,誰もが働く場所や時間を自由に選択可能な時代になっていくでありましょうし,ウエアラブルのデバイスで,リアルタイムの健康データを活用して,働き方にも生かしていくといったような管理の在り方も出てこようと思います。
下の3つが教育に関連する部分でございます。リスキル・学び直しに関しては,やはりこれまでは企業内訓練に依存する傾向が日本の企業も多かったと思います。それから産業ニーズに必ずしも対応ができないリカレント教育というのがあって,やはりそこはお互いの対話が足りていなかったという部分があるんじゃなかろうかと思います。これからですけれども,やはり即戦力となる教育訓練が至るところで受講可能な状態にしなければなりませんし,日本人の個人が自ら学び直し,自律的なキャリア形成をする時代にしていかなければいけないということです。
それから,大学・大学院,高専も含みますが,これもすみません,やや一面的な言い方ですけれども,「学問の追究」がややもすると重きを置かれたということですが,これからはやはり中長期的に求められるスキル・課題を産学官で明らかにして,それらを互いに共有した人材育成が重要であろうということを書いております。
初等中等教育については,これはGIGAスクール構想などもありまして,非常に学びの転換の環境になってきたということが言えるかと思いますけれども,これからはさらに,個別最適な学びの実現,ないしは多様な人材の教育参画のために,勤務制度とか特別免許制度といったところに,まだ見直しの余地があるのではなかろうかといったことを問題提起させていただいております。
残り2ページですが,次のページを見ていただいて,今非常にまず風呂敷を広げて,いろんなテーマをちょっと見たわけですが,まず弊省といたしまして,この課題と対応の方向性をどのように考えていくのかということが書かれております。
まず,論点として人材育成です。デジタルとかグリーン,脱炭素など,産業構造の転換が進行する中,まず企業そのものが,どのような人材がこれから必要なのか把握できているのかということ。それから,産業界は今後求められる人材像について,具体的な要望を教育機関に示すことができているのかという問題。そして教育機関は産業界のニーズを把握できていなくて,もしかすると実社会で活躍する人材を育成できていないのではないかという問題。それから社会が必要とする現場人材です。これは言い方を変えると,なかなかロボットやAIですぐには代替されないような現場の人材です。農業,自動車整備,建設現場とかですけれども,こういったところの将来像も含めた鳥瞰的な人材像が必要ではなかろうかといった問題意識を書いております。
それから雇用・労働面で言いますと,これも日本の人事システムに結構絡んでくるんですが,日本の大企業は遅い昇進ということをよく言われたりします。この結果,海外と比べますとグローバルに戦える経営人材が育っていないのではないかという解説がございます。それからスキル・ポジションに見合った適切な賃金が支払われていないために,国内外の優秀な人材を確保できないのではないかといった解説もございます。それから過度に厳格な労働時間管理。労働時間管理はもちろん行われて当たり前なんですが,そこばかりが強調されますと,柔軟な働き方が阻害されますので,そこで個人の能力が十分に発揮されていないおそれはないかといったような問題提起でございます。
ここから出発しまして,対応の方向性としては,まずは2030年,2050年の産業構造の転換を踏まえて,どのような労働需給となるか推計してはどうか。それを踏まえて,将来求められるスキルや能力を明らかにする必要があるのではないか。その上で,採用・雇用から教育まで,全体を見渡した人材政策を展開する必要があるのではないか。特に未来の日本を担うイノベーション人材を輩出・確保するための環境整備に,弊省としては力を入れて取り組むべきではないかといったような資料を,金曜日に御議論いただきました。
最後の紙ですけれども,ちょっとこういった問題意識で,「未来人材ビジョン」という名称にしたいと思っておりますけれども,経済産業省のほうでも,この産業構造の転換という視点から出発して,どういった人材が必要になるのか,そしてそれを労働市場とか教育機関にはっきりとメッセージとしてまずお伝えをしなければ,なかなかこの変革の機運が生まれないのではなかろうかといったようなことで,未来人材ビジョンをどこかでつくっていきたい。
そのために,ここには書いておりませんけれども,有識者から構成される未来人材会議という会議も立ち上げるということは,金曜日の審議会で明らかにさせていただいておりまして,これはちょっとまだスケジュールは決まっておりませんけれども,そちらのほうに場を移して,人材政策に関する議論をやらせていただきたいというふうに思っております。
この三角形の漫画,これは少しざっくりと簡素化した模式図でして,人材がこの初等・中等,高等から上がってきて,社会に出て,さらに一番上の層は専門能力を持った人材ということでありますけれども,ここがデジタルとかグリーンとか,大きな波の中で必要なスキルが十分に特定されていないとか,大企業内に死蔵されている可能性がある人材がいるとか,高等教育のところにはそもそも理系人材が少ないとか,文系学生も今デジタル人材になってしまっているといったようなことも書かせていただいておりますけれども,こういったことを一つの出発点といたしまして,場を未来人材会議に移して議論していきたいと考えているということでございます。
説明は以上になりますけれども,すみません,最初に申し上げましたように,この資料は先週金曜日に経済産業省のほうで新しく審議会の部会を設置いたしました。名称が経済産業政策新機軸部会ということで,この部会は非常に広範なテーマを議論する審議会になる予定でございまして,その初回のテーマが「人材」であったということであります。
それで,今日この場にその資料をお持ちしたということになっておりまして,審議会では,この後さらに,産業構造に関わることですとか,あるいは政策のアップデートに関することですとか,テーマをいろいろと移して議論していく予定ですけれども,人材に関するものは先ほど申し上げたように,未来人材会議という別個の会議の中で議論を継続いたしまして,またこのような問題意識でありますことから,ぜひこの文部科学省の大学院・大学政策とも連携させていただきながら進めたいと思っておるところでございます。
以上です。ありがとうございます。

【湊部会長】どうもありがとうございました。資料はかなり大部ですけれども,残り10分強ございます。まずとりあえず御感想から,委員の皆さんからあればお伺いしたいと思いますけれども,いかがでしょうか。
全体に経済産業省のデータだなという感じですが,我々は大学院部会ですので,どういうふうにこういうデータを受け止めていくかということもございます。今回は主に産業構造等からの話でございましたが,もう一方で,例えばこれから進行する長寿化ということには一切触れられていません。これも僕は非常に大きい問題だと考えています。我々はこういった社会的な背景を踏まえて,リカレント教育というものを大学院レベルでどう考えるかという議論にこれからなるのだろうと思います。
何人かから手が挙がってございます。川端委員からお願いいたします。

【川端委員】ありがとうございました。経済産業省の方ともこういう話もさせていただいて。幾つかの観点で。
これは全体を通してリカレントとの関係がどんな展開になるのかなというのが1つ。それからもう一つは,やっぱり見えているものがデジタルとグリーンって,分かりやすいところで攻められているという世界はあるんでしょうけど,もう一方で,大きい意味でのソサエティーと言われている,言わば地域系の話。日本の社会の根本になっているような産業。そういうものとの関係が一体どんな展開になるのかな。今ある意味じゃ,そっちのほうが重要な世界のような気もしていて,ぜひそんな観点も入れて議論していただければと思います。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。
それでは,迫田委員,手が挙がっていますか。お願いします。

【迫田委員】ありがとうございます。まず,リスキリングという言葉とリカレントというのはそろそろ整理したほうが。私もこれまでずっと交ぜて使ってきた気はするんですけれども,今,産業界ではリスキリングという言葉が一般的になってきていて,その中で,この大学院部会とかで扱う場合,リカレントというニュアンスになってくると思うので,この辺はちょっと整理したほうがいいかなというふうに感じました。
あとはいろいろ検討すべき課題は多いんですが,デジタルによる遅れ,それからその中での地盤沈下のスピードって,やっぱり相当速いと感じておりまして,今日のデータにもあったように,東南アジアと比べても部長クラスで逆転するというのはもう,何年か前から産業界ではかなり騒がれていたテーマなんです。
ですから,このままでは人材は集められないという,もう本当に厳しい状況にあるので,これはだから,現場作業が残るからとかいう話じゃなくて,例えば農業であってもどうやってDXを使って生産性を上げていくかという方向に持っていかないと,ここは残るから大丈夫という話じゃないので,そういう意味で言うと全体の底上げが必要なんだと思いますので,ちょっとそういう観点でも御検討いただければありがたいなと思いました。
あと,圧倒的に教育の対象が今若手に集中している。何かOJTだけというのが日本の企業経営の現状だと思うので,そういう意味で,一定層以上のところにはほとんど投資していないという状況だと思います。だからもう負けているんだと思うので,その辺も見ていただけたらありがたいなと思います。ありがとうございました。

【湊部会長】ありがとうございます。
それでは次に,濱中委員からお願いできますか。

【濱中委員】ありがとうございました。とても興味深いお話を伺いました。教えていただきたいというか,今後お願いしたいことになるかと思いますが,最後,「2030年,50年の産業構造の転換を踏まえて,どのような労働需給になるか推計してはどうか」と書かれているところがございます。この一文だけ見ると,何か1960年代のマンパワー政策の時代が再び来るのかなとかというような気もしたんですけれども,学歴別の労働人口規模といった点まで踏み込むのかどうなのか。スキルや能力といった次元の議論にとどまるのかもしれませんが,いずれにしても今後,共有,連携ができればと思いながら伺っておりました。
というのは,先ほど人文・社会系の大学院のところでもございましたけれども,大学院の規模をどうするのかとか,どの領域でどれほどの進学率を目指すのかとかという点は,大学院部会としても大きな課題だと思いますので,また引き続きいろいろ御示唆いただければと思います。よろしくお願いいたします。

【湊部会長】ありがとうございます。
それでは,塚本委員,よろしいでしょうか。

【塚本委員】どうもありがとうございます。御説明どうもありがとうございました。14ページの未踏のところで,スーパースターのように御紹介された方の学歴を見てみますと,東大の修士までという方が半分ぐらいおられるように思います。多様性という観点から,島津課長は,大学院とか博士とかにどのような期待を抱いているのかをお伺いさせていただければと思います。

【湊部会長】ここで手短に,島津さん,この件についてコメントは何かありますか。

【島津経済産業省経済産業政策局産業人材課長】まさにこの14ページをつくりながら,私の課内でも,ちょっと東大とかトップ大学が多いねみたいな話にはなったところなんです。塚本さんは恐らく示唆されていると思うんですが,やはり未踏人材が,必ずしもトップではない大学・大学院からいろいろな形で生まれてくるという方向が,あってほしい姿じゃないかということは考えております。
そういう意味では大学・大学院に求められる機能として,これはなかなかこの場で一口に言えませんけれども,これから変化の速い時代とか,これまでの常識を疑って,少し新しい世界に飛び出ていくような能力,そういう方向性ではないかと思っていますが,ちょっと今後また議論をしっかりと詰めたいと思っております。

【湊部会長】ありがとうございます。
それでは,堀切川委員からよろしいでしょうか。

【堀切川委員】堀切川です。非常に面白いデータを交えた御説明,どうもありがとうございました。私は大学の人間ですが,山ほど会社の人たちとものづくりをやってきたので,今日の御説明ははっきり言って経済産業省側に近い意識で非常によく理解できました。非常に正直に書かれているところがあって,産業界のほうも意識を変えていかないとこれは駄目ですよということがちゃんと入れられているのと,大学としては,大学院としてはというか,耳が痛い,ニーズに合っていないんじゃないかとか言われると,それはそうだよなと言いたくなる気持ちも非常によく分かります。
その上でです。だから16ページ目ぐらいまではそうだよなと賛成しました。ただ17ページ目,最後のところ,未来人材ビジョンで,この三角形の山が書いてありますけれど,今経済産業省さんがよくおっしゃっている最大キーワード,グリーンが書いてあって,ついでにデジタルも書いてあるというところなんですが,実はグリーン,デジタルというのはアウトプットの製品でも何でもなくて,これから多分日本が体質改善していく,産業界の方向性の大きなキーワードという書き方なんだろうなとは思うんですけれど,これをあまりにもうたわれているので,多くの金が欲しい大学は,グリーン,グリーン,それに合わせた研究をしろと,かなり先生方の研究を絞り込んでいる,金が取れる研究というのが,大学経営側からの声としてよく聞こえるところであります。
私は自由人でありますので,支配もされないし,支配する側でもない立場からいくとそうなります。それがやっぱり経済産業省さんのうたい文句で,大学の研究者の研究自体の自由度がちょっと拘束される危険性もあるので,そこをちょっと気をつけられたらいいかなというのが1つです。
その上で,皮肉を1つ申し上げれば,国が決めた産業で基幹産業が生まれた例は過去一つもない。だから,こういうグリーンとかデジタルというのは,必要なキーワードでありますけれど,日本の今後進むべき産業界の方向性とは全く違うという理解をすべきだと,私は常日頃申し上げております。
ちなみに基幹産業をこれから一気につくることはできないので,これから先は超多品種,微量の時代でございまして,超多品種のいろんな新しい産業を地方から,中小企業からいっぱいつくっていかなきゃいけないときに,経済産業省さんは中小企業を主役に躍り出す気は全く感じられない。なぜかというと,中小企業庁が二百数十人という非常にちっちゃな組織であるというところがあるので,そこら辺の日本の産業構造の今後の育成を先に考えてからいろんな政策を練っていただきたいと,こういう場で言えて超うれしいなと。個人的に経済産業省大好きです。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございました。
これについては,島津さん,特にコメントはないですか。

【島津経済産業省経済産業政策局産業人材課長】はい。大丈夫です。

【湊部会長】ありがとうございます。これはとにかく多岐にわたるテーマです。どなたかが先ほどおっしゃいましたけれども,リスキリングということと,これまで何となく我々が漫然と使ってきたリカレントという概念の,なかなかこの調和が難しい。今日の経済産業省からのお話は,ピンポイントで産業構造変化に見合った形での,これは文字どおりリスキリングですよね。
それに対して,我々がこれまで議論してきたリカレント教育というのは,産業構造の変化などもさることながら,人口構成とか,特に寿命が長くなってくることも反映している。労働時間,例えば一定期間あたりの労働時間はどんどん減ってきていて,これはさらに減ると思いますけど,逆に全体としての労働期間は確実に伸びてくるわけです。
そうすると,つまりライフステージとしての就業時間が長くなれば,当然場合によっては就業の分断化ということも出てくる。そういった状況では,特定の技術や職能についてのリスキリングということに加えて,これは川端委員もおっしゃったけれど,大きな意味でライフステージの中での再教育,場合によってはもう一度人生をやるような,そういう方向性も出てくる。
そういった中で,大学あるいは大学院の位置づけというか,そのコンテクストの中での位置づけを,どういうふうに考えていくかというのは,これからかなり大きな議論になってくるんだろうと思うんです。これもなかなか時間のかかるプロセスだと思いますけれども,少し整理をしながら,我々はどういう再教育をしていくのかについて議論する必要が出てくる。
特に大学院というのは,これまではかなり均一な集団を我々は扱っていたわけです。大学を卒業して二十何歳から,長くても30歳までのジェネレーションで,一定の教育をやってきたわけだけれども,場合によっては,そこに非常に多様なジェネレーションが入ってくる可能性がある。そういった人たちは何を要求してくるのか。先ほど経済産業省のデータを見ても,そもそも社会が何を要求しているのかよく分からないときに,我々は,では何を提供したらいいのかもよく分からない。だからその辺のところの議論も進めないといけないのではないかという気もしております。
どういうわけか今期の大学院部会にはこういう大きなテーマが2つも来ていて,なかなかこれは規定を少し変えたら結論が出るというようなものでもないので,きちんと議論ができるといいと思います。今日の社会科学系の学位の問題,これも学位の位置づけ自体が,自然科学系の人間からは,実はよく分からないこともあります。
学位というのはもう,一生かけてやるものだというような考え方も中にはあるかと思いますので,そういうものと,4年間できちんと学位を取るというのとは全然違うコンテクストになりかねないので,そういったところの整理も必要です。それからリカレント教育というものについても,もう少し広い,社会全体の変化の中で大学院の役割を拡張するとして,どういう対応が必要か,何が求められ,我々に何ができるのかというようなことも含めて,十分議論していかねばならないと思っております。
随分ダイバースな話で恐縮ですけれども,ぜひ委員の先生方には,取りあえず最初の1年は幅広く議論を尽くして,論点を少し浮かび上がらせるというところまで行っていただければありがたいと思っております。
どうしても最後に一言,言っておきたいという委員の先生がいらっしゃれば伺いますが,よろしゅうございますか。
ありがとうございます。それでは最後に,事務局のほうから連絡をお願いできればと思います。

【西大学改革推進室長】ありがとうございました。本日も大変活発な御議論をいただきましてありがとうございました。本日の議事内容も含めまして,何かお気づきの点がまたありましたら,事務局まで御連絡いただければというふうに思います。
次回につきましては,令和4年,年明けでございますけれども,1月以降の開催を予定しておりますが,例によってまた日程調整の上,詳細は追って御連絡申し上げます。
以上でございます。

【湊部会長】それでは会議を終了したいと思います。今日は本当にありがとうございました。終わります。

―― 了 ―

 

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