大学院部会(第102回) 議事録

1.日時

令和3年10月1日(金曜日)13時00分~15時00分

2.場所

WEB会議

3.議題

  1. 今期大学院部会の主要議題について
  2. 人文・社会科学系の大学院のあり方について
  3. 令和4年度概算要求について
  4. その他

4.出席者

委員

(部会長) 湊長博部会長
(副部会長) 村田治副部会長
(臨時委員) 加納敏行、川端和重、神成文彦、小長谷有紀、小西範幸、佐久間淳一、迫田雷蔵、須賀晃一、菅裕明、高橋真木子、田中明彦、塚本恵、長谷川眞理子、波多野睦子、濱中淳子、宮浦千里の各委員

 

文部科学省

(事務局)増子高等教育局長、森田大臣官房審議官(高等教育局及び科学技術政策連携担当)、里見大臣官房審議官(高等教育局担当)、新田大学振興課長、西大学振興課大学改革推進室長 他

5.議事録

【湊部会長】 それでは,所定の時刻になりましたので,第102回の大学院部会を開催させていただきます。本日は御多忙の中,お集まりいただき誠にありがとうございます。
今日は堀切川委員が御欠席でございます。それ以外の委員の先生方には全て御出席をいただいております。
では,まず事務局のほうから,会議に当たっての連絡等々をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【西大学改革推進室長】 本日もどうぞよろしくお願いします。大学改革推進室長の西でございます。
会議に当たって何点か御連絡がございます。ウェブ会議を円滑に行う観点から,御発言の際は「挙手」のボタンを押していただきまして,部会長から指名されましたら,お名前をおっしゃってから御発言をお願いいたします。御発言の際は,通常よりも少し声を大きめに張ってくださいますようにお願いいたします。また,御発言時以外はマイクをミュートにしていただくようお願いいたします。
資料につきましては,議事次第に記載のとおり,事前にメールでお送りをしてございます。画面投影はいたしませんので,お手元の資料を御覧いただきますようにお願い申し上げます。システムの状況によっては不都合もあるかもしれませんけれども,御協力のほどどうぞよろしくお願いします。
文部科学省側で事務連絡でございますけれども,人事異動がございました。御紹介させていただきます。
令和3年9月21日付で高等教育局長に増子宏が着任いたしましたので,御挨拶申し上げます。

【増子高等教育局長】 委員の先生方,今日は大学院部会に御出席いただきまして,誠にありがとうございます。今,事務局からお話がありましたように,先週の21日付で高等教育局長を拝命しました増子でございます。これからいろいろお世話になると思いますので,よろしくお願いします。
大学院議会も見てみると第102回ということで,これまで相当いろいろな御議論がなされていたというふうに承知しています。
特に,最近の傾向として,ドクターコースに進む学生が極端に減っているということで,それが日本の研究力の弱体化につながっているという意見が相当いろいろなところから聞いております。そういう中で,ドクターコースを出た学生のキャリアパスとか,その辺が非常に重要だと思っております。
文部科学省を今年度から,マスターからドクターに進む学生の支援策を相当強化しております。そういう支援策だけではなくても,いろいろな方策もあると思いますので,その辺についてもいろいろお知恵をいただければと思っております。
もう一つは,とかく大学院の話になると自然科学系の話が中心になってしまうと思うんですが,人文・社会系についても,やはりSociety5.0の時代を迎えて,社会的な変革が進んでいる中で,自然科学と人社の融合とか,いろいろ取り組むべき課題が多数あると思っておりますので,その辺を含めて,先生方から忌憚のない御意見を引き続きお願いできればと思っております。これからよろしくお願いいたします。
以上です。

【西大学改革推進室長】 また,同日付で大臣官房審議官高等教育局担当に里見朋香が着任しております。併せて御挨拶申し上げます。

【里見大臣官房審議官】 それでは,私は大臣官房審議官を拝命いたしました里見でございます。前職は東京大学の理事をさせていただいておりました。現場を経験して戻ってきましたので,何かお役に立てることがあるかと思いますので,一緒に考えさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【西大学改革推進室長】 事務局からの事務連絡は以上でございます。

【湊部会長】 ありがとうございました。それでは,早速議事に入りたいと思います。
今日の1番目の議題は,今期大学院部会の主要議題についてでございます。前回,委員の先生方から議題になり得るような課題についておのおの御意見を伺ったところでありますが,前回たまたま御欠席であった波多野委員からは,御意見をいただけなかったので,今日はまず波多野委員の御意見を伺った上で,次の議論に進みたいと思います。
それでは,波多野委員,よろしくお願いいたします。

【波多野委員】 ありがとうございます。東工大の波多野でございます。初回は学部の必修授業と重なりまして,参加できませんで,失礼いたしました。
僭越でございますが,今期議論した内容について発言させていただきます。
私は企業に25年間,大学11年間と両方の経験,そして,博士教育リーディングプログラムを2年間という立場から,御意見させていただきたいと思います。
議事録を拝見いたしますと,特に,博士問題に関しては議論が繰り返されているという御意見も多かったと思います。しかし,2点,企業から,そして大学からコロナによって環境も状況も変化がございました。
まず企業側ですが,働き方改革,リモートワークがすごい勢いで加速し,副業や兼業も増加しています。これに対応して,企業の人事制度も日本独自のメンバーシップ型の雇用から欧米のジョブ型に一気に変換しようと,加速していると認識しています。それは逆に言いますと,博士人材にとっては追い風で,ジョブ型が定義されれば博士のニーズが高まるはずと私は信じています。ですので,今がチャンスで,マッチングの機会をつくって,大学科もそれに合わせた対応が必要と考えます。
しかしながら大半の企業は,ジョブ型でまだ準備体操の段階で,まだ試行錯誤しているのが現実だと思いますので,今が好機だと思います。
そこで部会では,人材の受入れ方の変化,企業といっても従来型の企業からスタートアップ,そして,省庁も含むパブリックセンターをヒアリングして実態を調査できればなと思います。
まずは文部科学省さんに博士人材がどれぐらい活躍されていて,今後さらにどういう活躍の場があるかというところをお尋ねしたいところです。
特に,本日の課題である人文系の博士人材のキャリアパスとしましては,まずパブリックセンターでのロールモデルをつくることが必要と考えます。そして,喫緊として必要なのは前期も申し上げたんですけれども,就職活動の開始時期です。今,理系ですとM1の今頃から始まります。理系ですと,修士論文を仕上げた後に,また,人文系だと卒論の後にシフトすべきと私は強く申し上げたいと思います。そうすることで,人文系の修士がまた,理系の博士が増えると確信しています。産官学でやっぱりタッグを組んで,次世代の人材を育成することが重要ですので,ここにミスマッチがずっと続いていると思っています。どこがボトルネックになっているか,私が理解できていません。即実行すべきと思います。今のようなまだ研究教育を介していない時期の就職活動は,大学院教育の価値を適切に評価していただいていないかなと,非常に残念に感じています。
そもそも信頼関係が揺らいでしまうと思います。そしてリーディングプログラムの学生もそろそろ中堅どころになっておりまして事後追跡していますが,非常に活躍しています。部下も増えるような状況になっています。これは普通なら修士で就職する優秀な学生が,この就活が始まる前を支援することによって博士に進学した機会をつくったことが影響していると私は分析しています。
そして,逆に大学からのコロナの変化ですが,コロナ禍でオンライン化が進んで,私の研究室でも情報共有ツールを使ってリアルタイムに研究活動などを共有して,日頃感じていることを共有しています。
ただし,やっぱり海外の博士人材と比較して日本の博士人材は,優れたところもあるんですが,やっぱり弱いところは,ロジックを組み立てて物事をきちっと書かせてみると,ロジックを組み立てて物事を考える力,すなわち論理の跳びや課題を発見する力が弱い。そして,言語力にする力,問われている課題を構造化して整理する力とか,アカデミックライティングの弱さを改めて実感しました。その帰結としてリーダーシップが発揮できていないようにも感じます。
企業側もそれを,今,博士の学生として要件に入れてくださればなと思います。これは人文・社会,自然科学の学生も共通と思いますので,このような人材であればどのような群であっても採用したくなりますし,そこにさらに処遇にプレミアムをつけていただきたいと思います。
企業は利益のみならず,環境問題など社会的な課題の対応も求められる時代になりましたので,総合知の観点から,理系の博士に必要となる分野につきましては,人文・社会と一緒に育成することが重要と考えています。
以上でございます。

【湊部会長】 ありがとうございました。どれも非常にごもっともな御意見で,首肯されるところでございます。
それでは,前回,委員の先生方から様々な御意見をいただいております。それについて,一応,事務局のほうでまとめてございますので,まずは事務局のほうからそのまとめについて御説明いただけますでしょうか。

【西大学改革推進室長】 お手元の資料1を御覧ください。今期大学院部会の主要検討議題の設定に向けてという資料でございます。いただいた御意見のまとめ,大くくり化できていないものもありますけれども,以下のようなものかということでございまして,一番多かったのが,やはり博士課程修了者のキャリアパスについてということに一番御議論いただきました。博士課程修了者の大学による売り込み,新しい採用活動の在り方ということとか,2番目にありますが,経済的な自立,待遇の向上,これを作り出す博士教育と。1の3が博士と社会の接続の民間とのブリッジの強化ということ。例えば,5番,パブリックセクターにおける博士人材,特に人文・社会科学系の活用ということで,先ほど波多野先生からも御意見があったところでございます。
2番目,修士学生の就活の在り方の転換,これも先ほど波多野先生からも御意見がございましたけれども,大きな論題となり得ると思っております。
3番,人文・社会科学系の大学院の問題ということで,そもそも特に,人文・社会科学系では修士にも進まないということをどう増やしていくのかというようなこと,4番,社会人博士を増やすための施策,産業界・大学が一体となった取組ということで,社会的構造の転換が必要であるといったこと,チームサイエンスの推進,5番も同じような話ですけれども,キャリアアップに向けたオンラインを活用したリカレント教育,企業が金を出してでも学ばせたい大学院教育,DX施策というようなこと,あとは専門職大学院におけるリカレント教育といったことが指摘をされております。
6番,経済的支援という大きな障害が払拭された後に残る,大学院研究者の魅力といった面での課題ということで,そもそもでございますけれども,学生がcomfortableな教育研究環境の構築をするということですとか,大学院生が見えている若手教員の処遇や研究環境,教員というかアカデミアに進みたいとか研究者になりたいというような背中を見せられていないのではないかというようなことでございます。
7番,コースワークの充実ということで,講義活動の工夫の横展開ですとか,学部の頃から志を高めて,博士課程に行きたくなるようなプログラムの在り方をそもそも考えなければいけないのではないかというようなことでございました。
8番目,地域社会と大学院の在り方,地元企業の付き合いだけではない次元でもう少し社会と大学院の在り方というものを大きく捉え直す時期ではないかといった御意見でございました。
9番,必要とされる博士人材の質と量ということで,人文・社会科学系と理工系の間で需要と供給の在り方の違いというものは当然あるはずであると,その辺のきちんとした整理をして需要と供給のバランスを改めて個別に見ていくべきではないかというようなこと。あとは,社会全体の博士人材に関する評価や期待する点ということと,大学側が育てたい博士人材がどのような能力を生かしてもらいたいかといったことの今ミスマッチがあるということでございますので,これのすり合わせを改めてすべきだというようなこと,それを実際に鍛える学位プログラムの在り方ということでございます。
10番目,ジェンダー,ダイバーシティーについて,なお,課題があるというようなこと,11番,これまでに講じた施策の成果の検証と,大学の改革疲れを含むでございますけれども,大学院部会の先生方におかれましても,議論疲れと,またこの話をしているのかというような御意見もございまして,私どもも大いに反省すべきところと思っております。
このほか,議論を進めるに当たって,留意すべき点とか意識すべき事項としては,先ほど申し上げましたとおり,毎回議論は回っているので,それを具体化,解決に向けてどう動かしていくかといったことに向けてフェーズを移すべきであるということ。文系・理系という大きなくくりだけではなくて,自然科学あるいは人文科学と社会科学というものもかなり違いがあるので,その表現ぶりについて気をつけるべきだといったこと。企業の言う言葉は一口で言われておりますけれども,かつて呼ばれていたその企業というと,重厚長大の製造業系の大企業というものが中心だったと思いますが,そこの理解を捉え直すべきではないかというようなこと。
次は,ポストコロナ時代の社会の変化に合わせた受皿づくりを大学院として考えるべきである。「社会で活躍する」といったこともっと視野を広げて自然科学系の研究者と企業だけでは立ち行かない局面,もっと社会に対して供給をしていくべきだというようなこと,さらには,中長期的な新しい視点,人生90年時代,100年時代と言われておりますけれども,それを前提とした人材育成の在り方,さらには,博士後期課程の諸課題政策の統合的な評価と実効的な施策検討に向けた中教審と科学技術審議会,人材委員会というものがございますが,そこの合同部会の設置なども考えられるのではないかというような御提案をいただいております。
そういったことを踏まえまして,事務局として大きくいずれも重要な課題ではありますけれども,喫緊の課題というようなことも含めて事務局整理案としては,以下の3点,①,②,③というふうに大きく取りあえずここから行ってはどうかということで,御提案をさせていただきたいというふうに思っております。
1つ目は,昨今の政策動向を踏まえた上での大学院教育の在り方についてということです。経済支援の拡充がなされた現状において,最重要課題と思われるのは,博士課程の在学中の経済支援はいいんですけれども,出た後をどう確保していくか,活躍をどう見せていくかということで,キャリアパスの確保に向けて,文部科学省のとりわけ大学院部会としては,人材の供給サイドに根差した課題の取組,大学院教育の実質化ということが言われて久しいですけれども,それを具体的にどう考えていくのかと。
次代を牽引する知のプロフェッショナルに必要な能力の育成というものを大学院教育全体,研究室での研究もそうですが,コース枠といったもので捉え直して,どのように実質化をしていくか,その質の保証や教育評価の在り方について,ある程度その総論としては,2年前に大学分科会で答申としておまとめいただきました「2040年を見据えた大学院教育のあるべき姿」ということで,総論としてはかなりおまとめていただいていると思っておりますけれども,さらにこれをブレークダウンして研究分野や領域ごとに具体的な検討を進めてはどうかと。この中では,例えば,大学院部会の中にさらにワーキンググループを設置するなどの方法あるのではないかというふうに考えてございます。
なお,御参考まででございますけれども,配付しております資料の参考資料の中に,局長の挨拶にもございましたが,博士課程の経済的な支援はかなり充実してきたということは再三申し上げております。具体的に何をやってきたかというものを見取図とか具体的にやっている施策をまとめたものが参考資料として御用意をしております。
今回とりわけ力を入れておりますのは,参考資料で申し上げますと,左側,修士課程からの進学者,いわゆるストレートドクターというような学生に対して,トータルで約3万人いらっしゃるわけですけれども,その中の半分,1万5,000人に対して,DCといった既に年間180万円以上の公費の支援を受給している人というのがもともと7,500人ぐらいいらっしゃったわけですが,ここに対して,文部科学省では昨年度来,大臣のリーダーシップもありまして,新たな博士後期課程学生の支援の対象者として7,800人に対して,生活費を中心に受給ができるという手はずを整えたということでございます。
具体的には,資料の中に入ってございますけれども,創発的研究の推進ということですとか,大学フェローシップ創設事業ということで,大学に就職というか,卒業後のキャリアパスというポストをきちんと見据えた上で,そこを確保した大学には学生向けの生活費を支援しようというような事業を取り組んできたということで,かなり抜本的な改善が図られてきているというのが現状でございます。捕捉まででございました。
もともとの資料にお戻りいただきまして,②人文・社会科学系の大学院の在り方についてということです。自然科学系に比して議論や検討が手薄となっている人文・社会科学系の大学院教育について総合的な検討が必要ではないかと。従来,文部科学省のみならずいろいろなところで人文・社会科学系に対して問題だということを言われておりますけれども,議論をするための共通の問題意識をきちんと明確化していかないと,どこまで行ってもなかなか議論がかみ合わないというような状況がいろいろなところで散見されておりますので,この後,名古屋大学の佐久間副総長に御発表もいただきますが,少し腰を据えて,個別に議論をしていってはどうかというふうに思っております。
③大学院におけるリカレント教育の振興についてということでございます。国の支援がストレートドクターに集中している中ではありますけれども,今後の大学院教育の在り方を検討する上では,リカレントに着目した議論が必要ではないかというようなことでございます。
従来,社会人の学び直しということでふわっと言っておりましたけれども,例えば,先日のドイツ総選挙がございましたが,主要の争点は環境問題ということがかなり挙がっておりまして,その裏にはドイツの基幹産業であります自動車分野において,内燃機関の問題,それがなくなるといったところで大幅な失業者が生まれるのではないかといった社会不安にどう応えていくか,環境問題と経済問題の両立といったことがかなりその社会的な大きな論争になったというふうに報道等で承知をしております。
自動車業界もその雇用を完全に維持するというようなことですとか,再教育を全てがその自動車業界の中でやるということはかなり難しいであろうといった中で,そういった様々な分野で急激な産業構造,社会構造の変化が見込まれるという時代を迎えて,大学院教育を通じて,産業あるいは社会全体を支えていく,より人材を学び直すことによって,改めて産業を強くしていくというような実質的というか,産業的なことを裏支えするというような大学院教育の在り方というものもあるのではないかというふうに考えております。
以上,3点,大きくまとめてしまいましたけれども,他方で,我々の反省として,先ほど申し上げました博士課程のキャリアパスの話で申し上げれば,大学院部会だけではなくて,科学技術・学術審議会の人材委員会ですとか,あるいは経済産業省の中でも産業構造審議会という中に研究開発・イノベーション小委員会というようなもの,内閣府の科学技術・イノベーション会議とか,いろいろなものがあります。そんな中で,今,どこの部分で,どういった人たちが,どういう議論をしているのかというような見取図みたいなものをきちんと整理をして,その上で今,我々大学院部会として議論すべきこと,引き受けるべきことを改めて,少しきちんと整理をしたいと思っております。
場合によっては,合同部会の開催ですとか,ゲストスピーカーに来ていただくといったことも含めて,横串を刺していくということが重要だと考えてございます。今後の進め方については,また,引き続き御相談でございますけれども,取りあえず本日につきましては,この今期大学院部会で大きく取り上げるべき議題について,御議論いただければというふうに思っております。
以上でございます。

【湊部会長】 どうもありがとうございました。前回,先生方からいただいた論点をざっとこう羅列した上で,事務局のほうで大まかに3つの論点にまとめていただいております。今後,この部会でどういう議論をしていくかということをベースとして,この3つにくくったテーマが提示されておりますけれども,先ほどお話をいただいた波多野委員の論点もこの3つの論点の中にかなり含まれているように思います。
その上で,今後のこの部会の議論の方針等につきまして,改めて,今日は少し時間を取りまして,委員の先生方から御意見をいただきたいと思っておりますけれども,何か御意見がありましたらどうぞ。いかがでしょうか。
1点目につきましては,これまで,財政支援,生活支援等々のことでかなり確かに文部科学省のほうでも政策を出していただいておりましたが,それがある程度,形ができてきたことを踏まえた上で,改めて,大学院教育の中身の問題,どういうプログラム,どういうコースをつくっていくか,これは当然,領域によって大いに異なる面はあると思いますけれども,将来の人材供給ということを考えれば,ここで何をやるかということを明確にしておく,議論しておくことはやはり必要ではないかという観点でございます。
2番目も,先ほどこれは波多野委員からも御指摘があったように人文科学・社会科学系の大学院の在り方をどう考えていくか,これは出口論を含めて,いろいろ議論があったわりにはこの部会としてあまり取り上げてこなかったような気もします。これについて少しきちんと時間をかけて議論をしておいていかがかということでございます。
それから,3つ目の点は,これはリカレントということはここ数年よく言われてきておりますけれども,学び直しというと,何かこうエクストラな感じがします。しかし,実は先ほどちょっと事務局でも触れられましたように,人生100年時代の著者スコット博士も議論していますが, 2000年代初頭に生まれた人の少なくとも日本では50%は確か107歳と言っていましたか,それぐらいは生きるだろうと。具体的な数字は別として,非常に長寿化が進むことは間違いないとすると,今までの教育のライフステージにおける位置づけというものはもう一度考え直したほうがいいのではないかと。すなわち,日本の場合は,非常にソリッドなエデュケーションのステージがありますが,これまでならリタイアメントまで,例えば,60歳前後まで持つようなスキル,トレーニングで何とかできたかもしれないけれども,これがもし今の若い世代の寿命があと20年延びるとなったら,これはちょっと話が違ってくる。
そうすると,単なるエクストラとしてではなくて,システムとしても必要に迫られて,どこかでリチャージする必要があるのではないか,ということがスコット博士の著書でも随分強調されている。そういったときに,大学がどういうファンクションを果たせるか,恐らくそういう段階では大学院がかなり主体となると思いますが,こういったことを踏まえた上でのリカレント教育というものを少しせっぱ詰まってからやるよりは,当然これは将来確実に来ること,少子化というものはコントロールできるかもしれないけれども高齢化というのはコントロールできないので必ず来ることとして,教育のライフステージにおける位置づけというものを議論しておいたほうがいいのではないかということで,この3つを挙げさせていただいているわけです。それ以外のこと,あるいは特に大事というようなことで,委員の先生方から御意見があれば伺いたいと思いますが,いかがでしょうか。

では,挙手ボタンの順番でお話しいただきたいと思います。最初は,川端委員からお願いできますか。

【川端委員】 どうも。それぞれ進みながらなんですが,今,ちょうど最後に言われたリカレントで,これも先ほど言われたように,大学院教育という切り口ではなくて,もうちょっと大きく全体を見た上で,少し経済産業省でもこの話を私が入ってやったときにはやっぱり一番下はカルチャースクールから始まって,教職の学び直しから企業のエキスパートをつくる再教育までいろいろな切り口があって,それをどう整理するかから始めたという話もありますので,ちょっと全体像の中でどう見るかというのと,フォーカスをどこに当てるかというと,大学院というキーワードが本当にここに成立するかどうかというのは,ちょっとそれも含めて,検討していただきながら進めていただければと思います。
以上です。

【湊部会長】 ありがとうございます。もう少し広いレベルで考えたほうがいいというようなことですね。ありがとうございます。
それでは,次,高橋先生,お願いできますか。

【高橋委員】 高橋真木子です。ありがとうございます。
まず最初に,事務局の今後の提案で,CSTIやMETI等の相対的な立ち位置で本部会の議論の範囲をクリアにしていこうというお話大変,賛成です。重複するところがあるものの,やはりこのメンバーだからこそできる議論というものをできればなと思っております。これは感想です。
2点ほど申し上げたいことがあります。
一つは議論の仕方と言葉遣いについてです。前の期の一連の議論は,大変私自身も共感するところと勉強になるところがあったんですけれども,今の事務局の問題提起にも含まれていたんですが,これだけ多様で複雑化する社会の中で多様な博士人材が活躍するためにという議論をするには,ある程度のセグメント化,もしくは類型化が必要なのではないかと思います。
事務局資料は綺麗にまとまっていますが,あの中でいうと,まずキャリアパスについては,アカデミック志向と,その真逆の言葉を何て名づけるか,これは重要だと思いますが,ノンアカデミックってちょっとネガティブだと思うんですけれども,アカデミック志向とそれ以外の社会で活躍する博士というのは,やはりいろいろなトレーニングですとか,今後,私たちが提供する基盤だとかが違うと思うので,ここはやっぱり区分しないといけないというのが1つ目の言葉の整理です。
2つ目の言葉の整理も,くしくも皆様が既におっしゃっているストレートドクターとそうでないドクターです。やはり区分して話をしていかないと,せっかくのこの部会の議論というものが構造的に積み上がらないんじゃないかなと思っています。
その中で,前の期でも,いつも川端先生のおっしゃることはとても共感したんですけれども,リカレント教育というものはあまりにも広いので,私たちが議論をするべきリカレント教育というものは,いわゆる教養セミナーのようなものではなく,もう一度しっかり学び直しをして,次のキャリアにつなげていくということだと思うので,そこら辺をもう少し文言化して共有できるといいのかなと思いました。
これが,以上,1点目の言葉の使い方,議論の仕方についての御提案です。
2点目です。エビデンス・ベースド・ポリシー・メイキングというものは,昨今よく言われている中で,先ほどの参考資料1の1ページ目,いわゆる博士に対するファイナンシャルな支援というものが非常に大きく今,転換点を迎え,いいほうにかじを切っているという認識があります。
その中で,修士から出ていく3万人のうちの簡単に言うと1万5,000人に対して,幾つかバリエーションのあるメニューはあるものの,大きな経済的支援がここから新たにきちんと始まるという今いいゼロ時点にいるのかなと思っております。
では,この政策をどうやって私たちが評価していくかといったときに,ある程度やはりこの政策設計時もしくはスタート時点で,目標値もしくは期待するインパクトのようなものを入れておくというのは大切なことなのではないかと思います。
具体的に申し上げると,新設されたフェローシップ制度の稼働後,3年,4年の後,制度対象の人たちがその後どういうチョイスをするのか。アカデミックキャリアを志向する人が増えるのか,5年後には間違いなく定点観測できると思います。
なので,それが3万人が3万3,000に今10%間口が広がった人が手を挙げてくれるようになるのかとか,1万5,000人のうち,この充実した環境をうまく使って,その後,いろいろなところにチャレンジする人が増えるのか,多分,選択肢は一つではないと思うんですけれども,幾つか私たちが期待するインパクトを観察できるような設計があれば良いと思っております。
これは多分,人材関連の事業全て共通ですが,時間がかかるけれども,確実に何か成果が測定できるという意味ではとてもいいものだと思うので,これまでそういう定量的な議論はなかなかできなかったと思いますが,確実に3年後には私たちはデータを取れるので,ぜひできればなと思います。
以上です。

【湊部会長】 貴重な御意見ありがとうございました。おっしゃるとおりで,確かに政策の成果を確認するための指標を今から考えておくということは,確かに一番大事だと思います。ありがとうございました。
それからアカデミックとノンアカデミックの出口の違いも非常に大事なところで,やっぱり違うんですよね。特に,アカデミックなキャリアを考えるのだったら,ポスドクという概念が入ってきて,それはかなり複雑になるので,そこはどこを対象としているかということもきちんとやはり定義をした上での議論が必要だろうと思います。ありがとうございました。
それでは,須賀晃一先生からお願いできますか。

【須賀委員】 須賀でございます。
実際の大学院教育の中身といいますか,あるいはどういう人材を育成していくかという議論に具体的に入っていきますと,どういう教育を我々がしなければいけないか。それを受けて,そのような人たちが社会どう貢献できるかという話になってしまうんだろうと思うんですが,そういう個人がどう習得するかではなくて,むしろ今,博士人材ということを考えますと,アカデミックの場合には,明らかに超過供給の状態にあって,就職がないというのがこれがやっぱり実態なんだと思うんです。そこの話をしないまま個別に行ってしまいますと,十分な人材ではないから就職がないんだという話で終わってしまって,全くこの博士人材に関する労働市場の問題の解決にはならないというふうに私自身は思っています。そこはできれば切り離していただいて,どういうふうに人材を育成していくかということよりも,要するに,社会のニーズに合った人材にというときには,特定のニーズがあるはずですが,そういうニーズは別個に,これまでの学問に興味があって博士課程に行っている人たち,そういう人たちは,社会のニーズは基本的に関係ないんですね。行き着く先はアカデミックしかない。それで,なおかつ今,定員がかなり広げられてしまったというところで,放っておけば,超過供給は当たり前の状態になっている。その中から,自分の専門を少し曲げて,社会のニーズを感知した人には仕事が行くかもしれないけれども,専門を徹底してやった相当に優秀な方は,日本の中でも仕事がある。そうではない,次の層ぐらいになると,もう就職口がない。何をやっているかというと,大量の非常勤講師を生み出すという,そういうふうな非常勤になっているということなんです。これが実態だと思います。
我々の大学院で調べましたところ,相当に多くの行方不明者がいるということが分かります。要するに,数年間でアカデミックに就職ができるのは,本当に二,三割で,就職待機の状態で非常勤講師をやっている。あるいは,高校の教員をやっているとか,そのほか幾つかの仕事をやっている。やっぱりアカデミックに行きたいがゆえに大学院に行っている人たちには,今のこの定員は明らかに多くて,超過供給を生み出している。そうすると,個人の教育研究のレベルの話ではなくて,社会全体として労働市場をどういうふうに考えるかというところをお話ししておかないと,いつまでたっても問題解決しないのではないかという感じがいたします。
ということで,労働市場全体としての需給の話をぜひどこか早い段階で取り上げていただきたいというふうに願っております。
以上です。

【湊部会長】 ありがとうございます。少しスペシフィックな話になりましたけれども,確かに見かけ上,供給過剰,逆に言えば,需要が少ないというふうに見えることはどうなのでしょうかね,僕なんかから見ると,これはかなり今の日本社会固有の問題のようにも見えてくる。だから,それは必ずしも大学だけの問題というよりは日本の大学とそれから企業の在り方のような,より大きな話にもなってくるので,おっしゃるとおり企業側あるいは企業に限らず受け入れる側の社会の在り方,構造というようなものを無視して我々が大学院の在り方を議論するというのは確かに問題があるでしょうけれども,そこは,先ほど事務局からもありましたように,やはり日本の政策全体との兼ね合いでということはあるんじゃないでしょうか。非常に重要な問題だと思います。ありがとうございます。
それでは,濱中先生からお願いできますか。

【濱中委員】 濱中でございます。よろしくお願いいたします。
私からは,若干楽観的なお話をさせていただければと思います。資料1で,2ページ目の11番目,これまで講じた施策の成果の検証に関しては,多分これは私が申し上げたこともここに含めていただいているのではないかと思うのですが,前回,申し上げたのは,これまでもいろいろな施策をやってきており,何らかの成果を生み出している大学院もあり,それを評価すべきところはあるのではないかということです。
こうした視点から資料1の3ページ目の①のところを見たとき,キーワードが「実質化」になっているところが気になります。実質化というのは,中身に問題があるものを望ましい方向へ変えるという意味合いで使うものですが,このように書かれると「やっぱり大学院教育は空洞化していていまだ課題が山積」という印象を与えてしまいます。実質化をキーワードとして設定しなければならない側面もあるのかもしれませんが,だとすれば同時に生み出されている成果の「可視化」もキーワードとして取り上げるべきであるように思います。
「実質化」という言葉は,例えば,「学部教育における単位の実質化」といった文脈でよく見ますが,単位制度の場合は,たしかに「実質化」という課題があります。授業外学習時間が明らかに少ないので,そこをどうにかしなければならない。けれども,大学院の場合は,「実質化」と並行して,今やっていることの「可視化」を進めることが大事なのではないかなと思いました。
もう一つ,3番目のリカレント教育に関して,先ほど川端委員からも「より広い視野で」という意見があり,なるほどと思いながら伺っていたんですが,大学院がリカレント教育を引き受けるときの課題は,学部段階で違う領域を専門としてきた人が修士課程に入学してきたときの対応にも見出されるかと思います。
ストレートに同じ領域で上がってきた人たちとは異なり,大学院レベルでありながら補習のような教育を用意しなければいけない。いわゆる初年次教育ではないんですけれども,修士課程はわずか2年です。補習をやって半年もしくはそれ以上,そして残りの期間で修士論文のレベルまでもっていかなければならない。リカレント教育自体は発展すべきものだと理解していますが,その場が大学院となると,こうした難しさもあります。カルチャーセンターという話も出ましたが,カルチャーセンターと学部段階のリカレント教育,そして大学院が担うべきリカレント教育というものを整理した上で,大学院ならではというところを考えていく必要があるのではないかと思いました。
以上です。

【湊部会長】 どうもありがとうございました。
それでは,次は迫田委員,お願いできますでしょうか。

【迫田委員】 迫田です。2点,申し上げます。
まず,整理案の1点目に書かれてあるところですけれども,先ほどの高橋委員からもありましたように,非常に手厚く制度ができていますが,これが果たしてグローバルに見て,他国と比較して,どうなのかなという検証が必要ではないかなと思います。海外で大学院レベルに優秀な人を集める国は,それなりにすばらしい処遇をしているから集まるのであって,これだけ出せばいいだろうというのでは,あまり意味がない。優秀な人だったら海外の大学に行ってしまうと思いますので,比較検討が必要なのではないかなと思います。
もう一つは,社会との接続に関して申し上げます。先ほどから議論も出ていますけれども,既に良い事例は出てきているわけです。リーディング大学院の場合には,社会というものを意識しながら人を育てる結果,卒業生は取り合いになっています。育て方の問題はやはりあるのではないかと思います。
なぜリーディング大学院の人たちの就職が順調にいったかということを考えてみると,答えはもう明確ではないでしょうか。問題はそちらにかじを切るかどうかだと思います。波多野委員から冒頭に問題提起がありましたけれども,やはり課題をしっかり設定できる,考えられる人であれば,社会は常に必要としているし,どんどん取りたいという企業はたくさんあります。企業が取らなくたってそういう方であれば自分でベンチャーを起こしてでも仕事をやっていける時代になっていると思います。だからそういう人をしっかり育てていくということが,必要なのではないかなと思います。卓越大学院になってどうなのかという点はよく分かっていませんが,リーディング大学院の素晴らしい実績を無駄にしないようにしていけたらと思いました。
もう一つ,リカレントについてでありますけれども,こちらは,現在世の中のほうが早く動いているので,放っておくと手後れになるのではないかなと思います。
リスキリングという言葉の方が一般的になっていますが,アメリカの企業とかではもう1,000億円かけて,従業員の再教育を行うというのが一般的になっています。大学と組んで企業がリスキリングを進めるという取り組みがかなり進んでいまして,これもゆっくり議論していたら,手後れになってしまうのではないかなと感じております。ぜひ急いで議論していくべきだと思います。
以上です。

【湊部会長】 どうも貴重な御意見ありがとうございました。確かに,リーディングあるいはこれから卒業生が出てくる卓越大学院について,また,事務局のほうからもいろいろな出口などについての資料をまとめて出していただければ随分参考になると思います。どうもありがとうございました。
それでは,神成先生。

【神成委員】 慶應大学の神成です。すでに委員名は公表されているので問題ないと思いますが,私は今回の博士課程6,000人の経済支援のための次世代研究者挑戦的研究プログラムの委員をさせていただきました。各大学から,大学院改革を含めた提案がなされてきたわけですが,正直言って私はびっくりしました。提案されている内容が非常にすばらしく検討されていて,従来型の博士研究のみに基づいて専門性のみを鍛える課程から大きく踏み出して,全研究科横断的な,例えば,プログラムとしてCOEやリーディングや卓越の教育アセットを埋め込んで,なおかつアカデミアだけではなく産業界にも学生を送れるように,キャリアパス支援のためのトランスファラブルスキル開発の事業項目をきちんと埋め込んだ形で,博士論文だけに集中しない形での研究教育プログラムを非常に工夫して,学長指導の下に本気でやるぞという提案をしてきた大学がたくさんありました。
私は正直に言って,これが本当に実現できていくのだったらすごいと思った次第であります。どこの大学も,中期目標の上で改革を積み上げてきて,今ちょうど計画が終わったところで,これから限定的な実践経験を踏まえて,かつ全研究科・専攻へこ広げていくぞというフェーズだと思いますけれども,各大学のそういった大学院教育に対しての努力というのは,すごいなと正直思った次第でありまして,そういった取組を実現してくださるのであれば,この委員会において,こういう教育をするようにしましょうというような議論をあえてしなくてもいいのではないかなとさえ思っております。
ただし,実は,そういった活動がグッド・プラクティスとして外部に公表されて見える形にはなっていないというのが非常に残念でありまして,私のいる大学においてもそういった国立大学の非常に頑張っている計画といいますか,試みに対してはほとんど知られていないという状況であります。
なので,こういったいい計画を持っている大学が非常に多いので,見える形にして,グッド・プラクティスとしてその実績を公開して相互に参考にして取り込んで行くということをするだけでも,知のプロフェッショナルを育てていこうという改革はかなり進んでいくのではないかなと思っております。
それらの博士課程の教育研究改革においては,キャリアパス支援のためのプログラムや,企業のメンターによる指導とかというものが入ってくる形で計画されているものが大半であり,その結果,学生のキャリア志向として,必ずしもアカデミアという方向には動いていかないであろうと私は予想します。 それらの取組が実を結んでいただければと思っている次第であります。
以上です。

【湊部会長】 ありがとうございます。貴重な御意見をいただきました。
加納委員,お願いします。

【加納委員】 短くお話しさせていただきます。①に関してです。知のプロフェッショナルということで,今,卓越大学院がスタートしていますけれども,やはり学生さんの中からは,専門領域とその知のプロフェッショナルのために設けられた新たな教育といったものの両立というものは非常に難しいと,かなり詰め込み状態になっているというような状況も伺います。
こういった中で,この5年間という限られた時間の中で,この知のプロフェッショナルというものを育成していくのか,それとももう少し時間軸に余裕を与えて,例えば,前倒しで卓越大学院そのものを始めるのか,あるいはもう少し長期化しても,その知のプロフェッショナルになるということを目標に,柔軟な教育機関を設ける等の考慮が今後は必要ではないかなというふうに感じました。
また,②の人文・社会科学系の話につきましては,やはりこれは企業から見ると,人文・社会科学系を出た人たちが,自分たちの企業に対してどういうことをしてくれるのかというものはなかなかまだまだ理解が十分進んでいないように思います。
そういう意味で,供給側の取組としては,やはり企業に対して,人文・社会科学系のドクターが社会に対してどういう貢献ができるのかということをもっとめり張りのきいた発信をしていくということが必要ではないかなというふうに思いました。
③のリカレント教育に関しましては,あまりこう幅を広げて議論をするよりも,やはり学位取得というような視点で焦点を絞って議論していく必要があるのかなというふうに思いました。これは①でも言いました知のプロフェッショナルといったものを育成するときの時間軸の柔軟性といったものも考慮に入れるべきかなというふうに考えております。
以上です。

【湊部会長】 ありがとうございました。それでは, 
宮浦委員,手が挙がっていますが。

【宮浦委員】 宮浦です。簡潔に申し上げます。まず①につきましては,先ほど来,いろいろもう動いておりますので,その成果を見ながらやはり見える化するということが先ほど御指摘あったと思います。
各大学が過去何年間かやってきたことを成果も含めて見える化して,お互いに見えるようにするのが好事例を踏襲する意味でも非常に重要だと思います。
②につきましては,人文・社会科学系に明るくないんですけれども,これについては,ワーキングのようなものをつくって,人社系の先生方がまずどう考えているか,何が課題なのかというところをしっかり練った形で,全員で議論したほうが効率がいいのではないかなと思いました。これは私見ですけれども,そう思います。
③につきましては,リカレント教育,先ほど来,お話ありましたけれども,これが博士なのか修士なのかとか,あるいは領域を深くやりたいのか,あるいは領域を思い切って変えて勉強したいのか,その方向性がリカレント教育といってもいろいろだと思いますし,例えば,理系の博士については,社会人大学院ということで,もうかなり動いていると思うんです。そうではなくて理から文とか文から理とか,分野を変えてチャレンジするような修士とか,幾つかのパターンを考えて,これも少し整理して議論したほうがいいように思います。
以上です。

【湊部会長】 どうもありがとうございました。
それでは,小西先生,お願いいたします。

【小西委員】 手短に3番目のリカレント教育のところだけ発言させていただきます。
最初に湊先生のほうから,また,これ以前の大学院部会でも,リカレントという言葉を使うかどうかという意見があがっているので,やはり用語の使い方を定めるべきかと思います。リカレント教育は,学び直しという意味だけではないと考えます。
川端先生がおっしゃったように,これはリカレントのレベルというか,領域によっても考え方が違いますので,そこを整理していく必要があるということと,あと,まさしく今,宮浦先生がおっしゃったように,学部のリカレント教育と大学院のリカレント教育は,その役割が違います。加えて,マスターとドクターでも,これも区分して話し合ったほうがよいのではないかなと思いました。
以上です。

【湊部会長】 ありがとうございます。非常にいい御意見をたくさんいただきました。次回までには,こちらに掲示させていただいた素案につきまして,もう少しポイントを絞った形で今後の議論の課題についてまとめたものを準備したいと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。
それでは,議題の2に入らせていただきます。議題の2は,人文・社会科学系の大学院の在り方ということでございます。議論に先立ちまして,今日は人文系大学院の課題と対策という題で,名古屋大学の佐久間副総長からお話をいただけることになっておりますので,まず御発表いただいた後に議論を始めたいと思います。
それでは,佐久間委員,よろしくお願いいたします。

【佐久間委員】 名古屋大学の佐久間です。
それでは,資料2を御覧ください。2枚目以降,右上のほうに番号が書いてありますので,その番号を参照いただければと思います。
議題は人文・社会科学系ということになっているんですが,この部会でも人文系と社会科学系は違うだろうというご意見がこれまでもありましたので,取りあえず私のこれからの話は人文系ということでまとめさせていただきますので,お願いいたします。
さて,早速,1と書いてあるスライドですけれども,入口と出口問題と書いてあります。いろいろ人文系は問題があるわけですが,よく数字として出てくるのは,特に博士後期課程に関して充足率が低いということと,標準修業年限内での修了率が低いということ,この二点がよく言われているわけです。
ここに表がございます。7つ大学が挙がっておりまして,どれがどの大学とは申しませんが,いわゆる旧帝大の人文系の大学院ということです。二つの数字はどちらも100%でないと本来いけないんでしょうけれども,充足率のほうは頑張っていらっしゃる大学もありますが,標準修業年限内修了率はどこもかなり惨たんたる数字になっています。定員充足率のほうはいわゆる入口の問題ですし,標準修業年限内の修了率は出口の問題の一つということになってまいります。
次の2枚目ですけれども,入口問題ということに関して,なぜ博士後期課程は充足できないのでしょうか。ここはスライドの記載が多少不正確なんですが,前期課程はおおむね充足しているというのは,名古屋大学の場合です。名古屋大学は確かに,前期課程は充足しているわけです。それなのに,後期課程が充足できていないというのは,要は,前期課程からの進学者が少ないわけですけれども,ただ,これは人文系だけではなくて理系も含めた全般的な課題ですよね。
名古屋大学も,実はよく見ると,学部から前期課程へ進学している学生さんがそもそも少ないということがわかります。これは人文系だけじゃなくて,社会科学系にも共通の課題だと思いますけれども,学部から前期課程への進学が少ないというのは名古屋大学だけの問題ではありません。なので,7帝大の中でも前期課程の段階から充足できていない大学も実際あると思います。名古屋大学の場合は,何で進学者が少ないのに充足できているのかというと,外国人留学生を多く受け入れているからです。およそ6割が外国人留学生で,それでちゃんと埋めてはいるんです。もちろん留学生も大歓迎なんですけれども,ただ,このスライドの真ん中にあるように,結局優秀な学生ほど進学を敬遠しているという現実もあります。今,人文系も研究振興を頑張らなきゃいけませんと言われている中で,優秀な学生を取りはぐれているというのは非常に大きな損失なのではないでしょうか。
一方,3枚目,出口問題のほうですが,何で修業年限3年で修了できないのかということなんですけれども,もちろん在学中に留学をして,どうしても3年以上かかってしまうというケースはあります。それはしかたがないわけですけれども,そうではないケースで,何で3年で修了できないかというと,結局学生からすると,3年で修了してどうするのということがやっぱりあるわけです。要するに,修了してせめてポスドクに就ければいいわけですけれども,なかなか人文系の場合はポスドク自体が少ない。ポスドクの代わりとして非常勤講師という選択肢もありますが,非常勤講師も今やっている人がなかなか手放してくれないので,それも回ってこないわけです。なので,結局就職難ということが非常に重くのしかかっていると言えると思います。課程博士論文というのは,本来は課程の修了を証明するためにあるわけですので,そんなにむちゃくちゃ高いレベルを求められているわけじゃないわけですけれども,就職難という現実があると,少しでもいい博士論文を出さないと就職に響くんじゃないかとみんな考えてしまって,結局そうすると,それだけ時間をかけないと博士論文は書けませんという話になってしまうわけです。こういった気分が学生の中にありますし,教員のほうにもそういう空気がないわけではありません。だからそこら辺は学生,教員双方の意識を変えていかなければいけないし,それは大学だけの問題じゃなくて,各学界の取組も必要なんでしょうけれども,ただ,やっぱりこの就職難という現実は非常に重いものがあろうと思います。
先ほど須賀委員のほうからもありましたけれども,ある意味やっぱり需給のバランスが崩れているわけです。もし博士後期課程の定員を今充足してしまったら,今だってあぶれている人がいるわけですから,どうなってしまうんだろうということもあるわけで,そうすると,そこら辺をどうするかというのも本当に真剣に考えなければいけないところだと思います。
このような現実を前にどのように考えればよいのか,というのが次のスライドになります。今日はちょっと時間の都合で非常に乱暴にまとめてあるわけですけれども,可能性として1,2,3があるのではないでしょうか。1は,学生定員に見合うようにアカデミアのポストを増やせばいいんじゃないか。逆に2のほうは,アカデミアのポストが限られているなら,学生定員を減らせばいいんじゃないか。しかし,博士後期課程と言っても,アカデミア以外のキャリアパスもちゃんとあるはずですよね,ということであるなら,3の可能性もある。もちろん1が実現できればいいのかもしれません。先ほども申しましたが,人文系の研究振興,デジタル・ヒューマニティーズとか,いろいろそういったことをやりましょうということも言われているわけですので,それには担い手が必要になりますから,当然1もあり得るのかもしれませんが,これは現実的には多分難しいわけです。一方,2のほうは,実際に大学によっては多少定員を減らしているところもあるようですけれども,その場合,学生が減れば教員もそんなに要らないでしょうという話にどうしてもなるわけです。その結果,教員が減ってしまうと,結局需給バランスを改善したことにならないわけで,どんどん負のスパイラルになってしまいますし,また,研究の中核になるような大学のポストが減らされてしまえば研究振興にも支障が出てしまいますので,できれば避けたいところです。
そうすると,次の5枚目のスライド,「社会のニーズ?」のところですけど,選択肢の3,新たなキャリアパスを開拓して,何とかやっていかなければいけないのではないかということになります。ここら辺の議論は非常に乱暴にまとめているので,先ほど須賀委員のお話があったように,ちゃんと議論しなければいけないところですけれども,とにかく社会のニーズを踏まえて考えていかないといけないということは確かだと思います。でも,それは当然のこととして,ちょっと脱線するんですが,この社会のニーズということに関して,人文系のほうでは非常に心配していることがございます。それは何かというと,これは今日,最初に波多野委員からもご発言がありましたけれども,人文系の場合は学部段階でほとんど就職してしまうわけですが,だんだん就活が早くなっていて,4年生になる頃には大体内定先が決まっているわけです。じゃ,4年生は何をしているんですかというと,文学部の場合,当然卒論は書きますが,単位は3年で大体取り終わっているわけなので,4年生が空洞化してしまっているということがあります。一方,就活は就活で,文学部としては卒論が大事だということで学生を指導しているわけですが,卒論は企業の方に見てもらうことができません。そうなると,果たして人文系の卒業生に社会から期待されている能力って一体何なのだろうと思いたくなってしまう部分もございます。
これは学部の話ですけれども,人文系の博士人材についても,本当に社会から求められているのは何なのだろうということがよくわからなくて,人文系としては心配になってしまうところがあるのは確かです。ただ,そこら辺は,これまで人文系の側でも,いや,人文系というのはそんなにすぐに社会に役立つわけではありません,と開き直って人物像を社会に示してこなかった。そこにやっぱり一番大きな責任があるわけで,そこはしっかり考えていかなければいけないんだろうと思います。
さて,このように非常に難しい問題がたくさんあるわけですが,次の6枚目のスライド,どこから手をつければいいのか,ということです。なかなか難しいんですけれども,私個人としては,とにかく学部からまずは前期課程に進んでもらわなければ話にならないでしょうと考えております。その場合,やはり就職という非常に魅力的な選択肢があるわけですから,控え目に言っても就職と同じぐらい大学院進学は魅力的なんだということを示さないと,なかなか大学院に来てくれないわけです。先ほど申し上げたように,就職先が,もう4年生になる頃には大体決まっている。大学院の入試というのは早くたって4年生の夏とか秋ですから,就活よりも後なんです。一流企業の内定をもらっている学生に,内定を蹴って大学院に来いと言うのはすごく至難な業なわけで,非常に難しいんですけれども,そうも言ってはいられないので,じゃ,どうするか。やはりこれはロールモデルを示してあげないと,それは駄目でしょうと。ただ,ロールモデルというときに,あまりすご過ぎる人ばかり示しても,学生からすれば,それは一部の特殊な人でしょうということになってしまうので,大学院に進学して普通に頑張っていれば,5年後,10年後にはこうなれますということを示してあげないと,学生はなかなか来てくれません。だからそういった面でのPRというのはもっとちゃんとやっていかないといけないんだと思います。
ただ,PRすれば簡単に進学してくれるようになるかというと,そう単純なものではないわけで,やはり,大学なので,教育の面から後押ししてやることも大切です。学生も授業を受ける中で,これだったら大学院に行ってもいいかなと思ってくれるかもしれないわけで,そういう意味ではやはり教育カリキュラムは非常に重要だと思っております。
ということで,7枚目のスライドなんですけれども,やはりこの教育カリキュラム,今のカリキュラムで本当にいいのかということは考えざるを得ないと思います。先生方に聞くと,いや,今のカリキュラムで十分機能しているんですとおっしゃるわけですけれども,それは経験上そうなのかもしれませんが,今のカリキュラムがベストかどうかはわからないわけですし,また,さっき申し上げた学部4年生が空洞化している,という1点だけからしても,カリキュラム改革が私は必須だと思っております。
カリキュラム改革は,やる気にさえなれば,別に制度的な面を触らなくたってできるんです。できるんですけれども,ここではあえて,スライドにあるような提案をさせていただきました。別にこれが必須ということではありませんけれども,カリキュラム改革の1つの案として,いっそのこと4プラス2,3プラス2,あるいは4プラス1,そういう一貫カリキュラムをつくってしまって,それを大学院進学コースのような名前で設定し,そこに優秀な,有望な学生を誘導するということをやってもいいんじゃないかと思います。もちろんこれは全ての大学についてというわけではなくて,博士後期課程がある大学を考えています。
一貫カリキュラムについては,実際のところ,法科大学院では,法曹コースということで,3プラス2のカリキュラムを始めています。ただ,法科大学院の場合は明らかに資格取得を目的としていますので,それが人文系にも当てはまるのかどうかはよく考えないといけませんし,また,当然これは在学期間が延びる話なので,それだけ学費負担が生じます。そうすると,少なくとも当面は学費負担の軽減という措置も抱き合わせでやらないと,せっかくコースをつくっても,誰も来ませんでしたということになりかねないので,そこは考える必要があると思います。
また,今日は,後期課程の話を主にしているわけですけれども,仮にこれをやったって後期課程に来てくれるかどうかはわからないじゃないかというと,それはそのとおりです。そのとおりなのですけれども,しかし何もしないよりはいいのではないかと,最初の一歩にはなるのではないかと思っております。人文系の問題はそう簡単に解決できるわけではないので,やはり一歩一歩進まなければいけない部分もあるのではないでしょうか。
今の話は主に入り口に関する話でしたが,次の8枚目のスライドは,出口のほうになります。先ほど,やはりキャリアパスは新しいものを開拓しなければいけないだろうということでしたが,そのためには,ちゃんと人材像を設定して,その人材像に至るための教育カリキュラムをつくるということになります。ただ,ここら辺は私,研究科長の経験もありますし,いろいろ改組にも関わった経験がありますが,人文系の中だけでこういうことをやろうとしても,現実はなかなか難しいところがあるのも事実です。そこら辺,キャリアパスの開拓に関して,社会科学系のほうはいろいろな可能性がまだあると思うのですけれども,人文系はこれだけ考えてもなかなか出てこないわけですから,やはり非常に難しい。ただ,それならもう諦めるのかというと,そうではなくて,人文系だけではできないのなら,ほかの部局と協力してやるというのも当然あり得るでしょうと。そこはちょうど文部科学省のほうからも組織の枠を超えた学位プログラムをやってくださいということが言われているわけですから,それを使ってどんどんそういうことをやっていけばいいのではないかということ,これも考えていくべきなのではないかと申し上げたいと思います。
その際,社会のニーズに応えられる人材像を模索すべきであることは当然なわけで,人間や社会の総合的理解が前提になります。これは当然総合知の活用ということにもなるわけですけれども,キャリアパスを開拓するにあたっては,やっぱりそういうことを考えていかないといけません。
これも今日,最初に波多野委員からありましたように,まだ始まったばかりですけれども,就職がだんだんジョブ型に移りつつあるということがございます。ジョブ型になるということは,私は人文系にとってもチャンスだと思っています。人文系の博士人材にはこういうことができるのですということを打ち出すことができれば,ジョブ型という流れの中で,ちゃんと就職の道筋を開拓できるかもしれません。だからそこは,ぜひ頑張らないといけないと思っているところです。
それから,9番目のスライドですが,これは今申し上げたようなことがうまくできて,人文系であってもちゃんと就職ができるようになればいいのでしょうけれども,なかなか急にはそうならないと思うので,そうすると,やはりこの経済的な不安の払拭というのが非常に大事になります。いくら立派な人材像を掲げても,将来的に経済的に困窮すると分かっていたら,なかなか学生さんは来てくれません。後期課程については,先ほどもありましたように,非常に今,経済的支援が充実してきているわけですけれども,人文系の場合には,修了後についても何らかの支援は必要だろうと思います。こういうことを理系の先生に言うと,それは教員の研究費を使ってポスドクで雇えばいいのだよと言われてしまうのですけれども,なかなか人文系の場合,概して研究費の額も小さいので,そう簡単にはいかないところがあります。なので,私としては,教育スタッフとして雇用するというのは1つの手ではないかと思います。これは教員の教育負担の軽減にもつながりますし,後輩をリクルートするという意味でも非常にいいのではないかと思うんですが,ただ,これも問題は,非常勤講師と同じで,教育スタッフに一旦採用された人がずっと居座っていたら,結局機能しないことになってしまいます。だからうまく回るような仕組みを考える必要はありますが,とにかくいろいろ経済的な支援ということも考えていかなければいけないだろうと思います。ただ,いずれにしても,これはお金がかかることなので,大学ももちろん努力はしますが,なかなか大学だけではどうしようもないところもありますので,ぜひその場合は国としても何らかの施策を考えていただければ非常にありがたく存じます。
また,10枚目は若手研究者の育成ということですが,これは先ほど来,新しいキャリアパスということを強調させていただいていて,確かにそれも必要なのですけれども,じゃ,研究者になる人がいなくなるかというと,そういうことではありません。いなくなっては困るわけですので,そちらの方面についてはどうするかということなのですが,やはり優秀な研究者については,少なくとも30代前半,35歳ぐらいまでには職に就けるような仕組みをどうしてもつくらないと,研究の振興ということではなかなか厳しいことになってしまうと思います。名古屋大学では,博士後期課程修了後7年以内の若手研究者を特任助教として5年間雇用する若手育成プログラムというものを実施しております。出身者の多くは実際に大学の常勤職に就いているわけで,非常に成果を上げていると思っているのですけれども,これも大学独自の予算だと,当然雇用できる人数に限りもありますので,個々の大学が頑張るとともに,やはりここら辺についても国としての何らかの施策を考えていただけると非常にありがたいなと思うところでございます。
というわけで,最後にまとめですけれども,当然これは大学,中でも人文系自らが改革に取り組んでいかなければいけないことは言うまでもありません。その際,教員の意識改革も必要ですし,あるいは大学だけじゃなくて,学界にも頑張ってもらわないといけないわけですけれども,ただ,やはり非常に大きい問題であるだけに,大学だけで解決できる問題ではありません。国としても何らかの施策を打ち出していただきたいと思います。また,今,理系は博士前期課程まで行くのが普通になっているわけですが,昔からそうだったわけじゃないですよね。それがどうして当たり前になったかというと,その当時の産業界の後押しがあったと聞いております。ですので,社会,産業界のほうからも,ぜひこういう人材なら欲しいということを御提案いただけると,それに応えて大学,あるいは人文系としても取り組んでいくということができると思いますので,そういうこともぜひお願いしたいと思います。
また,最後の点は大学院部会の話じゃないかもしれませんけれども,学部4年,大学院5年ということで長らく日本はやってきたわけですが,この枠組み自体時代に合わなくなっている面もあるかもしれません。ですから,そのあたりもどこかで大局的な観点から議論する必要はあるのではないかと思います。ただ,そこはちょっと置いておいて,とにかく人文系の改革について,大した御提案はできていないわけですけれども,今後の議論の参考になれば大変ありがたく存じます。
というわけで,ちょっと長くなりましたが,私のほうからは以上ということにさせていただきます。どうもありがとうございました。

【湊部会長】 佐久間委員,どうもありがとうございました。
それでは,少々時間を取って,今の佐久間委員のお話への質問等々も含めて,委員の先生方,少し議論をしていただければと思います。
小長谷委員から手が。どうぞお願いします。

【小長谷委員】 ありがとうございます。今のお話とさっきのお話とを組み合わせて整理すると,アカデミアの話とノンアカデミアと両方含まれていたと思います。アカデミアに関しては,自身の興味をこつこつ深掘りしていくタイプという方はいつの時代もある一定の数いらっしゃって,それを大幅に増やしたところでその先の就職先もないわけです。ただし,現在の問題は今までだったら就職できていたぐらいの人たちでも就職できなくなっているというアカデミックポスト不足です。これに関しては,旧来のポストの考え方ではなく,ポストをシェアするような,シェアする形でのチームサイエンス的にして,空いた時間は自分の研究を科研費でも何でも取ってやっていくという形もあり得るのではないかと思います。今のままだったら科研費の申請ができないような非常勤のポストに就いている若者もいて,生きていくことと研究を進めていくことの両立がむずかしいので,最低限のお給料はもらえて,それ以上の自分の関心の研究費を申請するチャンスはあるという,そういう安心したところまでは,ぜひ持っていってもらいたいと思います。それが1点です。
もう一つは,ノンアカデミックな就職先についてです。ただいまの佐久間先生のお話に入っていました,社会的需要に合わせた新しい人文系の人々のつくり方です。既存のシステムでは対応できないような,例えば情報学ですとか,人社を出たけれども,環境のことをやろうと思ったら少し理科系を学ぶとか,そういうふうに,今までの既存のシステムでは対応できなかった,学問をプラスアルファして学ぶ仕組みによってノンアカデミックの出口へつなげられるのではないでしょうか。そうした両方をお話ししてくださったと聞きました。ありがとうございました。

【湊部会長】 どうもありがとうございました。
田中委員から手が挙がっています。どうぞ。

【田中委員】 田中でございます。佐久間先生,大変問題を整理していただいてありがたいと思うのですが,私は必ずしも人文科学,人文学の専門ではないのですけれども,人文学の関係の研究所とか,そういうところにずっといましたので,同僚のやっていることは比較的よく知っているつもりなのですが,まず第一に申し上げたいことは,前回も言ったことだと思うのですけれども,定員充足率が低いのと,それから,限度内修了率が低いということは問題ではあるのですけれども,概して言えば,日本の人文学の博士論文というのはとても質が高いわけです。これをもっと簡単にしてどんどん出せばいいという考え方もあるのですけれども,ここに並べてある7つの大学の人文学で,博士論文というのは,多分欧米とかの大学の人文学の博士論文と比べたら,平均的に言ってずっと高いと思います。ですから,学問的なコンペティティブなやつでは全く負けるものではないと思います。それは湊先生のところの人文科学研究所とか,そういうところの有名な先生方のことをお考えになれば明々白々だと思います。ただ,なかなか需要と供給ということで難しいということがおっしゃられたわけなので,それはこの範囲の中で何とか解決しろというのは本当に難しいと思います。
それで,これは大学院部会で言えることなのかどうか分からないのですけれども,私は中央教育審議会自体が,全体として,日本の人文学を向上させるために投資を怠ってはいけないということを宣言すべきではないかと思うのです。日本の国としての品格の少なくとも一部は,日本が人文学において世界に冠たる成果を出しているということだと思います。科学技術というので,今度人文学,社会科学も入るわけですけれども,やはり日本の国の,私どもの専門分野で言えば,ソフト・パワーというものを維持向上させるためには,日本の人文学というものの水準をずっと保たなきゃいけない。その場合に,もちろん先ほど来お話があるように,他分野とかアカデミックでないところを探求するということは大事ですけれども,私はやっぱりアカデミックなポジションを断固維持,増やすということによって日本の人文学の水準というのは維持できるのだと思うのです。ですから,ここで人文学部のカリキュラムをこうしろ,ああしろと言うということもできないわけじゃないのですけれども,私は,今までの日本の人文学の実績からすれば,アカデミックなポストさえもっと増やしてくれれば,立派な業績を出し続けられるんじゃないかという気がします。
ですから,ここの大学院部会での提言になるかどうか分かりませんけども,中央教育審議会,あるいは政府全体として,人文学を断固維持発展させるのだというメッセージをどこかから出してもらって,そこに予算をつけてもらって人文学のポストを十分確保できるようにしなきゃいけない。これは大学院教育もそうですけれども,学部教育において,やっぱり人文学の良い教育プログラムがあるということは,将来自然科学系,社会科学系に行く学生たちにとっても非常に重要なことなので,ですから,どちらかというと,そういう大きな政策目標の中で人文学を発展させるのであるというほうに持っていっていただけないかと思う次第であります。

【湊部会長】 大変貴重な御意見をいただきました。ありがとうございます。
いろいろ論点はあるのですが,何人かの委員からまだ手が挙がっておりますので,順番にお話を伺いたいと思います。
村田委員,お願いします。

【村田副部会長】 ありがとうございます。私のほうからは,2点ばかりお話しさせていただきます。この件は前期の大学院部会のときにも少し発表させていただいたかと思うのですけれども,大学院の,いわゆる賃金プレミアムが大体30%ぐらい。これはデータが整って測定できるようになって,大学院生が学部卒よりも優秀であるということが既に証明されつつあるわけです。それはもちろん理系と文系と両方入っているわけなのですけれども,文系においてもそれはっきりしておりまして,MBAなんかの専門職大学院に至っては,7倍とか8倍ぐらいのプレミアムがあったりしますので,すごくはっきりしているということも改めて少し申し上げておきたいことが一つ。もう一点なのですが,そこから派生するわけなのですが,これはどなたかがおっしゃったかと思うのですが,人文・社会科学系の問題を,この大学院部会の中で,ワーキングなのか分かりませんが,ちょっと切り分けて議論をしないといけないと思います。ポスドクだとか博士は理系の話,自然科学系の話だと思います。実際に自然科学系の社会人が大学院の博士課程を学び直しに来ているというのは私も承知しているわけなのですが,その問題と,人文・社会系の大学院修士に行く学生が少なくなっている問題とは区別すべきと考えます。なぜ修士が少ないのかというと,こっちも出口が問題なのですが,出口に関する企業の捉え方が違うので,問題の在り方,所在が違います。ここはやっぱりちゃんと切り分けて議論をしておかないと,一緒にしていると,それぞれ発言されている方がどっちを言っていて,何を問題にしているか錯綜してしまいますから,ここはちゃんと分けて議論をすべきだと思います。
それから,これも皆さん御存じかと思いますが,経団連と政府と大学,国大協と私学も含めて,新卒一括採用をどうするかという問題で,いわゆる産学協議会ができた。その報告書がこの4月に出たかと思うのですが,もちろん一括採用のことについてもそうなのですが,あそこで注目されたのは,経団連が大学院教育をフォーカスし出したのです。それもかなり本気になって考えられています。まさにようやく大学院教育の重要性ということが産業界も分かってきているこのチャンスのときに,やはりちゃんと人文・社会科学と,それから理系とを分けてそこを議論することが必要だと思います。
それから,もう一点。これも前期のときに議論になった履修証明プログラム,これはリカレントなのです。社会人が専門職の大学院,MBAだとか各研究科に入ってきてどうするかという議論と大学院に行く学生を増やすという議論も切り分けておかないといけないと思いますから,論点をちゃんと切り分けて議論をしていかないと,結局結論が出なくなると思いますので,その点はよろしくお願いしたいと思います。
以上です。

【湊部会長】 ありがとうございました。非常に分かりやすい論点であり,また議論させていただきたいと思いますが,川端委員,手が挙がっていますでしょうか。

【川端委員】 人文科学系とか,こういう話を聞いたときに,私自体はもともと理学部,物理の人間で,かつて素粒子であったり宇宙といった分野もほとんど似たような世界観の中で博士キャリアパスやらいろんなものが議論されていた時代があって,その後,それは理系だとか理工系だと大くくりにまとめてキャリアパスを進めるという話に動いて初めて前に進みました。そういう意味では教員側のメンタリティーというのは,数十年前の素粒子とか,あの辺の教員も同じようなメンタリティーを持っていたなとぼんやり思いながらお聞きしていたというのが1点と,それから,もう一点は,ちょっと今,データを見てみたら,人文科学系の国公私立全部足した教員ポストと工学系に関する教員ポストって,ほとんど同じぐらいの教員ポスト数があるのです日本中に。それでいて課程博士というものがほとんど留学生であったり社会人であったりして,日本人学生の人数が少ない。文系博士のマーケットが増えないという話は非常に身近にもよく聞く話なのですけれども,そういう私学だとかいうものも含めた日本中の教員ポストというものはどんなふうにフローしているのかという観点からも,ぜひ事務局のほうで定量的に一回こういうフローの数字を調べていただいて一緒に理解ができると,いろんな話がふわっとしないで進むかなと思うので,ぜひ御検討いただければと思います。
以上です。

【湊部会長】 どうもありがとうございます。
それでは,宮浦委員,よろしくお願いします。

【宮浦委員】 ありがとうございます。御説明ありがとうございました。なかなか文系,人文系でドクターはなかなか取れないという話はよく聞いてはいたのですけれども,数字を拝見して,5%とか3%とか,ほぼ取れないわけですよね,3年では。そうすると,学生にとっては3年では無理だというのが常識化していて,5,6年か,一生取れないかもしれないわけです。そうすると,アルバイトで食べていくのですかということになってしまうので,根本的にクオリティーが高いのだから3年じゃ無理ですとよく分かる部分もあるのですけれども,3年の課程の大学院をやっているわけですから,学生さんを預かる上で,3年の課程をやる意義自体がちょっとクエスチョンマークがついちゃうので,その辺りをぜひ人文系の先生方が膝を突き合わせてワーキングなどでどう考えるかというのを,定員を大幅に減らすとか,あるいは3年では無理だから6年にするとか,根本に返ってドラスチックな議論をしていただく機会があってもいいように思います。すいません。勝手なことを言いまして。
以上です。

【湊部会長】 どうもありがとうございました。
それでは,佐久間委員のほうからコメントはありますか。

【佐久間委員】 いろいろありがとうございました。田中委員のほうから非常に心強いお言葉をいただきまして,当然そういう方向もあり得ると思うのですけれども,先ほど最初に出した数字は一番分かりやすいので,結局あれが出てきてしまうということがございます。名古屋大学でも,ほかの学系と比べて,結局人社系は駄目じゃないかと日々責められているところなので,そこは田中委員がおっしゃるように,社会科学系も含めて人社系をどう位置づけるのか,ぜひこの部会でも考えていただきたいと思います。あと,川端委員からあったように,確かに,人文系の教員というのは数からすると結構多いのは事実です。ただ,同じ大学教員という名前がついていても,ちょっと言いにくいですが,内実は非常に幅が広いところがあります。ですからそこら辺をちゃんと仕分してからでないと,議論が不正確になってしまうところがあると思います。ただ,ちょっとそこは私も詳細なデータを持っていないので,ぜひ文部科学省のほうで出していただければありがたいかなと思います。ありがとうございました。

【湊部会長】 ありがとうございました。それでは,菅裕明先生,お願いします。

【菅委員】 ありがとうございます。1つ佐久間先生にお聞きしたいのですけれども,先ほどから議論にありましたように,優秀な文系の先生方がいらっしゃって,先ほどのデータを見ると,ほんの数%しか3年で取れないと。数がある程度必要なのか,少数でいいから極めて優秀な人が必要なのか,大学院の教育あるいはプログラム自体,どっちを見ていらっしゃいますか。というのは,理系だと,優秀な学生がもちろんドクターに行ってくれるのはいいのですけれども,数がある程度いないと,やっぱり世界的な競争に勝てないということなのです。ですけれども,文系,人文系の場合は,そこはどういうふうに皆さんが考えていらっしゃるのかというのが,ちょっと私はよく見えなかったので,どういう一般的な考え方を持っていらっしゃるのか教えていただけますか。

【佐久間委員】 佐久間ですけれども,そこら辺は人によってもいろいろな考え方があると思います。ただ,よく人文系はタコつぼだと言われていますけれども,新しい取組をしていくには当然それなりの数の人が必要なわけですので,決して優秀な人が一握りいればいいとは多くの人は考えていないと思います。やはりある程度の数は確保しないと,人文系の将来はないだろうという考えだと思います。

【菅委員】 それはアカデミックとして残るという意味でそういうふうに考えていらっしゃるのか,それとも社会に人材を送り出していくためには数が必要だと思っているのかというところも,少し何か,私は人文系の人たちできちっと整理して,こういう理由だから数も要るし,クオリティーもキープが必要だというのを明確に出していただくのが,やっぱりインパクトがあるのではないかなと思います。今のだと,何となくちょっとどっちなのかよく分からない感じが。

【佐久間委員】 多くの人はほかのアカデミック以外のことはあまり考えていないのが実際なので,アカデミックである程度の数の人が必要だというのが大多数の意見ではあります。ただ,それが通用するのかどうかという問題はあるのですけれども。

【菅委員】 アカデミックだと,やっぱりポストの数は必然的に限られてしまうので,堂々と過剰な人を入れるという。

【佐久間委員】 そうそう,そこをどうするか……。

【菅委員】 成り立たなくなりますもんね。

【佐久間委員】 はい。

【湊部会長】 あと3人の,手が挙がっている委員の方々で終わりにしたいと思います。
まず田中委員のほうから何か。

【田中委員】 私が申し上げたいことは,人文科学,人文学と社会科学のかなりの分野というのは相当大学院教育においても違うので,これを人社系と言うのは誠にミスリーディングだと思います。例えば経済学とか経営学とか,そういう分野の大学院教育というのはかなりスタンダダイズされていますし,それから,博士論文の授与にしても,修業年限内に出すということは結構増えているわけで,これは政治学でもそうですし,心理学とかいうのでもそうですし,文科系という区分自体も,前回から私はちょっとおかしいと申し上げましたけれども,人文・社会科学系の議論をするのであっても,その場合はかなり学問分野を分けて考えないと,どこに問題があるのかというところがはっきりしなくなると思います。それだけ申し上げます。

【湊部会長】 御指摘のとおりだと思います。ありがとうございます。
それでは,塚本委員からお願いできますか。

【塚本委員】 すでに田中先生や皆さまがおっしゃったことを企業の立場からということで,お話しさせていただきます。
人文と社会は全く違うという例で,すでに有名ですが,例えばアマゾンではデータとテクノロジーが分かる人が欲しいということで,経済または関連分野の博士号を持った人と明示し採用をしています。他方,人文のほうは,私どもの会社に哲学の博士号を持った方が,社内コミュニケーションの仕事に応募をいただき,社内で検討しましたが,,彼の能力に合った仕事をジョブ型の雇用形態の中で提供できないという理由から,お断りをしました。彼の能力を生かせる場を提供できないため,彼にとっても意義のある働く場とはならないと判断した次第です。非常に重要な学問だと思いますが,,1つの企業でその人の力を満たすものが提供できるかというと,なかなか難しいところもあるので,丁寧に人文と社会は分けて議論したほうがいいと思います。
以上です。

【湊部会長】 どうもありがとうございます。
それでは,最後に須賀晃一委員のほうからよろしいですか。

【須賀委員】 学問分野によって分けるというお話がありましたが,学問分野によっても中にかなり差があるということで,例えば経済だと,経済を一まとまりにされてしまいそうですが,実は今,企業のほうからニーズがあるのは,どちらかというと計量系なのです。AIとかビッグデータと非常に近い関係を持っているところはそうですが,ところが経済史とか,あるいは経済学説とかいうふうになっちゃうと,これはまた違って,むしろ人文系と非常に近い。そういうところはやはり5年,6年かけないとドクターを取れないとかいうふうになります。ですから学問分野という分け方もどうかということで,むしろ方法論が違うと,それに応じて随分年数が違っているというのが実際にあって,ほとんどの方が,基本的には自分はその学問が好きで研究者になりたいから入ったという形の方が多くて,それがどこかで踏ん切りをつけて新しいキャリアパスを見つけていって,たまたま成功するという形なのです。ですから,最後まで行ってしまって,哲学を完全に理解された方が企業で役に立てるのかというと,それはちょっと難しいだろうなという気がします。
そういういろんなタイプの人たちを見ていて,本当にどういう形で議論していいのかということもまた,簡単に人社系といって大まかに分けるときはそうなるのでしょうけれども,中が相当に違いますので,そこがかなり難しいと。そうなると,どうしてもやっぱりある部分はタコつぼ的な教育というのがずっと残るだろうと。その一方で,かなり標準化できるような,先ほどの計量分析のようなものが使えるところでは,相当に短い期間で,学部からの積み上げで完全に行けるというものとがあって,その辺の違いをうまく考えておかないと,新しいキャリアパスと学問を受け継ぐ人材ということを2つ同時に大学院の中で満たしていこうとするときに相当大きな問題が出てくるので,その区別は重要だろうと思っております。
以上です。

【湊部会長】 ありがとうございます。
この辺でこの議論は一旦止めたいと思います。多くの先生方の問題意識ではっきりしているのは,大学と社会のインターフェースの問題がどうしても出てくる。1つは物理的にどういう形で出ていくかということと,もう一つは,僕はかなり日本固有だと思うのですけれども,学位とか博士号等のメリットの問題が,やっぱり日本は随分欧米と違うところがある。このままでいいのかどうかという問題は,すぐにどうこうはならないかもしれないけれども日本社会の特有の問題なので,必ずしも大学院部会の議論だけでどうこうならないような気もします。そういう社会全体へのアクセスの問題も少し取り上げるような形での議論ができればありがたいと思います。
これについては,できればやはり今お話がありましたように小委員会のような形にして,アドホックでその都度非常に関連の深い方々にも参加していただくような形で進めるのがいいのではないかと思います。少しプランニングしますので,またその節は御協力をいただきたいと思います。
それでは,次に議題3に移ります。これは令和4年度予算の概算要求についてということで,事務局からの説明です。

【西大学改革推進室長】 ありがとうございます。
お手元の資料3-1でございます。高等教育局中心でございますけれども,主要事項,このような概算要求をしてございます。
1ページ目,かいつまんで御説明だけ申し上げます。左側の真ん中上,国立大学改革の推進等で1兆1,217億円,これはいわゆる運営費交付金を中心にしたものでございます。次が私立大学等の改革の推進等ということで,これがいわゆる私学助成を中心にしたもの。詳細につきましては,この資料の中に書いてございますので,ちょっと割愛させていただきますが,次にSociety5.0の実現云々というところにありますけども,地域活性化人材育成事業というのが28億円,新規で要求してございます。これは別途また後ほど御説明申し上げます。次に,数理・データサイエンス・AI教育の推進32億円というのがございます。詳細は8ページのところにありますが,一言で申し上げますと,数理・データサイエンス・AIといった分野のニーズが非常に高まっているところ,特に自然科学系の分野を中心にかなり展開はしているものの,今まさに御議論いただいたように,人文系とか社会学系のところで,なおAI等の知識,数理・データサイエンスの知識を持った修士・博士課程学生の供給が足りていないといった問題意識がございまして,主にそれこそ人文・社会学系の分野から数理・データサイエンスをきちんと使いこなせる人をどんどん育成していこうというプログラムになってございます。詳細につきましては,3-1の中に束で入ってございますので,後ほど御覧いただければと思います。
続きまして,資料3-2でございます。今回,令和4年度の概算要求で,政府全体として,地方・地域活性化ということが非常にテーマとして大きく打ち出されてございましたので,これに伴う関連事業ということで要求してございます。
左側の下の図を見ていただきますと,文部科学省とか大学の中で地域の中核となる大学に求められる要素として,例えば人材育成という分野はもちろんですけれども,スタートアップを中心とした社会実装の分野,あるいは独自の強みを持った研究をさらに加速していくといった分野があろうという非常に単純化したモデルでございます。文部科学省として,地方の大学,地域の中核的となる大学を振興するといったプログラムをパッケージ化して推進していこうというものでございまして,トータルの要求でいきますと,右の共創の場形成支援といったものとか,大学発新産業創出プログラム,そして,もう一個,地域活性化人材育成事業ということで,これが人材育成でございます。その他は科学技術とか研究開発の部分を中心に光を当てているというものです。
おめくりいただきまして,資料3-2の2ページ目でございますけれども,これは当課で要求しております地域活性化人材育成事業,SPARCという名前をつけてございます。地域・地方と見たときに,特に大学院に絞って御説明申し上げますけれども,これだけ大学院博士課程の経済支援が充実してきましたねと。かつてそういうリーディングプログラムとか卓越大学院というところで大学院のコースワーク化とか社会実装,社会に貢献する人材を育成しようというプログラムは一定程度見えてきたという中でありますけれども,他方で,実際に今取れている大学とか産業の例を見ますと,やはり相当研究力があるところ,あるいは産業分野でもかなり大きな力を持っている企業といったところが産学連携の優良事例として挙がっているという実態があるのではないかというところに着目しまして,果たして,それでは地方の大学とか地域に根差した大学が目指すべき博士課程,大学院教育の在り方というものを国がモデルとして示せているだろうかということに着想を得まして,タイプAの大学院教育型というものを要求してございます。
ちなみにタイプBの学部教育型というのは,いわゆるSTEAM教育,学問分野の,ひたすら法学部だったら法律だけやっていればいいんだということでは,当然もう今の時代ないよねということで,学部教育自体から横串を刺してSTEAM教育をしっかりやっていくというカリキュラムをつくっていただくというものでございます。
具体的に,3ページ目を御覧いただきますと,大学院教育,特出した研究力とか特出した産業というのが地元になくても立派な博士号取得者とか博士課程をつくっていくというところでいいますと,今までよく言われているのは,左下の図でいきますと,青色の部分,研究活動,大学院が,当然アカデミアの中でアカデミックな研究をするとアカデミックな研究ができるということですけれども,社会とのインターフェースという話で申し上げると,コースワークとか社会が求める能力,いわゆるトランスファラブルスキルみたいなものをどう育成していくかということを融合した地域教育モデルというのをつくっていく必要があるのではないかということでございまして,さらに4ページ目を御覧いただきますと,もちろん大学院生,特に博士課程でございますので,研究が中心になりますけれども,そこに対して大学院が持っているいろんなリソースがあるはずですので,地域課題を大学院に持ってきていただいて,学生と一緒に研究の強みを中心にしながら地域課題を解いていくと。それをまたその研究にフィードバックしていって,社会に顔が見える大学院教育モデルというのをつくっていくというイメージでございます。この図で上にありますけれども,大学院連携といったところの中で地域課題を持ち込んでもらって,地域から,こういった課題について大学院で,この大学で何とか取り組んでいただけないだろうかというものをプログラムコーディネーターの人がマッチングして,そこの大学院の中の研究テーマとして使えそうなものがあれば,もちろん各大学院生のベースとなる研究はありますけれども,そこと掛け合わせることによって,より社会実装に近いような研究成果を生み出していくというものをイメージしております。
あとは,資料につけてございますけれども,5ページ目,共創の場形成支援というのはJSTでやっていただくもの,6ページ目はSTARTというプログラムで,これはアントレプレナーシップとかスタートアップを支援するようなものでございます。あと,先ほど神成先生から少し触れていただきましたけれども,次世代研究者挑戦的研究プログラムというのもございまして,そちらは参考資料のほうの4ページ目のところに概略が書いてございます。事業の内容としては,生活費相当額と研究費の支給とか,キャリア開発,育成コンテンツの提供を一体的に推進する大学に対して支援をしますよというプログラムになってございます。こういったところが取れる大学はいいんですけれども,コースワークのつくり方のノウハウが,いまいちどう取り組んでいいか分からないといった大学もまだ他方であるだろうということで,今回のSPARCといったものを要求させていただいた次第でございます。
以上でございます。

【湊部会長】 どうもありがとうございました。それでは,ただいまの文部科学省の概算要求で,御質問等ございましたら簡単にお受けいたしますが,いかがでしょうか。特にないですかね。予算のほうはまだ財務折衝の段階で,これにつきましては,今後より明確になってきた時点で,また文部科学省のほうから御説明をいただけるものと思います。よろしいでしょうか。
ありがとうございます。議題4,その他は,私のほうは別段準備しておりませんが,委員の先生方から何か取り上げていただきたいことがございましたら,次の会合にでも取り上げますけれども,何かございますか。よろしゅうございますか。
どうもありがとうございます。
それでは,最後になりますが,今後のことにつきまして,少し事務のほうから連絡事項がありますので,よろしくお願いします。

【西大学改革推進室長】 先生方,本日も非常に闊達な御意見をいただきまして,本当にありがとうございました。本日の議事内容も含めまして,またお気づきの点等ございましたら,事務局まで御連絡いただければと思います。
次回の開催につきましてでございますが,11月以降の開催を予定しておりますけれども,日程調整の上,詳細は改めて御連絡を差し上げます。
私からは以上でございます。

【湊部会長】 ありがとうございます。
西さん,どうですか。次回もオンラインになりそうですか。まだ分からないですね。

【西大学改革推進室長】 緊急事態宣言は明けましたけれども,なかなかこのスタイルはこのスタイルで便利かなみたいなところも。一度本当に先生方に実際にお会いして,腰を据えて議論したい気持ちは大いにありますけれども。

【湊部会長】 またこれにつきましては先生方の意見を聞きながら,ハイブリッドということもありますし,確かにオンラインのいいところは出席率が非常に高くなるということなので,私もこれは捨て難いなと思っていますけれども,本日は本当に長時間にわたり御議論ありがとうございました。論点がだんだんはっきり見えてきたと思います。あまり包括的な議論ばかりしていても,また同じ議論を繰り返していると言われかねないこともあると確かに私も思います。今日お話しいただいたことも含め,人文系大学院もそうでありますし,リカレント教育の問題もそうでありますが,言葉遣いからして,やはりかなり手あかのついた言葉を使っていると,それで引っ張り回されるということもあります。ですから,その辺の定義をまずしっかりした上で,できればフォーカスの当たった課題について,少しでも具体的な提案をさせていただいて,一定期間後にそれがきちんと検証できるという体制ができればありがたいと思っております。ぜひとも先生方には御協力をいただいて,場合によっては小委員会のような形で少し突っ込んで,本音の議論を,あまり時間も気にかけないでやれるようなこともあればありがたいと思います。
それでは,本日は本当に御協力ありがとうございました。第102回の大学院部会をこれで終了したいと思います。本当にありがとうございました。

―― 了 ――

 

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