大学院部会(第99回) 議事録

1.日時

令和2年12月24日(木曜日)13時30分~14時00分

2.場所

WEB会議

3.議題

  1. 大学院レベルの履修証明プログラムについて
  2. 大学院教育振興施策要綱について
  3. その他

4.出席者

委員

(部会長) 有信睦弘部会長
(副部会長) 村田治副部会長
(臨時委員) 池尾恭一、大島まり、加納敏行、川端和重、神成文彦、小長谷有紀、小西範幸、佐久間淳一、迫田雷蔵、菅裕明、髙橋修一郎、高橋真木子、田中明彦、沼上幹、波多野睦子、濱中淳子、福留東土、堀切川一男、湊長博、宮浦千里の各委員

文部科学省

(事務局)西大学振興課大学改革推進室長 他


5.議事録

【有信部会長】それでは,お待たせして,どうも申し訳ありませんでした。第99回の大学院部会を開催させていただきます。御多忙中のところ,お集まりいただきまして,ありがとうございます。
本日は,新型コロナウイルス感染症対策のために,Zoomによる会議として開催させていただきますが,傍聴者にも公開することになっています。よろしくお願いします。
会議資料,音声など,多分,御準備はよろしいかと思いますので,よろしくお願いします。
塚本委員が御欠席と伺っていますが,大島委員,それから,髙橋修一郎委員と高橋真木子委員がまだお入りになっていないようですけれども,そのまま開催させていただきたいと思います。よろしくお願いします。
それでは,まず事務局から,会議に当たっての連絡等をお願いします。

【西大学改革推進室長】大学改革推進室長の西でございます。本日は,御多忙のところ,どうもありがとうございます。
会議に当たりまして,まず,何点か御連絡させていただきます。
WEB会議を円滑に行う観点から,御発言をされる際には,機能にございます挙手ボタンを押していただきまして,部会長から指名されましたら,お名前をおっしゃってから御発言いただきますよう,お願いいたします。御発言の際は,通常よりも少し声を大きめでお願いいたします。また,御発言以外のときは,マイクをミュートにしていただくよう,お願いいたします。
資料につきましては,議事次第に記載のとおり,事前にメールでお送りしております。画面投影はいたしませんので,お手元の資料を御覧くださいますよう,お願いいたします。なお,そのほかに,昨年度,文部科学省で実施しました「大学院における教育改革の実態把握・分析等に関する調査研究」と「博士課程学生の経済的支援状況に係る調査研究」の結果を御参考として送付しております。システムの状況によっては,不都合があるかもしれませんけれども,御協力のほど,どうぞよろしくお願い申し上げます。
事務連絡は以上でございます。

【有信部会長】どうもありがとうございました。
それでは,議事に入りたいと思います。まず,議事次第を御覧ください。本日は,議題が主に2つということで,1つ目の議題,「大学院レベルの履修証明プログラムについて」,議論に入らせていただきたいと思います。前回の大学院部会では,小西委員から御発表いただきましたけれども,その後,事務局で論点等を整理していただきました。
それでは,事務局から説明をお願いします。

【西大学改革推進室長】お手元に,右肩に資料1と書いてございますA4横の資料を御用意いただければと思います。
まず,履修証明プログラム自体についてでございますけれども,履修証明プログラムは,大学の社会貢献の一環として,正規の学位課程よりも短期間の教育プログラムを学生以外の方に提供するものとして制度が創設されました。具体的には,各大学が正規課程の授業科目のみならず,各種の講習や公開講座も含めることができる,まとまりのある教育プログラムを編成いたします。なお,大学や大学院が編成するものの,正規課程の授業科目以外の項目も含まれるため,必ずしも,その教育水準が各課程,学士・修士・博士等における教育に相当する水準とは限られないこととなります。
2ページ目を御覧ください。
グランドデザイン(答申)を踏まえまして,昨年8月,大学学部段階等については,履修証明プログラム全体に対する単位授与と,その単位を正規の授業科目の履修により修得した単位として認定することが可能になりました。
そもそも学部段階においては,大学同士の単位互換のほかに,大学の正規の授業科目以外の学びや大学以外の教育施設等の学習成果も単位認定が可能とされていたため,履修証明プログラムを同様に単位認定することが可能とされました。
一方で,大学院については,学部段階のように幅広い単位認定を行うことについては議論が必要となってございまして,改めて,このたび御議論いただきたく,このページの下に論点(案)として掲げてございます。
論点としては,履修証明プログラムは,学位プログラムとは別に,一定のまとまりのある学修プログラムを提供するものではあるが,その教育水準は学部と大学院等と区別されているものではない。したがって,履修証明プログラムのような幅広い学修への単位認定については,その学修が大学院での学修と同等と確認される場合,認められるべきではないか。
履修証明プログラムに単位を授与する場合,その単位を認定する大学院において,大学院教育水準であることを確認の上,単位認定を行うかどうか判断すべきではないか。
これらについては,大学院も専門職大学院も同様に対応すべきか。
学修者が混同しないように,科目等履修生制度等との整理を行い,分かりやすく公表する必要があるのではないかといった論点が考えられております。
3ページ目を御覧ください。
現状の学部段階のイメージ図になります。A大学で履修修了した履修証明プログラムに対して,A大学から単位が授与されます。これをもってB大学の正規課程に入学した場合,A大学の履修証明プログラムにより修得した単位をB大学がその内容を適当と認めた場合,大学の単位として認定することができます。
同様に,在学中に履修証明プログラムを他のC大学などで履修修了し,単位認定することもできます。
4ページ目を御覧ください。
今回は大学院での準用案としてお示ししてございます。履修証明プログラムが大学院教育に相当する水準を有すると判断した場合に,A大学院は単位を授与することができ,また,この学生がB大学に入学した場合,その単位が正規の課程においても教育上有益と認められる場合に限り,その単位を認定するというスクリーニングを行うことを想定して論点はまとめております。
事務局からの説明は以上でございます。

【有信部会長】どうもありがとうございました。
前回,小西委員から,さらに一般的な形でという御希望も含めて説明があったと思いますけれども,今回,グランドデザイン(答申)を踏まえつつ,事務局で履修証明プログラムを大学院で単位化可能とするかどうかについての具体的な検討内容が説明されたと思っています。
それでは,どなたからでも結構ですので,御意見,御質問等があれば,よろしくお願いします。

【村田副部会長】よろしいでしょうか。

【有信部会長】はい。村田委員,どうぞ。

【村田副部会長】質問でございます。この60時間ですけれども,横に学位プログラム,単位がありまして,普通,単位は,多分,2時間の授業に対して,その2倍の授業外学習を含んでいるんですが,この60時間というのは,事業外学習時間も含めてでしょうか。

【有信部会長】これはそういう内容で,基本的に60時間というか,単位の全体を認めているわけですから,1時間という考え方は,予習,復習を含めると,たしか予習1時間,復習1時間含めてという定義ですよね。

【村田副部会長】ええ。だから,授業時間に直すと20時間ということですよね。

【有信部会長】はい。

【村田副部会長】3分の1ですから。そういう理解でよろいでしょうか。

【有信部会長】ちょっと待ってください,そういう理解ではないんじゃないですか。

【西大学改革推進室長】この60時間は実講義時間を想定しておりまして……。

【村田副部会長】やっぱり,そうですか。

【西大学改革推進室長】はい。1つの科目が15時間換算で4単位分という認識でお考えいただければと思います。

【村田副部会長】分かりました。
そうすると,今度は意見ですが,実講義時間が60時間であれば,ちょっと多いのと違うかなと。これではニーズがないのではないかと。60時間の実講義時間であれば,予習と復習をやれば180時間になるわけで,とてもではないけど,それで,やっと履修証明プログラムというのは,社会人にとってはちょっとしんどいのではないかな,もうちょっと減らすべきではないかなというのが意見です。
以上です。

【有信部会長】ちょっと待ってください。今の御意見でいいんだっけ? 多分,ちょっとどこかで誤解があるのではないかと思いますが。

【西大学改革推進室長】もともと,履修証明プログラム自体,始まったときは120時間ということで,今,60時間を下限として設定されてございます。社会人とかを念頭に置きまして,大学である程度,先ほど少し御説明の中でもありましたけれども,科目のまとまりといいますか,体系性を持った教育プログラムを提供することをもって,履修証明の体系的な教育プログラムを組んだ制度として履修証明プログラム制度が成り立ってございますので,そういう意味でいうと,60時間というのは,現時点では,ぎりぎり最低限の量かなと思っております。

【村田副部会長】私はそれでもちょっと多いかなと思っていますので,40時間ぐらいにならないのかなと思ってね。おっしゃる意味は分かるんですが,結局,幾ら,リカレント,社会人のプログラムに対しては,いつも大学側は,これぐらいのことをきちんと分かってもらわないと,体系性がないとというので,だんだん学習量が多くなってきて,企業側が,いや,そういうものは要らないんだ,むしろ,コンパクトにまとまったものが欲しいんだというニーズがあって,結局,大学が提供しているプログラムは履修されずに,独自で開発されているということが繰り返されているわけです。そこはもうちょっと考えられないのかなと思って意見を申し上げました。

【有信部会長】ありがとうございます。そういう観点もあると思いますし,具体的にこれを単位として認めるときには,単位として認めるかどうかは,基本的には当該大学の御判断によることになっていますけれども,基本的な単位が,実際には今,2時間15週で1単位という格好になっていますよね。だから,ざっといって30時間ぐらいですね,100分とか,90分とか,いろいろあると思いますけど,それで1単位。基本的に今は学問として最低限60時間は教えないと教えたことにならないというガイドラインが履修証明プログラムにはあるというのが村田委員からすると……。

【村田副部会長】それも理解しているんですが……。

【有信部会長】多過ぎるのではないかと。

【村田副部会長】恐らく,社会人は単位は要らないんですね。単位が欲しいわけではなくて,これだけのことをまとめて学んだという履修証明証が,それぞれの大学で,きちんと発行してもらって証明されることが重要で,単位の考え方にとらわれていると,どうしても時間が長くなってしまい,ニーズがないということにならないかと心配します。この際,単位から離れて,本当に取りやすいプログラム,履修証明を出すような観点で考えていかないといけないのではないかなと考えているので申し上げた次第です。

【有信部会長】そこのところは1つの御理解の方向だと思います。それからもう一方で,ここで単位化をしようという提案は,逆に言うと,大学院側で学ぶときの負荷を減らすという,そういう側の観点が入っているんですよね。つまり,単位化しないと,言わば学ぶ人たちにとっては,その部分の時間はかかるということで,大学院で求められている基本的な必修単位数が削減されるわけではないので,逆に言うと,学ぶ側がプラスアルファとしてそれを学ぶということであればということなので,言わばどっちの方向を取るかということだと思うんですけど,多分,ここら辺は議論だろうと思いますね。
福留委員,どうぞ。

【福留委員】すいません,今の点で1点確認ですけれども,1単位の授業が15時間分ということだと思いますので,通常,我々がやっているのは2単位の授業を30時間分ということに該当すると思いますが,2単位の授業2科目分ということですよね。そうだとすると,単位を出すかどうかは別問題として,学習量として,そのぐらいの量の負荷を与えるのは妥当な線かと思います。もちろん,もう少し減らすということもあり得るのかもしれないんですが,およそこのぐらいの線というのは,極端に多いということでもないのかなと思いますので,ちょっとそういう気がしましたので発言させていただきました。

【有信部会長】ありがとうございます。ほかに御意見ありますでしょうか。

【小西委員】有信先生,小西です。よろしいでしょうか。

【有信部会長】はい,小西委員,どうぞ。

【小西委員】履修証明プログラムの単位化をお考えいただきまして,ありがとうございます。私は,この単位化によって,2つのメリットがあると考えております。
1つは,前回の審議会でお話ししましたように,専門職のリカレント教育に使えるということです。公認会計士の例を申しますと,公認会計士の資格を維持するために,毎年,CPEと言われます継続的専門研修の単位を取っていく必要があります。今,公認会計士協会では,CPEの改革を実施しようとしておりまして,私もその委員に入っているのですが,CPEに履修証明プログラムを活用することを考えています。したがって,3万人を超える公認会計士が,この履修証明プログラムを履修していくことで,公認会計士協会が望んでいます,修士以上のディグリーを持っている公認会計士が増加していくと思われます。日本とは異なりアメリカの場合は6割ぐらいが修士以上のディグリーを持っておりますので,この履修証明プログラムが単位化されることによって,大多数を占める学部卒の公認会計士の大学院への進学が非常にスムーズにいくのではないかということです。
2つ目のメリットは,大学院間の連携強化です。これも会計の例で話しますと,会計監査では,テキストマイニングなどのデータサイエンスのAI技術が非常に必要になってきております。例えば,会計大学院とデータサイエンス系の大学院が共同してこの履修証明プログラムをつくることによって,会計専門職に対して,社会ニーズに沿った授業が,他大学も含んだ大学院間の垣根を越えて,柔軟かつ迅速に履修証明プログラムを用いて提供できるようになるのではないかと考えております。
以上です。

【有信部会長】ありがとうございました。
ところで,この履修証明プログラムの60時間と学位プログラムの124単位というところで,これは学位を出すという話になっていますよね。事務局に聞きたいんだけど,このときの60時間というのは,さっきの村田先生の御質問にも関係するんだけど,具体的に言うと,単位換算するとすれば何単位になっているのか。

【髙橋大学改革推進室長補佐】髙橋でございます。私から御説明いたします。

【有信部会長】はい,どうぞ。

【髙橋大学改革推進室長補佐】基本的には,60時間というのを単位に当てはめますと,講義の場合は,先ほど福留先生がおっしゃられたように15時間というのをコアにして,15時間プラス30時間の予習,復習ということで45時間,1単位になりますので,15時間が4つ入るということで,60時間であれば4単位相当。

【有信部会長】4単位相当ということになる。

【髙橋大学改革推進室長補佐】ええ。というのが1つの考え方でございます。ただし,授業の形態は講義だけではございませんので,当然,実験であるとか,実習であるとか,そういったものもありますので,これ自体は,確実に4単位ですと言い切るようなものではないと思っております。あと,先ほど村田先生がおっしゃられた時間数とか社会のニーズとのギャップの話ですけれども,ここに関しては,どちらかというと,この制度ができる以前から,大学が主体になって行うあまたの講習というものがございました。それに対して,一定の分量があって,クオリティーも高いというものに関しては,きちんと大学の正規教育とも接続を考えるという点で,まずは履修証明プログラムと,国でこれはきちんとした制度として認められているものですという枠組みをつくり,それに単位認定をできるようにしたというようなステップでございますので,これ自体をもって,大学というのは,このサイズ以下の講習や社会,特定の企業のニーズに基づいた短時間の講習をやってはいけないという話ではないんですけれども,先ほど小西先生が言われましたように,単位取得や学位取得につながっていくものとしては,単位制度と普通にやっている講習の制度的接続を図る点で,言葉は悪いですけど,この60時間というような時間数ぐらいがちょうどいいだろうというところで整理をさせていただいたという考えで,現状の制度が出来上がっているということでございます。

【有信部会長】要するに,履修証明プログラムという単位として,最低限として60時間を決めましたというのが1つと,先ほどの村田先生の御質問にあった60時間というのは,逆に言うと,60単位ではない。つまり,4単位相当分の時間ですという話だから,さっきの60時間の履修証明プログラムのために180時間の勉強量が必要になるという勘定ではない,そういう意味ですね,今の。

【髙橋大学改革推進室長補佐】そうでもないんですけど……。

【村田副部会長】よろしいでしょうか。

【有信部会長】はい,どうぞ。

【村田副部会長】誤解がありますので,発言させていただきます。

【有信部会長】大分,誤解,混乱していると思います。はい,よろしく。

【村田副部会長】私が申し上げたのは,今,履修証明プログラムを単位に結びつけようとしているんですね。だから,そこにちょっと無理がありませんか。むしろ,単位に結びつけるから60時間という時間が出てきていて,いわゆる4単位もになってしまっています。履修証明プログラムは,あくまでも講習会の講義や講演だとか,そんなもの構わないという話になっているわけですから,単位と結びつけずに,履修証明プログラムを単独で考えることはできませんか。もちろん,小西先生のおっしゃることも分かるんですけれども,単位に結びつけていくと,正規の学生に持っていくということを考えるものですから,どうしてもハードルが高くなってしまうんですよね。もっと細かく分けた形のものが企業のニーズにあるわけですから,履修証明と単位とを分けて,切り離して考えるという考え方はできないんでしょうかということを申し上げた次第です。

【有信部会長】分かりました。そこはなかなか難しい話で,多分,完全に方向性がずれているというか,違う方向に向いていて,言わば単位の積み上げによって,それが学位に結びつくようなシステムに持っていきたいという意向が一方であって,一方は,様々な知識をきちんと身につけたということさえ証明されているという,サーティフィケーションが明確にあればいいという観点の御意見と両方ですね。今の日本の中で,サーティフィケーションというのがどれぐらい市民権を持っているかというところとも関係するのと,村田先生の話は,実質的に必要な知識が身についていればいいという方向側の感触の強い御意見だったと思います。
ほかの方,何か御意見があれば。
迫田委員,どうぞ。

【迫田委員】今の議論とも絡むんですけど,履修証明は全部,単位を与えるということではないんですよね。そう理解していたんですけど,それでよろしいですか。ですから,大学が単位として認めるものもあるという……。

【有信部会長】そうです,そうです。

【迫田委員】理解であれば,短いものは短いもので社会のニーズに応えることができるし,なおかつ,一定のまとまりで,単位として認められるものができてくれば,それはそれでリカレントを進めていく1つのインセンティブにはなるのではないかなと感じます。全てが60時間以上ということでないのであれば,それは非常にいい制度で,社会人の学び直し,特にAIとかビッグデータとか,ニーズも高くなっておりますので,そういうものを学んだことのサーティフィケートというのは社会的にも意味があるのではないかなと思います。
以上です。

【有信部会長】ありがとうございます。
今の御意見になると,多少……。

【村田副部会長】60時間以上でないと,履修証明を出せないんでしょう。

【有信部会長】ちょっと違う話になってくるんですね。今,村田先生がおっしゃっているように,履修証明プログラムの最少単位が60時間として……。

【村田副部会長】当時はそうですよね。

【有信部会長】規定されているので。

【村田副部会長】60時間以下では駄目なんでしょう,そういう理解でいいわけですね。

【有信部会長】そこはそうなんです。だから,今の迫田委員の話は,また別の話になって……。

【迫田委員】単位を与えるものと与えないものがあるという理解だと思うんですが,違うんでしょうか。

【有信部会長】それはいいんですけれども,ただし,履修プログラムというのは既に定義されていて,履修プログラムであるというためには60時間という……。

【迫田委員】最低60時間なんですか。

【有信部会長】最低60時間というのは決まって,これぐらいのまとまりがあるものに対してサーティフィケーションを出しましょうという話になっているわけで,そこのところが,ちょっと混乱していたと思います。
それでは,堀切川委員,御意見あればどうぞ。

【堀切川委員】ちょっと切り口が違う意見になってしまいますが,履修証明プログラムの中で,大学院教育水準にあるものについて単位認定を認める方向性については賛成です。ただ,履修証明プログラムの立ち位置から考えると,60時間が全部,大学院教育水準にあるほうがなかなか珍しくて,実際には,大学院側でも社会人にとっていいものをと考えるので,例えば60時間を15時間ずつ割ってみたときに,15時間は大学院相当の教育水準にあるのであれば1単位,それが全部そろえば最大4単位まで,認定する大学院が判断して,1から4単位まで与える形になったほうが現実に合うような気がいたします。
以上です。

【有信部会長】新しい提案だと思います。ほかに御意見がありますでしょうか。はい,どうぞ。

【西大学改革推進室長】堀切川先生,ありがとうございます。おっしゃるとおりでございまして,現行の先ほど御説明したポンチ絵の2ページ目,3ページ目の図もそう……,ちょっと細かく書いていないんですけれども,例えば60時間の履修証明プログラムをやりました。ただし,A大学としては,4単位ではなくて,これは2単位相当だろうということで2単位と設定するということも,当然あり得る話でございます。それを受けて,では,A大学で2単位分の履修証明を持ってきたとB大学に言っても,B大学の大学院としては,その大学は2単位分の大学院の単位と認められたかもしれないけど,うちの大学では1単位分だねとか,逆に言うと,これはゼロとしか認められないということもあり得ると思っています。ポイントとしては,3ページの資料でいうと,受け入れる側のB大学が,我が大学院においてはどのくらいの価値があるかというのをスクリーニングする制度になってございまして,それが完全に単位互換しているようなものであれば,当然,ストレートに適用されるとは思いますけれども,この学生が学んできたものが何単位相当であるかというのは,別途,B大学が主体的に判断することを想定してございます。

【有信部会長】だから,一応そういう形で,大学サイドの判断に任せるということだけど,こういう形で単位化につなげる道を開くと,履修証明プログラムそのものに対するリクワイアメント,教える側のリクワイアメントが強くなり過ぎて,厳しくなり過ぎる。したがって,リカレント教育で教育を受けたいと思う人たちにとっては敷居が高くなり過ぎるのではないかと,これが多分,村田委員の御懸念だったと思うんですけれども,それは,言わば履修証明プログラムを行う側の大学の自主性と,履修証明プログラムの内容を見て,どの部分を単位化するかを判断する,例えばB大学ならB大学の基準と,それぞれ独立にやってもらって,それぞれのところで判断すればいいというのが今の事務局側の説明だと理解していますけど。

【池尾委員】すいません,確認ですけれども。池尾です。

【有信部会長】はい,池尾委員,どうぞ。

【池尾委員】この履修証明プログラムをそういうふうに位置づけるということになると,専門職の経営大学院みたいなところは,言わば入門編として,この履修証明プログラムを活用していくことができるという想定でよろしいんでしょうか。

【有信部会長】つまり,おっしゃっていることは,経営大学院,専門職大学院のようなところで,入門編として,どこかの大学で取ってきた履修証明プログラムの中の一部分か全てかを入門的な位置づけとして単位化すると。

【池尾委員】いや,そうではなくて,新たに,言わば経営大学院の呼び水として履修証明プログラムをつくっていくという可能性もあり得る。ですから,履修証明プログラムをつくって,そこで,単位の修了者を,言わば経営大学院に入る予備軍と考えるような可能性はあり得るのですか。

【有信部会長】それは特に,事務局に確認しますけれども,大学の勝手なような気がしますけど。

【池尾委員】そうなってしまいますよね。

【有信部会長】ええ。

【池尾委員】結果的にそうなると理解していてよろしいでしょうか。

【有信部会長】履修証明プログラムをそういう位置づけに使うかどうかということに関しては,それぞれ大学の自主的な判断で,なおかつ,それを単位として認めるかどうかも受け入れる大学の自主的な判断に委ねられるというのが今回の提案の内容だと思います。

【池尾委員】それは理解しているんです。それは大学の判断でしょうけれども,結果的にそういうことをやる大学が出てくることは想定済みということでよろしいんでしょうか。

【有信部会長】何か不都合があります?

【池尾委員】いや,別にないです。そういうことになるのかなという。

【有信部会長】ああ,そういうことですか,はい。いや,何か特段の御心配を……。

【池尾委員】確認だけですので,別に反対とかいう意味ではないです。

【有信部会長】いや,御心配事が何かあれば。

【池尾委員】そういうことが起こり得るのかなという確認です。

【有信部会長】それはそうなったとしても,特段それが間違いというか,趣旨に反しているとか,あるいは法律,規則に反しているということではないと理解していますけど,それで……。

【池尾委員】それはそれで結構です,別に異論はありません。

【西大学改革推進室長】専門職大学院のほうが,この制度を使って入ってきやすくするような使い方はイメージしやすいと思います。他方で,それではない大学院がどのようにこれを使うのかというイメージがしづらいということもありますので,そこは論点の1つとして掲げてございますけれども,最初から大学院全般でこれをやるのか,それとも,まず,専門職大学院で取り組んでいただくのかというのも1つの論点(案)としては考えられるかなと思って,本日の御議論をお願いしてございます。

【池尾委員】ちょっと論点がずれてしまうかもしれませんけれども,今,オンライン化ということで,科目等履修生制度という形、大学院の授業が急激に取りやすくなってきているんですね。そうなってくると,今後を見たときに,大学院に入る前に,あらかじめ,たくさん単位を取るみたいなことがどんどん進んでくるのではないかと思っているんですけれども,この履修証明プログラムも,そういう中に位置づけていいのかなと思って言っただけです。ありがとうございます。

【有信部会長】ありがとうございます。
それはおっしゃるとおりだと理解しています。しかるに,村田委員の最初の御懸念に関して,リカレント教育を受ける側にとって,敷居が高くなる可能性はないか,おそれはないかという点に関して,大学サイドあるいは民間サイドの観点から,お考えがあれば伺いたいと思いますが,どなたか,ありますか。
実際に,履修証明プログラムは,それぞれ実施されていると思いますけれども,この辺だと履修証明プログラムそのものの考え方が大きく変わるのではないかと御懸念の先生がもしおられれば。
村田先生,今のような流れでどうですか。やっぱり,まだ御心配でしょうか。

【村田副部会長】何を心配しているかといいますと,先ほどの専門職大学院のプレコースみたいな形,結局,単位ということは,大学院へいざなう形になるんですね。もちろん,それはそれで重要で,そうあればいいんですが,別に履修プログラム証明書が60時間以上でなくてもそれはできるわけです。一方で,履修証明プログラム,履修証明書そのものを社会的に認知されるようにするには,単位と結びつけずに,これはこれで1つ,社会人のニーズとして認めていく,企業側もこれを認めていくという形にするのであれば,もう少し取りやすいようにしておかないと,ニーズがないのではないのかなと。
というのは,言わないでおこうと思いましたけれども,実は今,関西生産性本部で社会人とのマッチングのプロジェクトをやっておりまして,そこで企業側のニーズを聞いていますと,学習時間を少なく,コンパクトにしてほしいというニーズがかなり多いものですから,その調査に基づいて発言をさせていただいた。社会人からいうと,大学院に行こうが……,恐らく,あんまり行かない場合もある,行かない場合は特にですが,これが単位として認められても何の意味もないんですよね。むしろ,履修証明書があればいいので,履修証明書が取りやすいほうがより有難いわけで,というニーズの観点から申し上げているだけです。

【有信部会長】今の村田委員の御意見は,むしろ,単位化するかしないかというよりも,今の履修証明プログラムのミニマム60時間という,この制約を外すべきだということのほうが強いような気がしますが,この点に関しては,何かあるか……。

【西大学改革推進室長】ありがとうございます。履修証明制度そのものの話になってくると思います。本日の議論自体は,大学院で単位と認めるかどうか。そういったときに,受入れ側の大学に主導権を持たせるべきではないかといったことを主として,制度論としては,まさに単位を前提に議題として話をさせていただいておりますので,履修証明プログラムそのものをどのくらいのサイズにするのかというのは学部も含めての話になりますので,村田先生の問題提起ということで,改めて,事務局で引き取らせていただければと思います。

【有信部会長】ということだと思いますが,ほかに御意見はありますでしょうか。
少なくとも,履修証明プログラムの最低時間が幾らかということに関わらず,それを単位として認める側の大学が,具体的なその大学の単位基準に従って,あるいは単位基準というのは質も含めて,単位基準に従って単位として認めるかどうかを判断して,それが単位として認めてよいということであれば,これを単位化する道を開く。ここの部分については,基本的にはあまり御異論はないと理解しますが,何か御意見がありますでしょうか。
川端委員。

【川端委員】今の単位化の話は理解して,今,村田先生のお話にも関係するんですけど,60時間の話で1点だけ確認したかったのは,今,MOOCsとかedXか,要するに,ウェブ上でやっていて,最後,履修証明を出す段階で,お金を払えば履修証明になるよと,今,こういうシステムが世界で動いていて,そのときのミニマム時間というのが一体何時間なのか。多分,それとこれは競合する話になっていくのではないかなと,私も村田先生の話を聞きながらずーっとそう思っていて,その辺との兼ね合いだけ,どこかで整理していただければと思います。

【有信部会長】ありがとうございます。
これは明らかに競合するし,リンクもする話になると思います。それは今後の課題だね。要するに,MOOCsにせよedXにせよ,それぞれのところでの基準によって,それは彼ら自身の持っている基準で,具体的なサーティフィケーションだとか,場合によっては単位という形で認めるという話になっているので。

【西大学改革推進室長】各大学が任意で開設しているプログラムについて,確かに,うちの大学でこういうことを受けた人だねという証明を出すこと自体は,特に法令上の定めはないので,それはそれで任意でやっていただいて構わないんですけれども,国の制度として,かつ,ある程度,体系的に学んだ,かつ,単位としても出すことができるという,法令上の制度としては60というのをミニマムとして切っているというところでございますので,その未満の世界については,今のところ法令上の定めがないので,海外の大学とかでオンラインでやって,お金を出したら,うちの大学の講座をきちんと受けたことにしますという話は,まだ任意の話といいますか,世界観で動いている話なので,その点は……。

【村田副部会長】いや,それは違うと思いますよ。それは大きな間違いで,逆に言うと,今,川端先生がおっしゃったことは非常に重要な点で,国が証明書を出すということをやって,しかし,それが一切,ニーズがないという話では,国の制度として,何のためにつくったんですか。国として制度をつくるのであれば,そういうことも含めて考えないといけないわけで,こっちはこっち,こっちはこっち,そんな考え方でいること自体,私はおかしいと思いますよ。

【西大学改革推進室長】ニーズがないというのは,60以上にニーズがないという御指摘でしょうか。

【村田副部会長】ではなくて,そういうことも何も考えずに,EdTechだとか,そういうことも考えずに,時間を1単位の時間に合わせて証明をやってということ,こういうところから発想するのがどうなんでしょうかということを申し上げているんです。もっと社会のニーズを見た上で,どういう時間にするかということを考えていかないと駄目なのではないですかということを申し上げているんです。

【有信部会長】そこはまた,だから,履修証明プログラムを国として,ここのところは,少なくとも学問の単位というか,大学で教えるべき学問の単位をどう考えるかという基準として,どの程度,何が必要かということを踏まえてやらなくてはいけない。そういう意味で,設置認可制度等ともつながる話になってくる部分もあるので,そう一朝一夕にはいかないと思いますが,村田先生がおっしゃるように,MOOCsとかedXとか,あるいは海外の各大学が提供している様々なオンラインの教育プログラム等に対して,一定程度,我々もきちんと考慮していかなければいけないということも当然なので,それは今後,履修証明プログラムの在り方を検討する中で検討するということしかないような気がするんですけど,事務局は,それ,どうですか。

【西大学改革推進室長】改めて,また整理させていただいて,御議論させていただければと思います。

【有信部会長】ということで,基本的に改めて整理をし直す,そこの部分については,履修証明プログラムの内容に応じて,この履修証明プログラムというのは国が定めた基準の履修証明プログラムですけれども,その修得内容に応じて,学生が所属する大学がどの程度単位を認めるかという判断は大学の判断に委ねる,こういう前提で単位として認めることを一応認めるということと,あわせて,履修証明プログラムの在り方については,今後,様々なオンライン教育プログラムがあるということを含めて,これはリカレント教育にもつながる話でもありますし,そういうより大きな流れの中で改めて検討するということで,これは事務局が引き取ったという話でよろしいでしょうか。事務局はそれでいいの?

【西大学改革推進室長】はい。

【小西委員】有信先生,小西です。1つだけ確認させていただいてよろしいですか。

【有信部会長】はい。

【小西委員】今,村田先生がおっしゃるように,履修証明の在り方という問題と単位を与えるというのは,ある意味,別の問題だと思います。今回に関しては,単位として認めるかどうかは各大学院で選択できるということで,非常に柔軟な良い制度(案)になっていると歓迎しています。それは,各大学院が履修証明プログラムの在り方を考える上で,単位認定の可否を検討していけるからです。
1つ確認ですが,4年ぐらい前に,たしか履修証明プログラムは110時間ぐらいだったのが60時間に下がってきたと記憶していますが,110から60時間に下がったときの議論において,どうして110から60まで下がったのか,もし御存じだったら教えていただければと思います。

【有信部会長】110ってあったっけ?

【髙橋大学改革推進室長補佐】数が増えなかったので,ハードルを下げた。

【有信部会長】では,事務局から説明してくれる。

【西大学改革推進室長】まさに今御議論させていただいたような経緯でございまして,もともとが120時間というものだったんですね。それが社会人にとってはあまりにもハードルが高過ぎる,そこのニーズがないということで,60時間にしてはどうかということで,今,制度が60になっているという議論の経緯でございます。

【有信部会長】ということでいいですか,小西さん。

【小西委員】最低を60時間にするのか,40にするのか,80にするのかというのは各大学院が履修証明プログラムの在り方を考える上でも非常に難しいところだと思うのですが,分かりました,ありがとうございます。

【有信部会長】そういう意味で,なかなかすっきりとというわけにはいきませんでしたが,履修証明プログラムで履修した内容について,当該大学が単位として認めるという判断を下すことができれば,それは単位として認めて,言わば学生の取っている単位に付加することができるようにする,この点に関しては御理解いただけたと思いますので,その方向で進めていきたいと思います。
それでは,議題の2番目ですけれども,「大学院教育振興施策要綱について」,議論をお願いしたいと思います。
大学院教育に関する文部科学省の取組の方向性をまとめた5か年計画である大学院教育振興施策要綱について,事務局より説明をお願いします。

【西大学改革推進室長】昨年7月の第94回大学院部会におきまして,第4次大学院教育振興施策要綱の策定の方向性について御議論いただきましたけれども,その後の本部会における御議論や周辺状況の変化も踏まえまして,お手元の資料2に,第4次大学院教育振興施策要綱の素案という形で作成させていただいております。全体の流れでございますけれども,参考資料2,A4の横の資料がございまして,これが第4次に至るわけですけれども,中教審で御議論いただいて,それを踏まえて,では,文部科学省としてはどういうふうにやっていくのかということを大学院教育の在り方について定めるものということで位置づけられております。また,これと連動しているんですけれども,政府全体としては,科学技術基本計画,こちらも5年に一回制定されておりまして,令和2年度のうちに次期科学技術・イノベーション基本計画が策定される予定になってございます。今回の第4次大学院教育振興施策要綱の案でございますけれども,御議論いただいた審議まとめ,大学院教育のあるべき姿自体が2年前ということもありまして,御提言いただいたものを中心に策定しておりますけれども,他方で,今年のコロナウイルスでありますとかデジタル化の問題,あるいは,昨今,報道等でも御覧いただいているかと思いますけれども,大学院の博士後期課程の学生に対する生活費支援を抜本的に拡充するような議論も政府の中にございまして,策定までに,そういったこともきちんと盛り込んでいかなければいけないとは考えてございますけれども,取りあえず,本日時点のものということで素案を示させていただきました。
構成,第一 はじめにのところに,そういった経緯のことが書いてございますが,3段落目の「なお」のところ,ウィズコロナ,ポストコロナ時代の在り方については,教育再生実行会議などでも議論いただいております。大学も現実,DX化が進んで,進展が見られるところでございまして,他方で,大学院としては,学部段階と足並みをそろえるだけではなくて,研究指導に重きが置かれたという特徴を生かしまして,むしろ,大学院が中心になって,大学教育における先進的な取組を講じていくといったことも考えられるのではないかということを書いてございます。
中身,第二の期間では,令和3年度から令和7年度までを想定している5か年計画でございます。
第三の今後の大学院教育改革の方向性ということで,昨年1月の審議まとめでは,8項目にわたってまとめていただきましたけれども,それを少し整理統合する形で5項目にしております。そこに1から5まで書いてございますけれども,下の第四以下で御説明させていただければと思います。
第四,1ポツ,四つの人材養成機能と三つの方針に基づく大学院教育の推進というタイトルでございますけれども,各大学院は,大学院における4つの人材養成機能と知のプロフェッショナル育成という役割を基本としつつ,自らの社会的機能や人材養成目的,教育課程等を改めて検証し,教育研究組織の改組等を含めた見直しを積極的に実施していくべきであるといったことを,まず基本として書いてございます。
その下の段落,「教育課程の編成については」ということで,審議まとめで書いていただいたものをベースに記述してございます。
また同様に,学位の授与に際しても記載してございまして,最後の「特に」のところですけれども,修了者の状況の把握とか追跡の実施,結果を踏まえた教育内容や教育研究組織の見直しに積極的に取り組む必要があるので,これについては,文科省は引き続き,しっかりと情報把握していくということを記載してございます。
その下に,細かいポツで具体的な取組項目案が書いてございます。
3ページ目の中段から2番でございますけれども,優秀な人材の進学の促進と修了者の進路の確保,キャリアパスの多様化というところでございます。2行目ですけれども,「自らの教育プログラムの魅力やファイナンシャル・プラン,修了者のキャリアパス等の積極的な情報発信をはじめとしたリクルートの改善を図る必要がある。特に博士後期課程の進学率が低下し」と書いてございますけれども,この点におきまして,生活支援なども含めて,今まさに議論中でございます。
それと連動しまして,2段落目の「また」以下の2行目辺りですけれども,「大学院は自らの人材養成目的に応じて,大学教員や研究者以外の進路を視野に入れるための教育機会提供を行うことも必要である」ということでございます。
具体的な取組項目案が並んでございますけれども,おめくりいただきまして4ページ目の上から5つ目のポツ,この辺,まだ具体な制度は詰まっていないので,御紹介することが難しいんですけれども,「関係機関と連携し,10兆円規模の大学ファンドを早期に実現し,その運用益を活用することによる世界レベルの研究基盤の構築を通じて,博士後期課程学生支援を実施するとともに,大学ファンド創設に先駆ける形として博士後期課程学生の支援を強化する」。(P)でついてございまして,検討中でございますが,大学院の博士後期課程の学生に対する生活費支援を大幅に拡充することを,現在,制度設計しているところでございます。
3ポツ,大学院におけるリカレント教育の充実ということで,文科省としては,各大学院におきまして,社会の多様なニーズに対応した教育プログラムの構築を促すように,関係府省庁とも連携して,引き続き,方策の検討は行っていくということでございます。
4番,人文・社会科学系大学院の在り方についても,審議まとめで御議論いただいて,この点も同様に,それに沿った形で記載をさせていただいております。具体的には,体系的,組織的な教育への取組や博士号取得までの期間の長さ,教育研究内容の社会ニーズからの乖離,修了者の不透明なキャリアパス等の課題が長年にわたって指摘され続けているといったことでございまして,これに対して,具体的に,そこのポツに記載しているような取組を通じて,しっかり対処していくということを記載してございます。
中段,5番,大学院教育のグローバル化と魅力ある教育研究環境の整備というところでございます。この辺は,特にウィズコロナ,ポストコロナといった中で,社会,世界の在り方ですとか学び方の在り方とか留学の在り方が大きく変わってきているところでございますので,その辺の議論も含めて,ここの記述を肉づけしていこうと思ってございますけれども,今時点では,審議まとめで御議論いただきましたことを記載しているところでございます。
事務局からは以上でございます。

【有信部会長】どうもありがとうございました。
前期,一応,審議まとめという形で,皆様方に真剣に議論していただいて,かなり密度の濃い形で審議まとめができたと理解していますけれども,ただ,その後,突然,いわゆるコロナ禍ということで大きな動きがあって,ここの部分については,前回出した審議まとめの中には全く考慮されていないという状況になっています。そういう意味では,審議まとめを出すのが若干早過ぎたということもあるんですけれども,そうはいっても,前回提出した審議まとめを下敷きにしつつ,今回のコロナ禍を踏まえて,今,事務局から教育振興施策要綱,これは文部科学省が出す内容のものでありますけれども,一応,説明がありました。これに関して,御意見あるいは御質問等があれば,どなたからでもよろしくお願いします。
では,まず,沼上委員,どうぞ。よろしくお願いします。

【沼上委員】どうもありがとうございます。感想程度の話ですけれども,実は経済産業省でも,迫田委員,川端委員なんかと一緒に,また,いつもの問題を延々議論している最中ですが,博士人材をいかに社会で生かすべきか,経済産業省ですから,どちらかというと,企業側に対してどういうお願いをしていくかということを中心に議論してきているんですが,逆に,その話をしていると,大学側の課題が見えてくるなという部分が多々あって,私自身がその場で気づいている問題の1つは需給ギャップですね。本当に必要な分野の博士が足りていなくて,必ずしも必要とされているわけではない領域の博士が大量に出てきているということが大きな問題だと思っています。需給ギャップの1つは分野の問題ですけど,もう一つは方法論。同じ生物学でも,コンピューテーショナルな方法を使うタイプの人たちは飛ぶように売れる状況にもなっていますので,分野と方法論の両方について,どうも大学側が世の中の先読みができていない,あるいは対応できていなくて,ダイナミックに切り替えるべきところがうまくできていないなというのが非常に大きな問題だと思って見ております。
もう一つは,大学院の進学者のクオリティーの問題。今回のこれにも指摘されていますけど,これを高めるためには,多分,ある時期,定員については柔軟に管理するという方法を取らないと,一旦ここまでブランドイメージが落ちてしまったものをもう1回復活させるのは,かなり大胆な手を打たないと,なかなか悪循環を止めることはできないなと。いろいろ,金銭的インセンティブに反応しない人を集めようとするというのも手ですけど,そうすると,また,みんな,大学に残りたくなってしまうので,企業で働く人を増やすためには,博士を取って出ていくと,グーグルで働くと初任給が1,500万円ですとか2,000万円ですとかという,その部分をどう伸ばしていくかというのは,すごく大きな突破口になるだろうなと思いながら議論をしております。
もう一つ,その委員会の中で主要な論点の1つとなっていたのがリカレントですけど,ここもデータが少し出てきて,残念ながら,見かけの相関である可能性が多々あるんですけど,リカレントで博士を取った人が多い会社は,博士人材の新卒も評価しているんですね。これはただ単に,もともと博士人材のようなものを評価する人たちがリカレントも推奨し,また,新人の博士人材も評価するという両方が起こっているだけなのかもしれないんですけど,一般に,この種の学歴というのはネットワーク外部性があるので,自分が博士を持っていると,博士を持っている人を評価するという傾向は,やっぱり,出てくると思うんですね。その意味で,今,実際にできることの効果でいうと,リカレントをいかに企業でもっと促進していくかというところを一生懸命やると,博士人材の力量というものをもっといっぱい評価するようになる。また同時に,これは委員会の中で出てきた意見ですけれども,リカレントで来た社会人の学生がプロブレム・オリエンティッド・リサーチの問題を持ち込むので,それによって非常に新卒のPhDの学生たちとの相互作用から,かなり現実との接合性の高い研究が活性化されるようなところもありますので,リカレントというのは,やっぱり,かなり力を入れて促進する必要があるかなと,その議論の中からは思っております。
最後に,人文・社会科学系について一言申し上げておきたいんですけど,やっぱり,人文と社会を一緒にしないでもらいたいというのが一番大きな,前から申し上げているんですけど,修士課程を出た後の活躍する場が全然違うので,人文系は高校の先生とか,心理学だと臨床心理士とかありますけれども,社会科学系はビジネスの世界か法曹の世界で働
くのがほとんどだと思いますので,その意味でいうと,理系の修士とあんまり変わらないのが経済とか経営とかの人たちではないかと思うんですね。その意味では,全く違うタイプのキャリアで,全く違うタイプの要件にさらされていますので,人文と社会を同じカテゴリーにするという議論は,大学院教育は特に政策を考える上で間違う可能性がありますので,ぜひ,ここは分けてお考えいただきたいと考えています。
以上です。

【有信部会長】ありがとうございました。
大学側の教育と産業界側のリクワイアメントというか,ニーズのミスマッチというのは,既にアメリカなんかでは10年ぐらい延々と議論されているわけですけれども,ここの部分は非常に重要な問題だと思いますし,今,沼上委員が説明されたリカレント教育とも関わってくる話で,ニーズに合った教育をやっていなければリカレントで学生も来ないという話になりますし,この辺については,一応,振興施策要綱の中でも,大学がキャリアパスに責任を持つような形で教育を進めるという視点で織り込まれてはいると思います。
それから,人文系と社会科学系は分けるべきだというのは,このところ,ずっとそういう方向で議論されてきていますので,全く沼上委員のおっしゃるとおりで,やっぱり,そこは分けて,きちんと方向づけをすべきだろうと思います。

【沼上委員】すいません,今のもう1つだけ付け加えさせていただきたいんですけど,今回のものの中に,データをしっかり集めていくという方針が盛り込まれていると思うんですね。これはものすごくありがたいことで,今,いろいろな議論をしていても,データが明確にないんですよね。ですから,体系的にデータを蓄積していくという方向性が打ち出されているところが多々あるので,その点,私はすごくいい案になっていると思っています。
以上です。

【有信部会長】ありがとうございます。
それでは,小長谷委員,よろしくお願いします。

【小長谷委員】小長谷です。
今,人・社系を分けるべきだという御意見がありました。確かにそういう面もありますけれども,セットになっていることの価値もあります。例えば社会科学には応用科学的側面が強く,今日学んで,あした役に立つという側面が強いのに対して,今日学んで,あした役に立つことは,あさって役に立たないという発想に立つ人文系というのにもまた価値があるので,取りあえず,今,両者は分けないで,4ポツのところについて,2つ意見を申し上げたいと思います。
1つは「社会ニーズからの乖離」という言葉です。既に答申の中で使われた言葉かもしれないですけど,そうすると,大学院教育にたずさわっている先生がたが社会を全然見ていないように思われますが,社会があっての研究で,その社会を対象としていますから,乖離とはあまり言い過ぎではないかと思います。社会ニーズとのマッチング不足とは言えると思います。出口のところだけを見ているわけではないので,もうちょっと遠くを見ているあまり,近くが見えにくくなっているというのはあるかもしれないので,マッチング不足ぐらいでいいのではないかなというのが1点です。
もう一つ,具体的な取組項目案がポツで6個並べられていますけれども,ここだけが他と違って再掲ばかりです。せめて,今までになかった2番目のもの,つまり,「アカデミア以外のキャリアパス確保への働きかけ」のところをこれまでなかったものとして1番に挙げていただいたらありがたいと思います。
以上です。

【有信部会長】どうもありがとうございました。
今のミスマッチということで,乖離だと若干視点が違うという話と,それから,ダイレクトに要求に応えるのがマッチングというわけではない,ここの部分も重要だと思いますので,そこはよく考えつつ,議論を進めていければと思います。
それでは,佐久間委員,お願いします。

【佐久間委員】佐久間です,よろしくお願いいたします。
私も人文・社会系のところですけど,今も御指摘があったように,具体的な取組がほとんど再掲であるというところもそうですし,ちょっと具体性に欠けるのではないかという感じがします。そもそも見出しからして,ほかは「推進」とか,「充実」とか,動詞が来ているわけですが,人文・社会系は,人文・社会科学系大学院の「在り方」ということになっていて,要は,今どういう問題があるかというのが列記されているだけで,では,どうしたらいいのかというのが,あまりはっきり分からないのではないでしょうか。私自身人文系なので,本来,私がこういうことを言うのは問題かもしれないんですが,実際,ではどうすればいいかというと,確かに,妙案はなかなかありません。あるんだったら自分の大学でとっくにやっているので,非常に難しいとは思うんですけれども,ただ,やっぱり何らかの,もうちょっと踏み込んだことを言わないと,結局,何も変わらないのではないかなと思います。
今,いい考えがあるわけではないんですが,確かに,具体的な取組の中にあるキャリアパス確保への取組ということに関しては,特に企業側にそういうことをお願いしたいということはあります。ただ,そこはさっき,社会科学と人文科学を切り離して考えるべきかどうかという話がありましたが,やはりキャリアパスということに関しては,社会科学と人文科学で,ちょっと違うところがあるのではないでしょうか。社会科学はまだ何とかなりそうな気もするんですけど,人文は,今のままで企業が受け入れてくれますかというと,なかなか難しいところがあると思います。そこは企業にも前向きなご対応をお願いしたいところは多々あるんですけれども,大学の側も,大学院なので専門性は当然高くなければいけないですが,専門性を社会課題に照らして相対化する機会を設けるとか,そのあたりはリーディング大学院とか卓越大学院とか,経験はあるわけですから,そうした取組も積極的に推進していかなければならないだろうと思います。
また,博士後期課程の学生に生活費相当を支援いただくという話が出ていて,それは非常にありがたいんですが,人文系に限って言えば,むしろ大変なのは大学院が終わってからなんですよね。ポスドクもあまりないので,収入が非常に不安定であると。私が学生の頃は,30歳ぐらいになれば何とか職に就けるという話があったわけですが,今は,それが35歳になり,40歳になり,下手すれば45歳という話なので,それでは,やっぱり,優秀な人は大学院に来ません。実際,優秀な人ほど学部卒で外に出てしまっているわけですよね。そこら辺はもちろん構造的な問題なので,すぐには解決できない問題ではあると思いますけれども,少なくとも優秀な人は早期にきちっと評価をして職が得られるような仕組み作りは必要なのではないかと思います。名古屋大学でもちょっとだけそういう取組をやっていますが,規模的には全然十分ではありません。それでも,そういったことへの取組が必要なのではないかと思っております。そのほか,考えなければいけないことはたくさんありますが,もう少し,人社系の大学院をどうしていったらいいのか考え,必要な取組を推進する体制があったほうがいいのではないかという意見です。

【有信部会長】ありがとうございました。
人文・社会系の問題については,十分に議論が尽くされているとは言い難いところもありますし,視点によってそれぞれ,微妙に御意見がずれる部分もありますし,ここのところは注意深く議論を進めながら,間違いのない方向性が出せればと思います。学位の与え方の問題もありますし,様々な問題がある。今,佐久間委員が御指摘のように,いろいろな意味で問題があると思っていますので,これはどれぐらい議論できる期間があるんですか。

【西大学改革推進室長】年度内策定を目指しておりますが。

【有信部会長】あと一,二回ということかな。

【西大学改革推進室長】そうですね。政府の動きもありますので,大きな話も盛り込むことも考えれば,多少,年度を割り込んでも,そのくらいしっかり御議論いただいたほうがいいかなとは思っております。

【有信部会長】分かりました,ありがとうございます。
ということなので,できるだけきちんと議論ができるようにと思っています。
それでは,宮浦委員,よろしくお願いします。

【宮浦委員】宮浦です。ありがとうございます。
博士学生のキャリアパスの関連で,企業でいかに活躍していただくかが非常に大きな課題ではあるんですけれども,PhDの学生は1年,2年ではつくれませんので,4年,5年かかることも考えながら,今どこが足りないから,取りあえず,その定員を大幅に増やして,あとは減らすとか,てこ入れ的なことをするのも1つの案ではあるんですけれども,3年後に現状が変わっている可能性もありますし,長い目で見て大丈夫かというのを十分に考えながら議論する必要があると思っています。もちろん,情報工学は重要ですけれども,きっかけによって,ロボット,ロボティクスとか,あるいは機械工学,自動運転も含めて,盛り上がると,そちらの博士をつくれという話になるんですけれども,話題が若干収束すると,では,マテリアルは必要だとか,いろいろ議論が動くわけですね。それはそれでいいんですけれども,PhDは1年,2年ではつくれませんので,人材育成は,ある程度,長期スパンも考えて,基盤的な分野をきっちり輩出していくことも重要だと思っております。
また,企業で活躍するに当たっては,学生時代の専門領域,ピンポイントでそれだけをやっている方はむしろ少数派だと思いますので,基盤的な力をつけた,ちょっと理系の話になってしまうんですけれども,出していくということで,時流によって分野を大きく,この博士をつくろうと思って,5年後はあまり要らなくなったということにならないように,慎重に議論する必要があると思っております。
2点目は,国際化について書かれているんですけれども,コロナ禍ということで,大学院教育のグローバル化のところが,自由に行ったり来たりできなくなってしまって一番苦労している部分でもありますので,そこがあまりにも最後のほう,5ページですかね,さらっと書いてあるだけで,現場の苦労が入っていないなというのが感想です。
以上です。

【有信部会長】ありがとうございました。
今の御指摘,非常に重要な部分は,最初の沼上委員の御意見にもありましたけれども,分野の問題と,それから,いかに基盤的な力をつけさせるかという問題ですね。これはこの中に書いてあるように,博士課程学生の将来のキャリアパスをきちんと考えた上での教育がきちんとやられているかということにもつながっていきますし,その辺はきちんと関連づけて議論するべきだろうと思います。
それから,グローバル化に関してはまさしく,やはり,今度のコロナ禍で,グローバル化に対する考え方もかなり根本的な見直しがあったと思いますので,それも含めつつ,議論できればと思います。
それでは,大島委員,それから,迫田委員の順番でお願いします。
大島委員,どうぞ。

【大島委員】取りまとめていただきまして,ありがとうございます。
私自身,中教審の教育課程部会にも入っております。教育課程部会は初等,中等教育が中心ですけれども,そこでは,社会に開かれた教育課程ということで,社会との結びつきをきちんと教育にもフィードバックして,それを踏まえて教育をしていきましょうというスタンスは,かなり強く打ち出されているんですね。
本日の資料2を読ませていただくと,そういう言葉が端々には出ているんですけれども,ちょっと弱いなというのが印象としてあります。それを踏まえて,3つほど御意見させていただけたらなと思っております。
1つ目は,1の四つの人材養成機能という部分ですね。マル4,社会を多様に支える高度で知的な素養のある人材の養成,これも非常に大事だとは思うんですけれども,多分,その下のパラグラフに書いてある「社会を先導する力」,この部分も踏まえたことを言っていらっしゃるのではないかなと思うんですね。そうすると,マル4は少し弱いようなイメージを持っていて,やはり,今はどちらかというと社会的な課題を見つけて,社会的な価値を創造する,そういう人材が大事だと思っているんですね。特に,そういう社会的な価値を見いだす,創り出す人材というのが日本はなかなか弱いところもあり,そこを強化していこうということは大事なのかなと思いますので,マル4の人材の養成に関しては,もう少し文言を考えていただいたほうがいいのではないかなということが1点目です。
2点目は2の優秀な人材の進学の促進ということですね。ここで,もしかしたら場所が違うのかもしれないですけど,関係省庁と連携しながらということが書いてあるんですけれども,もしかして,ここではないかもしれませんね。何が言いたいかというと,先ほどの社会的な価値のことから言うと,やはり,産業界との連携をきちんとしながら,社会的な課題がどういうところにあって,そこをある程度きちんと,大学院教育としても強化していけるということも必要なのではないかなと思っております。先ほどから出ているミスマッチのこととも関連していますので,そこら辺,関係府省ということは書いてあるんですけど,産学の連携ということがあまり出されていないのではないかなと感じておりますので,そこら辺もきちんと,明確に言葉としても書いていただいたほうがいいのではないかなと思います。
あと,全体ですけれども,日本は少子化で,大学自体,全体の若年人口が減っています。でも一方で,大学院では外国人が増えているので,日本人の育成も大事ですけれども,外国人の人材をきちんと育成して,その方が日本で活躍できる。そして,その方も,国であったり,グローバルに活躍できる,そういうことも少し強化していく必要があるのではないかなと思っております。例えば,英語科の問題ですね。やはり,どうしても日本語が中心になっているので,語学も含めて,英語の科目であったり,そういうことの充実も含めて,もう少しグローバル的なことも含めていただいたほうがいいのではないかなと思っています。
以上です。

【有信部会長】どうもありがとうございました。
それでは,今手が挙がっているのは,迫田委員,川端委員,加納委員ですけれども,時間の関係で,できればこの辺で,あと,どうしても御意見がある方はまた別ですけれども,こういう格好で進めたいと思います。
それでは,迫田委員,よろしく。

【迫田委員】ありがとうございます。
まず1点目,今,大島委員からも出たポイントでもあるんですけれども,やはり,産学での連携って,非常に重要だと思っています。特にマッチングに関しては,やっぱり,そこのすり合わせって非常に大事だなと思っています。今,実感値で申し上げますと,例えばリーディング大学院,今,卓越になっていますけど,そこは本当に取り合いになっていますし,あと,CEO,サーキュラー・エコノミー・オーガニゼーションですか,データサイエンティストとかを育てて供給するという,この事業も取り合いで,なかなか回ってこないような状況なんですね。ニーズがあれば受皿はきちんとあるので,もう少し広く見ると,今の大学で何を学んだかというのと,社会とのマッチングというのを経産省の会議で資料が出てきたんですけど,それを見ると,やっぱり,情報系のところが圧倒的に足らなくて,いろいろな学部の出身者がそこに流れ込んでいる。それで今の雇用が成り立っているのが明らかなので,そういう意味でいうと,個々のニーズはあるにしても,マクロでいうと,2次産業から3次産業に変わっていって,どんどんサービス型の社会になってくる中で,やはり,大学が送り出していくのと,今,社会が求めているのがアンマッチになっているのは明らかだと思うので,そういうマクロの視点で見て,需給というのも少し考えたほうがいいのではないかなと思います。もちろん,個々の学問,それぞれで大事だということはよく分かるのですが,過去の大学が考えたものと,全体としてできた絵と,どうも社会とのアンマッチが大きく出るのではないかなという気がするので,ぜひ,その辺を御検討いただければと思います。
それから,これは質問ですけど,大学院,ドクター課程の,博士課程の支援って非常に重要だと思うんですけれども,今考えておられる規模で大丈夫でしょうかというか,やはり,修士で会社に入ってくる人たちの意見を聞くと,かなり優秀な方々,本来であれば大学院へ,博士課程へ進むべき方々が,生活の不安とかで就職してからドクターを取りにいくという,これ,今の企業家のリカレントになってしまっているわけですけれども,そうなってしまっているのではないかなと思うんですね。大学院,博士課程を取りにいっても,やはり,修士課程で入ってきている人のほうが優秀に見えるケースがかなり多くて,そこが今,アンマッチの1つの原因にもなっていると思うので,優秀な方々が安心して学べる環境をつくるというのは必須だと思いますし,非常に投資効果の高いところだと思うので,ぜひ,これで賄えるのかどうかというのは御検討いただければと思います。
以上です。

【有信部会長】ありがとうございます。
博士課程の学生への援助は十分かというと,実際にデータで見ても,全然,十分ではないというのが現実でありますし,今回の補正予算でも,博士課程の学生への援助ということで,かなりの予算が提案されていると聞いていますので,今後,変わってくるとは思いますが,少なくとも十分とは思っていないという認識は共通だと思います。
それでは,次は川端委員かな,どうぞ。

【川端委員】では,短く。コロナ禍で,さっき大島委員が言われたように,社会とのつながり,それのキーワードで,企業との関係というんですけど,この先にあるのは,やっぱり,地域社会であるとか,地方創生とか,このキーワードが必ず出てくるわけで,そういう中でドクターのような人間が社会イノベーターという格好で,自治体も含めたいろいろな動き方をするという展開をぜひ入れていただけると,そういう中に人文・社会だとか,こういうものが活躍する世界がそこに生まれてくるという,こういう流れがもっと表に出るといいなと思いました。
もう1点は,我々で言えば当然ですけれども,いまだにドクターが少なくなってきて,国立大学が困っているからドクターを増やしましょうという論理が動いています。だから,日本にとって博士は増やさなければならないということを前面に出していただくのが重要かと思います。
以上です。

【有信部会長】大学が困っているから増やしましょうというのは,それは本末転倒な話だと思います。
ありがとうございました。
それでは,加納委員,よろしくお願いします。

【加納委員】加納です。
最後,一言だけお話しさせてください。今回,ウィズコロナ,ポストコロナに対する対応がそれぞれの項目の中でばらばらに記載されているんですけれども,せっかく来年度,これが打ち出されるという形ですので,ぜひ,ポストコロナ,ウィズコロナという項目を1つの項目として,いわゆるサステーナブルな教育の環境の整備という観点で打ち出していくのはどうかなと思いました。特に座学だとか一般的な一方通行の教育ではなくて,大学院の教育というのは,研究ですとか,研究者間のコミュニケーションですとか,ディスカッション,こういった形もどんどん出てきますので,そういう中で既存のシステムが本当に十分事足りているのかというと,全然そうではないという声も卓越大学院からは,実際に今年,苦労されている大学からも声を聞きますので,ぜひ,こういうことも一つ,科学技術・イノベーションということですので,大学院の教育という立場,研究という立場から,項目を1つ設けていただくのはいかがなものでしょうか。この辺りを御検討いただければと思いました。
以上です。

【有信部会長】どうもありがとうございます。検討してくれると思います。
ほかに,発言されていない方で,どうしても意見を言いたいという方がおられれば。
特におられないようでしたら,本日の御意見を踏まえて,事務局でさらに内容の検討を進めていただきたいと思っていますので,では,事務局サイド,よろしくお願いします。
一応,本日の議論は以上でありますけれども,時間の都合上,ここで打ち切ってしまう中で,やっぱり考えたら,これは言っておかなければいけなかったとか,そういう御意見があれば,事務局宛てにメールででも御提出いただければと思います。今後の大学院教育の在り方を決めていく重要な内容ですので,ぜひ,よろしくお願いしたいと思います。
それでは,本日も活発な御意見をいただきまして,誠にありがとうございました。
次回は,来年の2月2日を予定しています。次回は,今期のといいますか,第10期になりますけれども,大学院部会の最終回になりますので,ぜひ,活発な議論をお願いしたいと思います。年明けに改めて詳細の御連絡を差し上げることになっているようです。
それでは,これで本日の大学院部会を閉会させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

── 了 ──
 

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