大学院部会(第98回) 議事録

1.日時

令和2年9月9日(水曜日)16時00分~18時00分

2.場所

WEB会議

3.議題

  1. 大学院設置基準の一部を改正する省令について(報告)
  2. 「ジョブ型研究インターンシップ」について
  3. 大学院の国際化について
  4. 大学院レベルの履修証明プログラムについて
  5. 「科学技術ワクワク挑戦チーム博士進学ワーキンググループの活動報告および省内若手有志からの問題提起」について
  6. その他

4.出席者

委員

(部会長) 有信睦弘部会長
(副部会長) 村田治副部会長
(臨時委員) 池尾恭一、大島まり、加納敏行、川端和重、小長谷有紀、小西範幸、佐久間淳一、迫田雷蔵、菅裕明、髙橋修一郎、高橋真木子、田中明彦、塚本恵、沼上幹、波多野睦子、濱中淳子、堀切川一男、宮浦千里の各委員

文部科学省

(事務局)西大学振興課大学改革推進室長 他


5.議事録


【有信部会長】 どうも,こんにちは。もしも途中で聞こえなかったり分かりにくいところがあったら,御指摘いただければと思います。
所定の時刻になりましたので,第98回の大学院部会を開催させていただきます。御多忙の中,御出席いただき,誠にありがとうございます。
本日は,新型コロナウイルス感染症対策のためということで,WebexによるWEB会議として開催しています。音声については先ほど確認させていただきましたけれども,会議資料等,御準備をよろしくお願いします。
本日は,福留委員と湊委員が御欠席と承っております。
それでは,まず,事務局から会議に当たっての連絡などをお願いします。

【西大学改革推進室長】 高等教育局大学振興課大学改革推進室長の西でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
会議に当たって,何点か御連絡させていただきます。
WEB会議を円滑に行う観点から,御発言の際は,画面に映るように,このように挙手いただきまして,部会長から指名されましたら,お名前をおっしゃってから御発言いただきますようにお願いいたします。また,発言時以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。
接続の安定化のために,本日は一般傍聴を受け入れてございません。資料及び議事録を速やかにホームページに掲載することで,透明性を図るとさせていただきます。毎度のことではございますけれども,議事録の速やかな確認について,後ほど御協力のほどよろしくお願いいたします。
資料については,議事次第に記載のとおり,事前にメールでお送りしております。
なお,そのほか,教学マネジメント特別委員会を中心に検討されまして,本年1月22日に大学分科会で決定されました「教学マネジメント指針」と,昨年度文科省で実施しました「「博士課程教育リーディングプログラム」事業の定着・発展プロセスに関する調査研究」の結果を御参考として送付してございます。これらの紙冊子を御希望の先生がいらっしゃいましたら,後ほど事務局へ御連絡くださいませ。
本部会では初めてのオンライン開催となりまして,不都合があるかもしれませんけれども,御協力のほど,どうぞよろしくお願いいたします。
以上です。

【有信部会長】 それでは,資料等,御確認いただければと思います。
議事に入りたいと思いますが,議事次第を御覧ください。本日は,議題が主に5つあります。早速,1つ目の議題ということで,4月22日付の申し合わせに則って,前回の大学院部会で書面審議により議決を行った省令改正について,報告をいたします。
資料1-1,1-2のとおり,リカレント教育の促進を目的として,単位互換等の柔軟化と入学前の既修単位等を勘案した在学期間の短縮を認める,大学院設置基準の改正について,大学院部会として議決を行い,5月13日付で承認いたしました。
その後,5月20日付で,大学分科会で原案どおりで承認するという答申がなされ,6月30日付で公布・施行されました。
報告は以上です。
それでは,議題(2)に入ります。本年1月に総合科学技術・イノベーション会議にて,「研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ」が決定されました。こちらには,大学院に関する事項も多く盛り込まれておりますので,事務局より報告いただきます。また,この「パッケージ」にも盛り込まれている「ジョブ型研究インターンシップ」について,詳しく説明していただきます。それでは,まず「パッケージ」について,事務局より説明をお願いします。

【西大学改革推進室長】 西でございます。資料2-1を御覧ください。「研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ」という資料でございます。
これは内閣総理大臣が議長を務めます総合科学技術・イノベーション会議にて,今年の1月に決定されましたものでございます。
資料を1枚おめくりいただきまして,1ページのところに,我が国における研究力という資料がございます。この上のほうにありますグラフは,左から論文数,Top10%補正論文数,Top1%補正論文数の世界ランクというものが示されておりまして,赤い折れ線グラフになっているのが日本でございます。他の先進国が論文数を増やす中にあって,我が国のみが水準が変わっておらず,国際的なトップレベルの論文のシェアが占める割合が低下しております。
2ページに,課題ということが挙げられています。修士課程から博士課程への進学率が減少していること,博士後期課程修了者の就職率が停滞していること,40歳未満国立大学教員の「任期付き」割合が増加していること,教員の研究・教育時間に充てる時間が減少していることなどがグラフで示されておりまして,研究者を取り巻く状況は厳しく,魅力が低下しているという課題がございます。
3ページ目のところには,修士課程から博士課程,若手研究者,中堅・シニア研究者に進む中で,それぞれ取り組むことや目標が書かれてございます。いろいろ書かれてございますが,この資料中の赤い四角囲みの数字がところどころ記載されており,それが次の4ページ目と同時に見ていただきますと,対比がされているということになってございます。
紙で印刷してくださっている方とか,2ページ同時に見られる方は,3ページ目と4ページ目を同時に見ていただけると分かりやすいですが,それぞれの段階で取り組むべきことがいろいろありますねということで,4ページ目のところには,施策の方向性ということでまとめられています。
修士課程や博士課程の段階においては,後期課程の進学に際して,就職に不安があるといったことなどや,生活に不安があるといったことに対応するために,博士人材のキャリアパスの拡大でありますとか,博士後期課程学生の処遇の改善などを進めることとされております。これらの方向性を今後,科学技術基本計画や国立大学の中期目標などに対策として反映していくということを想定されています。
具体的には,5ページ目以降に,研究力強化に求められる主な取組ということがまとめられています。
先ほど触れました大学院レベルでの取組につきましては,6ページ目の左上のところに,博士後期課程学生の処遇の向上という青色の囲みがございますけれども,博士後期課程学生が生活費相当額程度を受給できるように,当面,修士課程からの進学者の約5割に相当する学生がこれを受給できることを目指すといったことが記載されています。また,若手研究者のポストなど,具体的な達成目標と施策などが記載されております。
同じ6ページの右上のところには,産業界へのキャリアパス・流動の拡大等という四角囲みがございますけれども,後ほど紹介いたしますインターンシップにつきましては,このキャリアパスに関する主な施策の一つということで位置づけられてございます。
科学技術の観点から非常に様々なことが提案されておりますけれども,とりあえずかいつまんで大学院関係ということで御紹介申し上げました。
この「パッケージ」も踏まえて,具体に今後どうしていくのかといったことは,今まさに政府内で検討を進めているところでございまして,引き続き,また状況を御報告させていただければと思います。
私からは以上でございます。

【有信部会長】 どうもありがとうございました。
続いて,「ジョブ型研究インターンシップ」について,担当課より説明をお願いします。

【吉田専門教育課長】 7月末で専門教育課長を拝命いたしました吉田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
資料は,2-2でございます。お手元に御用意いただければと思います。
1枚おめくりいただきまして,ジョブ型研究インターンシップの概要について御説明いたします。先ほど西室長から御説明がありましたとおり,「研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ」の中で,『企業との連携による長期有給インターンシップの推進』,『博士課程学生の長期有給インターンシップの単位化・選択必修化の促進』が施策として位置づけられたことを踏まえまして,文部科学省が内閣府と経済産業省の協力の下で,具体的なインターンシップの枠組み等を検討しているところでございます。
概要といたしまして,ポイントを3つ書かせていただいておりますが,1つ目にありますとおり,「研究遂行の基礎的な素養・能力を持った大学院学生」を対象にいたしまして,「長期」かつ「有給」である「研究インターンシップ」であること,2つ目にありますとおり,大学院の正規課程の教育プログラムに位置づけられたプログラムとすること,また,3つ目といたしまして,企業側におきましても,その挑戦・実践の成果について適切に評価いただき,その評価を企業の採用選考活動に適切に使用することができるということから,企業の「ジョブ型採用」との円滑な連結を期待しているということで,こうした中身について先行的・試行的に実施することを検討しているところでございます。
その下に,インターンシップに取り組む参考例としてイメージを書かせていただいておりますが,上の図は,博士後期課程学生の3年間の間に一定期間のインターンシップ期間を設定して,長期インターンシップを1回実施する例でございます。
また,下の修士課程や博士前期課程の学生につきましては,2年間という間の中で長期インターンシップを設けるのは,カリキュラム編成上なかなか工夫が要るところではございますけれども,例えば,博士後期課程への進学を視野に入れている学生であれば,インターンシップの後に一旦企業に就職して経験を積んだ後に,また社会人学生として戻ってくるというようなケースもあり得るのではないかという,こうしたイメージを参考例として掲げさせていただいております。
次,3ページでございます。ジョブ型研究インターンシップの目指す効果につきまして,それぞれのステークホルダーについて書かせていただいております。
まず学生に対しましては,やはり学生の能力伸長(より実践的な経験や新たな気づき)が得られるということ,また,キャリアパスの多様化,活躍の場が拡大していくということに資するのではないかということ。
また,大学にとりましては,修士課程・博士後期課程の教育プログラムの中に位置づけて活用するということで,研究力の強化や大学院教育の実質的な向上が図れるのではないかということ。
また,企業にとりましては,学生の発想を生かして,研究開発の加速,あるいは新たなイノベーションを創出する,そうしたきっかけづくりになるということ。また,「ジョブ型採用」が今企業のほうで進みつつある状況ではございますけれども,そうしたところとの円滑な連結を進めることで,企業の研究開発現場に適応する能力の高い,優秀な人材を確保することが可能になるのではないかと考えております。
また,これは国全体といたしましては,こうしたインターンシップの効果を最大化していくことで,産学協働,全体として我が国の研究力やイノベーション力の強化につながっていくのではないかと考えているところでございます。
4ページが今後の進め方でございますけれども,まず基本的な考え方の2つ目にございますとおり,今回は,まずは産学において研究インターンシップの実績がある博士後期課程から積極的に実施していきたいと考えております。
そこに米印で書かせていただいておりますけれども,修士課程や博士前期課程の学生につきましても,就職活動が教育研究を進めるに当たって支障が生じないようにするというような観点から,どういうふうに進めていったらいいのかという観点が非常に課題ということでございまして,そうしたあたりを,大学や産業界などがきちんと議論していただきながら,どういう形で進めていくのがいいのかということについて,今後議論を重ねていく必要があるのではないかと考えているところでございます。
こうした取組をしながら,先行的・試行的な取組を重ねていきながら検証・改善を重ねていく,いわゆるアジャイル型の手法で実施していくのがよいのではないかと考えております。
その右側にございますけれども,今後は,導入を志向する個別企業と大学において検討を実施していきたい。そして,その検討を進める場として協議の場を創設して,そこで検討を具体的に進めていきたいと考えております。また,インターンシップのマッチングなどをサポートする団体の公募も行って,そこが中心に具体的な取組を進めていくことを考えております。また,実施に当たってのガイドラインの策定も,今後の検討課題と考えているところでございます。
5ページでございます。今後の想定するスケジュールと大まかに書かせていただきましたが,10月にインターンシップの協議の場であります推進委員会を設置いたしまして議論をスタートし,来年1月頃に具体的なガイドライン・公募要領等について内容を具体的に決定した後,4月頃にマッチング支援機関の公募・確定,それから,具体的な参画機関,これは企業・大学両方でございますが,を確定し,夏頃に学生へ周知しながら,来年の秋頃に参加する学生を確定して,再来年,2022年1月頃からインターンシップの実施ができればと考えているところでございます。
6ページは参考でございますが,この部分につきましては,大学と産業界で連携しております産学協議会の報告書の中でも,大学院学生を対象とするジョブ型採用につながるインターンシップにつきまして試行していこうということで,取り上げさせていただいているところでございます。
7ページでございますけれども,「研究インターンシップ」のイメージでございます。事例として,大阪府立大学の例を掲載させていただいておりますけれども,こちらでは3か月間の研究インターンシップを共通教育科目として実施しているということで,企業の評価を得ながら単位を認定するということで実施している例でございます。
また,8ページに,もう一つ事例という形で掲げさせていただいておりますが,こちらは経済産業省が行っております産学協働イノベーション人材育成協議会というところが実施しております,中長期研究インターンシップの事業の中で取り組まれている事例でございます。例えば,右側のほうの学生でございますと,自分の研究とは違ったテーマのインターンシップに参加して,大学では経験できないような新たな経験ができたというようなこと,また,企業側の視点でも,様々な気づきがあったというような回答があったということを得られているところでございますので,こうした取組を進めていくことができないかということを考えているというところで御紹介をさせていただきます。
聞き苦しくて申し訳ございませんが,説明は以上でございます。

【有信部会長】 ありがとうございました。
それでは,今の説明に関して御質問等ありましたら,どうぞよろしくお願いします。手を挙げていただけると。
小長谷先生,まずよろしくお願いします。

【小長谷委員】 御説明ありがとうございました。
若手研究者を魅力的なプログラムで企業が青田買い的に採ってしまうとか,3か月しか使わないけれど,その間にお試しして,いいなと思った人だけ後で声をかけて,要らない人には声をかけないというような,お試し期間に使ってしまうとか,そのようになってもいいのでしょうか。当該プログラムのステークホルダーは三者です。学生,企業そして大学です。アカデミアに残って研究していく人も育てていくという義務がもう一つ,一方でありますから,それとの関係はどのように考えていらっしゃるかということを聞いておきたいと思います。よろしくお願いします。

【有信部会長】 ありがとうございました。
では,今の件に関して何か。

【吉田専門教育課長】 まず1つ目に,これはやはりきちっと教育プログラムとして成立させないといけないということがまず大事だと思っておりまして,その中で,しっかり企業の側でインターンシップに出してもきちんと耐え得るといいますか,そうした学生をまずは候補として考えていく必要があるのではないかなということで。誰でもいいというわけではございませんけれども,しっかりそうした候補を大学院の中で見つけていくということも,1つ大事なことではないかなと考えております。
また,企業との関係でございますけれども,修士課程と学部学生につきましては,採用とインターンシップの関係において,採用に当然インターンシップは関連させることはできないような仕組みになっておりますけれども,博士後期課程につきましては,そうしたルールが基本的にはないということでございますので,そこをうまく活用していくという形でございますけれども,企業の側から見てもしっかりメリットがあるような形で取り組んでいけるということが,1つの今回の主眼でもございます。
そこは確かに青田買いという形ではないかもしれませんけれども,今後の大学院学生の活躍の場がきちんと拡大できていけるような,大学の教育プログラムの取組として進めていけるようなところは,きちんと留意をしていきたいと考えております。

【有信部会長】 というようなことでよろしいでしょうか。
それでは,加納さん,よろしくお願いします。

【加納委員】 大学の先生方にも関係することかもしれませんけれども,弊社も長期インターンシップ,1か月から2か月という形でインターンシップの学生さんを採用させていただいているケースもありますが,その際に必ず課題として挙がってくるのが,知財をどういうふうに位置づけるかというところです。
研究が,大学側で学生さんが行われている研究と,企業で行う研究活動が全く関係のない領域のものであれば,大きな問題は発生しませんが,恐らく大学で勉強されている,あるいは,その能力を養われている領域となると,かなり類似した領域でインターンシップの中の研究テーマということも決まってくるかと思います。
このあたり,企業の場合,例えば弊社の場合ですと,弊社の中で研究した内容はもう全て,学生さんが発明した内容においても,全て弊社の中に帰属するものであるということで,事前に了解を取っておりますけれども,これが果たして大学側の先生方が望む方向なのかどうかということも意見を聞きたいと思いますし,こういったものをスタートさせる際に,必ず両者の合意を取ってからスタートさせなければいけませんが,このあたり,もう既に実施されている大学あるいは企業さんの中でうまい方法があるのか,それとも,先ほど推進委員会の設立という話もありましたけれども,こういった組織で,委員会の中でも,こういう知財に対する取り扱いについてのガイドラインみたいなものも作られるような御計画を持っているのか。そのあたり,御意見,御説明いただけたらと思いました。
以上です。

【有信部会長】 これは多分職務発明という区分けの問題でもあって,特許法の35条の中で,職務発明の権利の所属というのが,それぞれ企業側の研究者と,それから,いわゆる大学,国研等の研究者とで若干取り扱いが違うようにもなったというふうに理解しています。
そういう中で,はっきり決まっていないのは学生なんですよね。学生についてどうなのかというのは決まっていないので,多分,この辺については,何かお考えのところがあれば。

【吉田専門教育課長】 御指摘ありがとうございます。
確かに,知財も含めて,いろいろ取り決めをしなければいけないような課題というのは幾つかあるかと思います。そのあたりは,今後,推進委員会の中でしっかり議論していただきながら,ある程度ガイドライン的なものは作る予定でございますので,そうした中で,大学と企業のほうであらかじめ決めておくべきことについては,しっかり取り決めをしていただいてからスタートするような形で,今後具体的に検討していきたいと思っております。

【有信部会長】 これ,多分,具体的に取り決めてやらないといけない話だろうと思いますので,そういうふうに進めていただければと思いますが。
ほかに手が挙がっていた人は。じゃ,川端さん,それから,その後,迫田さん,よろしくお願いします。じゃ,川端先生,どうぞ。

【川端委員】 ありがとうございます。私のほうからちょっとだけ。
私,この委員会にどうも入っているらしくて,この話自体に関しては,まだ議論が始まっていないので,今からというところなんでしょうけれども。
私,ぜひ,企業の方々にお聞きしたい話があって。ジョブ型というキーワード,要するに,研究インターンシップというのは,もう以前からやっている,ドクターに関して言えば,いろんな意味でやっている部分があるんですけれども。今回,ジョブ型ということが,例えば,企業サイドからかなり出てきていて,こんな話になっているというふうに私としてはお聞きしているんですが。このジョブ型ということが,どんなふうに企業の方々にとっては魅力的に見えているのかが,ぜひ,中教審は聞きやすいから,ちょっとお聞かせいただけるとありがたいんですが。

【有信部会長】 ちょうどよかった。迫田さんの質問も併せて,よろしくお願いします。

【川端委員】 ちょうどいいですね。よろしくお願いします。

【迫田委員】 まさにこのスキームは,私が分科会長を務めました産学協議会の中の「今後の採用とインターンシップのあり方に関する分科会」の中で議論したものです。大学側が気にされているのは,やはり青田買いと,学業に対する阻害要因になるのではないかという2点で,なかなか歩み寄りができなかったんですけれども,この案が出てきてようやく議論が動き始めました。
企業側も優秀な修士や博士の活躍の場をどんどん広げていきたいという思いは一緒なんですが,特に修士課程の間にインターンシップをやるということに関しては大学側の抵抗が相当大きく,やっぱり学業が一旦終わってからでないと難しいといった意見が強かったと思います。そういう議論の中でこのアイデアが出てきて,これならお互い乗れるかなということで一気にまとまっていきました。
ジョブ型について言うと,専門的なプロフェッショナルが必要だというニュアンスでジョブ型というふうに使っていると考えていただければいいかと思います。今までのメンバーシップ型で,会社に入ってからいろんなことをやらせて経験を積むということではなくて,やっぱり何かの道のプロとして,会社の中でも,会社の外でも,一旦外に出てまた戻ってきても,そういう形でプロとして育っていってほしいという思いを込めて,ジョブ型という言い方をしているというふうに考えていただければいいと思います。
今,特に話題になっているのは,AI等の世界ですけれども,そこが少し突破口になって,誰でも一律同じ初任給じゃないというあたりは,産業界の中でもようやくコンセンサスができてきたところだと思います。これがきっかけになって変わっていけばいいと思います。
あとは,私からお願いということで言いますと,まずはやりやすい博士課程から始めるということは理解できますが,企業側から見れば,重要なのはやはり修士のところです。ここが技術系で言うと,圧倒的なマスです。修士について,例えば,卒業後の有給のインターンシップが実際にできてくれば,今までのように4月に新卒一括採用という形はだんだん崩れてくると考えています。全ての企業がそう考えているとは言えませんが,経団連での議論では,それを期待する声が出ていました。以上です。

【有信部会長】 ありがとうございました。
菅委員が何かしゃべりたいとかいうメモが入って。

【菅委員】 画像が出せないので申し訳ないんですけれども。
このジョブ型のインターンシップというのは,やはりこれまでの一括採用の就職活動とある意味対比するようなアプローチになるのではないかなと思うんですけれども。今回,コロナのこういうパンデミックの状態で,かなり就職活動が大きく変化してきていて,多分,今年の採用はほとんどインターネットというような形になったと思います。そういった中で,こういうふうなアプローチで就職の仕方そのものを,日本で長い間,そういう就職の仕方というのが一括採用で行われてきたわけですけれども,それにかなりもう弊害が出てきているというのは明らかでして,こういった新しいアプローチを日本の社会の中に具体的に取り入れていくということは非常に重要だと思います。
もう一つ,この図の中で,2ページ目の修士課程の参考例とかと書いてありますけれども,例えば,これと全く同じような形で,実は私の研究室には,企業で就職した人が2年ほど働いて,私の研究室に博士課程から入って戻ってきたと。要は,就職を完全にやめて,企業をやめて入ってきたという学生が今2人います。
ニーズは明らかにあると認識していますので,こういう仕組みがあるということは,学生のチョイスが増える。それから,博士課程に進んだとしても,途中で1~2か月,あるいは,もう少し長く企業で経験できるというのは,非常に大きなメリットになると私は考えていますので,ぜひともこれは企業とうまく推進していくべきことではないかなと考えています。
どうもありがとうございました。

【有信部会長】 ありがとうございました。
迫田委員の最後の方向性と,今の菅委員のコメントというのは,うまく同期しているように思います。将来的に採用の仕方がどんどんフレキシブルになって,こういう方向で変わっていくように,ぜひ,いい設計をしていただければと思います。
ほかに御質問のある方いらっしゃいますか。それでは,小西委員,どうぞ。

【小西委員】 実は今,会計大学院協会と公認会計士協会とでインターンシップ制度を構築しています。我々のほうは,ここでいう長期かつ有給でジョブ型をお願いしているのですが,各監査法人との合意が得られません。その理由は,秘密保持の問題です。秘密保持の問題があるので,長期に亘ったコミットメントした会計監査業務に従事することは無理だというような回答を毎年頂いています。そこら辺を解決しないと,私は賛成なのですが,なかなかうまく実行できないのかなという感想を持っています。
以上です。

【有信部会長】 ありがとうございます。
これも多分これから議論をしていただく内容になると思いますが,いわゆる一般の大学院生の場合と,それから,プロフェッショナルスクールの人の場合というのは,例えば,プロフェッショナルスクールの場合には,プロフェッショナルとしての基本的な規範だとか,そういう倫理規程だとか,そういうものに結果的には縛られていくことになるので,その中の倫理規程,あるいは行動規範の中に機密保持というような内容が,会計大学院のような場合だと,恐らく入れられるかもしれない。一般的に機密保持という内容を勝手に入れ始めると,とてつもないことになるので,それは個別個別でよく議論する必要があると思います。そういうことも含めて,検討していただければと思います。
ほかに質問ないようでしたら,次の議題に移りたいと思います。どうもありがとうございました。今後も適宜,御報告いただくというふうにしたいと思いますので,よろしくお願いします。
次の議題は,「大学院の国際化について」ということであります。国際化に関しては,1月の第97回の部会で,名古屋大学,政策研究大学院大学の取組を御発表いただいています。その後,コロナの影響で世界情勢も大きく変化したことも受けて,今回は文部科学省の担当課から,大学の国際化の現状について御説明いただきます。それも踏まえて,今後の大学院の国際化について,これはざっくばらんに議論をしていただければと思っていますので,よろしくお願いします。
それでは,説明,よろしくお願いします。

【佐藤高等教育主任大学改革官】 高等教育の国際企画を担当しております佐藤です。よろしくお願いいたします。
今日は院部会ですが,国際化の話になりますと,必ずしも学部と大学院というのはきっちり分かれていないところもあり,共通点も多いので,資料の中身としては両方にまたがる話になっておりますので,御了解いただければと思います。
まず1枚目を御覧いただきたいのですが,今日,タイトルとしてはコロナの影響というお話ですが,まずは,そのコロナになる前までの状況です。これ,先生方も皆さんよく御案内のとおり,日本人の海外留学者は右肩上がりで上がってきていまして,11万5,000人。外国人留学生の受け入れも,留学生30万人計画がございますが,31万2,000人を2019年の段階で達成しているわけですが,今日は大学院ということなので,大学院生がこの中にどれだけいるのかという話になりますと,外国人留学生の31万人の中で,大学院レベルで来られている方は5.3万人いらっしゃいます。31万人の中の5.3万人。一方で,日本人の海外留学者,11万5,000人という数字は,これはあくまでも大学が準備したプログラムに乗って行っていることになりますが,それだと,実は7,500人のみ。11万5,000人の中で,大学院生は7,500人です。それも,期間をよく見てみると,2週間未満が4,000人以上ですので,実質的な留学という形にはなっていないことがよく分かります。
一方で,実は,この11万5,000人という数字のほかに,日本人の海外留学者に関しては,5万8,000人という数字があります。今日御紹介していないのですが,この5万8,000人の日本人の海外留学者は,世界各国が公表している各国の大学に籍を置いている日本人学生数になりますので,恐らくこの5万8,000人は,主に学位取得を目的として,日本の大学を介さずに直接外国に留学している方々ということが推測されます。これも推測ですが,恐らくその5万8,000人の中には,相当数大学院レベルがいるであろうと考えられます。
こういった背景の中で,我々,文部科学省としましても,大学の世界展開力強化事業,左下ですが,これまでEU,米国,アフリカ,アジア諸国,ロシア,インド等,地域を指定して,大学が連携してプログラムを組んで学生の交流を行うことを支援してきています。今年,実はアフリカをコロナの中で実施するかどうか悩みましたが,5年間の事業ですので,今年度は学生交流をしない条件の下で,今,公募をかけ終えたところで,申請件数が30件ほど頂きまして,これから審査に入る状況になっています。
それから,学生交流という意味では,御案内のとおり,JASSOの各種奨学金,それから,民間企業の皆様の御協力を得て送り出しているトビタテ!留学JAPAN日本代表プログラムがありますし,あとは,大学のそもそもの体質をより国際競争力のある,国際互換性のあるものに変えるという体質改善事業であるスーパーグローバル大学創成支援事業ですが,実際,これで37大学を選定して,今年度33億円の予算で進めています。
ちなみに,スーパーグローバル大学に採択している学生数・教職員数は,日本の高等教育の約2割を占めていますので,こういった2割の大学において国際化が進むことで,いわゆるクリティカルマスがつくられていくことを我々は期待しているところです。
次のページをめくっていただきますと,そういう状況の中で新型コロナが起こったわけですが,国際という観点で見ますと,左側にあります留学生交流のところを御覧ください。今年度の初頭,4月の頭の時点ですが,インバウンド,アウトバウンド,共に来日できない,新たに派遣できない,そういう極めて壊滅的な状況になったわけです。
その間,文部科学省としては,右側ですが,各種国費留学生等の奨学金について様々な要件があるわけですが,そういったものを相当柔軟化しまして,できるだけ留学生,日本人も含めて,海外に留学している方々,それから,いらっしゃる外国の方々,トータルでできるだけ皆さんの不便にならないよう,高等教育機会を確保するように柔軟化を図ってきたところです。
3ページ目を御覧いただきますと,そういう中において,これはインバウンドに関して,そもそも入って来れない状況があったわけですが,この9月1日から大幅に様々な制限が解除されてきています。これまでは,入国拒否対象地域に指定された以前に当該国に出国していた方しか再入国できなかったわけですが,9月1日から,在留資格を有していれば基本戻れますよということになり,それから,もともと日本にいらっしゃる方々で,在留資格を持っていた方々に関しても,9月1日以降,出国してもまた再入国できますよとなっております。よく報道で,日本に滞在されている外国人の研究者もしくは院生の方々が一旦出てしまうと,もう入って来れないのではないかということが非常に大きな精神的プレッシャーになっているというお話もありましたが,そこはもう今改善されているという状況になっております。
また,8月31日までに再入国許可を持って出国し,出国中に在留期間が切れてしまった場合もあるわけですが,これも再入国が可能となりました。
これら,いずれも出国72時間以内に,要は,自分の国を出て日本に戻ってくる,もしくは日本に入ってくる前に,3日以内にPCR検査を受けていただいて,陰性であることが必要になりますし,それから,日本の空港でもPCR検査を受けて,さらに陰性であることが必要になりますし,さらには,その後14日間,公共交通機関を使わずに隔離する,待機することが必要になりますので,いずれにせよ,受け入れ側の大学や研究機関がしっかりしていないと,そこは受け入れられない状況になっております。
4ページ目,御覧いただきますと,さらに今,我々,水面下で政府内において様々な交渉,調整を進めてきておりましたが,とりあえず8月末から国費の外国人留学生について,入国が始まっています。もうそれなりの数が世界各国から入ってきているわけですが,これはもう完全に新規の留学生たちです。
これについても,先ほどと同じで,受け入れる大学側がちゃんと受け入れる体制を準備していただくことが前提条件になるわけです。ちなみに,今,この国費外国人留学生の中で,対象となっている大学院生の数は,マックス1,900名いらっしゃいます。国費留学生は,もう対象になる方が決まっているわけですが,決まっていたが入れていなかった新規の方々が,大学院レベルで1,900名いらっしゃって,この方々が辞退しない限りにおいては,そして,受け入れる大学が来ないでくれと言わない限りにおいては,1,900名入ってくることになるかと思います。
さらに,教育現場でも,必ずしも学生だけではなくて,教員の方々の中には外国人の方々がいらっしゃるわけですが,その方々についても,もう一定の条件の下で入国ができるということになっておりまして,今,実は,全ての780の大学,それから,全ての高専など,そういったところに私どもから調査をかけて,そういった教員の方々,研究者の方々で入れたい方がいれば,我々に言ってくださいということで,出入国在留管理庁と大学の間を我々ども高等教育局が入って,今,入れる手続を進めていることになっております。
教育の面と言うと,まさに留学ができなくなってしまった状況の中で,リモート留学というのが制度上あるわけではないですが,よくバーチャル留学やリモート留学という言葉がありますが,そういったことを大学の現場の先生方は,もう学部レベル,大学院レベル,それぞれ模索されています。たまたま私ども,大学の世界展開力強化事業の中で,このスライド5にあるCOIL(Collaborative Online International Learning)型を採択して応援していたところですが,これが今,一気に各大学の中に取組として広がっているということになります。オンライン上で,時差という問題はありますが,その時差を乗り越えつつ,学生がオンライン上でプラットフォームを作って一緒にワークする,チームワークで様々な課題をこなしていくといったことがかなり広がってきていて,最近,インターナショナルエデュケーションに関するウェビナーも盛んに行われていますが,かなりの頻度でCOILやバーチャルエデュケーションがグッドプラクティスとして取り上げられている状況になっています。
コロナの中で,大学の現場はかなりお悩みになっているわけですが,スライド6を御覧いただくと,私ども,スーパーグローバル大学創成支援事業と大学の世界展開力強化事業の採択大学,50大学という限定的な数になってしまいますが,国際教育交流を非常に積極的に進めている,国際化の取組を積極的に進めている50大学を対象にアンケートを取りました。
回収率100%ですが,7ページ目を御覧いただきますと,この事業展開に及ぼす影響・インパクトについてという中で,大学の国際化という観点で目下の課題は何かというところで一番多かったのが,事業の停滞は当然ですが,やはり事業戦略,新たな事業戦略をどう作るかが非常に課題になってきているということ。それから,学生の安全確保や危機管理の在り方も大きな課題になってきている。
さらには,その下ですが,キャンパスの国際環境の維持・在り方。コロナで実際に人のモビリティのない中で,国際的なキャンパスって何かというところに非常に悩み始めていることが分かります。
さらには,留学生のリクルーティングをどう達成するかというところです。右下に若干その他の事例を書いていますが,学生のモチベーション維持も非常に大きな課題になってきています。
8ページ目を御覧いただきますと,財政的なところでの影響があるかという話です。欧米の英語圏の大学は,外国人留学生から非常に高額のtuitionを徴収して,大打撃を受けて,今,非常に経営的に問題になってきているわけです。日本の場合はそこまででもないとは言いつつ,ふたを開いてみると,それなりの影響があることが分かります。50大学の64%の大学が,6月に実施した時点で,既にもう財務的な影響があると言っていますので,今もう9月に入っていますから,恐らくこの割合はもっと上がっているだろうと想定しています。
具体的に言うと,留学生宿舎の寄宿舎収入が入ってこない。それから,例えば,サマープログラムのような有料のショートプログラムでやっているケースがあるわけですが,そういったものでプログラムの収益が上がらないという影響が出始めているということになっています。
さらには,留学生に一時待機場所の確保や,ルーターなどの通信装置自体をそもそも貸与するなど,そういったところでの,コロナゆえの様々な必要経費が増している。それから,事務職員の残業代が増えている等々によって,財政的に厳しくなってきている中で,場合によってはプログラムの縮小を検討しなければいけないという声も聞かれているところです。
スライド9ですが,現状,そういう影響の中で,コロナ終息後,もしくはポストコロナという話,ウィズコロナというのも部分的にあると思いますが,そういう中で,高等教育機関のあるべき国際化の方向性についてどう考えるかという質問につきましては,8割を超える大学が,Blended/Hybridという,まさにフェイス・トゥ・フェイスとオンラインの組み合わせによりシフトしていかなければいけないだろうという回答を示されています。
さらには,約半数の大学が,派遣についても,それから,留学生の受け入れについても,量から質に見直すということを回答されています。
ただ,おもしろいのは,下を見ていただくと,7つと5つという回答数で,少ないですが,派遣についても受け入れについても,量的拡大を目指すというところ,その旗を降ろさない,もしくは,これ,オンラインでの量的拡大がもしかしたらあるのかもしれませんが,量的拡大を目指すという大学もいらっしゃって,そういう中で,今後,国際交流の在り方がいろいろと問われてくることになるのかなと思っています。
スライド10番ですが,大学院教育において,どういう国際的なコラボレーションがあるのかですが,まさにジョイント・ディグリー,単一の学位記に複数の大学の学長名がサインされている,要は,一緒に単一の学位が出る制度です。今現在,我々も法制度上ジョイント・ディグリーができるわけですが,日本国内でジョイント・ディグリーをやっているケースというのは22あります。多くが国立大学ですが,その22の中で,21プログラムが大学院です。そのため,ジョイント・ディグリーとなると,圧倒的に大学院がやりやすくなっていて,このジョイント・ディグリーについても,まさに国際教育交流が止まってしまっている中で,もともとコロナの前から実は課題も指摘されていました。
具体的に申し上げますと,この課題のところに書いているように,手続に多大な労力と時間を要する。この手続とは何かというと,認可事項になっていまして,設置認可の対象になることで,要は,その準備等々に時間がかかるということになっています。もともとの通常の大学の組織を立ち上げたり,大学をつくったりする設置認可の大体3分の1ぐらいに労力を減らして,大分簡易化した手続にはしていますが,それでも手続には多大な労力と時間がかかるという点。
あとは,事実上,3大学までのJDプログラムしかできないと。要は,欧州の大学へ行くと,もっと多くの大学を回って1枚の単一の学位記が出るジョイント・ディグリーもあるわけですが,そういったことが,理論上は可能ですが,実態上できないという話。
あとは,定員が実質的に減るという話や,規模が小さくなりがちという,制度的な立てつけゆえの課題が挙げられていたところです。それが,まさにコロナの中で,大学院教育にとってジョイント・ディグリーというのは極めて有効な手段ですが,こういった課題もございますので,今後の検討課題になりますが,文部科学省として,このピアレビューによる質保証の仕組みの構築を踏まえた手続や,要件の簡略化を考えていきたいということを,今こちらで御紹介したいと思います。
スライド11ですが,こういったコロナの中で,世界は非常に悩みつつも,新たな展開を模索しているわけですので,そういった事例を御紹介したいと思います。
左上のところを御覧いただくと,アメリカのアリゾナ大学ですが,世界34か国,130都市以上に「グローバルキャンパス」を開講することを発表しておりまして,世界各国のパートナーの大学の施設を使いながら,まさにアリゾナ大学の授業を講義として提供していく中で,場合によっては,アメリカに直接留学しなくても,アリゾナ大学の学位が取れる。途中で留学することも可能な,60の学位プログラムを完全オンラインで世界各国に提供していて,これ,実は,様々なデベロッパーとも組んで,ハウジングのようなものも連携して提供している動きがあります。
さらには,左下ですが,留学生グローバルマーケットが今,完全に一旦リセットされてしまった状況になっているわけですが,そういう中で,例えば,英・豪の大学は,チャーター便まで各大学が個別に準備して,留学生を連れて来ようといった動きもございます。
さらに,オンラインという意味では,オンラインプラットフォームが非常に躍進してきています。中国の教育部,これは中国の文部科学省になりますが,中国の教育部がイニシアティブを取って,特に清華大学が中心になりまして,国際オンライン学習プラットフォームを立ち上げていて,109の英語のコース,それから,今後英語以外,ロシア語・日本語・スペイン語・フランス語も準備しながら,そういったプラットフォームを作るという動きも,これは4月の段階でニュースとしてありますし,あとは,オンライン教育の既存プラットフォームの利用拡大ということで,例えば,フランスでいくと,「Open Classrooms」という,これは民間のまさにプラットフォームですが,こういったものが個別指導付きのオンラインのコンテンツを無料で開放し始めて,今,1,200機関,世界で12万人の学生が利用している動きがあります。
また,イギリスでは,「FutureLearn」が,もう無制限にオンライン科目を提供。アメリカのMOOCsである「Coursera」も,3月から全てを世界に無料開放を始めている状況になっています。
また,そういった動きを支援する動きもありまして,先ほどの大学の世界展開力強化事業のCOILのような形ですが,アメリカのACE(American Council on Education)が,我々日本とも協力しまして,新たに30日米大学のパートナーシップを採択して,要は,オンラインで教える教員のトレーニングプログラムに対してお金を米国から提供する。
それから,EU,米・仏,ドイツ,それぞれが,こちらに書いているように,様々なVirtual Exchange,もしくは,International Virtual Academic Collaborationに様々な補助を出し始めている状況になっています。
さらに,これは日本が中心になっているUMAPというstudent mobilityのAsia Pacificの団体がありますが,こちらでも,8か国・地域から18大学が参加しまして,今現在,76科目ですが,オンラインで相互に履修できるバーチャル交流プログラムを試験的に開始した状況が動きとしてございます。
こういう中で,最後ですが,これは参考で御紹介いたしますが,必ずしも国際化の動きということではなくて,1つの国際動向としての御紹介になります。アメリカのNSF(National Science Foundation)によるsurveyがつい最近ありまして,11大学,4,000人の大学院生の調査をしています。このコロナでどういう影響があったかという調査ですが,これによると,1番,2番にあるように,25%,4分の1の学生が食料確保,もしくは住居確保というところで不安定な状態を経験している。
それから,3分の1以上が不安や落ち込みを自覚し,31%がPTSDと一致する症状を報告している。
こういったものは,大学が院生に対してどういうコミュニケーションを取っているかによって,場合によっては悪化している場合もあるという報告になっています。
また,5番ですが,25%が学位修了を先に延ばすことを想定している。具体的には,大体6か月から1年程度延ばそうと考えていて,その傾向は男性より女性のほうが顕著であるということ。
あとは,17%がキャリアプランの変更をもう既にしていて,その17%のうち4分の1が人文系の学生となっています。
この人文系については,特に悲観的な傾向が見てとれるわけですが,全体で29%が卒業後の就職目標について悲観的になっている中で,特に人文系の院生は55%が将来の就職目標に対して悲観的となっているということが報告されています。
これはまだ暫定報告書の段階のため,ネット上で探すことができないですが,調査の暫定報告書によると,そういったストレスが長期に影響を及ぼすかどうかは,調査結果から予想はできないとしていますが,最後,9番に書いているsuggestionを大学に対してしています。
具体的には,食料,住居,学位取得の延期に係る財政支援をすること,その財政支援が容易にアクセスできるものであることというのが1つ。
それから,院生の健康,生活状態について,より丹念な配慮を大学自身がより明確なメッセージとしてちゃんと発信すること。
そして,3番が,将来の雇用不安に陥っている院生に対して焦点を当てたキャリアサービスをするべきである,充実すべきであるといったことがありました。
もちろん,日本とは背景事情は異なりますので,必ずしもこれがそのまま適用されるわけではないですが,1つの海外の動向として,御参考までに御紹介して終わりたいと思います。
ありがとうございました。

【有信部会長】 どうも御苦労様でした。
それでは,ただいまの説明も踏まえて,大学院の国際化に関して,いろいろ御意見いただければと思います。どなたからでも結構ですが,挙手をお願いします。
まず池尾委員,どうぞ。それから,田中委員の順番でお願いいたします。

【池尾委員】 質問ですけれども,今お話しいただいたように,コロナが始まってから,とくに大学院レベルではグローバルな交流が逆に非常に高まっている部分もあるようです。簡単に海外の授業を,もともと出ていたのですけれども,コロナで,このZOOMみたいなのが一気に広がったおかげで,他大学の授業を簡単にのぞけるようになった。対面の授業ができないから,特にそういうものに関心が向かっているというのもあると思うのですけれども。
そういう現状を踏まえたときに,このコロナ収束後というのは,グローバルによその大学の授業が非常に身近になってくるような気がしています。そうなったときに,今の単位認定のシステムや学位認定のシステムをドラスティックに自由化することが,そういうことが必要なのではないかなと感じています。文科省としては,見通しとして,今後,それをどういうふうにお考えになっているのかをお教えいただければと思っているのですけれども。
以上です。

【有信部会長】 何か考えていることはありますか。

【佐藤高等教育主任大学改革官】 まさにコロナの中で,予期せぬ形でコロナが起こって,結果的にプラスに働いている部分も非常にあるという報告なり話というのは現場で多くあると思います。
そのため,そういった点については,針を戻してはいけないという話は文部科学省の中でもされていますし,さらに,そこの今御質問の点について言うと,ニューノーマルにおけるまさに大学教育の在り方というところが,非常に大きな石を投げられたと言いますか,世界的に今問われている状況になったと思います。
実は,文部科学省としても,そういったところに対して具体的に何か考えなければいけないのではないかという話になっておりまして,まさに教育再生実行会議という場がございますが,総理の直下に置かれている会議ですが,そちらで,これから年末にかけて,このコロナ禍,それからポストコロナ,そしてニューノーマルを意識した大学教育というのはどうあるべきかを議論しようとなっておりまして,そこで様々なことが,まさに今おっしゃっていただいた話が出てくると思っています。そういう中で,まさに大学制度の在り方,例えば,オンラインでの単位をどこまで認めるのかという話も含めて,あとはジョイント・ディグリーなどもありますが,今申し上げたところも含めて,どういった制度というのが,今後より社会にsuitableと言いますか,時代に合った形になっていくのかというところを議論しようということにはさせていただいております。

【池尾委員】 今,最後に少しおっしゃった,特にジョイント・ディグリーとかダブル・ディグリーにおいて,このバーチャルな授業みたいなものをぜひ取り込んでいただければと思います。
ありがとうございました。

【有信部会長】 それでは,田中委員,どうぞ。

【田中委員】 どうもありがとうございます。
前回御報告させていただいた後に,本格的なコロナウイルスパンデミックになったわけなんですが。春学期は,私どものところで言うと,外国人の留学生はみんな来ている,日本にいるので,日本人の学生とほぼ同じで,授業のほとんど全てはオンラインの授業で,無事この秋にみんな卒業できることになりました。ですから,春学期について見ると,全部オンライン授業でやるのはどうかという,いろいろな問題はあるにしても,乗り切ることができたわけであります。
これは多くの大学で英語プログラムで外国人を受け入れている大学は,やはり外国人の留学生というのは秋に受け入れるケースが多いのではないかと思うんですけれども,私どものところでも,学生の3分の2が留学生ですけれども,そのほとんどは,この10月1日には,一部は9月にもう入学しているんですけれども,これが来ることになっているわけで,果たして新しい新規の学生への授業をどのようにやっていくのかというところが,現在非常に大きな課題になっております。
そこで,来られない学生に関しては,私どもは原則オンラインでやりますと言っており,教員もそういう準備をしているわけですけれども,問題は,先ほど御説明があったように,この9月から,国費留学生も含めて,渡日ができるような措置を,文科省でいろいろな方面に働きかけて,取っていただいているわけであります。たまたまですけれども,私どものところは,多くの大学院生で外国人の留学生は,そのような奨学金をもらって来る方が多くて,その面で言うと,入国が可能になりつつあるんですね。ただ,先ほど御説明があったように,来る直前にPCR検査を受けて,来たらまた受けて,それから2週間滞在して,公共交通機関は使わないということでやっていかなければなりませんので。私どもとして見ると,これは全部大学として手配するというつもりでやっているんですけれども,着いて最初の2週間は,日本に来ても隔離されておるんですね。
こうやって来る学生もいるし,それから,国費留学生とか,そういうので,日本が入れてくれない学生もいないわけではない。それから,そのカテゴリーに入ったとしても,交通手段がうまくいかなくて来れないかもしれないというようなことがあって,学生が一斉に来るという状況にはならない。そうなると,やはり日本の国内に来る学生も含めて,全員にそれなりの教育をしなければいけないということからすると,原則オンラインでやらなければいけないということで,この10月からも,私どもの留学生が受講する授業は原則オンラインでやるという方向でいかなければいけないんだと思っております。
ただ,他方,国費留学生とか,そのような留学生に,日本国が何ゆえ特別待遇を与えて渡日ができるようにさせていただいたのかということを考えると,それは日本に来てもらった学生にしっかりと日本を知ってもらいたいからだと思います。日本国内の感染状況,今後の感染状況にもよりますけれども,比較的穏やかに推移していくとし,小中高のように対面授業をやっているという中で,そうすると,留学生に対して対面授業をやらないでオンライン授業だけでやればいいのかというような問題がでてくるわけです。
私どもとしてみると,実際はどのぐらいのパーセンテージの留学生が来ていただけるのか分かりませんけれども,ある程度の留学生で日本に入国が認められた学生がいるのであれば,やっぱり全部とはいかないまでも,かなりの程度対面授業を考えていかなければいけない。そうでなければ,せっかく日本に来ていただいて,日本人とも付き合えない,よその外国から来た人とも付き合えないというんだったら,何のために来たのかというような問題もあるので,その面,オンライン授業のいいところ,それから,効果的なところというのは今後も追求していかなければいけないけれども,留学生に対してどうやって,日本の中で日本のことをよく知ってもらうような教育機会を提供するということが大きな課題になっているということで,かなり工夫しなければいけないなとは思っているところであります。
現状,そんな感じのところだけ御報告させていただきました。

【有信部会長】 ありがとうございました。
全くそのとおりだと思いますね。ぜひよろしくお願いします。
宮浦委員,発言ボタンを押されていますか。

【宮浦委員】 はい。ありがとうございます。

【有信部会長】 こちらであまりよく見えなくて,申し訳ありません。よろしくお願いします。

【宮浦委員】 オンラインのメリット・デメリットあると思うんですけれども,大学院生の場合は,研究分野のお話があまり出てこなかったので,制度的な派遣や受け入れ,あるいは,オンラインを使ってやっていくというのはいいんですけれども,やはり研究分野によって事情はかなり異なると思いますので,ほぼほぼオンラインで解決できる大学院の研究分野もあるかもしれませんし,ウェットな実験系ですと,あるいは,現地調査を伴う研究分野ですと,かなり困難ということも生じていると思いますので,少し多角的な研究分野を視野に入れて,多角的な解決法のようなことを,特に大学院の場合は考えていく必要があると思います。
以上です。

【有信部会長】 ありがとうございました。
全くそのとおりだと思います。これもやはり検討を進めて,文科省としてできることの検討は進めてもらいたいと思います。
ほかに,川端委員,どうぞ。

【川端委員】 佐藤さん,ありがとうございます。
お聞きしたいのは,海外でのオンラインプラットフォームが拡大しているとか,推進が非常に強化されているという,これの先行きが知りたくて。MOOCsだとかという,あの時代とコロナの後のオンラインのやり方って全然違っているような気がしていて。例えば,国を越えて単位履修ができるようになって,いろんなものが,最後の認定が,それを全部認定して学位に結びつくだとか,コロナですごくそこは,一つの大学の中だけで認定する単位が決まっていて,全部終わるではなくて,もっとそこの自由化が起こるのではないかというような気がしているんですが。中国だとか,フランスだとか,イギリスだとかという,こういう動きの中にそういう考え方があるんですか。

【有信部会長】 何らかありましたかね。

【佐藤高等教育主任大学改革官】 結局,学位の認定基準をいじるところまではほとんど見つけられないですね。そういう動きというよりは,むしろ,これは日本の大学の先生たちとお話ししていても,コロナ直後に多く伺ったことですが,フェイス・トゥ・フェイスで教えていたのが急にオンラインになって,日々教えている科目なり教科のはずだが,コンテンツが実はないということや,コンテンツ作りに時間がかかって間に合わないなどがあると思いますが,むしろそういうものを,今,世界に実はこんな実例があるよねということで共有し始めているということだと思います。
ただ,それをどこまで認めるかに関しては,やはり各国,各大学によって随分差がある気はしています。

【川端委員】 そうすると,MOOCsの時代とあまり変わっていないと思ったらいいんですか。要するに,海外の新しい留学生を確保しようとか,そういうような動きの中にこのオンラインプラットフォームがあるみたいな話なんですか。

【佐藤高等教育主任大学改革官】 単純にそうではない気はしています。日本の場合は,MOOCsはあまり広がらなくて,様々な課題があったと思いますが,何となくMOOCってちょっと過去のものだよねみたいなことを言う大学の教員の方々もいらっしゃいましたが,世界では全くそういう状況になっておらず,コロナ前であっても,MOOCの数はどんどん拡大しているわけですね。
そういう中に,何をやってきたかというと,結構就職や職業スキルに結びつくものが増えてきていて,このコロナの中で何を各国政府は言っているかというと,結局,失業が増えてしまう中で,そういうものを,このMOOCsやオンラインを使いながら,政府の施策としては職業支援にも活用する支援も,例えばアメリカは始めているなど,様々な動きがあります。そういうところから考えると,実は,様々な視点からの活用のされ方が今後さらに増えるのではないかなという気はしています。

【川端委員】 ということは,そういうものに関して無料でやられているのか,有料化していく部分まで出てくると。

【佐藤高等教育主任大学改革官】 それはあり得るでしょうね。

【川端委員】 ありがとうございます。

【有信部会長】 すみません。私の進行が悪くて,時間が大分超過をしているというアラームを頂きましたので,次の議題にとりあえず移らせていただきます。
今頂いた意見は,文科省のほうで,次の第4次大学院教育振興施策要綱の策定に向けた検討ということで,引き続き検討をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
それでは,次の議題に移らせていただきます。「大学院レベルの履修証明プログラムについて」ということで,昨年の8月の大学設置基準の改正によって,学部においては履修証明プログラム全体への単位授与ができるようになりました。一方で,大学院については,その目的が,学術の理論および応用の教授研究,その深奥を究めるとされているところ,学部のような幅広い単位認定を行うことについては,議論が必要であると,こういうことになっていました。
今回は,まず大学院レベルの履修証明プログラムについて,どのような取組がなされているのか,あるいは,単位授与を認めることへのニーズについて,小西委員から御発表いただきます。まずはブレーンストーミングということで進めていきたいと思いますので,まず小西委員,よろしくお願いします。

【小西委員】 大学院レベルの履修証明プログラムについて説明をということでしたので,今回は,青山学院大学の会計大学院と会計大学院協会での取組,この2つに分けて御説明させていただきます。
まず青山学院大学での取組ということで,スライド3番を御覧いただけますでしょうか。共有しませんので,お手持ちの資料をご覧ください。
まず,青山学院大学の会計大学院におきましては,15年前から税理士のための特設講座ということで,関東の4税理士会を中心に,これに公認会計士で税理士登録をしている者などを対象に開講しています。これは,税理士あるいは公認会計士の職能を生かしてさらに活躍の場を広げていくために,最新の会計情報,会計基準に関する知識の習得と,ガバナンス及び企業経営支援に関する実務のスキルアップを図ることを目的とした講座です。
次にスライド4番なのですが,2017年度から,ここに履修証明プログラムを活用する試みを3年間実施しました。この当時は120単位以上が履修証明プログラムの最低履修要件でしたので,この特設講座にプラス,大学院の2科目の4単位を加えて,126単位を取って履修証明プログラムという制度設計を致しました。数ある大学院の講義科目の中から,スライド4番の下に挙げているようなところを選択して,ここから2科目取ってくださいということです。
この狙いは,この履修証明プログラムを取った人が,今後,会計大学院に進学するようにという,進学の呼び水となることを期待して設けたものです。ただし,残念ながら,この履修証明プログラムを履修して,会計大学院に進学した者はいても,そこで履修した大学院での2科目については会計大学院での単位として認められないために,入学すればもう一回履修しなければならないということが起きていることになります。
スライド5番を見ていただきたいのですが,履修証明プログラムの時間数が120から60に変更されましたので,2020年度からは,会計大学院の授業を選択できるという制度はやめにしています。
現在では,スライド6番に掲載している科目を開設して,大体30名から50名の税理士さん,会計士さんが毎年受講しています。今年におきましては,全ての講義は,ZOOMで開講しています。
次に,会計大学院協会での取組です。スライド8番をご覧ください。公認会計士になるためには,まず学部や会計大学院等を修了して,そして,公認会計士試験を受験します。もちろん在学中にも受けられます。公認会計士試験は,短答式と論文式と2段階に分かれています。ともに合格すると,今度は,実務補習所,これは公認会計士協会の会計教育研修機構が運営している機関ですが,ここに来て3年間の実務補習をした後に,最終試験を通って初めて公認会計士の資格が与えられるという制度になっています。
ところが,どうも公認会計士試験合格者の質が十分に担保されていないのではないかという意見があがってきています。その原因としまして,公認会計士の試験範囲が,日本基準がベースですので,国際基準からの出題がないとか,AI監査等々の,これから必要とされる新しい会計実務・監査実務について,そのデータサイエンスに関する基礎知識を勉強する機会が十分でないとか。あともう一つは,ペーパー試験では限界があるだろうというようなことです。
米国におきましては,6割程度が大学院を修了しているということになります。ますます会計の世界が拡大・発展していっていますので,当然,試験ではまかない切れず,これらの拡大・発展に対応するために相当数の単位を大学・大学院で取らないと公認会計士の試験が受けられないという仕組みに米国ではなっています。そこでは,たとえば,データサイエンスを中心とした科目を大学院・大学で受講することを強化しています。
公認会計士試験の実効性をより高めるためには,試験制度だけを改革しても十分な効果はあがりません。そこで,試験前の会計大学院での授業と,そして,試験後の実務補習所での授業とを連携して,三位一体で公認会計士試験の質保証を図っていけばいいのではないかということを提案していて,金融庁の公認会計士監査審査会と公認会計士協会の会計教育研修機構と,そして会計大学院協会の3つの機関が連携して,協議を始めています。
本日,御説明するのは,会計大学院協会と実務補習所が連携して,会計大学院の授業と実務補習所の授業の単位の相互互換をやっていこうとする試みです。そうすることで,公認会計士(試験)の質保証を高めていくことを考えています。それには履修証明プログラムが非常に有効だということを御説明したいということです。
スライド9番を御覧ください。これはあくまでも草案の段階ですが,まず会計大学院協会で,それぞれの会計大学院が共同して,例えば,履修証明プログラムAを作ります。ここに実務補習所の公認会計士の方も協力してもらって,つまり,会計大学院協会の教員と実務補習所の会計士が共同で履修証明プログラムを作って運営していこうではないかということです。そうすることによって,弾力性のある科目設定が可能になっていくということになります。
メリットとして,オンラインでの提供による受講の利便性の向上や,会計大学院間での講義の共有と実務補習所の強化が可能となります。換言すれば,公認会計士試験の前後での連携した教育が可能となります。
ここで一番の課題は,履修証明プログラムの単位化です。これを単位化するということは,実務補習所では認定が必要なのですが,実務補習所ではオーケーですよという回答を得ています。問題は,会計大学院の中でこの履修証明プログラムを単位化できるかどうかということになります。現行制度ではできないということになっています。
最後に,履修証明プログラムの単位化での有用性と課題ということなのですが,スライド11番を御覧ください。既に公認会計士や税理士の資格を保有している人のリカレント教育に,この履修証明プログラムというのは非常に有用ではないかと考えています。しかし,現在,青山学院大学の会計大学院で行っている履修証明プログラムの説明に税理士会に出向くと,「履修証明プログラムの単位を取って何になるの?」,「どういうメリットがあるの?」,「充実したプログラム内容だったら,履修証明プログラムでなくともいいじゃないか」というような意見を受けます。それが単位化されることによって,履修証明プログラムが大学院での講義と同じレベル以上のもので,一定以上の質保証がされているのですよということを証明できると思っています。何よりも,ここで取った科目が,会計大学院への進学後の単位となるわけですので,会計大学院への進学が促進されるという効果が得られるということになります。
つまり,単位化による単位の相互承認を前提にしますと,会計大学院間での運用,かつ実務補習所との運用により,公認会計士試験の前後で連携した教育が可能となって,会計専門職の質保証,先ほど御説明しましたが,会計大学院への進学を促進できることになり得ます。
最後に課題です。スライド12番を御覧ください。履修証明プログラムを単位化,あるいは,単位相互承認するに当たっての課題について考えてみたいと思います。単位化された場合には,当該科目名を統一しなければならないのかということです。つまり,それぞれの大学と実務補習所での科目名をそろえる必要があるのか,ないのかということです。それと,単位の上限は何単位までにするのか。誰が単位認定を行うのか。ここで講義をするには,非常勤講師としての任用が必要なのか。もしくは,各会計大学院間での包括協定の締結することが必要なのか。スライドには記載していませんが,現役の大学院生が受講できるのかというような問題が考えられます。
短い時間でしたので,駆け足になってしまいましたが,特に後半部分の会計大学院協会と実務補習所の連携をした履修証明プログラムというのは,非常に新しい履修証明プログラムの活用方法ではないかという説明でした。
以上です。

【有信部会長】 ありがとうございました。
今の説明に関して御質問等ありましたら,よろしくお願いします。
今の御説明だと,従来の単位認定の範囲を広げて,学生がそこで取得しなければいけない単位数の中に,そういう様々な事前に得た単位,あるいは外部で得た単位をカウントできるようにしましょうというような趣旨が,今回の小西委員の御説明は,むしろ履修証明プログラムの実質的な意味合いで言われていて,とにかくこれを取って何になるのというのが,例えば,会計大学院での卒業認定の単位に加えられるのか,加えられないのかというようなことではなく,公認会計士としての質を保証するために利用できる教育機会を提供しましょうと,こういうふうに理解すればいいんですか。

【小西委員】 すみません,最後のところが聞こえにくかったので,有信先生,もう一度お願いします。

【有信部会長】 いや,逆に言うと,つまり,ここで言われている単位認定がどういう形で役に立つのかということが,今の説明だと,履修証明プログラムを取るインセンティブになりますというような説明だったんだけど,その単位化したものが,例えば,会計大学院の履修単位の中にカウント可能になるのかどうかというようなところまでお考えなのかどうかということです。

【小西委員】 カウントになるように考えたいと思っています。そうしますと,現在の大学院生がこの履修証明プログラムを履修すると,公認会計士になった後に,実務補習所での所定の単位を履修しないとだめなのですが,それが免除になるという,そういう効果も得られるという意味において,正規の単位の中に入れたいと思っています。

【有信部会長】 分かりました。そういう仕組みになるわけですね。
村田委員,どうぞ。

【村田副部会長】 ありがとうございます。
お聞きしていて,今の説明でちょっと分かったところもあるんですけれども。恐らく理系の場合は履修証明プログラムなんていうのはあまりないと思うんですけれども,社会科学系の場合は,専門職であろうが,アカデミックであろうが,こういう履修証明プログラムというものが当然今後出てきて,企業のニーズは,どちらかというと,一定期間履修して,単位というよりも,こういった履修証明プログラムの要望あるいはニーズがあると思うんですね。そうすると,履修証明プログラムを単位化していくということにしてしまうと,逆に,企業のニーズと離れてくる場合もあると思います。そういう意味では,履修証明プログラムは履修証明プログラムでやはり置いておくべきではないかというのが私の意見です。
以上です。

【有信部会長】 履修証明プログラムという在り方をそのまま保持しておいたほうがいいのではないかという御意見でしたが,ほかに御意見ありますでしょうか。
これは実は結構難しい問題も含んでいるので,本当は引き続きの議論が必要なような気がします。今,単位化するかしないかということのお話と,それから,履修プログラムという存在の在り方の問題がある部分だぶっていたり,だぶっていなかったりする部分があります。そこの部分については,事務局のほうで論点となり得るべきこと,あるいは,論点そのものについて少し整理をしてもらって,引き続き議論を進めていきたいと思いますので,よろしくお願いします。

【小西委員】 有信先生,1つだけよろしいですか。
村田先生の御意見がよく理解できなかった部分もありますが,例えば,現行制度の科目等履修制度では,履修生によって,取得する科目を単位として認定することも,しないことも希望ができるようになっています。この履修証明プログラムも,同様な選択ができるようにすれば,先ほど村田先生が,単位化することのデメリットのお話だったと思うのですが,そういうことは解決できないでしょうか。

【有信部会長】 これはどうかな。村田先生,御意見ありますか。

【村田副部会長】 恐らく,それぞれの大学によってやり方が違うと思うんですね。例えば,単位化するとなると,一定の基準を満たさないと単位化はできない。そういう意味では,科目等履修生制度と聴講・履修証明プログラムとは,制度的に設計が違ってくると思います。履修証明プログラムを単位化するとなってくると,当然,制度的には,科目等履修生制度を今の現時点では使わざるを得ないので,そうすると,かなり制度的に制約をされて,ある一定期間,クオーター制でも少なくとも2~3か月は必要だとかなってくるわけで,もっと短い期間で履修証明プログラムを構築することが,単位化するということさえなければできるわけで,そのあたり,少し自由度を持ったほうがいいと思います。
そういう意味では,履修証明プログラムを単位化するという一般論に置き換えるのではなくて,履修証明プログラムは履修証明プログラム,それとは別に,今,小西さんがおっしゃっているように,例えば,一定の専門職の分野でそういうことが必要であれば,そのものを少し制度的に整えて単位化するということもあり得ると思います。
だから,履修証明プログラムと単位化とちょっと分けて考えてから,後からその組み合わせを考えるとしたほうがいいと思います。

【有信部会長】 ということもあるということで。つまり,問題は,単位化するかしないかという問題の部分と,それから,単位化されたものを引き続き別の場所で単位として有効に活用できるかどうかという問題と,2つあるという話ですよね。だから,単位として認める認めないという部分の区分をどういう形で取るか,ある意味,単位として認めるか認めないかというのは,大学の裁量幅の中で決める部分でもあるので,そこの議論をあまり一般化しないほうがいいというところもある。
これ,先ほども申し上げましたように,問題はそんなに単純な話ではないので,少し論点を整理してもらって,引き続き議論をするということにしていければと思います。
小西先生,よろしいでしょうか。

【小西委員】 引き続きご検討をよろしくお願いいたします。

【有信部会長】 それでは,次に,議題(5)ということで,「科学技術ワクワク挑戦チーム博士進学ワーキンググループの活動報告および省内若手有志からの問題提起について」ということで,文部科学省内の若手有志職員が中心となった取組とのことですが,この内容を御紹介いただいた後,意見交換を行いたいと思います。
それでは,紹介をお願いします。

【池田係員】 初めまして。よろしくお願いします。研究振興局基礎研究推進室の池田と申します。本日は大変貴重なお時間を頂きまして,部会長はじめ委員の皆様,そして,大学振興課の皆様,深く御礼申し上げます。
今回は,科学技術ワクワク挑戦チームの博士進学ワーキンググループの活動報告ということで,1つ,僭越ながら発表させていただきたいと思います。
それでは,まず3ページ目を御覧ください。
科学技術ワクワク挑戦チームについては,政策的に重要でありながら,これまで十分に検討が進められていなかった局横断的な課題について,中長期的な視点の下に,若手の有志職員が中心となって所掌にとらわれずに自由闊達な議論をしていくというチームが設置されておりまして,本年の7月末に大臣へのプレゼンを実施し,8月末に報告書というものが取りまとまったところです。
そのうち,1つ,「博士課程・アカデミアを意欲ある若手が夢を持って活躍できる場に」というタイトルで立ち上がっているのが,この博士進学ワーキンググループということで,今回はこの取組内容について発表した後,また御意見を頂ければと思います。
4ページ目です。我々,チーム内,10人ぐらいですけれども,そのうち4~5名が博士の進学者ということで,現場感覚に照らしてどういったことができるかということを考えてきました。そして,博士進学というものを盛り上げていくためには,まずは博士進学に係るモチベーションというものをイメージしたときに,研究意欲はあるのだけれども,博士になかなか進もうとしないというところを,1つ,“博士進学ポテンシャル層”ということで,ターゲットとして置いております。こういった学生が博士に進学しない理由として,実際に博士の姿だとか,若手の研究者の姿を見た上で,そこに影響されてモチベーションが下がっているような状況というのもあるのではないかということで,検討を進めてきました。
5ページ目です。もちろん,博士進学・アカデミア志向に影響する要因としては,目下検討がされている,お金がない,つまり,経済的支援が不足していること。そして,職がない,つまり,キャリアパスや給与の問題がありますけれども,これ以外にも,そもそも学生が博士進学する最大の理由は,研究活動が楽しいからであるというところで,その楽しさを奪っているような要因というものが1つ大事なのではなかろうかということで,我々,現場の感覚にも照らし合わせまして,その他の要因として,環境や精神面の問題,先輩・上司の姿や研究指導,研究室の在り方とか人間関係,アカハラ・パワハラ,ブラック研究室といった,なかなか定量化しづらく,検討の俎上に上がってこないけれども,大事なもの,ということを考えてきました。お金と職,そして,こういったその他の問題を合わせて検討していくことによって,学生の満足度や教育効果の上昇を狙っていきたいと考えております。
そういったその他の要因として,ひとつ大事ではなかろうかと思っているのが,研究室という環境において行われていることです。アンケートにはなかなか出てこないものもあるのですけれども,1つ,博士課程で不満だったことと言えば,外部との接点が少なく閉鎖的であったとか,教員の指導が不十分であったりとか,あとは,民間に行った博士人材からは,民間が大学よりも勝る点として,上司・指導者・同僚や,研究室の環境といったものが指摘されています。
やはり学生が一番長い時間を大学院で費やす場所は間違いなく研究室であり,そこは人生を左右する場所であるということ,かつ,民間の企業からの御指摘では,博士学生のレベルというのは,学生が所属していた研究室によって相当違うといった意見もあります。
こういったことで,教育効果を高める上でも,博士進学を考えるに当たり,研究室という環境がいかなる場所かということを議題として検討してはどうかと思っております。
7ページ目です。これはケースの一つではあるものの,例えば,悪しき研究室環境の例として,「ブラック研究室」という言葉が最近取り沙汰されておりまして,例えば,適切な研究指導をしないパワハラ・ネグレクト系とか,ラボ運営に問題があるとか,オーバードクターが大量にいるとか,そんな問題がたくさんありますよと。
その中で,例えば,研究室の実態を入る前に知ることは難しいであるとか,研究不正の温床になるとか,そもそも研究者が教育者としての資質が評価対象になっていないのではないかとか,あとは,いろんな賞を得たりだとか,大量の研究費を取っている優秀な研究者の研究室がむしろブラック化しやすいのではないかといった話も,ネット上の意見としては挙がっています。
例えば,ここには書いていないですけれども,インターネット上の検索数を調べますと,「DC1」や「博士 就職」といったキーワードと引けを取らないぐらい,「ブラック研究室」というのが実はインターネット上で検索されています。従って,やはりそういったところもお金と職の要素と一緒に考えていく必要があるだろうと思っております。
そして,8ページ目,見落とされがちな観点として,やはり研究活動,こちらは科技3局が主に見ているもの。それと教育活動,こちらは高等局が見ているもの。そこの間に落ちている研究室という環境について,1つ,私たちのほうでアプローチできないかということで検討を進めてまいりました。
こういった問題意識の下,9ページ目,現場との意見交換,実態把握と課題整理を行ってきました。特に2ポツ目,大学院生を含む,20~30代の若手によるワークショップを実施しました。これはオンラインで実施したのですけれども,56名ぐらいの産官学の若手を集めまして,そのうち半分が博士号取得者ということで,「あの日夢見たラボの実態を僕達はまだ知らない。」というテーマで,研究室の実態はどうなっているんだという議論をしたということです。
現場の当事者目線でも,やはりこういった研究室の環境は重要という声をいただきまして,研究室で起きていることの実態やあるべき研究室の姿などについてワークショップなどを通じて議論しまして,10ページ目にあるところ,こちら大臣のプレゼン時点の資料でございますけれども,幾つかポイントをまとめたという状況です。
11ページ目以降が,本取組の今後の展開の説明になっております。
12ページ目に示しておりますのは,本ワーキンググループを皮切りとして,省内の有志で,せっかくであれば,こういった検討を引き続き行っていけるような体制を組もうということになっております。
1つ考えておりますのは,大学における研究室の横のつながり,学生間の横のつながりをつくっていくために,オンラインのプラットフォーム,先ほどお伝えしたワークショップみたいなものを今後も継続的に続けていくことによって,今までなかなかアプローチできなかった現場の大学院生や,一握りのトップ研究者ではない若手研究者などのボリューム層との議論を通じて,しっかりと政策に反映していくことや,提言にしていくことができればなと思っております。
そして,13ページ目,こちらを今回のメインの議題にしていただければと思うのですが,まずは,学生が生き生きと研究を行い,求められる,あるいは,学生自身が求める能力を伸ばせる研究室環境についてどう考えるかと。
1つ重要視しているのは,研究室の環境の改善に向けて,研究の指導力の質保証や,その評価,かつインセンティブ付与をどうやって仕組みとして入れていくかということは必要なのではないかと考えています。
私自身は,研究室の形は,分野も含めていろいろあっていいと思っていて,あまり型にはめ過ぎる必要はないと思っているのですけれども,やはりそれがしっかりと見える化されて,学生がそれを見て考えた上で,自分の行きたい研究室に行くことが必要だと思っていまして,やはりそこの中で最低限求められるべき指導者としての質の担保というものは必要だと考えています。
もう1点,下のところで,良い研究室の選び方・選ばれ方とは,といった観点が必要かと思っています。この中では,例えば,下線を引いておりますけれども,学生が主体となり,それぞれに合った良い指導者・研究室が選ばれて,そうではないような指導者・研究室が淘汰されていくような仕組みというものがどうにか構築できないかと考えています。
そのためには,研究室移動の円滑化とか,情報や時間を取って研究室を選ぶための場所とか情報を提供していくとか,あとは,学生の意識を変えていく必要もあるかもしれないと考えております。
こういった問題意識に基づきまして,これまでヒアリングやワークショップ,我々の議論の中で提案されてきたものの例としては,例えば,研究指導に係るFaculty Developmentといったものは果たして現場でどれだけ導入されているのだろうかと,こういったものがあってもいいのではなかろうか。
加えて,良い教員へのインセンティブ設計として,研究室に所属する学生数の下限を撤廃していくべきではないか。つまり,行きたくないような研究室にどうしても行かざるを得ないような状況が一部の大学では起きてしまっていると。やはりこれは最低限突破していく必要があるのではないか。そして,これと一緒に,学生の研究室を選ぶような目線というものを一緒に培っていく必要があるのではないかと考えています。
また,教員の研究指導力や研究室の運営力,こういったものをどう評価していくかといったことを指標として検討したり,こういった指標に基づいて,例えば,研究指導力や研究室の運営力に係るファンディングとか,フェローシップといったものが創設されてもいいのではないかというようなことを,我々としては考えているところです。
そういった現場の学生や若手の意見としては,先ほどのプラットフォームを通じていろいろ意見を聞いていきたいと思っているのですけれども,ここでは,委員の皆様から,組織としての考え方など,大所高所からのコメントを頂ければと思っております。
その後ろ2ページ分ですけれども,こちらは御参考までに,ほかの検討中事項も,せっかくなので御紹介させていただきます。
1つは,博士課程進学の魅力をどう伝えていくかということです。こちらの部会でも,過去に議論になっていると思いますけれども,憧れを抱くような先輩・上司・研究者像というものをいかに示していくかというところなのですが。ただ,ごく一部の成功者,きらびやかなスター選手ばっかりをあまり取り沙汰してしまうと,やはり学生目線,今までのギャップが相当大きくて,自分は向いていないのではないかとか,高すぎる理想像との対比による自信を喪失してしまうということも考えられるということは,ヒアリングの中で言われてきたことです。
例えば,「様々な苦悩の末,必ずしも求めていた環境でなくても,研究者として独り立ちしている者」とか,あとは,「学位がもし取れなくても,そういった研究活動で培った能力を活かしつつ,社会で活躍している者」といった,等身大の姿といったものを発信していくことが重要であって,これによって若手は,博士進学等に対する心理的な安全性,自分でも研究者になれるのではないかという自信や,学位が取れなくても最悪死にませんというマインドを確保できて,よりリアリティのあるビジョンを描けるようになるのではないかと考えております。
もう1点,こちらも御参考になりますけれども,我々,今から考えていきたいと思っているのは,果たして社会が求める能力と博士人材が備えている能力というのは本当にミスマッチなんですかと。世間では,民間企業が求める能力と大学院が育んでいる能力はミスマッチとか言われていますけれども,実は,博士人材の能力というのは,もう国においてもオーバースペックになってしまっているのではないですかということを1つ疑問として持っているということ。つまり,博士人材が使えないのではなくて,そういった人材をまだうまく使いこなせていない社会なのではないかといった価値観に転換はできませんかということを考えています。
例えば,専門知以外の普遍的なスキルとして求められている「知の横展開」とか,裾野の広さみたいな要素は,実は,例えばライフサイエンス系であれば,近年の研究活動の高度化,デジタルPCRとか,次世代シーケンサーとかを使っていくうちに,プログラミングとか統計学といったものは自ずと必要になってきます。こういったことで,幅の広い知識というものは,ひと昔前と比べて,むしろ一層養われている可能性はないでしょうかと。もし,こういったニーズと能力が既にマッチングできる状況にあるのかもしれないとすれば,どこに問題があるか。それは,先ほど長期有給インターンシップの話もありましたが,採用活動やその面接の在り方といったところに1つ何か突破口が見出せないかということで,例えば,博士課程学生の高度な探究能力を評価できるような採用形態・評価方法といったものを,プラットフォームなどを通じて現場と共に検討しつつ,博士人材の価値とともに,そういった金脈の人材というものをどう見つけていくかといったことを,アイデアとして広く世の中に提案できないかといったことを1つ検討しております。
こちら2つのお話しはあくまで御紹介となっておりまして,今回の議題としては,13ページにお示しさせていただいておりまして,先ほどお伝えさせていただきました研究室環境の改善に向けた,研究指導力の質保証やその評価,及び研究室の選び方として,学生が主体となって,良い研究室・研究者が選べていくためには,どういう仕組みが必要か。その中で,FDの導入であるとか,学生数の加減の撤廃とか,そういった観点で,もし私たちの考え方,こういったところがおかしいとか,それはぜひやっておくべきだとかいうのがあれば,御議論いただいて,御意見も頂ければと思います。ぜひよろしくお願いいたします。
以上です。

【有信部会長】 御説明ありがとうございました。
それでは,質問,御意見,特に最後のポイントについての御意見等ありましたら,よろしくお願いします。
では,まず波多野委員,村田委員,それから,その次は佐久間委員,堀切川委員,その順番でお願いします。

【波多野委員】 よろしいですか。波多野でございます。
池田さん,ありがとうございます。博士の重要な問題について,若い方々が現場目線で分析いただきまして,ありがとうございます。
一方で,GCOE,リーディング,卓越大学院などで,蛸壺的な研究室での教育は課題だから,グローバルな広い視野と俯瞰力を涵養することを目的とした博士人材の教育プログラムを実施し,もう10年以上経ちます。前職で企業が長かった私も感じるですが,教員も努力しています。むしろ企業が,前半の議論にありましたように,またご説明にもございましたように,博士人材をうまく使いこなしていない,またインセンティブをつけない,など根本的な課題が残っています。そういう課題があるとしても,大学としては何をするべきでしょうか?その辺を教えていただければと思います。
本日の会議資料の補足資料としてリーディングの分析結果がございますが,相当努力は大学はしていて,効果も数値として表れているきつつあります。しかし,まだそれが全大学に行き渡らない。リーディングも数%以下の博士学生が対象でしたので,それをどうしたらよろしいかということを教えていただければと思います。

【有信部会長】 何か意見ありますか。

【池田係員】 ありがとうございます。大変私も不勉強なところがあって,この場で発表しているのも大変恐縮なんですけれども。
もちろん,リーディングというものは,私の周りのワーキンググループのメンバーでも,実はリーディング出身の方がいらっしゃいまして,こういうのも良かったという声もありつつも,実は,大学によってそれが成功だった,失敗だという評価が分かれているというところも正直聞いております。
1つ我々の考えとしては,カリキュラムやコースワークには落とし切れない問題というのが相当あるのではないかという気はしています。大学とか部局全体の取組として,そういうコースワーク化していくというのももちろん必要なのですけれども,やはり研究室の中でどういった研究活動をしていて,その研究活動の中で何を培っていくかというところ,こういったところをどういうふうに考えていくかというところが,まず観点として,もう一歩踏み込んだ議論が必要なのではないかなと私は考えております。

【有信部会長】 個別の研究室という意味ですね。

【池田係員】 おっしゃるとおりです。
そういった意味では,例えば,学生が必要とする能力というのは多種多様であって,社会が求めるニーズも多種多様な中で,部局という単位で一つの能力を活かすというよりは,いろんな研究室にいろんな能力を育む環境があって,その中から,学生が自分に必要な能力を選んで,自分に合った研究室に入っていくという姿が多分一番いいのかなと思っています。そうした考え方の中で,どうしても部局や大学単位や学科単位でカリキュラムを組むことに対しては,どうしても粒度としての限界があるのかなというところも,考え方として持っています。
以上です。

【波多野委員】 研究室サイドで考えていくということですか。

【池田係員】 おっしゃるとおりです。

【波多野委員】 長くなり申し訳ございませんが,お恥ずかしながら私の研究室を例として申し上げます。MITで博士を取得した方が助教授に着任し,コロナ禍でオンラインが進んだのをきっかけに,研究室の情報共有の仕方を変えました。あるツールを使って,学生各々が考えている途中のことも全部共有するようにしています。研究室の雰囲気が変わってきまして,学生たちが今何を考え,悩んでいるのかがリアルに把握でき,その変化が目に見えて分かるようになってきました。今後はこれを学内に広げていきたいと考えています,その際,MITなどの海外の大学は進んでいると実感しました。自分のこれまでの反省も含めて,ご紹介しました。

【有信部会長】 ありがとうございました。
では,村田委員,よろしくお願いします。

【村田副部会長】 ありがとうございました。非常に興味深い御発表,ありがとうございました。
私,大きく2点質問があります。細かくは3点ですが。
まず1点目は,最後のほうでおっしゃった,今のドクターの方や博士課程ではオーバースペックではないかと。実はそうではなくて,むしろそこが問題なのかなと思っていまして。理系の場合は,大学院,特に博士課程を出た人をどういうふうに活かしていくかということ,文系の場合は修士をどう活かしていくかというのは,この大学院部会の1つの課題だと思うんですが。そういう意味では,日本の企業がそれを使えていないと思うんですね。ですから,そこは,やはりさっき最後におっしゃったところが1つ大きなポイントではないのかなというのは思います。
2つ目は,今,波多野委員も御指摘になったことをお聞きしたかったんですけれども,今,波多野委員のお話を聞いていて,ちょっと分かったような気がしたんですが。研究室の在り方,日本独特のパワハラだとかアカハラだというのは,恐らくアメリカなんかがうまくいっているんだとすれば,どういうやり方をしているのか,ちょっとその辺を調べていただいて,やっぱり比較しながら,こうだというふうにしたほうが説得性があるかなと思うんですね。
最後,1つだけ。これはコメントなんですけれども,ブラック研究室という言葉が使われているんですけれども,よく言われるのはブラック企業なんですね。名前はそこから取られたんだと思うんですが。ブラック企業の場合,労働基準法に違反をしていて,ブラック企業というふうに言われているんですが,我々,研究者というのは,裁量労働制を取っているわけで,正直言って,同じように労働基準法に従っていたら研究なんてできません。睡眠時間4~5時間で博士号を獲得とか,博士論文を書くとかは当たり前なんで,それをやっちゃったからブラック研究室になっちゃうと難しいと思うんですよね。その辺の言葉の使い方,厳しい先生がブラックではないと思いますから,そことの言葉の使い方だけは気をつけられたほうがいいのかなと思いました。
以上です。

【有信部会長】 今のご発言に何か意見ありますか。オーバースペックだという点だとか。

【池田係員】 海外の例の比較というのは,私たちも不勉強な点がありまして,ぜひ,そのあたりも見ていきたいと思います。
ただ,海外も実はブラックになっているというところは,正直声としては入ってきています。ただ,その中でもやっぱり日本が飛び抜けているのではないのかという声も聞いています。研究不正とか研究費不正といったことに繋がりかねない,変な文化がどうしてもずっと脈々受け継がれてきてしまうような風土が日本は生じやすいのではないかといった意見も聞いておりまして,そのあたりは私たちのほうでも分析させていただければと思います。
3つ目の言葉の使い方,ブラック企業,労基法とか,それはまさにおっしゃるとおりで,先ほどのお伝えした報告書の中でも,実は,ブラック研究室と書こうと思ったんですけれども,やはりそういったところが問題になって,ブラック研究室と書いたところで,それをどうやって定義するのという話になって,難しいなと。ただ,それを世間一般の関心事項として,キーワードとして抽出してくるときには,1つ根っこになる言葉として,ブラック研究室というキーワードがあるかなと思っています。
必ずしも研究時間が長すぎるからブラックであるということではなくて,パワハラに見えるけれども,実はそれを学生が喜んでいればそれは良くて,逆に,ネグレクト系,全く論文の査読とか,論文に対して卒業できるような指導をしないという部分も,極論ですけど,あるというふうに聞いておりますので,そういった点で言えば,相当黒に近いブラック研究室というものについては,我々としては……。

【村田副部会長】 いや,それをブラックと呼んではだめなので,アカハラ・パワハラと呼ぶべきです。

【有信部会長】 いや,だから,ブラックという言葉の使い方が,その辺も気をつけてくださいと。

【池田係員】 言葉の使い方のところはおっしゃるとおりです。

【有信部会長】 すみません,どんどん時間がショートしてきて。

【村田副部会長】 すみません。

【有信部会長】 いえ,私が悪いので,今のところ,佐久間委員,堀切川委員,それから,塚本委員,川端委員が手を挙げています。申し訳ありません,時間を考えつつ御発言いただければと思います。
じゃ,佐久間委員,堀切川委員,塚本委員,それから,川端委員の順番でよろしくお願いします。

【佐久間委員】 佐久間です。
教員には,研究者としての役割ももちろんあるわけですけれども,指導者あるいは教育者という役割もあるので,特に大学院への進学を増やすという観点からは,指導者として,あるいは教育者としての質保証をどうするのかということが非常に課題だと思います。
資料2-1にもありますように,研究力強化という点側面では,最近,いろいろな政策が打ち出されています。そういう面も大事であることは言うまでもありませんが,研究者としての側面ばかりが強調されているような気もしないではありません。例えば,バイアウトという話もありましたけれども,バイアウトする対象には教育も入っています。それについては,大学内の会議でも,いかがなものかという意見が理系の先生を含めてありました。あの先生の授業を聴きたいと思って大学院に入ってみたら,その先生の授業はなかった,というのでは,学生を惹きつけることはできないと思います。
その反面,たとえ研究力のある教員でも,指導力や教育力に欠けているようでは困ります。ですから,教育力・指導力をどう担保していくかということが重要ですが,研究のほうは業績として出てしまうので,非常に明快なのに対して,教育あるいは指導ということに関しては,なかなか評価が難しいところがありますし,また,教員による指導や教育の実態については,まだまだアンタッチャブルなところが残っています。そういう難しさはありますが,先ほど波多野委員からもありましたけれども,教育や学生指導における経験を共有するとか,そういった取組を通して,大学院教育の充実や改善を図っていくことが必要なのではないか,そしてその中で,指導者,教育者としての教員の役割についてもあらためて考えていかないといけないのではないかと思いました。
ちょっと時間が限られていますので,以上です。

【有信部会長】 ありがとうございました。
それでは,堀切川委員,よろしく。

【堀切川委員】 文部科学省の若手有志の皆さんが,本質的な問題を取り上げて,いい問題提起をされたと思います。やはり若手の意見を聞くことは大事だなと思った次第です。
取り上げた問題提起の内容についてはおおむね賛成です。個人的なコメントを述べたいと思います。
1つ目ですが,ブラックな研究室はあるかないかと問われたら,大学界を見渡せば,絶対にあると多くの大学人が思っていると思います。表に出して言わないだけです。
本来,大学院の研究室は,人気がないところは学生が来なくなってしまい,自然消滅していくことを許せば,ブラック研究室は消えていくので,それがよいと私は昔から思ってきております。
ただ,「良い研究室,悪い研究室」というゼロイチ信号的な捉え方というのはちょっと危険なところがあります。私の考えでは,「良い,悪い」というよりは「合う,合わない」の方が実体に即しており,「合う研究室,合わない研究室」という切り口で考えたほうがいいと思います。
簡単に言うと,結婚は「合う,合わない」が重要だというのと同じで,研究室と学生の相性というのがあると思っていて,先生から学生をみても,学生から先生をみても,実は,「合う,合わない」という視点でお互いに思っていたりすることが多いのではないかと思います。「合う,合わない」で論点整理されて,合う研究室を選ぶにはどうしたらいいかというのを工夫していくことが大事かなと思いました。
それから,合わない研究室に入ってしまう大学院生も結構いるので,入ってみないと分からないところはどうしても残ります。そのときは,研究室を変えられる制度を積極的に導入する必要があると私は考えています。今,私のいる組織では随分前からそれを実行しています。それは,悪い研究室だからではなくて,合わない研究室だからということで,教員側のコンセンサスが得られており,ここは大事かなと思いました。
2つ目ですが,社会が博士課程を出た人間をうまく使えていないのではないかという論点については賛成で,何年か前に私も同じような発言をこの席でいたしました。ドクターを出た学生が使えないと産業界からよく言われますが,使いこなせる会社,部署が少ないのではないか,というのが私の考えであります。そのため,バブル経済がはじけてから日本の産業は,自動車産業以外全然復活できていないと思います。すなわち,ドクターが使えるレベルの会社すらなかったのではないか,というような発言を以前はしました。最近は性格がマイルドになりましたので,企業も大学院もお互いに考えていこうというスタンスでいくと,今日,途中で議論された「ジョブ型研究インターンシップ」こういう制度を利用して,産業界と大学側がお互いに理解して,学生が喜ばれて就職していけるような制度というのが大事だと思います。
ちなみに,そのジョブ型研究インターンシップの議論のときに言うべきでしたが,先行してやっておられる大学院については,いい話だけではなくて,出てきた問題点とか課題もぜひヒアリングしていただいて,それをもとにいい制度設計をしていけば,社会が使えるドクターという課題も一緒に解決できるかなと思いました。
以上です。

【有信部会長】 ありがとうございました。
それでは,塚本委員,お願いします。

【塚本委員】 ありがとうございます。ごくごく簡単にコメントいたします。
先ほどから出ておりますジョブ型の件ですが,外資系の企業では職種ごとにジョブが定義してあって,等級ごとに全部何ができるべきというのが規定されています。従いまして,博士人材とかですと,中途扱いのエグゼクティブハイヤリング等になることもよくあります。日本社会が全体としてもう少しジョブ型に移行していく部分があると,博士人材はより就職しやすくなり,活躍しやすくなるのではないかと思います。
以上です。ありがとうございました。

【有信部会長】 それでは,最後に川端委員,よろしく。

【川端委員】 ワクワクの前に,5年ぐらい前にキラキラというので,同じような学生目線のやつをやったことがあるので,その資料をお送りします。参考にしていただければ。

【有信部会長】 ありがとうございます。
すみません,私の不手際で,もう時間をオーバーしてしまいました。後に予定のある方々もおられると思います。誠に申し訳ありませんでした。
今回の意見も踏まえて,引き続き検討をよろしくお願いしたいと思っています。
本日の議題は,これで全てであります。
最後に,事務局から連絡事項等をお願いします。

【西大学改革推進室長】 本日も活発な御議論を頂きまして,誠にありがとうございました。
次回の開催につきましては,冬頃を予定しておりますが,後日,日程調整の御連絡を差し上げます。
また,本日,時間の都合上,特に最後の若手のテーマなど深く議論ができませんでしたが,発表者はまだ入省3年目ぐらいの本当に若手でございまして,こういった意見を政策に反映したりとか,政策にならないところをうまく拾っていったりということも,引き続き大事なことだと思っております。なので,ぜひ育てるという意味も含めまして,御発言できなかった先生方も,後ほど事務局を通して,本日発表した池田の連絡先とかを御紹介させていただいて,引き続きコミュニケーションさせていただければと思います。
以上でございます。どうもありがとうございました。

【有信部会長】 本日も,どうもいろいろ活発な議論をありがとうございました。
それでは,これで閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。

── 了 ──
 

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