大学院部会(第97回) 議事要旨

1.日時

令和2年5月7日(木曜日)~令和2年5月13日(水曜日)

2.場所

開催方法:書面審議

3.議題

  1. 大学院設置基準の一部を改正する省令案について

4.出席者

委員

(書面による意見聴取、議決を行った委員)
(部会長)  有信睦弘部会長
(副部会長) 村田治副部会長
(臨時委員) 池尾恭一、大島まり、加納敏行、川端和重、神成文彦、小長谷有紀、小西範幸、佐久間淳一、迫田雷蔵、髙橋修一郎、高橋真木子、塚本恵、沼上幹、波多野睦子、濱中淳子、福留東土、堀切川一男、湊長博の各委員

5.議事要旨

池尾委員:現在の新型コロナ危機をきっかけに、大学院においてもオンライン授業が急速に広がり、そのノウハウも急速に蓄積されつつあります。大学院でのオンライン授業は、おそらく新型コロナ危機収束後も、残っていくと考えるのが自然です。そのため、今後は、他大学院における科目履修や入学前の科目履修の地理的範囲が、国内外を含め急速に拡大するものと思われます。こうした状況を踏まえると、今後は、単位互換や単位認定においてさらなる柔軟性を促進する手立てが必要だと考えます。

大島委員:パブリックコメントにありましたような、他大学院での履修した授業科目の単位認定に試験を課す必要はないかと思います。しかし、ご指摘のように大学院間でレベルが異なりますので、各大学院にて適切に審査をしていただく必要はあると思います。しかし、「資料1-2大学院設置基準の一部を改正する省令案(概要)」では、単位互換について数字的なことのみの記載になっていて、質的なことの議論がなされていないとの印象を受けました。単位互換について適切な審査を経た上であることをどこかに記述いただいた方がよいのではないかと思います。各大学院への周知については、お願いを致します。
 
事務局:資料1-2のp.1「改正概要」に、条文にならって「教育上有益と認めるときは」と追記を行います。

加納委員:【資料1-1パブリックコメントの結果について(単位互換等)について】パブコメ二つ目の質問(意見)は、省令改正本質にかかわるものだと思います。本来この省令の狙い(基本的な考え方)は「今後グローバル社会を先導する人材の育成が重要で、その人材源となるのが博士学位取得者である。人材源の絶対数(母数)も増大に向け、少子高齢化が進む中でリカレント教育による社会人の学位取得が重要な役割を担う」と認識していますが合っていますでしょうか?
【大学院設置基準の一部を改正する省令案について】数字だけが独り歩きし、本来の目的に沿わない運用にならないような仕組み(単なる履修期間の短縮や取得単位削減のためだけに用いられることのないような大学における審議の仕組み)が質の高い学位取得者育成のためにも必要かと思います。(各大学院の教授会がその役割を担うことになると思いますが)
また、前述、パブリックコメントの二つ目の質問にも関連しますが、本省令の改正の狙いについて「概要」の背景あるいは改正概要の冒頭に記載しておくというのはいかがでしょうか?
 
事務局:資料1-1パブリックコメントの二つ目の質問については、御認識のとおりです。
また2つ目の御意見を踏まえまして、資料1-2のp.1「背景 現状・課題」の1ポツ目に追記を行います。

川端委員:大学院(修士課程、博士一貫)単位認定数の拡大や早期修了については、賛成します。
私学を中心に活用される部分は大きいのではと思います。社会人が活用しやすいようにわかりやすいアドミッションポリシーの公開等付帯部分が必要になると思います。私立もそうでしょうが国立大に関しては、現在博士一貫(5年間)の学位プログラムの構築が行われつつありますので、そこでの社会人入学の活用が有効になると思います。
 
事務局:「付帯部分」については、「さらなる取組」として、施行通知において「リカレント教育の実施にあたっては、教育内容の広報の工夫や学修成果・学習量の可視化等も含めて検討することが期待される」等、昨年度の本部会におけるリカレント教育充実に係る議論を踏まえて促してまいりたいと思います。 
 
神成委員:大学院入学前に取得した単位は、すでに他の大学院において学位修了に必要な単位として登録した(使用済み)単位でも構わないかどうかは記載がないので、構わないという理解でよろしいでしょうか?ルール的には、すでに入学前に修了した修士課程の単位を認定すると、30単位中最大15単位がすでに取得済みになります。もちろん、認定するかどうかは大学院がその内容と成績から決めることになります。個人的には使用済みでも構わないと思います。
単位先取りおよび他大学院科目認定により2つめの大学院の短縮ができるのであれば、国外大学院とのDouble Degree制度を認めている現状に鑑みて、国内の2つの研究科でのDouble Degree制度を認めるべきではないでしょうか。現状では学籍が国内の1つの研究科・専攻にしか置けないために、2つの分野の修士課程を3年で並行して学ぶようなことができず、先取りとか短縮とかで対応しているのは、分野の実質的融合を妨げています。また、形式的な入試を間に入れなくてはなりません。修士論文研究もカスケードに実施することになります。カリキュラムや学費は国外大学院とのDouble Degree制度のように各大学院の設計に任せればいいです。
 
事務局:1点目について、御認識のとおり、入学前に他の大学院において修了に必要な単位として登録した単位であっても、当該大学院において適当と判断されれば、当該大学院において修得したものとみなすことができます。
2点目について、いわゆるDouble Degreeは法令上制度として明確に定義されたものではなく、今回の制度改正や、昨年創設された研究科等連携課程等も活用の上で、内容面での充実を図っていただきたいと考えているところです。また、今回は学生定員、課程と学位の関係等については議論できていないため、当面は従前のように運用での対応とせざるを得ないものと考えております。
  
小長谷委員:大学院で社会人のリカレント教育を担当したことがあります。当時は、事例が少なかったので、それゆえに返って自由に対応できた面もあったかもしれません。
このように制度改革されることは良いことだと思います。大学関係者のみならず、一般社会における認識が進むよう、引き続きご尽力いただければありがたく存じます。
  
小西委員:【入学前の既修得単位等を勘案した在学期間の短縮について】今回の当該省令の改正によって、博士課程(5年一貫)では、在学期間の短縮と早期修了を合わせることで、最短の在学期間が、修士課程(博士前期課程含む)と博士後期課程を合わせたものより短くなってしまうのではないでしょうか?「博士後期課程については、修了要件上、単位の修得が求められていないため、在学期間の短縮は行うことができません。」とありますが、実際には、単位化をしているところが多いので、この場合には修了要件として認めるようにして、 最短の在学期間を同じにした方が良いのではないでしょうか。
 
事務局:博士後期課程については、修了要件上、単位の修得が求められていないため、『既修得単位等を活用しての』在学期間の短縮は行うことができないこととなります。博士課程(5年一貫)で、在学期間の短縮と早期修了を合わせると、実際に在学する期間は最短で2年となります。一方、修士課程と博士後期課程について、修士課程で在学期間の短縮を行い、博士後期課程を早期修了した場合、実際に在学する期間は、修士課程1年+博士後期課程1年=2年となりますので、最短の在学期間は同じとなります。また、博士後期課程の修了要件における単位については、各大学の判断で行われているものですので、制度として一元的に今回の改正で扱うものではないと考えられます。ただし、入学前の既修得単位の認定については、博士後期課程についても各大学の判断で行うことができます。
 
小西委員:分かりました。今回の改正案では、博士課程(5年一貫)での在学期間の短縮と早期修了を合わせることで、修士課程1年+博士後期課程1年=2年と、同じにすることが趣旨だったのですね。ご説明ありがとうございました。
 
佐久間委員:省令案そのものについては、特に意見はございません。
資料に関しては、若干わかりにくい部分があるのではないかと思いました。
【資料1-2 大学院設置基準の一部を改正する省令案(概要)3枚目について】修士課程の表で、「在学期間の短縮&早期修了」、「在学期間の短縮&1年コース」について、「実際に在学する期間」の欄に「少なくとも1年以上在学するものとする」とあるのは、意図は分かるものの、特に表の上部との関係でわかりにくいと思います。この欄については、単に「1」としておいて、注記として、例えば、「少なくとも1年以上在学するものとなっていることから短縮はない」とした方が良いのではないでしょうか。
それからこれは単なる疑問ですが、在学期間の短縮に関して、入学前に修得した単位に、ことさら「入学資格を有した後、修得したものに限る」という限定がついているのは、入学資格を有していなくても修得できる単位があるということなのでしょうか。ご教示いただければ幸いです。
 
事務局:1点目について、当該箇所を修正します。在学期間の短縮は「1年を超えない範囲」で、早期修了は「1年以上の在学」となりますので、例えば、在学期間の短縮を0.5年行い、かつ1.5年以上の在学での早期修了の場合、両者を合わせて実際の在学期間は1年となります。そのため、「短縮はない」とは言い切れないため、注記部分は「少なくとも1年以上在学するものとする」としています。
2点目について、例えば、科目等履修生で大学院入学資格を持たない者や、学部生が大学院の授業科目を受講し単位を修得する場合(先取り履修)が考えられます。なお、「入学資格を有した後、修得したものに限る」という限定については、学部や専門職大学院においても同様の扱いとしています。
 
高橋(真)委員:【資料1-1 パブコメ結果について】リカレント教育は、今後の日本の大学教育のあり方において、大切な話題だと思われますが、意見数が少ないのは、大学セクタの関係者の関心が薄いとも考えられます。新型コロナウイルス対策で、大学は対応に奔走した時期であり仕方がなかったかもしれませんが、今後の課題として、広く多様な建設的な意見があつまるような工夫も必要ではないでしょうか。(資料を読みこなすにはそれなりの基礎知識が必要だと思われ、そこがハードルを挙げているとも思われます。何か工夫はできないでしょうか。)
また、最後の誤記は「主な意見」として掲載しなくても良いのではないか(よほど、他に意見がない、とも取られます。)
 
事務局:過去の学校教育法や大学設置基準等の改正に係るパブリックコメントについても、意見数は少ないため、本部会にお諮りする資料含めて、今後、見せ方については工夫を検討していきます。また、誤記については、御意見を踏まえて修正を行った点ですので、明記した方が良いと考えております。
 
波多野委員:パブリックコメント(このコロナ禍で多くの意見がいただけませんでしたが)及び資料1-2につきましては異論ございません。
5月20日に大学分科会に諮問されるご予定と伺っています。
コロナ禍、アフターコロナの大学院教育のあるべき姿として今回の「大学院設置基準の一部を改正する省令」が非常に重要になると考えます。オンライン教育の加速との相乗効果で①「仕事等が忙しく時間の余裕がない」が制約であったリカレント教育②地理的な制約で進まなかった国際的化や海外の大学との協定が加速・拡大すると期待します。それに対応できる、よりフレキシブルで、かつ迅速に変更・修正できる方策が今後も重要と思います。
  
堀切川委員:他大学院の単位互換及び入学前の既修得単位の認定の柔軟化に関して、以前の大学院部会でご説明いただき有益な議論を行った内容に基づいたご提案であり、大学院設置基準の一部を改正する省令案に賛成いたします。科目等履修生制度の魅力がさらに増して、より社会に広がっていくことにより、大学院におけるリカレント教育がさらに推進されてゆくことを願っております。
  
※委員からの意見を踏まえ資料1-2’のとおり修正を行った上で、本改正案について議決を行い、了承された。
この他、有信部会長、村田副部会長、迫田委員、髙橋(修)委員、塚本委員、沼上委員、濱中委員、福留委員、湊委員より御意見なしの御連絡をいただきました。

 

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