大学院部会(第96回) 議事録

1.日時

令和2年1月8日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省東館3階3F1特別会議室

3.議題

  1. 大学院修了者の賃金プレミアムについて
  2. 大学院におけるリカレント教育促進に向けた制度改正案について
  3. 世界から優秀な高度人材を惹き付けるための環境整備について
  4. その他

4.出席者

委員

(部会長)  有信睦弘部会長
(副部会長) 村田治副部会長
(臨時委員) 池尾恭一、加納敏行、川端和重、神成文彦、小長谷有紀、小西範幸、佐久間淳一、迫田雷蔵、菅裕明、髙橋修一郎、高橋真木子、田中明彦、塚本恵、波多野睦子、濱中淳子、福留東土、堀切川一男、三島良直、湊長博、宮浦千里の各委員

文部科学省

(事務局) 伯井高等教育局長、白間高等教育局私学部長、平野大臣官房審議官(総合教育政策局担当)、玉上大臣官房審議官(高等教育局及び高大接続担当)、森大臣官房審議官(高等教育局及び科学技術政策連携担当)、増子大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)、原振興企画課長、西田大学振興課長 他

5.議事録

【有信部会長】
 おはようございます。定刻になりましたので,第96回の大学院部会を開催させていただきたいと思います。御多忙の中,また,天候も怪しい中を御出席いただきまして,ありがとうございます。
 本日は,大島委員と沼上委員が御欠席と伺っています。それから,名古屋大学の高橋理事が説明含めて出席予定ですが,10時50分頃にお見えになると伺っています。ということで,よろしくお願いします。
 それでは,まず,事務局から配付資料の説明をお願いします。

【平野大学改革推進室長】
 失礼いたします。明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
 資料については,机上の議事次第のとおりでございます。資料1から資料3-2,参考資料が1と2,参考資料3から参考資料8についてはタブレットの方に入れてございます。抜けなどがある場合には,事務局までお声掛けをお願いいたします。

【有信部会長】
 それでは,議事次第をごらんください。本日は,主な議題が三つあります。
 早速,一つ目の議題に入らせていただきたいと思いますが,今まで何度か話題になりました,日本の大学院修了者の賃金プレミアムというんですかね。つまり,生涯賃金が大学院を出ると不利になるということがちまたでさんざん言われていて,これも進学希望者をディスカレッジさせていると。ただ,実態をきちんと把握をすると,そういう話ではないということで,是非有識者であります村田副部会長から説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【村田副部会長】
 おはようございます。それでは,私の方から少しお話をさせていただきます。
 お手元に資料がございます。スライドも見ていただければと思いますが,大学院教育の賃金プレミアムと内部収益率と書いております。本日の内容でございますが,まず,大学院の教育についての先行研究を幾つか御紹介をいたします。その後,大学院教育の賃金プレミアム,この定義についてまた後ほどお話をさせていただきますが,それから,大学院教育の内部収益率,これについてもお話をさせていただきます。
 では,初めに先行研究からお話をさせていただきます。次のスライドをお願いしたいと思います。先行研究が幾つか,大体10本ぐらいあるんですけれども,まず初めに,1番目,これは最後のスライドのところに全部参考文献を付けておりますので,また御関心のある方は読んでいただければと思いますが,1番,2番,3番,4番につきましては,まだデータが2007年のデータ,就業構造基本調査のデータを使っておらず,といいますのは,就業構造基本調査,後ほど言いますけれども,2007年度から新しく大学と大学院のデータが二つに分かれました。それまでは大学と大学院が一緒になっていましたので,そういった分析ができない状況でしたので,この丸1,丸2,丸3,丸4の分析はそれぞれ,そのデータを使わずに別の観点から分析をしたものです。
 まず,1番目の文献は,ある国立大学の工学部の学生につきまして,修士卒の賃金上昇率は学士卒よりも大きいという結果が出ております。
 丸2,これも,理系大学院の年収が学部卒に比べて年齢とともに大きくなるということが明らかにされています。
 丸3,これは人事のアンケートをされまして,全体の約30%で,修士卒の方が学部卒よりも,年齢とともに賃金の上がり方が大きいということが判明してございます。
 それから,丸4も同じように,学部卒と大学院卒の代替関係が顕著で,特に近年になってからは,学部卒と大学院卒だと,大学院卒の処遇プレミアムが少し下がってきていると。教育過剰,これ,教育社会学なんかでも高等教育の分野でのタームですけれども,教育過剰の可能性が指摘されているということです。
 それから,丸5あたりからは,先ほど申し上げました就業構造基本調査のデータが,大学と大学院のデータが分かれて出ましたので,そのデータを使っての実際の数量的な分析がなされています。
 2011の丸5の文献は,大学院卒の賃金プレミアム,賃金プレミアムというのは,大学卒に比べてどれだけ賃金が高いかということを示すものですが,この大学院卒の賃金プレミアムは20%ほど高い。特に女性の賃金プレミアムは男性よりも大きくて,男性の自営業者の賃金プレミアムが非常に高い。特に大学院卒でなおかつベンチャーを立ち上げる,そういった人たちの賃金プレミアムは当然のことながら非常に高くなっている。
 それから,大学院卒の場合は,これ,直感的に明らかなんですけれども,60歳を超えてからも仕事をし続けるし,賃金の低下が緩やかである。特に,大学院卒といった場合,研究者が入っているということもあって,こういうことが増えている。あるいは,民間にいても,研究分野での仕事をしている等々が考えられるかというふうに思います。
 それから,私的内部収益率が10%を超える。この内部収益率については,後ほどまた説明をさせていただきます。
 丸6の文献は,同じように大学院卒は学部卒に比べて約30%の賃金プレミアムが存在する。それから,内部収益率は,そこに書いているとおりです。
 それから,丸7は飛ばしまして,次のスライド丸8ですが,丸8につきましても,修士の内部収益率が10%,11%,それから,丸9につきましても,それぞれの収益率が,理系の大学院の収益率が最も大きく,次に学部,それから,文系の学部,そして文系の大学院,こういう順番に並んでいるというような分析です。
 それから,丸10,これが大学院卒のプレミアムは大体40%ぐらいだと。男性が若干高い。
 それから,丸11の文献ですが,特にこの文献は,設置母体だとか,それから,学部の専攻等々の自己選択バイアスを考慮しています。どういうことかといいますと,国立の理系の大学,学部を出た学生は,大体8割から9割大学院へ行く。そういう傾向を考慮し,コントロールした上で賃金関数を推計して,その上でやはり25%程度の賃金プレミアムがある。こういった結果が出てございます。
 次のスライドをお願いいたします。先ほど来何回か申し上げておりますように,2007年の就業構造基本調査から大卒と大学院卒のデータが区別をされました。しかし,このデータは,残念ながらまだ修士と博士の区別は出ておりませんので,修士と博士を分けて分析をすることができません。ですから,大学院卒といった場合には,修士・博士が両方混じっているということなので,このあたり,欧米のデータの整備とは違っていて,データを整備していただければありがたいなと思っております。
 これまでの大学院教育の賃金プレミアムのまとめをいたしますと,そこにございますように,約30%,24.5%から,高いところでは40%という結果でございます。恐らく日本の大学院卒についての賃金プレミアムの研究は全てこれで網羅されているかというふうに思います。
 そこで,私と後輩とで先行研究をもう少し詳しくした形で賃金プレミアムの推計をいたしましたのが,10ページのスライドでございます。ここは何をしたかといいますと,いわゆる産業別の賃金プレミアムを推計いたしました。そこにございますように,全産業平均では29.5%,教育・学習支援が24.5%,製造業が27.7%とずっと続いておりますが,文部科学省の方々,公務に関しては4.7%です。大学院卒と学部卒と,ほとんど生涯賃金が決まっておりますので,賃金プレミアムがないということで,いろいろなところで文科省の方々も大学院ぐらい出ないとだめじゃないかという議論がありますが,余り出てもメリットがないと。こういう結論でございます。
 続きまして,大学院の内部収益率でございますが,内部収益率の定義をそこに書いてございます。これは厳密な定義でございますが,もっと簡単に直感的に説明したものが,次の12ページでございます。要するに,大学院の教育のコスト,この教育のコストというのは,大学院授業料の直接費用と,それから大学院時代にもし学部を出て働いていたらどれぐらい稼げたかという間接費用,これと直接費用を足したものです。これがコストで,大学院の収益というのは,大学院を出たときの生涯賃金から学部を出た場合の生涯賃金を引いたもの。大体60歳ぐらいまで働くと仮定をして計算しております。いってみれば,コストを掛けて,例えば,大学院の学費が一年間で100万といたしましょう。200万のコストを掛けて就職した場合,300万が大卒後の一年間の年収として,600万。800万掛けて大学院を出た場合と,学部を出た場合の生涯賃金の差を,200万のコストでもし稼ぐとしたら何%の利回りで回したらこれぐらいになるのかというのが収益率だというふうに思っていただければと思います。
 その収益率を計算したものが,先行研究でまとめると,大体10%,16%といったような結果が出ています。その意味では,例えば,1,000万,家庭にお金があって,大学院に行かせた場合,行かさない場合,行かさないと今1,000万を子供にあげたとしても,1%あるかないかですよね。それが大学院に行けるんであれば,大学院に行って投資をすれば,約10%の収益がある。そういう経済の投資だと考えても,教育投資としても十分に元が取れる。そういうふうに考えていただければと思います。
 下山・村田論文につきましても,先ほどと同じように,内部収益率を産業別に計算してございまして,残念ながら,ここでも公務は収益率がマイナスでございまして,大学院を出ると損をする。行かない方がいい。こうなってございまして,なかなか学部の方が公務の場合はいい。これは完全に皆さん御存じのように,賃金体系が決まっておりますのでこうなっているわけで,その点,業績に応じて賃金が決まっていくとか,出世が決まっていくというような,民間の企業はそういう体系になっておりますが,公務の場合はほぼ年功序列賃金で決まっておりますので,収益率がマイナスであると。こんなふうな結果でございます。
 以上,大学院教育の賃金プレミアムと内部収益率について御報告させていただきました。あとは参考文献を付けておりますので,また何かの参考にしていただければと思います。
 私からは以上でございます。

【有信部会長】
 どうもありがとうございました。
 それでは,今の御発表を受けて,質疑の時間を設けたいと思いますが,どなたからでも質問,あるいはコメント等ありましたらどうぞ。

【川端委員】
 ありがとうございます。非常に明快に率として出てきて,要するに,非常に明らかだと思いました。
 その上で,お話の中にあったように,修士とドクター,これを分けて是非こういう数字が出てくればいいなと思っていて,そのためには,今既に,先ほどの国の調査だとか,そういうものが,使えるようなものがもう進んでいるのか,それとも,更にこういうものをやらなきゃ出てこないのかについてお聞かせいただきたい。

【村田副部会長】
 残念ながらデータはありません。やっと2007年に大学院と学部のデータが分かれたわけで,これも文科省さんにお願いして,修士と博士を分けたデータでないと,恐らく修士と博士の学生数がかなり違いますから,それで収益率あるいはプレミアムがかなり違ってくると思うんですね。そのあたりまでちゃんと計算をしていかないと,本当の実態が分からない。アメリカは完全にそういうことができていますから,その比較もできないんですね。そういう意味では,教育関係のデータって本当に整備されていないものですから,研究者も困っていらっしゃるわけで,そのデータの方を是非やっていただければと思っております。

【有信部会長】
 現実に,毎年ドクターコースに行くのが1万5,000人ぐらいのうちの,修士からドクターに進学している人たちが多分7,000人ぐらいなんですよね。だから,統計的に見るにしても,規模が極めて少ないので,バリエーションも相当あるということを踏まえて考えないといけないかもしれないですね。
 どうぞ。

【池尾委員】
 ありがとうございます。今のデータというのは,恐らく理系中心だと思うんですけれども,文系に関してはどうなんでしょうか。と申しますのは,私どもビジネススクールの場合,卒業した学生が優秀な学生ほど外資系に行ってしまうんですね。外資系というのは,もともと欧米系外資系,現在はアジア圏も含めてです。その背景には賃金格差があるわけですが,そうした観点から文系の場合はどうなんだろうかということと,ないものねだりかもしれませんけれども,日本企業と外資系企業の違いを見たようなものがないのであろうか教えていただければと思います。

【村田副部会長】
 きょう我々が推計したのは,個票データを統計法に従って取り寄せて文系・理系を合わせたものです。これを理系と文系に分けるということを今後していかないといけないだろうなとは思ってございます。そういう意味で,これは理系・文系,一緒になったものだと御理解いただければと思います。

【池尾委員】
 あと,海外の場合はどうなんでしょうか。

【村田副部会長】
 海外というか,これも就業構造基本調査に出てくるのは日本の産業全体ですから,外資系も全部含めてなもんですから,そこをもし分けるんだったら,もう少し厳密に細かく見ていかないといけないとは思っております。

【有信部会長】
 いろいろ本質的な問題も出てくると思いますけど,ほかに。
 どうぞ。

【小西委員】
 今のご説明に関連してなのですが,先行研究の9の中に,収益率は理系大学院が一番よくて,文系と理系の学部よりも文系大学院の収益率が一番低いとあります。衝撃的な内容がここにあるのですが,この文献を読めば済むことですが,もしこの内容について補足することがあれば,お教えください。

【村田副部会長】
 この場合の理系大学院と理系学部収益率というのは,先ほど定義を書きましたように,理系大学院の収益率というのは,学部卒に比べて理系の大学院に行った場合にどれぐらいコストと,それから,生涯賃金の差をどれぐらいの利回りで稼げるかというのが収益率なんですね。理系学部の収益率というのは,今度は高校卒と比べて学部に行った場合の収益率です。それを理系と文系分かれていますから,そういう意味では,先ほどの質問と関連していますように,恐らく理系の大学院というのは,特に国立ではほとんど大学院に行かれると思いますけれども,文系の大学院の方が,少なくともこれまでは余りやはり社会は評価をしていなかったという意味で,文系の大学院の収益率が低くて,理系の学部の収益率の方が文系学部の収益率よりも高い。
 しかし,この分析が,学部の研究について一概に言えるかといいますと,実は学部の収益率,つまり,高卒に対しての学部卒の収益率に関しましては,これまでの,一般的には文系の収益率の方が理系の収益率よりは高いんですね。その理由は,学費が国立大学の場合,理系も文系も同じなんですが,私学の場合は理系と文系では1.5倍ぐらい違いますから,そこを考えた場合に,文系の収益率の方が高い。特にこれまでは理系はメーカーにどうしても行きますから,メーカーは基本的に産業として賃金が比較的低いわけですね。その点,金融が高い。金融の生涯賃金は最も高くて,あと,金融と同じぐらい生涯賃金が高いのが,3.11の後は違うと思うんですが,それまではやはり電力だとか,そういったものが高かったわけで,そういう意味では,文科系の学生は金融なんかによく行きますから収益率が高くて,理系の学部生はメーカーにどうしても行く可能性が高いので低い。しかも学費が私学の場合は高いという形で一般的に出ております。だから,ここの分析は,一般化はなかなか難しいだろうなと思っています。

【有信部会長】
 多分,会計大学院だとか,さっきのビジネススクールだとか,そういう専門職大学院の卒業生の数がまだ余り多くないということと,これを全部文系の中にひっくるめて,本当に文系という言い方で整理するのがいいのかどうかということも含めて,本当は専門職大学院を別立てにしなきゃいけないかもしれないという気はしますね。

【村田副部会長】
 専門職大学院のみの分析も一つありまして,MBAに関しての分析,きょうはちょっと文献は出さなかったんですが,それでいきますと,日本国内のMBAだって約11%,海外で出た場合の収益率は75%を超えるというような結論も出ております。ただ,それはかなり古い論文なんで,必ずしも正確かどうか分かりません。

【有信部会長】
 ほかに。どうぞ。

【宮浦委員】
 詳細な説明ありがとうございました。大学院の進学のモチベーションということを考えますと,生涯賃金ももちろん重要ですけれども,仕事を始めてから10年ぐらいの期間にどれぐらい差がついて稼げるかという,若い人にとっては比較的10年以内ぐらいを視野に入れていると思うんです,大学院の進学のモチベーション。確かに生涯賃金は重要ですし,雇用システムも変わって,転職も増えて,異業種間で動くようになった。20代から30代前半の方にアピールするためには,やはり仕事を始めて10年以内にどれぐらいの差がついて大学院の進学者が,要するに高くなるかというような視点も,今後必要になってくるだろうなと考えているのが第1点目でございます。
 第2点目は,表の中で教育・学習支援というところが24%とか7.7%,さほど高くないというのがちょっと気になっていまして,初等中等教育も含めて教育に関わる人間がより高い大学院教育を受けていることが重要視されてくると思いますので,そのあたりは,やはり教員免許等も含めて,教育システムとリンクしてくるのかなと思いますが,この教育・学習支援のカテゴリー分けというところはどういう感じになっているのでしょうか。

【村田副部会長】
 まず,一つ目の質問で,ここにはきょう載せませんでしたけれども,30歳と35歳ぐらいのときにどれぐらいの職になっているかというような文献もあります。ただし,それは定性的な分析で,定量的な分析ではありませんので,きょうは省きました。
 それから,二つ目の質問ですが,教育・学習支援につきましては,これは正に大学の教員だとか,それから,高校だとか中学校の教員,教職ですね。そういうことが入っております。教職だとか,それから,大学の教員も含めて,国立大学の場合は,公務員に準じていますから,そこが低くなっている。私学のところは上がってきますけれども,そこで足が引っ張られているのかなというふうな印象は持っています。

【宮浦委員】
 済みません,ちょっとピンポイントな質問で申し訳ないんですけど,国立大学の教員は公務にカウントされていて,私立大学の教員は教育にカウントされているんでしょうか。

【村田副部会長】
 いえ……。

【宮浦委員】
 ではない。

【村田副部会長】
 国立も私立も,教員は教育・学習支援の方に考えています。

【有信部会長】
 やっぱり従来型の年功賃金の体系の中でやっていると,どうしてもそういう意味で,プレミアムというんですかね,賃金プレミアムのようなものが付きにくい格好になっていて,結局,私なんかも製造業で働いた実感からすると,若い頃は低賃金でこき使われて,年を取ってからやっと給料もらってももう手遅れだと。こういう話で,そういう状況は多分,これから大きく民間企業の方は変わっていくんだろうと思います。変わりつつあるという状況だろうと思います。
 ただ,役所とか大学の,特に国立大学教員のいわゆる俸給表のようなものがそのまま維持されていると,これはなかなか難しいかもしれない。ちょっと余計なことを言いましたけど。
 ほかに御質問。どうぞ。

【堀切川委員】
 令和2年の1月からすばらしいデータを見せていただいて,ありがとうございます。初めて数字で理解できました。
 賃金プレミアムのところで業種別にまとめておられる表がありますが,卸売・小売業が37.2%と,医療・福祉に次いで傑出して高い値になってるんですけれど,もし卸売・小売業がなぜ高いのかという分析をしておられるようでしたら,教えていただければありがたいです。

【村田副部会長】
 卸売・小売業がなぜ高いのかというのは,恐らく一つは,ベンチャーだとかいうのが入っているのかなというのは思っているんですが,ただ,そこまで詳しく分析しておりません。医療に関して分かっているのは,開業医だということは分かっております。

【堀切川委員】
 ありがとうございます。

【有信部会長】
 ほかには。
 どうぞ,塚本委員。

【塚本委員】
 詳細な御説明をどうもありがとうございました。
 5,6,7の森川先生の資料を見ると,賃金プレミアムが2011年,13年,15年と,20%,30%,40%と上がっていくように読めます。先生がごらんになって,2017年は50%とかいうふうに上がっていくと思われれますか。

【村田副部会長】
 丸5,丸6,それから,丸10は同じ森川先生,これ,RIETIの研究者で,副所長で,日本の労働生産性の研究では,この方がほとんど半分ぐらい論文を書いている方なんですが,データによって違うんだろうなというふうに思います。だから,正直なところ,丸10の賃金プレミアム,これは少し過大に出過ぎているなと。大体30%ぐらいなのかなと。これまでの文献,私どもの分析も含めて,大体賃金プレミアムは25%から35%ぐらい,30%ぐらいかなというふうには思っております。

【塚本委員】
 ありがとうございます。

【有信部会長】
 これから上がるかどうかは,まあ。
 ほかにどなたかありますか。

【小長谷委員】
 じゃあ。

【有信部会長】
 どうぞ。

【小長谷委員】
 御報告ありがとうございました。大変勉強になりました。女性が軒並み男性より必ずどの分野であれ,どこでも低いんですけれども,これは基本的にその企業の中,その分野の中でのバイアスでしょうか。それとも,途中で辞めるようなことが,この計算に影響するのでしょうか。

【村田副部会長】
 残念ながら,そこまでは分析ができておりませんが,恐らく途中で辞める云々というよりも,まだやはり男性に比べて女性の方が昇進の率が低いというふうに思っております。

【小長谷委員】
 ありがとうございました。

【有信部会長】
 どうぞ。

【迫田委員】
 御説明ありがとうございました。ずっと経団連とかでこの議論をしていると,毎回大学の先生方から,企業が優遇しないから大学院に来ないんだという御批判を頂いたんで,そうじゃないという説明はずっとしてきたんですけど,ようやく数字でそれを証明していただいて,大変うれしく思っております。
 あと,やっぱり先ほどの御質問にもあったんですけど,何となく文系のところが少し気になっていまして,MBAはもう少し実感からすると高く評価されているような気がしておるんですけれども,この辺については何か更なる調査みたいなものは,どこかで御検討されているんでしょうか。

【村田副部会長】
 一度言ってやっています。何せ私も学長なもんですから,時間がないのは事実で,アイデアを出して後輩に計算をしてもらうという形です。ちょっとまた一度検討してみます。ありがとうございます。

【迫田委員】
 よろしくお願いします。

【有信部会長】
 専門職大学に関しては,是非研究をしていただきたいと,個人的にもそう思っておりますが,よろしくお願いします。
 それでは,大体……,どうぞ,高橋さん。

【高橋(真)委員】
 ありがとうございます。手短に。数値を含めてのご発表,ありがとうございました。先ほど宮浦先生がおっしゃったことと関連するんですけれども,今までの学生の気質と,これからの100年時代,副業推進で,いわゆる転職が普通になっていく時代のインセンティブは,かなり異なると思っております。一般論として伺いたいんですけれども,一体どの程度の差があるとインセンティブとして機能するのか,という点です。人は賃金によって心が動かされるのかというのがとても気になるところで,特にモノからコトへとか,いろいろ人の気持ちというのが変わってくる中で,10%ならいいのか,9%ではだめなのか。30%であれば良いのか。例えば,ここ30年,先進国の中でそれなりの教育を受けた人間の動態が有意に変化しているというような,何かつかみの数字というものがもしあれば教えていただきたいと思います。

【村田副部会長】
 一般論というよりも,過去の文献,研究成果を踏まえて言いますと,アメリカは大体,教育歴が1年上がりますと7~8%賃金が上がっていくとかいうような研究があったかと思います。それから,日本の場合,これも学部に関してですけれども,今の質問で,内部収益率が高いんであれば,いわゆる投資として考えた場合に,当然収益率が大学進学率に効いているだろうというような形で大学進学率を,所得だとか,それからコストだとか,収益率で回帰させる分析をします。しかしながら,少なくとも,ほとんどの論文で内部収益率は利いていないという結果になっていますから,余りそういうことを考えて大学には進学はしていないんだということが,大方の結論かと思っております。
 その意味では,大学院に行くときも,大学院に行ったら賃金が上がるんだというようなことではなくて,むしろ自分の専門の勉強ができて,むしろこれからは知識集約型社会ですから,そこでより高度な仕事に就けるというインセンティブはあるんだろうなと。ただし,そのときに,コストを掛けて大学院に行っても,賃金として上がらないんであれば,逆にディスカレッジされるわけで,やっぱり30%ぐらいの賃金プレミアムがあるということをはっきりさせておくと,そうか,そうしたらやっぱり行こうと思ってくるのかなというふうには思っております。

【高橋(真)委員】
 ありがとうございました。

【有信部会長】
 教育の付加価値が,そのまま結果的に賃金のような形でリターンがあるということがもっと明確になっていればいいんだけど,今の日本の中だとそういう方向には行っていないですね。
 濱中委員,どうぞ。

【濱中委員】
 今の御質問に関連してなんですけれども,私も教育経済学をちょっとかじったことがある端くれとして申し上げますと,収益率を判断する重要なアプローチは,銀行の利子率との比較,というものになります。進学費用としてお金を使うことと,進学せずにそのお金を貯金しておいた場合,どちらが「トク」なのか。バブル経済期の定額貯金などはかなり高い利子率でしたから,実際にどちらが「トク」かというのは切実な問いだったわけですが,ただ今,利子率は御存じのとおりの状態ですから,示された収益率では,進学は「トク」という判断に至ります。ただ,一方で,先ほども指摘されたように,収益率はあまり進学行動に影響を与えないという分析結果もあって,その際に参考になるのは,「失業率」は影響を与える要因として捉えられるという分析結果があることです。
 そういったことを考えますと,大学院の場合は,学校基本調査のデータなんかを見ますと,無業者比率が半端なく高い。文系の大学院では,安定雇用に就けていない修了者の比率が4~5割という値が算出されます。進学を考える者の立場からしてみると,収益率云々という数字よりは,この数値がやはり気になるところではないでしょうか。

【有信部会長】
 貴重なコメント,ありがとうございます。
 ほかに。
 いろいろ貴重な議論ができたと思います。また,貴重な資料,あるいは講演を提供いただきまして,本当にありがとうございました。この内容については,今後の審議に生かしていければというふうに思っています。
 それでは,次の議題に入らせていただきます。大学院教育におけるリカレント教育促進に向けた制度改正案についてということになっていますが,前回の会議を受けて事務局で作成した制度改正案について説明いただき,審議を行いたいと思います。それでは,よろしく。

【平野大学改革推進室長】
 失礼いたします。前回,また,過去数回にわたってリカレント教育について御議論いただいたところでございます。社会人がリカレント教育として大学院で学ぶ上での障壁をどのように下げていくのか,このようなところを議論いただいたわけでございますが,その過程において何度か御説明させていただきましたけれども,単位互換の仕組みであるとか,また,修業年限の短縮の問題であるとか,こういったところについては,大学院の特に修士課程といった部分については対応する余地があるのではないかという方向で御議論があったところでございます。
 本日の資料2-2の方でございますけれども,大学院設置基準の一部の改正というものの提案をさせていただくものでございます。この内容につきましては,こういうものの通例でございますけれども,大学院部会で審議いただいて,パブリックコメントというものをこの概要で行って,パブリックコメントの意見を踏まえて最後条文の審査をすると。こういう流れでございます。
 まず,背景の部分,もう一度おさらいをさせていただきたいと思います。現状・課題の部分でございますけれども,大学院においてリカレント教育に向き合うことは極めて重要な課題である。大学院という部分については,学士課程を超えた高度の教育需要というものは一定は存在しているということである。一方で,大学・大学院というものがリカレントで活用されるという割合は低い。その課題としては,仕事等が忙しく,時間の余裕がないということが挙げられている。特にフルタイムという形で通い続けることが難しいであるとか,学事歴というものの柔軟化というような問題とか,このようなところもあったわけでございます。
 審議会等における提言ということでございます。昨年の1月にまとめていただいた,あるべき姿(審議まとめ)というものでございますけれども,科目等履修制度活用促進ということとともに,その取得した単位というものを,学位を取得する,目指す際に適切に評価をすること。せっかく科目等履修生で学んだんだけれども,正規の課程に入ったときに,それを上手に使えないということがないようにしようという趣旨でございます。
 また,経済財政運営と改革の基本方針2019,いわゆる骨太の方針でございますけれども,この中においては,全ての大学院が入学前や他大学院での学修を活用して単位累積加算的に学位授与を行うための方策を検討する,大学・大学院での学位取得の弾力化を進めるということが提言されてございます。
 これはもちろん大学院でございますので,大学改革支援・学位授与機構の単位累積加算制度というものを単純に適用するということは難しいわけでありますけれども,学生さん,ないし学生さんの候補者という方が,こつこつと集めた単位というものをしっかりと大学院の課程において評価ができる仕組みということを進めていくという上で,制度の弾力化が必要ではないかということが言われているわけでございます。
 改正概要の方が下に書いてございます。実は条文が,3ページ,4ページ,5ページと挙げられているんでございますけれども,構造が非常に難しくて,大学院設置基準の部分,3ページ目の下の部分にございますけれども,大学設置基準を準用して,必要な部分は読み替えるという形になっていて,多分,これだけを見て頭の中で変換するのは,我々行政官であってもかなり難しいという世界でございますので,口頭で内容については適宜説明をさせていただきたいと思います。
 1ページ目に戻っていただきまして,改正概要1ポツでございます。他大学院等の単位互換及び入学前の既修得単位の認定の柔軟化でございます。これは,まず,学部をイメージしていただきますと,学部の場合には単位互換というもので認められる範囲というのは60単位ということで,124単位分の60単位ということになっているということをまず念頭に置いていただいた上でということでございます。
 改正概要の丸1番でございます。大学院は,教育上有益と認めるときは,学生が他の大学院において履修した授業科目について修得した単位を,15単位を超えない範囲で当該大学院における授業科目の履修により修得したものとみなすことができるというふうにしてはどうかということでございます。
 現行は10単位でございます。ですので,ある学生さんがA大学院に入って,B大学院ないしC大学院,こういったところで学んだ,単位互換などで学んだ単位というものは10単位しか持ってこられないというところを,15単位まで持ってくるということができるようにならないか。学部並みの半分ということでございます。
 丸2番でございます。丸2番は,大学院は,教育上有益と認めるときは,学生が当該大学に入学する前に大学院において履修した授業科目について修得した単位(科目等履修生制度を含む)というものを,当該大学院に入学した後の当該大学院における授業科目の履修により修得したものとみなすことができると。
 これは,学生さんが,A大学院に入学する前に,A大学院とかB大学院とかC大学院というところでこつこつと科目等履修生で勉強されたというもの,これを自大学の単位としてみなすというものでございます。
 修得したものとみなすことができる単位数は,当該大学院において修得した単位以外のものについては15単位を超えないものとするとございます。ちょっと二つ御説明したいんですが,これまでは,他の大学院で,例えば,A大学院に入る前に,B大学院,C大学院で学んだ単位というものを単位として持ってくることもできたわけでございますけれども,それはこれまで10単位であったということでございます。
 ここを15単位にしていくということでございますけれども,もう一個申し上げたいことは,当該大学院において修得した単位以外のものについてはということの意味するところは,A大学院に入学された学生さんが,B大学院とかC大学院で学ばれたものは10単位,ないしこれからは15単位ということにしたいということでございますけど,A大学院で入学前に学んだものは幾らでも持ってこられると。これはこれまでもそうでありますし,これからもそうでありますということでございます。
 丸1番と丸2番の下の矢印の部分でございます。これ,実は学部と違うところなんでございますけれども,現行の制度ですと,丸1番,入学した後の他大学の単位を10単位持ってこられますよと。丸2番は,入学する前に勉強した他大学の大学院の単位を10単位持ってこられますよと。これを実は合わせて20単位持ってこられますという仕組みだったんで,現行の制度においても,入学前に他大学で10単位取って,入学後に他大学で10単位取ると,実は30単位分の20単位は他大学の単位で満たせるという仕組みになっております。ここは学部よりも緩い仕組みになっております。
 ただ,一方で,入学後に他大学で学んだものは半分持ってこられないという意味においては学部よりも厳しいということで,今となっては,なぜこういう仕組みになっているのかということは,にわかには分からないところもあるわけでありますけれども,3分の2までは他大学の単位で満たせる,入学前と入学後合わせてという仕組みでございました。
 今回,これをどういうふうに変えたいかというと,丸1番,丸2番,それぞれ15単位として,合わせて30単位にしてしまうと,全く自分の大学で勉強しないで,他大学の単位を集めて修了してしまうという,何かおかしなことになってしまいますので,ここについては,学部もこういう形になっているわけでありますけれども,丸1番で持ってくる入学後の15単位,丸2番で持ってくる入学前の15単位,それぞれ片一方ずつ見れば,15単位できるんだけれども,合わせて見る場合には,20単位を超えないようにしてくださいということでございます。ですので,10単位の部分を15単位に増やしますけれども,これまでと同じように,入学前10単位,入学後10単位持ってきて,20単位取れたのに,それが取れなくなって,15単位までということはないということでございます。
 これが1ポツの他大学院等の単位互換及び入学前の既修得単位の認定の柔軟化でございます。
 これによって期待される効果ということでございますけれども,まず,時系列的に申し上げますと,丸2番の方,入学前に他大学の大学院でこつこつ勉強したものも,正規に入るときに,他の大学院に持っていくことができる量が増えるということが1個でございます。
 入学した後という意味においても,丸1番でございますけれども,他大学院において学ぶ範囲というものを広げて,これは大学の判断でございますけれども,認定することができるということで,学生の学びの幅の広さの確保というところに貢献することができるのではないかと考えてございます。
 2ポツの方でございます。2ポツの方は,入学前の既修得単位等を勘案した在学期間の短縮でございます。まず,枠の中を読ませていただきますが,大学院は,博士後期課程を除き,入学前に修得した単位を当該大学院において修得したものとみなす場合であって,当該単位の修得により当該大学院の教育課程の一部を履修したと認めるときは,当該単位数,その修得に要した期間その他を勘案して,1年を超えない範囲で当該大学院が定める期間在学したものとみなすことができる。ただし,この場合においても,修士課程及び博士前期課程にあっては,当該課程に少なくとも1年以上在学するものとするということでございます。
 細かく少し説明してまいりますけれども,この趣旨というのは,今の修士課程におきましては,幾ら入学前に既修得単位,入学前に単位を集めていたとしても,それは他大学院の単位ということのみならず,自大学の単位というものも含めて,自大学の単位を極端な話,20単位ぐらい取っていたとしても,もう一回入った場合には,2年間,修士に通わなければいけないということでございます。学部の場合とか専門職大学院の場合というのは,修業年限の短縮という仕組みがあるわけでありますけれども,修士はこれがなかったということでございます。ここの部分を,集めてきた単位数とかその期間というものに応じて,1年を超えない範囲で在学したとみなしてもいいですよということでございます。
 このただし書きのようなところの説明でございますけれども,1年を超えない範囲でというのは,修士は原則,前期課程も2年である。2年であって,論文を書いていただくということでありますので,1年以上みなして在学しちゃうと,1年いなくていいことになってしまうということでございます。
 ですので,最低1年は在学してくださいということなんですが,もうちょっと細かい説明をいたしますと,実は修士も短縮できるパターンというのが二つございます。一つは,成績優秀者のような方。成績優秀者のような方は1年で修了できるということになっていると。もう一個は,いわゆる社会人などを主に対象とする場合であって,夜間とか,そういったものを活用する場合において,修業年限を1年以上2年未満に設定することができるということでございます。きょう発表いただく政研大なんかでは,そういうパターンで行われているケースもありますけれども,そういう場合に,1年以上2年未満の,もともと社会人向けの課程というものがあって,そこに合わせて,また1年在学みなしていいよということになると,ほとんどいない状態で修了しちゃうということになります。やはりこれもおかしなことになるということで,最低1年間は在学をしてくださいということになります。
 きょうは具体的な条文をお示ししておりませんので,ちょっとまだ細かいところは検討が必要なわけでありますけど,大筋こういうことになります。細かいところは検討が必要と申し上げた趣旨は,例えば,また一方で,これ,非常に複雑な制度でありまして,修士を修了した方が,もう一回,5年制の課程に入るときに,在学する期間というのは3年間でいいとか,もともと入学するときの資格というものに応じて在学年数が短縮するパターンというのがあります。
 ただ,ここで言う1年間の短縮というのは,基本的には前期課程に相当する部分を1年間短縮するということを念頭に見ているものでございますので,いわゆる自分が持っているもともとの資格と入った後の短縮できる範囲というもの,この関係というものはしっかりと厳密に条文上表す必要がありますので,そこは今後また条文の検討に当たって留意した上で検討していきたいということでございます。
 具体的に申し上げるとそういうパターンと,あと,成績優秀者という者における短縮でございまして,博士後期課程なんかですと,修士と合わせて3年間在学すればいいといったようなケースもありますので,こういった場合と短縮というものをどう掛け合わせるのか。こういったところについては厳密に検討を今後進めていく予定でございます。
 2枚目でございます。今後のスケジュールということでございます。本日,大学院部会において改正概要を審議していただいております。大学分科会においても,また今後,この概要というのを審議させていただきます。パブリックコメントを実施させていただいて,御意見を頂戴いたします。その過程において,先ほど申し上げたような具体的な掛け合わせのパターンも含めて精緻な検討を進めまして,3月以降開催される大学院部会において,改正の省令案というものを審議した上で,大学分科会でも御審議いただいて,諮問・答申を頂くということを念頭に作業を進めてまいりたいと考えております。
 私からの説明は以上でございます。ありがとうございました。

【有信部会長】
 よく理解できたかどうか分かりませんが,要するに,科目等履修生,あるいは他大学の大学院等で修得した単位を新たな大学院,自分が入学した大学院で単位として認定をする枠を,従来の10単位から15単位に増やしたと。ただし,2通りの加算の仕方があって,全部足し合わせると30単位になるのは,これは従来どおり20単位を超えないようにという,上限を掛けましたという話と,それから,博士後期課程では短縮というのを,また別の次元で短縮ということが行われるというか,やれる構造になっていますけれども,修士課程でもそういう意味で短縮の可能性を開いたということになっていると思います。
 質問がいろいろあるのではないかと思いますが,多分,教育する側とされる側でこの辺の受け止め方は全然違ってくるような気もするんですけどね。
 どうぞ。

【福留委員】
 ちょっと確認も含めてなんですけれども,仮にこういう形で設置基準が改正になった場合,それぞれの大学の対応としては,大学全体の大学院規程であったり,あるいは研究科レベルの規程だったりというところで,これを上限としながら各大学で意思判断できるというような構造になるわけですかね。
 あと,現状としては,こういったものというのは,ちょっとテクニカルなところで分かっていないところがあるんですけど,基本的にはそれぞれの大学の,今申し上げた大学院規程だったり,研究科規程だったりというところに,この設置基準の記述を前提にして,反映されているというような形になるんでしょうか。

【平野大学改革推進室長】
 2点御質問いただきましたけれども,後者の方からお答えすると,学則であるとか,大学院の規程に学則から落としているとか,そういう形で規定されているケースが多いと思います。その上で,今,そこに10単位とか書いてあるわけでありますけれども,15単位と書いてあるからといって,必ず15単位認めなければいけないということではもちろんありませんで,大学院によっては,他大学から持ってきた単位をかなりシビアに認めないと。自分の大学の教育水準に達していないであるとか,対応関係性がないという理由でお認めになっていないケースというのもあると思います。そこはもちろん大学院の教育の学位を与える上での体系性とか水準というものは踏まえて,各大学院で御判断いただくことができるものと思っております。
 ちょっと補足だけさせていただきますと,前回たしかお配りしたと思うんですが,一方で,科目対応性というものがかなり厳密に運用され過ぎているといったような課題というのもあったものでありますから,これは大学院も含めてでございますけれども,前回のグランドデザイン答申を受けた後でございますが,必修科目と選択科目といわゆる自由科目というものに類型を分けた上で,必修科目については相当,科目対科目というものの一致性というものを単位互換に当たっては厳密に求めていく必要がある一方で,選択科目であれば,その選択の範囲という中でとどまっているものであれば,1対1で必ずしもなくてもいいのではないか,自由科目については,もっと広い対応関係というもので単位を認めてもいいのではないか,このようなことを文部科学省として各大学に既にお知らせをしているというところでございます。これも踏まえて各大学で御判断いただく事項と考えております。

【福留委員】
 ありがとうございます。基本的に幅広く大学院の教育機会を開いていくというのはとても重要だし,望ましい方向かなと思うんですけど,一方で,やっぱりそれぞれの研究科での質保証というのをどういうふうにやっていくのかというのは,これまで以上に課題になってくるのかなというのと,こういう学生が出てきたときに,そこの判断を相当しっかりやっていくことが必要になると思いますし,あと,学びの幅ということも大事だと思うんですけど,大学院ですから,専門性をいかに確保していくかというところも,そこもそれぞれの研究科の判断だとは思うんですけども,ちょっとそのあたりをどうやっていくかというところが課題になるのかなと思いましたので,ちょっと発言させていただきました。

【有信部会長】
 重要な御指摘だったと思います。特に研究科で考えている大学院教育をきちんと全うできるか,質保証できるかという観点とコンフリクトを起こす可能性もあるので,そこの部分については,各大学の判断,裁量でやれるというのが,今,文科省側からの説明だったので,この辺の基準を大学院サイドがきちんとやっていただければ,何とかなるかなという感じだろうと思いますけど,ただ,ほかにもいろいろ心配なことはあると思いますが,質問があればどうぞ。

【小西委員】
 まず,一つお伺いしたいのですが,改正概案の1の2に,「入学する前に大学院において履修した授業科目について修得した単位(科目等履修生制度を含む)」というところがあります。今,会計大学院協会では,履修証明プログラムを活用しようということを考えております。つまり,質問は,ここに履修証明プログラムは考慮しないのか,考慮しているのか,ということをお聞きしたいのです。履修証明プログラムを公認会計士の継続的専門研修と連携をさせて,そして,ここで一定の単位を取って会計大学院への進学を促進する制度を,今,公認会士協会と作ろうとしていますので,そこのところをお伺いしたいということです。
 もう一つは,先ほどの御質問にも関連しているのですが,2の在学期間の短縮のところです。そこでは,1.5年と1年に社会人は短縮できるとあります。簡単に短縮させてしまうと,何でもかんでも社会人だから短縮という悪い印象があっては困ると思っています。そこで,1年に短縮できるのは,既に公認会計士や税理士の試験を合格している方,1.5年の方は,一定期間以上,会計や監査等の実務経験を踏んでいる方という,会計大学院協会で一定の基準を設ける必要があると思っています。各会計大学院でその基準が違うということになると,やはりそれは好ましくないのかなと思っているので,二つ目のところは感想程度です。

【平野大学改革推進室長】
 まず,1点目の履修証明でございます。履修証明については幾つかパターンがあると思っておりまして,いわゆる科目等履修生の形で,幾つかの科目というものを実際取って,単位を授与されるパターンというのがあると思います。これはもちろんここに書いてありますように,科目を履修して単位を取る,授与されるという外形的な対応がありますので,こういうところについては,一種,考慮をしているとは言えるわけですが,前回,多分御説明申し上げたんですけれども,学部の方は最近制度が少し変わって,履修証明そのものに単位授与することができるということ。いわゆる,例えば,既に単位化されている授業を取るなら,単位がもらえるのは当たり前なんですが,単位化されていないものであっても,ある一つのパッケージで学修量や水準というものを考慮して,単位を授与することができるという仕組みが入った。それは一方で,今,大学院には入っていないということでございますので,その意味においては,その部分は考慮されていない。つまり,今回の制度改正をもって,履修証明そのものに単位が授与できるようになるわけではないということでございます。
 これは前に御説明したように,大学の学修というのは,TOEICとかそういったものを含めて単位化できる余地があるという仕組みになっておりますけれども,大学院は恐らく相当深い部分を究めるという観点のものから考えると,外のものを大学院の授業以外のものから単位化するという仕組みは今のところはありませんので,それは前回挙げさせていただいた中期的な課題として,履修証明というものを,大学院の学修相当というものにどうやって取り入れていくのかということはちょっと今後検討しなければいけないというふうに思っております。
 そういったような形で申し上げると,まとめて申し上げると,科目等履修生として履修証明プログラムの中で単位が授与されるものについては当然持ってくることができるけれども,単位が授与されない履修証明というものについては,ここには利いてこないということでございます。

【小西委員】
 前回の話はよく覚えていまして,その時にも是非に大学院でも履修証明プログラムを検討してほしいとお願いしました。それは中長期の課題だとおっしゃっていたので,この機会に導入してもらっていただきたいと思って,そのような質問をさせていただきました。

【有信部会長】
 履修証明プログラムに関して単位を出す出さないというのは,各大学の判断になっていて,これはかなり一律にやるというのは非常に難しい段階なので,今後どういうふうに扱っていくかというのは検討していく必要があると思いますので,どうもありがとうございました。
 それでは,堀切川委員,どうぞ。

【堀切川委員】
 極めて単純な質問をさせてください。従来,丸1,丸2,それぞれ10単位という偶数だったわけでございますが,今回,15という奇数になりますと,通常,座学だと1科目2単位で設定されますけど,単純な質問は,8科目持ってきた人は,14単位までしか認められないのか,8科目めは2単位だけど1単位は認めてもいいぞ的な弾力性があるのかという奇数問題について質問でございます。

【平野大学改革推進室長】
 実は奇数というのは,なかなか見慣れない世界でありまして,124単位についても60単位であってということでありますが,これ,概念上の問題でありますので,奇数だからおかしいというものでもないんだろうと。私も気になっていろいろと調べたんですけれども,そこは奇数のものも前例としてはございます。
 その上で,単位というのは,基本的には2単位の講義ということであれば2単位のものとして扱われているものでございますので,我々の基本的な解釈としては,そこは分割可能性はないというふうに考えております。ですので,14単位持っていて,次は2単位科目があるというときに,それを半分だけ持ってくるということは,基本的にはないものと考えております。2単位で一つのユニットということで考えてございます。

【堀切川委員】
 ありがとうございます。

【有信部会長】
 だから,実質的には14単位が上限になるかなという感じですかね。
 ほかに。どうぞ。

【川端委員】
 既に議論になったのか,ちょっと分からないですけど,定員関係は結局,これでリカレントで社会人だとかこういうものを入れ込むんだ,これは定員内になっていくと思えばいいんですかね。

【平野大学改革推進室長】
 定員の問題については,実は前回,村田委員からも御発言を頂いたように,社会人を受け入れるときに,例えば,セメスター単位でしか来ない学生も含めて年間で1人としてカウントするのかとか,リカレントが本格的に進んできた段階で,いわゆるフルタイム学生換算のような考え方というのも入れていく必要があるんではないか,このような御意見も頂いたところでございます。
 実は定員の部分というのは,これは大学院ということだけを取り出して定員制度云々できる部分というよりは,むしろ正に大学の学部,若しくは実はこれは学部,大学という世界を超えて,高校教育とか,つまり,学校制度全般という部分が定員と定員に対応する教育環境を保証するといった形で組み立てられているものでございますので,定員の部分については,今この場で,このタイミングでにわかに結論を出すということにはなかなかいかないという事情がございます。
 今後,大学設置基準の改正に向けた議論というのも行っていく過程において,定員の在り方というものも議論になっていくというふうに考えております。大学院部会で頂いた意見もそちらで適切に取り扱わせていただいて,定員の在り方,特にリカレントというのは学部においても大きな課題でありますので,検討していくことになるものと考えております。

【川端委員】
 そのときに,定員関係,今お話になったように,非常にいろいろなものに連動している。でも,一方では,定員,学部においては10%までとか,いろいろな縛りが厳密に動き出していて,そういうものと関係すると,大学院の修士課程は,今でもあるところでは,ほとんど定員はほぼ充足している状態なので,リカレントをやろうとすれば,必ずそこの話が入ってくるはずなので,しばらく柔軟な定員,入学者数の管理であるとか,そういうものとの連動等も一緒にやらないと,これ,リカレントの部分が進まないのかなというのが懸念です。

【有信部会長】
 確かに今,修士課程は,定員充足率,ほとんど100%超えていますね。

【村田副部会長】
 国立はね。

【有信部会長】
 はい。国立は。
 そういうことで,例えば,学部からそのまま進学してくる人たちにとってみると,もう一方で,例の経団連との就職協定の問題で,就職活動の早期化というのが教育をかなり不十分にしているという問題と,これが絡まないようにしてこないと非常にまずい。これはむしろリカレントを促進するための方策で,そうだとすると,今度は定員側の自由度をどうするかという問題で,定員管理の話をリカレントのためにどうにかしていかないといけないという問題が多分出てくるので,そこを含めて,この点についてはリカレント促進のためにここの部分を柔軟化するというのは,それでそれなりの理由があると思うんですけども,それに加えて,今の修士課程の教育の,さっきも質問出ましたけれども,質保証という観点で,各研究科あるいは各大学の教育の質保証という観点から考えて,それがきちんと保てるような形にしていくということだろうと思いますので,今後,まだ検討の余地の部分は残してということだと思います。
 よろしいでしょうか。

【村田副部会長】
 一つよろしいでしょうか。

【有信部会長】
 どうぞ。

【村田副部会長】
 一つお願いしたいんですが,質問なんですけれども,2ポツのところで,「大学院は,博士後期課程を除き,入学前に修得した単位」,次なんですね。「(入学資格を有した後,修得したものに限る)」とあるんですが,例えば,学部の学生で,大学院の授業を科目等履修生で優秀な場合は取っていく。この場合は入学資格を有するというのは,入学資格というのは,大学を卒業する,あるいは卒業見込みということが入学資格だと思いますから,その場合,2ポツのところでは,年限の1年間にするとかいうところでは認められるんですか,今の私の入学前に修得した単位の例は。

【平野大学改革推進室長】
 恐らく入学資格を有した後に修得したものに限るというのは,これ,昔からいろいろなところでやるんですけれども,本来,大学院に入学できる資格がある人が,たまたま大学――たまたまという言い方はあれですが,大学院の外でそれに準ずる学びをしたものは入学する資格があったのだから認めようという仕組みだと思いますので,いわゆる入学資格がある前に学部で例えば先に取ったようなもの,これというのがここで認められるということにはならないものになります。

【村田副部会長】
 ならない。

【有信部会長】
 ならないんだ。

【平野大学改革推進室長】
 一方で,大学の方の単位として読まれるようなケースというのはあると思いますので,そのような活用の仕方はあるのかもしれません。

【村田副部会長】
 リカレントの観点からは今のでいいんだと思うんですが,例えば,学部の優秀な学生を,アカデミアも含めて大学院に行く場合,早期卒業で行って,大学院2年間というのがあるんですが,同時に,4年生のとき,あるいは3年生で優秀な学生が大学院の科目を取りながら,その科目が実は大学院に行った後,コア科目として認められるというような仕組みができて,いろいろなパスで大学院に行けるような仕組みがあった方がいいのかなと思ったもので,少しそのあたりを考えていただければなと思った次第です。

【有信部会長】
 大学院の入学資格というのが,多少柔軟化されたんじゃなかったでしたっけ。16年というのが15年でもいいという形。

【平野大学改革推進室長】
 いわゆる外国の高校とか,そういう場合はちょっと最近変えたりはしていますけど,原則は日本の大学に行っている場合には,早期卒業か飛び入学かというケースになります。

【有信部会長】
 飛び入学だけですね。そうでなければ,ちゃんと卒業をしなければいけないと。こういう話ですね。ということです。

【村田副部会長】
 ですから,この柔軟化をお願いしたい。

【有信部会長】
 そういうことを含めて,今後の検討課題だと思います。
 どうぞ。

【宮浦委員】
 ありがとうございます。大学側として,定員管理ですとか,単位認定が非常に気になるところなんですけれども,リカレントですと,やはり産業界側の皆さんとタッグを組んでやらないと活性化しないなという部分ですけれども,背景としては,特に課題は,仕事等が忙しく時間的余裕がないというのが絶大なる課題なように感じておりまして,何か産業界側とタッグを組んだ議論によって,例えば,育児休業のシステムに近いようなリカレント休業ですとか,そういう何か新しい仕組みを作って,それをパスすると,すごく勤務先でも評価,ステップアップにつながるとか,そういう社会で少し仕組みづくりも考えていかないと,短い時間を隙間を縫って何とか単位を取って,できれば1年で済ませてというようなやり方だけに走っていると,例えば,国際系の学部を出た方が経済学の修士を取りたいとか,逆に,経済系の,あるいは国際系の学部を出た方が,情報工学のICTの大学院でしっかりもう一回違った分野で学びたいという場合には,単位取得で短い時間で何とかするということと本質的に異なる課題があると思いますので,そういう社会システムとして,産業界としっかり,違った面からの議論も必要なように感じております。
 以上です。

【有信部会長】
 今の問題は非常に重要な論点を含んでいて,いわば労働の流動化というんですかね,それぞれの専門分野ごとに流動化をするという話と,産業界とタッグを組むのであれば,これは産業界の利害がそこで一致しないと,なかなかタッグが組めない。そういうときに,個人の希望ときちんと折り合えるかという問題と,それと,逆に言うと,個人の希望で全く違うことを学びたい場合は,恐らく別の職種,業種,あるいはより高い賃金の職業に就けるというようなケースもあるので,いろいろなパスがあると思うんですよね。だから,確かに産業界も含めて,こういう議論を進めていく必要があるだろうと思います。ありがとうございました。
 ほかに。どうぞ,塚本さん。

【塚本委員】
 ありがとうございます。今,宮浦先生がおっしゃったことに関しまして,コメントいたします。企業からも,大学院派遣などをしておりますが,弊社だけかもしれませんが,社員の方から博士課程に行きたいという希望が減っているようにも思われます。先ほど御発言あったような賃金プレミアムの話なども世の中に出てくると,インセンティブが高まって,もしかすると各社の中でも博士課程進学希望者が増えてくる可能性もあるのではないかと思います。
 また,転進助成的な形で,人生100年時代にあわせて,40歳ぐらいでもう一度人生を考え直したいという際の一つの方法としてリカレント教育を使っていくということを制度化していくと一人一人がempowerされ,日本全体の国力の向上になるのではないかと思います。ありがとうございます。

【有信部会長】
 いろいろ貴重な御意見,ありがとうございました。この件に関しては,大学分科会でもまた審議を行った上で,パブリックコメントを行った上で,今後の大学院部会で改正条文について審議いただくという予定になっているようなので,またよろしくお願いします。
 それでは,次の議題ですが,議題3は,世界から優秀な高度人材を惹き付けるための環境整備についてということになっています。このテーマに関しては,1月に取りまとめた審議まとめで,引き続き検討が必要ということとされていますし,参考資料としてお配りしているとおり,前々回,94回の会議においても,第4次大学院教育振興施策要綱に向けて,今後議論の上,検討を行うとしていたところであります。
 今回はそのキックオフという位置付けで,名古屋大学から先行事例を紹介していただきたいと思っています。名古屋大学の高橋理事,粕谷教授から,また,政策研究大学院大学の学長である田中委員より御発表いただきたいというふうに思います。それじゃ,よろしくお願いします。

【高橋名古屋大学理事・副総長】
 御紹介いただきました,名古屋大学の研究担当理事・副総長をしております高橋です。
 本日,名古屋大学の世界最先端研究大学構想の中での,特に国際連携活動の推進と課題ということでお話しさせていただきます。ちょっと正月,風邪を引いてしまったので,お聞き苦しい点もあるかと思いますが,よろしくお願いします。お手元の資料とスライドでお話しさせていただきます。では,座って御紹介させていただきます。
 名古屋大学では,第3期中期目標及び指定国立大学構想の中で,高い国際競争力を持つ世界屈指の研究大学へというキャッチフレーズの下に,様々な戦略を立てて今進めているところでございます。
 戦略1としては,WPIを中心とした世界トップレベルへの先端的研究の強化,それから,戦略2としては,きょう主にお話しする海外トップ大学とのジョイント・ディグリー・プログラムの実施,それから,戦略3としては,これはG30プログラムを中心として,留学生の受入れ・定着と,それに対応する,日本人の学生海外派遣による世界を牽引する人材の育成,それから,戦略4としては,アジア展開ということで,アジア・サテライトキャンパスを幾つか始動させておりまして,それを通じてアジア各国の中枢人材の育成を行っている。それから,戦略5としては,様々な世界の大学との学術連携を拡大することによって,国際ネットワークの活性化を行っているということであります。
 次のスライドをお願いします。ジョイント・ディグリー・プログラムについては,これは後で目的でもお話ししますように,世界のトップ大学とのやはり研究ネットワークを広げることによって,国際共同研究を推進するとともに,世界で活躍できる若手人材,研究者を育成するということが大きな目標になっています。
 次のスライドをお願いします。その基盤になる最初の取組として,名古屋大学でAcademic Consortium21というものを進めています。これは,沿革の2行目に書いてありますように,2002年6月に名古屋大学で国際フォーラムを開催いたしまして,そこでこのようなコンソーシアムを作って,様々な交流を進めましょうという提案をいたしまして,次のスライドに行っていただきますと,現在,世界の17大学でこのコンソーシアムを形成しているところであります。学生とか教職員の様々な交流,あるいは教育研究活動の交流をこの17大学で行い,2年ごとに持ち回りで国際フォーラムを開催しているということになります。ここに含まれる大学を中心に,ジョイント・ディグリーを進めていったという経緯がございます。
 次のスライドをお願いします。現在,名古屋大学では,このスライドにありますように,世界の7大学とジョイント・ディグリー・プログラムを締結,あるいは今締結中でございますが,最初にオーストラリアのアデレード大学と,これは私が医学系研究科長のときに進めたものでありますが,アデレード大学を皮切りに,その後,理学研究科がエディンバラ大学,それから,ルンド,フライブルクで,これも医学系研究科,それから,カセサート大学と西オーストラリア大学が生命農学研究科,それから,現在,チュラロンコン大学と工学研究科が進めているということで,特に理系部局を中心に進めているところでございます。
 それから,次のスライド,もう一つ,人材育成という観点から,G30のプログラムにかなり力を入れて取り組んできておりまして,このプログラム開始以来,青の線が学部学生の志願者数,赤が大学院生の志願者数ですが,このように急速に志願者数が増えておりまして,世界の優秀な留学生のリクルートにつながっていると。さらには,日本人の国際化の促進にもつながるという状況になっているかと思います。
 次のスライドをお願いします。ここから少し詳しくジョイント・ディグリー・プログラムの経緯について御紹介したいと思いますが,次のスライドをお願いします。ジョイント・ディグリー・プログラムは,先生方御存じだと思いますけれども,連携する2大学間で単一の共同教育プログラムを作成しまして,これは共同で単一の学位を授与する。いわゆる二つの大学の学長名で単一の学位を授与するというシステムであります。
 次のスライドをお願いします。その目的は,一つはやはり国際連携による共同研究を推進するというのが大きな目的の一つであると同時に,学生にとっては,医学知識だけでなく,海外への適応力や経験の体得,あるいは海外学位を生かした海外へのキャリアパスを更に推進できるということ,大学としては様々な海外の大学とのネットワークの構築につながるということがあると思います。
 次のスライドをお願いします。名古屋大学は,先ほども御紹介したように,私が医学系研究科長のときに,AC21の参加大学であるオーストラリアのアデレード大学とジョイント・ディグリー・プログラムを進める協議に入ったわけですけれども,最初は,沿革の最後の段落に書いてありますように,2013年の5月に,名古屋大学の研究者を連れてアデレード大学でミニシンポジウムを開催いたしまして,そのときにディスカッションの中でジョイント・ディグリー・プログラムの方向性が議論されました。
 次のスライドに行っていただきますと,それで,その半年後,10か月後になりますが,2014年3月に,アデレード大学と,さらにフライブルク大学もこの議論に是非参加したいということで,フライブルク大学も参加して,3大学でジョイントスーパービジョンプログラムの調印式を,ジョイント・ディグリー・プログラムの前段階としてのプログラムの調印を行ったところであります。
 次のスライドをお願いします。その後,FANミーティングといいまして,フライブルク,アデレード,名古屋のジョイントシンポジウムを年に一,二回,各大学持ち回りで定期的に開催して,お互いの研究活動の交流を進めてまいりました。
 次のスライドをお願いします。最初,2014年3月,名古屋で行い,14年9月にアデレード,15年3月にフライブルクというように持ち回りで行い,2015年10月にジョイント・ディグリー・プログラムを正式にアデレードと行うことになって,そのときに記念のシンポジウムを再び名古屋で行ったということで,その後も定期的にシンポジウムを行い,現在は,後ほど紹介するように,ルンド大学ともジョイント・ディグリー・プログラムを作りましたので,3大学プラス,ルンド大学の4大学でシンポジウムを開催しているということでございます。
 次のスライドをお願いします。これはかなり設置審の資料等,厳しい要求がありましたけれども,何とかクリアいたしまして,2015年に本邦初のジョイント・ディグリー・プログラムをアデレード大学とスタートすることができたということで,新聞紙上でもかなり大きく取り上げてもらいました。
 次のスライドをお願いします。現在,アデレードに加えて,ルンド,フライブルクを医学系研究科としてジョイント・ディグリー・プログラムを進めているところでございます。
 次のスライドをお願いします。このジョイント・ディグリー・プログラムの4年間のコースとしては,最初の1年目は,いわゆる主大学で研究をスタートして,研究の立案とか,基本的なトレーニングを受け,2年目からパートナー大学に移動して,少なくとも1年以上,パートナー大学で研究を進め,最終的に学位論文を仕上げて,両大学の学位審査を経て,両学長名で単一の学位を発行するというシステムでございます。
 次のスライドをお願いします。当初は,名古屋,フライブルク,アデレードのトライアングルで始めたものでありますけれども,それに現在ルンド大学も加わって,4大学で共同して進めている状況でございます。
 次のスライドをお願いします。現在のこれは学生の入学者数でございますが,多くは2名ずつ,あるいは1名ずつのプログラム,毎年2名ずつか1名ずつのプログラムでやっておりますが,やはりなかなか入学者を充足するのは難しい状況であって,現在,5割強ぐらいの充足率になっているところでありますが,各部局で努力しているところであります。
 ただ,国際共著論文については確実に増加しておりまして,それぞれの大学との連携により,国際共著論文が順調に発表されているという状況にあるということです。
 次のスライドをお願いします。課題と計画ということで,課題は,学生の充足をどう確保するかというのがやはり課題になっていまして,英語力であるとか,経済的サポートというのは極めて重要で,それをどう確保するかということがあります。それから,入学前からやはり広報をしっかり充実して,入学前にちゃんと,こういうコースがあるので興味を持ってもらうという努力もしっかり今後していきたいというふうに思います。
 名古屋大学としては,現在,先ほど紹介しましたように,工学研究科がチュラロンコン大学とのジョイント・ディグリー・プログラムを設置予定で今計画しておりますし,人文学研究科がウォリック大学とスーパービジョンプログラムを経て,ジョイント・ディグリーに移行する方向で現在話合いを進めているという状況にございます。
 次のスライドをお願いします。このジョイント・ディグリー・プログラムを進めるに当たって,ちょっと課題として感じ,規制緩和を是非要望したいと考えているのが大きく二つありまして,一つは,設置認可申請の簡略化。現在,大学ごとに国際専攻を立ち上げて,同等の設置審の資料で認可を受けないといけないという,一つ一つすごくエネルギーの掛かる作業になっています。ですので,これ,各研究科でまず一つ国際専攻ができたら,二つ目以降は,もちろん設置審で認可してもらうんですけれども,そこのシステムを簡便化していただいて,一つの国際連携にコースとして随時加えられるという形に是非していただきたいと。これはかなり我々としては切実な問題です。現在,医学系研究科は独自に三つの国際専攻を作っているという状況でありますので,それは是非一本化して,三つはコースとしてやれるような形で簡略化していただきたいということです。
 それから,第2点の学位記については,国際共通語である英語を正文とできるような形にしていただいて,大学の責任において和文訳を添付するという形にしていただきたいと。これ,和文が正文であると,やはりパートナー大学との交渉が非常に大変な状況になって,パートナー大学との学位記の整合性をどうするかということで,非常に議論が難航する事態が起きるので,是非JDPについては英文の正文化を認めていただければというふうに思っているところであります。
 もう1つ,ここには書いてありませんけれども,やはり経済的サポートというのは極めて重要で,現在,博士課程に対する経済サポートっていろいろ議論されているので,進んでいくとは思うんですけれども,博士課程の海外留学に対する経済サポートを,また別の次元で検討していただければと思います。
 次のスライドをお願いします。JDPというよりは,これは,G30の関係の規制要望なんですけれども,先ほど御紹介しましたように,G30は今急速に入学希望者が増えてきていまして,名古屋大学だと今,大体8倍の倍率になっております。なかなかG30の入学者数を予測するのが難しくて,先ほども議論がありましたように,学部の定員というのはやはりかなり厳格に定員管理が要求されている状況があるわけですが,是非海外留学生に関しての入学定員の超過率等を緩和していただきたい。留学生の定員の外出しというのはいろいろなところで議論させていただいているんですけど,現状ではなかなか難しいというようなことがありますので,それが無理でしたら,やはり入学定員の超過率の緩和について柔軟に対応していただければというふうに思っているところであります。
 次のスライド。あと,現在名古屋大学が関わっている国際連携活動について簡単に紹介しますと,一つはMIRAIという,日本とスウェーデンの学術交流活動で,これは2017年から始まったものでございます。
 次のスライドをお願いします。これは,日本側が8大学,スウェーデン側が7大学参加して進めておりまして,主にエイジング,マテリアルサイエンス,サステナビリティーという3分野でワークショップを開催して,現在交流が進んでいるというものでございます。
 次のスライドをお願いします。それから,RENKEIはイギリスとの連携で,これは日本側が6大学,イギリス側が6大学で進めていて,これは第1期の学生交流がメインだったフェーズから,現在,若手研究者の交流がメインの第2フェーズに移っておりますけれども,気候変動,Climate Changeとか,Health,健康が中心のテーマで,今,ワークショップ等が進んでいるという状況にあります。
 それから,三つ目,APRUは,これは環太平洋大学協会の連携活動で,現在,これはかなり多くの大学が加盟していて,50大学加盟しておりますが,この活動にも名古屋大学として参加をしています。
 次のスライドをお願いします。これは最後のスライドですが,医学系研究科として独自の国際的なアライアンス活動にも力を入れていて,これ,GAMEと名付けられているアライアンスなんですが,香港中文大学が中心になって,世界の医学部の共同研究,国際連携を進めようということで,今国際連携が進んでいる活動であります。世界の9大学の医学部が参加して進めているもので,こうした活動を通じて,名古屋大学としても国際ネットワークを進めて,国際的なプレゼンスを高めるとともに,ジョイント・ディグリー・プログラム等を通じて,できるだけ若い時代から,博士課程の時代から海外留学を経験させて,世界的な人材育成につなげたいというふうに考え,取組を進めているところでございます。
 以上でございます。

【有信部会長】
 高橋先生,どうもありがとうございました。
 質問は後ほどまとめてということにさせていただいて,引き続いて,政策研究大学院大学の大学院教育についてということで,田中委員から発表をお願いできますか。

【田中委員】
 政策研究大学院大学の田中でございますが,政策研究大学院大学といっても,一体どんな大学なのかというふうに思われる方がほとんどじゃないかというふうに思います。そういう意味で,きょう,この大学について御説明させていただきたく機会を与えていただきまして,本当にありがとうございます。
 資料の3-2というところに,1枚のレジュメがありますけれども,これに沿って御説明させていただきたいと思います。それから,政策研究大学院大学のパンフレット,「DATA SCIENCE at GRIPS」,「ENGLISH at GRIPS」,「国際的指導力育成プログラム」という,四つパンフレットがございますが,それを後で適宜御参照いただいて,お聞きいただければと思います。
 今の議題は国際化ということなんですけれども,この政策研究大学院大学というのは国際化のために造られた大学でもありますが,前の議題のリカレント教育のために造られた大学でもあります。もともとは1977年に埼玉大学大学院の政策科学研究科(GSPS)というのができまして,それが1997年に独立いたしまして,国立大学とさせていただいたわけであります。
 現在,ここに基礎データが書いてありますけれども,大変小さい,大学院しかない大学です。常勤教員数73人で,外国人が15人,職員が126。学生は,2019年5月1日現在の数字ですと,343人おります。修士課程が226人で,博士課程が60人,修士・博士一貫プログラムが58人。留学生が68%いて,留学生の方がずっと多い大学であります。大学院大学なので大学院しかありませんし,それから,研究科も一つ,政策研究科というのが一つで,それから,政策専攻と。これだけしかございません。
 主な対象者は,中央省庁,地方自治体,民間企業等の幹部候補職員,つまり,実務経験5年とか,そのぐらいある人たちで,それに加えて,政策研究の研究者になりたい人,これも対象にしております。
 ただ,2018年度修了者を見ますと,公務員,あるいは外国人の場合は政府機関に勤めている人,地方自治体に勤めている人,これが82%であります。ですから,先ほどの村田先生の実証研究からすると,我が大学に来ている日本人のほとんどの人は経済的合理性のない人たちということになろうかと思いますが,それにもかかわらず,政策科学研究科から含めますと四十何年間か続いておるということであって,この来ていただく公務員の皆さん,行政機関の皆さん等のある種のインセンティブというのは,必ずしも経済的合理性のみではない。日本国にとって重要であるというふうな使命感を持って来ていただいているというふうに思います。
 また,あと,外国人の方は,また後で述べますけれども,卒業した後,相当いいポストに就きますので,測ってみるとどうなるか分かりませんけど,我が方,GRIPSに来る外国人の留学生にとっては,相当収益率が高いんじゃないかなというふうには思っております。
 大学院のプログラム,どういうのがあるかといいますと,このパンフレットを開けていただきますと,折ったところにSDGsマークがくっ付いていますけども,ここにあるような修士課程,博士課程のいろいろなプログラムが並んでおります。
 大きく分けると,日本人対象のプログラムは,日本語と英語で行っています。それから,留学生対象のプログラムは全部英語で行うという形になっています。日本語・英語であるのが修士課程で4プログラム。この中では公共政策プログラムというのが一番大きくて,いろいろなコース,地域政策コース,文化政策コース,インフラ政策コース,防災・危機管理コース,医療政策コース,農業政策コース等々あるということになっております。
 英語のプログラムは,このパンフレットでいうと,大体みんなローマ字で書いてあるもので,留学生がほとんどでありますが,日本人の学生も少数おります。
 博士課程も,日本語・英語4プログラム,それから,英語3プログラムというふうになっております。
 それで,留学生が多く,日本人もおりますので,春入学と秋入学と両方あります。先ほど平野さんがおっしゃっていただいたように,実務経験のある人たちが対象なので,日本語も英語も,1年で修士号を取っていただくコースがほとんどです。そのため,1年を6学期に分けまして,春は,通常は前期と後期一緒にしてやりますけど,夏学期もあり,それから秋も前期・後期があって,それから,冬学期もあります。日本人も留学生も1年間,ほとんど休みなくずっと勉強してもらうという形で,1年で学位を取ってもらう。2年の修士課程もございますので,そういう方々にとっては,もう少しじっくりとやってもらうということであります。
 GRIPSの教育の特徴でありますけれども,学生が343人で教員が73人おりまして,授業は基本的には大変小さい授業。30人から40人いくと相当大きな授業ということになります。それで,行う授業は,修士課程でいえば,基本的に言うと,欧米で行っているグラデュエートスクールの授業と同じですので,学生には毎週リーディングアサインメントがあったり,あるいはミクロ経済とかマクロ経済とか計量経済の場合は毎週宿題があったりというような授業をやっていき,それから,また,ここの留学生は大変活発ですので,授業自体はディスカッション中心になっていくものが多いわけであります。
 教育方針としては,社会科学の最先端の理論とか方法論を修得してもらうとともに,実務あるいは実際の政策遂行に当たってどういうことを心構えすべきかという両方を重視したやり方になっております。教員の中で実務家教員比率は28%ということで,日本でいえば,日本の中央省庁の出身の方,それから,JICAとか,そういうところの機関というようなところの人に教育を担当していただいております。
 ここ一,二年で特に重視しておるのは,それぞれの専門に加えて,データ・サイエンスと,それから,英語・日本語教育です。パンフレットで「DATA SCIENCE at GRIPS」というのと,それから,「ENGLISH at GRIPS」というのがお手元にあると思いますけれども,データ・サイエンスは,科目として見ると,これまでも数量分析法とか統計学とかいろいろな名前でやっておったんですけれども,これを今度の4月から再編成して,データ・サイエンス基礎と,それから実践データ・サイエンスというようなものを取ってもらうということにしております。
 これ以外にも,経済系の科目でいいますと,計量経済学の入門から応用まであり,オペレーションズリサーチ等もあります。また,GRIPSは留学生の方が68%いるところなので,ここに来た以上は日本人の学生にも何とか英語もうまくなってほしいというふうに考えております。伝統的には,日本語プログラムに参加された方は,日本語の授業しか取らないという傾向にあり,余りこの環境をうまく生かしていないという感じがしていました。現在,一生懸命,日本人学生にも,留学生に出している英語の授業を実質科目として是非取るようにというふうに言っています。さらに,もう少し基礎的な英語も勉強してくださいということで,プロフェッショナル・コミュニケーションセンターというものを2014年に造ったんですけれども,ここを中心に語学科目として英語の授業をやっております。このパンフレットを開けていただきますと,右側のプロフェッショナル・コミュニケーションセンターというところに書いてあるんですけれども,今,GRIPSに入学していただいた日本人の方には,4月,最初に英語の試験をやらせていただいて,プレイスメントテストというので,どのぐらい英語ができるかということを調べさせていただいて,それでそれぞれに対して,あなた,この英語の授業に出なさい,あなた,こちらの英語の授業に出なさいということをやるようにしております。
 日本人の実務家向けの博士プログラムというのも,これは小規模ですが,やっておりまして,これは政策プロフェッショナルプログラムと言っております。これは修士号を持っている方対象なんですけれども,1年間のスクーリングをやっていただいた後,論文を実務に就きながら書いてもらうというプログラムであります。
 今,修了生は全部で5,043人おりまして,大学のパンフレットを開けていただいた真ん中のところに,出身国別修了生数というのがございますが,全部で116の国と地域で5,043名いるということになっております。なかなか偉くなった人もおりまして,今のベトナムの中央銀行の総裁とか,それから,マレーシアの人事院の総裁で,これはマレーシアでいうと,人事院の総裁は公務員でナンバーワンなんだそうです。フィリピンの中央銀行の現在の副総裁とか,モンゴルのエネルギー大臣,それから,大使になった人間は数知れずいるというようなことであります。日本人も,中央省庁,地方自治体ふくめて大変指導的な地位で活躍されております。
 これまでは,修士も博士も,少なくとも1年はスクーリングで,仕事から離れてやってくださいということで,週日昼間のカリキュラムでした。ですが,やはり中央省庁の幹部の皆さんのお話を聞くと,週日は仕事が忙しいので夜間や週末に授業をやってもらえないかという声が多いようです。そこで,今度の4月から,思い切って夜間と土曜開講の授業のみで単位取得可能な修士課程プログラム,これは標準修業年限2年でやらせていただくのを作ることにいたしました。
 その一つが,パンフレットで「国際的指導力育成プログラム」というふうに書いておるもので,これは中央省庁,地方自治体,民間企業,メディア,そういうところで,とりわけ国際的な活動をやっていただく方に基礎的な国際関係の知識・理論に加えて,実務,それから,国際的な交渉をやる上での必要な英語力の向上,高校生とか大学生のレベルの英語というのではなく,立派な大人のネゴシエーターとしての英語を身に付けてもらいたいということで,今度始める予定になっております。
 それから,もう一つ,科学技術イノベーション政策プログラムというのも,今は昼間のコースとして開いているんですけど,こちらも夜間と土曜日にオファーする授業を取っていただくことで単位を取得して,修士課程を取っていただけるようにしたいと思っています。
 ただ,この新規プログラムをやるに当たって一番私どもが悩んでおるところは,先ほど宮浦先生おっしゃったことと関係するんですけれども,学生にどのようにして勉学時間を確保してもらおうかということです。幾ら優秀な中央官庁の皆さんでも,大変忙しいわけで,授業が夜と土曜ということですから,授業自体はお取りになるのは物理的には可能だと思うんですけれども,やはりクオリティーを高めるためにはリーディングアサインメントを読んでもらわなければなりません。各授業のやり方を工夫していく必要があると思っています。
 国際的なプログラムでいいますと,先ほど申し上げましたような,大変有力な皆さんになっていただいている一つの背景は,そもそも派遣していただく方が,既に各国政府で課長補佐クラス級とか,そのぐらいになっている人に来ていただいています。来ていただくに当たって,今,留学生でいいますと,日本滞在の自己負担者は5%以下です。95%は,何らかの形の奨学金を提供しています。世界銀行の奨学金とか,ADBの奨学金とか,IMFの奨学金とか,それから,JICAの奨学金とか,あるいはもちろん文科省の奨学金,それから,先方政府の奨学金を頂いている場合もあります。とりわけ優秀な人材が日本に来て学位を取ってもらうためにはやはり奨学金などの手当てが必要かなと思っているところであります。
 以上,簡単ですけれども,御紹介させていただきました。

【有信部会長】
 田中委員,どうもありがとうございました。
 それでは,これから議論に移りたいと思いますが,佐久間委員から名古屋大学に関して少し補足があるということで,よろしく。

【佐久間委員】
 名古屋大学から先ほど発表がありましたけれども,ちょっと補足をさせていただきます。
 先ほどの話の中にもありましたように,ジョイント・ディグリーは現状では理系部局がやっているわけですけれども,人文学の方でも,ウォリック大学とジョイント・ディグリー実施に向けて準備を進めているところです。私が研究科長だったときに取り組みましたので,文系が進めていく上での課題ということで,ちょっと補足させていただきます。
 全国的に見ても,ジョイント・ディグリーで文系は少ない,あるいはないのかもしれないですが,それは理系の場合,世界中どこで勉強,研究しても,優秀な大学であれば,どこでやってもいいのに対して,人文系の場合は,学問自体に地域性がどうしても伴うので,そういうことが一つ困難な点としてはあります。ただ,それだけではなくて,やはり先方との交渉に当たってなかなか難しかったのは,要するに,学位授与の慣行が違うということで,よりはっきり言えば,特に後期課程に関して言うと,なかなか日本の方では標準修業年限内に学位が出ないということがあって,そこが一番難しかったところではございます。
 というわけで,国際化を進めるのであれば,やはりそこら辺を変えていかないとなかなか難しいと思います。もちろん,そのときに学位授与に関してダブルスタンダードになってはいけませんが,全体的に標準修業年限内に学位を出すようにしないといけないということが,実際,交渉に当たってみての感想ということになります。
 あと一つ,名古屋大学ではG30プログラムにも積極的に取り組んでおりまして,それなりに成果が上がっていると思うんですが,G30の学部に来た学生がどこに行くかというと,スライドの中にもあるように,オックスフォード大学とかMITとか,非常に著名な大学に進学しています。
 そのことについて,名古屋大学としては,本学の教育が国際通用性を持った高いレベルの教育であると評価しているわけですが,ただ,そういう優秀な学生であれば,是非大学院も名古屋大学に進んでほしいという思いもあります。そのためには,大学院生に対する処遇の改善ということは,やはりどうしても必要なんだろうと認識しているところでございます。
 私の方からは以上です。どうもありがとうございました。

【有信部会長】
 ありがとうございました。
 それでは御質問,コメント等ありましたら,どうぞ。どちらの発表に関してでも結構です。

【三島委員】
 名古屋大学の御説明,大変エネルギッシュに,しかも非常に幅広い国際化を図っていらっしゃるんで,すばらしいなと思いました。
 今も佐久間委員がお話しになりましたけれども,ジョイント・ディグリーってやっぱり相当質の相互の了解が取れるプロセスになると思うので,大変だと思います。その中で,特に医学系の専攻ですと,博士後期課程でもやはり共通科目とか,そういう教育の科目がいろいろございますよね。その教育の部分の質というのをどうやって保証するかというところが一つ大きいかと思います。多分,それに先ほど佐久間委員が触れられたんだと思いますが,少し具体的にどんなふうなやりとりで教育の部分も含めた質保証みたいなことを,たくさんの大学相手でございますから,御苦労があったかというようなものを聞かせていただければと思います。

【粕谷名古屋大学大学院医学系研究科教授】
 名古屋大学医学部の粕谷と申します。どんなような交渉をしていくか,質に関して,クオリティーに関してという話なんですけれども,基本的には二つの方法があるかと思います。最初のときに学生がこういう研究をしたいというふうに相手大学の方の大学の方,大学院を調べてくる可能性もありますし,また,それ以外に,私たちがやっているような,そういうシンポジウムの中で知り合いになったPI同士,教授同士の中で共同研究をしていきたいという中で,自分たちの大学院生をそこでジョイント・ディグリー・プログラムという形で教育していこうかというような,そういう形の共同研究という形が考えられていくという二つのパターンがあるかと思います。
 いずれの場合にも,医学部の場合だと,国際連携室というところがあるんですけれども,そこが中心になってコーディネートしていくという形で,研究の内容,まずどんな研究を,二つのそれぞれ別の研究室でやれるのか,どのように分担をするのか,それが質がきちんと伴っているかということを,学生と2人の教授,3者交えて何度もスカイプミーティングをするという形で,大体の方向性がちゃんとしたものになるかどうかということを確認します。また,そこで修正もします。その中で,これなら大丈夫だというところで,それからその学生を本当にジョイント・ディグリー・プログラムに入れるというような形をとっています。
 それがまず一番最初の部分で,あとは全体のフレームとして,最初のときに,例えば,アデレード大学ならアデレード大学と共同教育科目というのをどうやって作るかという話をしていって,お互いの強みというところをお互いに調べます。統計が強いのか,動物学が強いのか調べた上で,強みのところをお互いにより強く,また,弱いところを補塡するような,そういう意味で,一番いいと思われる部分をとったような形の共通プログラムを作るということを,全体のフレームの中で作業を行います。出来上がってきた共通科目という中で,ジョイント・ディグリー・プログラムの学生が学んでいって,単位を取っていって,なおかつ研究をして,論文を一つ――論文は一つだけでいいということですね。それで卒業していくと。
 最後のときに,論文という部分で,提出という形なんですが,質を担保するために,それぞれの今行っている名古屋大学のプロセス,それは必ず同じ程度のものをこなさなくちゃいけない。他大学,アデレードならアデレードで行っているプロセスの論文審査は行わなくてはいけない。それをちゃんと超える内容であるものを,さらに最終に論文審査を合同委員会で行うという過程をとることで,最終的に出てきた論文の提出といったもののクオリティーが下がらない。より以上のものになるようにというような,そういうプロセスをとって,質の担保をしているという形になります。

【三島委員】
 ありがとうございます。一番伺いたかったのは,いわゆる単位を取る条件として,講義数が例えば90分授業何回とかということのほかに,自習としてどのぐらいの時間勉強するかというのが,かなりアメリカの大学なんかでも非常に厳しくて,日本の大学となかなかうまくいかないということがありましたけど,そういう御経験はありましたでしょうか。

【粕谷名古屋大学大学院医学系研究科教授】
 特に経験の中では,ヨーロッパの大学ですね。ヨーロッパの場合は時間数でかなり決められた時間数を取らないと,単位として認めていかないという,卒業までの,修了までのという,そういう時間数の制限があります。時間数の制限のところも,それも両大学を行き来するんですが,そこの中でその時間数を決して下がらない,減らないように,そのことを計算した上で共通科目を取る。そしてあと,セミナーといったような形とか,それから,受けなくちゃいけないような特別講義といったような,特論と言うんですけども,そういったものを組み込んでいって換算しております。

【三島委員】
 分かりました。ありがとうございます。大変な御努力だと思います。ありがとうございました。

【有信部会長】
 ほかに。
 どうぞ,波多野委員。

【波多野委員】
 ありがとうございました。高橋先生を中心に名古屋大学で驚異的な御尽力をされていて,大変感心いたしました。おっしゃっていたように,設置許可の申請を簡略化や効率化など,必要と思います。大学全体,部局,それぞれの先生方の研究分野でも国際化を進めるために,戦略的に効率的に,現場の教員のエネルギーと時間のロスを低減することも重要です。設置許可の申請については,学位の分野に変更がない場合は当然もっと簡略化すべきだと思います。さらに高度な人材を引き寄せ,育成するためにも,大学間の知見や情報共有を進めることも重要と思います。学位の質は保証し,厳格に審査するが,簡略化したプロセスというのがあり得ないものか,現場の教員としては常に感じているところでございます。その辺,実際,いかが感じていらっしゃるかというのをお伺いしたいです。

【高橋名古屋大学理事・副総長】
 おっしゃるとおりで,医学系研究科の場合,三つ,専攻を作ったんですけど,毎回同じエネルギーを掛けないといけないという,大変な状況になって,これは我々,経験的にも,一つ目で大体のことはもうどういう手続をすればいいかというのは分かっていますし,クオリティーの担保の仕方も理解できるので,二つ目からはもう少し簡便な方法をお願いしたい。特に問題なのは,一つずつ専攻を立てると,一つずつ専任教員を張らないといけないんですね。これもまた非常に無駄なことで,一つの専任教員がそれぞれ,うちでしたら三つのコースを全体を俯瞰して運営してもらうという形で,それで,粕谷先生が所属される国際連携室がそれを全面的にサポートするという体制で十分やっていけると思うので,是非その辺は,至急,改善していただくことを心より期待しております。

【有信部会長】
 今,たしか学位プログラムに関して言うと,学位分野が変わらなければ,届出だけでいいという形に変わってきているんだけど,その程度のレベルではまだまだだめということですか。

【高橋名古屋大学理事・副総長】
 ちょっと学位プログラムの方向性の議論と,この辺の議論……。

【有信部会長】
 手続的に届出だけで済めば,今の労力はかなり減るというふうに思われますかという,これが質問なんですが。

【高橋名古屋大学理事・副総長】
 そうですね。ちょっと正確に状況を把握していないので,正確に答えられるかどうか分からないんですけれども,印象としては,学位プログラムのような形で進めていただければ,多分,対応可能なのかなという印象は持っていますけれども。

【有信部会長】
 じゃ,その辺含めて,多分,今後の検討だと思うんですよね。そのレベルであれば,多分,学位プログラムに関しては,基本的な要件でそういうふうにたしか制度が変えられたということになっていますので。
 それでは,ほかに。どうぞ。

【神成委員】
 名古屋大学のジョイント・ディグリーをこれほど大掛かりに展開しているというのは,本当にものすごいなと思ってお聞きしました。国際的な教育の連携では,ジョイント・ディグリーは確かに新しい専攻を作るような形で難しいのですが,一方で,ダブル・ディグリーという方法もあり,修士の場合のダブル・ディグリーは,一般には多分,修業年限を1年増やして,3年で両方から修士を取るという形にしていると思います。ヨーロッパでは,ジョイント・ディグリーでの博士課程と同様に,ダブル・ディグリーの博士課程というのが今動いていて,いずれかを採用している大学と採用していない大学,大学の戦略によっていろいろあるということを少し調査したことがあります。名古屋大学の,特に医学系研究科の場合は,修士のない4年課程でありますので,これはジョイント・ディグリーで教育プログラムを融合させれば,比較的整合性がとりやすいのかなと思うんですが,修士と博士課程が別々になっているような人文系とか工学系においては,もしかしたら,ダブル・ディグリーという選択も制度上的に,また,申請上の容易性からも可能ではないかと思うんですが,あえてジョイント・ディグリーという形をとったという理由をお聞きしたいのが一つです。もう一つは,文科省的には,博士課程のダブル・ディグリーというのとジョイント・ディグリー博士課程というのは,何かそこにおいて格の違いというか,どちらかを推奨したいというか,何かそういう思惑というのは特にあるんでしょうか。

【高橋名古屋大学理事・副総長】
 まず,名古屋大学から。JDPを選択した理由というのは,今おっしゃったように,名古屋大学の基本的なスタンスの方向性としては,修士課程はダブル・ディグリーを含めて検討しましょうということで動いていて,博士課程の方は,基本はJDPをやるという方針で行っています。
 ダブル・ディグリーの場合は,もちろん4年というコースもあるんですけれども,なかなか4年で二つの大学で論文を書くというのは,医学系の場合はほとんど不可能に近い。今,4年でも1つの論文を完成させるのが厳しい状況にあるので,そうなると,ダブル・ディグリーというのは,二つの大学でしっかりしたちゃんと質的な担保,質的な保証を得る二つの論文を書くというのは困難であろうというのが我々の見解です。やはり4年コースでJDPでしっかり質の担保した論文を一つしっかり書く。そういうシステムを作った方がいいんではないかと。
 海外の有力大学からダブル・ディグリーの提案もあるんですけれども,例えば,典型的な例で,海外の大学もよく理解しているので,4年で二つ論文を書くのは不可能というのは,我々,彼らも認識していると。なので,日本は論文が必要だろうから,書いた論文は日本の学位でいいけれども,我々の方は学会発表で学位を出すので,そういう形でのダブル・ディグリーはどうかという提案も受けたことがあります。やはりちょっとそれでは質的にどうなのかなという,我々,考え方を持っていますので,ほかの学部で,例えば,工学系なんかで4年でダブル・ディグリーをやっていけるというところはもちろんあるかもしれないんですけれども,現状としては論文の質保証という点から,博士課程はJDPを進めるというのが,名古屋大学の考えです。

【粕谷名古屋大学大学院医学系研究科教授】
 済みません,名古屋大学の粕谷ですが,ちょっと追加でコメントさせていただきます。
 ダブル・ディグリーとジョイント・ディグリー・プログラムの利点に関して,ジョイント・ディグリー・プログラムの利点の中に,設置審,大変なんですけれども,その設置審を通すためにかなり一緒にプログラムを作らなくちゃいけないんで,相手の大学を知る必要があるんですね。相手の大学院プログラム,他国の,海外の大学院プログラムをしっかり知らないと,結局,申請書が書けないという状況になって,その後の付き合いの中でも,結局,相手の大学院プログラムとずっと接しながら仕事をしていくことになるので,もしその相手の大学院プログラムに物すごくいい点があれば,それを取り込んで,自分たちの大学のプログラムに入れていくというような考察ができるという利点が大学間にあります。
 例えば,日本の大学,私たちの場合,やっていなかったんですけれども,医学部の中で1年ごとに研究進捗を学生と教員から出させて,毎回それを執行部の方というか,大学院の委員会の方で必ずアニュアルレポートを見るとか,そういった話も一つの例としてあるんですけども,いい話が,いいプログラムがあれば,それを取り入れるということができるという中では,まず相手を知ることがよくできるのはジョイント・ディグリー・プログラム,大学間の,大学としてのメリットが一つあります。
 それから,学生にとっては,どういう教育を受けてどういう人材になるかという,養成される人材像というか,ディプロマポリシーがはっきりしているので,こういったディプロマポリシー,養成する人材像で,あなたはこのカリキュラムの中で,共通カリキュラムの中で育ってこられるという中で,決まった方向性を見せながら,それに沿ったカリキュラムを提供して,私たち教員も教えていくということができるので,そういう意味では,学生に分かりやすいし,質もしっかりと担保された,養成された人材が出るという中では,ある意味,放し飼いなダブル・ディグリーよりは質の担保ができるという意味で学生にし,そして,相手の大学のシステムが分かるという意味では,大学にとって利点があるという,そういったところは一つあるかなと思います。

【有信部会長】
 文科省的には,何かその区別があるんですか。

【平野大学改革推進室長】
 今,先生からいろいろおっしゃっていただいたところに含まれている部分もございますけれども,ジョイント・ディグリーは,これは大学設置基準上の制度であります。ダブル・ディグリーというのは,基本的には単位互換というものを活用した一つの取組ということであります。
 どちらを推奨してどちらを推奨しないというものでは決してないわけでありますけれども,ジョイント・ディグリーは一つの――これは分かりやすいので,学部の単位数をちょっと用いて説明しますけど,ジョイント・ディグリーは,基本的には124単位で一つの学位が出ると。ダブル・ディグリーというのは,物の見方によっては,124単位で二つ学位が出ていると。学位の質保証という観点からしっかりとどのような措置を各大学で講ぜられるのかという部分については,ダブル・ディグリーという部分は相当工夫して行わないと,場合によっては,学位に比した形で非常に学修量という部分で責任が問われてくるケースというのもあるかもしれないなというふうに,個人的には思っております。

【有信部会長】
 ありがとうございました。
 ちょっと不手際で時間が多少過ぎておりますけれども,まだ質問,コメントありましたら。
 どうぞ,堀切川さん。

【堀切川委員】
 名古屋大学の先進的な取組,すごいなと思ってお聞きしておりました。
 スライドの22ページにもあるんですけれど,英語だけで学部・大学院を卒業・修了できるG30ですか,というのに取り組んでおられて,すごいなと思いましたが,私のいる東北大学工学部工学研究科の機械系だけなんですけれど,やはり同じように英語だけで卒業・修了できるIMACというプログラムをやっているんですが,ここに書いてある要望,大賛成で,実は留学生,優秀な人ほどよそのアメリカの大学に取られたりする場合もあって,辞退率がほぼ予想できないというのは,同じ状況です。
 それで,ちらっと調べて,余り正しいデータじゃないかもしれないんですけど,辞退した理由って教えてくれないんで,何となく調べた感じで言うと,奨学金を余計に出すほかの国の大学,大学院に受かっちゃうと,そっちに取られるというのが圧倒的に多いのではないかと予想しております。
 これを止めるには,ここに書いてある御要望も大賛成ですが,英語だけで卒業・修了できるプログラムを頑張っているところには,何か別個奨学金をどんと付けてもいいぞとか,文科省が推進的な支援制度を作っていただければ,非常に辞退率が減るかなと実は思っているところでございます。それが一つ目のコメントです。
 二つ目なんですけど,政策研究大学院大学,すごい取組だなと思って,学位もちゃんと与えて,国内外の優秀な人を集めていて,すごいなと思いましたが,地方自治体でいくと,総務省の自治大学校というのがあって,そこも100人200人単位で1か月から2か月以上合宿型で詰め込みで,やっぱり自治体の幹部候補職員を集めています。そっちの方はかなり応募が殺到して,毎年,何回もやっておられるんですけれど,学位をあげるシステムではないというところですが,政策研究大学院大学としては,総務省の自治大学校はライバルになり得るのか,全く違うのかというところを一つお聞きしてみたいと思ったところであります。

【有信部会長】
 じゃ,田中委員。

【田中委員】
 実質的な意味においてはライバルだと思いますが,自治大学校は学位プログラムではないので,私どものところは学位を出すというプログラムのところで,そこで対象者がやっぱりかなり変わってきてしまう。今の段階で言いますと,特に地方自治体の方ですと,私どもの学校で,夜間と土曜でやるっていったって,なかなか難しいんですね。そうすると,地方自治体の方でGRIPSに来ていただく方というのは,やっぱり地方自治体それぞれの御判断で1年休職していただけるという方になるので,ですから,自治大学校での研修とはちょっとやはりターゲットが変わってきているのかなという感じはいたします。

【堀切川委員】
 どうもありがとうございます。

【有信部会長】
 よろしいでしょうか。きょうは,政策研究大学院大学の内容というのは余り知られていなかったと思いますので,非常に貴重な内容の紹介だったと思いますし,名古屋大学の非常にアグレッシブな取組についても参考になると思います。今後,こういう内容を踏まえつつ議論を進めていければと思いますので,よろしくお願いします。
 本日の議題はこれで全てですが,事務局から何か。

【平野大学改革推進室長】
 ありがとうございました。
 本日,質保証に関係する御議論でありますとか,また,制度に係る御意見というのも頂いたところであります。これらについては,大学院部会というところのみならず,また今後行われる議論においても参考にしてまいりたいというふうに思ってございます。
 次回の開催については,先ほどちらっと申し上げましたけれども,3月以降に開催をさせていただきたいと思っております。後日,日程調整の上,御連絡を申し上げます。
 資料について郵送を希望される先生は,附箋に郵送希望と書いて置いておいていただければ,勤務先の方にお送りさせていただきます。
 本日はありがとうございました。

【有信部会長】
 不手際で延長してしまって申し訳ありませんでした。これで閉会とさせていただきます。ありがとうございました。


── 了 ──
 

お問合せ先

高等教育局大学振興課大学改革推進室

大学院第一係
電話番号:03-5253-4111(内線3312)