大学院部会(第91回) 議事録

1.日時

平成31年1月10日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省東館3階 3F1特別会議室 

3.議題

  1. 第9期大学院部会における議論のまとめ
  2. その他

4.出席者

委員

(部会長)有信睦弘部会長
(臨時委員)天野玲子、池尾恭一、加納敏行、川嶋太津夫、川端和重、神成文彦、小西範幸、佐久間淳一、迫田雷蔵、高橋真木子、田中明彦、永里善彦、堀切川一男、湊長博、宮浦千里の各臨時委員

文部科学省

(事務局)藤原事務次官、義本高等教育局長、瀧本総括審議官、平野大臣官房審議官(総合教育政策局担当)、玉上大臣官房審議官(高等教育局及び高大接続担当)、森審議官(高等教育局及び科学技術政策連携担当)、千原大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)、岩本文部科学戦略官、蛯名高等教育企画課長、三浦大学振興課長、石橋高等教育政策室長、平野大学改革推進室長、大月専門職大学院室長他

5.議事録

【有信部会長】

 おはようございます。所定の時刻になりましたので,第91回の大学院部会を開催させていただきます。御多忙の中,御出席賜りましてまことにありがとうございます。
 本日は,五神委員,室伏委員,井上委員,大島委員,岡島委員,樫見委員,車谷委員,沼上委員,藤原委員が御欠席と伺っております。
 それでは,事務局から,配付資料の確認をお願いします。


【平野大学改革推進室長】 

 失礼いたします。配付資料は,机上の議事次第のとおりでございます。配付資料,参考資料がございます。机上資料はタブレットに入ってございます。抜けている資料がございましたら,事務局にお声掛けをお願いいたします。


【有信部会長】 

 それでは,そういうことで確認をお願いします。
 前回の大学院部会で,審議まとめについて,様々御意見を頂きました。本日は,頂いた御意見を基に,資料1に関して,事務局から説明をしていただいた後に,それについて少し意見交換をした上で,最後に,1人3分程度,次期の大学院部会へ引き継ぐべき事項について御意見を伺う予定にしています。
 なお,この審議まとめに関しては,本日の部会で最終的な取りまとめとさせていただいて,その後,大学分科会に付議するという予定になっていますので,よろしくお願いします。
 それでは,事務局から説明をお願いします。


【平野大学改革推進室長】 

 失礼いたします。
 ただいま部会長からお話しいただきましたように,これまで頂いた御意見を踏まえて資料を修正しているところでございます。本日は,資料1-2,見え消し版をもって御説明をさせていただきます。
 なお,審議まとめの概要は資料2,要旨が資料3ということになってございます。
 それでは,資料1-2をごらんください。
 まず,表紙でございます。こちらがタイトルでございます。タイトルについては,前回たくさん御意見を頂いておりました。
 主な御意見としては,「体質改善」という言葉はどうなのか。また,これはやはり使った方がいいのではないかという御意見。また,元のサブタイトルが受け身過ぎるのではないかといった御意見。その他含めていろいろな御意見を頂いたわけでございます。
 また,こういうまとめでございますが,なかなか片仮名が使いづらいとか,いろいろな制約条件がある中で,私どもの方で部会長とも相談して考えさせていただいているのが,今のこの「2040年を見据えた大学院教育のあるべき姿」というのをメーンタイトルといたしまして,サブタイトルを「社会を先導する人材の育成に向けた体質改善の方策」という形でまとめさせていただいたところでございます。
 続きまして,目次をごらんくださいませ。目次につきましても幾つか御意見を頂いていたところでございます。
 平仄といたしまして,終わりの部分が「○○について」となっているものと,そうでなかったものがございましたので,目次については平仄を合わせております。
 また,リカレント教育の部分については,リカレント教育についてという単にテーマとすることを挙げるのみならず,「充実」といった方向性が見える記述にいたしました。
 人文・社会科学系大学院については,しっかり「課題とその在り方」と表現してはどうかといったような御提案を頂きましたので,修正をしているところでございます。
 続きまして,2ページ目の下の部分でございます。
 2ページ目の下の部分については,先だって出されたグランドデザイン答申とは別に、となっていたわけでございますけれども,それは両方連動するものであるというような御意見を頂きました。その趣旨を踏まえまして,グランドデザイン答申と併せて「審議まとめ」を示すという形で修正をしているところでございます。
 3ページでございます。
 3ページにつきましては,ここはちょっと表現が弱いのではないか、大学院が直面する課題の解決に力を尽くすことを強く期待したいというよりは,もっとしっかり取組を進めるということを書くべきではないかといったような御意見を頂きました。「積極的に大学院の改革に向けた取組を進めることを強く期待する」とさせていただいてございます。
 4ページにつきましては,これはグランドデザイン答申では,「グローバル化」というように言っているということでございますので,平仄を合わせたものでございます。
 5ページでございます。
 5ページにつきましては,「知のプロフェッショナル」について,活躍するのが我が国にあたかも限定されているように見えるのではないかという御指摘がございましたので,「我が国の社会全体でもより一層活用していく」ということで,我が国という枠を超えた活躍も当然あり得るということが分かるようにしたところでございます。
 中央近くにつきましては,「SDGsの達成に向けて」という言葉を加えさせていただいてございます。SDGsについて,Society5.0やグローバリゼーションと比較して言及されていないのではないかという御指摘を踏まえた修正でございます。
 下の部分の、能力に関わる部分でございます。まず,少し長めの挿入でございますが,「研究成果の社会実装に当たり倫理的・法制度的・社会的課題に対応する」,いわゆるELSIの考え方,このようなものについても,しっかり倫理観を踏まえる上でも取り入れていく必要があるのではないかといった御意見がありました。このようなことを反映させていただいたものということでございます。
 また,コミュニケーション能力の部分については,「高度な英語力を含むグローバル化に対応したコミュニケーション能力」ということであったわけでございますけれども,重点が置かれるべきはコミュニケーション能力の部分ではないかという御指摘がございました。そのため,コミュニケーション能力に優れたということを書きまして,ここの部分が非常に求められているということを明らかにしたものでございます。
 続いて,ページを飛ばさせていただきます。16ページでございます。
 16ページに,1段落分,挿入をさせていただいてございます。「各大学が強みや特色を最大限に発揮し,我が国全体の大学の教育・研究リソース有効に活用していく観点から,連合大学院,共同教育課程等の国内大学が連携した取組に発展させていくことも効果的と考えられる」としているわけでございます。こちらにつきましては,大学の連携先として,もともと海外大学,産業界,このようなところについては想定があったのではないかという一方で,国内大学同士の連携についても,しっかりどこかで言及する必要があるのではないかといった御意見を踏まえた修正でございます。
 続きまして,25ページの脚注でございます。
 25ページの脚注につきましては,北陸先端科学技術大学院大学の取組を例として掲げているところでございます。これについては,もともと奨学金の免除の仕組みというところまで書いていたわけでございますが,この取組の背景としては,企業と大学とが連携する中で,それが連携して研究指導に当たるということもある、というような御指摘がございました。これは単にお金だけの関係ではなくて,研究指導に当たっても連携していくということを表すための修正でございます。
 続きまして,27ページをごらんください。
 27ページにつきましては,リカレントについてということで,ライフイベントということについては記載されているものの,継続的な能力開発という部分について,どのように考えていくべきなのか。また,特定の職種においては,資格取得の要件もしっかり考えていくべきではないかというような御意見があったところでございます。
 大学院の部会の取りまとめということですので,言及できる範囲は一定限界があるわけでございますけれども,ここの部分で身に付けた能力を継続的に維持向上させるという継続教育の必要性。また,国際的な状況,先ほど申し上げた資格取得要件の話も含めて,こういったものをしっかり勘案するということが想定されるのではないかということで記述を追記しているものでございます。
 続きまして,39ページでございます。
 39ページにつきましては,企業と大学との意見交換ということについて加えさせていただいているものでございます。産業界に単に情報発信をするだけではなくて,産業界と意見交換をする機会をしっかり増やしていくべきではないか,このような御指摘を頂いたわけでございます。ですので,国としても,しっかり博士の学生,学位の重要性を周知するということで,企業の意識や慣行の変革を促すことに加えて,処遇の在り方についてしっかり意見交換のきっかけにつなげていくというようなことも考えられるのではないかということの追記でございます。
 続きまして,40ページをごらんください。
 40ページにつきましては,アントレプレナーシップ教育の充実ということを書かせていただいているところでございます。大学院生の意識変革を促すような教育の一環として,アントレプレナーシップ教育は極めて重要であると,このような御指摘を前回頂いたところでございます。
 続きまして,41ページにつきましては,進路の状況の把握等について努めるといった内容を書いているわけでございますけれども,実は最初の方に書いてある進路の確保について責任を負うという話と非常に連動している部分でございます。13ページからここまでちょっと場所が離れてございますので,もう一度ここについて触れて,両者がつながっているということを明らかにしたものでございます。
 続きまして,42ページ,リカレント教育の充実の部分でございます。
 リカレント教育の頭の部分でございます。幅広い年齢層の人材が高度な「知」を身に付ける必要があるというふうになったわけでございますが,その必要性を前提に,しっかりそういう「知」にアクセスができる教育機会を充実させるということこそが重要なのではないかという御指摘を頂いたところでございます。
 43ページをごらんください。
 43ページについては,いわゆる社会人学生など多忙な学生の柔軟な学び方という部分についてでございます。
 標準修業年限より長期又は短期の履修ということを言っていたわけでありますけれども,そこはとらわれることなくということで,まず表現を変えてはどうかという御意見。
 また,リカレント教育に社会人の参加を促す方法としてのいわゆるパートタイムのやり方について,こういったものもあるのではないか。単位制授業料について,こういったものもあるのではないか。今の仕組みでは,半期で1科目しか取れないような方がなかなか対応できないのではないか。こういったことを踏まえて,メリハリがある履修ができるということがはっきり分かる記述にすべきではないか。このような御意見があったわけでありまして,特定のセメスターにおいて集中的に学修を行うなど,メリハリのある学修を可能とする,このような記載を追記させていただいたわけでございます。
 44ページでございます。
 44ページにつきましては,いわゆる土日の夜間といいますか,土日休日の講義をする教員に対するサポートという点におきまして,もともと子育て中の教員ということもあったわけでありますが,子育てのみならず,ワークライフの中には介護等もあるであろうということで,ここは「等」ということで,ほかのものは含めさせていただいてございますけれども,子育てだけに限らない記述ということにしているわけでございます。
 49ページをごらんください。
 49ページにつきましては,もともといわゆる「選択と集中」という言葉を使っていたわけでございます。ここの意図していることは,例えば教教分離とか,重複している部分の整理とか,そういうことであるのであれば,「選択と集中」という言葉ではなくて,小規模の専攻においてもしっかり機会が与えられるというような形で学内資源を活用するということが見える表現にしてはどうかというような御提案があったわけでございます。
 そのため,「小規模専攻においても教育研究指導が効果的に行われ,十分な教育研究機会が与えられるようにする観点から,研究科・専攻間の連携や連合大学院,共同教育課程等の積極的な実施により,学内リソースを有効活用することが重要」ということで,文言を補ったという形でございます。
 本文の修正につきましては,あともう1か所ございます。53ページでございます。
 53ページは,卓越大学院についてということで,会議終了後,書面で頂いた意見を反映しているものでございます。
 卓越大学院については,事業期間が終了したらそれでおしまいということではなくて,しっかり各大学で安定的に高度な博士人材を育成していっていただくということが必要でございます。
 また,その在り方については,今後も公募が行われるということでございます。その観点から,在り方をよりよいものにしていくということが必要になります。
 また,補助期間に限られた取組から脱却した仕組みとしてしっかり定着させる、ということについて記述をするべきであるという御意見を頂いたわけでありまして,そのような趣旨の修正を加筆させていただいてございます。これをもちまして,本文の修正は以上でございます。
 資料2でございます。資料2は概要ポンチ絵でございます。一部のみ修正してございます。
 一番頭の左上の部分に「Society5.0の到来」という表現をしていたのですが,Society5.0は到来するのか実現するのかといったようなお話がございました。ここは「実現」というようにさせていただいたわけでございます。
 また,もともと平板な形で黒一色に書いていたところがあって,どこの点が強調点なのか若干分かりにくい、特に「知のプロフェッショナル」の育成を大学院が中心的に担うという中で,学部段階のスキル,リテラシーのいずれも高い水準で身に付けている,このような値については,学部段階とは違うレベルで身に付けているということが強調されてしかるべきでありますが,もともとそこの部分が余りはっきり出ていなかったということがありますので,この1番から3番については,強調すべき点,前に出すべき点を太字で下線という形で強調させていただいたということでございます。
 修正の点についての説明は以上でございます。資料1-2と資料2,今御説明したところでございますが,御意見があれば頂ければと思います。よろしくお願いいたします。


【有信部会長】 

 どうもありがとうございました。
 ただいまの説明に関して,何かコメント等ありましたら,よろしくお願いします。
 当面,今の説明は,様々,特に12月の議論をだんだん思い出されていると思いますけれども,今後の課題というところも多少触れてあるということになっています。
 どうぞ,田中委員。


【田中委員】 

 まだ修文的なことをコメントしていいですか。
 前回の議論をまとめていただいてありがたいと思うのですけれども,こんなことを申し上げるのはなかなか恐縮なんですけれども,いろいろ取り入れていただいたために文章が長くなっていて,ちょっと文意が取りにくいのが出ているので,何とかもうちょっと短い文章に変えてくれないかなと思うのがあって,例えば,これだけではないと思うんですけれども,39ページを見ていて,私,思ったんだけれども,一番上の黄色が付いているパラグラフで,「雇用慣行の違いは存在するものの」と始まる文章が,延々と7行も続いているんです。これはやっぱり少し御配慮いただけるとありがたいかなという,そのぐらいであります。
 ほかにも,もう一度見ていただいて,長い文章は短くしていただくということをやっていただけるとありがたいと思います。


【有信部会長】 

 読む方が息切れしますから,それは是非よろしく。
 ほかに御意見がありましたら。
 さんざん議論をしていただいた結果のまとめなので,ここでひっくり返るような御意見は多分ないと思いますので,最終的には,今の田中委員の御指摘もごもっともなところがありますので,全部含めて,事務局預かりというか,こちらで預からせていただいて修正するということにさせていただければと思います。
 今回が実は第9期の大学院部会の最終回になりますので,来期に向けて,来期の大学院部会への申し送り事項等を含めて,本日は各委員からそれぞれ御意見を伺えればと思います。順次,名簿順に御意見を伺うということにさせていただきたいと思いますので,お一方大体3分程度をめどに,よろしくお願いしたいと思います。
 それでは,申し訳ありませんが,天野委員から。


【天野委員】 

 いろいろ議論に参加させていただきましてありがとうございました。私は,教育界にいる人間ではありませんので,皆さんと視点が大分違っていたのではないかという気がしています。
 次に向けての申し送り事項ということで,皆様方から非常にいろいろな点が出ると思いますので,私自身ちょっと気になっていることだけ。
 というのは,ここにも「倫理観」というキーワードが初めの方に出ていると思います。昨今の社会状況を見てみますと,品質保証問題から始まって,生物科学ですとか,ビッグデータの取扱ということで,倫理観ということが非常に問題視されてきていると思うんです。やっぱりこういうものを言葉で教育の中に入れているということもありますので,次回のこの部会の中でも,是非そういう議論をしていただけると幸いだと思います。
 以上です。


【有信部会長】 

 ありがとうございました。
 それでは,次は池尾委員,よろしくお願いします。


【池尾委員】 

 ありがとうございました。
 私は,経営系の大学院の人間なので,そういう観点から3点ほどお話しさせていただければと思います。
 1つは,再三ここでも議論しました実務家教員の在り方で,やはり実務家教員の質をいかに高めていくかということで考えたときに,現場でまさに活躍している方に教えていただきたい。ですから,二足のわらじができるだけ認められるようなフレキシブルな仕組みを作っていただきたい。
 あるいは,大学に数年間いて,また帰れるような,仕組みがあってもよいと思います。これはこちらだけの問題ではないかもしれませんけれども。さらに実務家教員の方が大学で教えながら、博士課程で学位号を取るよう仕組みもよいと思います。そういうような形で実務家教員の質をいかに高めていくかというようなことを議論していただければというのが1点です。
 それから2つ目は,専門職大学院でして,現在,既に非常に特色のあるカリキュラムができているわけですけれども,その中で特に強調していただきたいのが,サービス分野におけるマネジメントです。御案内のとおり,日本のGDPに占めるサービス業の比率は高まっている。ところが,サービス業の生産性や競争力は国際的に見て,残念ながら日本はそれほど優れていない。そこのマネジメント・ノウハウが明らかに欠落しているわけですけれども,サービス業における現場とマネジメントの関係とか,生産とマーケティングの関係というのはほぼ一体化しているんですね。製造業の場合は,作る人,売る人みたいな分担があるわけですけれども,サービス業の場合にはこれらが表裏一体ですので,より現場に寄り添った教育,具体的には,専門職大学院でより現場に向き合った教育ができるような,そんなような仕掛けを考えていただけるとよろしいのではないかと思います。
 3点目は,学部教育とも関わるんですけれども,学部教育の底上げ,あるいは大学院に進学する人を増やすという観点から,飛び級を利用した5年制の制度をもっと重視すべきだと考えています。これは実はいろいろな大学で既に優れたロールモデルはあると思うんです。飛び級で大学院に行って非常に社会で活躍されている方,多くはないかもしれませんけれども,それなりにいらっしゃるというふうに承っておりますので,そのあたりについても活性化をするような仕組みを御議論いただければというふうに考えております。
 以上です。


【有信部会長】 

 ありがとうございました。
 全体にマネジメントというと,製造業ベースでずっと体系化をされてきている部分があって,様々な業種がサービス業化していく中で,多分マネジメントの考え方を大きく変えなければいけないだろうと。これは大学のマネジメントもそういう側面があると思いますし,5年制の話は,多分,法科大学院でも議論していますけれども,これもそんなに簡単な話ではなくて,従来の制度を踏まえた上で,これがもう少し柔軟・活性化する形でできるような議論が必要という御意見ですね。
 どうもありがとうございました。
 では,次は,加納委員,お願いします。


【加納委員】 

 このまとめを読ませていただくと,かなりレベルの高い人材像があるべき姿として書かれているというように思っています。これは決して大学院教育だけではなくて,実は企業に入った後でも社会人として教育,あるべき人材の姿として捉えることもできるかなというように思っています。
 今回,あるべき姿として審議させていただいて,まとめていただいたというように認識しておりますけれども,今後やはりこれを,先ほどの報酬について大学と企業の間での議論が必要だというふうに書かれておりますけれども,この1つ1つのあるべき姿をどのように実現していくかというプロシージャについても,是非,企業と大学の間で議論をする場を作っていくべきかなといったように思いました。
 以上です。


【有信部会長】 

 ありがとうございました。
 それも非常に重要な話だし,研究開発競争とか,人材獲得競争というのは,大学の中で見ているレベルではないんですよね。今はもう国際的なレベルで極めて熾烈な状況になっているので,それを踏まえて,やはり産業サイドはそれを感じているというところもあるので,是非真剣な議論が必要だと思います。
 それでは,引き続き,次は川嶋委員,よろしくお願いします。


【川嶋委員】 

 ありがとうございます。
 全体的な印象といいますか,感想を言わせていただきますと,「知のプロフェッショナル」というのは,日本の今後の社会にとって非常に重要な役割を期待されているということで,特にそういう意味では,大学院教育の在り方を今後も引き続きしっかり議論していくということが非常に重要だと思います。
 それは一方で,研究とか技術革新力を担う人材が大学院,特に博士課程教育で育成されてくるわけですが,他方,教育の方に目を向けますと,大学院教育の在り方は,それ以下の教育段階に非常に大きな影響を与えると思うんです。つまり,大学院の博士課程を卒業した人の多くが,今後も大学教育,学部教育の教員になっていくわけですし,大学教育では,初等中等教育の教員を育成していくということになっていますので,やはり大学院でいかに優秀で意欲のある人材を育成していくかということが,今後,日本の社会全体,あるいは教育の在り方に非常に大きな影響を与えていくというふうに思います。
 その意味で,これまで大学院部会が独立した部会として設置されて,大学院の在り方について集中的に議論してきたということは非常に重要なことですし,今後もそういう形で大学院が日本の社会,あるいは教育の中核的な役割を期待されていますので,是非引き続き議論をしていただきたいというふうに思っています。
 ただし,これも随分,私,これまでも発言させていただいてきたところですけれども,学士課程,修士課程,博士課程,それから専門職課程,それぞれの課程の役割,機能をより明確にしていく必要があるというように思います。
 特に,学士と修士の関係です。学士課程進学率が50%以上を超えているわけですから,今後,リカレント等を考えると,重要なのは修士課程ということになります。ただ,これまで日本の学士課程というのは,いかんせん就職に際して,学士一括採用が主流ということもあって,専門教育がかなりの比重を占めていたということもあって,修士課程に進んで就職を含めて何か付加価値があるのか,そういう点で修士への進学を促進できなかったという面もありますので,是非、学士課程と修士課程,博士課程,専門職課程のそれぞれの目的というものを明確にしていただければ,学士課程も拡大し,修士課程も拡大し,博士課程も拡大し,ひいては日本の社会や教育も充実するというふうに考えております。
 以上です。


【有信部会長】 

 どうもありがとうございました。
 特に課程それぞれの役割というのは,前のところにも書き込んでありますけれども,今後とも議論が必要だと思います。
 では,引き続き,川端委員,よろしくお願いします。


【川端委員】 

 ありがとうございます。幾つかの点を少しだけ。
 1点目は,今回のこれも新しいカリキュラムであったり,教育の在り方であったりという,こういう話なんですが,本当の基本のところでは,やっぱりDC離れです,博士離れが止まっていないという状態。これは要するに,若い人の目から見たときの日本のアカデミアに対する魅力がないということの裏返しになっていて,これをどうするんだというのは,これはカリキュラムと制度論では済まない話で,本当はいろいろな大学側が多様な目線で学生さんをリクルートしたり,いろいろなことをして変わっていくべきものだろうというように思っています。そんなものが議論の1つになっていけばな、というように思っています。
 それをやるに当たって,もう1点は,今少しお話ししたように,大学の極めて経営に関係している,もう一歩言ってしまうと,今こういうことをやろうとしても,教員が疲弊しているという状態をどう解決するのか。これは各大学がやらなければならないことではあるのですけれども,やるべきことが多過ぎて教員がそういうことを考えるゆとりがなくなってしまっているという,そういうところも含めた見方を是非どこかで話題にしていただければありがたいと思います。
 あと3点目は,やっぱり18歳人口が下がっているここ10年とか15年の間,確実に海外からの留学生がいっぱい入ってこなければ日本が成り立たなくなっている状態。そういう中で今までのようなグローバリゼーションでは済まない,もっと量がすごいたくさん入ってくる人たちをどう受け入れて,どう育成しながらやっていくか,そういう観点を議論しなければならないのではないかというように思っています。
 以上です。


【有信部会長】 

 ありがとうございました。
 いずれもなかなか難しい問題ですけれども,そういうことで申し送りになりますか。
 では,引き続き,神成委員,お願いします。


【神成委員】 

 私は,リーディング大学院のオールラウンド型,文系と理系が一緒になって博士課程を教育するという7プログラムを,ある意味,代表して現場の声を反映させるというタスクがあると思って参加してまいりました。
 そういったコーディネーターの先生方と話し合いますと,基本的に文系と理系の文理融合で教育するときの問題点は,文系の大学院の改革にあるというようにいつも意見が合意するところがありまして,そういった内容を突っ込んだ形で,今回,皆様と御意見を共有させていただき,このあるべき姿というところにも明確に記載していただいたのは,非常によかったのではないかというように思っております。
 一方で,理系につきましては,進学率が問題になりますが,これは大学に残るとか,研究者になるという以外の学生に対して,付加価値があるような教育メニューを充実させなくてはいけないというところが,恐らくどこの大学院でも今回の卓越とかリーディング大学院という外部資金がない状態においては,なかなか手が付けられないというところが問題で,その結果,修士課程の学生が研究のコアになっているという世界的にも珍しいというか,いい点でもあるけれども,逆にそれがゆえに博士課程に進学するモチベーションになっていないというところを抜本的に考えていかなくては,進学率は簡単には増えないのではないかというように思っておりますので,文系,理系における博士課程の問題点が明らかになって,それを明確に記載していただいたのは非常によかったのではないかというように思います。
 一方で,これだけのすばらしいまとめが出ていても,これを各大学でどのくらい咀嚼して,それを実行に移そうとしているかというところが,実はよく見えないし,疑問になっているところでありまして,私のところは私立大学ですので,特にそうなのかもしれませんが,過去に出されたようなこういったまとめも,なかなか教員の末端までには浸透してきていないということなので,これをどのように文科省の方が各大学へ、審議まとめの内容を反映させるような教育改革をするように、というメッセージを強い形で伝えるかどうかというのは,次の大学院部会において非常に重要なことではないかというように思っております。
 以上です。


【有信部会長】 

 どうもありがとうございました。
 それぞれ文系,理系について問題点を明確に書き出してはありますが,解決策が全てこれで済むわけでもないので,これはこれで明確に課題抽出の方向に行ったという意味では,非常に評価をしていただいたと思っていますが,問題点も明らかになってきたということだと思います。
 それでは,引き続き,小西委員にお願いします。


【小西委員】 

 大学院教育のあるべき姿を考える上において,私が念頭に置いていますのは,国際的な視点で考えなければならないと,この数年ずっと考えてきていまして,この委員会にも出席させていただいております。
 ここでの議論は,非常に勉強になりました。今現在,会計大学院協会の理事長を拝命しておりますので,ここでの議論を1つの大学ではなくて,大学院協会全体で共有できるように,そして実行できるようにということを心掛けてまいりたいと思っております。
 そこで,今後についてなんですが,引き継いでもらいたい課題が大きく4つございます。
 最初の2つは,平野室長の最初の言及の中にあったのですが,国際的な認証評価機関の設置,そして連携についてです。次に,リカレント教育の充実に向けて、もう少し具体的に検討を進めていただきたいということです。特に,認証機関におきましては,ある企業の委員から,海外のMBAへもう行かなくていいよ,海外の認証を取っている日本のMBAだったら,日本のMBAでいいよ,という御意見があったかと思うのですが,やはり世界的な認証評価機関とどう連携していくのかは,大学院,特に専門職大学院のサステナビリティにとって,非常に重要なことではないかと思っております。
 3つ目なのですが,これは審議まとめの「今後に向けて」という中で書いていただいていますが,専門職の博士後期課程の設置でございます。キャリアパスの1つとして実務家教員の育成がありますので,専門職大学院の教育のクオリティーを上げるという意味においても,やはり博士後期課程が必要なのではないかと思っております。
 そして最後ですが,高度専門職業人の養成に関しまして,一般的な修士課程と専門職課程の線引きが曖昧になりつつあるのかな,と感じておりますので,この線引きを明確にしていただきたいと思っています。
 以上です。


【有信部会長】 

 国際的な認証評価の課題の後の2番目は何でしたか。


【小西委員】 

 リカレント教育の充実に向けてというのを,もう少し具体的に検討していただきたいということです。


【有信部会長】 

 それから,修士課程と専門職課程のところの話は,これも非常に重要な問題で,専門職のワーキンググループでも,ここの議論はされています。一応,その辺で方向性は出ているとは思いますけれども,さらにまた突っ込んだ議論が全体の構成として必要だという指摘だろうと思います。
 それでは,佐久間委員,お願いします。


【佐久間委員】 

 人文・社会系につきましては,議論の中でいろいろ厳しい御指摘も頂きましたけれども,その結果として,取りまとめの中にもいろいろ盛り込まれておりまして,大変ありがたく思います。
 今後は,先ほどもありましたけれども,ここでの議論だけで止まってしまっていては仕方がないので,これをいかにそれぞれの大学が受け止めて,改革につなげていくかということが重要になると思います。
 そこら辺は非常に重い課題として受け止めているところですが,全体的なことで言いますと,ここは大学院部会ですので,学部4年,大学院5年という,そういう枠が当然あるわけです。取りまとめの中でも修士課程については学部段階との接続ということが書かれているわけですけれども,その他の大学院と学部は別ということになっています。一方で,特に理系などは,4年,5年というよりは,6年,3年というのが実態です。
 それに対して文系の方は,学生がなかなか大学院へ進学してもらえないので,逆説的に4年,5年という形にはあるわけですけれども,ただ,人文・社会系も,今後,ここに書かれているような取組を進めていって,学部生が大学院に進学してくれるということになると,一時的には今の理系のような6年,3年のような在り方が出てきてしまう。つまり,境目が,今は学部と前期課程の間にあるわけですけれども,それが前期課程と後期課程の間にできてしまうという問題があるので,そこら辺をどう考えていくかというのは非常に大きな問題だと思います。
 そこら辺を考えていく上では,先ほども同じような話があったかと思いますけれども,大学院だけ考えていてもなかなか難しいことなので,学士課程との関係,その接続もそうですし,それぞれ機能がどう違うのかということを考えていかないと,今後に向けて非常に難しいのではないかと思っているところです。
 一方,人・社系の場合,現状はなかなか日本人の学生が進学してくれないので,そうすると,一応,課程がつながっているとは言いながら,中の学生が入れ替わっているということになってしまっています。その場合,大学院の方はどうやって成り立っているかというと,それは大学によっていろいろだとは思いますけれども,大学によっては,結構留学生を受け入れることで成り立っているところもあるわけです。ただ,それなら,戦略的に留学生を受け入れているのかというと,そういうところもあるとは思いますけれども,定員が埋まらないのでやむを得ず受け入れているようなところもないわけではないわけで,そうなってくると,やはりどうしても留学生をどう教育していくのかというのは非常に大きい課題だと現場にいて思います。それはもちろん理系も含めてのことで,ここでの議論の中でもありましたが,当然,日本人学生ということも重要なんですけれども,国際化ということを踏まえた留学生に対する教育を,どう進めていくのか,どうあるべきなのか,そういったこともやはりもう少し議論が必要なのではないかと考えているところでございます。
 私の方からは以上です。


【有信部会長】 

 ありがとうございました。
 確かに今後,社会科学系は結構留学生が多いはずですよね。
 それでは,引き続き,迫田委員,お願いします。


【迫田委員】 

 取りまとめ,ありがとうございました。大学の実情が分からないままに勝手なことを申し上げたような気もしておりますけれども,受け止めていただいて本当にありがとうございました。
 産業界におりますと,競争の激しさというか,グローバル化の進展と競争の激化というのは日々非常に感じておりまして,また,労働慣行なども相当に,我々が会社に入った頃と違って大きく変わってきています。そういう大きな変化をしっかり我々産業界の者も、もっと発信していかなければいけないのかなと,今回の議論に加わらせていただきながら感じた次第です。是非競争力を高めていかなければ,これには産学連携が欠かせないので,いろいろな意見交換を通じて相互理解を図っていくことが非常に重要だと思います。
 また,国境を超えた人材確保競争が相当進んでおりますので,優秀な人材が日本の大学,あるいは日本の企業を選んでもらうような,そんな枠組みをどんどん進めていかないと,人口がどんどんこれから減っていく日本の競争力を保つことはできないのではないかというように感じております。是非その辺,これからも議論を続けていただけばというように思っております。
 ありがとうございました。


【有信部会長】 

 ありがとうございました。
 本当にそういう意味では,産業界がひしひしと感じている危機感とかというようなものをもう少しうまく共有化できるようになっているといいと思いますけれども。
 では,引き続いて,高橋委員,お願いします。


【高橋委員】 

 ありがとうございます。
 やるべきことは書き込めたと思いますし,我々の100本ノックのようなコメントに真摯に対応いただいて,文章の完成度は高いのかなと思っております。
 今後の課題ということで,自分自身のことも含めて2点ほど申し上げたいと思います。
 年末年始にこれだけ世の中で変化の大きさとか,社会のスピード感とかということが言われた中で,そういうものと同じような空気感を反映した文章だったのかというと,そこに関しては,まだまだ,もう少しシャープなものが必要だったのではないかというふうに思って,自分の貢献も含めて考えています。
 小さな一例ですけれども,自分の大学の話をしますと,MBAコースに自費でやってくる社会人の学生さん,彼らが求めているいわゆるMBAと,経営学の学部生の方がストレートに進学する経営大学院とは,コンテンツも,やることも,学生の質もニーズも全く違います。それをどういうふうに機能分化の方向性として落とし込めるのかということは今後の課題なのかなというように思っています。
 あと,実は議論の中で若干もどかしかった思いを抱いたことも部分的にありました。何かというと,原理根本に立ち戻った議論として,あるべき機能を話しているのか,それとも現行の組織を念頭に置いて,実現可能な範囲のいわゆる組織論の話を踏まえた変化の話をしているのか,そこら辺によって,既にいろいろな先生方がおっしゃっていた課題がもう少し最後まで議論し尽くせなかった部分はあるのかなというふうに思っています。これが次のときの課題なのかなというように思いました。
 大変お世話になりました。ありがとうございました。


【有信部会長】 

 ありがとうございました。
 そこのところの議論は,いつも結構難しいんですよね。根本に立ち返って議論をしていても,ついつい現状を見つつ,それを超えていかなければいけないということで,多分,ある程度,皆さん,根本を見ながら議論をしてくれていたと思いますけれども,御指摘のように,もう少しシャープにそういう区分けをしつつ議論も必要かもしれないと思います。
 では,田中委員,お願いします。


【田中委員】 

 次期というか今後の検討ということで,私としてみると,お願いしたいのは,具体論ということです。今回のあるべき姿で,一般的にこうでなければならないということを大体列挙していただいたわけです。ですけれども,やっぱり今度は日本の各大学がこれに合わせて実施していかなければいけない,あるいは改善していかなければいけないとなると,具体的にどういうふうに改善していけば,ここに書いてあることが実現できるのかということをもう少し議論していただくということが必要かと思います。
 つまり,もうしばらくするとリーディングは大体みんな終わって,卓越も始まって,リーディングについてはみんなやって,大体どういうところがうまくできて,どういうところが課題かということが具体的にだんだんさらに分かってくるわけです。ですから,そういうこれまでやっている,リーディングに参加していない大学院もあるし,卓越に参加しないところもあるけれども,参加していないところだって,別に具合が悪いばかりではなくて,大変すばらしいことをやっているところもあるので,ですから,今後の議論でいうと,やっぱりある程度具体的なグッドプラクティス,ベタープラクティス,そういうようなもののケース・スタディをかなりやってもらう。そのグッドプラクティス,ベタープラクティスの場合,日本の中だけでやる必要はないのであって,世界の大学院が今どのようにやっているのか,状況が違う,コンテクストが違う部分はあるんですけれども,日本の大学院も世界で競争していくわけですから,留学生がいっぱい来るんだとなると,ますますもって世界の大学院はどんなカリキュラムを持って,ここで言うと,アドミッション・ポリシー,ディプロマ・ポリシーなど,この3つのポリシーについて,どういう具体的なことでやっているのかということを,もう少し今後の審議で明らかにしてもらうと。それを文科省というか,国がこういうものがありますよというのを見ることによって,日本のいろいろな大学がここに書いてあることが実現できるというような,そういう形の審議を是非進めていっていただけるとありがたいなと思っておる次第であります。


【有信部会長】 

 ありがとうございました。
 そこを飛び越えるのがかなり難しいという話ですよね。だから,是非それも議論の課題としていってもらえたらと思います。
 それでは,引き続き,永里委員,お願いします。


【永里委員】 

 ありがとうございます。
 産業界の人間として少し過激な発言をしてみたいと思います。
 人口減少の時代に学生の数が減ってきます。これまでの大学経営を続けていくと,教育の質の維持はおろか,存続さえ危ういようなことになるのではないでしょうか。大学の再編や集約,機能分担等,大学のガバナンスまで踏み込んだ改革が必要となろうというふうに思っております。この人口減少の時代において,日本の競争力維持に必要なのは,選別的,重点的に予算を配分すること。基礎研究促進のための各種施策を予算化すべきだろうと思います。産業界は,出口戦略の重要性のみを述べているというように誤解されておりますが,そもそも源流なくして出口はあり得ないということを言いたいと思います。
 というわけで,まず最初に,ちょっと過激な1番目に言いたいことは,日本の競争力維持に必要なのは,選別的,重点的予算を配分することによって多くの偉才を輩出することです。すなわち,知のフロンティアを目指すにふさわしい大学を作るべきで,研究を中心とする大学院博士課程を充実させることが肝要。そのための財源が不足なら,学士課程は減らしてもいいのではないかと思います。社会や企業が質の高い大学教育を評価し,それにふさわしい対応をすべきです。国や企業は博士課程の学生にインセンティブを与え,企業は採用し,厚遇すべきだろうと思います。
 2番目を言います。大学経営に関しては,大学に外部資金を調達する専門家を招聘し,基金を作り,それをベースに,その大学にふさわしい特徴ある研究を進めるべきです。そのための研究者も招聘するのはもちろんです。
 3番目に,大学の給与体系は,優秀な学者を世界から招聘するために柔軟に設定すべきです。優秀な学者の下に世界からおのずと優秀な学生が集まるような環境整備を行うべきです。
 そして4番目,高等教育といえども実践教育が重要です。特にAIの世界はそう言われていると思います。課題の現場に学生を入れることは肝要だろうと思います。
 5番目はやわらかい話で,地方の大学は国公私にこだわらず,大学同士が連携し,産学官の重要なニーズにこたえる。その特徴を生かして魅力ある地方創生に寄与する研究を探求することが必要だと思います。生き方,生きがいは,地方にこそあります。大学同士の協力で規模を適正化し,質を向上させるべきだろうと思います。
 以上です。


【有信部会長】 

 どうもありがとうございました。
 非常に貴重な御意見をありがとうございます。特に,異才ですね。それから,産業界が出口と言っているばかりではないということを,もう少し大学サイドに浸透して理解していただかなければいけないし,その上で新しい具体的な策を打つということになるのだろうと思います。
 ありがとうございました。
 それでは,堀切川委員,よろしくお願いします。


【堀切川委員】 

 この審議まとめの案がようやく取れるところまでまとめられた文科省の皆様に,心から感謝申し上げたいと思います。様々な切り口から山ほどの意見が出たものを,よくここまでうまく矛盾がないかのようにまとめられるというのは,相当能力がないとできないかなというように思った次第です。
 2040年を見据えるということ自体が,多分,今現在をちゃんと分析した上で,20年後,どうしていけばいいかという社会分析があるから成り立っているというように思っているのですけれども,個人的には,そういう世界はよく分かりませんが,私,毎年150社ぐらいの会社が相談にみえられるので,工学の人間ですが,今年,今年度1年で大幅に傾向が変わったなと思っていました。中小企業から中堅企業,大企業までいろいろな相談にいらっしゃるのですけれども,多くの企業は未来を見据えて夢のある相談に来るんですが,最近は,超有名な大企業が3社ほど,うちは今度何をやったらいいでしょうかという,新規事業として,これを考えたけれどもだめそうなんですが,どう思いますかというような暗い相談が多くて,はっきりと「絶対うまくいかないのでやめなさい」と2社には申し上げて,1社は「とってもいい案です」と申し上げた、といった体験があり,この先,日本は大丈夫かなというのが本音であります。
 その上でですけれども,個人的にはこの大学院教育のあるべき姿の中の「体質改善」というちょっと強い言葉が入れられたことを心から大賛成であります。これは大学院の教育自体が体質改善なのか,大学院という個々の組織が体質改善しなければいけないのかという,どっちから見ても,まだ間に合うという意味で,いい言葉だなと実は思っているのですけれども,多分これは個々の教員自体が意識改革をして体質改善しないとよくならないのだろうというように思っております。
 そういう意味で,文科省の方にお願いがあるとするならばですが,是非この審議まとめの結果の中身も含めて,個々の大学院の教員にこの強いメッセージが伝わるようにしていただければいいのかなと思います。組織のトップの方を経由していっても,どんどん薄まって,このメッセージが伝わらなくなるので,組織改革よりは教員の意識改革を早くした方が、成果が早く出るのではないかという気がいたしますので,是非このメッセージを伝える何か方策を考えられて実行していただければありがたいなというように思うところです。
 それから,もともと大学院の教員は,教育,研究,プラスで今,社会貢献の3つぐらい仕事があるわけだと思うのですけれども,教育,研究,社会貢献というのは切り分けが必ずしもできるものではなくて,有機的につながっていると思っています。いい研究をすることが,いい教育につながるし,いい社会貢献の結果を出すことが学生教育には多分即効性のあるいい結果をもたらすと思っているんですけれども,じゃあ,そのためにどうするかということで,厳しくこうしなさいといったトップダウンで落とされましても,教員のやる気は全然出ないというように個人的には思っております。できれば,是非是非優しく教員の人たちに,「こうすると,いいらしいぜ」という,そういうノウハウとかやり方の情報を伝えることも必要かなというように思っています。
 それに一番いいのは,多分ですが,教員でなくても,社会の方々でも誰でもいいのですけれども,小さくてもいいので,大学院教育にプラスに結び付く成功体験を持っている人たちをどう活用するかだと思っています。
 例えば,社会貢献で産学連携というと,コーディネーターさんがいろいろな大学,大学院にいっぱいおられるのですけれども,ほぼ実績のない人がいて,何もできないまま先生方と対峙して終わるという例も随分見てまいりました。それよりは,成功体験をされた人であれば言葉も優しくなって,こうやるとよりよくなりますよ、と必ず言えるので,ちゃんと成果のある人を配置してやった方がいいよと文科省から各大学院にメッセージを出していただけますと,むだな給料を払わないで済んで,その分が教育に還元されると思っている次第であります。
 これ以上言うと,いろいろなほかの大学を見てきてしまっているので,個別になんぼでも言えますが,いろいろ差し障りがあるというところでございます。是非民間企業さん出身の方でも,大学出身の人でも,あるいは,今,現役の人でもいいんですが,使える人材に役に立つメッセージが伝わって,教員にプラスになるような仕組みを作っていただければありがたいなというように思っております。
 以上です。


【有信部会長】 

 ありがとうございました。
 それは,グッドプラクティスを,あるいはベタープラクティスのようなことをもう少し普及させるか,もう1つは,安全策で基本的に外形基準だけで人を選んでいるから今のようなことになるので,実質的に人を選ぶというプロセスが本当にきちんと浸透するにはどうしていけばいいか,こういうような指摘だろうと思います。
 ありがとうございます。
 それでは,湊委員,よろしくお願いします。


【湊委員】 

 ありがとうございます。
 この大学院問題というのは,少なくとも研究型大学にとっては,本丸の話です。私は主にそういう立場で幾つか話をさせていただいてきたので,少しバイアスが掛かった話が多かったかもしれませんけれども,その辺は御容赦いただきたいと思います。
 この報告書にありますように,やはり学位プログラムとしての大学院教育の確立,特に今話が出ました体質改善,これがやはり一丁目一番地だと思います。ただ,これが現実的にはなかなかうまくいっていない。そのベースには,やはり現場の教員のマインドの問題があって,今もお話があったとおりだと思います。
 このマインドがどうしてできてきたかというと,結局,制度に規定されてできてきたのですね。長い間の制度,数十年掛かって積み上げてきた制度の中で、そういうマインドが,制度に適応して生き残ってきたマインドが、あるわけです。それはその時期には、確かによかったのでしょう。教員はある意味個人店主であり,名人芸であり,悪く言えばタコつぼであった。一人一人の教員が,「俺の背中を見てついてこい」と言ってきた。これがいい時代もあったけれども,現実にはそれが破綻しつつあるというのは,もう多くの人が気付いているところです。その中でこの学位プログラムということが出てきているわけですけれども,これがプログラムとして出てきても,このような教員のマインドとの整合性がなかなかつかないわけです。そうしたときに,やはりそのベースには,そのマインドをどう調整していくか,つまり,教育制度と教員のマインドをどう整合させていくか、ということを考えると,これはやっぱりまず制度面からきちんと整えていくしかないんですね。いくらこういう報告書を現場の教員に見せてこうしろと言っても,今の話のように簡単にできるわけではないので,そういう制度を担保していかないといけない。
 そう考えると,こういう体質改善を進めるためにどういう制度が必要なのだろうということになります。現在は、学部,研究科,学科,専攻等々がきっちり分かれていて,ほとんど横のつながりがない。しかし学位プログラムというのは、制度的に本当はデパートメント,つまり大講座でないとなかなかできないコンセプトなわけです。それを今の細分化された古い制度でやろうとするから,せめぎ合いがしょっちゅう起こるわけですね。現場としては,そういう現行制度の中での非常に属人的な教育というのが,本当はベストなんだという考えが実は抜けていないのですね、本当にいい教育はこれなんだという。学位プログラムというのは,それは補助金があるのでお付き合いするけれども,これはセカンドベストだという考えが抜けていない。そこが大きな壁で,どうして教育制度を自由な大講座へ持っていくか,チェアマンの下で常に若いPIが何人もいて,その中に学生が組み込まれて独創的な仕事をしていけるという形でやっていかないと,多分もたないでしょう。アメリカなどは典型的にそれで成功してきたわけです。日本はまだそこへ脱皮しきれていないということがあると思います。
 これからは,個々の教員に,これまでの方式がいいと信じている人達に,単にいや,それはだめだと説得することだけではできない。それはこうすればできるんだという制度的な担保,制度的な改革から手を付けていくのが実質的ではないかと私は思っています。
 そういう観点で,この報告書は非常にいい内容のものだと思いますけれども,どうして具体化していくかというのは,やはり大学院教育の制度を変えていくしかない。それをどういうふうにモチベーションを付けていくか,インセンティブを付けていくかというのが,今もお話があったように,具体的にこれをどう実質化していくかということの主要な今後の議論だろうと思っています。
 もちろん大学院は,研究型大学院におけるありようが全てではないというのはよく承知しておりますけれども,今,永里先生がおっしゃったように,そこが重要であることは間違いないので,今後ともそういう観点で議論を続けていただければありがたいと思っております。
 以上です。


【有信部会長】 

 全く御指摘のとおりだと思いますが,今のそれこそ制度でがんじがらめになっている部分は,たしか文部科学省で大学の歴史のようなことをずっと調べて,たしかウエブにも載せてありますけれども,大学を設置するプロセスの中で,学問分野を規定し,それぞれの規定された学問分野が設置認可制度の中に組み込まれて,設置認可がその学問分野という観点で専門委員会を作って,設置していいかどうかということを決めるというプロセスがずっと続いてきているわけですね。しかも,そこでの学問分類が,実はほとんど変わっていない。もともと大学院は学部に研究科を置くことができるという指定で,学部に附属するような形で大学院が置かれて,その研究科の連合体を大学院と呼んでいたという歴史的な背景があって,どうしても大学院というのは学部の附属物だという認識でずっと来ているんですね。だから,今,湊委員が言われたような,本当に今までの成功体験,それにしても今まである程度成功してきているので,誰も悪いと思わないという側が一方であるわけで,そこをもう一度御破算で,それこそ高橋委員ではないけれども,原点に返って見直したときにどうなるかというような議論は確かに必要だと思いますが,やり出すとちょっと大変ですよね。
 ありがとうございました。
 宮浦委員,よろしくお願いします。


【宮浦委員】 

 ありがとうございました。
 まず,取りまとめられたこの2040年を見据えた冊子につきましては,今後,次期の科学技術基本計画を議論するタイミングにもうなっていると思いますので,そういうタイミングにどんどん出していただいて,いろいろな場面で見ていただきたいと希望いたします。
 出していただいたときに,産業界も含めて是非,このまとめに対するコメントを頂いておくのがいいかなと思いますし,いろいろなところで取りまとめられた資料を拝見すると,なかなかいいものがしっかり書いてあるなと見ても,そこで終わってしまうケースも多々ありますので,短いコメントでもいいので,これについてどう考えるかということを求めていただくと読み手の意識が変わると思いますので,二,三行でもいいからコメントをくださいという形で出していただけると活用されやすいかなというように思います。
 2点目は,やはり博士後期課程の問題は全国的な進学の問題ですけれども,経済的支援の問題がやはり大きいように感じていて,DCも一部ですし,優秀な学生が進学と就職を迷ったときに,就職すると,すぐに給与が出る,進学すると,とりあえず授業料を払う,いろいろな仕組みはあるわけですけれども,DCはごく一部ということで,日本で統一した仕組みがないのがやはり決定的なウィークポイントではないかと。やはり乙がなくなって甲でおおむね行くようになってから,学生を続けるか社会人になるかという二者択一になっていると思いますので,そこを給与が出ながら学位が取れるようなシステムを,どの大学でも選択できるような何か仕組みですとか,そのあたりを国費のみならず,産業界の皆様と議論をして,人材が欲しいのは,産業界の皆様の方が欲しいとはっきりおっしゃるわけですから,それを一緒に育てるという観点で議論が進むことを期待いたします。
 3点目は,大学院教育を担う教員は,各大学の研究者でもありますので,よく言う教育研究,研究が先ではなく,必ず教育が先であるというのがあります。そうしますと,特に若手の教員は,大学院の学生を採れと,採れと言ったら変な話ですけれども,学生を何人指導しているかということも評価の対象になると同時に,研究を行い,学部の授業も行う。最近はいろいろなその他の社会貢献も当然のように入ってきて,高校生も集めた授業もやったりする。なかなか忙しくなっているということで,教育型教員と研究型教員を分けるのではなく,やはり両方やるからこそ教育に先端研究のマインドが入ってくると思いますので,なかなか人員を増やせない状況ではありますけれども,10年先ですと,今の大学院生が教員になっているということを念頭に置いて,特に若手の育成を大学院教育とセットで考えるようなことを考えていく必要があるかと思っております。
 以上です。


【有信部会長】 

 どうもありがとうございました。
 一通り,御意見,来期での審議事項に対する申し送りを頂きました。これについては,非常に全体的な意見,特にグローバル化ということに対して,グローバルな視点で大学院の在り方を考えなければいけない。
 その具体的な内容としては,さっき言ったように,制度的な面だとか,例えばアメリカで言うようなファカルティと学生の組織とというような分け方のような,そういうことだとか,あるいは教育の内容についての話だとか,それから,専門職大学院に関われば,いわば国際的なprofessional qualification(職業資格)の認定,あるいは教育のアクレディテーションの問題だとか,そういうようなことを含めてグローバルな視点で考えていかなければいけないというような話と,それから,極めて日本的な今の大学の中での制度的な問題,特に文系の大学院の在り方,これもグローバルなところとの兼ね合いで考えていかなければいけないというようなことでしょうけれども,そういうような問題だとか,あとは全体で言うと,ここで根本的な在り方を考えてはいるわけですけれども,それが今の社会のスピード感に本当に合っているかという問題があって,これを次にどういう形で議論するかというところが,いわば社会と大学院との連携の在り方みたいなことだと思うんです。従来のようなお互いに意見を聞きに行くような感じではなくて,何らかの形でスピード感が大学側の中に入っていくような形での連携の在り方をどういうふうにするかというような話だとか。あと,具体的に言うと,本当に過去の成功体験を払拭しながら新しい成功モデルを作っていくか,その中でリーディングプログラムでの成果等々,今までの施策の成果でのいい面も入れていく。それを実行する上で,いろいろ課題であったことを克服していくというようなことも考えるというようなことだろうと思います。
 まだまだ全部,今のコメントを集約しきれていませんけれども,これはまた事務局と相談して,整理をして申し送り事項としてまとめていければというように思います。
 今の話を聞いて,さらに追加で思いついたというようなことがあれば,皆さんそれぞれ最初の方にお話になった方は,いろいろな人がいろいろな観点でまたいろいろなことを言ってくれたので,こんな重要なことをちょっと言い忘れたというようなことがあれば,どうぞ追加で,まだ多少時間はあるようなので。


【永里委員】 

 すみません。


【有信部会長】 

 はい,どうぞ。


【永里委員】 

 時間があるということで,ちょっとタッチーな発言をしたいんですけれども,例えば,こういう研究をするということ,すなわち日本に原子力エネルギーは必要かというようなことを民間の企業が研究するわけはありませんので,本当に原子力エネルギーが必要なのかどうかということについて,やっぱり探求するのは大学だろうと思うんですけれども,例えば田中先生,そちらの大学でこういう研究をなさっていらっしゃいますか。


【田中委員】 

 今やっている人はいませんね。ただ,日本全国で言えば,エネルギーミックスはどういうものがいいのかとかということをやっている人は相当いっぱいいると思います。ただ,今,永里委員がおっしゃったような原子力エネルギーに特化して,これが要るのかというと,日本の過去の何年かからすると,どちらかというと,このあたりになると,分析というよりは運動論みたいになって,原子力支持派と反対派でずっと議論が延々と続いているというような話で,今それ自体は,どうですかね,委員がおっしゃった意図の話ではないような……。


【永里委員】 

 それでいいです。今みたいに反対派と賛成派がいて,ですが,本当は国益としてどちらがいいかというような研究をする部分がないのかなと。それは大学だろうと思うし,あるいはシンクタンクだろうとは思うんですけれども,シンクタンクというのはやっぱりお金が必要ですから,田中先生に質問したのは,政策研究をなさっている大学だからですけれども,実際は本当の国益としてどうあるべきかというようなこと,賛否を含めたそういう研究をした上で,こういうものが望ましいとかというようなものを出してくれるような,そういう研究はないのだろうかなというふうに思っておりますが,ちょっとタッチーな議論で申し訳ございません。


【有信部会長】 

 特に原子力に特化するという話はいろいろ大変かもしれませんけれども,少なくとも国のエネルギー政策はきちんと立てていかなければいけなくて,国のエネルギー政策を立てる上で必要なエビデンスが何であるかというのは,きちんとそれぞれのところで研究していますが,それが具体的な政策になったときに,検討が全て尽くされているという保証はないので,そこのところが多分議論になって,そういうことを含めて,大学できちんと研究ができますかと,こういう話だろうと思うんですよね。それもなかなか難しい話かもしれないですけれども。
 はい,どうぞ。


【田中委員】 

 学問研究の本質からして,ある政策分野についても研究する研究者はいっぱいいるわけで,それぞれが一番望ましいと思う形で出して,その結果は,最終的にはアカデミック・ディベートになって,一番正しい国益に合った誰かが御託宣を出してくださいというのを大学の研究者に期待されても,それは多分無理ですね。ですから,出てくるのは,最終的にはアカデミック・ディベートが起こるという話だと思います。


【有信部会長】 

 だから,最終的にどの政策を選ぶかは政策決定者の判断だということになるということで,ただし,そのときに必要な様々な政策のアレンジメントが十分に議論を尽くされ,研究されて出ているかどうか,そこまではアカデミック・ディベートの中の話で,そのディベートの結果を見ながら政策決定をするというような話だろうと思いますから,そんなところでいいですか。


【永里委員】 

 結構です。


【川嶋委員】 

 よろしいですか。


【有信部会長】 

 はい,どうぞ。


【川嶋委員】 

 先ほどから何名かの委員の方々から,大学教員は多忙で,疲弊しているという御意見がありましたが,大学院も含めて高等教育の改革の課題が、次から次へいろいろ出てくる。それは一方で日本の個々の大学自体が受け止めるべき非常に深刻な課題かと思うんですけれども,あれもこれもという改革をしていると,改革疲れで真に必要な改革が先に進まないということがあるかと思います。
 特に,教育改革をすればするほど,大学も個々の教員も研究の方がなかなかうまくいかない,滞るというところもあります。とりわけ卓越大学院もそうなんですけれども,研究力がある先生ほど,いろいろな教育改革に動員されるということがあって,教育と研究のトレードオフ関係が,今,生じているのではないかと考えます。そこで、あれもこれもの改革ではなく、高等教育が好循環するような、いってみれば「改革のトリガー」となるような、効果的・効率的な改革案を次期では集中審議していただきたい。それは、ひょっとすると学位プログラムなのかもしれません。
 ただ,大学については,研究と研究者養成というのは親和性があるので,大学院における教育改革というものが研究力の向上にもつながる側面も一方ではあるかと思います。そういう点で先ほど宮浦先生がおっしゃったように,政策レベルでは高等教育政策と科学技術政策の両者できちんと調整をして,大学院の在り方については議論すべきだと思います。今回,合同の委員会が設置されて,その点ではよかったと思うんですが,今後も高等教育政策と科学技術政策,とりわけ大学院レベルでは,その両者のすり合わせ,一体化というのはますます重要になるのではないかというふうに個人的には考えています。
 それからもう1点は,国際化については,いろいろな意味でこれは不可避なことでありまして,どちらかというと,今,インバウンドの話で,いかに留学生を呼び込んできちんと教育してという話ですけれども,一方で,アウトバウンドの方も重要です。大学院生も含めて,日本の学生は、なかなか海外に出ていかないということで,アウトバウンドの問題も考えていく必要があるというふうに考えます。
 よくよく考えてみると,アメリカもイギリスも大学院教育の隆盛とか,あるいは研究力の向上というのは,かなりの部分,海外から来る留学生を広く受け入れていることの成果であって,そういう中に日本の大学院生が入っていくという,その中で切磋琢磨するということも非常に重要です。逆に,日本の大学も海外の留学生に門戸を開いて,そのためにきちんと教育を提供するということが重要であることはいうまでもありません。
 ただ,これも随分言い古されてきたことですけれども,日本の大学や大学院に海外から学生を受け入れて教育しようとすると、言語の問題があるという。しかし,大学院の場合は,学部に比べてそれほど言語の壁は高くないというふうに思いますので,是非積極的に留学生を受け入れるとともに,積極的に海外に院生を送り出すというようなことも,今後,重要な施策になるのではないかというふうに思います。
 以上です。


【有信部会長】 

 ありがとうございました。
 今期の大学院部会の議論,大体大学院部会は様々,皆様方,かなり自由に発言をしていただけるので,議論がいつも活発になって,それを最終的にこういう形でまとめた事務局の力量もなかなか大したものだということだと思いますが,本当にありがとうございました。
 それでは,最後に当たって,義本高等教育局長から挨拶をお願いします。


【義本高等教育局長】 

 本日は,お忙しい中,御出席いただきまして,御発言いただきありがとうございました。
 9期の大学院部会が終了するということもございますし,またこうして審議のまとめをまとめていただきましたことにつきまして,本当にこれまで1年を超える長い期間にわたりまして精力的な御議論を頂きました賜物だと思っているところでございます。
 いろいろな議論がありましたので,なかなか事務局としましてもまとめるのは苦労したところがございますけれども,「知のプロフェッショナル」の育成ということで,必要な大学院教育の体質改善を図っていくというような方策について,課題とともに一定の形をまとめさせていただくことにつきまして,この場を借りて感謝を申し上げたいと存じます。
 特にお話がありましたように,多分,この審議まとめで全て完結するわけではなく,今,先生方が御議論いただきましたように,答申を受けてさらに制度改正につなげていくことをしっかりやっていくということもございましょうが,あるいは,今日いただきましたように,グローバル化の中においての対応,留学生の受け入れを前提とした在り方の問題,あるいは学部と修士の関係,さらには,国際認証の問題ですとか,あるいは社会人の受け入れも含めた充実方策を具体化していくこと。このような様々な課題について、さらに深掘りをする議論を恐らく次にしていかないとならないと思っているところでございます。
 また,お話しいただきましたように,先生方の意識改革をしっかりやっていくことが大事だということがありました。湊先生からも頂きましたし,部会長にまとめていただきましたように,制度をまず改正していく中において,今回の目玉としましては,学位プログラムとしての大学教育改革を確立していくということでございますので,そのための大学院設置基準の改正も含めた形での教育をしっかり全面に押し出していくということをベースにして,それをいろいろな形で先生方のお力をかりて,それをいかに今後,現場に浸透していくのかということを,審議まとめをすれば,それで終わりではなくて,これからが我々としてはしっかりやらなくてはいけないところだと思っておりますので,先生方からの引き続きの御指導,御支援を賜ればありがたいと思っているところでございます。
 さらには,御議論いただきましたように,今回は恐らく大学院の問題は研究の問題とかなり直結するところでございます。研究者の養成もそうでございますし,この御議論もありましたように,この審議まとめにも書いていただきましたように,恐らく研究環境の整備ということなくしては大学院教育の充実にはつながっていかないという思いでおります。その点においては,宮浦先生から御指摘いただきましたように,この議論を科学技術基本計画の御議論も含めた形での研究関係の審議会,あるいは指針も含めた形でしっかり御提起させていただき,それをつなげていくということが非常に大事だと思っていますので,その点についてはしっかり進めていきたいと思っているところでございます。
 さらには,卓越大学院あるいはリーディング大学院についての成果をしっかり整理し,それをグッドプラクティスとしてつなげていくような方策についても,さらに審議を深めていければありがたいなというように思っているところでございます。
 いずれにしましても,今日頂きました御議論,さらには審議まとめで書かせていただいているような課題も含めた形での取組をさらに次の期に向けて審議を深めていくべく,我々としても部会長とも相談させていただきまして,議論を整理し,さらにつなげていきたいということについて,ここで改めてお誓い申し上げたいと存じます。
 委員の皆さま方におかれましては,本部会への非常に熱心なお取組を改めて感謝申し上げたいと存じますし,大学院教育の今後の在り方につきまして,引き続き,御支援,御助力を賜ることをお願い申し上げまして,簡単でございますけれども,御礼の御挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。


【有信部会長】 

 ありがとうございました。
 委員の方々には,本当に自由に様々な御意見を頂いて議論がかなり詰められた部分もあると思います。まとめる方は大変だったと思いますが,本当にありがとうございました。部会長としても感謝を申し上げたいと思います。
 それでは,第9期の大学院部会をこれで終了ということにさせていただきたいと思いますので,どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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