大学院部会(第89回) 議事録

1.日時

平成30年11月5日(月曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省東館3階 第1講堂

3.議題

  1. 第9期大学院部会における議論のまとめ
  2. その他

4.出席者

委員

(部会長)有信睦弘部会長
(副部会長)室伏きみ子副部会長
(臨時委員)天野玲子、池尾恭一、井上眞理、樫見由美子、川嶋太津夫、川端和重、佐久間淳一、迫田雷蔵 、高橋真木子、田中明彦、永里善彦、沼上幹、堀切川一男、宮浦千里の各臨時委員

文部科学省

(事務局)義本高等教育局長、平野大臣官房審議官(総合教育政策局担当)、玉上大臣官房審議官(高等教育局及び高大接続担当)、森大臣官房審議官(高等教育局及び科学技術政策連携担当)、千原大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)、岩本文部科学戦略官、蝦名高等教育企画課長、三浦大学振興課長、石橋高等教育政策室長、平野大学改革推進室長、他

5.議事録

【有信部会長】

 それでは,ほぼ定例の時刻になりましたので,第89回の大学院部会を開催させていただきます。御多忙中のところを御足労いただきましてありがとうございます。
 なお本日は,五神委員,大島委員,岡島委員,加納委員,神成委員,車谷委員,小西委員,藤原委員,湊委員が御欠席と承っております。御欠席の委員には事前に御意見を提出していただくようにお願いしてありますので,それも踏まえてということになるかと思います。
 引き続きまして文部科学省に異動があったということで,事務局より紹介をお願いします。

【平野大学改革推進室長】 

 失礼いたします。10月16日付けで大臣官房審議官が2名着任してございます。まず玉上審議官高等教育局高大接続担当でございます。

【玉上大臣官房審議官】 

 玉上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【平野大学改革推進室長】 

 続きまして森審議官高等教育局及び科学技術政策連携担当でございます。

【森大臣官房審議官】 

 森でございます。よろしくお願いいたします。

【有信部会長】 

 それでは,事務局から引き続いて配付資料の説明をお願いします。

【平野大学改革推進室長】

 議事次第のとおりでございます。本日のメーンの資料が資料1,大学院部会審議まとめ(素案)でございます。このほか参考資料を紙で配付してございます。また机上資料についてはタブレットに入れてございます。また机上配付のみの資料もございますが,これはまた説明の中で触れたいと思います。よろしくお願いします。

【有信部会長】 

 それでは審議に移りたいと思いますが,今日これまで大学院部会の中では,平成29年3月の我が国の高等教育に関する将来構想についてという諮問に対して大学院に関する部分の議論を進めてまいりました。前回,8月27日ですけれども,第88回の本部会においてその審議経過をまとめ,大学分科会及び将来構想部会に報告して,現在審議を進めている2040年に向けた高等教育のグランドデザイン答申案にその内容が盛り込まれているところです。ただ私たちの議論は,盛り込まれる内容にとどまらず広く大学院の課題について議論を進めてまいりましたので,本部会で議論した内容について1月をめどに取りまとめていきたいと思っています。本日はこれまでの議論をまとめた資料1に沿って事務局から説明していただいた後に委員の皆様方から御意見を伺いたいと思います。それでは事務局より説明をお願いします。

【平野大学改革推進室長】 

 失礼いたします。大学改革推進室長でございます。資料1に従って御説明したいと思います。
 まず今日参考資料7でお配りしているものがこの7枚ものでございますけれども,これが大学院部会として将来構想部会及び大学分科会というものに投げ込んだ意見と審議経過になっているわけでございます。部会長からお話がありましたように,これにとどまらず院部会としては御議論いただきました結果を取りまとめた素案にさせていただいてございます。
 資料1の1ページ,2ページが経緯でございます。まず2ページを御覧ください。第4次産業革命がもたらす超スマート社会,これはSociety 5.0と称するわけでありますが,そのほか人生100年時代,18歳人口の減少,このような大きな変化については高等教育全体が直面するものでありまして,大学院としてもこれに対応していかなくてはいけない。このような大きな変化が起こる中で,大学院は高度な人材をはじめとする知のプロフェッショナルの育成を中心的に担う存在であるということであります。
 これまで院部会におきましては2017年5月以降,8回審議を行っていただきまして,先ほどの参考資料7の内容をまとめていただきました。また本日配付してございますけれども,科学技術・学術審議会人材委員会との合同部会を設けて論点整理もまとめていただいているところでございます。
 今回審議まとめということでお配りしているものは,平成30年度グランドデザイン答申において設定されている2040年に適切に対応する観点から,答申とは別に大学院としてどのようなことが必要かということをまとめているという経緯でございます。そのほか1ページ,2ページはさかのぼって平成17年の答申からの経緯を書いております。
 4ページをお願いします。2.で,2040年頃に直面する社会の変化の中で知のプロフェッショナルというものがどのような形で位置付けられていくべきなのかという章を立てております。2040年頃までには世の中の構造が大きく不可逆的に変わっていくことが想定される中で,大学院というのは先ほど申し上げましたとおり知のプロフェッショナルを育成する役割を中心的に担う存在である。特に博士課程におきましては今後の社会を牽引する高度な知のプロフェッショナルの養成が求められているところでございます。今改めて学士課程教育の基礎の上に大学院で育成するべき知のプロフェッショナルというものがどのような能力を共通的に付けるべきなのかということを明確化いたしまして,この姿を大学院教育の改善につなげていくことが必要であります。
 5ページ,6ページが知のプロフェッショナルの姿について触れているところでございます。5ページの上の方,色が付いていないところでありますが,学士課程を通じて身に付けるべき能力について,30年グランドデザイン答申の内容も踏まえまして整理しているところでございます。5ページの下の部分,知のプロフェッショナルというものについては,このような学士課程教育で身に付けるような普遍的なスキル・リテラシーというものをいずれも高い水準,大学院にふさわしい水準で備えていることに加えまして,大学院生ならではのトランスファラブルな力ということで最先端の知にアクセスできる能力,課題発見・設定能力,仮説の構築能力,市場価値・社会的価値の判断能力,高度な英語力を含んだグローバル化に対応したコミュニケーション能力,倫理観,このようなものを備えていることが必要であろうと,これは専門分野横断的にということで書いているものでございます。
 こうした普遍的なスキル・リテラシーの上に,6ページでございますが,各セクターを先導できるような高度な専門的知識を養うことが必要だろうと。その専門的知識というものも複雑化した社会に様々な形でアプローチできるように,特定の狭い領域だけにとどまらないものとなることが一般的でならなければならないという理想を掲げているわけであります。これに加えていわゆるSTEAM分野の知識,データサイエンスの知識,人文・社会科学の知識も含めたような高度な水準の幅広い教養,このようなものを身に付けておくことが必要ではないかということでございます。
 このような形でプロフェッショナルの姿を明確化する努力は今後も続けていく必要があるわけですが,今後検討が行われる際にはこれをかなりしっかり,欧州資格枠組みとか米国の学位資格プロフィールといったものも眺めながら検討していくことが必要だという部会の意見をここに反映してございます。
 7ページでございます。3.がいわゆる総論というか問題意識に当たる部分でございます。7ページの頭の部分でございます。18歳人口が減少する中でも知のプロフェッショナルが我が国において活躍していくことは我が国の国際競争力の観点から極めて重要であります。一方で諸外国に比べて人文・社会科学系の博士・修士の割合は極めて少ない。また全分野で見ても修士は3分の1,博士は2分の1程度という人口比にとどまっているわけであります。一方で我が国の大学院教育は入学定員を充足していないことが常態化している専攻もあるわけです。なぜこのような状態になっているのか,真剣に検討し改善を図る必要があるということでございます。
 次にこれまでの成果と課題ということでございます。博士課程教育リーディングプログラムなどこれまでの改革施策に取り組んでいた大学につきましては,7ページから8ページにかけてでございますが,かなり大学院教育の実質化が進んできたという評価ができるのではないかということがあるわけでございます。これにつきましては顕著な実績を上げた修了生がいるとか,修了生の約4割がアカデミアの道以外の企業・官公庁に進んでいる,またコースワークというものが適切に実施されていることがうかがわれるわけであります。
 一方でこのような施策の対象となった大学院以外の大学院というものが,いまだみずからの強みや特色を踏まえて,機能を選択して比重を置いた上で,明確な目標を設定した上で教育を展開しているかというところについては必ずしもそうは言えないのではないかという指摘がされております。学生の主たる進路先である企業につきましては,博士後期課程について大学院の修了者に対しては専門分野の知識にとどまらない幅広い能力を求めておりまして,大学院のカリキュラムと企業の期待,社会の期待にギャップが生じているという指摘も根強いわけであります。
 このようなことを踏まえまして,9ページでございますが,大学院教育をめぐる課題が若手研究者のポスト確保の困難と相まってキャリアパスの不安を招いて,一方また前期の課程,修士課程の修了者が博士の後期に進学することを躊躇する原因となっているということでもございます。今後,大学院の知のプロフェッショナルの育成に果たす役割の重要性が高まっていくことは明々白々でありまして,2040年の社会の需要に応えていくためにもまずは早急に,社会のニーズへのより一層の対応をはじめとした大学院教育の体質の改善とも言えるような取組を進めていく必要があるだろう。大学院における教育が幅広い社会のニーズや学習者のニーズに応えて,大学院の学生の進路を確保していくこと,このことが学生を引き付けて,また大学院が2040年の社会の需要に応えていくための出発点になっていくのであろうと書いております。
 9ページから10ページにかけてでございますが,このような好循環を生み出すために何か必要かをこの後に示すという整理でございます。10ページ,残りの部分でございますが,リーディングプログラムにつきましては事業評価はされているわけでありますが,3年間やっているわけでありまして,これが終わるタイミングと前後してしっかり,国としても学術振興会と協力をしながらどのような形で具体的な成果や課題があったのか,どのようにほかの大学で取組を実践すればいいのか,このようなことについては綿密な調査を行うということ,またその提供が必要であるということでございます。
 10ページの最後,リカレント教育の動向が大学院について中心になってくるという動きもあるわけでありますので,このようなことも頭に置きながら施策の展開を進めていくことが必要と考えられるという認識を書いているところでございます。
 11ページからが大学院教育の改善方策ということで,1から8まで柱を整理してございます。1は3つの方針を出発点とした学位プログラムとしての大学院教育の確立でございます。大学院において2040年に求められる水準で知のプロフェッショナルを育成するためには体質改善が必要なわけですが,その鍵は依然として平成17年大学院答申において提示されたような大学院教育の実質化をしっかり進めていくことにあると言えるのではないかということでございます。学位プログラムとしての大学院教育の確立の内容は2段落目,3段落目に書いてあるわけでありますが,このようなことが必要だということは累次答申で,ないしは審議まとめで触れていただいているということでございます。
 11ページの一番下,各大学がしっかり,大学院の人材養成の4つの機能ということとか,先ほど申し上げた知のプロフェッショナルの姿というものをしっかり踏まえながらみずからの社会的機能が果たされているか,みずからの人材養成目的や教育課程等が学位プログラムという観点から適切かどうかについては改めて検証していただく必要があるということでございます。
 一方で12ページでございます。今後社会の人材需要は次々と変わり得るという観点がありますので,このような変化に迅速かつ柔軟に対応しながら各大学は人材養成目的そのものも柔軟に見直していくことが必要でありますし,またSociety 5.0の時代,部会でも議論がございましたが,新しい領域を生み出していくことをしっかり考えていかなければいけないということからすると,人材育成の目標自体も社会の変化を先取りする形で設定していく,新たな強みを生み出していくことが必要でありますし,また大学院によっては学問分野の継承という観点もしっかり考える必要があるということでございます。
 このような学位プログラムとしての大学院教育を確立する観点から,12ページ真ん中あたりでございますが,従来義務付けされているところの入学者の受け入れ方針,アドミッション・ポリシーに加えまして学位授与の方針,教育課程の編成の方針,いわゆるディプロマ・ポリシー,カリキュラム・ポリシーについても学位プログラムとしての大学院教育を確立する観点から策定と公表をしっかりと法令上義務付けるべきであるということでございます。
 12ページの下でございます。これまでも各大学が自主的に設定していただいているところがあるわけですが,しっかりと今回の審議まとめ,また過去の累次のガイドライン等を踏まえてこの3つのポリシーが適切に設定されているかどうかを再点検することが強く期待されるわけでありますし,これを単にポリシーを決めるということだけではなくて全体的な学位の質の保証の担保,内部質保証の担保,教学マネジメントの確立につなげていく必要があるということでございます。
 13ページでございます。教育研究組織の在り方や定員設定に関する見直しでございます。各大学院はその設定した人材養成目的をどのような形で実現していくのかについては組織の在り方に関しても柔軟に見直していく必要があるということでございます。例えば社会的な需要が見込める分野であるにも関わらず定員が少ないとか,逆に学問分野の継承を目的として設置されている専攻において,現状を見ると定員が多いのではないかという場合などは,学内資源の最適活用の観点から必要な検討を行い,定員の振替などを行って,大学がみずからの責任において定員を見直していくことが必要ではないかということでありますし,また後述する研究科の枠を超えた学位プログラムを使って積極的に教育研究の組織の在り方を考えていく必要があるのではないかということでございます。
 3段落目でございます。各大学は学長や研究科長が中心となって,組織として大学院の学生の進路を確保するという意識を持った上で各研究科・専攻で養成する人材の需要をまずしっかり把握する必要があるだろう。その上で修了者の状況を追跡する必要があるだろう。その上で所属する学生について,多くが進路の確保が見込めない研究科・専攻については定員を縮小するとか,また他の研究科専攻会の振替も含めて定員の設定を行うことも必要なのではないかということでございます。
 このような定員設定の見直しが将来的に進んでいって各大学みずからの手で教育研究組織が,こういったものも踏まえながら適切に運営されていることが確認できるような状態,内部質保証が確立している状態ができた暁には,国は将来的には研究科において専攻単位の定員の設定を自由化することも含めて柔軟化を制度的に検討することがあってもいいのではないかということでございます。
 14ページ,15ページ,16ページが各課程に共通して求められる教育等の在り方でございます。14ページの1つ目,コースワークを充実する必要があるということでございます。必修科目,コア科目を適切に設定するとともに,リーディングプログラムの成果の普及,またそういったものを卓越大学院も含めたすぐれた事例の創出を進めていくべきであるということでございます。
 14ページの左下,学部・研究科等の組織の枠を超えた学位プログラム等の活用でございます。やはり高度な専門的な知識とともに普遍的なスキル・リテラシーというものを身に付けさせる観点からは,単独の研究科であっても複数の専攻を横断した,連携した取組が重要になってくるだろう。また複数の研究科を連携させる観点から,15ページに移ってしまいましたけれど,各大学が学部・研究科の枠を超えた学位プログラムを進めていくことが必要でありますし,この先行事例をしっかり国が調査をして提供していくことが必要であろうということであります。また14ページの左下に戻ってしまいますが,主専攻分野以外の授業科目を体系的に履修させるようなダブルメジャーやメジャー・マイナーの取組も進めていくことが必要であるということを触れております。
 15ページの下でございます。企業を含む社会から評価が高い取組の1つとして,ダブル・ディグリー,ジョイント・ディグリーというものがあるわけでございます。知のプロフェッショナルに求められる俯瞰力,国際的な視点,切磋琢磨を促すという観点からは留学生などの優秀な人材を結集させる,切磋琢磨できる環境を構築すること,また海外留学,海外大学とのダブル・ディグリー,ジョイント・ディグリーの取組を進めていくことが必要であるということを触れているものでございます。
 17ページからが,各課程ごとにどのような教育が求められるのかということでございます。ここについては部会においても議論があったわけでございますが,各大学が3つの方針に照らしてどの課程を選んでみずからの教育活動を展開していくのか,このようなことについてはしっかり考えていただく必要があるのではないかというわけでありますが,この部分の整理については,2段落目でございますが,どのような課程をそれに則して選択すればいいかという参考に供する観点から,各課程において主として想定される目的・役割,どのような活動が重点的に行われることが求められるのかということについて一定の整理をしたものでございます。この内容のとおりに各大学院における各課程を画一的に峻別・固定化することを求めているものではなくて,ここについては部会でも議論がありましたとおり,接続関係とか,将来の人材像というものを柔軟にいろいろな形で突き詰めていかなければいけないことも踏まえると,このものも踏まえながら各大学がみずからの強み・特色・創意工夫を生かして付加価値を付けていくことが期待される,このような打ち出しを考えているところでございます。
 18ページからが修士課程でございます。総論としては,修士課程は2年の課程でございますので,研究者の養成というよりは高度専門職業人とか,高度で知的な素養ある人材の養成を目的とすることが主たる目的であろうと。修士論文については非常に特徴的な取組であり,今後もコースワークと併せて重要な取組であるということでございます。学士課程から進学する者については,非常に世の中が高度化してきている中で学部教育との有機的な接続を図ることが必要となってきているということでございます。いわゆるリベラルアーツを展開するような学部教育というものがあった場合にはこの成果を引き継いでメジャー・マイナーの深化を図るとか,特定の分野の取組を学士課程で行ってきた場合であってもその中で複数の専攻分野の履修をしてきている,普遍的なスキルやリテラシーをやってきている場合にはそこを大学院で深めていく,このようなことをしっかり修士課程においては考える必要があるのではないかということでございます。
 19ページ,高度専門職業人の絡みでございますが,修士課程において職業人養成というものを念頭に置いたものを行うに当たっては,専門職大学院の課程では行われないような教育を展開する事が1つの視点として必要ではないか。すなわち特定の職業には即時に結び付くわけではないけれども,様々な職業を担う上で必要になるような高度かつ広範的な専門能力と汎用的能力を身に付けるような取組,また職業社会での活用が可能になるような社会の潜在的な要求を顕在化させることで社会的な価値の創出にもつなげられるような研究能力を育成することも考えられるのではないか。
 このような教育を行うに当たっては,19ページ真ん中あたりでございますが,大学院設置基準では30単位になっているわけでございますけれども,これはあくまでも修了に必要な最低基準ということで設定しているものでございますので,必要であればこれを超えてコースワークを行っていくことも考えられるのではないかということでございます。
 またコースワークを充実させる観点から,これは先の話でありますけれども,現行の研究指導教員と研究指導補助教員という枠組みだけが設置基準にあるわけですが,実務家教員というものを置くことを想定した設置基準になっていないわけでございますので,こういったところの在り方を含めた検討を進めていく必要があるのではないかということでございます。
 19ページから20ページにかけては専門職大学院において構築が進んでいるような教育課程連携協議会といったものの枠組みを,普通の修士課程においても類する枠組みを活用していくことも1つの提案として書いております。
 21ページから25ページまでが博士課程でございます。博士課程においては,まず21ページでございますが,区分制博士課程における博士前期課程については本来修士課程とは違うわけでございますので,ここについては改めて留意していただいて,人材養成目的に応じて組織の在り方を考えていただく必要があるのではないかということが21ページの真ん中あたりまで触れられているところでございます。また後期のみの課程につきましても,これは修士までに積み重ねてきたものをさらに高度に専門性を身に付ける課程,また融合領域を含む新領域を形成していく過程で先導的な役割を果たしていくことが期待されるのではないかということでございます。
 22ページから23ページでございます。まず22ページでございます。後期課程においては事前に少し御意見を頂いているところでございますけれども,やはり博士の後期課程については前期課程・修士課程との差別化をしっかり図っていく,博士後期課程に進むことによってどのような魅力があるのかということも含めて意識を持っていくことが必要ではないかということを書いてございます。何度か部会の議論でこのような議論があったということでございます。
 22ページ,博士課程のカリキュラムと社会とのミスマッチの解消についてでございます。22ページの下の方でございますが,リーディング大学院というものについて行われた取組,博士課程修了者が企業の求める俯瞰的な能力を身に付けられる取組とか,23ページ,相互理解が進むような取組,このようなものをしっかり進めていくことが期待されるのではないかということでございます。またインターンシップにつきましても,学士課程の学生とは違って博士課程の学生にふさわしいような実践的な内容を含むインターンシップを企業・産業界・大学が連携しながら行っていくことが必要ではないかということでございます。
 23ページの下,研究者・大学教員の養成というのは当然博士課程において重要な役割の1つでございます。部会でも議論がございましたが,今後の大学教員については自分の特定のテーマだけではなくて当該学問分野全体の像というもの,関連するテーマについても,例えば学士課程レベルにおいては行える,また英語で講義を行う能力が基本的には求められるようになってくるのではないかという指摘があったわけであります。このようなことも踏まえて,研究者・大学教員を養成する博士課程におけるコースワークの充実が必要になってくるわけでございます。
 また博士課程後期につきましては,修了後直ちに大学教員にならない場合であっても,将来的に他者にそれを教えていくとか,実務家教員として大学に戻ってくることも想定されるわけでありますので,いわゆるプレFDの取組を推進する観点から,国はしっかり大学がプレFDを実施する,又は大学院生に情報提供を行うことについて法的に位置付けるべきだということを書いております。
 23ページの下でございますが,若手研究者の養成プロセスというものが大学院を修了した後にあるわけでございますが,こういった部分との接続も頭において人材養成・教育研究を展開していく必要があるのではないかということ,また23ページから24ページにかけてダブル・ディグリー,ジョイント・ディグリーといったものが研究者養成・大学教員養成という観点からは重要ではないかということでございます。
 24ページでございます。博士後期課程において高度専門職業人を養成することを考える場合に重視すべき事項でございます。研究者・大学教員を養成する博士課程教育とはちょっと違う重点の置き方があるのではないかということでございますが,先ほどの修士のところで触れたように,企業との相互理解が進むような取組,企業の求めるような能力を身に付けられるような取組を進めていく必要があるのではないか。また実務家教員の配置の在り方も考える必要があるのではないか。
 それに加えて25ページでございますが,博士後期レベルの高度専門職業人養成については,専門職大学院制度ができてから十数年たったということがありますので,新たな課程の在り方,課程の目的,学位の在り方,単位数,実務家教員の在り方といったことも含めて先に検討が必要ではないかということを書いているところでございます。
 26ページ,27ページ,28ページ,29ページ,専門職大学院でございます。26ページでございますが,国はコアカリキュラムの策定状況とか,また認証評価団体の評価基準への反映状況を確認してステークホルダーへの情報発信に努めるべきであるということ。また26ページでございますが,専門職大学院の課程から後期の課程に進学する学生に対しては,教育研究・教育課程の内容の工夫を図ることで研究に関する能力を身に付けることなども必要になってくるのではないかということでございます。
 27ページ,実務家教員向けにはFDが極めて重要でありまして,各大学における実務家の教員のFD充実・開発を行っていく必要があるということでございます。また,クロスアポイントメント制度の活用や,実務家教員が必要な能力を備えているかどうかを教育課程連携協議会等を活用して確認することによって,いわゆる知識の陳腐化が進まないことが重要ではないかということでございます。
 27ページの下から28ページにかけては,いわゆる海外の国際的な認証評価機関といいますか,国際的な評価機関の認証を受けることについて触れているものでございます。28ページにかけてでございますが,今これを代替できる制度があることになっているんですが,実態上はまだそれが整理されていないということがありますので,大学が海外の認証評価団体の評価を受けて,しっかり効果があるんだと説明できる場合には我が国の認証評価に代えてこれを受けることができるといった制度の早急な整備を進める必要があるのではないか。その際の判断基準としては一定の実績とか,国が特定に偏っていないといったところを念頭に検討を進めていくべきではないかということを書いてございます。
 28ページから29ページについては,専門職大学院については修了後のキャリアアップの現状をしっかり捉えることが厚生労働省筋からも求められているということでありますので,大学としてもこういった具体の情報を収集・公開の促進に留意していただきたいということでございます。
 30ページ,31ページ,32ページ,33ページが学位の授与でございます。30ページは累次触れられているところでございますが,学位については課程を修了して課程の目的とする能力を身に付けた者に対して授与するものということが国際的に定着するものでありまして,博士においてもいわゆる碩学泰斗のあかしが博士学位ではないということなんですが,まだそう思っていない方もいらっしゃるのではないかという指摘もあるわけでございます。引き続き研究指導体制の強化,学位審査の透明性・公平性をしっかり考えていく必要があるということで,31ページでございます。学位授与の主体という意味でいうと研究指導教員だけに依存しないこととか,また,しっかりと異なる専攻の教員や海外の研究経験のある者などを加えた指導体制を組んでいくことが重要であろうと。また,31ページの真ん中あたりでございますが,学位授与の方針を今回見直していただくというタイミングを踏まえて,いわゆる大学院設置基準上位置付けられている学位授与の基準を明示することになっているわけでありますが,この内容をしっかり見直していただく必要があるだろうと。その上でこの内容を公表して,社会に学位授与の透明性を確保していくことが必要であろうということでございます。
 31ページから32ページが,いわゆるQEと言われている博士論文研究基礎力審査でございます。これに合格した者については修士論文を書かなくても修士学位が与えられる制度でございますので,しっかりと適切に運用される必要があるんだということでございます。実際今,ここに書いているように筆記試験・口頭試問ともに実施しているものが4割にとどまるという現状もありますので,国としてもしっかりこの導入状況を,どのような形で学位を与えているのかを確認する必要がありますし,各大学においても,透明性を確保する観点からこの審査でどのようなことを確認しているのかといったことについても公表していくことが必要ではないかということでございます。
 32ページの下は論文博士でございます。いわゆる課程博士の求められる能力が変わってきている。先ほど申し上げたように普遍的なスキル・リテラシーが必要になってきているということ。また,いわゆる研究指導のやり方についてもかつてとは異なりまして,インターネット等を使って随時行われるような事例もあるようでございます。論文博士の在り方を考えるに当たっては,どのような形で実際に指導が行われているのか,実際に単位をどのぐらい修得しているのか,学位授与の期間までどれぐらいかかっているのか,学力試問の内容が課程博士と比べてどのようになっているのか,このようなことについて国がまず調べることからスタートすべきであろうということでございます。
 33ページは学位の取消についてでございます。学位の授与についてはもちろん公表されているわけでありますが,取消については制度的には用意されていない,各大学の判断に委ねられているわけでございます。学位取消の公表の在り方について実態をまずは把握すること,場合によっては法令上の位置付けも考える必要があるだろうということでございます。
 時間が超過してございますが進めさせていただきます。34ページ,35ページ,36ページが優秀な人材の進学の促進でございます。経済的支援,またキャリアパス拡大というものもあるわけですが,まずは学位プログラムとしての大学院教育の確立が優秀な人材を進学させる上では極めて重要であることを確認した上で,まずどのように入学者選抜を見直すのかを考える必要があるということでございます。様々な取組が今始まっているところでございます。国も大学院入学者選抜実施要項を見直すことも含めて考えていく必要があるのではないかということでございます。
 35ページは博士前期課程の学生,修士課程の学生に対するリクルートの改善でございます。今までは煙突型の組織ということもあったのかもしれませんけれども,いわゆる後期課程を志望する可能性がある者に対する情報提供という部分については,組織的には十分な意識を有していなかったのではないか。企業との獲得競争もかなり激しくなっている,このようなことも意識を持った上で組織的・戦略的にどのように学生に対して魅力を発信して大学院の教育研究内容・キャリアパスの見込みを伝えていくのかを考えていく必要があるわけであります。その際にはしっかりとロールモデルを設定する,また博士前期と修士課程とは違った博士後期の活動を明らかにしていくことが必要であります。
 国としても,35ページの下でございますが,いわゆるJSPSにおける特別研究員の制度,その他奨学金,授業料減免等の仕組みについて,有効に進路決定に生かすという観点からそのタイミングを見直していくことが必要だということを36ページにかけて触れてございます。経済的支援につきましては,閣議決定の2割程度の者が生活費相当額を受給できることを目指すという観点から引き続き取組を進めていく必要があります。その上で国費に頼らない経済的支援の充実の方策について大学の事例収集・周知が考えられるのではないかということでございます。
 本日机上のみでございますが新聞記事を配付してございます。これは北陸先端科学技術大学院大学から御提供いただいたものでございますけれども,修士を終えた段階で地元の企業とマッチングをさせる。その上でいわゆる奨学金を出すわけですが,博士を修了した段階でその企業に就職した場合には返済免除になるという仕組みが始まりつつあるということでございます。このような事例なども含めまして,民間の活力も活用したような経済的支援の事例をしっかり考えていく必要があると思います。この事例につきましては幾つかこれに類するような取組が進められないかということが部会においても議論されたということを承知してございます。
 36ページの最後の段落でございますが,既存の仕組みを有効活用する観点からも各大学は大学院生又は指導する者に対して学生納付金とか就学上の支援に対する見通し,ファイナンシャルプランと言われるものをしっかりと示していくことに努めなければいけないということを法令上に位置付けるべきではないかということでございます。
 37ページからが進路の確保とキャリアパスの多様化でございます。博士課程修了者の専門性・能力を活用していくという観点からは,起業という選択肢も含めて大学以外の場や研究者以外の進路を考えていく必要があるだろうということでございます。
 38ページでございます。雇用慣行が違う部分があるわけでありますが,諸外国の企業・国際機関が積極的に博士課程修了者を活用している中で,是非企業も,産業界としても協力をしていただく,また過去の前例にとらわれずにしっかり評価をしていくことが生産性の向上,イノベーションの創出を図る上で非常に重要な取組ではないかという認識を書いてございます。真ん中あたりでございますが,国としても諸外国の博士課程修了者の活用状況についてしっかり情報発信をする,収集する。またキャリアパスの充実という観点から,大学院生の能力に見合った処遇をしている事例をしっかり発掘して明らかにしていくことが必要ではないかということでございます。実際,企業で研究者以外にどのように活躍しているのかという情報が今少ない状態でございます。このようなものについてもしっかりと事例の把握を進めていく必要がございます。
 38ページ,39ページ,公務員試験についても幾つか話題があったわけでございます。まず国としても博士課程修了者の積極的な採用や,大学院での学位取得を奨励する取組を進めていくことが必要ではないかということでございます。
 39ページ,博士課程修了者のキャリア構築に関する組織的支援でございます。実際ヒアリングでも御紹介いただいたところでございます。博士課程修了者と社会とのミスマッチの解消という観点から,民間の就職支援企業とか就職サイトの活用。また博士課程修了者のキャリアパスの認識を深めるための企業との対話を大学が設定するというもの。また学生みずからが自分の能力を見つめ直す機会をしっかり進めていくことが必要だろうということでございます。
 一方で39ページの下でございます。修了者の状況を把握して組織再編やカリキュラム改善に取り組んでいるのはまだ2割にとどまっているという現状でございます。出た学生の成果もしっかりフィードバックすることは極めて重要でありますので,40ページでございますが,把握した内容については教学マネジメントという観点からもカリキュラム改善や定員設定に積極的に活用することが必要であります。
 またJGRADについて御紹介いただいたわけですけれども,NISTEPでもしっかりJGRADの本格的活用を進めるために,大学の協力を得るためにデータベースの入力負担の軽減,また登録者へのフィードバックをしっかりと進めていく必要があるということを書いてございます。
 41ページから44ページ,リカレント教育でございます。こちらについてもヒアリングを行ったわけでございますが,42ページでございます。やはり社会人については非常に時間が大変である,また忙しいということがあるわけですので,その多忙な社会人については多様なニーズに応えた実践的な教育プログラムをやらなければいけない。また時間的・空間的な障壁を低下させる取組が必要である。その上では標準修業年限よりも短い,長い取組,短期の履修も可能とすることが必要だろうと。科目等履修制度を積極的に活用して,そこから正科の課程に柔軟に移行できるようにすることが必要だろうと。単位別の授業料という取組も重要ではないか。4学期制等の柔軟な学事歴,あるセメスターについては仕事に専念することができるような仕組みも必要ではないか。またヒアリングの中でもありましたが,社会人の大学院学生が大学院に来るときに,人的なネットワークを構築することを求めてきているのではないかという御指摘がありました。このようなことの構築にしっかり大学院も意識を持っていくことが必要ではないかということでございます。
 42ページの下でございます。リカレント教育のプログラムを充実する観点からは,社会人学生,派遣元の意向をしっかり聞くこと,みずからの情報発信を充実していくことが必要であります。
 43ページでございます。リカレント教育については通常業務の上乗せではなくて,まさに本来的な業務として位置付けていくことが必要でありますので,契約の内容,人事評価の在り方といった部分も大学が工夫していく必要があるのではないかということでございます。土日・夜間の授業科目の設定や通信教育の設定についても極めて重要であろうと思います。
 履修証明プログラムについては制度の見直しが今後進められる予定でございます。120時間以上から60時間以上に緩和することも予定されているわけでございますけれども,このようなものをしっかり活用して,その上でキャリアアップの状況を把握する必要があるというのは先ほどの専門職大学院のところと同じでございます。
 45ページから50ページまで人文・社会科学系ということで触れてございます。人文・社会科学系については部会の中でもかなりの時間を取って御議論いただいたわけでございます。一方でなかなか決め手がないという御意見もあったわけでございますけれども,人文・社会科学系につきましてはそもそも諸外国に比べて非常に少ないということで,これは大きな問題だというところについては共有がされているのではないかと思います。
 一方で45ページの中ほどにあるように,人文・社会科学系というくくり方がいいのかということについては大分議論があったことは承知してございます。これについてはもちろん状況は個々によって違うとか,若しくは一部,特にビジネスの分野についてはかなり立ち上がってきている状況があるわけですけれども,統計的なものをベースに議論をしようとすると人文科学・社会科学という分類があるということ,また学位授与の動向とか学生の就職の動向,体系的な大学院教育の状況といったものについて,この枠組みで捉えると人文科学と社会科学というのは同じ傾向にあることが伺えること,その上で現状を記述する観点から人文・社会科学系という枠組みを採用するということでございますが,これについては過度に分野の枠組みとか,文理という枠にとらわれることを意図するものでもございませんし,柔軟に分野間の融合を図っていく必要については改めて強調するという前提の下でこういう整理をしているということでございます。その上で45ページから46ページにかけては人文・社会科学系というものについて,2040年の社会を見据えた上でも必要な能力というものがあって,このような能力を培っていくことが必要であるということが書かれているわけでございます。
 一方で47ページでございます。累次の答申でも触れられているとおり,体系的な教育という観点が弱い,博士課程の修了までの時間が長い,教育の内容が社会から乖離しているのではないか,キャリアパスが見えにくい,このような課題が触れられているわけであります。これは前の部分と平仄が合っていない部分がありますので少し直さなければいけないんですが,専攻を横断したコア科目の設置といった部分についてはまだ人文・社会科学系というのは低い傾向があるわけであります。また学問分野の特性に由来するということについても御指摘を頂いているわけですが,やはり修業年限内の授与という部分についても長いという傾向があります。
 48ページからはいわゆる人文・社会科学系の大学院というものについてどのように,この前の部分にあることも踏まえた上で書いておりますけれども,在り方に触れているわけでございます。人文・社会科学系の大学院でこそ身に付くような能力を可視化していく努力が必要であろうとか,また教員の方々についても他分野,社会との対話を積極的に行っていくことの期待を述べているものでございます。修士課程についてはしっかりコースワークを行うということ,また理工系における手法,体制の利点というものも取り入れていくことが必要ではないかということでございます。
 49ページの上でございます。研究科の枠を超えた学位プログラムの活用が考えられる。1つの人文・社会科学系のポテンシャルというものを大学において生かしていくという観点からは重要ではないかということでございます。ここの中では一方的に理工系の分野に人文・社会科学系のところが何かを提供するということではなくて,人文・社会科学系の学生がSTEAM分野の知識とかデータサイエンスの知識といった理工系の知識を身に付ける上でもこういったものを活用するということであって,これは必ずしも片務的ではなく双務的に使うことが考えられるということでございます。
 49ページの真ん中から下でございます。学士課程の教育というものも,人文・社会科学系については最初から専門性を追求するようなやり方があるのではないかという指摘でございます。大学院の取りまとめという範囲を超える部分かもしれませんが,学士課程においてもしっかりと普遍的なスキル・リテラシーを身に付けさせる方向で考えていくことがあるのではないかということについて触れております。
 50ページ,博士課程でございます。まず修士の取組をしっかり踏まえた上で行っていく必要があるわけですが,円滑な学位授与についてしっかり行えるような環境を構築していく,手戻りがないような環境を作っていくことが必要であります。また大学以外で活躍するということが,逆に言うと当面は大学で研究職として活躍することが多く見込まれるという観点からはプレFDの機会の充実に取り込むことが極めて重要であります。このような部分については人文・社会の大学院について,博士後期課程についてとりわけ強調しているところでございます。一方で大学教員とか研究者養成の進路の確保という観点から,定員の在り方については適正な規模を各大学みずからが考えていただく必要があるということでございます。
 大変時間を超過して恐縮でございます。51ページ,52ページでございます。卓越大学院プログラムについて,資料の中に選定の結果も配付してございます。また来年度予算要求の状況についても配付してございます。この取組を通じてしっかり支援を行っていく必要,また我が国全体の大学院改革にこれをつなげていくという観点が大切でございます。
 51ページの下の部分でございます。大学院教育の実質化が進んでいく中で,個々の大学院の学生が研究室の担い手となっていた状況については変化しているところでございます。このような変化を踏まえて研究室の担い手をどのように確保していくのかという観点を考えるときにはいわゆる研究支援体制というものが必要でありますけれども,これについては研究費の在り方なども含めた総合的な検討が必要であります。この趣旨が51ページから52ページに書かれているところでございます。
 最後でございます。大学院設置基準は昭和49年に制定されたということで,40年たっているわけでございます。大学全体の在り方も今後検討する,その組織に着目した在り方を考えることになっているわけでありますので,大学院についてもしっかり連動して見直しを図っていく必要が生じてくる可能性が高くなっているということでございます。その上で,先ほど申し上げた博士後期課程レベルの高度専門職の養成といった問題であるとか,また大学院全体の課程の在り方がそもそもこれでいいのかどうかということについてはこれと連動して引き続き検討を進めていく必要がある。そういう検討を踏まえて国としても法令,評価の在り方,見直しを行っていくことについてはしっかり考えていくべきであるということを第10期,次期の大学分科会に対するメッセージとして書いているということでございます。大変お時間を頂きました。説明は以上でございます。ありがとうございました。

【有信部会長】 

 それぞれ今まで議論したことを整理をしていただいて,最終的に大学側が今後取り組むべきこと,それから国が取り組むべきこと,次期以降の審議に委ねることという形でそれぞれ整理をしてもらっています。今日あと1時間強時間がありますが,本日はこの内容の議論だけなのでじっくりと議論をしていただければと思います。どなたからでも結構ですので,最初に沼上さん,よろしくお願いします。

【沼上委員】 

 ありがとうございます。長く滞在できないので先にさせていただいて心から感謝いたします。
 2点ほど申し上げたいことがあって,これは直してくれという意味ではなくて今後の課題なのか分からないですけれども私が感じたこと,考えたことを2つほどお話しさせていただきたいと思います。
 1つは28ページの国際的な認証機関の問題,27ページから始まるものですけれども,専門職大学院についてはこれをもって代えるというのは制度的にはあるけれどもなかなか普及が進まないというお話なんですが,実際うちの大学でこのAACSBという国際認証機関がやっているんですけれども,これは,ビジネススクールというとMBAプログラムだけのように思われるかもしれませんが,実際はアンダーグラジュエートもPhDプログラムも,全てにわたってAACSBの審査を受けます。したがって商学部とか経営学部,これは経済学部でやってもいいんですけれども,そういうところが全部フルセットでやりますので,その意味ではこれは果たして専門職大学院に限るべきものなのか,それとももう少し広めに考えるべきなのかというところが論点として僕は残っているんじゃないかと思っています。
 ただし実際に申請している側から言うと,AACSBって何年かに1回やり直したときに保留というのが出る場合もあるわけですね。認証保留というのが出た場合,これに変えてしまった場合に認証を保留されると日本国内の大学として一体成立しているのかどうかという問題が起こってきてしまうので,大学側の最適な戦略としては両方をやり続けるしかないんだと思うんです。ただ両方やるということに対する何らかのインセンティブを与える仕組みは考えておく必要があるかもしれない。多分片方だけに変わるというのはかなり難しい状況ではないかと思っております。これが1つ目のポイントです。ですからこれは制度設計上変えるだけではなくて,変える以外に2つやっているとこういう簡略化したものができますとか,何かほかのインセンティブがあるといいなと思っているということです。
 2つ目は随分配慮を頂いて,人文と社会を一緒にしないで下さいと私が申し上げたものに対する配慮の塊のような文章が入っているわけですけれども,これについては私の理解で,データがそうなっていてもそれぞれに克服するべき課題がちょっと違っていて,対応策が違うんだと思うんです。例えば人文の方は佐久間先生の方が詳しいと思うので後で御意見を頂ければということなんでしょうが,47ページの上の方に,「4つの点が課題とされている」というところの3,「教育の内容が社会のニーズから乖離している」というのは,もし人文系の人たちの博士のプログラムが卒業後中高一貫校の先生になるとか高校の先生になって,今の中高一貫校は論文指導みたいなこともやっていますから,そういう意味でいうと博士号を持ってテキストをしっかりと深読みできる人材というのが中高一貫校のような非常に高度な教育をしているところで活躍する可能性がある。将来的には僕はあり得ると思いますし,リカレントでそういう人たちが人文系の博士号を取りに来ることも十分あり得るのではないかと思うんですが,その場合,この教育は社会のニーズにフィットしているわけですね。このとき社会というのはどちらかというとビジネス系の社会を想定してしまっていて,ビジネスの世界と合っていないかもしれないけれども,人文系のテキストを読む力を付けるというところが社会的に発揮できるところという領域もあるので,それを考えると切り分けをいろいろと考えていかないとうまく問題解決ができなくなってくるというところがあるんじゃないかと思います。いずれにせよ修了者のキャリアパスをどう見せてあげるかという4番目のところが多分一番,どちらの領域にとっても重要な課題なんだろうと思っておりますので,その部分をしっかりしながら両者少し,統計上切り分けにくくても課題解決としては違うことを少し考えていくことをしないと問題が解決しないのではないかと思っております。以上です。すみません,ちょっと長くなりました。

【有信部会長】 

 ありがとうございました。人文・社会系の点に関しては確かに全て応えていないと言う訳ではないが,社会のニーズに応えていない部分が多々あることも確かなので,これをうまく書き分ければ,「場合も多い」ぐらいの書き方かもしれませんけれども,そういうようなことだろうと思います。
 それから国際的な認証機関の話は,AACSBのようにデファクトになっている場合だとか,あるいは各国の認証機関が国際的に連携して共通の認証評価をやろうとしているケースとかいろいろあると思いますので,その辺は単純に専門職大学院だけの問題ではないということなので,そこのところはちょっと分かるような形にした方が良い。ほかに御意見ありますでしょうか。どうぞ。

【池尾委員】 

 今のお話とちょっと絡んで。AACSB,EQUISですね。これは確かに認証が保留になってしまうことがあるので,これだけに賭けるのは危険だとは思うんですけれども,やはり国際的なスタンダードになっているわけで,今後大学間の競争がグローバル化しているときにはやはりAACSBとEQUISはむしろ積極的に,この文章を読むとそれで読み替えてもいいよみたいな感じなんですけれども,もうちょっと積極的に取り上げてもいいのではないかと思います。
 せっかく当てていただいたので言いたいことを先に言わせていただきますと,ダブル・ディグリーの話が出ておりました。私が慶応のビジネススクールの研究科委員長をやっていたときにダブル・ディグリーを,フランスのESSECとドイツのWHUと締結いたしました。これは2年間でマスター2つなんです。だから大変にお得な制度なんです。ところが,向こうからは来るんだけれどもこちらからはいま一つ,いるんですけれども数が伸びない。なぜかというとそれは英語の壁でして,昔のTOEFLで600から630を要求される。それをクリアする学生はアメリカに行ってしまうわけです。ですから英語の優秀な学生を取り込めるような施策,経済的なものなのかは分かりませんけれども,我々がグローバル化すればするほどグローバルな競争に巻き込まれるという当たり前のことが起こるわけで,そのグローバルな競争には当然打ち勝っていかなければいけないわけですけれども,その辺の施策みたいなものがあってもいいのではないかと思います。
 それからもう一つ,専門職大学院の実務家教員の話を書いていただきまして,私はこれは大賛成なんですけれども,実務家教員の方を有期にするなり,あるいはPhDを取っていただくなり,そのときに,これは半分質問なんですが,専門職大学院で教えていらっしゃる実務家の先生に同時に博士課程に通っていただくというイメージでよろしいんでしょうか。

【有信部会長】 

 どうぞ。

【平野大学改革推進室長】 

 専門職大学院室長がいないので私からあれですけれども,それだけではないと思います。実務家教員になられる前に既に博士を取ってきてもらうことを社会的に進めていくということもあるかもしれませんし,必ずしもタイミングが同時ということだけではないと思います。

【池尾委員】 

 実は私はそういうケースを知っていまして,これは割とうまくいっているんですね。専門職大学院の課程を教えながら同じ大学の別の研究科の博士課程に行ったり,あるいは別の大学に行っているケースもあると思いますけれども,比較的うまくいっているみたいなので,もしそうであるならば積極的に推し進めてもいいのかなと思います。
 それからもう一点ですが,リカレント教育という意味は,ここではノンディグリー・プログラムは扱わないということなんですか。

【平野大学改革推進室長】 

 リカレントにつきましてはノンディグリーも極めて重要であると書いていたと思います。どこだったかな。

【池尾委員】 

 リカレントにおいてはノンディグリーも非常に重要な役割を果たしていると思います。

【平野大学改革推進室長】 

 私が見付けられなかったぐらいなので分かりにくかったかもしれませんけれども,41ページの1番目の段落の総論の部分でございますが,「学位授与の有無に関わらず」ということで教育プログラムには大きな社会の期待があるということを書いてあるんですが,もうちょっと分かりやすいように書こうと思います。

【池尾委員】 

 了解しました。

【有信部会長】 

 今のようなことは可能だと思いますのでほかに御意見があればどうぞ。田中委員。

【田中委員】 

 ややそもそも論みたいなんですけれども,5ページの知のプロフェッショナルの資質が列挙してあるところ,ここに書いてあることはみんな賛成ですが1つだけ,真ん中に,「みずから仮説を構築する力」とあるんですが,私はここのところは「仮説を構築し検証する力」と,検証も入れてほしいと思っております。もちろん修士課程にある部分だと,コースワークだけだとそんなに検証のところまでいかない場合はあるんですけれども,それでも知のプロフェッショナルのある種のビジョンというものを出す以上は,仮説を構築してそのままというよりは,検証というのは厳密にいうと科学・哲学的にいって大変難しい話になって,そんなに完璧な検証とか証明は普通はできないんですけれども,それでもいろいろな学問分野によってこの程度のことはやりなさいねというのは必ずあるわけで,それは修士課程レベルでもやはり仮説を作ったらそれをある程度自分なりに検証することが必要だろうと思いますし,その検証するということを入れておいていただいた方が最後の倫理観と結構つながるんですね。一番最後に学位取消というのがありますけれども,大体検証のところがいい加減だと学位取消になる場合がある。ですから一言だけ検証というのを入れていただけるとありがたいと思います。

【有信部会長】 

 それは私も入れた方がいいと思います。仮説を構築し検証するサイクルが大きくも小さくもみんな,理系でも同じように研究のサイクルになっていますから多分入れた方がいいと思いますのでよろしくお願いします。どうぞ。

【川嶋委員】 

 先月ドイツのハノーバーでフォルクスワーゲン財団の後援の下で大学院教育についての国際セミナーが開かれました。日本,中国,アメリカ,ドイツ,イギリス,オランダ,ロシアからそれぞれ関係者が集まっていろいろ議論したんですが,大学院教育の,特に博士教育の課題と今後の改革の方向性というのはどの国もほぼ同じで,我が国が悩んでいることはほかの国も悩んでいることがよく分かりました。そのうちの1つは今の田中先生の発言と関連するのですが従来のアカデミアというか大学教員以外のキャリアにどうやって博士人材を送り出すかがどの国でも非常に大きな大学院教育の課題となっています。アメリカとかイギリス,そしてドイツでは博士学生の50%ぐらいが大学教員になりたいという希望で、残りの20%から30%がビジネスとか政府で働きたいという希望があるということでした。審議まとめ案に何回も出てきますけれども,博士課程教育の内容と大学以外のキャリアとのミスマッチを解消するには、どうすれば良いのか、という課題で、1つは知のプロフェッショナルといったときに,今田中先生の御指摘にあった、いわゆる知を創造する人材として必要な能力という,従来からも日本の博士課程では育成してきた能力に加えて,今より強く求められるのは、むしろプロフェッショナルとしての能力であると、どの国の関係者も指摘していました。つまり職業人として必要な能力の育成が博士課程の教育で欠けていたということで,大学教員になるかどうかにかかわらず、例えばよく言われますけれどもチームをマネジメントする力とか,研究費を獲得するために必要な申請書類の書き方とか,予算の管理とか職業人として,組織の中で働くために必要な能力をいかに博士人材にも身に付けさせるかが共通の課題となっていました。大学で働こうとビジネスの世界で働こうと職業人として必要な能力はそんなに変わりはないということで,このような能力の育成については各国とも今非常に重要視しているところで,育成方法としては、1つはカリキュラムの中にそういう科目を作るやり方,もう一つの方法としては、プロフェッショナル・ディベロップメントという形で,何らかの形でカリキュラムの外で提供することをやっている大学もあります。
さらにこれらの能力に加えて、あらゆる分野でグローバル化が進んでいますので,今英語の話も出ましたけれども,語学力も含めて異文化を理解する力とか,日本は国際的な共同研究が非常に弱いと言われていますので,インターカルチュラル・コミュニケーション能力の育成も博士課程で行っていく必要があるのではないかと感じておりました。
 これからは、より具体的な意見になりますけれど,大学院もアドミッション・ポリシーだけではなくて残りの2つのポリシーも策定と公表を義務化する方向に動いていくと思うんですが,そのときに大学院教育の大学としてのマネジメントの仕組みというのが日本は弱いと思います。現状は、多くの大学では、大学院については入試も含めて各研究科任せになっているという状況があると思います。ただ幾つかの大学は,例えば大学院部長とか大学院課程委員会を作っていますけれども,多くの大学はそこまで大学院教育については大学としての組織的なマネジメント体制を作っていない。アメリカではディーン・オブ・グラジュエート・スクールという責任者がいますし,今回の国際会議にはユニバーシティー・カレッジ・ロンドンの大学院教育担当副学長という方が来られておりました。ですから今後はやはり大学院教育についても学士課程同様全学的なマネジメント体制を明確に確立することも大学に提案すべきではないかということです。
 それから博士修了者の処遇については,これはアメリカの調査ですけれども,ファカルティーになった人が一番満足しているのかという調査があり,実は給与の面からいくとアメリカではファカルティーよりもビジネスや非営利団体,あるいは各種の政府機関で働いている博士人材の方が給与が高いというデータがあって,もちろん我々大学人はお金のために働いているわけではないんですけれども,大学に残るよりは外に出ていった方が給与面では優遇されているという話も出ておりました。
 さらに大学院生の実態把握が今後は必要でなないかと思います。グランドデザインでは学生の学習状況の把握が大学に強く求められていると思うんですが,大学院生についても学習・研究・生活状況についてきちんと各大学で把握していくことが今後求められるのではないかと思います。
 また社会科学のところですけれども,今日の配付資料を見ますと卓越大学院に今年採択されたプログラムはほとんど生命科学とか理工系のプログラムばかりで,社会科学・人文科学系のものは一切採択されていなかったということがあります。聞くところによると科学技術・学術審議会で社会科学系の検討が行われているということなんですけれども,理工系と生命科学系と人文・社会科学系を同じ土俵で評価するのは難しいのではないかと個人的には思いますので,人文・社会科学系の振興策を是非国レベルで考えていただきたい。
 最後に細かい話になりますが,18ページの3つ目のパラグラフに,先ほどの平野室長の口頭での説明では何ら違和感はなかったんですが,3行目の「具体的には」の後で,「いわゆるリベラルアーツを展開する学部段階の教育の成果を引き継ぎ,高度な汎用的な能力の伸長とメジャー・マイナーの深化を図るための教育を大学において行うこと」と書いてあると,学部段階の教育がすべからくリベラルアーツを展開する教育だと読めてしまうので,先ほどが,「あった場合には」とかいう御説明でしたので是非その辺の修正をしていただきたい。以上です。

【有信部会長】 

 今回議論していない部分については今後議論すべきことということで残す話になると思いますし,今の点について,リベラルアーツのところはそのように読めるということであれば,学部段階の中でリベラルアーツ教育が行われているのでという前提でということだと思います。それではどうぞ。

【川端委員】 

 では私から。これ,全体を通して大きく今後の課題という観点になるかと思うんですけれども,やはり留学生の話,ドクターに進学する3分の1ぐらいが今留学生で,さらにこれから伸びていく。こういう方々を,どう教育も含めて活用していくのかというのと,あとはやはり産業界に出していくに当たっての流れを作る。そういう意味でここは特出しをしてでももっと議論する必要があるのではないかと思っています。これは今後の課題と思います。
 もう一つ今後の課題ですけれども,学位プログラムを前面に出した場合,結局設置審を各大学が持つという状態になってきます。要するに学位プログラムを,設置審を通りませんから各大学が各大学の観点で作っていく。そうするとそれを各大学がどうマネージしていくかというのが非常に大切なことですし,1つ間違うとすごい混乱が起こっていく。でも一方ではこれがあるからこそ専攻を超えたいろいろな取組が起こる,挑戦ができるという意味で非常に大切なものなんですが,一方ではそういう問題を持っているから,各大学はそのレギュレーションの部分をしっかり持つということをどこかで,大きい観点からレギュレーションをする必要があるだろうと思います。
 最後ですが,2040年答申のグランドデザインのところで,教育的な観点というのは同じように今回のまとめとも連動しているんですが,やはり大きい意味で言うとガバナンスの話,要するに一法人複数大学制だとか私立大学全体をまとめるとかいう話までいってしまうと,各大学で考えようとしたりいろいろなことをしているものが一度全部御破算になる部分が出てくるという意味では,これをどういう関係の中に考えていくのか,どこかで発信するのか整理する必要があるのではないか。要するに経営的な観点というものもあるんでしょうけれども,教育的な観点というものはそれとはまた別次元のものもありますのでと思っております。

【有信部会長】 

 最初のレギュレーションの話はさっきのマネジメントの話とも関係するので,将来的にこれをどう議論するかということだと思います。それから各大学で学位プログラムを作っていくプロセスはそれぞれ可能な範囲でやるということで,その辺の混乱がどうかというのもマネジメントのレベルの話で整理ができるんだろうとは思いますが,そういう観点で整理をしていくかということだと思います。それから一法人複数大学云々というのは,いわば大学の独自性と経営の効率性,統合という観点でやられるので,そこのところは川端委員がおっしゃるように注意深く整理をしてガバナンスが担保できるようになっていればということだと思います。他に御意見どうぞ。幾つか手が挙がって,ではそちらから順番に行きますか。堀切川委員。

【堀切川委員】 

 今日の御説明,特に黄色い色を付けているところを中心に教えていただいてかなり深掘りされて分かりやすく重く書かれているなという感じだったんですけれども,若干気付いたところを申し上げると,5ページ,先ほどの議論にも出たんですが知のプロフェッショナルの姿で黄色いマーカーをしてあるところに6つポチで書いてありますけれども,「社会的・市場的価値を判断する能力」という表現があるんですが,後ろの方の御説明を伺っても,判断する能力からもうちょっと踏み込んでもらって,社会的・市場的価値を創出する能力,生み出す能力とした方がいいような気がしました。ただその前の変更も賛成だったので,まねすれば,「判断し創出する能力」でもいいのかなと思ったんですけれども,個人的には修士,特に博士の学生に対して一番足りないなと思っている能力が研究シーズと社会ニーズをマッチングさせる能力なんです。その結果,企業とか産業界から要求される人材に育っていないと見られてしまいがちなので,そこのところを強調されて,後ろの修士とかドクターのところにもそういった趣旨をもう少し詳しく書いていただければありがたいなと思いました。
 あと,すごく細かいところですが23ページの上の黄色いマーカーをしている5行の5行目のあたりなんですけれども,「実践的な社会的課題を題材としたプロジェクト形式の講義」で終わっているんですけれども,「プロジェクト形式の」というと講義じゃないようなイメージがあるので,プロジェクト形式の教育メニューの導入とかいう表現の方がいいかなと思いました。
 もう一つは,多分通らないかもしれないですがささやかな願望であります。これはまとめられたときに「大学院部会審議まとめ」と表紙になっているんですが,審議まとめだと夢と希望が感じられにくいので,サブタイトルで,がっつり議論をしてまとめたぞという,お渡しする相手にプレッシャーが掛かるような,どのようにまとめるか分からないですけれども,2040年頃の大学院の将来シナリオのためにでも何でもいいんですが,何のためにやったかが分かるようなタイトルにすると委員全員の気分が盛り上がるのではないかというコメントであります。以上です。

【有信部会長】 

 ありがとうございます。最後のサブタイトルは考えましょう。前回のまとめにもサブタイトルが付いていますし,17年答申もサブタイトルが付いているということで,ここの内容をきちんと象徴的に表すようなサブタイトルがあった方がいいですね。
 それから23ページのプロジェクト形式の講義というのは,確かに講義で止まってしまうのはおかしいかなという気がします。最終的に題材としてはプロジェクトなどとか,現実にプロジェクトをやればいいわけなので,そういうことだと思います。
 それから,社会的価値・経済的価値を創出まで書くとちょっと重いかなというので遠慮したんだろうと思いますが,期待する能力なので,ここはできれば創出までしてほしい。社会的価値を今後作り出すことが非常に重要になってくるので,そこへの目配りができるというか,そういうことになるような教育をということ,教育される方は大変ですけれども。それでは迫田委員どうぞ。

【迫田委員】 

 2点ございまして,1点目は議論になっていました人文・社会科学系のところなんですが,47ページの上の方,4でキャリアパスが見えにくいということはあるんですけれども,ここから先に進む道筋が見えない感じがしまして,キャリアパスが見えないというところだけでそれから先にどういこうとしているのかをもっとここは書き込んだ方が,例えば今いろいろお付き合いをしている海外の企業等ですと,教育ベンダーとかでも人文・社会科学系のドクターを持っている方はたくさんいらっしゃるし,いろいろなリサーチ機関も持っている方が多数おられる。そういう,こんな未来があるよというものを指し示すようなキャリアパスをある程度調査して見せていくという方向性,今の段階でいい回答があるわけではないんですけれども,何かその辺は出していけないかなという感じがしました。特に先ほどの委員の御意見にもありましたけれども,卓越大学院の方も企業から非常に評判がよかった文理融合みたいなところは余り前面に出ていない感じもするので,活用イメージが湧く事例を調査して人文・社会科学系の大学の中で研究していくことが必要なんじゃないかと感じました。
 もう一点が38ページの黄色が付いていないところなんですが,上の方で,「採用面接時期についても考慮することが求められる」という表現がさらりと入っているんですけれども,ここだけ見ると何となく一括採用型に,これまでどおりやっていくような,そういう意図ではないと思うんですが,どちらかというともっと自由にという,全体の答申の中でここだけちょっと違和感があるなと。採用を配慮しろというのはどういうことなのかところがよく見えないなと感じました。以上です。

【有信部会長】 

 ここの部分は全体的にいうともっと自由になっていく方向だという認識だと思いますけれども,その辺はちょっと中身を検討させてください。
 それから,学歴がこれほど認められていないのは極めて日本的な状況なんですよね。日本以外の国でこれほど学歴が無視されている国は多分ないと思います。だからここのところはキャリアパスが見えないという言い方だけではなくて,もう一歩踏み込んだ書き方にしておいた方がいいと思います。つい最近でもイギリスで調査した結果のメモを見ましたけれども,大体大学院卒というのは高卒に比べて2.何倍という,国によって違いますけれども一番低いところは北欧の国々。アメリカとかイギリスは2倍以上の収入になっているという調査結果もあるようです。だからこういう具体的な調査をいろいろやりながら,それを示していくことがこれから重要だろうと思いますので,そういうことも踏まえて一言加えるかということですね。樫見委員,どうぞ。

【樫見委員】 

 3点意見を述べさせていただきます。第1点は先ほどからあります人文・社会科学系の話なんですけれども,ほかのところに比べますとやはりここら辺のところは,多くの時間を割いた割にはなかなかいい案が出なかったというのが如実に現れているのですが,私自身社会科学系ですので,他人任せにするよりはむしろこれから先の未来を創出する,あるいはどのような社会になるのかを考える分野こそ人文・社会科学系であるべきですし,特に問題なのは,先ほど沼上委員さんからもお話がありましたけれども,博士まで行って培った能力がどのような人材養成に結び付くのか,どのような分野・職域で使えるのかということを人文・社会科学系自身が明らかにするべきであろうと。ですから学位授与方針ですとかキャリアパスのところで,こういうところで使えますというのを大学側が積極的に発信していくことが大事なんだろうと。その点をむしろ督促をしていただきたいというのが1点でございます。
 2点目はリカレント教育のところなんですが,よく日本から諸外国への留学生が統計的にだんだん少なくなっているという話の中で,昔は企業から社員の方を派遣することが非常に多かった。日本企業の失速とともにだんだん少なくなったという話,これは本当かどうか置いておきまして,やはり学士から修士・ドクターに進む場合にはリスクのこと,就職できるかを考えなければいけないので学生にとっては非常に厳しいのですが,一旦職に就いてから企業,あるいは公務員関係に就いた方がリカレント教育を強化する,収入を保証した上で行かせるというものを積極的に推進していただければ,大学側にとって言えば定員充足にも結び付きますし,全体として職業的な高度専門教育もできるという意味で,リカレント教育のところはその点もやはり強調していただきたいなというところです。
 3点目は,最後のところになりますけれども,現在大学院改組におきましては,当然のことながら例えば,学位プログラムではないんですけれども新たな学際的あるいは文理融合型の専攻を作りますというときに設置審にかけるわけですけれども,これを作ったらちゃんと学生が来ますかとか,あるいは定員充足ができるんですか,それについてエビデンスを求められるわけですけれども,まさにこれから新しい分野を創生しようとか,こういう分野が必要であると考えても,最後の作ろうという段階で制約を掛けてしまいますとその意気込みもかなりしぼんでしまうわけです。ですので最後のところで設置審にも方針を向けていきたいという話なんですが,最後の詰めのところは大学がより自由にグランドデザインというか,自分のあるべき方向を探るために少し裁量といいますか,どう考えていただくか,その点も御検討いただきたいというのが意見でございます。以上でございます。

【有信部会長】 

 ありがとうございます。最後の設置認可の点に関しては,将来構想部会のときにも新しい分野をどう作るんだとか,いろいろな意味で設置認可上の問題があることが指摘されて設置認可の在り方も検討することになっていますけれども,特に大学院はもっと時代に則して急速に展開をしなければいけない部分,学部段階の教育はやはり基本的・基礎的な学問を体系的に教えることが重要なんだけれども大学院の場合は新しい分野に即応していかなければいけないという観点で,設置認可上に対する希望をそういう観点で書き込むかということですけどね。あるいはこの辺も検討するかということですかね。
 それからこれは後ろの参考データにもありますけれども,企業からのリカレント教育への派遣という点に関しては否定的な企業,肯定的な企業というのでデータが整理されていたと思いますけれども,どちらかというと大企業はある程度そういう意味で派遣をしているんだけれども,中小企業はコアになる人材に別のところで時間を取られては困るという事情もあるので否定的というところもあって,その辺は少し考えないといけないかもしれないですね。むしろこれも,例えばそこで得られた資格だとか新しい学位だとかに応じて給与が上がるとかいう形がだんだん定着してくれば。アメリカはそういう方式なので,このサーティフィケーションを受ければ給料が上がりますよということで一生懸命募集をしたりということもやられていて,その割には給料が上がらないという反発があったりとか,こういう混乱もあります。これはちょっと余計な話ですけれども。こちらもたくさん挙がっていましたね。どういうふうにいきますかね。では室伏委員からいきましょう。

【室伏副部会長】 

 簡単に3点申し上げたいと思います。1点目は23ページのインターンシップのことです。様々なインターンシップが博士課程の修了者,博士課程の学生たちに対して提供され始めている状況ですけれど,まだまだ足りないということがあると思います。さらに、企業だけにインターンシップをということではなくて,国や地方自治体でも博士学生をインターンシップで受け入れてその状況を公表することも必要なのではないかと思っております。今経済同友会で教育的視点からすぐれたインターンシップを学部学生向けに展開しているのですが,いずれそれも大学院に向けてやってほしいと要望しております。そういったことがどんどん進むといいなと思っておりますが,行政の場でも是非博士学生向けのインターンシップを進めていただければと思います。
 それから37ページから38ページにかけて博士課程修了者の活躍状況を可視化するということが述べられています。38ページの最後の段落で,院卒者試験云々のことがここに書き込まれておりまして,企業だけではなくて行政の場でも学位を取得することに価値があることを書き込んでくださっているのはとてもよかったと思っています。ついでですが,国だけではなく、地方自治体がこういったことに後ろ向きな状況がありますので,地方自治体のことも一言入れておいていただけると、地方でも学位を持つ人を大事にしようという動きが進むのではないかと思います。できましたら一言入れていただけますでしょうか。
 もう一つはリカレント教育です。ここでいろいろな状況や,いろいろな人材について考えて書き込んでくださっているのはうれしいのですが,社会人というひとくくりになっている点を見直して頂けますでしょうか。実は社会人の中に,仕事をしていて,あるいは大学院生やポスドクとして頑張っていて、ライフイベント等でどうしてもそこから離れなければならなくなった人が職場や大学院などに戻りたいと考えたときにもこのリカレント教育,特に大学院のリカレント教育が非常に役に立つんですね。そういうことも一言入れて頂くと、特に女性たちが元気になるのではないかという気がします。その辺りのことも御配慮いただければと思います。よろしくお願いいたします。

【有信部会長】 

 どうもありがとうございました。それは検討しましょう。それでは天野委員どうぞ。

【天野委員】 

 時間がないようなので1点だけ。30ページと31ページです。学位授与の在り方についてというのを拝見しました。いろいろお書きになっているんですけれども,この中でちょっと違和感を持ったのが,こちらの学位授与機構さんという独法の実務部隊をお持ちだと思うんですけれども,そのキーワードが全然出ていない。ちょうど学位授与機構さんも来年度から新しい中長期計画をお立てになるという位置付けになっていますし,この中で各大学頑張ってくださいというだけではなくて,文科省さん自身,学位授与機構さんの役割ですとか位置付けですとか少し触れていただけるとよろしいじゃないかと感じました。以上です。

【有信部会長】 

 学位授与機構は多分大学院の学位は出していないと思います。

【平野大学改革推進室長】 

 防衛医大。

【天野委員】 

 ええ,あると思いますよ。

【平野大学改革推進室長】 

 そこだけですね。逆に。

【有信部会長】 

 じゃあそこのところはそうして。井上委員。

【井上委員】 

 最初に全体的なんですけれども書き方を統一していただかないと,例えば17年とか23年答申,30年グランドデザインと書いてあって西暦と年度がごっちゃになっていくと思いますのでここは必ず面倒でも平成を入れていただいて,括弧して西暦年を入れて統一していただくということでお願いします。
 それから24ページを開けていただきたいんですけれども一番上のパラグラフの大きいところですね。ここに黄色のマーカーで付いているところで会議のときにも何度か意見を申し上げたと思うんですけれども,「博士課程の学生の時点から」というこの前のところに,例えば「修士修了直結型の社会人博士等も含めて」とか,語尾は「工夫が求められる」とか「検討する必要がある」と書くこともあり,ちょっと踏み込んだ表現を書いていただくと今後につながっていくのではないかなと強く期待しております。
 それから35ページですけれども,一番下のパラグラフで学振の特別研究員等のことも書いてありますけれども,実際に特別研究員のポスドクというのはPDが350人でSPDが18名ですので400人に満たないわけですね。そうするとそれ以外の,現在大学院教育改革ということで大きな事業が,卓越大学院をはじめとして始まっておりますけれども,人材を確保するための人件費のための新しい事業というのを,1,000人規模が理想ではあるんですけれどもまずは500人規模ぐらいから,例えばテニュアトラックとJSPSのPDの発展型という形で考えていただくとそれほど年間の事業経費,例えば1,000人だったら60億円で,500人だったら30億円規模というのは文科省にとってそんなに大きな額ではないと思います。優秀な学生が博士課程に進学する大きなモチベーションになるので是非検討していただきたいと思います。文末の書き方というのは必ずしも強い書き方をしているわけではありませんので,こういうことを検討する必要があるということを書いていただきたいと,これも強く願っているところです。私からは以上です。お願いいたします。

【有信部会長】 

 どうもありがとうございました。それでは佐久間委員,どうぞ。

【佐久間委員】 

 たびたび出ておりますけれども,人文・社会科学系についてはいろいろページを割いていただきましてどうもありがとうございます。いろいろと重い課題がたくさんありまして,それをどうするかということは、人文あるいは社会科学系の大学院で考えていかなければいけないことではあると思いますが,ただみんな非常に大きい課題ですので,このままだと大き過ぎて思考停止してしまう可能性があるので,先ほどもありましたけれども,キャリアパスについて具体的にこういうことが考えられるんじゃないかということを提示しつつ,そういう議論を促すような仕組みも是非考えていただければと思っているところです。もちろん人文あるいは社会科学系の大学院が自ら頑張らないといけないわけですけれども。
 もう一つは,先ほど川端委員からもありましたが,今回のまとめでは余り留学生のことは触れられていないと思うんですね。手元の資料を見ますと工学系や社会科学系の留学生が多いとありますけれども,工学系の場合は特に博士後期課程,社会科学系の場合には修士課程,博士前期課程。ついでに言えば人文系も博士前期課程,修士課程は結構留学生の割合が高いんですね。今,国際化ということが言われていますので一定の割合で留学生がいることは前提になっているとは思うんですけれども,留学生の割合が著しく多い場合は当然大学院の教育の在り方に影響する部分が多いと思うんですね。もちろんそれぞれの大学院が戦略的に留学生を多く採ることを選択している場合は別にとやかく言う必要はないわけですけれども,成り行きで,例えば日本人が来ないので結果的に留学生が多くなってしまったというところもないとは言えないと思うんですね。そういったときに留学生と日本人学生でダブルスタンダードになってはいけないと思うんですが,その一方で当然ニーズも違うところがあったりするので,特に留学生が多い場合にどう折り合いを付けていくかを考える必要があると思いますので,そこら辺は今後検討が必要なのではないかと思います。
 またこのまとめの中にもありますけれども,大学院生が修了した後の把握も当然重要なんですが,どうしても日本人の学生に比べて留学生は把握が甘い部分があると思いますので,そこら辺の実態の把握にも取り組む必要があるんじゃないかと思うところです。よろしくお願いします。

【有信部会長】 

 いや,留学生も日本人も卒業生,修了生という意味では同じですよね。ありがとうございました。それでは高橋委員どうぞ。

【高橋委員】 

 ありがとうございます。コンパクトに3点ほど。前書きのところはこの文章の位置付けを決める意味でとても重要だと思います。そういう意味で,今回は御議論の多くのものが,博士号を取った人がアカデミック・キャリアをそのまま進んで大学教員になる人と,博士号を取った後いわゆるノンアカデミックで活躍するのかについて、いろいろな観点で議論されたと思っています。それを反映して4.以降,書き分けをそれなりに明確にされているのではないかと思うので,是非1.の中で,既にさらっとは書いてあるんですけれどもその2つの区分に基づいてしっかり議論していくということをより明確に出した方がいいのかなと思いました。
 2点目は小さいところなんですけれども,6ページの2段落目,「STEAM以外にも人文・社会科学系の知識も含めた高い水準の」と書いてあるんですけれども,我々のこのドクターの議論というのはもちろん理工系・自然科学系だけではなくて人文・社会科学系ですので,ここで人文・社会科学系の人たちのことを考えますと,「人文・社会科学系の知識も含めた」と書くとおかしいかなと思うので,これは「自分の専門以外のことも」と,これは文章が残ってしまっただけだと思うんですけれども、書き換えた方が全体感が把握できるのかなと思います。
 3点目です。参考資料6を拝見しました。要旨のところを含めて最初の三,四枚がとても分かりやすいと思います。これだけの議論を今回してきましたが、果たしてこの議論の趣旨を踏まえて読解していただける方がどのくらいいるのかというのがとても懸念するところです。もしかしたらこれは文書規定等を変えなければいけないかと思うんですが,参考資料6の最初の数枚の,いわゆるエグゼクティブ・サマリーのように,今回のこの議論で何がポイントでどこを中心に議論したか,その話題は継続的なものなのか,今回新しく変わったものか,問題提起なのかというのがせめて数枚で分かるようにしていくことは今後とても重要だと思います。
 その観点からもう1点,こういう政策文書というのは、図表を使えないという暗黙の規定があるのでしょうか。私の申し上げた最初の1点目なんですけれども,アカデミック・キャリアの人間に関する話なのか,ノンアカデミック・キャリアに対する課題なのかを最初に区分した上で議論することがとても大切なのだとすると,全て文章で書くよりは適宜図表を用いた方が明確なこともあると思います。これは今後に向けて御検討いただければと思います。以上です。

【有信部会長】 

 どうぞ。

【平野大学改革推進室長】 

 すみません,先ほどの本文のサブタイトルの話も含めまして,まだこの素案というかたたき台を議論していない中でいきなり概要とかタイトルが決まっているというのも,議論を踏まえた上で考えるべきだろうということで今回お示ししてございませんが,今委員から御指摘があったようにいわゆるサマリーについては一内で分かるようなものと複数内でしっかり分かるようなものを作っていきたいと思ってございますので,その際には今の御意見を参考にさせていただきます。

【有信部会長】 

 それから今の意見で,アカデミック・キャリアとノンアカデミック・キャリアを明確に区分けするというのはある意味で正しいというか必要なことかもしれないんだけれども,本来は区分けなんかしないとはっきり言って,両方が十分に行き来できるような,そういう知のプロフェッショナルでないといけないと思うんですね。だから今の問題は,あくまでもアカデミック・キャリアに集中し過ぎている日本の状況をどのように考えていくか。この辺はもうちょっと,ここの全体のトーンというか議論を踏まえて,どうぞ。

【高橋委員】 

 委員長がおっしゃるとおりだと思います。施策というのは,例えば中長期的に,若しくはこの3年,この課題を解決するためにというものだと思うので,本来趣旨は全くおっしゃるとおりなんですけれども,では今はアカデミックとノンアカデミックの両方をふまえたキャリアのための大学院教育があっていい,そういうことですね。

【有信部会長】 

 おっしゃっている意味が分かりました。どうもありがとうございます。では永里委員,どうぞ。

【永里委員】 

 まず大変配慮されたまとめであると,いろいろ考慮されて書かれているのでこれを深読みすると今から私が言うことは含まれていることになるんですけれども,あえて言わせてもらいますと,36ページで経済的な支援というものがありますけれども,ヨーロッパの例のように博士課程の学生が企業や研究所と共同研究をして給与をもらう。例えば皆様御存じですけれども,ドイツのフラウンホーファー研究所のように,その地域の大学教授がその地域のフラウンホーファー研究所長を兼務しています。そして学生を指導し,共同研究をさせて学位を取らせる。もちろん給与も支払われる,このフラウンホーファー研究所やベルギーのエレクトロニクス半導体の研究機関IMECなどもルーベンス大学と協同して同じ仕組みをしております。こういうようなことはこの本文に書く必要は全然ないんですけれども,脚注かどこかで触れてもらった方がいいのかなと。あるいはもうどこかで触れてあるんだったらそれはそれで結構でございます。
 それから38ページ,39ページ,そして50ページにわたるところで,国としても積極的に博士課程の学生を採用すべきだということを言いたいんです。以前私はこの審議会で述べているんですけれども,化学企業とか製薬企業は実は博士課程の学生をたくさん採っております。ですがそうでない企業も多い。企業が2040年に生き残っているためには博士後期課程修了者に対して,“大学がよき人材を育成してくれれば企業は博士を採用する”という考えを捨て去り,まず大学の育成方針を信じて博士を積極的に採用し待遇をよくすること,そうすれば学生も博士後期課程に進むはずであるということを述べておりますが,実は50ページのところ,国としても積極的に博士を採用すべきです。採用すれば彼らが2040年の社会の姿を描き,そのための行政の在り方を提示するはずです。新しい官僚像ができます。国が給与をそれなりに考慮して率先して採用しないならこの審議会のまとめは絵に描いた餅になると思います。参考までに言いますと,民僚と呼ばれている経団連の事務局は昭和40年頃,既に人文・社会科学系大学院卒を複数採用していました。事務総長などもそこから輩出しています。現在は3分の1が院卒採用です。ということで文科省は旧科学技術庁系の理系院卒者を除いて人文・社会系院卒者を率先して採用していらっしゃるかということを質問したいと思います。以上です。

【有信部会長】 

 何か。どうぞ。

【義本高等教育局長】 

 今,文系でも半分ぐらいが大学院修了者の採用をしている年があります。総合職事務系職員。

【永里委員】 

 ありがとうございました。では国として率先してなさっていると。

【有信部会長】 

 今,大学院卒の割合は文科省の場合は結構な比率だったと記憶しています。ただドクターは,そういう意味ではこれからの課題だと思いますけれども。では宮浦委員どうぞ。

【宮浦委員】 

 いろいろありがとうございます。21ページについて,博士課程の総論の書き出しが非常に重要だと思っておりまして,ノーベル賞の受賞者が我が国から連続して出ている状態で,それに対する将来の危惧というのも言われているところでありますので,このノーベル賞受賞者云々の後に,「今後の博士課程における」という文章でかなり飛躍がありますので,そこの間に我が国の強みとなる学問分野の次世代への継承や新領域の創出における博士課程の役割は極めて重要であるということを一度総論で言っていただきたいというのが希望です。その後にこちらの黄色を続けていただき,その黄色の中で,「今後」という文言と「従前の」という文言があるんですけれども,これがちょっと引っかかっていまして,「従前の」と言いますと今までの流れを悪者扱いするような雰囲気があって,少ない産業界の輩出を50%程度に引き上げたいということがあるのはよく分かった上で,これを実施することが重要であるんですけれども,「さらに進めることが求められる」とか,今全然やっていないみたいに聞こえますので少し改訂していただけるとありがたいと思います。
 また今後につきまして,この委員会でも産業界からの委員がいらっしゃいますので,今後の流れのところには「産業界と連携して」という文言をどこかに少し入れていただけるとありがたいかなと思っております。産業界側でも人材育成についての意識は非常に高くなってきているようで課題も抽出されているようです。特に,博士後期も含めまして新卒採用ですと新卒一括の中に入れられる傾向があり,また人事が管轄される企業もあって,それが研究所マターの採用の希望を出しても人事一括採用の流れに入ってしまうという産業界の課題もあるようですし,そのあたりが今後は産業界とアカデミアの側が博士後期等について,企業と大学というのは結構やっていると思うんですけれども,もう少し大枠で意見交換をしっかりやって,出口は産業界ということを明確にしていき,産業界からいかに博士が欲しいか,こんなに採っている,今後は大幅に増やしたいというようなメッセージを社会に発信していただくことが学生へのメッセージになると思いますので,そういう方向も今後考えていけるといいんじゃないかと思います。以上です。

【有信部会長】 

 どうもありがとうございました。今の産業界の話は,各企業ごとに事情が違うので一律にどういう形に書き込むかというのは検討の必要があると思いますけれども。ほかには御意見ありますか。どうぞ,井上委員。

【井上委員】 

 それぞれの文言,恐らく気になる先生方はおられると思うので後でまたメールで意見を集めていただきたいということと,せっかくですので一言だけ,35ページの上から2つ目のパラグラフの下の方に,「研究という営みには興味があるが」というのは文学的な表現過ぎて,「研究に興味があるものに対して」というのでいいんじゃないでしょうか。ここのところは誤解を招くような書き方なのですっきりと書いていただきたいと思います。
 ついでに同じページの下から2番目のパラグラフの黄色いマーカーの下なんですけれども,「その際,博士後期課程においては修士課程,博士前期課程とは異なり」と書いてありますけれども,必ずしも異なっている場合ばかりではなく,研究に興味がある優秀な人にとっては修士課程でもしっかり研究して論文を書いていますので,「修士課程,博士前期課程とは異なり」というのは消していいのではないかと私は思っています。以上です。

【有信部会長】 

 ある意味で比べてということだと思うんですね。だから比べてという形にすればそれはそれでいいんじゃないかと思うんですが。
 いろいろ意見を頂きました。最後に井上委員から御要望がありましたように,ここだけでは言い尽くせないものについては後でメールでお寄せいただければと思いますし,五神委員ほかからも御意見を頂いていますのでそれを踏まえてさらに事務局を中心に検討していき,今後議論に反映させていただきたいと思っています。本日の議題はこれで全てなので,今後の日程等について事務局からお願いします。

【平野大学改革推進室長】 

 本日も活発な御議論を頂きましてありがとうございました。次回がちょうど1か月後,12月5日水曜日,午前10時から正午に開催を予定してございます。詳細はまた追って御連絡させていただきます。また先ほど委員からもお話がありましたように,本日また御議論を頂いたものも含めまして御意見をどのようにしっかり踏まえていくのかということになっていくわけですが,後ほどメールでも御連絡させていただきたいと思いますが,審議まとめについて追加で御意見がございましたら,11月16日金曜日をめどに事務局にお送りいただくようにまた御案内を差し上げたいと思います。基本的に頂いた意見は,公開の場で議論をしている会議でございますので公表することを前提にお送りいただければと思います。また今日は触れてございませんが,五神委員と神成委員から事前に御意見を頂いてございます。本日の議論と併せましてまたその取り扱いについては部会長と御相談をさせていただいて,内容については取り計らうことにさせていただきたいと思います。
 本日の資料につきましていつものお願いではございますが,郵送を希望される委員の方につきましてはその旨記載していただいて机に残してください。その上で勤務先にお送りする取り扱いにさせていただきたいと思います。以上でございます。

【有信部会長】 

 一応来週の金曜日までに意見があればということで,またこれはメールで連絡を頂けるということのようですのでよろしくお願いします。それでは珍しく若干早めですが皆さん御協力ありがとうございました。それでは本日の審議はこれで終了とさせていただきたいと思います。閉会にします。ありがとうございました。

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