大学院部会(第88回) 議事録

1.日時

平成30年8月27日(月曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省旧庁舎6階 第2講堂

3.議題

  1. 大学院教育の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

(部会長)有信睦弘部会長
(副部会長)室伏きみ子副部会長
(臨時委員)天野玲子、井上眞理、樫見由美子、川嶋太津夫、神成文彦、小西範幸、佐久間淳一、迫田雷蔵 、高橋真木子、永里善彦、藤原章正、堀切川一男、湊長博、宮浦千里の各臨時委員

文部科学省

(事務局)義本高等教育局長、生川総括審議官、藤野サイバーセキュリティ・政策立案総括審議官、平野大臣官房審議官(生涯学習政策局担当)、滝本大臣官房審議官(高大接続・高等教育局担当)、信濃大臣官房審議官(高等教育局担当)、蝦名高等教育企画課長、三浦大学振興課長、松永専門教育課長、石橋高等教育政策室長、平野大学改革推進室長、髙田教員養成企画室長、大月専門職大学院室長 他

5.議事録

【有信部会長】

 それでは,所定の時刻になりましたので,第88回の大学院部会を開催させていただきます。御多用中のところを御出席賜りまして,またこの暑い中,どうもありがとうございます。よろしくお願いします。
 本日は,池尾委員,大島委員,岡島委員,加納委員,川端委員,車谷委員,田中委員,沼上委員,それから五神委員が御欠席と伺っております。よろしくお願いします。
 それでは,事務局から配付資料について説明をお願いします。


【平野大学改革推進室長】

 机上の議事次第のとおり,配付資料と参考資料を御用意してございます。机上資料はタブレットの方に入れております。抜けている資料など,お気付きの点がございましたら事務局にお声掛けください。


【有信部会長】

 本日の議論の流れとしては,まず議題の(1)であります大学院教育の在り方についてとして,専門職大学院の課程等についての本日の論点を説明した上で,委員の皆様方から御意見を伺いたいと思います。
 それから,最後に高等教育の将来像に関する大学院の記載のイメージについて,今鋭意まとめを進めていただいておりますけれども,それについて事務局から説明をした上で御意見を伺いたいと思っております。
 それでは,議事に入りたいと思います。最初に議題の(1)の大学院教育の在り方についてということで,まず事務局から説明をお願いします。


【平野大学改革推進室長】

 参考資料2をまず御覧ください。参考資料2の方が3月にお示しをした審議の進め方でございます。本日は,このうちの(7)でございますが,高度専門職業人養成の充実ということで,専門職大学院の課程について主に議論をしていただくということになってございます。
 今まで3月から御議論を続けていただきまして,おおむね本日の部分を終わりますと,もともと用意していた内容について一通り議論がされたということになるわけでございますが,(1)のリーディングプログラムの成果の検証と普及という部分につきましては,各会の方でリーディングプログラムの話題を取り上げられているところでございまして,その内容の抜粋を参考資料6として本日付けさせていただいてございます。
 また,これまでの成果,評価結果をまとめた実施状況を参考資料7,修了生の活動状況についてまとめたパンフレットを参考資料8としてお配りをしてございます。適宜御参照を賜れればと思います。
 それでは,本日の論点であります資料1の高度専門職業人養成の充実についてでございますが,専門職大学院の担当課であります専門教育課より御説明をさせていただきます。


【大月専門職大学院室長】

 専門職大学院室長の大月と申します。資料1を御用意願います。資料1,「高度専門職業人養成の充実」を用いまして,専門職大学院制度の趣旨と現在の状況,また論点について御説明申し上げます。
 まず1ページ目から8ページ目は,制度の創設の趣旨,現在の状況等でございます。1つ目の丸でございますが,専門職大学院は,高度専門職業人養成への高まりに対応するため,大学院において,高度で専門的な職業能力を有する人材の養成に特化した実践的な教育を行う課程として平成15年度に創設されたものでございます。既存の修士においては,研究者養成と高度専門職業人の養成の両方の役割を担っているというのに対して,高度専門職業人養成に特化をしているというところでございます。
 その下の,平成17年度の中央教育審議会の高等教育の将来像の答申等におかれまして,専門職学位課程は,幅広い分野の学士課程の修了者や社会人を対象として,特定の高度専門職業人の養成に特化して,国際的に通用する高度で専門的な知識・能力を涵養する課程として,明確な役割を担うことが適当であるとされておりまして,必要な教育として,例えばということで,「理論と実務の架橋」を目指す実務家教員を含めてバランスのとれた教員構成の下で,国際的な水準の高度で実践的・継続的な教育等々が触れられたところでございまして,2ページ目でございますが,大学院教育の構築に向けて,これも平成17年度の中央教育審議会の答申でございますが,プロフェッションそのものの確立を支え,プロフェッショナル集団を強固に形成する上で重要な役割を果たすことが期待されて発足した仕組みであるというようなこと。役割を果たすことについて十分な見通しを得られる人材養成の分野においてのみその発展が期待されるとされたところでございます。
 その下,現状でございます。平成30年度現在,119大学に169専攻が設置されている。入学者数については,ピークに比べて減少しているけれども,30年度では7,158人が入学している。ただ,分野によって増減の状況に差が生じているところがございます。
 社会人学生の状況については,在学者の約5割は社会人であると。全体として社会人比率は上昇傾向にあるとございます。
 こちらの資料の後ろに付けております図を御覧いただければと思っております。今申し上げたようなことがまとめられているところでございます。17ページ目でございます。申し上げたように119校,169専攻が置かれているところでございまして,ページをおめくりいただいて18ページ目,図2でございますが,こちらのピンク色の法科大学院が非常に減少していることが分かると思います。こちらの法科大学院については,組織見直しを促してきたところでございます。一方で,オレンジ色の部分,教職大学院につきましては,基本的には専門職大学院とするようにというような政策を促してきたこともあり,増えているところでございます。それ以外で多い数を占めるのは,ビジネス・MOT分野でございますが,大体横ばいというような状況になっているところでございます。その他の分野もほぼ同様でございます。
 続きまして,19ページ目でございますが,こちらは入学者数の推移が上に書かれているところでございます。ピーク時よりは減っておりますが,こちらは法科大学院の減少等を除けば若干増えているのかというところ。また,その下,社会人学生の割合,赤い色で示しているところでございますが,大体それなりに規模としては維持されているのかという状況でございます。
 2ページ目にお戻りいただきまして,専門職大学院の改善方策ということで,平成27年度から,制度が平成15年度に発足をして,制度のこれまでの状況について検証等を行った結果として,平成28年8月に大学分科会大学院部会,本部会の下に専門職大学院ワーキンググループ,主査を有信先生に務めていただいてやったものでございますが,専門職大学院は大学教育の実質化や社会人教育を牽引する役割を担うとともに,専門職大学院制度の普及定着も一定程度図られてきたが,専門職学位の付加価値が社会(「出口」)と共有されていないなど,社会との連携が十分に図られておらず,当初期待されたような専門職大学院数・学生数の広がりには至っていないという課題認識の下,改善策がまとめられたところでございます。
 3ページ目のところに具体的な改善方策が書かれております。1つ目のところが,関係業界の関係者等からなるアドバイザリーボードの設置。2つ目,教育課程の部分で,ステークホルダー等の参画を得た上でのコアカリキュラムの策定促進。社会人に対する柔軟で多様な教育機会の提供,ICTの活用,博士レベルの専門職学位の検討。その下,教員組織でございますが,専門職大学院の必置教員が他の課程の専任教員を兼務することを一定程度認めることを検討。その下,みなし専任教員の担当科目数の緩和。認証評価は,機関別評価と分野別評価の効率化。国際認証を得た場合,国内の認証評価受審に伴う負担の軽減の検討。5番,情報公開の促進で,どのような人材の養成を目指しているのか,ステークホルダーとどのような連携を図って教育内容を充実するかなど,連携方策の策定・公表等々が触れられたところでございまして,その下の丸にありますように,これらの改善方策のうち,社会との連携方策,学士課程・修士課程等との連携強化,既存の修士課程等から専門職学位課程への移行を促す方策等に関しまして,平成29年度に学校教育法を改正するなどの対応を図ったというところでございます。
 その下の教育課程連携協議会の設置が,アドバイザリーボードの設置という提言等を踏まえまして法制化されたものでございますが,専門性が求められる職業に関連する事業を行う者などの協力を得て教育課程の編成等を行う規定を設けるとともに,産業界等との連携により,教育課程を編成,及び円滑かつ効果的に実施するため,教育課程連携協議会を設けると。平成31年度から施行されることになっております。
 続きまして4ページ目でございますが,専門職学位課程の専任教員による他の課程との兼務,こちらは設置基準等の改正によってこの30年度から施行されております。
 同様に,みなし専任教員の授業科目の単位数についても6単位から4単位ということで改正がなされているところでございます。
 その下,一方で,認証評価制度の在り方や情報公開の促進等については,積み残された課題となっているということ。また,その専任教員による他の課程との兼務の関係で,高度専門職業人養成を主たる目的とする既存の修士課程等から専門職学位課程への転換促進のために特例措置を設けた,移行措置を設けたものについては,一定期間後にその効果を検証し,その状況を踏まえて再度検討が必要となされているところでございます。
 その下で,ビジネス分野における有識者会議における議論の内容を紹介しているところでございます。ビジネス分野においても,下の括弧のところの1つ目のポツでございますが,大学の論理ではなく,企業のニーズオリエンテッドで人材養成に取組むことが必要。個別のビジネススクールの機能強化ではなく,世界と伍して活躍できる経営人材を養成するための新たなフォーマットを構築することを推進するべき等々がなされて,今後更にワーキングを設置して検討することとなっています。
 5ページ目の1つ目の丸,法科大学院については別途特別委員会を設けて,本年3月に基本的な方向性の取りまとめを行っているところでありまして,制度の詳細について,今検討が更に進められているところでございます。
 また,その下の教職大学院については,昨年8月に有識者会議において,教員養成・研修機能の強化に向けた報告書が取りまとめられたところでございます。本年3月には,教職大学院に係る要件等の今後の取扱いについて各大学へ通知を行うとともに,教員養成系修士課程については,原則教職大学院へ移行させるなどの対応を行っているところでございます。
 その下が報告書の抜粋等で,一番下のところでございますが,米国や英国の教員養成については,研究的学位であるPh.D.に対して,実践性を重視した学位としてEd.D.が位置付けられておりまして,そのようなことを踏まえて,6ページ目でございますが,日本においても関係者から教職大学院で得られる学位「教職修士(専門職)」の上に置く実践性を重視した博士の専門学位が必要との声や,Ph.D.を持つ者が臨床的な研究を行って更にEd.Dを取得し,2つの博士学位を持つ者が大学での教員養成を担うことが教員養成の質的向上をもたらすなどの声があることが紹介されています。
 その下,社会人に配慮した教育ということで,社会人割合に関して先ほど紹介しましたが,ビジネス・MOT分野では9割にも上ると。また,社会人に配慮した入学者選抜の実施,夜間開講,サテライトキャンパスの設置などが進められておりますけれども,制度,これはその他の部分もそうですが,分野別に見ていかないといけませんけれども,全体としてはICT等の活用が13%にとどまっているということ。
 「社会人の学び直し」が推奨されている中で,文部科学省の調査などでも「インターネットなどによる授業ができるシステムの整備」が非常に求められているということで,受講しやすい環境の整備が1つの課題となっていると記載させていただいています。
 またその下,「社会人の学び直し」に関しては,大学だけではなく,当該専門分野の学協会や業界・職業団体においても取組まれていて,関係者間の連携・協力が必ずしも十分でなく,役割分担が明確でないということが指摘されているところでございます。
 その下,専門職学位課程と博士課程(後期)の接続についてということでございます。専門職学位課程においても,後期に進学を希望する学生数が一定数存在することから,修士論文相当のレポート作成,課題研究等の指導を行っているということを記載しています。
 また,7ページ目でございますが,文部科学省の調査では,専門職大学院への調査でございますが,博士レベルの専門職学位課程の必要性については,約5割が必要だと答えているということ。
 また,その下,教員組織の部分でございますが,研究者教員と実務家教員の割合に関して,ビジネス・MOT分野では実務家教員の割合が60%と多い。ただ,分野においては違いが見られるというようなことを紹介しております。
 また,認証評価についてでございますが,下から2つ目のポツで,専門職大学院は,5年以内ごとに認証評価機関による分野別認証評価を受けることが学校教育法等により義務付けられており,多くの分野において評価機関が設立されて認証評価が実施されているという状況でございます。
 また,8ページ目でございますが,学校教育法の施行規則において,大学は修了後の進学者数や就職者数等についての情報を公表することが規定されているということを踏まえて,専門職大学院においては,在職しながら通った修了生が所属先に戻った後の状況や,転職などによるキャリアアップを図ったというような評価について,どうしてもこの情報というのが就職というようなところが大きいことで,一方で,専門職大学院については,企業等に所属されながら通っている学生が多いので,どのようなキャリアアップが図れたというような情報が十分に公表されていないというようなこと。
 その下,専門職大学院においては,厚生労働省の専門実践教育訓練給付金等に関して議論するような分科会においても,他の指定講座と異なり,在職者数が多いことで就職率ではその教育効果を計ることができず,その効果を評価するためのエビデンスが十分でない。なので,多面的な分析が更に必要であるような意見があることから情報公開の促進が求められているということを記載しています。
 続きまして,9ページ以下が論点でございます。最初の丸は,専門職大学院は,養成する人材像をより明確に提示していくことが必要であるということから,まだ義務付けられておりませんけれども,3つのポリシーを明確に設定して,教育課程や教員組織等の構築・見直しに取組むべきであるとしているところでございます。
 まず,コアカリキュラムの策定ということでございます。その下でございますが,国は,各分野におけるコアカリキュラムの策定状況や教育課程への反映状況等の統一的な把握を進める。認証評価団体における評価基準への反映状況も確認して,各分野の学協会等においては,ステークホルダー等への積極的な情報発信を進めるべきではないか。一方で,大学は,評価団体や職能団体等と協働して,常に高度専門職業人として修得すべき最低限の資質能力を見直し,教育課程を改善すべきではないかとしています。
 また,社会人に配慮した教育として,履修証明プログラムや短期プログラムの必要性等が一般の大学においてその必要性が指摘されているところでございますが,その下,国は,専門職大学院のこれまでにおける教育実績や教育体制を活用し,例えば,学位取得前の導入として,自らが必要とする知識・技術とのマッチングを図るための基礎的な短期プログラム等や,資格や学位取得後に働きながら必要な知識・技術を更新・追加できるような応用部分の短期プログラム等の実施を促進してはどうかというようなこと。
 また,10ページ目でございますが,過去の委員からの御指摘を踏まえまして,特定の資格や職業と直結する分野においては,大学が関係する職能団体と連携し,提供する正規の課程や短期プログラム,職能団体が実施する訓練教育,それぞれの役割について十分協議し,効率的・効果的な人材養成のプロセスを確立すべきではないかというようなこと。
 また,その下,各大学においても教育課程連携協議会のメンバーに関係者を入れることで,連携したリカレント教育プログラムの実施を推進すべきではないかとしています。
 また,その下の囲みの下でございますが,ICTについては積極的に活用を図っていくべきではないか。また,ICTとオンキャンパスによる実践的な教育を組み合わせたブレンディッド・ラーニングの実施についても検討すべきではないかとしております。
 10ページ目の下のところから,博士レベルの専門職学位課程についてというところでございまして,11ページ目の真ん中のところでございますが,これまでのいろいろな指摘等,また国内の大学においての実績や,また海外の実情等を詳しく調べる必要がございますが,制度的な隘路を整理し,新たな学位制度としての必要性を検討すべきではないかとしております。
 また,その下,希望する学生等に対する博士課程の進学がスムーズに行くような論文作成等に関する学修プログラム等の策定を推進してはどうかとしています。
 その下,教員組織についてでございます。専門職大学院については,原則3割以上が実務家教員ということが求められているところでございまして,それらを活用して実践的な教育を行うことが必要であると。現在,先端技術が高度化して,あらゆる産業や社会生活に取り入れられつつある社会に対応するため,教育課程を見直し,実務家教員の採用,FD等に意を用いる必要があるということ。
 その下でございますが,実務家教員は非常に有効でありますけれども,長年勤めていると,12ページ目の上でございますが,最新の情報や最先端の技術をうまく教育に取り込めないというようなことが指摘されておりますので,クロスアポイントメント制度の活用を促進することや,実務家教員として採用後,一定期間経過した時点で,実務家教員が現場における最新の情報等を踏まえて教育ができているかどうかを教育課程連携協議会等を活用して確認することとしてはどうかということ。
 また,その下でございますが,実務家教員用のFD又は一定期間の研修プログラムの開発・実施を各大学において促進してはどうかとしております。
 その下でございますが,我が国の専門職大学院についても大学院の1つの形態であり,学術の水準を高め,研究に裏打ちされた高度の教育を展開していくことが求められているということ。ついては,テニュアを取得する実務家教員については,研究者教員と同様に博士号取得を推進することが必要ではないかと。このような人材流動のサイクルを生み出すことが非常に求められ,大事ではないかと。そのためには,実務家教員が適切に評価されることが必要ではないかという形で記載しております。
 また,教員組織のバランスについてということで,研究に裏付けられた「理論」の部分も必要であることから,一定数の研究者教員が必要であるということ。
 13ページ目でございますが,過去の専門職大学院ワーキングなどの答申,検討結果も踏まえまして,研究者教員,実務家教員,みなし専任教員のバランスについて,認証評価において確認することも検討すべきではないかとしております。
 その下,認証評価でございますが,世界的に知名度の高い評価機関からの認証を得て国際的なプレゼンスの向上を図っていくことが必要な状況でございます。本部会におきましても,ビジネス分野においてそのようなことが特に必要であるということは,過去にも委員から御発言があったところでございます。
 制度としては,専門職大学院が制度化される際には,その下から2つ目の丸の下線部でございますが,分野別評価については,文部科学大臣が認証した評価機関に代えて,適正な評価を行うと国際的に認められたものとして,文部科学大臣が指定した団体から評価を受けることも可能とはなっています。ただ,現時点では,指定されている団体がいないと。要件等の検討が進んでいなかったからということでございます。
 14ページ目が,その学校教育法とか施行規則の基準等が示されておりまして,最後の丸でございますが,国際的に分野別評価を実施している団体として,例えば,ビジネス分野では,注のところにありますけれども,AACSBやEFMDといったような団体があると。当該団体に加盟する大学や企業等とのネットワークに参加できることや,同基準で認証されている大学間での実質的な国際連携が進むことなどが期待されるようなことから,そのような団体からの認証をもって国内の評価機関の認証に替えることを希望する大学が,そうした海外の評価団体の評価実績や認証による効果等について十分な説明ができる場合には,評価機関として指定することを検討してはどうかと。指定する基準としては,例えば,認証した大学が100校以上,かつ認証された大学の所在する国・地域が特定の地域に偏ることなく10か国以上あることとしてはどうかとしているところでございます。
 その他,情報公開の促進等について,最後の部分でございますが,修了生に関する企業等の評価やキャリアアップなど,入学前と修了後の処遇の変化を公表することが必要ではないかと記載しております。
 事務局からの説明は以上でございます。


【有信部会長】

 ありがとうございました。
 なかなか話がいろいろあちこち拡散して分かりにくい点もあったかもしれませんけれども,ワーキンググループで検討した中で,ワーキンググループのスコープを超えて大学院部会で議論しなければいけないだろうということを主に部会で議論をしていただければと思います。
 大きなポイントは,情報公開の問題,それから,例えば博士課程をどうするかという問題,それから,認証評価について,これをどういうふうに考えていきましょうかというような問題とか,様々あったと思いますけれども,特に話が混乱するのは,全体に専門職大学院の人数が大きく減っているという話がされるわけですけれども,これの主な原因は,先ほども説明がありましたように,法科大学院の減少が大きくて,法科大学院については,大学分科会の下に特別検討委員会を設けられて別途検討が進められています。それから,若干特殊な要因をはらんでいる教職大学院については,これも有識者で検討していただいたという経緯もあり,ただ,共通の問題も多くあって,それは一緒に議論をしています。そういうバックグラウンドを頭に入れた上で,どの点からでも結構ですので,御意見があればよろしくお願いします。
 どうぞ。


【川嶋委員】

 幾つかの質問と意見があります。まず確認なのですが,認証評価で,14ページの上の囲みで,海外の専門的な認証評価機関について,ここには,施行規則の中に「文部科学大臣が指定した団体から」という文言があるのですけれども,前お聞きしたときには,今のところ認証評価団体から申請がないので、今のところ海外の認証評価機関がないのだというお話を聞いたような記憶があるのですが,これは申請がないと指定できないという考え方なのか,文部科学大臣がこれこれの機関は国際的な評価も定まっており、先ほどの幾つかの条件を満たしているから適切な認証評価団体と指定できるのか,そのあたりを少しお聞きしたいのですが,いかがでしょう。


【大月専門職大学院室長】

 13ページの一番下に書いておるところで,まずその要件等が十分に整理されていないというようなところでございます。先生が今おっしゃられたような申請がないと指定ができない,通常の仕組みはそうなのかというところでございますが,制度全体としてどういうふうに指定をしていくのかという全体の手続,要件等についてが十分検討されていないということで,たびたび検討をすべきだというような話が過去にもあって,これまでなかなか進んでいなかった状況ではございますが,ビジネススクールなどにおいては,このAACSBやEFMDの認証評価を受けたいというようなところもかなり出てきているところでもありますので,本部会での御意見等を踏まえまして今後検討することができればと考えているところでございます。


【有信部会長】

 それはここで議論をしてということですね,今の話は。


【大月専門職大学院室長】

 具体的にどういう形でやっていくのが良いのかというのはありますけれども,まず大学院部会,本部会での御意見を踏まえながら検討する必要があるのだろうと思っております。


【有信部会長】

 一応認証評価団体については,文部科学大臣が承認をするという手続があって,認証評価団体の申請に応じて検討委員会で様々な諸条件を検討した上で,その上で適切であるという諮問を,諮問だったかな,諮問ではなくて評価結果を上げて,それを文部科学大臣が承認して認証評価団体として認めるという手続は,通常の認証評価についてはやられていますよね。だから,その例に従うとすると,申請がないと諸条件の検討のしようがない。その諸条件を文部科学大臣が検討して,ここは適切であるということができるのかどうかという話ですよね,今の質問は。


【川嶋委員】

 既にもう幾つかの大学院が認証を受けているわけで,そういう大学からの海外の認証評価団体に対して働き掛けて日本の文部科学大臣に申請してくれという,そういう手もあるかもしれませんが,これは今後検討ということなので,またできるだけ国際化というか,国際的通用性という観点からも含めて,是非早急に答えを出していただきたいと思います。
 それから,引き続き発言させていただきますと,認証評価に関しては,ワーキングの方では,現状ですと,新しい専門職団体が設置されると,それに対応した認証評価機関,分野別認証評価機関が必要ということになっているので,今後,先ほど最初の方に御説明があったように,国際的に必要な分野に限り専門職大学院の設置を認めるべきではないかというような文言もありましたけれども,今後,私が思うに,そのリカレント教育の中心は専門職大学院になってくるのだろうと思います。そういう場合に,従来のように個々の専門職大学院ごとに認証評価団体を作るというのは,限界があるのではないかということで,合理化といいますか,5年という期間も含めて合理化が必要かという点が1点です。
 それから,2点目は,この大学院部会のそもそもの議論に関連していることですけれども,現在,いろいろな審議会のところで実務家教員の重要性というのが指摘されて,大学でも今後採用を増やすようにという提言をされているところですが,それはそれで別に否定するものではないのですが,ちまたでは,既に社会人も大学教授になれるんですよというようなことが喧伝されていて,それに関するマニュアル本みたいなものもぼちぼち出始めているという現状がある一方で,この大学院部会の積年の課題として,若手研究者のキャリアパスをどうするかということがずっと議論されてきたわけです。その社会人を中心とした実務家教員の大学教員への登用ということと,若手研究者の大学教員への登用の問題をどういうふうにバランスを考えていくか。今でも博士後期課程に進学する学生が減っている中で,社会人から実務家教員として大学教員になれるというようなことがどんどんどんどん広がっていくと,私はますます優秀な大学生の大学院に進学する意欲をそいでしまうのではないかという心配をしています。このあたりをどういうふうに文部科学省としてはお考えなのかということについてお聞きしたいというのが2点目です。
 それから,もう1点は,もう制度的なことですけれども,今専門職大学院の設置が審査されていて,早ければ来年度から動くのですが。


【有信部会長】

 専門職大学。


【川嶋委員】

 専門職大学ですね。この専門職大学と専門職大学院との関係というのはどういうふうに考えたら良いのか。通常ですと,これまで大学の学部が設置を認められると4年後にはほぼ全ての大学が修士課程の設置を申請してくるわけです。そうすると,その専門職大学についても同様なことが起きた場合,その修士課程の位置付けと現行の専門職大学院との関係というのはどういうふうに考えたら良いのかという問題があります。
 もう1点,最後は,これも制度的なことですけれども,専門職博士ですが,これは国によってかなり位置付けが違うと思います。アメリカですと,言うまでもなく専門職へ入るための資格要件として専門職博士が必須で,例えば医学部だったらMDであったり,教育行政であればEd.D.であったり,それから公衆衛生であればDrPHとかとなっています。ところが,ドイツなどでは,むしろそういう専門職博士よりPh.D.が実務の世界でも通用していて,それに加えて大学教員になろうと思ったらハビリタチオンという更なる資格が必要となっていました。ですから,どこかの国を必ずしもモデルとする必要はなくて,日本的な専門職博士を作っていけば良いのだろうとは思うのですが,その一方で,国際的に通用する学位にしていかなければいけないので,十分に調査とか検討をしていく必要があるのだろうと思います。
 以上です。


【有信部会長】

 それでは,最初の方の質問に対して何か答えはありますかね。これは結構難しい問題で。


【義本高等教育局長】

 川嶋先生が御指摘した論点はいずれも大事な点でございまして,これは,将来構想部会の下のワーキングの中においても議論をいただかなくてはいけない点だと思っているところであります。
 1点目の,実務家教員についての話ですけれども,これは,実務家であろうがアカデミックの方であろうが,しっかりした教育能力があるかどうかということをきちんと見るということは大前提の上での話ですけれども,その上で,実務家の方々自身について,結局どういう形でその教員の評価をするのかということについては,これは更に整理をしなくてはいけないということについては,これは将来構想部会あるいはワーキングでも頂いていますので,考えないといけないと思っています。
 実務ができたからアカデミア,大学の教員になれるという単純なものではなくて,それをしっかりした形で教えるとともに,むしろ理論と実践の架橋ができるような形での理論化,体系化。場合によっては,最初は学位を,博士を持っておられない方もいらっしゃいますけれども,その課程において,むしろ博士の学位を取得することを更に奨励していくとかということも含めて考えないといけないということではないかと思っています。
 実務家の方々については,今リカレント教育の関係で予算要求をさせていただいている中において,特に単純に成功体験をお話ししてそれで終わりではなくて,むしろしっかりした教育能力があるかどうか。あるいは,自分の実務をきちんと体系化して,それをきちんと教える形に落としていけるかどうかについての研修をしっかりやっていただくと。そういう方をしっかり登録してマッチングさせていこうということについての予算要求を今やるべく準備をしておりますけれども,そういう中において,ベンチマークは,質を教育あるいは研究も含めてどう確保していくかについては,しっかりと見ていくことを含めて御議論を更に詰めていただけないかと思っているところです。
 それから,もう1点,専門職大学がオートマチックに学年進行していけば修士のレベルの専門職大学院になれるかというとそうではないと思っています。むしろ,今中身は申し上げられませんけれども,今かなり厳格に専門職大学についての審査をいただいておりまして,教員の資格とかそのレベル,あるいは,カリキュラムの体系性ということをしっかり見ていただくということでございますので,その点については,仮に申請がされたとしても厳格に見ていくということがありますので,場合によっては,オートマチックにそれができるという安易なものではなくて,むしろそこは厳格に見ていかないといけないということで今の設置審の現場でも臨んでいますし,そういうことに多分なるのではないかと思っています。
 それから,専門職博士について,これは先生がおっしゃるとおりでございまして,単純にEd.D.とか,あるいはそのレビューを作ったら良いということではなくて,むしろどういうやり方でそれを確保していくのかと。方策とか実質的な中身を議論させていただいた上で議論をいただく必要がありますので,それも含めてこの大学院部会で御議論いただければありがたいと思っています。


【川嶋委員】

 最初のところは,若手研究者に対する間違ったメッセージを出さないというか,ならないかということについてはどうお考えなのでしょうか。その実務家教員を登用することをエンカレッジすることによって,むしろ大学院博士課程後期へ進学する学生をディスカレッジすることにならないかということについてですが。


【義本高等教育局長】

 それは情報発信の在り方だと思っています。ですから,アカデミアの御出身,若手の方であろうが,あるいは実務をされようが,しっかりした形で見ていくということがベースでしょうし,ですから,それは逆に言うと,若手で研究者であっても,そこはしっかりした教育の能力,あるいは研究業績をしっかり見ていくということが大事だと思っています。
 一方,これは大学の在り方全体として若手の研究者をどういうふうに育成していこうかについて今議論しておりまして,例えば,人事,給与の在り方ですとか,業績評価の問題も含めて,これは全体として考えなくてはいけない話でございますので,若手をしっかり育成していくメッセージを誤解のない形でどう全体の政策として伝えていくのかが大事だと思っています。そこは,先生御心配のとおり,部分部分の政策自身をやっていても,それ自身の伝わり方の問題がありますので,それは工夫をしないといけないと思っています。若手の研究者について言えば,例えば,これは国立大学の運営費交付金の中での新しい事業として考えていますけれども,若手を育成していくような,例えば共同利用,共同研究拠点であればそこを優遇していく形で予算のインセンティブを付けるとかという形で考えるとか,全体としての話がございますので,そこも含めて伝わる形にしての工夫をしないといけないと思っています。きょうの御指摘は肝に銘じて取組んでいきたいと思います。


【有信部会長】

 ほかに御意見はありますか。どうぞ。


【迫田委員】

 先ほど川嶋先生からもあったのですが,国際的な評価というのは,特にビジネスの分野は是非やっていただきたいと,産業界で実際にこういう方を扱っていると感じております。
 特にビジネス分野において言うと,基本的にはグローバルにベストなビジネススクール以外は余り意味がないと言ってはあれなのですけれども,そんなに評価はされてないというのが実態だと思うのですね。恐らく日本の大学院でビジネススクール,ほとんどそういう意味では評価の対象にもなっていないというのが今の実態だと思います。私どもで言うと,グローバルでトップ20に入らないと,特に会社として派遣するというつもりになってない。あとは自分でお勉強してくださいということであります。
 先ほどの最後のところにもその処遇の云々というのがありますけれども,本当に価値のあるものなのかということしか実業界としては興味がないというか,大学院を出たからどうかということはそれほどではなくて,それによって明らかに価値が違うものを提供できるかどうか,実力ですよね。それが一番肝心なので,そういう意味では,トップ20,グローバルに入っている大学へ,大学院へ行って卒業された方について言うと,その後の進路だとか,個別に,具体的に検討をいたしますけれども,それ以外,社会人,退勤後に勉強したという形では,実力が伴わない限りは,評価は普通はされないと思いますので,行ったからだけとかいうのではだめだと思います。
 そういう意味で言うと,グローバルな評価,認証機関にもきちんと認められて,なおかつグローバルに評価される大学になるというのがまずは必要だと思うのですね。そういう意味では,是非評価機関,特にビジネス分野について言うと,是非そこを推進していただきたいと思います。
 以上です。


【有信部会長】

 今の話は,海外の認証評価機関の認証を,そちらの方をむしろ優先すべきだというような話なのですよね。例えば,AACSBのようなところは,デファクトスタンダードとしていろいろなところが認めている。ただし,その認定を受けるには相当な費用も掛かるし努力も必要だということもあり,なかなか難しいということもあって進んではいませんけれども,ということだと思います。
 それから,いろいろ混乱しているのは,職能団体との関係性の中で本来は今の専門職大学院の認証評価も行われるべきなのだけれども,そこのつながりが極めて曖昧で,しかも世界的にアメリカもヨーロッパも日本もそれぞれ関係性が違う。ヨーロッパの場合は,基本的に学位と職位というのが共通に設定をされているので,それぞれの学位がそれぞれの職位にリンクしてきたという歴史があるわけです。アメリカは,その職位の部分を専門職大学院という形でそれぞれ設定をしてきたので,そこでの学位の扱い方がある。日本の場合はそこを大学共通の学位という格好にしてきているという違いがある。だから,川嶋先生がおっしゃるとおり,きちんと調査をしてということが必要なのだけれども,その調査をやるときに,その辺をきちんと踏まえて調査をしてやっていくべきだと思うのです。歴史的な経緯があるので,それも全てきれいに標準化をしているわけではなくて,みんなその歴史を背負いながらそれを少しずつ改善しつつやってきているというところがあるので,余計分かりにくくなっているかもしれません。
 ほかに御意見がありましたらどうぞ。では,こっちから行きますか,どうぞ。


【井上委員】

 短い質問なのですけれども,この資料の中の19ページに関して主にお尋ねしたいのですけれども,この中で,専門職大学院の中で,ビジネス・MOTと公衆衛生,教職大学院というのが漸増していますよね,年次的に。教職大学院の場合は,専攻数が前のページの18ページを見たら増えていますので,オレンジの丸いシンボルですね,増えているので分かるのですけれども,MOTとか公衆衛生というのは,専攻数がそれほど増えていないにもかかわらずこの入学者数が増えているというのはどういう理由があるとお考えでしょうか。
 あと,教職大学院の場合は,修士号を取ると教員になった場合に資格がたしか1つ上がって給与が上がるということがありますよね。それを意外と学生が知らなくて,修士に行ったら先生になった場合に給与が上がるので行ってみようかというのが広く知られてきたのではないかということも思うのですけれども,いかがでしょうか。要するに特にこれらの専攻の学生数が上がっていくという理由について。


【大月専門職大学院室長】

 1つ目の御質問でございますが,ビジネススクールに関しまして,アメリカと比べて日本は規模が小さいというのが非常に良くないということで,先ほど海外のビジネススクールでないと評価できないというような厳しい御指摘がございましたけれども,日本のビジネススクールも通った方は割と評価をされていて,ただ,日本の企業には全く存在が知られていない部分がかなりあるというところで,新たに設置される大学院は増えておりませんけれども,1つの規模が増えてきているところでございます。なので,こういう形での入学者数が増えている形,大学院数は増えておりませんが増えている形になっております。
 一方,公衆衛生,非常に見づらいのですが,少しは大学院の数も増えているところがあるのと,多分1つの大学院での規模も大きくなっているからかと考えているところでございます。
 以上でございます。


【有信部会長】

 公衆衛生などは,最近のパンデミックとかWHOのようなところが関与する案件も結構増えてきていて,恐らくそういう状況を見ながら学生の判断だとか大学の判断があるのだろうと思います。
 あと,教職の方は。


【高田教員養成企画室長】

 教職大学院の方についてお答えいたします。
 数については,だんだん定員を増やしてきているというのもございますし,あと先ほどおっしゃられた修士,教職修士を取るとメリットがあるということも併せまして,最近,例の教員採用試験の関係で,仮に教員採用試験に受かったとしても教職大学院へ行くのであれば2年間名簿登載を延長するという形で,その後戻ってもそのまま採用に生かせるだとか,そういったようなメリットが徐々に出てきておりますので,そういったことも影響があったのではないかと思っております。


【井上委員】

 ありがとうございました。


【有信部会長】

 それでは,佐久間委員。


【佐久間委員】

 専門職大学院は,別に分野的に文系ばかりではもちろんないわけですけれども,文系の分野もあるわけで,かねがね申し上げてきましたけれども,文系の場合には博士前期課程の大学院がどういう役割を持っているのか,そこが非常に問題になっているわけですが,そのことに対する1つの解ではあると思います。そういう意味でもこれを進めていくということには意義があると思うのですが,ただ,先ほど来出ていますように,専門職大学院が終わった後に専門職博士につなげるのであればまた話は違うわけですけれども,仮に従来型の博士につなげるのであれば,従来型の課程をどうするのかということも当然考えなければいけません。従来型の博士課程が後期課程で残るのであれば,当然前期課程も残さないといけないわけですよね。そもそも学問の継承という課題もあるわけですので。ただ,そうすると,一部は重なるとはいっても,教員が違うわけなので,もし同じ大学の大学院が両方持つとなると,これは現実問題として今非常に予算が厳しいという,特に文系に対して予算が厳しいという状況があるので,両方の教員を抱え切れないという現実の問題もあるわけです。また,当然,川嶋委員からもありましたように,若手のキャリアパスの問題もあります。ですから,専門職大学院を考えるときに,専門職大学院だけを考えるのではなくて,全体のほかの部分も併せて考えないとなかなかうまくいかないのではないかと思いますので,よろしくお願いいたします。


【有信部会長】

 ある意味で,学部と兼任するという道は開いてはいるのだけれども,その辺のところをどう考えていくかですね。
 では,藤原委員,どうぞ。


【藤原委員】

 短い質問ですけれども,先ほど出ていました実務家教員について,現場で若干混乱が始まっていると思っています。それは,教員集団全体としたときに,実務を経験したことのあるアカデミアとは違うアスペクトで教育ができる人が一定程度要るということでこういった方を確保しようという見方が1つある中の一方で,こういう方を雇用するときに,テニュアなのか,テニュアトラック任期付き制度なのかということについての考え方のところが少し整合性がとれてないように思うのですが,今,実務家教員と言われている方の雇用形態として,テニュア制度とかテニュアトラック制度,あるいは任期付き教員,こういったいろいろなカテゴリーがある中で,どういう関連性を持たれて議論されているかについて教えていただきたいと思います。


【有信部会長】

 何かお答えはありますか。


【大月専門職大学院室長】

 最後の御指摘のところでございますが,そのようなデータが十分取れておらないので,そういうようなデータをしっかり取った上で議論をしていかないといけないと今回改めて痛感したところでございます。


【有信部会長】

 多分今までは,大学の勝手というか,大学で独自にやってきているのをそのままきちんと集計してないということですよね,今の意見は。


【藤原委員】

 経験のバラエティーを問うのであれば,むしろ短期的な任期を持っている方とか,あるいはテニュアトラックでどんどん人を市場と一緒に回していく方が良いように思いますし,そうではなくて,個人の業績評価をきっちりした形で,もうPh.D.を取るなんて言わない,実務家として,もうプロパーとして,その道のプロとして評価するのだというふうにやればテニュア教員として評価することもできると思うのですが,今ちょうどどっちつかずのところになっているように思いまして,質問させていただきました。


【有信部会長】

 近い議論は別途あって,つまり実務家教員といっても,実務を離れて5年も10年もたって本当に実務家教員かという議論が一方であるので,それで,できるだけビビッドな体験をそのまま生かせるような形にすべきだということで,何ていうのですかね,逆に言うと,これもなかなか導入するとなるといろいろな問題が起きるのですけれども,クロスアポイントメントのような形で,一番実務として活躍している人に教えてもらうというようなことも考えるべきだというのが今の説明の中にはあったと思いますけれども,そういうことを工夫するかということですね。


【義本高等教育局長】

 少し付言します。多分分野によっても大分イメージが違ってくると思っています。例えば,ビジネス系であれば,むしろ今先生がおっしゃったように経験は陳腐化しますので,クロスアポイントメントみたいな形で期間限定でやっていただいて入れ替えていくとか,あるいは,現職で仕事を持ちながら考えていくという形で回していくケースが多いと思いますが,一方,例えば,教職大学院などについて言えば,先生をそこでお辞めになって,そこで経験としては教育委員会に採用された教員ですけれども,そこに代わって教員として行くようなケースもあります。
 それから,もう一つは,研究と教育のバランスをどう考えるかという問題もあろうかと思っていまして,恐らく大学に残ってテニュアとして研究もしっかりやるというのであれば,むしろそこでしっかりした形で修業を積んでいただくということもあるでしょうし,また,教育に徹するという先生であれば,むしろそこでのキャリアパスもありますので,その辺が,今,有信部会長がおっしゃったように各大学任せになっている部分があるので,そういう点をどう今後考えていくのかについての御議論もここでやっていただければありがたいと思います。


【有信部会長】

 そういう意味では,先ほど説明にもありましたけれども,成功体験を延々と語るような人にいてもらっても余り,もちろん分野にもよりますけれども。
 それともう一つは,そのまま教えているにしても,研究的な要素を抜きにして教え続けるというのは多分あり得ない話だろうと思います。ケーススタディを延々と教えているにしても,同じことを十年一日教えられるわけではないし,ケーススタディそのものに対する研究というのをベースにしないと,それぞれの教員が教える教え方も多分違ってくるだろうと思いますから,その辺で多分いろいろな差が出てくることもあると思います。なかなか難しい問題ですけれどもね。
 ほかに。では,どっちから,こっちからにしようか。どうぞ。


【樫見委員】

 3点あります。まず,今お話がありました実務家教員の処遇の問題なのですが,私がおります法科大学院の方ですと,弁護士が専任教員として弁護士をしながら教員をすると。ということになりますと,その場合には,恐らく大学なりの特別の計らいで,単なるバイトではなくて,本当にかなり恐らく弁護士の方が収入が多いだろうと。としますと,実務家の就業の形態というのは,かなり専門職大学院で違ってくると思うのですけれども,そこら辺,分野によって,職の在り方というか,就業形態について,もし一定の枠がはめられるようでしたら。と申しますのは,多分に例えば法科大学院では,副業の方を重視しているのではないかと思うようなことがありますので,その点,実務家の就業と,あと教育の兼ね合いですね。その点のところの調整が必要かと思います。これが1点です。
 それから,9ページのところで,教育課程におけるコアカリキュラムの策定,法科大学院で言えば,コアカリキュラムはかなりしっかりとできているかと思うのですが。
 それと,同じ9ページで出されているリカレント教育,これは,育てる場合の教育と,それから戻ってリカレント教育を受ける場合,その内容は当然違ってくるわけで,専門職大学院のその多様性に合わせて,ある程度リカレント教育についても,現場,受講者や地域のニーズを適確に捉えてという,大学にだけに任せるのではなくて,それに関連する業界なり,こういうものがリカレント教育であるという,ある程度基準化したものが必要ではないかと思います。これが1点です。
 そして,最後,専門職大学院,私の方の自分のところだけに引き寄せて言えば,法科大学院の場合には,理念としては法曹養成というので特化してきたわけです。そうしますと,リカレント教育というのがこれから必要であると,その点については私も大賛成なのですが,そうしますと,かなり専門職大学院の理念と申しますか,目的,これがかなり拡大するというか,変更すると思いますので,その点,きっちりと専門職大学院の理念,そういったことについても研究する必要があるのではないかと思っております。
 以上,3点です。


【有信部会長】

 専任教員と勤務形態との問題はずっと問題になっているのですけれども,基本的にはきちんとした定義はありません。ですから,常勤でなければいけないという規則もない。したがって,非常に短期であっても専任で,ただし専任教員に関しては,大学の教育に対して一定程度の責任をきちんと持つということで,教授会に関与するとか,そういう条件は付けていますけれども,勤務形態についての条件は付けていないというのが現状です。これについて,どうこうしようということが今すぐにはできないというのもどうも実情のようです。
 どうぞ。


【義本高等教育局長】

 今の部会長のお話に少し付言させていただきますと,実務家の勤務形態については特にありませんけれども,専任としてカウントする場合については,今まで6単位以上の授業科目を持っていただくということが専任の条件で,しかも,先生が今おっしゃっていただきましたように,教授会に参加して教育課程の編成について参画するということをもって専任のカウントをしたということがありますので,勤務形態の縛りはありませんけれども,教育のロードについては一定の考え方を専任としては整理しているという姿勢でおります。


【有信部会長】

 それを実務家に関しては4単位まで削減しましたよね。


【義本高等教育局長】

 今回下げましてそれを4単位にしました。


【有信部会長】

 という状況です。
 小西委員。


【小西委員】

 実務家教員の件と国際認証の件,2点お聞きしたいことがあります。
 1点目は,実務家教員の資格要件を再検討してもらえないかということです。現在,学部の研究教員になろうと思えば,学部卒業では普通に考えれば無理であって,修士若しくは,基本的には博士を修了しているということが要件だと思います。最近増えています学部の実務家教員は,大体は学部卒で,それプラス実務経験を加味して,はじめて大学で教えられるということだと理解しています。そうしますと,現行の大学院での実務家教員といいますのは,大体の場合,会計専門職大学院の場合もそうですが,学部を卒業して会計士の資格を持っていて,それにプラス実務経験ということで,学部の実務家教員と変わらない要件で実務家教員になることが可能となっています。少なくとも一般大学院,あるいは専門職大学院で実務家教員になるとしたら,教える学生と同じ学位,つまり修士号以上は取得していて,それにプラス実務家経験というような資格要件があってしかるべきなのではないかと考えます。12ページの第2段落目のところに,FDとか一定期間の研修ということを実務家教員に課すことが説明されていますが,これも非常に良い試みであるとは思うのですが,抜本的に資格要件を再考していただきたいというのが1点目でございます。
 2点目は,認証評価の件です。先程,迫田委員の方から,日本企業も国際的な認証評価を得ているMBAだと認めるというお話を伺ったのですが,これは国際的な日本企業は,日本の大学を認めているのかいないのか,それとも認証評価機関の方を認めているのかいないのかと,非常に微妙な評価基準だと思うのですが,いずれにしましても,日本の大学院でも,海外のランキングの高い大学院に行かずとも国際的な認証評価が取得されていれば,日本の企業は積極的に認めてくれるということだと思うのです。
 それで,これは質問なのですが,日本に本部があって国際的に認められている認証評価機関というのはあるのでしょうかという質問です。といいますのは,会計の専門職大学院ができた当初には,アジアで国際的な認証評価機関を日本で設立しようではないかという動きがあって,そのメンバーに私も少し関わっていたのですが,理由はよく分かりませんが,なし崩し的に,その話しは消えていってしまいました。会計は国際的なスケールで動いていますので,できれば日本に本部がある国際的な認証評価機関を持ちたいと思っているのですが,既に国際的な認証評価機関が日本に学院はあるのでしょうか?また,文科省は,そういう認証機関の設立にご協力願えるのかという質問でございます。


【有信部会長】

 どなたか答えられる方は。


【大月専門職大学院室長】

 ビジネスの分野におきましては,ABEST21というところがアジアでも積極的に評価を行っております。なので,一般的には国際的にと言われるのでしょうが,ここで今回指定する団体の要件というのは,更にもう少し地域的にもいろいろな地域で10か国以上,100ぐらいの大学で認証をしているようなところを国際的にというようなことを1つの案,例示として挙げさせていただいたところでございます。
 なお,冒頭で,この件につきまして本部会で議論していくのかという部会長からの御指摘がございましたが,認証評価全体は企画課でやっておりますので,また企画課等とも御相談してやっていきたいと思っております。


【有信部会長】

 国際的に認められた認証評価というか,アクレディテーション団体は,多分日本ではないと思いますね。エンジニアリングの関係が国際的にワシントン・アコードという協定があって,それは一定の限られた国際的な団体ですけれども,それに日本の認定団体が加盟をして,それぞれの認定が同等であるという形にはなっています。
 それと,会計に関しては,御指摘のように,国際会計基準が圧倒的にドミナントになっていくというような状況の中ですから,それは共通な形のものがないといけない。多分国際的に連携をして共通化をしようという,多分その団体があるはずなのですね。職能団体も国際的に連携しないといけない。もともとWTOで各国の持っている職業資格を相互に承認し合うべきであるという基本的な合意があって,その合意の下にそれぞれ話が進められているのだけれども,これはなかなかどうも進展していないようです。
 ただ,そうは言っても,仕事をするのに,日本だけで仕事をするわけではなくて,いろいろな国で仕事をしなければいけないので,基本的に教育経験,どれだけの内容の教育を受けて,その上で会計士の資格を取っているかということが必ず問われるわけです。例えばアメリカで会計士として仕事をしようと思ったら。ですから,そういうことは共通化をしなければいけないという認識はそれぞれの団体であるはずなので,是非その辺は進めていただければと思いますけれども。
 それから,あともう1件何かありましたよね。


【小西委員】

 実務家教員の。


【有信部会長】

 実務家教員の資格が,結局今の専門職大学院の実務家教員に関してはという点で,これもなかなか難しい問題で,日本の諸制度が少なくとも必ずそれ相当のという但し書きがついているものだから,一応基本的には学位要件が書き込んであっても,若しくはそれに相当する能力,技能という書き方がされている。そういうことは変えられるのでしたっけ。


【義本高等教育局長】

 今の設置基準の教員資格上は,今,部会長がおっしゃったとおりでございまして,最初は教授であれば博士の学位ということを1号に書いて,最後のところのセービング・クローズとして,今おっしゃったような,それに相当するような業績がある場合については例外的に認めるという形にしていますので,実際上はそれを使って教授職に学位はなくてもなっておられるという方がといる状況でございますが,この議論は,恐らくこの大学院の話が象徴的でございますけれども,全体として設置基準をどうするか,あるいはその運用をどうしていくかという中においての1つの重要な要素として,学位も含めて教員の資格あるいは在り方をどう考えるか。これは基準で考える話もそうでしょうし,それから,現場での設置審査とか,あるいは認証評価での在り方についての運用をどうするかという問題もありますので,そういう場が恐らく今後,将来部会のワーキングの中で議論をいただきますので,きょう院部会の方で御議論があったことも紹介させていただいて議論を深めていただければありがたいと思っております。
 いずれにせよ,一定のルールとか考え方を整理していくべき時期に来ているのではないかという認識も事務局としては持っております。


【有信部会長】

 ということだそうです。
 ほかにどなたか御意見はありますか。どうぞ,永里委員。


【永里委員】

 直接関係ない話でも良いですか。


【有信部会長】

 はい。


【永里委員】

 グローバルに活躍する企業は,迫田委員のお話のとおりだと日本の企業は思ってもらって結構だと思います。したがって,最近はM&Aなども非常に盛んなので,そういう点では,企業の法務室あるいは法務部の人たちがアメリカの名だたる大学のそういうところに行ってきちんと勉強して,彼らから見たら簡単にニューヨーク州の弁護士資格などを取ってきて,戻ってきて,そして仕事をするというような,そういう状態になっているわけです。一方,地方創生というようなことを考えた場合に,堀切川先生もおっしゃっているのですけれども,本当は,新しいビジネスを作っていくとか,あるいはアメリカとの,あるいはグローバルに展開するとかいうことを考えたときに,地方の企業ほど,地方の産業界ほど,あるいは行政体ほど,こういうここで議論されている人材が必要なのではないかと私は思うのですけれども,その点についてはどうでしょうか。


【有信部会長】

 それは何の異論もないと思います。どうぞ。


【平野大学改革推進室長】

 今,永里委員から頂いたこと,全くそのとおりだと思ってございます。もちろんそのグローバルというところと地方創生というのが全く無関係ということではないということを前提にした上でございますけれども,地方創生をする人材を支えるという観点からは,各地方に所在する高等教育機関がその力を発揮していくことが必要なわけでありまして,特に,またこれは必ずしもグローバルな大学ということのみならず,例えばリーディング大学院プログラムなどでも取組んでございましたけれども,企業と大学が共同でカリキュラムを作る取組であるとか,また,単にアカデミックな領域だけではなく,産学官を牽引するリーダーとして活躍できる取組は,これは地方の大学においても必要な取組でございます。そのような観点からは,国の支援プログラムを使っていただくというのもまたそうでございますし,またその成果を生かしてこれを地方に波及させていくことが極めて重要だと思ってございますし,また,企業各位におかれましても是非大学の方に目を向けていただいて,大学との対話を進めていける環境を作っていただきたいと思ってございます。


【有信部会長】

 今のに少し補足をすると,地方でいろいろやっているビジネススクールを見ると,確かにグローバルな意味での従来の先端的なビジネスモデルとは全然違う形でいろいろな教育,独自の教育をやっているところもあります。それと,一方で,ビジネスそのものが,ソーシャルビジネスのように,従来型とは違う形でビジネス展開をするということもある。これがまた地方では結構動きも出ている部分もあって,大企業も恐らくはそういう方向に今後は切り込んでいかなければいけないので,アメリカの有名なビジネススクールのケーススタディがいつまで有効であるかどうかという問題も多分出てくるような時期だろうと思います。企業サイドとしては,できるだけ幅広く目配りをしていただいて,AACSBで言われるようなビジネススクールだけではなくて,かなりきちんとやっているところもありますので,うまく使っていただければと思います。


【川嶋委員】

 地方とビジネススクールの関係について少し補足になるかと思うのですが,ビジネススクールはかなり都市部に偏在していて,東京圏,大阪圏以外のところでは余り開設されてないという現実があります。そうなるとどうするのかということですけれども,地方といいますか,ブロックごとに幾つか設置するという考え方もあるかと思いますが,オンラインの活用が重要になると思います。本日のペーパーでもブレンディッド・ラーニングとかICTの活用ということが記載されていますけれども,海外ですとビジネススクールというのはオンラインのプログラムがかなり多い。もっとも、フォー・プロフィットのビジネススクールが多いのですけれども。そういう点で質の保証ということも非常に重要ですけれども,教育機会の拡充,保証,あるいは,何回も出てきますけれども,社会人の学び直しの機会の確保という点からいくと,ICTを活用して日本全国どこでも受講できるというような形での普及も今後是非検討していただきたいと思います。


【有信部会長】

 堀切川さん。


【堀切川委員】

 地方から来ているので,地方創生の話題が出るとありがたいと思っていますが,個人的には,実は実務家の教員がいることで,地方の大学にとっては非常に良いことがあって,社会人の学び直しとかのいろいろな作戦を練るときに,実務家の先生方が入ることで非常に役に立つプログラムが作れるという意味で,実はここの部分は充実してもらうと地方にとっては良いことがあると思っております。
 あと,本来の研究型の方の大学,大学院の方の教員の中でも,非常勤で実際に企業の社長をやりながら学位も取って大学の先生をしておられる人も知り合いにいるのですけれども,圧倒的人気で,自分の会社を1.5倍にしたやり方はこうだったというのを学生に向かって言うものですから,今700人を超える毎年の受講生がいて,その社長によると,レポートの採点がこんなに大変だとは思わなかったということで,大学教員の辛さも体験できて良かったと言っているところでございます。
 あと,小さな意見ですが,15ページ目,最後の下の丸のところで,「修了生に関する企業等の評価やキャリアアップ」云々ということでいろいろ調べてそれを公表することが必要ではないかというのは大賛成であります。できましたら,こういう修了した人が社会で活躍している相手先にアンケート等をされる場合には,よりこういう教育をしてくれると良かったとか,そういう部分があって,PDCAではないのですけれども,そういう出口評価をそこで得ることでより良い実務家を育てるような大学院に育っていけば良いなと思いますので,何かそこら辺をこういうことを聞いてくださいよというのは,文部科学省の方で言っていただければ各大学の方でやるのかという気がした次第でございます。
 あと,ついでですが,11ページ目のその他のところで「論文作成に関する学習プログラム等の策定を推進してはどうか」ということが記述されているのですが,これは,専門職大学院でやる場合に,論文の作り方というこの論文は,修士論文の学位論文の意味なのか,単なる論文というのを書ける力をつけさせたいという意味なのか,どっちかというのをまずお聞きしたいというのと,その場合だと,多分実務家教員ではなくて研究者教員が主体的にやることになるのかという。更に言うと,専門職でそういう学位論文が要らないので来た人にとってみると,少し苦痛に感じないかという心配をしているところでございます。最後のところだけ質問です。


【有信部会長】

 それは心配どおりの話ですよね。だからここで書いてあるのは,修士課程からというか,博士課程に進もうと思う人たちのためにもそういうことを入れたと,そういうことですよね。


【堀切川委員】

 もしそうだとしますと,実際には,論文の書き方というのはテクニック論で身に付くようなものではないので,本来の自分の趣旨なりの研究テーマを持って体験しないとだめだと思うものですから,これは結構ハードルが高いのではないかと心配したところです。


【有信部会長】

 ということなので,それは一応考慮をしておいてください。
 はい,どうぞ。


【平野大学改革推進室長】

 前段の方のお話にありましたところの15ページに絡んででございますけれども,今後こういった修了生の追跡調査みたいなものを充実していく必要があると。またそれを教育の課程の改善に生かしていくということについては極めて重要なことでありまして,これは大学院に限らず全体の教学マネジメントの確立を図る上でも極めて重要な課題だと思ってございます。
 その1つの例というわけではないのですが,本日お配りしている参考資料8がございます。こちらの方はカラーのパンフレットという形になってございますけれども,これはリーディングプログラムということでございますので専門職大学院ということではありませんけれども,このような形で,中を開いていただきますと,各修了生がどのような形で活躍をしているのか。また,ページによってはということでございますけれども,上司からのメッセージ,こういったものも分かりやすくまとめているところでございます。実際にはかなり緻密にやって掲載があるわけでございますけれども,このような修了生がどのように活躍をしているか,またその上で,こういう状況を踏まえた上司,採用側がどのようなことを期待しているかということを丁寧に丹念に拾い上げるということの重要性につきましては,またほかの審議でも是非このことの御指摘は生かさせていただきたいと思ってございます。ありがとうございました。


【有信部会長】

 どうぞ。


【宮浦委員】

 9ページなのですけれども,社会人のリカレント教育の関連で,履修証明プログラム,短期プログラムの必要性というのは非常に重要だと思うのですけれども,それに関連いたしまして,専門職大学院同士の単位互換を促進することが社会人にとって非常にニーズが大きいのではないかと感じております。特にMOTに所属しながら,内容によっては公共政策,あるいは知的財産はもちろんですけれども,臨床心理とか,それぞれが専門職で持っているユニークな教育システムや単位の中でそれを取れるというような,それを単位互換をして認定するというような相互の単位互換ができると良いのではないかと,そこが短期プログラムよりも有効ではないかと感じます。
 関連いたしまして,19ページの在籍学生数の過去の経緯を見ますと,法科大学院はさておきなのですけれども,少しずつ減っているところが多いという。規模感はさほど大きくなくても,会計も減っているし,知的財産も減っているしということで,漸減しているその原因がどういうところにあるのか。例えば,志願者数はどのように経緯をしているのかというような分析も必要ではないかと考えます。
 以上です。


【有信部会長】

 今のお話は,専門職の枠を超えて単位を認めるということですか。それは,例えば履修証明とはどう違うのですか。履修証明という形なら可能だと思いますけれども,多分専門職大学院の枠を超えて,専門職の種類の枠を超えて単位認定をするのは,多分それは無理だと思います。もともとの設置の形態から可能ですか。


【平野大学改革推進室長】

 単位互換につきましては,他の大学院ということになってございますので,他の大学とか分野が違うからだめだということではございません,一義的には。ただ,もちろんその単位を自分の大学の互換する単位として認めるかどうかというところについては,ディプロマ・ポリシーなども踏まえながら判断していただく必要があるということでございます。


【有信部会長】

 では,大学の判断で可能になると理解すれば良いわけですね。


【義本高等教育局長】

 補足します。今,アメリカの大学,特にMBAのプログラムでは,単なるビジネスとか経営だけではなくて,AIとか,あるいは数理を結び付けたようなプログラムを作ろうなんていう動きが結構ありますけれども,日本の大学,経営系の大学院というのは規模が小さいので,カリキュラムをなかなか広げることができないという状況がありますので,ですからそういう観点からすると,宮浦委員がおっしゃったような形で大同団結してそういう共通なものを考えていく,あるいはシェアリングしていくということも今後方向としてはあり得るのではないかと思っているところでございます。
 ただ,その場合も地理的な問題がございますので,川嶋先生がおっしゃっていただいたようなオンラインを活用するとか,あるいはMOOCというような形でクラウドに乗せてそれを活用するということも含めて,ある程度柔軟な形でシェアできることが今後必要だと思いますし,また,実は中教審とは別ですけれども,経営系の大学院の中で,今,局長も勉強会みたいな形で議論いただいていますけれども,そこの中で大学院が大同団結してそういうふうな場を作ってシェアリングも考えるというようなこともできればという議論もいただいているところですので,きょうの御意見も参考にしながらまた議論を深めていければと思っているところでございます。


【有信部会長】

 いや,ただ高度の専門性を身に付けさせることと,それから,プロフェッショナルクオリフィケーションと密接に結びついてその専門職を育てるという観点と,その部分をあっという間になし崩しにするような連携は多分ないと思うのです。


【義本高等教育局長】

 それはもうおっしゃるとおりでございまして,基本的には,学位コースをしっかり作って,それでプログラムを作っていくことはベースですけれども,一方,自分の大学だけではなかなか必修以外のところについて,付加していろいろな形で包括するということがなかなかできにくいという事情をどう考えるかとか。あるいは,それぞれの経営系大学院でも地方創生に例えばかなりシフトして頑張るところもあれば,国際的な展開もありますので,そういう中において,プラスアルファしていろいろな資源をシェアリングするということが少しあると思いますので,そういう観点からの御議論だと思います。


【有信部会長】

 ということです。よろしく。
 少し時間が予定より超過をしてきましたので,ここの議論は,なかなかぴしっと全部まとまるところまでは行かなかったように思いますが,きょう,いろいろ貴重な御意見を頂きましたので,この意見を踏まえて専門職大学院のところの整理を今後も進めていきたいと思いますので,よろしくお願いします。
 それでは,引き続いて議題の(2)で高等教育の将来像に関する大学院の在り方についてということで,事務局から説明をお願いします。


【平野大学改革推進室長】

 資料2を御覧ください。タイトル書き,「高等教育の将来像に関する大学院の記載のイメージ」という,一見捉まえどころのない名前になってございますけれども,将来構想部会の方に大学院部会の検討の内容ということで打ち込むということをイメージして作成しているものでございます。
 前回御説明をいたしましたけれども,将来構想部会の方でまとめられるものについては,またそちらの方でどのような形でまとめていくのかということについては御議論があるのだと思いますけれども,大学院部会としては,こういうことを打ち込んでいきたいのだという内容面をイメージしたものでございますので,書き振りとか,その入り方とか,こういう部分はまた向こうの部会での議論を踏まえることになるという前提でございますけれども,内容面で,こういうことで御確認を賜りたいと思います。
 前回御議論いただきまして,前回の委員の皆様の御意見を踏まえて修正をしているもの,また,前回議論いたしましたところの量的な問題,また大学院生が身に付けるべき能力,こういったものを踏まえて修正しているものでございます。赤字の部分を中心に御説明をさせていただきまして,前回御説明申し上げた点につきましては,重複する部分はごく簡単にさせていただきたいと思います。
 資料2の1ページでございます。1つ目の丸,2つ目の丸,3つ目の丸,このあたりが,大学院生が備えるべき能力についてまとめたものでございます。
 1つ目の丸というのは,今後の社会の大きな変化を踏まえて,まず2040年の社会を支える人材にはということで,これは高等教育機関,学部も含めて共通でということで議論しているものを抽出しているものでございますけれども,論理性から批判的思考力云々と書いてありまして,創造力,変化への適応力,主体性,責任感を備えた行動力,データ処理能力などが,普遍的なスキル,リテラシーとして求められている。
 この2つ目の丸に行きますと大学院特有の話になってくるわけでございますけれども,このような状況に加えまして,SDGsやCSVといった新たな考え方が生じてきている中で,企業経営者等のリーダー的な立場に就く者,ソーシャルビジネスの領域も含む起業家,また新たな知的な価値の創造に従事する研究者・大学教員,このような2040年の社会を先導する人材については,グローバルに活躍する「知のプロフェッショナル」であることが求められることを書いているわけでございます。
 3つ目の丸はその内容を具体的に書いたものでありまして,「知のプロフェッショナル」は,1つ目の丸に示したような,共通して求められる普遍的なスキル,リテラシーがそもそも高い水準で持っていなければいけないということに加えまして,最先端の知にアクセスする能力,自ら課題を発見して設定する力,仮説を構築する力,社会的・市場的価値を判断する能力,グローバル化に対応したコミュニケーション能力,倫理観など,2040年の社会を先導する力を備えていることが必要であるということを書いてございます。この揺るぎない基盤的な能力の上に各セクターを先導できるような高度な専門的知識を養う必要があるということであります。また,この高度な専門的知識も,これから複雑化した社会に様々な角度から切り込んでいくという観点から,特定の狭い領域にとどまらないことが一般的な姿となっていかなければいけないのではないか。
 注の部分に,例えばということで,複数の学問領域を修めた,「二刀流」の人材,こういったものが一般的な姿としてなっていかなければいけないのではないかということを書いてございます。
 この3つ目の丸までが,大学院生が学部までの基礎能力の上に身に付けるべき能力ということを想定して書いている「知のプロフェッショナル」の能力ということになってくるわけですが,4つ目の丸でございます。18歳の人口が減少する中においても,諸外国に遜色のない水準で「知のプロフェッショナル」が活躍していかなければ,我が国の国際競争力にも大いに問題が生じる可能性があるということを打ち出してございます。これは,また量の議論とも関わってくるわけでありますが,前回の議論において,そもそも大学院のこれからの量を考えるときに,18歳人口とはこれは無関係に考えていかなければいけないのではないかという御意見を頂いたところでございます。もちろん18歳人口が影響する部分というのはあるわけでございますけれども,それとは別にデマンドの側としてこういったような認識を示させていただいてございます。
 2ページでございます。2ページの一番上の丸につきましては,先ほど御説明した「知のプロフェッショナル」というところに絡めまして,大学院がこの「知のプロフェッショナル」を育成する役割を中心的に担う存在であるということを宣言しておりまして,また,博士においては,特に2040年の社会を牽引する高度な「知のプロフェッショナル」の養成が求められていることを述べてございます。
 2つ目の丸でございます。大学院につきましては,将来構想部会の中間まとめの方にも同様の趣旨のことが書かれてございますけれども,大学院が非常に社会の接点であり,また大学院生は,単なる学生ではなく,研究活動の一端を担うという観点から,教育研究を一体不可分のものとして行う大学全体の活性化の観点から,極めて重要な構成員であることを述べてございます。
 2ページ目の3つ目の丸でございます。ここは,前回御議論いただいた量的な部分ということでございますが,諸外国に比べまして,人口100万人当たりの学位取得者数が,修士,博士,いずれについても低い。特に人文・社会科学系の割合が極端に低いということになっている現状を記述してございます。このままでは,2040年には大いに問題が生ずる可能性がある。
 一方で,2ページの一番下の丸から3ページにかけてでございますが,我が国の大学院については,定員の充足をしていないケースがあるわけでありまして,学問分野の継承の観点から設定されたもののみならず,比較的規模が大きい専攻においても未充足がある。なぜこのような状況になっているのかについては,改めて真剣に検討をする,早期に改善を図る必要があるということでございます。
 その上で,前回御説明した内容につながってくるわけでございますが,これまで21世紀COEプログラムを皮切りにリーディングプログラムに至るまで,大学院の振興に係る施策を展開してきたわけでございまして,この施策の対象となった大学院においては,博士課程(後期)を含めまして,体系的な教育への改善,リサーチ・アシスタント等の経済的支援や国際的な経験を積む機会の充実,産業界との連携の進展が進んだと評価できる一方でということで,前回の部分につながりまして,まだしっかり自分の「強み」や「特色」を発揮して,比重を置いて明確な養成すべき人材像に基づいて焦点を当てた教育を展開しているとは言えないという指摘があるというところにつなげているものでございます。
 次の丸,3ページの一番下の丸でございますが,今後大学院においては,先ほど来申し上げていますように,18歳人口の減少にかかわらず,我が国に求められている「知のプロフェッショナル」の育成に中心的な役割を果たしていかなければならないことが明らかでありまして,その観点から,2040年の社会の需要に積極的に応えていくために大学院教育の中身をしっかり変えていくという前回の記述につなげているものでございます。
 また,4ページ以降の修正につきましては,全体の構造というよりは,前回の意見と,また今回の追加に伴って修正したものでございます。簡単に御説明させていただきます。
 4ページの真ん中,各大学院の質の向上を図るために期待されるものということで,3つのポリシーに基づいた改組の話でありますとか,課程との関係の再点検というところに触れているところでございます。前回,入試の在り方という部分についてもしっかりと考えを行う必要があるという委員の御指摘がございましたので,入試の在り方ということを追記をさせていただいてございます。
 また,国の側もこの各大学院の取組をしっかり後押しする観点から,法令,認証評価,その他の在り方についても不断の検討を今後も進めていく必要がある。場合によっては大胆な見直しを行う必要があることをしっかり明記させていただいたところでございます。
 4ページの一番下の丸でございます。ここの部分に関しましては,教育の中身をどう良くしていくのかという話でございますけれども,先ほど申し上げた1ページ目の下の部分,複数の領域をしっかり修めて社会の諸課題に様々な角度からアプローチできる人材を育成するという観点からは,ダブルメジャーやメジャー・マイナーの取組,こういったものもしっかり位置付けて推進していく必要があるということで追記をさせていただいたものでございます。
 5ページ目の2つ目の丸につきましても同様の趣旨でリカレントの部分について修正をさせていただいてございます。
 6ページでございます。6ページの一番下から2つ目の丸につきましては,前回の量の論点のペーパーの中で少し御議論していただいたところでございますけれども,個々の教員ということを超えて組織として学生の進路とか就職に対する意識を十分培っていくということが必要ではないかと。もちろん個々の教員の先生がしっかり把握しているものを更に1段上のレベルに昇華していくという観点でございますが,このような観点から,しっかり各大学は各専攻で養成する人材の需要について調査・把握をする。また,本日の前半の議論にも関わってまいりますけれども,修了者の状況をしっかり追跡して,その状況を踏まえた上で人材育成を進めていく。これを具体的に申し上げると,教育を見直していくであるとか,こういったPDCAサイクルを機能させるということになってくるわけでありますが,このような記述を追加させていただいているところでございます。
 前回からの見え消しになっていて少々見づらいところがあって大変恐縮でございますが,前回の意見を踏まえた上で,前回御説明したクローズの部分につなげさせていただいているということでございますので,中身について御覧いただきまして,御意見,御質問等を頂ければと思います。ありがとうございました。


【有信部会長】

 どうもありがとうございました。
 残りの時間はこの点に関する議論に使いたいと思いますので,どなたからでも御意見,御質問等あればよろしくお願いします。
 順番,では湊委員からお願いします。


【湊委員】

 内容的には非常に具体的な話になっていると思います。例えば,2ページの丸の2つ目ですが,これは非常に理想的なケースだろうと思うのですが,現実的にはこういうことが,大学,特に大学院を持つ大学で実現できるような全体的な状況にあるかどうかというところが重要な問題だと思うわけです。例えば逆に大学院というものを、日本全体の研究システムや研究力という観点から見たときに,では大学院での教育はどうあるべきかということにもなるのだろうと思うのですね。
 そういう観点から見たときに,これはこの間も少し申し上げましたけれども,研究というのは1つのシステムであり,全体で見れば研究をするコアの研究者,つまりプリンシパル・インベスティゲーター(PI)がいて,それから,実際にPIと一緒に研究活動をするリサーチアソシエイト(例えばポスドク)がいて,その下に実際にそれこそオン・ザ・ジョブで研究と兼ねるように教育を受ける大学院生がいて,このようにして順番にボールをつないでいくというシステムだろうと思うのですね。ところが,日本では必ずしもこの研究システムがうまく機能してこなかったことを考えると,大学院教育の問題点はその体制の機能不全の結果として出てきている要素が多いのではないかと思うのです。
 少し極端な言い方を私はしますが,ここにも研究の国際競争力という言葉が出てきますけれども,例えば研究システムがうまく働いている欧米の、PIがいて,そこにリサーチ・アソシエイトが2人いて,さらにその下に大学院生が付いているという研究グループと,日本の,特に我々の世代がどう競争してきたかといえば,端的に言えばポスドクはなかなか大学の研究現場では、今でもそうですが、機能していなかったので、PIが1名と大学院生5名という研究グループで戦ってきたわけです。それでなんとか良い勝負になるだろうと。そうすると学生はどうなるかというと,その戦力,本当の研究現場の実戦力としてやらざるを得なくなってくるということになり,その無理さ加減が今までの大学院教育がなかなかうまくいかなかった,つまり教育という観点から大学院が明確に位置付けられてこなかったというところの基礎にあるのだろうと思うのですね。
 ですから,ここに書いてある,例えば「知のプロフェッショナル」,普遍的なスキル,リテラシーを持つ高度な専門職の養成など、確かにそれはそうなのですけれども,ではそれを具体的にどのように育てていくのですかというところが本当は問題になるわけです。ここに書いてある内容は,私はこれで全く同意できるのですけれども,それを担保できるような研究システムをはじめとする我が国全体の状況を整備していかないと,大学の現場から見ると,これは絵に描いた餅になりかねない、というようなところを認識していただければありがたいと思います。


【有信部会長】

 その認識は,17年答申のときからあって,要するに学生が研究労働力として使われていて,本来の学生と教員との間に利益相反が起きているというところまで言ったのです。それを改善したいということで様々な施策が打たれてきて,今リーディング大学院から卓越大学院構想まで来ていますけれども,湊委員がおっしゃるように十分には機能していない。相変わらず研究現場ではおっしゃるように学生がこき使われ,きちんと育成もされず放り出されて,一方でそのまま就職先がないのでポスドクとなってさまよっているという状況で,これを何とかしたいという思いは全く同じで,おっしゃるとおり,ここにそういう意味でそれを反映させるように書いているつもりでいます。
 どうぞ。


【平野大学改革推進室長】

 私,説明の中では少し漏らしてしまったのですけれども,3ページの部分で,実は前回,湊委員の方から,特に設備の問題,また研究費の問題,このようなことも含めて総合的に考える必要があるという御指摘を頂いて,前回そのようなことでしっかりまたこれを上に持ち上げて検討する必要があるということを御議論いただいたところでございます。
 今,有信部会長がおっしゃいましたように,3ページの下の注の部分で,少し小さくて恐縮なのでございますけれども,これまで大学院教育の改善が進む中で,また大学院生の位置付けが研究活動において変わってきているという現状がございます。特に大学院学生が個々の研究室の担い手になっていたという状況が変化してきているということを踏まえた上で,どのようにその研究活動の基礎になるような研究室等における研究支援体制を確立するか,研究活動の担い手を確保していくかということについては,この大学院ということのレベルにとどまらず,総合的に検討していく必要があるということを入れさせていただいてございます。そのような問題意識につきましては,前回局長がお答えしたとおりでございますけれども,しっかりしかるべきに届くような形で織り込んでいきたいと思ってございます。


【湊委員】

 ありがとうございます。


【有信部会長】

 どうぞ。


【室伏副部会長】

 ありがとうございます。
 今,御説明を伺いまして,とても詳細に書いてくださったと思います。1つお願いしたいのですが,最初の「大学院とはどうあるべきか」というところに,高邁な理想が並んでいて大変結構だと思うのですが,SDGsがあるので,ここで,どういう人たちを育てるかというところに,企業経営者とかソーシャルビジネス,研究者・大学教員などと記載されていますが,できればこの中にもう一つ国際機関で働く,国際協調のために働く人ということも入れておいていただけると良いのではないかと思います。
 それから,1ページの2つ目の丸,3つ目の丸で,これはとても重要なことが書かれてあるのですが,もう一つ落ちていると思いますのは,例えば多様性を包摂するインクルーシブな社会を創造するような人材ということ。これは,今後のグローバルな社会の中で,またいろいろな最近よく言われているアンコンシャス・バイアスを解決する上でも非常に重要だと思いますので,そういったことも入れておいていただけるとよろしいのではないかと思いました。
 それから,もう一つ,院生の修了後の追跡調査が実は数年前までほとんどされていなかったという状況がありました。リーディングプログラムで修了者の追跡調査を非常に細かにやっていただいて,それが今後にとても生きてくると思っています。質の高い大学院生を育てて有用な人材を送り出した後,その人たちがどのように活躍しているかという,そこまで見ていくことが本当は必要だと思いますので,卓越大学院でもそういったことをしていかないといけないと思いますし,今後、優れた人材を育てて,それが本当に社会のために役に立っているということを社会から理解してもらう上でも必要だろうと思いますので,よろしくお願いいたします。
 以上です。


【有信部会長】

 今の御指摘の点は,できるだけ入れるということにしたいと思いますが,追跡調査については,卓越大学院の場合は,一応要件には入ってはいます。これは全然別の話ですけれども。
 ほかに,どうぞ。


【天野委員】

 この資料2を拝見させていただきまして,非常に丁寧に書かれていると思います。ただ,少し違和感を感じたのは,何となく,裏にあるのかもしれないのですが,日本人の学生相手のような感じがしたのですね。そうすると,2040年ですと,多分子供たちの数はもっと減ると思うのです。今,リーディングプログラムの方で非常に卒業生が良いと評価されていますけれども,これは海外の先生方も当然そうなのですが,残念ながらリーディングプログラム,定員に対して日本人は余り来てないのですね。コースにもよると思いますが。海外の方が非常に来ていて,その海外の学生さんたちとリーディングプログラムの学生さんが切磋琢磨することによって非常にグローバルな力をつけているという面もあると思います。ですので,こういう内容の中に,それに最近は日本の企業も日本の大学を卒業した留学生の方をかなり採用するようになっていますので,その裏にあるのだろうとは思っていますが,海外留学生というようなイメージも少し盛り込んでいただけると良いのではないかという気がします。


【有信部会長】

 ありがとうございました。確かにそれはありますけれどもね。
 どうぞ,佐久間委員。


【佐久間委員】

 大学もいろいろ改革には取組んでいるつもりではあるのですけれども,例えば,2ページから3ページにかけて,専攻の大きさというのがありますよね。これは,専攻が大きくなれば当然学ぶ範囲が広くなるから当然狭いよりも充足しやすくなるだろうというのがこの裏にはあると思うのですけれども,現実問題としては,見かけだけ専攻を大きくしたという事例が結構あるので,気を付けないといけないと思います。
 何が言いたいかといいますと,ここに書いてあることは非常にもっともだと思うのですけれども,ただ,特に文系,あるいは人文系の大学院の場合,非常に課題が大きいので,ここに書いてあることは多分大学の関係者が読めば,みんな,ああ,そうだねと思うと思うのですが,では,それを具体的にどうしていったら良いのかというと,余りに課題が大きくて,そこまで多分行き着かないと思います。
 そういうことがあるので,この部会の中でもいろいろ議論がありましたが,例えば,理系の人材でも文系の素養が必要だというような議論もありましたけれども,そうであるとすれば,当然それに対応する文系人材というのもあるわけですよね。そこら辺にはいろいろ見方があるかもしれませんし,必ずしも賛同される方ばかりではないかもしれませんけれども,人社系の大学院がどうあるべきかということを,私からするともう少し踏み込んで書いていただけると,少なくとも議論の出発点にはなると思うのですね,それを受け入れるかどうかは別として。このままだと,多分これを読んでも何となく読んだだけということに終わってしまいそうな気がどうしてもするので,そこら辺,是非考えていただければと思うところでございます。
 人社系に関しては,もう国立大学には学部も要らんというような,そういう意見も一部にはあるわけで,今のこのような状況ですと,下手をすると本当にそれに流されていってしまう可能性もあるわけです。そういう非常に危機的な状況にあると思いますので,是非そこら辺をよろしくお願いしたいと思います。


【平野大学改革推進室長】

 私の説明が行き届かない部分があったかもしれません。大変申し訳ございませんけれども,実は,このものというのは,この後に当然大学院部会としての取りまとめというのもまとめていくわけでございます。今回のものは,将来構想部会に打ち込むことにおいて,かなり意識した上である意味役割分担をしようと考えてございまして,その観点から,実は先生お気付きのとおり,これまでかなりこの大学院部会での議論で人社系の話も含めた各分野の話というのもしていただいているわけでございますけれども,その部分は,実は踏み込むとなりますと,前回も議論がありましたけれども,人と社をそのまま一緒くたにして書いて良いのかどうかといったことも含めまして,かなり精密な記述が必要になってまいります。今回の記述というのも別に精密でないということではないわけでございますけれども,大学院部会の取りまとめを作るときに,今,先生がおっしゃったような議論というのは,今回の大学院部会で御議論していただいている中のかなり重点的な事項でございますので,丁寧に拾って対応を,記述を盛り込んでいきたいと考えているのが現状の整理でございます。


【有信部会長】

 御指摘のとおりここはかなり微妙な問題があって,今説明があったようになかなか記述が難しいのですけれども,問題は大きく2つあって,1つは,定員未充足とは言いながら,極めて少人数,あるいはもう学生がほとんどいないような専攻の数が圧倒的に多いのです。これは,本来の学問の継承という意味ではそういう専攻がなくて良いというわけではないのだけれども,全国的な規模で見直した方が良いのではないかという,そういうところはなかなか露骨には書けないのだけれども,本当はそういう検討も必要だろうと思っています。
 それからもう一つは,定員を大きくしている,増えた中でとか,実際には常に定員が充足し切ってとか,その辺の定員の充足割合に応じて矛盾が発生している部分もあって,これを一緒くたに書かざるを得なかったこともあって,少し知恵を絞らないといけないと思っていますけれども,余り強権的にこうしなさいと言うわけにもいかない部分があって,その辺は,これから大学が将来を考えて検討すべき重要なポイントだろうと思っています。


【川嶋委員】

 3点,手短に。1点は,言わずもがなの話で,ここに書かれているような方向性で改善,改革が進むように,制度的,財政的な裏付けをしっかりしていただきたいというのが1点です。
 2点目は,これは質問ですが,3ページの一番下の注記のところです。5の注記のところで,質の保証ができていれば研究科において専攻単位の定員の設定を自由化できるなど,大学院定員の柔軟化を検討することも考えられると書いてあるのですが,これはST比を基準として教育の質と内部質保証がうまく機能していれば,研究科の中での専攻単位の定員を自由化するということなのですが,大学院研究科だけではなくて,将来的には学部の方の学位プログラム化ということを踏まえて,大学院だけではなくて,学士課程の方でもこういうことを検討していかれるのかということが2点目。
 3番目は,赤ペン的なことなのですけれども,読んでいて日本語として引っ掛かるところがあったので,2か所指摘させていただきます。
 1つ目は,2ページ目の2つ目の丸の3行目の後半のところです。「ともすれば「奥の院」と考えられていた大学院は,既に大学と社会の接点と変化しており,その活性化に対する社会的な要請は大きい」と書いてあるのですが,この一文が何を言おうとしているのか,私自身の理解力のせいかもしれませんが,よく分からなくて,こういうことかと思って別の案をお示しすると,「ともすれば,「奥の院」と考えられていた大学院は,既に大学と社会の接点も大きく変化していることから,その活性化に対する社会的な要請は大きい」と,そういうことなのかと読み換えました。
 それから,もう1か所は,次の3ページの一番下の丸の最初のところの文章ですけれども,「今後大学院においては,我が国に求められる「知のプロフェッショナル」の育成に中心的な役割を果たすことが必要となることは明らかであり」とあるのですが,これも分かりにくい文章で,「我が国に求められる「知のプロフェッショナル」の育成に果たす役割の重要性がますます高まることは明らかであり」かと思います。
 以上,3点です。


【有信部会長】

 では,湊委員,どうぞ。


【湊委員】

 それでは,手短に。6ページの最初の丸,一番大きい問題で,要するに博士課程が進学率が減っているということについて,この対策がるるここに述べられております。どれも私はもっともだろうと,これで良いと思うのですが,1つ決定的に抜けているのは,もう一つの要因は大学院の指導教員なのですね。大学院というのは勝手に行くわけではないですから,大学院課程での教育課程での指導教員の変化というのは,つまり研究者,あるいは教員としての変化というのは,非常にこれに影響を与えていると私自身は思っています。それを考えれば,一方でこういったことを担保する要件の1つとして,大学の,とりわけ大学院の指導に当たる教員の,これは何て書いたら良いか私も実はよく分からないのですけれども,きちんとした要件,あるいは時間の担保等々を含めて,きちんと大学院生,特に後期博士課程を指導し得る教員がきちんと担保されている,しかもクオリファイされている。何て言って良いか分かりません。ただ,そういう要素がここで1つ抜けているのではないかという気はします。


【有信部会長】

 おっしゃっていることは分かりますけれども,どういう表現にしますかね。


【湊委員】

 どうしたら良いのでしょうかね。


【有信部会長】

 少し検討させてください。


【湊委員】

 はい。


【有信部会長】

 どうぞ。


【三浦大学振興課長】

 御意見をありがとうございます。今の御指摘,それから,その前2つぐらいの御指摘,多分全部根っこにあるのは共通の御指摘かと思ってお伺いしておりました。
 これは前回も少し申し上げたかもしれませんけれども,その規模の大小にかかわらず定員を充足していない専攻が多く見られる現状というのはどうしたことなのだろうかと。一方で,国際的に大学院生の数が非常に少ないにもかかわらず,その規模を充足していないところが非常に大きいのはなぜなのだろうということについての問題意識というのを今回どう捉えるかというのがポイントだと思っています。
 だから,それは単に今欠員になっている専攻を埋めてくださいと,学生さんをもっと入れてくださいということを申し上げるのではなくて,何が求められているのかと。だからむしろ埋めてくださいということではなくて,積極的に転換をしてくださいと。そのためにはどうしたら良いのかということを是非今回の中で提案をさせていただきたいと思っています。それが3ページの一番上の3行の部分として表現をさせていただいたところでございます。
 その上で,一番下の5番の小さなポイントで書いてあるところでございますけれども,その上で将来的な方向性としては,先ほど実務家教員の定義の話も様々ございました。今の湊委員の御指摘,きちんとドクターコース教えられるような教員をどうやって担保していくのかということも,本来的には各大学がきちんとその内部質保証の中で対外的に説明できるような姿になっていくことを目指していくべきなのだろうと思っていますが,その過渡期として,国として,あるいは答申的な指針,基準のようなものが必要であれば,それはきちんとお示しをしていく必要があるのだろうけれども,将来的には,この5番で書いてあるような,各大学がきちんと説明責任を果たしていく,どういった教員がどういった教育課程の中でふさわしいのか,必要なのか,何単位持つ必要があるのか,その人の基礎的な学位というのは何なんだということを,外から言われるまでもなくきちんとやっていく。それをまた外部認証機関がきちっと評価をして,国際的な質の保証を担保していくという形に何とかなるようにこういう報告をまとめていければありがたいと思っています。


【有信部会長】

 今の課長のお話は,それは正しいのだけれども,湊委員の今の説明は,1つは,そういう意味で,定員の話は置いておくにして,博士課程で十分学生を教育でき,研究も進められるような教員をきちんと担保する,これは大学の責任なのだけれども,その教員が十分な研究時間,あるいは教育に割く時間がきちんと保証されるような制度的なことは,これはある意味その制度設計上何らか考えなければいけない。全ての大学をみんなイーブンに考えるべきなのか,それなりに重点化をしていくのかと。ここは,もうこれから先はある程度踏み込んでいかないといけない。その流れの中で,定員が未充足な専攻等々についても,これは,1つは大学の判断できちんと,これは学問の内容の問題だから,外部からあれが必要である,これが不必要であるという指摘はできないので,大学の判断で当然統合等を考えなければいけない。つまり,学生もいなく,教員も不十分なところで,本当に教育研究が成り立つのかというところにまで戻ってきちんと考えた上で,これは課長もおっしゃるように大学が独自に判断していくべき内容だろうと思います。この2つのポイントで今後検討を進めていく話かと思いました。
 ほかにどなたか御意見,どうぞ。


【神成委員】

 私は理系の教員なのですけれども,文系の博士の件について,リーディング大学院のプログラムを介して関心を持っています。,理系ですと2年の早期博士課程修了というのさえある一方で,文系だと最低でも4年,5年掛からなくては学位取得できないと公言している研究科もあるという実態が,どうしても同じ大学院という組織の中において整合性がないと思います。博士学位の持っている意味の違いとか,先ほど、教員の学位論文指導能力というのもありましたけれども,根本的な研究指導体制においても,明らかに2つに分かれているという状況であると思います。この委員会でも文系における博士学位の意味とか,標準的に何年で取るとかということについて議論がされたと思うのですが,今回この資料2を見て,文系においても3年で博士を取ることがスタンダードであるべきと明記し、理系のように,博士学位というのは,ある意味で研究者としてのパスポートであるというような考え方に移行すべきではないでしょうか。これまでの文系博士学位は、一人前の学者さんであることを保証するサーティフィケートだという考え方を大きく変えないと,なかなか文系の学生さんは,3年間で博士を取らせてもらえない。結果的に博士を取った学生さんを産業界とかで重用するという形にも進んでいかないという悪循環になってしまっていると思います。今回のこの大学院部会において,そこまで踏み込んでメッセージを発することはなかなか難しいことなのでしょうか。


【有信部会長】

 人文・社会系の学位までの件に関しては,前にも議論がありましたけれども,もともとの学位の考え方が違っていたのですね。特に法学,文学,この辺のところは違っていて,そのために基本的な観点が違っていますし,文系では学位を持っていなくても教授になっている先生方がおられる分野もある。もともと学位の考え方が違うものですから,自分の研究の集大成で学位を取るような,そういう基本的な考え方で来ているところもありまして,その点に関しては,基本的には,大学院設置基準だったか,たしか学位の基本的な設定のところで定義はされているのです。つまり,博士という学位はこうこうこうだという形で,昔とは違って共通の定義がされているのだけれども,それがまだ徹底していない。その辺について,もう少し本当は議論をした方が良いのだろうと思います。
 どうぞ。


【三浦大学振興課長】

 今の御指摘を頂いて改めて反省をいたしましたけれども,研究者のパスポートであるその標準修業年限とは何なのだというようなことについては,実は大学院教育の最初の答申,平成17年度の答申で全くそのことが全て書いてあるのです。そうでなくてはだめだと書いてあることが我々としては前提となって資料を作っていたりするものですから,そういう意味で改めて書かないと分からないよという御指摘を頂いたものだと思って反省しております。


【有信部会長】

 そのとおりですね。では,よろしくお願いします。
 それでは,いろいろ貴重な御意見を頂きましたので,これは,今のような状況で良いのだっけ,今の伺った御意見をベースに少し手直しをするところは手直しをするということで進めさせていただきたいと思います。
 本日は,貴重な御意見をどうもありがとうございました。
 それでは,この結果を踏まえて構想部会に報告をするということにさせていただきたいと思います。
 それでは,今後の日程等について事務局からよろしくお願いします。


【平野大学改革推進室長】

 本日は,本当に活発な御議論をいただきましてありがとうございました。
 今,最初に御説明したように,参考資料2で当初設定した内容はとりあえず一回りしたという現状になっているところでございます。今後の進め方につきましては,また部会長と御相談をさせていただきたいと思いますけれども,次回の日程も含めまして,また追って御連絡をさせていただきたいと思います。
 本日の資料につきまして,いつものお願いでございますが,郵送を希望される委員の方は,机上に置いております附箋等に郵送希望の旨を御記載いただき机に残していただきますようお願いします。特に記載がない場合には,勤務先の方にお送りをさせていただくという取扱いにさせていただいておりますので,よろしくお願いします。
 本日は,ありがとうございました。


【有信部会長】

 では,これで閉会にします。どうもありがとうございました。

お問合せ先

高等教育局大学振興課大学改革推進室

大学院係
電話番号:03-5253-4111(3312)