大学院部会(第84回) 議事録

1.日時

平成30年4月20日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省東館3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 大学院教育の在り方について
  2. 科学技術・学術審議会人材委員会・中央教育審議会大学分科会大学院部会 合同部会の審議状況について
  3. その他

4.出席者

委員

(部会長)有信睦弘部会長
(副部会長)室伏きみ子副部会長
(臨時委員)天野玲子、池尾恭一、井上眞理、大島まり、岡島礼奈、樫見由美子、加納敏行、川嶋太津夫、川端和重、神成文彦、小西範幸、佐久間淳一 、迫田雷蔵、高橋真木子、永里善彦、藤原章正、堀切川一男、湊長博、宮浦千里の各臨時委員

文部科学省

(事務局)小松文部科学審議官、義本高等教育局長、瀧本大臣官房審議官、信濃大臣官房審議官、三浦大学振興課長、内藤主任大学改革官、石橋高等教育政策室長、平野大学改革推進室長、石丸人材政策推進室長 他

5.議事録

【有信部会長】  

 それでは,時間になりましたので,第84回の大学院部会を開催させていただきます。御多忙中の中,御出席いただき,誠にありがとうございます。
 なお,五神委員,車谷委員,田中委員,沼上委員が,本日御欠席と伺っています。
 それでは,早速始めさせていただきたいと思いますが,事務局から配付資料についての説明をお願いします。

【平野大学改革推進室長】  

 今日,資料の一番上にお付けしている議事次第の配付資料のとおりでございます。参考資料と机上資料につきましては,お手元のタブレットに入れてございます。抜けている資料などありましたら,事務局にお声掛けを頂きますよう,お願い申し上げます。

【有信部会長】  

 それでは議事に入りたいと思いますが,まず,議題(1)大学院教育の在り方についてということで,審議を進めたいと思います。
 タブレットの中の参考資料4「大学院部会の審議の進め方(案)」が,前回お示しした審議事項ということになっているようです。このうち,本日は,(2)大学院の有する価値及びストックの可視化と(3)博士課程への進学率の減少,修士課程学生減少への対応についてということで議論してまいりたいと思います。
 最初に,(3)に関連して,優秀な人材が大学院に進学することを促進するための情報発信やリクルーティングの取組事例について,川端委員から御紹介を頂き,その後,事務局から本日の論点を説明した上で,審議に入りたいと思います。
 それでは,川端委員,よろしくお願いします。

【川端委員】  

 新潟大学の川端です。
 これからお話しするのは,博士課程後期課程の人間が減っているということをベースに,今,国として全国的にいろいろな施策を打っている。それが基本的には,入った人間に対してどう支援するかとか,その後のキャリアパスをどうするかという話に……,全部出ていない。
 続けます。
 ドクターに入った人間自体が今,どうやって増やしていくかということの施策が大体,入った後の話,彼らのカリキュラムをどうするとかそういう話なんですが,ちょっと基軸を変えて,彼らをリクルートするという,要するに,優秀な人をどうやったらリクルートできるかという,表現がいいかどうか分からないけど,もっと前向きな話,それをやってみたらどうだろうかというのが提案です。
 この調査自体は,マーケティングを基にしたリクルートというのはどういうふうに存在するかというのをやってみたというわけで,私自体がちょっと途中,機関を変わったもので,これは北海道大学の時代に,URAとか人材育成本部というものに使って,それから,日立製作所さんに協力を頂いて,マーケティングというものをやっていただいたということになります。
 これからお話しするのは,飽くまでもケーススタディーです。分野によっても,大学の規模によっても,いろいろな形があるはずです。ただ,考え方をより理解していただくために,これから具体的なお話をしていきます。
 これは,御存じのとおりに,大学院生がどう減っているか,ここ10年の減り方を,青い線が大学院生の入学者数で,だんだん減っていますよと。ここで言いたいことは何かというと,これがRU11であったり,これがRU11以外であったり,これは何が言いたいかというと,赤い線が修士から上に行った人間,黄色い線が留学生で,緑の線が社会人ドクターです。要するに,大学によって全然割合が違う。社会人ドクターががんがん増えている大学群もあれば,それはそのままの群もあるから,マーケティングの仕方としてはいろいろな形がありますよという中で,我々としては,どちらかというと,下から上に上がっていくような人間をどうリクルートしていくかというようなことにターゲットをしています。
 よくこういうことを言うと,18歳人口は下がっていくし,どうのこうのという話があるんですが,これはよく皆さん御存じのとおり,学部で56万人の人間が中へ入って,卒業していく。そのうちの10%は修士に入って,また,7万人が入って,卒業していく。その中のまた10%が博士に行って,博士の中で,入って卒業していく。基本的には,学部全体の10%の10%ですから,要するに,1%しかドクターには行っていないということです。
 だから,18歳人口がどうのこうのというよりは,これは揺らぎの世界であって,ちょっと何かすれば,1%が2%にもなるし,3%になるかもしれない。我々としては今,ここを10%にしたいとは思っていないんです。基本的に,全体から言えば,1が2になれば十分だと思っている。それぐらいの希望者がいて,そこから我々は選抜したいんです,優秀な人を。このような立ち位置で,どうやって希望者を増やしていくかというような立ち位置になります。
 最初にお話ししたように,では,なぜ博士への進学者数が減少し続けるのか,なぜ行かないのかというときに,出てくるキーワードは,出た後の職業が,就職がないからだよね,いや,行ったときの奨学金がないからだよね,カリキュラム自体が修士と余り変わらないかもしれないしね,このような三つがいつも出てきます。
 では,この三つを全部解決したらうまくいくのというのが,例えばリーディング大学院であったり,いろいろな大手の大学だとか工学系の大学院であると,自分たちで基金を取れたり,寄附金を取ったりして,こういうものを全部解決して,さあどうぞとやります。やるんだけど,うまくいっているところはありますけど,かなりの部分はいまいちなんです。要するに希望者数が,志願者倍率1ですね,大体。1しか出ないのはどうして,5ぐらい出ていいじゃん,10出ていいじゃないかと,こうなんですが,1なんです。1から1を選んでいるという状態になっていきます。
 こういうことを考えたら,一体どこに原因というと,一番最初です。要するに,博士は魅力的かという話です。これの出発点は何かというと,博士に行きたい人は山盛りいるんです。でも,それが,奨学金とかキャリアパスで,これで止められて,行かないんですというのが論理の構成ですけど,それを外していないということは,魅力的じゃないということです。では,魅力的にしましょうよというのが,「リクルート」というキーワードになっていくところになります。
 これは北海道大学での,単なる部局ごとのここ5年間のDCの入学者数を書いているものです。そうすると,工学とか農学は下がり続けているのに,理学だけが増えている。私も理学ですけど,理学なんていうのは一番,奨学金もないし,キャリアパスもいまいちはっきりしないし,カリキュラムだってどうなのかというぐらいなものですが,増えているんです,5年間も続けて。
 就職はどうでしたかというのが,下に書いている部局ごとの就職ですけれども,大して変わりはしない。要するに,何か違う次元でいろいろなものが動いているぞ,こういうこともあるぞと言っています。
 私たちは何をしようとしたかというと,マーケティングを使って,ペルソナとかカスタマージャーニーマップ,要するに,顧客,学生目線でいったときに,彼らは何に影響されて,何に意思決定をして,ドクターに進学したか,これを分析しようというので,日立製作所さんの社会イノベーション協創センタとかテクニカルコミュニケーションズの方々に非常に協力していただいて,ドクター,学部生,修士,卒業した人間,いろいろな方々のインタビューといろいろな調査をしていったということになります。
 調査内容自体は,基本的にこれは統計量を競うものではなくて,一体どこに代表例があって,どういう個性を持っていてというものをはっきりさせていこう。だから,そういう意味で,一番最初に言ったように,これが全部を網羅しているわけではなくて,切り取ったある領域を言っている。
 ただ,これをやるに当たっては,中を調べるに当たって,今までの統計的な部分も見ましたし,それから,民間に出ていった人間だとか,特に北大の場合だったら,10年間,人材育成本部というのを作って,ドクターのキャリアパスを重点的にやっている部署がありまして,彼らはずっとドクターと会話をし続けている。そのような人間だとか,キャリアセンターの人間とか部局長というのが入って,全体で全体像を絞っていったという話になる。
 その上で,本当に学生さんたちがどういう動きになるかというので,典型的な例も含めて,だから,ここで言うように,全体で学生を徹底的に調べたのは,7名しかないんです。理学と工学です。文系が入っていません。ただし,理学,工学の中では,マテリアルからライフサイエンスまで,いろいろなものが入っています。理論も入っています。このようなものを追跡調査したということになります。
 まず,大枠で見ていったときに,何が出てくるかというと,どんな人材像,人物像かというわけです,ドクターというのは。そうすると,三つのカテゴリー,タイプが出てきて,一つが,小さい頃から,私は大学の先生になりたいよという,要するに博士一直線で,こういうやつです。これは揺るがず動いているやつら。
 一番下は,モラトリアム型といって,どこに行きたいかも何もないけど,就職もうまくいかなかったし,ドクターへ行くかなというやつらです。これもいるんです。
 真ん中が面白くて,これは何かというと,彼らは,研究はともかく面白い。今やっている研究が面白い。専門の何かというよりは,研究というものが面白くて,興味のある分野があって,面白い人たちが周りにいて,自分の将来は,この後,お話ししますけど,順次いろいろなことを,刺激を受けながら,自分の将来は変えていくと思っている人たち。
 というので,これを3カテゴリーやったときに,私たちの昔話をすると,一番上が一番多いだろうと思ったんです。そうではなくて真ん中が一番多かったというのが,一つの結果です。
 だったら,カスタマージャーニーマップでマーケティングして何かができるとすると,真ん中のゾーンが,一体どこでどういうふうに彼らの意思決定がされていくかというのを明らかにしていこうというのが,次のステージになりました。というわけで,真ん中だけが,ペルソナのマーケティングをやった対象になります。
 出てくる人物像です。この手法としては,できるだけリアルな人物像を作っていって,我々のイメージも膨らむし,いろいろなもののイメージが膨らむようなものを作っていく。だから,1人の情報を表現したわけではなくて,たくさんの情報を集めて,1人の人物像を作ったという状態です。たまたま日立の人の写真がただ載っているだけです。この人というわけではなくて,このようなやつだよねという。
 ここには細かく書いていませんけれども,ともかく,両親がいて,もうじき定年で,妹がいる。それで,素粒子をやっていた。企業に就職した。このような人物像が,今までどんな人間だったかというので代表していくと,彼は,研究の内容が面白かった。若い頃,決めているのは,教員の人柄とかいうのが面白かった。好奇心豊かで興味を持ったことに全力で取り組む。情報をちゃんと集めるが,決断は大胆だった。後悔はしたくないと思っている。人のうわさを信じない。自分で確かめたい。進路選択は余り深刻に考えない。このようなぼんやりしたイメージ像の中に動いています。
 進学・就職に対する思いというのは,入学当時,興味のある分野と違った学部に入学したぞという,だから,最初から物理だと言っている人間でもない。本当は薬学へ行きたかったのに,最後,ここに行っちゃったんだ,でも,ドクターに行きましたと,こんな人物像が出てきています。
 それから,情報源としては,ネガティブなうわさを先輩からがんがん聞いた。DCについてはデメリットばかり聞かされたというような話で,キャリアセンターの,お父さんたちの話よりは,働いている身近な人の話の方が影響を受けたというような話,それから,この人の人物像で言うと,親の年齢から言うと,親から支援は受けられないなと思っている。このような人になります。
 このような人物が,今までの人生をどう歩いたか。これは縮めていますけど,本当はこんな巻物ができるんです。こっちの端っこが,高校生からドクター3年の就職までです。彼は一体,いつ,どんなプラス要因の情報とマイナス要因の情報を得ながら前に進んだかというような,これがカスタマージャーニーマップと言われている,このようなものが出てきます。これをぎゅっと絞ったらこうなった。今,大きく見せたのはこの部分だけです。それぞれに対してこのようなものが出来上がっていて,それぞれの観点で,どんな影響を受けながら進んだかというような話になっていきます。
 個別に言うと,例えば,皆さんは見えないと思いますけど,このようなところの青いのがデプレスされた話,ピンク色がエンカレッジされた話で,この辺の話だと,要するに,学部の早い時期というのは研究が分からない。だから,ドクターの話を聞いてもぴんとこない。でも,先生に憧れたというんです。若しくは研究に憧れた。だから,単語に憧れた。
 でも,もうちょっと行って,B3とかこの辺になってきたら,博士と言われるけど,情報がどこにもまとまったものがない。誰に聞けばいいんだという話と,それから,ラボによっては,ドクターのいるラボといないラボがある。いないラボはどこからも情報が入ってこない。出てくるのは,余りよくない話が一杯出てくる。このような話があったりします。
 もうちょっと行くと,修士の最初に,ドクターはという話をすると,修士が分からないのにドクターなんて行けるかという話です。それをどうしても考えなければならないと思い始めたのは,民間のリクルートが始まる時期です。だから,M1の夏とか,もうちょっと行くと,M2の春とかその前ぐらい。要するに,世の中がわーっと動いたから,自分も考えなきゃと思い始めるタイミングが出てくる。
 こんな話がずーっとそれぞれに乗っかっていって,出来上がるのがカスタマージャーニーマップと言われているものです。これで出てくると,ちょっと丸めてお話ししますけれども,言えばここから出てくる人物像というのは,高校から大学は,基本的に偏差値とか親の意見で決めてきた。それが学部,修士,修士に行くときというのは,基本的に全員が修士に行くんだから,俺も行くというスタイルです。だから,そんなにすごい思想があるわけではない。修士から博士というところになった段階で,研究の面白さとか,いろいろなものが出てくる。それで,先輩の意見をという。
 こういうもの,これはカスタマージャーニーマップをベースに,課題を幾つかに分けて対策を考えていくと,もうちょっとリアルになるかなというので,あと四つぐらいお話しします。
 一つ目は,博士に進学しないのは,博士の良さが分からない。結局は正確な情報がないので,難しいんです,確かに。この情報自体が,例えば就職の情報にしても,いろいろな情報で,そういうものがまとまったところに,どこかにあればいいんだけど,そういうものがなかなかないという話。
 次が,彼らの意思決定のキーワードは,半径3メートルの情報です。だから,ネットに載っていたり,時々来るおじさんが何かしゃべっても,ぴんとこないんです。でも,目の前にすごいドクターがいたりすると,彼らに引っ張られます。そこにすごいやつがいると,それの後を継いで,我々もラボをやっていたりするとよくあるんですが,すごいドクターがいると,次につながっていきます。次にいるドクターがまた増えていきます。一旦切れると,またなかなか出てこないです,ドクターが。そんなことがあったりするので,それから考えても,半径3メートルの情報というものが重要になってくる。
 ロールモデルの提示というのは,これが何かというと,語弊はいろいろありますけど,ともかく,彼らには格好いいドクターを見せることです。というのが私たちの具体的な施策になります。ドクターの中にはこうでないやつも一杯いて,よくお話ししますけど,企業のリクルーターは必ず格好いいやつを送り込みます。さあ,どうだ,こんな給料だぜと,こうやります。アカデミアはどうかというと,ラボへ帰ってドクターを見たら,ドクターが暗い顔して,どうしようと思いますと言ったら,ドクターが,おまえたち覚悟はあるのか,金がもらえると思うなみたいなことを言われて,何で行くんだという世界が一杯展開しているんです。だから,何かというと,その中でも,格好いいドクターは一杯いるんです。そのドクターを見つけてきて,彼らと交流させるとか,このようなものが具体的な策になっていく。
 最初にちょっとお話ししたように,このような話を年がら年中やっても何の意味もないぞと。必要なときは必要なタイミングがあるんですという,彼らが意思決定をするタイミングというものを狙ってやらないと,これは我々も非常に,これをやって反省するところがあって,私たち北大のときに,人材育成本部は,ドクターへの進学を大学院入学式のときにやったんです。修士が大学院入学式に行ったときに,ドクターはこんなにあります,こんな支援がありますとやったんです。ぴんとこないんだな,なかなか。
 何でかといったら,この辺で見てみると,結局のところ,彼らにしてみれば,要するに修士がどんなものかがよく分からないのに,ドクターと言われてもなというような話です。これが結局,リーディングの選抜にも関係しているし,いろいろなものに関係しているということになります。
 だから,やるべきことは,いろいろなタイミング,研究室配属前後の学部3年生の終盤とか,研究をある程度経験した学部4年生の終わりとか,それから,就活が始まるM1の冬とか,春とか,こんなタイミングの中にいろいろなものを埋め込んでいくというのが,例えばこのケーススタディーの場合に出てきた話です。こういうものに,今もお話ししましたけど,奨学金だとか支援制度というのは,こういうタイミングを合わせないと,リクルーターという,リクルート,優秀な人を集めるということには,意思決定には影響していないぞという話です。
 特にで言うと,学振特別研究員制度のDC1です。DC1は,このつもりで作られていないのかもしれないです。でも,このつもりで作るべきものかもしれないです。例えば企業の就活というのは,御存じのとおりに,これはM1,M2,D1です。就職がどうのこうのというのはM2の,ここにDC入試がありますね。就活はどうなるかって,M1の夏ぐらいがあって,M2の春ぐらいからがたがたし始めて,ここでは,格好いい企業のリクルーターがお金を持ってやってきます。うわーっとやります。最終的には,M2の秋には確実に決まっている。多分,この真ん中辺でもう決まっちゃっているという状態です。
 では,ドクターに行く話は何かというと,今,奨学金としては一番大きいのはDC1です。これに対して,いつ決まるかといったら,M2の春には,まず応募が始まっている状態です。1次審査をまだこの辺でやっています。決定するのはM2の終わりです。ここで初めて,あなたは生活費が与えられますよと出てくるんです。ここでは関係ないんです。ここで,ドクターへ行くかどうかに関して,学振特別研究員の生活費はまるで意思決定には影響していないということです。取れるかもしれないし,取れないかもしれないしという状態です。
 一方,こっちはひたすらお金を持って,さあ,どうだと言う。
 JASSOも同じです。結局ここでは何ら,いや,出せば取れるんだろうなと思いながらも,ともかくそんな情報もなく,そうだなあと言って,結局,決まるのはM2の終わりです。
 というわけで,もし,これをそういう場面で活用するとすると,DC1はここのM2の春には決定していてもらわないと,こういう活動とは何のリンクもしませんよということになります。
 全体をまとめますと,マーケティングでやりましたと。基本的には,最初にお話ししたように,キャリアパス,奨学金,カリキュラムは要らないわけじゃなくて,これは要るんです。要るんですが,それに足す魅力を作るような我々の動きが必要だ。その動きというのは,リアルタイムの情報であり,半径3メートルの情報。
 確かに今,卓越大学院だとか,カリキュラムをがんがん良くしていくという動きはあります。でも,それを伝えないといけない。それを更にリアルに伝える必要がある。こういうものの情報だとか物を,要するにタイミングに合わせて渡す必要がある。年がら年中やる必要はない。あるタイミングを探してやる必要がある。
 こういう考えの下で考えますと,大学レベルでは,こういう話,最初からお話ししていますように,分野や地域や大学のサイズで,いろいろなものできっと違うはずです。考え方は同じだけど,違うはずです。だから,各大学や,いろいろな切り口で,この取組をやる必要がある。だから,全国一律の話は意味がなくて,各大学ごとの個性だとか,いろいろなものが出る施策をやる必要があるし,また,それを国として支援していただければと思います。
 国レベルで,大きい話で言えば,リアルタイムの就職情報を更に一括で,できるだけ発信できるようなパッケージを作ってもらいたい。下には,学振特別研究員制度自体を,もしこれにリンクさせるのであれば,採用時期を見直すだとか,DC1だけでいいので,まずこういうものを,どうあるべきかを考えてほしいという話です。
 全体を通しますと,アカデミアも企業も同様に,優秀な人材を獲得するためにリクルート活動を,彼らに負けないように,アカデミアもしなきゃならないというのが今の切り口かなと思って提案をいたしました。
 以上です。

【有信部会長】  

 どうもありがとうございました。
 それでは,今の説明に対して,御質問等ありましたら,どうぞ。
 極めて具体的な話だったわけですが,どうぞ。

【天野委員】  

 ありがとうございました。非常に面白かったです。
 もしこれを真剣に,実効性のあるような形でおやりになると,私は元民間出身なんですが,非常に強力なライバルが出てくるなというのが素直な感想です。
 今,お話しいただいたようなことは,正直言って,民間では,会社によって違うとは思いますけど,それなりに見栄えのする,明るい人間をリクルーターに立てるとか,やっぱりそういうことはちゃんと考えていますので,先生がおっしゃったようなことは,今まで民間がリクルート活動の中でやってきたことに,ある程度合致するなというふうにお聞きしました。
 やっぱり,やっとこういう考え方が出てきたのかなというのが素直な感想です。なので,この方向性に対しては賛成です。

【有信部会長】  

 ほかに質問等はありますでしょうか。
 どうぞ。

【岡島委員】  

 質問というか,すごく面白い取組だなと思っていて,やはり必要だと思うのは,私,自分がドクターを取って,民間企業に行ってから起業しているという経歴で来ているんですけれども,よく博士課程の人に,今後の話をしてくれと。今後の話というか,博士を取った後にどういうキャリアがあるかというのをたくさん話してくださいというのを,非常にリクエストいただいていて,そういうことが重要だとも思うんですけれども,博士を取るということが今後のキャリアにどれだけプラスになるかは,すごく,今,日本が分岐している部分だと思っていて,博士を持っている人を活用できない社会であると,むしろもう駄目なんだよという風潮でやっていくと,みんな博士を取りたがるでしょうし,あとは,海外のコンサルティングファームとかでも聞くのが,このプロジェクトに何人,博士をアサインしてくださいみたいな要求がもう来ているというところで,日本もそういう方向になっていくであろうと思うので,すごいロールモデルで格好いい博士との交流は,もちろんすごくやってほしくて,それも必要なのと,その先を,もっと分かりやすく見えるような,明るい未来を見せられるような活動をたくさんできたらと思いました。

【川端委員】  

 最初にお話しした,博士の未来に関する情報,例えば,就職率がどうのこうのという統計情報も確かに必要なんですが,今のような話が議論されているということが重要なんです。そういう情報がどこからも伝わらないんです。だから,みんなドクターの将来に対して,こんな議論をしているよと。ネットを見ても,そんなものはまず出てこなくて,博士へ行くと死ぬぞみたいな,そんなものばっかりが出てくる。
 だから,こういう議論をされているということをどうやって発信しているかという,それだけでも彼らにはすごい影響になると思うので,情報として,はい。

【有信部会長】  

 ほかにどなたか。
 高橋委員,どうぞ。

【高橋委員】  

 個人的には,非常にぴったりくる感想で,ありがとうございました。頭がクリアになりました。
 とりわけ母集団について,二つほどコメントと感想なんですけれども,7ページを中心に伺えればと思います。
 今後ますます年齢が高くなっても,いろいろなキャリアをチョイスするという選択肢が増えてくるだろうと思っています。そう考えると,今回の先生がおっしゃった,考えて選ぶタイプと,もしかしたらそれ以上に,モラトリアム博士の人たちの中からも,今後,アカデミックにきらきら光る研究者を育てていく必要があるんじゃないかなというのが,ターゲットについての感想です。
 そこで川端先生に伺いたいんですが,ここ10年,先端融合や振興調整費で,北海道大学は日立様とすごく長期の骨太な協力研究,共同研究をなさっていたと理解しています。たまたま今回のパートナーも日立様なので,やはり企業様との大型のアライアンスがあることが,今回の博士課程のサーベイに何らか影響を及ぼしたか,及ぼしていないかというのは,伺いたいところです。

【川端委員】  

 これは日立さんに御相談をしてというので,スタートは確かに,FIRSTというので,陽子線治療だとかそういうもので共同研究で,非常に大きな規模で,その後,そのプロジェクトから組織型の共同にというので,テーマを限定しないで広げていった。広げている中に,単なる研究だけじゃなくて,このような話もあるだろう。彼らにしてみれば,例えばマーケティングがまた違うところの事業につながったりと言うかもしれないというような思いも,ちょっとあったかもしれませんけど,それで半分無理やり巻き込んで,やってみようよという話で展開したというので,おっしゃるとおり,いろいろな意味で,企業とのつながりから,これは展開したものです。

【高橋委員】  

 ありがとうございます。法人化以降に,とりわけ研究系の国立大学が,組織対組織の大型共同研究での産学連携をはじめましたが,多分,こういうスピルオーバー的な波及効果も狙っていいんじゃないかなと思いました。
 もう一つは,7ページの三つのタイプの中で,「考えて選ぶ」が今回のマジョリティーだとおっしゃったと思うんですけれども,オール北大の理学系のマスター君たちを考えたときに,「モラトリアム博士」のところもそれなりにいるんじゃないか,かつ,今後はそこが増えていくんじゃないかと思うんですけれども,そこについて,先生の個人的な見繕いのようなものを教えていただければ,今後の母集団の参考になると思います。
 以上です。

【川端委員】  

 私も偏っています,人間が。少なくとも,私自体,人材育成本部だとか絡んでいて,ドクターは非常にたくさんの人間を見ておりますけれども,間違いなくここ10年,いろいろな意味で見て,明るくなっています,ドクターが。昔のように暗くて,世界に,そういうのは出てこないのかもしれないですけど,少なくとも私たちの目の前に出てくる非常に大きいボリュームのドクターは,みんな明るくて,このゾーンだなというのが出てきたときに,みんながそうだ,そうだと言った,そういう状態なんです。
 だから,統計として,緻密な調査の中に何%これがというものではなくて,基本的にはボリュームゾーンはここにあるぞというようなつかみ方で,前に進んでいっているというふうに御理解いただければ。

【高橋委員】  

 ありがとうございます。

【有信部会長】  

 どうぞ。では,大島委員から先に。

【大島委員】  

 企業とともに就職に参戦するという,戦いの姿勢が見られて,非常に面白いと思いました。とても大事なことだと思います。ここに上げられていた統計も含めて,イメージはおそらく,皆さんおぼろげに持っていたと思います。それらをこのような形で示していただいたというのは,非常に大事だと思いました。
 そのことをふまえて,2点ほど,コメントおよび質問がございます。ある意味,学生のリクルートのスケジュールに合わせていくというようなイメージを持っていらっしゃると思います。修士課程では,研究論文を書くことが非常に大事な観点だと思うんですね。
 私自身は,アメリカでも大学院に行きましたが,日本の修士課程の修士論文は,課題解決型の取組みとして,非常に良い例だと思います。このようなシステムは,日本における大変特長的なものといえます。その良さというのが,修士課程を修了した学生が何らかの形で課題解決型能力を身に付けることができるという,一番いい例だと思います。
 しかし,リクルートのために,修士論文に対する重きがだんだん薄れてきているところがあるのではないかと思います。博士課程で研究を続ける,あるいは会社に就職したときの,課題解決能力の育成につながっていると思いますので,大学のカリキュラムを就職に合わせるというよりは,現行の修士課程の良さを生かすような形で,全体のカリキュラムをお考えなのかというのが1点です。
 もう1点は,イメージ戦略として,修士課程でできない博士課程の良いところは,国際的なグローバルなことだと思います。イメージ展開で就職のジョブマーケットが,日本国内ではなく,世界にひろがり,Ph.D.を持っているということが,世界の国を相手に就職活動ができるという,その意味合いが日本の博士課程では少ないような気がします。是非そういう観点も入れたイメージ戦略が大事ではないかと思いました。
 以上です。

【川端委員】  

 今の話,前半戦は,そのようなことはまだやっていない,そのレベルになっていない。後ろの方は,是非そういうものも含めて,さっきからお話ししているように,統計量ではなくて,今,議論されている話を彼らに向かって発信すること,それが非常に大切なことだと,そのように思っています。

【有信部会長】  

 では,堀切川委員,どうぞ。

【堀切川委員】  

 平日の朝から非常に面白いお話を伺えて,本当によかったなと思っています。
 取りあえず,数十年前の自分はこの三つのどれにも入らないなと思っていて,百歩譲って,やっぱり,「考えて選ぶ」が半分かなと,いいなと思って,私の場合は,あなたはドクターに残ることになりましたと言われて,修士論文から馬力を出して頑張れと,意思決定された時代を懐かしく思い出しているところでございます。
 格好いいドクターがいれば,その後に修士が続いていけるというのは,そのとおりだと思って,大賛成です。多分,その延長上にあるのは,格好いい教員がいることで,やっぱりドクターはその先を見ますし,と考えると,教授,准教授,助教,みんなが楽しく,面白いぞとやっている姿を見せ続けることかなと。その結果,格好いい修士を見て,学部の学生もまた,修士に行くモチベーションが上がるかなという気がいたしました。
 ちなみに,やっぱりお金かなというのが本音で,DC1を早めに決めるというのが一番,確かにいいんですけれども,ベストは,M1を終わるまでに,希望したやつは全員DC1という,お金さえあれば,これが,大企業に行かせずに優秀な人材を大学院に採る,一番いい方法だなという気はいたしました。
 ちなみに,私のところの例でいくと,格好いい社会人ドクターがいたために,これはドクターに行かずに,社会人になってドクターを取りに来る方がいいというふうに思う学生が,修士の中でちらほらいまして,ただ,それでも,社会人ドクターを取れる可能性がある職種,企業を選ぶという意識で行っている連中が出てきています。
 だから,あと一歩かなという気がしていまして,社会人ドクターが格好いいと,実は,一回は外に出る選択肢も魅力的でいいぞという教育をしているんですけれども,それでも帰ってくればいいかなと思っていますので,本当に参考になりました。ありがとうございます。

【有信部会長】  

 まだまだいろいろ,だんだん時間が詰まってきていますけど,取りあえず,こちら,どうぞ。

【樫見委員】  

 今回の先生のお話は,理工系の分野ということは十分認識しておりますが,私としましては,人文学,社会科学について,少し先生のお考えを伺いたいなと思っております。
 特にこの分野は,いわゆる企業のリクルートとは競合しない分野でありますし,モラトリアム的な学生も,やはりこの分野ですと多いのかなと思っていますので,先生におかれましては,人文学,あるいは社会科学の分野で,何か今回の御報告の中から示唆する点,共通項でありますとか,あるいは,社会科学の方に,この分野はこういうふうな特徴があるんじゃないかというような先生のお考えがもしあれば,お伺いしたいなと思います。
 以上です。

【川端委員】  

 お話ししたいのはやまやまなんですけれども,これをやるに当たっても,その部分についてもいろいろな議論をやったりしたんですけど,要するに,ドクターと企業を結ぶという,人材育成本部の中でも,文系の学生と企業を結ぶだとか,ただ,どうも価値観が大きく同じ方向を向いていない。要するに,理解が全体に及んでいないので,なかなか言いづらいんですけれども,それぞれのドクター自体が思っている価値観,将来像が,一般企業に入って何かしたいというわけでもなくて,もっと違ういろいろな方向性を持っていて,WHOとか国際機関に行って,それはあるんですけれども,そういうものでないところになってくると,だんだん訳が分からなくなっているというのが今の状態で,私の方から,是非,先生の方からも御示唆を頂ければ,また展開したいと思いますので,よろしくお願いします。

【有信部会長】  

 では,どうぞ。

【神成委員】  

 川端先生の御指摘,本当に的を突いていて,特に,真剣に選択しない学生ほど博士に行くというのは全くそのとおりです。真面目にてんびんに掛けると,どうしても企業の方に行ってしまうというのは,客観的に見て決して間違った選択ではないと思うので,割とロマンとか勢いで行ってしまうような学生,おだてれば行ってしまうような学生は,比較的博士に進学しやすいというのは全くそのとおりだと思います。もう一つ,工学系においてポイントがあるとしたら,最初の回のときにもお話しさせていただきましたけれども,日本は、学部,卒論から修士論文までのところで,余りにも研究に根差した教育をし過ぎているのではないかなと私は思います。
 つまり,国際会議に修士課程で発表するという学生の数を,もし統計で取ったら,日本はかなり上の方に行くはずです。問題解決型の修士論文で満足してしまい,国際会議でもすでに発表経験がある。最近は学生支援機構の影響もあって,論文も書くということを,修士課程で1本どころか,2本とか3本書いている学生がたくさんいるというところにおいて,あと3年同じことをするんだよと言ったときには,全く博士課程は魅力的には見えない。
 周りにもっとすばらしい人,いろいろな人がいて,企業で新しい刺激を得られるという環境の方が博士進学を決める時期においてはるかに魅力的に見られるのは当然です。一方で,日本は博士を修了した学生が,例えば電気系において,全ての電気系の学問、技術を全部学んでいるような本当に基礎的な学力を持っているかというと,必ずしもそうではなくて,博士研究に関連した狭いところのとんがったものしか持っていない。本来は、もっと先端科学全体に長けた博士課程修了者を育成するべきでしょう。アメリカ型の修士課程はぎちぎちに教育をして,博士に行ったらやっと研究できるんだよというような形に持っていく。しかし、我々教員から見ると,研究を進めてくれるプレーヤーというか,兵隊さんと言っては怒られちゃいますけれども,働いてもらう人が欲しいので,現状では博士課程学生がいないから,修士の学生を使うということしかできない。結局,研究しろ,研究しろと卒論から一生懸命やるわけですよね。そうしないと,自分が取ってきたプロジェクトの研究が回らないので。
 でも,その結果、それをやり過ぎることによって,逆に,学生は満足してしまって,博士に行って更に研究をやろうという意欲が出てこない。この矛盾が存在するという側面は間違いなくあると思います。難しいんですけれどもどこかでトリガーを掛けて,博士に行ったら本当の研究ができるんだよというような博士課程があこがれの場になるような形に持っていけば,かなり環境は変わるのではないかなと思っております。

【有信部会長】  

 では,佐久間委員,どうぞ。

【佐久間委員】  

 大変参考になるお話で,ありがとうございました。
 先ほど文系の話も出ましたけれども,文系はやっぱり状況が大分違うので,それでも,あえて後期課程へ進学する人もいるので,彼らが何を考えているのか,調べてみたいと思ったということが一つございます。
 もう一つ,きょうのお話との関係では,では,文系の場合,何をしたらいいのかということがあります。やはりそれも大分違ってくるところがあると思うんですけれども,個人的には,今の文系の大学院教育の一つの問題は,教育経験を積む機会がほとんどないというところが問題だと思っていて,それは学生本人にとっても不幸なことなんですけれども,もう少し学生が教育に関われるような仕組みを作れば,それは学生本人のためにもなりますし,先ほど,この対策の中で,ロールモデルの提示,あるいは,格好いい博士と交流というのもありましたが,大学院生が前期課程の学生の教育に関わることで,そういう姿を見せられるということもありますので,そういったことを考えていかなければならないんじゃないかと思ったところでございます。ありがとうございます。

【有信部会長】  

 では,簡単に。

【池尾委員】  

 今,文系の話が出ましたけれども,文系の博士というのは,分野によってかなり違うんですね。ほとんどの分野では,博士課程に行く人間は大学の教師になるわけですけれども,最近は財務とか,実は私は,専門がマーケティングなのですけれども,財務とかマーケティングは,実務が非常に高度化したために,博士課程に行って実務に入るというケースがぼつぼつ出始めているみたいなので,先生のお話のような話は,恐らく文系の一部の分野では非常に効果的なのではないかと思っております。
 以上です。

【小西委員】  

 1点だけお願いがあります。すぐ終わります。
 そのお願いは,今日の趣旨からは少し外れることになります。2ページに国際間の博士号取得者数の比較を示した表があります。そこでは日本だけその数がこの5年間で減少していて,他の国々はすべて増えています。米国やドイツと比べたら博士号取得者数は圧倒的に少ないのが分かります。この国際間比較の深掘りをお願いしたいと思います。
 例えば,キャリアパスに原因があるのか,奨学金に原因があるのか,あるいはカリキュラムに原因があるかで,日本での博士課程進学者が少ないのか,そういった国際間比較を行った上で,進学者の多い国を参考にした改善策を検討するするようにすれば良いと思いました。

【有信部会長】  

 議論が,ある意味で,ここで出された内容について集中してやっていて,ここで考えているのは,最初にモデル化をされたように,3類型にして,これも,最初に説明があったように,学部,修士,ドクターというふうに進学してくる,言わば18歳ベースの人口しか対象にしていないわけです。
 堀切川委員からも指摘があったように,社会人側の話が全くここでは入っていないので,これはまた後で論点として出てきますけれども,それを考えたときに,また違う視点も出てきて,国際間比較をするときは,諸外国は年齢層がもっとブロードなんですね。今ここで議論している対象とはちょっと違う話で,ただ,日本の大学院の博士課程もかなり社会人の数が増えていて,比率で言うと大体4割ぐらいだと言われていますけれども,そこには実は文系の方々もいて,これも本当は詳細に分析をしないといけないんだけど,そういうことを踏まえて,いろいろ議論を今後していければと思いますので,是非,今のような視点も非常に重要だと思いますけど,よろしくお願いします。
 それでは,議論のポイントについて,事務局から説明をしてください。

【平野大学改革推進室長】  

 大学改革推進室長でございます。
 資料2を使って,本日の議題について御説明をさせていただきたいと思うんですが,まず初めに,タブレットの方に入ってございます,参考資料4がございますが,こちらが前回の会議でお示しした,今後の審議事項というものの見取り図になってございます。
 この中で,本日御議論いただくのは,(2)大学院の有する価値及びストックの可視化,(3)博士課程への進学率の減少,修士課程学生減少への対応ということでございますが,資料を作る過程で,内容を大きく変えない範囲で,項目名は多少変えている部分がございます。この全体の像というのをまた見ながら,御議論いただければと思うわけでございます。
 資料2でございますが,今日は大きく二つのパートに分かれてございます。実は,1ページから16ページまでが大学院の有する価値,今日でいいますところの,先ほど申し上げた(2)の部分でございます。17ページからが,優秀な人材の大学院への進学の促進ということで,先ほどの(3)に対応したものになって,二つのパートでございます。それぞれのパートが,大きく1ポツと2ポツに分かれてございまして,1ポツの方が現状の分析が書いてあって,2ポツが今後の論点という流れでございます。
 まず,1ページ目から参らせていただきます。
 大学院の有する価値及び大学院生が身に付けることが期待される能力ということになってございます。この部会で今,御議論いただいているわけでございますが,同時に,将来構想部会というところで,2040年を目指した大学,高等教育のグランドデザインについて議論を行っているわけでございます。
 一つ目の丸でございますが,大学院部会の方で御議論いただいた審議まとめでございますけれども,ここでは,大学院の役割ということでは,大きく,高度な「知のプロフェッショナル」を育成していく,修士,博士を育成していくことが重要とされているわけでございます。
 平成27年以降と,今,3年程度たっているわけでございますけれども,将来構想部会の方で,今の世の中の変化というものについて御議論いただいて,年末にまとめていただいた論点整理につきましては,1ページ目から2ページ目に掛けて点線で囲んであるような分析がされてございます。
 第4次産業革命,Society5.0というものが進展しているということ,グローバル化というものが大きく進展しているということ,この中に様々な事象を盛り込まれているわけでございますけれども,大学院の議論を行うに当たりましても,2ページの丸でございますけれども,大学院段階において期待されるという人材の役割,また,各課程の目的・役割についても,こういった世の中の変化を踏まえて,これまでの議論をレビューしながら考えていく必要があるのではないかということでございます。
 2ページの下の方で,大学院修了者が身に付けるべき能力ということでございます。
 平成17年の答申におきましては,大学院の博士課程,修士課程,専門職学位課程,これは専門職大学院のことでございますけれども,この課程それぞれで育成すべき能力については,2ページ目の点線が囲んである下の方で明確化されているわけでございます。
 3ページへ移っていただきまして,また,平成23年の答申におきましては,博士号取得者がどのような能力を身に付けることが期待されるかということで,点線で囲んでございますが,6点,定義がされているわけでございます。自ら研究課題を発見し設定する力から始まりまして,5の国際性,6倫理観といった形で定義されているわけでございますが,こういった能力について,また,今,申し上げたような社会の変化を踏まえて,改めて社会に示していく必要があるのではないかということでございます。
 3ページ目の真ん中で,大学院における三つの方針の在り方でございます。
 大学院については,これまでも累次,コースワークを通じた体系的な教育課程が重要ということが述べられているわけでございます。平成27年の審議まとめにおいても,三つのポリシー,「学位授与の方針」,「教育課程編成・実施の方針」,「入学者受入れの方針」を一体的に策定し,示すことが求められるということになっているわけでございますが,法令的に申し上げますと,義務化がされているのが,いわゆる「入学者受入れの方針」,アドミッション・ポリシーでありまして,残りの二つのいわゆるディプロマ・ポリシーとカリキュラム・ポリシーについては義務化がされていない,公表が義務化されていない,このような現状にあるわけでございます。
 3ページの下の方,大学院における定員の在り方でございます。
 大学院については,将来構想部会の方の論点整理で,これは大学全体として議論がされている中で,将来の人材需要というものが次々変わり得る中で,予測が困難な中であっても変化に柔軟に,迅速に対応できるような教育研究体制というものを構築していくことが必要とされているわけでありまして,大学院についても,このような視点というものはおおむね当てはまるものと考えているわけでございますが,一番下の丸にございますように,大学院においては,定員が充足していない専攻が常態化しているケースが見られるわけであります。
 これは,学問分野の継承という観点から設定されているようなごく小規模の専攻,数年に一度しか人が入ってこないようなところも,場合によってはあるかもしれませんけれども,こういったやむを得ない,ある程度,ケースというのはあるのかなと思う一方で,比較的規模の大きい専攻においても未充足が発生しているケースがあるわけでありますし,また一方で,定員超過が一定以上見られるというケースもあるわけであります。大学院が社会のニーズに対応して柔軟な教育研究体制を確立するという観点からは,やはり各大学の方で,比較的規模の大きい専攻の在り方といったものも含めまして,リソースをニーズに応じて配分することが必要ではないかということでございます。
 また,このような定員規模の最適化が図られた上では,更に柔軟な定員管理の在り方というのを考える余地もあるのではないかということでございます。
 きょう,実は資料で8ページ以降,16ページに至るまで,これまでの議論の整理とか参考データを載せさせていただいてございます。その中で15ページ,16ページに,こちらの方で分析をしてみたグラフがございます。これについて簡単に御説明をさせていただきます。
 1枚目が,15ページの方でございますが,修士,博士について,上段は修士,下段は博士に関しまして,充足率が75%未満の専攻の割合を上げたものでございます。オレンジが国立,青が公立,緑が私立でございますけれども,下の入学定員に応じて見ていただきますと,特に博士の方でございますが,右側で見ると50%の専攻が,定員充足率75%未満というのが多いわけでございますが,例えば右側の方に行っていただきますと,25,26人とか,30人とか,そういうところを超えたところでも未充足が発生している。こういった状態をどう考えるのか。
 一方で,16ページを見ていただきますと,充足率107%を超えている専攻の割合ということでございます。博士につきましても,7%を超えて増加が出ているという割合の専攻というのがありまして,これは専攻の数が少ないということももちろんあるわけでございますけれども,例えば一番下,博士の101人の定員を超えているような専攻では,70%を超える専攻というのが,充足率107%を超えているといった状況になるわけでございます。このようなことも含めて,御議論を頂くということになるかと思います。
 4ページの方へ戻っていただきまして,留意点ということでございます。
 留意点といたしましては,今,将来構想部会の下に設けられた制度・教育改革ワーキングにおきましては,学問の進展,社会の変化に対応した,また,学生本位の視点に立った学修を実現していくという観点から,いわゆる学部横断的な教育というものに積極的に取り組みできるように,複数の学部等を設置する大学が「学部等の組織の枠を超えた学位プログラム」を,また,これまでの学部とか学部に類する組織とは違った新しい類型として設置できるようにするということが検討されてございます。大学院においても,研究科横断的なこのような新しい類型を設定していくことが見込まれるわけでございまして,このようなことも今後の議論に当たっては留意する必要があるということでございます。
 学位プログラムに関する現在の状況に関しましては,12ページから14ページに掛けまして資料を,将来構想部会の論点整理を抜粋させていただいておりますので,適宜御参照くださればと思います。
 また,4ページの次の丸でございますが,これまで行ってきた様々な施策という部分,また,大学院改革,大学院で整理されたインフラといったものについては,これまでの成果を「ストック」として捉えて,今後,これを有効活用する観点からしっかり検証して,使いやすい情報として提供することが重要であるということでございます。
 ここから先が,論点ということでございます。4ページの下でございます。
 大学院の機能と三つの方針ということで,平成17年の答申で,大学院の人材養成機能につきましては,大きく四つに分類がされているわけでございます。「創造性豊かな」から始まった研究者等の養成,高度な専門的知識・能力を持つ高度専門職業人の養成,大学教員の養成,知識基盤社会を多様に支える高度で知的な素養のある人材の養成。
 このような四つの人材養成機能というものを過去,定義をしたわけでございますけれども,これが現在,各大学において十分達成されているのかどうかということについては,やはり御議論が必要なのかなと思ってございます。
 5ページの方へ移っていただきまして,1番丸でございます。例えば,この四つの人材養成機能というものが提示はされているわけでございますけれども,各大学院が自分の強みや特色を踏まえて,この四つの機能をしっかり選択して,比重を置いて教育研究を展開しているのかどうか,これは必ずしもそうとは言えないのではないかという指摘もございます。これから,平成17年からの変化というものを考えますと,大学院が選択する機能と比重の置き方については,改めてしっかり見直していただく。その上で,自らの強みや独自性をしっかりと分かりやすく示していくことが必要ではないかということでございます。
 これに関係いたしまして,三つの方針につきましても,これまで法令上義務付けていなかったわけでございますけれども,上記の,先ほど申し上げた四つの人材養成機能も踏まえながら,このタイミングでどこに比重を置くのかということも含めて,しっかりと検討,構想していただいて,その結果に応じて,ディプロマ・ポリシー,「学位授与の方針」から,いわゆるカリキュラム・ポリシー,アドミッション・ポリシーにしっかりつなげていくことが必要ではないかということでございますし,また,各大学院において,この四つの比重の置き方を検討した上で,高度専門職業人養成というものについて,ディプロマ・ポリシーに掲げていくということであれば,これは場合によっては,専門職大学院への転換というものも,教育の在り方として検討していくことを積極的に行ってもいいのではないかということでございます。
 また,次の上から四つ目の丸でございますが,大学院においては,教員養成という機能がもちろん,定義がされているわけでございますけれども,博士課程を念頭にということでございますが,修了後直ちに教員にならないという場合であっても,将来的には自らの知識や技術を他者に教授する。また,実務家教員というものも,これから大学,学部の方も含めて入ってくるという状況を考えますと,各大学は,やはり大学院生全体を対象とした,いわゆるプレFDというものを推進することが必要ではないか。特に博士課程ということでございますが,こういったプレFDの実施や情報提供に是非努めていただきたい,こういうことについては法的に位置付けることも考えていくべきではないかという論点でございます。
 下から二つ目の丸については,大学院が三つの方針というものを踏まえて,自己点検や外部評価を通じて,しっかり継続的に教育研究組織や教育体系を改善していただく,大学全体として自ら学位の質を担保する,内部質保証が機能しているような仕組みというものを言い続けていくことが必要なわけであります。
 この三つの方針につきましては,対外的に公表されるものでもありますし,学習者の目線,社会の目線からしても,しっかりと定義して示していくことが必要ではないかということでございます。
 6ページでございます。盛りだくさんで済みません。早口で大変恐縮でございます。
 大学院修了者が身に付けるべき能力というのは,先ほど御説明したように,課程の在り方,また,能力については,平成23年答申で示されているわけでございますが,まず,平成17年答申における博士課程,修士課程,専門職大学院の課程の記述は現在でも妥当であると考えられると思っているわけでございますけれども,ここについてはどうであるか。
 二つ目の丸でございますが,詳細は今後議論ということになるんだと思いますけれども,本日に限らずということでございますけれども,修士課程や専門職大学院の課程については,マルチステージといいますか,人生100年時代という中において,社会人が知識を経済社会の進展に合わせて常にブラッシュアップするという観点からは,社会的な位置付けというものも欠くべからざるものであるということをしっかり位置付けていく必要があるということでありますし,また,修士の議論をするに当たっても,いわゆる正規の教育課程と成果というところのみならず,モジュール化された特別の課程,履修証明書(サーティフィケート)が出るような課程,こういったような在り方も含めて考えていく必要があるのではないかということでございます。
 下から二つ目の丸でございますが,23年答申では,先ほど御説明いたしましたように,六つの能力というものが示されていて,これは現在においても妥当かということでありますが,一番下の丸でございますけれども,これから先の変化というものを捉えますと,博士課程をはじめとする大学院全体に必要とされるのは,グローバル化に対応したコミュニケーション能力に加えて,データを分析し,正しく解釈できる能力とか,社会的・市場的な価値を判断できる能力であるとか,このようなスキルが求められるということになるのではないかということでありますし,また,これから社会で,様々な大学以外のセクターで活躍するというところも視野に入れますと,ある特定の知識について,その知識がどういった淵源をたどってここにやってきているのか,また,全体の知識体系の中でどのような位置を占めているのかといったようなことを含めまして,各分野に流通している「最先端の知」にアクセスできる能力という部分をしっかりと打ち出して,押し出していくことが必要ではないかということでございます。
 7ページの一番上の丸でございますが,これは相当長期的な議論が必要なところとお断り申し上げた上で,論点として提示をさせていただきますが,専門職大学院制度が発足してから十数年以上になるという中で,先ほどの大学院の人材養成の四つの機能を併せて考えますと,博士後期課程レベルで高度職業人の養成というものをどのように考えていくのかということ,それは,従来の博士後期課程の中でどのように差別化するのかとか,あるいは,更に発展して,学位の在り方も含めて考えていくということが考えられるのか,また,区分制の博士前期課程と修士課程の差別化,これはまた後日,別の回で,修士と博士の教育の充実という議論はさせていただくわけでありますけれども,このようなことについても御議論があると思います。これは相当長い期間を掛けた,必要な部分かと存じてございます。
 最後が,定員の在り方でございます。
 先ほど,三つの方針の策定を法的に,しっかり義務的に位置付けていくべきではないかというお話を申し上げましたけれども,三つのポリシーが明らかになることによって,その専攻なり研究科なりがどのようなビジョンを持っているのかということが明らかになった暁には,それに応じて,最適な定員はどのようなものなのかとか,このようなことも含めてしっかり考えていただく必要がある。その上で,社会的な需要がある専攻で定員が少ないとか,若しくは,学問分野の継承という観点から必要として置かれている専攻である一方で,定員が普段充足していない,定員が多いといった場合には,学内でしっかりと組織の在り方を見直すということを促していくことが必要なのではないかと思ってございます。
 一番下の丸でございますが,将来このような定員の再設定が進んだ暁には,内部質保証が機能している場合に,必要な研究指導教員がしっかり確保できているという前提でありますけれども,研究科において専攻単位で定員を設定するということではなくて,全体で自由化,研究科単位で定員を捉まえるなどの柔軟化も考えていく必要があるのではないかという論点でございます。
 後半でございますが,17ページからでございます。
 優秀な人材の大学院の進学促進,ここの部分につきましては,先ほどの川端委員からの発表に大きくよっている部分があるわけでございますけれども,Society5.0の時代に対応した高度な人材を育成するという観点から,大学院,博士後期課程を志望する優秀な学生を増やすということが必要でありますが,現状は皆様御承知のとおりでございます。
 これまでも,経済的な支援とかキャリアパスの拡大というものを行ってきたわけでございますが,しっかり入学者選抜とか適切な水準の選抜性が確保されるということは前提でございますけれども,志願者に対する情報発信,リクルーティングの改善が必要ではないかということでございます。
 17ページの真ん中辺り,入学者選抜の改善ということでございます。
 入学者選抜につきましては,平成17年来,アドミッション・ポリシーに従った入学者選抜を行えるように,しっかり工夫する必要があるのではないかということになっているわけでございます。
 一方で,学士課程のところにおいては,いろいろな特色ある入学者選抜,大学の講義を受けてもらってからレポートを提出したり,グループ討論を通じるとか,いろいろなやり方が出てきているわけでございます。
 一方で,大学院の方も,リーディング大学院のプログラム選抜の課程においては,企業人が参加する数日間のセミナーを活用した選抜のような形も出てきているわけであります。入学者受入れ方針に従った大学院入試改革が必要ではないかという現状認識でございます。
 17ページから下の部分は,情報発信・リクルーティング,先ほどの委員の説明と大きく重複する部分がありますので,詳細な説明は省略させていただきますが,大学が組織として十分な意識を有しているとは言い難い状況にあるのではないかということでございます。
 18ページ,経済的支援でございます。
 経済的支援につきましては,27年の審議まとめにおいて,大きな方向をお示しいただいているわけでございます。
 実際に学生のアンケートを取りますと,下から二つ目の丸でありますが,進学を考えるための重要な条件としては,キャリアパスの拡大と並んで経済的支援の拡充が挙げられております。
 一番下の丸でございますが,国としても,様々な手法を通じた支援を行ってきたわけでございますけれども,大学独自の取組についてもかなり進んできている状態でありまして,TA・RAに対する給付型の支援とか,企業からの寄附金を活用した奨学金,学内ワークスタディーといったような取組が進んでいるという現状でございます。
 最後,19ページからが論点でございます。
 入学者選抜の改善ということでございますが,今まではアドミッション・ポリシーだけが単独で,法的には策定されているということになっているわけでございますが,今回,先ほど論点として提示させていただいたように,ディプロマ・ポリシーというものがまた位置付けられてくれば,それに合わせて,どのような人材を育成するか,そのためにはどのような人材を受け入れる必要があるかということで連動してくる,三つのポリシーを一体的に策定されるというものでございますので,「学位授与の方針」,ディプロマ・ポリシーの策定・見直しに合わせて,しっかりアドミッション・ポリシーも,もう一回考えていただく必要があるのではないか。その上で,入学者選抜についても,見直されたアドミッション・ポリシーに対して,適切なものになっているかどうかを見ていただく必要があるんだろう。
 文部科学省としては,実は,きょうのタブレットの方の参考資料8に,大学院入学者選抜実施要項が付いてございます。これは2枚物になってございますけれども,こういった中身に,先ほど申し上げたような考え方を盛り込んでいくことによって,大学の入学者選抜というものの在り方を,大学院について見直していただく契機とできるのではないかと思ってございます。
 19ページの中ほど,情報発信・リクルーティングの部分については,先ほど御提案があったものにほぼ類する内容でございます。
 「アカデミアリクルート」という観点で,組織的にしっかり情報発信を行っていくこと。
 文部科学省の施策についても,学生の意思決定を踏まえた制度設計とすべきであるということ。
 また,最後の部分は,具体的なロールモデルの提供が必要ではないかということ。その際には,単なる研究者とか大企業ということにとどまらず,イノベーションを支える中小企業や新たな価値の創出に携わるベンチャーといったものも含めて提示していくという,幅広い出し方が必要ではないかと思ってございます。
 19ページの経済的支援でございます。
 下から三つ目の丸につきましては,国費の充実というか,閣議決定の中で,2割程度が生活費相当を受給できることを目指すというところに留意しながら,引き続き支援を行っていくことだけではなく,国費に頼らない部分の経済的支援の充実の方策も考えていくべきではないかということでありますし,下から二つ目は,大学全体の経営という中で,大学の財政基盤の確保という取組とあいまって,大学院の支援にそれを充てている優良な事例の周知も行っていく必要があるだろうということでございます。
 一番下につきましては,過去の取りまとめ答申でも触れられているところでございますが,経済的支援というものを,いろいろなところでいろいろなことが行われているわけでありますが,これが全体としてどうなっているのか,自分はどういったものがアクセスできるのかということが明示的に示されていないと言われてございます。これを,「ファイナンシャル・プラン」,大学院在学を通じてどのような学生納付金等が必要か,就学上の支援等が受けられる見込みなのかということをしっかり必要な方に届くように努めていただきたいということを,法令上位置付けることも考えたらいいのではないかということでございます。
 最後の20ページでございます。これは,大学の取組というものは,もちろん極めて重要なわけでありますけれども,産業界におかれましても,奨学金や産学共同研究の充実といったものを通じて大学院の人材育成に協力をする,また,博士号取得者を積極的に評価して採用していくことが必要ではないかということでありますし,また,これは学生の就職後のキャリアパスの充実を図るという観点も含めてでございますけれども,大学院生の採用や処遇について優れた取組を行っている企業等の取組を発掘していく,そしてこれを顕彰していく,このような形で,企業側の部分についても意識を変えて,社会的に評価されるような取組を進めていくことはできないのであろうか,このような論点を提示させていただいてございます。
 長い説明になりましたけれども,以上でございます。ありがとうございました。

【有信部会長】  

 この論点で,全体に課題と思われるようなことを整理していただいているので,これを一気に全部,きょう議論することはできないと思いますので,個別にということだけれども,きょうはスタートラインとして,全体をレビューしながら,いろいろ御意見を伺えればと思います。その上で,具体的に絞っていかなければいけない。
 問題は極めて深刻でありまして,今,川端委員からいろいろ説明があったような具体的な現象の大本をたどっていくと,ここに書かれてあるような様々な問題があるわけで,もともと学部の上に大学院が形成されていて,その中で,それぞれの定員がきちんと管理をされてきたという中で,大学院重点化の流れの中で,独立研究科のようなものの自由度が多少できたとはいえ,相変わらず学部・大学院という定員管理は続いてきている。
 その中で,一方で,学位プログラムという形で,世の中の要求に合わせたような新しい学問分野を拓くようなプログラムを作るべきだという答申が出ながら,一方で,定員管理はきちんとやるということの中で,それが進んでいない。これをどういうふうにしていきますかということと,これが大学院になったときに,本当に大学院というレベルで,どういう形で学位プログラムのようなものを作っていけるかという議論と,それから,従来の定員管理の話,あるいは,大学院に進学する学生を,はっきり言って,個別に言うと,学生の自由,希望をみんな無視して,学生を配っているというようなところもいまだにあるわけですよね。だから,そういうことも含めて,実はかなり深刻な問題があるというふうに思っています。
 それと,単純に世の中の要望に応じた学位プログラムだけで,全て大学がカバーされればいいのかという問題も実はあって,それは学部段階で,言わば基本的な学問をどれだけきちんと教えなければいけないかという話と,それから,世の中が要求しているような,例えば,Society5.0だとか,データサイエンスだとか,こういう重要性がいつまで続くかという問題もあって,本来の大学の教育というのは,基本的に,様々な変化にフレキシブルに対応できるような人材を,特に博士課程の修了者は身に付けてもらわなきゃいけない。
 かなり遠大な話になってくるわけで,そういうことを皆さんそれぞれ,いろいろなポイントで問題意識を持っておられると思いますので,議論いただいて,個別に解決すべき問題としてフォーカシングしていければと思いますので,どうぞ,どなたからでも自由に。
 では,川嶋委員からどうぞ。

【川嶋委員】  

 今,部会長がおっしゃったように,課題は非常に多岐にわたると思います。ミクロなレベルから政策レベルまで,いろいろ論点はあると思うんですが,2点,お話しさせていただきます。
 1点目は,先ほどの川端委員の御報告は,いかに優秀な学生を博士課程にリクルートするかというお話でしたけれども,更にその先は,先ほども出ておりましたが,結局,いかに優秀な大学教員をこれから安定的に確保していくかだと思います。それは研究水準の向上という観点からのみではなく,研究そのものもそうですし,将来の研究者,研究後継者の養成という点からも,いかに優秀な大学教員を確保していくかは、きわめて重要だと思います。
 それは結局,国の活力にもつながってくるわけですが,そうした場合,今の議論は,博士課程のリクルートを問題にしているわけですが,現在,日本の大学に在学している学生の中から,優秀な学生を博士へというお話にどうしてもなっているのですが,優秀な大学教員の確保という観点からすれば,そして優秀な大学院生の確保の観点からも、国籍とか,どこで学んだかというのは全く関係ない。それから,堀切川委員の御指摘もあったように,ストレートドクターか,社会人ドクターかも関係ないんです。ですから,やはり日本の大学自体がもう少し多様性という観点から,今の仕組みというものを抜本的に見直す必要があるだろうということです。
 いずれにしても,結局,優秀な大学教員,優秀な博士学生を確保するためには,モデルとなるような大学教員,モデルとなるような博士学生も必要ですけれども,やはり日本の大学自体が魅力的な場所にならなければいけないということだと思います。
 二つ目が,それに関わって,いろいろなプロジェクトといいますか,大学院政策をこれまで実施してきたわけです。今年からまた卓越大学院のプロジェクトが始まるんですが,7年たったところで,全て自前の予算で継続するという仕組みになった結果,大規模な総合大学でも,結局,将来的に外部資金が安定的に確保できるような研究科しか,この仕組みの中では,なかなか怖くて手を挙げられないという状況があります。
 結果として,それは選択と集中ということにつながるかもしれませんけれども,あるいは,先ほども少し触れられていましたけれども,大学の経営判断であり、大学執行部の最終責任ということになるのかもしれませんけれども,日本の現在の経済社会環境を考えると,外部資金を潤沢にこれからも確保できるような分野は本当に限られているんですね,特に総合大学でもそうなんです。
 そういう中で,今,部会長もお話しされましたけれども,必ずしも社会のニーズだけで大学院教育を変えてはいけないという分野もあるというところがあります。国立大学は,自己資金を増やせといっても,授業料の上限の縛りがある上に、値上げ分の運営費交付金が減額されるので,なかなか授業料値上げもできないというようなこともあります。このように、いろいろな制約条件がある中で,その際,高等教育に対する国からの補助の考え方ですけれども,一つの考え方としては,今,平野室長から御説明があったように,例えば,定員管理の自由化とか,学位プログラム化という様々な制度改革によってある程度自由な裁量権を大学に与えた上で,リーディング大学院とか卓越大学院のように,機関に対して国から補助金を与えるのではなくて,学生個人に補助金を与えるほうが、大学院の改革には有効なのではないかと思います。
 先ほど,一つの例として堀切川委員から,M1の時点でドクターへ行く学生には奨学金を約束してはどうかというようなお話がありましたけれども,大学の仕組みがかなり自由化されて,なおかつ,学生個人に国からの援助が与えられる,それも,早期に大学院へ行くという希望を持っている学生には,もう予約をしてしまうというような仕組みにすれば,大学にとっても,学生にとっても,それから,大学自体の魅力向上にもつながるのではないかと川端委員の御報告も含めて拝聴する中で思い至りました。
 以上です。

【有信部会長】  

 それでは,宮浦委員,どうぞ。

【宮浦委員】  

 論点整理,ありがとうございます。また,川端委員からも非常に貴重な御発表を頂きまして,感謝申し上げます。
 博士後期課程の問題ですけれども,問題点は比較的クリアでありまして,課題は2点であろうと思います。
 一つは,キャリアパスの問題。大学に残りたくても,若手教員のポストが足りなくて,しかも任期が入っている。もう怖くて大学に残れない。産業界に入る場合も,修士課程とわずか3年の給与の差が乗る程度で,PhDを持っていることによる何か経済的な大きなメリットを産業界が付加してくれるわけではないという,キャリアパスの問題があろうかと思います。
 もう一つの最大の問題は経済的問題で,修士課程を出た学生は,次の4月から給与をもらっているのに,博士課程に進学すると,いまだに学費を払わなくてはいけない。
 その大きな二つの論点を考えますと,修士,博士前期2年,博士後期3年で真っすぐ行く,それから就職という,日本独特の下から上がってくる真っすぐなケースというのを,少し柔軟化しないと,にっちもさっちもいかない部分があろうかと考えています。
 先ほど,社会人ドクターが4割になっているということがございましたけれども,やはり一回社会人を経験した方はぴかぴか光って見える。それを若い学生が見ると,あのパターンがいいと考えるのは,ある程度もっともな選択ではないかということもありますので,例えばですけれども,修士課程を出てから海外で1年間,いろいろな活動をしてから,思い直してPh.D.コースに入るかもしれないし,あるいは,博士後期課程に入って1,2年,研究したけれども,産業界に早めに入りたい学生も出てくるであろうということを考えますと,2プラス3から就職というのを少し柔軟に考えて,博士後期課程,1,2年研究してから産業界に移動して,産業界に移動しながら,給料を取りながら,博士後期課程に籍も置いて,更に2,3年掛けながらPh.D.を取ってもいいですとか。
 その辺りを産業界の方とうまく意見調整をしながら,そういう新しい仕組みというか,そういうものを作っていくことによって,より優秀な学生が,一旦博士後期に入って,そのまま3年やって大学に残るか,2年やってから,論文1本の状態で一回産業界に入ってから,もう一回,PhDをプラス2年掛けて取るかを,後で選択できるというような柔軟性のある大学院のシステムといいますか,やればできると思うんですけれども,そういう形も考えていくべきではないかと考えております。
 以上です。

【有信部会長】  

 ありがとうございました。確かにそういうことも考えるべきだと思いますね。
 永里委員,どうぞ。

【永里委員】  

 非常に多岐にわたるお話,どうもありがとうございます。
 したがって,私,産業界の立場から,きょうは4点に絞って,お話ししたいと思います。
 伝統や文化というのは簡単には変えられないんですが,それは政策や制度で補えるし,変えられるということです。博士号取得者は,例えば,専門性にこだわり柔軟性に欠けるという,これまでの企業の既成概念がありますが,こういうのは封じまして,企業は積極的に博士を採用し,厚遇すべきなんですね。これをやらないと,ぐるぐる回らないんです。
 そのためには,2番目ですが,大学はビジョンを掲げて,使命感を持って,その大学が得意な重点分野を絞り,その分野での覇者を目指してほしいと思うんですね。良き博士人材が育成され,企業も採用することになると思うんです。
 3番目に,大学に対しても,人材の多様性,それから,流動性を求めたいと思うんです。それによって,イノベーションを生むようなことになりますし,それを加速させてほしいんです。特に,技術系といえどもリベラルアーツ等を教えてほしいと思います。そういうことで,産業界向けの優秀な博士人材が輩出してくるんじゃないかと思います。
 4番目に,大学経営について申し上げます。上流のない下流というのはないんですね。出口が潤うのは上流があるから,大学は出口の応用研究で企業から共同研究費用を集めて,一部を上流の基礎研究に資金を回そうではありませんか。
 日本の共同研究というのは,1件当たり240万円ぐらいなんです,企業が出しているのは。ところが,日本の企業で外国の大学に出しているのは桁が違うんです。これのずっと上です。ということを考えますと,アメリカのMITは外部資金を,例えばの話,大きく獲得し,その中から基礎研究,リベラルアーツ,教育に資金を回しています。MITは科学技術だけでなく,その他の分野も卓越しています。
 したがって,日本の大学の経営改革が求められます。その大学は何に強みを持っているのか,見える化を図って,良き研究者を集めるとともに,先ほどお話もありましたけれども,大学のマーケティング力が非常に重要になると思います。
 以上です。

【有信部会長】  

 ありがとうございました。
 そういう意味では,産業サイドもいろいろ変わっていかなきゃいけないし,大学も,従来のパターンのとおりでやっていては困るという話と,それから,実際に世の中そのものがかなり変わっていると思うんですよね。ですから,特に大学の先生方も,既成観念をそのままいつまでも大事に持っているのではなくて,もう少し現実を見ていただければ,例えば日本の社会も,永里さんを代表とするような,いわゆる大企業中心の社会から,どちらかというと,結構元気な中小企業が一杯出てきていて,それを見ていると,人材が流動している中小企業ほど,実は活気があって,なおかつ業績もいい。個人個人が得ている収入は,恐らくそういう中小企業の方が,ある段階で見れば,きっと高い給与を得ていると思うんですね。ただ,生涯給与を計算するとどうなるか分かりませんが。
 ただし,そこで動いている人たちは,実際にはまた大学院に行って学位を取ったりとか,そういう流れをしているわけで,自分に必要だと思えば,必要な教育を受けながら学位を受けている,こういう流れが結構,出来始めてきているような気がします。
 その辺も実際にはもう少し,データを見ながら,現状を踏まえた議論になっていければと思っています。
 どうぞ,迫田さん。

【迫田委員】  

 今の,我々日立の例が余り一般的ではないかもしれないんですけど,一応,ファクトとして知っておいていただきたいのは,私どもは新入社員600人のうち,7割はマスター以上です。技術系で言うと8割超えていると思いますし,ドクターも30名ぐらいは毎年採っています。特に卓越大学院で言うと,文理融合とかそういう分野の人たちはむしろ積極的に採りたいと思っていまして,KPIで何人採れたかというのを毎年の目標にしてやっているぐらいなので,市場価値のある方であれば,企業は当然採ります。我々は日本の中だけで戦っているわけじゃないので,世界で勝つためには優秀な人材が絶対必要ですので,それは採りに行きます。
 ただし,そこは日本とは限らないので,例えばインドの大学へも我々行きますし,MITにも行きますしということですので,そういう方をまず作っていくということが大事で,そこに対して,やっぱり社会も,企業ももちろんなんですけど,ちゃんとお金を掛けていくということだと思いますので,そういう動きになっているということは是非御理解いただきたいなと思います。
 それから,今年の新入社員600名入ってきたんですけど,新卒が600名なんですが,一方で,経験者が300名ですから,今,3分の1は経験者になっている。私どものような非常に古い大企業においてもそんなふうになっているので,そこも随分変わってきているんじゃないかなと。なので,昔のままのイメージで考えていくと,ちょっと間違っちゃうんじゃないかなという気がしましたので,申し上げました。

【有信部会長】  

 正しくそういうことで,大企業でもこういう会社はきっと活気があって,どんどん伸びていくんだろうと思いますけど,実際にはかなり変わってきているということを前提に,要は,エビデンスベーストといいますけど,そのエビデンスが過去の既成観念だけではもう判断し切れないということを,是非,御理解いただければと思います。
 どうぞ。

【大島委員】  

 簡単な質問で恐縮ですが,定員充足率の定義について教えてください。研究科で整理させていただいたときに,社会人の大学院生は,この定員充足率に入っていなかったように思います。現在,外国人の特別選考など,様々な選考を大学で行っています。社会人や外国人など様々な入試を行なっているため、この充足率の定義について教えていただけましたら幸いです。

【平野大学改革推進室長】  

 調査時点は5月1日ということですので,いわゆる直接入ってきた人とか,秋入学とかは考慮できていない部分はあるかもしれませんけれども,ただ,学生の概念としては,社会人だろうと留学生だろうと,それは在学している学生という1点だけでございますので,そこは,よく外国人が入っていないのかとか社会人はという話がありますけれども,そういうことはございません。

【有信部会長】  

 だから,これは大学が勘違いしている可能性があるんですよ。

【大島委員】  

 なるほど,そういうことですね。ただ,最近,秋入学で,特に博士課程では社会人ドクターの方など,9月,10月入学も増えてきています。そういう方々は,この中には反映されていないということでしょうか。

【有信部会長】  

 多分,文科省が数えているわけじゃなくて,大学に問い合わせをして,大学が答えているので,大学が勝手に勘違いをして,数に入れていないという可能性があるので,こういう場合は全部カウントして,入れてしまえばいいんですよ。

【大島委員】  

 そうですか。それでしたら,そういう勘違いがあるようであれば,きちんと御指導いただいた方がいいのではないかと思います。
 済みませんでした。ありがとうございます。

【有信部会長】  

 では,井上委員,何かありますか。

【井上委員】  

 川端先生の御発表,ありがとうございました。それから,多くの先生方の意見も,私も賛同いたします。
 キャリアパス大学院の博士課程の学生の充足率と言おうか,優秀な学生をよりドクターに行かせるためにというのは一度,意見を短く述べたことがあるんですけれども,具体的にもう少し加えて発言させていただきたいと思います。
 実際に,本当に研究が好きな学生で,マスターからドクターに行きたいと思っている学生はかなりいるということは,私も実感しておりました。それで,社会人博士というのが現在あって,それなりにうまくいっていると思っております。
 私も社会人博士を何人か育ててきていますし,逆に今度,「博士社会人」というのを,もう少し制度としてきちんと国として考えていただけたら,優秀な学生が,すなわちマスターコースを出る時点で,企業なり,役所も含めて考えていただいたらいいと思うんですけれども,3年後の内定を取っておく。社会人博士の場合は,どちらかというと社会人の立場にウエートがあって,ドクターコースとして週末に学校に来て,実験したり,あるいは,メール等の指導を受けているというのが現状だと思います。
 逆に,博士社会人,すなわち,ドクターコースに籍を置いて,3年後のキャリアパスが内定という意味ですね。テニュアトラックみたいな意味なんですけれども,その場合には,大学の博士課程での研究にウエートを置いていて,それで各企業なり役所でも,その働きにおいて年間の給与を支払う。年間あるいは月給みたいな形で支払うというような,それは1年間の授業料の五十何万円とか,その程度でもいいと思うんです。
 そうすると,キャリアパスへの不安とか,それから,いわゆる経済的な不安,そういう中で,一番大きいのはやはり経済的というよりも,キャリアパス,将来ドクターを取った後に,どう自分が進んでいくかというのが決まっていないというのは,口で言い表せないぐらいの不安があると思うんです。そういうのを,例えば文科省の事業として,「博士社会人の制度」,事業を作って,それで,大学や企業,あるいは役所でも,コラボして,その事業がうまくいくかどうかというのを数年間,進めていただいて,検討して,もしうまくいけば,本当にそれがいろいろな大学や企業で波及していくようになればいいと思います。
 そういう学生たちを後輩から見ていると,先輩のドクターの学生に対して,就職内定している人たちというのはきらきらして格好いいなと思うのは当たり前のことだと思います。そういう制度づくりというのはそんなに無理なことではないと思っていますので,是非,小さい規模でもいいので,事業化というのを考えていただけないか。そのような意味で,良い意味でのエリートコースを作っていくというようなイメージで考える。
 もし,どちらか(博士または社会人として)うまくいかなければ,その学生がドクターを辞めるなり,企業に行くのを辞めるなりというのは途中で決めてもいいわけで,途中で中退した学生には援助を止めるということもできます。いわゆる企業へ就職活動をする段階で,「博士社会人」を希望するというようなコースをクリックできるようにしておく。そういう枠で「数人ぐらい採ります」として,途中で気が変わって,その学生が就職してもいいわけで,そういう特別な枠というのを,就職する際にエントリーシートに加えていただくというようなことも考えられるんじゃないのかなと思います。
 そうすると,本当に研究に興味のある学生というのは,これは面白いんじゃないかということで、この採用枠での応募をかなり真剣に考えてもらえるのではないか。優秀な学生は当然,企業は3年たっても確保しておきたいわけで,両立がきつかったら途中で辞めればいいと思っています。
 以上です。

【有信部会長】  

 その話は実はもう,産業サイドと大学サイドで,これも大企業がメーンだったんですけど,議論して,話はそんなに簡単ではなくて,企業サイドで予約採用のような形をするとしたときに,今度は企業側で,そういう特別扱いをするような身分制度が,人事制度の中にうまく組み込めるかどうかというような,難しい問題もあるので,いろいろ検討してもらって,これは多分,文科省のどこかの文書にも書き込んでもらったような気もするんですけど。
 もともと有川先生が非常に熱心に主張しておられて,その検討をやって,最終的な結論は,これも日立さんぐらいのフレキシビリティーがあるところだと,テニュアトラック的な制度としてなら人事制度の中に組み込めるかもしれないというところまで来たので,それを今後検討しましょうというところでそのまま来ている。今,井上先生が言われたように,何らかのイニシアチブとして,そんなにこれは金が掛からないんだから,少しやってもらいたい。一応,その結果も文科省サイドにはインフォームはしてあるんですけどね。それを具体化していくという手はあるかもしれないですね。

【池尾委員】  

 先ほどありました社会人博士の話なんですけれども,実は私も社会人博士を抱えているんですけれども,その中には,学者にやがてなりたいという人間と,それから,コンサルティング会社にいて,キャリアをもっとアップしたい。指導していると明らかに指導の仕方が違うんですよね,必要とされる。
 ですので,この中に,博士課程や修士課程,専門職学位課程というのが目的みたいなのがあるんですけれども,今後,専門職大学院の中で博士課程ができると,また話は変わってくるんでしょうけれども,先ほどのお話と関連するんですが,文系であっても,社会人博士が増えてくると,博士課程の目的みたいなものをもうちょっと検討していただく必要があるのではないかと感じております。
 やっぱり文系の場合は,論文を書くテクニックみたいなものが非常に重要ですけれども,実務の世界で生きている人間にとっては,論文のテクニックなんか,はっきり言うと,どうでもいいわけですね。むしろテクニックそのもの,知識そのものを身に付けたいわけで,その辺りを是非御検討いただければと思います。

【有信部会長】  

 人文社会系は少し,じっくり検討しないといけないと思っています。
 樫見先生,何か。

【樫見委員】  

 論点の中に書いてあることなんですが,いろいろお聞きしておりますと,やはり企業でありますとか,社会における人材のニーズの変遷といいますか,未来を見据えてという点でいいますと,それに対応して,大学が人材養成を考える対応時間というか,それが遅いわけです。その点はどこにあるのかというと,今回の論点のところにもございましたけれども,やはり大学院における研究科の体制を変えるということについて,かなり時間が掛かる。一つの専攻があると,それを別の専攻に変える,それから当然,必要なところに必要な入学定員を置くという定員管理の問題,これもなかなか変えるには数年掛かるというので,この点は指摘があったかと思いますけれども,もう少し規制緩和といいますか,大学が世の中の動き,あるいは企業のニーズに対して,対応できるような時間を,もう少し短く取れるような体制にしていただきたい。これは中にも書いてあったと思いますが,これが1点でございます。
 それから,大学における教員の教育力,それから研究力,かつ,学生にとって十分に対応できるような時間を取るためには,いわゆる働き方改革ではないんですが,教員が本来の業務に掛ける以外のところに,書類作成,例えば資金獲得のためであるとか,評価のために非常に多くの時間を割かれていて,周りの教員なんか,私も含めてですけれども,昔はこんなに書類作成しなくてよかったということはよく愚痴として出てくるのですが,やはり教員の業務が,本来というのは言葉がちょっと適切ではないかもしれませんけれども,かなり教育研究以外の業務が肥大化している。これは何とかして改善をしないと,ひいては研究力であったり,あるいは,本来の学生指導に充てる時間が少なくなる。この点も議論をしていただければ有り難いかなと。
 以上,2点でございます。

【有信部会長】  

 それはそれで重要なポイントだと思うんですが,実は,大学でかなりできるんですよね,最初の問題に関しては。つまり,大学自身が自己規制をしているので,例えば研究の内容であれば,それぞれの先生方はみんな勝手な研究テーマでどんどん,もともと自分がいる専攻だとか,研究科だとか関係ないようなテーマの方に研究領域を広げて,実は理系だとやっているわけで,ただ,定員管理が問題なのは,基本的に学生が個別の専攻に縛られてしまう。その中で,それぞれ勝手な研究をやるんだけれども,学位は,専攻の教授会が出すので,余り勝手なことをやると学位が出ない。
 こういう部分をどういうふうに解決するかというところ。でも,これもかなりの部分は大学の創意工夫でできるということと,それをバックアップするような仕組みを多分,国としては整備をしていく。それが学位プログラムという形のプロモーションになっているんですけどね。
 そういうこともあるので,大学ができるだけ,それから,樫見先生おっしゃるように,事務作業が増えているのは確かなんだけど,これも見方を変えると,大学教員が無駄な事務作業を一杯やり過ぎているという部分もあって,本当は事務職員に仕事を振らなきゃいけない部分が,振り切れていない。
 だから,事務職員の訓練ができていなくて,たまたま私が3月までいた理研だと,多分,東大と理研を比べると,事務職員の数は圧倒的に,比率からすると理研の方が少ないんだけど,ただ,理研の場合は,その少ない事務職員をまた二手に分けて,研究推進室という組織があって,そこが全部,研究者のサポートをしているんですね。実際には研究者が発表するパワーポイントまで作るとか,それぐらいのことまでやっちゃうわけですが,資料作成は,国に出す資料を作るなんていうのは,研究者はほとんどそんなことはやらない。だから,理研は研究者の楽園だと言われている部分もあるわけですけど。
 失礼,ちょっと話が横にそれましたけれども,少なくとも大学サイドで,本当はもう少しきちんと考えて,膨大に抱えている,もちろん私立大学は相当厳しく削減していますけど,国立大学はまだまだ人数がたくさんいるので,事務職員の在り方も,本当はちゃんと考えていかないといけないということだと思います。
 それから,ちなみにここ数年は,単純に研究時間だけの統計を見ると,減っていないんです。法人化以降,しばらくは減ったんだけど,後はコンスタントになって,そのレベルでいいかどうかは別ですけど,減っていないというデータもあります。
 どうぞ,川端委員。

【川端委員】  

 もうしゃべらないでおこうと思ったんですけど,1点だけ。
 まとめていただいた話の資料の最後の方に,これは学位プログラムの話になります。要するに,充足率が107%を超えた専攻のグラフというのがあって,何が言いたいかというと,学位プログラムというのは,いわゆる各専攻ごとに定員配置されているものを超えて,新しいそれをつなげて,もっと魅力的なプログラムを作りましょうというような話で作り上げていく。それでたくさんの人を採れたとしたときに,彼らがどういう学位を取るかは,結局,学生の主体的な話で,あなたはこの学位ですよ,この学位ですよとなるから,開けてみたら結局は,充足率が107をどーんと超える学科も出てくるし,ぼーんと下がる学科も出てくる。
 だから,何が言いたいかというと,要するに107,107,超えたら駄目みたいな制限を掛けるよりは,今はともかくそういうバランスが崩れてもいいから,いい人をがんがん採りましょうよ,大学として。それが最終的に落ち着くときには,専攻の再編なり何なりをして,落ち着かせるように誘導していきましょうねというふうなメッセージになっているといいなと。
 今,学部に関しては,何%を超えたらペナルティーだみたいな話になっているので,こういうグラフが出てくると思わずそういうふうにも見えてくる。それが本来は,学位プログラムをもっと魅力化させて,専攻を超えていろいろな人を一杯採りましょうよという話と,うまく整合性が取れるように表現していただければと。

【有信部会長】  

 今,川端委員が言ったとおりの話で,それでいいんだと思いますけど,結果的に,今,それをできるようにするようなサポートをしましょうという話。
 どうぞ。

【三浦大学振興課長】  

 大学振興課長でございます。
 このデータ,折れ線グラフとか付けたのは,様々な現状がありますよということを御理解いただくために付けた資料でございますので,1人欠けたら許さないとか,何人超えたら勘弁しないとか,そういう趣旨では全くありません。ただ,大学院の入学定員とか収容定員に関する考え方は,かなり学部と比べて差があるし,それは社会的な許容量みたいなものもあると思うんですが,どうも,これは単年度だけのデータなんですけれども,恒常的に大幅に欠員になっているとか,恒常的に大幅に過員になっているというところは,教育体制も含めて,やっぱり見直しをする必要があるし,受け入れる能力があるんだったら入学定員を増やせば解消するわけですから,その上で,そういった管理が自律的にできるという前提の上で,大学院についてはそれぞれの大学にお任せしていいんじゃないですかという議論まで行けるといいなという話でございます。

【有信部会長】  

 もともとの,このグラフの趣旨が違った。

【三浦大学振興課長】  

 学位プログラムについては,自律的に管理できる中で,入学定員だけじゃなくて,もう一つ大きいのは,やっぱり専任教員の考え方をどう整理していくかというところも,今回何とかしたいと思っていますので,併せて議論させていただければと思います。

【有信部会長】  

 どうぞ。

【加納委員】  

 川端先生,面白い資料をありがとうございます。
 私が印象に残ったのが川端先生の資料で3ページ目,博士課程でしか得られないことは何かという記述と,その次の4ページ目の博士入学者数推移において,理学部が増加していて工学部が減っているという現象,そして,資料2の1ページ目の下の破線枠のSociety5.0というところです。実はこれは飽くまでも推測なんですけれども,ここ10年というのは,当然,工学の世界では非常に短期的な成果を求められてきて,企業と大学の研究のスパンがほとんど同化してきているという現象があるかと思っています。
 そうなると,博士課程に進むのか,それから,企業に就職するのかというところの境界線があやふやになってきているような,私もリクルートをしていて,そういう感覚を持っています。
 そこに,実は資料2の1ページ目で第4次産業革命,Society5.0,恐らく日本の全企業が,このSociety5.0にどのように貢献していくかということで研究を進め,技術開発,商品開発を進めて,当然,そのための人材開発をしているわけです。これに対して,大学がどのように博士課程神学へのリクルーティングで競争していくかといったときに,その競争軸について熟考が必要と考えています。
 つまり,きょうのお話の中にもう一本の軸,つまり時間軸というのを入れていかないと,恐らく大学と企業の,博士後期課程に進学するのか,学部、あるいは博士前期課程で企業に就職するのかという学生さんたちの選択基準が鮮明でなくなってくる。この件については,各大学の皆様にも是非ご検討いただけたらと思っています。

【有信部会長】  

 時間がかなり押しているのですが,もう一件やらなければいけない。
 何か簡単に,では。

【藤原委員】  

 きょうの話の中で,ファイナンシャル・プランを出すというのは,的を射ていると思いました。日本の大学がサボってきた点の一つと思います。一方で,実行するしようとすると,大学の収入源の担保がないとファイナンシャル・プランを示すことが難しいと想像されます。大学でこれだけお金が掛かりますよ,これだけサポートしてあげられますよということを約束するわけですから,そこはなかなか簡単ではないかなと思っています。
 私が学生にいつも言うのは,博士後期課程というのは,博士後期課程という名の就職をしたと思ってくれと言ってます。RA,TA,ありとあらゆるものでサポートをしているんですけれども,それはそのときの小遣い帳の具合で,いろいろ調整をしながらやっているというのが正直なところです。交付金等の財源にだけ依存することが難しい中で,安定的に支援するためには,大学内での内部補助の仕組みが必要なように思います。例えば,授業料を柔軟に設定し,学部生で潤沢なところの授業料を後期課程の学生に回すというような形の内部補助を行うことが必要と思います。また,一部授業料の自由化とか単位売りのような案など幅広な検討が必要と思います。
 もう一つあったんですが,もう一つは辞めておきます。

【有信部会長】  

 そういう意味では,いろいろ規制があるのを自由化する,今の授業料の改定幅というか,それをもっと大きく自由化するという案は,ないことはない。ただ,実際に計算してみると,これも,2倍にしてもなかなか大変だという案もあるんだけど,そういうことも含めて,実際にはそこに入れて議論をしていければと思います。
 すみません,ちょっと私の不手際で,もう一件,今の人材委員会と大学院部会とで共通に合同部会を作って話をした内容について,これが資料3ですけれども,お手元にあると思います。
 これについて,今まで2回開催をされているということのようですが,第1回は参考資料10に入っていて,これも事務局から説明ですか。

【平野大学改革推進室長】  

 今,部会長からお話がございましたように,合同部会をこれまで2回開催してございます。第1回が,タブレットの参考資料10でございます。主な論点などもその中に含まれてございます。第2回が机上資料,これもタブレットに入ってございます。こういったものを使いながら議論を頂いたわけでございますが,意見の中でどんなものが出てきたのかということについてが,お手元にある資料3でございます。
 ごく簡単に御説明いたしますと,今日の議論と通じる部分もございますが,学生が博士課程に魅力を感じるような働き掛けが重要である。経済的な要因というものが博士課程の進学者減少には大きいのではないか。分野により相当事情が異なるのではないか。博士課程の定員枠の柔軟化も考えていく必要があるのではないか。企業が博士人材,食わず嫌いの傾向があるのではないか。企業との共同研究のマッチングといったものが有効ではないか。大企業以外も含めて,博士学位を評価する企業を開拓してはどうか。組織的なキャリア支援が必要ではないか。若手の研究者の雇用に関しては,任期があるなしということではなくて,任期の長さに着目する必要があるのではないか。大学教員の研究時間マネジメントの観点から,大学経営人材の育成が必要ではないか。女性や外国人の研究者等の多様な人材を登用することがメリットと考えられる施策が重要ではないか。このような御意見が今,出ているところでございます。
 今後も,合同部会については引き続き,博士課程の部分から研究者のキャリアパスというところ,研究現場での話まで含めて幅広く御議論いただく予定でございます。
 以上です。

【有信部会長】  

 これは,宮浦先生に,何か補足はありますでしょうか。

【宮浦委員】  

 ありがとうございます。合同部会を担当しております。
 今日議論になったようなことが,かなり具体的な議論を進めているところでございまして,合同部会としては,今すぐできることでやっていくべきことと,将来的な施策の部分を,両方いきたいと思って議論を深めているところでございます。
 また,産業界の委員から見られて,やはり大学の人間が考えている案の不十分なところが多々あると思っておりますので,その辺り,忌憚のない御意見を頂戴したいと思います。例えばの例といたしまして,数年後の博士人材の採用を約束してくれと言われても,産業界のサイクルからすると難しいのではないかと,アカデミアとしても考えたり,いろいろ産業界側から見られた御意見があろうかと思います。
 ですので,こちらの委員会の産業界の皆様,委員から是非御意見も頂戴したいと思っているところです。よろしくお願いいたします。

【有信部会長】  

 今,ここに書いてあるような意見が出されているということで,何か御意見とか質問がありましたら,どうぞ。

【天野委員】  

 産業界の今の実情を申し上げます。これは参考になるんじゃないかと思います。
 今,お隣に座っている有信部会長が3月までいらした理研さんなんかは,AI人材を育てたいということで,各産業界から,その産業界のキーワードを持った人間をよこしてほしいということをおっしゃっています。ただし,参加したからといってドクターが取れるわけではありませんが,産業界としては知識が欲しいんです。それで,半年で100社の応募があったそうです。もちろん非常に厳しいセレクトを受けているわけですが,同じようなことが産総研さんでも行われています。
 それと,AI人材だけじゃなくて,今,国立研究開発法人に各産業界から,是非一緒に研究をやって,人材を送り込ませてほしいという話は結構来ています。これは,やはりそういうスキルを産業界としては欲しいと思うので,国立研究開発法人に人材を送り込んで,知識を身に付けさせて,また返して有効活用するということになっているんだと思うんですね。
 なので,先ほどからいろいろお話がありましたけど,是非,大学の方でも,産業界として欲しいものを身に付けさせる場というものについて,社会人ドクターということを位置付けていただくと,かなり産業界との連携というのが変わってくるのではないかという気がします。
 なかなか指してもらえなかったんですが,実情を申し上げました。

【有信部会長】  

 ほかに御意見ありますか。
 きょう,ここにある意見を,産業サイドとしてもざっと見させていただいて,その上で,いろいろまた次回にでも,あるいは,メールででも御意見を頂ければと思います。よろしくお願いします。
 それでは,あと,事務局から。

【平野大学改革推進室長】  

 ありがとうございました。今,部会長からお話がございましたけれども,今日の資料は非常に論点豊富なわけでありますが,御意見なり御質問なりがございましたら,連休明けぐらいが一つのめどかなと思っていますが,5月中旬ぐらいまでに御意見を頂ければ幸いでございます。
 次回は,参考資料4の方では5月上旬としていたんですが,済みません,5月上旬にゴールデンウイークがあるということで,なかなか開催は難しいですので,5月中下旬ということになってくるかと思いますけれども,本日に続きまして,大学院全体のお話,キャリアパスの話に加えて,振興施策要綱のフォローアップについても議題とさせていただきたいと思ってございます。日程につきましては,また調整をして御連絡をさせていただきたいと思います。
 いつものお願いでございますが,資料につきまして,郵送を希望される委員の方は,机上に置いてある附箋などに郵送希望と書いて,残しておいていただきましたら,基本的には,何もない場合には御勤務先の方に,資料を数日で郵送したいと思ってございます。
 本当に本日はありがとうございました。またよろしくお願いいたします。

【有信部会長】  

 きょうはいろいろ貴重な御意見をありがとうございました。活発に御意見を頂いて,多分,意見を出し損なっている方もおられると思いますので,是非,メールででも事務局に,追加の御意見がありましたら,お寄せいただければと思います。
 不手際でなかなか十分に議論し切れなかったことをおわびいたします。
 本日はどうもありがとうございました。これで閉会にします。

―― 了 ――



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電話番号:03-5253-4111(3312)