参考資料2 欧州における高等教育に関する動向について

1.概説

欧州においては、欧州域内の国際競争力の向上に向け、EU(欧州連合)の成立と欧州の更なる統合を推進しているが、そのためには人の交流の促進と、その基盤としての学位等の国際的通用性の確保が肝要であるとの立場から、「欧州高等教育圏」の構築や域内外の学生交流促進のための計画が建てられ、その取組みが積極的に推進されているところである。
 この動きは、単一欧州議定書採択(1986年)の翌年に欧州委員会(ECの行政執行機関)の教育交流プログラムとして発足した「エラスムス計画」や、「2010年までの欧州高等教育圏の確立」に向けて、学士・修士等共通の学位システムの導入等、参加各国の大学改革を促す1999年の「ボローニャ宣言」の採択へと繋がっている。
 その後は、「ボローニャ宣言」で提唱された改革内容の進捗プロセスを2年毎の会合で把握する「ボローニャ・プロセス」が進行しているところ。 
 現在では、1999年採択当初の「ボローニャ宣言」における提案内容に加えて、2001年のプラハ会合、2003年のベルリン会合での議論を経て、学位等の国際的通用性の確保のための高等教育の質保証の重要性や、WTO(世界貿易機関)のGATS協定における国境を越えた高等教育の提供の問題への対応等の視点も踏まえた内容へと更新されている。
 なお、このような高等教育の質保証を国際的な観点から検討する動きは、国際機関でも活発となっている。例えば、

  • ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)と欧州委員会(EUの行政執行機関)が策定した「国境を越えて展開する高等教育に関する行動原則」(2001年)、
  • 第32回ユネスコ総会(2003年)決議「高等教育とグローバリゼーション:持続可能な開発を目指した質及び知識社会へのアクセス向上」、
  • 2004年よりユネスコとOECD(経済協力開発機構)が共同で検討を開始した「国境を越えて展開する高等教育の質保証ガイドライン」作成会合、

 等の動きがある。

2.エラスムス計画

 1987年開始。1993年のEU発足後は、「ソクラテス計画」(総合的な教育交流計画)の一部として組み入れられている。
 現在、第2段階目(2000~2006の7年間)の計画が進行中。

  • 学生・教員の交流促進:域内留学促進のため、奨学金を給付。1999年には学生11万人、教員1万2000人がこの制度で留学。
  • 教育課程の共同開発等支援:3カ国以上の高等教育機関による教育課程や単位の共同開発等に資金援助。2000年に約2,700機関が参加。
  • 欧州大学間単位互換制度(ECTS):教育内容の国際的互換性確保のため、学習量(creditという統一尺度)と成績評価を標準化。

 なお、欧州と欧州以外の他地域との高等教育機関における学生交流を通じて大学間の連携を強化し、欧州の高等教育の質と競争力を向上することを目的とした「エラスムス・ムンデュス計画」もある。

エラスムス・ムンデュス計画

 2004~2008までの5カ年計画。

  • 連合修士課程:域内複数大学の協定で共同設置。審査の上、「EU修士課程」として認定し、EUから予算支援。5年で250課程を予定。
  • エラスムス・ムンデュス奨学金:留学生受入れのため、5年で4,000人の域外学生に月額約19万円の奨学金を給付。
  • 欧州の学生・研究者の域外への留学派遣を拡大:「EU修士課程」参加大学と域外最高水準大学が3年間の交流プロジェクトを行えるよう支援。

3.ボローニャ宣言

 1999年になされた「欧州高等教育圏」の構築のための欧州各国の共同宣言。欧州域内の高等教育に学位システムと単位制度を中心とした共通の枠組みを構築し、人の交流を高め、欧州域内の高等教育の国際競争力の向上を狙いとしている。

 (1999年ボローニャ宣言採択内容):欧州29カ国の教育大臣が署名。
 「欧州高等教育圏」の確立とそのシステムの世界的規模での普及のために、2010年までに下記の6つの課題の達成に努めることを署名国に求めている。

  1. 比較可能な学位システムの導入:欧州市民の域内流動・就職可能性を高め、欧州の高等教育システムの国際競争力を高める。ディプロマ・サプリメント(学位の学修内容を示す共通様式)の試験的導入等を進める。
  2. 学部と大学院の2段階構造を導入:第二段階(大学院、学位は修士号・博士号)進学条件として最低3年の第一段階(学部)の修了を課す。
  3. 単位制の確立:欧州大学間単位互換制度(ECTS)を確立する。
  4. 障害を取り除き、人の移動を最も効果的に実現:1.学生に学習と職業訓練の機会を提供する、2.教員・研究者・行政官に欧州全体の枠組みの中で研究・教育・職業訓練活動を行う期間を設けることが重要。
  5. 質保証のためのヨーロッパ域内協力の推進:比較可能な基準・方法論を開発。
  6. 高等教育におけるヨーロッパの特質を促進:カリキュラム開発、機関レベルでの協力、モビリティ向上のための方策、学習、教育訓練、研究プログラムの統合に配慮。

 ⇒ 最新のボローニャ宣言のフォローアップ会合であるベルリン会合
 (2003年9月)では、以下のコミュニケを採択。

 ベルリン・コミュニケ(2003年9月):旧ユーゴ諸国を含めた40ヶ国の教育大臣が署名。

 ボローニャ宣言を改めて確認した上で、更に2005までに各国の導入を努力する旨、更に短期の期限が設定された。また、下記の点につき、新たに提案。

  1. 質保証の共通システムの構築;
    ※ 各国の質保証システムの中で、
    1. 機関の内部評価および外部評価の実施、
    2. アクレディテーションを含む質保証システムを構築
    ※ 欧州質保証ネットワーク(ENQA)において、
     欧州における質保証に関するスタンダード・手続き・指針の開発・適切なピア・レビュー方策を検討
  2. 博士課程を学位の共通枠組に追加(学士3年、修士2年、博士3年)
  3. ECTSを、読替のみではなく、履修の蓄積を証明する手段として更に普及
  4. ディプロマ・サプリメントの2005年以降の本格的導入

(参照情報:欧州委員会HP)

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