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高等教育の量的側面での需要がほぼ充足されてくる一方,事前規制から事後チェックへという流れの中,特に大学設置に関する抑制方針の撤廃や準則主義化等もあり,大学等の高等教育機関の新設や量的拡大も引き続き予想され,また,一定の組織改編が届出で可能となったことを主な契機として,各高等教育機関が個性・特色を明確にしながら,大学が自律的選択に基づいて機能別に分化するなど全体として多様化が一層進むにつれて,学習者の保護や国際的通用性の保持のため,高等教育の質の保証が課題となる。 |
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高等教育の質の保証に関しては,まず,個々の高等教育機関において,教育・研究活動の改善と充実に向けて不断に努力することが大切である。また,競争的環境の中での各高等教育機関の個性・特色の明確化が一層進む中にあっては,学習者や社会の信頼を保持する上でも,情報の開示を含めた質の保証の仕組みを整えて効果的に運用することも極めて重要であり,国としての基本的な責務である。 |
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本来,保証されるべき「高等教育の質」とは,教育課程の内容・水準,学生の質,教員の質,研究者の質,教育・研究環境の整備状況,管理運営方式等の総体を指すものと考えられる。したがって,高等教育の質の保証は,行政機関による設置審査や認証評価機関による評価(「認証評価」とは,すべての国公私立の大学等が,文部科学大臣の認証を受けた第三者評価機関による評価を受ける制度をいう。以下同じ。)のみならず,カリキュラムの策定,入学者選抜,教員や研究者の養成・処遇,各種の公的支援,教育・研究活動や組織・財務運営の状況に関する情報開示等のすべての活動を通して実現されるべきものである。 |
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高等教育の質に着目する場合,事前評価としての行政による設置認可と事後評価としての評価機関による第三者評価を言わば両輪とした,質の保証が必要である。 |
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高等教育の質の保証の一環としての事前・事後の評価の関係については,双方の適切な役割分担と協調を確保することが重要である。特に,一定の事前評価は必要であるとの観点から,設置認可制度について,我が国の高等教育の質の保証の仕組み全体の中での位置付けを一層明確化し,的確に運用すべきである。また,事後評価に関しては,認証機関による評価のシステムを速やかに整え,社会の負託に十分にこたえる効果的なものとなるよう発展・充実させていくべきである。 |
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高等教育の質の保証を考える上では,教員個々人の教育・研究能力の向上や事務職員・技術職員等を含めた管理運営や教育・研究支援の充実を図ることも極めて重要である。評価とファカルティ・ディベロップメント(FD)やスタッフ・ディベロップメント(SD)等の自主的な取組との連携方策等も今後の重要な課題である。 |