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現行法令上、大学は学部・学科や大学院といった組織に着目した整理がなされている。
今後は、教育の充実の観点から、学部・大学院を通じて、学士・修士・博士・専門職学位という「学位を与える課程」と考える教育課程(プログラム)中心の考え方に再整理していく必要があるのではないか。
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学士課程段階での教育には「教養教育」や「専門基礎教育」等の色々な役割が期待される一方で、我が国では、職業教育志向もかなり強い。したがって、今後の学士課程教育は、様々な個性・特色を持つものに分化していくものと考えられる。例えば、学士課程段階では「21世紀型市民」の育成を目指し、教養教育と専門基礎教育を中心として主専攻・副専攻を組み合わせた総合型教養教育を基本としつつ、専門教育は修士・博士課程や専門職学位課程の段階で完成させるものや、学問分野の特性に応じて職業教育完成型のもの等、多様で質の高い教育を展開することが期待される。
注)21世紀型市民: |
専攻分野についての専門性を有するとともに、幅広い教養を身に付け積極的に社会を支え、時代の変化に合わせて必要に応じて社会を改善していく資質を有する人材 |
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新たに構築されるべき「教養教育」は、学生に、グローバル化や科学技術の進展等社会の激しい変化に対応し得る統合された知の基盤を与えるものでなければならない。各大学は、理系・文系、人文・社会・自然といった、かつての一般教育のような従来型の縦割りの学問分野による知識伝達型の教育や、専門教育への単なる入門教育ではなく、専門分野の枠を超えて共通に求められる知識や思考法等の知的な技法の獲得や、人間としての在り方や生き方に関する深い洞察、現実を正しく理解する力の涵養に努めることが期待される。
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教養教育に携わる教員には高い力量が求められる。加えて、教員は教育のプロとしての自覚を持ち、絶えず授業内容や教育方法の改善に努める必要がある。入門段階の学生にも高度な知識を分かりやすく興味深い形で提供したり、学問を追究する姿勢や生き方を語るなど、学生の学ぶ意欲や目的意識を刺激することも求められる。
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職業教育については、専門職大学院の制度ができたことを契機として、学士課程段階を中心に養成するものと修士課程・専門職学位課程を中心に養成するものを、学問分野の特性や各種職業資格との関連に応じて具体的に仕分けして考えていく必要がある。
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大学(学士課程段階)への進学率の上昇や高等学校教育の多様化等に伴い、入学者の能力・適性や志向も多様化してきていること、また、18〜21才のフルタイム学生(いわゆる伝統的学生)のみならず社会人学生や外国人留学生が増加していること等を踏まえ、学士課程・準学士課程等の大学教育は、全体として一層の多様性を確保することが必要である。そのため、各高等教育機関ごとに個性・特色を一層明確化するとともに、誰もがアクセスしやすい高等教育システムを構築することが求められている。
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学士課程は、基本的役割として、伝統的学生の人格形成機能や生涯にわたる学習の基礎を培う機能を担っており、一定水準以上の教養教育・専門基礎教育や職業教育を行うことが不可欠である。そこで、学士課程教育の充実のため、学問分野ごとにコア・カリキュラムが作成されることが望ましい。また、このコア・カリキュラムの実施状況は、機関別・分野別の大学評価と有機的に結びつけられることが期待される。
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学士課程教育の標準修業年限については、国際的通用性の確保や「単位」の実質化等に十分留意しつつ、検討する必要がある。従前通り学士課程を4年かけて卒業する経路のほか、修士・博士・専門職学位課程との関係では、学習経路が多様化するものと考えられる。この場合、特に総合的教養教育型において学士課程3年修了による進学が積極的に活用され、普及するものと予想される。
また、職業教育完成型においては、4〜6年の間で分野の特性に応じて修業年限が定められる。
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企業採用は、学士課程3年次修了者については修了後に行われるのが通例となるものと期待される。また、4年次卒業者については、学士課程教育に実質的に支障のないよう配慮することが必要である。さらに、修了・卒業直後の1年間での様々な活動体験や短期在外経験等を重視することも期待される。 |
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18歳人口の減少や女子の4年制大学志向の高まりなど、短期大学を取り巻く社会や時代の変化の中で、短期大学は他の高等教育機関と異なる個性・特色の明確化に一層努める必要がある。
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従来から、短期大学の機能としては、 教養教育と実務教育が結合した専門的職業教育 より豊かな社会生活の実現を視野に入れた教養教育 地域社会と密着しながら社会人や高齢者などを含む幅広い年齢層に対応した多様な生涯学習機会の提供等が挙げられてきた。昨今の各種職業資格の高度化の動向を勘案すれば、 と の機能は事実上一体化(教養教育重点型)しており、 の機能(生涯学習型)も引き続き挙げられる状況にあると考えられる。
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教養教育重点型はユニバーサル段階の高等教育の拠点の一つとして、また、米国のコミュニティ・カレッジのように、地域と連携協力して多様な学習機会を提供する生涯学習型は知識基盤社会での土台づくりとして、それぞれ新時代にふさわしい位置づけがなされるよう、積極的な準学士課程教育の改革が期待される。
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学位取得のための教育と技能・資格取得のための教育の性格の違いを内容面から特徴づけるのは教養教育であり、短期大学における教養教育は、4年制大学における教養教育と同様に、自己の人間としての在り方・生き方に関わる教育であると考えられる。短期大学における準学士課程教育の特色は、こうした「大学における教養教育」を、主として女子教育や社会人・高齢者等の幅広い学習需要に的確に対応したアクセスしやすい形で提供する点にあると考えられる。
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また、短期大学を含めた大学における実務教育・職業教育は、教養教育の基礎の上に立ち、理論的背景を持った分析的・批判的見地からのものである点で、他の機関により提供される実務教育・職業教育とは異なる特徴があるものと考えられる。短期大学関係者は、4年制大学の学士課程に準ずる実質を備えた準学士課程教育のこうした特徴を一層明確化するよう、教育の充実に不断の努力を傾注する必要がある。
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短期大学は、今後とも、教育内容・方法や経営状態に関する積極的な情報開示や充実した事後評価の仕組みの確立等による社会的信頼・評価の確保に努める必要がある。
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以上の点を踏まえつつ、短期大学における教育課程の修了を制度上の学位に結びつけることについて、国際的通用性にも十分留意しつつ、検討すべきである。 |