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大学の組織の新設・改廃には国の認可が必要であり,具体的には,現在のところ,学部の学科レベルまで認可の対象としている。この場合,国は大学設置基準等を基に, 教育研究上の理念など設置の趣旨が具体的かつ明確に示されているか, 設置の趣旨に照らし教育課程は適切であるか, 教育課程を展開するのにふさわしい教員組織であり,かつ,校舎等施設・設備が質的にも量的にも十分であるか,などの観点を中心に審査し,大学設置・学校法人審議会に諮問した上で認可している。 |
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○ |
大学の自主性・自律性を尊重し,国による事前規制を一層緩和するという考え方を踏まえ,大学が主体的・機動的・弾力的に組織改編できるよう,設置認可の対象は,大学の教育研究の質を確保する上で事前に審査することが必要不可欠なものに限定する。 |
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○ |
設置認可の対象を限定する方法として,大学の基本組織である学部のみを認可対象とし,その下部組織である学科は届出事項とすることが考えられるが,この場合,同一の学位を授与する課程でも学科にするか学部にするかという組織の違いだけで取扱いが異なるという問題が生ずる。したがって,もともと学位授与権の付与が国際的にも歴史的にも大学の設置認可の際の重要な要素になっていることも踏まえ,今後の設置審査においては,新設する学部等が授与する学位と従来から授与している学位の異同,すなわち,学位の種類(学士,修士,博士)や対象とする学問分野に変更があるのかという観点を新たに加味し,かつ,その点を重視して認可の必要な場合を整理することが必要と考えられる。
すなわち,当該大学の設置時に想定された学位授与権の範囲を超えるような組織改編であるかどうかを判断の基準とすることが適当である。 |
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○ |
したがって,国の設置認可は,大学,大学院の基本組織である学部,研究科等の新設・改廃について行うことを原則とするが,学部の設置は認可,学部の学科の設置は届出といった一律な対応とするのではなく,改編前後で授与する学位に変更があるか否かを勘案して次のような弾力的な取扱いとする。
(1) |
現在授与している学位の種類・分野を変更しない範囲内で組織改編する場合は,学部等大学の基本組織の設置であっても国の認可は不要とし,届出で足りることとする。
<イメージ例>
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同一の学位を授与する昼間・夜間それぞれの学部を昼夜開講制の一つの学部に改組する場合は届出とする。 |
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経済学部の中に経済学科と経営学科があり,経営学科を改組して経営学部を新設する場合は届出とする。 |
・ |
工学部の中に情報関連の学科があり,これらを独立させて情報工学部を新設する場合は届出とする。 |
・ |
理学研究科と工学研究科を統合して理工学研究科を新設する場合は届出とする。 |
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(2) |
新たな種類・分野の学位を授与する課程等を創設するための組織改編の場合は,学部の学科の新設であっても認可の対象とする。
<イメージ例>
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医学部の中に既設の医学科とは別に看護学科を新設する場合は,看護学部の設置の場合と同様,認可の対象とする。 |
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既設大学に新たに「法科大学院」の課程を設置する場合は,研究科として設置するか専攻として設置するかを問わず,認可の対象とする。 |
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学位の分野に関しては,現在,各大学がそれぞれの判断で適切な名称を付記しているが,今後の学部等の設置に当たっては,改編前後で授与する学位の異同によって認可か届出かが分かれることとなるため,どのような場合が「新たな分野の学位を授与する場合」に該当するかについての指標を定め更に整理し,明確化する必要がある。このような指標については,別添の分類例のように大括りの分類とする方向で,更に検討を進める。 |
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○ |
私立大学の収容定員は,学科又は課程を単位とし,学部ごとに学則で定めており,その増減に係る学則変更には国の認可が必要とされている。今回,大学の主体性をより重視する方向で,学部等の設置認可を弾力化することとなるが,組織改編に伴う収容定員に係る学則変更を引き続きすべて認可対象とすると,設置認可の弾力化の効果が半減することになる。また,収容定員が減少する場合については国が事前規制を行う必要性に乏しいことなどから,今後引き続き認可対象とするのは大学全体で収容定員が純増する場合のみに限定し,大学全体の定員内における学部等(後述するように,抑制の取扱いを継続することとされた場合の特定分野の学部等を除く)間の定員の増減は当該大学の裁量にゆだねることによって,大学による自律的な組織編成を容易にする。 |
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短期大学及び高等専門学校の学科の新設・改廃については,大学の学部に相当する短大の基本組織として,国の認可の対象を必要とするものの審査の手続や内容の大幅な簡素化を図ることとするか,あるいは,原則として届出とするかについて,引き続き検討することを原則とするが,改編前の学科が対象としていた学問分野を変更しない範囲内で組織改編する場合は,国の認可は不要とし届出で足りることとするなど,4年制大学と同様の取扱いとする。この場合,認可か届出か区分する指標についても,4年制大学の場合に準じて定めるものとする。 |
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以上の基本的な考え方を踏まえ,大学,大学院,短期大学及び高等専門学校に係る国の設置認可の主な対象は以下の事項とし,認可対象から除外するこれら以外の事項については原則として届出とする。
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大学,大学院,短期大学及び高等専門学校の設置・廃止 |
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新たな種類・分野の学位を授与する課程等の創設に係る学部等の設置 |
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設置者の変更 |
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大学全体の収容定員増に係る学則変更(私立大学等の場合) |
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○ |
届出事項となったものについて,届出内容が法令に適合していない場合は,国は変更その他必要な措置が講じられるようにする。 |
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今後の大学の教育研究の質の確保は,これまで述べてきた種々の方策を一体としてセットで実施することによって初めて可能になるものであることに留意する。また,今回の改革はこれまでの大学の在り方に大きな影響を与えるものであるため,新たなシステムの実施に当たっては,大学関係者に対し,その趣旨,制度の内容等についてあらかじめ十分周知することが必要である。 |
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大学の質の向上については,大学が自らの教育研究活動や,組織運営の在り方などについて,不断に自己点検・評価し,その結果に基づき更なる改善方策を探るなど,企画立案,評価,実施,反映といった教育研究活動の改善のための循環過程を大学自らのうちに構築していくことが必要であり,認証評価機関により,定期的に評価を受けて,その結果を踏まえて大学が自ら改善を図っていくことも,これらの教育研究活動の改善のための循環過程の一環として捉えられることが必要である。 |
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第三者評価機関の果たす役割の重要性にかんがみ,第三者評価機関に対する国の支援方策について検討する。 |
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大学の教育研究活動は多様であり,一律の観点で評価することは適当ではないため,様々な第三者評価機関がそれぞれの特質を生かして評価を実施することにより,大学がその活動に応じて多元的に評価を受けられるようにすることが望まれる。 |
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大学評価・学位授与機構は,当分の間,私立大学に係る評価を行わないものとすることとされているが,同機構がこれまで蓄積してきた評価に係る能力,機能等を私立大学においても活用できるよう,同機構による評価を受けることを希望する私立大学についてはこれを可能にする。 |
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大学は公共的な機関であり,今回の改革によって一層大学の自主的・自立的な取組が可能になることを踏まえ,社会的責務として大学情報を可能な限り社会に提供していくことが必要であるほか,情報を社会に提供することによってその大学が社会から評価を受け,ひいては質の向上に資することとなることから,教育研究活動や財務関係の状況,認証評価機関による評価結果など大学の情報提供を一層促進する。 |
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大学の存続や学生に対する教育機会の提供が困難になった場合の学生の就学機会の確保等については,まず当該大学が一義的に責任を持って対応することが必要であるが,文部科学省や私学団体においても,これを支援していくことが求められる,学生が学習を継続して行うことができるよう,就学機会を確保するための方策等について検討する。 |
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今後,e-Learningなど情報通信技術等を用いて国境を越えて提供される高等教育サービスが一層流通する時代が到来することを見据え,大学の質の保証に係る国際的な情報ネットワークの構築等に関する検討の必要性に留意する。 |
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高等専門学校に係る新たなシステムの適用については,原則として短期大学に準じた取扱いを行う方向で今後検討する。 |
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高等教育の全体規模について,平成16年度までは抑制的に対応することとしているが,設置認可の在り方を見直すことに伴い,今後の在り方について別途検討する。 |