第1節 幼稚園等施設の教育機能の強化・拡大

1 すべての幼児に対する幼児教育の機会の提供

 従来からの幼児教育の成果を踏まえ,幼稚園を中心として幼児教育の機会の提供の拡大に努めるとともに,幼児教育振興プログラム(平成13~17年度の5か年計画)について引き続き推進していく。

(1)希望するすべての幼児に対する幼児教育の機会の拡大

  • 幼稚園教育の地域的偏在の問題等を踏まえ,入園を希望するすべての満3歳児から5歳児の就園を目標に幼稚園の整備を進めることを,総合施設の議論も踏まえながら,さらに推進し,充実する必要がある。

(2)幼児教育振興プログラムの着実な推進と検証等

  • 幼児教育振興プログラムにおける幼稚園教育の条件整備に関する施策について,引き続き着実な推進を図るとともに,適切な検証を行う。
    具体的には,例えば,子どもの育ちを巡る今日的課題を踏まえ,基本的な生活習慣や態度,人とかかわる力などが幼児期に確実に育まれるよう,幼稚園教育要領の趣旨や内容についての関係者等の理解を深める事業をさらに推進する必要がある。
    加えて,効果的・効率的な幼児教育の施策の在り方について,新たなプログラムの策定も含め,検討することが望まれる。

2 発達・学びの連続性を踏まえた幼児教育の充実

 子どもの育ちに係る今日的な課題を受け,幼児教育と小学校教育との連携・接続の強化・改善や3歳未満の幼稚園未就園児の幼稚園教育への円滑な接続など,幼児の発達・学びの連続性を踏まえた幼児教育の充実を図っていく。

(1)小学校教育との連携・接続の強化・改善

 遊びを通して学ぶ幼児期の教育活動から教科学習が中心の小学校以降の教育活動への円滑な移行を目指し,幼稚園等施設と小学校との連携を強化する。特に,子どもの発達・学びの連続性を確保する観点から,連携・接続を通じた幼児教育と小学校教育双方の質の向上を図る。
具体的には,幼児教育における教育内容,指導方法等の改善等を通じて生きる力の基礎となる幼児教育の成果を小学校教育に効果的に取り入れる方策を実施する。
 その際,例えば幼稚園においては園児の8割近くが私立幼稚園に在園していることを踏まえ,公立・私立の連携を図りつつ実施することが必要である。

ア 教育内容における接続の改善

  • 幼稚園等施設において,小学校入学前の主に5歳児を対象として,幼児同士が,教師の援助の下で,共通の目的・挑戦的な課題など,一つの目標を作り出し,協力工夫して解決していく活動を「協同的な学び」として位置づけ,その取組を推奨する必要がある。
  • 遊びの中での興味や関心に沿った活動から,興味や関心を生かした学びへ,さらに教科等を中心とした学習へのつながりを踏まえ,幼児期から児童期への教育の流れを意識して,幼児教育における教育内容や方法を充実する必要がある。
  • 幼稚園教育要領等で幼稚園等施設と小学校との連携の推進等について,より明確化する必要がある。

イ 人事交流等の推進,奨励

  • 幼稚園等施設の教員等と小学校の教員の合同研修等を通じて相互理解をめ,教員等の資質向上を図り,きめ細かな教育を展開する必要がある。
  • 幼稚園等施設と小学校双方において,非常勤講師等で相互の経験者を活用することや,人事交流を推進するなどの施策を通じ,より一層,双方の教育の質を高める必要がある。
  • 加えて,特に幼稚園と小学校との連携に関しては,人事交流や相互理解を進める上で,教員免許の併有を促進する必要がある。例えば,免許法認定講習等の実施方法の改善について,中核市等への実施主体の拡大,都道府県の認定講習等の実施の拡大等を検討することが望ましい。

ウ 「幼小連携推進校」の奨励,幼小一貫教育の検討

  • 市町村教育委員会の支援の下に,教員等の人事交流,「協同的な学び」や小学校の生活科等での幼稚園等施設と小学校との合同活動等,連携の取組を積極的に行う幼稚園等施設,小学校を,例えば「幼小連携推進校」として奨励し,その成果や課題に関する情報の提供に努めるなど,各地域に適した連携の強化が進むようにする必要がある。
  • 幼稚園等施設の教育と小学校教育の一貫性に配慮した教育の在り方について,現在の連携に関する様々な取組の進展状況,その検証,学校間連携全体の在り方の議論,幼小一貫教育の必要性などを踏まえながら検討する必要がある。

(2)3歳未満の幼児の幼稚園への接続の扱い

  • 幼稚園においては,幼稚園就園前の幼児が,家庭・地域における生活から幼稚園における集団での学習活動へ円滑に接続できるよう,例えば3歳未満の段階から親子登園や相談事業等を実施するなどの取組を推進することが適当である。
    また一方で,幼稚園は就園した3歳児が集団生活に適用できるよう十分に配慮していくべきである。
  • 3歳未満の幼児の幼稚園就園について,地域によってニーズの高まりがあり,構造改革特別区域において満3歳に達する年度の当初からの幼児の就園事業を行っている。構造改革特別区域における実施状況を引き続き検証しつつ,総合施設に係る検討状況や,保育所等の既存施設や従来からの子育て支援の取り組み等の状況なども踏まえながら,3歳以上の幼児と比較した発達段階の違いや個人差への配慮,職員配置,教育課程上の位置付け,施設設備等の条件整備の必要性,幼稚園教育としての位置付け・支援の在り方などに配慮して,適切な受け入れの在り方について,専門的な検討を行うことが適当である。

3 幼稚園教員の資質及び専門性の向上

 社会環境の急速かつ大きな変化に伴う幼児教育の多様な展開に対応するため,幼稚園教員の養成・採用・研修等の改善や上級免許取得の促進を図るなど,その資質及び専門性の向上を図る。

(1)幼稚園教員の養成・採用・研修等の改善

  • 教員志望者自身が豊かな体験を積むこと,また,養成段階においてインターンシップ等幼稚園現場での実践を経験することが重要である。
  • 標準的な養成年限である4年間の養成を経た一種免許状を有する教員の増加策を検討することが必要である。
  • 採用・処遇の改善による経験豊かな教員の配置を推進することが望まれる。
  • 女性教員の割合が9割を超えている現状にあるが,ある程度幼稚園にも男性職員がいる方が幼児の教育上好ましいとの意見も踏まえ,男性職員の割合を高める方策等を講ずることが望まれる。
  • 人事交流等や合同研修が幼稚園教員の資質向上に好影響を与えると考えられるため,小学校教員など他校種の教員や保育所保育士との人事交流,合同研修を推進する必要がある。
  • 家庭・地域社会への子育て支援などの今日的課題に対応するために,研修等による教員の資質向上が求められている。
    また,研修機会の拡大,研修内容の充実のために,都道府県教育委員会等が主催する研修への私立幼稚園教員の参加や参画を促進する必要がある。

(2)上級免許状の取得促進,所有者の配置拡大

  • 現職の幼稚園教員の現状は二種免許状所有者中心であるので,本来,要請されている一種免許状所有者の増加を促進する必要がある。
    そのために,幼児教育に関する政策プログラムに盛り込むなど,地方公共団体が一種免許状取得促進の努力目標を設定することが望ましい。
  • 二種免許状を所有する現職教員が一種免許状を取得することなど,上級免許状取得のための免許法認定講習等の実施方法の改善について検討する必要がある。例えば,中核市等への実施主体の拡大,都道府県の認定講習等の実施の拡大等を検討することが望ましい。
  • 一種免許状所有者の配置を重点化するとともに,配置を促進するための方策を検討する必要がある。

4 幼稚園等施設による家庭や地域社会の教育力の再生・向上

 幼稚園等施設において行われている子育て支援や幼稚園における預かり保育の取組を,家庭の教育力の再生・向上,「親と子がともに育つ」という教育的視点から改めて整理し,充実を図る。また,幼稚園等施設が地域社会の一員として地域社会の教育力の再生・向上に資する役割を果たしていく。

(1)子育て支援の在り方

ア 幼稚園等施設における子育て支援の推進等

  • 「親と子がともに育つ」観点から,幼稚園等施設を利用している幼児の家庭に対する支援を推進していくことが必要である。例えば,子育てに係る相談の実施,情報提供,親子参加型の事業等の実施を働きかける必要がある。
  • また一方で,幼稚園等施設を利用していない子どもを育てる家庭の教育力向上のために,親子登園,園庭開放や子育て相談を実施するなど,幼稚園等施設が積極的にかかわっていく必要がある。このことは,特に3歳未満の幼児について配慮される必要がある。
  • 子育て支援の望ましい在り方については,実施体制,内容・方法など,幼稚園教育要領等における位置付け等の明確化も含め検討する必要がある。
  • 現在,各幼稚園等施設において行われている子育て支援の内容や方法について,国や教育委員会等が具体的な事例を収集・集約し情報提供することによって各幼稚園等施設におけるプログラムの開発・実施等を奨励する必要がある。

イ 地域社会との双方向ネットワークの構築

  • 都市化や核家族化等により分散された子育て資源を活用していくため,幼稚園等施設と地域社会との双方向のネットワークを形成していく必要がある。
  • 具体的には,幼稚園等施設が,地域の実情に応じて,児童館・公民館等の施設,地域のボランティア団体及び民生・児童委員などの地域社会の教育力を積極的に活用する姿勢が求められる。
  • 同時に,また幼稚園等施設が,地域の祭り等に積極的に参加するなど地域社会のふれあい拠点となり,あるいは地域住民の希望者を募って子育てボランティアを育成するなど,自ら地域社会の教育力を高めることが求められる。

(2)幼稚園における預かり保育の明確化

  • 幼稚園における預かり保育については,地域の実情や保護者の要請により実施しているが,幼児の生活の連続性の観点から家庭や地域社会の教育力を補完するとともにその教育力の再生・向上につながるという意義もある。
    幼稚園の教育活動としての預かり保育の望ましい在り方について,実施体制,内容・方法,実施時間,適切な名称など,幼稚園教育要領における位置付け等の明確化も含め検討する必要がある。
  • 現在,各幼稚園において行われている預かり保育の内容や方法について,国や教育委員会等が具体的な事例を収集・集約し情報提供することによって各幼稚園におけるプログラムの開発・実施等を奨励する必要がある。

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初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成21年以前 --